以下、ガス分析方法及び装置の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態のガス分析装置の概略的な構成の例を示す図である。本実施の形態のガス分析装置は、本実施の形態の射出成形機40及び金型50に対応するように構成されている。
本実施の形態の射出成形機40は、インラインスクリュー式であって、略水平方向に延びたシリンダ41、シリンダ41に内蔵されたスクリュ46、及びスクリュ46を回転駆動等する図示しない駆動機構を有している。シリンダ41には、ホッパ42、バンドヒータ47、ガスベントノズル43及びノズル44が設けられている。ガスベントノズル43には、シリンダ41が延びた方向に複数のドーナツ状の円板48が積層され、ガスを通して排出するための間隙が形成されている。
金型50は、内部にキャビティ53を有する固定された第1金型51、及び第1金型51に対応する可動の第2金型52を有している。第1金型51には、キャビティ53の温度、圧力等を測定するセンサ55が設けられている。なお、本明細書でいうキャビティ53は、金型50のゲートからスプルー、ランナーを経由して成形品本体部(狭義のキャビティ)までを含む領域全体を意味する。第2金型52には、キャビティ53からガスを排出する金型ベント54が設けられている。金型ベント54は、多孔質の材料又は細孔から形成されている。
射出成形機40において、ホッパ42に貯えられたペレット状の材料100は、自重により落下してホッパ42の直下にあるシリンダ41に供給される。シリンダ41は、バンドヒータ47によって所定温度に加熱されている。シリンダ41に供給された材料100は、回転するスクリュ46によって搬送されながら、バンドヒータ47による加熱及びスクリュ46の回転による剪断発熱によって溶融されつつスクリュ46によって混練され、さらにスクリュ46の前進によってノズル44から射出されて金型50に注入される。金型50に注入された材料100は、金型50のキャビティ53に充填され、固化された後で金型50から成形品として取り出される。
ホッパ42からシリンダ41に供給された材料100は、シリンダ41内で溶融される際にガスを発生する。このガスは、ホッパ42を介してシリンダ41から排出される。ホッパ42に排出されたホッパ排出ガスは、ホッパ42から第1真空ポンプ31に至る第1排気路21を通って排気される。ホッパ42から排出されるガスの成分によっては、ホッパ42及び第1排気路21には固形状の付着物が発生しうる。
ホッパ42からのホッパ排出ガスの捕集には、「減圧可塑化」や「真空可塑化」といった呼称で市販されている各種のガス抜き装置を使用してもよい。このような装置としては、例えば、株式会社ハルナの「エコマック」、住友重機械工業株式会社の「ALFIN II」、株式会社名機製作所の「バクメルタ」などが知られている。ホッパ排出ガスは、ホッパ42からこのようなガス抜き装置を介して第1排気路21に流してもよい。
ホッパ42からシリンダ41に供給された材料100がシリンダ41内で溶融される際に発生するガスは、ホッパ42に代わって、シリンダ41の後端部から捕集してもよい。例えば、シリンダ41の後端部にベントが設けられている場合には、このようなベントを通じてガスが捕集されてもよい。
ホッパ42から排出されたホッパ排出ガスを排気する第1排気路21は、第1真空ポンプ31に接続することに代わって、例えばシリンジを接続して吸引してもよく、ベンチュリ効果を利用した負圧で吸引してもよい。また、第1排気路21は、真空や減圧により能動的に吸引することに代えて、排出されたものをそのまま受動的にトラップするようにしてもよい。シリンジを接続して吸引したり、ベンチュリ効果を移用した負圧で吸引したり、排出したものをそのまま受動的にトラップするようにした排気路については、これらの間で相互に入れ替えたり、真空ポンプを接続したり、組み合わせたりしてもよい。このような排気路の態様は、第1排気路21の他の排気路についても同様である。
スクリュ46によってシリンダ41内を搬送される材料100は、溶融混練時の熱によって次第にガスを発生する。このガスは、シリンダ41においてノズル44の上流側に設けられたガスベントノズル43を介してシリンダ41から排出される。ガスベントノズル43から排出されたノズル排出ガスは、ガスベントノズル43から第2真空ポンプ32に至る第2排気路22を通って排気される。ガスベントノズル43から排出されるガスの成分によっては、ガスベントノズル43及び第2排気路22には固形状の付着物101が発生しうる。
射出成形機40から射出されて金型50に注入され、金型50のキャビティ53に充填された材料100はゲート部やキャビティの薄肉部を通過する際の剪断発熱によってガスを発生する。このガスは、金型50に形成された金型ベント54を介してキャビティ53から排出される。金型ベント54から排出された金型排出ガスは、金型ベント54から第3真空ポンプ33に至る第3排気路23を通って排気される。金型ベント54から排出されるガスの成分によっては、金型ベント54及び第3排気路23には固形状の付着物101が発生しうる。
本実施の形態のガス分析装置は、本実施の形態の射出成形機40及び金型50に対応するものであって、射出成形機40のホッパ42から排出されたホッパ排出ガスを捕集するために、ホッパ排出ガスを流す第1排気路21に設けたホッパ排出ガス捕集管11を有していてもよい。ホッパ排出ガス捕集管11は、第1排気路21の先端に設けてもよいし、ホッパ42から第1真空ポンプ31に至る第1排気路21の途中に設けてもよい。ホッパ排出ガス捕集管11は、例えば、ガラス管であってもよいし、ガラス管内にガスを物理的あるいは化学的に吸着するような物質を充填したものでもよい。物理的に吸着する物質としては、例えば多孔質や不織布を用いてもよい。
また、ガス分析装置は、射出成形機40のガスベントノズル43から排出されたノズル排出ガスを捕集するために、ノズル排出ガスを流す第2排気路22に設けたノズル排出ガス捕集管12を有していてもよい。ノズル排出ガス捕集管12も、例えば、ガラス管であってもよいし、ガラス管内にガスを物理的あるいは化学的に吸着するような物質を充填したものでもよい。物理的に吸着する物質としては、例えば多孔質や不織布を用いてもよい。
さらに、ガス分析装置は、金型50の金型ベント54から排出された金型排出ガスを捕集するために、金型排出ガスを流す第3排気路23に設けた金型排出ガス捕集管13を有していてもよい。金型排出ガス捕集管13も、例えば、ガラス管であってもよいし、ガラス管内にガスを物理的あるいは化学的に吸着するような物質を充填したものでもよい。物理的に吸着する物質としては、例えば多孔質や不織布を用いてもよい。
図2は、ガス捕集容器の例を示す図である。本実施の形態のガス分析装置においては、ホッパ排出ガスを捕集するためのホッパ排出ガス捕集管11、ノズル排出ガスを捕集するためのノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガスを捕集するための金型排出ガス捕集管13を使用しているが、これらに変えて他のガス捕集容器を使用してもよい。
ガス捕集容器には、例えば、図2(a)に示すフッ化ビニール製ガス捕集袋、図2(b)に示すコック付きアルミニウムバッグ及び図2(c)に示すガラス製ガス採取容器のいずれかを使用してもよい。例えば、ホッパ排出ガス捕集管11、ノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガス捕集管13のいずれか一つ、複数又は全部をこれらのガス捕集容器のいずれかに換えてもよい。これらのガス捕集容器についても、ガス捕集管と同様に、ガスを物理的あるいは化学的に吸着するような物質を充填したものでもよい。
なお、図2(d)には、本実施の形態で採用したガス捕集管をシリンジに取り付けた態様を示している。ガス捕集管は、シリンジ内に格納されたガスを流すことで、管内に充填された多孔質の物質にガスを吸着させて捕集してもよい。ガス捕集管は、図2(a)のガス捕集袋、図2(b)のアルミニウムバッグ及び図2(c)のガス採取容器と比べて、最も効率よくガスを捕集することができる。
本実施の形態のガス分析装置は、ホッパ排出ガス捕集管11、ノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガス捕集管13で捕集したガスを定性的及び/又は定量的に分析する分析装置を有している。分析装置は、公知のガス分析装置を用いることができ、例えばガスクロマトグラフィーであってもよく、イオンクロマトグラフィーであってもよく、フーリエ変換赤外分光装置(FT-IR)であってもよい。
さらに、ホッパ排出ガス捕集管11、ノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガス捕集管13それぞれに替えて、第1排気路21、第2排気路22、第3排気路23のそれぞれを、各種分析装置に直接接続する方法も用いることができる。例えば、いわゆるガス検知管を用いた分析器具を各排気路に直接接続することで、発生ガスを成形現場で即時に測定することができる。ガス検知管としては、例えば株式会社ガステックなどから市販されているものを用いることができる。
なお、本実施の形態の射出成形機40においては、ノズル排出ガスを排出するためにノズル44の上流側にガスベントノズル43を設けたが、ガスベントノズル43に代えて、ガス排気路を有するシャットオフノズルを使用してもよい。
また、本実施の形態の金型50においては、金型ベント54から排出されたガスを捕集することに代わって、多孔質の駒を金型50のキャビティ53等の任意の箇所に設置したり、突出しピン自体を多孔質の材料で作成したりして、その背面からガスを捕集してもよい。また、パーティング部やスライド構造部、入れ駒等、金型を割ってある箇所ならどこでもその隙間からガスを捕集してもよい。さらに、ホットランナーのマニホールドやバルブにおいて、ガスベントノズルやシャットオフノズルと同様にガスを捕集してもよい。
図3は、本実施の形態のガス分析方法の一連の工程を示すフローチャートである。本実施の形態のガス分析方法は、本実施の形態のガス分析装置を用いて実施してもよい。最初のステップS1においては、射出成形機40及び金型50にガス捕集管を取り付け、射出成形機40及び金型50においてガスが排出される箇所からガスを捕集する。
本実施の形態においては、射出成形機40のホッパ42から排出されたホッパ排出ガスを捕集するために、ホッパ42から第1真空ポンプ31に至り、ホッパ42から排出されたガスを流す第1排気路21にホッパ排出ガス捕集管11を設ける。ホッパ排出ガス捕集管11には、第1排気路21を流れるホッパ排出ガスの成分が捕集される。
また、射出成形機40のガスベントノズル43から排出されたノズル排出ガスを捕集するために、ガスベントノズル43から第2真空ポンプ32に至り、ガスベントノズル43から排出されたガスを流す第2排気路22にノズル排出ガス捕集管12を設ける。ノズル排出ガス捕集管12には、第2排気路22を流れるノズル排出ガスの成分が捕集される。
さらに、金型50の金型ベント54から排出された金型排出ガスを捕集するために、金型ベント54から第3真空ポンプ33に至り、金型ベント54から排出されたガスを流す第3排気路23に金型排出ガス捕集管13を設ける。金型排出ガス捕集管13には、第3排気路23を流れる金型排出ガスの成分が捕集される。
次のステップS2においては、ステップS1において射出成形機40及び金型50においてガスが排出される箇所から捕集したガスを分析する。第1排気路21に設けられたホッパ排出ガス捕集管11、第2排気路22に設けられたノズル排出ガス捕集管12及び第3排気路23に設けられた金型排出ガス捕集管13を取出し、それぞれのガス捕集管に捕集されたガスを定性的及び/又は定量的に分析する。なお、上述したように、ガス捕集管を介さず、ガス排気路に直接ガス検知管等のガス分析装置を取り付ける場合は、当該ガス分析装置により、ステップS1のガスの捕集も併せて行われる。
ガスの定性的及び/又は定量的な分析は、ガスクロマトグラフィー、イオンクロマトグラフィー、分散型赤外分光、フーリエ変換赤外分光(FT-IR)、近赤外分光(NIRS)、熱赤外分光(TIR)、紫外可視分光(UV-Vis)、ラマン分光、旋光分析、蛍光分析、蛍光X線分析(XRF)、核磁気共鳴(NMR)、電子スピン共鳴(ESR)、質量分析などの公知の分析手段によって実施してもよい。
また、ステップS2においては、射出成形機40のホッパ42及びガスベントノズル43、金型ベント54に発生した付着物101をそれぞれ捕集し、それぞれの付着物101を分析してもよい。付着物101は、FT-IRなどの公知の分析手段によって定性的及び/又は定量的に分析してもよい。付着物101を捕集したガスと併せて分析することで、材料100からの発生成分を全体として把握し、適切な対策を施してもよい。例えば、材料開発にフィードバックしてもよい。
ここで、ホッパ排出ガス捕集管11、ノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガス捕集管13を取出したり、ホッパ42、ガスベントノズル43及び金型ベント54に発生した付着物101を捕集したりすることは、各捕集箇所において、例えば射出成形の1ショット目、100ショット目、200ショット目といったように、所定時間ごとに実施してもよいし、製造工程の一連のショットのバッチが終了してから実施してもよい。また、捕集したガスや付着物101は、上述のようにそれぞれの箇所について成分が時間的にどのように変化するかどうかを経時的に観察してもよいし、材料100が成形工程を経るごとにどのような成分のガスや付着物101を発生するかどうか工程の進行に従って経時的に観察してもよい。さらに、捕集後のガスについて、一定時間放置した際の経時的な変化を観察してもよい。
本実施の形態のガス分析方法及び装置においては、射出成形機40及び金型50において、ホッパ42から排出されたホッパ排出ガス、ガスベントノズル43から排出されたベント排出ガス、及び金型ベント54から排出された金型排出ガスを捕集して分析している。換言すると、ホッパ42における材料100のシリンダ41への供給の工程、ノズル44における材料100の溶融及び剪断の工程、金型50における材料100の注入及び充填の工程において発生したガスをそれぞれ分析している。
本実施の形態のガス分析方法及び装置は、このような供給、溶融及び剪断、注入及び充填の各工程のみにおけるガスの捕集及び分析に限定されることはなく、射出成形機40のホッパ42における材料100の供給の工程から金型50からの成形品の取出しの工程までの2箇所以上の位置において発生したガスを捕集し、捕集したガスを分析するものであればよい。2箇所以上の位置は、材料100の供給の工程から成形品の取出しの工程にまで至る一連の段階のいずれの箇所であってもよい。
このような一連の段階には、例えば、ホッパ42からシリンダ41へ材料100を投入する供給工程、シリンダ41の加熱とスクリュ46による圧縮・剪断での発熱で材料100を溶融する溶融・圧縮・剪断工程、溶融状態における材料100の均質化のため混練しつつノズル44側へ材料100を送り込む搬送・混練工程、1ショット分の射出に必要な量の材料100をシリンダ41の先端(ノズル44上流側)に溜める計量工程が含まれてもよい。ここで、溶融・圧縮・剪断工程をまとめて可塑化工程と称したり、供給工程から計量工程までも含めて可塑化工程と称したりしてもよい。
一連の段階には、計量した樹脂をノズル44から金型50内へ注入する射出工程、金型50に充填した樹脂がシリンダ41側へ逆流しないように、金型50のゲート部が固化するまで材料100を注入する向きに圧力を保持する保圧工程も含まれる。保圧工程においては、通常、射出で金型50のキャビティ53に8~9割程度充填した時点で、射出による充填から圧力による充填に切り替えて、そのまま固化するまで保圧する。
一連の段階には、金型50のゲート部で材料100が固化すれば逆流はしないものの、成形品全体が固化していないと離型時に変形するおそれがあるため、成形品が固化するまで金型50内で保持する冷却工程も含まれる。冷却工程において材料100の固化を促すために、通常、金型50には冷却水を循環させる温調回路などが設けられている。一般的には、この冷却工程の段階と同時にシリンダ41側では次の射出ショットのための計量を行う。
一連の段階には、金型50を開いて、突出しピンなどの機構により成形品を離型させる取出工程も含まれる。取出工程においては、吸盤や真空吸引機構などを持つロボットアームを用いて成形品を離形させる場合もある。なお、ガスの捕集及び分析を行う2箇所以上の位置は、材料100の供給の工程から成形品の取出しの工程にまで至る一連の段階において、上記以外の所望の工程に適用してもよく、特定の工程中における2箇所以上の位置に適用してもよい。
(第1変形例)
図4は、第1変形例のガス分析装置を示す図である。第1変形例のガス分析装置は、第1変形例の射出成形機40及び金型50に対応するように構成されている。
第1変形例の射出成形機40は、ホッパ42にシャッタ45が設けられてシリンダ41内が真空又は窒素雰囲気に維持され、ホッパ42からシリンダ41に送られる材料100の量がフィーダ49によって制御される飢餓供給である点において本実施の形態の射出成形機40と相違している。他の構成は、本実施の形態の射出成形機40と同様である。第1変形例の射出成形機40及び金型50において、本実施の形態の射出成形機40及び金型50と対応する要素には同一の符号を付して対応関係を示すものとする。
射出成形機40において、ホッパ42に貯えられたペレット状の材料100は、フィーダ49によって送られ、所定の量が真空又は窒素雰囲気に保たれたシリンダ41に供給される。シリンダ41は、バンドヒータ47によって所定温度に加熱されている。シリンダ41に供給された材料100は、回転するスクリュ46によって搬送されながら、バンドヒータ47による加熱及びスクリュ46の回転による剪断発熱によって溶融されつつスクリュ46によって混練され、さらにスクリュ46の前進によってノズル44から射出されて金型50に注入される。金型50に注入された材料100は、金型50のキャビティ53に充填され、固化された後で金型50から成形品として取り出される。
射出成形機40のホッパ42において、ホッパ排出ガスは、ホッパ42に隣接して設けられたホッパ排出ガス捕集部15によって捕集されている。ガスベントノズル43から排出されたノズル排出ガスは、エア供給源36からのエア流に合流点28で合流する第2排気路22によって排気されている。エア流との合流点28においては、第2排気路22からベンチュリ効果によってホッパ排出ガスを吸引してもよい。以下でも同様である。
第2排気路22に設けられたノズル排出ガス捕集管12にはラジエータ19が取り付けられ、ノズル排出ガス捕集管12を冷却している。金型50においては、金型ベント54から排出された金型排出ガスを流す第3排気路23はシリンジ14に接続され、金型排出ガスはシリンジ14内に捕集されている。
第1変形例の射出成形機40及び金型50においては、本実施の形態のガス検出装置においてガスを捕集する捕集手段は、ホッパ排出ガスを捕集するホッパ排出ガス捕集部15、ノズル排出ガスを捕集するノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガスを捕集するシリンジ14によって構成してもよい。また、捕集したガスを定性的に及び/又は定量的に分析する分析手段には、図示しないガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手法を適用してもよい。
第1変形例の射出成形機40及び金型50においては、本実施の形態のガス検出方法におけるステップS1のガスの捕集の工程は、ホッパ排出ガス捕集部15によってホッパ排出ガスを捕集し、ノズル排出ガス捕集管12によってノズル排出ガスを捕集し、シリンジ14によって金型排出ガスを捕集してもよい。また、ステップS2のガスの分析の工程は、ホッパ排出ガス捕集部15、ノズル排出ガス捕集管12及びシリンジ14によってそれぞれ捕集されたガスについてガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段を用いて定性的及び/又は定量的に分析してもよい。また、ホッパ42、ガスベントノズル43及び金型ベント54等で発生した付着物101をそれぞれ捕集して定性的及び/又は定量的に分析してもよい。
(第2変形例)
図5は、第2変形例のガス分析装置を示す図である。第2変形例のガス分析装置は、第2変形例の射出成形機40及び金型50に対応するように構成されている。
第2変形例の射出成形機40は、ホッパ42にシャッタ45が設けられ、ホッパ42からシリンダ41に送られる材料100の量がフィーダ49によって制御される飢餓供給であり、シリンダ41にガスを排出するためのシリンダベント39が設けられている点において本実施の形態の射出成形機40と相違している。他の構成は、本実施の形態の射出成形機40と同様である。第2変形例の射出成形機40及び金型50において、本実施の形態の射出成形機40及び金型50と対応する要素には同一の符号を付して対応関係を示すものとする。
射出成形機40において、ホッパ42に貯えられたペレット状の材料100は、フィーダ49によって送られ、所定の量がシリンダ41に供給される。シリンダ41は、バンドヒータ47によって所定温度に加熱されている。シリンダ41に供給された材料100は、回転するスクリュ46によって搬送されながらバンドヒータ47による加熱及びスクリュ46の回転による剪断発熱によって溶融されつつスクリュ46によって混練され、さらにスクリュ46の前進によってノズル44から射出されて金型50に注入される。金型50に注入された材料100は、金型50のキャビティ53に充填され、固化された後で金型50から成形品として取り出される。
射出成形機40のホッパ42において、ホッパ排出ガスは、ホッパ42に隣接して設けられたホッパ排出ガス捕集部15によって捕集されている。シリンダベント39から排出されたガスは、図示しないシリンダ排出ガス捕集部16によって捕集されている。ガスベントノズル43から排出されたノズル排出ガスは、エア供給源36からのエア流に合流点28で合流する第2排気路22によって排気されている。第2排気路22に設けられたノズル排出ガス捕集管12にはラジエータ19が取り付けられ、ノズル排出ガス捕集管12を冷却している。金型50においては、金型ベント54から排出された金型排出ガスを流す第3排気路23はシリンジ14に接続され、金型排出ガスはシリンジ14内に捕集されている。
第2変形例の射出成形機40及び金型50においては、本実施の形態のガス検出装置においてガスを捕集する捕集手段は、ホッパ排出ガスを捕集するホッパ排出ガス捕集部15、シリンダ排出ガスを捕集するシリンダ排出ガス捕集部16、ノズル排出ガスを捕集するノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガスを捕集するシリンジ14によって構成してもよい。また、捕集したガスを定性的に及び/又は定量的に分析する分析手段には、図示しないガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段を適用してもよい。
第2変形例の射出成形機40及び金型50においては、本実施の形態のガス分析方法におけるステップS1のガスの捕集の工程は、ホッパ排出ガス捕集部15によってホッパ排出ガスを捕集し、シリンダ排出ガス捕集部16によってシリンダ排出ガスを捕集し、ノズル排出ガス捕集管12によってノズル排出ガスを捕集し、シリンジ14によって金型排出ガスを捕集してもよい。また、ステップS2のガスの分析の工程は、ホッパ排出ガス捕集部15、シリンダ排出ガス捕集部16、ノズル排出ガス捕集管12及びシリンジ14によってそれぞれ捕集されたガスについてガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段を用いて定性的及び/又は定量的に分析してもよい。また、ホッパ42、シリンダベント39、ガスベントノズル43及び金型ベント54等で発生した付着物101をそれぞれ回収して定性的及び/又は定量的に分析してもよい。
なお、第2実施例の射出成形機40に設けられたシリンダベント39に代わって、シリンダ41に発泡成形やガスアシスト成形でガスを注入するために用いたガス注入路をガス吸引路として用いてもよい。このガス注入路は、シリンダ41の中心に管を配置したものであってもよい。
(第3変形例)
図6は、第3変形例のガス分析装置を示す図である。第3変形例のガス分析装置は、第3変形例の射出成形機40及び金型50に対応するように構成されている。
第3変形例の射出成形機40は、プリプラ式であり、略水平方向に延びた第1シリンダ61と、先端において第1シリンダ61に連通するように、第1シリンダ61に対して斜めに配置された第2シリンダ71とを有している。
第1シリンダ61には、第1シリンダ61に内蔵されたプランジャ62、プランジャ62を前後等に駆動する図示しない駆動機構、バンドヒータ63、ノズル66の上流側にあって第1シリンダ61内からガスを排出するガスベントノズル65が設けられている。ガスベントノズル65には、第1シリンダ61の伸びる方向に複数のドーナツ状の円板68が積層され、ガスを通す間隙が形成されている。第2シリンダ71には、第2シリンダ71に内蔵されたスクリュ73、スクリュ73を回転駆動等する図示しない駆動機構、ホッパ72、バンドヒータ74及び第2シリンダ71内からガスを排出する第2シリンダベント75が設けられている。ホッパ72には、シリンダ41の内部を窒素雰囲気等に維持するためのシャッタ78と、ホッパ72から第2シリンダ71に所定量の材料100を送るためのフィーダ79が設けられている。
金型50においては、金型ベント54から排出された金型排出ガスを流す第3排気路23はシリンジ14に接続され、金型排出ガスはシリンジ14内に捕集されている。他の構成は、本実施の形態の金型50と同様であるため、同一の符号を用いて対応関係を明らかにする。
射出成形機40において、第2シリンダ71に設けられたホッパ72に貯えられたペレット状の材料100は、フィーダ79によって送られ、所定の量が第2シリンダ71に供給される。第2シリンダ71は、バンドヒータ74によって所定温度に加熱されている。第2シリンダ71に供給された材料100は、回転するスクリュ73によって搬送されながらバンドヒータ74による加熱及びスクリュ73の回転による剪断発熱によって溶融されつつスクリュ73によって混練され、連通孔64を通じて第1シリンダ61に供給される。第1シリンダ61も、バンドヒータ63によって所定温度に加熱されている。第1シリンダ61内の溶融した材料100は、プランジャ62の前進によって射出されて金型50に注入される。金型50に注入された材料100は、金型50のキャビティ53に充填され、固化された後で金型50から成形品として取り出される。
第2シリンダ71のホッパ72において、ホッパ排出ガスは、ホッパ72に隣接して設けられたホッパ排出ガス捕集部15によって捕集されている。第2シリンダ71の第2シリンダベント75から排出されたガスは、図示しないシリンダ排出ガス捕集部16によって捕集されている。第1シリンダ61のガスベントノズル65から排出されたノズル排出ガスは、エア供給源36からのエア流に合流点28で合流する第2排気路22によって排気されている。第2排気路22に設けられたノズル排出ガス捕集管12にはラジエータ19が取り付けられ、ノズル排出ガス捕集管12を冷却している。金型50においては、金型ベント54から排出された金型排出ガスを流す第3排気路23はシリンジ14に接続され、金型排出ガスはシリンジ14内に捕集されている。
第3変形例の射出成形機40及び金型50においては、本実施の形態のガス検出装置においてガスを捕集する捕集手段は、ホッパ排出ガスを捕集するホッパ排出ガス捕集部15、シリンダ排出ガスを捕集するシリンダ排出ガス捕集部16、ノズル排出ガスを捕集するノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガスを捕集するシリンジ14によって構成してもよい。また、捕集したガスを定性的に及び/又は定量的に分析する分析手段には、図示しないガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段を適用してもよい。
第3変形例の射出成形機40及び金型50においては、本実施の形態のガス検出方法におけるステップS1のガスの捕集の工程は、ホッパ排出ガス捕集部15によってホッパ排出ガスを捕集し、シリンダ排出ガス捕集部16によってシリンダ排出ガスを捕集し、ノズル排出ガス捕集管12によってノズル排出ガスを捕集し、シリンジ14によって金型排出ガスを捕集してもよい。また、ステップS2のガスの分析の工程は、ホッパ排出ガス捕集部15、シリンダ排出ガス捕集部16、ノズル排出ガス捕集管12及びシリンジ14によってそれぞれ捕集されたガスについてガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段を用いて定性的及び/又は定量的に分析してもよい。また、ホッパ42、シリンダベント39、ガスベントノズル43及び金型ベント54等で発生した付着物101をそれぞれ定性的及び/又は定量的に分析してもよい。
(比較例)
図7は、比較例のガス分析装置を示す図である。比較例のガス分析装置は、本実施の形態の射出成形機40に対応するように構成されている。比較例においては、射出成形機40のガスベントノズル43から排出したノズル排出ガスのみを分析している。
射出成形機40のガスベントノズル43から排出されたノズル排出ガスは、エア供給源36からのエア流に合流点28で合流する第2排気路22によって排気されている。第2排気路22に設けられたノズル排出ガス捕集管12にはラジエータ19が取り付けられ、ノズル排出ガス捕集管12を冷却している。
比較例のガス分析装置においてガスを捕集する捕集手段は、ノズル排出ガスを捕集するノズル排出ガス捕集管12のみによって構成されている。また、捕集したガスを定性的に及び/又は定量的に分析する分析手段には、図示しないガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段を適用してもよい。
比較例のガス分析方法は、ステップS1のガスの捕集の工程においてノズル排出ガス捕集管12によってノズル排出ガスを捕集する。また、ステップS2のガスの分析の工程は、ノズル排出ガス捕集管12によって捕集されたガスについてガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段を用いて定性的及び/又は定量的に分析してもよい。また、ガスベントノズル43で発生した付着物101をそれぞれ捕集して定性的及び/又は定量的に分析してもよい。
比較例においては、射出成形のプロセスにおいてノズル排出ガスのみを分析している。したがって、射出成形のプロセスの全体を全体的に把握することや、材料開発にフィードバックしたり樹脂の劣化を防止したりするためにガス発生のメカニズムを明らかにする本実施の形態の構成とは異なっている。
実施例においては、本実施の形態のガス分析方法及び装置を実施した結果を説明する。実施例のガス分析方法は、図1に示したような本実施の形態の射出成形機40及び金型50に対応するものである。
(第1実施例)
第1実施例では、材料100としてガラス繊維30重量%充填のポリフェニルサルファイド(PPS)を用いた。図1に示した射出成形機40及び金型50をシリンダ温度310℃にて所定時間にわたって稼働させた後で、ガス分析装置のホッパ排出ガス捕集管11、ノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガス捕集管13をそれぞれ取り出した。そして、これらの捕集管に捕集されたガスをガスクロマトグラフィーによって分析した。
図8は、第1実施例のガス分析の結果を示すグラフである。図中の曲線aは、ホッパ排出ガス捕集管11で捕集されたホッパ排出ガスに相当している。曲線bは、ノズル排出ガス捕集管12で捕集されたノズル排出ガスに相当している。曲線cは、金型排出ガス捕集管13で捕集された金型排出ガスに相当している。横軸の滞留時間(分)について、0分近くと13分前後に出たノイズを除くと、ホッパ発生ガス及び金型排出ガスが検出されたが、ノズル排出ガスは検出されなかった。
このことから、ガラス繊維30重量%充填のポリフェニルサルファイド(PPS)を材料100とする場合には、射出成形機40のホッパ42からシリンダ41に材料100を投入して溶融する工程、及び金型50に溶融した材料100を充填する工程において、それぞれ材料100からガスが発生することが明らかになった。一方、ノズル44から材料100を射出する工程においては、材料100からガスが発生しないことが明らかになった。
(第2実施例)
第2実施例では、材料100として、ガラス繊維30重量%充填のPPS、ガラス繊維30重量%充填のポリブチレンテレフタレート(PBT)、及び難燃剤を添加したガラス繊維30重量%充填のPBTを用いた。図1に示した射出成形機40及び金型50を所定時間にわたって稼働させた後で、ガス分析装置のホッパ排出ガス捕集管11、ノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガス捕集管13をそれぞれ取り出した。ここで、射出成形機40においては、PBTの成形時はシリンダ温度260℃、PPSの成形時はシリンダ温度310℃として、材料100を加熱した。そして、これらの捕集管に捕集されたガスをガスクロマトグラフィーによって分析した。
図9は、第2実施例のガス分析の結果を示すグラフである。図中の曲線aは、材料100のガラス繊維30重量%充填のPBTについて金型排出ガス捕集管13で捕集した金型排出ガスに相当している。曲線bは、曲線aと同じ材料についてノズル排出ガス捕集管12で捕集されたノズル排出ガスに相当している。曲線cは、材料100の難燃剤を添加したガラス繊維30重量%充填のPBTについて金型排出ガス捕集管13で捕集した金型排出ガスに相当している。曲線dは、曲線cと同じ材料についてノズル排出ガス捕集管12で捕集されたノズル排出ガスに相当している。曲線eは、材料100のガラス繊維30重量%充填のPPSについてノズル排出ガス捕集管12で捕集されたノズル排出ガスに相当している。
曲線a及びbに見られるように、ガラス繊維30重量%充填のPBTを材料100とする場合には、材料100をシリンダ温度260℃で成形した場合、射出成形機40のノズル44から材料100を射出する工程、及び金型50に溶融した材料100を充填する工程において、それぞれ材料100からガスが発生することが明らかになった。
曲線c及びdに見られるように、難燃剤を添加したガラス繊維30重量%充填のPBTを材料100とする場合には、材料100を、曲線a及びbの場合と同じくシリンダ温度260℃で成形した場合であっても、射出成形機40のノズル44から材料100を射出する工程、及び金型50に溶融した材料100を充填する工程において、それぞれ材料100から比較的大量のガスが発生することが明らかになった。
曲線eに見られるように、ガラス繊維30重量%充填のPPSを材料100とする場合には、材料100をシリンダ温度310℃で成形した場合、金型50に溶融した材料100を充填する工程において、材料100から発生するガスはわずかであることが明らかになった。
ここで、材料100から発生したガスの成分の大部分は材料100が熱により分解したものであるため、射出成形機40のノズル44から材料100を射出する工程、及び金型50に溶融した材料100を充填する工程のいずれにおいても、ガラス繊維30重量%充填のPBTよりも大量のガスを発生した難燃剤を添加したガラス繊維30重量%充填のPBTは比較的熱に弱いといってもよい。したがって、難燃剤を添加したガラス繊維30重量%充填のPBTは、シリンダ41における滞留に弱いといってもよい。
(第3実施例)
第3実施例では、材料100として、エラストマーを含むガラス繊維30重量%充填のPPS、及びエラストマーを含まないガラス繊維30重量%充填のPPSを用いた。図1に示した射出成形機40及び金型50を所定時間にわたって稼働させた後で、ガス分析装置のホッパ排出ガス捕集管11、ノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガス捕集管13をそれぞれ取り出した。ここで、射出成形機40においては、シリンダ温度を310℃として、材料100を所定の温度に加熱した。そして、これらのガス捕集管に捕集されたガスをガスクロマトグラフィーによって分析した。
図10は、第3実施例のガス分析の結果を示すグラフである。図中の曲線aは、材料100のエラストマーを含まないガラス繊維30重量%充填のPPSについてノズル排出ガス捕集管12で捕集したノズル排出ガスに相当している。曲線bは、材料100のエラストマーを含むガラス繊維30重量%充填のPPSについて同様に捕集したノズル排出ガスに相当している。曲線cは、材料100のエラストマーを含まないガラス繊維30重量%充填のPPSについて金型排出ガス捕集管13で捕集した金型排出ガスに、曲線dは、材料100のエラストマーを含むガラス繊維30重量%充填のPPSについて同様に捕集した金型排出ガスに相当している。
材料100のエラストマーを含まないガラス繊維30重量%充填のPPSのノズル排出ガス及び金型排出ガスにそれぞれ相当する曲線a及びc、材料100のエラストマーを含むガラス繊維30重量%充填のPPSのノズル排出ガス及び金型排出ガスにそれぞれ相当する曲線b及びdを対比すると、エラストマーを含むPPSの方が、発生するガスが多くなる傾向が明らかになった。すなわち、PPSに比較してエラストマーは耐熱性が低く、エラストマーを含むPPSを射出成形する場合、エラストマーに由来するガスが発生しやすいことが明らかになった。
また、ノズル排出ガスの量はエラストマーの有無によらずほぼ同等であるのに対し、金型排出ガスの量はエラストマーを含むPPSの方が顕著に多くなっていることから、エラストマーに由来するガスの発生しやすさは成形の段階によって傾向が異なることが確認された。すなわち、成形プロセスのある一つの段階でのみ発生ガス分析を行っていた従来の分析方法では、例えばこの第3実施例の材料100を分析する際に、ノズル排出ガスのみを評価していても、エラストマーの有無による発生ガスの差を把握することができなかったのに対し、本明細書の分析方法を用いることで、金型排出ガスの発生量の差を把握できるようになることが明らかになった。
(第4実施例)
第4実施例では、材料100として、ガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPS、及びガラス繊維と炭酸カルシウムを33重量%ずつ添加したPPSを用いた。図1に示した射出成形機40及び金型50をシリンダ温度310℃にて所定時間にわたって稼働させた後で、金型50に発生した付着物101を捕集した。また、金型50の金型ベント54が閉塞するまでのショット数を測定した。さらに、ガス分析装置のホッパ排出ガス捕集管11、ノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガス捕集管13をそれぞれ取り出し、これらの捕集管に捕集されたガスをガスクロマトグラフィーによって分析した。
表1は、金型50の金型ベント54が閉塞するまでのショット数を示すグラフである。材料100にガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPSを用いた場合には、金型ベント54は45ショットで閉塞した。材料100にガラス繊維と炭酸カルシウムを33重量%ずつ添加したPPSを用いた場合には、金型ベント54は1000ショット後にも閉塞することはなかった。
図11は、金型に発生した付着物の重量を示すグラフである。図中の棒aは材料100にガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPSを用いた場合に、金型50のキャビティ53に発生した付着物101の重量に相当している。図中の棒bは材料100にガラス繊維と炭酸カルシウムを33重量%ずつ添加したPPSを用いた場合に、金型50のキャビティ53に発生した付着物101の重量に相当している。
ここで、材料100にガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPSを用いた場合の棒aと、材料100にガラス繊維と炭酸カルシウムを33重量%ずつ添加しPPSを用いた場合の棒bとを対比すると、1000ショット後にも金型ベント54が閉塞することがなかった材料100にガラス繊維と炭酸カルシウムを33重量%ずつ添加したPPSを用いた場合の方が、金型ベント54が早く閉塞した材料100にガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPSを用いた場合に比べ、金型キャビティ53に発生した付着物101の重量が若干少ない結果となっていた。
表2は、材料100として、ガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPSを材料とした場合と、ガラス繊維と炭酸カルシウムを33重量%ずつ添加したPPSを用いた場合とについて、射出成形機40及び金型50をシリンダ温度310℃にて所定時間にわたって稼働させた後で、ホッパ排出ガス捕集管11で捕集されたホッパ42から排出されたホッパ排出ガス、ノズル排出ガス捕集管12で捕集されたガスベントノズル43から排出されたノズル排出ガス、及び金型排出ガス捕集管13で捕集された金型ベント54から排出された金型排出ガスの重量をそれぞれ示している。
表3は、材料100として、ガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPSを用いた場合と、ガラス繊維と炭酸カルシウムを33重量%ずつ添加したPPSを用いた場合とについて、ホッパ排出ガス捕集管11で捕集されたホッパ42から排出されたホッパ排出ガス、ノズル排出ガス捕集管12で捕集されたガスベントノズル43から排出されたノズル排出ガス、及び金型排出ガス捕集管13で捕集された金型ベント54から排出された金型排出ガスについて、それぞれガスクロマトグラフィーで分析した結果を示している。表3には、検出した主要な成分の重量を示している。
表3に示すように、材料100にガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPSを用いた場合には、成分の1-ブタノールに顕著な重量が認められた。一方、材料100にガラス繊維と炭酸カルシウムを33重量%ずつ添加したPPSを用いた場合には、1-ブタノールは検出されなかった。このことから、1-ブタノールはエラストマーに由来するガスであると考えられる。ここで、1-ブタノールはPPSの成形温度に近い自然発火温度を有するため、材料100が1-ブタノールの含有量が多いエラストマーを添加したPPSの場合にはガス焼けが起こりやすく、表1に示したように金型50の金型ベント54の閉塞が早くなっていることが推測された。
第4実施例においては、ガス分析装置のホッパ排出ガス捕集管11、ノズル排出ガス捕集管12及び金型排出ガス捕集管13において、射出成形機40のホッパ42から排出されたホッパ排出ガス及びガスベントノズル43から排出されたノズル排出ガス、金型50の金型ベント54から排出された金型排出ガスをそれぞれ捕集し、射出成形のプロセスを全体的に把握することによって金型ベント54の閉塞の原因を明らかにすることができた。
なお、表2においてホッパ排出ガスの量はガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPSの方が少ない結果となっている。ホッパ排出ガスは、シリンダ41に供給した材料100を溶融した際の発生ガスを測定している点で、樹脂組成物のペレットを加熱した際の発生ガスを測定する従来の分析手法に近い結果となるものと考えられる。すなわち、従来の分析手法の場合、ガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPSの方が発生ガスは少なく有利という結果となるが、この結果は表1のベント閉塞の起こり易さとは逆の傾向となっている。
一方、表2において金型排出ガスの量はガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPSの方が多く、これは表1のベント閉塞の起こり易さの傾向と一致している。すなわち、従来の分析手法では有利と考えられうるガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPSが、実際の成形においては金型部での発生ガスが多く、ベント閉塞の点で不利になるという結果が示されている。したがって、本明細書の分析方法を用いることで、従来の発生ガスの分析方法では把握できなかった問題の原因を究明できる可能性があることが確認できた。
さらに、図11において金型キャビティ53への付着物101の量は、表1においてベント閉塞が起こり易い結果となっていたガラス繊維30重量%とエラストマーを添加したPPSの方が、僅かながら多くなっていた。なお、その付着物101の量の差はさほど大きくなかったことから、第4実施例においては、金型キャビティ53への付着物101の評価のみでは、材料100の違いによるベント閉塞の起こり易さを予測することは困難な可能性もあるが、2箇所以上の位置における発生ガスの分析を行う本明細書の分析方法において、発生ガスを捕集する位置における付着物101の分析を合わせて行うことで、ベント閉塞の起こり易さについて、より精度よく把握できうるものと考えられる。