本開示の実施の形態に係る冷凍サイクル装置および圧縮機について図面に基づいて説明する。なお、本開示は以降の実施の形態のみに限定されることはなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で変形または省略することが可能である。また、各図において共通する要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
図1は実施の形態に係る冷凍サイクル装置の一例である冷凍機の構成図である。冷凍サイクル装置の一例としてショーケース、冷蔵庫または冷凍室などの物を低温で保管する装置の冷凍機100の構成について図1を用いて説明する。冷凍機100は、圧縮機101と凝縮器102と減圧装置103と蒸発器104と冷媒配管105を備える。また、冷媒配管105によって圧縮機101と凝縮器102と減圧装置103と蒸発器104が環状に接続される。このため、圧縮機101と凝縮器102と減圧装置103と蒸発器104とを順次に介して冷媒が循環する冷媒回路が形成される。
圧縮機101は吐出口101aと吸入口101bが形成されており、吸入口101bから吸入した冷媒を圧縮して高温高圧のガス状態にして吐出口101aから吐出する。
凝縮器102は内部に流入口102aと流出口102bとを繋ぐ流路が形成されており、流路を通過する冷媒と加熱側熱媒体との間で熱交換を行わせる。加熱側熱媒体とは凝縮器102内の流路を通過する冷媒と熱交換を行う熱媒体のことである。また、冷凍機100では凝縮器102は物が保管される空間とは異なる空間に設けられる。したがって、冷凍機100において加熱側熱媒体は物が保管される空間とは異なる空間の空気である。
減圧装置103は内部を通過する冷媒を減圧させる。減圧装置103には、例えば電子膨張弁またはキャピラリーチューブなどが用いられる。
蒸発器104は内部に流入口104aと流出口104bとを繋ぐ流路が形成されており、流路を通過する冷媒と冷却側熱媒体との間で熱交換を行わせる。冷却側熱媒体とは蒸発器104内の流路を通過する冷媒と熱交換を行う熱媒体のことである。また、冷凍機100では蒸発器104は物が保管される空間と同じ空間に設けられる。したがって、冷凍機100において冷却側熱媒体は物が保管される空間の空気である。
冷媒配管105は第一の冷媒配管105aと第二の冷媒配管105bと第三の冷媒配管105cと第四の冷媒配管105dで構成される。第一の冷媒配管105aは圧縮機101の吐出口101aと凝縮器102の流入口102aとを接続する。第二の冷媒配管105bは凝縮器102の流出口102bと減圧装置103とを接続する。第三の冷媒配管105cは減圧装置103と蒸発器104の流入口104aとを接続する。第四の冷媒配管105dは蒸発器104の流出口104bと圧縮機101の吸入口101bとを接続する。
冷媒回路を循環する冷媒は、少なくともトリフルオロヨードメタンを含む冷媒である。例えば、トリフルオロヨードメタンの単一冷媒でも良いし、他の冷媒とトリフルオロヨードメタンが混合された混合冷媒でも良い。また、冷媒には添加剤が添加されていても良いし、添加剤が添加されていなくてもよい。トリフルオロヨードメタンはGWPが0.4と極めて低く、ISO817:2014において燃焼性区分が不燃性に分類される。したがって、トリフルオロヨードメタンを含むことによって冷媒はGWPと燃焼性が低い特性を得ることができる。
さらに冷媒はGWPが750以下であることが望ましい。GWPが750以下であると環境性能に優れた冷媒となり、法令上の規制に対する適合性が高い。また、GWPが750以下である冷媒は冷凍サイクル装置として冷凍機のみでなく後述する空気調和機にも使用可能となる。なお、GWPは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第五次評価報告書(AR5)の値(100年値)が用いられる。また、AR5に記載されていない冷媒のGWPは、他の公知文献に記載された値を用いてもよいし、公知の方法を用いて算出または測定した値を用いてもよい。
さらに冷媒はISO817:2014において燃焼性区分が不燃性に分類される冷媒であることが望ましい。不燃性に分類される冷媒は、冷凍サイクル装置に漏洩した冷媒を拡散させる手段、設備または構造と、冷媒漏洩を検知するセンサと、センサが冷媒漏洩を検知した時に発報する発報装置と、を設ける必要がなくなる。また、不燃性に分類される冷媒は法令上の規制で可燃性冷媒の使用が認められていない地域でも使用可能である。
さらに冷媒はHFC32とHFC125とトリフルオロヨードメタンとの混合冷媒であることが望ましい。HFC32を含むことによって、高い冷凍能力および高いエネルギー効率を確保することができる。またHFC125を含むことによって、冷媒の相変化の開始温度と終了温度の温度差である温度勾配を縮小することができる。したがって、HFC32とHFC125とトリフルオロヨードメタンとの混合冷媒はGWPと燃焼性が低い特性を得ることができる。さらに、当該混合冷媒を用いることで冷凍能力とエネルギー効率に優れた冷凍サイクル装置を得ることができる。
特に混合冷媒はトリフルオロヨードメタンが39.5wt%以下含まれた混合冷媒であることがより望ましい。なお、トリフルオロヨードメタンの重量比の小数点二桁以下の数字は切り上げされるものとする。
その中でも混合冷媒は、HFC32が47.0重量%以上49.5重量%以下、トリフルオロヨードメタンが39.0重量%以上39.5重量%以下、HFC125が11.0重量%以上13.5重量%以下それぞれ含まれ、HFC32の重量比とトリフルオロヨードメタンの重量比とHFC125の重量比の和が100.0重量%となる混合冷媒であることがより望ましい。
さらにその中でも混合冷媒はHFC32が49.0wt%含まれ、HFC125が11.5wt%含まれ、トリフルオロヨードメタンが39.5wt%含まれた混合冷媒であることがさらに望ましい。このような組成の混合冷媒はGWPが733であり、燃焼性区分が不燃性に分類される。
次に冷凍機100に形成された冷媒回路を流れる冷媒の流れについて説明する。圧縮機101の吐出口101aから吐出された高温高圧のガス状態の冷媒は第一の冷媒配管105aを通過して流入口102aから凝縮器102の内部の流路に流入する。凝縮器102の内部の流路を通過する冷媒は加熱側熱媒体によって冷却される。換言すると加熱側熱媒体は凝縮器102の内部の流路を通過する冷媒によって加熱される。凝縮器102で冷却された冷媒は低温高圧の液状態となって流出口102bから凝縮器102の外部へ流出する。凝縮器102から流出した冷媒は第二の冷媒配管105bを介して減圧装置103に流入する。減圧装置103に流入した低温高圧の液状態の冷媒は減圧されて低温低圧の気液二相状態となって減圧装置103から流出する。減圧装置103から流出した冷媒は第三の冷媒配管105cを介して流入口104aから蒸発器104の内部の流路に流入する。蒸発器104の内部の流路を通過する冷媒は冷却側熱媒体によって加熱される。換言すると冷却側熱媒体は蒸発器104の内部の流路を通過する冷媒によって冷却される。蒸発器104で加熱された冷媒は高温低圧のガス状態となって流出口104bから蒸発器104の外部へ流出する。蒸発器104から流出した冷媒は第四の冷媒配管105dを介して圧縮機101の吸入口101bから圧縮機101の内部に吸入される。圧縮機1の内部に吸入された冷媒は再び高温高圧のガス状態となって吐出口101aから吐出される。このように冷媒が冷媒回路を流れることによって、冷却側熱媒体は冷却される。つまり、物が保管される空間の空気は冷却され、物を低温で保管することができる。
図2は実施の形態に係る冷凍サイクル装置の一例である空気調和機の構成図である。冷凍サイクル装置の一例として建築物の室内の空気調和を行う空気調和機200の構成について図2を用いて説明する。空気調和機200は、圧縮機201と室外熱交換器202と減圧装置203と室内熱交換器204と流路切替装置205と冷媒配管206とを備える。また、冷媒配管206によって圧縮機201と室外熱交換器202と減圧装置203と室内熱交換器204と流路切替装置205とが環状に接続される。このため、圧縮機201と室外熱交換器202と減圧装置203と室内熱交換器204と流路切替装置205とを順次に介して冷媒が循環する冷媒回路が形成される。なお、圧縮機201と減圧装置203については、前述の圧縮機101と減圧装置103と同様であるため、説明を省略する。また、空気調和機200の冷媒回路を流れる冷媒については、前述の冷凍機100を流れる冷媒と同様であるため、説明を省略する。
室外熱交換器202は内部に第一の接続口202aと第二の接続口202bとを繋ぐ流路が形成されており、流路を通過する冷媒と建築物の室外の空気との間で熱交換を行わせる。
室内熱交換器204は内部に第一の接続口204aと第二の接続口204bとを繋ぐ流路が形成されており、流路を通過する冷媒と建築物の室内の空気との間で熱交換を行わせる。
流路切替装置205は冷媒回路を流れる冷媒の流れの向きを切り替える。具体的には、流路切替装置205はaポートとbポートとcポートとdポートとの四つのポートを有する四方弁である。
冷媒配管206は第一の冷媒配管206aと第二の冷媒配管206bと第三の冷媒配管206cと第四の冷媒配管206dと第五の冷媒配管206eと第六の冷媒配管206fとで構成される。第一の冷媒配管206aは圧縮機201の吐出口201aと流路切替装置205のaポートとを接続する。第二の冷媒配管206bは流路切替装置205のbポートと室外熱交換器202の第一の接続口202aとを接続する。第三の冷媒配管206cは室外熱交換器202の第二の接続口202bと減圧装置203とを接続する。第四の冷媒配管206dは減圧装置203と室内熱交換器204の第一の接続口204aとを接続する。第五の冷媒配管206eは室内熱交換器204の第二の接続口204bと流路切替装置205のcポートとを接続する。第六の冷媒配管206fは流路切替装置205のdポートと圧縮機201の吸入口201bとを接続する。
次に空気調和機200に形成された冷媒回路を流れる冷媒の流れについて説明する。空気調和機200では、流路切替装置205によって冷房時の冷媒回路と暖房時の冷媒回路との二種類の冷媒回路が形成される。
冷房時の冷媒回路を流れる冷媒の流れについて説明する。冷房時の冷媒回路では、流路切替装置205は図2の実線が示すようにaポートとbポートとが接続しcポートとdポートとが接続する状態になる。圧縮機201の吐出口201aから吐出された高温高圧のガス状態の冷媒は第一の冷媒配管206aと流路切替装置205と第二の冷媒配管206bを通過して第一の接続口202aから室外熱交換器202の内部の流路に流入する。室外熱交換器202の内部の流路を通過する冷媒は室外の空気によって冷却される。つまり冷房時の冷媒回路において室外熱交換器202は凝縮器の役割を果たす。室外熱交換器202で冷却された冷媒は低温高圧の液状態となって第二の接続口202bから室外熱交換器202の外部へ流出する。室外熱交換器202から流出した冷媒は第三の冷媒配管206cを介して減圧装置203に流入する。減圧装置203に流入した低温高圧の液状態の冷媒は減圧されて低温低圧の気液二相状態となって減圧装置203から流出する。減圧装置203から流出した冷媒は第四の冷媒配管206dを介して第一の接続口204aから室内熱交換器204の内部の流路に流入する。室内熱交換器204の内部の流路を通過する冷媒は室内の空気によって加熱される。換言すると室内の空気は室内熱交換器204の内部の流路を通過する冷媒によって冷却される。つまり冷房時の冷媒回路において室内熱交換器204は蒸発器の役割を果たす。室内熱交換器204で加熱された冷媒は高温低圧のガス状態となって第二の接続口204bから室内熱交換器204の外部へ流出する。室内熱交換器204から流出した冷媒は第五の冷媒配管206eと流路切替装置205と第六の冷媒配管206fを介して圧縮機201の吸入口201bから圧縮機201の内部に吸入される。圧縮機201の内部に吸入された冷媒は再び高温高圧のガス状態となって吐出口201aから吐出される。このように冷媒が冷媒回路を流れることによって、室内の空気は冷却され室内の空気調和を行うことができる。
暖房時の冷媒回路を流れる冷媒の流れについて説明する。暖房時の冷媒回路では、流路切替装置205は図2の破線が示すようにaポートとcポートとが接続しbポートとdポートとが接続する状態になる。圧縮機201の吐出口201aから吐出された高温高圧のガス状態の冷媒は第一の冷媒配管206aと流路切替装置205と第五の冷媒配管206eを通過して第二の接続口204bから室内熱交換器204の内部の流路に流入する。室内熱交換器204の内部の流路を通過する冷媒は室内の空気によって冷却される。換言すると室内の空気は室内熱交換器204の内部の流路を通過する冷媒によって加熱される。つまり暖房時の冷媒回路において室内熱交換器204は凝縮器の役割を果たす。室内熱交換器204で冷却された冷媒は低温高圧の液状態となって第一の接続口204aから室内熱交換器204の外部へ流出する。室内熱交換器204から流出した冷媒は第四の冷媒配管206dを介して減圧装置203に流入する。減圧装置203に流入した低温高圧の液状態の冷媒は減圧されて低温低圧の気液二相状態となって減圧装置203から流出する。減圧装置203から流出した冷媒は第三の冷媒配管206cを介して第二の接続口202bから室外熱交換器202の内部の流路に流入する。室外熱交換器202の内部の流路を通過する冷媒は室外の空気によって加熱される。つまり暖房時の冷媒回路において室外熱交換器202は蒸発器の役割を果たす。室外熱交換器202で加熱された冷媒は高温低圧のガス状態となって第一の接続口202aから室外熱交換器202の外部へ流出する。室外熱交換器202から流出した冷媒は第二の冷媒配管206bと流路切替装置205と第六の冷媒配管206fを介して圧縮機201の吸入口201bから圧縮機201の内部に吸入される。圧縮機201の内部に吸入された冷媒は再び高温高圧のガス状態となって吐出口201aから吐出される。このように冷媒が冷媒回路を流れることによって、室内の空気は加熱され室内の空気調和を行うことができる。
図3は実施の形態に係る冷凍サイクル装置の一例である冷媒と熱媒体とを用いた空気調和機の構成図である。冷凍サイクル装置の一例として中間熱媒体を用いて建築物の室内の空気調和を行う空気調和機300の構成について図3を用いて説明する。空気調和機300は、圧縮機301と室外熱交換器302と減圧装置303と冷媒熱媒体間熱交換器304と流路切替装置305と冷媒配管306と室内熱交換器307とポンプ308と熱媒体配管309とを備える。また、冷媒配管306によって圧縮機301と室外熱交換器302と減圧装置303と冷媒熱媒体間熱交換器304と流路切替装置305とが環状に接続される。このため、圧縮機301と室外熱交換器302と減圧装置303と冷媒熱媒体間熱交換器304と流路切替装置305とを順次に介して冷媒が循環する冷媒回路が形成される。また、熱媒体配管309によって冷媒熱媒体間熱交換器304と室内熱交換器307とポンプ308とが環状に接続される。このため、冷媒熱媒体間熱交換器304と室内熱交換器307とポンプ308とを順次に介して熱媒体が循環する熱媒体回路が形成される。なお、圧縮機301と室外熱交換器302と減圧装置203と流路切替装置305については、前述の圧縮機101と室外熱交換器202と減圧装置103と流路切替装置205と同様であるため、説明を省略する。空気調和機300の冷媒回路を流れる冷媒については、前述の冷凍機100を流れる冷媒と同様であるため、説明を省略する。
冷媒熱媒体間熱交換器304は内部に第一の冷媒側接続口304aと第二の冷媒側接続口304bとを繋ぐ冷媒流路および第一の熱媒体側接続口304cと第二の熱媒体側接続口304dとを繋ぐ熱媒体流路が形成される。冷媒熱媒体間熱交換器304は冷媒流路を流れる冷媒と熱媒体流路を流れる熱媒体との間で熱交換を行わせる。
冷媒配管306は第一の冷媒配管306aと第二の冷媒配管306bと第三の冷媒配管306cと第四の冷媒配管306dと第五の冷媒配管306eと第六の冷媒配管306fとで構成される。第四の冷媒配管306dは減圧装置203と冷媒熱媒体間熱交換器304の第一の冷媒側接続口304aとを接続する。第五の冷媒配管306eは冷媒熱媒体間熱交換器304の第二の冷媒側接続口304bと流路切替装置205のcポートとを接続する。なお、第一の冷媒配管306aと第二の冷媒配管306bと第三の冷媒配管306cと第六の冷媒配管306fについては、前述の第一の冷媒配管206aと第二の冷媒配管206bと第三の冷媒配管206cと第六の冷媒配管206fと同様であるため、説明を省略する。
室内熱交換器307は内部に第一の接続口307aと第二の接続口307bとを繋ぐ流路が形成されており、流路を通過する熱媒体と建築物の室内の空気との間で熱交換を行わせる。
ポンプ308は吐出口308aと吸入口308bとを備え、吸入口308bより熱媒体を吸入し、吸入した熱媒体を吐出口308aより吐出する。
熱媒体配管309は第一の熱媒体配管309aと第二の熱媒体配管309bと第三の熱媒体配管309cとで構成される。第一の熱媒体配管309aはポンプ308の吐出口308aと冷媒熱媒体間熱交換器304の第一の熱媒体側接続口304cとを接続する。第二の熱媒体配管309bは冷媒熱媒体間熱交換器304の第二の熱媒体側接続口304dと室内熱交換器307の第一の接続口204aとを接続する。第三の熱媒体配管309cは室内熱交換器307の第二の接続口204bとポンプ308の吸入口308bとを接続する。
熱媒体回路を循環する熱媒体には、冷媒熱媒体間熱交換器304および室内熱交換器307において液体の状態のまま熱交換を行うような熱媒体が用いられる。たとえば、ブライン(不凍液)、水、ブラインと水との混合液、または防食効果が高い添加剤と水との混合液などを熱媒体として用いることができる。
次に空気調和機300に形成された冷媒回路を流れる冷媒の流れについて説明する。空気調和機300では、空気調和機200と同様に流路切替装置305によって冷房時の冷媒回路と暖房時の冷媒回路の二種類の冷媒回路が形成される。
冷房時の冷媒回路を流れる冷媒の流れについて説明する。なお、流路切替装置305の接続状態の説明と、冷媒が圧縮機301から吐出されてから減圧装置303より流出するまでの説明と、冷媒が圧縮機301に吸入されてから圧縮機301より再び吐出されるまでの説明と、は各構成の付番を除いて空気調和機200の説明と同様であるため説明を省略する。減圧装置303から流出した冷媒は第四の冷媒配管306dを介して第一の冷媒側接続口304aから冷媒熱媒体間熱交換器304の冷媒流路に流入する。冷媒熱媒体間熱交換器304の冷媒流路を通過する冷媒は冷媒熱媒体間熱交換器304の熱媒体流路を通過する熱媒体によって加熱される。換言すると冷媒熱媒体間熱交換器304の熱媒体流路を通過する熱媒体は冷媒熱媒体間熱交換器304の冷媒流路を通過する冷媒によって冷却される。つまり冷房時の冷媒回路において冷媒熱媒体間熱交換器304は蒸発器の役割を果たす。冷媒熱媒体間熱交換器304で加熱された冷媒は高温低圧のガス状態となって第二の冷媒側接続口304bから冷媒熱媒体間熱交換器304の外部へ流出する。
暖房時の冷媒回路を流れる冷媒の流れについて説明する。なお、流路切替装置305の接続状態の説明と、冷媒が減圧装置303に流入してから圧縮機301より再び吐出されるまでの説明と、は各構成の付番を除いて空気調和機200の説明と同様であるため説明を省略する。圧縮機301の吐出口301aから吐出された高温高圧のガス状態の冷媒は第一の冷媒配管306aと流路切替装置305と第五の冷媒配管306eを通過して第二の冷媒側接続口304bから冷媒熱媒体間熱交換器304の冷媒流路に流入する。冷媒熱媒体間熱交換器304の冷媒流路を通過する冷媒は冷媒熱媒体間熱交換器304の熱媒体流路を通過する熱媒体によって冷却される。換言すると冷媒熱媒体間熱交換器304の熱媒体流路を通過する熱媒体は冷媒熱媒体間熱交換器304の冷媒流路を通過する冷媒によって加熱される。つまり暖房時の冷媒回路において冷媒熱媒体間熱交換器304は凝縮器の役割を果たす。冷媒熱媒体間熱交換器304で冷却された冷媒は低温高圧の液状態となって第一の冷媒側接続口304aから冷媒熱媒体間熱交換器304の外部へ流出する。
次に空気調和機300に形成された熱媒体回路に流れる熱媒体の流れについて説明する。ポンプ308の吐出口308aから吐出された熱媒体は第一の熱媒体配管309aを通過して第一の熱媒体側接続口304cから冷媒熱媒体間熱交換器304の熱媒体流路に流入する。冷媒熱媒体間熱交換器304の熱媒体流路を通過する熱媒体は冷媒熱媒体間熱交換器304の冷媒流路を通過する冷媒と熱交換を行う。つまり冷媒熱媒体間熱交換器304の熱媒体流路を通過する熱媒体は、冷媒回路が冷房時の冷媒回路である場合には冷却され、冷媒回路が暖房時の冷媒回路である場合には加熱される。冷媒熱媒体間熱交換器304で熱交換を行った熱媒体は第二の熱媒体側接続口304dから冷媒熱媒体間熱交換器304の外部へ流出する。冷媒熱媒体間熱交換器304から流出した熱媒体は第二の熱媒体配管309bを通過して第一の接続口207aから室内熱交換器207の内部の流路に流入する。室内熱交換器207の内部の流路を通過する冷媒は室内の空気と熱交換を行う。つまり、室内熱交換器207の内部の流路を通過する冷媒は、冷媒回路が冷房時の冷媒回路である場合には室内の空気を冷却し、冷媒回路が暖房時の冷媒回路である場合には室内の空気を加熱する。室内熱交換器207で熱交換を行った熱媒体は第二の接続口207bから室内熱交換器207の外部へ流出する。室内熱交換器207から流出した熱媒体は第三の熱媒体配管309cを通過してポンプ308の吸入口308bから吸入され、再びポンプ308から吐出される。
図4は実施の形態に係る圧縮機のモータの主軸の軸方向に平行な断面で切断した断面図である。次に実施の形態に係る冷凍サイクル装置に用いられる圧縮機1について図4を用いて説明する。なお、圧縮機1は、図1に示す冷凍機100の圧縮機101、図2に示す空気調和機200の圧縮機201、または図3に示す空気調和機300の圧縮機301として利用することができる。
圧縮機1は、密閉容器2と、アキュムレータ3と、モータ4と、主軸5と、上側軸受6と、下側軸受7と、圧縮機構部8とを有する。また、これらの部品は鉄、銅またはアルミニウムなどの金属材料より形成された金属部品である。
密閉容器2は、モータ4と主軸5と上側軸受6と下側軸受7と圧縮機構部8とを収納し、圧縮機1の外殻を構成する。また、密閉容器2は吐出管9と連結管10とが接続されている。吐出管9の一方の端部は吐出口101a、201aおよび301aに該当する。吐出管9の他方の端部は密閉容器2の内部に接続される。連結管10の一方の端部は密閉容器2の内部の圧縮機構部8に接続され、連結管10の他方の端部はアキュムレータ3の内部に接続される。
また、密閉容器2の下部には冷凍機油が貯留されている。この冷凍機油が貯留される部分を油貯留部11と称する。冷凍機油は摩耗低減、温度調節またはシール性の向上などの目的に使用される。実施の形態の圧縮機1では冷凍機油には例えばポリオールエステル油、ポリビニルエーテル油、ポリアルキレングリコール油、鉱油またはそれらの混合物などの既存の冷凍機油が用いることが可能である。ただし、冷凍機油に含まれる水分は100重量ppm以下であることが望ましい。冷凍機油に含まれる水分を100重量ppm以下にすることによって、水分による冷媒、冷凍機油または金属部品の劣化を抑制することができる。冷凍機油の水分量は、例えば、冷凍機油の乾燥処理、冷凍機油の充填時における雰囲気の調整、冷凍機油の充填時に冷凍サイクル装置に施す真空引きの減圧度合、冷凍サイクル装置内への乾燥機または乾燥剤の設置などによって低減することができる。なお、冷凍機油の水分量は、冷媒と相溶している冷凍機油を冷凍サイクル内から採取して求めることができる。冷凍機油中の水分量の測定はJIS K 2275-3:2015「原油及び石油製品―水分の求め方―第3部:カールフィッシャー式電量滴定法」に準じて行うことができる。
また、実施の形態の圧縮機1に用いられる冷凍機油はポリビニルエーテル油を用いる方が望ましい。
また、実施の形態の圧縮機1に用いられる冷凍機油はアルキルナフタレンが添加された冷凍機油を用いる方が望ましい。さらに実施の形態の圧縮機1に用いられる冷凍機油はアルキルナフタレンが4wt%以上含まれた冷凍機油であることがより望ましい。その中でも実施の形態の圧縮機1に用いられる冷凍機油はアルキルナフタレンが4wt%以上20wt%以下含まれたポリビニルエーテル油であることがさらに望ましい。
アルキルナフタレンは下記の化学式(1)で表される多環芳香族炭化水素の化合物である。R1からR8のそれぞれはアルキル基または水素原子を表し、互いに同一であっても異なっても良い。また、R1からR8の構造によって粘度および流動点などの物性が異なる。R1からR8の構造はいかなる構造であってもよいが、低温流動性に優れたものが望ましい。
アキュムレータ3は冷凍サイクル装置の負荷または運転状態の変動に応じて生じる余剰冷媒を貯留する。また、アキュムレータ3は吸入管12と連結管10とが接続されている。吸入管12の一方の端部は吸入口101b、201bおよび301bに該当する。吸入管12の他方の端部はアキュムレータ3の内部に接続される。
モータ4は電力の供給を受けて主軸5を回転させる。モータ4は固定子41と回転子42とを有し、上側軸受6と下側軸受7と圧縮機構部8よりも上方に位置している。固定子41は、例えば電磁鋼板を複数積層した鉄心に絶縁層を介して巻線を巻いたコイルをリング状に配置した部品である。固定子41は焼嵌め又は圧入などの手段によって密閉容器2の内部に固定されている。回転子42は、磁石44が設けられた円筒状の部品である。回転子42は、リング状の固定子41の穴の中に配置されている。固定子41に電力が供給されることによって、回転子42はモータ4の中心軸を中心に回転する。なお、回転子42の詳細については後述する。
主軸5はモータ4の回転力を圧縮機構部8に伝達する。主軸5は長尺な棒状の部品であり、主軸5の中心軸はモータ4の回転軸と一致するように配置される。主軸5の下側の先端は油貯留部11に貯留された冷凍機油に浸される。また、主軸5の内部には油貯留部11から冷凍機油が流れる図示を省略した油流路が形成され、圧縮機1の運転中に冷凍機油は油貯留部11から油流路に吸い上げられる。
上側軸受6と下側軸受7は主軸5を回転可能に支持する。また、上側軸受6と主軸5とが摺動する箇所および下側軸受7と主軸5とが摺動する箇所には、油流路に吸い上げられた冷凍機油が供給される。また、上側軸受6は圧縮機構部8よりも上方に位置し、下側軸受7は圧縮機構部8よりも下方に位置する。
圧縮機構部8は、主軸5によって伝達されたモータ4の回転力により駆動し、圧縮機構部8に流入した冷媒を圧縮する。圧縮機構部8はシリンダーとローリングピストンを有する。シリンダーは主軸5の軸方向と垂直な断面において略円形の空間であるシリンダー室を有し、ローリングピストンはシリンダー室に配置される。ローリングピストンは主軸5に固定されており、主軸5が回転することによってローリングピストンは偏心回転運動を行う。シリンダーの内周面とローリングピストンの外周面とベーンによって囲まれた空間が圧縮室となる。圧縮室の体積はローリングピストンが偏心回転運動することによって圧縮室の体積は変化する。なお、実施の形態の圧縮機1のように圧縮機構部8がシリンダーとローリングピストンを有する圧縮機はロータリー圧縮機と称される。また、偏心回転運動とは、物体が物体の中心軸を中心に自転しながら主軸5の中心軸を中心に公転する運動のことを指す。
図5は実施の形態に係る圧縮機が有する回転子の図4におけるA-A断面を示す断面図である。図6は実施の形態に係る磁石の図5におけるB-B断面を示す断面図である。次に圧縮機1が有する回転子42と回転子42に設けられた磁石44について図5および図6を用いて説明する。
回転子42は、回転子コア43と、複数個の磁石44とを有する。
回転子コア43は円盤状の鋼板を複数枚積層させて形成される。また、回転子コア43には複数個の磁石挿入孔43aと複数個の冷媒通過孔43bと軸孔43cとが鋼板の積層方向に貫通するように形成される。磁石挿入孔43aには磁石44がそれぞれ挿入される。冷媒通過孔43bは冷凍サイクル装置が運転する時に冷媒が通過する。軸孔43cには主軸5が挿入される。また、軸孔43cは図5における断面、つまり回転子コア43の鋼板の積層方向とは垂直な方向で切断した断面の中心に設けられる。磁石挿入孔43aは回転子コア43の周に沿って設けられる。冷媒通過孔43bは磁石挿入孔43aと軸孔43cとの間に設けられる。
磁石44はNd-Fe-B焼結体であるネオジム磁石である。なお、ネオジム磁石はネオジム(Nd)を含む磁石のことである。ネオジム磁石の代表的な組成比は、鉄(Fe)が66wt%、ネオジム(Nd)が28wt%、ディスプロシウム(Dy)が5wt%、ホウ素(B)が1wt%である。ただし、磁力的な特性または機械的な特性を向上させるなどの理由で上述の組成比が異なっているネオジム磁石または上述の組成比に含まれる元素以外の元素が含まれるネオジム磁石であっても構わない。また、磁石44は圧縮機1の金属部品に該当する。
また、磁石44の表面には皮膜45が設けられることが望ましい。皮膜45は磁石44の表面全体を覆うように形成される。なお、図6において紙面手前側の磁石44の表面および紙面奥側の磁石44の表面も皮膜45に覆われている。皮膜45の膜厚は特に限定されず、例えば100μm以下の膜厚の皮膜45が形成される。
皮膜45は耐熱性および耐油性に優れた無機系皮膜であることがより望ましい。皮膜45には少なくともアルミニウム(Al)とケイ素(Si)が含まれる。
さらに皮膜45には、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とマグネシウム(Mg)が含まれることがさらに望ましい。
特に皮膜45には、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とマグネシウム(Mg)が含まれ、リン(P)が含まれていないことがさらに望ましい。
また、磁石44に皮膜45を形成する方法としては、既存の皮膜形成方法であれば特に限定されない。例えば、スパッタリング、化学的気相堆積法(CVD)、蒸着、イオンプレーティング、イオンビーム蒸着、ディップコート、スピンコート、スプレーコート、メッキおよびその他の方法を適宜選択することができる。
次に圧縮機1が動作している場合に圧縮機1の内部に流れる冷媒の流れについて説明する。冷媒は吸入管12の一方の端部から吸入される。吸入口101bから吸入された冷媒はアキュムレータ3に流入する。アキュムレータ3の内部に流入した冷媒のうち液相の冷媒はアキュムレータ3の内部に貯留される。気相の冷媒はアキュムレータ3と連結管10とを通過し、密閉容器2の内部に流入する。密閉容器2の内部に流入した冷媒は圧縮機構部8で圧縮され高温高圧の冷媒となる。圧縮機構部8で圧縮された冷媒は圧縮機構部8から密閉容器2の内部に吐出される。つまり、密閉容器2の内部には圧縮機構部8で圧縮された冷媒で満たされており、モータ4の磁石44に形成された皮膜45も冷媒と接触する。密閉容器2の内部に吐出された冷媒はモータ4の冷媒通過孔43bを通過し、吸入管12の一方の端部である吐出口101aから密閉容器2の外部へ吐出される。また、圧縮機1が動作している場合、冷凍機油が主軸5と上側軸受6または下側軸受7と摺動する箇所に供給されている。このため、圧縮機1の内部では冷媒は冷凍機油と混合された状態となっている。
以上のように実施の形態に係る冷凍サイクル装置の構成は、冷媒を圧縮する圧縮機1と、圧縮機1から吐出された冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器から流出した冷媒を減圧する減圧装置と、減圧装置で減圧された冷媒を蒸発させる蒸発器と、を備え、冷媒はトリフルオロヨードメタンを含み、圧縮機1は、冷媒を圧縮する圧縮機構部8と、固定子41と磁石44が設けられた回転子42とを有し圧縮機構部8を駆動させるモータ4と、を有し、磁石44はネオジムを含むネオジム磁石である構成である。ネオジム磁石は他の永久磁石と比較して磁束密度が高い。回転子の回転速度は、回転子に設けられた磁石の磁束密度が高いほど速くなり、固定子のコイルに印加される電流値が高いほど速くなる。また、固定子のコイルに印加される電流値が高いほどコイルの発熱量は増える。このため、回転子に設けられた磁石にネオジム磁石を使用した場合では他の永久磁石を使用した場合と比較して、同じ回転子の回転速度の時に固定子のコイルに印加される電流値が低くなり、コイルの発熱量も低減する。さらに、コイルの発熱量が低減することによって、コイルの発熱によるトリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂を抑制することができ、ヨウ化水素の発生が抑制されて、圧縮機1の金属部品の劣化を抑制することができる。したがって、磁石44はネオジムを含むネオジム磁石である構成を有することによって、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、ヨウ化水素による金属部品の劣化を抑制し長期にわたって冷凍サイクル装置の信頼性を確保することができる効果を奏する。
さらに、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、付加的な構成として、磁石44の表面には皮膜45が設けられ、皮膜45はアルミニウムとケイ素を含む無機系皮膜である構成を有する。後述する実施例に示すようにネオジム磁石はトリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂に起因して生成されるヨウ化水素によって著しく劣化する。しかしながら、後述する実験例に示すようにネオジム磁石の表面にアルミニウムとケイ素を含む無機系皮膜を設けることによって、ネオジム磁石の劣化を抑制することができる。したがって、当該付加的な構成を有することによって、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、ヨウ化水素によるネオジム磁石の劣化を抑制し長期にわたって冷凍サイクル装置の信頼性を確保することができる効果を奏する。
さらに、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、付加的な構成として、磁石44の表面には皮膜45が設けられ、皮膜45はアルミニウムとケイ素とマグネシウムを含む無機系皮膜である構成を有する。後述する実験例に示すようにネオジム磁石の表面にアルミニウムとケイ素とマグネシウムを含む無機系皮膜を設けることによって、ネオジム磁石の劣化をより抑制することができる。したがって、当該付加的な構成を有することによって、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、ヨウ化水素によるネオジム磁石の劣化をより抑制し長期にわたって冷凍サイクル装置の信頼性を確保することができる効果を奏する。
さらに、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、付加的な構成として、磁石44の表面には皮膜45が設けられ、皮膜45はアルミニウムとケイ素とマグネシウムを含みリンを含まない無機系皮膜である構成を有する。後述する実験例に示すようにネオジム磁石の表面にアルミニウムとケイ素とマグネシウムを含みリンを含まない無機系皮膜を設けることによって、ネオジム磁石の劣化をさらに抑制することができる。したがって、当該付加的な構成を有することによって、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、ヨウ化水素によるネオジム磁石の劣化をさらに抑制し、長期にわたって冷凍サイクル装置の信頼性を確保することができる効果を奏する。
さらに、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、付加的な構成として、冷媒はジフルオロメタンとペンタフルオロエタンとトリフルオロヨードメタンを含む冷媒である構成を有する。また、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、付加的な構成として、冷媒はトリフルオロヨードメタンが39.5重量%以下含まれる冷媒である構成を有する。また、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、より望ましい付加的な構成として、ジフルオロメタンが47.0重量%以上49.5重量%以下であり、トリフルオロヨードメタンが39.0重量%以上39.5重量%以下、ペンタフルオロエタンが11.0重量%以上13.5重量%以下それぞれ含まれ、ジフルオロメタンの重量比とトリフルオロヨードメタンの重量比とペンタフルオロエタンの重量比の和が100.0重量%となる冷媒である構成を有する。また、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、さらに望ましい付加的な構成として、冷媒はジフルオロメタンが49.0重量%、トリフルオロヨードメタンが39.5重量%、ペンタフルオロエタンが11.5重量%それぞれ含まれる冷媒である構成を有する。当該付加的な構成を有することによって、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、低GWPと低燃焼性を両立した冷媒を用いた冷凍サイクル装置を得ることができる効果を奏する。
また、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、付加的な構成として、圧縮機1はモータ4の回転力を圧縮機構部8に伝達する主軸5と主軸5を回転可能に支持する軸受(上側軸受6または下側軸受7が該当)とを備え、圧縮機1には主軸5と軸受とが摺動する箇所に供給される冷凍機油が充填されており、冷凍機油にはアルキルナフタレンが4重量%以上含まれている構成を有する。アルキルナフタレンが有するアルキル基または水素原子がトリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂によって生じるトリフルオロメチルラジカル及びヨウ素ラジカルと置換されることによって、アルキルナフタレンはトリフルオロメチルラジカル及びヨウ素ラジカルを捕捉することができる。アルキルナフタレンがヨウ素ラジカルを捕捉することによってヨウ化水素の生成を抑制する。アルキルナフタレンによりヨウ化水素の生成を抑制する効果は、後述する実験例に示すようにトリフルオロヨードメタンが39.5重量%以下含まれる冷媒において冷凍機油にアルキルナフタレンが4重量%以上含まれる場合に奏する。したがって、当該付加的な構成を有することによって、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、ヨウ化水素による金属部品の劣化を抑制し長期にわたって冷凍サイクル装置の信頼性を確保することができる効果を奏する。
また、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、付加的な構成として、圧縮機1はモータ4の回転力を圧縮機構部8に伝達する主軸5と主軸5を回転可能に支持する軸受(上側軸受6または下側軸受7が該当)とを備え、圧縮機1には主軸5と軸受とが摺動する箇所に供給される冷凍機油が充填されており、冷凍機油にはアルキルナフタレンが4重量%以上20重量%以下含まれている構成を有する。アルキルナフタレンによるヨウ化水素の生成を抑制する効果は、後述する実験例に示すようにトリフルオロヨードメタンが39.5重量%含まれる冷媒において冷凍機油にアルキルナフタレンが4重量%以上含まれる場合に奏する。また、後述する実験例に示すようにジフルオロメタンが49.0重量%、トリフルオロヨードメタンが39.5重量%、ペンタフルオロエタンが11.5重量%それぞれ含まれる冷媒の場合において冷凍機油にアルキルナフタレンが20重量%より多く含まれると冷凍機油と冷媒が非相溶となるため望ましくない。したがって、当該付加的な構成を有することによって、実施の形態に係る冷凍サイクル装置は、ヨウ化水素による金属部品の劣化を抑制し長期にわたって冷凍サイクル装置の信頼性を確保することができる効果を奏する。
また、実施の形態に係る圧縮機1の構成は、トリフルオロヨードメタンを含む冷媒が循環する冷媒回路を備える冷凍サイクル装置に用いられる圧縮機1であって冷媒を圧縮する圧縮機構部8と、固定子41と磁石44が設けられた回転子42とを有し圧縮機構部8を駆動させるモータ4と、を備え、磁石44はネオジムを含むネオジム磁石である構成を有する。前述した冷凍サイクル装置の構成と同様の理由に基づき、実施の形態に係る圧縮機1は、磁石44はネオジムを含むネオジム磁石である構成を有することによって、実施の形態に係る圧縮機1は、ヨウ化水素による金属部品の劣化を抑制し長期にわたって冷凍サイクル装置の信頼性を確保することができる効果を奏する。
また、前述した実施の形態に係る冷凍サイクル装置の付加的な構成を、実施の形態に係る圧縮機1の構成の付加的な構成としても構わない。
実施の形態に係る冷凍サイクル装置および圧縮機の変形例について説明する。
実施の形態に係る冷凍サイクル装置の例として、冷凍機100、空気調和機200および空気調和機300について説明したが、これらに限らず、冷凍サイクル装置は冷媒を圧縮する圧縮機と、圧縮機から吐出した前記冷媒を凝縮させる凝縮器と、凝縮器から流出した前記冷媒を減圧する減圧装置と、減圧装置で減圧された前記冷媒を蒸発させる蒸発器とを備える装置であれば良い。例えば、冷凍サイクル装置は蒸発器で空気を冷却することで空気中の水分を結露させ結露させた後の空気を凝縮器で加熱する再熱型の除湿機であっても構わない。また、冷凍サイクル装置は凝縮器で水を加熱させ湯を生成する給湯機であっても構わない。
また、実施の形態に係る圧縮機の例として、ロータリー圧縮機について説明したが、これに限らず、ロータリー圧縮機とは圧縮機構部の構成が異なるスクリュー圧縮機またはスクロール圧縮機などの磁石を有するモータを備えた他の圧縮機を用いても構わない。
以降、実施例を示して本開示について具体的に説明するが、本発明の技術範囲はこれに限定されるものではない。実施例では第一の試験、第二の試験および第三の試験について説明する。
まず、第一の試験について説明する。第一の試験では、磁石に皮膜が無い場合と磁石に皮膜AからCの三種類の皮膜のいずれか一つの皮膜がある場合との四種類の試料に基づきトリフルオロヨードメタンに対するネオジム磁石の劣化について評価を行った。
皮膜AからCについて説明する。皮膜A、皮膜Bおよび皮膜Cはそれぞれ構成元素が異なる無機系皮膜である。皮膜Aから皮膜Cのそれぞれの皮膜を施したネオジム磁石の表面の元素を走査電子顕微鏡(日本電子製 JSM-IT500HR)を用いて分析した結果を表1に示す。表1では走査電子顕微鏡で検出できた元素をYesで示し、検出できなかった元素をNoで示す。ただし、皮膜のみの元素を分析することは実際的ではなく、表1に示す分析結果は皮膜の母材となるネオジム磁石に含まれる元素も含んでいる可能性が高い。このため、表1のうちネオジム磁石に含まれる元素であるFeとNdについては皮膜に含まれていない可能性がある。また、Ndと原子番号が近いPrについても同様に皮膜に含まれていない可能性がある。なお、表1において、Cは炭素、Oは酸素、Mgはマグネシウム、Alはアルミニウム、Siはケイ素、Pはリン、Feは鉄、Prはプラセオジム、Ndはネオジムをそれぞれ表している。
表1に示すように、皮膜Aにはアルミニウム(Al)とケイ素(Si)が含まれ、マグネシウム(Mg)とリン(P)は含まれていない。皮膜Bにはアルミニウム(Al)とケイ素(Si)とマグネシウム(Mg)が含まれ、リン(P)は含まれていない。皮膜Cにはアルミニウム(Al)とケイ素(Si)とマグネシウム(Mg)とリン(P)が含まれている。
第一の試験の試験方法について説明する。第一の試験はシールドチューブテストであり、JIS K2211:2009(付属書B シールドチューブテスト)に準拠して行った。シールドチューブテストとは、冷媒との化学的安定性試験方法の一種であり、具体的には以降に記載するような手順で行われる試験である。試験容器に触媒として鉄、銅およびアルミニウムを入れ試料と冷媒を注入後密封する。次に密封した試験容器を125~200℃で一定時間加熱後、溶液の色などによって試料の化学的安定性を評価する。
第一の試験では、50cm3の試験容器に試料と冷凍機油と冷媒と触媒と封入した。冷媒については、JIS K2211:2009(付属書B シールドチューブテスト)に記載されている体積目盛によるはかりとり法で封入した。なお、冷凍機油を封入した理由は、圧縮機の内部では冷媒は冷凍機油と混合した状態であり、その状態を模擬するためである。冷媒はトリフルオロヨードメタン(大陽日酸株式会社製)の単一冷媒である。また、試験容器には7gの冷媒を封入した。冷凍機油はポリビニルエーテル油(出光興産株式会社製 40℃における動粘度=50.7mm2/s)である。また、当該冷凍機油は水分量が50ppm未満になるよう窒素バブリングにより水分を除去した。また、当該冷凍機油についてJIS K 2580:2003(石油製品一色試験方法)に準拠して測定したASTM色はL0.5であった。また、試験容器には15gの冷凍機油を封入した。試料は、表面に皮膜が形成されていないネオジム磁石(以降、当該磁石を封入した第一の試験を試験例1と称する)と、表面に皮膜Aが形成されたネオジム磁石(以降、当該磁石を封入した第一の試験を試験例2と称する)と、表面に皮膜Bが形成されたネオジム磁石(以降、当該磁石を封入した第一の試験を試験例3と称する)と、表面に皮膜Cが形成されたネオジム磁石(以降、当該磁石を封入した第一の試験を試験例4と称する)をそれぞれ封入した。各試料の形状と大きさは3mm×2mm×20mmの直方体であり、重量は0.91gである。触媒は鉄、銅およびアルミニウムを封入した。各触媒の形状と大きさは直径1.6mm、長さ50mmの円筒である。
第一の試験では、試料と冷凍機油と冷媒と触媒を封入した試験容器を温度140℃で14日間に亘って加熱した。
第一の試験では、加熱後に試験容器を開封し、試料の重量の測定と、冷媒中の三フッ化メタン(CHF3)の量の測定と、冷凍機油のASTM色の測定とを行った。試料の重量の測定では、加熱後の試験容器より塊状の試料を取り出し、取り出した塊状の試料の重量について電子天秤を用いて測定を行った。なお、加熱後の試料が劣化している場合には、塊状の試料と粉状の試料に分かれており粉状の試料は回収することが実際的ではないため、塊状の試料のみの重量を測定した。冷媒中の三フッ化メタンの量の測定では、加熱後の試験容器よりガス状の冷媒を取り出し、取り出したガス状の冷媒をガスクロマトグラフ質量分析装置(日本電子製 JMS-Q1000GCMK2)を用いて測定を行った。冷凍機油のASTM色の測定では、加熱後の試験容器より冷凍機油を取り出し、取り出した冷凍機油をJIS K 2580:2003(石油製品一色試験方法)に準拠して測定した。
表2に、第一の試験を行った結果を示す。表2では試験例1から4において、皮膜の有無と皮膜の種類、試料の重量維持率、三フッ化メタンの生成量比および冷凍機油のASTM色を示す。試料の重量維持率とは、加熱後の塊状の試料の重量から加熱前の試料の重量を除算し100を乗算した値である。つまり、試料の重量維持率は加熱前の試料の重量に対する加熱後の塊状の試料の重量の比率を百分率で表したものである。試料の重量維持率が高いほど試料が劣化せずに塊状で残ったことを示しており、逆に試料の重量維持率が低いほど試料が劣化によって粉状になったことを示している。このため、試料の重量維持率は試料の劣化の指標となり、試料の重量維持率が高いほど試料は劣化しておらず、試料の重量維持率が低いほど試料は劣化している。また、三フッ化メタンの生成比は、それぞれの試験例における加熱後の冷媒中の三フッ化メタンの量から試験例1における加熱後の冷媒中の三フッ化メタンの量を除算した値である。つまり、三フッ化メタンの生成比は試験例1における加熱後の冷媒中の三フッ化メタンの量に対するそれぞれの試験例における加熱後の冷媒中の三フッ化メタンの量の比率である。三フッ化メタンの生成量比が高いほど、冷媒中に多くの三フッ化メタンが含まれる。三フッ化メタンはトリフルオロヨードメタンのC-I結合が開裂することによって生成されるトリフルオロメチルラジカルが冷凍機油中の水素と反応して生成される。また、トリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂ではトリフルオロメチルラジカルとヨウ素ラジカルとが1:1の割合で生成され、生成されたヨウ素ラジカルは冷凍機油中の水素と反応してヨウ化水素を生成する。そしてヨウ化水素が試料の劣化の要因となる。このため、三フッ化メタンの生成量比はヨウ化水素の生成量の指標となり、生成量比が高いほどヨウ化水素の生成量は多く、生成量比が低いほどヨウ化水素の生成量は少ない。なお、加熱後の冷媒中のヨウ化水素の量を直接測定しない理由は、ヨウ化水素と試料とが反応することで試料が劣化し、反応によりヨウ化水素が消費され、加熱後の冷媒中のヨウ化水素の量を直接測定しても生成されたヨウ化水素の量を正確に測定することができないからである。また、冷凍機油のASTM色は冷凍機油の劣化の指標となり、冷凍機油のASTM色が濃いほど冷凍機油は劣化しており、冷凍機油のASTM色が薄いほど冷凍機油は劣化していない。なお、ASTM色は数値が低いほど薄い。
表2に示すように試験例1では加熱後の試料は全て粉状になり、加熱後の塊状の試料の重量を測定することができなかった。また、試験例1では加熱後の冷媒から三フッ化メタンが検出された。したがって、第一の試験から140℃という高温下ではトリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂によって生じるヨウ化水素はネオジム磁石を著しく劣化させることが確認された。ただし、圧縮機の回転子にネオジム磁石を使用することでモータの発熱が抑制され、トリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂によって生じるヨウ化水素の量は低減する。このため、圧縮機の回転子にネオジム磁石を用いた場合と圧縮機の回転子に他の永久磁石を用いた場合とにおける磁石の劣化はネオジム磁石を用いた場合の方が劣化の度合が小さいと推測される。
また、表2に示すように試験例2から4のそれぞれの試験例では加熱後の試料は塊状の試料が残り、加熱後の塊状の試料の重量を測定することができた。三フッ化メタンの生成比は試験例1よりも試験例2から4のそれぞれの試験例の方が少ない。したがって、第一の試験から、少なくともアルミニウム(Al)とケイ素(Si)が含まれる皮膜(皮膜A、皮膜B、皮膜C)が表面に形成されたネオジム磁石をトリフルオロヨードメタンの単一冷媒の中に入れた場合には、皮膜が表面に形成されていないネオジム磁石をトリフルオロヨードメタンの単一冷媒の中に入れた場合と比較して、トリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂が抑制され、ネオジム磁石の劣化が抑制されることが確認された。
また、表2に示すように試料の重量維持率は試験例2よりも試験例3および試験例4の方が高い。したがって、第一の試験から、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とマグネシウム(Mg)が含まれる皮膜(皮膜B、皮膜C)が表面に形成されたネオジム磁石をトリフルオロヨードメタンの単一冷媒の中に入れた場合には、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)を含みマグネシウム(Mg)が含まれない皮膜(皮膜A)が表面に形成されたネオジム磁石をトリフルオロヨードメタンの単一冷媒の中に入れた場合と比較して、ネオジム磁石の劣化が抑制されることが確認された。
また、表2に示すように試料の重量維持率は試験例4よりも試験例3の方が高い。さらに、冷凍機油のASTM色は試験例4よりも試験例3の方が薄い。したがって、第一の試験から、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とマグネシウム(Mg)が含まれリン(P)が含まれない皮膜(皮膜B)が表面に形成されたネオジム磁石をトリフルオロヨードメタンの単一冷媒の中に入れた場合には、アルミニウム(Al)とケイ素(Si)とマグネシウム(Mg)とリン(P)が含まれる皮膜(皮膜C)が表面に形成されたネオジム磁石をトリフルオロヨードメタンの単一冷媒の中に入れた場合と比較して、ネオジム磁石の劣化と冷凍機油の劣化が抑制されることが確認された。
なお、第一の試験においてネオジム磁石の劣化はトリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂によって生じるヨウ化水素によって生じている。また、第一の試験ではトリフルオロヨードメタンの単一冷媒を封入して行っている。換言すると、第一の試験ではトリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂によって発生するヨウ化水素の量が最も多くなる冷媒を封入して試験を行っている。したがって、トリフルオロヨードメタンの単一冷媒よりもトリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂によって発生するヨウ化水素の量が少なくなるトリフルオロヨードメタンを含む混合冷媒を封入して第一の試験と同様の試験を行ったとしても、第一の試験と同様の傾向の結果が確認できると推測される。
次に、第二の試験について説明する。第二の試験では、冷凍機油にアルキルナフタレンを添加した場合と冷凍機油にアルキルナフタレンを添加しなかった場合とについて、トリフルオロヨードメタンに対するネオジム磁石の劣化について評価を行った。
第二の試験で用いた冷凍機油について説明する。第二の試験では、ポリビニルエーテル油のみが含まれる冷凍機油と、ポリビニルエーテル油が90wt%、アルキルナフタレン(Exxon Mobil Chemical社製Synesstic5)が10wt%含まれる冷凍機油と、の二種類の冷凍機油を用いた。また、それぞれの冷凍機油は水分量が50ppm未満になるよう窒素バブリングにより水分を除去した。なお、以降の説明ではポリビニルエーテル油のみが含まれる冷凍機油を封入した第二の試験を試験例5と称し、ポリビニルエーテル油が90wt%、アルキルナフタレンが10wt%含まれる冷凍機油を封入した第二の試験を試験例6と称する。
第二の試験の試験方法について説明する。第二の試験は第一の試験と同様にシールドチューブテストであり、JIS K2211:2009(付属書B シールドチューブテスト)に準拠して行った。
第二の試験では、50cm3の試験容器に試料と冷凍機油と冷媒と触媒と封入した。冷媒と触媒については第一の試験と同様の冷媒と触媒を用いたので説明を省略する。冷凍機油については前述した二種類の冷凍機油を15gずつそれぞれ封入した。試料は、表面に皮膜が形成されていないネオジム磁石を封入した。試料の形状と大きさは3mm×2mm×20mmの直方体であり、重量は0.91gである。
第二の試験では、試料と冷凍機油と冷媒と触媒を封入した試験容器を温度140℃で14日間に亘って加熱した。
第二の試験では、加熱後に試験容器を開封し、試料の重量の測定と、冷媒中の三フッ化メタン(CHF3)の量の測定と、冷凍機油のASTM色の測定とを行った。試料の重量の測定と、冷媒中の三フッ化メタンの量の測定と、冷凍機油のASTM色の測定とについては第一の試験と同様の方法で測定しており、説明を省略する。
表3に、第二の試験を行った結果を示す。表3では各試験例5および6において、アルキルナフタレンの添加量と、試料の重量維持率、三フッ化メタンの生成量比および冷凍機油のASTM色を示す。なお、表3における三フッ化メタンの生成比は、それぞれの試験例における加熱後の冷媒中の三フッ化メタンの量から試験例5における加熱後の冷媒中の三フッ化メタンの量を除算した値である。
表3に示すように試験例5では加熱後の試料は全て粉状になり、加熱後の塊状の試料の重量を測定することができなかった。対して、表3に示すように試験例6では加熱後の試料は塊状の試料が残り、加熱後の塊状の試料の重量を測定することができた。また、三フッ化メタンの生成比は試験例5よりも試験例6の方が少ない。さらに、冷凍機油のASTM色は試験例5よりも試験例6の方が薄い。したがって、第二の試験から、ネオジム磁石をポリビニルエーテル油が90wt%、アルキルナフタレンが10wt%含まれる冷凍機油とトリフルオロヨードメタンの単一冷媒とが混合した液の中に入れた場合には、ネオジム磁石をポリビニルエーテル油のみが含まれる冷凍機油とトリフルオロヨードメタンの単一冷媒とが混合した液の中に入れた場合と比較して、トリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂が抑制され、ネオジム磁石の劣化と冷凍機油の劣化が抑制されることが確認された。
なお、第二の試験においてネオジム磁石の劣化の抑制はトリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂によって生じるヨウ素ラジカルをアルキルナフタレンが捕捉することによって生じている。このため、第二の試験におけるネオジム磁石の劣化の抑制はネオジム磁石の表面の皮膜の有無および種類とは無関係であると推測される。したがって、第二の試験では表面に皮膜が形成されていないネオジム磁石を封入して試験を行ったが、表面に皮膜A、皮膜Bまたは皮膜Cが形成されたネオジム磁石を封入して試験例6の試験を行ったとしても表3の試験例6と同様の結果が確認できると推測される。
次に、第三の試験および第四の試験について説明する。第三の試験では、冷凍機油に添加するアルキルナフタレンの重量比を変更した場合について、トリフルオロヨードメタンを含む混合冷媒に対するネオジム磁石の劣化について評価を行った。
第三の試験で用いた冷凍機油について説明する。第三の試験では、ポリビニルエーテル油のみが含まれる冷凍機油(以降、当該冷凍機油を封入した第三の試験を試験例7と称する)と、ポリビニルエーテル油が99wt%、アルキルナフタレンが1wt%含まれる冷凍機油(以降、当該冷凍機油を封入した第三の試験を試験例8と称する)と、ポリビニルエーテル油が96wt%、アルキルナフタレンが4wt%含まれる冷凍機油(以降、当該冷凍機油を封入した第三の試験を試験例9と称する)と、ポリビニルエーテル油が90wt%、アルキルナフタレンが10wt%含まれる冷凍機油(以降、当該冷凍機油を封入した第三の試験を試験例10と称する)と、ポリビニルエーテル油が80wt%、アルキルナフタレンが20wt%含まれる冷凍機油(以降、当該冷凍機油を封入した第三の試験を試験例11と称する)と、ポリビニルエーテル油が75wt%、アルキルナフタレンが25wt%含まれる冷凍機油(以降、当該冷凍機油を封入した第三の試験を試験例12と称する)と、の六種類の冷凍機油をそれぞれ封入した。また、それぞれの冷凍機油は水分量が50ppm未満になるよう窒素バブリングにより水分を除去した。
第三の試験で用いた混合冷媒について説明する。第三の試験では、HFC32(ダイキン工業株式会社製)が49.0wt%、HFC125(ダイキン工業株式会社製)が11.5wt%、トリフルオロヨードメタンが39.5wt%含まれた混合冷媒を封入した。HFC32とHFC125のような極性冷媒は、極性の低いアルキルナフタレンとの相溶性が良好ではない。特に当該混合冷媒はHFC32とHFC125とトリフルオロヨードメタンが含まれた実用可能な低GWPの組み合わせの中でも、アルキルナフタレンとの相溶性が低いと推測される比率である。
第三の試験の試験方法について説明する。第三の試験は第一の試験と同様にシールドチューブテストであり、JIS K2211:2009(付属書B シールドチューブテスト)に準拠して行った。
第三の試験では、50cm3の試験容器に試料と冷凍機油と冷媒と触媒と封入した。触媒については第一の試験と同様の冷媒と触媒を用いたので説明を省略する。冷媒は、前述した混合冷媒を7g封入した。冷凍機油は前述した六種類の冷凍機油を15gずつそれぞれ封入した。試料は、表面に皮膜が形成されていないネオジム磁石を封入した。試料の形状と大きさは3mm×2mm×20mmの直方体であり、重量は0.91gである。
第三の試験では、試料と冷凍機油と冷媒と触媒を封入した試験容器を温度140℃で14日間に亘って加熱した。
第三の試験では、加熱後に試験容器を開封し、試料の重量の測定と、冷媒中の三フッ化メタン(CHF3)の量の測定と、冷凍機油のASTM色の測定を行った。試料の重量の測定と、冷媒中の三フッ化メタンの量の測定と、冷凍機油のASTM色の測定とについては第一の試験と同様の方法で測定しており、説明を省略する。
また、第四の試験について説明する。第四の試験では、冷凍機油に添加するアルキルナフタレンの重量比を変更した場合について、トリフルオロヨードメタンを含む混合冷媒に対する冷凍機油と混合冷媒の相溶性について評価を行った。
第四の試験で用いた混合冷媒の組成比は第三の試験で用いた混合冷媒の組成比と同じである。また、第四の試験では、第三の試験で説明を行った六種類の冷凍機油を用いている。説明のために第四の試験における試験例の番号は、同じ種類の冷凍機油を用いた第三の試験の番号を付する。つまり、例えばポリビニルエーテル油が99wt%、アルキルナフタレンが1wt%含まれる冷凍機油を用いた第四の試験は、同じ種類の冷凍機油を用いた第三の試験が試験例8と称されるため、同様に試験例8と称する。
第四の試験の試験方法について説明する。第四の試験では50cm3のシールドガラスチューブ容器に冷凍機油と冷媒を封入した。冷媒は、第三の試験で説明をした混合冷媒を24g封入した。冷凍機油は第三の試験で説明をした六種類の冷凍機油を6gずつそれぞれ封入した。一般的に冷媒:冷凍機油=4:1の重量比は冷媒に冷凍機油が最も溶け難くなる重量比である。つまり、当該重量比は二層分離温度が最も高くなる重量比である。
第四の試験では、冷媒と冷凍機油とを混合した混合物を封入した容器を小型超低温恒温器(ESPEC製 MC-811P)で-50℃に冷却した。
第四の試験では、冷却時に冷媒と冷凍機油が相溶か非相溶かの測定を行った。冷媒と冷凍機油が相溶か非相溶かの測定は、冷却時の試験容器の液冷媒と冷凍機油との混合物を目視して、混合物が均一な一層の液体である場合は相溶、混合物が分離した二層の液体である場合は非相溶であると判断した。
表4に、第三の試験および第四の試験を行った結果を示す。表4では各試験例7から12において、アルキルナフタレンの添加量と、試料の重量維持率、三フッ化メタンの生成量比、冷凍機油のASTM色および冷媒と冷凍機油の相溶性を示す。なお、表4における三フッ化メタンの生成比は、それぞれの試験例における加熱後の冷媒中の三フッ化メタンの量から試験例7における加熱後の冷媒中の三フッ化メタンの量を除算した値である。
表4に示すように試験例7および試験例8では加熱後の試料は全て粉状になり、加熱後の塊状の試料の重量を測定することができなかった。対して、表4に示すように試験例9から試験例12では加熱後の試料は塊状の試料が残り、加熱後の塊状の試料の重量を測定することができた。また、三フッ化メタンの生成比はアルキルナフタレンの添加量が多い試験例の方が少ない。さらに、冷凍機油のASTM色は試験例7および試験例8よりも試験例9から試験例12の方が薄い。したがって、第三の試験から、ネオジム磁石をポリビニルエーテル油が96wt%以下アルキルナフタレンが4wt%以上含まれポリビニルエーテル油とアルキルナフタレンの総和が100wt%となる冷凍機油とHFC32が49.0wt%HFC125が11.5wt%トリフルオロヨードメタンが39.5wt%含まれた混合冷媒とが混合した液の中に入れた場合には、ネオジム磁石をポリビニルエーテル油が96wt%より多くアルキルナフタレンが4wt%未満含まれポリビニルエーテル油とアルキルナフタレンの総和が100wt%となる冷凍機油とHFC32が49.0wt%HFC125が11.5wt%トリフルオロヨードメタンが39.5wt%含まれた混合冷媒とが混合した液の中に入れた場合と比較して、トリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂が抑制され、ネオジム磁石の劣化と冷凍機油の劣化が抑制されることが確認された。
また、表4に示すように試験例7から11では冷却時の液冷媒と冷凍機油は相溶である。対して、表4に示すように試験例12では冷却時の液冷媒と冷凍機油は非相溶である。したがって、第四の試験から、ポリビニルエーテル油が80wt%以上アルキルナフタレンが20wt%以下含まれポリビニルエーテル油とアルキルナフタレンの総和が100wt%となる冷凍機油とHFC32が49.0wt%HFC125が11.5wt%トリフルオロヨードメタンが39.5wt%含まれた混合冷媒とは相溶性があることが確認された。
なお、第三の試験においてネオジム磁石の劣化の抑制はトリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂によって生じるヨウ素ラジカルをアルキルナフタレンが捕捉することによって生じている。また、第三の試験において冷凍機油と冷媒の相溶性は冷凍機油に含まれるアルキルナフタレンの量の影響を受けている。このため、ネオジム磁石の劣化の抑制および冷凍機油と冷媒の相溶性はネオジム磁石の表面の皮膜の有無および種類とは無関係であると推測される。したがって、第三の試験では表面に皮膜が形成されていないネオジム磁石を封入して試験を行ったが、表面に皮膜A、皮膜Bまたは皮膜Cが形成されたネオジム磁石を封入して試験例の試験を行ったとしても表4の試験例9から試験例12と同様の結果が確認できると推測される。
また、第三の試験において試験例9から12で試料の劣化が抑制された理由は、添加されたアルキルナフタレンが捕捉できるラジカルの量が混合冷媒に含まれるトリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂によって発生するトリフルオロメチルラジカルとヨウ素ラジカルの総量がより多かったためと推測される。また、混合冷媒に含まれるトリフルオロヨードメタンの重量比が少なくなるほどトリフルオロヨードメタンのC-I結合の開裂によって発生するトリフルオロメチルラジカルとヨウ素ラジカルの総量は少なくなる。したがって、第三の試験ではHFC32が49.0wt%HFC125が11.5wt%トリフルオロヨードメタンが39.5wt%含まれた混合冷媒を封入して試験を行ったが、トリフルオロヨードメタンが39.5wt%以下含まれる冷媒であれば表4の試験例9から試験例12と同様の結果が確認できると推測される。
また、第三の試験では、HFC32が49.0wt%、HFC125が11.5wt%、トリフルオロヨードメタンが39.5wt%含まれた混合冷媒を封入して試験を行ったが、許容差の範囲内であれば冷媒の組成比が当該混合冷媒と異なっていても表4の試験例9から試験例12と同様の結果が確認できると推測される。なお、許容差の範囲とは、HFC32が47.0重量%以上49.5重量%以下、トリフルオロヨードメタンが39.0重量%以上39.5重量%以下、HFC125が11.0重量%以上13.5重量%以下それぞれ含まれ、HFC32の重量比とトリフルオロヨードメタンの重量比とHFC125の重量比の和が100.0重量%となる範囲である。