以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて説明する。
まず、本実施の形態に係るインクジェットプリンターの構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係るインクジェットプリンター10の外観斜視図である。
図1に示すように、インクジェットプリンター10は、矢印10aで示す鉛直方向における下側から媒体90を支持するプラテン11と、プラテン11に対して鉛直方向における上側に配置されていて鉛直方向に直交する矢印10bで示す左右方向に延在しているレール12と、レール12によって矢印10bで示す方向に移動可能に支持されているキャリッジ13と、キャリッジ13に搭載されていて媒体90に向けてインクを吐出する複数のインクジェットヘッド14と、キャリッジ13に搭載されていてインクジェットヘッド14内のインクの圧力を負圧にすることによってインクジェットヘッド14のノズルに凹状態のメニスカスを形成する複数のダンパー15とを備えている。インクジェットヘッド14によって吐出されるインクの色は、様々な色が採用されることができる。複数のインクジェットヘッド14のそれぞれには、ダンパー15が1つずつ接続されている。
媒体90は、矢印10aで示す方向および矢印10bで示す方向の両方に直交する矢印10cで示す方向に、後述の媒体搬送装置によってプラテン11に対して搬送される。
図2は、インクジェットプリンター10におけるインクの経路を示す図である。
図2に示すように、インクジェットプリンター10は、インクの通常の経路20aと、インク中の粒子の沈降の防止などの目的でインクを循環させるために使用される循環用の経路20bとを備えている。
インクジェットプリンター10は、インクを貯留する例えばパックやカートリッジなどのインク貯留部21と、インク貯留部21から供給されるインク中の酸素を取り除くための脱気モジュール22と、脱気モジュール22による脱気のために脱気モジュール22の内部の一部を真空状態にするための脱気ポンプ23とを備えている。インク中に酸素が含まれている場合、インクジェットヘッド14によってインクをノズルから吐出するときに、インク中に含まれている酸素が気泡になって、インクジェットヘッド14におけるインクの吐出不良の原因になる。脱気モジュール22は、そのような吐出不良の発生を抑えるためのものである。
インクジェットプリンター10は、経路20aにおいてインク貯留部21および脱気モジュール22の間に配置されて電気的な制御によって経路20aを開閉可能なバルブ24と、電気的な制御によって循環用の経路20bを開閉可能な循環バルブ25とを備えている。
インクジェットプリンター10は、経路20aにおいてダンパー15および脱気モジュール22の間に配置されてインクを移送するためのダイヤフラムポンプ30と、経路20aにおいてダンパー15およびダイヤフラムポンプ30の間に配置されてインクを貯めるバッファー50とを備えている。バッファー50は、ダイヤフラムポンプ30が駆動されていない期間でも、ダンパー15側に向けてインクを供給可能にするためのものである。
図2においては、1つのインクジェットヘッド14に連通する経路のみが示されている。実際には、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド14毎に図2に示すような経路を備えている。すなわち、インクジェットプリンター10は、ダンパー15、インク貯留部21、脱気モジュール22、脱気ポンプ23、バルブ24、循環バルブ25、ダイヤフラムポンプ30およびバッファー50を、インクジェットヘッド14毎に1つずつ備えている。なお、インク貯留部21、脱気モジュール22、脱気ポンプ23、バルブ24、循環バルブ25、ダイヤフラムポンプ30およびバッファー50は、キャリッジ13に搭載されていない。
図3は、ダイヤフラムポンプ30およびバッファー50を備えるポンプユニット70の外観斜視図である。
インクジェットプリンター10は、図3に示す状態でポンプユニット70を搭載している。
図3に示すように、ポンプユニット70は、ユニットベース71と、ユニットベース71に固定された4つのダイヤフラムポンプ30と、ユニットベース71に固定された4つのバッファー50と、ユニットベース71に固定されてダイヤフラムポンプ30を駆動するためのステッピングモーター72とを備えている。
4つのダイヤフラムポンプ30は、矢印10aで示す鉛直方向に直交する矢印10dで示す方向に並べて配置されている。ここで、矢印10dで示す方向は、矢印10bで示す方向および矢印10cで示す方向のいずれか一方であっても良いし、矢印10bで示す方向および矢印10cで示す方向のいずれでもなくても良い。
バッファー50は、ダイヤフラムポンプ30に対して鉛直方向における上側に配置されている。
ポンプユニット70は、図3において、ダイヤフラムポンプ30およびバッファー50の組み合わせを4組備えている。しかしながら、ポンプユニット70は、ダイヤフラムポンプ30およびバッファー50の組み合わせを、1組のみ備えても良いし、4組以外の複数の組備えても良い。
図4は、ダイヤフラムポンプ30の外観斜視図である。図5は、インク貯留室31aが膨らんでいてダイヤフラム32にプッシャー41が接触していない状態でのダイヤフラムポンプ30の側面断面図である。図6は、ダイヤフラムポンプ30の一部の分解斜視図である。図7は、ダイヤフラムポンプ30の残部の分解斜視図である。図8は、ダイヤフラムポンプ30の一部の分解側面断面図である。図9は、ダイヤフラムポンプ30の残部の分解側面断面図である。
図4および図5は、インクジェットプリンター10に搭載されている状態でのダイヤフラムポンプ30を示している。
図4~図9に示すように、ダイヤフラムポンプ30は、ダイヤフラムユニット31を備えている。
ダイヤフラムユニット31は、ダイヤフラム32と、液体としてのインクを貯留する液体貯留室としてのインク貯留室31aをダイヤフラム32とともに構成する貯留室形成部材33と、貯留室形成部材33とともにダイヤフラム32を固定するダイヤフラム固定部材34と、インク貯留室31aの内部に配置されていてインク貯留室31aの容積を広げる方向にダイヤフラム32を付勢するバネ35とを備えている。
ダイヤフラム32は、様々な材料で形成されることが可能である。例えば、ダイヤフラム32は、ゴムで形成されても良いし、樹脂で形成されても良い。ダイヤフラム32は、インクの影響を受けて時間とともに劣化する。ダイヤフラム32の劣化の速度は、例えば、ダイヤフラム32自身の材質や、インクの種類によって異なる。
ダイヤフラム32は、バネ35を支持するバネ支持部32aを備えている。
貯留室形成部材33およびダイヤフラム固定部材34は、本発明のケーシングを構成している。貯留室形成部材33およびダイヤフラム固定部材34は、様々な材料で形成されることが可能である。例えば、貯留室形成部材33およびダイヤフラム固定部材34は、樹脂製であり、レーザー溶着によって互いに接合される。
貯留室形成部材33は、インク貯留室31aに連通する流路33aおよび33bを形成している。貯留室形成部材33は、ダイヤフラム32との間が密閉された状態でダイヤフラム32を固定するダイヤフラム固定部33cと、バネ35を支持するバネ支持部33dと、ダイヤフラム固定部材34に係合するための4つの係合部33eと、後述の流路形成部材に係合するための爪33fと、流路形成部材に係合するための2つの係合部33gとを備えている。
ダイヤフラム固定部材34は、ダイヤフラム32との間が密閉された状態でダイヤフラム32を固定するダイヤフラム固定部34aと、後述する筐体に対してダイヤフラムユニット31を固定するユニット固定部34b、34cおよび34dと、貯留室形成部材33の係合部33eに係合するための4つの爪34eとを備えている。ダイヤフラム固定部材34は、筐体に対してダイヤフラムユニット31を固定するためのネジの軸が通される溝34fが形成されている。
ダイヤフラムポンプ30は、貯留室形成部材33の流路33aおよび33bにそれぞれ連通する流路36aおよび36bを形成している流路形成部材36と、貯留室形成部材33および流路形成部材36の間に配置されていて流路33aから流路36aへのインクの流通を禁止する逆止弁37と、貯留室形成部材33および流路形成部材36の間に配置されていて流路36bから流路33bへのインクの流通を禁止する逆止弁38と、流路形成部材36の流路36aに連通する流路39aを形成していて脱気モジュール22(図2参照。)および循環バルブ25(図2参照。)に連通する図示していないチューブが接続される流入ポート部材39と、流路形成部材36の流路36bに連通する流路40aを形成していてバッファー50(図3参照。)の後述する流入ポート部材に連通する図示していないチューブが接続される流出ポート部材40とを備えている。
流路形成部材36は、貯留室形成部材33の爪33fに係合するための係合部36cと、貯留室形成部材33の2つの係合部33gにそれぞれ係合するための2つの爪36d(図4および図6には、視点の関係上、1つのみが図示されている。)と、流入ポート部材39に係合するための2つの爪36eと、流出ポート部材40に係合するための2つの爪36fとを備えている。
逆止弁37は、貯留室形成部材33および流路形成部材36の間に配置されるOリング37aと、Oリング37aに対して貯留室形成部材33側に配置されるバネ37bと、Oリング37aおよびバネ37bの間に配置されてバネ37bによってOリング37aに押しつけられることによって流路を塞ぐボール37cとを備えている。
逆止弁38は、貯留室形成部材33および流路形成部材36の間に配置されるOリング38aと、Oリング38aに対して流路形成部材36側に配置されるバネ38bと、Oリング38aおよびバネ38bの間に配置されてバネ38bによってOリング38aに押しつけられることによって流路を塞ぐボール38cとを備えている。
流入ポート部材39は、流路形成部材36の2つの爪36eにそれぞれ係合するための2つの係合部39bを備えている。
流出ポート部材40は、流路形成部材36の2つの爪36fにそれぞれ係合するための2つの係合部40bを備えている。
なお、流路形成部材36、逆止弁37および逆止弁38は、ダイヤフラムユニット31に含まれても良い。更に、流入ポート部材39および流出ポート部材40も、ダイヤフラムユニット31に含まれても良い。
ダイヤフラムポンプ30は、鉛直方向における下側からダイヤフラム32に接触してダイヤフラム32を鉛直方向のうちの上方向に押圧するためのプッシャー41と、鉛直方向における下側からプッシャー41に接触してプッシャー41を鉛直方向のうちの上方向に押し上げるためのカムシャフト45とを備えている。プッシャー41およびカムシャフト45は、ダイヤフラム32を駆動する駆動部を構成している。
プッシャー41は、ダイヤフラム32に接触するためのダイヤフラム接触部材42と、カムシャフト45に接触するためのプッシャーベース43と、ダイヤフラム接触部材42およびプッシャーベース43の間の空間に配置されているバネ44とを備えている。プッシャー41は、バネ44の伸縮に応じて鉛直方向における長さが変化する。
ダイヤフラム接触部材42は、水平方向における中央の部分の、鉛直方向における上側の面に、ダイヤフラム32に接触するためのダイヤフラム接触部42aを備えている。ダイヤフラム接触部材42は、水平方向における中央の部分の、鉛直方向における下側の面に、バネ44を支持するバネ支持部42bを備えている。ダイヤフラム接触部材42は、矢印10aで示す方向と、矢印10dで示す方向との両方に直交する矢印10eで示す方向における両端の外側に、鉛直方向に延在する突起部42cを備えている。ダイヤフラム接触部材42は、矢印10dで示す方向における両端に、プッシャーベース43との分離を防止するための爪42d(図7には、視点の関係上、1つのみが図示されている。)を備えている。
プッシャーベース43は、水平方向における中央の部分の、鉛直方向における下側の面に、カムシャフト45に接触するためのカム接触部43aを備えている。プッシャーベース43は、水平方向における中央の部分の、鉛直方向における上側の面に、バネ44を支持するバネ支持部43bを備えている。プッシャーベース43は、矢印10eで示す方向における両端の内側に、鉛直方向に延在してダイヤフラム接触部材42の突起部42cをガイドするレール43cを備えている。プッシャーベース43は、矢印10dで示す方向における両端に、ダイヤフラム接触部材42の爪42dが挿入される穴43dが形成されている。プッシャーベース43は、矢印10dで示す方向における両端に、ダイヤフラム接触部材42の爪42dに接触してダイヤフラム接触部材42との分離を防止するための分離防止部43eを備えている。プッシャーベース43は、後述のフォトセンサーによって検出されるための突起部43fを備えている。
カムシャフト45は、プッシャーベース43に接触するための偏心カム45aを矢印10dで示す方向における中央に備えている。カムシャフト45は、後述の筐体に支持されるための被支持部45bを、矢印10dで示す方向における両側に備えている。矢印10dで示す方向に直交する被支持部45bの断面の外縁の形状は、外縁の一部が欠けた円の外縁の形状である。カムシャフト45は、他のダイヤフラムポンプ30のカムシャフト45に連結するための連結用溝部45cを、矢印10dで示す方向における一端に備えている。カムシャフト45は、他のダイヤフラムポンプ30のカムシャフト45に連結するための連結用突起部45dを、矢印10dで示す方向における他端に備えている。すなわち、複数のダイヤフラムポンプ30のそれぞれのカムシャフト45は、矢印10dで示す延在方向に他のダイヤフラムポンプ30のカムシャフト45と連結される。ダイヤフラムポンプ30の連結用溝部45cは、他のダイヤフラムポンプ30の連結用突起部45dが挿入された場合に、矢印10dで示す方向に延在する中心軸を中心にこの連結用突起部45dがこの連結用溝部45cに対して回転することができない形状および大きさに形成されている。同様に、ダイヤフラムポンプ30の連結用突起部45dは、他のダイヤフラムポンプ30の連結用溝部45cに挿入された場合に、矢印10dで示す方向に延在する中心軸を中心にこの連結用突起部45dがこの連結用溝部45cに対して回転することができない形状および大きさに形成されている。例えば、矢印10dで示す方向に直交する連結用溝部45cの断面における内側の形状および大きさと、矢印10dで示す方向に直交する連結用突起部45dの断面における外側の形状および大きさとは、共に正六角形で略同一の大きさである。
ダイヤフラムポンプ30は、プッシャー41およびカムシャフト45を支持していて、ダイヤフラムユニット31が着脱可能である筐体46を備えている。筐体46は、ユニットベース71(図3参照。)に例えば図示していないネジによって固定される。
筐体46は、カムシャフト45の被支持部45bを支持するための円形の支持溝部46aを、矢印10bで示す方向における両端に備えている。筐体46は、鉛直方向における支持溝部46aの上側から鉛直方向に支持溝部46aまで、カムシャフト45の被支持部45bを通過させるための通過用開口部46bを、矢印10bで示す方向における両端に備えている。支持溝部46aおよび通過用開口部46bの連結部分での、矢印10eで示す方向における通過用開口部46bの幅は、矢印10dで示す方向に直交する方向におけるカムシャフト45の被支持部45bの最小の幅以上であり、矢印10dで示す方向に直交する方向におけるカムシャフト45の被支持部45bの最大の幅未満である。
筐体46は、矢印10aで示す鉛直方向と、矢印10dで示すカムシャフト45の延在方向との両方に直交する矢印10eで示す方向にプッシャー41に接触することによってプッシャー41を鉛直方向に案内するプッシャー案内部46cを、矢印10eで示す方向におけるプッシャー41の両側に備えている。
筐体46は、鉛直方向におけるダイヤフラムユニット31の位置を固定するためのユニット固定部46d、46eおよび46fを鉛直方向における上端に備えている。ユニット固定部46d、46eおよび46fは、矢印10dで示す方向と、矢印10eで示す方向のうちの一方の方向とにおける筐体46に対するダイヤフラムユニット31の位置も固定する。ユニット固定部46d、46eおよび46fは、それぞれ、ダイヤフラム固定部材34のユニット固定部34b、34cおよび34dと、鉛直方向における下側で接触する。
筐体46は、矢印10eで示す方向におけるダイヤフラムユニット31の位置を固定するための4つの爪46gを鉛直方向における上端に備えている。4つの爪46gは、ダイヤフラムユニット31のうち鉛直方向における下端の面に形成された図示していない溝部に嵌まることによって、矢印10eで示す方向におけるダイヤフラムユニット31の位置を固定する。
筐体46は、ダイヤフラムユニット31を固定するためのネジ穴46hを鉛直方向における上端に備えている。
筐体46は、後述のフォトセンサーを支持するための突起46iを、矢印10dで示す方向における両端の内側に備えている。
ダイヤフラムポンプ30は、プッシャーベース43の突起部43fの位置を検出するためフォトセンサー47と、フォトセンサー47を筐体46に固定するためのフォトセンサー固定部材48とを備えている。
フォトセンサー47は、フォトセンサー固定部材48に係合するための4つの爪47aを備えている。なお、プッシャーベース43の位置は、カムシャフト45の回転角度に対応する。したがって、プッシャーベース43の突起部43fの位置を示すフォトセンサー47からの信号は、カムシャフト45の回転角度の判断に利用可能である。
フォトセンサー固定部材48は、フォトセンサー47の4つの爪47aのうちそれぞれ2つの爪に係合するための2つの係合部48aと、筐体46の突起46iが挿入される2つの溝部48bとを備えている。
なお、複数のダイヤフラムポンプ30が連結される場合には、フォトセンサー47およびフォトセンサー固定部材48は、互いに連結されている複数のダイヤフラムポンプ30のうちいずれか1つのみに備えられていれば良い。
ダイヤフラムポンプ30は、ステッピングモーター72(図3参照。)によって発生された動力をカムシャフト45に伝達するギア49を備えている。
なお、複数のダイヤフラムポンプ30が連結される場合には、ギア49は、互いに連結されている複数のダイヤフラムポンプ30のうち、ステッピングモーター72に最も近いもののみに備えられている。
ここで、筐体46へのダイヤフラムユニット31の取り付け方法について説明する。筐体46へのダイヤフラムユニット31の取り付けの前に、筐体46は、カムシャフト45の被支持部45bが通過用開口部46bを通過させられてから支持溝部46aに支持された後、プッシャー41が鉛直方向における上側から2つのプッシャー案内部46cの間に挿入される。そして、ダイヤフラムユニット31は、ダイヤフラム固定部材34のユニット固定部34b、34cおよび34dが筐体46に接触していない場合に、矢印10eで示す方向のうち、ダイヤフラム固定部材34のユニット固定部34b、34cおよび34dが筐体46のユニット固定部46d、46eおよび46fに近付く方向にダイヤフラムユニット31が筐体46に対して移動させられることによって、ダイヤフラム固定部材34のユニット固定部34b、34cおよび34dが筐体46のユニット固定部46d、46eおよび46fに接触させられる。このとき、筐体46は、4つの爪46gがダイヤフラムユニット31のうち鉛直方向における下端の面に形成された図示していない溝部に嵌まることによって、矢印10eで示す方向におけるダイヤフラムユニット31の位置を固定する。したがって、ダイヤフラムユニット31は、筐体46に固定される。更に、ダイヤフラムユニット31は、ダイヤフラム固定部材34のユニット固定部34b、34cおよび34dが筐体46のユニット固定部46d、46eおよび46fに接触させられている状態で、ダイヤフラム固定部材34の溝34fに軸が通されたネジが筐体46のネジ穴46hと嵌合されることによって、筐体46に強固に固定されても良い。
また、筐体46からのダイヤフラムユニット31の取り外し方法について説明する。まず、ダイヤフラムユニット31が筐体46にネジによって固定されている場合には、このネジが筐体46のネジ穴46hから外されることによって、筐体46からダイヤフラムユニット31が取り外し可能になる。そして、ダイヤフラムユニット31は、矢印10eで示す方向のうち、ダイヤフラム固定部材34のユニット固定部34b、34cおよび34dが筐体46のユニット固定部46d、46eおよび46fから離れる方向に筐体46に対して移動させられることによって、筐体46から取り外される。
図10は、バッファー50の外観斜視図である。図11は、インク貯留室51aが膨らんでいる状態でのバッファー50の側面断面図である。図12は、バッファー50の分解斜視図である。図13は、バッファー50の分解側面断面図である。
図10および図11は、インクジェットプリンター10に搭載されている状態でのバッファー50を示している。
図10~図13に示すように、バッファー50は、ダイヤフラムユニット51を備えている。
ダイヤフラムユニット51は、ダイヤフラムポンプ30(図3参照。)のダイヤフラム32(図5参照。)、貯留室形成部材33(図5参照。)およびダイヤフラム固定部材34(図5参照。)と同様のダイヤフラム52、貯留室形成部材53およびダイヤフラム固定部材54を備えている。貯留室形成部材53は、インクを貯留するインク貯留室51aをダイヤフラム52とともに構成する。貯留室形成部材53は、インク貯留室51aに連通する流路53aおよび53bを形成している。ダイヤフラム固定部材54は、後述するバッファーベースに対してダイヤフラムユニット51を固定するユニット固定部54aを備えている。ダイヤフラム固定部材54は、バッファーベースに対してダイヤフラムユニット51を固定するためのネジの軸が通される溝54bが形成されている。ダイヤフラムユニット51の構成は、ダイヤフラムユニット31(図5参照。)がバネ35(図5参照。)を備えていない構成と同様である。
バッファー50は、貯留室形成部材53の流路53aおよび53bにそれぞれ連通する流路56aおよび56bを形成している流路形成部材56と、流路形成部材56の流路56aに連通する流路57aを形成していてダイヤフラムポンプ30(図3参照。)の流出ポート部材40(図4参照。)に連通する図示していないチューブが接続される流入ポート部材57と、流路形成部材56の流路56bに連通する流路58aを形成していてダンパー15(図2参照。)および循環バルブ25(図2参照。)に連通する図示していないチューブが接続される流出ポート部材58とを備えている。流路形成部材56および流出ポート部材58の構成は、それぞれ、流路形成部材36(図5参照。)および流出ポート部材40の構成と同様である。
なお、流路形成部材56は、ダイヤフラムユニット51に含まれても良い。更に、流入ポート部材57および流出ポート部材58も、ダイヤフラムユニット51に含まれても良い。
バッファー50は、バッファー50をユニットベース71に固定するためのバッファーベース59を備えている。バッファーベース59は、ユニットベース71(図3参照。)に例えば図示していないネジによって固定される。
バッファーベース59は、矢印10eで示す方向におけるダイヤフラムユニット51の位置を固定するためのユニット固定部59aを備えている。ユニット固定部59aは、矢印10dで示す方向と、矢印10aで示す鉛直方向のうちの下方向とにおけるバッファーベース59に対するダイヤフラムユニット51の位置も固定する。ユニット固定部59aは、ダイヤフラム固定部材54のユニット固定部54aと接触する。
バッファーベース59は、ダイヤフラムユニット51を固定するためのネジ穴59bを備えている。
バッファーベース59は、後述のプッシャーの一部が挿入されるプッシャー用穴59cが形成されている。
バッファーベース59は、後述のフォトセンサーに係合するための2つの係合部59dを備えている。
バッファー50は、矢印10eで示す方向にダイヤフラム52に接触してダイヤフラム52を矢印10eで示す方向に押すためのプッシャー60を備えている。プッシャー60は、ダイヤフラム接触部材42(図5参照。)、プッシャーベース43(図5参照。)およびバネ44(図5参照。)と同様のダイヤフラム接触部材61、プッシャーベース62およびバネ63を備えている。すなわち、プッシャー60の構成は、プッシャー41(図5参照。)の構成と同様である。プッシャーベース62は、バッファーベース59に例えば接着剤によって固定される。プッシャー60の役割は、インク貯留室51aに貯留されているインクにダンパー15に向けて流出するための圧力を加えることである。したがって、バッファー50の位置がダンパー15の位置より高い場合には、バッファー50は、水頭差の関係上、プッシャー60を備えていなくても良い。
バッファー50は、ダイヤフラム接触部材61の突起部61aの位置を検出するためフォトセンサー64を備えている。フォトセンサー64は、バッファーベース59の2つの係合部59dのそれぞれに2つずつ係合するための4つの爪64aを備えている。
ここで、バッファーベース59へのダイヤフラムユニット51の取り付け方法について説明する。ダイヤフラムユニット51は、ダイヤフラム固定部材54のユニット固定部54aがバッファーベース59に接触していない場合に、矢印10aで示す鉛直方向のうち下方向にダイヤフラムユニット51がバッファーベース59に対して移動させられることによって、ダイヤフラム固定部材54のユニット固定部54aがバッファーベース59のユニット固定部59aに接触させられる。そして、ダイヤフラムユニット51は、ダイヤフラム固定部材54のユニット固定部54aがバッファーベース59のユニット固定部59aに接触させられている状態で、ダイヤフラム固定部材54の溝54bに軸が通されたネジがバッファーベース59のネジ穴59bと嵌合されることによって、バッファーベース59に固定される。
また、バッファーベース59からのダイヤフラムユニット51の取り外し方法について説明する。ダイヤフラムユニット51は、ダイヤフラムユニット51をバッファーベース59に固定しているネジがバッファーベース59のネジ穴59bから外されることによって、バッファーベース59から取り外しが可能になる。そして、ダイヤフラムユニット51は、矢印10aで示す鉛直方向のうち上方向にバッファーベース59に対して移動させられることによって、バッファーベース59から取り外される。
図14は、インクジェットプリンター10のブロック図である。
図14に示すように、インクジェットプリンター10は、インクジェットヘッド14、脱気ポンプ23、バルブ24および循環バルブ25と、各ポンプユニット70のフォトセンサー47と、各ポンプユニット70の各バッファー50のフォトセンサー64と、各ポンプユニット70のステッピングモーター72と、媒体90(図1参照。)を矢印10c(図2参照。)で示す方向に搬送する媒体搬送装置81と、矢印10b(図1参照。)で示す方向にキャリッジ13(図1参照。)を移動させるキャリッジ駆動装置82と、種々の操作が入力される例えばボタンなどの入力デバイスである操作部83と、種々の情報を表示するLCD(Liquid Crystal Display)などの表示デバイスである表示部84と、ネットワーク経由で、または、ネットワークを介さずに有線または無線によって直接に、外部の装置と通信を行う通信デバイスである通信部85と、各種の情報を記憶する半導体メモリー、HDD(Hard Disk Drive)などの不揮発性の記憶デバイスである記憶部86と、インクジェットプリンター10全体を制御する制御部87とを備えている。
制御部87は、例えば、CPU(Central Processing Unit)と、プログラムおよび各種のデータを記憶しているROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)とを備えている。CPUは、ROMまたは記憶部86に記憶されているプログラムを実行する。
次に、インクジェットプリンター10の動作について説明する。
まず、ダイヤフラムポンプ30の動作について説明する。
図15は、インク貯留室31aが凹んでいてダイヤフラム32にプッシャー41が接触している状態でのダイヤフラムポンプ30の側面断面図である。
ダイヤフラムポンプ30は、ステッピングモーター72が駆動されてカムシャフト45が回転させられると、図5に示す状態と、図15に示す状態とを繰り返す。すなわち、ダイヤフラムポンプ30は、図15に示す状態から図5に示す状態に移行する場合に、ダイヤフラムポンプ30の外部から流入ポート部材39を介してインク貯留室31aの内部にインクを導入し、図5に示す状態から図15に示す状態に移行する場合に、インク貯留室31aの内部から流出ポート部材40を介してダイヤフラムポンプ30の外部、すなわち、バッファー50にインクを移送する。
ただし、ダイヤフラムポンプ30は、バッファー50のインク貯留室51aが最大限に膨らんでいる場合など、インク貯留室31aの内部のインクの圧力が特定の圧力以上に高くなった場合には、図15に示す状態の代わりに、図16に示す状態になる。
図16は、インク貯留室31aが膨らんでいてダイヤフラム32にプッシャー41が接触している状態でのダイヤフラムポンプ30の側面断面図である。
図16に示す状態では、矢印10aで示す鉛直方向におけるプッシャー41の長さがバネ44の作用によって短くなることによって、プッシャー41がダイヤフラム32の位置を変化させない。したがって、ダイヤフラムポンプ30は、「インク貯留室31aの内部のインクの圧力が特定の圧力以上に高くなってインクジェットプリンター10に不具合が生じる」という事態の発生を抑えることができる。
次に、バッファー50の動作について説明する。
バッファー50は、ダイヤフラムポンプ30からインクが移送されてくると、バッファー50の外部、すなわち、ダイヤフラムポンプ30から流入ポート部材57を介してインク貯留室51aの内部にインクを導入し、図11に示す状態になる。
そして、バッファー50は、インクジェットヘッド14によってインクが吐出されると、インク貯留室51aの内部から流出ポート部材58を介してバッファー50の外部、すなわち、インクジェットヘッド14に向けてインクを移送する。
図17は、インク貯留室51aが凹んでいる状態でのバッファー50の側面断面図である。
例えば、バッファー50は、インク貯留室51aの内部から流出ポート部材58を介してインクジェットヘッド14に向けてインクを移送した結果、図17に示す状態になったとしても、ダイヤフラムポンプ30からインクが移送されてくると、再び図11に示す状態になる。
次に、印刷を実行する場合のインクジェットプリンター10の動作について説明する。
通信部85を介して印刷データを受信すると、制御部87は、通信部85を介して受信した印刷データに基づいて、媒体90に対して印刷を実行する。すなわち、制御部87は、キャリッジ駆動装置82によって矢印10bで示す方向にキャリッジ13を移動させてインクジェットヘッド14によって媒体90に向けてインクを吐出することによって、矢印10bで示す方向における媒体90に対する印刷を実行する。また、制御部87は、矢印10bで示す方向における媒体90に対する印刷を実行する度に、媒体搬送装置81によって矢印10cで示す方向に媒体90を搬送することによって、矢印10cで示す方向における媒体90に対する印刷の位置を変更する。
制御部87は、印刷を実行している間、脱気ポンプ23を駆動させ続ける。また、制御部87は、印刷を実行している間、循環バルブ25を閉じている。
制御部87は、ステッピングモーター72を駆動した後にステッピングモーター72を停止する場合に、フォトセンサー47がプッシャーベース43の突起部43fを検出している状態でステッピングモーター72を停止しても良い。
印刷中のダイヤフラムポンプ30の制御の方法については、以下に説明する第1の方法から第4の方法までの4つの方法の他、種々の方法が考えられる。
(1)第1の方法
制御部87は、矢印10bで示す方向における媒体90に対する印刷を実行する度に、ステッピングモーター72を駆動してカムシャフト45を1回転させる。制御部87は、カムシャフト45が1回転したか否かをフォトセンサー47からの信号に基づいて判断することができる。制御部87は、ステッピングモーター72を駆動している間だけバルブ24を開くようにしても良いし、印刷を実行している間中、バルブ24を開いても良い。
(2)第2の方法
制御部87は、インクジェットヘッド14によるインクの吐出量を監視し、特定の量を吐出した場合に、特定の時間、ステッピングモーター72を駆動する。制御部87は、ステッピングモーター72を駆動している間だけバルブ24を開くようにしても良いし、印刷を実行している間中、バルブ24を開いても良い。
(3)第3の方法
制御部87は、フォトセンサー64からの信号に基づいてバッファー50のインク貯留室51aの容積が特定の容積以下になったと判断すると、特定の時間、ステッピングモーター72を駆動する。制御部87は、ステッピングモーター72を駆動している間だけバルブ24を開くようにしても良いし、印刷を実行している間中、バルブ24を開いても良い。
(4)第4の方法
制御部87は、印刷を実行している間中、バルブ24を開き、ステッピングモーター72を駆動する。
次に、インクを循環させる場合のインクジェットプリンター10の動作について説明する。
制御部87は、インクを循環させるための特定の条件を満たしたと判断すると、バルブ24を閉じて、循環バルブ25を開き、ステッピングモーター72を駆動する。したがって、インクは、ダイヤフラムポンプ30によって移送されて、経路20aの一部と、循環用の経路20bとによって構成される経路を循環する。なお、制御部87は、インクを循環させる場合に、バルブ24を開いていても良い。
以上に説明したように、ダイヤフラムポンプ30は、ダイヤフラム32の交換時にダイヤフラムユニット31が交換されることによって、ダイヤフラム32と、ケーシングとしての貯留室形成部材33およびダイヤフラム固定部材34とがダイヤフラム32の交換時に離れないので、インクが漏れる隙間がダイヤフラム32と、ケーシングとの間に生じず、ダイヤフラム32の交換時にインクの漏れを抑えることができる。
ダイヤフラムポンプ30は、ダイヤフラム32の交換時に交換されるダイヤフラムユニット31が、ダイヤフラム32を駆動する駆動部としてのプッシャー41およびカムシャフト45を支持する筐体46に対して着脱可能であるので、ダイヤフラム32の交換時に筐体46が交換される必要がなく、ダイヤフラム32の交換時に無駄の発生を抑えることができる。
ダイヤフラムポンプ30は、駆動部によるダイヤフラム32の駆動方向、すなわち、矢印10aで示す鉛直方向と直交する矢印10eで示す方向にダイヤフラムユニット31が筐体46に対して移動させられることによってダイヤフラムユニット31のユニット固定部34b、34cおよび34dが筐体46に接触し、ユニット固定部34b、34cおよび34dが筐体46に接触することによって鉛直方向において筐体46に対してダイヤフラムユニット31を固定するので、駆動部によるダイヤフラム32の駆動時に、駆動部によるダイヤフラム32の駆動方向に筐体46に対してダイヤフラムユニット31が移動することを、例えば駆動方向に延在するネジによってダイヤフラムユニット31を筐体46に単純に固定する構成と比較して、強固に抑えることができる。したがって、ダイヤフラムポンプ30は、筐体46に対してダイヤフラムユニット31が着脱可能であっても、駆動部による駆動に応じてインクを高精度に移送することができる。
インクジェットプリンター10は、本実施の形態において、プッシャーベース43の突起部43fの位置をフォトセンサー47によって検出する。しかしながら、インクジェットプリンター10は、プッシャーベース43の突起部43fの位置をフォトセンサー以外の方法によって検出するようになっていても良い。
インクジェットプリンター10は、本実施の形態において、ダイヤフラム接触部材61の突起部61aの位置をフォトセンサー64によって検出する。しかしながら、インクジェットプリンター10は、ダイヤフラム接触部材61の突起部61aの位置をフォトセンサー以外の方法によって検出するようになっていても良い。
インクジェットプリンター10は、本実施の形態において、ダイヤフラムポンプ30をステッピングモーター72によって駆動する。しかしながら、インクジェットプリンター10は、ダイヤフラムポンプ30をステッピングモーター以外の方法によって駆動するようになっていても良い。
インクジェットプリンター10は、本実施の形態において、プラテン11に対して媒体90を矢印10cで示す副走査方向に搬送することによって、インクジェットヘッド14に対して媒体90を副走査方向に移動させている。しかしながら、インクジェットプリンター10は、プラテン11を図1に示すものより副走査方向に伸ばして、プラテン11に対してレール12を副走査方向に移動させることによって、媒体90に対してインクジェットヘッド14を副走査方向に移動させても良い。
ダイヤフラムポンプ30は、本実施の形態において、インクジェットプリンター10に備えられている。しかしながら、ダイヤフラムポンプ30は、インクジェットプリンター10以外の装置に備えられても良い。例えば、ダイヤフラムポンプ30は、インク以外の液体を移送するものでも良い。