JP7067329B2 - 樹脂成形品の接合方法 - Google Patents

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Description

本発明は樹脂成形品の接合方法に係る。特に、本発明は、筒状の複数の樹脂成形品の端縁(開放側端縁)同士を溶着によって接合する方法に関する。
従来、特許文献1に開示されているように、樹脂成形品同士を溶着によって接合することで圧力容器を作製することが行われている。この特許文献1には、略円筒状に成形された一対の樹脂製のライナの各端縁を赤外線によってそれぞれ加熱溶融させ、これらライナの端縁同士を突き合わせて溶着することで圧力容器を作製することが開示されている。
特開2016-217361号公報
この種の接合方法において求められることは、各樹脂成形品(前記樹脂製のライナ)同士の接合部分の接合強度を周方向の全体に亘って均一且つ十分に確保することである。
一般に、各樹脂成形品の端縁同士を溶着する場合、加熱によって溶融した樹脂(樹脂成形品の端縁を構成している樹脂材料)の一部がビードとして圧力容器の内側に向けて流れ込み、それが冷却固化することで両者の接合強度が高められることになる。このため、各樹脂成形品同士の接合部分の接合強度を周方向の全体に亘って均一且つ十分に確保するためには、前記ビードの量が周方向の全体に亘って均一且つ適切に得られるようにしておく必要がある。
しかしながら、樹脂成形品は射出成形や押出成形によって作製されるため、それぞれの端縁の平面度や平行度を高い精度で成形するには限界がある。このため、各樹脂成形品同士の軸心を一致させた状態でこれら樹脂成形品の端縁同士を突き合わせて溶着(圧着)する場合に、端縁の片当たりが発生し、周方向の一部ではビードの量が不足して、その部分では十分な接合強度が得られない可能性がある。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、筒状の複数の樹脂成形品の端縁同士を溶着によって接合する場合に、各樹脂成形品同士の接合部分での接合強度を周方向の全体に亘って均一に確保することができる樹脂成形品の接合方法を提供することにある。
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、筒状の複数の樹脂成形品の端縁同士を溶着によって接合する樹脂成形品の接合方法を前提とする。そして、この接合方法は、支持工程、クランプ工程、加熱溶融工程、溶着工程を備えている。支持工程では、互いに端縁同士が溶着される一対の前記樹脂成形品を第1の樹脂成形品および第2の樹脂成形品とした場合に、軸心が水平方向に延在する状態とされた前記第1の樹脂成形品における、前記第2の樹脂成形品の端縁に溶着される端縁とは反対側の端縁に対し、鉛直方向に沿って配設された基準プレートを当接させることにより、前記第1の樹脂成形品の前記反対側の端縁が鉛直方向に沿うように当該第1の樹脂成形品の姿勢を矯正した状態で、前記第1の樹脂成形品および前記第2の樹脂成形品における互いに溶着される端縁同士が対向するように前記各樹脂成形品を基台上に支持する。クランプ工程では、前記支持工程の後、前記第1の樹脂成形品の前記反対側の端縁を前記基準プレートに当接させた状態のまま、前記第1の樹脂成形品および前記第2の樹脂成形品における互いに溶着される前記端縁同士を、その全周囲が接触するように当接させた状態で、これら樹脂成形品の姿勢を維持したまま、当該各樹脂成形品をクランプする。加熱溶融工程では、前記クランプ工程の後、前記第1の樹脂成形品および前記第2の樹脂成形品における互いに溶着される前記端縁同士を離間させた状態で、これら端縁を加熱溶融させる。溶着工程では、前記加熱溶融させた前記第1の樹脂成形品および前記第2の樹脂成形品の前記端縁同士を接触させて溶着させる。
この特定事項により、先ず、支持工程で、基台上に各樹脂成形品をその端縁同士が対向するように支持する。そして、各樹脂成形品の端縁同士を、その全周囲が接触するように当接させた状態で、各樹脂成形品の姿勢を維持したまま、樹脂成形品をクランプする(クランプ工程)。この際、前記支持工程において樹脂成形品の端縁同士の平行度が得られていなかったとしても、各樹脂成形品の端縁同士を当接させることでこの平行度が得られる。そして、この各樹脂成形品の姿勢を維持したままクランプすることになるので、その後、各樹脂成形品の端縁同士を離間させたとしても、両者の平行度は維持されることになる。その後、各樹脂成形品の端縁同士を離間させた状態で、この端縁を加熱溶融させ(加熱溶融工程)、この端縁同士を接触させて溶着させる(溶着工程)。つまり、各樹脂成形品は端縁同士の平行度が維持された状態で接触されて溶着されることになる。このため、各樹脂成形品の端縁同士を接触させて(突き合わせて)溶着する場合に片当たりが発生し難くなり、前記ビードの量を周方向の全体に亘って均一に得ることができて、各樹脂成形品同士の接合部分での接合強度を周方向の全体に亘って均一に確保することができる。
また、前記基準プレートは、前記第1の樹脂成形品の前記反対側の端縁に溶着される第3の樹脂成形品をクランプするクランプユニットに取り付けられており、前記第1の樹脂成形品および前記第2の樹脂成形品の前記端縁同士が溶着された後、前記第1の樹脂成形品の前記反対側の端縁と前記第3の樹脂成形品の端縁との接合作業に当たっては、前記基準プレートが、前記クランプユニットから離脱されて、前記第1の樹脂成形品の前記反対側の端縁と前記第3の樹脂成形品の前記端縁との接触を可能にする。
本発明では、各樹脂成形品の端縁同士をその全周囲が接触するように一旦当接させた状態でクランプし、その後、端縁同士を離間させた状態でこの端縁を加熱溶融させた後に該端縁同士を溶着させるようにしている。このため、各樹脂成形品の端縁同士を接触させて溶着する場合に片当たりが発生し難くなり、前記ビードの量を周方向の全体に亘って均一に得ることができて、各樹脂成形品同士の接合部分での接合強度を周方向の全体に亘って均一に確保することができる。
実施形態に係る圧力容器の軸心方向に沿った断面図である。 接合装置の側面図である。 支持工程を説明するための図2相当図である。 クランプ工程を説明するための図2相当図である。 加熱溶融工程を説明するための図2相当図である。 溶着工程を説明するための図2相当図である。 接合完了時点における図2相当図である。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、圧力容器を作製するための方法(樹脂成形品の接合方法)として本発明を適用した場合について説明する。
-圧力容器の構成-
圧力容器を作製するための樹脂成形品の接合方法について説明する前に、圧力容器の構成について説明する。
図1は、圧力容器1の軸心方向に沿った断面図である。この図1に示すように、圧力容器1は、全体として密閉円筒状の容器本体2と、この容器本体2の長手方向の両端部に取り付けられた口金3,3とを備えている。
容器本体2の内部は、ガスを貯留する貯留空間5となっている。圧力容器1は、常圧のガスを充填することもできるし、常圧に比べて圧力が高められたガスを充填することもできる。例えば、燃料電池システムでは、高圧の状態で圧力容器1内に充填された燃料ガスを減圧して、燃料電池での発電に供することになる。
容器本体2は、ライナ11(内殻)と補強部12(外殻)とを有している。ライナ11は、ガスバリア性に優れる樹脂材料から成る。補強部12は、カーボン繊維とエポキシ樹脂とを含む繊維強化プラスチック(所謂FRP)から成り、ライナ11の外周に巻回形成されている。
口金3,3は、例えばステンレス等の金属で形成され、容器本体2において半球面状となっている端壁部の中心に設けられている。口金3,3の開口部の内周面には、めねじ(図示省略)が形成されており、配管やバルブアッセンブリ14等の機能部品が、前記めねじを介して口金3にねじ込み接続可能となっている。なお、図1では、一方の口金3のみにバルブアッセンブリ14を設けた例を二点鎖線で示している。
例えば、燃料電池システムに適用される圧力容器1は、バルブや継手等の配管要素を一体的に組み込んだバルブアッセンブリ14を介して、貯留空間5と外部のガス流路(図示省略)との間が接続され、貯留空間5に水素が充填されると共に貯留空間5から水素が放出可能となっている。なお、圧力容器1の製造過程においては、口金3に配管が接続されて、貯留空間5内の圧力が調整される。なお、本実施形態では圧力容器1の両端部に口金3,3を設けているが、片方の端部のみに口金3を設けてもよい。
ライナ11は、長手方向に亘って三分割されたライナ部(樹脂成形品)21,22,23が赤外線溶着により互いに接合されて成るものである。すなわち、円筒状のセンタライナ部21の両端縁に椀形状のサイドライナ部22,23の端縁がそれぞれ赤外線溶着により接合されていることで、中空のライナ11が構成されている。
前記センタライナ部21は、ライナ11の軸心方向に沿って所定の長さをもって延在する円筒状に成形されている。
また、一対のサイドライナ部22,23は、それぞれライナ11の軸心方向に沿って所定の長さをもって延在する胴部22a,23aを有している。各胴部22a,23aの軸心方向の両端側(センタライナ部21側)は開放されている。つまり、この部分が開放側端縁となっている。各サイドライナ部22,23は、胴部22a,23aの一端側(外側)の縮径された端部に成形された返し部22b,23bと、この返し部22b,23bの中央部に開口した連通部22c,23cとを有している。
各返し部22b,23bは、各サイドライナ部22,23の強度を確保する機能を有している。各返し部22b,23bの外周面と補強部12の端部との間に前記口金3,3が位置している。なお、口金3が片方の端部のみに設けられる場合には、一方のサイドライナ部23については、返し部23bおよび連通部23cが成形されず、胴部23aおよび該胴部23aの一端側が閉塞端で成形される。
-接合装置-
次に、前記センタライナ部21の両側(各端縁)にサイドライナ部22,23の端縁(開放側端縁)をそれぞれ溶着によって接合するための接合装置100について説明する。
図2は接合装置100の側面図である。この図2に示すように、接合装置100は、ベース台200、センタライナ部支持台(基台)300、一対のサイドライナ部支持台(基台)400,400、一対のセンタライナ部クランプユニット500,500、一対のサイドライナ部クランプユニット600,600、基準プレート700、一対の赤外線ランプ800,800、圧着ユニット900,900を備えている。以下、それぞれについて説明する。
ベース台200は、水平方向に延在するベースプレート201を備え、このベースプレート201が複数本の支持脚202,202によって支持されている。また、ベースプレート201の上面には水平方向(図2における左右方向)に沿って延在するガイドレール(図示省略)が設けられている。前記ベースプレート201およびガイドレールそれぞれの長さ寸法(図2における左右方向の寸法)は、前記圧力容器1における軸心方向に沿う方向の長さ寸法よりも十分に長く設定されている。
センタライナ部支持台300は、前記センタライナ部21を支持するものである(図3を参照)。このセンタライナ部支持台300は、センタライナ部21が載置される載置プレート301と、この載置プレート301の下面から鉛直下方に延びる脚部302とを備えている。載置プレート301の上面は、センタライナ部21の外周面の形状に合致する曲率とされた断面円弧形状となっている。脚部302の下端は、ベースプレート201上に固定されている。なお、このセンタライナ部支持台300は、ベースプレート201上をスライド移動自在となっていてもよい。この場合、例えば脚部302の下端に取り付けられたローラが前記ガイドレール上に載置され、該センタライナ部支持台300をガイドレール上でスライド移動させるためのアクチュエータ(走行モータ等)が備えられることになる。
各サイドライナ部支持台400,400は、前記サイドライナ部22,23をそれぞれ支持するものである(図3を参照)。これらサイドライナ部支持台400,400は、サイドライナ部22,23がそれぞれ載置される載置プレート401,401と、この載置プレート401,401から鉛直上方に延在して前記口金3,3を保持する口金保持部402,402と、載置プレート401,401から鉛直下方に延びる脚部403,403とを備えている。この脚部403,403の下端は、前記ガイドレール上に載置されている(例えば脚部403,403の下端に取り付けられたローラがガイドレール上に載置されている)。このため、サイドライナ部支持台400,400は、このガイドレールに沿って水平方向(図2における左右方向)にスライド移動自在となっている。また、このサイドライナ部支持台400,400には、該サイドライナ部支持台400,400をガイドレール上でスライド移動させるための図示しないアクチュエータ(走行モータ等)が備えられている。
センタライナ部クランプユニット500,500は、前記センタライナ部21の両端部分(長手方向の両端部分)を外周側から把持するものであり、前記センタライナ部支持台300の両外側(図2における左右方向の両外側)に配設されている。このセンタライナ部クランプユニット500,500は、センタライナ部21の外径よりも大きな内径を有する円環状のクランプ本体501,501と、このクランプ本体501,501の内周面に設けられて内周側に向かって進退自在とされたクランプ爪502,502,…とを有している。各クランプ爪502,502,…は、それぞれ独立して内周側に向かって進退自在となっており、例えば周方向の8箇所に等角度間隔で配置されている。このクランプ爪502,502,…の本数はこれに限定されるものではなく、任意に設定可能である。これらクランプ爪502,502,…を進退移動させるための動力源は、エア圧や油圧が適用されている。例えば、クランプ本体501に設けられた図示しない複数のシリンダ内それぞれにクランプ爪502,502,…が収容されており、このシリンダ内に作用させる流体圧(エア圧や油圧)を個別に調整することによって、各クランプ爪502,502,…が、それぞれ独立して内周側に向かって進退移動することになる。
また、このセンタライナ部クランプユニット500,500は、前記クランプ本体501,501の下側に配設された脚部503,503を備えている。この脚部503,503の下端は、前記ガイドレール上に載置されている(例えば脚部503,503の下端に取り付けられたローラがガイドレール上に載置されている)。このため、センタライナ部クランプユニット500,500も、このガイドレールに沿って水平方向(図2における左右方向)にスライド移動自在となっている。また、このセンタライナ部クランプユニット500,500にも、該センタライナ部クランプユニット500,500をガイドレール上でスライド移動させるための図示しないアクチュエータ(走行モータ等)が備えられている。
サイドライナ部クランプユニット600,600は、それぞれサイドライナ部22,23を外周側から把持するものであり、前記センタライナ部クランプユニット500,500の両外側(図2における左右方向の両外側)に配設されている。このサイドライナ部クランプユニット600,600は、サイドライナ部22,23の外径よりも大きな内径を有する円環状のクランプ本体601,601と、このクランプ本体601,601の内周面に設けられて内周側に向かって進退自在とされたクランプ爪602,602,…とを有している。各クランプ爪602,602,…は、それぞれ独立して内周側に向かって進退自在となっており、例えば周方向の8箇所に等角度間隔で配置されている。このクランプ爪602,602,…の本数もこれに限定されるものではなく、任意に設定可能である。これらクランプ爪602,602,…を進退移動させるための動力源は、エア圧や油圧が適用されている。各クランプ爪602,602,…それぞれを独立して内周側に向かって進退移動させるための機構は、前述したセンタライナ部クランプユニット500のものと同様である。
また、このサイドライナ部クランプユニット600,600は、前記クランプ本体601,601の下側に配設された脚部603,603を備えている。この脚部603,603の下端は、前記ガイドレール上に載置されている(例えば脚部603,603の下端に取り付けられたローラがガイドレール上に載置されている)。このため、サイドライナ部クランプユニット600,600も、このガイドレールに沿って水平方向(図2における左右方向)にスライド移動自在となっている。また、このサイドライナ部クランプユニット600,600にも、該サイドライナ部クランプユニット600,600をガイドレール上でスライド移動させるための図示しないアクチュエータ(走行モータ等)が備えられている。
基準プレート700は、一方のサイドライナ部クランプユニット(図2において右側に位置するサイドライナ部クランプユニット)600に取り付けられた平板状の板材で成る。この基準プレート700は、鉛直方向に沿うように配設されている。このため、この基準プレート700にセンタライナ部21の一方側の端縁が当接されると(図3に示すように端縁が当接されると)、この端縁が鉛直方向に沿うようにセンタライナ部21の姿勢が矯正されることになる。
赤外線ランプ800,800は、後述する加熱溶融工程においてセンタライナ部21の端縁およびサイドライナ部22,23の端縁それぞれに赤外線(近赤外線)を照射することによってこれら端縁を加熱溶融させるものである。この赤外線ランプ800,800は、センタライナ部21およびサイドライナ部22,23の外径よりも大きな内径を有する円環状のランプ本体801,801を有している。このランプ本体801,801は内周側に向けて赤外線を照射する構成となっている。
また、この赤外線ランプ800,800は、前記ベースプレート201の下側に配設されて鉛直方向に沿って延在する昇降ガイドレール802,802を備えており、前記ランプ本体801,801が、この昇降ガイドレール802,802に沿って昇降可能となっている。このため、赤外線ランプ800,800には、ランプ本体801,801を昇降ガイドレール802,802に沿って昇降させるための図示しないアクチュエータ(昇降用モータ等)が備えられている。ランプ本体801が下端位置まで降下された状態では、該ランプ本体801は、ベースプレート201の下側に退避することになる(図2を参照)。一方、ランプ本体801が上端位置まで上昇された状態では、該ランプ本体801は、センタライナ部クランプユニット500のクランプ本体501とサイドライナ部クランプユニット600のクランプ本体601との間に位置し、これらクランプ本体501,601それぞれにクランプされたセンタライナ部21およびサイドライナ部22,23の各端縁を加熱溶融させることが可能になる(図5を参照)。
圧着ユニット900,900は、センタライナ部21の端縁に向けてサイドライナ部22,23の端縁を押し当てるためのものであり(図4を参照)、前記サイドライナ部支持台400,400の両外側(図2における左右方向の両外側)に配設されている。この圧着ユニット900,900は、ユニット台901,901上にサーボプレス902が載置された構成となっている。サーボプレス902は、図2における左右方向に進退移動自在となっており、サイドライナ部22,23の端縁に押圧力を作用させることで該サイドライナ部22,23の端縁をセンタライナ部21の端縁に向けて押し当てるようになっている。また、このサーボプレス902は、その先端(サイドライナ部22,23に当接する先端)が略円錐状となっており、このサイドライナ部22,23に対して点接触により押圧力を作用させるようになっている。また、ユニット台901の下部は、前記ガイドレール上に載置されている(例えばユニット台901の下部に取り付けられたローラがガイドレール上に載置されている)。このため、圧着ユニット900,900は、このガイドレールに沿って水平方向(図2における左右方向)にスライド移動自在となっている。この圧着ユニット900,900にも、該圧着ユニット900,900をガイドレール上でスライド移動させるための図示しないアクチュエータ(走行モータ等)が備えられている。
-接合作業-
次に、前述した接合装置100によって行われる接合作業(センタライナ部21の各端縁にサイドライナ部22,23の端縁を溶着により接合する作業)について説明する。
この接合作業では、支持工程、クランプ工程、加熱溶融工程、および、溶着工程が順に行われる。
(支持工程)
支持工程は、図3に示すように、前記センタライナ部21の各端縁に対して各サイドライナ部22,23の端縁が所定距離を存して対向するように、センタライナ部21をセンタライナ部支持台300上に支持すると共に、サイドライナ部22,23それぞれをサイドライナ部支持台400,400上に支持する工程である。
つまり、センタライナ部支持台300の載置プレート301上にセンタライナ部21を横置き状態(軸心が水平方向に延在する状態)で載置すると共に、サイドライナ部支持台400,400の載置プレート401,401上にサイドライナ部22,23をそれぞれ横置き状態(軸心が水平方向に延在する状態)で載置する。この際、センタライナ部21の各端縁と各サイドライナ部22,23の端縁との間に十分な間隔が存在するように各サイドライナ部支持台400,400の位置が前記アクチュエータの作動によって設定されている。
また、この支持工程では、センタライナ部21の一方側の端縁(図3における右側の端縁)が基準プレート700に当接するようにサイドライナ部クランプユニット600が移動される。例えば、センタライナ部21の一方側の端縁周辺がセンタライナ部クランプユニット500によってクランプされた状態でサイドライナ部クランプユニット600が移動して、基準プレート700をセンタライナ部21の一方側の端縁に当接させる。前述したように基準プレート700は鉛直方向に沿うように配設されているため、この基準プレート700にセンタライナ部21の一方側の端縁が当接した状態では、この端縁が鉛直方向に沿うようにセンタライナ部21の姿勢が矯正される。例えば、この端縁が高い精度で成形されており、センタライナ部21の軸心に対して直交している場合には、センタライナ部支持台300に載置されているセンタライナ部21の軸心は水平方向に沿う方向となる。
なお、この支持工程にあっては、サイドライナ部支持台400,400の載置プレート401,401上に載置されているサイドライナ部22,23は、前記口金保持部402,402によって口金3,3が保持されていてもよいし、口金3,3が保持されておらず、単に載置プレート401,401上に載置された状態となっていてもよい。
(クランプ工程)
クランプ工程は、図4に示すように、センタライナ部21の一方側の端縁(図4における左側の端縁)に対して一方側のサイドライナ部22の端縁を当接させ、その状態で、センタライナ部クランプユニット500によってセンタライナ部21の端縁周辺を外周側から把持すると共に、サイドライナ部クランプユニット600によってサイドライナ部22を外周側から把持する工程である。
つまり、センタライナ部21およびサイドライナ部22の端縁同士を、その全周囲が接触するように当接させた状態で、これらセンタライナ部21およびサイドライナ部22の姿勢を維持したまま、センタライナ部クランプユニット500によるセンタライナ部21のクランプ、および、サイドライナ部クランプユニット600によるサイドライナ部22のクランプを行う。
具体的には、基準プレート700に当接されたセンタライナ部21の一方側(図4における左側)の端縁部分の位置にセンタライナ部クランプユニット500を移動させる。また、圧着ユニット900を移動させてサーボプレス902の先端をサイドライナ部22に当接させ、このサーボプレス902によってサイドライナ部22をセンタライナ部21に向けて押圧する。これにより、サイドライナ部22の端縁がセンタライナ部21の端縁に向けて押し当てられる。この際、サイドライナ部22は未だクランプされていないため、姿勢の変化が自在であり、これによって、センタライナ部21およびサイドライナ部22の端縁同士が、その全周囲に亘って接触するように当接されることになる。つまり、サイドライナ部22の姿勢変化によって、端縁同士の全周囲が接触するように当接されることになる。
このようにして端縁同士の全周囲が接触するように当接された状態で、センタライナ部クランプユニット500によるセンタライナ部21のクランプおよびサイドライナ部クランプユニット600によるサイドライナ部22のクランプが行われる。各クランプユニット500,600に備えられているクランプ爪502,502,…、602,602,…はそれぞれ独立して内周側に向かって進退自在となっているため、前述したセンタライナ部21およびサイドライナ部22それぞれの姿勢を維持したまま、つまり、センタライナ部21およびサイドライナ部22それぞれの端縁同士を、その全周囲に亘って接触させた状態のまま各ライナ部21,22がクランプされることになる。
例えば、サイドライナ部22がセンタライナ部21側に向かって僅かに下向きに傾斜した姿勢となることで、センタライナ部21およびサイドライナ部22の端縁同士が全周囲に亘って接触する状態である場合には、各クランプ爪602,602,…にあっては、上側に位置するクランプ爪602,602,…ほど内周側に向かう前進量が多くなり(下側に位置するクランプ爪602,602,…ほど内周側に向かう前進量が少なくなり)、これによって、サイドライナ部22の傾斜姿勢を維持したまま該サイドライナ部22がクランプされることになる。また、前述したように、サーボプレス902はその先端(サイドライナ部22に当接する先端)が略円錐状となっているのでサイドライナ部22の姿勢変化が容易となっている。
これにより、前記支持工程において仮にセンタライナ部21の端縁とサイドライナ部22の端縁との間での平行度が得られていなかったとしても、これら端縁同士を当接させることでこの平行度が得られる。そして、これらセンタライナ部21およびサイドライナ部22の姿勢を維持したまま各クランプユニット500,600によってクランプすることになるので、その後、センタライナ部21の端縁とサイドライナ部22の端縁とを離間させたとしても、両者の平行度は維持されることになる。
(加熱溶融工程)
加熱溶融工程は、図5に示すように、センタライナ部21の端縁とサイドライナ部22の端縁とを離間させた状態で、これら端縁に赤外線ランプ800から赤外線を照射することによって加熱溶融させる工程である。
具体的には、センタライナ部21の端縁とサイドライナ部22の端縁との間に、赤外線ランプ800のランプ本体801が挿入可能となる程度の隙間を生じさせるようにサイドライナ部22を後退移動(図5における左側へ移動)させる。この際、サイドライナ部支持台400、サイドライナ部クランプユニット600および圧着ユニット900が一体となってスライド移動して前記隙間を生じさせる。
その後、赤外線ランプ800のランプ本体801が昇降ガイドレール802に沿って上昇し、各ライナ部21,22の端縁に近接される。そして、ランプ本体801への通電を行って各端縁に赤外線を照射することにより加熱溶融させる。この赤外線の照射時間は、各端縁に所定の溶融量が得られるように、赤外線の光量や各ライナ部21,22の材質等に応じて実験的に求められている。例えば60sec程度に設定される。
(溶着工程)
溶着工程は、図6に示すように、前記加熱溶融された各ライナ部21,22の端縁同士を接触させて溶着させる工程である。
具体的には、前記加熱溶融工程において所定量の溶融量が得られて該加熱溶融工程が終了した後、赤外線ランプ800のランプ本体801を昇降ガイドレール802に沿って下降させ、該ランプ本体801を各ライナ部21,22の端縁から退避させる。その後、サイドライナ部支持台400、サイドライナ部クランプユニット600および圧着ユニット900をセンタライナ部21に向けて前進移動させる。これにより、サイドライナ部22もセンタライナ部21に向けて前進移動することになり、該サイドライナ部22の端縁がセンタライナ部21の端縁に当接する。この状態で、サーボプレス902によってサイドライナ部22をセンタライナ部21に向けて押圧する。これにより、サイドライナ部22の端縁がセンタライナ部21の端縁に向けて押し当てられ、これら端縁が一体的に溶着されることになる。これにより、加熱によって溶融した樹脂(各ライナ部21,22の端縁を構成している樹脂材料)の一部がビードとして内側に向けて流れ込むことになる。
この状態を所定時間(例えば10sec程度)保持し、樹脂材料が冷却固化(ビードが冷却固化)された後、サーボプレス902による押圧を解除する。
以上の動作により、センタライナ部21の左側の端縁に対するサイドライナ部22の接合作業が完了する。
その後、センタライナ部21の右側の端縁に対するサイドライナ部23の接合作業が開始される。この接合作業も前述した接合作業(センタライナ部21の左側の端縁に対するサイドライナ部22の接合作業)と同様に行われることになる。
このセンタライナ部21とサイドライナ部23との接合作業に当たっては、前記基準プレート700を使用することなく(図7に示すように基準プレート700がサイドライナ部クランプユニット600から離脱されて(周知の着脱機構等を使用することによって離脱されて)上方へ退避され)、例えば各センタライナ部クランプユニット500,500によってセンタライナ部21をクランプし、図中左側のサイドライナ部クランプユニット600によってサイドライナ部22をクランプした状態で、前述したクランプ工程(サイドライナ部23の端縁をセンタライナ部21の端縁に対してその全周囲が接触するように当接させた状態で、図中右側のサイドライナ部クランプユニット600によってサイドライナ部23をクランプする工程)を行うことになる。
そして、このセンタライナ部21の右側の端縁に対するサイドライナ部23の接合作業が完了した状態が図7に示す状態である。
このようにしてセンタライナ部21および各サイドライナ部22,23が一体的に溶着されてライナ11が作製された後、該ライナ11が接合装置100から取り出される。
-実施形態の効果-
以上説明したように、本実施形態では、クランプ工程において、センタライナ部21およびサイドライナ部22の端縁同士を、その全周囲が接触するように当接させた状態で、各ライナ部21,22の姿勢を維持したまま、各ライナ部21,22をクランプしている。このため、支持工程において各ライナ部21,22の端縁同士の平行度が得られていなかったとしても、各ライナ部21,22の端縁同士を当接させることでこの平行度を得ることができ、その後、各ライナ部21,22の端縁同士を離間させたとしても、両者の平行度を維持することができる。このため、各ライナ部21,22の端縁同士を離間させた状態で、この端縁を加熱溶融させ、この端縁同士を接触させて溶着させる場合には、各ライナ部21,22の端縁同士の平行度が維持された状態で溶着することができる。従って、各ライナ部21,22の端縁同士の片当たりが発生し難くなり、ビードの量を周方向の全体に亘って均一に得ることができて、各ライナ部21,22同士の接合部分での接合強度を周方向の全体に亘って均一に確保することができる。
-他の実施形態-
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
例えば、前記実施形態では、赤外線溶着によりセンタライナ部21とサイドライナ部22,23とを接合するようにしていた。本発明はこれに限らず、非接触での熱板溶着を行う場合や、接着剤による樹脂接合を行う場合に対しても適用することが可能である。
また、前記実施形態では、圧力容器1を作製するためのライナ部21,22,23を溶着によって接合する方法として本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、種々の樹脂成形品を溶着によって接合する方法として適用することが可能である。また、3個の樹脂成形品を一体的に接合する場合に限らず、2個の樹脂成形品を一体的に接合する場合や、4個以上の樹脂成形品を一体的に接合する場合にも本発明は適用可能である。
また、前記実施形態では、円筒形状の樹脂成形品(ライナ部21,22,23)を溶着によって接合する方法について説明した。本発明はこれに限らず、楕円筒形状の樹脂成形品や多角形の筒状の樹脂成形品を溶着によって接合する方法として適用することも可能である。
また、前記実施形態では、クランプ工程において、センタライナ部21およびサイドライナ部22の端縁同士を、その全周囲が接触するように当接させた状態でセンタライナ部クランプユニット500(図中左側のセンタライナ部クランプユニット500)によるセンタライナ部21のクランプを行うようにしていた。本発明はこれに限らず、センタライナ部21およびサイドライナ部22の端縁同士を当接させる前段階でセンタライナ部クランプユニット500(図中左側のセンタライナ部クランプユニット500)によるセンタライナ部21のクランプを行うようにしてもよい。つまり、クランプ工程において、センタライナ部21およびサイドライナ部22の端縁同士を当接させた状態でサイドライナ部クランプユニット600によるサイドライナ部22のクランプのみを行うようにしてもよい。
本発明は、筒状の複数の樹脂成形品の開放側端縁同士を赤外線溶着によって接合することで圧力容器を作製する方法に適用可能である。
21 センタライナ部(樹脂成形品)
22,23 サイドライナ部(樹脂成形品)
100 接合装置
200 ベース台
300 センタライナ部支持台(基台)
400 サイドライナ部支持台(基台)
500 センタライナ部クランプユニット
600 サイドライナ部クランプユニット
800 赤外線ランプ
900 圧着ユニット

Claims (2)

  1. 筒状の複数の樹脂成形品の端縁同士を溶着によって接合する樹脂成形品の接合方法において、
    互いに端縁同士が溶着される一対の前記樹脂成形品を第1の樹脂成形品および第2の樹脂成形品とした場合に、軸心が水平方向に延在する状態とされた前記第1の樹脂成形品における、前記第2の樹脂成形品の端縁に溶着される端縁とは反対側の端縁に対し、鉛直方向に沿って配設された基準プレートを当接させることにより、前記第1の樹脂成形品の前記反対側の端縁が鉛直方向に沿うように当該第1の樹脂成形品の姿勢を矯正した状態で、前記第1の樹脂成形品および前記第2の樹脂成形品における互いに溶着される端縁同士が対向するように前記各樹脂成形品を基台上に支持する支持工程と、
    前記支持工程の後、前記第1の樹脂成形品の前記反対側の端縁を前記基準プレートに当接させた状態のまま、前記第1の樹脂成形品および前記第2の樹脂成形品における互いに溶着される前記端縁同士を、その全周囲が接触するように当接させた状態で、これら樹脂成形品の姿勢を維持したまま、当該各樹脂成形品をクランプするクランプ工程と、
    前記クランプ工程の後、前記第1の樹脂成形品および前記第2の樹脂成形品における互いに溶着される前記端縁同士を離間させた状態で、これら端縁を加熱溶融させる加熱溶融工程と、
    前記加熱溶融させた前記第1の樹脂成形品および前記第2の樹脂成形品の前記端縁同士を接触させて溶着させる溶着工程と、を備えていることを特徴とする樹脂成形品の接合方法。
  2. 請求項1記載の樹脂成形品の接合方法において、
    前記基準プレートは、前記第1の樹脂成形品の前記反対側の端縁に溶着される第3の樹脂成形品をクランプするクランプユニットに取り付けられており、
    前記第1の樹脂成形品および前記第2の樹脂成形品の前記端縁同士が溶着された後、前記第1の樹脂成形品の前記反対側の端縁と前記第3の樹脂成形品の端縁との接合作業に当たっては、前記基準プレートが、前記クランプユニットから離脱されて、前記第1の樹脂成形品の前記反対側の端縁と前記第3の樹脂成形品の前記端縁との接触を可能にすることを特徴とする樹脂成形品の接合方法。
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