JP7073077B2 - ハイブリッドシステム - Google Patents

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Description

本発明は、車両のハイブリッドシステムに関する。
近年、エンジンおよび駆動モータを駆動源として備えるハイブリッドシステムを搭載した車両、いわゆるハイブリッド車(HV:Hybrid Vehicle)が急速に普及している。
従来のハイブリッドシステムでは、たとえば、エンジンの動力が発電機(発電用モータジェネレータ)で電力に変換され、発電機で発生する電力が電池に蓄えられて、駆動モータ(駆動用モータジェネレータ)の駆動に使用される。駆動モータの動力は、その回転軸に一体回転するように支持されたモータギヤからデファレンシャルギヤに伝達され、デファレンシャルギヤからドライブシャフトを介して駆動輪に伝達される。これにより、ハイブリッドシステムを搭載した車両が走行する。
特開2007-186038号公報
従来のハイブリッドシステムの構成では、駆動モータの出力によって、ハイブリッドシステムを搭載した車両の加速力や最高車速などの走行性能が決まる。最大出力が大きい大型の駆動モータを採用すれば、良好な走行性能を得ることができるが、駆動モータに電力を供給する電池の容量(電池を構成する二次電池の数)を増大させる必要が生じる。
本発明の目的は、小型の駆動モータであっても、車両の良好な走行性能を得ることができる、ハイブリッドシステムを提供することである。
前記の目的を達成するため、本発明の一の局面に係るハイブリッドシステムは、車両に搭載されるハイブリッドシステムであって、エンジンと、エンジンの動力を電力に変換する発電機と、発電機の発電電力を使用して駆動され、車両の走行のための動力を出力する駆動モータと、デファレンシャルギヤと、ハイギヤードとローギヤードとに選択的に設定され、エンジンの動力および駆動モータの動力が入力され、デファレンシャルギヤと噛合する出力ギヤに動力を出力する変速機とを含む。
この構成によれば、エンジンの動力が発電機で電力に変換され、発電機で発生する電力が駆動モータの駆動に使用される。駆動モータの動力は、ローギヤードとハイギヤードとに選択的に設定される変速機に入力される。
変速機がローギヤードに設定されることにより、駆動モータの動力が減速されて、その減速された動力が車両のデファレンシャルギヤと噛合する出力ギヤに伝達される。これにより、駆動モータのトルクが増大されてデファレンシャルギヤに伝達されるので、最大出力が小さい小型の駆動モータであっても、低車速域で大きな加速力を得ることができる。一方、変速機がハイギヤードに設定されているときには、ローギヤードに設定されているときと比較して、駆動モータの動力が小さい変速比で変速されるので、最高回転数が低い小型の駆動モータであっても、駆動輪を高速回転させることができる。
また、変速機には、駆動モータの動力に加えて、エンジンの動力が変速機に入力される。そのため、デファレンシャルギヤに伝達される駆動モータの動力をエンジンの動力でアシストすることができる。
よって、小型の駆動モータであっても、ハイブリッドシステムが搭載された車両の良好な走行性能を得ることができる。また、変速機のローギヤ化および駆動モータの小型化により、ハイブリッドシステムのエネルギ効率の向上を図ることができ、駆動モータの駆動用の電力を蓄えておくための電池の容量を低減することができる。
本発明の他の局面に係るハイブリッドシステムは、車両に搭載されるハイブリッドシステムであって、エンジンと、エンジンの動力を電力に変換する発電機と、発電機の発電電力を使用して駆動され、車両の走行のための動力を出力する駆動モータと、デファレンシャルギヤと、サンギヤ、キャリヤ、リングギヤ、およびキャリヤと一体に回転するキャリヤギヤを備える遊星歯車機構とを含み、キャリヤギヤにエンジンの動力が入力され、サンギヤに駆動モータの動力が入力され、リングギヤが固定されており、キャリヤとデファレンシャルギヤとの間で動力が伝達される。
この構成によれば、遊星歯車機構のサンギヤに駆動モータの動力が入力され、リングギヤが固定されている。そのため、駆動モータの動力により回転するサンギヤの回転は、サンギヤの歯数とリングギヤの歯数との和をサンギヤの歯数で除して得られる除算値を変速比として、その変速比で減速されてキャリヤに伝達される。そして、キャリヤからデファレンシャルギヤに動力が伝達され、その動力がデファレンシャルギヤからドライブシャフトを介して車両の駆動輪に伝達される。これにより、駆動モータのトルクが増大されてデファレンシャルギヤに伝達されるので、最大出力が小さい小型の駆動モータであっても、大きな加速力を得ることができる。また、キャリヤと一体に回転するキャリヤギヤが設けられ、このキャリヤギヤにエンジンの動力が入力される。そのため、デファレンシャルギヤ(駆動輪)に伝達される駆動モータの動力をエンジンの動力でアシストすることができる。
よって、小型の駆動モータであっても、ハイブリッドシステムが搭載された車両の良好な走行性能を得ることができる。また、変速機のローギヤ化および駆動モータの小型化により、ハイブリッドシステムのエネルギ効率の向上を図ることができ、駆動モータの駆動用の電力を蓄えておくための電池の容量を低減することができる。
遊星歯車機構は、サンギヤと噛合するラージピニオンと、ラージピニオンよりも小さいギヤ径を有し、リングギヤと噛合するスモールピニオンとを一体的に有するステップドピニオンギヤを備える構成であってもよい。
このステップドピニオンギヤが遊星歯車機構に採用されることにより、遊星歯車機構の変速比を大きく(ローギヤ化)することができる。
本発明によれば、小型の駆動モータであっても、ハイブリッドシステムが搭載された車両の良好な走行性能を得ることができる。言い換えれば、ハイブリッドシステムが搭載された車両の良好な走行性能を確保しながら、駆動モータの小型化を図ることができる。その結果、駆動モータの駆動用の電力を蓄えておくための電池の容量を低減することができる。
本発明の一実施形態に係るハイブリッドシステムのスケルトン図である。 図1に示されるハイブリッドシステムの各動力伝達モードにおけるブレーキ、クラッチおよび駆動モータの状態を示す図である。 図1に示される遊星歯車機構のサンギヤ、キャリヤおよびリングギヤの回転数の関係を示す共線図である。 ハイブリッドシステムの遊星歯車機構にステップドピニオンギヤを採用した構成を示すスケルトン図である。 ステップドピニオンギヤが採用された遊星歯車機構のサンギヤ、キャリヤおよびリングギヤの回転数の関係を示す共線図である。 本発明の他の実施形態に係るハイブリッドシステムのスケルトン図である。 図6に示されるハイブリッドシステムの各動力伝達モードにおけるクラッチ、ツーウェイクラッチおよび駆動モータの状態を示す図である。 図6に示される遊星歯車機構のサンギヤ、キャリヤおよびリングギヤの回転数の関係を示す共線図である。 ハイブリッドシステムにワンウェイクラッチを採用した構成を示すスケルトン図である。 図9に示されるハイブリッドシステムの各動力伝達モードにおけるクラッチ、ワンウェイクラッチおよび駆動モータの状態を示す図である。 図9に示される遊星歯車機構のサンギヤ、キャリヤおよびリングギヤの回転数の関係を示す共線図である。 本発明のさらに他の実施形態に係るハイブリッドシステムのスケルトン図である。 図12に示されるハイブリッドシステムの各動力伝達モードにおけるブレーキ、クラッチおよび駆動モータの状態を示す図である。 図12に示される遊星歯車機構のサンギヤ、キャリヤおよびリングギヤの回転数の関係を示す共線図である。 本発明のさらに他の実施形態に係るハイブリッドシステムのスケルトン図である。 図15に示される遊星歯車機構のサンギヤ、キャリヤおよびリングギヤの回転数の関係を示す共線図である。
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<ハイブリッドシステムの構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るハイブリッドシステム1のスケルトン図である。
ハイブリッドシステム1は、エンジン2、発電機3および駆動モータ4を含む。
エンジン2には、エンジン2の燃焼室への吸気量を調整するための電子スロットルバルブ、燃料を吸入空気に噴射するインジェクタ(燃料噴射装置)および燃焼室内に電気放電を生じさせる点火プラグなどが設けられている。
発電機3は、モータジェネレータ(MG1)からなる。発電機3には、インバータなどを内蔵する発電機コントローラが接続されている。発電機コントローラには、複数の二次電池を組み合わせた組電池からなる電池が接続されている。発電機3から出力される交流電力は、発電機コントローラにより直流電力に変換されて、その直流電力が電池に供給されることにより、電池が充電される。
駆動モータ4は、モータジェネレータ(MG2)からなる。駆動モータ4には、インバータなどを内蔵するモータコントローラが接続されている。モータコントローラには、電池が接続されている。電池から出力される直流電力がモータコントローラに供給され、その直流電力がモータコントローラにより交流電力に変換されて、交流電力が駆動モータ4に供給されることにより、駆動モータ4が駆動される。
エンジン2のクランクシャフト11と一体回転するように、エンジンギヤ12が設けられている。また、発電機3の回転軸13と一体回転するように、発電機ギヤ14が設けられている。エンジンギヤ12と発電機ギヤ14とは、噛合している。発電機ギヤ14は、エンジンギヤ12よりもギヤ径が小さい。そのため、エンジン2の動力は、エンジンギヤ12から発電機ギヤ14に増速して伝達される。
駆動モータ4の回転軸15は、遊星歯車機構16に接続されている。遊星歯車機構16は、サンギヤ21、キャリヤ22およびリングギヤ23を備えている。サンギヤ21は、駆動モータ4の回転軸15と一体回転するように設けられている。キャリヤ22は、複数個のピニオンギヤ24を回転可能に支持している。複数個のピニオンギヤ24は、円周上に配置され、サンギヤ21と噛合している。リングギヤ23は、複数個のピニオンギヤ24を一括して取り囲む円環状を有し、各ピニオンギヤ24に回転径方向の外側から噛合している。
また、遊星歯車機構16は、キャリヤ22と一体回転するキャリヤギヤ25を備えている。キャリヤギヤ25には、伝達ギヤ26が噛合している。伝達ギヤ26は、エンジン2のクランクシャフト11と同一の回転軸線を有し、その回転軸線を中心に回転可能に設けられている。
キャリヤギヤ25の中心には、駆動モータ4の回転軸15と平行な方向に延びるアウトプット軸31が接続されている。アウトプット軸31と一体回転するように、出力ギヤ32が設けられている。出力ギヤ32は、デファレンシャルギヤ33のデフケース34に結合されたリングギヤ35と噛合している。
また、クラッチC1およびブレーキB1が設けられている。クラッチC1は、たとえば、油圧により、エンジン2のクランクシャフト11と伝達ギヤ26とを一体回転可能に結合する係合状態と、その結合を解除する解放状態とに切り替えられる。ブレーキB1は、たとえば、油圧により、遊星歯車機構16のリングギヤ23を固定(制動)する係合状態と、その固定を解除し、リングギヤ23の回転を許容する解放状態とに切り替えられる。
ハイブリッドシステム1では、エンジン2の動力がエンジンギヤ12から発電機ギヤ14に入力され、発電機3により、発電機ギヤ14に入力されるエンジン2の動力が電力に変換される。
駆動モータ4の動力は、遊星歯車機構16および出力ギヤ32を介して、デファレンシャルギヤ33のリングギヤ35に伝達され、デファレンシャルギヤ33からドライブシャフト36を介して、ハイブリッドシステム1が搭載された車両の駆動輪37に伝達される。これにより、駆動輪37が回転し、車両が走行する。
<動力伝達モード>
図2は、ハイブリッドシステム1の各動力伝達モードにおけるブレーキB1、クラッチC1および駆動モータの状態を示す図である。図3は、遊星歯車機構16のサンギヤ21、キャリヤ22およびリングギヤ23の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。図2において、「○」は、クラッチC1およびブレーキB1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1およびブレーキB1が解放状態であることを示している。
ハイブリッドシステム1は、動力伝達モードとして、駆動モータ4の動力により車両が前進する「前進」モード、駆動モータ4の動力およびエンジン2の動力により車両が前進する「前進+直達」モード、駆動モータ4の動力により車両が後進する「後進」モード、ならびに駆動モータ4の動力およびエンジン2の動力により車両が後進する「後進+直達」モードを有している。
「前進」モードでは、クラッチC1が解放され、ブレーキB1が係合される。また、駆動モータ4が正転駆動される。クラッチC1の解放により、伝達ギヤ26は、エンジン2のクランクシャフト11の回転と無関係に自由に回転可能である。したがって、エンジン2の動力は、キャリヤギヤ25に伝達されない。また、ブレーキB1の係合により、遊星歯車機構16のリングギヤ23が固定されるので、駆動モータ4の動力によるサンギヤ21の回転は、図3に実線で示されるように、サンギヤ21の歯数とリングギヤ23の歯数との和でサンギヤ21の歯数を除して得られる除算値を変速比として、その変速比で減速されてキャリヤ22に伝達される。キャリヤ22に伝達される駆動モータ4の動力は、出力ギヤ32からデファレンシャルギヤ33に伝達され、デファレンシャルギヤ33からドライブシャフト36を介して駆動輪37に伝達される。これにより、車両が前進する。
「前進」モードでクラッチC1が係合されると、「前進」モードから「前進+直達」モードに切り替わる。クラッチC1の係合により、エンジン2のクランクシャフト11と伝達ギヤ26とが結合される。そのため、エンジン2が動作中であれば、エンジン2の動力は、伝達ギヤ26を介してキャリヤギヤ25に伝達される。そして、エンジン2の動力は、キャリヤギヤ25から出力ギヤ32を介してデファレンシャルギヤ33に伝達され、デファレンシャルギヤ33からドライブシャフト36を介して駆動輪37に伝達される。これにより、図3に二点鎖線で示されるように、駆動モータ4の動力がエンジン2の動力でアシストされる。
「後進」モードでは、クラッチC1が解放され、ブレーキB1が係合される。そして、駆動モータ4が逆転駆動(「前進」モード時とは逆方向に回転)される。クラッチC1の解放により、伝達ギヤ26は、エンジン2のクランクシャフト11の回転と無関係に自由に回転可能である。したがって、エンジン2の動力は、キャリヤギヤ25に伝達されない。また、ブレーキB1の係合により、遊星歯車機構16のリングギヤ23が固定されるので、駆動モータ4の動力により回転するサンギヤ21の回転は、「前進」モード時と逆回転であり、図3に破線で示されるように、サンギヤ21の歯数とリングギヤ23の歯数との和をサンギヤ21の歯数で除して得られる除算値を変速比として、その変速比で減速されてキャリヤ22に伝達される。キャリヤ22の回転方向が「前進」モード時と逆方向になるので、キャリヤ22から出力ギヤ32、デファレンシャルギヤ33およびドライブシャフト36を介して駆動輪37に伝達される回転(動力)も「前進」モード時と逆方向になり、車両が後進する。
「後進」モードでクラッチC1が係合されると、「後進」モードから「後進+直達」モードに切り替わる。クラッチC1の係合により、エンジン2のクランクシャフト11と伝達ギヤ26とが結合される。エンジン2は、停止されている。そのため、キャリヤ22の回転がキャリヤギヤ25を介して伝達ギヤ26に伝達され、伝達ギヤ26の回転がエンジンギヤ12を介して発電機ギヤ14に伝達される。発電機3により、発電機ギヤ14の回転を電力に変換することができる。
<作用効果>
以上のように、遊星歯車機構16のサンギヤ21に駆動モータ4の動力が入力され、リングギヤ23が固定されている。そのため、駆動モータ4の動力により回転するサンギヤ21の回転は、サンギヤ21の歯数とリングギヤ23の歯数との和でサンギヤ21の歯数を除して得られる除算値を変速比として、その変速比で減速されてキャリヤ22に伝達される。そして、キャリヤ22からデファレンシャルギヤ33に動力が伝達され、その動力がデファレンシャルギヤ33からドライブシャフト36を介して車両の駆動輪37に伝達される。これにより、駆動モータ4のトルクが増大されてデファレンシャルギヤ33に伝達されるので、最大出力が小さい小型の駆動モータ4であっても、大きな加速力を得ることができる。また、キャリヤ22と一体に回転するキャリヤギヤ25が設けられ、「前進+直達」モードでは、そのキャリヤギヤ25にエンジン2の動力が入力される。そのため、デファレンシャルギヤ33(駆動輪37)に伝達される駆動モータ4の動力をエンジン2の動力でアシストすることができる。
よって、小型の駆動モータ4であっても、ハイブリッドシステム1が搭載された車両の良好な走行性能を得ることができる。言い換えれば、ハイブリッドシステム1が搭載された車両の良好な走行性能を確保しながら、駆動モータ4の小型化を図ることができる。その結果、駆動モータ4の駆動用の電力を蓄えておくための電池の容量を低減することができる。
<ステップドピニオンギヤを採用した構成>
図4は、ハイブリッドシステム1の遊星歯車機構16にステップドピニオンギヤ51を採用した構成を示すスケルトン図である。図4において、図1に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略し、図4に示される構成について、図1に示される構成との相違点のみを説明する。
図4に示される構成では、遊星歯車機構16に、ステップドピニオンギヤ51が採用されている。ステップドピニオンギヤ51は、スモールピニオン52およびラージピニオン53を一体に有している。ラージピニオン53は、スモールピニオン52よりもギヤ径が大きく歯数が多い。ラージピニオン53は、サンギヤ21と噛合している。リングギヤ23は、複数個のステップドピニオンギヤ51のスモールピニオン52を一括して取り囲み、各スモールピニオン52と噛合している。
図5は、ステップドピニオンギヤ51が採用された遊星歯車機構16のサンギヤ21、キャリヤ22およびリングギヤ23の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。
ステップドピニオンギヤ51は、スモールピニオン52の歯数がラージピニオン53の歯数よりも小さいので、ステップドピニオンギヤ51が採用された構成では、図1に示される構成の場合(図5に点線で示す。)と比較して、遊星歯車機構16の変速比を大きく(ローギヤ化)することができる。
<ハイブリッドシステムの他の構成>
図6は、本発明の他の実施形態に係るハイブリッドシステム101のスケルトン図である。図6において、図1に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略し、ハイブリッドシステム101について、図1に示されるハイブリッドシステム1との相違点のみを説明する。
ハイブリッドシステム101では、駆動モータ4の回転軸15は、遊星歯車機構102に接続されている。遊星歯車機構102は、サンギヤ111、キャリヤ112およびリングギヤ113を備えている。サンギヤ111は、駆動モータ4の回転軸15と一体回転するように設けられている。キャリヤ112は、複数個のピニオンギヤ114を回転可能に支持している。複数個のピニオンギヤ114は、円周上に配置され、サンギヤ111と噛合している。リングギヤ113は、複数個のピニオンギヤ114を一括して取り囲む円環状を有し、各ピニオンギヤ114に回転径方向の外側から噛合している。
また、遊星歯車機構102は、リングギヤ113と一体回転するエクスターナルギヤ115を備えている。エクスターナルギヤ115には、伝達ギヤ26が噛合している。
さらに、キャリヤ112と一体回転するように、出力ギヤ32が設けられている。
そして、ハイブリッドシステム101には、図1に示されるブレーキB1に代えて、ツーウェイクラッチ116が設けられている。ハイブリッドシステム1が搭載される車両の車室内には、車両に対して車両の駐車(P)、後進(R)、中立(N)および前進(D)を指示するためのシフトレバー(セレクトレバー)が配設されている。ツーウェイクラッチ116は、駐車(P)または後進(R)が指示されているときに、リングギヤ113が駆動モータ4の正転方向と同方向に回転するのを阻止(正転ロック)し、中立(N)または前進(D)が指示されているときに、リングギヤ113が駆動モータ4の逆転方向と同方向に回転するのを阻止(逆転ロック)する。
<動力伝達モード>
図7は、ハイブリッドシステム101の各動力伝達モードにおけるクラッチC1、ツーウェイクラッチ116および駆動モータ4の状態を示す図である。図8は、遊星歯車機構102のサンギヤ111、キャリヤ112およびリングギヤ113の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。図7において、「○」は、クラッチC1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1が解放状態であることを示している。
ハイブリッドシステム101は、動力伝達モードとして、「前進Low」モード、「前進High」モードおよび「後進」モードを有している。
「前進Low」モードでは、クラッチC1が解放され、駆動モータ4が正転駆動される。クラッチC1の解放により、伝達ギヤ26は、エンジン2のクランクシャフト11の回転と無関係に自由に回転可能である。したがって、エンジン2の動力は、エクスターナルギヤ115に伝達されない。また、シフトレバーの操作により前進(D)が指示されているので、ツーウェイクラッチ116は、リングギヤ113が駆動モータ4の正転方向と逆方向に回転するのを阻止(逆転ロック)する。そのため、駆動モータ4の動力によるサンギヤ21の回転は、図8に実線で示されるように、サンギヤ111の歯数とリングギヤ113の歯数との和でサンギヤ111の歯数を除して得られる除算値を変速比として、その変速比で減速されてキャリヤ112に伝達される。キャリヤ112に伝達される駆動モータ4の動力は、出力ギヤ32からデファレンシャルギヤ33に伝達され、デファレンシャルギヤ33からドライブシャフト36を介して駆動輪37に伝達される。これにより、車両が前進する。
「前進Low」モードでクラッチC1が係合されると、「前進Low」モードから「前進High」モードに切り替わる。クラッチC1の係合により、エンジン2のクランクシャフト11と伝達ギヤ26とが結合される。そのため、エンジン2が動作中であれば、エンジン2の動力は、伝達ギヤ26を介してエクスターナルギヤ115に伝達される。これにより、遊星歯車機構102のリングギヤ113の回転数がつり上げられて、キャリヤ112の回転数が上昇し、遊星歯車機構102は、「前進Low」モードと比較してハイギヤードになる。
「後進」モードでは、クラッチC1が開放され、駆動モータ4が逆転駆動(「前進」モード時とは逆方向に回転)される。クラッチC1の開放により、伝達ギヤ26は、エンジン2のクランクシャフト11の回転と無関係に自由に回転可能である。したがって、エンジン2の動力は、エクスターナルギヤ115に伝達されない。また、シフトレバーの操作により後進(R)が指示されているので、ツーウェイクラッチ116は、リングギヤ113が駆動モータ4の正転方向と同方向に回転するのを阻止(正転ロック)する。そのため、駆動モータ4の動力によるサンギヤ111の回転は、「前進」モード時と逆回転であり、図8に破線で示されるように、サンギヤ111の歯数とリングギヤ113の歯数との和でサンギヤ111の歯数を除して得られる除算値を変速比として、その変速比で減速されてキャリヤ112に伝達される。キャリヤ112の回転方向が「前進」モード時と逆方向になるので、キャリヤ112から出力ギヤ32、デファレンシャルギヤ33およびドライブシャフト36を介して駆動輪37に伝達される回転(動力)も「前進」モード時と逆方向になり、車両が後進する。
<作用効果>
このハイブリッドシステム101の構成によっても、図1に示されるハイブリッドシステム1の構成と同様の作用効果を奏することができる。
<ワンウェイクラッチを採用した構成>
図9は、ハイブリッドシステム101にワンウェイクラッチ121を採用した構成を示すスケルトン図である。図9において、図6に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略し、図9に示される構成について、図6に示される構成との相違点のみを説明する。
図9に示される構成では、図6に示されるツーウェイクラッチ116に代えて、ワンウェイクラッチ121が採用されている。ワンウェイクラッチ121は、リングギヤ113が駆動モータ4の正転方向と逆方向に回転するのを阻止(逆転ロック)する。
<動力伝達モード>
図10は、ハイブリッドシステム101の各動力伝達モードにおけるクラッチC1、ワンウェイクラッチ121および駆動モータ4の状態を示す図である。図11は、遊星歯車機構102のサンギヤ111、キャリヤ112およびリングギヤ113の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。図10において、「○」は、クラッチC1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1が解放状態であることを示している。
ワンウェイクラッチ121は、リングギヤ113が駆動モータ4の正転方向と逆方向に回転するのを阻止するので、「前進Low」モードおよび「前進High」モードにおける各部の動作は、図6に示される構成と同じになる。
「後進」モードでは、クラッチC1が係合され、駆動モータ4が逆転駆動される。クラッチC1の係合により、エンジン2のクランクシャフト11と伝達ギヤ26とが結合される。そのため、エンジン2が動作中であれば、エンジン2の動力は、伝達ギヤ26を介してエクスターナルギヤ115に伝達される。遊星歯車機構102のキャリヤ112が駆動モータ4の逆転方向と同方向に回転するまで、エンジン2の動力が増大されて、リングギヤ113の回転数がつり上げられる。キャリヤ112の回転方向が駆動モータ4の逆転方向と同方向であると、キャリヤ112から出力ギヤ32、デファレンシャルギヤ33およびドライブシャフト36を介して駆動輪37に伝達される回転(動力)が「前進」モード時と逆方向になり、車両が後進する。
<ハイブリッドシステムのさらに他の構成>
図12は、本発明のさらに他の実施形態に係るハイブリッドシステム201のスケルトン図である。図12において、図1に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略し、ハイブリッドシステム201について、図1に示されるハイブリッドシステム1との相違点のみを説明する。
ハイブリッドシステム201には、図1に示されるハイブリッドシステム1の構成からクラッチC2が追加で設けられている。クラッチC2は、たとえば、油圧により、遊星歯車機構16のサンギヤ21とアウトプット軸31とを連結する係合状態と、その連結を解除する解放状態とに切り替えられる。
<動力伝達モード>
図13は、ハイブリッドシステム201の各動力伝達モードにおけるクラッチC1,C2、ブレーキB1および駆動モータの状態を示す図である。図14は、遊星歯車機構16のサンギヤ21、キャリヤ22およびリングギヤ23の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。図13において、「○」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が係合状態であることを示している。「×」は、クラッチC1,C2およびブレーキB1が解放状態であることを示している。
ハイブリッドシステム201は、動力伝達モードとして、「前進Low」モード、「前進High」モードおよび「後進」モードを有している。
「前進Low」モードでは、ブレーキB1およびクラッチC1が係合され、クラッチC2が解放される。また、駆動モータ4が正転駆動される。ブレーキB1の係合により、遊星歯車機構16のリングギヤ23が固定されるので、駆動モータ4の動力によるサンギヤ21の回転は、図14に実線で示されるように、サンギヤ21の歯数とリングギヤ23の歯数との和でサンギヤ21の歯数を除して得られる除算値を変速比として、その変速比で減速されてキャリヤ22に伝達される。キャリヤ22に伝達される駆動モータ4の動力は、出力ギヤ32からデファレンシャルギヤ33に伝達され、デファレンシャルギヤ33からドライブシャフト36を介して駆動輪37に伝達される。これにより、車両が前進する。
また、クラッチC1の係合により、エンジン2のクランクシャフト11と伝達ギヤ26とが結合される。そのため、エンジン2が動作中であれば、エンジン2の動力は、伝達ギヤ26を介してキャリヤギヤ25に伝達される。このとき、エンジン2の回転数は、たとえば、キャリヤ22の回転数を変動させないように制御される。そのため、エンジン2の動力によるトルクがキャリヤギヤ25から出力ギヤ32を介してデファレンシャルギヤ33に伝達され、デファレンシャルギヤ33からドライブシャフト36を介して駆動輪37に伝達される。
ハイブリッドシステム1を搭載した車両が「前進Low」モードで走行している状態から、ブレーキB1が解放され、クラッチC2が係合されることにより「前進Low」モードから「前進High」モードに切り替わる。ブレーキB1の解放により、遊星歯車機構16のリングギヤ23が回転可能になる。その状態でクラッチC2の係合が開始されると、キャリヤ22の回転数が上昇する。また、キャリヤ22の回転数の上昇に伴って、リングギヤ23の回転数が上昇する。そして、クラッチC2が完全係合すると、図14に二点鎖線で示されるように、キャリヤ22の回転数がサンギヤ21の回転数と一致し、リングギヤ23がサンギヤ21およびキャリヤ22と一体的に回転する。そのため、「前進High」モードでは、駆動モータ4の動力がローギヤードのときよりも小さい変速比で変速されて(具体的には、変速比1で変速されて、言い換えれば、変速されずに)キャリヤ22に伝達される。
「後進」モードでは、ブレーキB1が係合され、クラッチC1,C2が開放される。駆動モータ4が逆転駆動(「前進」モード時とは逆方向に回転)される。クラッチC1の開放により、伝達ギヤ26は、エンジン2のクランクシャフト11の回転と無関係に自由に回転可能である。したがって、エンジン2の動力は、エクスターナルギヤ115に伝達されない。また、ブレーキB1の係合により、遊星歯車機構16のリングギヤ23が固定されるので、駆動モータ4の動力によるサンギヤ21の回転は、「前進」モード時と逆回転であり、図14に破線で示されるように、サンギヤ21の歯数とリングギヤ23の歯数との和でサンギヤ21の歯数を除して得られる除算値を変速比として、その変速比で減速されてキャリヤ22に伝達される。キャリヤ22の回転方向が「前進」モード時と逆方向になるので、キャリヤ22から出力ギヤ32、デファレンシャルギヤ33およびドライブシャフト36を介して駆動輪37に伝達される回転(動力)も「前進」モード時と逆方向になり、車両が後進する。
<作用効果>
このハイブリッドシステム201の構成によっても、図1に示されるハイブリッドシステム1の構成と同様の作用効果を奏することができる。
<ハイブリッドシステムのさらに他の構成>
図15は、本発明のさらに他の実施形態に係るハイブリッドシステム301のスケルトン図である。図15において、図1に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、以下では、その同一の参照符号が付された部分の説明を省略し、ハイブリッドシステム301について、図1に示されるハイブリッドシステム1との相違点のみを説明する。
ハイブリッドシステム301では、駆動モータ4の回転軸15が遊星歯車機構16のキャリヤ22の回転中心に接続され、遊星歯車機構16のサンギヤ21の回転中心に、アウトプット軸31が接続されている。また、ハイブリッドシステム301では、図1に示されるキャリヤギヤ25に代えて、ドリブンギヤ311がアウトプット軸31に一体回転するように支持されており、ドリブンギヤ311に伝達ギヤ26が噛合している。
<動力伝達モード>
図16は、遊星歯車機構16のサンギヤ21、キャリヤ22およびリングギヤ23の回転数(回転速度)の関係を示す共線図である。
ハイブリッドシステム1は、動力伝達モードとして、駆動モータ4の動力により車両が前進する「前進」モード、駆動モータ4の動力およびエンジン2の動力により車両が前進する「前進+直達」モード、駆動モータ4の動力により車両が後進する「後進」モード、ならびに駆動モータ4の動力およびエンジン2の動力により車両が後進する「後進+直達」モードを有している。
「前進」モードでは、クラッチC1が解放され、ブレーキB1が係合される。また、駆動モータ4が正転駆動される。クラッチC1の解放により、伝達ギヤ26は、エンジン2のクランクシャフト11の回転と無関係に自由に回転可能である。したがって、エンジン2の動力は、ドリブンギヤ311に伝達されない。また、ブレーキB1の係合により、遊星歯車機構16のリングギヤ23が固定されるので、図16に実線で示されるように、駆動モータ4の動力によるキャリヤ22の回転が増速されてサンギヤ21に伝達される。サンギヤ21に伝達される駆動モータ4の動力は、出力ギヤ32からデファレンシャルギヤ33に伝達され、デファレンシャルギヤ33からドライブシャフト36を介して駆動輪37に伝達される。これにより、車両が前進する。
「前進」モードでクラッチC1が係合されると、「前進」モードから「前進+直達」モードに切り替わる。クラッチC1の係合により、エンジン2のクランクシャフト11と伝達ギヤ26とが結合される。そのため、エンジン2が動作中であれば、エンジン2の動力は、伝達ギヤ26を介してドリブンギヤ311に伝達される。そして、エンジン2の動力は、ドリブンギヤ311から出力ギヤ32を介してデファレンシャルギヤ33に伝達され、デファレンシャルギヤ33からドライブシャフト36を介して駆動輪37に伝達される。これにより、図16に二点鎖線で示されるように、駆動モータ4の動力がエンジン2の動力でアシストされる。
「後進」モードでは、クラッチC1が解放され、ブレーキB1が係合される。そして、駆動モータ4が逆転駆動(「前進」モード時とは逆方向に回転)される。クラッチC1の解放により、伝達ギヤ26は、エンジン2のクランクシャフト11の回転と無関係に自由に回転可能である。したがって、エンジン2の動力は、ドリブンギヤ311に伝達されない。また、ブレーキB1の係合により、遊星歯車機構16のリングギヤ23が固定されるので、駆動モータ4の動力により回転するサンギヤ21の回転は、図16に破線で示されるように、「前進」モード時と逆回転であり、増速されてキャリヤ22に伝達される。キャリヤ22の回転方向が「前進」モード時と逆方向になるので、キャリヤ22から出力ギヤ32、デファレンシャルギヤ33およびドライブシャフト36を介して駆動輪37に伝達される回転(動力)も「前進」モード時と逆方向になり、車両が後進する。
<作用効果>
ハイブリッドシステム301の構成によっても、ハイブリッドシステム1の構成と同様の作用効果を奏することができる。また、ハイブリッドシステム301の構成では、ハイブリッドシステム1の構成と比較して、最高回転数が低い小型の駆動モータであっても、駆動輪を高速回転させることができ、ハイブリッドシステム301が搭載された車両の最高速度を高めることができる。
<変形例>
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。また、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
1,101,201:ハイブリッドシステム
2:エンジン
3:発電機
4:駆動モータ
33:デファレンシャルギヤ
16,102:遊星歯車機構(変速機)
21:サンギヤ
22:キャリヤ
23:リングギヤ
25:キャリヤギヤ
51:ステップドピニオンギヤ
52:スモールピニオン
53:ラージピニオン

Claims (1)

  1. 車両に搭載されるハイブリッドシステムであって、
    エンジンと、
    前記エンジンの動力を電力に変換する発電機と、
    前記発電機の発電電力を使用して駆動され、前記車両の走行のための動力を出力する駆動モータと、
    デファレンシャルギヤと、
    サンギヤ、キャリヤおよびリングギヤを備える遊星歯車機構と、前記リングギヤの回転の許容および阻止を切り替える機構とを備え、前記リングギヤの回転の許容および阻止の切替によりハイギヤードとローギヤードとに選択的に設定され、前記エンジンの動力が前記キャリヤまたは前記リングギヤに入力され、前記駆動モータの動力が前記サンギヤに入力され、前記キャリヤから前記デファレンシャルギヤと噛合する出力ギヤに動力を出力する変速機とを含み、
    前記遊星歯車機構は、前記エンジンと前記デファレンシャルギヤとの間の動力の伝達経路上に単一であり、
    前記切り替える機構は、単一で前記リングギヤの回転の許容および阻止を切り替える、ハイブリッドシステム。
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