JP7073037B2 - 粒子製造装置、及び粒子製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、粒子製造装置、及び粒子製造方法に関する。
均一性を要する樹脂微粒子としては、電子写真用のトナー微粒子、液晶パネルのスペーサー粒子や、電子ペーパー用の着色微粒子、医薬品の薬剤担持体としての微粒子等があり、様々な用途で利用されている。
このような均一な微粒子を製造する方法としては、ソープフリー重合法など、液中で反応を誘起して均一な粒子径の樹脂微粒子を得る方法が知られている。このソープフリー重合法は、総じて小粒径の樹脂微粒子が得やすく、粒径分布がシャープ、形状が球形に近い等の利点がある。しかし、その反面、通常は水である溶媒中で樹脂微粒子から脱溶剤を行うため製造効率が悪い。また、重合過程に長時間を必要とし、さらに固化終了後溶媒と樹脂微粒子を分離し、その後洗浄・乾燥を繰り返す必要があり、その間多くの時間と、多量の水、エネルギーを必要とするなどの課題がある。
このような課題に対して、微粒子成分を有機溶媒に溶解または分散した液体を噴射して造粒する方法が知られている。この方法によれば、水を用いる必要が無いため、洗浄や乾燥といった工程を大幅に削減することができるため、重合法の欠点を回避することができる。液柱共鳴を利用した噴射造粒による微粒子及びトナー製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、液柱共鳴を利用した噴射造粒において、気流路内のレイノルズ数(Re)を4,000≦Re<10,000の範囲に制御することにより、粒子の気流路壁面への付着と粒子同士の結着を抑制することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、効率的かつ短時間にケーキ状ないしスラリ状の含液粉体を乾燥させる方法としてループ状の気流乾燥機を用いる方法が提案されている(例えば、特許文献3、及び4参照)。
本発明は、噴射造粒法で液滴を乾燥・固化することにより粒子を製造する粒子製造装置において、粒子の結着及び装置内壁面の粒子付着を抑制し、もって狭い粒径分布を有する粒子を高収率に製造する粒子製造装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
本発明の粒子製造装置は、
吐出孔から粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出手段と、前記液滴吐出手段により吐出された液滴を搬送気流によって搬送して固化させる搬送固化手段とを有する粒子製造装置であって、
前記搬送固化手段が、前記液滴及び前記搬送気流の流路となる搬送流路で、前記搬送流路の一部がループ形状部からなる搬送流路を有することを特徴とする。
本発明によると、噴射造粒法で液滴を乾燥・固化することにより粒子を製造する粒子製造装置において、粒子の結着及び装置内壁面の粒子付着を抑制し、もって狭い粒径分布を有する粒子を高収率に製造する粒子製造装置を提供することができる。
図1Aは、本発明の粒子製造装置の一例を示す概略構成図である。 図1Bは、本発明の粒子製造装置の他の一例を示す概略構成図である。 図2は、液柱共鳴液滴吐出手段の一例を示す断面図である。 図3Aは、吐出孔の構造の一例を示す概略図である。 図3Bは、吐出孔の構造の他の一例を示す概略図である。 図3Cは、吐出孔の構造の他の一例を示す概略図である。 図3Dは、吐出孔の構造の他の一例を示す概略図である。 図4Aは、N=1、片側固定端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。 図4Bは、N=2、両側固定端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。 図4Cは、N=2、両側開放端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。 図4Dは、N=3、片側固定端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。 図5Aは、N=4、両側固定端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。 図5Bは、N=4、両側開放端端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。 図5Cは、N=5、片側固定端端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。 図6Aは、液滴吐出時の液柱共鳴液室内の圧力波形と速度波形の一例を示す概略図である。 図6Bは、液滴吐出時の液柱共鳴液室内の圧力波形と速度波形の他の一例を示す概略図である。 図6Cは、液滴吐出時の液柱共鳴液室内の圧力波形と速度波形の他の一例を示す概略図である。 図6Dは、液滴吐出時の液柱共鳴液室内の圧力波形と速度波形の他の一例を示す概略図である。 図6Eは、液滴吐出時の液柱共鳴液室内の圧力波形と速度波形の他の一例を示す概略図である。 図7は、比較例の粒子製造装置を示す概略図である。
(粒子製造装置、粒子製造方法)
本発明の粒子製造装置は、吐出孔から粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出手段と、前記液滴吐出手段により吐出された液滴を搬送気流によって搬送して固化させる搬送固化手段とを有し、更に必要に応じて粒子捕集手段などを有する。
本発明の粒子製造方法は、吐出孔から粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出工程と、前記液滴吐出工程により吐出された液滴を搬送気流によって搬送して固化させる搬送固化工程とを有し、更に必要に応じて粒子捕集工程などを含む。
前記粒子製造方法は、前記粒子製造装置により好適に行うことができ、前記液滴吐出工程は、前記液滴吐出手段により好適に行うことができ、前記搬送固化工程は、前記搬送固化手段により好適に行うことができ、前記粒子捕集工程は、前記粒子捕集手段により好適に行うことができる。
前記搬送固化手段は、前記液滴及び前記搬送気流の流路となる搬送流路で、前記搬送流路の一部がループ形状部からなる搬送流路を有する。
上記特許文献1は、従来の重合法による製造方法にくらべると、製造効率が高く、省エネルギーで、粒径分布が狭い粒子を製造することができるが、気流路への粒子付着が発生し粒子の回収率が低下するという問題があった。また、未乾燥の粒子が気流路壁面へ付着することで、粒子同士が接着した結着粒子を発生させ、長時間の捕集では回収粒子の粒度分布が悪化するという問題があった。
上記特許文献2は、上記特許文献1にくらべると、粒子の気流路壁面への付着と粒子同士の結着をある程度抑制することができるが、粒子の量産性という観点からは不十分なレベルであり、粒子の結着による未乾燥粒子の発生や乾燥領域全般にわたる装置内壁面への粒子付着により、粒子の回収率低下や、装置の内壁面の洗浄性悪化という問題があった。
そこで、本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、搬送流路の一部をループ形状とし、吐出された液滴をループ形状の搬送流路内で乾燥・固化させると、結着粒子の発生、及び搬送流路の内壁面への粒子付着を効果的に抑制できることを見出した。
一方、上記特許文献3及び4では、ループ状の気流乾燥機を用いた粒子製造装置が記載されているが、上記特許文献3及び4における乾燥対象は、ケーキ状ないしスラリ状の含液粉体である。本発明では、粒子原料含有液の液滴である。本発明でいう液滴とスラリ状の含液粉体では、性状が全く異なっている。前記スラリ状の含液粉体は、目的とする粒子がすでに出来上がっている状態であり、あとはただ乾燥させるためだけにループ状の乾燥機に供される。一方、本発明の液滴は、粒子がまだ出来ている状態ではなく、乾燥を経て目的とする粒子が形成される。それゆえ、液滴状態では付着性が強いため、乾燥過程における粒子間の合着や装置内壁面への付着が問題となる。下記参考実験1において、装置内壁面で使用される材質の基板に対し、液滴とスラリ状の含液粉体における付着力を比較した。下記参考実験1で示されるように、スラリ状の含液粉体では、装置内壁面への付着は問題とならないが、本発明の液滴では、装置内壁面への付着は大きな問題となる。
本発明者は、液滴において生じる搬送流路の内壁面への粒子付着という液滴特有の問題に着目し、その問題を解決するのに、搬送流路の一部をループ形状とし、吐出された液滴をループ形状の搬送流路内で乾燥・固化させると、搬送流路の内壁面への粒子付着を効果的に抑制できることを見出した。
上記構成とする本発明の粒子製造装置は、粒子の結着及び装置内壁面の粒子付着を抑制し、もって狭い粒径分布を有する粒子を高収率に製造することができる。
<液滴吐出手段、液滴吐出工程>
前記液滴吐出手段は、吐出孔から粒子原料含有液を液滴として吐出する手段である。
前記液滴吐出工程は、吐出孔から粒子原料含有液を液滴として吐出する工程である。
前記液滴吐出手段は、以下で記載する液体供給手段から供給される粒子原料含有液を吐出し液滴化する液滴吐出ヘッドを1つもしくは複数配置し構成される。
本発明で用いる液滴吐出手段は、吐出する液滴の粒径分布が狭ければ、特に制限は無く、公知のものを用いることができる。液滴吐出手段としては、膜振動タイプ吐出手段、レイリー分裂タイプ吐出手段、液振動タイプ吐出手段、液柱共鳴吐出手段(液柱共鳴液滴吐出手段ともいう)等が挙げられ、膜振動タイプとしては、例えば特開2008-292976号公報、レイリー分裂タイプとしては特許第4647506号公報、液振動タイプとしては特開2010-102195号公報に記載されている。
また液柱共鳴液滴吐出手段は、トナーの生産性を確保するために複数の吐出孔が形成された液柱共鳴液室内の液体に振動を付与して液柱共鳴による定在波を形成し、該定在波の腹となる領域に形成された吐出孔から液体を吐出して液滴化するものである。吐出した液滴の粒径分布が非常に狭くなおかつ非常に生産性が高い特徴がある。特開2011-212668号公報に記載されている。
本発明で用いる液滴吐出手段は、これらのいずれかを用いるのが好ましい。
<<液柱共鳴液滴吐出手段>>
前記液柱共鳴液滴吐出手段について以下に説明する。
図2は、液柱共鳴液滴吐出手段11の概略断面図である。前記液柱共鳴液滴吐出手段11は、液共通供給路17及び液柱共鳴液室18を有する。前記液柱共鳴液室18は、長手方向の両端の壁面のうち一方の壁面に設けられた液共通供給路17と連通されている。また、前記液柱共鳴液室18は、両端の壁面と連結する壁面のうち一つの壁面に液滴21を吐出する吐出口19と、吐出口19と対向する壁面に設けられ、かつ液柱共鳴定在波を形成するために高周波振動を発生する振動発生手段20とを有する。なお、振動発生手段20には、図示していない高周波電源が接続している。
粒子原料含有液(以下、液体ともいう)14が充填されている液柱共鳴液室18内には、振動発生手段20によって発生する液柱共鳴定在波により圧力分布が形成される。そして、液柱共鳴定在波において振幅の大きな部分であって圧力変動が大きい、定在波の腹となる領域に配置されている吐出口19から液滴21が吐出される。この液柱共鳴による定在波の腹となる領域は、定在波の節以外の領域であり、定在波の圧力変動が液を吐出するのに十分な大きさの振幅を有する領域が好ましく、圧力定在波の振幅が極大になる位置(速度定在波としての節)から極小になる位置に向かって±1/4波長の領域がより好ましい。
定在波の腹になる領域であれば、吐出口が複数で開口されていても、それぞれからほぼ均一な液滴を形成することができ、更には効率的に液滴の吐出を行うことができ、吐出口の詰まりも生じ難くなる。
液滴21の吐出によって液柱共鳴液室18内の液体14の量が減少すると、液柱共鳴液室18内の液柱共鳴定在波の作用による吸引力が作用し、液共通供給路17から供給される液体14の流量が増加する。そして、液柱共鳴液室18内に液体14が補充される。そして、液柱共鳴液室18内に液体14が補充されると、液共通供給路17を通過する液体14の流量が元に戻る。
液柱共鳴液滴吐出手段11における液柱共鳴液室18は、金属やセラミックス、シリコーンなどの駆動周波数において液体の共鳴周波数に影響を与えない程度の高い剛性を持つ材質により形成されるフレームがそれぞれ接合されて形成されている。また、図2に示すように、液柱共鳴液室18の長手方向の両端の壁面間の長さLは、後述するような液柱共鳴原理に基づいて決定される。また、液柱共鳴液室18の幅Wは、液柱共鳴に余分な周波数を与えないように、液柱共鳴液室18の長さLの2分の1より小さいことが好ましい。更に、液柱共鳴液室18は、生産性を飛躍的に向上させるために1つの液滴形成ユニットに対して複数配置されていることが好ましい。液柱共鳴液室18の数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、操作性と生産性との両立の点から、100個以上2,000個以下が好ましい。また、液柱共鳴液室毎に、液供給のための流路が液共通供給路17から連通接続されており、液共通供給路17には複数の液柱共鳴液室18と連通している。
また、液柱共鳴液滴吐出手段11における振動発生手段20は所定の周波数で駆動できるものであれば特に制限はないが、圧電体を、弾性板9に貼りあわせた形態が好ましい。前記弾性板は、圧電体が接液しないように液柱共鳴液室の壁の一部を構成している。前記圧電体は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の圧電セラミックスなどが挙げられ、一般に変位量が小さいため積層して使用されることが多い。この他にも、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電ポリマーや、水晶、LiNbO、LiTaO、KNbO等の単結晶などが挙げられる。更に、振動発生手段20は、1つの液柱共鳴液室毎に個別に制御できるように配置されていることが好ましい。また、上記の1つの材質のブロック状の振動部材を液柱共鳴液室の配置にあわせて、一部切断し、弾性板を介してそれぞれの液柱共鳴液室を個別制御できるような構成が好ましい。
前記吐出口19の開口部の直径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1μm以上40μm以下が好ましい。前記直径が、1μm以上であると、形成される液滴が非常に小さくなることを抑制でき、微粒子を得やすくなり、また、微粒子の構成成分として顔料等の固形粒子が含有された構成の場合でも吐出口において閉塞を頻繁に発生して生産性が低下することを防止できる。また、40μm以下であると、液滴の直径が大きくなることを抑制でき、これを乾燥させて、所望の粒径3μm以上6μm以下を得る場合、溶媒により微粒子組成を非常に希薄な液に希釈する必要がなく、一定量の微粒子を得るために乾燥エネルギーが大量に必要になることを防止できる。
また、吐出口19の開口を多数設けることができ、生産効率が高くなる点から、吐出口19を液柱共鳴液室18内の幅方向に設ける構成を採用することが好ましい。また、吐出口19の開口配置によって液柱共鳴周波数が変動するため、液柱共鳴周波数は液滴の吐出を確認して適宜決定することが望ましい。
図3A~図3Dは、吐出孔の構造の一例を示す概略図である。図3A~図3Dに示すように、吐出孔の断面形状は吐出孔の接液面(入口)から吐出口(出口)に向かって開口径が小さくなるようなテーパー形状として記載されているが、適宜断面形状を選択することができる。
図3Aは、吐出孔の接液面から吐出口19に向かってラウンド形状を持ちながら開口径が狭くなるような形状を有しており、吐出口において液にかかる圧力が最大となるため、吐出の安定化に際しては最も好ましい形状である。
図3Bは、吐出孔の接液面から吐出口19に向かって一定の角度を持って開口径が狭くなるような形状を有しており、このノズル角度24は、適宜変更することができる。図3Aの形状と同様に、このノズル角度によって吐出口付近において液にかかる圧力を高めることができる。前記ノズル角度24としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60°以上90°以下が好ましい。前記ノズル角度が、60°以上であると、液に圧力がかかりやすく、更に加工もしやすくなる。前記ノズル角度24が、90°以下であると、吐出孔の出口付近で圧力がかかるため、液滴吐出を安定化することができる。したがって、前記ノズル角度24としては、90°(図3Cに相当する)を最大値とすることが好ましい。
図3Dは、図3Aと図3Bとを組み合わせた形状である。このように段階的に形状を変更してもよい。
次に、液柱共鳴における液滴形成ユニット(液滴吐出手段を含む液滴を形成するためのユニット)による液滴形成のメカニズムについて説明する。
先ず、図2の液柱共鳴液滴吐出手段11内の液柱共鳴液室18において生じる液柱共鳴現象の原理について説明する。
液柱共鳴液室内の液体の音速をcとし、振動発生手段20から媒質である液体に与えられた駆動周波数をfとした場合、液体の共鳴が発生する波長λは、下記式1で表される。
λ=c/f ・・・(式1)
また、図2の液柱共鳴液室18において固定端側のフレームの端部から液共通供給路17側の端部までの長さをLとする。そして、液共通供給路17側のフレームの端部の高さh1(約80μm)は連通口の高さh2(約40μm)の約2倍あり、当該端部が閉じている固定端と等価であるとする。このような両側固定端の場合には、長さLが波長λの4分の1の偶数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、次の式2で表される。
L=(N/4)λ ・・・(式2)
ただし、式2中、Lは、液柱共鳴液室の長手方向の長さを表し、Nは、偶数を表し、λは、液体の共鳴が発生する波長を表す。
更に、両端が完全に開いている両側開放端の場合にも前記式2が成り立つ。
同様にして、片方側が圧力の逃げ部がある開放端と等価で、他方側が閉じている(固定端)の場合、つまり片側固定端又は片側開放端の場合には、長さLが波長λの4分の1の奇数倍に一致する場合に共鳴が最も効率的に形成される。つまり、前記式2のNが奇数で表現される。
最も効率の高い駆動周波数fは、前記式1及び前記式2より、下記式3が導かれる。
f=N×c/(4L) ・・・(式3)
ただし、前記式3中、Lは、液柱共鳴液室の長手方向の長さを表し、cは、粒子原料含有液(トナー成分液)の音波の速度を表し、Nは、自然数を表す。
しかし、実際には、液体は共鳴を減衰させる粘性を持つために無限に振動が増幅されるわけではなく、Q値を持ち、後述する式4、式5に示すように、式3に示す最も効率の高い駆動周波数fの近傍の周波数でも共鳴は発生する。
図4Aは、N=1、片側固定端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。図4Bは、N=2、両側固定端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。図4Cは、N=2、両側開放端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。図4Dは、N=3、片側固定端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。また、図5Aは、N=4、両側固定端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。図5Bは、N=4、両側開放端端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。図5Cは、N=5、片側固定端端の場合の速度及び圧力変動の定在波を示す概略図である。図4及び図5において、実線は速度分布を表し、破線は圧力分布を表す。本来は、疎密波(縦波)であるが、図4A~図4D及び図5A~図5Cのように、表記することが一般的である。実線が速度定在波、点線が圧力定在波である。例えば、N=1の片側固定端の場合を示す図4Aから分かるように、速度分布の場合閉口端において速度分布の振幅がゼロとなり、開口端で振幅が最大となり、直感的にわかりやすい。液柱共鳴液室の長手方向の両端の間の長さをLとしたとき、液体が液柱共鳴する波長をλとし、整数Nが1~5の場合に定在波が最も効率よく発生する。また、両端の開閉状態によっても定在波パターンは異なるため、それらも併記した。後述するが、吐出口の開口や供給側の開口の状態によって、端部の条件が決まる。
なお、音響学において、開口端とは、媒質の移動速度が極大となり、逆に圧力はゼロとなる端を意味すし、閉口端とは、長手方向の媒質(液)の移動速度がゼロとなり、逆に圧力は極大となる端を意味する。閉口端は音響的に硬い壁として考え、波の反射が発生する。理想的に完全に閉口、もしくは開口している場合は、波の重ね合わせによって図4A~図4D及び図5A~図5Cのような形態の共鳴定在波を生じる。しかし、吐出口の数や開口位置によっても定在波のパターンは変動し、前記式3より求めた位置からずれた位置に共鳴周波数が現れる。この場合には、適宜駆動周波数を調整することにより安定吐出条件を作り出すことができる。例えば、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmを用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と完全に等価のN=2の共鳴モードを用いた場合、前記式2より、最も効率の高い共鳴周波数は324kHzと導かれる。他の例では、液体の音速cが1,200m/s、液柱共鳴液室の長さLが1.85mmと、上記と同じ条件を用い、両端に壁面が存在して、両側固定端と等価のN=4の共鳴モードを用いた場合、前記式2より、最も効率の高い共鳴周波数は648kHzと導かれる。このように同じ構成の液柱共鳴液室においても、より高次の共鳴を利用することができる。
図2に示す液柱共鳴液滴吐出手段11における液柱共鳴液室は、両端が閉口端状態と等価であるか、吐出口の開口の影響で、音響的に軟らかい壁として説明できるような端部であることが周波数を高めるためには好ましいが、それに限らず開放端であってもよい。ここでの吐出口の開口の影響とは、音響インピーダンスが小さくなり、特にコンプライアンス成分が大きくなることを意味する。よって、図4B及び図5Aのような液柱共鳴液室の長手方向の両端に壁面を形成する構成は、両側固定端の共鳴モード、そして吐出口側が開口とみなす片側開放端の全ての共鳴モードが利用できる点から好ましい。
また、吐出口の開口数、開口配置位置、吐出口の断面形状も駆動周波数を決定する因子となり、駆動周波数はこれに応じて適宜決定することができる。例えば、吐出口の数を多くすると、徐々に固定端であった液柱共鳴液室の先端の拘束が緩くなり、ほぼ開口端に近い共鳴定在波が発生し、駆動周波数は高くなる。更に、最も液供給路側に存在する吐出口の開口配置位置を起点に緩い拘束条件となり、また吐出口の断面形状がラウンド形状となったりフレームの厚みによる吐出口の体積が変動したり、実際上の定在波は短波長となり、駆動周波数よりも高くなる。このように決定された駆動周波数で振動発生手段に電圧を与えたとき、振動発生手段が変形し、駆動周波数にて最も効率よく共鳴定在波を発生する。また、共鳴定在波が最も効率よく発生する駆動周波数の近傍の周波数でも液柱共鳴定在波は発生する。つまり、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さをL、液供給側の端部に最も近い吐出口までの距離をLeとする。このとき、L及びLeの両方の長さを用いて下記式4及び式5で決定される範囲の駆動周波数fを主成分とした駆動波形を用いて振動発生手段を振動させ、液柱共鳴を誘起して液滴を吐出口から吐出することが可能である。
N×c/(4L)≦f≦N×c/(4Le) ・・・(式4)
N×c/(4L)≦f≦(N+1)×c/(4Le) ・・・(式5)
ただし、前記式4及び前記式5中、Lは、液柱共鳴液室の長手方向の長さを表し、Leは、液供給路側の端部と、該端部に最も近い吐出孔の中心部との距離を表し、cは、液体の音波の速度を表し、Nは、自然数を表す。
なお、液柱共鳴液室の長手方向の両端間の長さLと、液供給側の端部に最も近い吐出口までの距離Leの比(L/Le)が、下記式6を満たすことが好ましい。
Le/L>0.6 ・・・(式6)
以上説明した液柱共鳴現象の原理を用いて、図2の液柱共鳴液室18において液柱共鳴圧力定在波が形成され、液柱共鳴液室18の一部に配置された吐出口19において連続的に液滴吐出が発生する。なお、定在波の圧力が最も大きく変動する位置に吐出口19を配置すると、吐出効率が高くなり、低い電圧で駆動することができる点から好ましい。また、吐出口19の個数としては、1つの液柱共鳴液室18に1つでもよいが、2つ以上である(複数個配置する)ことが生産性の点から好ましく、具体的には、2個以上100個以下が好ましい。前記吐出口の個数が、2個以上であると、生産性を向上でき、100個以下であると、吐出口19から所望の液滴を形成させる際に、振動発生手段20に与える電圧を低く抑えることができ、振動発生手段20としての圧電体の挙動を安定させることができる。
また、複数の吐出口19を有する場合、吐出口間のピッチ(隣接する吐出孔の中心部間の最短間隔)としては、20μm以上、液柱共鳴液室の長さ以下が好ましい。前記吐出口間のピッチが、20μm以上であると、隣り合う吐出口より放出された液滴同士が衝突して大きな滴となってしまう確率を低くすることができ、微粒子の粒径分布を良好にすることができる。
次に、液滴形成ユニットにおける液滴吐出ヘッド内の液柱共鳴液室で生じる液柱共鳴現象の様子について図6を用いて説明する。なお、図6において、液柱共鳴液室内に記した実線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における速度をプロットした速度分布を示し、液共通供給路側から液柱共鳴液室への方向を+とし、その逆方向を-とする。また、液柱共鳴液室内に記した点線は液柱共鳴液室内の固定端側から液共通供給路側の端部までの間の任意の各測定位置における圧力値をプロットした圧力分布を示し、大気圧に対して正圧を「+」とし、負圧は「-」とする。また、正圧であれば図中の下方向に圧力が加わることになり、負圧であれば図中の上方向に圧力が加わることになる。更に、図6において、上述したように液共通供給路側が開放されているが液共通供給路17と液柱共鳴液室18とが連通する開口の高さ(図2に示す高さh2)に比して固定端となるフレームの高さ(図2に示す高さh1)が約2倍以上である。このため、図6では、液柱共鳴液室18がほぼ両側固定端であるという近似的な条件のもとでの速度分布及び圧力分布の時間的なそれぞれの変化を示している。図6において、実線は速度分布を表し、破線は圧力分布を表す。
液柱共鳴液滴吐出手段の液柱共鳴流路で生じる液柱共鳴現象の様子の他の一例を示す概略図である。
図6Aは、液滴吐出時の液柱共鳴液室18内の圧力波形と速度波形を示している。また、図6Bは、液滴吐出直後の液引き込みを行った後再びメニスカス圧が増加してくる。これらの図6A、及び図6Bに示すように、液柱共鳴液室18における吐出口19が設けられている流路内での圧力は極大となっている。その後、図6Cに示すように、吐出口19付近の正の圧力は小さくなり、負圧の方向へ移行して液滴21が吐出される。
そして、図6Dに示すように、吐出口19付近の圧力は極小になる。このときから液柱共鳴液室18への液体14の充填が始まる。その後、図6Eに示すように、吐出口19付近の負の圧力は小さくなり、正圧の方向へ移行する。この時点で、液体14の充填が終了する。そして、再び、図6Aに示すように、液柱共鳴液室18の液滴吐出領域の正の圧力が極大となって、吐出口19から液滴21が吐出される。このように、液柱共鳴液室内には振動発生手段の高周波駆動によって液柱共鳴による定在波が発生する。そして、圧力が最も大きく変動する位置となる液柱共鳴による定在波の腹に相当する液滴吐出領域に吐出口19が配置されていることから、当該腹の周期に応じて液滴21が吐出口19から連続的に吐出される。
次に、実際に液柱共鳴現象によって液滴が吐出された構成の一例について説明する。この一例は、図2において液柱共鳴液室18の長手方向の両端間の長さLが1.85mm、N=2の共鳴モードであって、第一から第四の吐出孔がN=2モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置し、駆動周波数を330kHzのサイン波で行った。なお、吐出孔の開口部の直径は10μmであり、レーザーシャドウグラフィ法にて観察を行った結果、非常に径の揃った、速度もほぼ揃った液滴の吐出が実現していた。吐出は非常に径の揃った、速度もほぼ揃った液滴の吐出が実現していた。また、第一~第四のノズルにおいて駆動周波数が330kHz付近では各ノズルからの吐出速度が均一となって、かつ最大吐出速度となっていた。この結果から、液柱共鳴周波数の第二モードである330kHzにおいて、液柱共鳴定在波の腹の位置で均一吐出が実現していることがわかる。
<<液滴>>
本発明において、前記液滴は、固形分となる物質が液体の状態である物をいい。溶媒に溶解しているものや固形分となる物質が溶融により液状であるものをいう。これは、スラリーでは固形分となる物質が溶媒に溶けず不均一に分散し、ろ過によって分離できるものと区別される。
<<粒子原料含有液>>
前記粒子原料含有液としては、溶媒に前記原料が溶解した状態のもの、前記原料が分散した状態のもの、又は吐出させる条件下で液体の状態のものであれば溶媒を含まなくてもよく、粒子成分の一部または全てが溶融している状態で液体状態を呈しているものであってもよい。
前記原料としては、特に制限はなく、目的に粒子に応じて適宜選択することができ、例えば、目的とする粒子としては、電子写真用のトナー粒子、液晶パネルのスペーサー粒子、電子ペーパー用の着色粒子、医薬品の薬剤担持体としての粒子等が挙げられる。
<<<トナー成分液>>>
前記粒子原料含有液として、好ましくはトナー成分液を使用することができる。
前記トナー成分液としては、少なくとも樹脂、着色剤およびワックスを含有し、必要に応じて、各種添加剤を含有する。
トナー成分液は前記トナー成分が溶媒に溶解もしくは分散させた液体状態であるか、または吐出させる条件下で液体であれば溶媒を含まなくてもよく、トナー成分の一部または全てが溶融した状態で混合され液体状態を呈しているものであってもよい。
トナー材料としては、前記のトナー成分液を調整することが出来れば、従来の電子写真用トナーと全く同じものが使用できる。これを前記のように液滴吐出手段より微小液滴とし、搬送固化手段を経て、粒子捕集手段により固化粒子を捕集すれば、目的とするトナー粒子を得ることができる。
[樹脂]
前記樹脂としては、少なくとも結着樹脂が挙げられる。
前記結着樹脂としては、特に制限はなく、通常使用される樹脂を適宜選択して使用することができるが、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体等のビニル重合体、これらの単量体又は2種類以上からなる共重合体、ポリエステル系重合体、ポリオール樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、石油系樹脂、などが挙げられる。
前記結着樹脂の性状としては溶媒に溶解することが望ましく、この特徴を除けば従来公知の性能を持っていることが望ましい。
-結着樹脂の分子量分布-
結着樹脂のGPC(ゲルパーメンテーションクロマトグラフィ)による分子量分布で、分子量3千~5万の領域に少なくとも1つのピークが存在するのが、トナーの定着性、耐オフセット性の点で好ましく、また、THF可溶分としては、分子量10万以下の成分が60%~100%となるような結着樹脂も好ましく、分子量5千~2万の領域に少なくとも1つのピークが存在する結着樹脂がより好ましい。
-結着樹脂の酸価-
結着樹脂の酸価が0.1mgKOH/g~50mgKOH/gを有する樹脂を60質量%以上有するものが好ましい。本発明において、トナー組成物の結着樹脂成分の酸価は、JIS K-0070に準じて測定したものである。
[着色剤]
前記着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される着色剤を適宜選択して使用することができる。
前記着色剤の含有量としては、トナーに対して1質量%~15質量%が好ましく、3質量%~10質量%がより好ましい。
前記着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチは顔料を予め分散させるためのものであり、顔料の充分な分散が得られていれば用いなくてもよい。マスターバッチは一般的に顔料と樹脂とを高せん断をかけることで樹脂中に顔料を分散させたものである。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー用の樹脂としては、従来公知のものを使用することが出来る。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
前記マスターバッチの使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部~20質量部が好ましい。
マスターバッチ製造時に顔料の分散性を高めるために分散剤を用いてもよい。顔料分散性の点で、結着樹脂との相溶性が高いことが好ましく、従来公知のものを用いることができ、具体的な市販品としては、「アジスパーPB821」、「アジスパーPB822」(味の素ファインテクノ社製)、「Disperbyk-2001」(ビックケミー社製)、「EFKA-4010」(EFKA社製)、などが挙げられる。
前記分散剤の添加量は、着色剤100質量部に対して1質量部~200質量部であることが好ましく、5質量部~80質量部であることがより好ましい。1質量部以上であれば分散能が良好であり、200質量部以下であれば帯電性が良好に保たれる。
[ワックス]
前記ワックスとしては、特に制限はなく、通常使用されるものを適宜選択して使用することができ、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合体、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、オゾケライト、セレシン、ペテロラタム等の鉱物系ワックス、モンタン酸エステルワックス、カスターワックスの等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類。脱酸カルナバワックスの等の脂肪酸エステルを一部又は全部を脱酸化したもの、などが挙げられる。
前記ワックスの融点としては、定着性と耐オフセット性のバランスを取るために、70℃~140℃であることが好ましく、70℃~120℃であることがより好ましい。70℃以上であれば、耐ブロッキング性を良好に保つことができ、140℃以下であれば、耐オフセット効果を良好に維持することができる。
前記ワックスの総含有量としては、結着樹脂100質量部に対し、0.2質量部~20質量部が好ましく、0.5質量部~10質量部がより好ましい。
本発明では、DSC(ディファレンシャルスキャニングカロリメトリー)において測定されるワックスの吸熱ピークの最大ピークのピークトップの温度をもってワックスの融点とする。
前記ワックス又はトナーのDSC測定機器としては、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましい。測定方法としては、ASTM D3418-82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、1回昇温、降温させ前履歴を取った後、温度速度10[℃/min]で、昇温させた時に測定されるものを用いる。
[添加剤]
本発明に係るトナーには、他の添加剤として、静電潜像担持体・キャリアの保護、クリーニング性の向上、熱特性・電気特性・物理特性の調整、抵抗調整、軟化点調整、定着率向上等を目的として、各種金属石けん、フッ素系界面活性剤、フタル酸ジオクチルや、導電性付与剤として酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化アンチモン等や、酸化チタン、酸化アルミニウム、アルミナ等の無機微粉体などを必要に応じて添加することができる。これらの無機微粉体は、必要に応じて疎水化してもよい。また、ポリテトラフルオロエチレン、ステアリン酸亜鉛、ポリフッ化ビニリデン等の滑剤、酸化セシウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム等の研磨剤、ケーキング防止剤、更に、トナー粒子と逆極性の白色微粒子及び黒色微粒子とを、現像性向上剤として少量用いることもできる。
これらの添加剤は、帯電量コントロール等の目的でその表面をシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シランカップリング剤、官能基を有するシランカップリング剤、その他の有機ケイ素化合物等の処理剤、又は種々の処理剤で処理することも好ましい。
前記添加剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。前記無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、等公知のものを使用できる。
この他、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような添加剤は、表面処理剤により、疎水性を上げ、高湿度下においても添加剤自身の劣化を防止することができる。前記表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル、などが好適に挙げられる。
前記添加剤の一次粒子径としては、5nm~2μmであることが好ましく、5nm~500nmであることがより好ましい。また、BET法による比表面積としては、20~500m/gであることが好ましい。無機微粒子の使用割合としては、トナーの0.01質量%~5質量%であることが好ましく、0.01質量%~2.0質量%であることがより好ましい。
<搬送固化手段、搬送固化工程>
前記搬送固化手段は、液滴吐出手段により吐出された液滴を搬送気流によって搬送して固化させる手段である。
前記搬送固化工程は、液滴吐出工程により吐出された液滴を搬送気流によって搬送して固化させる工程である。
吐出した液滴は、前記搬送固化手段により乾燥され、粒子が形成される。具体的には、搬送気流発生手段によって発生する搬送気流により、液滴は、吐出された直後の液体の状態から、徐々に粒子原料含有液中に含まれる揮発成分が揮発することで乾燥が進行し、液滴は液体から固体粒子に変化する。
溶媒の乾燥にあたっては、搬送気流の温度や蒸気圧、気体種類等を適宜選定して乾燥状態を調整することができる。
前記搬送固化手段は、前記液滴及び前記搬送気流の流路となる搬送流路を有する。
前記搬送固化工程は、前記液滴及び前記搬送気流の流路となる搬送流路を用いる。
前記搬送流路の一部は、ループ形状からなるループ形状部を有する。
前記液滴をループ形状からなる搬送流路を通過させることにより、搬送流路内での粒子の結着、及び搬送流路の内壁面への粒子付着を効果的に防止することができる。
また、前記搬送流路は、前記ループ形状部へ入る際の前記液滴の粉体固形分濃度を90%以上に乾燥させるためのループ前乾燥部を有しているとより好ましい。
前記ループ前乾燥部は、前記液滴吐出手段と前記ループ形状部の間に配置されている。
<<搬送流路>>
前記搬送流路内を流れている気流は、整流器を通した整流であることが好ましい。ここで、整流器としては、例えば、ハニカム構造の整流器などが挙げられる。
また、前記搬送流路は、液滴吐出手段から吐出された液滴同士が合一するのを防止するため合一防止手段を有していることが好ましい。
-合一防止手段-
液滴吐出手段から吐出された液滴同士が乾燥前に接触すると、液滴同士が合体し一つの液滴になってしまう(この現象を合一という)。このような液滴の合一が発生すると、固化した粒子の粒度分布は広いものになってしまう。このため、狭い粒度分布の粒子を捕集するためには、液滴の合一は望ましくない。
しかしながら、合一防止の手段を講じない場合、液滴吐出手段から吐出された液滴は吐出直後においては一定の初速度を持っているが、周囲の気体の流体抵抗により徐々に減速してしまう。これにより、後から吐出した液滴が先に吐出した液滴に追いついてしまい、結果として合一してしまう。また、隣接する吐出孔から吐出した液滴が固化する前に接触してしまった場合、同様に液滴同士が合一してしまう。
したがって、均一な粒径分布の固化粒子を得るためには、吐出された液滴同士の距離を十分に保ち、合一を防止する必要がある。
合一防止手段としては、液滴吐出付近での搬送気流の導入や、液滴への同一極性の帯電、および電界制御等が挙げられる。
中でも合一防止手段として、液滴吐出方向に対して略直行する搬送気流を導入する方法が簡易な構造で合一を低減する効果が大きくて好ましい。液滴吐出手段から吐出された液滴は、搬送気流により飛翔方向を曲げられながら気流により搬送される。これにより、液滴が空気抵抗によって減速されるのを抑制できる。さらに飛翔方向が変わるときに液滴が拡散し、液滴間隔を広くすることができる。このため液敵同士の合一が抑制され、シャープな粒度分布の粒子を捕集することができる。
合一防止のための搬送気流の導入では、搬送気流を形成するため吐出方向の直行する気流路を形成する。
搬送気流の速度は、速すぎると強い乱流になり、液滴が飛び散り装置内壁への付着が増えてしまう。又、遅すぎると粒子が乾燥し難くなり、粒子の合一や装置内壁への付着が増える。
この為、搬送気流の条件は、気流のレイノルズ数(Re)で3,000から10,000の範囲が好ましく、7,000がより好ましい。
搬送流路の形状は、レイノルズ数が上記好ましい範囲であれば、どのような形状でもよく、円形や四角形でもよく、また、搬送流路の中間部に流路幅が拡大した部分が存在していても構わない。
-レイノルズ数-
ここで、レイノルズ数は、下記式(7)で表される。
Figure 0007073037000001
v:物体の流れに対する相対的な平均速度(搬送気流量[m/s]/気流路断面積[m])[m/s]
L:代表線形寸法(円柱の場合は直径)[m]
μ:流体の粘度[Pa・s]
ρ:流体の密度[kg/m
レイノルズ数は、上記式(7)に示されたとおり、液滴の流れに対する相対的な平均速度すなわち搬送気流の速度と、搬送流路の代表線形寸法(円柱形の場合は内径)、及び液滴を搬送する流体の粘度と密度により決まる。
そのためレイノルズ数は、搬送気流速度、搬送流路の線形寸法、流体種により制御可能である。
前記搬送流路の形状や大きさには、特に制限はなく、使用される粒子原料含有液の種類や、搬送流路内を流れる気体の種類等の条件により適宜選択することができるが、例えば、流路の高さとして10mm~300mmであるとよい。
また、前記ループ形状部の大きさとしては、特に制限はなく、使用される粒子原料含有液の種類や、搬送流路内を流れる気体の種類等の条件により適宜選択することができるが、例えば、全周の長さが1,000mm~6,000mmであるとよい。
<<ループ前乾燥部>>
前記ループ前乾燥部とは、前記液滴吐出手段により吐出された液滴が、ループ形状の搬送流路へ入る前に、液滴をある所望の範囲まで乾燥させるために設けられている搬送流路である。図1(図1A及び図1Bをまとめて図1ともいう)では、符号aの部分で表されている。このループ前乾燥部における搬送流路の長さや搬送流路内の気流をコントロールすることにより、液滴を所望の範囲にまで乾燥させることができる。前記液滴は、粘度が低いため、吐出された液滴をすぐにループ形状の搬送流路へ供給すると、ループ内の気流に液滴が潰されてしまう可能性がある。そこで、ループ形状の搬送流路へ供給する前に、ループ前乾燥部を設け、液滴の予備的乾燥を図る領域を確保するとよい。ループ前乾燥部の具体的な態様としては、直線の搬送流路である。
前記ループ前乾燥部から前記ループ形状部へ液滴を供給する際の前記液滴の乾燥度としては、液滴の粉体固形分濃度が、90%以上であることが好ましい。
前記固形分濃度が低い場合、ループ内における循環気流に押され粒子がループ配管の外周部に付着し、粒子の回収率が低下する場合がある。固形分濃度90%以上になるようにループ前乾燥部の搬送流路の長さを調整することが好ましい。
<<<液滴の粉体固形分濃度の測定>>>
液滴の粉体固形分濃度は、捕集した粒子1gを1mg単位まで精秤し、
これを120℃で1時間加熱して得た固形分重量を精秤し、固形分重量を捕集粒子重量で除して求めることができる。
また、ループ部直前にサンプル捕集口を設け、ここから出る気体及び粒子をアズワン社製ガラスサイクロンに接続し粒子を取り出すことにより、ループ形状部へ入る直前の液滴の粉体固形分濃度を測定した。
また、前記ループ形状部へ好ましい乾燥度の液滴を供給するためには、前記ループ前乾燥部における前記搬送流路内の気流のレイノルズ数(Re)は、上述したとおり3,000から10,000の範囲が好ましく、7,000がより好ましい。
また、前記ループ前乾燥部の長さとしては、特に制限はなく、使用される粒子原料含有液の種類や、搬送流路内を流れる気体の種類等の条件により適宜選択することができるが、例えば、100mm~500mmであるとよい。
<<ループ形状部における搬送気流排出口>>
前記ループ形状部には、前記固化した液滴を取り出すための搬送気流排出口(気流出口ともいう)が設けられている。係る気流出口は、一つ設けられていても、複数設けられていてもよい。
乾燥された液滴から液滴噴出時に発生したサテライト滴を効果的に分離するためには、搬送気流排出口が二つ以上設けられているとよい。ここで、サテライト滴とは、ノズルから、射出され液滴の主滴から分離してでる小液滴のことをいう。
噴射時に発生するサテライト粒子を効果的に分離することで、より狭い粒径分布を有する粒子を高収率に製造することができる。
ループ形状部に二つ以上の気流出口を設ける場合、前記搬送気流が搬送される気流方向に対し最初に形成される第一の気流出口の向きは、ループ形状の中心方向を向いていることが好ましい。
例えば、気流方向に対し最初に形成される第一の気流出口は、ループ形状の上部から下部へ戻るループの曲がり部直後に設置する。気流出口の向きは、小液滴であるサテライト粒子を分離するため、液滴に強い遠心力を加える必要があることから、ループ形状の中心方向を向いているとよい。
気流方向に対し、第一の気流出口の次に形成される第二の気流出口は、第一の気流出口の直後に第一の気流出口と重ならない位置に設置するのが好ましい。第二の気流出口の向きは、特に制限はないが、第一の気流出口を流れる気流によって、粒子に遠心力が働いており、第二の気流出口付近では、ループ形状の外側付近に粒子が多く存在しているため、できればループ形状の中心方向とは反対の外側方向に向いているのがよい。
気流出口を二つ以上設けることで、最初に設けられた第一の気流出口からサテライト粒子を分離することができ、サテライト滴が除かれた固化粒子のみを捕集することで、より狭い粒径分布の粒子のみを高収率に得ることができる。
ループ形状部に二つ以上の気流出口が設けられている場合、第一の気流出口からサテライト粒子が出て、第二の気流出口からそれ以外の粒子が出るように、ループ内の循環気流速度を調節するとよい。
<粒子捕集手段、粒子捕集工程>
粒子捕集手段は、前記液滴吐出手段から気体中に吐出させた粒子原料含有液の液滴を固化させた後に、前記気流出口を通過した粒子を捕集する手段である。これにより粒子を得る。
粒子捕集工程は、前記液滴吐出工程から気体中に吐出させた粒子原料含有液の液滴を固化させた後に、前記気流出口を通過した粒子を捕集する工程である。
前記粒子捕集手段は、粒子捕集部(固化粒子捕集手段)及び粒子貯留部(固化粒子貯留部)からなる。
尚、粒子捕集部に捕集された際には、粒子の揮発成分が完全に揮発していなくとも、粒子を回収後に別工程で追加乾燥させることができる。
固化した粒子は、粒子捕集部(固化粒子捕集手段)及び粒子貯留部(固化粒子貯留部)で捕集され貯蔵される。固化粒子捕集手段は公知の粉体捕集手段、例えばサイクロン捕集、バックフィルター等によって気中から回収することが出来る。
<<二次乾燥>>
粒子捕集手段によって得られた粒子に含まれる残留溶剤量が多い場合、これを低減するために必要に応じて、二次乾燥手段(不図示)により二次乾燥が行われる。二次乾燥手段としては、流動床乾燥や真空乾燥のような一般的な公知の乾燥手段を用いることができる。有機溶剤が粒子中に残留すると耐熱保存性や定着性、帯電特性等の特性が経時で変動するだけでなく、加熱による定着時において有機溶剤が揮発するため、使用者および周辺機器へ悪影響を及ぼす可能性が高まるため、充分な乾燥を実施するとよい。
次に、本発明の粒子製造装置によりトナー粒子を製造する一の態様について、以下図面を参照しながら説明する。
図1Aは、本発明の粒子製造装置の一実施の形態として、トナー製造装置を示す概略構成図である。
本発明のトナー製造装置は、前記液体吐出手段、前記搬送固化手段、前記粒子捕集手段を有し、具体的には、図1Aで示されるように、液体供給部分、液滴吐出部分、液滴乾燥・固化部分、粒子捕集部分から構成される。液体供給部分では、液滴吐出部分に液体を供給し、液滴吐出部分では、液体を吐出し液滴を形成し、液滴乾燥・固化部分では、吐出された液滴を乾燥固化し、粒子捕集部分では、固化した粒子を捕集する。トナー製造装置はこれらの各部分より構成されている。
尚、図1Aでは、トナーを製造する場合について説明しているため、粒子原料含有液14をトナー成分液14とも記載する。
図1A中、液体供給部分は、トナー成分液14を収容するトナー成分液タンク13と、トナー成分液タンク13からトナー成分液14を供給するトナー成分液送液手段15と、トナー成分液14中の溶存気体を脱気する脱気手段3と、脱気後のトナー成分液を一時的に貯蔵する一時貯留容器5とから構成されている。
トナー成分液タンク13は、別工程で調合されたトナー成分液14を収容していて、トナー成分液送液手段15を有するトナー成分液流路7を通して供給される。
トナー成分液タンク13では、固形成分の沈降を防止するためトナー成分液14を攪拌することが好ましい。
トナー成分液送液手段15としては、ギアポンプやロータリーポンプ等の一般的な送液ポンプを用いることができ、送液量は一時貯留容器5の貯留量が一定となるよう制御される。
脱気手段3は、吐出安定化のためトナー成分液14中の溶存気体を取り除くために使用される。脱気手段3としては、容器内を減圧し液中に溶存する気体を除去する方法や液に超音波をあたえて脱気する方法などが知られていて、公知の脱気手段を使用することができる。本実施形態では、中空糸膜を用いた脱気装置(DIC社製 脱気モジュールSEPARERL PF03DG)を用い、気体透過性を有する中空糸の束にトナー成分液14を通液させ、ポンプ4で中空糸の束の容器内を減圧することで、トナー成分液中の溶存気体のみを除去することができる。
また、脱気手段3はトナー成分液14を閉じた系の中で循環させる循環経路の中に設置することができる。脱気装置を循環経路内に設置することにより、トナー成分液14を複数回脱気装置に通過させ、1回の通過より溶存する気体の残量を低下させることができる。
一時貯留容器5は、脱気されたトナー成分液14を外気から遮断した状態で一時的に貯蔵し、吐出手段へトナー成分液14を供給する。なお、吐出安定化には、吐出手段へ供給するトナー成分液14の圧力を適正に制御することが望ましい。液滴吐出手段にかかる圧力P1と、液滴乾燥・固化部分の圧力P2は、P1≒P2の関係を満たすことが望ましい。P1>P2の関係である場合、トナー成分液14が吐出孔19から染み出す恐れがあり、P1<P2の関係である場合には液滴吐出手段に気体が入り、吐出が停止する恐れがある。
液滴吐出手段である液注共鳴液滴吐出手段11には、上述したトナー成分液の供給経路の他に排出経路も備えることができる。廃液経路は液注共鳴液滴吐出手段11から出される廃液を貯留する廃液タンク30と、廃液タンク30への経路を開閉する開閉バルブを備える。
液滴吐出部分は、液体供給部分から供給される液体を吐出し液滴化する液注共鳴液滴吐出手段11の液滴吐出ヘッドを1つもしくは複数配置し構成される。
液滴乾燥・固化部分では、液注共鳴液滴吐出手段11より吐出された液滴21は、搬送気流101に乗り、搬送流路12内を通過する。
液滴21は、搬送流路12内を通過している間に乾燥固化される。
搬送流路12は、一部がループ形状部60を有しており、ループ形状部60の搬送流路には、循環気流71が気流導入口72より導入される。
搬送流路12には、液注共鳴液滴吐出手段11と、ループ形状部60の間に、液滴の予備的乾燥を確保するためのループ前乾燥部aが設けられている。ループ前乾燥部aは直管の搬送流路12となっている。
搬送流路内の流速は、1m/s~10m/sであることが好ましい。また、循環気流71の流速は、30m/s~100m/sであることが好ましい。
図1Aにおいて、ループ前乾燥部aは、ループ形状部60のループ下部と接続している。液注共鳴液滴吐出手段11から吐出された液滴は、気流に乗り、ループ形状の下部から入り、下部を通過した後、上部へ向かい、上部を通過した後、下部へ戻る途中で粒子捕集部(トナー捕集部)へ向かう。
粒子捕集部分では、ループ形状部の搬送流路を通過した固化粒子が、搬送気流排出口を通り、粒子捕集部(固化粒子捕集手段)62によって捕集され、トナー貯留部(固化粒子貯留部)63に貯留される。
図1Bに、搬送気流排出口が二つ形成された粒子製造装置を示す。係る粒子製造装置は、乾燥された液滴から液滴噴出時に発生したサテライト滴を効果的に分離することができる。
図1Bにおいて、図1Aと符号が同じものは同じものを意味しており、上記図1Aの説明箇所で記載したとおりである。以下、図1Aと異なる点を中心に説明する。
液注共鳴液滴吐出手段11から吐出された液滴は、気流に乗り、ループ形状の下部から入り、下部を通過した後、上部へ向かい、上部を通過した後、下部へ戻る。下部へ戻る曲がり直後に第一の搬送気流排出口(第一の気流出口)が設けられている。係る第一の気流出口部では、強い遠心力が粒子にかかるため、サテライト滴が分離される。分離されたサテライト粒子は、粒子捕集部(固化粒子捕集手段)62によって捕集され、サテライト滴貯留部(固化粒子貯留部)64に貯留される。
第一の気流出口部を通過した固化粒子は、第二の気流出口へ向かう。そして、第二の気流出口を通過した固化粒子は、粒子捕集部(トナー捕集部)へ向かう。
つまり、粒子捕集部分では、サテライト粒子が除かれた残りの固化粒子が、第二の搬送気流排出口(第二の気流出口)を通り、粒子捕集部(固化粒子捕集手段)62によって捕集され、トナー貯留部(固化粒子貯留部)63に貯留される。
尚、前記搬送気流排出口を複数設ける場合、サテライト滴を分離する際の循環気流71の流速は、50m/s~120m/sであることが好ましい。
本発明の噴射造粒法による粒子製造装置、及び粒子製造方法によれば、狭い粒径分布を有する粒子を高収率に製造することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。「部」は、特に明示しない限り「質量部」を表す。「%」は、特に明示しない限り「質量%」を表す。
(参考実験1)
特開2001-255696号公報(上記特許文献3)に記載のトナースラリーと同等のトナースラリーを得るために、株式会社リコー製のPXPトナーを水に溶かし、これをろ過することで固形分濃度75%のトナースラリーを得た。
尚、固形分濃度は、前述のようにして測定した。
付着の対象物として、表面を研磨(バフ#300番)したSUS304の板5cm×5cmを用意した。
この板に高さ5cmから1gのトナースラリーを落下させ、これを上下反転させた時、表面に付着し残った量を付着量とし測定した。
結果、トナースラリーの付着量は0.02gであった。
次に、噴霧造粒における本発明の液滴における付着量を、上記と同様の方法により測定した。つまり、下記実施例1の液滴吐出手段を用い、上記と同様のSUS304の板に対し、高さ5cmの位置から1gのトナー液滴を噴霧し、これを上下反転させた時、表面に付着した液滴量を測定した。尚、トナー液滴の固形分濃度は11.2%であった。
結果、トナー液滴の付着量は、0.97gであった。
これらの結果を比較すると、トナースラリーは、装置内壁面として使用される板に対しほとんど付着されないが、トナー液滴は、大半が付着されている。従って、液状のトナー液滴は、装置内壁面への付着が起きやすく、付着が問題となることがわかる。
(実施例)
溶解乃至分散液のトナー組成液の処方を示す。
-着色剤分散液の調製-
先ず、着色剤としての、カーボンブラックの分散液を調製した。
カーボンブラック(RegaL400;Cabot社製)17質量部、顔料分散剤3質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。該顔料分散剤としては、アジスパーPB821(味の素ファインテクノ社製)を使用した。得られた一次分散液を、ビーズミル(アシザワファインテック社製LMZ型、ジルコニアビーズ径0.3mm)を用いて強力なせん断力により細かく分散し、5μm以上の凝集体を完全に除去した二次分散液を調製した。
-ワックス分散液の調整-
次にワックス分散液を調整した。
カルナバワックス18質量部、ワックス分散剤2質量部を、酢酸エチル80質量部に、攪拌羽を有するミキサーを使用し、一次分散させた。この一次分散液を攪拌しながら80℃まで昇温しカルナバワックスを溶解した後、室温まで液温を下げ最大径が3μm以下となるようワックス粒子を析出させた。ワックス分散剤としては、ポリエチレンワックスにスチレン-アクリル酸ブチル共重合体をグラフト化したものを使用した。得られた分散液を、更にビーズミル(アシザワファインテック社製LMZ型、ジルコニアビーズ径0.3mm)を用いて強力なせん断力により細かく分散し、最大径が1μm以下となるように調整した。
-溶解乃至分散液の調製-
次に、結着樹脂としての樹脂、上記着色剤分散液及び上記ワックス分散液を添加した下記組成からなるトナー組成液を調製した。
結着樹脂としてのポリエステル樹脂100質量部、前記着色剤分散液30質量部、ワックス分散液30質量部、酢酸エチル840質量部を、攪拌羽を有するミキサーを使用して10分間攪拌を行い、均一に分散させた。溶媒希釈によるショックで顔料やワックス粒子が凝集することはなかった。
-トナー製造装置-
図1に示される構成のトナー製造装置を用い、トナー組成溶液乃至分散液の吐出と捕集を行った。
-液柱共鳴液滴吐出手段-
液滴吐出手段としては、前述の液柱共鳴液滴吐出手段11(図2)を用いた。
ここでは、液柱共鳴液室18の長手方向の両端間の長さLが1.85[mm]、N=2の共鳴モードであって、第一から第四の吐出孔19がN=2モード圧力定在波の腹の位置に吐出孔を配置したものを用いた。吐出孔19は開口径が8.0[μm]であり、断面形状は図3Aのようなラウンド形状である。また、駆動信号発生源はNF社ファンクションジェネレーターWF1973を用い、ポリエチレン被覆のリード線で振動発生手段20に接続した。このときの駆動周波数は液共鳴周波数に合わせて330[kHz]とした。また、入力信号は印加電圧サイン波ピーク値10.0[V]とした。
上記の条件で液滴を吐出した際の液滴の液滴直径および吐出速度をシャドーグラフィー法で測定した結果、液滴直径の平均はφ9.6[μm]、吐出した液滴の初速度の平均は14[m/s]であった。
本実施形態では、液滴吐出手段には前記の第一から第四の吐出孔19を有する液室(チャンネル)が、長手方向に192個配置された吐出列が2列の吐出孔19の合計が1536個有する液滴吐出装置(吐出ヘッド)を用いた。
搬送流路60の内径は、φ50mm、ループ部の全周長さは1000mmであり、固化粒子捕集手段62としてサイクロンを設置した。搬送流路12内の流速は、10.0m/sとした。循環気流71は、下記実施例1,2,3,4,5,6の実験においては、55.0m/sとし、実施例7の実験においては、60m/sとし、比較例1の実験においては、使用していない。
図1A、及び図1Bに示される構成のトナー製造装置を用い、トナー成分液の吐出と捕集を行ない、得られたトナーのDv/Dn、結着粒子率、粒子回収率、微粒子率の結果を表2に示す。
微粒子率は、サテライト滴による微粒子の割合を示し、2.5μm以下の微粒子含有率を示す。
各実験のDv/Dn、結着粒子率、粒子回収率、微粒子率の評価基準は下記表1のとおりとした。
Figure 0007073037000002
-粒径測定方法-
フロー式粒子像分析装置(Flow Particle Image Analyzer)を使用した測定方法に関して以下に説明する。トナー、トナー粒子及び外添剤のフロー式粒子像分析装置による測定は、例えば、シスメックス社製フロー式粒子像分析装置FPIA-3000を用いて測定することができる。
測定は、フィルターを通して微細なごみを取り除き、その結果として10-3cmの水中に測定範囲(例えば、円相当径0.60μm以上159.21μm未満)の粒子数が20個以下の水10mL中にノニオン系界面活性剤(好ましくは和光純薬社製コンタミノンN)を数滴加え、更に、測定試料を5mg加え、超音波分散器STM社製UH-50で20kHz,50W/10cmの条件で1分間分散処理を行い、さらに、合計5分間の分散処理を行い測定試料の粒子濃度が4,000個/10-3cm~8,000個/10-3cm(測定円相当径範囲の粒子を対象として)の試料分散液を用いて、0.60μm以上159.21μm未満の円相当径を有する粒子の粒径分布を測定する。
試料分散液は、フラットで偏平な透明フローセル(厚み約200μm)の流路(流れ方向に沿って広がっている)を通過させる。フローセルの厚みに対して交差して通過する光路を形成するために、ストロボとCCDカメラが、フローセルに対して、相互に反対側に位置するように装着される。試料分散液が流れている間に、ストロボ光がフローセルを流れている粒子の画像を得るために1/30秒間隔で照射され、その結果、それぞれの粒子は、フローセルに平行な一定範囲を有する2次元画像として撮影される。それぞれの粒子の2次元画像の面積から、同一の面積を有する円の直径を円相当径として算出する。
約1分間で、1,200個以上の粒子の円相当径を測定することができ、円相当径分布に基づく数及び規定された円相当径を有する粒子の割合(個数%)を測定できる。結果(頻度%及び累積%)は、0.06~400μmの範囲を226チャンネル(1オクターブに対し30チャンネルに分割)に分割して得ることができる。実際の測定では、円相当径が0.60μm以上159.21μm未満の範囲で粒子の測定を行う。
(実施例1)
上述したトナー製造装置の中で、ループ前乾燥部である搬送流路の導入直管(12のa部)が無い装置であって、搬送気流排出口が1つである図1Aタイプの装置を用い、作製したトナー成分液を吐出させ、搬送流路内で乾燥固化したトナー粒子をサイクロン捕集機で捕集した。トナー貯蔵容器よりトナーを取り出し、実施例1のトナーを得た。製造したトナーの粒径分布をフロー式粒子像解析装置(シスメックス社 FPIA-3000)で上述した測定条件にて測定した。下記表2に測定したDv/Dn、粒子結着率、微粒子率、トナー成分液の吐出量に対する粒子の回収割合(粒子回収率)の結果を示す。
尚、実施例1において、吐出時の液滴の粉体固形分濃度を前述のようにして測定したところ、粉体固形分濃度は11.2%であった。
(実施例2)
実施例1において、ループ前乾燥部である搬送流路の導入直管(12のa部)を装置に取り付けた。前記導入直管(12のa部)の長さを100mmとした。前記導入直管(12のa部)におけるRe数は2,000とした。それ以外の条件は、実施例1と同様にして、トナーを製造した。実施例1と同様にして、Dv/Dn、粒子結着率、粒子回収率、微粒子率を測定した。結果を表2に示す。
尚、実施例2において、a部の内径を280mmとしたことにより、Re数は2,000であった。
実施例2において、ループ前乾燥部からループ形状部へ通過する際の液滴の粉体固形分濃度を測定したところ、粉体固形分濃度は72.5%であった。
(実施例3)
実施例2において、導入直管(12のa部)の長さを300mm、Re数を7,000とした以外の条件は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。
実施例3では、直管の内径を79mmとしたことで、Re数は7,000となった。
実施例1と同様にして、Dv/Dn、粒子結着率、粒子回収率、微粒子率を測定した。結果を表2に示す。
また、実施例3における粉体固形分濃度は91.7%であった。
(実施例4)
実施例3において、液滴吐出手段を特開2010-102195号公報の実施例1に記載されている液振動方式とした以外は、実施例3と同様にしてトナーを製造した。
実施例1と同様にして、Dv/Dn、粒子結着率、粒子回収率、微粒子率を測定した。結果を表2に示す。
また、実施例4における粉体固形分濃度は92.0%であった。
(実施例5)
実施例3において、液滴吐出手段を特開2008-292976号公報の実施例1に記載されている膜振動方式とした以外は、実施例3と同様にしてトナーを製造した。
実施例1と同様にして、Dv/Dn、粒子結着率、粒子回収率、微粒子率を測定した。結果を表2に示す。
また、実施例5における粉体固形分濃度は91.5%であった。
(実施例6)
実施例3において、液滴吐出手段を特許4647506号公報の実施例1に記載されているレイニー分裂方式とした以外は、実施例3と同様にしてトナーを製造した。
実施例1と同様にして、Dv/Dn、粒子結着率、粒子回収率、微粒子率を測定した。結果を表2に示す。
また、実施例6における粉体固形分濃度は91.9%であった。
(実施例7)
実施例3において、搬送気流排出口が2つである図1Bタイプの装置を用い、循環気流を60m/sとした以外は、実施例3と同様にしてトナーを製造した。
実施例1と同様にして、Dv/Dn、粒子結着率、粒子回収率、微粒子率を測定した。結果を表2に示す。
また、実施例6における粉体固形分濃度は91.8%であった。
(比較例1)
図7に示すとおり、液滴乾燥・固化部分である乾燥チャンバ61の内径をφ400mm、高さを2、000mmの円筒形で垂直に固定し、固化粒子捕集手段62としてサイクロンを設置し、循環気流71を使用しない以外は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。
実施例1と同様にして、Dv/Dn、粒子結着率、粒子回収率、微粒子率を測定した。結果を表2に示す。
Figure 0007073037000003
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 吐出孔から粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出手段と、前記液滴吐出手段により吐出された液滴を搬送気流によって搬送して固化させる搬送固化手段とを有する粒子製造装置であって、
前記搬送固化手段が、前記液滴及び前記搬送気流の流路となる搬送流路で、前記搬送流路の一部がループ形状部からなる搬送流路を有することを特徴とする粒子製造装置である。
<2> 前記搬送流路が、前記ループ形状部へ入る際の前記液滴の粉体固形分濃度を90%以上に乾燥させるループ前乾燥部を有する前記<1>に記載の粒子製造装置である。
<3> 前記ループ前乾燥部における前記搬送流路内の気流のレイノルズ数(Re)が、3,000<Re<10,000である前記<2>に記載の粒子製造装置である。
<4> 前記ループ形状部が複数の搬送気流排出口を有し、前記搬送気流が搬送される気流方向に対し最初に形成された搬送気流排出口の向きが、ループ形状の中心方向を向いている前記<1>から<3>のいずれかに記載の粒子製造装置である。
<5> 吐出孔から粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出工程と、前記液滴吐出工程により吐出された液滴を搬送気流によって搬送して固化させる搬送固化工程とを含む粒子製造方法であって、
前記搬送固化工程が、前記液滴及び前記搬送気流の流路となる搬送流路で、前記搬送流路の一部がループ形状部からなる搬送流路を用いることを特徴とする粒子製造方法である。
<6> 前記搬送流路が、前記ループ形状部へ入る際の前記液滴の粉体固形分濃度を90%以上に乾燥させるループ前乾燥部を有する前記<5>に記載の粒子製造方法である。
<7> 前記ループ前乾燥部における前記搬送流路内の気流のレイノルズ数(Re)が、3,000<Re<10,000である前記<6>に記載の粒子製造方法である。
<8> 前記ループ形状部が複数の搬送気流排出口を有し、前記搬送気流が搬送される気流方向に対し最初に形成された搬送気流排出口の向きが、ループ形状の中心方向を向いている前記<5>から<7>のいずれかに記載の粒子製造方法である。
前記<1>から<4>のいずれかに記載の粒子製造装置、前記<5>から<8>のいずれかに記載の粒子製造方法によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
特開2011-212668号公報 特開2015-20144号公報 特開2001-255696号公報 特開2010-266179号公報

Claims (6)

  1. 吐出孔から粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出手段と、前記液滴吐出手段により吐出された液滴を搬送気流によって搬送して固化させる搬送固化手段とを有する粒子製造装置であって、
    前記搬送固化手段が、前記液滴及び前記搬送気流の流路となる搬送流路で、前記搬送流路の一部が環であるループ形状部からなる搬送流路を有し、
    前記搬送流路が、前記ループ形状部へ入る際の前記液滴の粉体固形分濃度を90%以上に乾燥させる直管であるループ前乾燥部を有することを特徴とする粒子製造装置。
  2. 前記ループ前乾燥部における前記搬送流路内の気流のレイノルズ数(Re)が、3,000<Re<10,000である請求項1に記載の粒子製造装置。
  3. 前記ループ形状部が複数の搬送気流排出口を有し、前記搬送気流が搬送される気流方向に対し最初に形成された搬送気流排出口の向きが、ループ形状の中心方向を向いている請求項1から2のいずれかに記載の粒子製造装置。
  4. 吐出孔から粒子原料含有液を液滴として吐出する液滴吐出工程と、前記液滴吐出工程により吐出された液滴を搬送気流によって搬送して固化させる搬送固化工程とを含む粒子製造方法であって、
    前記搬送固化工程が、前記液滴及び前記搬送気流の流路となる搬送流路で、前記搬送流路の一部が環であるループ形状部からなる搬送流路を用い、
    前記搬送流路が、前記ループ形状部へ入る際の前記液滴の粉体固形分濃度を90%以上に乾燥させる直管であるループ前乾燥部を有することを特徴とする粒子製造方法。
  5. 前記ループ前乾燥部における前記搬送流路内の気流のレイノルズ数(Re)が、3,000<Re<10,000である請求項4に記載の粒子製造方法。
  6. 前記ループ形状部が複数の搬送気流排出口を有し、前記搬送気流が搬送される気流方向に対し最初に形成された搬送気流排出口の向きが、ループ形状の中心方向を向いている請求項4から5のいずれかに記載の粒子製造方法。
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