以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る造形装置10の一例を示す。図1(a)は、造形装置10の要部の構成の一例を示す。図1(b)は、造形装置10におけるヘッド部12の構成の一例を示す。
尚、以下に説明をする点を除き、造形装置10は、公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。より具体的に、以下に説明をする点を除き、造形装置10は、例えば、インクジェットヘッド等の吐出ヘッドを用いて造形物50の材料となる液滴を吐出することで造形を行う公知の造形装置と同一又は同様の特徴を有してよい。また、造形装置10は、図示した構成以外にも、例えば、造形物50の造形等に必要な各種構成を更に備えてよい。
本例において、造形装置10は、積層造形法により立体的な造形物50を造形する造形装置(3Dプリンタ)である。この場合、積層造形法とは、例えば、複数の層を重ねて造形物50を造形する方法である。造形物50とは、例えば、立体的な三次元構造物のことである。
また、本例において、造形装置10は、ヘッド部12、造形台14、走査駆動部16、及び制御部20を備える。ヘッド部12は、造形物50を構成する材料である造形物材料等を吐出するヘッドユニットである。また、本例において、造形物材料料としては、インクを用いる。この場合、インクとは、例えば、機能性の液体のことである。また、本例においては、インクについて、インクジェットヘッドから吐出する液体と考えることもできる。この場合、インクジェットヘッドとは、例えば、インクジェット方式でインクの液滴を吐出する吐出ヘッドのことである。また、より具体的に、ヘッド部12は、造形物材料として、複数のインクジェットヘッドから、所定の条件に応じて硬化するインクを吐出する。そして、着弾後のインクを硬化させることにより、造形物50を構成する各層を重ねて形成する。また、本例では、インクとして、紫外線の照射に応じて硬化する紫外線硬化型インク(UVインク)を用いる。
また、ヘッド部12は、造形物材料に加え、サポート層52の材料等を更に吐出する。これにより、ヘッド部12は、造形物50の周囲等に、必要に応じて、サポート層52を形成する。サポート層52とは、例えば、造形中の造形物50の外周等を囲むことで造形物50を支持(サポート)する積層構造物(サポート部)のことである。また、サポート層52については、例えば、造形物50の造形中に造形物50の少なくとも一部を支える構造物等と考えることもできる。また、サポート層52について、例えば、造形物50においてオーバーハング部分で造形物材料が崩れないように支持する構成等と考えることもできる。サポート層52は、造形物50の造形時において、必要に応じて形成され、造形の完了後に除去される。本例におけるサポート層52の特徴については、後に更に詳しく説明をする。
造形台14は、造形中の造形物50を支持する台状部材であり、ヘッド部12におけるインクジェットヘッドと対向する位置に配設され、造形中の造形物50を上面に載置する。また、本例において、造形台14は、少なくとも上面が積層方向(図中のZ方向)へ移動可能な構成を有しており、走査駆動部16に駆動されることにより、造形物50の造形の進行に合わせて、少なくとも上面を移動させる。この場合、積層方向とは、例えば、積層造形法において造形物材料が積層される方向のことである。また、より具体的に、本例において、積層方向は、主走査方向(図中のY方向)及び副走査方向(図中のX方向)と直交する方向である。
走査駆動部16は、造形中の造形物50に対して相対的に移動する走査動作をヘッド部12に行わせる駆動部である。この場合、造形中の造形物50に対して相対的に移動するとは、例えば、造形台14に対して相対的に移動することである。また、ヘッド部12に走査動作を行わせるとは、例えば、ヘッド部12が有するインクジェットヘッド等に走査動作を行わせることである。また、本例において、走査駆動部16は、主走査動作(Y走査)、副走査動作(X走査)、及び積層方向走査(Z走査)をヘッド部12に行わせる。
この場合、主走査動作とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に主走査方向へ移動しつつインクを吐出する動作のことである。本例において、走査駆動部16は、主走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12の側を移動させることにより、ヘッド部12に主走査動作を行わせる。また、走査駆動部16は、例えば、主走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、例えば造形台14を移動させることにより、造形物50の側を移動させてもよい。
副走査動作とは、例えば、主走査方向と直交する副走査方向へ造形中の造形物50に対して相対的に移動する動作のことである。また、より具体的に、副走査動作は、例えば、予め設定された送り量だけ副走査方向へ造形台14に対して相対的に移動する動作である。本例において、走査駆動部16は、主走査動作の合間に、副走査方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせる。また、走査駆動部16は、副走査方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させることにより、ヘッド部12に副走査動作を行わせてもよい。
積層方向走査とは、例えば、造形中の造形物50に対して相対的に積層方向へヘッド部12を移動させる動作のことである。また、走査駆動部16は、造形の動作の進行に合わせてヘッド部12に積層方向走査を行わせることにより、積層方向において、造形中の造形物50に対するインクジェットヘッドの相対位置を調整する。また、より具体的に、本例の積層方向走査において、走査駆動部16は、積層方向におけるヘッド部12の位置を固定して、造形台14を移動させる。走査駆動部16は、積層方向における造形台14の位置を固定して、ヘッド部12を移動させてもよい。
制御部20は、例えば造形装置10のCPUであり、造形装置10の各部を制御することにより、造形装置10における造形の動作を制御する。より具体的に、制御部20は、例えば造形すべき造形物50の形状情報や、カラー情報等に基づき、造形装置10の各部を制御する。本例によれば、造形物50を適切に造形できる。
続いて、ヘッド部12のより具体的な構成について、説明をする。本例において、ヘッド部12は、キャリッジ100、複数の吐出ヘッド、複数の紫外線光源108、及び平坦化ローラ110を有する。キャリッジ100は、ヘッド部12における各構成を保持する保持部材である。また、本例において、ヘッド部12は、複数の吐出ヘッドとして、図1(b)に示すように、吐出ヘッド102w、吐出ヘッド102t、吐出ヘッド102y、吐出ヘッド102m、吐出ヘッド102c、吐出ヘッド102k、吐出ヘッド104、及び吐出ヘッド106を有する。これらの複数の吐出ヘッドは、例えば、副走査方向における位置を揃えて、主走査方向へ並べて配設される。
また、これらの吐出ヘッドのうち、吐出ヘッド102w、吐出ヘッド102t、吐出ヘッド102y、吐出ヘッド102m、吐出ヘッド102c、及び吐出ヘッド102k(以下、吐出ヘッド102w~kという)は、造形物材料を吐出するインクジェットヘッドであり、造形物材料として、互いに異なる色のインクを吐出する。また、より具体的に、吐出ヘッド102wは、白色(W色)のインクを吐出する。吐出ヘッド102tは、クリアインクを吐出する。この場合、クリアインクとは、例えば、無色の透明色(T)であるクリア色のインクのことである。また、本例において、吐出ヘッド102y、吐出ヘッド102m、吐出ヘッド102c、及び吐出ヘッド102kは、造形物50の着色用のインクを吐出するインクジェットヘッドである。また、吐出ヘッド102yは、イエロー色(Y色)のインクを吐出する。吐出ヘッド102mは、マゼンタ色(M色)のインクを吐出する。吐出ヘッド102cは、シアン色(C色)のインクを吐出する。また、吐出ヘッド102kは、ブラック色(K色)のインクを吐出する。
また、本例において、吐出ヘッド102w~kは、造形物材料用ヘッドの一例である。吐出ヘッド102w~kのそれぞれは、例えば、造形台14と対向する面に、所定のノズル列方向へ複数のノズルが並ぶノズル列を有する。ノズル列方向は、例えば副走査方向と平行な方向である。また、吐出ヘッド102w~kは、造形しようとする造形物50の構造や色彩等に応じて、制御部20の制御に従い、造形物50の各部へインクを吐出する。また、これにより、造形装置10は、例えば、表面が着色された造形物50を造形する。
また、ヘッド部12が有する吐出ヘッドのうち、吐出ヘッド104は、サポート材用ヘッドの一例であり、サポート材として用いられるインクを吐出する。この場合、サポート材とは、例えば、所定の条件に応じて硬化し、かつ、サポート層52の形成に用いられる材料のことである。サポート材としては、例えば、サポート層用の公知の材料を好適に用いることができる。また、より具体的に、本例においては、サポート材としても、紫外線硬化型インクを用いる。この場合、例えば、造形物材料として用いる紫外線硬化型インクと比べて弱く硬化する紫外線硬化型インク等を用いることが好ましい。このように構成すれば、例えば、サポート層52の除去をより容易かつ適切に行うことができる。
また、サポート材としては、例えば、所定の液体に対して溶解する性質の材料を用いることが好ましい。この場合、サポート材が所定の液体に対して溶解するとは、例えば、硬化した状態のサポート材が所定の液体に対して溶解することである。また、より具体的に、本例において、サポート材としては、水に対して溶解する水溶性のサポート材を用いる。このようなサポート材としては、例えば、公知の水溶性のサポート材等を好適に用いることができる。また、吐出ヘッド104としては、例えば、吐出ヘッド102w~kと同一又は同様のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。
また、本例において、サポート層52の形成は、吐出ヘッド104から吐出するサポート材のみで行うのではなく、吐出ヘッド106から吐出する流動性材料を更に用いて行う。吐出ヘッド106は、流動性材料用ヘッドの一例であり、造形物50の造形中に流動性を保つ材料である流動性材料を吐出する。この場合、造形中に流動性を保つとは、例えば、サポート材を硬化させる条件では硬化しないことである。また、より具体的に、本例において、流動性材料は、液体である。そして、吐出ヘッド106は、流動性材料の一例である水を吐出する。また、この場合、吐出ヘッド106としても、例えば、吐出ヘッド102w~kと同一又は同様のインクジェットヘッドを好適に用いることができる。
ここで、流動性材料を更に用いてサポート層52を形成するとは、例えば、造形物50の造形時にサポート層52を形成する場合に、サポート層52の一部をサポート材で形成し、サポート層52の他の少なくとも一部を流動性材料で形成することである。この場合、サポート層52中において、サポート材は、硬化した状態で存在することになる。また、流動性材料は、サポート層52中で流動性を保つことになる。また、サポート材及び流動性材料を用いて形成するサポート層52の具体的な構成については、後に更に詳しく説明をする。
複数の紫外線光源108は、インクを硬化させるための光源(UV光源)であり、紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線を発生する。また、本例において、複数の紫外線光源108のそれぞれは、間に吐出ヘッドの並びを挟むように、ヘッド部12における主走査方向の一端側及び他端側のそれぞれに配設される。紫外線光源108としては、例えば、UVLED(紫外LED)等を好適に用いることができる。また、紫外線光源108として、メタルハライドランプや水銀ランプ等を用いることも考えられる。平坦化ローラ110は、造形物50の造形中に形成されるインクの層を平坦化するための平坦化手段である。平坦化ローラ110は、例えば主走査動作時において、インクの層の表面と接触して、硬化前のインクの一部を除去することにより、インクの層を平坦化する。
以上のような構成のヘッド部12を用いることにより、造形物50を構成するインクの層を適切に形成できる。また、複数のインクの層を重ねて形成することにより、造形物50を適切に造形できる。また、必要に応じて、造形物50の周囲等にサポート層52を適切に形成できる。
尚、ヘッド部12の具体的な構成については、上記において説明をした構成に限らず、様々に変形することもできる。例えば、ヘッド部12は、造形物材料用ヘッドとして上記以外の色のインクを吐出するインクジェットヘッドを更に有してもよい。この場合、例えば、造形物50の内部(内部領域)の造形に用いる造形専用のインクを吐出するインクジェットヘッド等を用いることが考えられる。また、ヘッド部12における複数のインクジェットヘッドの並べ方についても、様々に変形可能である。例えば、一部のインクジェットヘッドについて、他のインクジェットヘッドと副走査方向における位置をずらしてもよい。
また、ヘッド部12における複数の吐出ヘッドについて、一つのキャリッジ100に保持させるのではなく、複数のキャリッジ100に分けて保持させること等も考えられる。また、この場合、複数のキャリッジ100について、互いに独立に移動可能にすること等も考えられる。例えば、後に更に詳しく説明をするように、サポート層52の形成時において、サポート材で形成された領域内の空洞に対し、吐出ヘッド106により流動性材料を充填すること等も考えられる。そして、この場合、流動性材料を吐出するタイミングについて、サポート材の吐出タイミングから独立して設定することが好ましい場合もある。そのため、このような場合には、例えば、流動性材料を吐出ヘッド106について、他のインクジェットヘッドを保持するキャリッジ100とは別のキャリッジ100に保持させること等も考えられる。このように構成すれば、吐出ヘッド106から流動性材料を吐出するタイミングについて、より柔軟に設定できる。
また、ヘッド部12が有する複数のインクジェットヘッドの少なくとも一部については、例えば、インクジェット方式以外の方式で液滴を吐出する吐出ヘッドを代わりに用いることも考えられる。例えば、流動性材料を吐出する吐出ヘッド106として、インクジェット方式以外の方式で流動性材料を吐出する吐出ヘッドを用いること等も考えられる。また、この場合、吐出ヘッド106としては、例えば、単位時間あたりに吐出可能な液体の量(吐出能力)が吐出ヘッド102w~kや吐出ヘッド104よりも大きな吐出ヘッドを用いることが好ましい。より具体的に、このような吐出ヘッド106としては、例えば、公知のディスペンサ等を好適に用いることができる。このように構成すれば、例えば、吐出ヘッド106からの流動性材料の吐出をより効率的に行うことができる。また、このような吐出能力の大きな吐出ヘッド106を用いる場合には、吐出ヘッド106について、他の吐出ヘッド(吐出ヘッド102w~k及び吐出ヘッド104)と別のキャリッジ100に保持させることが特に好ましい。
続いて、本例において形成するサポート層52の特徴について、更に詳しく説明をする。図2は、サポート層52の特徴について更に詳しく説明をする図であり、サポート材と流動性材料とを用いて形成するサポート層52の構成の様々な例を示す。
図2(a)は、サポート層52の構成の一例を示す図であり、サポート層52の一部について、副走査方向と直交する面による断面の構成の一例を示す。本例において、造形装置10(図1参照)は、サポート層52の一部として、内部に空洞204を含む構造のサポート材領域202を形成する。この場合、サポート材領域202とは、吐出ヘッド104(図1参照)から吐出するサポート材により形成される領域のことである。また、サポート材領域202の空洞204とは、例えば、サポート層52内においてサポート材が充填されない領域のことである。また、本例において、サポート材領域202の空洞204には、吐出ヘッド106(図1参照)から吐出する流動性材料である水を充填する。また、これにより、サポート材と流動性材料とを用いて、サポート層52を形成する。このように構成すれば、例えば、サポート材の使用量を抑えつつ、サポート層52を適切に形成できる。また、この場合、サポート材よりも遙かに安価な材料である水を用いてサポート層52の一部を形成することで、造形のコストを大幅に低減できる。
また、上記においても説明をしたように、サポート層52は、造形物の造形の完了後に除去される。そして、この場合、サポート層52を構成するサポート材については、例えば廃棄物(産業廃棄物等)として処理することが必要になる。そのため、サポート層52において、サポート材の使用量が多い場合には、廃棄物の処理のための手間や費用が多くかかることになる。これに対し、本例においては、サポート材の使用量を低減することにより、造形により生じる廃棄物を低減すること等も可能になる。そのため、本例によれば、サポート層52を形成する場合に生じる様々な問題をより適切に抑えることができる。また、これにより、例えば、サポート層52をより適切に形成できる。
また、上記においても説明をしたように、本例において、サポート材としては、水溶性の材料を用いる。そして、この場合、サポート層52の一部を構成する流動性材料として水を用いると、硬化した状態のサポート材が流動性材料に対して溶解する関係になっているため、造形物の造形中において、サポート層52の内側からサポート材が徐々に溶解することになる。そのため、本例によれば、例えば、造形物の造形中にサポート層52をある程度溶解させることもできる。また、これにより、例えば、造形後の後処理で行うサポート層52の除去作業をより容易にして、サポート層52の除去に要する時間を適切に短縮できる。
また、この場合、例えば、サポート材の除去をより確実に行うことが可能になるため、例えば、造形の完了後に造形物50の表面にサポート材が残ること等を適切に防ぐこともできる。また、これにより、サポート材が造形物の表面に残って造形物の色の見え方が変化すること(例えば、白化等)を適切に防ぐこともできる。
尚、この場合、サポート材の溶解は、造形の動作において先に形成された部分である積層方向の下側から順に進むことになる。そして、この場合、造形物材料で新たなインクの層が形成される領域の周囲は、サポート材の溶解が進んでいない状態のサポート層52に支持されることになる。そのため、このように構成した場合も、サポート層52により造形中の造形物を適切に支持できる。
また、本例におけるサポート層52の構造については、例えば図中に示す構成からわかるように、サポート材(インク)の領域と、流動性材料(水)の領域とを区画に分け、分割した構成等と考えることもできる。また、この場合、流動性材料の区画の形状や寸法については、図示した構成に限らず、様々に変更可能である。また、この場合、サポート層52による支持の機能が維持できる範囲で、流動性材料が充填される領域の容積比率を多くすることが好ましい。このように構成すれば、例えば、造形のコストをより適切に低減できる。また、この構成において、流動性材料が充填される個々の区画(サポート材領域202の空洞204)は、互いに連通していてもよい。この場合、区画が連通しているとは、例えば、複数の区画間の間で流動性材料が移動可能になっていることである。このように構成すれば、複数の区画に対してより容易かつ適切に流動性材料を充填できる。また、この場合、流動性材料がサポート層52の外側に流失しないようにサポート材領域202を形成することが望ましい。
また、本例の構成のサポート層52を形成する場合、造形物の造形時において、例えば積層するそれぞれのインクの層を形成する動作の中で、吐出ヘッド104から吐出するサポート材により空洞204を有するサポート材領域202を形成する。そして、空洞204の上面をサポート材で塞ぐ前のいずれかのタイミングで、空洞204内に吐出ヘッド106で流動性材料を充填する。また、この場合、空洞204内に充填された流動性材料の上に更に吐出ヘッド104からサポート材の液滴を吐出することで、サポート材領域202において空洞204の上面を塞ぐ部分を形成する。このように構成すれば、例えば、空洞204を有するサポート材領域202を適切に形成できる。
また、上記においても説明をしたように、本例において、流動性材料としては、水を用いる。このように構成すれば、例えば、流動性材料の上にサポート材の液滴を吐出した場合において、サポート材が流動性材料に沈む前にサポート材を適切に硬化させることができる。また、これにより、上記のような動作で、サポート材領域202において空洞204の上面を塞ぐ部分を適切に形成できる。
また、流動性材料用の水としては、例えば水道水等を好適に用いることができる。また、流動性材料用の水は、求められる特性に応じて各種の添加剤(例えば、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤、又は増粘剤等)を添加した水等であってもよい。また、この場合、添加剤の添加により、例えば、水を弱アルカリ性にすること等も考えられる。この場合、弱アルカリ性とは、例えば、pHが8以上で10程度以下(好ましくは9以下程度)の状態のことである。このように構成すれば、例えば、流動性材料でサポート材を溶解させる場合において、溶解性をより適切に高めることができる。また、流動性材料としては、水以外の液体を用いること等も考えられる。また、この場合、例えば、水を主成分とする各種の液体等を用いることが考えられる。この場合、水を主成分とするとは、例えば、重量比で50%以上の水を含むことである。このように構成した場合も、水を用いる場合と同一又は同様の効果を適切に得ることができる。
また、流動性材料としては、水系以外の様々な液体を用いること等も考えられる。また、この場合、例えば、サポート材を溶解しない性質の液体を用いてもよい。この場合も、サポート材の使用量を低減することにより、造形のコストを適切に低減できる。
また、水以外の流動性材料を用いる場合、流動性材料としては、例えば、サポート材を硬化させる条件では硬化しない材料を用いることが考えられる。また、流動性材料としては、サポート材よりも安価な材料を用いることが好ましい。この場合、例えば、材料を硬化させるための物質(例えば、紫外線硬化型樹脂等)を含まない材料を用いることが考えられる。
また、流動性材料とサポート材との関係については、流動性材料の上に吐出されたサポート材を適切に硬化させ得る関係になっていることが望ましい。そして、そのためには、例えば、流動性材料の上にサポート材の液滴が吐出された場合において、サポート材を硬化させるために必要な時間内でサポート材が流動性材料中に沈んだり、変質しないことが必要である。また、より具体的に、流動性材料としては、例えば、(a)比重がサポート材に近いか重い物質、又は(b)粘度が高く、サポート材が沈むのに時間がかかる物質等を用いることが考えられる。(a)に該当する材料としては、例えば、例えばパラフィン系溶剤を用いることが考えられる。また、フッ素系不活性液、例えばハイドロフルオロエーテルやフルオロカーボン類等を用いることも考えられる。また、(b)に該当する材料としては、例えば、グリセリンや、グリセリンと水との混合液等を用いることが考えられる。
また、サポート材の沈降速度との兼ね合いにより、インク(インク滴)の比重は水よりも大きくてもよい。また、サポート材として使用するインクの物性に応じて、例えば、飽和炭化水素(パラフィン系、ナフテン系等)、鉱物油、又はシリコンオイル等の液体を用いることも考えられる。また、流動性材料としては、サポート材や造形物材料に対して化学的なアタック(反応)をしない材料を用いることが好ましい。また、流動性材料に対しては、必要に応じて、防腐剤、界面活性剤、酸化防止剤、又は増粘剤等を添加してもよい。以上のような様々な流動性材料を用いる場合にも、造形のコストを抑えつつ、サポート層52を適切に形成できる。
また、サポート層52の構成については、図2(a)に示した構成に限らず、様々に変形すること等も考えられる。例えば、サポート層52については、サポート材領域202を明確に形成するのではなく、サポート材と流動性材料とを液滴レベルで混在させること等も考えられる。
図2(b)は、サポート層52の構成の他の例を示す図であり、サポート層52の一部について、副走査方向と直交する面による断面の構成の一例を示す。この場合、サポート層52の少なくとも一部について、予め設定された範囲の比率でサポート材と流動性材料とが混在するように、吐出ヘッド104及び吐出ヘッド106に、サポート材及び流動性材料を吐出させる。また、これにより、例えば図中に示すように、サポート材と流動性材料とが液滴(ドロップ)単位で混在するように、サポート層52を形成する。このように構成した場合も、例えば、サポート材及び流動性材料を用いてサポート層52を適切に形成できる。
尚、この場合、サポート層52を構成するサポート材と流動性材料との比率については、サポート層52による支持の機能が適切に維持できる範囲に設定する。より具体的に、この場合、サポート材の容積比率について、サポート層52による支持の機能が維持できる下限値以上の値に設定する。また、図2(b)においては、サポート材と流動性材料との容積比率が2:1程度になるようにした場合について、サポート層52の構成(Voxelの構成)の例を模式的に示している。
また、このようにサポート材と流動性材料とを混在させる場合、サポート層52内の流動性材料が流失すると、サポート層52の形状を適切に保つことが難しくなるおそれがある。そのため、この場合、流動性材料がサポート層52の外側に流失しないようにサポート層52を形成することが特に好ましい。また、より具体的に、この場合、サポート層52の外周部について、流動性材料を混在させずに、サポート材のみで形成することが考えられる。この場合、サポート層52の外周部とは、例えば、造形物材料が積層される積層方向と直交する面内におけるサポート層の外周部のことである。また、サポート層52の外周部については、例えば、サポート層52において大気と接する部分等と考えることもできる。このように構成すれば、例えば、液滴レベルでサポート材及び流動性材料がサポート層52内で混在させる場合にも、流動性材料をサポート層52の中に適切に保持できる。
また、このように構成した場合も、サポート材の使用量を低減することで、造形のコストを適切に低減できる。また、サポート材のみでサポート層52を形成する場合と比べ、サポート層52の除去をより容易にすることができる。また、この場合も、例えば流動性材料として水を用い、水溶性のサポート材を用いる場合のように、流動性材料にサポート材が溶解する関係の組み合わせを用いることで、造形中に積層方向の下側から順にサポート層をある程度溶解させることができる。そのため、このように構成した場合も、造形後の後処理で行うサポート層52の除去作業をより容易にして、サポート層52の除去に要する時間を適切に短縮できる。
また、サポート層52の構成の更なる変形例においては、例えば、サポート層52の一部を流動性材料のみで形成することで、サポート層52の除去をより容易にすること等も考えられる。図2(c)は、サポート層52の構成の他の例を示す図であり、サポート層52において造形物50と接する部分の近傍の構成の一例を示す。
この場合、造形装置10は、図中に示すように、主サポート部212及び境界部214を有するサポート層52を形成する。この場合、主サポート部212は、サポート層52において造形物50と接する部分である境界部214以外の部分である。本変形例において、主サポート部212については、例えば、図2(a)又は図2(b)に示した場合と同一又は同様にして、サポート材と流動性材料とを用いて形成する。また、サポート層52の構成の更なる変形例においては、主サポート部212について、流動性材料を用いずに、サポート材のみで形成すること等も考えられる。
また、境界部214は、サポート層52において造形物50と接する境界部分の領域である。境界部214については、例えば、一定の範囲の厚さ(例えば10~200μm程度)で造形物50の表面に沿った領域にすることが考えられる。また、本変形例において、境界部214は、サポート材を用いずに、流動性材料のみで形成する。このように構成すれば、例えば、サポート層52におけるサポート材が造形物50に対して強固に付着すること等を適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、サポート層52の除去をより容易にすることができる。また、この場合、サポート材が造形物50に付着したまま残ることをより適切に防ぐことが可能になるため、例えば、サポート材が造形物50の表面に残って造形物50の色の見え方が変化すること等をより確実に防ぐこともできる。
また、本変形例のように境界部214を形成する場合、例えば、サポート層52において造形物50と接する部分の全体について、流動性材料のみで形成することがより好ましい。このように構成すれば、例えば、サポート層52の除去をより容易にすることができる。また、造形物50の形状等によっては、造形物50と接する部分の一部のみについて、流動性材料のみで形成してもよい。
続いて、本例の造形装置10を用いて形成するサポート層52の構成の更なる変形例や、造形物50の構成の変形例について、説明をする。図3は、サポート層52の構成の更なる変形例及び造形物50の構成の変形例について説明をする図である。図3(a)は、サポート層52の構成の更なる変形例を示す図であり、サポート層52の一部について、副走査方向と直交する面による断面の構成の一例を示す。
上記においても説明をしたように、サポート層52について、サポート材のみで形成するのではなく、サポート材と流動性材料とを用いて形成する場合、サポート材の使用量を低減できる。しかし、この場合、サポート材のみでサポート層52を形成する場合と比べ、サポート層52の強度が低くなること等も考えられる。また、例えば流動性材料として水を用い、水溶性のサポート材を用いる場合のように、流動性材料にサポート材が溶解する関係の組み合わせを用いる場合、造形しようとする造形物50の形状等によっては、サポート層52において溶解が進んだ部分の強度が不十分になること等も考えられる。
これに対し、サポート層52の強度をより高めることが必要な場合には、サポート層52の形状を保持するための構成をサポート層52内に形成することが考えられる。また、このような構成としては、例えば、サポート層52の一部について、サポート材や流動性材料ではなく、造形物50の造形に用いる造形物材料で形成することが考えられる。より具体的に、図3(a)に示す構成の場合、サポート層52は、主サポート部212及び非溶解部216を有する。この場合、主サポート部212は、サポート層52における非溶解部216以外の部分である。主サポート部212については、例えば、図2に示した場合と同一又は同様にして、サポート材と流動性材料とを用いて形成する。
また、非溶解部216は、流動性材料に対して溶解しない材料で形成される部分である。また、より具体的に、本変形例において、非溶解部216については、造形物材料で形成する。この場合、造形物材料とは、例えば、ヘッド部12における吐出ヘッド102w~k(図1参照)から吐出するインクのことである。また、この場合、非溶解部216は、例えばサポート層52内で柱状や板状の構造等に形成されることで、周囲のサポート材を支える構造として機能する。このように構成すれば、例えば、サポート材の使用量を抑えつつ、安定したサポート層52をより適切に形成できる。また、この場合、例えば、造形中にサポート層52の一部が溶解した場合にも、サポート層52の全体が崩れること等を適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、サポート層52の機能をより適切に維持できる。
また、上記においては、主に、サポート材と流動性材料とを用いることで、サポート材の使用量を低減して、造形のコストを低減することについて、説明をした。しかし、流動性材料を用いた場合、造形物50の造形に用いる造形物材料についても、同様にして、使用量を低減することができる。
図3(b)、(c)は、造形物50の構成の変形例について説明をする図である。図3(b)は、完成した造形物50の外観(造形物外観)の一例を示す。図3(b)は、造形物50の断面の様子をサポート層52の断面と共に示す。この場合、サポート層52については、上記において説明をした各構成と同一又は同様にして、サポート材と流動性材料とを用いて形成する。また、これにより、サポート材の使用量を低減する。
また、本変形例においては、造形物50について、図3(c)に示すように、造形材料領域152と空洞154とを有する構造で形成する。この場合、造形材料領域152は、造形物材料で形成される領域であり、造形物50の内部の空洞154を囲むように、造形物50の外周領域に形成される。また、空洞154は、造形物50の内部において造形物材料が充填されない領域である。このように構成すれば、例えば、造形物50の造形時に使用する造形物材料の使用量を適切に低減できる。また、これにより、造形物50の造形のコストを適切に低減できる。
また、この場合、造形物50における空洞154については、例えば、ヘッド部12における吐出ヘッド106から吐出する流動性材料を利用して形成する。より具体的に、この場合、造形物50の造形時において、空洞154を形成すべき領域に流動性材料を充填した状態で周囲の造形材料領域152を形成することで、造形材料領域152及び空洞154を有する造形物50を造形する。また、この場合、空洞154内に充填した流動性材料については、造形の完了までに造形物50内から抜き取ることが考えられる。この場合、例えば造形物50の表面の一部に孔を形成しておき、その孔を介して流動性材料を抜き取ること等が考えられる。また、造形物50の用途や求められる品質等によっては、空洞154内に流動性材料を充填したままの状態で、造形物50の造形を完了してもよい。
続いて、造形装置10において行う造形の動作の変形例や、造形装置10の構成の変形例について、説明をする。図4は、造形の動作及び造形装置10の構成の変形例について説明をする図である。尚、以下に説明をする点を除き、図4において、図1~3と同じ符号を付した構成は、図1~3における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。
図4(a)は、造形装置10において行う造形の動作の変形例を示す図であり、図3(b)、(c)を用いて説明をした構成の造形物50を造形する場合について、造形の動作の一例を示す。尚、図示の便宜上、図4(a)においては、造形装置10について、図1(a)と一部を異ならせて図示をしている。しかし、以下において説明をする造形の動作は、例えば、図1(a)に示した造形装置10を用いて行うこと等も考えられる。
また、より具体的に、この造形の動作においては、図3(b)、(c)を用いて上記においても説明をしたように、造形材料領域152及び空洞154を有する造形物50を造形する。また、造形中において、例えば図中に示すように、空洞154内に流動性材料を充填した状態で、造形材料領域152及びサポート層52を形成する。
また、この場合、空洞154内の流動性材料については、例えば、造形物50の内部におけるサポート部と考えることもできる。より具体的に、この場合、空洞154内の流動性材料の上に造形物材料として用いるインクを吐出することにより、様々な形状の造形材料領域152を形成することが可能になる。また、これにより、例えば、造形材料領域152において空洞154の上側を塞ぐ部分等についても、空洞154内へサポート材等を吐出することなく、適切に形成できる。そのため、このように構成すれば、例えば、内部に空洞154を有する造形物50をより適切に造形できる。
また、この場合、造形物50を構成するインクの層を積層する動作と並行して、積層面(積層上面)の位置を維持しながら、空洞154内へ吐出ヘッド106から流動性材料を吐出する。また、これにより、空洞154内に流動性材料を充填する。この場合、積層面の位置とは、インクの層を積層する積層動作で形成中の層の位置(積層方向における位置)のことである。また、積層面の位置を維持しながら流動性材料を吐出するとは、流動性材料の充填のための積層方向走査(Z走査)を別途行うことなく、造形物50を造形する動作の中で流動性材料を吐出することである。また、より具体的に、この場合、造形物材料やサポート材を吐出する主走査動作において、流動性材料の吐出も行うことが考えられる。
また、この場合、例えば空洞154内の流動性材料が不足しないように、必要最小限の量よりも多めの流動性材料を吐出することが考えられる。この場合、積層動作の途中で積層面を超える余分な流動性材料は、層面から溢れるか、ヘッド部12における平坦化ローラ110による平坦化の動作により平坦化ローラ110に付着して硬化前のインクの一部と共に除去されるか、平坦化ローラ110により押し出されて空洞154からオーバーフローして、造形中の造形物50の上面から流失することになる。
これに対し、本変形例においては、例えば図中に示すように、オーバーフローした流動性材料を造形台14上に保持するための壁部54を形成する。この場合、例えば造形物50を造形する動作の初期において、造形物50の造形と並行して、造形物50の周囲を囲む壁部54を造形台14上に形成する。また、この場合において、造形物50及びサポート層52との間に流動性材料を貯留できるように、造形物50及びサポート層52との間に隙間を空けた状態で造形物50及びサポート層52の周囲を囲むように、造形台14上に壁部54を形成する。
このように構成すれば、例えば、空洞154から流動性材料が溢れた場合も、周囲への影響を適切に抑えることができる。また、この場合、空洞154から溢れた流動性材料は、造形台14上で広く広がることなく、壁部54に囲まれた領域内に貯まることになる。そのため、造形物50の造形が完了した後には、例えば造形物50及びサポート層52を造形台14から剥離する前又は後に、壁部54に囲まれた範囲内の流動性材料のみをスポイトでの吸い取り等で除去すればよい。また、この場合、壁部54を崩せば、壁部54についても、造形台14上から容易かつ適切に除去できる。そのため、このように構成すれば、流動性材料を用いて行う造形の動作をより適切に行うことができる。
ここで、壁部54の高さ(積層方向における高さ)については、オーバーフローした流動性材料が壁部54の外側に漏れ出さない高さであればよい。そのため、壁部54の高さは、例えば図中に示すように、造形物50よりも低くてもよい。また、壁部54については、サポート材及び造形物材料の少なくともいずれかを用いて形成することが考えられる。また、この場合、壁部54について、サポート材及び造形物材料の両方を用いて形成してもよい。また、壁部54の一部について、上記において説明をした様々なサポート層52の構成等と同様に、流動性材料で形成すること等も考えられる。
また、この場合、壁部54とサポート層52との間の流動性材料が貯まることにより、サポート層52の少なくとも一部は、サポート層52の外面側において、流動性材料に浸漬されることになる。そのため、例えば流動性材料として水を用い、水溶性のサポート材を用いる場合のように、流動性材料にサポート材が溶解する関係の組み合わせを用いる場合、造形の動作の途中において、サポート層52は、外側からもある程度溶解することになる。そのため、このように構成すれば、例えば、造形の完了後にサポート層の除去に要する時間を適切に短縮することもできる。
また、このような構成については、例えば、造形物50の造形中の少なくとも一部の期間において、サポート層52の少なくとも一部を所定の液体に浸漬しつつ、造形物50を造形する動作等と考えることもできる。そして、このような観点で考えた場合、造形装置10の構成について、より積極的にサポート層52を液体に浸漬すること等も考えられる。
図4(b)は、造形装置10の構成の変形例を示す。本変形例において、造形装置10は、図1(a)や図4(a)に示した造形装置10の構成に加え、液体貯留容器30を更に備える。液体貯留容器30は、サポート材を溶解させる液体を貯留する容器であり、第1液室302、第2液室304、フィルタ306、及びポンプ308を有する。
また、この構成において、液体貯留容器30に貯留する液体としては、例えば、サポート層52の形成に用いる流動性材料と同じ液体を用いることが考えられる。より具体的に、水溶性のサポート材と水とを用いてサポート層52を形成する場合、液体貯留容器30に貯留する液体としても、水を用いることが考えられる。また、液体貯留容器30に貯留する液体としては、水以外の溶剤等を用いること等も考えられる。また、この場合、例えば、サポート層52の形成に用いる流動性材料とは異なる液体を用いてもよい。
また、この構成において、第1液室302は、造形中の造形物50及びサポート層52を液体に浸漬するための液室である。第1液室302は、造形台14を内部に収容可能なサイズの液室であり、その液面は、オーバーフローすることによりヘッド部12の下面より低く、かつ造形中の積層面よりも低い位置に常に維持されている。また、造形中の造形物50及びサポート層52を上面に載置している造形台14を内部に収容することにより、第1液室302内の液体にサポート層52を浸漬する。これにより、造形の途中において、サポート層52の少なくとも一部をある程度溶解させる。
また、この場合、造形装置10は、造形の動作の進行に応じて積層方向における造形台14の位置を積層高さ分だけ徐々に変化させ、第1液室302における深い位置へ造形台14を移動させることで、サポート層52の一部を液体に浸漬させる。また、これにより、例えば、造形物50の造形中の少なくとも一部の期間において、サポート層52の少なくとも一部を第1液室302内の液体に浸漬しつつ、造形物50の造形を実行する。このように構成すれば、サポート層52について、造形物50の造形中に下側から順次溶解することができる。また、これにより、例えば、造形の完了後にサポート層52の除去に要する時間を適切に短縮することもできる。また、この構成については、例えば、液体を貯めた容器上で造形物50の造形を行い、造形の進行に応じてサポート層52と共に造形物50を徐々に液体中に沈める構成等と考えることもできる。
また、この構成において、第2液室304は、第1液室302のオーバーフローにより第1液室302から溢れた液体を貯留する液室である。第2液室304の液面の位置については、例えば図中に示すように、第1液室302の液面の位置よりも下になるように調整することが好ましい。また、本変形例において、第1液室302と第2液室304とは、フィルタ306及びポンプ308を介して繋がっている。フィルタ306は、第2液室304から第1液室302へ流れる液体を濾過するフィルタである。ポンプ308は、第2液室304から第1液室302へ向けて液体を流すポンプであり、少なくとも造形中に第1液室302に液体を送り込む。このように構成すれば、フィルタ306で液体を濾過しつつ、第1液室302と第2液室304との間で液体を適切に循環させることができる。また、ポンプ308により第2液室304から第1液室302へ液体を送り、かつ、第1液室302から溢れた液体を第2液室304へ流すことにより、第1液室302の液面の位置を適切に調整できる。尚、この場合、上記のように液体を循環させることで液体の再利用が可能である。また、長期に使用して液体によるサポート層52の溶解能力が低下した場合等には、例えば、図示せぬ廃液口から液体を排出し、新しい液体に交換することが好ましい。
また、この場合、第1液室302の液面の位置は、サポート層52が液体に浸かり始めるタイミングに関係することになる。より具体的に、本変形例においては、積層面と第1液室302の液面との間の距離(積層方向における距離)に応じて、サポート層52が液体に浸かり始めるタイミングが決まることになる。また、この場合、両者の位置の差分が小さいほど、早いタイミングでサポート層52が液体に浸かり、サポート層52の溶解が早く進むことになる。
そのため、この場合、例えば積層面と第1液室302の液面との位置関係を調整することで、サポート層52が液体に浸かり始めるタイミングを調整することができる。また、より具体的に、この場合、造形物50の造形がある程度進行して、造形中の造形物50の高さが所定の高さを超えた後にサポート層52及び造形物50が液体に浸かるように調整を行うことが考えられる。このように構成すれば、液体中にサポート層52を浸漬する時間を適切に調整できる。また、この場合、これらの第1液室302の液面の高さの位置は、オーバーフローの出口の高さを調整することで設定が可能である。
また、この場合、造形の完了後には、例えば造形台14を十分に下げて造形物50及びサポート層52の全体を第1液室302の液体中に浸漬して、そのまま放置することが考えられる。このように構成すれば、例えば、造形後にサポート層52を溶解させる後処理を適切に行うことができる。また、液体貯留容器30は、例えば、超音波発生器等を更に有してもよい。この場合、第1液室302内の液体を超音波により振動させることで、サポート層52の除去をより効率的に行うこともできる。また、この場合、例えば、超音波を発生するタイミングを制御することで、造形の精度への影響を抑えつつ、サポート層52の除去を効率化すること等も考えられる。より具体的に、この場合、主走査動作においてインクを吐出するタイミングを避けて超音波を発生すること等が考えられる。
また、流動性材料を用いて造形を行う場合、造形装置10の各部について、流動性材料を用いる場合により適した構成を用いること等も考えられる。より具体的に、上記においても説明をしたように、造形物50やサポート層52内に空洞を形成して、空洞内に流動性材料を充填する場合、流動性材料が不足しないように、必要な量(必要最小限の量)よりも多めの流動性材料を吐出することが考えられる。そして、この場合、流動性材料が造形台14上へ流出すること等が考えられる。これに対し、このような場合には、例えば図4(a)を用いて説明をしたように、造形物50の動作と並行して造形台14上に壁部を形成することで、造形台14上の一定領域内に流動性材料を貯留すること等も考えられる。
しかし、この場合、造形の完了後に壁部を除去する処理等も必要になり、造形後の後処理の手間が増大するおそれがある。また、壁部を形成するためにインクを消費することになり、造形のコストが増大すること等も考えられる。そのため、流動性材料が造形台14上に流出する可能性が高い場合には、例えば、造形装置10が備える構成を用いて、造形台14上へ流出した流動性材料を回収すること等も考えられる。
図5、6は、造形装置10の構成の更なる変形例について説明をする図である。尚、以下に説明をする点を除き、図5、6において、図1~4と同じ符号を付した構成は、図1~4における構成と、同一又は同様の特徴を有してよい。また、以下に説明をする点を除き、本変形例の造形装置10は、図1~4を用いて説明をした造形装置10と同一又は同様の特徴を有してよい。例えば、造形装置10は、以下に説明をする点を除き、図1等に示した各構成と同一又は同様の構成を有してよい。
図5は、本変形例の造形装置10が備える造形台14の特徴について説明をする図である。図5(a)は、本変形例において造形する造形物50及びサポート層52の構成の一例を造形台14と共に示す図であり、造形台14における特徴部分の図示を省略して、造形台14、造形物50、及びサポート層52の構成の一例を示す。本変形例において、造形装置10は、図1~4を用いて説明をした場合と同一又は同様にして、造形台14上において、造形物50を造形する。また、必要に応じて、造形物50の周囲等に、サポート層52を形成する。また、この場合において、造形物50として、図中に示すように、造形材料領域152及び空洞154を有する造形物50を造形する。また、造形時において、造形物50の空洞154内に、流動性材料を充填する。また、この場合も、流動性材料として、例えば水等の、硬化しない液体(非硬化液体)を用いる。また、造形材料領域152については、例えば、造形物50の外周面の法線方向において所定の厚さ以上になり、内部が空洞154になるように形成する。また、流動性材料については、造形物50を造形する動作と同時に吐出ヘッド106(図1参照)から吐出して、空洞154内に充填する。また、サポート層52として、サポート材領域202及び空洞204を有するサポート層52を形成する。そして、サポート層52の空洞204内にも、上記と同様にして、吐出ヘッド106を用いて、流動性材料を充填する。
また、この場合、例えば造形装置10での造形の動作が完了した後に、図中に示すように、造形材料領域152に、空気注入孔156及び排出孔158を形成する。そして、例えばシリンジ等を用いて、空洞154内の流動性材料を排出する。このように構成すれば、例えば、内部に空洞154を有する造形物50を適切に造形することができる。また、流動性材料を用いて造形物50の造形やサポート層52を行うことにより、造形物50の材料やサポート材として用いるインクの使用量を適切に低減することができる。また、本変形例において、造形装置10は、更に、以下に説明をするように、造形台14上に流出した流動性材料を回収する構成を有している。
図5(b)は、本変形例の特徴について更に詳しく説明をする図であり、造形中の造形物50と共に、造形台14のより詳細な構成の一例を示す。上記においても説明をしたように、流動性材料を用いて造形物50の造形やサポート層52の形成を行う場合、空洞154や空洞204への流動性材料の充填は、造形材料領域152やサポート材領域202を構成するインクの層を積層する動作と並行して行う。また、この場合、積層の上面と流動性材料の上面を常に合わせるように、例えば図中に示すように、平坦化ローラ110による平坦化を行う。そして、この場合、平坦化の動作により、余分な流動性材料は、積層上面から溢れて造形台14上へ流出し、廃液になる。
これに対し、本変形例において、造形台14は、廃液溝402及びドレイン404を有する。廃液溝402は、例えば、造形台14において吐出ヘッド106等と対向する面に形成された溝であり、造形台14上において造形物50が造形される領域(造形領域)の周囲に形成されることにより、造形時に造形台14上に流出した流動性材料を受ける。この場合、造形領域とは、例えば、造形物50を形成するための領域として予め設定された領域のことである。また、廃液溝402は、造形台14に形成された凹部及び流動体受部の一例である。このように構成すれば、例えば、造形台14上で意図しない範囲にまで流動性材料が広がることを適切に防ぐことができる。また、これにより、例えば、造形台14上に流出する流動性材料の量が多くなった場合等にも、造形台14の周囲にまで更に流動性材料が流出することや、造形装置10の周囲を汚すこと等を適切に防ぐことができる。
また、本変形例において、廃液溝402は、複数のドレイン404に繋がっており、複数のドレイン404を介して、流動性材料を排出する。複数のドレイン404は、流動性材料の排出口であり、廃液溝402に流れ込んだ流動性材料を、造形台14の外部へ排出する。また、本変形例において、複数のドレイン404は、図示を省略したポンプに接続され、ポンプの吸引力に応じて、流動性材料を排出する。本変形例によれば、造形台14上へ流動性材料が流出した場合にも、流動性材料を適切に管理して、造形台14の外部へ排出することができる。また、この場合、例えば造形台14上に壁部を形成して流動性材料を貯留する場合と異なり、造形の完了後に壁部を除去する処理等も不要になる。また、ドレイン404を介して流動性材料を排出することで、流動性材料を排出する機能(排水機能)を造形装置10自体が有することになり、溜まった流動性材料を回収する処理等を別途行うこと等も不要になる。そのため、本変形例によれば、例えば、造形台14上へ流出した流動性材料をより容易に回収することが可能になる。
また、上記においても説明をしたように、本例において、廃液溝402は、造形領域の周囲に形成される。より具体的に、この場合、例えば図6(a)、(b)に示すように廃液溝402及び複数のドレイン404を形成することが考えられる。図6(a)、(b)は、本変形例における造形台14の構成を示す斜視図及び断面図である。本変形例において、造形領域については、例えば、造形台14の造形面の中央部を含むように設定することが考えられる。この場合、造形台14の造形面とは、造形台14においてヘッド部12(図1参照)と対向する側の面のことである。そして、この場合、廃液溝402については、例えば図中に示すように、造形台14の縁部付近において造形台14の外周に沿うように形成すること等が考えられる。このように構成すれば、例えば、廃液溝402により造形領域を適切に囲むことができる。また、これにより、例えば、造形台14上に流出した流動性材料を適切に受けることができる。
また、この場合、複数のドレイン404については、例えば、図中にドレイン404a、bとして示すように、廃液溝402における互いに異なる位置に形成することが好ましい。より具体的に、図6(a)、(b)において、複数のドレイン404a、bは、造形台14の対角線の一端側と他端側に形成されている。また、この場合において、ドレイン404aは、図中で手前側になるドレインである。ドレイン404bは、図中で奥側になるドレインである。このように構成すれば、例えば、廃液溝402内の流動性材料を効率的かつ適切に排出できる。
また、本変形例のように、造形台14上に流出した流動性材料を適切に回収可能な場合、多様な目的でより積極的に流動性材料を利用すること等も考えられる。より具体的に、例えば水溶性のサポート材を用い、流動性材料として水を用いる場合等には、サポート層52に流動性材料がかかるように、サポート層52の周囲(外側)等へ意図的に流動性材料を吐出すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、造形の途中にもサポート層52をある程度溶解させることができる。また、これにより、例えば、造形の完了後により容易にサポート層52を除去することができる。また、その他にも、例えば、吐出ヘッド106から造形台14上へ流動性材料を吐出することで、造形中に造形台14を洗浄すること等も考えられる。このように構成すれば、例えば、造形台14上に落下したインクが造形台14に強く付着して除去しにくくなること等を適切に防ぐことができる。
また、このような様々な目的で流動性材料を吐出する場合にも、ヘッド部12における吐出ヘッド106を用いて流動性材料を吐出することが考えられる。このように構成すれば、例えば、新たな構成を追加することなく、様々な用途に流動性材料を利用することができる。また、造形装置10の構成の変形例においては、吐出ヘッド106とは別の構成を用いて液体を吐出すること等も考えられる。この場合、液体としては、吐出ヘッド106から吐出する流動性材料と同じ液体を用いてもよい。また、液体の用途に応じて、流動性材料とは異なる液体を用いてもよい。例えば、液体により造形台14を洗浄する場合、洗浄液等を用いること等も考えられる。また、専用の構成を用いて液体を吐出する場合、例えば、液体の用途により適した方法で液体を吐出することができる。より具体的に、このような専用の構成として、単位時間あたりの吐出量が吐出ヘッド106よりも大きな構成を用いること等が考えられる。また、例えば、液体により造形台14を洗浄する場合等には、吐出ヘッド106と比べてより強い勢いの液体(例えば、強い水流)を吐出する構成を用いること等が考えられる。
また、造形台14上へ流出した流動性材料を回収する構成については、上記において説明をした構成に限らず、更に変形をすること等も考えられる。例えば、造形台14に形成する凹部として、廃液溝402に代えて、貫通孔を形成すること等も考えられる。この場合、貫通孔とは、例えば、少なくとも一部において造形台14を貫通している凹部のことである。また、廃液溝402に加えて、貫通孔を更に形成すること等も考えられる。また、流動性材料を回収するための流動体受部として、例えば、造形台14と別体の部材を用いること等も考えられる。また、より具体的に、この場合、例えば図6(c)、(d)に示すように、廃液受皿406を用いること等が考えられる。
図6(c)、(d)は、造形装置10の更なる変形例について説明をする図であり、本変形例において用いる造形台14及び廃液受皿406の一例を斜視図及び断面図により示す。本変形例において、造形台14としては、例えば、図1~4を用いて説明をした場合と同一又は同様の特徴を有する造形台14を用いる。そして、造形台14とは別体の廃液受皿406を用いて、造形台14上に流出した流動性材料を回収する。
この場合、廃液受皿406は、流動体受部の一例であり、造形台14の外部において造形台14から流出する流動性材料を受けることにより、流動性材料を回収する。また、より具体的に、本変形例において、廃液受皿406は、例えば図中に示すような受け皿状の容器(廃液受け皿)であり、造形台14の下側(重力方向の下側)において造形台14の下側を覆うように配設されることにより、造形台14の外側へ造形台14から流出する流動性材料を受けて、回収する。また、本変形例において、廃液受皿406は、複数のドレイン408a、bを有する。複数のドレイン408a、bは、廃液受皿406から流動性材料を排出する排出口である。図示した構成において、ドレイン408aは、図中で手前側になるドレインである。また、ドレイン408bは、図中で奥側になるドレインである。また、複数のドレイン404a、bは、図示を省略したポンプに接続され、ポンプの吸引力に応じて、流動性材料を排出する。このように構成した場合も、造形台14上に流出した流動性材料を適切に回収することができる。