本出願は、2018年9月26日に日本国に特許出願された特願2018-180944の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
従来、無線通信などの技術分野において、複数の送信アンテナから送信する送信波のビームを形成する技術(ビームフォーミング)が知られている。ビームフォーミングによれば、複数の送信アンテナから送信される送信波のビームを所定の方向に形成することで、例えば電波の到達距離を伸ばすことができる。このようなビームフォーミングを、上述したようなミリ波レーダに採用する技術も提案されている(例えば特許文献1参照)。種々の測定技術のうち、測定する対象及び/又は用途などに応じて、好適なものを採用することが望ましい。本開示の目的は、移動体の操縦時における安全性を高める電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムを提供することにある。一実施形態によれば、移動体の操縦時における安全性を高める電子機器、電子機器の制御方法、及び電子機器の制御プログラムを提供することができる。以下、一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などのような乗り物(移動体)を駐車又は停車(停留)させるスペースを検出する際などに使用することができる。このために、一実施形態に係る電子機器は、例えば自動車などの乗り物に設置したセンサにより、センサの周囲に存在する対象物(物体)とセンサとの間の距離などを測定する。センサは、検出波として例えば電磁波のような送信波を送信アンテナから送信してよい。また、センサは、送信波のうち対象物によって反射された反射波を受信アンテナから受信してよい。センサは、送信アンテナ及び受信アンテナの少なくとも一方を備えてよい。一実施形態に係る電子機器は、送信アンテナが送信する送信波及び受信アンテナが受信する反射波に基づいて、センサと対象物との間の距離などを測定してよい。
以下、典型的な例として、一実施形態に係る電子機器が、乗用車のような自動車に搭載される構成について説明する。しかしながら、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、自動車に限定されない。一実施形態に係る電子機器は、バス、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、トラクターなどの農作業車、消防車、救急車、警察車両、除雪車、道路を清掃する清掃車、又はドローンなど、種々の移動体に搭載されてよい。また、一実施形態に係る電子機器が搭載されるのは、必ずしも自らの動力で移動する移動体にも限定されない。例えば、一実施形態に係る電子機器が搭載される移動体は、トラクターにけん引されるトレーラー部分などとしてもよい。一実施形態に係る電子機器は、センサ及び対象物の少なくとも一方が移動し得るような状況において、センサと対象物との間の距離などを測定することができる。また、一実施形態に係る電子機器は、センサ及び対象物の双方が静止していても、センサと対象物との間の距離などを測定することができる。
まず、一実施形態に係る電子機器が送信する送信波の例を説明する。
図1は、一実施形態に係る電子機器が送信する送信波の例を説明する図である。図1は、一実施形態に係る送信アンテナを備えるセンサを、移動体に設置した例を示している。
図1に示す移動体100には、一実施形態に係る送信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。また、図1に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載(例えば内蔵)しているものとする。電子機器1の具体的な構成については、さらに後述する。図1に示す移動体100は、乗用車のような自動車の車両としてよいが、任意のタイプの移動体としてよい。図1において、移動体100は、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)に移動(走行又は徐行)していてもよいし、他の方向に移動していてもよいし、また移動せずに静止していてもよい。本開示において、例えば図に示すY軸正方向(進行方向)を、操舵基準方向、ビーム基準方向としてもよい。
図1に示すように、移動体100には、複数の送信アンテナを備えるセンサ5が設置されている。図1に示す例において、複数の送信アンテナを備えるセンサ5は、移動体100の前方に1つだけ設置されている。ここで、複数の送信アンテナを備えるセンサ5が移動体100に設置される位置は、図1に示す位置に限定されるものではなく、適宜、他の位置としてもよい。例えば、図1に示すようなセンサ5を、移動体100の左側、右側、及び/又は、後方などに設置してもよい。また、このようなセンサ5の個数は、移動体100における測定の範囲及び/又は精度など各種の条件(又は要求)に応じて、1つ以上の任意の数としてよい。
センサ5は、送信アンテナから送信波として電磁波を送信する。例えば移動体100の周囲に所定の対象物(物体)が存在する場合、センサ5から送信された送信波の少なくとも一部は、当該対象物によって反射されて反射波となる。そして、このような反射波を例えばセンサ5の受信アンテナによって受信することにより、移動体100に搭載された電子機器1は、当該対象物を検出することができる。
送信アンテナを備えるセンサ5は、典型的には、電波を送受信するレーダ(RADAR(Radio Detecting and Ranging))センサとしてよい。しかしながら、センサ5は、レーダセンサに限定されない。一実施形態に係るセンサ5は、例えば光波によるLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)の技術に基づくセンサとしてもよい。これらのようなセンサは、例えばパッチアンテナなどを含んで構成することができる。RADAR及びLIDARのような技術は既に知られているため、詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略することがある。
図1に示す移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信波を送信することで、移動体100の主として前方において、所定の距離内に存在する所定の対象物(物体)を検出することができる。このようにして、電子機器1は、移動体100の主として前方に所定の対象物が存在することを検出することができる。また、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の対象物との間の距離を測定することができる。さらに、電子機器1は、自車両である移動体100から、所定の対象物に対する方位角も測定することができる。さらに、電子機器1は、自車両である移動体100と所定の対象物との相対速度も測定することができる。
ここで、所定の対象物(物体)とは、例えば移動体100に隣接する車線を走行する対向車、移動体100に並走する自動車、及び移動体100と同じ車線を走行する前後の自動車などの少なくともいずれかとしてよい。また、所定の対象物とは、オートバイ、自転車、ベビーカー、歩行者、ガードレール、中央分離帯、道路標識、歩道の段差、壁、障害物、マンホールなど、移動体100の周囲に存在する任意の物体としてよい。さらに、所定の対象物は、移動していてもよいし、停止していてもよい。例えば、所定の対象物は、移動体100の周囲に駐車又は停車している自動車などとしてもよい。本開示において、センサ5が検出する対象物には、無生物の他に、人や動物などの生物も含む。
図1に示すように、移動体100に搭載された電子機器1は、送信アンテナを備えるセンサ5から、例えば電波とすることができる送信波を送信する。図1においては、センサ5の送信アンテナから送信される送信波が届く範囲(ビーム)を、送信波T1として模式的に示してある。後述のように、センサ5は、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。センサ5は、例えば複数の送信アンテナのうち1つから送信する送信波により、図1に示すような送信波T1のビームを形成することができる。センサ5から送信される送信波T1のビーム幅(送信範囲)は、図1に示すように、例えば120°程度の角度とすることができる。センサ5の送信アンテナから送信される送信波T1のビーム幅は、例えば送信アンテナの構成及び/又は配置などの諸条件に基づいて、種々設定することができる。
このように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5が備える複数の送信アンテナの少なくとも1つから、送信波T1を送信してよい。この場合、送信波T1は、図1に示すように、例えば120°程度の角度を有するような、比較的広範なビーム幅を有する。以下、移動体100に設置されたセンサ5が備える複数の送信アンテナの少なくとも1つから送信波T1のような送信波を送信する動作モードを、便宜的に「通常モード」と記すことがある。電子機器1は、通常モードにおいて、センサ5が備える複数の送信アンテナの少なくとも1つから送信波を送信して、通常のレーダによる(すなわちビームフォーミングせずに)測定を行い得る。
図1に示す状況において、送信波T1のビームは、移動体100の前方において、対象物200に到達していない。したがって、この状況において、移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信された送信波T1に基づいて対象物200の存在を検出できない。例えば移動体100が図1に示す状況からさらに前進するなどして、送信波T1のビームが対象物200に到達したとする。この場合、移動体100に搭載された電子機器1は、センサ5の送信アンテナから送信された送信波T1に基づいて、対象物200の存在を検出できる。
図2は、一実施形態に係る電子機器1が送信する送信波の他の例を説明する図である。
図2は、移動体100に設置されたセンサ5が備える複数の送信アンテナから送信された送信波が、電波のビームを形成している様子を模式的に示している。後述のように、センサ5は、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、移動体100に設置されたセンサ5が備える複数の送信アンテナの少なくとも2つから送信する送信波Tのビームを形成(ビームフォーミング)することができる。具体的には、電子機器1は、センサ5が備える複数の送信アンテナの少なくとも2つから送信される送信波の位相を制御することで、送信波が所定の方向において強め合うようにすることができる。
例えば、図2に示すように、移動体100の前方に設置されたセンサ5が備える複数の送信アンテナは、例えば移動体100の前方に送信波のビームB1を形成(ビームフォーミング)することができる。この時、電子機器1は、センサ5が備える複数の送信アンテナから送信されるそれぞれの送信波の位相が移動体100の前方向(Y軸正方向)において揃うように、各送信波の位相を制御する。このようにして、複数の送信波は、移動体100の前方向(Y軸正方向)において強め合い、電波のビームB1を形成する。上述のように、ビームフォーミングの技術を採用することで、送信波によって検出される所定の物体との間の距離の測定などの精度が向上し得る。特に、ビームフォーミングによれば、送信波のビーム幅が狭くなるため、反射波に含まれるノイズの成分を低減することができる。さらに、ビームフォーミングによれば、特定方向の送信波が強め合うため、送信波の到達距離を伸ばすこともできる。
また、電子機器1は、センサ5が備える複数の送信アンテナから送信される送信波の位相を適切に制御することで、送信波のビームの方向を変えることができる。例えば、電子機器1は、センサ5が備える複数の送信アンテナから送信されるそれぞれの送信波の位相が移動体100の左前方向(Y軸正方向の左側)において揃うように、各送信波の位相を制御することもできる。このようにして、複数の送信波は、移動体100の左前方向(Y軸正方向の左側)において強め合い、電波のビームB2を形成する。また、電子機器1は、センサ5が備える複数の送信アンテナから送信されるそれぞれの送信波の位相が移動体100の右前方向(Y軸正方向の右側)において揃うように、各送信波の位相を制御することもできる。このようにして、複数の送信波は、移動体100の右前方向(Y軸正方向の右側)において強め合い、電波のビームB3を形成する。電子機器1は、送信波の位相を適宜変更することで、図2に示すビームB1、B2、B3以外にも、各種の方向に、送信アンテナ40から送信される送信波のビームを向けることができる。
図2に示すように、例えば移動体100の周囲(右前方)に対象物200が存在する場合、電子機器1は、センサ5から送信される送信波がビームB3を形成するように制御することができる。このように、電子機器1は、送信波のビームの方向を制御することで、センサ5から対象物200に向く角度(例えば方位角)を測定することができる。このように、ビームフォーミングによれば、送信波の放射方向を制御して、所定の対象物に対する角度を測定する精度を向上することができる。
このように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5が備える複数の送信アンテナの少なくとも2つから送信波を送信することにより、例えば図2に示すビームB1、B2、又はB3のようなビームを形成(ビームフォーミング)してよい。この場合、ビームB1、B2、又はB3は、図2に示すように、例えば30°程度の角度を有するような、例えば図1に示した送信波T1のビーム幅よりも狭い範囲のビーム幅を有してよい。また、図2に示すように、ビームB1、B2、又はB3を形成する送信波は、例えば図1に示した送信波Taよりも長い到達範囲を有してよい。
以下、移動体100に設置されたセンサ5が備える複数の送信アンテナの少なくとも2つから送信する送信波のビームフォーミング(Beamforming)を行う動作モードを、便宜的に「BFモード」と記すことがある。これに対し、上述の通常モードは、移動体100に設置されたセンサ5が備える複数の送信アンテナから送信する送信波のビームフォーミングを行わない動作モードとしてよい。
図1及び図2において、センサ5の大きさは誇張して示してある。したがって、図1及び図2において、センサ5の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。また、図1及び図2において、センサ5は、移動体100の外部に設置した状態を示してある。しかしながら、一実施形態において、センサ5は、移動体100の各種の位置に設置してよい。例えば、一実施形態において、センサ5は、移動体100のバンパーの内部に設置して、移動体100の外観に現れないようにしてもよい。また、図1及び図2において、センサ5から送信される送信波T1並びに送信波が形成するビームB1、B2、及びB3は、模式的に示してある。したがって、図1及び図2において、送信波T1並びにビームB1、B2、及びB3の大きさと、移動体100の大きさとの比率は、必ずしも実際の比率を示すものではない。
以下、典型的な例として、センサ5の送信アンテナは、ミリ波(30GHz以上)又は準ミリ波(例えば20GHz~30GHz付近)などのような周波数帯の電波を送信するものとして説明する。例えば、センサ5の送信アンテナは、77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を有する電波を送信してもよい。ミリ波を送受信することにより、電子機器1は、センサ5が設置された移動体100と、当該移動体100の周囲に存在する所定の物体との間の距離を算出することができる。また、ミリ波を送受信することにより、電子機器1は、センサ5が設置された移動体100の周囲に存在する所定の物体の位置を算出することもできる。また、ミリ波を送受信することにより、電子機器1は、センサ5が設置された移動体100の周囲に存在する所定の物体に向く角度を算出することもできる。さらに、ミリ波を送受信することにより、電子機器1は、センサ5が設置された移動体100と、当該移動体100の周囲に存在する所定の物体との相対速度を算出することもできる。なお、本開示において、A,Bを任意の数として、AGHz~BGHzは、AGHz以上、BGHz未満を意味する。なお、本開示において、A,Bを任意の数として、AGHz~BGHzは、AGHzより大きく、BGHz以下を意味するとしてもよい。
図3は、一実施形態に係るセンサを移動体に配置する例を説明する図である。電子機器1が複数のセンサ5を備える場合、図3に示すように、移動体100の複数の箇所にセンサ5を設置してもよい。
図3に示す例において、移動体100の左前部分にはセンサ5aが配置され、移動体100の右前部分にはセンサ5bが配置され、移動体100の右後部分にはセンサ5cが配置され、移動体100の左後部分にはセンサ5dが配置されている。また、図3に示す例において、センサ5aからは送信波Taが送信され、センサ5bからは送信波Tbが送信され、センサ5cからは送信波Tcが送信され、センサ5dからは送信波Tdが送信される。以下、一実施形態に係る電子機器1において、例えばセンサ5a、センサ5b、センサ5c、及びセンサ5dのような複数のセンサを区別しない場合、単に「センサ5」と総称する。
一実施形態に係る電子機器1は、複数のセンサ5を個別に制御することができる。例えば、電子機器1は、複数のセンサ5のオン/オフを、それぞれ独立に制御してよい。また、例えば、電子機器1は、複数のセンサ5から送信される送信波のビーム幅及び送信波の到達距離の少なくとも一方を、それぞれ独立に制御してよい。また、例えば、電子機器1は、複数のセンサ5の動作モード(例えば、通常モード/BFモード)を、それぞれ独立に制御してよい。また、例えば、電子機器1は、複数のセンサ5から送信される送信波のビームフォーミングの方向を、それぞれ独立に制御してよい。一実施形態に係る電子機器1は、複数のセンサ5から送信される送信波のビーム幅及び送信波の到達距離などを適切に制御することにより、図3に示す移動体100のほぼ全周囲において、物体の存在の有無などを検出することができる。
図4は、一実施形態に係る電子機器と他の機能部との接続態様の例を示す図である。
図4は、例えば図3に示したような移動体100とセンサ5との接続の態様を概略的に示す図である。図4に示すように、一実施形態において、複数のセンサ5は、それぞれ制御部10に接続される。また、制御部10は、移動体100を制御する移動体制御部(ECU)70にも接続されてもよい。移動体制御部70は、移動体100を動作させる際に用いられる例えばステアリング82及び/ギア84などに接続されてもよい。移動体制御部70は、移動体100を動作させる際に用いられる他の機能部、例えばブレーキなどに接続されてもよい。移動体制御部70は、移動体100を動作させる際に用いられる任意の機能部に接続されてもよく、移動体100において制御される任意の機能部に接続されてもよい。さらに、制御部10は、報知部90に接続されてもよい。一実施形態において、これらの各機能部は、それぞれの接続によって、各種の情報を通信することができる。
図4に示す複数のセンサ5のそれぞれは、図3に示した複数のセンサ5としてよい。これら複数のセンサ5は、それぞれ制御部10に接続されることにより、上述したように制御部10によってそれぞれ独立に制御される。
制御部10は、複数のセンサ5から出力される情報に基づいて、移動体100の周囲の物体の検出など、各種の検出を行うことができる。また、制御部10は、前述のような各種の検出を行う際に、複数のセンサ5をそれぞれ制御することができる。制御部10の機能及び動作については、さらに後述する。
移動体制御部(ECU(Electronic Control Unit))70は、例えば移動体100が自動車である場合に、ステアリング82及びギア84など、移動体100における各種の機能部の状態を取得することができる。
ステアリング82は、移動体100を走行させるタイヤなどの車輪の切れ角を制御する。移動体100は、ステアリング82の制御によって、走行時の方向を変更することができる。移動体100におけるステアリング82は、例えば一般的な自動車を操舵するために用いるステアリングと同様のものとしてよい。一実施形態において、移動体100におけるステアリング82は、運転者が操作するものとしてもよいし、自動運転において移動体制御部70によって操作されるものとしてもよい。本開示において操舵とは、移動体の向きを変更するための操作のことをいう。本開示の操舵は、バス、トラック、オートバイ、自転車、船舶、航空機、トラクターなどの農作業車、消防車、救急車、警察車両、除雪車、道路を清掃する清掃車、又はドローンなど、種々の移動体の向きを変更する操作を含むとしてよい。
ギア84は、移動体100の動力の減速比を変更することができる、例えばギアボックスのような変速機(トランスミッション)としてよい。移動体100は、ギア84の操作によって、走行時の前進又は後進を変更することができる。また、移動体100は、ギア84の操作によって、走行時の速度を変更することができる。移動体100におけるギア84は、例えば一般的な自動車を変速するために用いる変速機(トランスミッション)と同様のものとしてよい。一実施形態において、移動体100におけるギア84は、運転者が操作するものとしてもよいし、自動運転において移動体制御部70によって操作されるものとしてもよい。
移動体制御部70には、ステアリング82及びギア84のみならず、スロットル及び/又はブレーキなどの機能部が接続されてもよい。移動体100におけるスロットル及び/又はブレーキなどは、例えば一般的な自動車を変速するために用いるものと同様のものとしてよい。一実施形態において、移動体100におけるスロットル及び/又はブレーキなどは、運転者が操作するものとしてもよいし、自動運転において移動体制御部70によって操作されるものとしてもよい。
報知部90は、移動体100の運転者などに所定の情報を報知する。報知部90は、例えば音、音声、光、文字、映像、及び振動など、移動体100の運転者の聴覚、視覚、触覚の少なくともいずれかを刺激する任意の機能部としてよい。具体的には、報知部90は、例えばブザー、スピーカ、LEDのような発光部、LCDのような表示部、及びバイブレータのような触感呈示部などとしてよい。一実施形態において、報知部90は、移動体100の周囲の物体を検出した結果の情報を、例えば移動体100の運転者などに報知する。例えば、一実施形態において、移動体100の周囲の物体が検出されると、視覚情報を報知する報知部90は、当該物体を検出した旨を発光又は表示などによって、移動体の運転者に報知してよい。また、一実施形態において、移動体100の周囲の物体が検出されると、聴覚情報を報知する報知部90は、当該物体を検出した旨を音又は音声などによって、移動体の運転者に報知してもよい。
移動体100が運転者によって運転されている場合、移動体制御部70は、移動体100の各種の機能部の状態を検出することができる。例えば、移動体制御部70は、移動体100のステアリング82がどの程度の切れ角(操舵角)に操作されているかを検出することができる。ここで、操舵角は、図2に示す場合、Y軸方向からの変化角度としてよい。例えば、移動体制御部70は、移動体100のギア84が前進又は後進のいずれに操作されているか、及び、変速機が何速に操作されているか、などを検出することができる。また、例えば、移動体制御部70は、移動体100のスロットル及びブレーキのオン/オフ、並びに、スロットル及びブレーキの度合いなどを検出してもよい。
また、移動体100が運転者によって運転されている場合、上述したように、報知部90は、移動体100の周囲の物体を検出した結果の情報を報知してよい。この場合、制御部10は、移動体100の周囲の物体を検出した結果の情報を、報知部90から報知するように制御してもよい。
一方、自動運転によって移動体100が運転されている場合、移動体制御部70は、移動体100の各種の機能部を制御することができる。ここで、自動運転とは、例えば、日本政府及び米国運輸省道路交通安全局(National Highway Traffic Safety Administration(NHTSA))によって定義されるレベル1~5の自動運転としてよい。例えば、移動体制御部70は、センサ5による検出結果に応じて、移動体100のステアリング82を自動制御してよい。移動体制御部70は、センサ5による検出結果に応じて、移動体100のギア84を(例えば前進/後進にするなど)自動制御してよい。また、移動体制御部70は、センサ5による検出結果に応じて、ギア84を何速に操作するかを自動制御してよい。また、例えば、移動体制御部70は、センサ5による検出結果に応じて、移動体100のスロットル及びブレーキのオン/オフ、並びに、スロットル及びブレーキの度合いなどを自動制御してもよい。
このように、電子機器1は、移動体100の動作を制御する移動体制御部70を備えてもよい。この場合、制御部10は、移動体100の周囲の物体を検出した結果の情報を、移動体制御部70に供給してもよい。そして、移動体制御部70は、制御部10から供給された情報に基づいて、移動体100の動作を制御してもよい。
図5は、一実施形態に係る電子機器1の構成例を概略的に示す機能ブロック図である。以下、一実施形態に係る電子機器1の構成について説明する。
図5に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、センサ5及び制御部10を備えている。図5は、図4に示した制御部10に接続された複数のセンサ5の代表例として、1つのセンサ5のみについて、より詳細に示してある。
一実施形態に係る電子機器1は、信号生成部22、周波数シンセサイザ24、送信制御部30、パワーアンプ36A及び36B、並びに送信アンテナ40A及び40Bを備えてよい。上述のセンサ5は、少なくとも送信アンテナ40A及び40Bを備えるものとしてよい。また、センサ5は、制御部10、送信制御部30、並びにパワーアンプ36A及び36Bなどの少なくともいずれかのような、他の機能部を含んでもよい。なお、図1~図3に示す例においては、センサ5と制御部10とは別個の機能部として示してあるが、センサ5に制御部10の全部又は一部が含まれても良い。また、センサ5に含まれる部材は図5に示される例に限定されず、図5に示す部材のうちの任意の部材をセンサ5から外してもよい。ここで、送信アンテナ40A及び送信アンテナ40B、受信アンテナ50A及び受信アンテナ50B、並びに、パワーアンプ36A及びパワーアンプ36Bがセンサ5として、1つの筐体に収められてもよい。本開示では、送信アンテナを2つ、受信アンテナを4つとして説明する。本開示では、送信アンテナ、受信アンテナの数は任意の適宜な数とすることができる。
図5に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ40A及び40Bを備えている。以下、一実施形態に係る電子機器1において、送信アンテナ40Aと送信アンテナ40Bとを区別しない場合、単に「送信アンテナ40」と総称する。また、図5に示す電子機器1は、他の機能部も2つ備える場合がある(例えばパワーアンプ36A及び36Bなど)。このような他の機能部についても、同種の複数の機能部を特に区別しない場合、A及びBのような記号を省略することにより、当該機能部を総称することがある。
さらに、一実施形態に係る電子機器1は、受信アンテナ50A及び50B、LNA52A及び52B、ミキサ54A及び54B、IF部56A及び56B、AD変換部58A及び58B、距離推定部62、角度推定部64、並びに相対速度推定部66を備えてよい。以下、これらのような機能部についても、同種の複数の機能部を特に区別しない場合、A及びBのような記号を省略することにより、当該機能部を総称することがある。上述のセンサ5は、受信アンテナ50A及び50Bを備えるものとしてもよい。また、センサ5は、LNA52A及び52Bなどのような、他の機能部を含んでもよい。
一実施形態に係る電子機器1が備える制御部10は、電子機器1を構成する各機能部の制御をはじめとして、電子機器1全体の動作の制御を行うことができる。制御部10は、種々の機能を実行するための制御及び処理能力を提供するために、例えばCPU(Central Processing Unit)のような、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。制御部10は、まとめて1つのプロセッサで実現してもよいし、いくつかのプロセッサで実現してもよいし、それぞれ個別のプロセッサで実現してもよい。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)ともいう。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。一実施形態において、制御部10は、例えばCPU及び当該CPUで実行されるプログラムとして構成してよい。図5に示すように、制御部10は、制御部10の動作に必要なメモリのような記憶部12を適宜含んでもよい。記憶部12は、制御部10において実行されるプログラム、及び、制御部10において実行された処理の結果などを記憶してよい。また、記憶部12は、制御部10のワークメモリとして機能してよい。
一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、送信制御部30を制御することができる。この場合、制御部10は、記憶部12に記憶された各種情報に基づいて、送信制御部30を制御してよい。また、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、信号生成部22に信号の生成を指示したり、信号生成部22が信号を生成するように制御したりしてもよい。
移動体100が自動車である場合、例えばCAN(Controller Area Network)のような通信インタフェースを用いて、ECU(Electronic Control Unit)間における通信を行うことができる。この場合、制御部10は、ECU(例えば移動体制御部70)などから、移動体100の制御情報を入手することができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1において、制御部10は、入手した制御情報などに基づいて、送信波の送信モードを決定してよい。ここで、送信波の送信モードとは、例えば、上述の通常モード及びBFモードとしてよい。さらに、送信波の送信モードとは、上述のそれぞれのモードにおける各種の設定としてもよい。例えば、送信波の送信モードとは、上述のそれぞれのモードにおいて送信波を送信する送信アンテナの数(アンテナの本数)を規定するものとしてもよい。また、例えば、送信波の送信モードとは、例えばビームフォーミングの有無及び/又はビームフォーミングの角度などを規定するものとしてもよい。ここで、ビームフォーミングの角度とは、ビームフォーミングを行う場合に、移動体100において送信アンテナ40が設置された箇所(位置)に対してビームの利得を増大させるための角度としてよい。
上述の送信モードが決定されると、制御部10は、当該送信モードにおける設定情報を、送信制御部30に供給する。ここで、送信モードにおける設定情報は、例えば、当該送信モードにおいて送信波を送信する送信アンテナの数の情報を含んでもよい。また、送信モードにおける設定情報は、例えば、当該送信モードにおいて送信アンテナが送信波を送信するパワーの情報などを含んでもよい。また、送信モードにおける設定情報は、ビームフォーミングを行う場合に複数の送信アンテナ40から送信するそれぞれの送信波の位相の情報などを含んでもよい。
このような動作のために、例えば、各種の送信モードと、当該送信モードにおける動作に必要な設定情報とを関連付けたものを、例えばテーブルなどとして予め記憶部12に記憶してもよい。また、例えば、ある送信モードにおいてビームフォーミングを行う際の送信波の位相情報を、移動体100において送信アンテナ40が設置された箇所(位置)及び設置角度などに関連付けて、記憶部12に記憶してもよい。このような場合、制御部10は、送信モードが決定すると、決定した送信モードに対応する設定情報を記憶部12から読み出して、当該設定情報を送信制御部30に供給することができる。
送信アンテナ40から送信する送信波Tの届く距離を変化させたい場合、例えば送信波Tの送信電力を調整して、送信アンテナ40の利得及び/又はビームフォーミングの利得を変化させてもよい。この場合、送信アンテナ40が送信する送信波Tの送信電力と、送信アンテナ40の利得及び/又はビームフォーミングの利得とを関連付けて、記憶部12に記憶しておいてもよい。
また、上述のような各種の送信モードと、当該送信モードに対応する設定情報とは、各種の条件に基づいて、適宜生成されるものであってもよい。このような場合、制御部10は、送信モードが決定すると、決定した送信モードに対応する設定情報が記憶部12に記憶されていなくても、当該設定情報を送信制御部30に供給することができる。
信号生成部22は、制御部10の制御により、送信アンテナ40から送信波Tとして送信される信号(送信信号)を生成する。信号生成部22は、送信信号を生成する際に、例えば制御部10による制御に基づいて、送信信号の周波数を割り当てる。例えば、信号生成部22は、制御部10から周波数情報を受け取ることにより、例えば77~81GHzのような周波数帯域の所定の周波数の信号を生成する。信号生成部22は、例えば電圧制御発振器(VCO)のような機能部を含んで構成してよい。
信号生成部22は、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。以下説明する各機能部も、当該機能を有するハードウェアとして構成してもよいし、可能な場合には、例えばマイコンなどで構成してもよいし、例えばCPUのようなプロセッサ及び当該プロセッサで実行されるプログラムなどとして構成してもよい。
一実施形態に係る電子機器1において、信号生成部22は、例えばチャープ信号のような送信信号を生成してよい。特に、信号生成部22は、周波数が周期的に線形に変化する信号(線形チャープ信号)を生成してもよい。例えば、信号生成部22は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで周期的に線形に増大するチャープ信号としてもよい。また、例えば、信号生成部22は、周波数が時間の経過に伴って77GHzから81GHzまで線形の増大(アップチャープ)及び減少(ダウンチャープ)を周期的に繰り返す信号を生成してもよい。信号生成部22が生成する信号は、例えば制御部10において予め設定されていてもよい。また、信号生成部22が生成する信号は、例えば記憶部12に予め記憶されていてもよい。レーダのような技術分野で用いられるチャープ信号は既知であるため、より詳細な説明は、適宜、簡略化又は省略する。信号生成部22によって生成された信号は、周波数シンセサイザ24に供給される。
周波数シンセサイザ24は、信号生成部22が生成した信号の周波数を、所定の周波数帯の周波数まで上昇させる。周波数シンセサイザ24は、送信アンテナ40から送信する送信波Tの周波数として選択された周波数まで、信号生成部22が生成した信号の周波数を上昇させてよい。送信アンテナ40から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば制御部10によって設定されてもよい。また、送信アンテナ40から送信する送信波Tの周波数として選択される周波数は、例えば記憶部12に記憶されていてもよい。周波数シンセサイザ24によって周波数が上昇された信号は、送信制御部30及びミキサ54に供給される。
送信制御部30は、周波数シンセサイザ24から供給された送信信号を、複数の送信アンテナ40の少なくとも1つから送信波Tとして送信するための制御を行う。図5に示すように、送信制御部30は、位相制御部32及びパワー制御部34を含んで構成されてよい。また、図5に示すように、送信制御部30は、制御部10による制御に基づいて、送信アンテナ40から送信波Tとして送信するための制御を行ってよい。制御部10が送信制御部30を制御するために必要な各種情報は、記憶部12に記憶してよい。
位相制御部32は、周波数シンセサイザ24から供給された送信信号の位相を制御する。具体的には、位相制御部32は、制御部10による制御に基づいて、周波数シンセサイザ24から供給された信号の位相を適宜早めたり遅らせたりすることにより、送信信号の位相を調整してよい。この場合、位相制御部32は、複数の送信アンテナ40から送信されるそれぞれの送信波Tの経路差に基づいて、それぞれの送信信号の位相を調整してよい。位相制御部32がそれぞれの送信信号の位相を適宜調整することにより、複数の送信アンテナ40から送信される送信波Tは、所定の方向において強め合ってビームを形成する(ビームフォーミング)。
例えば通常モードでビームフォーミングを行わずに送信波Tを送信する場合、位相制御部32は、送信アンテナ40から送信波Tとして送信する送信信号の位相を制御しなくてもよい。また、例えばBFモードで送信波Tのビームフォーミングを行う場合、位相制御部32は、ビームフォーミングの方向に応じて、複数の送信アンテナ40から送信波Tとして送信する複数の送信信号の位相を、それぞれ制御してよい。この場合、ビームフォーミングの方向と、複数の送信アンテナ40がそれぞれ送信する送信信号の制御すべき位相量との相関関係は、例えば記憶部12に記憶しておいてよい。位相制御部32によって位相制御された信号は、パワーアンプ36に供給される。
パワー制御部34は、図5に示すように、それぞれ対応するパワーアンプ36に接続される。パワー制御部34は、パワー制御部34に接続されたパワーアンプ36によるパワーの増幅を制御する。パワー制御部34は、パワーアンプ36を制御することで、パワーアンプ36に接続された送信アンテナ40から送信される送信波Tの送信パワーを制御する。例えば、パワー制御部34は、パワー制御部34に接続されたパワーアンプ36の送信パワーのオンとオフとを切り替えることができる。すなわち、パワー制御部34は、パワーアンプ36に接続された送信アンテナ40から送信波Tを送信するか否かを切り替えることができる。
例えば、パワー制御部34Aは、送信アンテナ40Aから送信される送信波Tの送信パワーのオンとオフとを切り替えることができる。また、パワー制御部34Bは、送信アンテナ40Bから送信される送信波Tの送信パワーのオンとオフとを切り替えることができる。したがって、電子機器1は、パワー制御部34A及びパワー制御部34Bの双方による制御に基づいて、送信アンテナ40A及び/又は送信アンテナ40Bから送信波Tが送信されるようにするか否かを、それぞれ任意に制御することができる。また、パワー制御部34は、パワー制御部34に接続されたパワーアンプ36の送信パワーを適宜調整可能としてもよい。このように、パワー制御部34は、例えば送信モードにおける設定に基づいて、複数の送信アンテナ40のうちいくつの送信アンテナ40から送信波Tを送信するかを規定することができる。パワー制御部34による制御に必要な各種の情報は、例えば記憶部12に記憶してよい。例えば、記憶部12は、パワー制御部34による制御と、対応する送信アンテナ40から送信される送信波Tの送信パワーとの相関関係を記憶してもよい。また、記憶部12は、前述のような相関関係を、各種の送信モードについて記憶してもよい。
一実施形態に係る電子機器1は、送信制御部30における位相制御部32及び/又はパワー制御部34による制御に基づいて、複数の送信アンテナ40の少なくとも1つから送信する送信波Tの送信態様を、種々設定することができる。具体的には、一実施形態に係る電子機器1は、ビームフォーミングを行うか否か、及び/又は、ビームフォーミングを行う場合におけるビームの方向などを、種々設定することができる。この場合、例えば記憶部12は、送信波Tの種々の送信態様に対応する位相制御部32及び/又はパワー制御部34の制御情報を記憶してよい。制御部10は、記憶部12から送信波Tの種々の送信態様に対応する制御情報を読み出すことにより、位相制御部32及び/又はパワー制御部34による送信波Tの制御を行うことができる。例えば、電子機器1が上述の通常モードで動作する(例えばビームフォーミングを行わない)場合、パワー制御部34は、各送信アンテナ40のアンテナ放射利得に応じて、送信波Tを送信する際の電力を制御する。また、例えば電子機器1が上述のBFモードで動作する(ビームフォーミングを行う)場合、位相制御部32は、複数の送信アンテナ40のうち使用する送信アンテナから送信する送信信号の位相を適宜変更する。一実施形態において、複数の送信アンテナ40から送信される送信波Tのビームフォーミングを行う際、ビームの数及び/又はビームの形状などは、位相制御部32及びパワー制御部34による制御に基づいて、各種のものとすることができる。
パワーアンプ36は、位相制御部32から供給された送信信号のパワーを、パワー制御部34による制御に基づいて増幅させる。送信信号のパワーを増幅させる技術自体は既に知られているため、より詳細な説明は省略する。パワーアンプ36は、送信アンテナ40に接続される。
送信アンテナ40は、パワーアンプ36によって増幅された送信信号を、送信波Tとして出力(送信)する。上述のように、センサ5は、例えば送信アンテナ40A及び送信アンテナ40Bのように、複数の送信アンテナを含んで構成してよい。送信アンテナ40は、既知のレーダ技術に用いられる送信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。
このようにして、一実施形態に係る電子機器1は、複数の送信アンテナ40から送信波Tとして、例えばチャープ信号のような送信信号を送信することができる。ここで、電子機器1を構成する各機能部のうちの少なくとも1つは、1つの筐体において容易に開けることができない構造の筐体に収められてもよい。例えば送信アンテナ40A及び送信アンテナ40B、受信アンテナ50A及び受信アンテナ50B、並びにパワーアンプ36A及びパワーアンプ36Bが1つの筐体に収められて、かつ、この筐体が容易に開けられない構造にしてもよい。さらに、センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、送信アンテナ40は、例えばレーダカバーのような部材を介して、移動体100の外部に送信波Tを送信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で送信アンテナ40を覆うことにより、送信アンテナ40が外部との接触により破損したり不具合が発生したりするリスクを低減することができる。また、上記レーダカバー及びハウジングは、レドームとも呼ばれることがある(以下、同じ)。また、センサ5が移動体100に設置される位置は、移動体100の外部及び内部のいずれでもよい。移動体100の内部とは、たとえば、移動体100のボディの内側、バンパーの内側、ヘッドライトの内部、車内の空間内、又はこれらの任意の組み合わせでよい。
図5に示す電子機器1は、送信アンテナ40A及び送信アンテナ40Bのように2つの送信アンテナ40を備え、この2つの送信アンテナ40によって送信波Tを送信する。したがって、図5に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ40から送信波Tを送信するのに必要な機能部も、それぞれ2つずつ含んで構成される。具体的には、送信制御部30は、位相制御部32A及び位相制御部32Bのように2つの位相制御部32を含んで構成される。また、送信制御部30は、パワー制御部34A及びパワー制御部34Bのように2つのパワー制御部34を含んで構成される。さらに、図5に示す電子機器1は、パワーアンプ36A及びパワーアンプ36Bのように2つのパワーアンプ36を含んで構成される。
図5に示す電子機器1は、2つの送信アンテナ40を備えているが、一実施形態に係る電子機器1が備える送信アンテナ40の数は、例えば3つ以上のように、任意の複数としてよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1は、複数の送信アンテナ40と同じ数のパワーアンプ36を備えてよい。また、この場合、一実施形態に係る電子機器1は、複数の送信アンテナ40と同じ数の位相制御部32及びパワー制御部34を備えてよい。
受信アンテナ50は、反射波Rを受信する。反射波Rは、送信波Tが所定の対象物200に反射したものである。受信アンテナ50は、例えば受信アンテナ50A及び受信アンテナ50Bのように、複数のアンテナを含んで構成してよい。受信アンテナ50は、既知のレーダ技術に用いられる受信アンテナと同様に構成することができるため、より詳細な説明は省略する。受信アンテナ50は、LNA52に接続される。受信アンテナ50によって受信された反射波Rに基づく受信信号は、LNA52に供給される。
一実施形態に係る電子機器1は、複数の受信アンテナ50から、例えばチャープ信号のような送信信号として送信された送信波Tが所定の対象物200によって反射された反射波Rを受信することができる。ここで、たとえば複数の受信アンテナ50のような電子機器1を構成する少なくとも1つの機能部は、1つの筐体において容易に開けることができない構造の筐体に収められてもよい。センサ5が自動車のような移動体100に設置される場合、受信アンテナ50は、例えばレーダカバーのような部材を介して、移動体100の外部から反射波Rを受信してもよい。この場合、レーダカバーは、例えば合成樹脂又はゴムのような、電磁波を通過させる物質で構成してよい。このレーダカバーは、例えばセンサ5のハウジングとしてもよい。レーダカバーのような部材で受信アンテナ50を覆うことにより、受信アンテナ50が外部との接触により破損又は不具合が発生するリスクを低減することができる。
また、センサ5には、例えば全ての送信アンテナ40及び全ての受信アンテナ50を含めてよい。さらに、受信アンテナ50が送信アンテナ40の近くに設置される場合、これらをまとめて1つのセンサ5に含めて構成してもよい。すなわち、1つのセンサ5には、例えば少なくとも1つの送信アンテナ40及び少なくとも1つの受信アンテナ50を含めてもよい。例えば、1つのセンサ5は、複数の送信アンテナ40及び複数の受信アンテナ50を含んでもよい。このような場合、例えば1つのレーダカバーのような部材で、1つのレーダセンサを覆うようにしてもよい。
LNA52は、受信アンテナ50によって受信された反射波Rに基づく受信信号を低ノイズで増幅する。LNA52は、低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)としてよく、受信アンテナ50から供給された受信信号を低雑音で増幅する。LNA52によって増幅された受信信号は、ミキサ54に供給される。
ミキサ54は、LNA52から供給されるRF周波数の受信信号を、周波数シンセサイザ24から供給される送信信号に混合する(掛け合わせる)ことにより、ビート信号を生成する。ミキサ54によって混合されたビート信号は、IF部56に供給される。
IF部56は、ミキサ54から供給されるビート信号に周波数変換を行うことにより、ビート信号の周波数を中間周波数(IF(Intermediate Frequency)周波数)まで低下させる。IF部56によって周波数を低下させたビート信号は、AD変換部58に供給される。
AD変換部58は、IF部56から供給されたアナログのビート信号をデジタル化する。AD変換部58は、任意のアナログ-デジタル変換回路(Analog to Digital Converter(ADC))で構成してよい。AD変換部58によってデジタル化されたビート信号は、受信アンテナ50が1つの場合は距離推定部62に、受信アンテナ50が複数の場合は距離推定部62及び角度推定部64の両方に供給される。
距離推定部62は、AD変換部58から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100と、対象物200との間の距離を推定する。距離推定部62は、例えばFFT処理部を含んでよい。この場合、FFT処理部は、高速フーリエ変換(Fast Fourier Transform(FFT))処理を行う任意の回路又はチップなどで構成してよい。FFT処理部は、AD変換部58によってデジタル化されたビート信号に対してFFT処理を行う。例えば、距離推定部62は、AD変換部58から供給された複素信号にFFT処理を行ってよい。距離推定部62は、FFT処理によって得られた結果においてピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の対象物200があると判断してもよい。距離推定部62によって推定された距離の情報は、例えば制御部10に供給されてよい。
角度推定部64は、AD変換部58から供給されたビート信号に基づいて、電子機器1を搭載した移動体100から対象物200に向く方向(すなわち反射波Rが受信アンテナ50に到来する方向)を推定する。角度推定部64も、距離推定部62と同様に、例えばFFT処理部を含んでよい。上述のように、距離推定部62は、AD変換部58から供給された複素信号にFFT処理を行い、FFT処理の結果得られたピークが所定の閾値以上である場合、そのピークに対応する距離に、所定の対象物200があると判断してよい。この場合、角度推定部64は、所定の対象物200からの反射波Rを複数の受信アンテナ50によって受信した結果に基づいて、反射波Rが受信アンテナ50に到来した方向(すなわち対象物200から受信アンテナ50に向く方向)を推定してよい。角度推定部64によって推定された方向(到来方向又は到来角)の情報は、例えば制御部10に供給されてよい。
相対速度推定部66は、ビート信号に基づいて、対象物200と移動体100との相対速度を推定する。
一般的に、ビート信号にFFT処理を行うことにより、周波数スペクトルを得ることができる。この周波数スペクトルから、上述のFFT処理部は、送信アンテナ40から送信される送信波Tのビームの範囲内に所定の対象物200が存在するか否かを推定することができる。すなわち、FFT処理部は、FFT処理されたビート信号に基づいて、送信アンテナ40を備えるセンサ5が発するビームの範囲内に所定の対象物200が存在するか否かを推定することができる。また、FFT処理部は、FFT処理されたビート信号に基づいて、所定の対象物200が存在する場合に、送信アンテナ40を備えるセンサ5と対象物200との距離を推定することもできる。さらに、FFT処理部は、FFT処理されたビート信号に基づいて、所定の対象物200が存在する場合に、送信アンテナ40を備えるセンサ5と対象物200との位置関係も推定することもできる。
このように、一実施形態に係る電子機器1は、送信波Tとして送信される信号、及び反射波Rとして受信される信号から得られるビート信号に基づいて、対象物200と移動体100との間の距離を測定(推定)してよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、ビート信号に基づいて、対象物200と移動体100との位置関係(例えば対象物200から反射波Rが移動体100に到来する到来角)を測定(推定)してよい。さらに、一実施形態に係る電子機器1は、ビート信号に基づいて、対象物200と移動体100との相対速度を測定(推定)してもよい。また、制御部10は、距離推定部62から供給される距離の情報、及び/又は角度推定部64から供給される方向(角度)の情報などから、各種の演算、推定、及び制御などを行ってもよい。例えば79GHz帯などのようなミリ波レーダを利用して取得したビート信号に基づいて、反射波が反射した所定の対象物までの距離及び/又は方向などを推定する技術そのものは知られているため、より詳細な説明は省略する。
図5に示す電子機器1は、受信アンテナ50A及び受信アンテナ50Bのように2つの受信アンテナ50を備え、この2つの受信アンテナ50によって反射波Rを受信する。したがって、図5に示す電子機器1は、2つの受信アンテナ50から反射波Rを受信するのに必要な機能部も、それぞれ2つずつ含んで構成される。具体的には、電子機器1は、LNA52と、ミキサ54と、IF部56と、AD変換部58とを、それぞれ2つずつ含んで構成される。
図5に示す電子機器1は、2つの受信アンテナ50を備えているが、一実施形態に係る電子機器1が備える受信アンテナ50の数は、任意の複数としてよい。この場合、一実施形態に係る電子機器1は、上述した2つずつ含まれる機能部を、それぞれ複数の受信アンテナ50と同じ数だけ備えてよい。
次に、一実施形態に係る電子機器1において送信される送信波について説明する。
ミリ波方式のレーダによって距離などを測定する際、周波数変調連続波レーダ(以下、FMCWレーダ(Frequency Modulated Continuous Wave radar)と記す)が用いられることが多い。FMCWレーダは、送信する電波の周波数を掃引して送信信号が生成される。したがって、例えば79GHzの周波数帯の電波を用いるミリ波方式のFMCWレーダにおいて、使用する電波の周波数は、例えば77GHz~81GHzのように、4GHzの周波数帯域幅を持つものとなる。79GHzの周波数帯のレーダは、例えば24GHz、60GHz、76GHzの周波数帯などの他のミリ波/準ミリ波レーダよりも、使用可能な周波数帯域幅が広いという特徴がある。本開示で利用されるFMCWレーダ方式は、通常より短い周期でチャープ信号を送信するFCM方式(Fast-Chirp Modulation)を含むとしてもよい。信号生成部21が生成する信号はFM-CW方式の信号に限定されない。信号生成部21が生成する信号はFM-CW方式以外の各種の方式の信号としてもよい。例えば記憶部12に記憶される送信信号列は、これら各種の方式によって異なるものとしてよい。例えば、上述のFM-CW方式のレーダ信号の場合、時間サンプルごとに周波数が増加する信号及び減少する信号を使用してよい。上述の各種の方式は、公知の技術を適宜適用することができるため、より詳細な説明は省略する。
上述のように、複数の送信アンテナ40から送信する電波のビームを形成(ビームフォーミング)することにより、所定の方向の送信波を強め合うことができる。このようにすれば、電子機器1は、電子機器1を搭載した移動体100と対象物200との間の距離、及び/又は、対象物200の方向などを測定する精度を向上させることができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1は、FMCWレーダのように周波数が時間の経過に伴って変化する電波を送信波としつつ、このような送信波によって、必要に応じてビームフォーミングを行う。以下、このような実施形態について、さらに説明する。
図6~図9は、一実施形態に係る電子機器1の動作の例を説明する図である。
図6に示す移動体100は、一実施形態に係る電子機器1を搭載しているものとする。また、図6に示すように、移動体100には、図3に示した複数のセンサ5のうち、少なくともセンサ5cが設置されているものとする。また、以下の説明において、電子機器1を構成する各機能部の制御は、制御部10、送信制御部30、及び移動体制御部70の少なくともいずれかによって制御することができるものとする。
以下、一例として、移動体100に搭載された電子機器1が、移動体100を停車又は駐車させることが可能なスペース(以下、停留スペースと記す)を検出した後の動作を想定して説明する。図6に示すように、移動体100に搭載された電子機器1は、移動体100を停留可能なスペース(停留スペースP)を検出したとする。一方、停留スペースPは、移動体100の運転者によって目視で検出されるものとしてもよい。それから、電子機器1は、移動体100が停留スペースPまで移動される間に、移動体100の周囲に存在する対象物を検出する。このような動作によって、移動体100は、例えば停留スペースPの壁Wのような障害物に衝突又は接触しないように、停留スペースPまで移動することができる。
以下の説明において、移動体100の運転者によって移動体100を停留スペースPまで移動させてもよいし、自動運転によって移動体100を停留スペースPまで移動させてもよい。
図6は、移動体100が前進しながら停留スペースを探しているところ、停留スペースPを検出した時点の状況を示している。図6に示す時点では、移動体100は、停留スペースPを検出して一時停止しているものとする。この時点では、電子機器1は、センサ5cを通常モードで動作させることにより、センサ5cから送信波Tcが送信されているものとする。上述のように、電子機器1は、通常モードにおいて、送信波Tcのように、比較的広範なビーム幅を有する送信波を送信することができる。
停留スペースPが検出されたら、移動体100の運転者は、例えば移動体100を一旦停止させてから、移動体100の停留動作を開始することができる。この時、電子機器1は、例えば移動体100の運転者によって「停留ボタン」のようなスイッチが押されたことをトリガにして、移動体100の停留動作の開始を判定してもよい。ここで、移動体100が自動運転に対応している場合、停留動作が開始すると、電子機器1による検出に基づいて、移動体100は自動で停留スペースPまで移動するものとしてよい。一方、移動体100が自動運転に対応していない場合、移動体100の運転者は、停留ボタンのようなスイッチを押した後に、移動体100を運転することによって停留スペースPまで移動させるものとしてよい。いずれの場合も、電子機器1は、移動体100が停留スペースPまで移動される際の状況に適した検出を行うのが好適である。
そこで、移動体100の停留動作が開始されると、電子機器1は、センサ5cをBFモードで動作させることにより、センサ5cから送信される送信波のビームBcが形成されるようにする。すなわち、電子機器1は、送信波Tcを、送信波によって形成されるビームBcに切り替える。上述のように、BFモードの動作において、ビームBcは、送信波Tcのビーム幅よりも狭い範囲のビーム幅を有してよい。また、上述のように、ビームBcを形成する送信波は、送信波Tcよりも長い到達範囲を有してよい。
以降、移動体100が後進しつつ停留スペースPまで移動する間、電子機器1は、例えばビームBcによって移動体100の周囲に存在する所定の対象物を検出する。移動体100の周囲に存在する障害物のような所定の対象物が検出されない場合、移動体100は、図6に示す進路Lを辿ることにより、停留スペースPまで移動することができる。
図6に示す時点で、センサ5cから送信される送信波によって形成されるビームBcは、図6に示す方向Dnにおいてメインローブを有するものとする。また、移動体100は、直進してから図6に示す時点で停止したことにより、ステアリング82を右にも左にも切っていないものとする。すなわち、図6に示す時点で、移動体100のステアリング82の切れ角はゼロであるものとする。図6において、移動体100のステアリング82の切れ角がゼロになる操舵方向を、方向Snとして示してある。図6においては、移動体100のステアリング82の切れ角がゼロとなる操舵方向Snを、一例として移動体100のタイヤ(前輪)の操舵方向として示してある。図6において、方向Snを操舵基準方向とし、方向Dnをビーム基準方向としてもよい。
また、一実施形態において、図6に示す時点で、電子機器1は、移動体100のギア84が後進に切り換えられたことをトリガとして、移動体100の後部に設置されたセンサ5cの動作をBFモードに切り替えてもよい。すなわち、移動体100のギア84が後進に切り換えられるまで、電子機器1は、例えばセンサ5c以外のセンサ5を通常モードで動作させることにより、送信波Tを送信させてもよい。この場合、移動体100のギア84が後進に切り換えられると、電子機器1は、少なくともセンサ5cの動作をBFモードに切り替えてよい。この場合、電子機器1は、センサ5c以外のセンサ5を通常モードの動作のままにしてもよいし、センサ5c以外のセンサ5の動作をオフにしてもよい。一方、図6に示す時点で、電子機器1は、例えば移動体100が前進して停留スペースPに移動すると判断したら、移動体100の前部に設置されたセンサ5の動作をBFモードに切り替えてもよい。
また、一実施形態において、図6に示す時点で、電子機器1は、移動体100のステアリング82が僅かに右方向に変更されたことをトリガとして、移動体100の右側に設置されたセンサ5cの動作をBFモードに切り替えてもよい。一方、図6に示す時点で、電子機器1は、移動体100のステアリング82が僅かに左方向に変更されたと判断すると、移動体100の左側に設置されたセンサ5の動作をBFモードに切り替えてもよい。
以上のように、電子機器1は、複数のセンサ5を備えてもよい。この場合、例えば送信制御部30が、移動体100の進行方向及び移動体100の操舵方向の少なくとも一方に応じて、複数のセンサ5のうち送信波が所定方向にビームを形成するセンサを選択してもよい。ここで、移動体100の進行方向(例えば前進方向/後進方向)は、例えば移動体100のギア84の切替状況、及び/又は、スロットルの操作状況などから判断してもよい。また、移動体100の操舵方向(例えば左方向/右方向)は、例えば移動体100のステアリング82の操舵状況などから判断してもよい。
図6に示す時点において、電子機器1は、移動体100の右方の後部に設置されたセンサ5cの動作をBFモードに切り替えている。この場合、電子機器1は、移動体100のギア84の切替状況、及び/又は、スロットルの操作状況などから、移動体100が後進すると判断してもよい。また、電子機器1は、移動体100のステアリング82の操舵状況などから、移動体100が(移動体100の前進方向を基準として)右方向に操舵されると判断してもよい。
図6に示す状況において、移動体100を停留スペースPまで移動させるためには、ステアリング82を右方向に操舵させて後進する必要がある。また、図6に示す時点では、電子機器1は、センサ5cから送信される送信波のビームBcが形成されるようにしている。しかしながら、上述のように、ビームBcは比較的長い到達距離を有するも、ビーム幅は比較的狭い範囲となる。したがって、図6に示す例において、電子機器1は、センサ5cから方向Dnに向けられるビームBcによって、例えば停留スペースPの壁Wのような障害物を検出することはできていない。
図7は、図6に示す状況から、移動体100においてステアリング82を右方向に比較的大きく(大きな切れ角で)操舵させた状態を示す図である。図7に示す時点では、移動体100をまだ後進させていない(すなわち一時停止状態である)ものとしてもよい。
図7は、移動体100のステアリング82が、操舵方向Sαに向けて操舵された状態を示している。図7に示すように、操舵方向Sαは、切れ角ゼロの操舵方向Snから、角度αだけ右方向に操舵した方向を示している。図7においても、移動体100のステアリング82の切れ角がゼロとなる操舵方向Snを、一例として移動体100のタイヤ(前輪)の操舵方向として示してある。また、図7において、移動体100のステアリング82の操舵方向Sαも、移動体100のタイヤ(前輪)の操舵方向として示してある。
操舵方向がSnからSαに変更されると、一実施形態に係る電子機器1は、変更された操舵方向の大きさ(角度α)に応じて、センサ5cから送信される送信波によって形成されるビームBcの方向も変更されるように制御する。図7は、移動体100のステアリング82が操舵方向Sαに向けて操舵されたことに伴い、センサ5cから送信される送信波のビームBc(図6)の方向が、ビームBcαのように変更された状態を示している。図6に示したビームBcにおけるメインローブの方向Dnは、図7に示すビームBcαにおけるメインローブの方向Dαに変化している。ここで、操舵方向が方向Snから方向Sαまで変化した角度αと、ビームのメインローブの方向が方向Dnから方向Dαまで変化した角度αとは、同一の角度としてもよいし、一方の角度が他方の角度の例えば定数倍、又は指数関数倍としてもよい。本開示では、一方の角度と他方の角度との関係は、例えば一方の角度を変数とし他方の角度を出力とする所定の関数関係にあるとしてもよい。
図6及び図7に示すように、センサ5cから送信される送信波のビームの方向を変化させる場合、例えば送信制御部30は、複数の送信アンテナ40から送信される送信波の少なくとも1つの位相を変化させてもよい。このような位相の変化は、送信制御部30における位相制御部32によって行われてよい。このように、送信制御部30は、複数の送信アンテナ40から送信される送信波の少なくとも1つの位相を変化させることにより、送信波のビームが形成される所定方向を制御して(変化させて)もよい。
図7に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、この時点において、停留スペースPの壁Wを障害物として検出することができる。したがって、図7に示す時点において、移動体100は、電子機器1によって周囲の障害物を検出しつつ、安全に後進を開始することができる。このように、一実施形態に係る電子機器1によれば、これから方向転換をしようとしている方向に、言わば先取りして、センサ5から送信される送信波のビームを向けることができる。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、ステアリング82を大きく切ることにより、センサ5から送信される送信波のビームの方向を大きく変更することができる。
図8は、図7に示すように移動体100においてステアリング82を右方向に操舵させた状態から、移動体100を少し後進させた状態を示す図である。
図7に示す時点では、移動体100の後進を開始するに際し、ステアリング82を比較的大きく(大きな切れ角αで)右方向に操舵させていた。この状況で後進を開始すると、移動体100の進行方向は比較的大きく変更される。一方、図8に示す時点では、移動体100の進行方向が既にある程度変更されたため、移動体100のステアリング82の切れ角を少し戻した状態を示している。
図8は、移動体100のステアリング82が、操舵方向Sβに向けて操舵された状態を示している。ここで、操舵方向Sβは、図7に示した操舵方向Sαよりも小さな角度としてよい。図8に示すように、操舵方向Sβは、切れ角ゼロの操舵方向Snから、角度βだけ右方向に操舵した方向を示している。図8においても、移動体100のステアリング82の切れ角がゼロとなる操舵方向Snを、一例として移動体100のタイヤ(前輪)の操舵方向として示してある。また、図7において、移動体100のステアリング82の操舵方向Sβも、移動体100のタイヤ(前輪)の操舵方向として示してある。
操舵方向がSαからSβに変更されると、一実施形態に係る電子機器1は、変更された操舵方向の大きさ(角度β)に応じて、センサ5cから送信される送信波によって形成されるビームBcの方向も変更されるように制御する。図8は、移動体100のステアリング82が操舵方向Sβに向けて操舵されたことに伴い、センサ5cから送信される送信波のビームBcα(図7)の方向が、ビームBcβのように変更された状態を示している。図7に示したビームBcαにおけるメインローブの方向Dαは、図8に示すビームBcβにおけるメインローブの方向Dβに変化している。ここでも、操舵方向が方向Snから方向Sβまでの角度βと、ビームのメインローブの方向Dnから方向Dβまでの角度βとは、同一の角度としてもよいし、一方の角度が他方の角度の例えば定数倍などとしてもよい。
図8に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、この時点においても、停留スペースPの壁Wを障害物として検出することができる。したがって、図8に示す時点においても、移動体100は、電子機器1によって周囲の障害物を検出しつつ、安全に後進を継続することができる。例えば、電子機器1は、移動体100から後方Bn方向も検出するとしてよい。これにより、移動体100は、安全に後進を継続することができる。このように、一実施形態に係る電子機器1によれば、これから方向転換をしようとしている方向に、言わば先取りして、センサ5から送信される送信波のビームを向けることができる。また、一実施形態に係る電子機器1によれば、ステアリング82を小さく切ることにより、センサ5から送信される送信波のビームの方向を小さく変更することができる。
図9は、図8に示すように移動体100においてステアリング82を右方向に操舵させつつ後進させた状態から、さらに移動体100を少し後進させた状態を示す図である。
図8に示す時点では、移動体100の後進を開始するに際し、ステアリング82を比較的小さく(小さな切れ角βで)右方向に操舵させていた。この状況で後進を続けると、移動体100の進行方向は比較的小さく変更される。一方、図9に示す時点では、移動体100の進行方向はもう変更する必要がないため、移動体100のステアリング82の切れ角をほぼ完全に戻した状態を示している。
図9は、移動体100のステアリング82が、操舵方向Snまで戻された状態を示している。図9においても、移動体100のステアリング82の切れ角がゼロとなる操舵方向Snを、一例として移動体100のタイヤ(前輪)の操舵方向として示してある。また、図9において、移動体100のステアリング82の操舵方向Snも、移動体100のタイヤ(前輪)の操舵方向として示してある。
操舵方向がSnに変更されると、一実施形態に係る電子機器1は、変更された操舵方向の大きさ(角度ゼロ)に応じて、センサ5cから送信される送信波によって形成されるビームBcの方向も変更されるように制御する。図9は、移動体100のステアリング82が操舵方向Snに向けて戻されたことに伴い、センサ5cから送信される送信波のビームBcβ(図8)の方向が、ビームBcのように変更された状態を示している。図8に示したビームBcβにおけるメインローブの方向Dβは、図9に示すビームBcにおけるメインローブの方向Dnに変化している。
図9に示すように、一実施形態に係る電子機器1は、この時点においても、停留スペースPの壁Wを障害物として検出することができる。したがって、図9に示す時点においても、移動体100は、電子機器1によって周囲の障害物を検出しつつ、安全に後進から停止を行うことができる。また、例えば、図9に示されるように、電子機器1は、移動体100から後方Bn方向も検出するとしてよい。これにより、移動体100は、安全に後進から停止を行うことができる。
このようにして、移動体100は、図6~図9に示すように、周囲の障害物を監視しつつ、進路Lを辿ることにより、停留スペースPまで移動することができる。
次に、一実施形態に係る電子機器1の動作について、さらに説明する。
図10は、一実施形態に係る電子機器1の動作を説明するフローチャートである。図10に示す動作は、例えば電子機器1が移動体100の停留スペースPを検出してから、移動体100が停留スペースPに向けて移動を開始しようとする時点で開始してよい。すなわち、図10に示す動作が開始する時点は、図6おいて説明した状況に対応するものとしてよい。以下の説明において、電子機器1を構成する各機能部の制御は、制御部10、送信制御部30、及び移動体制御部70の少なくともいずれかによって制御することができるものとする。
図10に示す動作が開始すると、電子機器1は、通常モードで動作を行う(ステップS1)。具体的には、ステップS1において、電子機器1は、制御部10による制御及び/又は送信制御部30による制御に基づいて、各センサ5の動作モードを通常モードに制御してよい。ここで、電子機器1は、ステップS1の処理が開始する時点で動作モードを通常モードに切り替えてもよいし、ステップS1の開始以前から通常モードで動作を継続していてもよい。ステップS1の動作が行われた時点は、例えば図6においてセンサ5が送信波Tcを送信している状況に対応する。
ステップS1において通常モードの動作が開始すると、制御部10は、停留動作が開始されたか否かを判定する(ステップS2)。ステップS2において停留動作が開始されたか否かは、上述のように、「停留ボタン」のようなスイッチがオンにされたか否かに基づいて判定してもよい。また、ステップS2において停留動作の検出が開始されたか否かは、例えば自動運転の場合、移動体制御部70による自動的な(運転者によって行われるものではない)トリガに基づいて判定してもよい。
ステップS2において停留動作が開始されていない場合、制御部10は、ステップS1に戻って通常モードの動作を継続する。
一方、ステップS2において停留動作が開始された場合、制御部10は、移動体100の進行方向及び操舵方向を検出する(ステップS3)。上述のように、移動体100の進行方向(例えば前進方向/後進方向)は、例えば移動体100のギア84の切替状況、及び/又は、スロットルの操作状況などから判断してもよい。また、移動体100の操舵方向(例えば左方向/右方向)は、例えば移動体100のステアリング82の操舵状況などから判断してもよい。さらに、移動体100の進行方向及び操舵方向は、移動体100の状況のみから検出されるのではなく、停留スペースPと移動体100との位置関係から判断されてもよい。
ステップS3において移動体100の進行方向及び操舵方向が検出されたら、制御部10は、移動体100の進行方向及び操舵方向に対応するセンサ5の動作モードをBFモードにする(ステップS4)。具体的には、ステップS4において、電子機器1は、制御部10による制御及び/又は送信制御部30による制御に基づいて、各センサ5の動作モードをBFモードに制御してよい。
ここで、例えば移動体100が前進すると判定される場合、制御部10は、複数のセンサ5のうち移動体100の前方向に配置されたセンサ5の動作モードをBFモードにしてよい。また、例えば移動体100が後進すると判定される場合、制御部10は、複数のセンサ5のうち移動体100の後方向に配置されたセンサ5の動作モードをBFモードにしてよい。さらに、例えば移動体100の操舵方向が左になると判定される場合、制御部10は、複数のセンサ5のうち移動体100の左側に配置されたセンサ5の動作モードをBFモードにしてよい。また、例えば移動体100の操舵方向が右になると判定される場合、制御部10は、複数のセンサ5のうち移動体100の右側に配置されたセンサ5の動作モードをBFモードにしてよい。
特に、ステップS4のBFモードにおいて、送信制御部30は、複数の送信アンテナ40から送信される送信波の少なくとも1つの位相を変化させることにより、送信波のビームが形成される所定方向を制御してもよい。ステップS4の動作が行われた時点は、例えば図6においてセンサ5が送信波のビームBcを形成している状況に対応する。
要するに、ステップS1~ステップS4までの動作において、送信制御部30は、移動体100の停留動作を検出することにより、当該停留動作において重要な役割を果たすと想定されるセンサ5をBFモードで動作させる。このように、送信制御部30は、例えば移動体100の停留動作のように、移動体100の所定の動作時において、複数の送信アンテナ40から送信される送信波が所定方向にビームを形成するように制御してもよい。
ステップS4においてセンサ5の動作モードがBFモードにされたら、制御部10は、移動体100の操舵方向を検出する(ステップS5)。ステップS5において、制御部10は、例えばステアリング82の切れ角を示す情報を、移動体制御部70から取得することにより、移動体100の操舵方向を検出してもよい。
ステップS5の処理により、制御部10は、図6及び図9に示す状況において、移動体100の操舵方向を方向Sn(操舵角ゼロ)と検出する。また、ステップS5の処理により、制御部10は、図7に示す状況において、移動体100の操舵方向を方向Sα(操舵角α)と検出する。また、ステップS5の処理により、制御部10は、図8に示す状況において、移動体100の操舵方向を方向Sβ(操舵角β)と検出する。
ステップS5において操舵方向が検出されたら、送信制御部30は、検出された操舵方向に応じて、BFモードで動作しているセンサ5から送信される送信波のビームの向きを適宜変更するように制御する(ステップS6)。上述したように、ステップS6において、操舵方向が変化した角度と、ビームの方向が変化する角度とは、同一の角度としてもよいし、一方の角度が他方の角度の例えば定数倍などとしてもよい。ステップS6において、送信制御部30は、センサ5から送信される送信波のビームの向きを所定方向に制御した上で、センサ5から送信波を送信する。
ステップS6の処理により、制御部10は、図7に示す状況(操舵角α)において、センサ5cから送信される送信波のビームの方向が方向Dαになるように制御する。また、ステップS6の処理により、制御部10は、図8に示す状況(操舵角β)において、センサ5cから送信される送信波のビームの方向が方向Dβになるように制御する。一方、ステップS6の処理により、制御部10は、図6及び図9に示す状況(操舵角ゼロ)において、センサ5cから送信される送信波のビームの方向が方向Dnになるように制御する。
ステップS6において方向が制御されたビームが送信されると、制御部10は、当該ビームによる物体の検出(センシング)を行う(ステップS7)。ステップS7において、制御部10は、送信アンテナ40から送信波Tを送信して、送信波Tが所定の対象物200などに反射した反射波Rを受信アンテナ50から受信する。このように、制御部10は、送信アンテナ40から送信波として送信される送信信号及び受信アンテナ50から反射波Rとして受信される受信信号に基づいて、移動体100の周囲の物体を検出してもよい。
また、ステップS7において、制御部10は、物体の検出の結果を、移動体制御部70に通知してもよい。移動体制御部70は、制御部10から通知された物体の検出の結果に基づいて、移動体100による自動運転を制御してもよい。また、移動体制御部70は、制御部10から通知された物体の検出の結果に基づいて、移動体100の運転者による運転をアシストするように制御してもよい。さらに、ステップS7において、制御部10は、物体の検出の結果を、報知部90から例えば注意喚起の情報を報知してもよい。
ステップS7において検出及び通知が行われたら、制御部10は、停留動作が終了したか否かを判定する(ステップS8)。ステップS8において停留動作が終了したか否かは、例えば「停留ボタン」のようなスイッチがオフにされたか否かに基づいて判定してもよい。また、ステップS8において停留動作の検出が終了したか否かは、例えば自動運転の場合、移動体制御部70による自動的な(例えば停留動作が終了した旨の)トリガに基づいて判定してもよい。
ステップS8において停留動作が終了していない場合、制御部10は、ステップS5に戻ってステップS5からステップS7までの動作を継続する。
一方、ステップS8において停留動作が終了した場合、制御部10は、ステップS4においてBFモードにしたセンサ5の動作モードを、通常モードにして(ステップS9)、図10に示す動作を終了する。また、ステップS9において、制御部10は、例えば複数のセンサ5の全てをオフにするように制御してもよい。
以上説明したように、一実施形態に係る電子機器1において、送信制御部30は、複数の送信アンテナ40から送信される送信波が所定方向にビームを形成するように制御する。また、送信制御部30は、送信波のビームが形成される所定方向を、移動体100の操舵方向に応じて制御する。このように、一実施形態に係る電子機器1によれば、移動体100の操舵方向が変化する先の領域に、送信波のビームが形成される所定方向を向けることができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、移動体100の操縦時における安全性を高めることができる。
また、一実施形態において、送信制御部30は、移動体100のステアリングの操舵角に応じて、送信波のビームが形成される所定方向を制御してもよい。また、一実施形態において、送信制御部30は、移動体100の操舵方向の変化が大きくなるにつれて、送信波のビームが形成される所定方向の変化が大きくなるように制御してもよい。
また、送信波のビーム形成は、垂直側を含めてもよい。すなわち、水平方向のみの検知は、駐車止めの縁石を検知してしまう場合もある。そのため、駐車止めの縁石を検知しない方法として、アンテナの垂直面の視野角((FoV,field of view)を狭める設計としてもよい。
このように、一実施形態に係る電子機器1によれば、移動体100の操舵方向が大きく変化する場合、移動体100の操舵方向が大きく変化する先の領域に、送信波のビームが形成される所定方向を向けることができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、移動体100の操縦時における安全性を、より高めることができる。
また、一実施形態において、送信制御部30は、移動体100の操舵方向の左右と、前記ビームが形成される所定方向の左右とが同じになるように制御してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1によれば、移動体100の操舵方向が変化する方向に応じて、当該方向に、送信波のビームが形成される所定方向を向けることができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、移動体100の操縦時における安全性を、より高めることができる。
上述の説明においては、図6~図9に示したように、移動体100が後進しながら停留スペースPまで移動する例について述べた。しかしながら、一実施形態に係る電子機器1は、移動体100が前進しながら停留スペースPまで移動するような状況にも、当然、適応することができる。一実施形態に係る電子機器1は、移動体100が前進しながら停留スペースPまで移動していても、移動体100の操舵方向に応じて、センサ5から送信される送信波のビームが形成される方向を制御する。例えば、一実施形態に係る電子機器1は、前進している移動体100の操舵方向が右方向に変更されると、センサ5から送信される送信波のビームが形成される方向を右方向に変更する。この場合も、一実施形態に係る電子機器1によれば、移動体100の操舵方向が変化する先の領域に、送信波のビームが形成される所定方向を向けることができる。したがって、一実施形態に係る電子機器1によれば、移動体100の操縦時における安全性を高めることができる。
(第2の実施形態)
次に、図11から図14を参照して、本開示の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、前述の実施形態と同様に、停留動作の開始から停留動作の終了まで、操舵方向がSnからSα又はSβなどに変更されるとする。この場合、第2の実施形態に係る電子機器1は、前述の実施形態と同様に、変更された操舵方向の大きさ(角度α又は角度βなど)に応じて、センサ5cから送信される送信波によって形成されるビームBcの方向も変更されるように制御する。一方、第2の実施形態では、送信アンテナ40がビームフォーミングする方向が前述の実施形態と異なる。第2の実施形態では、ビームフォーミングをする方向は、移動体側面軸に対して180-α度のように、すなわち移動体側面軸に対して180から減じる角度にて与えられる。ここで、移動体側面軸は、移動体100の進行方向に伸びて移動体側面と地面に平行な軸である。また、移動体側面軸は、切れ角ゼロの操舵方向Snに平行な方向Dsであるとしてもよい。図11において、方向Snを操舵基準方向とし、方向Dsをビーム基準方向としてもよい。
例えば、図11及び図14に示すように、操舵方向がSn(切れ角ゼロ)である場合、ビームBc’の方向は、移動体側面軸に平行な方向Dsに対してθ=180-0度すなわち方向Dsになる。また、図12に示すように、操舵方向がSα(切れ角α)である場合、ビームBc’αの方向は、移動体側面軸に平行な方向Dsに対してθ=180-α度す
なわち方向Dsαになる。また、図13に示すように、操舵方向がSβ(切れ角β)であ
る場合、ビームBc’ βの方向は、移動体側面軸に平行な方向Dsに対してθ=180
-β度すなわち方向Dsβになる。
図11から図14に示すように、センサ5cから送信される送信波のビームの方向を変化させる場合、例えば送信制御部30は、複数の送信アンテナ40から送信される送信波の少なくとも1つの位相を変化させてもよい。このような位相の変化は、送信制御部30における位相制御部32によって行われてよい。このように、送信制御部30は、複数の送信アンテナ40から送信される送信波の少なくとも1つの位相を変化させることにより、送信波のビームが形成される所定方向を制御して(変化させて)もよい。このように、図11から図14の動作は、概ね図10のステップS5からステップS8における動作に相当する。
このように、第2の実施形態においては、移動体100が進行する方向に対してセンサ5のビームが向けられる。そのため、移動体100が進行する方向の物体の検知が容易となる。
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各機能部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。複数の機能部等は、1つに組み合わせられたり、分割されたりしてよい。上述した本開示に係る各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施され得る。つまり、本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
上述した実施形態は、電子機器1としての実施のみに限定されるものではない。例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御方法として実施してもよい。さらに、例えば、上述した実施形態は、電子機器1のような機器の制御プログラムとして実施してもよい。
一実施形態に係る電子機器1は、最小の構成としては、例えば制御部10又は送信制御部30の少なくとも一方を備えるものとしてよい。また、送信制御部30は、位相制御部32及びパワー制御部34の少なくとも一方を備えるものとしてよい。一方、一実施形態に係る電子機器1は、制御部10又は送信制御部30の他に、図3に示すような、信号生成部22、周波数シンセサイザ24、パワーアンプ36、及び送信アンテナ40の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。また、一実施形態に係る電子機器1は、上述の機能部に代えて、又は上述の機能部とともに、受信アンテナ50、LNA52、ミキサ54、IF部56、AD変換部58、距離推定部62、及び角度推定部64の少なくともいずれかを、適宜含んで構成してもよい。このように、一実施形態に係る電子機器1は、種々の構成態様とすることができる。また、一実施形態に係る電子機器1が移動体100に搭載される場合、例えば上述の各機能部の少なくともいずれかは、移動体100内部などの適当な場所に設置されてよい。一方、一実施形態においては、例えば送信アンテナ40及び受信アンテナ50の少なくともいずれかは、移動体100の外部に設置されてもよい。
また、上述した実施形態において、停留スペースPとは、移動体100を自動車とした場合に、当該自動車が駐車又は停車するスペースとして説明した。しかしながら、一実施形態において、停留スペースとは、例えば水上で船が停泊するスペースなどとしてもよいし、例えば空中に設けられるスペースであってドローンなどが停留するスペースなどとしてもよい。
また、上述した実施形態において、主に送信波を送信する側からビームフォーミングを説明した。しかしながら、ビームフォーミングは、送信波が反射された反射波を受信する側においても、任意の方向から送信された送信波の受信強度を強くして、他の方向から送信された送信波の受信を抑制してもよい。