JP7083110B2 - 触覚センサ及びその製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、本発明の触覚センサは、検出部が生体内に埋め込まれて人工関節間その他の生体内の圧力情報の取得、衣服が肌に触れるときの荷重やせん断応力の計測、歩行時の足裏の荷重及びせん断応力の分布計測、ゴルフや野球等スイング時などの特定の動作の際に、手のひらに掛かる荷重及びせん断応力の分布計測などに使用可能である。
また特許文献2に記載の触覚センサは、2枚の矩形の平行板電極間に、導電樹脂層としての磁性ゴム体が配置された構成であり、物体に接触して接触面に平行(せん断方向)に動いた際に受けるずり力を検知する。
ここで、特許文献2には、導電材料としてのNiやCuの粉末の大きさとして、平均長3~10μmが記載されている。すなわち、通常、触覚センサで使用される導電材料の平均粒径は、材料によって異なるが3~10μm程度である。
また、一定面積当たりの力の測定精度を上げるためには、センシング部を小型化し高集積とすることが有効である。
以上のことから、触覚センサに使用する電極の微細化が求められている。
導電樹脂層に金属ペーストを印刷して電極を形成する場合、導電樹脂層の電極形成面の凹凸が問題となることがある。電極を微細化するほど、導電樹脂層の凹凸が大きいと電極が凹凸部分で断線したりカケなどの欠陥が生じたりして、センサとしての機能を果たせない場合がある。また、経時的に断線する恐れもある。
また、各電極に導電樹脂層を形成し、導電樹脂層同士を重ね合わせることで、2つの電極を対向させたセンサ構成もある。この場合、2つの導電樹脂層表面の凹凸同士を重ね合わせることになるが、センサに対し、例えばせん断方向の力を掛けた場合、重なっている凹凸部分に荷重が集中して導電樹脂層が破損したり、電極間の導電樹脂層の導電性能にばらつきが出たりする可能性がある。
そして、触覚センサに使用される導電性樹脂は、通常、金属やカーボン粒子からなる粉末状の導電材料を分散することで導電性を有するが、金属やカーボン粒子からなる導電材料の大きさは、レーザー回折式粒度分布計による測定の結果、平均粒径が3~10μm程度と粒子形状が大きく、しかもいびつな形状(走査型電子顕微鏡での測定による)をしていることが、導電樹脂層が凹凸を持つ原因となっているとの知見を得た。
本発明は、このような知見に基づきなされたものである。
ここで、樹脂層全体に、粒子径の小さな導電材料を適用することも考えられるが、導電材料の粒子径が小さくなるほど、樹脂層の膜厚を稼ぎにくくなって、製造の手間が増えたり、製造コストが増大したりすることに繋がる。これに対し、本発明の態様によれば、樹脂層表面の凹凸を小さくするために、粒子径の小さな導電材料を適用することで、製造の手間等を抑えることが可能となる。
また、樹脂層表面の凹凸が小さくなることは、部材間をより均一に接触することが可能となり、このことはまた、安定したセンサ精度の向上にも寄与する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。すなわち、以下に示す電極の形状やリードの引き回し、及び力の測定を行う電極の数は一例であり、本説明の内容に限定されるものではない。
まず、第一実施形態について説明する。
<構成>
図1の模式図で示すように、第一実施形態の触覚センサは、基材1と、基材1上に設けられた第一電極2と、少なくとも第一電極2の上に形成された第一の導電性樹脂からなる第一の樹脂層3と、第一電極2と対向させて第一の樹脂層3の上に設けられる第二電極5と、を備える。第一の樹脂層3は、第二電極5が形成される側の面3aに、第二の導電性樹脂4が設けられている。図1は、第一の樹脂層3を第一電極2を覆うように基材1上に形成した例である。
第二の導電性樹脂4が含有する導電材料の平均粒径は、第一の導電性樹脂が含有する導電材料の平均粒径よりも小さい。第二の導電性樹脂4が含有する導電材料の最大粒径は、第一の導電性樹脂が含有する導電材料の最大粒径の1/10以下であることが好ましい。この範囲を超えると第二の導電性樹脂4を形成した際に、第二の導電性樹脂4によって新たな凹凸が生じてしまうおそれがある。
更に、第二の導電性樹脂4を積層した状態での第一の樹脂層3の膜厚差の最大値は、1μm以上6μm以下となっていることが好ましい。膜厚差の最大値は、より好ましくは1μm以上3μm以下である。
ここで、膜厚差の最大値とは、膜厚の一番厚い部分と一番薄い部分との厚さの差を指す。以下、「膜厚差の最大値」を、単に「膜厚差」とも記載する。
なお、図1は、3つの電極が一列に並ぶように展開した状態での断面図である。実際には3つの電極は、後述のように一列に並んでおらず、できるだけコンパクトとなるような配置構成となっている。
以下に、より具体的に説明する。
図2に示す平面図のように、本実施形態の第一電極2は3つの小電極21~23から構成される。3つの小電極21~23は、共通するリード6で接続されている。この例では、第一電極2をコモン電極としている。小電極21~23やリード6の配置は、この例に限定されず、センシングするための回路によって自由に取り回しを変えることが出来る。
小電極21は、接触圧力を測定するための電極であり、方形状をしている。小電極22及び23は、紙面横及び縦方向の各せん断応力を測定するための電極であり、長方形の形状をしている。小電極22が紙面横方向のせん断応力を、小電極23が紙面縦方向のせん断応力を、それぞれ測定する役割を持っている。図2では小電極22、23内部にスリットが設けられているが、説明のための一例である。各小電極21~23の形状に特に制限はない。
第一電極2及びリード6の配線厚みは、例えば2μm以上3μm以下である。
図3に示す平面図のように、第二電極5は、第一電極2の各小電極21~23とそれぞれ第一の樹脂層3を介して対向するように配置された三個の小電極51~53を備えており、各小電極51~53から個別にリード7が延びている。
小電極51は、第一電極2の小電極21と対向配置している。無負荷状態では、平面視において、小電極51は、小電極21からはみ出さない程度に小電極21より小さくなっている。これにより、対向する小電極21と小電極52の部分ではせん断力によってずれが生じても対向する部分の重なり面積が変わらず、抵抗値変化が生じないため、純粋に接触圧力のみを取り出すことが出来る。
第二電極5及びリード7の配線厚みは、例えば2μm以上3μm以下である。
第一の導電性樹脂は、バインダ樹脂に導電材料が分散されて構成されている。
バインダ樹脂は、例えば熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂からなる。熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂は、例えばアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などからなる。
第一の導電性樹脂の導電材料は、例えば金属粒子や、グラファイトやカーボンナノチューブなどの導電性のカーボンからなる。金属粒子の場合、例えば平均粒径は3μm以上10μm以下である。カーボンの場合、その形状は板状であり、最大長が5μm以上10μm以下である。
このような大きさの導電材料を使用した導電性樹脂は、層の厚みを稼ぎやすい。
第二の導電性樹脂4は、バインダ樹脂に導電材料が分散されて構成されている。
バインダ樹脂は、第一の導電性樹脂と同様に、例えば熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂からなる。
第二の導電性樹脂4の導電材料は、例えば導電性高分子からなる。導電性高分子としては、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールなどが例示できる。導電性高分子からなる導電材料は、形状が球若しくは球に近似した形状となっていて、その粒径は、例えば10nm以上200nm以下である。
ここで、第二の導電性樹脂4は、第一の導電性樹脂よりも電気抵抗値が高い方が好ましい。
第一の樹脂層3は、その本体が第一の導電性樹脂の層から形成され、その第一の導電性樹脂の層の表面3a(第二電極5側の面)の凹凸を埋めるようにして第二の導電性樹脂4が設けられている。第二の導電性樹脂4の積層によって、第一の樹脂層3の膜厚差が1μm以上6μm以下になっていることが好ましい。
第一の樹脂層3の平均膜厚は、例えば5μm以上30μm以下である。第一の樹脂層3の最大膜厚さは、例えば7μm以上15μm以下である。
また、第一の導電性樹脂だけからなる第一の樹脂層3の平均膜厚が25μmの場合、その第一の樹脂層3の膜厚差は、例えば15μm(最大27μm、最小12μm)となっている。
これに対し、第二の導電性樹脂4を第一の樹脂層3の表面3aに設けることで、第一の樹脂層3の膜厚差を1μm以上6μm以下にすることができる。そして、第一の樹脂層3の膜厚差を1μm以上6μm以下にすることで、第一の樹脂層3の表面の凹凸も小さくなる。第一の樹脂層3の表面の平均粗さは、好ましくは3μm以下、より好ましくは1μm以下である。
なお、第一の樹脂層3の膜厚のうち、例えば、第一の導電性樹脂による膜厚を5μm以上25μm以下とし、第二の導電性樹脂4による膜厚を0.5μm以上9μm以下とする。ただし、作製の手間等を考えると、第一の導電性樹脂による膜厚は、第二の導電性樹脂4よりも厚くすることが好ましい。例えば、第一の導電性樹脂による膜厚は、第二の導電性樹脂4の二倍以上とする。
基材1は、可撓性を有することが好ましく、例えばプラスチックフィルムや紙からなる。プラスチックフィルムの材料としてはPETやPEN、ポリイミドなどが例示できる。基材1は、印刷用のインキの乾燥条件やセンサとしての用途に合わせて適宜選択できる。
本実施形態の触覚センサの製造方法の一例について図4を参照しつつ説明する。
基材1上に印刷によって第一電極2を形成する。その後、印刷によって、少なくとも第一電極2を構成する各小電極21~23の上に個別に第一の導電性樹脂を有する塗布液を塗布して第一の樹脂層3を形成する(図4(a)参照)。
その形成した第一の樹脂層3の表面3a上に、印刷によって第二の導電性樹脂を有する塗布液を塗布して第二の導電性樹脂4を設ける(図4(b)参照)。このとき、第一の樹脂層3の膜厚差が1μm以上6μm以下になるように、第二の導電性樹脂を有する塗布液を一回以上印刷する。
その後に、第一の樹脂層3上に第二電極5を印刷によって形成する(図4(c)参照)。
ここで、第一電極2及び第二電極5の形成は、印刷によって行う。印刷方法に制限はなく、スクリーン印刷やオフセット印刷等公知の印刷手段を用いることが出来るが、小さな電極サイズでも印刷が可能という点で、グラビアオフセット印刷を用いることが望ましい。
印刷に用いるインキは、導電性があるものが求められる。数マイクロメートルから数十ナノメートルの貴金属粉末を熱硬化性樹脂に混合したペーストを用いるのが一般的であるが、カーボンやアルミなどでも構わないし、合金や混合物であってもよい。
第一の樹脂層3は、押圧またはせん断力によって弾性変形し、力が入力されている間はその状態を保持し、力がなくなると元の形状に戻る性質を持っていることが必要である。また、基材1の曲げに追従できる材料であることが望ましい。
各導電性樹脂は重ね塗りをしても構わないが、第一の導電性樹脂は一回の印刷で3μm以上、第二の導電性樹脂4は一回の印刷で0.5μm以上印刷されることが望ましい。
第一の樹脂層3はパターニング出来る方法での形成が望ましい。特に厚みをコントロールしやすいスクリーン印刷法が好適に用いられる。
また、図示しないが、紙面横方向で隣り合う第一の樹脂層3間の隙間に、絶縁性の隔壁(不図示)を設けても構わない。その場合、隙間は、第一の樹脂層3よりも柔らかい例えばシリコーン樹脂等で埋めればよい。
図4(a)に示すように、第一の樹脂層3を印刷した状態では、材料に含まれる導電性粒子の大きさや形状の影響を受け第一の樹脂層3の表面3aに大きな凹凸がある。この状態で第二電極5を印刷しようとすると、凹凸のため印刷出来ないか、あるいは、凹凸部分に印刷のヌケやカケが生じる可能性がある。また印刷出来たとしても、第二電極5には大きな凹凸部分で常に応力集中が生じるため、繰り返しセンサ動作をすると容易に破損する可能性がある。
本実施形態では、図4(b)に示すように、第一の樹脂層3の表面3aの凹凸を第二の導電性樹脂4で埋めて第一の樹脂層3の表面の凹凸を小さくする。この結果、その上に印刷により形成される第二電極5のヌケやカケを生じることが防止できると共に、凹凸差による電極への応力集中をなくし、センサの破損を防ぐことが出来る。
次に、第二実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<構成>
本実施形態の触覚センサの基本構成は第一実施形態と同様である。
本実施形態の触覚センサは、図5に示すように、第一シート部100と第二シート部101とを備える。
第一シート部100は、図5及び図6(a)に示すように、第一の基材1Aと、第一の基材1A上に設けられた第一電極2と、少なくとも第一電極2の各小電極の上に個別に形成された第一の導電性樹脂からなる第一樹脂層3Aを有する。更に、第一樹脂層3Aの表面に、表面の凹凸を埋めるようにして第二の導電性樹脂4Aが設けられている。
そして、第一電極2の小電極と第二電極5の対応する小電極とがそれぞれ対向する位置で、第一シート部100の第一樹脂層3Aと第二シート部101の第二樹脂層3Bとが連結することで、第一シート部100と第二シート部101とが、第二の導電性樹脂4A,4Bを介して連結した構成となっている。
第二の導電性樹脂4A,4Bが含有する導電材料の平均粒径は、第一の導電性樹脂及び第三の導電性樹脂が含有する導電樹脂の導電材料の平均粒径よりも小さい。
ここで、第一の導電性樹脂、第二の導電性樹脂4A,4Bは、第一実施形態で説明した第一の導電性樹脂、第二の導電性樹脂4と同じ材料からなる。
第三の導電性樹脂は、第一の導電性樹脂と同じ構成とすればよいが、第一実施形態で説明した第一の導電性樹脂から外れない範囲で導電材料などを変えても良い。
本実施形態の触覚センサの製造方法の一例を説明する。
第一の基材1A上に印刷にて第一電極2を設けた後、少なくとも第一電極2の各小電極の上に個別に第一の導電性樹脂を有する塗布液を塗布して第一樹脂層3Aを形成して第一シート部100とする。その第一シート部100の第一樹脂層3A上に、第二の導電性樹脂を有する塗布液を塗布して第二の導電性樹脂4Aを設けて、表面の凹凸を小さくする。
また、第二の基材1B上に第二電極5を印刷にて設けた後、少なくとも第二電極5の各小電極の上に個別に第三の導電性樹脂を有する塗布液を塗布して第二樹脂層3Bを形成して第二シート部101を作製する。その後、第二シート部101の第二樹脂層3B上に、第二の導電性樹脂を有する塗布液を塗布して第二の導電性樹脂4Bを設けて、表面の凹凸を小さくする。
上記のようにして第一シート部100及び第二シート部101を作製したら、相対的に、第二の導電性樹脂を積層した第一シート部100の第一樹脂層3A上に、第二シート部101の第二樹脂層3Bを重ねるように積層する。
このとき、あらかじめ設けておいた位置合わせマーク(不図示)などを参考に重ね合わせの位置を調整しても構わない。図示しないが、重ね合わせる際に、第一の基材1Aの外周部と第二の基材1Bの外周部との少なくとも一部を、接着剤や両面テープ等で連結して固定すると良い。
その他の構成や製造方法は、上記第一実施形態と同様である。
第二の導電性樹脂を設けない場合には、図7に示すように、第一樹脂層3Aと第二樹脂層3Bの各凹凸部分がところどころはまり込んでいる。この状態でせん断(紙面横方向)力を掛けると、凹凸の根元付近に応力が集中しやすいため、根元部分から破損する恐れがある。樹脂層の凹凸が大きいほど、大きな力が掛かるため起こりやすい。
一方、本実施形態では、第二の導電性樹脂によって凹凸を埋められているため、はまり込みが少ないことと、凹凸部分の高さが少なくなっている。このため、第二の導電性樹脂を介装しない場合に比べて、凹凸部分に掛かる力が弱くなり、破損しづらくなる。
第一実施形態のように、一枚の基材1の上に第一電極2と第一の樹脂層3と第二電極55とを積層する場合でも、第二実施形態のように、個別の基材1に第一電極2及び第二電極5と樹脂層を積層したシート部同士を重ねる場合でも、樹脂層3,3A,3Bの上に第二の導電性樹脂4,4A,4Bを重ね塗りして凹凸を減らすことにより、電極の破損や樹脂層の破損を防ぐことが出来る。
すなわち、本発明に基づく実施形態によれば、導電性の樹脂層3,3A,3Bの表面に、粒子径の小さな導電材料からなる第二の導電性樹脂4,4A,4Bを設けることで、導電性の樹脂層3,3A,3Bの表面の凹凸を小さくすることができる。この結果、本実施形態によれば、樹脂層3,3A,3Bの表面の凹凸に起因する電極の欠陥や破損が抑制され、センサを小型化しても、歩留まりや使用時の耐久性を向上可能な触覚センサを提供することが可能となる。
また、樹脂層表面の凹凸が小さくなることは、部材間をより均一に接続することが可能となり、このことはまた、安定したセンサ精度の向上にも寄与する。
ここで、本実施形態の触覚センサで用いられる力測定の仕組みについて説明する。
図8は、接触圧力センシングモデルの概念図である。
接触圧力センサモデルは、上下の電極200,201が導電樹脂層202を介して対向配置されて構成される。上下の電極200,201は信号入出力のリード(不図示)を介して電源(不図示)などに接続している。
接触圧力センサモデルでは、指を電極200に接触して、電極200を電極201側に向けて押圧力F1で押すと(図8(a)参照)、押圧力F1に応じた分だけ導電樹脂層202が圧縮方向に変形して、対向する電極200,201間の距離が縮まる。導電樹脂層202が圧縮方向に変形すると、その圧縮量に応じた分だけ、導電樹脂層202の電気抵抗値が低下し、そのときに発生する電極間の電位や抵抗値の変化を、接触圧力分に相当する信号値として検出することができる。
せん断応力センシングモデルは、接触圧力センサモデルと同様に、上下の電極200,201が導電樹脂層202を介して対向配置されて構成される。上下の電極200,201は信号入出力のリード(不図示)を介して電源(不図示)等に接続している。
せん断応力センシングモデルでは、指を電極200に接触して、電極200を紙面左に向かって横方向に押してせん断応力F2を与えると(図9(a)参照)、せん断応力F2に応じた分だけ導電樹脂層202が紙面左側に向けてせん断変形して、電極200に対し電極201が紙面左側に相対変位する。すると、一対の電極200,201間に位置する樹脂層部分202Aが縦断面平行四辺形に弾性変形し、一対の電極200,201間の距離が増加して、せん断応力F2に応じた分だけ一対の電極200,201間の電気抵抗値が増加する。そして、電極間の電気抵抗値の変化や電極間に流れる電流量の変化が、せん断応力値に相当する信号値として検出することができる。ここで、電流は、導電樹脂層202中の抵抗が低く且つ最短のルートで流れようとするため、平面視における上下の電極200,201の重なり量の変化を、せん断応力F2に応じた抵抗値の変化量と近似させることも可能である。
また、小電極22と小電極52の組は、図3の紙面において横方向(左右方向)のせん断応力センシング用の電極である。図3から分かるように、小電極22に対し小電極52が縦方向に相対変位しても対向面積が変化しないが、小電極22に対し小電極52が横方向に相対変位すると対向面積が一方への移動では増加し他方への移動では減少するように設計されている。この結果、小電極22と小電極52の間の抵抗値変化は、横方向のせん断応力分の信号値となる。
ここで、押圧力と縦方向のせん断応力が一緒に荷重された場合、小電極23と小電極53の間の抵抗値変化には、押圧力分の変化分が含まれている。この押圧力分の変化分は、小電極21と小電極51間の抵抗値変化から換算できるので、その換算分を小電極23と小電極53の間の抵抗値変化から減算することで、横方向のせん断応力分の信号値を精度良く求めることが出来る。ここで、荷重無負荷の状態における、小電極21と小電極51間の対向面積と、小電極23と小電極53間の対向面積を等しくしておけば、両者の押圧力による抵抗値変化を等しいとみなせるので、抵抗値変化の換算を行う必要はない。
以上のように、本実施形態の接触センサでは、負荷された押圧力とせん断応力を同時に検出することが可能な構成となっている。
<実施例1>
基材1として125μmのポリイミドフィルム(東レ(株)製:カプトン500V)を準備した。その基材1の上に、図2に示すパターンで、第一電極2をグラビアオフセット印刷で作製した。このとき第一電極2の全体(ほぼ基材1の大きさと同等)は、7.5mm×7.5mmであり、リードの配線部分は幅30μmで形成した。また、電極の厚みは3μmとした。
次に第一樹脂層3Aの上にナガセケムテックス(株)製の導電性高分子SP-801をスクリーン印刷により塗布して積層した。このとき第一の樹脂層3の表面の凹凸は最大2μmであった。ナガセケムテックス(株)製の導電性高分子SP-801は、第二の導電性樹脂である。
この触覚センサをテスターにつなぎ、第一電極2と第二電極5間に5Vの直流電圧を掛けた状態で第一電極側から指で押したり、なでたりすると流れる電流値の変化がみられたことにより、センサとしての動作を確認した。
また、センサを半径2mmの棒に巻きつけながら10回しごきを入れても、電極の断線は無いことを確認した。
第一の基材1Aとして125μmのポリイミドフィルム(東レ(株)製:カプトン500V)を準備した。その第一の基材1Aの上に、図2に示すパターンで、第一電極2をグラビアオフセット印刷で作製した。このとき電極の全体は7.5mm×7.5mmであり、配線部分は幅30μmで形成した。また、電極の厚みは3μmとした。
次いで、第一電極2の小電極上に十条ケミカル(株)製の導電性カーボンペーストCH-Nをスクリーン印刷により塗布して硬化させ第一樹脂層3Aとした。このときの厚みは10μmであり、凹凸差は5μmだった。
第二の基材1Bとして125μmのポリイミドフィルム(東レ(株)製:カプトン500V)を準備した。その基材1の上に、図3に示すパターンで、第二電極5をグラビアオフセット印刷で作製した。このとき第二電極5の全体は7.5mm×7.5mmであり、配線部分は幅30μmで形成した。また、電極の厚みは3μmとした。
次に第二樹脂層3Bの上にナガセケムテックス(株)製の導電性高分子SP-801をスクリーン印刷により塗布して第二シート部101を作製した。このとき第二樹脂層3Bの凹凸は2μmであった。
第一シート部100と第二シート部101とを、互いに樹脂層側が接するように対向させて貼り合せて実施例2の触覚センサとした。
また、図10に示すように、触覚センサの上下の基材1を掴み、下側の基材1を固定して、上側の基材1を横方向に1Nで引いた後に力を抜くという操作を100回行っても、樹脂層の破損が無く、正常にセンサ動作することを確認した。
基材1として125μmのポリイミドフィルム(東レ(株)製:カプトン500V)を準備した。その基材1の上に、図2に示すパターンで、第一電極2をグラビアオフセット印刷で作製した。このとき電極の全体は7.5mm×7.5mmであり、配線部分は幅30μmで形成した。また、電極の厚みは3μmとした。
次いで、第一電極2の小電極上に十条ケミカル(株)製の導電性カーボンペーストCH-Nをスクリーン印刷により塗布して硬化させ第一の樹脂層3とした。このときの厚みは15μmだった。また、第一の樹脂層3の凹凸は6μmだった。
次いで、第二電極5を第一の樹脂層3の上からグラビアオフセット印刷にて印刷したところ、第一の樹脂層3の凹凸が4μm以上ある部分で断線し、センサが作製できなかった。
更にこの基材1を半径2mmの棒に巻きつけながら10回しごきを入れたところ、しごき前には確認されなかった電極に断線があった。
第一の基材1Aとして125μmのポリイミドフィルム(東レ(株)製:カプトン500V)を準備した。その第一の基材1Aの上に、図2に示すパターンで、第一電極をグラビアオフセット印刷で作製した。このとき電極の全体は7.5mm×7.5mmであり、配線部分は幅30μmで形成した。また、電極の厚みは3μmとした。
次いで、第一電極2の小電極上に十条ケミカル(株)製の導電性カーボンペーストCH-Nをスクリーン印刷により塗布して硬化させ第一樹脂層3Aとして、第一シート部100を作製した。このときの厚みは10μmであり、凹凸差は5μmだった。
次いで、第二電極5の小電極上に十条ケミカル(株)製のカーボンインキCH-Nをスクリーン印刷により塗布して硬化させ第二樹脂層3Bとして、第二シート部101を作製した。このときの厚みは15μmとした。また、樹脂層表面の凹凸は6μmだった。
この触覚センサをテスターにつなぎ、第一電極2と第二電極5間に5Vの直流電圧を掛けた状態で第一電極側から指で押したり、なでたりすると流れる電流値の変化がみられたことにより、センサとしての動作を確認した。
しかし、実施例2と同様に、下側の基材1を固定し、上側の基材1を横方向に1Nで引いた後に力を抜くという操作を10回行ったところ、樹脂層が破損しセンサ動作しなくなった。
第一の基材1Aとして125μmのポリイミドフィルム(東レ(株)製:カプトン500V)を準備した。その第一の基材1Aの上に、図2に示す第一電極2をグラビアオフセット印刷で作製した。このとき電極の全体は7.5mm×7.5mmであり、配線部分は幅30μmで形成した。また、電極の厚みは3μmとした。
次いで、第一電極2の小電極上に第一樹脂層3Aとして、ナガセケムテックス(株)製の導電性高分子SP-801を一回スクリーン印刷して硬化させた。このときの第一樹脂層3Aの厚みが0.5μmであり、第一電極2を完全に覆えていなかった。第一樹脂層3Aの厚みが3μmを超えるまで、第一樹脂層3A形成の印刷が6回必要であった。その後センサとしての特性を得るために更に第一樹脂層3Aの厚みが15μmになるまで繰り返しスクリーン印刷を行って、第一シート部100を作製した。第一樹脂層3Aの印刷回数は計30回であった。このときの第一の樹脂層3表面の凹凸は1μmであった。
次いで、第二電極5の小電極上に第二樹脂層3Bとしてナガセケムテックス(株)製の導電性高分子SP-801を一回スクリーン印刷して硬化させた。このときの第二樹脂層3Bの厚みが0.5μmであり、第一電極2を完全に覆えていなかった。第二樹脂層3Bの厚みが3μmを超えるまで、第二樹脂層3Bの印刷が6回必要であった。その後センサとしての特性を得るために更に第二樹脂層3Bの厚みが15μmになるまで繰り返しスクリーン印刷を行って第二シート部101を作製した。第二樹脂層3Bの印刷回数は計30回であった。
このセンサをテスターにつなぎ、第一電極2と第二電極5間に5Vの直流電圧をかけた状態で第一電極側から指で押したり、なでたりすると流れる電流値の変化がみられたことにより、センサとしての動作を確認した。
また、図10に示すように、下側の基材1を固定して上側の基材1を横方向に1Nで引いた後に力を抜くという操作を100回行っても、樹脂層の破損が無く、センサ動作することを確認した。
すなわち、比較例3に比べ、実施例2の方が、センサ作製に必要な工程を削減することも出来るという効果を有する。
1A 第一の基材
1B 第二の基材
2 第一電極
3 第一の樹脂層
3a 表面
3A 第一樹脂層
3B 第二樹脂層
4 第二の導電性樹脂
5 第二電極
6、7 リード
21~23 小電極
51~53 小電極
100 第一シート部
101 第二シート部
Claims (11)
- 基材と、上記基材上に設けられた第一電極と、少なくとも上記第一電極の上に形成された第一の導電性樹脂からなる第一の樹脂層と、上記第一電極と対向させて上記第一の樹脂層の上に設けられる第二電極と、を備え、
上記第一の導電性樹脂は、樹脂に導電材料が分散され、
上記第一の樹脂層は、上記第二電極が形成される面に第二の導電性樹脂が設けられ、
上記第二の導電性樹脂は、樹脂に導電材料が分散され、
上記第二の導電性樹脂が含有する導電材料の平均粒径は、上記第一の導電性樹脂が含有する導電材料の平均粒径よりも小さいことを特徴とする触覚センサ。 - 上記第二の導電性樹脂が含有する導電材料の最大粒径は、上記第一の導電性樹脂が含有する導電材料の最大粒径の1/10以下であることを特徴とする請求項1に記載した触覚センサ。
- 上記第二の導電性樹脂が含有する導電材料は、導電性高分子からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した触覚センサ。
- 上記第二の導電性樹脂が設けられた状態での上記第一の樹脂層の膜厚差の最大値は、1μm以上6μm以下となっていることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した触覚センサ。
- 第一の基材と、上記第一の基材上に設けられた第一電極と、少なくとも上記第一電極の上に形成された第一の導電性樹脂からなる第一樹脂層とを有する第一シート部と、
第二の基材と、上記第二の基材上に設けられた第二電極と、少なくとも上記第二電極の上に形成された第三の導電性樹脂からなる第二樹脂層とを有する第二シート部と、を有し、
平面視で上記第一電極と上記第二電極とが重なる位置で、上記第一シート部の第一樹脂層と上記第二シート部の第二樹脂層とが、第二の導電性樹脂を介して積層され、
上記第一の導電性樹脂、上記第二の導電性樹脂、及び上記第三の導電性樹脂は、樹脂に導電材料が分散され、
上記第二の導電性樹脂が含有する導電材料の平均粒径は、上記第一の導電性樹脂及び上記第三の導電性樹脂が含有する導電樹脂の導電材料の平均粒径よりも小さいことを特徴とする触覚センサ。 - 上記第二の導電性樹脂が含有する導電材料の最大粒径は、上記第一の導電性樹脂及び上記第三の導電性樹脂が含有する導電材料の最大粒径の1/10以下であることを特徴とする請求項5に記載した触覚センサ。
- 上記第二の導電性樹脂が含有する導電材料は、導電性高分子からなることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載した触覚センサ。
- 請求項1~請求項4のいずれか1項に記載した触覚センサの製造方法であって、
基材上に第一電極を設けた状態で、少なくとも上記第一電極の上に上記第一の導電性樹脂を有する塗布液を塗布して上記第一の樹脂層を形成し、
上記第一の樹脂層上に上記第二の導電性樹脂を有する塗布液を塗布して上記第二の導電性樹脂を設け、
上記第二の導電性樹脂を設けた上記第一の樹脂層上に、第二電極を印刷によって形成することを特徴とする触覚センサの製造方法。 - 上記第二の導電性樹脂を設けた上記第一の樹脂層の膜厚差の最大値が1μm以上6μm以下となるように、上記第二の導電性樹脂を有する塗布液を塗布することを特徴とする請求項8に記載した触覚センサの製造方法。
- 請求項5~請求項7のいずれか1項に記載した触覚センサの製造方法であって、
第一の基材上に第一電極を設けた状態で、少なくとも上記第一電極の上に上記第一の導電性樹脂を有する塗布液を塗布して上記第一樹脂層を形成して第一シート部とし、
上記第一シート部の上記第一樹脂層上に上記第二の導電性樹脂を有する塗布液を塗布して、上記第一樹脂層に上記第二の導電性樹脂を設け、
上記第二の基材上に上記第二電極を設けた状態で、少なくとも上記第二電極の上に上記第三の導電性樹脂を有する塗布液を塗布して上記第二樹脂層を形成して上記第二シート部を作製し、
上記第二シート部の上記第二樹脂層上に上記第二の導電性樹脂を有する塗布液を塗布して、上記第二樹脂層に上記第二の導電性樹脂を設け、
その後、相対的に、上記第一シート部の上記第一の樹脂層上に、上記第二シート部の上記第二樹脂層が積層するように上記第二シート部を重ねることを特徴とする触覚センサの製造方法。 - 上記第二の導電性樹脂を設けた上記第一樹脂層の膜厚差の最大値が、1μm以上6μm以下となるように、上記第二の導電性樹脂を有する塗布液を塗布し、
上記第二の導電性樹脂を設けた上記第二樹脂層の膜厚差の最大値が、1μm以上6μm以下となるように、上記第二の導電性樹脂を有する塗布液を塗布することを特徴とする請求項10に記載した触覚センサの製造方法。
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