JP7070500B2 - 単結晶引き上げ装置及び単結晶引き上げ方法 - Google Patents

単結晶引き上げ装置及び単結晶引き上げ方法 Download PDF

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Description

本発明は、単結晶引き上げ装置及びこれを用いた単結晶引き上げ方法に関する。
シリコンやガリウム砒素などの半導体は単結晶で構成され、小型から大型までのコンピュータのメモリ等に利用されており、記憶装置の大容量化、低コスト化、高品質化が要求されている。
従来、これら半導体の要求を満たす単結晶を製造するための単結晶引き上げ方法の1つとして、坩堝内に収容されている溶融状態の半導体材料(溶融液、融液)に磁場を印加させ、これにより、溶融液に発生する熱対流を抑止して、大直径かつ高品質の半導体を製造する方法(一般に磁場印加チョクラルスキー(MCZ)法と称している)が知られている。
図11を参照して、従来のCZ法による単結晶引き上げ装置の一例を説明する。図11の単結晶引き上げ装置100は、上面が開閉可能な引き上げ炉101を備え、この引き上げ炉101内に坩堝102を内蔵した構成となっている。そして、引き上げ炉101の内側には坩堝102内の半導体材料を加熱溶融するための加熱ヒーター103が坩堝102の周囲に設けられ、引き上げ炉101の外側には、1対(2個)の超電導コイル104(104a,104b)を円筒型容器としての冷媒容器(以下、円筒型冷媒容器と称する)105に内蔵した超電導磁石130が配置されている。
単結晶の製造に際しては、坩堝102内に半導体材料106を入れて加熱ヒーター103により加熱し、半導体材料106を溶融させる。この溶融液中に図示しない種結晶を例えば坩堝102の中央部上方から下降挿入し、図示しない引き上げ機構により種結晶を所定の速度で引き上げ方向108の方向に引き上げていく。これにより、固体・液体境界層に結晶が成長し、単結晶が生成される。この際、加熱ヒーター103の加熱によって誘起される溶融液の流体運動、即ち熱対流が生じると、引き上げられる単結晶が有転位化しやすく、単結晶生成の歩留りが低下する。
そこで、この対策として、超電導磁石130の超電導コイル104を使用する。すなわち、溶融液の半導体材料106は、超電導コイル104への通電によって発生する磁力線107により動作抑止力を受け、坩堝102内で対流することなく、種結晶の引き上げに伴って成長単結晶がゆっくりと上方に向って引き上げられ、固体の単結晶109として製造されるようになる。なお、引き上げ炉101の上方には、図示しないが、単結晶109を坩堝中心軸110に沿って引き上げるための引き上げ機構が設けられている。
次に、図12により、図11に示した単結晶引き上げ装置100に用いられる超電導磁石130の一例について説明する。この超電導磁石130は、円筒型真空容器119に超電導コイル104(104a,104b)を円筒形の冷媒容器を介して収納した構成とされている。この超電導磁石130においては、真空容器119内の中心部を介して互いに向き合う1対の超電導コイル104a、104bが収納されている。これら1対の超電導コイル104a、104bは横向きの同一方向に沿う磁場を発生しているヘルムホルツ型磁場コイルであり、図11に示すように、引き上げ炉101及び真空容器119の中心軸110に対して左右対称の磁力線107を発生している(この中心軸110の位置を磁場中心と称している)。
なお、この超電導磁石130は、図11、12に示すように2つの超電導コイル104a、104bに電流を導入する電流リード111、円筒型冷媒容器105の内部に納められた第1の輻射シールド117および第2の輻射シールド118を冷却するための小型ヘリウム冷凍機112、円筒型冷媒容器105内のヘリウムガスを放出するガス放出管113及び液体ヘリウムを補給する補給口を有するサービスポート114等を備えている。このような超電導磁石130のボア115内(ボアの内径はDで表される)に、図11に示した引き上げ炉101が配設される。
図13は、上述した従来の超電導磁石130の磁場分布を示している。この図13に示すように、従来の超電導磁石130においては、互いに向き合った1対の超電導コイル104a、104bが配置されていることから、各コイル配置方向(図13のX方向)では両側に向って磁場が次第に大きくなり、これと直交する方向(図13のY方向)では上下方向に向って次第に磁場が小さくなる。このような従来の構成では図12、13に示すようにボア115内の範囲の磁場勾配が大きすぎるため、溶融した単結晶材料(溶融液)に発生する熱対流抑制が不均衡になっており、かつ磁場効率が悪い。即ち、図13に同じ磁束密度の領域を斜線で示したように、中心磁場近傍付近の領域では、磁場均一性がよくない(すなわち、図13において、上下、左右に細長いクロス状になっている)ため、熱対流の抑制効果が低く、高品質の単結晶を引き上げることができないという問題点があった。
上記の問題点を解決するための技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された技術を、図14を参照して説明する。図14(b)は、図14(a)のA-A断面を示している。特許文献1には、上記の問題点を解決するため、図14(a)、図14(b)に示すように、超電導コイル104の数を4以上(例えば、104a、104b、104c、104dの4つ)とし、引き上げ炉の周囲に同軸的に設けた筒形容器内の平面上に配置するとともに、その配置された各超電導コイルを筒形容器の軸心を介して対向する向きに設定し、かつ超電導コイルの相互に隣接する1対ずつのもの同士が前記筒形容器の内側に向く配設角度θ(図14(b)参照)を100°~130°の範囲(すなわち、X軸を挟んで隣接するコイル軸間の中心角度α(図14(b)参照)は50°~80°)に設定することが開示されている。これによって、ボア115内部に磁場勾配の少ない均一性のよい横磁場を発生することができ、また、平面上に同心円状又は正方形状の磁場分布を発生することができ、不均衡電磁力を大幅に抑制することができるとされ、また、その結果、引き上げ方向の均一磁場領域が向上するとともに、横磁場方向の磁場がほぼ水平になり、不均衡電磁力の抑制により、高品質の単結晶の製造が実現でき、さらに、この単結晶引き上げ方法によれば、高品質の単結晶体を歩留りよく引き上げることができることも開示されている。なお、図14中のdは超電導コイルの直径(内径)、lは1対のコイル間の距離である。
この方法によれば、溶融した単結晶材料にかかる磁場分布は均一化され、不均衡電磁力が抑制されるため、2コイルを使用した従来技術に比べて、より低い磁束密度でも熱対流が抑制されるようになった。
しかしながら、このように均一な磁場分布であっても、磁力線がX軸方向に向かう横磁場においては、X軸と平行な断面内とY軸に平行な断面内では熱対流に違いがあることが、3次元の融液対流を含む総合伝熱解析により明らかとなった(特許文献2参照)。
磁場中で導電性流体が運動する場合、磁力線ならびに磁力線に垂直な流体成分と直交する方向に誘起電流が生ずるが、電気的に絶縁性を有する石英坩堝を用いた場合は、坩堝壁と溶融した半導体材料の自由表面が絶縁壁となるため、これらに直交する方向の誘起電流は流れなくなる。このため、溶融した半導体材料の上部においては電磁力による対流抑制力が弱くなっており、また、X軸に平行な断面(磁力線に対して平行な断面)とX軸と垂直な断面(磁力線に対して垂直な断面)を比べると、X軸と垂直な断面内(磁力線と垂直な断面内)の方が、対流が強くなっている。
このように、前記4コイルにより均一な磁場分布としたものでは、多少、対流の速度差が小さくなっているが、それでも周方向で不均一な流速分布となっている。特に、磁力線に垂直な断面内に坩堝壁から成長界面をつなぐ流れ場が残存することで、石英坩堝から溶出する酸素が結晶に到達するため、水平磁場印加による酸素濃度低下効果には限界があり、最近要求が多くなっているパワーデバイスやイメージセンサー用半導体結晶における極低濃度の酸素濃度要求に応えることが難しくなっているという問題点がある。また、坩堝の周方向で不均一な流れ場が存在することは、単結晶を回転させながら引き上げる単結晶においては成長縞の原因となり、成長方向に平行な断面内を評価すると、結晶回転周期の抵抗率・酸素濃度変動が観察されるため、成長方向に垂直にスライスしたウェーハ面内ではリング状の分布となってしまうという問題点もある。
特許文献2では、この問題を解決するため、超電導コイルのコイル軸を含む水平面内において、引き上げ炉の中心軸における磁力線方向をX軸としたときに前記X軸上の磁束密度分布が上に凸の分布であり、前記水平面内の前記中心軸における磁束密度を磁束密度設定値とした場合、前記X軸上の磁束密度は坩堝壁では前記磁束密度設定値の80%以下となると同時に、前記水平面内において前記X軸と直交し前記中心軸を通るY軸上の磁束密度分布が下に凸の分布であり、前記Y軸上の磁束密度は坩堝壁では前記磁束密度設定値の140%以上となるように、磁場分布を発生させるものであり、前記磁場発生装置において、それぞれ対向配置された超電導コイルの対をそれぞれのコイル軸が同じ水平面内に含まれるように2対設けるとともに、前記コイル軸間の前記X軸を挟む中心角度αを100度以上120度以下とした。これにより、特許文献2に開示された技術では、以下の効果を得ることができる。すなわち、電磁力による対流抑制力が不十分だったX軸と垂直な断面内においても、溶融した単結晶材料の流速を低減できるとともに、溶融した単結晶材料のX軸に平行な断面における流速と、溶融した単結晶材料のX軸に垂直な断面における流速とをバランスさせることができる。また、X軸と垂直な断面内においても、溶融した単結晶材料の流速を低減することによって、坩堝壁から溶出した酸素が単結晶に到達するまでの時間が長くなり、溶融した単結晶材料の自由表面からの酸素蒸発量が増加することで、単結晶に取り込まれる酸素濃度を大幅に低減させることができる単結晶引き上げ装置とすることができる。また、溶融した単結晶材料のX軸に平行な断面における流速と、溶融した単結晶材料のX軸に垂直な断面における流速とをバランスさせることによって、育成する単結晶中の成長縞を抑制することができる単結晶引き上げ装置とすることができるとした。
特開2004-51475号公報 特開2017-57127号公報
しかしながら、本発明者らが各種コイル配置での磁場分布を解析した結果、特許文献2に記載の磁場分布は、特許文献2に記載のコイル配置以外でも実現可能であることが明らかとなった。また、特許文献2に記載のコイル配置では磁場効率を上げるのに全ての超電導コイルを引き上げ炉101(チャンバー)に極力近づけるため、超電導コイル104aと104b、又は104cと104dの間隔が引き上げ炉101のチャンバー並びに内部の黒鉛部材よりも狭くなってしまう(図15(a)参照)。
また、図15(b)に示したように、超電導コイル104aと104b、又は104cと104dについて、仮にその両者又はいずれかの側で円筒容器105に切り欠き131を設け、引き上げ炉101のチャンバーを上昇・旋回できるようにしたとしても、引き上げ炉101のチャンバー並びに大型の黒鉛部材は一旦超電導磁石130(マグネット)を回避するように上昇させてから取り出す必要があることから、作業効率が悪く、且つ高重量物を高所に上げる(アーム150を使用、図16参照)ことで、手間がかかり、安全性を確保する必要もあるため、解体・セット時には磁場発生装置を下降させてから実施する必要があった。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、単結晶引き上げ装置の解体・セット時に磁場発生装置を移動させる必要がなく、育成する単結晶中の酸素濃度を低減できるとともに、育成する単結晶中の成長縞を抑制することができる単結晶引き上げ装置を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような単結晶引き上げ装置を用いた単結晶引き上方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、加熱ヒーター及び溶融した単結晶材料が収容される坩堝が配置され中心軸を有する引き上げ炉と、前記引き上げ炉の周囲に設けられ、超電導コイルと該超電導コイルを内蔵するクライオスタットを有する磁場発生装置とを備え、前記超電導コイルへの通電により前記溶融した単結晶材料に水平磁場を印加して、前記溶融した単結晶材料の前記坩堝内での対流を抑制する単結晶引き上げ装置であって、前記磁場発生装置は、前記超電導コイルを4個有し、前記4個の超電導コイルの全てのコイル軸が単一の水平面内に含まれるように配置されており、前記水平面内の前記中心軸における磁力線方向をX軸としたときに、該X軸と前記引き上げ炉の中心軸を含む断面で分けられる第1の領域及び第2の領域に、それぞれ2個ずつの前記超電導コイルが配置されており、前記4個の超電導コイルは、前記断面に対して線対称に配置されており、前記4個の超電導コイルは、いずれもコイル軸が前記水平面内において前記X軸と垂直なY軸に対して-30°超30°未満の角度の範囲となるよう配置されており、前記4個の超電導コイルが発生する磁力線の方向は、前記断面に対して線対称であり、前記第1の領域及び第2の領域のそれぞれにおいて、2個の前記超電導コイルは、発生する磁力線の方向が逆であることを特徴とする単結晶引き上げ装置を提供する。
このような超電導コイルの配置を有する磁場発生装置を備える単結晶引き上げ装置であれば、単結晶引き上げ装置の解体・セット時に磁場発生装置を移動させる必要がない超電導コイルの配置とすることができる。さらに、このような超電導コイルの配置を有する磁場発生装置を備える単結晶引き上げ装置であれば、電磁力による対流抑制力が不十分だったX軸と垂直な断面内においても、溶融した単結晶材料の流速を低減できるとともに、溶融した単結晶材料のX軸に平行な断面における流速と、溶融した単結晶材料のX軸に垂直な断面における流速とをバランスさせることができる。X軸と垂直な断面内においても、溶融した単結晶材料の流速を低減することによって、坩堝壁から溶出した酸素が単結晶に到達するまでの時間が長くなり、溶融した単結晶材料の自由表面からの酸素蒸発量が増加することで、単結晶に取り込まれる酸素濃度を大幅に低減させることができる単結晶引き上げ装置とすることができる。また、溶融した単結晶材料のX軸に平行な断面における流速と、溶融した単結晶材料のX軸に垂直な断面における流速とをバランスさせることによって、育成する単結晶中の成長縞を抑制することができる単結晶引き上げ装置とすることができる。
また、本発明の単結晶引き上げ装置においては、前記磁場発生装置は、前記クライオスタットとして、前記4個の超電導コイルを全て内蔵するコの字型形状のクライオスタットを備えるか、又は、前記第1の領域及び第2の領域のそれぞれにおいて2個の前記超電導コイルを内蔵するクライオスタットを備え、該2個のクライオスタットが構造的に連結された構造を有するものであることが好ましい。
このような磁場発生装置であれば、磁力線方向の手前側又は奥側に何も無い空間ができるため、引き上げ炉を構成する部材の操作が、磁場発生装置を昇降させずに可能となり、昇降装置も不要となる。
また、前記超電導コイルは、鉛直方向上方から見た該超電導コイルの幅よりも、該超電導コイルの鉛直方向の高さの方が長いものとすることができる。
磁場発生装置の超電導コイルをこのような形状にすることで、上から見たコイルの幅が狭くとも、コイル軸を含む水平面内において、引き上げ炉の中心軸における磁束密度を高めることができる。
また、本発明は、上記のいずれかの単結晶引き上げ装置を用いて、シリコン単結晶を引き上げることを特徴とする単結晶引き上げ方法を提供する。
このような単結晶引き上げ方法であれば、取り込まれる酸素濃度が大幅に低減されるとともに成長縞が抑制されたシリコン単結晶を育成することができる。
本発明の単結晶引き上げ装置であれば、単結晶引き上げ装置の解体・セット時に磁場発生装置を移動させる必要がない超電導コイルの配置とすることができる。それとともに、本発明の単結晶引き上げ装置であれば、単結晶に取り込まれる酸素濃度を大幅に低減させることができるとともに育成する単結晶中の成長縞を抑制することができる単結晶引き上げ装置とすることができる。また、本発明の単結晶引き上げ方法によれば、取り込まれる酸素濃度が大幅に低減されるとともに成長縞が抑制された単結晶を育成することができる。
本発明の単結晶引き上げ装置の一例を示す概略図であり、(a)は単結晶引き上げ装置の概略断面図であり、(b)は超電導発生装置における超電導コイルの配置(上から見た図)を表す概略図である。 本発明の単結晶引き上げ装置のコイル配置(上から見た図)の例を示す概略図である。 本発明の単結晶引き上げ装置における磁場発生装置に内蔵されるクライオスタットの一例を示す概略図である。 本発明において用いることができる超電導コイルの形状を示す概略図である。 (a)は、実施例1におけるシミュレーションによる磁場解析結果を示す概略図であり、(b)は、実施例1における超電導コイルの配置を示す概略図である。 実施例1におけるシミュレーションによる磁場分布を考慮した3D融液対流解析結果を示す図であり、(a)は磁場に垂直な断面における融液の速度ベクトルを示しており、(b)は磁場に垂直な断面における融液の酸素密度を示しており、(c)は磁場に平行な断面における融液の速度ベクトルを示しており、(d)は磁場に平行な断面における融液の酸素密度を示している。 (a)は、比較例1におけるシミュレーションによる磁場解析結果を示す図であり、(b)は、比較例1における超電導コイルの配置を示す図である。 比較例1におけるシミュレーションによる磁場分布を考慮した3D融液対流解析結果を示す図であり、(a)は磁場に垂直な断面における融液の速度ベクトルを示しており、(b)は磁場に垂直な断面における融液の酸素密度を示しており、(c)は磁場に平行な断面における融液の速度ベクトルを示しており、(d)は磁場に平行な断面における融液の酸素密度を示している。 (a)は、比較例2におけるシミュレーションによる磁場解析結果を示す図であり、(b)は、比較例2における超電導コイルの配置を示す図である。 比較例2におけるシミュレーションによる磁場分布を考慮した3D融液対流解析結果を示す図であり、(a)は磁場に垂直な断面における融液の速度ベクトルを示しており、(b)は磁場に垂直な断面における融液の酸素密度を示しており、(c)は磁場に平行な断面における融液の速度ベクトルを示しており、(d)は磁場に平行な断面における融液の酸素密度を示している。 従来の単結晶引き上げ装置の一例を示す概略断面図である。 従来の単結晶引き上げ装置における超電導磁石の一例を示す概略斜視図である。 従来の磁束密度分布を示す図である。 特許文献1の超電導磁石を示す概略斜視図及び概略横断面図である。 特許文献2の超電導磁石を示す概略横断面図であり、(a)は円筒容器の場合を示し、(b)円筒容器の一部に切り欠きありの場合を示す。 特許文献2の超電導磁石を用いた場合の引き上げ炉(チャンバー)を上昇・旋回させる手順を示す概略図である。
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、図1を参照しながら、本発明の単結晶引き上げ装置の実施態様の一例を説明する。図1(a)の単結晶引き上げ装置21は、加熱ヒーター13と、溶融した単結晶材料(以下、単に「融液」とも称する)16が収容される坩堝12が配置され中心軸20を有する引き上げ炉11と、引き上げ炉11の周囲に設けられ超電導コイルと該超電導コイルを内蔵するクライオスタットを有する磁場発生装置30とを備えており、超電導コイルへの通電により融液16に水平磁場を印加して、融液16の坩堝12内での対流を抑制しながら、単結晶19を引き上げ方向18に引き上げる構成になっている。
さらに、磁場発生装置30は、超電導コイルが図1(b)に示したように配置されたものである。図1(b)に示したように、磁場発生装置30は、超電導コイルを4個有する。また、4個の超電導コイル14a、14b、14c、14dの全てのコイル軸が単一の水平面(図1(a)に示したコイル軸を含む水平面22)内に含まれるように配置されている。さらに、水平面22内の中心軸20における磁力線17の方向をX軸としたときに、該X軸と引き上げ炉の中心軸20を含む断面で分けられる第1の領域及び第2の領域に、それぞれ2個ずつの超電導コイルが配置されている。図1(b)中、紙面上でX軸の左側を第1の領域、X軸の右側を第2の領域とすると、第1の領域には超電導コイル14aと超電導コイル14dが配置されている。第2の領域には超電導コイル14bと超電導コイル14cが配置されている。また、本発明においては、図1(b)に示したように、4個の超電導コイル14a、14b、14c、14dは、断面に対して線対称に配置されている。また、4個の超電導コイル14a、14b、14c、14dは、いずれもコイル軸が水平面22内においてX軸と垂直なY軸に対して-30°超30°未満の角度の範囲となるよう配置されている。図1(b)には、第1の領域及び第2の領域に、それぞれ2個ずつ配置された超電導コイルが、X軸に平行に並べて配置されている状態を示している。また、本発明においては、4個の超電導コイル14a、14b、14c、14dが発生する磁力線の方向は、図1(b)に示したように、上記の断面に対して線対称である。さらに、本発明において、第1の領域及び第2の領域のそれぞれにおいて、2個の超電導コイルは、発生する磁力線の方向が逆である。
上記のように、本発明において、4個の超電導コイル14a、14b、14c、14dは、いずれもコイル軸が水平面22内においてX軸と垂直なY軸に対して-30°超30°未満の角度の範囲となるよう配置されることが必要である。図2には、本発明の単結晶引き上げ装置のコイル配置(上から見た図)の例を示した。図2(a)はコイル軸が水平面22内においてY軸に対して0°の場合を示している。この場合、4個の超電導コイル14a、14b、14c、14dはX軸に平行であり、コイル軸とY軸が平行である。図2(b)では、コイル軸が水平面22内においてY軸に対して25°の場合を示している。図2(c)には、同様に、コイル軸が水平面22内においてY軸に対して-25°の場合を示している。図2(c)に示したように、コイル軸とY軸が、超電導コイルのX軸と反対側で交わる場合、マイナスの角度と定義する。
コイル軸がY軸に対して-30°超30°未満の角度の範囲となるよう配置されれば、所定の磁場分布を発生させることが可能である。このような本発明の超電導コイルの配置による磁場分布であれば、従来、電磁力による対流抑制力が不十分だったX軸と垂直な断面内においても、溶融した単結晶材料の流速を低減できるとともに、溶融した単結晶材料のX軸に平行な断面における流速と、溶融した単結晶材料のX軸に垂直な断面における流速とをバランスさせることができる。また、X軸と垂直な断面内においても、溶融した単結晶材料の流速を低減することによって、坩堝壁から溶出した酸素が単結晶に到達するまでの時間が長くなり、溶融した単結晶材料の自由表面からの酸素蒸発量が増加することで、単結晶に取り込まれる酸素濃度を大幅に低減させることができる単結晶引き上げ装置とすることができる。また、溶融した単結晶材料のX軸に平行な断面における流速と、溶融した単結晶材料のX軸に垂直な断面における流速とをバランスさせることによって、育成する単結晶中の成長縞を抑制することができる単結晶引き上げ装置とすることができる。
また、コイル軸がY軸に対して-30°超30°未満の角度の範囲となるよう配置されれば、単結晶引き上げ装置の解体・セット時に磁場発生装置を移動させる必要がない超電導コイルの配置とすることができる。コイル軸がY軸に対して-30°以下となるか、30°以上の角度の範囲となるよう配置されると、超電導コイルを内蔵するクライオスタットの幅が大きくなるか、又は超電導コイル間の距離が短くなって、従来のように、黒鉛部品の解体・セットするのに磁場発生装置を昇降させる必要が出てきて問題となる。
特にコイル軸の角度はY軸に対して-5°以下にすることが好ましい。このような角度にすることで、超電導線の巻き数もしくは電流値を減らしても中心軸での磁束密度を維持することができることから、コイルに掛かる力を減じることが可能となり、クエンチしにくい磁場発生装置となる。
さらに、前記磁場発生装置において、超電導状態を作り出すためのクライオスタットは、図3(a)に示したように、4個の超電導コイル14a、14b、14c、14dを全て内蔵するコの字型形状のクライオスタット31を備えることができる。その他、上記の第1の領域及び第2の領域のそれぞれにおいて2個の超電導コイルを内蔵するクライオスタットを備え、該2個のクライオスタットが構造的に連結された構造を有するものとすることもできる。この態様のクライオスタットの例を図3(b)に示した。この態様では、第1の領域において2個の超電導コイル14a、14dが第1のクライオスタット32に内蔵されており、第2の領域において2個の超電導コイル14b、14cが第2のクライオスタット33に内蔵されている。さらに、この第1のクライオスタット32と第2のクライオスタット33が構造部材34により構造的に連結されている。
このような磁場発生装置であれば、磁力線方向の手前側又は奥側に何も無い空間ができるため、引き上げ炉11のチャンバーの旋回や、黒鉛部品の解体・セットが、磁場発生装置を昇降させずに可能となり、昇降装置も不要となる。
なお、本発明の単結晶引き上げ装置において用いる超電導コイルは、鉛直方向上方から見た該超電導コイルの幅よりも、該超電導コイルの鉛直方向の高さの方が長いものとすることができる。図4(a)、(b)にはこの超電導コイルを示している。図4(a)は超電導コイルの断面を示しており、図4(b)は、図4(a)を横に向けた様子を示しており、超電導コイルの高さはHで示される。Hの方向が鉛直方向の上下である。図4(b)中、Rは超電導コイルの曲線部(円弧)の曲率半径である。磁場発生装置の超電導コイルをこのような形状にすることで、上から見たコイルの幅が狭くとも、コイル軸を含む水平面内において、引き上げ炉の中心軸における磁束密度を高めることができる。
また、本発明の単結晶引き上げ装置を用いて、シリコン単結晶を引き上げることができる。このような単結晶引き上げ方法であれば、取り込まれる酸素濃度が大幅に低減されるとともに成長縞が抑制されたシリコン単結晶を育成することができる。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づきさらに説明するが、これらの実施例は例示的に示されるもので限定的に解釈されるべきではない。
(実施例1)
上下円弧の半径が250mm、高さ1000mmのコイルを2対(4個)有し、該2対(4個)の超電導コイルのコイル軸を含む水平面内の前記中心軸における磁力線方向をX軸としたときに、このX軸と引き上げ炉の中心軸を含む断面に対して、左右(第1の領域及び第2の領域)にそれぞれ一対各々2個の超電導コイルをX軸と平行に並べ、該断面に対して線対称に配置した磁場発生装置について、磁場解析と3D融液対流解析を行った後、この装置を用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。
図5(a)は、ANSYS-Maxwell3Dによる磁場解析結果であり、中心軸における磁束密度が1000ガウス(0.1テスラ)となるようにコイルの電流×巻き数を調整して解析した後、磁束密度の分布を表示させたものである。なお、図5(b)はこのときの4個の超電導コイル14a、14b、14c、14dの配置を示した概略図である。
上記磁場解析の結果から、結晶と融液(メルト)領域を含む空間の磁束密度を抽出し、磁場分布を考慮した3D融液対流解析を実施した。図6(a)、(c)は、その結果から得られた融液内の速度ベクトル(図6(a)が磁場に垂直な断面、図6(c)が磁場に平行な断面である。)、また図6(b)(d)は融液内の酸素濃度分布を示している(図6(b)が磁場に垂直な断面、図6(d)が磁場に平行な断面である。)。
その時の計算条件は、チャージ量400kg、32インチ(1インチは25.4mm)の坩堝、直径306mmのシリコン結晶、結晶回転9rpm,坩堝回転0.4rpm、引き上げ速度0.4mm/minとして、計算した。
実施例1の磁場では、後述する比較例2と同様に、磁力線と垂直な断面においても対流抑制力が強く結晶端の下にのみ比較的活発な流れが見られる程度で、融液内の酸素濃度も低くなっている。
このコイル配置(図5(b)参照)であれば、黒鉛部品の解体・セット前に磁場発生装置を昇降させる必要はなく、またウェーハ全面で5ppma-JEIDAを切ると共に面内分布に優れた極低酸素結晶を得ることができた。
(比較例1)
外径1100mmの一対(2個)のコイルを引上げ機の中心軸に対して左右対称に配置した磁場発生装置について、磁場解析と3D融液対流解析を行った後、この装置を用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。
図7(a)は、ANSYS-Maxwell3Dによる磁場解析結果であり、中心軸における磁束密度が1000ガウス(0.1テスラ)となるようにコイルの電流×巻き数を調整して解析した後、磁束密度の分布を表示させたものである。なお、図7(b)はこのときの2個の超電導コイル104a、104bの配置を示した概略図である。
上記磁場解析の結果から、結晶と融液領域を含む空間の磁束密度を抽出し、磁場分布を考慮した3D融液対流解析を実施した。図8の(a)、(c)は、その結果から得られた融液内の速度ベクトル(図8(a)が磁場に垂直な断面、図8(c)が磁場に平行な断面である。)、また図8の(b)、(d)は融液内の酸素濃度分布を示している(図8(b)が磁場に垂直な断面、図8(d)が磁場に平行な断面である。)。比較例1の磁場では、磁力線と垂直な断面において対流抑制力が弱く活発な渦流れが発生しており、融液内の酸素濃度も高くなっている。
その時の計算条件は、実施例1と同様に、チャージ量400kg、32インチ(1インチは25.4mm)の坩堝、直径306mmのシリコン結晶、結晶回転9rpm,坩堝回転0.4rpm、引き上げ速度0.4mm/minとして、計算した。
このコイル配置(図7(b)参照)であれば、黒鉛部品の解体・セット前に磁場発生装置を昇降させる必要はないが、ウェーハ全面で5ppma-JEIDAを切ると共に面内分布に優れた極低酸素結晶を得ることはできなかった。
(比較例2)
コイル軸を含む水平面内において、引上げ機の中心軸における磁力線方向をX軸としたときに、対向配置された直径900mmのコイルの対をそれぞれのコイル軸が同じ水平面内に含まれるように2対(4個)設けるとともに、前記X軸を挟むコイル軸間角度αを120度として円筒容器内に配置した磁場発生装置について、磁場解析と3D融液対流解析を行った後、この装置を用いてシリコン単結晶の引き上げを行った。
図9(a)は、ANSYS-Maxwell3Dによる磁場解析結果であり、中心軸における磁束密度が1000ガウス(0.1テスラ)となるようにコイルの電流×巻き数を調整して解析した後、磁束密度の分布を表示させたものである。なお、図9(b)はこのときの4個の超電導コイル104a、104b、104c、104dの配置を示した概略図である。
上記磁場解析の結果から、結晶と融液領域を含む空間の磁束密度を抽出し、磁場分布を考慮した3D融液対流解析を実施した。図10(a)、(c)は、その結果から得られた融液内の速度ベクトル(図10(a)が磁場に垂直な断面、図10(c)が磁場に平行な断面である。)、また図10(b)、(d)は融液内の酸素濃度分布を示している(図10(b)が磁場に垂直な断面、図10(d)が磁場に平行な断面である。)。
比較例2の磁場では、磁力線と垂直な断面においても対流抑制力が強く結晶端の下にのみ比較的活発な流れが見られる程度で、融液内の酸素濃度も低くなっている。
その時の計算条件は、実施例1、比較例1と同様に、チャージ量400kg、32インチ(1インチは25.4mm)の坩堝、直径306mmのシリコン結晶、結晶回転9rpm,ルツボ回転0.4rpm、引き上げ速度0.4mm/minとして、計算した。
このコイル配置(図9(b)参照)であれば、全面で5ppma-JEIDAを切ると共に面内分布に優れた極低酸素結晶を得ることができるが、黒鉛部品の解体・セット前に磁場発生装置を昇降させる必要がある。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
11…引き上げ炉、 12…坩堝、 13…加熱ヒーター、
14a、14b、14c、14d…超電導コイル、
16…溶融した半導体材料(融液)、
17…磁力線、 18…引き上げ方向、 19…単結晶(半導体単結晶)、
20…中心軸、 21…単結晶引き上げ装置、 22…コイル軸を含む水平面、
30…磁場発生装置、
31…コの字型形状のクライオスタット、
32…第1のクライオスタット、 33…第2のクライオスタット、
34…構造部材、
100…単結晶引き上げ装置、 101…引き上げ炉、 102…坩堝、
103…加熱ヒーター、
104、104a、104b、104c、104d…超電導コイル、
105…円筒型冷媒容器、 106…半導体材料、 107…磁力線、
108…引き上げ方向、 109…単結晶、 110…中心軸、
111…電流リード、 112…小型ヘリウム冷凍機、 113…ガス放出管、
114…サービスポート、 115…ボア、 117…第1の輻射シールド、
118…第2の輻射シールド、 119…円筒型真空容器、
130…超電導磁石、 131…切り欠き、 150…アーム。

Claims (4)

  1. 加熱ヒーター及び溶融した単結晶材料が収容される坩堝が配置され中心軸を有する引き上げ炉と、
    前記引き上げ炉の周囲に設けられ、超電導コイルと該超電導コイルを内蔵するクライオスタットを有する磁場発生装置とを備え、
    前記超電導コイルへの通電により前記溶融した単結晶材料に水平磁場を印加して、前記溶融した単結晶材料の前記坩堝内での対流を抑制する単結晶引き上げ装置であって、
    前記磁場発生装置は、前記超電導コイルを4個有し、前記4個の超電導コイルの全てのコイル軸が単一の水平面内に含まれるように配置されており、
    前記水平面内の前記中心軸における磁力線方向をX軸としたときに、該X軸と前記引き上げ炉の中心軸を含む断面で分けられる第1の領域及び第2の領域に、それぞれ2個ずつの前記超電導コイルが配置されており、
    前記4個の超電導コイルは、前記断面に対して線対称に配置されており、
    前記4個の超電導コイルは、いずれもコイル軸が前記水平面内において前記X軸と垂直なY軸に対して-30°超30°未満の角度の範囲となるよう配置されており、
    前記4個の超電導コイルが発生する磁力線の方向は、前記断面に対して線対称であり、
    前記第1の領域及び第2の領域のそれぞれにおいて、2個の前記超電導コイルは、発生する磁力線の方向が逆であることを特徴とする単結晶引き上げ装置。
  2. 前記磁場発生装置は、前記クライオスタットとして、前記4個の超電導コイルを全て内蔵するコの字型形状のクライオスタットを備えるか、又は、前記第1の領域及び第2の領域のそれぞれにおいて2個の前記超電導コイルを内蔵するクライオスタットを備え、該2個のクライオスタットが構造的に連結された構造を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の単結晶引き上げ装置。
  3. 前記超電導コイルは、鉛直方向上方から見た該超電導コイルの幅よりも、該超電導コイルの鉛直方向の高さの方が長いものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶引き上げ装置。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ装置を用いて、シリコン単結晶を引き上げることを特徴とする単結晶引き上げ方法。
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