JP7070646B2 - シリカ粒子分散体及び表面処理シリカ粒子 - Google Patents
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まず本発明の第一の態様であるシリカ粒子分散体について説明する。
本発明のシリカ粒子分散体(以下「分散体」とも称す)は、表面処理シリカ粒子と溶媒とを含む。必要に応じて、他の成分を含んでもよく、各含有成分はそれぞれ1種又は2種以上を使用することができる。
以下、シリカ粒子分散体の各含有成分を説明する。
表面処理シリカ粒子とは、シリカ粒子表面の一部又は全部が処理(改質)された粒子を意味する。特に本発明では、表面処理シリカ粒子として、疎水化度が15~35%であり、かつフェニルアルコキシシランにより表面処理されてなる粒子、すなわち言い替えれば、シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部がフェニルアルコキシシラン由来の基で置換された粒子であって、疎水化度が当該範囲内にある粒子を使用する。
なお、特許文献1~3の実施例では、シリカ粒子を、アミノプロピルトリエトキシシラン、HMDS(ヘキサメチルジシラザン)又はメチルトリメトキシシランで表面処理している。だが、これらの表面処理剤は、フェニルアルコキシシランと異なって、フェニル基を有さないため、フェニル基に起因した立体障害や疎水性をシリカ粒子に付与することができない(例えば、後述の試験例13、14参照)。それゆえ、溶媒中で粒子の分散状態を安定して維持するという本発明の作用効果を発揮することができない。
Xm-Si-(OR)4-m (1)
(式中、Xは、置換基を有していてもよいフェニル基を表す。Rは、炭素数1~5のアルキル基を表す。mは、1~3の整数を表す。)で表される化合物が好ましい。
本明細書中、疎水化度は、後述する実施例に記載の測定方法に従って求められる。
本明細書中、気化水分量は、後述する実施例に記載の方法に従って求められる。
本明細書中、平均SEM径は、後述する実施例に記載の方法により求められる。
本明細書中、CV値とは、粒度分布の広がり、すなわち粒子径のバラツキの指標を意味し、後述する実施例に記載の方法により求められる。
粒子形状は、走査型電子顕微鏡等によって観察することができる。
溶媒は、比誘電率が5~30であることが好ましい。すなわち溶媒として、比誘電率が5~30である化合物を用いることが好適である。このような溶媒は上記表面処理シリカ粒子との親和性に優れるため、シリカ粒子分散体の長期安定性がより良好になり、封止材料用途に更に有用なものとなる。より好ましくは、比誘電率が8~25の溶媒である。
なお、溶媒は1種又は2種以上を使用することができるが、2種以上用いる場合は、その混合溶媒全体としての比誘電率が上記範囲にあることが好ましい。
本明細書中、1000時間静置による沈降率とは、分散体を作製後、24~26℃で1000時間静置した後にシリカ粒子が沈降した割合を意味する。具体的には、後述する実施例に記載の測定方法に従って求められる。
本発明のシリカ粒子分散体を得るには、例えば、シリカ粒子(「原料シリカ粒子」とも称す)と表面処理剤とを混合する工程(I)と、該工程(I)で得た混合物を120~250℃に加熱する工程(II)と、溶媒に分散させる工程(III)とを含み、該表面処理剤はフェニルアルコキシシランを含む、製造方法を採用することが好適である。この製造方法によれば、本発明の分散体を容易かつ簡便に得ることができる。必要に応じて1又は2以上のその他の工程を更に含んでもよく、その他の工程は特に限定されない。
以下、各工程について更に説明する。
工程(I)は、原料シリカ粒子と表面処理剤とを混合する工程である。中でも、分散媒の存在下、原料シリカ粒子と表面処理剤とを混合する工程であること、すなわちシリカ粒子、表面処理剤及び分散媒を含むスラリー(「懸濁液」とも称す)を作製する工程であることが好ましい。作製方法は特に限定されず、各原料が均一に混合された状態になるように、撹拌することが好ましい。各原料の添加混合順序も特に限定されない。スラリー作製時の温度も特に限定されないが、例えば、作業面や、フェニルアルコキシシランを加水分解しやすくする観点からは、5~60℃とすることが好ましい。より好ましくは30~60℃、更に好ましくは40~60℃である。
なお、各原料はそれぞれ1種又は2種以上使用することができる。
原料シリカ粒子は、無水ケイ酸及び含水ケイ酸のいずれであってもよい。例えば無水ケイ酸としては、乾式法(火炎燃焼法等)により製造されるシリカ(ヒュームドシリカ)の他、石英、トリディマイト、クリストバル石、コーサイト、スティショフ石、石英ガラス等が挙げられる。含水ケイ酸としては、シリカヒドロゾルをゲル化し乾燥して得られる、いわゆる非晶質のシリカゲルの他、コロイダルシリカ、シリケートオリゴマー、ミセルテンプレート型シリカ等が挙げられる。中でも、非晶質シリカがより好ましい。
本明細書中、平均SEM径は、後述する実施例に記載の方法により求められる。
粒子形状は、走査型電子顕微鏡等によって観察することができる。
有機溶媒としては、アルコール、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられ、アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等の1価の水溶性アルコール;エチレングリコール、グリセリン等の2価以上の水溶性アルコール;等が挙げられる。分散媒として好ましくは水であり、より好ましくはイオン交換水である。
他の無機酸化物粒子としては特に限定されないが、例えば、元素周期表II~VI族の元素を含むものが好ましく、より好ましくは元素周期表III~IV族の元素を含むものである。中でも、Al、Ti及び/又はZrが好ましい。他の無機酸化物粒子の使用量は、用途等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、原料無機酸化物粒子の総量(シリカ粒子と他の無機酸化物粒子との合計量)100質量%に対し、50質量%以下であることが好ましい。より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは10質量%以下、特に好ましくは1質量%以下(これを「原料無機酸化物粒子として、実質的にシリカ粒子のみを用いる形態」と称す)である。
なお、工程(I)後、工程(II)に供する前に分散媒を除去することも好適である。これにより、工程(II)による表面処理がより効率的に行われる。分散媒の除去の方法は特に限定されないが、濾過、静置乾燥、噴霧乾燥、真空乾燥等が挙げられる。
工程(II)は、工程(I)で得た混合物を120~250℃で加熱する工程である。この温度で加熱する、すなわちこの温度で上記混合物を熱処理することで、表面処理剤とシリカ粒子との結合が強固な表面処理シリカ粒子を得ることができる。これを工程(III)に供すると、経時で表面処理剤がシリカ粒子から遊離することが充分に抑制され、適度な疎水性を維持することができ、よって、長期安定性に優れるシリカ粒子分散体が得られる。
なお、熱処理むらを無くすため、均一な温度分布になるように工程(II)を行うことが好適である。
工程(III)は、溶媒に分散させる工程である。すなわち、上記工程(II)で得た表面処理シリカ粒子を溶媒に分散させる工程であることが好ましい。分散方法は特に限定されず、例えば、ビーズミル等の通常の分散手法を採用することができる。
なお、溶媒は1種又は2種以上を使用することができるが、2種以上用いる場合は、その混合溶媒全体としての比誘電率が上記範囲にあることが好ましい。
次に、本発明の第二の態様である表面処理シリカ粒子について説明する。
本発明の表面処理シリカ粒子は、フェニルアルコキシシランにより表面処理されてなり、疎水化度が15~35%である粒子である。このようにシリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部が、フェニルアルコキシシラン由来の基で置換されたシリカ粒子であって、かつ疎水化度が当該範囲にあることによって、長期間安定して分散状態を維持することができるシリカ粒子分散体を与えることができる。
なお、表面処理シリカ粒子の好ましい形態については、本発明の第一の態様であるシリカ粒子分散体の説明において上述したとおりである。
本発明の表面処理シリカ粒子を得るには、例えば、シリカ粒子と表面処理剤とを混合する工程(I)と、該工程(I)で得た混合物を120~250℃に加熱する工程(II)とを含み、該表面処理剤はフェニルアルコキシシランを含む、表面処理シリカ粒子の製造方法を採用することが好適である。この製造方法によれば、本発明の表面処理シリカ粒子を容易かつ簡便に得ることができる。この製造方法では、必要に応じて1又は2以上のその他の工程を含んでもよく、その他の工程は特に限定されない。
工程(I)及び(II)は、上述したシリカ粒子分散体の製造方法における工程(I)及び(II)とそれぞれ同様である。
更に、本発明の第三の態様であるシリカ含有樹脂組成物について説明する。
本発明のシリカ含有樹脂組成物(単に「樹脂組成物」とも称す)は、上述した本発明のシリカ粒子分散体と、樹脂成分とを含む。樹脂組成物は、必要に応じて更にその他の成分を含んでもよく、各含有成分はそれぞれ1種又は2種以上使用することができる。
本発明のシリカ含有樹脂組成物は、長期安定性に優れるため、種々の用途に有用である。中でもフィルム状封止材料の原料として特に有用である。すなわち上記シリカ含有樹脂組成物は、フィルム状封止材料用樹脂組成物であることが特に好ましい。この樹脂組成物を用いてフィルム状封止材料を作製する方法としては特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を塗工した後に溶媒を揮発させ、フィルム状とすることが好ましい。その他、他の形状の封止材料や、フィルム材料、トナー材料、歯科材料等の各種用途にも好ましく使用することができる。特に半導体に用いることが好適である。また、上述した本発明の表面処理シリカ粒子と樹脂成分とを含む封止材もまた、本発明に包含される。封止材はフィルム状であることが好適である。
(1)BET比表面積(m2/g)
BET比表面積は、試料を窒素雰囲気中、200℃で40分間熱処理し、マイクロメリティクス社製GEMINI VII 2390を用いてBET多点法で測定した。
200mLビーカーにイオン交換水を50mL入れ、その後、試料0.200gを入れ、スターラーで攪拌しながら、ビュレットを用いてメタノールを滴下し、液面上に浮いた試料が完全に沈むまで滴下したメタノール量を読み取り、下記数式(1)より疎水化度を算出した。
疎水化度(%)={滴定量(mL)/[滴定量(mL)+50(mL)]}×100 (1)
平沼産業社製水分気化装置EV-2000を用い、150℃で30分間加熱することにより吸着水を除去した後、210℃で20分間加熱により気化する水分量を測定した。水分量の測定は、平沼産業社製AQV-2200を用い、カールフィッシャー試薬としてFluka社製HYDRANAL-Composite5を用いた。
日本電子社製走査型電子顕微鏡JSM-840Fで撮影し、撮影したSEM像のファイルを旭化成エンジニアリング社製画像解析ソフト(A像くん(商標))で読み込み、円形粒子解析のアプリケーションを用い、50個以上のシリカ粒子の平均SEM径を測定した。
下記数式(2)よりCV値を算出した。
CV値=SEM径標準偏差/平均SEM径 (2)
式中、平均SEM径とは、SEM径を測定した全粒子のSEM径の平均値を意味する。
(1)接触角(°)
各分散体をグラインドゲージ(0-100μm)の上に滴下し、スクレーパーを用いて均一になるように塗工し、室温で90分間乾燥することにより、塗膜を作製した。ニック社製ぬれ性評価装置LSE-B100を用い、ゲージ目盛20~60μmの範囲の塗膜の上に、懸滴5μlで10ヶ所の接触角を測定し、その平均値から接触角を算出した。
各分散体50gを140mlのマヨネーズ瓶に秤量し、24~26℃で1000時間静置した後、分散体の高さ(c)と沈降物の高さ(d)とを測定し、下記数式(3)より沈降率を算出した。
d/c×100(%) (3)
水6300gにメタノール2700gを投入した後、50℃に昇温した。50℃に保持した水とメタノール溶液にフェニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、信越シリコーンKBM-103)を90g投入し、50℃にて30分撹拌することによりフェニルトリメトキシシラン加水分解液(1)を調製した。
原料及びその投入量を表1のとおりに変更したこと以外は、調製例1と同様にして、表面処理剤の加水分解液(2)~(7)を各々調製した。なお、調製例7では、表面処理剤を2種併用した。表1中、HMDSとは、ヘキサメチルジシラザンを意味する。
水3000gに、比表面積47.0m2/gのシリカ(堺化学工業社製、商品名「Sciqas 0.05μm」、平均SEM径:0.07~0.08μm)1000gと、調製例1で得た加水分解液(1)を全量投入し、撹拌羽根を使用し60分撹拌することによりシリカスラリーを調製した。シリカスラリーのpHは3.99であった。このシリカスラリーをスプレードライヤー(アシザワ・ニロアトマイザー社製、モービルマイナー型スプレードライヤー)を使用し、熱風入口温度300℃、熱風出口温度80℃で乾燥した後、ステンレス製のバットに充填し、130℃に設定した乾燥機で3時間熱をかけ、表面処理シリカ粒子(1)を得た。
得られた表面処理シリカ粒子(1)の物性を上述した方法にて測定又は評価した。結果を表3に示す。
得られたシリカ粒子分散体(1)の物性を上述した方法にて測定又は評価した。結果を表3に示す。
原料及び乾燥機の温度を表2のとおりに変更したこと以外は、試験例1と同様にして、表面処理シリカ粒子(2)~(15)を各々得た。得られた各表面処理シリカ粒子の物性を上述した方法にて測定又は評価した。結果を表3に示す。
次に、原料及び溶媒を表2のとおりに変更したこと以外は、試験例1と同様にして、シリカ粒子分散体(2)~(15)を各々得た。得られた各シリカ粒子分散体の物性を上述した方法にて測定又は評価した。結果を表3に示す。
なお、試験例7及び15で使用した原料シリカ粒子の詳細は以下のとおりである。
試験例7:堺化学工業社製、商品名「Sciqas 0.1μm」、比表面積:21.2m2/g、平均SEM径:0.15μm
試験例15:堺化学工業社製、商品名「Sciqas 0.25μm」、比表面積:13.7m2/g、平均SEM径:0.24μm
a:原料シリカ粒子の使用量100重量部に対する、表面処理剤の使用量(重量部)である。
b:原料シリカ粒子の比表面積(m2/g)
MEK:メチルエチルケトン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
試験例1~11で得たシリカ粒子分散体は、フェニルアルコキシシランで表面処理されてなり、疎水化度が15~35%である表面処理シリカ粒子と、溶媒とを含むのに対し、試験例12~15で得たシリカ粒子分散体は、表面処理シリカ粒子の疎水化度が15%未満又は35%を超えており、かつ試験例13、14は、表面処理シリカ粒子を得る際にフェニルアルコキシシラン以外の表面処理剤を使用した例である。このような相違の下、シリカ粒子分散体の1000時間静置後の沈降度を比較すると、試験例12~15で得た分散体に対し、試験例1~11で得た分散体は、沈降度が著しく低い。従って、フェニルアルコキシシランにより表面処理されてなり、疎水化度が15~35%である表面処理シリカ粒子と、溶媒とを含む構成の分散体であると、シリカ粒子の沈降が充分に抑制され、保管や輸送が容易で、長期間安定して分散状態を維持できることが分かった。
また試験例1において、シリカ粒子分散体を作製する際の溶媒を変更して、その溶媒の違いによるシリカ粒子分散体の沈降率に与える影響を検討したところ、試験例1、8~10(溶媒:シクロヘキサノン、MEK、PGMEA又はPGME)では、溶媒としてシクロヘキサン、メタノール又は水を用いた場合(すなわち比誘電率が5~30の範囲外となる溶媒を用いた場合)に比べ、沈降率がより一層低減され、分散状態がより安定に維持されたことが分かった。
Claims (8)
- シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部がフェニルアルコキシシラン由来の基で置換され、疎水化度が15~35%であり、150~210℃での気化水分量が600ppm以下である
ことを特徴とする表面処理シリカ粒子。 - シリカ粒子表面の水酸基の少なくとも一部がフェニルアルコキシシラン由来の基で置換され、疎水化度が15~35%であり、平均SEM径が0.07~0.20μmである
ことを特徴とする表面処理シリカ粒子。 - 前記表面処理シリカ粒子は、CV値が0.15以下である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の表面処理シリカ粒子。 - 前記表面処理シリカ粒子は、比表面積が20~60m2/gである
ことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の表面処理シリカ粒子。 - 請求項1~4のいずれかに記載の表面処理シリカ粒子を製造する方法であって、
該製造方法は、
シリカ粒子と表面処理剤とを混合する工程(I)と、
該工程(I)で得た混合物を120~250℃に加熱する工程(II)とを含み、
該表面処理剤は、フェニルアルコキシシランを含む
ことを特徴とする表面処理シリカ粒子の製造方法。 - 請求項1~4のいずれかに記載の表面処理シリカ粒子と、樹脂成分とを含む
ことを特徴とするシリカ含有樹脂組成物。 - フィルム状封止材料用樹脂組成物である
ことを特徴とする請求項6に記載のシリカ含有樹脂組成物。 - 請求項1~4のいずれかに記載の表面処理シリカ粒子と、樹脂成分とを含む
ことを特徴とする封止材。
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