以下、本発明の実施形態に係る内視鏡用高周波処置具としてのバイポーラ止血鉗子について、図面を参照して具体的に説明する。ただし、本発明はバイポーラ止血鉗子には限定されず、開閉可能な一対の鉗子片を備えるモノポーラ止血鉗子、開閉可能な一対の刃付き鉗子片を備える鋏鉗子等にも適用可能である。なお、本願明細書において、高周波とは、300KHz~5MHz程度の電気メスの分野で一般的に用いられている周波数域のみならず、これを超える超高周波が含まれる。
図1に示すように、本実施形態のバイポーラ止血鉗子は、シース部1、操作部2および鉗子部3を概略備えて構成されている。シース部1の近位端に操作部2が設けられ、シース部1の遠位端に鉗子部3が設けられている。
操作部2はベース21および該ベース21にスライド可能に取り付けられたスライダー22を備え、鉗子部3は互いに開閉可能に設けられた一対の電極(第1電極31a,第2電極31b)からなるカップ31を備えている。操作部2において、スライダー22をベース21に対して先端部側(図1において下側)にスライドさせることによりカップ31を開くことができ、逆にスライダー22をベース21に対して基端部側(図1において上側)にスライドさせることによりカップ31を閉じることができるようになっている。また、操作部2は、一対の電線(ケーブル)24a,24bおよびその先端に設けられたプラグ24を備えており、これらの電線24a,24bがプラグ24を介して、図外の高周波電源装置と電気的に接続され、高周波電流の供給を受けるようになっている。後に詳述するように、電線24aは電極31aに電気的に接続され、電線24bは電極31bに電気的に接続される。
シース部1は、図2に示されているように、チューブ状のアウターシース11、同じくチューブ状のインナーシース12、駆動ワイヤー13およびアウターシース内電線14を備えている。アウターシース11は可撓性を有するチューブからなり、本実施形態では絶縁性の樹脂から形成されたチューブを用いている。インナーシース12は可撓性を有するチューブからなり、本実施形態では絶縁性の樹脂から形成されたチューブを用いている。アウターシース11およびインナーシース12を形成する樹脂材料としては、電気絶縁材料であれば特に制限はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、フッ素樹脂等を用いることができる。
駆動ワイヤー13はインナーシース12内に挿通され、インナーシース12はアウターシース11に挿通されている。駆動ワイヤー13はインナーシース12内でその軸線周りの回転および摺動(軸線方向に沿う方向のスライド移動)が可能となっている。
駆動ワイヤー13は可撓性および導電性を有するワイヤー(トルクワイヤー)からなり、駆動ワイヤー13としては、ステンレス等の金属からなる単一の線材を用いることができる。ただし、駆動ワイヤー13としては、ワイヤーロープやワイヤーチューブを用いてもよい。ここで、ワイヤーロープは、ステンレス等の金属線からなる複数本のワイヤーを螺旋状に撚ってなる撚り線からなるロープである。また、ワイヤーチューブは、ステンレス等の金属線からなる複数本のワイヤーを中空となるように螺旋状に撚ってなる中空撚り線からなるチューブである。駆動ワイヤー13はカップ31を開閉するためのスライド力およびカップ31をその姿勢調整のためのシース軸線周りに回転させる回転力を伝達するための動力伝達部材である。なお、その詳細は後述するが、駆動ワイヤー13の近位端は操作部2の電線24aに電気的に接続されており、遠位端はカップ31を構成する一方の電極(第1電極)31aに電気的に接続されている。
アウターシース11とインナーシース12との間には、導電性を有するステンレス等の金属からなるアウターシース内電線14が挿通されている。なお、詳細は後述するが、このアウターシース内電線14の近位端は操作部2の電線24bに電気的に接続されており、遠位端はカップ31を構成する他方の電極(第2電極)31bに電気的に接続されている。
操作部2は、図3~図5に示されているように、ベース21、スライダー22、先端キャップ23を概略備えて構成されている。ベース21は指輪部21aおよびガイド溝を有するガイド部21bを有している。スライダー22はベース21のガイド部21bに沿って前後に摺動(スライド)可能に取り付けられている。ベース21の先端(遠位端)には先端キャップ23が取り付けられている。ベース21、スライダー22および先端キャップ23は、主として絶縁性の樹脂から形成されている。
先端キャップ23はその先端部側の内側に略筒状の空間を備えており、先端キャップ23の先端に形成された貫通部を介して、アウターシース11、インナーシース12、駆動ワイヤー13およびアウターシース内電線14を備えるシース部1の近位端が挿入されている。先端キャップ23内の略筒状の空間内には、ステンレス等の導電性を有する金属から形成された略筒状のスリーブパイプ25が取り付けられており、スリーブパイプ25内には段付きパイプ26が回転可能に内挿されている。段付きパイプ26は、ステンレス等の導電性を有する金属から形成されており、遠位端側には近位端側の部分よりも薄肉で細径の先端筒部26aを有している。
アウターシース11はその近位端の内側に段付きパイプ26の先端筒部26aが挿入された状態で段付きパイプ26に取り付けられている。インナーシース12はその近位端近傍が段付きパイプ26の長手方向に渡って形成された通孔内にその近位端に至るように挿入されている。駆動ワイヤー13は段付きパイプ26の通孔を貫通して更に延びており、その近位端はスライダー22に設けられたスリーブ27にネジ28により固定されている。アウターシース11とインナーシース12との間の部分に挿通されているアウターシース内電線14の近位端は、段付きパイプ26の先端筒部26aの先端にレーザ溶接やロウ付等により電気的に導通接続されている。
スリーブパイプ25の遠位端25a側には、コイルバネ29が内挿されている。コイルバネ29はステンレス等の導電性を有する材料から形成されている。コイルバネ29の遠位端29aは、スリーブパイプ25の遠位端25aにレーザ溶接等により溶接固定されている。したがって、コイルバネ29は少なくともこの固定部分においてスリーブパイプ25に電気的に導通されている。コイルバネ29の近位端29bは、適宜な荷重となるように圧縮された状態で、段付きパイプ26の先端筒部26aの近位端側の段差面26bに自らの付勢力によって圧接している。コイルバネ29の近位端29bは、当該段差面26bとの接触(導通)を十分に確保するため、座巻きになっている。なお、コイルバネ29の遠位端29aも座巻きとしてもよい。この構成により、アウターシース内電線14に先端筒部26aの先端26cにて導通接続された段付きパイプ26は、スリーブパイプ25に対する回転の支障となることなく、少なくともコイルバネ29を介してスリーブパイプ25と導通状態を常に保つことができる。
コイルバネ29の長さ、径、素線径、巻き数、ピッチ、バネ定数、圧縮長さ等は、スリーブパイプ25内で段付きパイプ26の回転を阻害せず、かつ段付きパイプ26と常に導通接触するように適宜に選定される。コイルバネ29の諸元は、具体的には、組み込まれた状態(所定量圧縮された状態)で荷重0.05~1N程度となるように選定されている。荷重0.05N未満では導通が不安定になる場合があり、荷重1Nを越えると円滑な回転を阻害する恐れがあるからである。
図示は省略しているが、駆動ワイヤー13の近位端はスライダー22のスリーブ27とのネジ28による固定部において、電線24aに電気的に接続されている。また、スリーブパイプ25は電線24bに電気的に接続されており、したがって、アウターシース内電線14は、段付きパイプ26、コイルバネ29およびスリーブパイプ25を介して、電線24bに電気的に接続されている。
このような構成により、操作部2においてスライダー22をベース21に対して前後(図1において上下)にスライドさせることにより、シース部1内で駆動ワイヤー13をその軸線方向にスライドさせることができるとともに、シース部1(アウターシース11)に対して、操作部2を回転させることにより、シース部1内で駆動ワイヤー13をその軸線周りに回転させることができる。
なお、コイルバネ29を設けたのは、スリーブパイプ25と段付きパイプ26との間には、回転に支障がない程度のクリアランス(間隙)が存在するため、コイルバネ29を介在させることにより、これらの接触不良の発生を防止し、導通の確実性をより向上させるためである。
鉗子部3は、図6~図11に示されているように、一対の電極(鉗子片)である第1電極31aおよび第2電極31bからなるカップ31、樹脂ワク(支持部材)32、戻り電極33、リング部材34、および固定金具35等を備えて構成されている。戻り電極33は、ワク導線33b、ワッシャー電極33c、および板バネ電極38を有している。
樹脂ワク32は、図14~図17にも示されているように、略円筒状の首部32cを有する基端部に互いに対向する一対のアーム部32a,32bを立設して構成されている。樹脂ワク32の首部32cには外側から凹陥する環状溝32dが形成されている。一対のアーム部32a,32bの先端部近傍にはそれぞれ貫通穴32e,32fが形成されている。
戻り電極33は、図14に最も良く示されているように、それぞれステンレス等の導電性を有する金属から形成された、略円環状のワッシャー電極33cおよびこれに立設された単一のワク導線33bを有している。
戻り電極33は、ワク導線33bが樹脂ワク32のアーム部32bに形成された通孔32gに沿って内挿されるように、ワッシャー電極33cの内側の穴に樹脂ワク32の首部32cを挿入して、樹脂ワク32に一体的に取り付けられる。
また、戻り電極33は、さらに板バネ電極38を有していて、その板バネ電極38は、図13、図14に最も良く示されているように、略円環状の板バネワッシャー部38aの内周面に複数の板バネ部38bを突出するように一体的に立設配置して構成されている。板バネワッシャー部38aにはワク導線33bが挿入される切欠部38cが形成されている。板バネ電極38は弾性および導電性を有するステンレス等の金属から形成されている。ただし、板バネ電極38の形成材料としては、必ずしも金属でなくても良く、導電性ポリマー等を用いても良い。
板バネ電極38は、たとえば、板厚0.05mmのステンレス等からなる薄い板材をプレス加工して形成することができる。板バネ部38bは、本実施形態では、板バネワッシャー部38aの内周面に4枚を等分に(即ち、90度の位置関係で)配置しているが、枚数は4枚に限定されず、たとえば8枚とすることができる。板バネ部38bは、板バネワッシャー部38aの内周面に複数枚を等分に配置する必要は必ずしもないが、安定した回転性を実現する観点から複数枚を等分に配置することが好ましい。板バネ部38bは、後に詳述するが、リング部材34の内周面に摺動可能に圧接して、戻り電極33とリング部材34との間の導通の確実性を確保するものである。
リング部材34は、図14~図17にも示されているように、ステンレス等の導電性を有する金属からなる略半円環状の一対のCリング34a,34aを備えており、樹脂ワク32の首部32cに形成された環状溝32dに一対のCリング34a,34aを両側から挟み込みように挿入し、両者の相対する両端部をそれぞれレーザ溶接等により固着することにより、該首部32cに僅かな隙間(クリアランス)をもって挿通され、リング部材34は樹脂ワク32の環状溝32dに取り付けられた状態で、樹脂ワク32に対して自在に回転できるようになっている。リング部材34(Cリング34a,34a)の板厚としては、たとえば0.1mm程度のものを用いることができる。
なお、リング部材34としては、相対する両端部が僅かな隙間をもって対向するように形成された略円環状の単一のCリングを用い、これを弾性変形させつつ首部32cの環状溝32dに嵌め込む構成を採用することができる。しかしながら、相対する両端部間の当該隙間の部分に段差が生じたり、内周面の形状が正確な円形にならなかったりする場合があり、導通性や回転性を阻害する恐れがある。したがって、上述したように、一対のCリング34a,34aを両側から挟み込むように挿入し、両者の相対する両端部をそれぞれレーザ溶接等により固着する構成の方が、その内周面をより正確な円形とすることが可能であることから、導通性および回転性の観点から有利である。
固定金具35は、図9、図14~図17にも示されているように、ステンレス等の導電性を有する金属から形成された略円筒状の部材である。固定金具35の内側には、インナーシース12の遠位端が挿入されて接着固定されている(図9、図10参照)。固定金具35は、アウターシース11の遠位端から内側に挿入されて、アウターシース11に接着固定されている(図9、図10参照)。また、固定金具35の近位端側の端部には、アウターシース11とインナーシース12との間の部分に配線されたアウターシース内電線14の遠位端が電気的に接続されている(図10参照)。
図14に示されているように、樹脂ワク32、戻り電極33(板バネ電極38、ワク導線33b、ワッシャー電極33cを備える)、リング部材34(Cリング34a、34a)および固定金具35が分解されている状態から、まず、板バネ電極38の切欠部38cにワク導線33bを挿入ないし嵌め込み、板バネ部38bをワッシャー電極33cの内側に挿入して該ワッシャー電極33cを越えて突出させるとともに、板バネワッシャー部38aがワッシャー電極33cに対面して当接するように配置して、該当接部分の複数箇所においてレーザ溶接等を行い、板バネ電極38をワッシャー電極33cに一体的に固定する。その後、図15に示されているように、樹脂ワク32のアーム部32bの通孔32gに戻り電極33のワク導線33bを挿入して、板バネ電極38とワッシャー電極33cとが一体的に固定されてなる戻り電極33を樹脂ワク32に取り付ける。
次いで、図16に示されているように、樹脂ワク32の首部32cに形成された環状溝32dに一対のCリング34a,34aを両側から挟み込みように挿入し、両者の相対する両端部をそれぞれレーザ溶接等により固着することにより、該首部32cに挿通させる。この状態で、戻り電極33のワッシャー部33cはリング部材34に摺動可能に当接しているとともに、戻り電極33の板バネ電極38の複数の板バネ部38bの外面がリング部材34の内周面に摺動可能に圧接している。
その後、図17に示されているように、戻り電極33およびリング部材34が取り付けられた樹脂ワク32を、その首部32cを固定金具35の内側に挿入するとともに、リング部材34を固定部材35に当接させて、この状態で、固定金具35にリング部材34をレーザ溶接等により固着することにより、戻り電極33およびリング部材34が取り付けられた樹脂ワク32を固定金具35に取り付ける。
これにより、戻り電極33が一体的に取り付けられた樹脂ワク32は、固定金具35に対してその軸線周りに回転でき、その回転位置にかかわらず、固定金具35と戻り電極33とはワッシャー電極33cおよびリング部材34の当接面を介することに加えて、板バネ電極38の板バネ部38bのリング部材34の内周面に対する圧接面をも介して、電気的に導通された状態を保つことができるようになっている。
カップ31を構成する第1電極31aおよび第2電極31bは、図6~図9に示されているように、互いに交差するように(略X字状に)配置されて互いの交差部分において、樹脂ワク32の一対のアーム部32a,32b間に回動可能に軸支されている。これらの第1電極31aおよび第2電極31bは、絶縁性を有する樹脂からなる絶縁スペーサー36により互いに絶縁されている。
第1電極31aおよび第2電極31bは、図18および図19に示されているように、先端側の把持部には第1電極31a、第2電極31bの回動軸に沿う方向(以下、横方向という場合がある)に延在する複数(たとえば、3本)の山歯31dが該横方向に略直交する方向(以下、縦方向という場合がある)に並列して形成されているとともに、先端凸歯31eが形成されている。先端凸歯31eの中央部分には該縦方向に沿って単一の先端縦溝31fが形成されている。
第1電極31aおよび第2電極31bには、その中間部分に貫通穴31cが形成されており、後端側には、接続ワイヤー(第1接続ワイヤー、第2接続ワイヤー)17a,17bを取り付けるための貫通穴(第1貫通穴、第2貫通穴)31gが形成されている。貫通穴31gは、組み立てられた状態において、第1電極31aおよび第2電極31bの樹脂ワク32に対する回動の中心軸方向に略平行する方向に貫通するように形成されている。貫通穴31gの径は、φ0.25~0.45mm程度である。また、第1電極31aの一方の面(絶縁スペーサー36に当接する側の面)には、突起部31hが形成されている(図19参照)。なお、第2電極31bにも、第1電極31aと同様の突起部31hを形成してもよい。
絶縁スペーサー36は、中央部に貫通穴36bを有する略円筒状の軸部36aをその一方の面側に有しているとともに(図9、図20参照)、他方の面側に略円筒状の金属ワッシャー39が嵌合される円環状に陥没する凹部36dを有している(図9参照)。
絶縁スペーサー36の一方の面には、図20に示されているように、第1電極31aの突起部31hに略対応する位置に、略円弧形状を有するガイド溝36cが形成されている。ガイド溝36cは、第1電極31aの突起部31hが挿入されることにより、第1電極31aの回転角度範囲を規定、ひいてはカップ31の開き角度を規定するためのものである(図21,図22参照)。なお、第2電極31bにも第1電極31aの突起部31hと同様の突起部を形成した場合には、絶縁スペーサー36の他方の面に、これに対応して当該ガイド溝36cと同様のガイド溝を設ける。
図9に示されているように、第1電極31aはその貫通穴31cに絶縁スペーサー36の軸部36aを挿入することにより、絶縁スペーサー36に回動可能に軸支される。第2電極31bは、その貫通穴31cに金属ワッシャー39を挿入し、金属ワッシャー39を絶縁スペーサー36の凹部36dに嵌合することにより、絶縁スペーサー36に回動可能に軸支される。絶縁スペーサー36の貫通穴36bおよび金属ワッシャー39の中央の貫通穴には、略円柱状のキングピン37が挿通される。絶縁スペーサー36の軸部36aの先端部をアーム部32aの貫通穴32eに、金属ワッシャー39の絶縁スペーサー36と反対側の先端部をアーム部32bの貫通穴32fに嵌合固定することにより、絶縁スペーサー36に回動可能に軸支された第1電極31aおよび第2電極31bが一対のアーム部32a,32b間に支持される。
図9に示されているように、樹脂ワク32のアーム部32bに形成された通孔32g内を挿通された戻り電極33のワク導線33bの先端部は、アーム部32bの貫通穴32f内に突出して露出しており、アーム部32bの貫通穴32fに嵌合された金属ワッシャー39の先端部とワク導線33bの先端近傍の露出した部分とは、レーザ溶接等により電気的に導通された状態で接続固定される。これにより、第2電極31bはその回動にかかわらず、金属ワッシャー39を介して戻り電極33に電気的に導通された状態を保つようになっている。
駆動ワイヤー13の遠位端とカップ31を構成する第1電極31aおよび第2電極31bとの間の動力伝達機構は、図10~図12に示されているように、ツナギ金属部材(接続部材)19、および一対の接続ワイヤー(第1接続ワイヤー、第2接続ワイヤー)17a,17bを備えて構成されている。
ツナギ金属部材19は導電性を有する金属から形成された部材であり、その近位端側に駆動ワイヤー13の遠位端を挿入するための穴を有する円筒部19aおよびその遠位端側に板状部19bを有しており、円筒部19aに駆動ワイヤー13の遠位端が挿入されて、レーザ溶接等により電気的に導通された状態で接続固定されている。
板状部19bは円筒部19aの中心軸と略平行な板面を有する略板状の部位であり、円筒部19aの遠位端側に一体的に設けられている。板状部19bには、板面に略直交するように一対の貫通穴(第3貫通穴19c、第4貫通穴19d)が形成されている。板状部19bの貫通穴19cは接続ワイヤー17aを取り付けるための穴であり、貫通穴19dは接続ワイヤー17bを取り付けるための穴である。ツナギ金属部材19の貫通穴19c,19dの径は、φ0.25~0.45mm程度である。
接続ワイヤー17a,17bは、それぞれステンレス等の導電性で可撓性(弾性)を有する金属からなる単一の線材(ワイヤー状の部材)を適宜に折り曲げる(塑性変形させる)ことにより形成されている。本実施形態では、接続ワイヤー17aと接続ワイヤー17bとは、実質的に同一の構成を有している。
接続ワイヤー17a,17bは、本実施形態では、図23に示されているように構成されている。すなわち、略直線状の接続部位(第1部位、第4部位)P1、接続部位P1の一端部に接続部位P1に対して折れ曲がった略直線状のカップ側挿通部位(第2部位、第5部位)P2、および接続部位P1の他端部に接続部位P1に対して折れ曲がった略直線状のツナギ側挿通部位(第3部位、第6部位)P3を有する。また、接続ワイヤー17a,17bは、カップ側挿通部位P2の接続部位P1とは反対側の端部に、カップ側挿通部位P2に対して折れ曲がった略直線状のカップ側止め部位(第7部位、第9部位)P4、およびツナギ側挿通部位P3の接続部位P1とは反対側の端部に、ツナギ側挿通部位P3に対して折れ曲がった略直線状のツナギ側止め部位(第8部位、第10部位)P5を有する。
特に限定されないが、カップ側挿通部位P2およびツナギ側挿通部位P3は、接続部位P1に対して略直交し、カップ側止め部位P4は、カップ側挿通部位P2に対して略直交し、ツナギ側止め部位P5は、ツナギ側挿通部位P3に対して略直交している。
カップ側止め部位P4およびツナギ側止め部位P5は、接続部位P1に対してそれぞれ略平行している。また、カップ側止め部位P4およびツナギ側止め部位P5は、各開放端が互いに離れる方向を指向して逆向きに設定されている。ただし、図24に示すように、カップ側止め部位P4およびツナギ側止め部位P5は、各開放端が略同一方向を指向するようにしてもよいし、図25に示すように、カップ側止め部位P4およびツナギ側止め部位P5は、各開放端が互いに近づく方向を指向して逆向きに設定してもよい。さらに、図示は省略するが、カップ側止め部位P4およびツナギ側止め部位P5は、接続部位P1に対してねじれの関係であってもよい。この場合において、カップ側止め部位P4およびツナギ側止め部位P5は、互いに平行していても、平行していなくてもよい。
接続ワイヤー17aの表面は全体的に露出しており、接続ワイヤー17bの表面は全体的に絶縁被覆されている。
接続ワイヤー17aの近位端側は、必要に応じて弾性変形させつつ、ツナギ側止め部位P5からツナギ金属部材19の貫通穴19cに挿入し、ツナギ側挿通部位P3の部分を貫通穴19cに位置させることにより、ツナギ金属部材19の板状部19bに回動可能に挿通された状態で取り付けられる。接続ワイヤー17aの遠位端側は、必要に応じて弾性変形させつつ、カップ側止め部位P4から第1電極31aの近位端近傍に形成された貫通穴31g(図18参照)に挿入し、カップ側挿通部位P2の部分を貫通穴31gに位置させることにより、第1電極31aの近位端側の部分に回動可能に挿通された状態で取り付けられる。
接続ワイヤー17aの表面は露出しているため、接続ワイヤー17aは第1電極31aおよびツナギ金属部材19に電気的に導通された状態で取り付けられる。これにより、第1電極31aは、接続ワイヤー17aおよびツナギ金属部材19を介して、駆動ワイヤー13に電気的に導通される。なお、ここでは、接続ワイヤー17aの表面全体が露出しているものとしたが、カップ側挿通部位P2およびツナギ側挿通部位P3の全部または一部のみを露出させて、他の部位(接続部位P1、カップ側止め部位P4およびツナギ側止め部位P5)を絶縁被覆してもよい。
接続ワイヤー17bの近位端側は、同様に、必要に応じて弾性変形させつつ、ツナギ側止め部位P5からツナギ金属部材19の貫通穴19dに挿入し、ツナギ側挿通部位P3の部分を貫通穴19dに位置させることにより、ツナギ金属部材19の板状部19bに回動可能な状態で取り付けられる。接続ワイヤー17bの遠位端側は、必要に応じて弾性変形させつつ、カップ側止め部位P4から第2電極31bの近位端近傍に形成された穴31g(図18参照)に挿入し、カップ側挿通部位P2の部分を貫通穴31gに位置させることにより、第2電極31bの近位端側の部分に回動可能な状態で取り付けられる。
接続ワイヤー17bの表面は絶縁被覆されているため、接続ワイヤー17bは第2電極31bおよびツナギ金属部材19に対して電気的に絶縁された状態で取り付けられる。接続ワイヤー17bの絶縁被覆および接続ワイヤー17aの一部を絶縁被覆する場合の材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂を用いることができる。なお、接続ワイヤー17bは、導電性の材料ではなく、絶縁性の材料で形成されたものを用いてもよい。
接続ワイヤー17a,17bを構成するワイヤー状の部材の中心軸に直交する断面形状は、本実施形態では、円形であるものとするが、楕円形、長丸形、多角形であってもよい。接続ワイヤー17a,17bを構成するワイヤー状の部材の径は、φ0.20~0.45mm程度であり、電極31a,電極31bの貫通穴31gの径およびツナギ金属部材19の貫通穴19c,19dの径の双方に対して、φ0~0.10mmの範囲に設定することが好ましい。接続ワイヤー17a,17bの接続部位P1の延在方向の寸法は3~15mm程度、カップ側挿通部位P2およびツナギ側挿通部位P3の延在方向の寸法は0.3~0.7mm程度、カップ側止め部位P4およびツナギ側止め部位P5の延在方向の寸法は、0.5~1mm程度である。組み立てた状態において、接続ワイヤー17aの接続部位P1と接続ワイヤー17bの接続部位P1とのなす角度は、カップを閉じた状態で5~10°程度、カップを開いた状態で10~35°程度である。
操作部2のスライダー22をベース21に対して遠位端側にスライドさせると、これに伴い駆動ワイヤー13が遠位端側にスライドされ、ツナギ金属部材19を介して、接続ワイヤー17aおよび接続ワイヤー17bにスライド力が伝達され、接続ワイヤー17aを介して第1電極31aが第2電極31bから離間する方向に回動されるとともに、接続ワイヤー17bを介して第2電極31bが第1電極31aから離間する方向に回動されて、カップ31を開いた状態とすることができる。このとき、図22に示されているように、第1電極31aに形成された突起31hと絶縁スペーサー36に形成されたガイド溝36cとにより、カップ31の開き角度が規定されるので、全開時に常に同じ開き角度にすることができる。
一方、スライダー22をベース21に対して近位端側にスライドさせると、これに伴い駆動ワイヤー13が近位端側にスライドされ、ツナギ金属部材19を介して、接続ワイヤー17aおよび接続ワイヤー17bにスライド力が伝達され、接続ワイヤー17aを介して第1電極31aが第2電極31bに近接する方向に回動されるとともに、接続ワイヤー17bを介して第2電極31bが第1電極31aに近接する方向に回動されて、カップ31を閉じた状態とすることができる。
ベース21およびスライダー22を含む操作部2をシース部1(アウターシース11)に対して、その軸線周りに回転させると、これに伴い駆動ワイヤー13が回転され、ツナギ金属部材19、接続ワイヤー17aおよび接続ワイヤー17bを介して、第1電極31aおよび第2電極31bに均等に回転力(トルク)が伝達され、樹脂ワク32が固定金具35に対して回転し、カップ31を所望の姿勢(回転位置)に調整することができる。
このように、操作部2による電極回転のための回転操作力および電極開閉のためのスライド操作力は駆動ワイヤー13、およびツナギ金属部材19を介して伝達され、さらに接続ワイヤー17aを介して第1電極31aに、接続ワイヤー17bを介して第2電極31bに伝達される。
上述した実施形態に係る内視鏡用高周波処置具では、その組み立て時において、接続ワイヤー17aのカップ側挿通部位P2を第1電極31aの貫通穴31gに、ツナギ側挿通部位P3をツナギ金属部材19の貫通穴19cに挿通(挿入)し、接続ワイヤー17bのカップ側挿通部位を第2電極31bの貫通穴31gに、カップ側挿通部位をツナギ金属部材19の貫通穴19dに挿通(挿入)するだけでよい。したがって、各電極31a,31bとツナギ金属部材19との接続に係る組み立て作業は、従来の溶接等の作業を含むものと比較して、極めて簡易であり、その作業工数を低減することができる。また、特許文献1に記載の従来技術と比較して、構成が簡易であり、部品点数も少ない。
また、接続ワイヤー17aは、カップ側挿通部位P2の接続部位P1とは反対側の端部に、カップ側挿通部位P2に対して折れ曲がったカップ側止め部位P4、およびツナギ側挿通部位P3の接続部位P1とは反対側の端部に、ツナギ側挿通部位P3に対して折れ曲がったツナギ側止め部位P5を有しているため、極めて簡単な構成で、接続ワイヤー17aの第1電極31aの貫通穴31gおよびツナギ金属部材19の貫通穴19cからの抜け出しを防止することができ、接続の確実性が高い。接続ワイヤー17bについても同様である。
さらに、第1電極31aの貫通穴31g、第2電極31bの貫通穴31g、ツナギ金属部材19の貫通穴19cおよび貫通穴19dは、第1電極31aおよび第2電極31bの樹脂ワク32に対する回動の中心軸方向に対して略平行する方向に貫通しており、カップ側挿通部位P2およびツナギ側挿通部位P3は接続部位P1に対して略直交しているため、駆動ワイヤー13のスライドに伴う第1電極31aおよび第2電極31bの回動を円滑に行うことが可能である。
なお、上述した実施形態では、図23に示すように、予め適宜に折り曲げて形成された接続ワイヤー17a,17bを、適宜に弾性変形させつつ、電極31a,31bの貫通穴31gおよびツナギ金属部材19の貫通穴19c,19dに挿通して取り付けるようにしたが、カップ側止め部位P4およびツナギ側止め部位P5を折り曲げずに、対応するカップ側挿通部位P2およびツナギ側挿通部位P3とともに直線状としておき、カップ側挿通部位P2およびツナギ側挿通部位P3を対応する貫通穴31g,19c,19dに挿通した後に、カップ側止め部位P4およびツナギ側止め部位P5を折り曲げる(塑性変形させる)ようにしてもよい。ただし、作業工数の観点からは、上述した実施形態のように、予め適宜に折り曲げて形成されたものを用いた方が、有利である。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。