以下、図面を参照しつつ本発明の各実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る腕時計の文字板を視認面側から見た平面図である。なお、視認面側とは、ユーザが腕時計1の使用時に視認する側である。また、以下の説明において、視認面側の反対側を裏面側と呼ぶこととする。また、腕時計1が備える各基板、各層等における視認面側の面を視認面又は上面、その反対側の面を裏面又は下面と呼ぶこととする。
腕時計1は、視認部材である文字板10と、太陽電池30とを含む。図1の二点鎖線は、文字板10の裏面側に配置される太陽電池30の外形及び分割線Dを示している。図1においては図示を省略するが、文字板10上には指針が運針するように配置されるとよい。
文字板10の視認面側には、時刻を示す時字50や、ブランド名、製品名等を示すロゴマーク、その他の模様等を表示する表示部60が設けられている。図1においては、時字50としてローマ字のI~XIIが示されており、表示部60として、ブランド名を示す「ABCDEFG」と、黒抜きの三角形と四角形からなるマークが表示されている。
以下の説明において、文字板10のうちユーザが白色として認識する領域を淡色部W、ユーザが黒色として認識する領域を濃色部BKと呼ぶ。図1に示す腕時計1においては、文字板10の視認面のうち時字50、表示部60等が設けられる領域が濃色部BKであり、濃色部BK以外の領域が淡色部Wである。図1においては、視認面のうち約86パーセントが淡色部Wであり、約14パーセントが濃色部BKである文字板10の例を示している。
なお、図1に示す文字板10の形状やデザインは一例であり、これに限られるものではなく、少なくとも淡色部Wと濃色部BKを含むものであればよい。
図2は、第1の実施形態に係る腕時計の断面の一部を模式的に示す模式断面図である。なお、図2において、各矢印は、可視光のうち、青色の光成分B(第2の波長帯域の第2の光成分)、緑色の光成分G(第2の波長帯域の第2の光成分)、赤色の光成分R(第1の波長帯域の第1の光成分)を示しており、矢印の向く方向は光の進行方向を示している。また、各光の光量を矢印の長さに対応させて模式的に示している。すなわち、矢印の長さの長いものほど光の光量が多いとする。図2においては、視認面側から文字板10に入射された光の一部は、文字板10において反射又は吸収されるため、文字板10を透過した光の光量は、文字板10に入射された光の光量よりも少なくなることを示している。後述する図5、図6等においても同様とする。
図2に示すように、腕時計1は、文字板10の裏面側に太陽電池30を有する。
太陽電池30は、文字板10を透過した光が入射されることにより発電する。具体的には、太陽電池30は、シリコン等からなる半導体層と、その半導体層の上面及び下面の少なくとも一方に配置される電極層とを含み、光が入射されることにより半導体層で発生した電荷を、電極層で回収し、電極層から蓄電池へ電力を供給する。
文字板10は、吸収層11と、吸収層11の視認面に設けられる淡色層12と、を含む。図2に示すように、第1の実施形態においては、淡色層12が設けられる領域が淡色部Wに対応し、淡色層12が設けられない領域が濃色部BKに対応する。すなわち、ユーザは、文字板10のうち淡色層12が設けられる領域を白色として認識し、文字板10のうち淡色層12が設けられず、吸収層11が露出する領域を黒色として認識することとなる。ユーザがこのように色を認識することなる理由の詳細について以下説明する。
淡色層12は、例えば、透明樹脂に白色の顔料が含まれてなる層であるとよい。淡色層12に入射された光の一部は、透明樹脂と顔料との界面で散乱を生じ、この散乱された光により、ユーザは、文字板10の視認面のうち淡色層12が設けられる淡色部Wを白色として認識することとなる。なお、淡色層12に入射された光の他の一部は、淡色層12を透過し、吸収層11へと入射されることとなる。
淡色層12に含まれる顔料の割合が高いほど、光反射率が上がり、ユーザは文字板10の色としてより濃い白色を認識することなる一方で、太陽電池30へと入射される光の光量が減少することとなる。淡色層12に含まれる顔料の割合が少ないほど、光反射率が下がり、太陽電池30へと入射される光の光量が増加し、発電量が向上する一方で、ユーザは文字板10の色として淡い白色を認識することとなる。
文字板10においては、デザイン性の観点から、視認面がより濃い白色で表されることの要請がある一方で、太陽電池30の発電量を維持することも要求される。そこで、第1の実施形態においては、文字板10のうち、時字50や表示部60等が設けられる濃色部BKに入射された光を透過させる構成を採用することにより、太陽電池30の発電に寄与させることとした。すなわち、文字板10のうち濃色部BKを構成する吸収層11として、光透過性を有する基板を採用した。
第1の実施形態においては、時字50等が設けられる濃色部BKに入射された光を、太陽電池30の発電に寄与させることができ、淡色部Wを濃い白色にした場合であっても、太陽電池30における発電量を維持することができる。
なお、第1の実施形態の文字板10においては、濃色部BKの方が、淡色部Wよりも光透過率が高い。濃色部BKは吸収層11で構成されるのに対して、淡色部Wは吸収層11及び淡色層12の積層構造となっているため、淡色部Wの方が光を透過しにくいためである。
ここで、第1の実施形態においては、可視光のうち、青色の光成分B及び緑色の光成分Gを吸収しやすく、赤色の光成分Gを吸収しにくい性質を有する太陽電池30を用いた。すなわち、太陽電池30においては、青色の光成分B及び緑色の光成分Gが発電に寄与しやすく、赤色の光成分Rは発電に寄与しにくい。具体的には、太陽電池30として、アモルファスシリコン等の半導体層を含むものを用いた。
太陽電池30に吸収されなかった赤色の光成分Rは、太陽電池30の上面で反射されることとなる。太陽電池30の上面で赤色の光成分Rが反射すると、光透過性を有する濃色部BKにおいて赤味を帯びた色の光が漏れ出し、文字板10の審美性が低下してしまうおそれがある。
そこで、第1の実施形態においては、吸収層11として、青色の光成分B及び緑色の光成分Rを透過しやすく、赤色の光成分Rを吸収しやすい性質を有する基板を採用した。具体的には、第1の実施形態においては、吸収層11として、透明基板111と、透明基板111上に貼り付けられるカラーフィルタ112とを備える基板を採用した。
カラーフィルタ112は、青色の光成分B及び緑色の光成分Gに対する光吸収率より高い光吸収率で、赤色の光成分Rを吸収する。すなわち、カラーフィルタ112は、青色の光成分B及び緑色の光成分Gを透過しやすく、赤色の光成分Rを吸収しやすい性質を有するものである。また、透明基板111は、例えば、透明な樹脂からなる基板であるとよい。
図2に示すように、吸収層11に入射された光のうち、青色の光成分Bと緑色の光成分Gは吸収層11を透過しやすく、赤色の光成分Rはカラーフィルタ112に吸収されやすい。このように、文字板10のうち濃色部BKに入射された光のうち、太陽電池30で吸収されやすい青色の光成分B及び緑色の光成分Gは太陽電池30に到達しやすく、太陽電池30で反射されやすい赤色の光成分Rは太陽電池30に到達しにくいため、太陽電池30の上面において反射する光の光量は少ない。
太陽電池30の表面において光が反射されると、ユーザはその反射光の色又は太陽電池30自体の色を視認することとなるが、第1の実施形態の構成によると、太陽電池30の上面で反射される光は少ない、又は無い。そのため、ユーザは、濃色部BKを黒色として認識することとなる。
ここで、図3、図4を参照して、第1の実施形態の吸収層11の一例について説明する。図3は、カラーフィルタのヘイズ値と、そのカラーフィルタを備える吸収層を第1の実施形態に係る腕時計に採用できるか否かの評価を示す図である。図4は、第1の実施形態の吸収層が備えるカラーフィルタにおける波長毎の光透過率を示す図である。
第1の実施形態においては、吸収層11としてヘイズ値が小さいカラーフィルタ112を備える基板を採用した。ヘイズ値とは、可視光を照射したときの透過光に対する拡散光(反射光)の割合である。すなわち、ヘイズ値が大きいほど光を透過しにくく、ヘイズ値が小さいほど光を透過しやすい。また、ヘイズ値が大きい場合、光を透過しにくいことより、カラーフィルタ112自体の色が視認されやすくなってしまう。一方、ヘイズ値が小さい場合、光を透過しやすいことより、カラーフィルタ112自体の色が視認されにくくなる。第1の実施形態の構成においては、ヘイズ値が大きい場合、カラーフィルタ112が設けられる領域が青緑色として視認されることとなり、ヘイズ値が小さい場合、カラーフィルタ112が設けられる領域が黒色として視認されることとなる。また、ヘイズ値が小さいほど、カラーフィルタ112を透過する光量が多くなり、太陽電池30の発電量が増加することとなる。以上述べたように、第1の実施形態において、吸収層11に含まれるカラーフィルタ112としては、ヘイズ値が小さいものを用いることが好ましいといえる。
図3においては、第1の実施形態に採用可能なカラーフィルタ112のヘイズ値を「○」で示し、採用不可のカラーフィルタ112のヘイズ値を「×」で示している。具体的には、図3に示すように、第1の実施形態においては、ヘイズ値が0以上であって3以下の値であれば採用可能とし、それよりもヘイズ値が高いものは不採用とした。なお、ヘイズ値の測定は、表面反射アナライザーRA-532H(キヤノン社製)を用いて行った。
図4においては、第1の実施形態において採用したカラーフィルタ112における可視光領域の光に対する光透過率特性の一例を示している。具体的には、第1の実施形態においては、カラーフィルタ112として、LEE Filters 172番 LAGOON BLUE(LEE Filters社製)を採用した。また、光透過率の測定は、紫外可視分光光度計 UV-1700(島津サイエンス社製)を用いて行った。
図4に示すように、第1の実施形態で採用したカラーフィルタ112においては、青色の光成分B(波長:約435.8nm)の光透過率Tbは約49.5パーセントであり、緑色の光成分G(波長:約546.1nm)の光透過率Tgは約24パーセントであり、赤色の光成分R(波長:約700nm)の光透過率Trは約2.6パーセントであった。このように、カラーフィルタ112は、赤色の光成分Rの光透過率が低い。すなわち、赤色の光成分Rの光吸収率が高い。
ただし、上記特性のカラーフィルタに限られるものではなく、各色の光成分に対する光透過率が、例えば、(Tb+Tg)/2>Trを満たすものであるとよい。すなわち、青色の光成分Bの光透過率Tbと緑色の光成分Gの光透過率Tgの平均値が、赤色の光成分Rの光透過率Trよりも大きければよい。このように、青色の光成分B及び緑色の光成分Gを透過しやすく、赤色の光成分Rを透過しにくく吸収しやすいカラーフィルタ112を備える吸収層11を用いることで、太陽電池30の発電量を維持しつつ、濃色部BKにおいて黒色を表現することが可能となる。
第1の実施形態においては、吸収層11としてカラーフィルタ112を備えるものを示したが、これは一例であり、吸収層11は、ヘイズ値が小さく、青色の光成分B及び緑色の光成分Gに対する光吸収率よりも高い光吸収率で赤色の光成分Rを吸収するものであればよい。例えば、透明樹脂に顔料や染料等を混ぜることにより構成されるものであってもよい。
また、上記においては、カラーフィルタ112のヘイズ値が0~3であり、カラーフィルタ112の光透過率が、(Tb+Tg)/2>Trである例について示したが、吸収層11のヘイズ値が0~3であり、吸収層11の光透過率が、(Tb+Tg)/2>Trを満たすものであってもよい。
以上説明した第1の実施形態においては、文字板10のうち濃色部BKにおいて光を透過させる構成を採用したため、太陽電池30の発電効率を向上することができる。このように、濃色部BKに入射された光を発電に寄与させることができることより、淡色部Wにおける光透過率を下げた場合であっても、太陽電池30の発電量を維持することができる。すなわち、淡色部Wの白色をより濃くすることができ、デザイン性を向上することができる。
また、第1の実施形態においては、濃色部BKにおいて黒色を認識させることができると共に、赤味を帯びた光が濃色部BKから漏れ出すことを抑制することができる。すなわち、文字板10の審美性が低下することを抑制することができる。
なお、第1の実施形態においては、図1に示すように、平面視において、太陽電池30の分割線Dが、濃色部BKと重なる領域が少なくなるように太陽電池30を配置した。なお、分割線Dとは、複数のセルで構成される太陽電池30を平面視した場合における、複数のセルの境界であり、光が入射されても発電が行われない領域である。これにより、太陽電池30のち発電に寄与する発電領域の多くの部分が、光を透過しやすい濃色部BKと重なることとなる。そのため、より効率的に発電を行うことができる。図1においては、平面視において、太陽電池30の分割線Dが、濃色部BKである時字50と重ならない例について示す。ただし、これに限られるものではなく、平面視において、太陽電池30のうち分割線D等の非発電領域がいずれの濃色部BKとも重ならないように、太陽電池30を配置してもよい。この場合、さらに効率的に発電を行うことが可能となる。
なお、図1で示した太陽電池30は、平面形状が円形であり、それを4分割するように分割線が設けられる例について示したが、これに限られるものではない。すなわち、例えば、太陽電池30は、平面形状が角形であってもよいし、非発電領域としての開口や切り欠き等が形成されるものであってもよい。
図5を参照して、第1の実施形態の第1の変形例について説明する。図5は、第1の実施形態の第1の変形例に係る腕時計の断面の一部を模式的に示す模式断面図である。
第1の変形例においては、文字板10の視認面のうち濃色部BKに、反射防止膜40を設けた。このように、文字板10の視認面のうち濃色部BKに反射防止膜40を設けることにより、文字板10の視認面側における光の反射を抑制し、文字板10の光沢を抑えることができる。すなわち、文字板10の外観をマット調にすることができる。特に、濃色部BKの黒色をマット調にすることにより高級感を演出することができる。また、文字板10の裏面側にも反射防止膜40を設けた。カラーフィルタ112及び透明基板111を通過して、太陽電池30に入射された光の一部は太陽電池30の表面で反射され、透明基板111の裏面側に入射される。このように裏面側から入射された光が透明基板111の裏面で反射すると、カラーフィルタ112自体の色が視認されることとなってしまう。そこで、図5に示すように、文字板10裏面側に反射防止膜40を設けることにより、透明基板111の裏面における光の反射を抑制し、カラーフィルタ112自体の色である青緑色が視認されることを抑制できる。その結果、濃色部BKをより濃い黒色としてユーザに視認させることができる。
なお、図5に示す反射防止膜40の配置は一例であり、これに限られるものではない。例えば、反射防止膜40は、文字板10の視認面側及び裏面側のいずれか一方のみに設けられることとしてもよい。また、反射防止膜40は、淡色層12上に設けられていてもよい。
次に、図6を参照して、第1の実施形態の第2の変形例について説明する。図6は、第1の実施形態の第2の変形例に係る腕時計の断面の一部を模式的に示す模式断面図である。なお、第2の変形例においては、図2で示した構成と同じ材料からなる構成については同じ符号を用いることとした。
本例の文字板10は、透明基板111と、透明基板111上に設けられるカラーフィルタ112と、透明基板111上に設けられる淡色層12とを含む。文字板10のうち、カラーフィルタ112が設けられる領域が濃色部BKに対応し、淡色層12が設けられる領域が淡色部Wに対応する。
本例においては、カラーフィルタ112を濃色部BKのみに設けており、淡色部Wに設けていないことより、図2で示した構成と比較して、淡色部Wに入射された光が透過しやすい。そのため、太陽電池30の発電をより効率的に行うことができる。また、カラーフィルタ112を濃色部BKのみに設けており、淡色部Wに設けていないことより、図2で示した構成と比較して、材料コストを削減することが可能となる。また、図2で示した構成と比較して、文字板10の視認面側における濃色部BKと淡色部W間の凹凸を少なくすることができ、より審美性を向上することができる。
図7、図8を参照して、第1の実施形態の第3の変形例について説明する。図7は、第1の実施形態の第3の変形例に係る腕時計の文字板を視認面側から見た平面図である。図8は、第1の実施形態の第3の変形例に係る腕時計の断面の一部を模式的に示す模式断面図であり、図7のVIII-VIII断面図である。
図2においては、視認部材として文字板10を備える腕時計1について説明したが、本例においては、視認部材としての文字板10に加えて、視認部材としての時針22をさらに備える腕時計1について説明する。
図7に示すように、第3の変形例においては、腕時計1は、文字板10上で運針する指針である秒針21、時針22、分針23を有する。
図8においては、第3の変形例に係る腕時計1において、時針22を含む切断線で切り取った断面を示している。なお、図8に示す文字板10は、図2で示した文字板10と同様の構成である。すなわち、指針を介さず文字板10に直接入射される光による太陽電池30の発電は、図2で示した構成と同様に行われることとなる。また、図8に示す時針22において、文字板10が備える構成と同様の構成については同じ符号を用いることとした。
図8に示すように、時針22は、カラーフィルタ等を含む吸収層11と、吸収層11上に設けられる淡色層12とを含む。時針22のうち、淡色層12が設けられる領域は淡色部Wに対応し、淡色層12が設けられておらず吸収層11が視認面側に露出する領域は濃色部BKに対応する。また、図8に示す時針22においては、淡色部Wを囲むように濃色部BKが時針22の縁に設けられるデザインとなっている。
時針22においては、文字板10と同様に、淡色部Wに入射された光は反射されやすく、濃色部BKに入射された光は透過されやすい。また、赤色の光成分Rは濃色部BKにおいて吸収されやすい。
図7、図8においては、平面視において、時針22が、時針22の濃色部BKの一部が文字板10の濃色部BKと重なる方向を向いた状態を示している。具体的には、時針22の濃色部BKの一部が、文字板10上に設けられるブランド名を示す文字「ABCDEFG」の「B」と重なった状態を示している。
以下、図8を参照して、時針22の各領域に入射された光による太陽電池30の発電についてそれぞれ説明する。
まず、時針22の濃色部BKのうち文字板10の淡色部Wと重なる領域に入射された光による太陽電池30の発電について説明する。時針22の濃色部BKに入射された光のうち青色の光成分B及び緑色の光成分Gは、時針22を透過しやすい。一方、時針22の濃色部BKに入射された光のうち赤色の光成分Rは、時針22の吸収層11において吸収されやすく、透過しにくい。時針22の濃色部BKを透過した青色の光成分B及び緑色の光成分Gは、文字板10の淡色部Wに入射され、一部が反射し、他の一部は文字板10を透過する。そして、文字板10を透過した青色の光成分B及び緑色の光成分Gは、太陽電池30に入射され、発電に寄与することとなる。
次に、時針22の淡色部Wのうち文字板10の淡色部Wと重なる領域に入射された光による太陽電池30の発電ついて説明する。時針22の淡色部Wに入射された光は反射されやすい。また、時針22の淡色部Wに入射された光の一部は、淡色層12を透過するが、時針22の吸収層11に入射されることにより、赤色の光成分Rは吸収される。青色の光成分B及び緑色の光成分Gの一部は、時針22を透過する。時針22を透過した青色の光成分B及び緑色の光成分Gは、文字板10の淡色部Wに入射される。その一部は、文字板10をさらに透過することにより、太陽電池30に入射され、僅かではあるが発電に寄与することとなる。
次に、時針22の濃色部BKのうち文字板10の濃色部BKと重なる領域に入射された光よる太陽電池30の発電について説明する。時針22の濃色部BKに入射された光のうち青色の光成分B及び緑色の光成分Gは、時針22を透過しやすい。一方、時針22の濃色部BKに入射された光のうち赤色の光成分Rは、吸収層11において吸収されやすく、透過しにくい。時針22を透過した青色の光成分B及び緑色の光成分Gは、文字板10の濃色部BKに入射される。文字板10の濃色部BKに入射された青色の光成分B及び緑色の光成分Gは透過しやすいため、文字板10を透過して太陽電池30に入射される。そして、文字板10と透過した青色の光成分B及び緑色の光成分Gは、太陽電池30に入射され、発電に寄与することとなる。
以上のように、時針22のうち濃色部BKに入射された光は、濃色部BK又は太陽電池30のいずれかに吸収されるため、反射して時針22に戻ってくることはない。そのため、ユーザは、時針22の濃色部BKを黒色として認識することとなる。
なお、時針22を透過した青色の光成分B及び緑色の光成分Gの一部は文字板10の淡色層12で反射されるため、その反射光により、文字板10の視認面において青緑色を帯びた色が生じることとなる。このような青緑色の反射光の発生の対策として、淡色層12の白色の濃さを薄くするとよい。すなわち、淡色層12に含まれる顔料等の割合を減らし、淡色層12の光反射率を低くするとよい。これにより、青色の光成分B及び緑色の光成分Gは、文字板10の淡色層12を透過しやすくなり、青緑色の反射光が目立ちにくくなる。ただし、デザイン性の観点から、敢えて青緑色の反射光が目立つよう、文字板10の光反射率を高くしても構わない。
なお、時針22に図8で示した構成を採用した上で、時針22の裏面に、青色の光成分B及び緑色の光成分Gを吸収しやすい部材を設けてもよい。具体的には、太陽電池30と同様の材料からなる部材を設けるとよい。それにより、時針22の濃色部BKを、文字板10の濃色部BKと同様の原理で、ユーザに黒色として認識させることができると共に、文字板10において青緑色の反射光が生じることを抑制することができる。なお、この場合、時針22に入射された光は、文字板10の裏面側に配置される太陽電池30には到達しないため、発電効率の観点においては、図8で示した構成の方が有利である。
以上説明した第3の変形例においては、時針22に入射された光を透過させることにより、太陽電池30の発電に寄与させる構成を採用した。これにより、黒色で表される指針として光を吸収するような黒色の物質を用いた場合と比較して、太陽電池30における発電効率をより向上することができる。
なお、図8に示す例においては、太陽電池30に入射される前に、赤色の光成分Rは時針22の吸収層11及び文字板10の吸収層11により吸収されるため、赤色の光成分Rのほとんどは太陽電池30に入射されない。そのため、太陽電池30が赤色の光成分Rを反射することによる審美性の低下は生じない。
なお、第3の変形例においては、指針のうち時針22のみについて説明したが、秒針21や分針23にも同様の構成を採用してもよい。また、時針22等の指針の全体を濃色部BKで構成しても構わない。すなわち、指針の全体を、ユーザが黒色と認識するものとしても構わない。これにより、指針を透過する光の光量が増加し、太陽電池30の発電効率をより向上することができる。
また、第1の実施形態においては文字板10が淡色部W及び濃色部BKを有し、第3の変形例においては文字板10と指針の両方が淡色部W及び濃色部BKを有する例について示したが、これに限られるものではなく、指針のみに淡色部W及び濃色部BKを有する構成を適用しても構わない。この場合、少なくとも、文字板10が光を透過するものであり、文字板10の裏面側に太陽電池30が配置される構成であるとよい。
次に、図9を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。図9は、第2の実施形態に係る腕時計の断面の一部を模式的に示す模式断面図である。第2の実施形態の文字板210においては、第1の実施形態で示した吸収層11の代わりに位相差板付き偏光板211を採用した。
位相差板付き偏光板211は、偏光板211aと、偏光板211aの裏面に貼り付けられる位相差板211bとを含む。偏光板とは、入射光のうち特定方向に偏光した光だけを透過させる板である。位相差板とは、入射光に位相差を与える機能を有する板である。第2の実施形態においては、位相差板211bとして、π/2(λ/4)の位相差を与える機能を備え基板を採用した。
図9に示すように、文字板210は、位相差板付き偏光板211と、位相差板付き偏光板211の視認面側に設けられる淡色層12を有する。文字板210のうち、淡色層12が設けられる領域が淡色部Wに対応し、淡色層12が設けられず、位相差板付き偏光板211が露出する領域が濃色部BKに対応する。
図9に示すように、位相差板付き偏光板211に入射された入射光のうち、右回り円偏光のみが透過することとなる。これは、上述のように、偏光板211aが入射光の直線偏光の光成分のうち特定方向に偏光した光だけを透過させると共に、位相差板211bが偏光板211aを透過した直線偏光の光成分にπ/2(λ/4)の位相差を与えて、右回りの円偏光にしたためである。なお、直線偏光の光成分のうち特定方向に対して垂直な方向に偏光した光成分は、偏光板211aにおいて吸収される。
第1の実施形態と同様に、位相差板付き偏光板211を透過した右回り円偏光のうち、青色の光成分B及び緑色の光成分Gは太陽電池30に吸収されやすく、太陽電池30の発電に寄与することとなる。一方で、位相差板付き偏光板211を透過した右回り円偏光のうち、赤色の光成分Rは、太陽電池30において吸収されにくく、太陽電池30の上面で反射される。
太陽電池30に入射された右回り円偏光は、太陽電池30の上面で反射することにより、左回り円偏光となる。そして、左回り円偏光となった赤色の光成分Rは、位相差板211bの裏面に入射される。位相差板211bは、入射光にπ/2の位相差を与えるため、入射された左回り円偏光の赤色の光成分Rは特定方向に対して垂直な方向に偏光した直線偏光となる。偏光板211aは、上述のように直線偏光の光成分のうち特定方向に偏光した光成分のみを透過するため、特定方向に対して垂直な方向に偏光した直線偏光である赤色の光成分Rを透過しない。すなわち、偏光板211aの裏面側から入射された赤色の光成分Rは、偏光板211aにおいて吸収される。このように、太陽電池30で反射された光は文字板210の外部へ漏れ出さないため、ユーザは、濃色部BKを黒色として認識することとなる。
以上説明したように、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に、太陽電池30の発電効率を向上すると共に、審美性が低下することを抑制することができる。
なお、第2の実施形態においては、位相差板付き偏光板211として、いずれの波長帯域の光成分も同程度吸収し、同程度透過するものを例に挙げて説明したが、赤色の光成分Rの光吸収率が高くなるように位相差を与える構成であるとより好ましい。
なお、第2の実施形態においては、位相差板付き偏光板211を濃色部BK及び淡色部Wの両方に設けた例について示したが、これに限られるものではなく、位相差板付き偏光板211を濃色部BKのみに設けてもよい。この場合、透明基板上に、位相差板付き偏光板211及び淡色層12を設ける構成を採用するとよい。
図10、図11を参照して、第2の実施形態の第1の変形例に係る腕時計201について説明する。図10は、第2の実施形態の第1の変形例に係る腕時計を模式的に示す平面図である。図11は、第2の実施形態の第1の変形例に係る腕時計の断面の一部を模式的に示す模式断面図であり、図10のXI-XI切断線における断面図である。
腕時計201は、図10、図11に示すように、少なくとも、文字板210と、文字板210上で運針する指針としての分針223と、文字板210の裏面側に設けられる太陽電池30とを有する。なお、図11においては、分針223の積層構造を省略して図示しているが、分針223のうち濃色部BKは、図9で示した位相差板付き偏光板211を少なくとも含んでおり、分針223のうち淡色部Wは、図9で示した淡色層12を少なくとも含んでいるとよい。また、文字板210についても同様に積層構造を省略して図示しているが、文字板210のうち濃色部BKは、図9で示した位相差板付き偏光板211を少なくとも含んでおり、文字板210のうち淡色部Wは、図9で示した淡色層12を少なくとも含んでいるとよい。
また、本例においては、平面視において、分針223の淡色部Wの回転軌跡と、文字板210の濃色部BKとが重なる構成とした。また、平面視において、分針223の濃色部BKの回転軌跡と、文字板210の淡色部Wとが重なる構成とした。すなわち、平面視において、分針223の回転軌跡上、又は文字板210上のいずれかに、位相差板付き偏光板211を含む濃色部BKが設けられる構成とした。
具体的には、分針223の回転中心側を濃色部BKとし、分針223の先端側を淡色部Wとした。また、文字板210の中心部を平面形状が円形の淡色部Wとし、淡色部Wの周辺をリング状の濃色部BKとした。なお、図10で示す濃色部BKは、その全域が濃色部BKである必要はなく、黒色として認識される時字等が部分的に設けられる領域であるとよい。
このような構成とすることにより、図11に示すように、分針223に入射された光のうち、右回り円偏光である青色の光成分B及び緑色の光成分Gは、太陽電池30に吸収されて、発電に寄与することとなる。また、右回り円偏光である赤色の光成分Rは、太陽電池30で反射されて、左回り円偏光となり、文字板210の濃色部BK又は分針223の濃色部BKで吸収されることとなる。これにより、ユーザは、分針223の濃色部BKを黒色として認識することとなる。また、図9で説明したように、ユーザは文字板210の濃色部BKも黒色として認識することになる。
なお、本例においては、文字板210の淡色部Wの光透過率が高い方が好ましい。すなわち、文字板210の淡色部Wのヘイズ値は小さい方が好ましい。分針223の濃色部BKを透過した光が、文字板210の淡色部Wで散乱してしまうと、ユーザは分針223の濃色部BKを黒色として認識できなくなってしまうためである。
なお、図10、図11に示す例においては、文字板210と指針の両方が淡色部、及び位相差板付き偏光板211を含む濃色部BKを有する例について示したが、これに限られるものではなく、指針のみが淡色部W、及び位相差板付き偏光板211を含む濃色部BKを有する構成を適用しても構わない。この場合、少なくとも、文字板210が光を透過するものであり、文字板210の裏面側に太陽電池30が配置される構成であるとよい。
なお、本例の構成は、特に、指針のうち比較的長さの長い分針223に適している。
図12、図13を参照して、第2の実施形態の第2の変形例に係る腕時計201について説明する。図12は、第2の実施形態の第2の変形例に係る腕時計を模式的に示す平面図である。図13は、第2の実施形態の第2の変形例に係る腕時計の断面の一部を模式的に示す模式断面図であり、図12のXIII-XIII切断線における断面図である。
第2の実施形態の第2の変形例は、第2の実施形態の第1の変形例で説明した指針よりも長さの短い指針、すなわち、例えば、時針222に関するものである。本例においては、図12、図13に示すように、時針222の回転軌跡が、文字板210の濃色部BKと重ならないように、時針222を配置した。また、時針222の全体を濃色部BKとした。他の構成については、図10、図11で示したものと同様である。
本例においても、図13に示すように、青色の光成分B及び緑色の光成分Gは、太陽電池30で吸収されて発電に寄与し、赤色の光成分Rは、太陽電池30の上面で反射されて、濃色部BKに設けられる位相差板付き偏光板211で吸収される。そのため、太陽電池30の発電効率を向上できると共に、時針222の濃色部BKを黒色としてユーザに認識させることができる。
なお、上記各実施形態及び各変形例においては、太陽電池付き腕時計1を例に挙げて説明したが、これに限られるものではなく、少なくとも、視認部材としての化粧板等と、太陽電池30とを含む発電装置であればよい。例えば、センサや照明機器用の太陽電池付き発電装置などであっても構わない。
上記各実施形態及び各変形例においては、青色の光成分B及び緑色の光成分Gを吸収しやすい性質を有する太陽電池を例に挙げて説明したが、これに限られるものではなく、特定の波長帯域の光成分を吸収しやすく、他の波長帯域の光成分を反射しやすい性質のものであればよい。この場合、濃色部BKにおいて、他の波長帯域の光成分に対する光吸収率の高いカラーフィルタなどを設けるとよい。具体的には、例えば、太陽電池30として、赤色の光成分を積極的に吸収する色素増感型太陽電池を用いてもよい。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、この実施形態に示した具体的な構成は一例として示したものであり、本発明の技術的範囲をこれに限定することは意図されていない。当業者は、これら開示された実施形態を適宜変形してもよく、本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。