JP7075254B2 - エポキシ樹脂組成物、プリプレグ、およびその硬化物 - Google Patents
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しかしながら、反応性に優れる硬化剤を選択した場合は混合後速やかに使用する必要があるため歩留まりが悪くなりやすく、潜在性に優れる樹脂組成物は硬化に際して高温で長時間を要するため、生産性に課題がある。すなわち、この問題は重要なトレードオフの関係にあり、高度に両立することが望まれている。
エポキシ樹脂(A)、シアナミド(B)及び防止剤粒子(C)の合計に対する硬化促進剤(D)の含有割合は0.05~5重量%であることがよく、安定剤(E)の含有割合は0.005~0.5重量%であることがよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、シアナミド(B)、および防止剤粒子(C)を必須成分とする。以下、エポキシ樹脂(A)、シアナミド(B)、1μm以下の粒子(C)を、それぞれ(A)成分、(B)成分及び(C)成分ともいう。
これらのエポキシ樹脂中、粘度増加率の観点から1分子中に2つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂が好ましく、それよりエポキシ基が多い多官能のエポキシ樹脂は好ましくない。その中でビスフェノールAまたはF型エポキシ樹脂が最も好ましい。これらは1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、無機粒子の具体例としては、触媒化成工業社製シリカ粒子「スフェリカスラリー」や日本触媒社製シリカ粒子「シーホスター」などを挙げることができ、これらを用いることができる。
なお、ウレアやイミダゾールは、粒子径が2μm以下となる場合があるが、これらはシアナミドの結晶成長を防止又は抑制する効果がなく、むしろエポキシ樹脂組成物の貯蔵安定性を悪化させるため、防止剤粒子には含まれない。
別の観点からは、硬化促進剤の添加量としては、エポキシ樹脂組成物に対して0.1重量%以上10重量%以下が好ましく、0.1重量%以上5重量%以下がさらに好ましく、0.1重量%以上3重量%以下が望ましい。0.1重量%未満である場合は硬化不良が発生する恐れがあり、10重量%を超えて添加すると、炭素繊維の間隙に入り込み、硬化の際にボイドが発生しやすくなる恐れがある。
酸性物質としては無機酸、有機酸を問わず使用でき、たとえばサリチル酸、フタル酸、トルエンスルホン酸、硫酸、リン酸、ホウ酸もしくはこれらの無水物などが挙げられるが、金属と接合する場合もあるため、これら酸のエステル化合物が好ましく、特にホウ酸エステル類が好ましい。具体的にはホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリブチルなどが挙げられる。
安定剤(E)の含有量は、上記必須成分の合計(A+B+C)に対し、0.005~5重量%であることがよく、好ましくは0.01~1重量%である。
別の観点からは含有量は、エポキシ樹脂組成物全体に対して10000ppm以下であることが好ましい。10000ppmを超えて含有すると、硬化促進剤を失活させるおそれがある。
本発明のエポキシ樹脂組成物粘度は、好ましくは0.3~3Pa・s、より好ましくは0.5~2Pa・sである。特に、本発明の樹脂組成物は、一液での保存安定性に優れることから、プリプレグとして適用されるウェットレイアップ成形法、引き抜き成形法又はフィラメントワインディング成形法において有用である。
また、硬化促進剤(D)は、固体状態のまま各成分中に分散されることがあるため、他の成分と同時に混練した場合、硬化促進剤が凝集して分散不良となる場合がある。分散不良のエポキシ樹脂組成物は、硬化物中に物性ムラが生じたり、硬化不良を生じたりするため好ましくないため、そのため硬化促進剤はエポキシ樹脂の一部を使用し、三本ロールにて予備混練しておくことが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いるプリプレグまたはトウプリプレグを製造する方法は、特に限定されないが、1)エポキシ樹脂組成物をメチルエチルケトンやメタノールなどの有機溶媒に溶解させて低粘度化し、強化繊維束を浸漬させながら含浸させた後、オーブンなどを用いて有機溶媒を蒸発させてトウプリプレグとする方法、2)有機溶媒を用いずに加熱して低粘度化したエポキシ樹脂組成物をロールや離型紙上にフィルム化し、次いで強化繊維束の片面、あるいは両面に転写したあと、屈曲ロールあるいは圧力ロールを通すことで加圧して含浸させる方法、3)エポキシ樹脂組成物を、加熱により低粘度化し、強化繊維束を浸漬させながら含浸させる方法などが挙げられる。中でも、トウプリプレグ中に残留する有機溶媒が実質的に皆無であり、生産性が高く高品位なトウプリプレグが製造できることから、上記3)に記載の方法を好ましく用いることができる。このような製造法を用いることで樹脂含浸されたトウプリプレグを得ることができる。
本発明の繊維強化プラスチック又は成形体において、強化繊維の体積含有率は、好ましくは30~75%、より好ましくは45~75%であり、この範囲であると空隙が少なく、かつ強化繊維の体積含有率が高い成形体が得られるため、優れた強度の成形材料が得られる。
(A)エポキシ樹脂
YD-128:BPA型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製YD-128、エポキシ当量188、アルコール性水酸基当量1800)
YD-8125:BPA型エポキシ樹脂・分子蒸留タイプ(エポキシ当量173)
YDF-170;BPF型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学株式会社製YDF-170、エポキシ当量169、アルコール性水酸基当量2400),
YDF-8170C:BPF型エポキシ樹脂・分子蒸留タイプ(エポキシ当量159)
(B)シアナミド:
CY-100;日本カーバイド工業株式会社製CY-100、
F1000;アルツケムアクチエンゲルシャフト社製F1000
(C)防止剤粒子
MX-154;コアシェルゴム(株式会社カネカ製MX-154、C成分40重量%、A成分60重量%のマスターバッチ、エポキシ当量300、平均1次粒径100nm)
MX-153;同上(C成分33重量%、A成分67重量%のマスターバッチ、エポキシ当量270、平均1次粒径100nm)
RY-200:ヒュームドシリカ(Aerosil RY-200、平均1次粒径12nm)
(D)硬化促進剤
2MAOK-PW、2MZA-PW、2E4MZ-CN:イミダゾール化合物(四国化成工業株式会社製)
PN-50J:エポキシアミンアダクト(味の素ファインテクノ株式会社製 PN-50J)
DICYANEX1400F:ジシアンジアミド(硬化剤)
TBB:ホウ酸トリブチル(東京化成工業株式会社製 試薬)
P2000;ポリプロピレングリコール(株式会社ADEKA製)
コスモネートPH:ジフェニルメタンジイソシアネート(三井化学株式会社製)
TSA-720:シリコーン消泡剤(モメンティブ社製)
セパラブルフラスコにYD-128(891.7g)をはかりとり、窒素気流中120℃に加熱した。昇温後1時間保持したのち、コスモネートPH(96.0g)を加え、溶解したら直ちにジブチルスズジラウレート(0.02g)を加えた。120℃を維持したまま1時間反応したのち、1,4-ブタンジオール(12.3g)を加えた。冷却してポリウレタン変性エポキシ樹脂(PUE1)を得た。
セパラブルフラスコにYDF-170(982.3g)とP2000(53.4g)をはかりとり、窒素気流中120℃に加熱した。昇温後1時間保持したのち、コスモネートPH(64.2g)を加え、溶解したら直ちにジブチルスズジラウレート(0.02g)を加えた。120℃を維持したまま1時間反応したのち、1,4-ブタンジオール(2.4g)を加えた。冷却してポリウレタン変性エポキシ樹脂(PUE2)を得た。
容器にYD-128(94.0g)をはかりとり、ディスパーにて高速で攪拌しながらTSA-720(0.1g)、RY-200(2.0g)を順に加え、外観と粒ゲージでの評価により均一を確認したところで20℃まで冷却した。ここに、あらかじめ50℃で溶融しておいたCY-100(5.15g)を加えて均一になるまで攪拌して実施例1のエポキシ樹脂組成物(1)を得た。
実施例1と同様の手順で表中の処方に従いエポキシ樹脂組成物(2~4)を得た。
実施例1~4と同様の手順で表中の処方に従いエポキシ樹脂組成物(H1~H4)を得た。
容器にMX-153(75g、粒子成分として30g)をはかりとり、高速で攪拌しながらTSA-720(0.1g)を加えた後、あらかじめ50℃で溶融しておいたCY-100(15g)を加えて均一になるまで攪拌してエポキシ樹脂組成物(5)を得た。
実施例5と同様の手順で表中の処方に従いエポキシ樹脂組成物(6~10及びH5)を得た。
CY-100(100g)を50℃で溶解・保持し、高速で攪拌しながらTSA-720(0.1g)を加えた後、少量ずつRY200(2g)を加えて均一になるまで攪拌して組成物(H6)を得た。これを23℃に戻したところ、24時間以内に固化した。
容器にMX-153(25g、粒子成分として8.3g)をはかりとり、高速で攪拌しながらTSA-720(0.1g)を加えた後、あらかじめ50℃で溶融しておいたCY-100(5g)を加えて均一になるまで攪拌して、混合液を得て、これに予め硬化促進剤(30g)とYD-128(650g)を三本ロールで混合したマスターバッチを(68g)混合し、エポキシ樹脂組成物(11)を得た。
実施例11と同様の手順で表中の処方に従いエポキシ樹脂組成物(12~14及びH7~H10)を得た。
外観;
50mLのガラス製バイアル瓶にエポキシ樹脂組成物50gを入れて、目視にて評価した。評価の記号の意味は次のとおり。
A;無色透明、B;無色微濁、C;白色微濁、D;結晶析出、J:結晶化、
E;白色液状、F;一部透明、G;乳白色、H;凝集
ここで、H;凝集は、コアシェルゴムが一次粒子として分散しておらず、凝集している状態を表す。
機産業社製RE85H型粘度計を用いて25℃での粘度を測定した。粘度の単位はPa・sであり、測定不可はNDで表す。
コーティングテスター株式会社製グラインドメーターNO.402Wを使用し、JIS-K-5600-2-5に準じて測定を行い、線状痕が発生したスケールをμm単位で記載した。測定不可はNDで表す。
#150メッシュを備えた加圧濾過器をもちいて、エポキシ樹脂組成物の濾過をおこない、メッシュオンしたシアナミド粒子の有無を光学顕微鏡にて、次の基準で評価した。
N;固形物なし、Y;固形物あり、X:固形化(濾過不可)
測定不可はNDで表す。
硬化反応性の評価;
サンプルをアルミパンに封入し、日立ハイテクノロジーズ社製DSC7000Xを用いて、室温より320℃まで、10℃/minの速度で昇温した。エポキシ樹脂の硬化反応にともなう発熱ピークについて、図1に示す初期温度1、ピーク温度2及び終点温度3を求めた。初期温度1及び終点温度3はそれぞれ点線の交点とした。
2枚の金型に離形剤を塗布し、塗布面を向かい合わせにして万力で固定した。毛細管現象でサンプルを浸透させ、150℃のオーブンで2時間保持した。得られた金型をはがし、浸透した樹脂の硬化状態を観察した。タックがないものを○、タックがあり硬化していない部分があるものを×とした。
表3において、*1は幕張りがあったことを示し、*2は硬化残があったことを示す。
シアナミドを含有するエポキシ樹脂組成物における貯蔵安定性は、1)シアナミドの反応による増粘、2)結晶成長の2つによって阻害される。通常、エポキシ樹脂とシアナミドを混合し、室温で保管すると、7日目には結晶が析出し、14日を待たずに著しく増粘して硬化する。7日の時点で析出している結晶はシアナミドである。エポキシ樹脂の粘度が高いほど、析出する粒子が細かくなる傾向があった。比較例2と比較例4は、大きな結晶が析出していたが、それを除けば無色透明であり、サンプリング評価である粒ゲージ試験では結晶が検出されなかった。また、5℃で保管した場合にはいずれのサンプルも14日の経過により硬化することはなかったが、比較例1~比較例4については結晶の析出が確認され、実施例1~実施例4については結晶の析出が確認できなかった。以上のことから、防止剤粒子であるRY-200を添加することにより、結晶の成長を抑制できることが明らかになった。
比較例7は液状の硬化促進剤を使用した場合であるが、比較的貯蔵安定性が悪い硬化促進剤であることもあって、若干の粘度上昇が見られるが、5℃で7日間保持したところでシアナミドの結晶が認められる。比較例8は硬化剤にジシアンジアミドを使用しているために、高い貯蔵安定性を有する。
比較例8は硬化剤としてジシアンジアミドを使用したものであり、高い潜在性と高い硬化反応性を両立する材料である。しかしながら、硬化剤が粉末であるがために金型の隙間などの狭小空間において拡散が不十分となり、硬化不良箇所が発生する結果を得た。つまり、炭素繊維間隙やガラス繊維間隙などでジシアンジアミドの拡散不良にともなう硬化不良が発生するおそれがあることを示している。一方で実施例11~14においては、硬化促進剤がいずれも粉末成分であるが、硬化不良は見られなかった。比較例8のように硬化剤が固体であり、狭小空間での拡散が不十分となった場合には、主剤と硬化剤の比率が狂うために硬化不良に直結するが、硬化剤が液状で混和している実施例11~14では硬化不良が発生しなかった。実施例11~14に含まれる硬化促進剤はいずれも粉末のものであるが、多少のずれがあってもきちんと硬化することを表している。
比較例9は硬化剤としてカルボン酸無水物を使用したものであり、こちらも高い潜在性と高い硬化反応性を両立できる材料である。しかしながら、保管後、液面付近で幕張りが生じた。これはカルボン酸無水物が加水分解したために起こる現象であるが、実施例11~14についてはそのような現象は起こらなかった。
比較例14は硬化剤として芳香族アミンを使用したものである。芳香族アミン系硬化剤は貯蔵安定性、硬化反応性がともに低く、所定のDSCのプログラム条件において硬化が完了しなかったが、実施例11~14はいずれも貯蔵安定性に優れ、かつ硬化反応も速やかに起こる。
Claims (6)
- エポキシ樹脂(A)、シアナミド(B)及び体積平均粒子径が2μm以下の防止剤粒子(C)を必須成分とするエポキシ樹脂組成物であって、防止剤粒子(C)がシアナミドの結晶成長を防止又は抑制するゴム粒子又はシリカ粒子であり、樹脂組成物全体に対して1~50重量%の範囲で含有され、硬化促進剤(D)を含有する場合、硬化促進剤としてイミダゾール化合物又はエポキシアミンアダクトを使用することを特徴とするエポキシ樹脂組成物。
- エポキシ樹脂(A)、シアナミド(B)及び防止剤粒子(C)の合計に対し、硬化促進剤(D)が、0.05~5重量%含有されてなる請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
- エポキシ樹脂(A)、シアナミド(B)及び防止剤粒子(C)の合計に対し、酸性物質またはそのエステル化合物から選ばれる安定剤(E)が、0.005~0.5重量%含有されてなる請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項1~3のいずれか一項に記載のエポキシ樹脂組成物に強化繊維を配合してなることを特徴とするプリプレグ。
- 強化繊維が炭素繊維である請求項4に記載のプリプレグ。
- 請求項4に記載のプリプレグを硬化して得られる繊維強化プラスチック。
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