JP7079868B2 - 外装部材の取付構造及び外壁構造 - Google Patents

外装部材の取付構造及び外壁構造 Download PDF

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Description

本発明は、建物の躯体等に設けられた板状のパネルの表面に、外装部材を取り付ける取付構造に関するものであり、パネルに孔あけ加工等をすることなく外装部材を強固に取り付けることができる取付構造に関するものである。
押出成形セメント板は軽量かつ高い強度を有していることから、建物の外壁材として広く用いられている。押出成形セメント板等のパネルの表面に、タイル等の外装部材を取り付ける場合、接着剤やモルタルで直接貼り付けることが行われている。接着剤やモルタルで直接貼り付けた場合には、施工後、タイル等の貼り付きの状態を確認するための定期的な検査が必要となる。
例えば押出成形セメント板の表面から中空部に通じる孔をあけ、中空部内に受け部材を設置し、押出成形セメント板の表側にプレートを設置し、受け部材とプレートとを、孔を通した固定ボルトで緊結することで、外装部材を取り付ける取付方法が知られている。この方法によれば、孔を通した固定ボルトで外装部材を受けるため、接着剤やモルタルで直接張り付けたときよりも、取付信頼性が向上し、検査を低減できる。
一方、押出成形セメント板の中空部に通じる孔をあけると、負圧を受けたときに本来有する曲げ耐力よりも小さい力で破壊が起こることが想定されることから、許容応力度を下げて設計することを要する。許容応力度を下げて設計することは、押出成形セメント板の支持スパンを小さくすることにつながり、建物の支持スパンの自由度が低下するといった問題がある。また一度、孔をあけると、補修しても、このような問題が生じるため、別の外装部材を取り付けるための再度の孔あけができず、用いる外装部材の自由度が低下するといった欠点もある。
押出成形セメント板に孔をあけない取付構造として、例えば特許文献1に記載の取付構造が知られている。特許文献1には、パネルの溝部の底面とリブに設けられた係合凸部との間に装着されて当該溝部に取り付けられる固定部と、この固定部と結合し植物伸長用補助部材を取り付けるための取付部とを備える補助部材取付具、及びそれを用いた緑化構造が記載されている。この補助部材取付具では、固定部の底面側に設けた押圧部材によって、固定部を係合凸部へ係合させると共に押圧し、これにより当該補助部材取付具を固定している。
特許文献2には、コンクリート壁面に接する断熱パネルの取付構造が記載されている。この構造では、断熱パネルに横断面台形状のあり溝を形成し、このあり溝に固定金具を係合させて、断熱パネルを固定している。固定金具は、パネル表面に接するプレートと、あり溝内の屈曲金具とを有しており、当該プレートと、このプレートに接した当該屈曲金具とで構成された引掛空間を、溝の縁部分に引っ掛けることで、断熱パネルを取り付けている。
特開2013-094091号公報 実開昭57-204351号公報
特許文献1に記載された取付構造では、固定部の底面側に設けた押圧部材によって、固定部を係合凸部へ係合させて押圧していることから、押圧部材の締め付けによって係合凸部へ過大な押圧力がかかる場合がある。係合凸部へ過大な押圧力がかかると、係合凸部の変形や破損に繋がる恐れがあり、その押圧力の大きさが制限される。押圧力の大きさが制限されることで固定部の保持力も制限されることから、表面に取り付ける外装部材が限られてしまう。
特許文献2に記載された取付構造では、プレートと屈曲金具で構成された引掛空間の大きさと溝の縁部分の精度によって、この引掛空間と、溝の縁部分との間にガタツキが生じる可能性がある。また、溝の縁部分に作用する力は表裏方向のいずれか一方向となる。このような取付構造を押出成形セメント板等のパネルに適用すると、特許文献1の場合と同様に、溝の縁部分の変形や破損に繋がる恐れがあり、表面に取り付ける外装部材が限られてしまうといった問題がある。
そこで本発明は従来技術の問題点に鑑み、孔あけによる許容応力度の低減を招くことがなく、取り付けられる外装部材や取付位置が制限されない外装部材の取付構造及び外壁構造を提供することを目的とする。
本発明の外装部材の取付構造は、複数の中空部が一方向に並設されると共に、裏側部分を構成する背面側基材、表側部分を構成し当該背面側基材よりも厚みが大きい表面側基材、表面側基材と背面側基材を繋ぐ複数の隔壁を有する押出成形セメント板への外装部材の取付構造において、前記押出成形セメント板の表面側基材に、前記中空部に対して個別の空間として形成された一方向へ延在する取付溝であって、溝幅方向の両側の溝開口縁に、互いに突状に対峙しかつ当該溝開口縁に沿って延びる長鍔部が形成された取付溝と、前記取付溝の外部で前記両長鍔部の表側に当接している押さえ部材と、前記取付溝の内部で前記両長鍔部の裏側に当接している固定部材と、前記両長鍔部の表裏の各々に当接された前記押さえ部材と前記固定部材とを緊結することによって前記外装部材を固定する緊結部材と、を備え、前記押出成形セメント板の長手方向と直交する幅方向における、前記取付溝の中央部とこの取付溝に近い前記中空部の中央部とがずれており、前記両長鍔部が、前記押さえ部材と前記固定部材とで表裏方向の両側から略同じ押圧力で挟み込まれ、前記外装部材は、前記押出成形セメント板の表面に固定された下地部材と、この下地部材に嵌め合わされたカバー部材とで中空状に構成されており、当該下地部材の一部が前記押さえ部材とされ、前記緊結部材における当該押出成形セメント板の表側に出ている頭部分が、当該中空状の外装部材の内部側に位置していることを特徴とするものである。
本発明の外装部材の取付構造によれば、取付溝の溝幅方向の両側の溝開口縁に、互いに突状に対峙しかつ当該溝開口縁に沿って延びる長鍔部が形成され、両長鍔部の表裏の各々に当接している押さえ部材と固定部材とを緊結することで、両長鍔部が表裏方向の両側から略同じ押圧力で挟み込まれているため、両長鍔部には押さえ部材或いは固定部材による一方向の力は作用せず、両長鍔部を表裏から均等に押さえ込むだけとなる。そのため、押さえ部材と固定部材の締め付けによる両長鍔部の変形や破損に繋がる恐れはない。これにより、両長鍔部には外装部材を保持するだけの荷重が掛かるだけとなるので、様々な外装部材を取り付けることができ、取付位置も制限されない。また、パネルへの孔あけは不要であり、孔あけによる許容応力度の低減を招くこともない。
前記固定部材に表裏を貫通するネジ孔を形成し、当該固定部材のネジ孔に前記緊結部材を貫通可能に螺合させ、前記取付溝の溝底に対して進退自在とし、前記取付溝の溝底と、前記緊結部材の先端を離間させればよい。取付溝の溝底と、これに対して進退自在とした緊結部材の先端とが離間しており、固定部材のネジ孔への緊結部材の螺合の進行後でも、取付溝の溝底を緊結部材で押した状態とはなっていない。緊結部材で取付溝の溝底を押した状態となっていれば、取付溝の溝底からの反力によって、両長鍔部の表裏から挟み込む押圧力のバランスが崩れるが、このバランスの崩れを起こさせることがない。
前記各長鍔部は、表側に向かうに従って当該両長鍔部間が互いに狭まるように傾斜する傾斜裏面を有し、前記固定部材は、基部と、この基部の両側に延設されて前記各長鍔部の傾斜裏面に沿う傾斜部と、を有し、前記固定部材の両傾斜部の各々が前記各長鍔部の傾斜裏面に当接するようにしてもよい。固定部材の両傾斜部の各々を、各長鍔部の傾斜裏面に当接させることで、各長鍔部の裏側への押圧力が斜め方向となり、押圧力を各長鍔部のより厚みある厚肉部へ向けることができる。そのため、各長鍔部の耐力が向上し、取り付け強度を高めることができ、外装部材を強固に取り付けることができる。
前記押さえ部材はどのような形状、大きさであってもよい。押さえ部材、前記外装部材の一部として構成されている。この場合、外装部材の取付構造の構成部材を低減することができる。
押出成形セメント板で構成された外壁へ様々な外装部材を取り付けることができる。
本発明の外壁構造は、前記取付溝が複数並設された複数の前記押出成形セメント板で建物の壁面が構成され、上記のいずれかの外装部材の取付構造によって、この壁面の全面或いは一部の面に前記外装部材が取り付けられていることを特徴とするものである。
上記本発明の外壁構造によれば、押出成形セメント板の許容応力度の低減を招くことがない取付構造によって、様々な外装部材を取り付け可能な外壁構造とすることができる。また、隣り合う取付溝間にリブが構成されたリブ付きのデザインパネルとしての機能をもたせながら、このデザインパネルの全面或いは一部の面に外装部材を取り付けることができる。
本発明によれば、両長鍔部には押さえ部材或いは固定部材による一方向の力は作用せず、両長鍔部を表裏から均等に押さえ込むだけとなるため、押さえ部材と固定部材の締め付けによる両長鍔部の変形や破損に繋がる恐れはない。これにより、両長鍔部には外装部材を保持するだけの荷重が掛かるだけとなるので、様々な外装部材を取り付けることができ、取付位置も制限されない。また、押出成形セメント板への孔あけは不要であり、孔あけによる許容応力度の低減を招くこともない。
本発明の第1実施形態に係る外装部材の取付構造を示す横断面図である。 図1の外装部材の取付構造の要部の横断面図である。 挿入ナット(固定部材)の斜視図である。 本発明の第2実施形態に係る外装部材の取付構造を示す横断面図である。 図4の外装部材の取付構造の要部の横断面図である。 挿入ナット(固定部材)の斜視図である。 本発明の第3実施形態に係る外装部材の取付構造を示す横断面図である。 外装部材が取り付けられた状態を示す状態図である。 他の外装部材が取り付けられた例を示す横断面図である。
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る外装部材の取付構造1を示す横断面図であり、図2は図1の外装部材の取付構造1の要部の横断面図である。本実施形態では、外装部材100を取り付けるパネルとして押出成形セメント板2を用いた例を挙げて説明する。横張り工法又は縦張り工法によって建物の躯体に取り付けられる押出成形セメント板2は、セメント、骨材、繊維、混和等を混練した混合物を押出成形機で押し出し、養生硬化後、所定寸法に切断して製作されたものである。以下の説明では、押出成形セメント板2の押出方向を長手方向(図1貫通方向)とし、押出方向と直交する方向(図1左右方向)を幅方向とする。
押出成形セメント板2には、断面矩形状の複数の中空部3が長手方向に互いに平行して構成されている。押出成形セメント板2は、表側部分を構成する表面側基材(表面部)4、裏側部分を構成する背面側基材5、表面側基材4と背面側基材5を繋ぐ複数の隔壁6、及び隣接する他の押出成形セメント板と嵌め合わせるための嵌合部7で構成されている。
表面側基材4は背面側基材5よりも厚く形成されており、この表面側基材4に、長手方向へ延在する複数の取付溝10が形成されている。本実施形態では6つの取付溝10が形成されているが、取付溝10を設ける数、幅方向の位置は限定されない。図2のように取付溝10の幅方向(溝幅方向)の両側の溝開口縁10aに、互いに突状に対峙しかつ当該溝開口縁10aに沿って長手方向に延びる長鍔部11が形成されている。これら長鍔部11は、幅方向へ突出している。長鍔部11は、押出成形セメント板2の長手方向の両端部間に渡って断面略矩形状に形成されている。両側の長鍔部11の存在によって、取付溝10の溝開口縁10aは狭まっており、取付溝10は両長鍔部11間の幅狭空間12と、この幅狭空間12の内側の幅広空間13とでT字状に構成されている。
図1のように、本実施形態の押出成形セメント板2の表面には、外装部材100として、吸音用のグラスウール101が設けられた金属パネル102が取り付けられている。金属パネル102は、押出成形セメント板2の表面に固定された下地部材102aと、この下地部材102aに嵌め合わされて、その両側でネジ止めされるカバー部材102bとからなる。押出成形セメント板2に下地部材102aを固定した後、グラスウール101を下地部材102aに充てがい、グラスウール101をカバー部材102bで覆うと共に、下地部材102aにカバー部材102bを固定する。
押出成形セメント板2の取付溝10の内部に、挿入ナット14(固定部材)が設置されている。挿入ナット14は、押出成形セメント板2の取付溝10の端部から挿入されたものである。図3は挿入ナット14の斜視図である。挿入ナット14は方形平板状に形成され、当該挿入ナット14の中央部には表裏を貫通するネジ孔14aが形成されている。挿入ナット14は、両長鍔部11間の幅狭空間12よりも大きい幅寸法を有し、幅広空間13内で長鍔部11の裏側に入り込み、取付溝10の内部から長鍔部11の裏面11aに当接している。取付溝10の幅広空間13の表裏方向寸法は挿入ナット14の厚みよりも大きい。従って、挿入ナット14と溝底10sとの間に間隔があけられている。
金属パネル102の下地部材102aの一部は、外装部材の取付構造1における、押さえ部材15として機能している。外装部材100の一部を押さえ部材15として機能させることで、外装部材の取付構造1の構成部材を低減することができる。下地部材102aは、押出成形セメント板2の表面2aに当接しており、取付溝10の外部で両長鍔部11の表面11bに当接している。金属パネル102の下地部材102aの一部である押さえ部材15には、貫通孔15aが形成されており、その貫通孔15aにボルト(緊結部材)16が貫通している。
図2のようにボルト16は、さらに挿入ナット14のネジ孔14aに貫通可能に螺合して、取付溝10の溝底10sに対して進退自在となっている。方形平板状の挿入ナット14は、取付溝10の内部での回転が規制されている。ボルト16を回転させることにより、両長鍔部11の表裏の各々に当接させた押さえ部材15と挿入ナット14とが互いに緊結され、両長鍔部11が、押さえ部材15と挿入ナット14とで表裏方向の両側から挟み込まれている。挿入ナット14のネジ孔14aに螺合して貫通可能なボルト16の先端16aは、取付溝10の溝底10sと離間している。
ボルト16が締め込まれ、押さえ部材15と挿入ナット14とが緊結された図2の状態で、ボルト16の先端16aが取付溝10の溝底10sと離間している。挿入ナット14のネジ孔14aへのボルト16の螺合の進行後であっても、取付溝10の溝底10sをボルト16で押した状態とはなっていない。そのため、挿入ナット14には、溝底10sからの反力は作用していない。仮に、ボルト16の先端16aが取付溝10の溝底10sを押した状態となっていれば、挿入ナット14に溝底10sからの反力が作用し、長鍔部11が裏側から大きな力で挿入ナット14に押圧されることになる。
これに対し、本実施形態の挿入ナット14には、溝底10sからの反力は作用しておらず、取付溝10の長鍔部11は、その表裏から略同じ押圧力fで挟み込まれている。ボルト16で取付溝10の溝底10sを押した状態となっていれば、取付溝10の溝底10sからの反力によって、長鍔部11の表裏から挟み込む押圧力のバランスが崩れるが、本実施形態では、このバランスの崩れを起こさせることがない。両長鍔部11を表裏から略同じ押圧力fで挟み込むことで、両長鍔部11に無理な力がかからず、外装部材100の取り付け強度が格段に向上する。
本実施形態の外装部材の取付構造1によれば、取付溝10の幅方向の両側の溝開口縁10aに、互いに突状に対峙しかつ当該溝開口縁10aに沿って長手方向に延びる長鍔部11を形成し、両長鍔部11の表裏の各々に当接している押さえ部材15と挿入ナット14とを緊結することで、両長鍔部11が表裏方向の両側から略同じ押圧力fで挟み込まれている。従って、両長鍔部11には押さえ部材15或いは挿入ナット14による一方向の力は作用せず、両長鍔部11を表裏から均等に押さえ込むだけとなる。そのため、押さえ部材15と挿入ナット14の締め付けによる両長鍔部11の変形や破損に繋がる恐れはない。これにより、両長鍔部11には外装部材100を保持するだけの荷重が掛かるだけとなるので、様々な外装部材100を取り付けることができ、取付位置も制限されない。それに加え、押出成形セメント板2への孔あけは不要であり、孔あけによる許容応力度の低減を招くこともない。
長鍔部11を挟み込んだ状態で、押さえ部材15と挿入ナット14とを緊結しているので、容易にこれら各部材の取り替えを行うことができる。さらに、挿入ナット14を取付溝10内で長手方向にスライドさせて、取付溝10の任意の位置で、外装部材の取付構造1を構成できるため、外装部材100の取り付けのための自由度が向上する。長鍔部11を表裏の両側から挟み込む、押さえ部材15と挿入ナット14の間に間隔が設けられていることで、外装部材100、挿入ナット14、押さえ部材15及びボルト16による緊結状態の精度に関係なく、より強固に外装部材100を取り付けることができる。
また、取付溝10が複数並設された複数の押出成形セメント板で建物の壁面を構成し、本実施形態の外装部材の取付構造1によって、この壁面の全面或いは一部の面に外装部材を取り付けるようにしてもよい。
この場合、パネルの許容応力度の低減を招くことがない取付構造によって、様々な外装部材を取り付け可能な外壁構造とすることができる。隣り合う取付溝10間にリブが構成されたリブ付きのデザインパネルとしての機能をもたせながら、このデザインパネルの全面或いは一部の面に様々な外装部材を取り付けることができる。これにより、高い意匠性を有し、かつ表面に様々な部材を取り付け可能な外壁とすることができる。
長鍔部11を表裏から略同じ押圧力で挟み込むことができれば、取付溝10の形状や、挿入ナット14の形状を限定するものではない。図4は本発明の第2実施形態に係る外装部材の取付構造20を示す横断面図であり、図5は図4の外装部材の取付構造20の要部の横断面図である。図6は挿入ナット21(固定部材)の斜視図である。
本実施形態が第1実施形態と異なる点は取付溝22の幅広空間23が断面略台形状に形成され、挿入ナット21がそれに合わせた形状となっている点である。取付溝22と挿入ナット21以外の構成、及び金属パネルの取り付け形態は第1実施形態と同じである。長鍔部24は、表側に向かうに従って当該両長鍔部24間が互いに狭まるように傾斜する傾斜裏面24rを有しており、断面略三角形状に形成されている。
図6のように挿入ナット21は、平板状の基部21Aと、この基部21Aの幅方向両側に延設されて各長鍔部24の傾斜裏面24rに沿う傾斜部21Bとを有している。図5のように、挿入ナット21の両傾斜部21Bの各々が各長鍔部24の傾斜裏面24rに当接している。両長鍔部24の表裏の各々に当接している押さえ部材27と挿入ナット21とが、ボルト28によって緊結されていることで、両長鍔部24が表裏方向の両側から略同じ押圧力で挟み込まれている。挿入ナット21のネジ孔21cに螺合して貫通可能なボルト28の先端28aは、取付溝22の溝底22sと離間している。
本実施形態では、押出成形セメント板25に負圧がかかったとき、挿入ナット21によって長鍔部24にかけられる押圧力は表裏方向だけでなく、斜め方向である図5の矢印方向にも作用する。その斜め方向の押圧力faは、当接している長鍔部24には垂直方向にかかることになる。これにより、剪断の界面を広くとることができ、取り付け強度をさらに向上させることができる。
挿入ナット21の両傾斜部21bの各々を、各長鍔部24の傾斜裏面24rに当接させることで、各長鍔部24の裏側への押圧力が斜め方向へも広がり、この押圧力を各長鍔部24のより厚みある厚肉部26へ向けることができる。そのため、各長鍔部24の耐力が向上し、取り付け強度を高めることができ、外装部材100を強固に取り付けることができる。
仮に押さえ部材27と挿入ナット21が接するような構造であれば、これら両部材の精度によっては長鍔部24の保持が不十分となるが、当該両部材間に間隔が設けられていることで、これら両部材の精度に関係なく、より強固に外装部材100を取り付けることができる。
上記の実施形態では、外装部材の取付構造1、20の押さえ部材15、27を、外装部材100の一部として構成しているが、押さえ部材の形態は、挿入ナットと共に長鍔部を挟み込むことができれば、どのようなものであってもよい。図7は本発明の第3実施形態に係る外装部材の取付構造30を示す横断面図であり、図8は図7に示す構成で外装部材200が取り付けられた状態を示す状態図である。本実施形態の外装部材200は、押出成形セメント板31に直接的に接している吸音用のグラスウール201と、そのカバー部材202とからなる。押出成形セメント板31の幅方向両隅にのみ長手方向に延在する取付溝32が形成されている。外装部材200は、押出成形セメント板31の幅方向両隅の2カ所で取り付けられている。
押さえ部材33は、外装部材200とは別体の平面視矩形状のプレート材である。取付溝32及び挿入ナット34の形状は第2実施形態と同じである。グラスウール201には、内面にネジ山を有する円筒状のスリーブ35が差し込まれている。カバー部材202に設けられたボルト孔にボルト36が挿通されて、スリーブ35の一端部35aに螺合している。スリーブ35の他端部35bには、全ネジボルト37が螺合している。ボルト36を締め込むことによって、押さえ部材33と挿入ナット34が緊結されている。断面略三角形状の両長鍔部38の表裏の各々に当接している押さえ部材33と挿入ナット34とが緊結されていることで、両長鍔部38が表裏方向の両側から略同じ押圧力で挟み込まれている。
第2実施形態と同様に、押出成形セメント板31に負圧がかかったとき、挿入ナット34によって長鍔部38にかけられる押圧力は、当接する長鍔部38には垂直方向にかかることになる。これにより、剪断の界面を広くとることができ、取り付け強度をさらに向上させることができる。また、各長鍔部38の裏側への押圧力が斜め方向となり、この押圧力を各長鍔部38のより厚みある厚肉部39へ向けることができる。そのため、各長鍔部38の耐力が向上し、取り付け強度を高めることができ、外装部材200を強固に取り付けることができる。
本発明は上記の実施形態に限定するものではない。開示した実施形態は本発明に係る外装部材の取付構造の例示であり制限的なものではない。押出成形セメント板等のパネルの建物への取り付け態様は限定されない。取付溝、固定部材、押さえ部材等は本発明の効果を損なわない限りにおいてどのような形態のものであってもよい。パネルの幅方向に、より多くの取付溝を設けてもよい。押出成形セメント板の中空部の数、形状も限定されない。
本発明の外装部材の取付構造の適用対象となるパネルは限定せず、取付溝及び長鍔部を構成可能であれば、押出成形セメント板の他、金属パネル、PCコンクリート等、他の素材からなるものであってもよい。本発明に係る外装部材の取付構造で取り付けられる外装部材として、例えば図9に示すように保水材料300を金属製のパネル301で覆い、そこに植物302が植え付けられているようなものであってもよい。図9に示す取り付け形態は第1実施形態と同じである。
本発明の外装部材の取付構造で取り付けられる他の外装部材として、大型タイル、石材、その他の機能を有する部材、例えば吸遮音機能を有する部材、看板、照明等、通常、壁面に取り付けることができるものであれば、適用可能である。この場合、押さえ部材としてこれらを保持する機能を設けたものを用いれば良い。パネルに多数の取付溝を設けておけば、表面に外装部材が取り付けられていない状態では、溝付きのデザインパネルとしての機能を果たすことになる。従って、本発明の機能をもつパネルを壁面として構成すれば、リブデザインの壁面を構成できると共に、様々な部材を孔あけ加工なしに取り付け可能な壁面とすることができる。
1、20、30 外装部材の取付構造
2、25、31 押出成形セメント板
3 中空部
10、22、32 取付溝
10a 溝開口縁
10s、22s 溝底
11、24、38 長鍔部
11a 裏面
11b 表面
12 幅狭空間
13、23 幅広空間
14 挿入ナット(固定部材)
15、27、33 押さえ部材
16、28、36 ボルト
16a、28a 先端
21、34 挿入ナット
21A 基部
21B 傾斜部
26、39 厚肉部
24r 傾斜裏面
35 スリーブ
37 全ネジボルト
100、200 外装部材
101、201 グラスウール
102 金属パネル
102a 下地部材
102b、202 カバー部材

Claims (4)

  1. 複数の中空部が一方向に並設されると共に、裏側部分を構成する背面側基材、表側部分を構成し当該背面側基材よりも厚みが大きい表面側基材、表面側基材と背面側基材を繋ぐ複数の隔壁を有する押出成形セメント板への外装部材の取付構造において、
    前記押出成形セメント板の表面側基材に、前記中空部に対して個別の空間として形成された一方向へ延在する取付溝であって、溝幅方向の両側の溝開口縁に、互いに突状に対峙しかつ当該溝開口縁に沿って延びる長鍔部が形成された取付溝と、
    前記取付溝の外部で前記両長鍔部の表側に当接している押さえ部材と、
    前記取付溝の内部で前記両長鍔部の裏側に当接している固定部材と、
    前記両長鍔部の表裏の各々に当接された前記押さえ部材と前記固定部材とを緊結することによって前記外装部材を固定する緊結部材と、を備え、
    前記押出成形セメント板の長手方向と直交する幅方向における、前記取付溝の中央部とこの取付溝に近い前記中空部の中央部とがずれており、
    前記両長鍔部が、前記押さえ部材と前記固定部材とで表裏方向の両側から略同じ押圧力で挟み込まれ
    前記外装部材は、前記押出成形セメント板の表面に固定された下地部材と、この下地部材に嵌め合わされたカバー部材とで中空状に構成されており、当該下地部材の一部が前記押さえ部材とされ、
    前記緊結部材における当該押出成形セメント板の表側に出ている頭部分が、当該中空状の外装部材の内部側に位置していることを特徴とする外装部材の取付構造。
  2. 前記固定部材に表裏を貫通するネジ孔が形成され、当該固定部材のネジ孔に前記緊結部材が貫通可能に螺合して、前記取付溝の溝底に対して進退自在となっており、
    前記取付溝の溝底と、前記緊結部材の先端が離間していることを特徴とする請求項1に記載の外装部材の取付構造。
  3. 前記各長鍔部は、表側に向かうに従って当該両長鍔部間が互いに狭まるように傾斜する傾斜裏面を有し、
    前記固定部材は、基部と、この基部の溝幅方向両側に延設されて前記各長鍔部の傾斜裏面に沿う傾斜部と、を有し、
    前記固定部材の両傾斜部の各々が前記各長鍔部の傾斜裏面に当接していることを特徴とする請求項1又は2に記載の外装部材の取付構造。
  4. 前記取付溝が複数並設された複数の前記押出成形セメント板で建物の壁面が構成され、
    請求項1~3のいずれかの外装部材の取付構造によって、この壁面の全面或いは一部の面に前記外装部材が取り付けられていることを特徴とする外壁構造。
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