<実施例1>
図1は、本発明の実施例のシステム構成例を示す図である。
本実施例のシステムは、移動体制御情報伝送装置11と、非制御情報伝送装置12と、無線システム制御装置(上位装置)13と、無線電波を送受信する1または複数のアンテナ16を有する複数の固定無線局15とがバックボーンネットワーク14によって相互接続される固定無線局側のネットワークによって構成される。バックボーンネットワーク14は、有線ネットワークでも無線ネットワークでもよいが、バックボーンネットワーク14を無線ネットワークで構成する場合、固定無線局15と移動無線局24との間の無線伝送を妨げないように、異なる周波数のシステムとすることが望ましい。
また、本実施例の無線通信システムを無線式列車制御へ適用する場合、例えば、後述する移動体21が列車であり、固定無線局15は列車が進行する経路に沿って設けられた無線基地局であり、移動無線局24は列車に取り付けられた車上無線局とみなしてもよい。また、移動体制御情報伝送装置11は、列車の制御情報を生成する地上側制御システムの一部であって、例えば、列車の制御情報の一つとして停止限界点情報を生成又は更に上位の演算装置から取得し、無線システム制御装置13を介して固定無線局15へ伝送する機能や、固定無線局15を介して、後述する車上側制御システムから送信された位置情報を受信する装置とみなしてもよい。なお、地上側制御システムの構成は任意に決めることができ、例えば移動体制御情報伝送装置11、非制御情報伝送装置12および無線システム制御装置13を一体の装置として構成し、これに対してバックボーンネットワーク14を介して複数の固定無線局15が接続される態様としてもよい。
固定無線局側のネットワークには、無線通信を介して1又は複数の移動体21が接続される。移動体21は、移動体制御情報伝送装置11と無線より上位のレイヤで双方向通信を行う移動体側の移動体制御情報伝送装置22と、非制御情報伝送装置12と無線より上位のレイヤで双方向通信を行う移動体側の非制御情報伝送装置23と、無線電波を送受信する1又は複数のアンテナ25を有する移動無線局24とで構成される。また、本実施例の無線通信システムを無線式列車制御へ適用する場合、移動体制御情報伝送装置22は、例えば車上側制御システムの一部とみなしてもよい。移動体制御情報伝送装置22は、例えば、地上子との通信手段、又は無線を利用した測距手段と接続され、これらによって取得された位置情報を、移動無線局24を介して固定無線局15へ送信する機能や、地上側制御システムから受信した停止限界点情報を車両側の上位制御装置へ渡す装置とみなしてもよい。なお車上側制御システムの構成は任意に決めることができ、例えば移動体制御情報伝送装置22、非制御情報伝送装置23及び移動無線局24を一体の装置として構成してもよい。また、このような車上側制御システム及び前述する地上側制御システムによって構成されるシステムを列車制御システムとみなしてもよい。
図2は、本実施例の移動無線局24と複数の固定無線局15-nとの間の移動体制御情報の伝送方法の例を示す図である。
移動無線局24と複数の固定無線局15-1、15-2、15-3との間には、移動体制御情報を双方向通信するための無線通信チャネル31-1、31-2、31-3が、それぞれ割り当てられる。
各固定無線局15-nは、複数の移動無線局24による多元接続に対応するため、無線通信チャネルを分割した無線通信リソースを必要に応じて各移動無線局へ割り当てる。図2(B)に示す例では、時分割したタイムスロットが無線通信リソースとして定義されている。
無線通信チャネルの分割方法は、時分割の代わりに周波数分割を採用しても、本発明の効果を奏することができる。時分割をベースとして時分割リソースごとに周波数ホッピングを行ってもよい。
また、移動無線局24との間で無線通信チャネル31が割り当てられた固定無線局15の数は、図示した3に限定されない。本発明の効果を得る必要条件は、最低2台の固定無線局15が当該移動無線局24との間で無線通信チャネル31が割り当てられることによって、1台の固定無線局15との通信がハンドオーバのために中断しても、他の固定無線局15と通信を継続できることである。
ある一つの移動無線局24に対して、複数の固定無線局15の無線通信リソースを割り当てる際、システム外からの干渉の影響に関するダイバーシチ効果を得るため、複数の固定無線局15間で異なる時間又は周波数の無線通信リソースを割り当てる。
図2(B)に示す無線リソースの割り当て例では、固定無線局15間で異なるタイムスロットを一つの移動無線局24に対して割り当てている。例えば、全ての固定無線局15が同一の時間及び周波数の無線通信リソースを当該移動無線局24に割り当てると、割り当てられた無線通信リソースにおいてシステム外からの干渉が発生すると、全ての固定無線局15との通信が同時に干渉の影響を受けるため、ダイバーシチ効果の観点で望ましくない。
移動無線局24と固定無線局15との間の双方向通信のために、移動無線局24から固定無線局15の方向に伝送するアップリンク(Uplink;UL)の無線通信リソース32と、逆方向のダウンリンク(Downlink;DL)の無線通信リソース33とを、少なくとも1個ずつ、移動体制御情報の伝送に要求される通信周期(例えば、100ミリ秒周期)の間に一つの移動無線局24に割り当てる。
移動無線局24は、各固定無線局15が送信するプリアンブルの受信タイミングと受信電力を推定し、割り当てられた複数の固定無線局15の移動体制御用スロットで送信される無線信号の受信タイミングが一部でも重なる場合、タイミングが重なった複数の固定無線局15の受信強度(ここでは受信電力)に基づいて、一つの固定無線局15を選択する。つまり、時分割で処理可能な1又は複数の固定無線局15が選択される。そして、移動無線局24は、選択された1又は複数の固定無線局15との間に割り当てられた移動体制御用スロットを用いて移動体制御情報を送信する。なお、受信強度としては、受信電力以外に電界強度などを用いてもよい。
図3は、本実施例の移動無線局24と複数の固定無線局15との間で移動体制御情報を伝送する際のハンドオーバの例を示す図である。
図3では、図2と比較して、移動体21が右側に移動しており、移動無線局24が固定無線局15-1の通信エリアから外れるため、移動無線局24と固定無線局15-1の双方向通信用に割り当てられていた無線通信リソース35を解放し、移動無線局24と固定無線局15-4との間の通信用に無線通信リソース32-4及び33-4を割り当てるハンドオーバ処理を行う。
固定無線局15-2及び15-3については、ハンドオーバ処理の前後において引き続き同じ無線通信リソースを継続して使用する。このハンドオーバ処理で解放された無線通信リソース35は、他の移動体に対して割り当て可能となる。
図4は、本実施例の移動無線局24のハンドオーバ処理に関する動作シーケンスの一例を示す図であり、1台の移動無線局(Mobile Radio Station)24と、4台の固定無線局(Fixed Radio Station)15-1~15-4と、1台の無線システム制御装置(Radio Control Unit)13との間のシーケンスを示す。
図4では、当初、移動無線局24は、3台の当初固定無線局15-1~15-3と移動体制御情報を双方向で伝送しており、ハンドオーバを契機に固定無線局15-1との双方向伝送を停止し、固定無線局15-4との双方向伝送を開始する。無線システム制御装置13は、この一連の固定無線局15の切り替えを制御している。
無線システム制御装置13は、内部処理41-1にて当該移動無線局24に関する移動体制御情報の双方向伝送に用いる無線チャネルとして、3台の固定無線局15-1~15-3のタイムスロットを固定無線局15の間で重複しないように割り当て、割り当て結果を含むチャネル割り当て情報を生成する。また、内部処理41-1では、移動無線局24においてハンドオーバを実行するか否かを判定するための条件を決定し、ハンドオーバ制御情報を生成する。さらに、内部処理41-1にて、チャネル割り当て情報とハンドオーバ制御情報とを含む無線リソース制御情報を各固定無線局15-1~15-3に伝送する(42-1)。
ハンドオーバ制御情報は様々な形式をとり得るが、ハンドオーバに関与する固定無線局15のいずれかの識別子と、当該固定無線局15から送信される無線信号の受信強度の閾値と、移動無線局24が通過するとハンドオーバの実行を開始するハンドオーバ開始位置と、複数の固定無線局15に関する受信強度閾値との複合条件、又は受信強度条件と位置条件との複合条件がある。ハンドオーバ制御情報の形式は図8を参照して後述する。
各固定無線局15-1~15-3は、受信した無線リソース制御情報に含まれるチャネル割り当て情報に基づいて、当該移動無線局24宛の無線信号を生成し、送信する処理を実行する。
このチャネル割り当て情報は、固定無線局15が不定期に無線システム制御装置13から受信する情報である。受信したチャネル割り当て情報が、固定無線局15が保持している当該移動無線局24に関するチャネル割り当て情報を更新するものである場合、生成した無線信号を移動無線局24に送信するタイムスロットや、移動無線局24から送信される無線信号を受信するタイムスロットを更新する。
このタイムスロットの更新は、更新後のチャネル割り当て情報を移動無線局24が受信した後から適用される。つまり、更新直後は更新前のチャネル割り当て情報に従って移動無線局24に無線信号を送信するが、チャネル割り当て情報の送信後から新しいチャネル割り当てを用いて当該移動無線局24との間で無線信号を送受信する。
内部処理43-1~43-3は、無線リソース制御情報と、移動体制御情報伝送装置11が当該移動無線局24宛に生成し、各固定無線局15に同報伝送する移動体制御情報(図示省略)とを多重化して、チャネル割り当て情報に基づいて指定されるタイムスロットにて送信する(44-1)。
移動無線局24は、内部処理45-1によって割り当てられたタイムスロットで受信した無線信号を復号し、多重化された移動体制御情報と無線リソース制御情報とを分離し、移動体制御情報を移動無線局24側の移動体制御情報伝送装置22に伝送する。そして、移動無線局24は、無線リソース制御情報を内部に保持し、内部処理45-1によるハンドオーバ制御情報が示すハンドオーバ条件を満たすか否かを判定する。
判定結果に関わらず、内部処理45-1では、移動無線局24側の移動体制御情報伝送装置22が生成する移動体制御情報と、判定結果を示すハンドオーバ判定情報とを多重化して、無線信号を生成し、受信した無線リソース制御情報に含まれるチャネル割り当て情報にて指示された上りのタイムスロットで、生成した無線信号を、各固定無線局15-1~15-3に個別に伝送する(46-1)。ハンドオーバ判定情報は、少なくとも、ハンドオーバ実行又は不実行の判定結果と、判定した移動無線局24を無線システム制御装置13が一意に識別できる識別子とを含む。
各固定無線局15は、移動無線局24から受信した無線信号を内部処理(47-1~47-3)で個別に復号し、移動体制御情報とハンドオーバ判定情報とを分離し、移動体制御情報を移動体制御情報伝送装置11へ転送する。そして、各固定無線局15は、ハンドオーバ判定情報がハンドオーバ実行を示すものであれば、ハンドオーバ判定情報に基づいて内部処理(47-1~47-3)にてハンドオーバ要求のメッセージを作成し、無線システム制御装置13へ伝送(48)する。無線システム制御装置13は、複数の同一内容のハンドオーバ要求メッセージを受信した場合、先着優先のポリシーにより遅れて到着した同一内容の通知は破棄してもよい。ハンドオーバ要求メッセージには、少なくともハンドオーバ対象の移動無線局24の識別子を含む。
移動無線局24が、ハンドオーバ制御情報を参照し、ハンドオーバを実行すると判定するまでは、固定無線局15と移動無線局24との間で、移動体制御情報及び無線リソース制御情報並びにハンドオーバ判定情報を周期的に送受信する双方向伝送を繰り返す。繰り返しの際、移動体制御情報及び無線リソース制御情報並びにハンドオーバ判定情報は、無線信号を送信する毎に最新情報を伝送する。最新情報が前回送信時と変化無ければ、前回と同一の情報を送信する。
無線システム制御装置13は、ハンドオーバ要求を受信すると、内部処理41-2にて当該移動無線局24に関する移動体制御情報の双方向伝送に用いる無線チャネルを更新する。図4に示す例では、固定無線局15-1のタイムスロットを除外し、固定無線局15-4のタイムスロットを固定無線局15-1~15-3のタイムスロットと重複しないよう追加するように、チャネル割り当て情報を更新する。更新されたチャネル割り当て情報は、固定無線局15-1から15-4に伝送される(42-2)。
固定無線局15の内部処理43-4~43-7は、固定無線局15の内部処理43-1~43-3と同様の動作をする。すなわち、移動体制御情報と無線リソース制御情報とを多重化し、無線信号として移動無線局24へ送信する(44-2)。無線リソース制御情報は、当該移動無線局24との間でタイムスロットが割り当てられている全ての固定無線局15から伝送しても、一部の固定無線局15(例えば、アンカー固定無線局)から伝送してもよい。
固定無線局15-4の内部処理43-7は、この段階で当該移動無線局24から初めて無線リソース制御情報を受信する。既に述べた通り、受信した無線リソース制御情報に含まれるチャネル割り当て情報に基づいた無線信号の送信は、当該チャネル割り当て情報の更新を移動無線局24に送信した後で開始するのが原則である。この更新が移動無線局24に通知されるまでは、移動無線局24は固定無線局15-4から下りの無線信号が届くことを知らないため、固定無線局15-4は当該移動無線局24に無線信号を送信しない。
また、チャネル割り当て情報の更新が通知されるまでは、移動無線局24は固定無線局15-1が送信する無線信号を待ち受けているため、固定無線局15-1からも移動体制御情報と無線リソース制御情報を送信される。固定無線局15-1は、更新された無線リソース制御情報を送信後、当該移動無線局24に関する通信リソースを解放する。
更新された無線リソース制御情報は、移動無線局24の内部処理45-2にて復号及び解析され、ハンドオーバ実行判定条件の更新、固定無線局毎の割り当てスロットの更新を取得する。この割り当てスロットの更新の取得によって、移動無線局24は、固定無線局15-1のスロット割り当ての解放と、固定無線局15-4のスロットの割り当ての追加を知る。
移動無線局24の内部処理45-2は、内部処理45-1と同様の動作である。具体的には、更新されたハンドオーバ実行判定条件の判定処理と移動体制御情報とハンドオーバ判定情報を多重化し、更新されたチャネル割り当て情報に基づくタイムスロットで、固定無線局15-2~15-4に対して多重化した情報を伝送する。
更新されたチャネル割り当て情報から、固定無線局15-1に関連する情報が削除されていることから、スロットが割り当てられていた固定無線局15-1に対する無線信号送信を停止する。また、更新されたチャネル割り当て情報に固定無線局15-4が追加されていることから、この追加の検出をトリガに、固定無線局15-4に対する無線信号送信を開始する。
移動無線局24から送信された無線信号は、更新された無線リソース制御情報に従って、各固定無線局15の内部処理(47-4~47-6)が復号し、移動体制御情報及びハンドオーバ判定情報を取得する。
以上の手順によって、固定無線局15-1~15-3と双方向通信していた移動無線局24が、固定無線局15-2~15-4と双方向通信するようになり、ハンドオーバ処理が完了する。
前述した例では、ハンドオーバ処理によって、1台の固定無線局15-1とのチャネル割り当て情報が削除され、1台の固定無線局15-4とのチャネル割り当て情報が追加されるが、チャネル割り当て情報が削除及び追加される固定無線局15の数は複数でもよい。本発明の効果を得るために、ハンドオーバ中も、少なくとも1台の固定無線局15とのチャネル割り当て情報が維持され、当該固定無線局15との間で移動体制御情報を双方向通信できる。
図5は、本実施例のタイムスロット構成とタイムスロット割り当て管理の例を示す図である。
図5には、各固定無線局15に割り当てられた無線通信リソースを時分割した様子を図示しており、最も大きな分割単位はフレーム51である。
フレーム51は、無線通信制御に関して固定無線局15と通信している全ての移動無線局24が共有すべき情報を報知するタイムスロットや、システムに初めて接続する移動無線局24が接続要求及び応答を送受信するためのタイムスロットが配置されるアクセス制御スロット群52と、移動体制御情報と無線リソース制御情報又はハンドオーバ判定情報を多重化したものを双方向通信するための移動体制御スロット群53と、情報伝送スロット群54は、固定無線局15と移動無線局24との間でその他の情報を伝送するための情報伝送スロット群54とで構成される。
各スロット群は、複数の同一サイズのスロット55から構成される。各スロット群がいくつのスロット55で構成されるか、各フレーム51がいくつのスロット55で構成されるかはシステム設計に依存し、システム要件次第では情報伝送スロット群54が不要となることもある。このため、フレーム51内がどのようなスロット構成となっているか通知するインターフェースを報知用のタイムスロットに定義することによって、適用先のシステム要件に応じた柔軟なスロット構成を提供することが可能となる。
アクセス制御スロット群52は、固定的なスロット割り当てでフレーム51の先頭に配置する。固定無線局15固有の情報伝送チャネル割り当て情報や、移動無線局24がシステム接続を行う際に必要な情報を配信する必要から、固定無線局15自身がアクセス制御スロット群52を管理する。
移動体制御スロット群53は、移動無線局24のシステム接続及び切断、並びにハンドオーバなどのイベントを契機に、当該イベントに関与する移動無線局24に関するスロットを割り当て、割り当てを変更する準静的な割り当てを実施する。この割り当ては複数の固定無線局15に跨るため、それらを統括する無線システム制御装置13が移動無線局24に対してスロット割り当てを実施する。
情報伝送スロット群54は、固定無線局15側の非制御情報伝送装置12と、移動無線局24側の非制御情報伝送装置23との間の情報伝送に用いる無線通信リソースであり、高い信頼性が求められる移動体制御情報とは異なり、システムとしての通信容量が重視される。従って、移動無線局24は一つの固定無線局15と情報伝送スロット群54を用いて双方向伝送を行うので、固定無線局15が、同スロット群の移動無線局24への割り当てる。この割り当て結果は、アクセス制御スロット群52の中の報知情報として移動無線局24に通知される。
移動無線局24は、アクセス制御スロット群52と情報伝送スロット群54とを用いて一つの固定無線局15と通信し、移動体制御スロット群53を用いて複数の固定無線局15と通信する。前者の一つの固定無線局15は、後者の固定無線局15のグループの一部という関係である。この一つの固定無線局15を、移動無線局24のアンカー固定無線局と定義する。移動無線局24は、アンカー固定無線局との無線通信をベースとし、移動体制御スロットに関しては他の固定無線局15とも補助的に通信する。
フレーム内スロットの用途情報56は、フレーム内各スロットの用途を示すインジケータである。無線システム制御装置13は、スロットの用途を決め、各固定無線局15は、アクセス制御スロット群52内の報知用スロットを用いて決定内容の移動無線局24へ報知する。用途は、システム起動時に無線システム制御装置13がデフォルト値を初期化するが、システム運用者向けのユーザインターフェースを持つ保守端末等の外部装置から、運用中に必要に応じて設定変更可能としてもよい。また、固定無線局15や無線システム制御装置13が、システムの状態に応じて変更可能としてもよい。
フレーム内スロットの用途情報56は、Aがシステムに初期エントリする移動無線局24が接続要求や応答を伝送する初期接続用スロット、Bが当該固定無線局15をアンカーとする移動無線局24に対する報知情報を伝送するための報知用スロット、Cが移動体制御情報や無線リソース制御情報及びハンドオーバ判定情報を伝送する制御用スロット、Dが固定無線局側と移動無線局側の非制御情報伝送装置間の情報を伝送するデータ用スロットである。DLは固定無線局15から移動無線局24方向の下り伝送、ULは逆方向の上り伝送を示す。
図6は、本実施例のフレーム内スロット用途情報の例を示す。
フレーム内スロット用途情報は、アクセス制御スロット群52中の報知用スロットで、固定無線局15から、当該固定無線局をアンカー固定無線局とする全ての移動無線局24に報知される。フレーム内の各スロットについて、通信方向と用途を、図示する通り3ビットの情報にエンコードする。
図6に示す例では、図5に示すスロット構成例に基づいてフレーム内スロット用途情報を生成しているため、全部で14スロット分の情報が含まれているが、フレーム内スロット数が図5に示す例と異なる場合、実際のフレーム内スロット数に合わせてフレーム内スロット用途情報を生成する。
移動無線局24は、あるフレームの報知用スロットを受信してフレーム内スロット用途情報を取得しても、当該フレームに対してスロットの用途を即時には反映できないため、フレーム内スロット用途情報を受信したフレームの次のフレームから適用する。
図7は、本実施例の移動無線局24の初期接続のシーケンス例を示す図である。
固定無線局15-1~15-3は、少なくとも報知用スロットを無線信号として毎フレームで送信する。移動無線局24は、1又は複数の固定無線局15の報知用スロットを受信して、受信強度が最も大きい固定無線局15を選択し、当該固定無線局15とフレームやスロットのタイミングを同期するアンカー固定無線局サーチ処理を実行する。
アンカー固定無線局の候補を決定すると、移動無線局24は当該固定無線局の報知用スロットを参照して上りの初期接続用スロットの番号を特定し、当該スロットのタイミングで初期接続要求をアンカー固定無線局へ送信する(63)。また、移動無線局24は、内部処理62で、アンカー固定無線局サーチ処理及び初期接続要求の送信処理を実行する。
なお、上りの初期接続用スロットがない場合、当該アンカー固定無線局が初期接続要求を受け付けないことを示すため、移動無線局24は上りの初期接続用スロットが提供されるまで初期接続要求の送信を待つ。また、上りの初期接続用スロットがフレーム内に複数ある場合は、移動無線局24がランダムに1個のスロットを選択する。
各固定無線局15は、内部処理64で、自身の上り初期接続用スロットのタイミングで無線信号の復号を試みる。各固定無線局15は、復号に成功した場合、無線リソース割り当て要求65を無線システム制御装置13へ送信し、復号に成功した無線信号が格納された上り初期接続用スロットの通信方向を下りに反転し、フレーム内スロット用途情報(図6)を更新する。この通信方向を反転させたスロットは、後に移動無線局24に対する接続要求の応答を送信するために使用する。
無線リソース割り当て要求65は、少なくとも接続要求を送信した移動無線局24の識別子と、無線リソース割り当て要求65を送信する固定無線局15の識別子とを含む。各識別子は、システム内で他の移動無線局24及び他の固定無線局15と重複しない一意な値とする。無線リソース割り当て要求65は、移動無線局24がGPS(Global Positioning System)等の測位手段で取得した位置情報を含んでもよい。これは、無線システム制御装置13が、移動無線局24が観測した固定無線局15からの無線信号の受信強度基準ではなく、移動無線局24の位置ベースで無線リソースを割り当てる際に使用する。
無線リソース割り当て要求65の内容のうち、移動無線局24の識別子(及び、必要に応じて移動無線局24の位置情報)は、移動無線局24から送信する初期接続要求63に含められる。
無線システム制御装置13は、無線リソース割り当て要求65を受信すると、内部処理66においてアンカー固定無線局及び移動体制御情報を伝送する補助的な固定無線局15のタイムスロットを当該移動無線局24に割り当てる。割り当てに成功した場合、リソース割り当て要求に対するポジティブ応答と、図4に示すハンドオーバ時と同様の無線リソース制御情報とをアンカー固定無線局に送信する(67)。割り当てるリソースが残っていないなどの理由で当該移動無線局に対するリソース割り当てに失敗した場合、リソース割り当て要求に対するネガティブ応答を要求送信元の固定無線局15に送信する(67)。
また、割り当てに成功した場合は、図4に示すハンドオーバ時と同様、当該移動無線局24に移動体制御用スロットを割り当てた全ての固定無線局15に、図4に示す無線リソース制御情報42と同様の無線リソース制御情報を送信する(68)。但し、アンカー固定無線局15に対しては応答(無線リソース制御情報)67で同じ情報を伝送済みのため、無線リソース制御情報68ではアンカー固定無線局以外の固定無線局15に対して送信する。
無線システム制御装置13からのリソース割り当て要求に対する応答67を受信すると、アンカー固定無線局は、内部処理69にて、当該応答を下り初期接続用スロットで移動局に向けて送信する(70)。ここで使用する下り初期接続用スロットは、当該移動無線局に関して初期接続要求を受信したスロットを用いる。応答70の送信後、当該下り初期接続用スロットの通信方向を上りに逆転させ、図6のフレーム内スロット用途情報を更新する。
移動無線局24は、応答70を受信し、内部処理71にて、自らの初期接続要求が成功したことを確認すると、応答70を含まれる無線リソース制御情報を参照し、移動体制御用に複数の固定無線局15に割り当てられたスロット番号とハンドオーバ制御情報を取得して一時的に格納し、図4のメッセージ44~47に相当する通常の通信オペレーションを開始する(72)。自らの初期接続要求が失敗だった場合は、再度、内部処理62によってアンカー固定無線局サーチ処理を実行する。
図8は、本実施例の無線リソース制御情報の例を示す図である。
無線リソース制御情報は、移動無線局24毎に無線システム制御装置13が管理するもので、図7に示す初期接続時に初めて無線システム制御装置13から移動無線局24に設定され、図4で示すハンドオーバの発生毎に更新される。
無線リソース制御情報は、固定無線局(Anchor FRS)15の識別子、1以上の補助固定無線局(Supplemental FRS)15の識別子及び各固定無線局15に関する制御用スロットの割り当て情報(101~109)と、次のハンドオーバ先の候補となる固定無線局の識別子(110)と、ハンドオーバ制御情報(111~116)とで構成される。
固定無線局15の識別子(101、104、107、110)は、システム内で各固定無線局15に一意に割り当てられる識別子である。スロット識別子(102、103、105、106、108、109)は、図5に示すフレーム内のスロット番号(#0~#13)を指す。図示した例では合計6個のスロット識別子をある移動無線局24に割り当てているが、本実施例では、無線システム制御装置13が、相互重複しないように、スロットを割り当てる。すなわち、無線システム制御装置13は、一つの移動無線局24に同じスロットが重複して割り当てられないように、また、一つの固定無線局15に同じスロットが重複して割り当てられないように、スロットの割り当てを管理している。
ハンドオーバ制御情報は、移動無線局24が受信電力や位置情報の観測結果から、ハンドオーバを開始する条件の一覧(112~116)と、各条件が実際に適用されるかを示すハンドオーバ条件(111)で構成される。受信電力に関する条件(112~115)は固定基地局単位で指定され、図示する通り受信電力がある値よりも大きくなった、又は小さくなったことをトリガにハンドオーバを開始する条件である。
位置情報は、示された位置の通過をトリガとしてハンドオーバを開始する条件である。位置情報は、人が内容を認識可能な意味のある文字列(図示した例では、当該路線の起点からの距離)で記載されているが、適切なエンコーディングを実施して、情報量を削減してもよい。なお、移動無線局24は、位置情報の取得はGPSなど測位手段から取得してもよい。
ハンドオーバ条件111は、各ハンドオーバ開始条件112~116を有効にするかを示すビットマップであり、ハンドオーバ開始条件112が最上位ビットに対応し、ハンドオーバ開始条件116が最下位ビットに対応し、当該開始条件を有効化する場合には1、無効化する場合には0を記録する。ビットマップ上の複数のビットを1とすることで、複合的なハンドオーバ判定条件を設定できる。
なお、図示した例では、2台の補助固定無線局15(識別子104、107)のチャネル割り当て情報105、106、108、109と、ハンドオーバの受信電力条件113、114を含むが、少なくとも1台の補助固定無線局15の識別子が記録されていれば本発明を実施でき、補助固定無線局15の識別子の数の上限はない。また、1台のハンドオーバ候補の固定無線局15の識別子110及び受信電力条件115が記録されているが、複数のハンドオーバ候補の固定無線局15の情報が記録されてもよい。
本実施例では、タイムスロットのみが各固定無線局に関して割り当てられているが、システムとして利用可能な周波数帯域が通信帯域より十分に大きい場合、周波数帯域を複数に分割して周波数チャネル、及び各分割チャネルの周波数チャネル番号を定義して、固定基地局毎に異なるスロット毎の周波数ホッピングを適用するとよい。広い帯域を用いて周波数ホッピングで通信することによって、固定無線局間のシステム内やシステム外からの干渉を緩和できる。
周波数ホッピングを適用する場合は、移動無線局24がハンドオーバ制御情報内の電力条件を満たしているか否かを判定するため、移動無線局24は周波数ホッピングする固定無線局15の送信信号の受信電力を測定する必要がある。つまり、移動無線局24は各固定無線局15の周波数ホッピングの規則を把握する必要がある。
周波数ホッピングの規則の一例としては、フレームの先頭スロットにて選択する周波数チャネル番号の初期値と、スロット当たりの周波数チャネル番号の増加量とを、固定無線局15毎に個別に設定する方法がある。周波数チャネル番号を初期値に戻すフレームを、全てのフレームとするか、特定フレーム(例えばフレーム番号0)のみとするかは、固定無線局15と移動無線局24との間で周波数ホッピング規則が共有されていれば自由に決定してよい。
無線リソース制御情報(図8)に定義された各固定無線局の識別子101,104,107,110のそれぞれに、この周波数ホッピング規則に関する情報を付加し、無線リソース制御情報に記録することによって、移動無線局24は各固定無線局15の周波数ホッピング規則を把握でき、周波数ホッピングする各固定無線局15からの無線信号を捕捉し、受信電力を測定できるようになる。
図9は、本実施例の固定無線局15の構成例を示す図である。
ネットワークインターフェース部201は、バックボーンネットワーク14を介して移動体制御情報伝送装置11、非制御情報伝送装置12及び無線システム制御装置13と固定無線局15との間の双方向通信を実現する。双方向通信では、例えばIPパケットを用いることができるが、固定無線局15と前述した各装置間との間で別に定義されたインターフェースに従う独自の通信プロトコルを用いてもよい。
移動体制御情報の下り伝送バッファ202は、当該固定無線局と無線通信を行う移動無線局単位で移動体制御情報を一時的に記憶する。伝送バッファ202は、移動体制御情報伝送装置11から移動無線局24へ移動体制御情報を送信するにあたり、無線への送信タイミングとなるまで移動体制御情報を保持するタイミング調整機能と、移動体制御情報伝送装置11から移動体制御情報が入力される頻度が無線での送信頻度より少ない場合に、同一の移動体制御情報を無線で再度送信するための情報の一時的な記憶機能を有する。
バッファ206は、チャネル割り当て情報とハンドオーバ制御情報とを含む無線リソース制御情報、フレーム内スロット用途情報、及び初期接続要求を発行した移動無線局24に対する応答メッセージを一時的に記憶する。
無線リソース制御情報と初期接続要求への応答は、移動無線局24毎に管理され、当該移動無線局24に割り当てられたスロットにて無線送信する。フレーム内スロット用途情報は、無線システム制御装置13が固定無線局15に固有の情報として生成して固定無線局15へ送信し、一部情報に関して固定無線局15で必要に応じて書き換えたものを移動無線局24へ報知する。
多重化処理部203は、下り伝送バッファ202に格納されている最新の移動体制御情報と、バッファ206に格納されている無線リソース制御情報を移動無線局24毎に多重化する。多重化は単純に2種類の情報のビット列を結合すればよい。例えば、移動体制御情報のビット列の後に、無線リソース制御情報のビット列を結合する。
初期接続応答の生成処理部207は、バッファ206に格納されている初期接続要求に対する応答メッセージを、該当する移動無線局24が受信可能な初期接続スロットで送信する処理と、送信後に当該初期接続スロットの通信方向をダウンリンクからアップリンクへ変更する処理を実行する。
スロット割り当て管理処理部208は、バッファ206に格納されているフレーム内スロット用途情報と、各移動無線局24に関する無線リソース制御情報内のチャネル割り当て情報とを参照し、報知用スロット、初期接続用スロット及び移動体制御用スロットの、フレーム内のスロット位置と、上り又は下りの通信方向と、通信相手の移動無線局24の情報とを管理している。なお、情報伝送スロット群は、固定無線局15内で動的に割り当てられる。情報伝送スロット群は、フレーム内のスロット位置と、スロット毎の上り又は下りの通信方向を動的割り当て処理部210が参照するために管理される。
伝送バッファ209は、移動無線局24毎に下りの非制御情報本体だけでなく、未送信パケット数又は未送信データ量(バイト数など)を管理し、動的割り当て処理210が参照できるように構成されている。
動的割り当て処理部210は、上り及び下りの情報伝送スロットの各々を移動無線局24に割り当てる。割り当ては、例えば移動無線局24毎の未送信パケット数などを参照して、フレーム毎に通信需要が高い移動無線局24にスロットを重点配分する。
下り通信に関しては、伝送バッファ209にて移動無線局24毎のパケット残量などを管理可能であるが、上り通信に関しては、通信需要に応じた割り当てを実施するために、移動無線局24が管理しているバッファの内容を固定無線局15が取得する必要がある。
これは、例えば、移動無線局24内の非制御情報に関する未送信パケット数や未送信データ量などの情報を上りバッファ情報を、移動無線局24が生成するハンドオーバ判定情報に付与することで解決可能である。なお、固定無線局15が上りバッファ情報を取得できなくても、全ての移動無線局24に、例えばラウンドロビンで上り情報伝送スロットを割り当てることによって、本発明を実現可能である。
動的割り当て処理部210は、動的割り当て結果及びスロット割り当て管理処理部208から取得したスロット割り当て管理情報に基づいて、フレーム内全スロットの割り当て情報をフレーム毎に、無線デジタル信号送信処理部204及び無線デジタル信号受信処理部211に設定する。これによって、無線デジタル信号送信処理部204及び無線デジタル信号受信処理部211が情報を送信するスロットと通信相手の移動無線局24を判断できる。
少なくとも、動的割り当て結果のうち上り通信に関しては、移動無線局24に送信タイミングを通知する必要があるため、フレーム内スロット用途情報と共に上り動的割り当て結果を多重化して報知用スロットに格納して、無線デジタル信号送信処理部204へ入力する。また、下り通信に関しては、同様に下り動的割り当て結果を多重化して報知用スロットに格納してもよいが、情報ビット系列に宛先の移動無線局24の識別子を付与することによって、移動無線局24側で全ての情報伝送用スロットをデコードして識別子を確認すれば、必要な情報を移動無線局24で取り出すことができる。この識別子を導入する代わりに、報知用スロットに下り動的割り当て結果を多重化してもよい。
図8の説明で述べたスロット毎の周波数ホッピングを適用する場合は、スロット毎に送受信すべき周波数チャネルをスロット割り当て管理処理部208から無線デジタル信号送信処理部204及び無線デジタル信号受信処理部211に設定する。周波数ホッピングの規則は固定無線局15毎に定められているため、動的割り当て処理部210に当該固定無線局15の周波数ホッピング規則を初期設定の段階で予め記録する。
無線デジタル信号送信処理部204は、多重化処理部203から入力される移動体制御情報とリソース制御情報とが多重化された信号、初期接続応答の生成処理部207から入力される初期接続要求に対応する応答メッセージ、スロット割り当て管理処理部208から入力されるフレーム内スロット用途情報、動的割り当て処理部210から入力される非制御情報を入力とし、送信すべき各スロットの無線信号を生成する。
無線デジタル信号送信処理部204の入力は、各種情報の本体であるスロット毎のビット系列であり、これに誤り検出のための符号(例えば、CRC:Check Redundancy Code)の付与、誤り訂正のための畳み込み符号化、誤り訂正能力向上やビット当たりの対雑音エネルギーを向上させるインターリーブ及びリピティション、並びにビット列を振幅や位相の情報に変換する変調などの処理を行い。無線デジタル信号送信処理部204の出力はベースバンドのデジタル信号である。
無線アナログ信号送受信処理部205は、無線デジタル信号送信処理部204から入力されたベースバンドデジタル信号に、デジタルアナログ変換、ベースバンドから高周波信号への変換、高周波信号の出力の増幅処理を行う。なお、アンテナ16の手前には送受信を切り替えるスイッチを設ける。
アンテナ16が受信した無線アナログ信号は、前述したスイッチによって受信信号処理側に流され、入力された微弱な信号の増幅、高周波信号からベースバンド信号への変換、アナログデジタル変換処理を実行し、無線デジタル信号受信処理部211へ出力する。
無線デジタル信号受信処理部211は、入力されるデジタル受信信号を用いて、無線伝搬路応答を推定し、推定された無線伝搬路応答を用いて無線伝搬路の影響を受けた受信信号の振幅位相を補償し、補償された受信信号の振幅位相に載せられた情報をビット列に戻す復調処理を行い、復調処理後のビット列に対して送信側のインターリーブの逆処理を行うデインターリーブ、リピティションによって送信側で繰り返されたビットを合成する。
ビットレベルで受信信号を合成した後、ビタビ復号法などの誤り訂正復号を行い、同出力に付与されているCRCを検査することでビット誤りの有無を判定する。無線デジタル信号受信処理部211は、少なくとも、CRCを除いた推定送信ビット系列と、誤りの有無を示すCRC検査結果を出力する。
無線デジタル信号受信処理部211は、前述したデータ信号に関する復号処理だけでなく、移動無線局24から受信する無線信号に対するタイミング同期を行う。無線信号として、データ信号の前に受信側で既知のプリアンブル信号を付与し、プリアンブル信号に対するスライディング相関演算結果に基づいて無線信号の受信タイミングを推定し、同タイミングからデータ信号先頭の時間位置を特定してデータ信号を抽出する。
伝送バッファ214は、上りの非制御情報を一時的に格納するバッファである。本実施例では、ネットワークインターフェース部201が、複数装置との間の入出力に共用されているため、複数装置との間の通信でのタイミング競合を避けるため、適切な送信タイミングまで情報を待たせる機能を有する。
初期接続要求処理部212は、初期接続用スロットにおいて、上り無線通信のCRC検査結果が受信成功を示すビット系列を検出した場合、検出されたビット系列に基づいて無線システム制御装置13に対して無線リソース割り当て要求を発行する。さらに、当該初期接続用スロットの通信方向を上りから下りに反転する。
情報分割処理部213は、上りの移動体制御スロットに含まれる移動体制御情報とハンドオーバ判定情報とを分離し、移動体制御情報を移動体制御情報伝送装置11へ伝送し、ハンドオーバ判定情報を無線システム制御装置13へ伝送する。
なお、ハンドオーバ判定情報に上り非制御情報の未送信データ量などのバッファ情報が含まれている場合、情報分割処理部213から動的割り当て処理部210にバッファ情報を転送する。
送信バッファ215は、無線システム制御装置13へ伝送するデータを一時的に格納するバッファである。初期接続要求処理部212から出力される無線リソース割り当て要求と、情報分割処理部213から出力されるハンドオーバ判定情報が送信タイミング待ちのために送信バッファ215に格納される。
上り伝送バッファ216は、移動体制御情報伝送装置11へ伝送するデータを一時的に格納するバッファであり、情報分割処理部213が出力する移動体制御情報が格納される。
図10は、本実施例の移動無線局24の構成例を示す図である。
ネットワークインターフェース部301は、移動無線局24と移動体制御情報伝送装置22及び非制御情報伝送装置23との間の双方向通信を制御する。図9に示す構成例と同様に、双方向通信ではIPパケットやシステム独自の通信プロトコルを使用することができる。
上り伝送バッファ302は、上りの非制御情報が一時的に格納されるバッファである。非制御情報本体だけでなく、未送信パケット数又は未送信データ量(バイト数など)を管理し、バッファ読み出し処理部303が、割り当てられたスロットで送るべきデータの有無によって、無線信号を送信するか否かを判定する。
なお、ハンドオーバ判定情報に上り非制御情報の未送信データ量などのバッファ情報を伝送する場合、このバッファ情報を多重化処理部307へ入力し、多重化処理部307にてハンドオーバ判定情報の一部としてバッファ情報を組み込む。
バッファ読み出し処理部303は、リソース割り当て制御部309から入力される上り情報伝送スロットに関する割り当て情報を参照し、割り当てがなければ特に何もしない。割り当てがある場合、送信待ちの非制御情報が上り伝送バッファ302に格納されているかを参照して、非制御情報が上り伝送バッファ302に格納されていれば、上り伝送バッファ302から非制御情報本体を読み出して無線デジタル信号送信処理部304へ入力する。非制御情報が上り伝送バッファ302に格納されていなければ、当該割り当てスロットに関して無線信号の出力を止める制御信号を無線デジタル信号送信処理部304へ入力する。
上り伝送バッファ306は、移動体制御情報伝送装置11へ伝送する上りの移動体制御情報データを一時的に格納するバッファである。上り伝送バッファ306は、移動体制御情報伝送装置22から固定無線局15へ移動体制御情報を送信するにあたり、無線への送信タイミングとなるまで移動体制御情報を待たせるタイミング調整機能と、無線での送信頻度より移動体制御情報伝送装置22から移動体制御情報が入力される頻度が少ない場合、同一の移動体制御情報を無線で再度送信するための情報の一時的な記憶機能とを果たす。
ハンドオーバ判定処理部308は、リソース割り当て制御部309から入力されるハンドオーバ制御情報に含まれるハンドオーバ実行判定条件と、リソース割り当て制御部309から入力される固定無線局15ごとの報知用スロットの受信電力測定結果、及び図示していないが本システム外の位置検出手段から入力される移動無線局24の位置情報を用いて、各種測定結果がハンドオーバ発生条件を満たしているかどうかを判定するハンドオーバ判定処理部である。ハンドオーバ判定処理の結果は、ハンドオーバ判定情報として多重化処理部307へ出力される。
多重化処理部307は、上り伝送バッファ306から入力される上りの移動体制御情報と、ハンドオーバ判定処理部308から入力されるハンドオーバ判定情報とを結合し、リソース割り当て制御部309から入力されるチャネル割り当て情報に基づいて、上りの移動体制御用スロットで無線送信するため、結合したビット列を無線デジタル信号送信処理部304へ入力する。例えば、移動体制御情報のビット列の後に、ハンドオーバ判定情報のビット列を結合する。フレーム内で複数スロットに関する割り当て情報がある場合、各割り当て情報の送信宛先の固定無線局15は異なるが、内容が同じ結合後ビット列を送信する。
無線デジタル信号送信処理部304は、バッファ読み出し処理部303から入力される上り非制御情報と、多重化処理部307から入力される上り移動体制御情報及びハンドオーバ判定情報と、初期アクセス処理部310から入力される初期接続要求とを、適切なスロットで送信する。適切なスロットとは、リソース割り当て制御部309が管理しているスロット毎の割り当て情報が示すスロットである。
無線デジタル信号送信処理部304に入力される情報はビット列であり、入力されたビット列に、誤り検出符号(例えば、CRC:Check Redundancy Code)の付与、誤り訂正のための畳み込み符号化、誤り訂正能力向上やビット当たりの対雑音エネルギーを向上させるインターリーブ及びリピティション、ビット列を振幅や位相の情報に変換する変調などの処理を施す。無線デジタル信号送信処理部304の出力はベースバンドのデジタル信号である。
リソース割り当て制御部309は、無線デジタル信号受信処理部311から入力されるフレーム内スロット用途情報及び情報伝送用スロットに関する動的割り当て結果と、情報分割処理部312から入力される当該移動無線局24に関する無線リソース制御情報内のリソース割り当て情報とを参照して、当該移動無線局24が送受信すべきフレーム内スロット位置、及び各スロットの用途を把握する。スロット毎の送受信に関する情報は無線デジタル信号送信処理部304及び無線デジタル信号受信部305に設定する。また、リソース割り当て制御部309は、初期接続要求に対する応答メッセージに含まれる、情報分割処理部312からの入力相当の情報を、初期アクセス処理部310から取得することができる。
さらに、リソース割り当て制御部309は、情報分割処理部312及び初期アクセス処理部310から入力される無線リソース制御情報内のハンドオーバ制御情報から、ハンドオーバ判定条件を取得できる。また、ハンドオーバの受信電力判定に用いる固定無線局15の識別子を取得するため、各固定無線局15の報知用スロット又は移動体制御用スロットの受信電力測定指示を無線デジタル信号受信部305に入力し、その応答として受信電力測定結果を得る。
リソース割り当て制御部309は、ハンドオーバ判定条件、及び各固定無線局に関する受信電力測定結果をハンドオーバ判定処理部308へ出力する。また、初期接続用スロット、移動体制御用上りスロット、情報伝送用に割り当てられた上りスロットの各々のフレーム内位置の情報を、それぞれ初期アクセス処理部310、多重化処理部307、バッファ読み出し処理部303へ出力する。
なお、周波数ホッピング対応する場合は、情報分割処理部312及び初期アクセス処理部310から入力される各固定無線局の無線リソース制御情報内のハンドオーバ制御情報に含まれる周波数ホッピング規則情報を取得し、スロット毎の送受信動作に合わせて無線デジタル信号送信処理部304及び無線デジタル信号受信部305に対してスロット毎に使用する周波数チャネル番号を指定する。
初期アクセス処理部310は、移動無線局24が起動直後でいずれの固定無線局15とも通信を行っていない状態において、図7に示した移動無線局24のシーケンスを実行し、いずれかの固定無線局15との通信を開始する。
初期アクセス処理部310は、最初に固定無線局15をサーチし、受信電力が最も大きい無線信号の送信元である固定無線局15を特定する。初期アクセス処理部310は、当該固定無線局が送信する報知用スロットに含まれるフレーム内スロット用途情報を参照して、当該固定無線局15の上り初期接続用スロットのフレーム内位置を特定し、当該上り初期接続用スロットにて初期接続要求を固定無線局15へ送信する。
初期接続要求の送信が完了すると、リソース割り当て制御部309が初期接続用スロットにて初期接続要求に対する応答を待つ。初期接続用スロットは、固定無線局15が通信方向を上りから下りに反転している。初期接続要求に対する応答がポジティブであれば、リソース割り当て制御部309は、応答に含まれる無線リソース制御情報を受信し、当該固定無線局15をアンカーとして移動体制御情報の通信を開始する。一方、初期接続要求に対する応答がネガティブであれば、再度、固定無線局15をサーチする。
無線デジタル信号受信処理部311は、入力されるデジタル受信信号を用いて、無線伝搬路応答を推定し、推定された無線伝搬路応答を用いて無線伝搬路の影響を受けた受信信号の振幅位相を補償し、補償された受信信号の振幅位相に載せられた情報をビット列に戻す復調処理を行い、復調処理後のビット列に対して送信側のインターリーブの逆処理を行うデインターリーブ、リピティションによって送信側で繰り返されたビットを合成する。
ビットレベルで受信信号を合成した後、ビタビ復号法などの誤り訂正復号を行い、同出力に付与されているCRCを検査することでビット誤りの有無を判定する。無線デジタル信号受信処理部311は、少なくとも、CRCを除いた推定送信ビット系列と、誤りの有無を示すCRC検査結果を出力する。
無線デジタル信号受信処理部311は、前述したデータ信号に関する復号処理だけでなく、固定無線局15から受信する無線信号に対するタイミング同期を行う。無線信号として、データ信号の前に受信側で既知のプリアンブル信号を付与し、プリアンブル信号に対するスライディング相関演算結果に基づいて無線信号の受信タイミングを推定し、同タイミングからデータ信号先頭の時間位置を特定してデータ信号を抽出する。
また、無線デジタル信号受信処理部311は、アンカーとして接続した固定無線局15が送信した無線信号受信タイミングに基づいて、スロット及びフレームタイミングを調整する。つまり、移動無線局24のスロットタイミングより固定無線局15からの信号の受信タイミングが早い場合、移動無線局24のスロットタイミングを早める。逆も同様にスロットタイミングを調整する。
情報分割処理部312は、下り移動体制御用スロットに含まれる移動体制御情報と無線リソース制御情報とを分離し、移動体制御情報を下り伝送バッファ313へ出力し、無線リソース制御情報をリソース割り当て制御部309へ出力する。
下り伝送バッファ313は、移動体制御情報伝送装置22へ伝送する移動体制御情報を一時的に格納するためのバッファであり、情報分割処理部312が出力する移動体制御情報を格納する。本実施例では、ネットワークインターフェース部301が、複数装置との間の入出力に共用されているため、複数装置との間の通信でのタイミング競合を避けるため、適切な送信タイミングまで情報を待たせる機能を有する。
下り伝送バッファ314は、下りの非制御情報を一時的に格納するバッファであり、無線デジタル信号受信処理部311が出力する下り非制御情報のうち、CRCによる誤りが検出されなかった情報を格納する。
無線デジタル信号受信部305は、無線デジタル信号送信処理部304から入力されたベースバンドデジタル信号に、デジタルアナログ変換、ベースバンドから高周波信号への変換、高周波信号の出力の増幅処理を行う。なお、アンテナ25の手前には送受信を切り替えるスイッチを設ける。
アンテナ25が受信した無線アナログ信号は、前述したスイッチによって受信信号処理側に流され、入力された微弱な信号の増幅、高周波信号からベースバンド信号への変換、アナログデジタル変換処理を実行し、無線デジタル信号受信処理部311へ出力する。
図11は、本実施例の報知用スロットで伝送する情報の構成例を示す図である。
各固定無線局は、当該固定無線局をアンカーとする移動無線局全体及び当該固定無線局に初期接続を試みる移動無線局24を対象に、共通に通知すべき内容を報知用スロットで通知する。
固定無線局の識別子401は、送信元である固定無線局15の識別子である。
フレーム番号402は、移動無線局24が固定無線局15とフレーム同期を行うために使用される。固定無線局15はフレーム番号を、適切な桁数(例えば8bits)で設定しておき、オーバーフローしないように最大値の次は0にリセットするとよい。
フレーム内スロット用途情報403は、図6で説明したとおりである。
動的スロット割り当て結果404は、固定無線局15側がスロットを動的に割り当てた結果であり、スロット毎に割り当てられた移動無線局24の識別子を格納する。情報伝送スロットは動的に割り当てられ、報知用スロット、初期接続用スロット、移動体制御スロットは動的に割り当てが変わらないので、情報伝送スロットには移動無線局24の識別子が格納されない。このため、特定の識別子(たとえば0xFF)を設定し、当該スロットが動的スロット割り当ての対象外であることを示すとよい。
ここで、移動無線局24の識別子の桁数が大きい場合、固定無線局15内で一時的な識別子を割り当ててもよい。この場合、移動無線局24が割り当てられた一時的な識別子を認識する必要がある。また、この識別子は、利用可能な情報伝送用スロットを移動無線局24ごとに示すため、アンカー固定無線局15において一時的な識別子を割り当てる。
移動無線局24に対する一時的な識別子は、無線システム制御装置13が初期接続要求受信時及びハンドオーバ要求受信時に割り当てる。割り当て情報は、図8に示す無線リソース制御情報に、アンカー固定無線局の固定無線局15の一時的な移動無線局24の識別子を追加することで、最終的に移動無線局24に対して一時識別子の割り当て結果を通知できる。
周波数ホッピングを適用する場合、当該固定無線局15の周波数ホッピング規則に関する情報も報知スロットで移動無線局24へ報知する。
なお、フレーム番号402とフレーム内スロット用途情報403は、移動無線局24が復号して得た情報に基づく制御を行うため、次のフレームからに適用される。例えば、フレーム番号1で伝送されるフレーム番号402とフレーム内スロット用途情報403はフレーム番号2から適用される。
図12は、本実施例の初期接続要求及び応答の構成例を示す図である。
初期接続要求は、移動無線局24がアンカー候補となる固定無線局15に対して、当該固定無線局15の上り初期接続用スロットを用いて送信する。初期接続要求の内容は、図12(A)に示すように、移動無線局(MRS)の識別子411と、送信先となる固定無線局(FRS)15の識別子412が必須項目であり、移動無線局の位置情報413は、無線システム制御装置13が移動無線局24の位置情報に基づいて接続先の固定無線局15を選択する場合に使用する。固定無線局の識別子412は、固定無線局15のサーチ実施時に、受信電力が最も大きい無線信号の送信元である固定無線局15の報知スロットに含まれる固定無線局15の識別子が記録される。
初期接続要求に対する応答は、図12(B)に示すように、無線システム制御装置13が決定したアンカー固定無線局の識別子421と、本応答を受信すべき移動無線局の識別子422と、応答がポジティブかネガティブかを示す応答本体423と、無線システム制御装置13が生成したリソース割り当て情報及びハンドオーバ情報が含まれる無線リソース制御情報424で構成される。
アンカー固定無線局の識別子421には、無線システム制御装置13による割り当て結果が記録されるため、必ずしも初期接続要求に対する応答の送信元の固定無線局15の識別子と一致するとは限らない。アンカー固定無線局の識別子421と応答の送信元の固定無線局15の識別子とが一致しない場合、移動無線局24は無線システム制御装置13に指示された固定無線局15との通信を開始する。
移動無線局の識別子422は、複数の移動無線局24が同時に接続要求を発行した時に、無線システム制御装置13が受け入れた移動無線局24を一意に特定するために記録される。この識別子が自身の識別子と一致しなかった移動無線局24は、初期接続が無線システム制御装置13に受け入れられなかったと判断し、再度接続要求を送信する。無線リソース制御情報に424の内容は図8で示したものと同一である。
図13は、本実施例の移動体制御スロットで伝送する情報の構成例を示す図である。
移動無線局24から固定無線局15に送信する移動体制御スロットは、図13(A)に示すように、移動体制御情報としての移動無線局位置431と、ハンドオーバ判定情報としてのハンドオーバトリガ432を少なくとも含む。ハンドオーバトリガ432には、移動無線局24におけるハンドオーバ条件判定の結果、条件を満たしている場合にYes、満たしていない場合にNoが記録される。
固定無線局15から移動無線局24に送信する移動体制御スロットは、図13(B)に示すように、無線システムよりも上位レイヤで移動体制御情報伝送装置11、22間でやり取りされる移動体を制御するための移動体制御情報441と、図8に示す無線リソース制御情報442とを含む。
移動無線局位置431及び移動体制御情報441に関しては、移動体制御システムに依存するもので、例えば、非特許文献1には移動体制御での情報のやり取りの一例が示されており、やり取りされる情報を両方の移動体制御情報伝送装置11、22が解釈できる形式にエンコードする。
図14は、本実施例のリソース割り当て要求及びハンドオーバ要求の構成例を示す図である。
リソース割り当て要求及びハンドオーバ要求は、固定無線局15から無線システム制御装置13に送信されるメッセージである。このメッセージに対しては明示的な応答はなされず、要求を受けた無線システム制御装置13が固定無線局15へ送信する、当該移動無線局24に関する更新されたリソース制御情報を応答の代わりとしている。
各メッセージは、メッセージがリソース割り当て要求かハンドオーバ要求かを一意に示すメッセージ識別子451、461と、メッセージ送信元の固定無線局の識別子452、462と、リソース割り当て又はハンドオーバ対象の移動無線局24の識別子453、463とを含む。メッセージ識別子は、無線システム内でメッセージの種類ごとに一意の値を定義する。
図15は、本実施例の固定無線局15及び移動無線局24の装置構成の例を示す図である。
固定無線局15と移動無線局24は、同一のハードウェア構成を取ることが可能である。
ネットワークインターフェース部501は、移動体制御情報伝送装置11、非制御情報伝送装置12、(固定無線局15の場合は無線システム制御装置13も)などの外部装置との間で、定められた通信方式に従って有線又は無線で通信する装置であり、当該通信方式で使用する物理層、データリンク層、MAC(Medium Access Control)層などの下位レイヤを処理するモデム機能を有する。市販されているモデム機能を有するチップやボードなどを利用できる。ネットワークインターフェース部501は、図9のネットワークインターフェース部201及び図10のネットワークインターフェース部301に対応する。
無線制御演算部502は、地上無線局及び移動無線局内でリソース割り当て管理やメッセージ伝送などのフレーム単位の無線制御を実施し、CPUなどの演算装置により実現可能である。無線制御演算部502は図9の多重化処理部203、初期接続応答の生成処理部207、スロット割り当て管理処理部208、動的割り当て処理部210、初期接続要求処理部212及び情報分割処理部213に対応し、図10のバッファ読み出し処理部303、多重化処理部307、ハンドオーバ判定処理部308、リソース割り当て制御部309、初期アクセス処理部310及び情報分割処理部312に対応する。
無線デジタル信号処理部503は、FPGAなどリアルタイム処理に適する演算装置で実現可能である。無線デジタル信号処理部503は、図9の無線デジタル信号送信処理部204及び無線デジタル信号受信処理部211に対応し、図10の無線デジタル信号送信処理部304及び無線デジタル信号受信処理部311に対応する。
無線アナログ信号処理部504は、ベースバンドデジタル信号と高周波アナログ信号との変換機能を有し、A/D(アナログデジタル)変換器、D/A(デジタルアナログ)変換器、フィルタ、ミキサ、アンプなどを有する無線通信モジュールである。本実施例ではTDD(Time Division Duplex)通信を想定しているため、送信と受信を切り替えるスイッチをアンテナ側に備える。高周波アナログ信号はアンテナ(16、25)を介して送受信される。
無線制御演算部502、無線デジタル信号処理部503及び無線アナログ信号処理部504のうち、プログラム可能なデバイスに関するプログラムは511のプログラム用メモリに格納されている。電源を遮断してもメモリの記憶内容がクリアされず、電源投入後直後にメモリ内容を無線制御演算部502、無線デジタル信号処理部503及び無線アナログ信号処理部504へ書き込むため、不揮発性のメモリの利用が望ましい。
プログラム格納メモリ510は、プログラムの書き込み制御を実行する。プログラム格納メモリ510は電源投入後に、装置を起動するためにブートシーケンスを実行する。ブートシーケンスの過程で、プログラム格納メモリ510内に格納されたプログラムの内容をデータ伝送バス509を通して無線制御演算部502、無線デジタル信号処理部503及び無線アナログ信号処理部504へ書き込む。プログラム格納メモリ510はCPUなどの演算装置と記憶装置で実現可能である。
バッファ505はネットワークインターフェース部に備わる記憶領域であり、揮発性のメモリで構成する。バッファ505は、移動体制御情報伝送装置11、非制御情報伝送装置12及び無線システム制御装置13から固定無線局15や移動無線局24へ伝送された情報系列や、逆方向(移動無線局24から固定無線局15)に伝送される情報系列を一時的に格納する。バッファ505は、図9に示す下り伝送バッファ202、バッファ206、下り伝送バッファ209、上り伝送バッファ214、送信バッファ215及び上り伝送バッファ216に対応し、図10に示す上り伝送バッファ302、306及び下り伝送バッファ313、314に対応する。
バッファ506は、フレームのタイミングで動作する無線制御演算部502とリアルタイムで駆動する無線デジタル信号処理部503との間でデータを受け渡すバッファであり、揮発性のメモリで構成する。無線制御演算部502から無線デジタル信号処理部503へは、フレーム内の各スロットで伝送する情報ビット系列を書き込む。無線デジタル信号処理部503から無線制御演算部502へは、フレーム内の各スロットに関する無線信号を復号して得られた情報ビット系列と、CRCによる誤り検出結果を書き込む。
ワーキングメモリ507、508は、それぞれ無線制御演算部502及び無線デジタル信号処理部503が使用するワーキングメモリであり、無線制御及び無線信号処理に必要な情報をそれぞれワーキングメモリ507、508に書き込んで自ら参照する。ワーキングメモリ507、508は揮発性メモリで構成する。
図16は、本実施例のスロット内部の構成例を示す図である。
プリアンブル601は、スロット先頭のタイミング推定に用いられる。システム内のすべての固定無線局15及び移動無線局24が同一のプリアンブル系列を用いる。
プリアンブル602は正しい送信元の特定に用いられる。固定無線局15の識別子毎、少なくとも近接する固定無線局15の識別子間で一意のプリアンブルを定義する。移動無線局24は、スロット毎に送信宛先の固定無線局15の識別子のプリアンブルを送信する。固定無線局15の識別子毎に固有のプリアンブル系列は、例えば、特許文献2に開示されているGold系列を用いて生成できる。
このようなプリアンブルの構成によって、プリアンブル601で推定したスロット先頭タイミングが、正しい送信元が送信したプリアンブルに基づくか、偽の送信元が送信したプリアンブルに基づくかを、無線デジタル信号受信処理部311で判定することができ、誤ったタイミングで603の無線信号の復号失敗のリスクを下げる。
無線デジタル信号受信処理部(図9に示す無線デジタル信号受信処理部211、及び図10に示す無線デジタル信号受信処理部311)は、プリアンブル601にスライディング相関演算を実施し、相互相関値が高いタイミングをスロット先頭と判定する。
推定したスロット先頭タイミングからプリアンブル601の長さだけ後ろにプリアンブル602の先頭が存在すると仮定し、同先頭タイミングからプリアンブル602に関する相関演算を実施する。
プリアンブル601に関する相関演算結果を考慮し、プリアンブル602に関する相関演算結果が小さい場合、プリアンブル601で推定したスロット先頭タイミングは誤ったタイミングであると判定し、プリアンブル601を用いてスロット先頭タイミングを再度推定する。プリアンブル602に関する相関演算結果が十分に大きいと判定されると、正しい送信元が送信した無線信号への同期に成功したと受信側で判断する。
無線信号の本体603は、移動体制御情報伝送装置11、非制御情報伝送装置12、無線システム制御装置13が生成した情報系列を無線信号に変調したものに相当する。
ガードタイム604はスロット間に設けられており、送信タイミング及び無線伝搬時間の機器間のずれを吸収するための無線信号無送信区間である。
図17は、本実施例の無線システム制御装置13の構成例を示す図である。
無線システム制御装置13は、複数の固定無線局15を統括する上位装置として機能する。
ネットワークインターフェース部701は、図9や図10に示すネットワークインターフェース部201、301と同等の機能を有する。
受信メッセージバッファ702は、固定無線局15から送信されるメッセージを一時蓄積するバッファである。固定無線局15からは、図14に示すハンドオーバ要求及びリソース割り当て要求が送信されるため、受信メッセージ処理部703にてメッセージ処理が完了するまで受信メッセージを一時的に格納する。
受信メッセージ処理部703は、受信メッセージバッファ702に蓄積されたハンドオーバ要求及びリソース割り当て要求を入力順に処理する。ハンドオーバ要求は複数の固定無線局15から送信されるが、同一の移動無線局24に関するハンドオーバ要求は先着優先のポリシーで処理するため、後着のハンドオーバ要求メッセージを破棄する。
また、受信メッセージ処理部703は、リソース割り当て要求に対して当該移動無線局24に対する無線リソースの新規割り当て、ハンドオーバ要求に対して当該移動無線局に関する無線リソースの割り当て更新処理として動作する。
無線リソースの新規割り当て時には、まずアンカーとなる固定無線局15を決定する。移動無線局24での受信電力に基づいて決定する場合、リソース割り当て要求に含まれる固定無線局IDが示す固定無線局15をアンカーとする。移動無線局24の位置情報に基づいて決定する場合、位置情報の範囲とアンカー固定無線局IDの対応関係を示すアンカー固定無線局テーブル707を参照し、アンカー固定無線局を決定する。
無線リソースの割り当ての更新時は、アンカー固定無線局毎の関連固定無線局テーブル705を参照して、アンカー固定無線局を変更する。関連固定無線局テーブル705は、アンカー固定基地局ごとに補助的な固定無線局ID、ハンドオーバ後にアンカーとする固定無線局ID、ハンドオーバ後に新規接続する固定無線局IDの構造情報を少なくとも含み、システムの必要に応じて移動無線局24の移動方向(列車の進行方向)毎に同様の構造をもつテーブルを複数持つとよい。
受信メッセージ処理部703は、ハンドオーバ要求を受信すると、当該移動局のアンカー固定無線局IDをスロット割り当て状況管理テーブル706から取得し、ハンドオーバ前のアンカー固定無線局IDをインデックスとして、関連固定無線局テーブル705から、ハンドオーバ後にアンカーとする固定無線局IDを参照して、ハンドオーバ後のアンカー固定無線局IDを決定する。
移動無線局24の移動方向を計算するためには、図13(A)のMRS Position431の値を固定無線局15から移動体制御情報伝送装置11だけでなく、無線システム制御装置13に同報し、無線システム制御装置13内で周期的に入力されるMRS Positionの差分を計算することによって、移動方向を推定できる。
以上の処理によって、ハンドオーバ後又は初期接続後のアンカー固定無線局が決定すると、当該アンカー固定無線局のIDをインデックスとして、関連固定無線局テーブル705から、補助的な固定無線局IDを参照して、ハンドオーバ後に新規に接続される補助的な固定無線局IDを図8のHandover candidate FRS ID110に記録して、インデックスとしたアンカー固定無線局IDを図8のAnchor FRS ID101に記録する。
ハンドオーバ条件(図8の111~116)に定められるハンドオーバ条件情報はハンドオーバ条件格納テーブル704に格納されており、アンカー固定無線局毎にハンドオーバ条件(図8の111~116)がそのまま格納されているため、格納されている情報をそのまま図8の該当フィールドへ記録する。
最後に、図8の各固定無線局にスロットを割り当てる。例えば、固定無線局IDとスロットIDの2次元マトリクス上の各マス目に、当該スロットが割り当てられた移動無線局IDを一覧化したスロット割り当て状況管理テーブル706を参照して、スロットを割り当てられる。
無線リソースの新規割り当て時は、図8のAnchor FRS ID101と全てのSupplemental FRS ID104、107とに関して、上りスロット及び下りスロットを割り当てる。このとき、既に他の移動無線局24へ割り当て済みのスロットを回避しつつ、上りと下りの通信方向、及び該当する固定無線局15の間で異なるスロットIDを割り当てる。
割り当てに成功すれば、ポジティブなリソース割り当て要求への応答として、図8に示す無線リソース制御情報を、リソース割り当て要求元の固定無線局15に送信する。割り当てに失敗した場合、図14のメッセージと同様の形式で、Message IDがResource Allocation Failure、FRS IDがリソース割り当て要求元の固定無線局15、MRS IDがリソース割り当て要求に含まれているMRS
IDで構成されるネガティブメッセージをリソース割り当て要求元の固定無線局15へ送信する。
無線リソースの割り当て更新時は、関連固定無線局テーブル705から、ハンドオーバ前のアンカー固定無線局のIDを基準とした補助的な固定無線局IDと当該アンカー固定無線局IDで構成される第一のIDグループと、ハンドオーバ後のアンカー固定無線局のIDを基準とした補助的な固定無線局IDと当該アンカー固定無線局IDで構成される第二のIDグループを生成する。
第一のIDグループに含まれ、かつ第二のIDグループに含まれない固定無線局(第一の固定無線局)に関する割り当てを削除し、第一のIDグループに含まれず、かつ第二のIDグループに含まれるIDの固定無線局(第二の固定無線局)に関する割り当てを実施する。
その際、他移動無線局に割り当て済みでないスロットで、かつ第一のIDグループと第二のIDグループの双方に存在する固定無線局(第三の固定無線局群)に関する当該移動無線局に割り当て済みのスロットを回避するように割り当てる。
処理の順番としては、第二の固定無線局に関するスロット割り当てに成功した後に、第一の固定無線局に関するスロット割り当てを削除し、更新されたスロット割り当てを図8の形式にまとめて、第一の固定無線局と第二の固定無線局と第三の固定無線局群に無線リソース制御情報として送信する。このように、ハンドオーバが成功したケースでは、第一の固定無線局への送信は、図4の例で示した通り1回でよい。
第二の固定無線局へのスロット割り当てに失敗した場合、図8に示すスロット割り当てを更新せず、直近に送信した内容と同一の無線リソース制御情報を、第一の固定無線局と第三の固定無線局群へ送信する。このようにハンドオーバが失敗した場合、同じハンドオーバ要求が入力されるため、その都度同じ処理を繰り返し実行する。但し、先着優先後着破棄のポリシーによって、後続するハンドオーバ要求が破棄されないように、図14に示すハンドオーバ要求にシーケンス番号を付与することが望ましい。固定無線局15毎かつ移動無線局毎にシーケンス番号を管理し、ハンドオーバ要求が新たに発行されるたびにシーケンス番号をインクリメントする。
以上のように生成した無線リソース制御情報に、宛先の固定無線局15のIDを示すヘッダを付与し、送信バッファ708へ順次書き込んで、該当する固定無線局15に送信する。
なお、ハードウェアとしては、ネットワークインターフェース部701は固定無線局15や移動無線局24と同様のデバイスでよく、受信メッセージバッファ702、ハンドオーバ条件格納テーブル704、関連固定無線局テーブル705、スロット割り当て状況管理テーブル706、アンカー固定無線局テーブルテーブル707、送信バッファ708はいずれも不揮発性のメモリ情に構成され、受信メッセージ処理部703を初期化するときに各テーブルやバッファを初期化する。受信メッセージ処理部703は、CPUなどの演算装置で構成できる。受信メッセージ処理部703のプログラムを格納するメモリや、書き込み動作のためのブートシーケンスを動作させるプロセッサは、図17には図示を省略しているが、図15と同様のもので実現できる。
<実施例2>
実施例2では、固定無線局15の数が多いシステムにおいて、一台の無線システム制御装置13が全ての固定無線局15を管理できず、複数台の無線システム制御装置13を導入する場合のハンドオーバの実施例を示す。
無線システム制御装置13が1台の場合と複数台の場合とでは、バックボーンネットワーク側の振る舞いが異なる。固定無線局15と移動無線局24との間の無線通信は実施例1と同じである。換言すると、移動無線局24は、どの無線システム制御装置13に管理されているか意識せずに動作する。
より具体的には、複数台化で影響を受けるのは、固定無線局15と無線システム制御装置13との間でやり取りされる無線リソース割り当て要求及びハンドオーバ要求を受信した無線システム制御装置13の動作と、無線リソース制御情報を固定無線局15に配信する動作の2点である。
無線リソース制御情報は、配信先となる固定無線局15が、無線リソース制御情報を生成した無線システム制御装置13自身でない場合、配信先の固定無線局15を管掌する無線システム制御装置13を介して配信先の固定無線局15へ届けられる。正しい固定無線局15へ無線リソース制御情報を転送するため、無線リソース制御情報のヘッダとして経由する無線システム制御装置13及び固定無線局15の識別子を付与し、受信側の固定無線局15でヘッダを排除する仕組みを導入することが望ましい。
無線リソース割り当て要求及びハンドオーバ要求を受信した無線システム制御装置13が、自身が管掌しない固定無線局15のスロット割り当てを必要とする場合、当該固定無線局15を管掌する無線システム制御装置13にスロット割り当て要求を送信する。
このスロット割り当て要求には、すでに管掌下の固定無線局15へ割り当て済みのスロット番号を含めておき、このスロット割り当て要求を受信した無線システム制御装置13が、割り当て済みのスロットへの重複割り当てを回避したうえで、スロットを割り当て可能かを判定する。スロットを割り当て可能であれば、Positive応答と管掌下の固定無線局15ごとに割り当てたスロット番号を返信し、スロットを割り当て不可能であれば、Negative応答を返信する。
無線システム制御装置13は、管掌下の固定無線局15をアンカーとする移動無線局24に関するチャネル割り当て情報を管理しているが、同一の無線スロットへ複数の移動無線局24の重複した割り当てを避けるため、管掌外の移動無線局24との間で貸し借りしているチャネル割り当て情報も併せて管理する。
以上に説明したように、本発明の実施例によると、無線システム制御装置13によって制御される複数の固定無線局15は、割り当てられた全ての無線通信チャネルを使用して移動無線局24へ移動体制御情報を伝送し、移動無線局24は、割り当てられた無線通信チャネルの一部又は全てを使用して固定無線局15へ前記移動体制御情報を伝送する。換言すると、少なくとも2以上の固定無線局15は、時分割や周波数分割によって互いに異なる無線チャネルを割り当てられ、同じ内容の移動体制御情報をそれぞれの無線チャネルを介して移動無線局24へ対して伝送可能に構成される。特に、複数の固定無線局15が、互いに異なる無線チャネルを割り当てられ、これらの無線チャネルを介して移動無線局24にプリアンブル信号をそれぞれ送信することによって、一つの移動無線局24に対して複数の固定無線局15が通信可能となっている状態を形成する。また、移動無線局24は、複数の固定無線局15が少なくとも2以上の異なる無線チャネルを介して送信する信号のうち、移動体制御情報を通信するに適した信号を検出、例えば受信強度が所定の閾値以上の信号を特定し、この信号の伝送に用いられた無線チャネルで通信を確立するように構成される。このため、固定無線局15と移動無線局24との間で常時1以上の無線チャネルを用いて移動体制御情報を双方向伝送するので、無線環境が変化しても無線通信が不安定化を抑制でき、移動体制御用の無線通信を安定的に提供できる。また、一部の固定無線局15が停止したり、無線伝搬路の影響で無線信号が減衰しても、双方向伝送を維持でき、移動体制御に関わる情報の安定的に双方向伝送でき、移動体の走行の安全性を担保できる。また、前述するような無線通信システムを無線式列車制御に適用することによって、例えば、もし無線電波環境が悪化し一つの無線基地局において車上無線局との通信が困難となっても、他の無線基地局との通信が確立され通信が継続できるため、信頼性が高い列車制御が実現できる。
また、移動無線局24は、少なくとも一つの固定無線局15との間で割り当てられている無線通信チャネルを維持し、他の固定無線局15との間で割り当てられている無線通信チャネルを解放し、ハンドオーバ前には無線通信チャネルが割り当てられていない1又は複数の固定無線局15との間で割り当てられる無線通信チャネルを使用するので、ハンドオーバ中でも一部の無線チャネルが維持され、ハンドオーバ時に通信停止又は通信開始する無線チャネルの通信品質が低下しても、移動体制御情報を安定的に双方向伝送できる。
また、移動体制御情報を双方向伝送する無線通信チャネルは、ある一つの移動無線局24の通信相手となる複数の固定無線局15の間で重複せず、かつ、上り通信と下り通信とで重複しないように割り当てられるので、複数ある無線通信チャネル間の独立性が担保され、一部の無線通信チャネルが干渉等により影響を受けても、チャネル間のダイバーシチ効果により影響を軽減し、移動体制御情報を安定的に双方向伝送できる。
また、移動無線局24に対する前記無線通信チャネルの割り当て結果を含むチャネル割り当て情報を、当該移動無線局24との間で無線チャネルが割り当てられている全ての固定無線局15から伝送するので、同一のチャネル割り当て情報を複数の無線通信チャネルにて伝送して、チャネル割り当て情報の不達による影響を軽減し、移動体制御情報を安定的に双方向伝送できる。
また、更新されたチャネル割り当て情報を移動無線局24に伝送することによって、移動無線局24の通信相手となる固定無線局15を切り替えるハンドオーバを実施するので、ハンドオーバの有無によらず移動無線局24は常に同一のオペレーションで動作可能となるため、ハンドオーバに関する特別な処理を設ける必要がなく、移動無線局24の動作制御を簡素化できる。
また、上位装置(無線システム制御装置13)は、チャネル割り当て情報を保持し、保持されたチャネル割り当て情報を参照して、ある一つの移動無線局24の通信相手となる複数の固定無線局15の間で同一の無線チャネルが割り当てられないように、移動無線局24に無線チャネルを割り当て、割り当て結果を含むチャネル割り当て情報を生成して、上位装置13から固定無線局15へ伝送するので、固定無線局15の間で割り当て済みの無線通信チャネルの問い合わせが不要となり、バックボーンネットワーク14のトラフィックを削減でき、固定無線局15の演算処理やメッセージ処理を簡素化できる。
また、移動無線局24に関するチャネル割り当て情報は、移動体制御情報伝送用に割り当てられている無線チャネルを用いて、移動無線局24へ伝送される移動体制御情報と多重化して、複数の固定無線局15から伝送される。すなわち、周期的に通信が行われる移動体制御用の無線通信チャネルにてチャネル割り当て情報を多重化して伝送するので、特別なチャネルを設けることなく、移動無線局24に対して最新の無線通信リソース割り当て状態を通知でき、結果として固定無線局15と移動無線局24との間の状態不一致に伴う通信不良を抑制でき、移動体制御情報を安定的に双方向伝送できる。
また、移動無線局24は、移動体制御情報を伝送する無線チャネルの受信電力に基づいて、移動体制御情報の伝送先となる固定無線局15を決定するので、移動体制御情報を確実に伝送できるチャネルを選択でき、定められた1台の固定無線局15に上り移動体制御情報を繰り返し送信するより、移動体制御情報を安定的に双方向伝送できる。
また、移動無線局24は、固定無線局15から伝送されるハンドオーバ判定条件に従って、ハンドオーバを実施するかを判定し、ハンドオーバ実施の判定結果を固定無線局15へ伝送する。すなわち、ハンドオーバの条件は固定側で集約的に決定し、ハンドオーバの判定は移動側で分散して判定するので、固定側の負荷を抑制しつつ、ハンドオーバを集中的に管理できる。
また、ハンドオーバ判定条件は、固定無線局15から移動体制御情報を伝送する無線信号の受信電力、及び移動無線局24の位置情報の少なくとも一つを含むので、様々なハンドオーバ条件を組み合わせて、無線通信システムの実態に合わせた適切なハンドオーバ条件を定義できる。
また、ハンドオーバ判定条件は、下りの移動体制御情報伝送用の無線チャネルを用いて、下りの移動体制御情報と多重化して、固定無線局15から伝送され、ハンドオーバ判定結果は、上りの移動体制御情報伝送用の無線チャネルを用いて、上りの移動体制御情報と多重化して、固定無線局15へ伝送されるので、周期的に通信が行われる移動体制御用の無線通信チャネルにてハンドオーバ判定条件及びハンドオーバ判定結果を多重化して伝送することによって、特別なチャネルを設けることなく、固定無線局15と移動無線局24との間で最新のハンドオーバ判定条件及びハンドオーバ判定結果を共有でき、結果として固定無線局15と移動無線局24との間の状態不一致に伴う通信不良を抑制でき、移動体制御情報を安定的に双方向伝送できる。
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。