以下、内燃機関の制御装置の実施形態を図1~図5にしたがって説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車両は、内燃機関10と、内燃機関10のクランク軸14に接続されている動力配分統合機構40と、動力配分統合機構40に接続されている第1のモータジェネレータ71とを備えている。動力配分統合機構40には、リダクションギア50を介して第2のモータジェネレータ72が連結されるとともに、減速機構60及びディファレンシャル61を介して駆動輪62が連結されている。
動力配分統合機構40は、遊星歯車機構であり、外歯歯車のサンギア41と、サンギア41と同軸配置されている内歯歯車のリングギア42とを有している。サンギア41とリングギア42との間には、サンギア41及びリングギア42の双方と噛み合う複数のピニオンギア43が配置されている。各ピニオンギア43は、自転及び公転が自在な状態でキャリア44に支持されている。サンギア41には、第1のモータジェネレータ71が連結されている。キャリア44には、クランク軸14が連結されている。リングギア42にはリングギア軸45が接続されており、このリングギア軸45にリダクションギア50及び減速機構60の双方が連結されている。
内燃機関10の出力トルクがキャリア44に入力されると、当該出力トルクが、サンギア41側とリングギア42側とに分配される。すなわち、第1のモータジェネレータ71に内燃機関10の出力トルクを入力させることにより、第1のモータジェネレータ71に発電させることができる。
一方、第1のモータジェネレータ71を電動機として機能させた場合、第1のモータジェネレータ71の出力トルクがサンギア41に入力される。すると、サンギア41に入力された第1のモータジェネレータ71の出力トルクが、キャリア44側とリングギア42側とに分配される。そして、第1のモータジェネレータ71の出力トルクがキャリア44を介してクランク軸14に入力されることにより、クランク軸14を回転させることができる。本実施形態では、このように第1のモータジェネレータ71の駆動によってクランク軸14を回転させることを「モータリング」という。
リダクションギア50は、遊星歯車機構であり、第2のモータジェネレータ72が連結されている外歯歯車のサンギア51と、サンギア51と同軸配置されている内歯歯車のリングギア52とを有している。リングギア52にリングギア軸45が接続されている。また、サンギア51とリングギア52との間には、サンギア51及びリングギア52の双方と噛み合う複数のピニオンギア53が配置されている。各ピニオンギア53は、自転自在であるものの公転不能になっている。
そして、車両を減速させる際には、第2のモータジェネレータ72を発電機として機能させることにより、第2のモータジェネレータ72の発電量に応じた回生制動力を車両に発生させることができる。また、第2のモータジェネレータ72を電動機として機能させた場合、第2のモータジェネレータ72の出力トルクが、リダクションギア50、リングギア軸45、減速機構60及びディファレンシャル61を介して駆動輪62に入力される。これにより、駆動輪62を回転させることができる、すなわち車両を走行させることができる。
第1のモータジェネレータ71は、第1のインバータ75を介してバッテリ77と電力の授受を行う。第2のモータジェネレータ72は、第2のインバータ76を介してバッテリ77と電力の授受を行う。
図2に示すように、内燃機関10は、燃料を燃焼させるための気筒11を備えている。なお、図示は省略するが、内燃機関10は4つの気筒11を備えている。各気筒11内には、燃料の燃焼に応じて当該気筒11内を往復動するピストン12が収容されている。各ピストン12は、コネクティングロッド13を介してクランク軸14に連結されている。
気筒11には、当該気筒11に吸気を導入するための吸気通路15が接続されている。吸気通路15と気筒11との接続部分には、当該接続部分を開閉するための吸気バルブ18が取り付けられている。吸気通路15の途中には、気筒11内への吸入空気量を調整すべく開閉されるスロットルバルブ16が取り付けられている。また、吸気通路15におけるスロットルバルブ16よりも下流側の部分には、気筒11に燃料を導入するための燃料噴射弁17が取り付けられている。本実施形態では、各気筒11に対応して1つずつ燃料噴射弁17が取り付けられており、内燃機関10が合計4つの燃料噴射弁17を備えている。
気筒11には、当該気筒11から排気を排出するための排気通路21が接続されている。排気通路21と気筒11との接続部分には、当該接続部分を開閉するための排気バルブ20が取り付けられている。排気通路21の途中には、排気を浄化するための三元触媒22が配置されている。排気通路21における三元触媒22よりも下流側の部分には、排気に含まれるパティキュレート・マターを捕集するためのパティキュレートフィルタ23が配置されている。
気筒11には、吸気バルブ18が開弁しているときに、吸気通路15を介し、燃料及び空気が導入される。そして、気筒11内では、点火装置19の火花放電によって、吸気通路15を介して導入された空気と、燃料噴射弁17から噴射された燃料とを含む混合気が燃焼される。そして、混合気の燃焼によって気筒11内で生じた排気は、排気バルブ20が開弁しているときに排気通路21に排出される。
なお、排気通路21における三元触媒22よりも上流には、排気通路21を流れるガス中の酸素濃度、すなわち排気の空燃比を検出する空燃比センサ81が配置されている。また、排気通路21における三元触媒22とパティキュレートフィルタ23との間には、排気通路21を流れるガスの温度を検出する温度センサ82が配置されている。
内燃機関10の燃料供給装置30は、気筒11内で燃焼させる燃料を貯留する燃料タンク31と、燃料タンク31内の燃料を汲み取る電動式のフィードポンプ32と、フィードポンプ32から吐出された燃料が流れる燃料通路33とを備えている。そして、燃料通路33に燃料噴射弁17が接続されている。すなわち、燃料噴射弁17は、フィードポンプ32の作動によって燃料タンク31から燃料通路33に汲み上げられた燃料を噴射する。また、燃料供給装置30には、燃料通路33の燃料圧力である供給燃圧を検出する燃料圧力センサ83が設けられている。
なお、内燃機関10では、クランク軸14が回転しているときに、気筒11内での混合気の燃焼が停止されることがある。このようにクランク軸14が回転しているときに気筒11内での混合気の燃焼が停止される期間のことを、「燃焼停止期間」という。燃焼停止期間では、クランク軸14の回転に同期してピストン12が往復動する。そのため、吸気通路15を介して気筒11内に導入された空気は、燃焼に供されることなく、排気通路21に流出される。
燃焼停止期間では、燃料噴射弁17の燃料噴射を停止する燃料カット処理、及び、燃料噴射弁17から燃料を噴射させ、当該燃料を未燃のまま気筒11内から排気通路21に流出させる燃料導入処理の何れか一方の処理が選択して実行される。燃料導入処理が実行されると、燃料噴射弁17から噴射された燃料が空気と共に排気通路21を流通することとなる。そして、燃料が三元触媒22に導入される。このとき、三元触媒22の温度が活性化温度以上であり、燃料を燃焼させるのに十分な量の酸素が三元触媒22に吸蔵されていると、三元触媒22で燃料が燃焼される。これにより、三元触媒22の温度が上昇する。すると、高温のガスがパティキュレートフィルタ23に流入するようになり、パティキュレートフィルタ23の温度が上昇する。そして、パティキュレートフィルタ23の温度がある程度高くなっている状況下でパティキュレートフィルタ23に酸素が導入されている場合、パティキュレートフィルタ23に捕集されているパティキュレート・マターを燃焼させることができる。
次に、図1及び図2を参照し、ハイブリッド車両の制御構成について説明する。
図1に示すように、ハイブリッド車両の制御装置100は、アクセル開度ACC及び車速VSを基に、リングギア軸45に出力すべきトルクである要求トルクを算出する。アクセル開度ACCは、車両の運転者によるアクセルペダルAPの操作量のことであり、アクセル開度センサ84によって検出された値である。車速VSは、車両の移動速度に対応する値であり、車速センサ85によって検出される。制御装置100は、算出した要求トルクを基に、内燃機関10、各モータジェネレータ71、72を制御する。
制御装置100は、内燃機関10を制御する内燃機関制御ユニット110と、各モータジェネレータ71、72を制御するモータ制御ユニット120とを備えている。内燃機関制御ユニット110が、本実施形態における「内燃機関の制御装置」の一例に相当する。燃焼停止期間中において燃料導入処理が実行される場合、モータ制御ユニット120によって、モータリングを行わせるべく第1のモータジェネレータ71の駆動が制御される。すなわち、モータリングの実行を通じ、燃焼停止期間中におけるクランク軸14の回転速度を制御することができる。
図2に示すように、内燃機関制御ユニット110は、機能部として、点火装置19を制御する点火制御部111と、燃料噴射弁17を制御する噴射弁制御部112と、燃料噴射弁17から噴射される燃料の量を算出する算出部113とを備えている。
点火制御部111は、気筒11内で混合気を燃焼させるときには、ピストン12が圧縮上死点近傍に達したタイミングで点火装置19に火花放電を行わせる。一方、点火制御部111は、燃焼停止期間中では、点火装置19に火花放電を行わせない。
次に、図3を参照して、制御装置100が実行するモータリングの実行・停止を切り替えるとともに、燃料噴射弁17を制御するための処理手順について説明する。制御装置100は、ハイブリッド車両のシステム起動スイッチ(スタートスイッチ、メインスイッチ等と呼称されることもある。)がオン操作されて当該制御装置100が動作を開始したときから、システム起動スイッチがオフ操作されて当該制御装置100が動作を終了するときまで、図3に示す一連の処理を繰り返し実行する。なお、後述する禁止フラグは、制御装置100が動作を開始した時点ではOFFになっている。
図3に示すように、一連の処理を開始すると、制御装置100における内燃機関制御ユニット110は、ステップS11の処理を行う。ステップS11において、内燃機関制御ユニット110は、気筒11内での混合気の燃焼停止の条件が成立しているか否かを判定する。例えば、内燃機関10に対する出力トルクの要求値が「0(ゼロ)」以下であるときには、燃焼停止の条件が成立していると判定される。一方、内燃機関10に対する出力トルクの要求値が「0(ゼロ)」よりも大きいときには、燃焼停止の条件が成立していないと判定される。ステップS11において、気筒11内での混合気の燃焼停止の条件が成立していると判定した場合(S11:YES)、制御装置100は、処理をステップS12に進める。なお、燃焼停止の条件が成立していると判定した場合には、制御装置100における点火制御部111は、点火装置19の火花放電を停止させる。
ステップS12において、制御装置100は、燃料導入処理の実行を禁止する禁止フラグがOFFになっているか否かを判定する。ステップS12において、燃料導入処理の実行を禁止する禁止フラグがONになっていると判定した場合(S12:NO)、制御装置100は、処理をステップS21に進める。一方、ステップS12において、燃料導入処理の実行を禁止する禁止フラグがOFFになっていると判定した場合(S12:YES)、制御装置100は、処理をステップS13に進める。
ステップS13において、制御装置100は、モータリングの実行条件が成立しているか否かを判定する。ここで、モータリングの実行条件について説明する。本実施形態では、以下に示す2つの条件が何れも成立しているときに実行条件が成立したと判定する。
(条件1)三元触媒22の温度が判定温度以上であると判定できること。
(条件2)パティキュレートフィルタ23におけるパティキュレート・マターの捕集量の推定値が判定捕集量以上であること。
なお、未燃の燃料を三元触媒22に導入しても、三元触媒22の温度が低いと、燃料を燃焼させることができないことがある。そこで、三元触媒22に導入された未燃の燃料を燃焼させることができるか否かの判断基準として、判定温度が設定されている。すなわち、判定温度は、三元触媒22の活性化温度又は活性化温度よりも僅かに高い温度に設定されている。
また、パティキュレートフィルタ23におけるパティキュレート・マターの捕集量が多いほど、パティキュレートフィルタ23の目詰まりが進行する。そこで、パティキュレートフィルタ23の再生が必要なほど目詰まりが進行しているか否かの判断基準として、判定捕集量が設定されている。捕集量が増えると、排気通路21における三元触媒22とパティキュレートフィルタ23との間の部分と、排気通路21におけるパティキュレートフィルタ23よりも下流の部分との差圧が大きくなりやすい。そこで、例えば、当該差圧を基に捕集量の推定値を算出することができる。
ステップS13において、モータリングの実行条件が成立していないと判定した場合(S13:NO)、制御装置100は、処理をステップS21に進める。すなわち、制御装置100は、モータリングの実行条件が成立していないと判定した場合には、ステップS21以降の燃料カット処理を実行する。
ステップS21において、制御装置100におけるモータ制御ユニット120は、第1のモータジェネレータ71の駆動によってクランク軸14を回転させるモータリングを停止する。なお、ステップS21の時点で既にモータリングが停止されている場合には、モータリングの停止状態が維持される。その後、制御装置100は、処理をステップS22に進める。
ステップS22において、内燃機関制御ユニット110における噴射弁制御部112は、目標燃料噴射量Aを「0(ゼロ)」とする。その後、制御装置100は、処理をステップS23に進める。
ステップS23において、内燃機関制御ユニット110における噴射弁制御部112は、算出した目標燃料噴射量Aに基づいて、燃料噴射弁17を制御する。すなわち、燃料カット処理においては、目標燃料噴射量Aが「0(ゼロ)」であるので、燃料噴射弁17から燃料が噴射されない。その後、制御装置100は、今回の一連の処理を終了する。
一方、ステップS13において、モータリングの実行条件が成立していると判定した場合(S13:YES)、制御装置100は、処理をステップS32に進める。ステップS32において、制御装置100におけるモータ制御ユニット120は、第1のモータジェネレータ71の駆動によってクランク軸14を回転させるモータリングの実行を開始する。なお、ステップS13の時点で既にモータリングが実行されている場合には、そのモータリングの実行状態が維持される。その後、制御装置100は、処理をステップS33に進める。
ステップS33において、制御装置100におけるモータ制御ユニット120は、内燃機関10のクランク軸14における所定時間当たりの回転数である機関回転数が予め設定された基準回転数以上であるか否かを判定する。ここで、基準回転数は、クランク軸14の回転に伴って駆動するピストン12によって吸気通路15から気筒11側に所定時間当たりに所定量以上の吸気が導入される内燃機関10の機関回転数として定められており、例えば、実験やシミュレーション等によって求められている。
ステップS33において、内燃機関10の機関回転数が予め設定された基準回転数よりも小さいと判定した場合(S33:NO)、制御装置100は、処理をステップS22に進める。すなわち、この場合には、モータリングが実行されつつ燃料カット処理が実行される。一方、ステップS33において、内燃機関10の機関回転数が予め設定された基準回転数以上であると判定した場合(S33:YES)、制御装置100は、処理をステップS34に進める。すなわち、制御装置100は、ステップS34以降の燃料導入処理を実行する。
ステップS34において、内燃機関制御ユニット110における噴射弁制御部112は、目標燃料噴射量Aを算出する。以下では、ステップS34で算出した目標燃料噴射量Aを目標燃料噴射量A1という。ここで、燃料導入処理が実行されている場合の目標燃料噴射量A1は、気筒11内で混合気を燃焼させる際の目標燃料噴射量Aよりも小さい。そのため、ステップS34で算出された目標燃料噴射量A1に基づいて燃料噴射弁17から噴射された燃料が気筒11内に導入された場合、当該気筒11内の空燃比は、気筒11内で混合気を燃焼させる際の空燃比と比較してリーン側の値となる。また、燃料導入処理においてはステップS34で算出された目標燃料噴射量A1に基づいて燃料噴射弁17から理想通りに燃料が噴射され続けた場合、単位時間当たりに導入される燃料量に応じて三元触媒22が所定の目標温度C1(例えば、800℃)でほぼ一定に保持される。その後、制御装置100は、処理をステップS35に進める。
ステップS35において、内燃機関制御ユニット110における噴射弁制御部112は、算出した目標燃料噴射量A1に基づいて、燃料噴射弁17を制御する。すなわち、内燃機関制御ユニット110における噴射弁制御部112は、燃料導入処理の実行中において三元触媒22の温度が目標温度C1になるように燃料噴射弁17からの燃料噴射を実行する。その後、制御装置100は、今回の一連の処理を終了する。
一方、ステップS11において、気筒11内での混合気の燃焼停止の条件が成立していないと判定した場合(S11:NO)、制御装置100は、処理をステップS42に進める。
ステップS42において、制御装置100におけるモータ制御ユニット120は、第1のモータジェネレータ71の駆動によってクランク軸14を回転させるモータリングを停止する。なお、ステップS42の時点で既にモータリングが停止されている場合には、モータリングの停止状態が維持される。その後、制御装置100は、処理をステップS43に進める。
ステップS43において、内燃機関制御ユニット110における噴射弁制御部112は、燃料噴射弁17の目標燃料噴射量Aを算出する。以下では、ステップS43で算出した目標燃料噴射量Aを目標燃料噴射量A0という。すなわち、噴射弁制御部112は、空燃比検出値が空燃比目標値となるように目標燃料噴射量A0を算出する。空燃比検出値は、空燃比センサ81によって検出された空燃比である。その後、制御装置100は、処理をステップS44に進める。
ステップS44において、内燃機関制御ユニット110における噴射弁制御部112は、ステップS43で算出した目標燃料噴射量A0に基づいて、燃料噴射弁17を制御する。その後、制御装置100は、今回の一連の処理を終了する。
次に、図4を参照して、制御装置100が実行する禁止フラグの切り替え手順について説明する。制御装置100は、ハイブリッド車両のシステム起動スイッチがオン操作されて当該制御装置100が動作を開始したときから、システム起動スイッチがオフ操作されて当該制御装置100が動作を終了するときまで、図4に示す一連の処理を繰り返し実行する。なお、上述したように、禁止フラグは、制御装置100が動作を開始した時点ではOFFになっている。
図4に示すように、一連の処理を開始すると、制御装置100における内燃機関制御ユニット110は、ステップS50の処理を行う。ステップS50において、制御装置100は、燃料導入処理の実行を禁止する禁止フラグがOFFになっているか否かを判定する。ステップS50において、燃料導入処理の実行を禁止する禁止フラグがOFFになっていると判定した場合(S50:YES)、制御装置100は、処理をステップS51に進める。
ステップS51において、内燃機関制御ユニット110は、燃料導入処理を実行中であるか否かを判定する。ステップS51において、燃料導入処理を実行中でないと判定した場合(S51:NO)、制御装置100は、今回の一連の処理を終了する。一方、ステップS51において、燃料導入処理を実行中であると判定した場合(S51:YES)、制御装置100は、処理をステップS52に進める。
ステップS52において、内燃機関制御ユニット110は、燃料導入処理における燃料噴射量の積算値Xを算出中であるか否かを判定する。ここで、燃料導入処理における燃料噴射量の積算値Xの算出とは、後述するステップS53で開始する積算値の算出である。ステップS52において、燃料導入処理における燃料噴射量の積算値Xを算出中であると判定した場合(S52:YES)、制御装置100は、処理をステップS54に進める。一方、ステップS52において、燃料導入処理における燃料噴射量の積算値Xを算出中でないと判定した場合(S52:NO)、制御装置100は、処理をステップS53に進める。
ステップS53において、内燃機関制御ユニット110における算出部113は、燃料導入処理における燃料噴射量の積算値Xの算出を開始する。ここで、燃料導入処理における燃料噴射量の積算値Xとは、燃料導入処理において各気筒11で目標燃料噴射量A1の噴射が実行された場合に、現在実行中の燃料導入処理の開始時点から現時点までの目標燃料噴射量A1の積算値である。その後、制御装置100は、処理をステップS54に進める。
ステップS54において、内燃機関制御ユニット110における算出部113は、燃料導入処理における燃料噴射量の積算値Xが予め設定された基準値B1以上であるか否かを判定する。
ここで、基準値B1について説明する。燃料噴射弁17から実際に噴射される燃料噴射量は、燃料噴射弁17の個体差等によって目標燃料噴射量A1に対してばらつくことがある。例えば、燃料噴射弁17から実際に噴射される燃料噴射量が、目標燃料噴射量A1に対して±25%の範囲内でばらつくものとする。このとき、燃料噴射弁17における正側のばらつきを示す係数としては「1.25」が定められる。そして、この係数(1.25)を目標燃料噴射量A1に対して乗算することで、規定燃料噴射量A2が定められている。なお、燃料噴射弁17における燃料噴射量のばらつきの範囲は、予め試験等を行うことで求めることができる。
また、三元触媒22の目標温度C1よりも高い温度として、規定温度C2が定められている。規定温度C2は、例えば、三元触媒22が溶損して当該三元触媒22の機能が損なわれ得る温度(約1000℃)よりも小さい温度として定められている。そして、仮に、上述した規定燃料噴射量A2で燃料導入処理が実行された場合において、三元触媒22の温度が規定温度C2になるまでの燃料噴射量の積算値として、規定積算値B2が定められている。この規定積算値B2は、例えば、実験やシミュレーション等によって求められている。そして、基準値B1は、規定積算値B2を上記の係数(1.25)で除した値と等しい値に設定されている。なお、本実施形態では、このように予め定められた基準値B1が固定値として算出部113に記憶されている。
ステップS54において、燃料導入処理における燃料噴射量の積算値Xが予め設定された基準値B1未満であると判定した場合(S54:NO)、制御装置100は、今回の一連の処理を終了する。
一方、ステップS54において、燃料導入処理における燃料噴射量の積算値Xが予め設定された基準値B1以上であると判定した場合(S54:YES)、制御装置100は、処理をステップS55に進める。
ステップS55において、内燃機関制御ユニット110における噴射弁制御部112は、燃料導入処理の実行を禁止する禁止フラグをONにする。なお、燃料導入処理の実行中に禁止フラグがONになると、繰り返し実行される図3に示す一連の処理におけるステップS12において禁止フラグがONである(ステップS12:NO)と判定される。そのため、燃料噴射弁17からの燃料噴射が停止され燃料導入処理の実行が終了される。一方、燃料導入処理を実行していない場合に禁止フラグがONであると、その後、燃料導入処理を実行するための種々の条件が満たされても燃料導入処理が実行されない。
また、ステップS55において、内燃機関制御ユニット110における算出部113は、燃料導入処理における燃料噴射量の積算値Xをリセットする。その後、制御装置100は、処理をステップS56に進める。ステップS56において、内燃機関制御ユニット110は、計時時間Tの計時を開始する。その後、制御装置100は、今回の一連の処理を終了する。
一方、ステップS50において、燃料導入処理の実行を禁止する禁止フラグがONになっていると判定した場合(S50:NO)、制御装置100は、処理をステップS57に進める。ステップS57において、内燃機関制御ユニット110は、計時時間Tが予め設定された基準時間Tx以上になっているか否かを判定する。ここで、基準時間Txは、燃料導入処理の実行によって三元触媒22が規定温度C2になった状態から判定温度程度に冷却されるまでの時間として定められており、例えば、数秒~数十秒である。なお、判定温度とは、上述したように三元触媒22の活性化温度又は活性化温度よりも僅かに高い温度に設定された温度である。この基準時間Txは、予め実験やシミュレーション等を行うことによって求められている。
ステップS57において、計時時間Tが予め設定された基準時間Tx未満であると判定した場合(S57:NO)、制御装置100は、今回の一連の処理を終了する。一方、ステップS57において、計時時間Tが予め設定された基準時間Tx以上であると判定した場合(S57:YES)、制御装置100は、処理をステップS58に進める。
ステップS58において、内燃機関制御ユニット110における噴射弁制御部112は、燃料導入処理の実行を禁止する禁止フラグをOFFにする。その後、制御装置100は、今回の一連の処理を終了する。
本実施形態の作用及び効果について説明する。なお、以下の説明では、三元触媒22の温度が判定温度以上になっているものとする。
図5(a)に示す例では、時刻t1以前において、気筒11内で混合気の燃焼が行われている。そのため、気筒11内での混合気の燃焼によって生じた排気が排気通路21を流れる。そして、排気通路21を流れる排気がパティキュレートフィルタ23に流入すると、当該パティキュレートフィルタ23によって排気中のパティキュレート・マターが捕集される。すると、パティキュレートフィルタ23におけるパティキュレート・マターの捕集量が徐々に増大する。
時刻t1において、運転者によるアクセルペダルAPに応じて出力トルクの要求値が「0(ゼロ)」以下になると、気筒11内での混合気の燃焼停止の条件が成立する。すると、図5(a)に示すように、点火装置19の火花放電が停止されて気筒11内での燃料の燃焼が停止する。
ここで、時刻t1においては、パティキュレートフィルタ23におけるパティキュレート・マターの捕集量の推定値が判定捕集量未満であるため、モータリングの実行条件が成立しない。そのため、図5(e)に実線で示すように、時刻t1において、燃料カット処理が実行されて燃料噴射弁17の燃料噴射量が「0(ゼロ)」になる。
時刻t2において、パティキュレートフィルタ23におけるパティキュレート・マターの捕集量の推定値が判定捕集量以上になると、すべてのモータリングの実行条件が成立する。すると、図5(b)に示すように、時刻t2において、第1のモータジェネレータ71によるモータリングの実行が開始されて、第1のモータジェネレータ71の駆動によって内燃機関10の機関回転数が大きくなり始める。そして、吸気通路15、気筒11、及び排気通路21を介して、三元触媒22及びパティキュレートフィルタ23に酸素が供給される。また、図5(c)に示すように、時刻t2~時刻t3の間では、内燃機関10の機関回転数が徐々に大きくなる。
図5(c)に示すように、時刻t3において内燃機関10の機関回転数が基準回転数よりも大きくなると、図5(d)に示すように燃料導入処理が実施される。そして、図5(e)に実線で示すように、燃料噴射弁17から目標燃料噴射量A1の燃料噴射が実行される。ここで、時刻t1以降の燃焼停止期間では、点火装置19の火花放電が停止されている。そのため、燃料噴射弁17から噴射された燃料は、未燃のまま空気と共に排気通路21を流れることとなる。こうした未燃の燃料が三元触媒22に導入されると、図5(f)に実線で示すように、燃料導入処理の初期においては三元触媒22で燃料が燃焼して当該三元触媒22の温度が徐々に高くなる。そして、時刻t4において、燃料の燃焼による加熱と冷えたガスの流通による冷却とのバランスがとれて、三元触媒22は、単位時間当たりに導入される燃料量に応じた所定の目標温度C1でほぼ一定に保持される。
ところで、燃料噴射弁17から実際に噴射される燃料噴射量は、燃料噴射弁17の個体差等によって目標燃料噴射量A1に対してばらつくことがある。仮に、燃料噴射弁17から実際に噴射される燃料噴射量が正側に25%ばらついたとする。この場合、図5(e)に二点鎖線で示すように、時刻t3以降において、規定燃料噴射量A2で燃料導入処理が実行されてしまうことがある。すると、図5(f)に二点鎖線で示すように、所定の目標温度C1よりも三元触媒22の温度が高くなりやすい。そして、規定燃料噴射量A2で燃料導入処理が実行され続けると、三元触媒22は、単位時間当たりに導入される燃料量が大きくなることで所定の目標温度C1よりも高い温度である規定温度C2まで加熱される。さらに、三元触媒22の温度が規定温度C2を超えて過度に高くなると、三元触媒22が溶損して当該三元触媒22の機能が損なわれるおそれがある。
本実施形態では、燃料噴射量が目標燃料噴射量A1の状態で燃料導入処理が実行されて当該燃料導入処理の開始時点からの燃料噴射量の積算値Xが基準値B1になった場合に燃料噴射弁17からの燃料噴射を停止して燃料導入処理を終了する。上述したように、規定積算値B2は、仮に、燃料噴射弁17からの燃料噴射量が最も正側にばらついた状態(125%)で燃料噴射され続けた場合に、三元触媒22の温度が規定温度C2に至るときの燃料噴射量の積算値として定められている。そして、規定積算値B2を、燃料噴射弁17による燃料噴射量のばらつきを示す係数(1.25)で除算した値として、基準値B1が定められている。換言すれば、目標燃料噴射量A1の積算値Xが基準値B1になったとき、仮に最も正側に燃料噴射量がばらついていたとしても、その時の積算値は規定積算値B2である。したがって、本実施形態では、図5(e)及び図5(f)に二点鎖線で示すように、規定燃料噴射量A2で燃料導入処理が実行され続けて三元触媒22が規定温度C2にまで達する可能性がある場合(図5における時刻t5)には、燃料噴射弁17からの燃料噴射が停止されて燃料導入処理が終了される。その結果、仮に、燃料導入処理において燃料噴射弁17から実際に噴射される燃料噴射量が最も正側にばらついて規定燃料噴射量A2になっていたとしても、三元触媒22の温度が目標温度C1よりも高い規定温度C2を超えて過度に高い温度まで加熱されることはない。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態における係数は変更できる。例えば、燃料噴射弁17から実際に噴射される燃料噴射量が、目標燃料噴射量A1に対して±Z%の範囲内でばらつくものとする。この場合、燃料噴射弁17における正側のばらつきを示す係数としては「1+Z/100」が定められる。なお、係数を変更した場合には、目標燃料噴射量A1に対して係数(1+Z/100)を乗算して規定燃料噴射量A2を求めればよい。
・上記実施形態における目標温度C1(800℃)はあくまでも例示であり、三元触媒22の仕様等に応じて適宜変更できる。なお、目標温度C1を変更した場合には、それに応じて目標燃料噴射量A1を変更すればよい。
・上記実施形態における規定温度C2は三元触媒22の仕様等に応じて適宜変更できる。なお、規定温度C2を変更した場合には、規定燃料噴射量A2で燃料導入処理が実行された場合において、三元触媒22の温度が規定温度C2になるまでの燃料噴射量の積算値として、規定積算値B2を変更すればよい。
・上記実施形態における基準値B1の算出方法は例示であって、係数で乗算したり除算したりして算出される必要はない。例えば、規定燃料噴射量A2で燃料噴射したときに規定積算値B2に達するまでに必要な噴射回数を、目標燃料噴射量A1に乗算することで、基準値B1を算出してもよい。いかなる算出方法であろうとも、上記の基準値B1と等しい値を設定すれば、同様の効果が得られる。
また、上記実施形態における基準値B1は、上記のような算出方法を行わず、設定してもよい。例えば、燃料噴射弁17から実際に噴射される燃料噴射量がばらついていたとしても、三元触媒22の機能が損なわれ得る温度よりも前に燃料導入処理を終了できる燃料噴射量の積算値を実験等で求め、その求めた値を基準値B1として設定してもよい。
・上記実施形態において、燃料導入処理の実行を禁止する禁止フラグをOFFにする条件は変更できる。例えば、三元触媒22の温度を検出したり推定したりできるのであれば、三元触媒22の検出温度や推定温度が判定温度程度になったときに禁止フラグをOFFにしてもよい。
・上記実施形態において、ステップS57における基準時間Txは変更できる。例えば、燃料導入処理が終了した直後に次の燃料導入処理が実行される可能性が低いのであれば、三元触媒22が冷却される時間を考慮せずに基準時間Txを設定してもよい。
・上記実施形態において、ステップS12における禁止フラグがONであるかOFFであるかの判定時期は変更できる。例えば、ステップS12の処理は、ステップS13の処理とステップS32の処理の間、ステップS32の処理とステップS33の処理の間、ステップS33の処理とステップS34の処理の間に変更してもよい。
・上記実施形態では、燃料導入処理の実行中において、気筒11内で混合気が燃焼しない時期に火花放電を点火装置19に行わせるようにしてもよい。例えば、ピストン12が下死点近傍に位置するときに火花放電を行わせた場合、火花放電が行われた気筒11内では混合気が燃焼されない。そのため、燃料導入処理の実行中では、火花放電が行われても、燃料噴射弁17から噴射された燃料を未燃のまま気筒11内から排気通路21に流出させることができる。
・上記実施形態において、内燃機関10は、気筒11内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁である筒内噴射弁を備えていてもよい。この場合、燃料導入処理の実行中では、筒内噴射弁から燃料を気筒11内に噴射させ、当該燃料を未燃のまま排気通路21に流出させるようにしてもよい。これにより、未燃の燃料を三元触媒22に導入させることができる。
・上記実施形態において、ハイブリッド車両のシステムは、モータの駆動によってクランク軸14の回転速度を制御することができるのであれば、図1に示したようなシステムとは異なる別のシステムであってもよい。
・上記実施形態において、制御装置100は、内燃機関以外の他の動力源を備えない車両に搭載される内燃機関に適用されていてもよい。このような車両に搭載される内燃機関でも、クランク軸14が惰性で回転している状況下で気筒内での混合気の燃焼が停止されることがある。このようにクランク軸14が惰性で回転している燃焼停止期間中に燃料導入処理を実行してもよい。