JP7069433B1 - 風速予測装置、風速予測方法及びレーダ装置 - Google Patents
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Abstract
Description
図1は、実施の形態1に係る風速予測装置3を含むレーダ装置1を示す構成図である。
図1に示すレーダ装置1は、ビーム送受信部2及び風速予測装置3を備えている。
図2は、ビーム送受信部2から空間に放射される複数のビームを示す説明図である。図2の例では、観測領域が空間に存在している。観測領域は、例えば、飛行体が飛行する予定の飛行領域である。飛行体は、例えば、ドローン、又は、ヘリコプターである。
図2Aは、飛行領域の位置が、ビーム送受信部2の鉛直方向の真上である場合の複数のビームを示す説明図である。
図2Bは、飛行領域の位置が、ビーム送受信部2の鉛直方向の真上からずれている場合の複数のビームを示す説明図である。
ビーム送受信部2は、図2に示すように、視線方向と水平方向とのなす角である仰角θn(n=1,・・・,N)が互いに異なる複数のビームのそれぞれを空間に放射する。Nは、2以上の整数である。
即ち、ビーム送受信部2は、図2Aに示すように、飛行領域が鉛直方向の真上に存在している場合、それぞれの仰角θnでビームスキャンを実施することで、それぞれの仰角θnにおいて、互いに異なる方向にビームを放射する。
図2Aでは、N=3であり、ビーム送受信部2から、仰角θ1のビーム、仰角θ2のビーム及び仰角θ3のビームのそれぞれが空間に放射されている。図2Aでは、それぞれの仰角θnにおいて、4つの方向にビームが放射されている。図2Aにおいて、黒丸は、風速の観測点を示している。
また、ビーム送受信部2は、図2Bに示すように、飛行領域の位置が鉛直方向の真上からずれている場合、仰角θnを切り替えながら、それぞれの仰角θnでビームを放射する。
図2Bでは、N=12であり、ビーム送受信部2から、仰角θ1~θ12のビームが空間に放射されている。図面の簡単化のため、図2Bには、仰角θ1~θ6のみが表記されており、仰角θ7~θ12の表記が省略されている。図2Bでは、それぞれの仰角θnにおいて、1つの方向にビームが放射されている。図2Bにおいて、黒丸は、風速の観測点を示している。
ビーム送受信部2から放射されるビームとしては、例えば、CW(Continuous Wave)パルス光のほか、周波数変調されたパルス光を用いることができる。
ビーム送受信部2は、空間で散乱された後のそれぞれのビームを散乱信号として受信する。
ビーム送受信部2は、それぞれの散乱信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、デジタル信号を風速予測装置3に出力する。
また、ビーム送受信部2は、空間に放射したそれぞれのビームの仰角θnを示す角度情報を風速予測装置3に出力する。
図1に示すレーダ装置1では、ビーム送受信部2が、ビーム生成部、ビーム送信器、放射方向切替部、アンテナ及びビーム受信器を備えているものを想定している。しかし、ビーム送受信部2は、仰角θnが互いに異なる複数のビームのそれぞれを空間に放射し、空間で散乱された後のそれぞれのビームを散乱信号として受信することができればよく、どのような構成であってもよい。
図4は、実施の形態1に係る風速予測装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。
図3に示す風速予測装置3は、散乱信号取得部11、ドップラー周波数算出部12、第1の風速分布推定部13、第2の風速分布推定部14及び風速予測部15を備えている。
散乱信号取得部11は、空間で散乱された後のそれぞれの散乱信号として、ビーム送受信部2から、それぞれのデジタル信号sθn,j(t)を取得する。j=1,・・・,Jである。jは、仰角θnにおけるビームスキャンのスキャン番号である。図2Aの例では、それぞれの仰角θnにおいて、4つの方向にビームが放射されているため、J=4である。図2Bの例では、それぞれの仰角θnにおいて、1つの方向にビームが放射されているため、J=1である。tは、時刻を示す変数である。
また、散乱信号取得部11は、ビーム送受信部2により空間に放射されたそれぞれのビームの仰角θnを示す角度情報を取得する。
散乱信号取得部11は、それぞれのデジタル信号sθn,j(t)及び角度情報のそれぞれをドップラー周波数算出部12に出力する。
ドップラー周波数算出部12は、散乱信号取得部11から、それぞれのデジタル信号sθn,j(t)及び角度情報のそれぞれを取得する。
ドップラー周波数算出部12は、それぞれのデジタル信号sθn,j(t)をヒット方向にFFT(Fast Fourier Transformation)する前に、角度情報が示す仰角θnに従って、それぞれのデジタル信号sθn,j(t)の距離分解能としてレンジビン幅を設定する。即ち、ドップラー周波数算出部12は、レンジビン幅に相当するFFT長Lθnを設定する。
FFT長Lθnは、空間に放射されたビームの仰角θnが広いほど、短く設定され、空間に放射されたビームの仰角θnが狭いほど、長く設定される。
図2Aの例では、仰角θ1のビームに対応するデジタル信号sθ1,j(t)のFFT長Lθ1が、仰角θ2のビームに対応するデジタル信号sθ2,j(t)のFFT長Lθ2よりも長く、仰角θ2のビームに対応するデジタル信号sθ2,j(t)のFFT長Lθ2が、仰角θ3のビームに対応するデジタル信号sθ3,j(t)のFFT長Lθ3よりも長い。
ドップラー周波数算出部12は、散乱信号取得部11により取得されたそれぞれのデジタル信号sθn,j(t)をヒット方向にFFTすることで、デジタル信号sθn,j(t)を周波数領域の信号rθn,j(f)に変換する。fは、周波数を示す変数である。
図2では、3つの2次元平面の風速分布を求める例を示している。図2のように、3つの2次元平面の風速分布を求める場合、ドップラー周波数算出部12は、周波数領域の信号rθn,j(f)から、レンジビンRb1,Rb2,Rb3におけるそれぞれのドップラー周波数dpfθn,j,Rbmを算出する。
図3に示す風速予測装置3では、Mが2以上の整数であるものを想定している。ただし、Mが2以上の整数であるものに限るものではなく、M=1であってもよい。
M=1の場合、ドップラー周波数算出部12は、周波数領域の信号rθn,j(f)から、観測領域を含んでいる1つのレンジビンRb1のドップラー周波数dpfθn,j,Rb1のみを算出する。
ドップラー周波数算出部12は、それぞれのレンジビンRbmのドップラー周波数dpfθn,j,Rbmを第1の風速分布推定部13に出力する。
第1の風速分布推定部13は、ドップラー周波数算出部12により算出されたそれぞれのレンジビンRbmにおける複数のドップラー周波数dpfθ1,j,Rbm~dpfθN,j,Rbmから、VVP(Volume Velocity Processing)法を用いて、それぞれのレンジビンRbmに対応する2次元平面の風速分布uRbm(x,y)を推定する。
第1の風速分布推定部13は、Mが1であれば、観測領域を含んでいる2次元平面として、レンジビンRb1に対応する2次元平面の風速分布uRb1(x,y)を推定し、2次元平面の風速分布uRb1(x,y)を風速予測部15に出力する。
第1の風速分布推定部13は、Mが2以上であれば、それぞれのレンジビンRbmに対応する2次元平面の風速分布uRbm(x,y)を第2の風速分布推定部14に出力する。
第2の風速分布推定部14は、第1の風速分布推定部13により推定された複数の2次元平面の風速分布uRb1(x,y)~uRbM(x,y)から、複数の2次元平面の間の2次元平面の風速分布uRbm’(x,y)を推定する。例えば、2次元平面の風速分布uRb1’(x,y)は、レンジビンRb1に対応する2次元平面とレンジビンRb2に対応する2次元平面との間の2次元平面の風速分布である。2次元平面の風速分布uRb2’(x,y)は、レンジビンRb2に対応する2次元平面とレンジビンRb3に対応する2次元平面との間の2次元平面の風速分布である。
第2の風速分布推定部14は、複数の2次元平面の間の2次元平面の風速分布uRb1’(x,y)~uRbM-1’(x,y)を風速予測部15に出力する。
風速予測部15は、Mが1であれば、第1の風速分布推定部13により推定された2次元平面の風速分布uRb1(x,y)から、2次元ナビエストークス方程式(以下「2次元N-S方程式」という)を用いて、観測領域の風速u(t)を予測する。観測領域は、例えば、飛行体が飛行する予定の飛行領域を含んでいる領域である。
風速予測部15は、Mが2以上であれば、第1の風速分布推定部13により推定された複数の2次元平面の風速分布uRb1(x,y)~uRbM(x,y)及び第2の風速分布推定部14により推定された2次元平面の風速分布uRb1’(x,y)~uRbM-1’(x,y)の中から、飛行領域を観測領域として含んでいる2次元平面の風速分布を選択する。
風速予測部15は、選択した2次元平面の風速分布から、2次元N-S方程式を用いて、飛行領域の風速u(t)を予測する。
ソフトウェア又はファームウェアは、プログラムとして、コンピュータのメモリに格納される。コンピュータは、プログラムを実行するハードウェアを意味し、例えば、CPU(Central Processing Unit)、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサ、あるいは、DSP(Digital Signal Processor)が該当する。
風速予測装置3が、ソフトウェア又はファームウェア等によって実現される場合、散乱信号取得部11、ドップラー周波数算出部12、第1の風速分布推定部13、第2の風速分布推定部14及び風速予測部15におけるそれぞれの処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムがメモリ31に格納される。そして、コンピュータのプロセッサ32がメモリ31に格納されているプログラムを実行する。
図6は、風速予測装置3の処理手順である風速予測方法を示すフローチャートである。
ビーム送受信部2は、図2に示すように、仰角θn(n=1,・・・,N)が互いに異なる複数のビームのそれぞれを空間に放射する。
即ち、ビーム送受信部2は、図2Aに示すように、飛行領域が鉛直方向の真上に存在している場合、それぞれの仰角θnでビームスキャンを実施することで、それぞれの仰角θnにおいて、互いに異なる方向にビームを放射する。
ビーム送受信部2は、図2Bに示すように、飛行領域の位置が鉛直方向の真上からずれている場合、仰角θnを切り替えながら、それぞれの仰角θnでビームを放射する。ビーム送受信部2から放射されるビームは、例えば、パルス光である。
ビーム送受信部2から放射されたそれぞれのビームは、空間内に浮遊しているエアロゾル等の微粒子によって後方散乱される。例えば、1つのビームの視線方向に、複数の微粒子が存在していれば、1つのビームは、それぞれの微粒子によって後方散乱される。後方散乱された後のビームは、散乱信号として、ビーム送受信部2に戻ってくる。ビーム送受信部2から複数の微粒子までの距離は互いに異なるため、それぞれの散乱信号が、ビーム送受信部2に戻ってくる時間は、互いに異なる。
ビーム送受信部2は、それぞれの散乱信号をアナログ信号からデジタル信号sθn,j(t)(n=1,・・・,N:j=1,・・・,J)に変換し、デジタル信号sθn,jを風速予測装置3に出力する。
また、ビーム送受信部2は、空間に放射したそれぞれのビームの仰角θnを示す角度情報を風速予測装置3に出力する。
また、散乱信号取得部11は、ビーム送受信部2から、それぞれのビームの仰角θnを示す角度情報を取得する。
散乱信号取得部11は、それぞれのデジタル信号sθn,j(t)及び角度情報のそれぞれをドップラー周波数算出部12に出力する。
ドップラー周波数算出部12は、それぞれのデジタル信号sθn,j(t)をヒット方向にFFTする前に、角度情報が示す仰角θnに従って、それぞれのデジタル信号sθn,j(t)のFFT長Lθnを設定する(図6のステップST2)。FFT長Lθnは、散乱信号のレンジビン幅に相当する。
即ち、ドップラー周波数算出部12は、FFT長Lθnに相当するレンジビン幅が1/sin(θn)に比例するように、デジタル信号sθn,j(t)のFFT長Lθnを設定する。
それぞれのデジタル信号sθn,j(t)のFFT長Lθnが同じである場合、仰角θnが異なれば、図7Aに示すように、同一のレンジビンRbmの複数の観測点の高度が互いに異なる。
一方、それぞれのデジタル信号sθn,j(t)のFFT長Lθnが仰角θnに従って設定されている場合、仰角θnが異なっていても、図7Bに示すように、同一のレンジビンRbmの複数の観測点の高度が同じ高度になる。
図1に示すレーダ装置1では、同一のレンジビンRbmの複数の観測点が同じ高度となるように、仰角θnが広いほど、FFT長Lθnが短く設定され、散乱信号の仰角θnが狭いほど、FFT長Lθnが長く設定されている。
図7Aは、仰角θnが異なれば、同一のレンジビンRbmの複数の観測点の高度が互いに異なることを示す説明図である。
図7Bは、仰角θnが変化しても、同一のレンジビンRbmの複数の観測点が同じ高度であることを示す説明図である。
FFT長Lθnが短く設定されれば、レンジビンRbmの幅が狭くなり、距離分解能が高くなる。一方、FFT長Lθnが長く設定されれば、レンジビンRbmの幅が広くなり、距離分解能が低くなる。
ドップラー周波数算出部12は、それぞれのデジタル信号sθn,j(t)を、FFT長がLθnのFFTをヒット方向に行うことで、それぞれのデジタル信号sθn,j(t)を周波数領域の信号rθn,j(f)に変換する(図6のステップST3)。
ドップラー周波数算出部12は、それぞれのレンジビンRbmのドップラー周波数dpfθn,j,Rbmを第1の風速分布推定部13に出力する。
レンジビンRbmのドップラー周波数dpfθn,j,Rbmを算出する処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
ドップラー周波数算出部12は、例えば、仰角θnが同じで、ヒット番号が互いに異なる複数のパルス光に係るデジタル信号sθn,j(t)をそれぞれ取得して、複数のビームに係るデジタル信号sθn,j(t)を周波数領域の信号rθn,j(f)にそれぞれ変換する。そして、ドップラー周波数算出部12は、複数の周波数領域の信号rθn,j(f)をコヒーレント積分することで、ドップラー周波数dpfθn,j,Rbmの算出精度を高める。ドップラー周波数dpfθn,j,Rbmの算出精度を高める処理自体は、公知の技術であるため詳細な説明を省略する。
第1の風速分布推定部13は、それぞれのレンジビンRbmにおける複数のドップラー周波数dpfθ1,j,Rbm~dpfθN,j,Rbmから、VVP法を用いて、それぞれのレンジビンRbmに対応する2次元平面の風速分布uRbm(x,y)を推定する(図6のステップST5)。
図8は、風速の観測点の位置(x,y,z)を示す説明図である。
風速の観測点の位置(x,y,z)は、以下の式(1)に示すように、レーダ装置1が備えるビーム送受信部2の位置Oを中心とする極座標で表されるものとする。
式(1)において、θは、ビームの仰角である。φは、観測点が存在しているx-y平面の中心点O’と観測点の位置(x,y,z)とを結ぶ線分と、y軸とのなす角である。rは、ビーム送受信部2の位置Oと観測点の位置(x,y,z)との間の距離である。
一般的な地形とは、平坦な地形、傾斜している地形、又は、小さな凹凸がある地形等が該当する。特殊な地形とは、谷底がある地形、又は、標高差が大きな崖がある地形等が該当する。
このため、図3に示す風速予測装置3では、第1の風速分布推定部13が、鉛直方向の風速を無視し、観測点における真の風速ベクトルuが、以下の式(2)のように表されるものとする。
第1の風速分布推定部13は、式(8)によって推定したpの要素のパラメータを均等に割り振ることで、不確定要素を確定する。
pの要素のうち、上から4番目がp4であるとすれば、第1の風速分布推定部13は、例えば、以下の式(9)のように、p4を決定する。
pの要素のうち、上から7番目がp7であるとすれば、第1の風速分布推定部13は、例えば、以下の式(10)のように、p7を決定する。
pの要素のうち、上から8番目がp8であるとすれば、第1の風速分布推定部13は、例えば、以下の式(11)のように、p8を決定する。
第1の風速分布推定部13は、それぞれの観測点の風速ベクトルu(x,y)を得ることができれば、それぞれのレンジビンRbmに対応する2次元平面の風速分布uRbm(x,y)を得ることができる。
ここでは、第1の風速分布推定部13が、風速ベクトルu(x,y)のテーラー展開を0次~2次の項で近似している。しかし、これは一例に過ぎず、第1の風速分布推定部13が、風速ベクトルu(x,y)のテーラー展開を0次~3次以上の項で近似するようにしてもよい。
第1の風速分布推定部13は、Mが2以上であれば、それぞれのレンジビンRbmに対応する2次元平面の風速分布uRbm(x,y)を第2の風速分布推定部14に出力する。
第2の風速分布推定部14は、複数の2次元平面の風速分布uRb1(x,y)~uRbM(x,y)から、複数の2次元平面の間の2次元平面の風速分布uRbm’(x,y)を推定する(図6のステップST6)。
第2の風速分布推定部14は、2次元平面の風速分布uRb1’(x,y)~uRbM-1’(x,y)を風速予測部15に出力する。
例えば、風速分布がuRbm(x,y)である2次元平面と、風速分布がuRbm+1(x,y)である2次元平面との間の2次元平面の風速分布uRbm’(x,y)を推定する場合、第2の風速分布推定部14は、風速分布uRbm’(x,y)を推定する2次元平面から、風速分布がuRbm(x,y)である2次元平面までの鉛直方向の距離Lm-m’を算出する。
また、第2の風速分布推定部14は、風速分布uRbm’(x,y)を推定する2次元平面から、風速分布がuRbm+1(x,y)である2次元平面までの鉛直方向の距離L(m+1)-m’を算出する。
第2の風速分布推定部14は、以下の式(12)から式(14)に示すように、距離Lm-m’及び距離L(m+1)-m’に基づいて、2次元平面の風速分布uRbm(x,y)に対する重み係数wmと、2次元平面の風速分布uRbm+1(x,y)に対する重み係数wm+1とを算出する。
また、ここでは、第2の風速分布推定部14が、風速分布がuRbm(x,y)である2次元平面と、風速分布がuRbm+1(x,y)である2次元平面との間の2次元平面の風速分布として、1つの2次元平面の風速分布uRbm’(x,y)を推定している。しかし、これは一例に過ぎず、第2の風速分布推定部14は、風速分布がuRbm(x,y)である2次元平面と、風速分布がuRbm+1(x,y)である2次元平面との間の2次元平面の風速分布として、鉛直方向の位置が互いに異なる、2つ以上の2次元平面の風速分布uRbm’(x,y)を推定するようにしてもよい。
風速予測部15は、Mが2以上であれば、第1の風速分布推定部13から、複数の2次元平面の風速分布uRb1(x,y)~uRbM(x,y)を取得し、第2の風速分布推定部14から、2次元平面の風速分布uRb1’(x,y)~uRbM-1’(x,y)を取得する。
風速予測部15は、Mが2以上であれば、複数の2次元平面の風速分布uRb1(x,y)~uRbM(x,y)及び2次元平面の風速分布uRb1’(x,y)~uRbM-1’(x,y)の中から、いずれかの2次元平面の風速分布を選択する。
風速u(t)の予測対象の観測点が、レンジビンRbmに対応する2次元平面内の観測領域に存在していれば、風速予測部15は、風速分布uRbm(x,y)を選択する。風速u(t)の予測対象の観測点が、レンジビンRbm’に対応する2次元平面内の観測領域に存在していれば、風速予測部15は、風速分布uRbm’(x,y)を選択する。
風速予測部15は、選択した2次元平面の風速分布から、2次元N-S方程式を用いて、選択した2次元平面内の観測領域の風速u(t)を予測する(図6のステップST7)。
風は、一般的に、非圧縮流体とみなされる。非圧縮流体に関する2次元N-S方程式は、以下に示す式(16)及び式(17)によって表現される。
風速ベクトルuが2次元ベクトルu=[ux,uy]Tであるとすれば、式(18)は、以下の式(20)及び式(21)のように表される。
また、中間変数uy *を用いれば、式(26)は、以下の式(29)及び式(30)のように、2つの式に分けることができる。
風速予測部15は、離散化したux gを式(31)に代入することで、中間変数ux *を算出し、離散化したuy gを式(32)に代入することで、中間変数uy *を算出する。
風速予測部15は、中間変数ux *及び中間変数uy *を用いて、式(36)から圧力pを算出する。
風速予測部15は、中間変数ux *及び圧力pを用いて、式(28)から次時刻ステップg+1の風速ベクトルux g+1を算出する。
風速予測部15は、中間変数uy *及び圧力pを用いて、式(30)から次時刻ステップg+1の風速ベクトルuy g+1を算出する。
風速予測部15により予測される風速u(t)は、[ux g+1,uy g+1]Tであり、風速u(t)は、例えば、図示せぬ表示器に表示される。
これに対して、図3に示す風速予測装置3の演算処理は、2次元の演算処理である。例えば、2次元平面の数がMであり、2次元平面に存在している観測領域内の観測点の数が、Cx×Cyであり、C=Cx=Cyであるとすれば、演算量オーダは、概ねC2×Mに比例するオーダとなる。M=Cであれば、図3に示す風速予測装置3の演算量オーダは、従来の風速予測装置の演算量オーダと、概ね同じになる。
しかしながら、3次元の演算処理は、鉛直風を無視しない3次元N-S方程式を用いることが想定される。当該3次元N-S方程式では、鉛直方向の観測点の間隔を大幅に広げることが困難であり、3次元N-S方程式を解くことが可能な、観測点の間隔の最大値は、鉛直方向のクーラン条件として決まっている。
一方、2次元の演算処理である、鉛直風を無視する2次元N-S方程式では、鉛直方向のクーラン条件が存在していないので、Cz≫Mとすることが可能である。例えば、(M/Cz)=1/Qであるとすれば、図3に示す風速予測装置3の演算量オーダは、従来の風速予測装置の演算量オーダの概ね1/Qとなる。Qは、10~1000程度の値である。
上述したように、例えば、観測点の鉛直下方における地表面の地形が特殊な地形ではなく、一般的な地形であれば、風速予測装置3は、観測点が存在している2次元平面に対して、鉛直方向の風速を観測できなくても、2次元平面と平行な方向の風速を観測できれば、飛行体に影響する風を観測する上で、実用上問題がない。
仮に、観測点の鉛直下方における地表面の地形が特殊な地形であっても、2次元平面と平行な方向の風速は、飛行体に影響する風を観測する上で、有用な情報として利用可能である。
風速分布uRbm(x,y)の時間方向の平滑化は、2次元N-S方程式のような流体移動モデルと、推定した風速分布uRbm(x,y)とを融合することで、実現することが可能である。流体移動モデルと風速分布uRbm(x,y)との融合は、データ同化と呼ばれる。
例えば、前時間ステップg-1の真の風速分布uRbm(x,y)がut=tg-1で表され、現在の時間ステップgの真の風速分布uRbm(x,y)がut=tgで表されるものとする。2次元N-S方程式は、ut=tg-1とut=tgとの関係を非線形に記述することが可能な流体モデルであり、非線形関数がf(・)で表されるとすれば、以下の式(37)が成立する。
実施の形態1に係る風速予測装置3では、風速予測部15が、複数の2次元平面の風速分布uRb1(x,y)~uRbM(x,y)及び2次元平面の風速分布uRb1’(x,y)~uRbM-1’(x,y)の中から、いずれかの2次元平面の風速分布を選択している。
実施の形態2では、複数の2次元平面の風速分布uRb1(x,y)~uRbM(x,y)と2次元平面の風速分布uRb1’(x,y)~uRbM-1’(x,y)とから、飛行体が飛行する予定の飛行領域を観測領域として含んでいる2次元平面の風速分布を推定する風速予測部16を備える風速予測装置3について説明する。
図10は、実施の形態2に係る風速予測装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。図10において、図4と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図9に示す風速予測装置3は、散乱信号取得部11、ドップラー周波数算出部12、第1の風速分布推定部13、第2の風速分布推定部14及び風速予測部16を備えている。
風速予測部16は、第1の風速分布推定部13により推定された複数の2次元平面の風速分布uRb1(x,y)~uRbM(x,y)と、第2の風速分布推定部14により推定された2次元平面の風速分布uRb1’(x,y)~uRbM-1’(x,y)とから、飛行領域を観測領域として含んでいる2次元平面の風速分布を推定する。
風速予測部16は、推定した2次元平面の風速分布から、2次元N-S方程式を用いて、飛行領域の風速u(t)を予測する。
風速予測装置3の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、風速予測装置3が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
また、図10では、風速予測装置3の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図5では、風速予測装置3がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、風速予測装置3における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
ここでは、説明の便宜上、風速分布がuRbm(x,y)である2次元平面と、風速分布がuRbm’(x,y)である2次元平面との間の2次元平面に、飛行領域が存在しているものとする。
また、風速予測部16は、飛行領域が存在している2次元平面から、風速分布がuRbm’(x,y)である2次元平面までの鉛直方向の距離Lp-m’を算出する。
風速予測部16は、以下の式(39)から式(41)に示すように、距離Lp-m及び距離Lp-m’に基づいて、2次元平面の風速分布uRbm(x,y)に対する重み係数wp-mと、2次元平面の風速分布uRbm’(x,y)に対する重み係数wp-m’とを算出する。
実施の形態3では、風速予測部15により予測された風速u(t)が閾値Th以上となる時刻tを算出し、時刻tを通知する時刻通知部17を備える風速予測装置3について説明する。
図12は、実施の形態3に係る風速予測装置3のハードウェアを示すハードウェア構成図である。図12において、図4及び図10と同一符号は同一又は相当部分を示すので説明を省略する。
図11に示す風速予測装置3は、散乱信号取得部11、ドップラー周波数算出部12、第1の風速分布推定部13、第2の風速分布推定部14、風速予測部15及び時刻通知部17を備えている。
時刻通知部17は、風速予測部15により予測された風速u(t)が閾値Th以上となる時刻tを特定する。
時刻通知部17は、特定した時刻tを、例えば、飛行体、又は、飛行体の飛行状態を監視している管制塔に通知する。
風速予測装置3の構成要素は、専用のハードウェアによって実現されるものに限るものではなく、風速予測装置3が、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現されるものであってもよい。
また、図12では、風速予測装置3の構成要素のそれぞれが専用のハードウェアによって実現される例を示し、図5では、風速予測装置3がソフトウェア又はファームウェア等によって実現される例を示している。しかし、これは一例に過ぎず、風速予測装置3における一部の構成要素が専用のハードウェアによって実現され、残りの構成要素がソフトウェア又はファームウェア等によって実現されるものであってもよい。
時刻通知部17は、風速予測部15が風速u(t)を予測する毎に、風速予測部15から、予測された風速u(t)を取得する。
時刻通知部17は、予測された風速u(t)を取得する毎に、風速u(t)と閾値Thとを比較する。閾値Thは、例えば、飛行体の飛行に影響を及ぼす可能性がある風速の下限値である。閾値Thは、時刻通知部17の内部メモリに格納されていてもよいし、外部から与えられるものであってもよい。
時刻通知部17は、特定した時刻tを、例えば、飛行体、又は、飛行体の飛行状態を監視している管制塔に通知する。
Claims (7)
- 視線方向と水平方向とのなす角である仰角が互いに異なる複数のビームのそれぞれが空間に放射され、前記空間で散乱された後のそれぞれのビームである散乱信号を取得する散乱信号取得部と、
前記空間に放射されたそれぞれのビームの仰角に従って、前記散乱信号取得部により取得されたそれぞれの散乱信号の距離分解能としてレンジビン幅を可変に設定することで、仰角の異なるビームであっても同一高度の観測点を観測できるようにし、それぞれの散乱信号から、観測領域を含んでいる2次元平面に対応するレンジビンのドップラー周波数を算出するドップラー周波数算出部と、
前記ドップラー周波数算出部により算出された複数のドップラー周波数から、VVP(Volume Velocity Processing)法を用いて、前記2次元平面の風速分布を推定する第1の風速分布推定部と、
前記第1の風速分布推定部により推定された2次元平面の風速分布から、2次元ナビエストークス方程式を用いて、前記観測領域の風速を予測する風速予測部と
を備えた風速予測装置。 - 前記ドップラー周波数算出部は、それぞれの散乱信号から、複数のレンジビンにおけるそれぞれのドップラー周波数を算出することで、観測する3次元領域を複数の2次元平面の積み上げとして表現し、
前記第1の風速分布推定部は、前記ドップラー周波数算出部により算出された高度の異なる各2次元平面に対応するレンジビンにおける複数のドップラー周波数から、VVP法を用いて、それぞれのレンジビンに対応する高度の異なる2次元平面の風速分布を推定することを特徴とする請求項1記載の風速予測装置。 - 前記風速予測部は、前記第1の風速分布推定部により推定された複数の高度の異なる2次元平面の風速分布の中から、飛行体が飛行する予定の飛行高度に最も近い高度の2次元平面の風速分布を選択し、選択した風速分布から、2次元ナビエストークス方程式を用いて、前記飛行体が飛行する予定の飛行領域の風速を予測することを特徴とする請求項2記載の風速予測装置。
- 前記第1の風速分布推定部により推定された高度の異なる複数の2次元平面の風速分布から、前記複数の2次元平面の間の2次元平面の風速分布を推定して、2次元平面の風速分布を高度方向に内挿補間することにより、指定された高度の2次元風速分布を推定する第2の風速分布推定部を備え、
前記風速予測部は、飛行体が飛行する予定の飛行高度における2次元平面の風速分布を前記第2の風速分布推定部を用いて推定し、推定した風速分布から、2次元ナビエストークス方程式を用いて、前記飛行体が飛行する予定の飛行領域の風速を予測することを特徴とする請求項2記載の風速予測装置。 - 前記風速予測部により予測された風の速度が閾値以上となる時刻を特定し、前記時刻を通知する時刻通知部を備えたことを特徴とする請求項1記載の風速予測装置。
- 視線方向と水平方向とのなす角である仰角が互いに異なる複数のビームのそれぞれが空間に放射されたとき、
散乱信号取得部が、前記空間で散乱された後のそれぞれのビームである散乱信号を取得し、
ドップラー周波数算出部が、前記空間に放射されたそれぞれのビームの仰角に従って、前記散乱信号取得部により取得されたそれぞれの散乱信号の距離分解能としてレンジビン幅を可変に設定することで、仰角の異なるビームであっても同一高度の観測点を観測できるようにし、それぞれの散乱信号から、観測領域を含んでいる2次元平面に対応するレンジビンのドップラー周波数を算出し、
第1の風速分布推定部が、前記ドップラー周波数算出部により算出された複数のドップラー周波数から、VVP(Volume Velocity Processing)法を用いて、前記2次元平面の風速分布を推定し、
風速予測部が、前記第1の風速分布推定部により推定された2次元平面の風速分布から、2次元ナビエストークス方程式を用いて、前記観測領域の風速を予測する
風速予測方法。 - 視線方向と水平方向とのなす角である仰角が互いに異なる複数のビームのそれぞれを空間に放射し、前記空間で散乱された後のそれぞれのビームである散乱信号を受信するビーム送受信部と、
前記ビーム送受信部により受信されたそれぞれの散乱信号を取得する散乱信号取得部と、
前記ビーム送受信部から空間に放射されたそれぞれのビームの仰角に従って、前記散乱信号取得部により取得されたそれぞれの散乱信号の距離分解能としてレンジビン幅を可変に設定することで、仰角の異なるビームであっても同一高度の観測点を観測できるようにし、それぞれの散乱信号から、観測領域を含んでいる2次元平面に対応するレンジビンのドップラー周波数を算出するドップラー周波数算出部と、
前記ドップラー周波数算出部により算出された複数のドップラー周波数から、VVP(Volume Velocity Processing)法を用いて、前記2次元平面の風速分布を推定する第1の風速分布推定部と、
前記第1の風速分布推定部により推定された2次元平面の風速分布から、2次元ナビエストークス方程式を用いて、前記観測領域の風速を予測する風速予測部と
を備えたレーダ装置。
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