以下、図面を参照しつつ、本発明の各実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るクレーン10(作業機械)の側面図である。なお、以後、各図には、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」および「後」の方向が示されているが、当該方向は、本実施形態に係るジャッキシリンダ6、フロートユニット7およびクレーン10の構造を説明するために便宜上示すものであり、本発明に係る支持装置、作業機械の移動方向や使用態様などを限定するものではない。
クレーン10は、上部旋回体12と、この上部旋回体12を旋回可能に支持し、地上Gを走行可能な下部走行体14(機体)と、起伏部材として機能するブーム16と、ブーム起伏用部材であるラチスマスト17と、箱マスト21と、を備える。
ブーム16は、上部旋回体12に回動可能に支持される。ブーム16は、上部旋回体12に着脱可能に装着され、所定の作業を行うために作動する。なお、図1に示されるブーム16は、いわゆるラチス型であり、下部ブーム16Aと、一または複数(図例では2個)の中間部材と、上部ブームとから構成される。下部ブーム16Aは、上部旋回体12の前部に起伏方向に回動可能となるように連結される。中間部材は、下部ブーム16Aの先端側に着脱可能に継ぎ足される。上部ブームは中間部材の先端側に着脱可能に継ぎ足される。下部ブーム16Aの下端部に備えられた不図示の孔部と上部旋回体12に備えられた不図示の孔部とが合致した状態で、これらの孔部にブームフットピン16Sが挿入されると、ブーム16が上部旋回体12に起伏可能に装着される。逆に、これらの孔部からブームフットピン16Sが引き抜かれると、ブーム16が上部旋回体12から脱離される。このように、ブーム16は、上部旋回体12に対して着脱可能に装着される。なお、当該ブーム16の中間部材の数は、上記とは異なるものでもよい。また、ブームは、単一の部材で構成されたものでもよい。更に、ブームは伸縮式の形態からなるものでもよい。
ブーム16の下部ブーム16Aには左右一対のバックストップ45が設けられる。これらのバックストップ45は、ブーム16が図1に示される起立姿勢まで到達した時点で上部旋回体12に当接する。この当接によって、ブーム16が強風等で後方に煽られることが規制される。
ラチスマスト17は、ブーム16の後側の位置でブーム16の回動軸と平行な回動軸回りに上部旋回体12に回動可能に支持される。すなわち、ラチスマスト17もブーム16の起伏方向と同方向に回動可能である。図1に示すように、ラチスマスト17の先端部には、第1マストシーブ171と、第2マストシーブ172と、が配置されている。第1マストシーブ171および第2マストシーブ172には、後記のブーム起伏用ロープ22が掛けられる。ラチスマスト17は、ブーム16の回動における支柱となる。なお、他の実施形態において、ラチスマスト17によって例示されるマストは、箱型のマストなど他の形態からなるものでもよい。
ラチスマスト17の基端部側には左右一対のバックストップ46が設けられる。これらのバックストップ46は、ラチスマスト17が図1に示される起立姿勢まで到達した時点で上部旋回体12に当接する。この当接によって、ラチスマスト17が強風等で後方に煽られることが規制される。
更に、クレーン10は、下部スプレッダ18と、上部スプレッダ19と、左右一対のガイライン20と、ブーム起伏用ロープ22と、ブーム起伏用ウインチ38と、を備える。
下部スプレッダ18は、ラチスマスト17の先端部に回動可能に支持される。下部スプレッダ18は、下部シーブブロック181を備える。下部シーブブロック181には、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。上部スプレッダ19は、下部スプレッダ18の前方に所定の間隔をおいて配置される。上部スプレッダ19は、左右一対のガイライン20を介してブーム16の先端部に接続される。上部スプレッダ19は、上部シーブブロック191を備える。上部シーブブロック191には、複数のシーブが幅方向(左右方向)に配列されている。
左右一対のガイライン20は、図1の紙面と直交する左右方向に一対配置されている。ガイライン20の後端部は、上部スプレッダ19に接続され、ガイライン20の前端部は、ブーム16の先端部に着脱可能に接続される。ガイライン20は、ガイリンク(金属製の板材)、ガイロープ、ガイワイヤ(金属製の線材)などを含む。
ブーム起伏用ロープ22は、ブーム起伏用ウインチ38から引き出され、ラチスマスト17の先端部の第1マストシーブ171、第2マストシーブ172に掛けられた後、下部シーブブロック181と上部シーブブロック191との間で複数回掛け回される。なお、下部シーブブロック181および上部シーブブロック191に掛け回された後のブーム起伏用ロープ22の先端部は、ラチスマスト17の先端部に固定される。
ブーム起伏用ウインチ38は、ラチスマスト17の基端部側に配置される。ブーム起伏用ウインチ38は、ブーム起伏用ロープ22の巻き取りおよび繰り出しを行うことで下部スプレッダ18の下部シーブブロック181と上部スプレッダ19の上部シーブブロック191との間の距離を変化させ、ブーム16をラチスマスト17に対して相対的に回動させながらブーム16を起伏させる。
箱マスト21は、基端及び回動端(先端)を有し、ラチスマスト17の後側で上部旋回体12に回動可能に連結される。箱マスト21は、断面視で矩形形状からなる。箱マスト21の回動軸は、ブーム16の回動軸と平行でかつラチスマスト17の回動軸とほぼ同じ位置に配置されている。すなわち、この箱マスト21もブーム16の起伏方向と同方向に回動可能である。
更に、クレーン10は、左右一対のガイライン23と、マスト起伏用ロープ26と、マスト起伏用ウインチ30と、を備える。
左右一対のガイライン23は、図1の紙面と直交する左右方向に互いに間隔をおいて配置されている。ガイライン23は、ラチスマスト17の先端部と箱マスト21の回動端部とを接続する。この接続は、ラチスマスト17の回動と箱マスト21の回動とを連携させる。
マスト起伏用ロープ26は、上部旋回体12に配置され複数のシーブが幅方向に配列されたたシーブブロック24と、箱マスト21の回動端部に配置され複数のシーブが幅方向に配列されたシーブブロック25との間で複数回掛け回される。
マスト起伏用ウインチ30は、箱マスト21の基端部側に配置される。マスト起伏用ウインチ30は、マスト起伏用ロープ26の巻き取りおよび繰り出しを行う。マスト起伏用ウインチ30の巻き取り、繰り出し動作によって、箱マスト21の先端部のシーブブロック25と上部旋回体12の後端部のシーブブロック24との間の距離が変化し、上部旋回体12に対して箱マスト21およびラチスマスト17が一体的に回動しながら、ラチスマスト17が起伏する。なお、ラチスマスト17および箱マスト21の回動は、主にクレーン10の組立分解時に行われ、クレーン10の使用時にはラチスマスト17および箱マスト21の位置(対地角)はほぼ固定されている。
クレーン10には、前述のマスト起伏用ウインチ30およびブーム起伏用ウインチ38に加えて、吊り荷の吊り上げ及び吊り下げを行うための主巻用ウインチ34及び補巻用ウインチ36が搭載される。本実施形態に係るクレーン10では、主巻用ウインチ34および補巻用ウインチ36がいずれもブーム16の下部ブーム16Aに据え付けられる。
主巻用ウインチ34は、主巻ロープ51による吊り荷の吊り上げおよび吊り下げを行う。この主巻について、ブーム16の先端部には不図示の主巻用ガイドシーブが回転可能に設けられ、さらに主巻用ガイドシーブに隣接する位置に複数の主巻用ポイントシーブが幅方向に配列された主巻用シーブブロックが設けられている。主巻用シーブブロックから垂下された主巻ロープ51には、吊り荷用の主フック53が連結されている。そして、主巻用ウインチ34から引き出された主巻ロープ51が主巻用ガイドシーブに順に掛けられ、かつ、主巻用シーブブロックのシーブと、主フック53に設けられたシーブブロックのシーブとの間に掛け渡される。従って、主巻用ウインチ34が主巻ロープ51の巻き取りや繰り出しを行うと、主フック53の巻上げ及び巻下げが行われる。
同様にして、補巻用ウインチ36は、補巻ロープ52による吊り荷の巻上げ及び巻下げを行う。この補巻については、上記の主巻と同様の不図示の構造が備えられている。そして、補巻用ウインチ36が補巻ロープ52の巻き取りや繰り出しを行うと、補巻ロープ52の末端に連結された図略の吊荷用の補フックが巻上げられ、または巻下げられる。
また、上部旋回体12の後部には、クレーン10のバランスを調整するためのカウンタウエイト40が積載されており、上部旋回体12の後方には、パレットウエイト41が更に配置されている。パレットウエイト41は、クレーン10が重量物を吊り上げるために備えられるSHL(Super Heavy Lifting)用ウェイトとして、クレーン10のバランスを保つ機能を有する。パレットウエイト41は、ウエイトガイライン42によってラチスマスト17の先端部に接続されている。
図2は、本実施形態に係るクレーン10の下部走行体14の平面図である。図3は、本実施形態に係るクレーン10の下部走行体14の部分的な断面図である。
図2を参照して、下部走行体14は、カーボディ141と、左右一対のクローラユニット142と、前後二対のビーム143と、を備える。カーボディ141は、下部走行体14の本体部分であって、カーボディ141の中央部にはベアリング装着部141Sが形成されている。ベアリング装着部141Sには、上部旋回体12を旋回可能に支持する不図示のベアリングが装着される。左右一対のクローラユニット142は、カーボディ141の左右両端部にそれぞれ連結される。クローラユニット142は、クローラを周回可能に支持する。なお、カーボディ141の下面部は、クローラユニット142(クローラベルト)の下面部よりも上方に配置されている。前後二対のビーム143は、カーボディ141に配置されたビーム支持部143Sにおいてそれぞれ水平方向に回動可能に支持されている。
クレーン10は、更に、前後二対の油圧式のジャッキシリンダ6と、前後二対のフロートユニット7(支持装置)と、を備える。図3を参照して、前後二対のジャッキシリンダ6は、筒状のシリンダ本体60と、シリンダロッド61と、それぞれ備える。シリンダ本体60は、シリンダ本体下面部60S(シリンダ下面)(図3)を含み、クレーン10の下部走行体14のビーム143に装着される。シリンダ本体下面部60Sは、筒状のシリンダ本体60の下面部に相当する。シリンダロッド61は、ロッド先端部61S(ロッド下面)(図3)を含むとともにシリンダ本体60の外径よりも小さな外径を有する。シリンダロッド61は、シリンダ本体下面部60Sによって周囲を囲まれるようにシリンダ本体60から下方に延びている。ジャッキシリンダ6は伸長することでクレーン10をジャッキアップする。本実施形態では、シリンダ本体下面部60Sは、水平な平面からなり、ロッド先端部61Sは下方に向かって突出した半球形状を有する。
図3に示すように、フロートユニット7は、ジャッキシリンダ6を当該ジャッキシリンダ6と地面との間に介在した状態で支持することで、クレーン10のジャッキアップ作業中にクレーン10の姿勢を保つとともに地面にかかる面圧を下げる機能を有する。
フロートユニット7は、互いに着脱可能な、第1フロート71と、第2フロート72と、第3フロート73と、を備える。図4は、本実施形態に係るフロートユニット7の第1フロート71(第1支持部材)の斜視図である。図5は、フロートユニット7の第2フロート72(中間支持部材)の斜視図である。図6は、フロートユニット7の第3フロート73(第2支持部材)の斜視図である。
図4を参照して、第1フロート71は、シリンダロッド61のロッド先端部61Sと地面との間に挿入されることが可能な部材である。第1フロート71は、プレート部710(接地板)と、4つのリブ711と、中央円柱部712(第1ロッド支持部)と、U字支持部713(第1ガイド部)と、ロックピン714と、を有する。
プレート部710は、上面部と下面部とを有し地面に接地されクレーン10の機体の自重を受ける。
4つのリブ711は、プレート部710の上面部に固定されている。4つのリブ711は、中央円柱部712の外周部からそれぞれ中央円柱部712の径方向の外側に向かって異なる方向に延びている。これらのリブ711は、プレート部710の撓みを抑制するとともに、後記の複数の切欠き部720C(図5)にそれぞれ嵌合することで第2フロート72を水平方向において拘束する機能を有する。
中央円柱部712は、プレート部710の上面部の中央部に配置される。中央円柱部712は、上下方向に沿って延びる中心線回りに形成された円柱形状を有する。中央円柱部712は、中央円柱部712の上面部である円柱上面部712Sと、円柱上面部712Sに配置された第1ロッド支持面712Tと、を有する。第1ロッド支持面712Tは、円柱上面部712Sの中央部が、ロッド先端部61Sと同じ曲率半径の半球状に凹没された形状を有する。当該半球形状の中心線は、中央円柱部712の中心線と一致する。第1ロッド支持面712Tは、シリンダロッド61のロッド先端部61Sを下方から支持する。
U字支持部713は、水平な面上においてシリンダロッド61のロッド先端部61Sを囲むことが可能なように中央円柱部712の円柱上面部712Sに固定されている。U字支持部713は、水平な所定の挿入方向(図7の矢印参照)に沿ってシリンダロッド61のロッド先端部61Sと地面との間に挿入される中央円柱部712をガイドする。換言すれば、図4に示すように、U字支持部713のうち、前記挿入方向先端側の部分は、シリンダロッド61のロッド先端部61Sを受け入れることが可能なように開口されている。
ロックピン714は、U字支持部713の一対の端部を接続するようにU字支持部713に着脱可能に装着される。ロックピン714は、クレーン10のジャッキアップ作業時に、第1フロート71がジャッキシリンダ6から外れることを防止する。
第2フロート72(図5)は、シリンダ本体60に対して収縮した状態のシリンダロッド61のロッド先端部61Sと第1フロート71の中央円柱部712との間に第3フロート73が挿入されるための挿入空間S(図10)を形成するように、第1フロート71のプレート部710の上面部に着脱可能に装着される。また、第2フロート72は、ジャッキシリンダ6を一時的に支持する機能を備える。第2フロート72は、第2フロート本体部720と、U字壁部721と、ロックピン722と、U字プレート723と、を備える。
第2フロート本体部720は、第2フロート72の本体部分であり、円錐部720Aと、本体下端部720B(被支持部)とを含む。円錐部720Aは、内部に第1フロート71の中央円柱部712およびU字支持部713を収容可能なように、円錐状の空洞部を有する。本体下端部720Bは、第2フロート72の下端部を構成し、第1フロート71のプレート部710の前記上面部に当接することで第1フロート71によって支持される。本体下端部720Bの下端部には、第1フロート71のプレート部710の上面部に対向するように複数の切欠き部720Cが形成されている。本実施形態では、第1フロート71のリブ711に対応して、4つの切欠き部720Cが周方向に間隔をおいて配置されている。これらの切欠き部720Cは、前述のようにリブ711を内部に受け入れる。
U字壁部721は、第2フロート本体部720の円錐部720Aに固定されている。U字壁部721は、第1フロート71のU字支持部713よりも上方で、水平な面上においてシリンダロッド61を囲むように配置される。U字壁部721は、水平かつ第1フロート71の挿入方向とは反対の装着方向(図11の矢印参照)に沿って挿入空間Sに挿入される第3フロート73をガイドする機能を備える。図5に示すように、U字壁部721は、第2フロート本体部720の内部に連通する挿入部72Hを形成するように、所定の間隔で互いに対向して配置される一対の壁部分721Aを有する。一対の壁部分721Aのうち挿入部721Hと反対側の部分は互いに連結されている。挿入部72Hは、U字プレート723が前記シリンダ本体60のシリンダ本体下面部60Sを支持した状態で第3フロート73を水平方向に沿って受け入れかつ前記挿入空間Sに案内する機能を備える。
ロックピン722は、上記の一対の壁部分721Aを互いに接続するように、U字壁部721に着脱可能に装着される。ロックピン722は、第3フロート73が第2フロート72およびジャッキシリンダ6から脱離することを防止する。
U字プレート723は、U字壁部721の上端部に固定されるU字状かつ板状の部材である。図5に示すように、U字壁部721の上端部の断面積よりもU字プレート723の断面積が大きく設定されている。U字プレート723は、後記の第3フロート73の第2ロッド支持面730Tよりも上方の位置で、シリンダ本体60のシリンダ本体下面部60Sを下方から支持可能とされている。詳しくは、U字プレート723は、シリンダロッド61のロッド先端部61Sが第1ロッド支持面712Tに当接しシリンダロッド61がシリンダ本体60に対して伸長した伸長状態でシリンダ本体60のシリンダ本体下面部60Sと第1フロート71との間に第2フロート72が装着されることを可能とするような高さに配置されている。また、U字プレート723は、第2フロート72が第1フロート71に装着された状態から前記シリンダロッド61が前記シリンダ本体60に対して収縮することに伴ってシリンダ本体60のシリンダ本体下面部60Sに当接し前記シリンダ本体60を支持することが可能とされている。
なお、図5を参照して、第2フロート72の形状について付言すると、第2フロート72は、下方に向かって先拡がりの略錐体形状を有しており、U字プレート723は、第2フロート72の上端部に配置され、本体下端部720Bは第2フロート72の下端部に配置されている。この結果、本体下端部720Bの水平方向における最大寸法は、U字プレート723の水平方向における最大寸法よりも大きく設定されている。
第3フロート73(図6)は、第1フロート71の中央円柱部712上に着脱可能に装着される。第3フロート73は、第3フロート本体部730と、第3フロート係合部731と、を備える。
第3フロート本体部730は、第3フロート73の本体部分であって、上下方向に沿って延びる中心線回りの円柱形状を備える。第3フロート本体部730は、第2ロッド支持面730T(第2ロッド支持部)を有する。第2ロッド支持面730Tは、第3フロート本体部730の上面部の中央部が、ロッド先端部61Sと同じ曲率半径の半球状に凹没された形状を有する。当該半球形状の中心線は、第3フロート本体部730の中心線と一致する。第2ロッド支持面730Tは、第3フロート73が第1フロート71に支持された状態で第1フロート71の中央円柱部712の第1ロッド支持面712Tよりも上方の位置でシリンダロッド61のロッド先端部61Sを下方から支持可能とされている。
第3フロート係合部731は、第3フロート本体部730の側面の上端部に固定されている。第3フロート係合部731は、第2ロッド支持面730Tを囲むように屈曲された3つの板状部からなる。第3フロート係合部731の外壁には、水平方向に沿って延びる溝状のピン係合部731Sが形成されている。ピン係合部731Sは、前述のロックピン722を内部に受け入れる。ロックピン722がピン係合部731Sに嵌合されると、第3フロート係合部731の両端部がU字壁部721(図5)の内周面に当接する。この結果、U字壁部721とロックピン722とによって第3フロート73の第3フロート本体部730の位置が規制され、第3フロート73の第2ロッド支持面730Tの中心線と第1フロート71の第1ロッド支持面712Tの中心線とが一致する。また、ロックピン722がピン係合部731Sに嵌合されると、第3フロート装置73が第2フロート装置72から外れることが抑止される。
図7乃至図11、図13は、本実施形態に係るクレーン10がジャッキアップされる際のジャッキシリンダ6およびフロートユニット7を示す斜視図である。図12は、本実施形態に係るフロートユニット7の透視斜視図である。以下に、クレーン10のジャッキアップ作業の手順について説明する。
作業者は、図2の左右一対のクローラユニット142が地面に接した状態で、不図示の油圧駆動装置を操作して、シリンダロッド61をシリンダ本体60に対して上方に収縮させる。この結果、シリンダロッド61のロッド先端部61Sと地面との間に所定の空間が形成される。作業者は、図7の矢印に示す方向に沿って、ロッド先端部61Sと地面との間に、第1フロート71を挿入する。なお、この際、図7のロックピン714は予めU字支持部713から取り外されている。第1フロート71の挿入に伴って、シリンダロッド61のロッド先端部61Sの直下に、第1フロート71の第1ロッド支持面712Tが配置される。また、この際、シリンダ本体60のシリンダ本体下面部60Sは、U字支持部713の上端部713Sよりも上方に配置される。第1フロート71の装着が完了すると、作業者はロックピン714をU字支持部713に締結する。
次に、作業者は、シリンダ本体60に対してシリンダロッド61を下方に伸長させる。この結果、シリンダロッド61のロッド先端部61Sが第1フロート71の第1ロッド支持面712Tに当接する。この際、ロッド先端部61Sの半球形状が第1ロッド支持面712Tの半球形状の凹部に嵌りこむ。その後、作業者は、図8の矢印に示すように、ジャッキシリンダ6を伸長させる。この結果、クレーン10の下部走行体14が上方にジャッキアップされ、クローラユニット142が地面から浮き上がる。
次に、作業者は、シリンダ本体60のシリンダ本体下面部60Sの下方に形成された空間に第2フロート72を装着する。具体的に、作業者が、第2フロート72を図9の矢印方向に沿ってシリンダ本体下面部60Sと第1フロート71との間に挿入する。この際、第2フロート72の本体下端部720Bが第1フロート71のリブ711よりも上方に位置するように、第2フロート72が挿入される。やがて、U字プレート723の内部にシリンダロッド61が挿入されるとともに、4つのリブ711の上方に4つの切欠き部720Cがそれぞれ配置される。作業者は、各切欠き部720Cがリブ711に嵌りこむように、第2フロート72を第1フロート71のプレート部710上に載置する。複数の切欠き部720Cとリブ711との嵌合によって、第2フロート72の位置が規制され、シリンダ本体下面部60Sの直下にU字プレート723が配置される。
次に、作業者は、シリンダ本体60に対してシリンダロッド61を収縮させる。この際、まず、下部走行体14が僅かに下降した後、シリンダ本体下面部60SがU字プレート723に当接する。第2フロート72の下端部に配置された本体下端部720Bは第1フロート71のプレート部710に当接しているため、下部走行体14の自重が第2フロート72および第1フロート71を介して地面に伝わる。このため、前後二対のフロートユニット7によって下部走行体14を安定して支持することができる。
シリンダ本体60が第2フロート72によって支持された状態で、作業者が、第1フロート71からロックピン714を取り外した後、図10の矢印で示すようにシリンダロッド61を更に収縮させると、シリンダロッド61のロッド先端部61Sと第1フロート71の中央円柱部712との間に、第3フロート73を挿入する挿入空間Sが形成される。
作業者は、挿入空間Sに第3フロート73を挿入する(図11の矢印参照)。この際、作業者は、第3フロート係合部731を把持しながら、第3フロート73を挿入することができる。そして、第3フロート係合部731の左右両端部がU字壁部721の内周面にそれぞれ当接すると、第1フロート71の第1ロッド支持面712Tの直上に第3フロート73の第3フロート本体部730が配置される。この際、第1ロッド支持面712Tの中心と第2ロッド支持面730Tの中心とが上下方向に延びる同じ中心線上に配置される。その後、作業者は、ロックピン722をU字壁部721に締結する。この際、ロックピン722が第3フロート係合部731のピン係合部731Sに嵌め込まれるため、第3フロート73が前方にずれることが防止される(図12参照)。
次に、作業者は、シリンダ本体60に対してシリンダロッド61を伸長させる。この結果、まず、シリンダロッド61のロッド先端部61Sが第3フロート73の第2ロッド支持面730Tに当接する。その後、シリンダ本体60のシリンダ本体下面部60SがU字プレート723から上方に離間し、シリンダ本体60が図13の矢印で示すように上方に移動する。この結果、下部走行体14が更に上方に浮き上がる。なお、クレーン10の下部走行体14を下降させジャッキシリンダ6からフロートユニット7を取り外す際には、上記とは逆の手順で行われる。
以上のように、本実施形態では、ジャッキシリンダ6のシリンダロッド61のロッド先端部61Sと地面との間のスペースが小さい場合でも、最終的に、シリンダロッド61のロッド先端部61Sと地面との間に第1フロート71および第3フロート73の双方を介在させることができる。この結果、シリンダロッド61のロッド先端部61Sと地面との間に単一の支持部材が介在する場合と比較して、クレーン10のジャッキアップ高さを大きくすることができる。具体的に、フロートユニット7は、互いに着脱可能な少なくとも第1フロート71、第2フロート72および第3フロート73から構成される。作業者はこれらの部材のうち第1フロート71をシリンダロッド61のロッド先端部61Sと地面との間に挿入することができる。そして、シリンダロッド61がシリンダ本体60に対して伸長することに伴って、第1フロート71の第1ロッド支持面712Tがシリンダロッド61のロッド先端部61Sに当接しを支持し、シリンダロッド61がシリンダ本体60に対して伸長するとシリンダ本体60が浮き上がり、第2フロート72がシリンダ本体60のシリンダ本体下面部60Sと第1フロート71との間に挿入可能とされる。第2フロート72は、シリンダ本体60のシリンダ本体下面部60Sを支持することが可能なU字プレート723を有する。このため、シリンダロッド61の収縮に伴って第2フロート72がシリンダ本体60を一時的に支持した状態で、シリンダロッド61のロッド先端部61Sと第1ロッド支持面712Tとの間に挿入空間Sを形成することができる。この際、第2フロート72がジャッキシリンダ6(下部走行体14)を支持しているため、ジャッキシリンダ6のシリンダロッド61は無負荷状態で収縮することができる。そして、第3フロート73が挿入空間Sに挿入されると、第3フロート73の第2ロッド支持面730Tを基点として、ジャッキシリンダ6が伸長しクレーン10の下部走行体14をジャッキアップすることができる。この結果、第1フロート71の第1ロッド支持面712Tを基点としてジャッキシリンダ6が最大ストローク分だけ伸長する場合と比較して、第3フロート73の高さに応じてクレーン10の下部走行体14をより高い位置までジャッキアップすることができる。換言すれば、フロートユニット7がジャッキシリンダ6の伸縮を利用して下部走行体14を二段階でジャッキアップすることが可能となり、ジャッキシリンダ6の最大ストロークの約2倍のストロークをもって下部走行体14を上方に移動することができる。このように本実施形態では、ジャッキシリンダ6の最大ストロークを超えてクレーン10をジャッキアップすることが可能となる。
また、本実施形態では、第2フロート72には挿入部72H(挿入開口部)が形成されている。このため、作業者は、第2フロート72に形成された挿入部72Hを通じて、第3フロート73を挿入空間Sに容易に挿入することができる。
また、本実施形態によれば、フロートユニット7の第1フロート71および第3フロート73の高さに応じて下部走行体14が2段階でジャッキアップ可能なため、ジャッキシリンダ6に大きなストロークを備えずとも、下部走行体14を所望の高さまで持ち上げることができる。
また、本実施形態では、第2フロート72が略錐体形状を有しているため、第2フロート72は、U字プレート723において受けた下部走行体14の自重をより広い範囲に拡がった本体下端部720Bにおいて第1フロート71に伝えることができる。この結果、フロートユニット7がクレーン10の下部走行体14の自重を安定して受けることができる。
更に、本実施形態では、第1フロート71が複数のリブ711を有し、第2フロート72には複数の切欠き部720Cが形成されている。このため、第2フロート72が下部走行体14の自重を受けている際に第2フロート72が水平方向にずれることが防止され、ジャッキアップ作業時にフロートユニット7がクレーン10の下部走行体14の自重を安定して受けることができる。
また、本実施形態では、作業者は、第1フロート71をU字支持部713に沿ってシリンダロッド61のロッド先端部61Sと地面との間に容易に挿入することができる。更に、作業者は、第3フロート73を第2フロート72のU字壁部721に沿って挿入空間Sに容易に挿入することができる。
また、本実施形態におけるクレーン10のジャッキアップ方法は、下部走行体14と、シリンダ本体下面部60Sを含み下部走行体14に装着される筒状のシリンダ本体60とロッド先端部61Sを含むとともに前記シリンダ本体60の外径よりも小さな外径を有し前記シリンダ本体60のシリンダ本体下面部60Sによって周囲を囲まれるように前記シリンダ本体60から下方に延びるシリンダロッド61と、を有し伸縮可能なジャッキシリンダ6と、を備えるクレーン10のジャッキアップ方法である。当該ジャッキアップ方法は、前記下部走行体14のクローラユニット142が接地しかつ前記シリンダ本体60に対して前記シリンダロッド61を収縮させた状態で、前記下部走行体14の自重を受けることが可能なプレート部710と前記プレート部710の上面部に配置された第1ロッド支持面712Tとを有する第1フロート71を前記シリンダロッド61のロッド先端部61Sと地面との間に挿入する工程と、前記シリンダロッド61を前記シリンダ本体60に対して伸長させることにより前記シリンダロッド61のロッド先端部61Sを前記挿入された第1フロート71の第1ロッド支持面712Tに当接させ、第1フロート71が前記ジャッキシリンダ6を支持した状態にし、この状態で更にシリンダロッド61を伸長させることで第1フロート71に対してシリンダ本体60を上昇させる工程と、前記シリンダ本体60のシリンダ本体下面部60Sとプレート部710との間に第2フロート72を挿入し、前記第1フロート71が前記第2フロート72を支持した状態にする工程と、前記シリンダロッド61を前記シリンダ本体60に対して収縮させることにより前記シリンダ本体60を下降させて前記シリンダ本体60の前記シリンダ本体下面部60Sを前記第2フロート72の上面に当接させ第2フロート72によってシリンダ本体60を支持した状態にし、この状態で前記シリンダロッド61を更に収縮させることにより前記シリンダロッド61の前記ロッド先端部61Sを前記第1ロッド支持面712Tから上方に離間させ前記第1ロッド支持面712Tと前記シリンダロッド61の前記ロッド先端部61Sとの間に挿入空間Sを形成する工程と、前記第1ロッド支持面712Tよりも上方の位置で前記シリンダロッド61の前記ロッド先端部61Sを支持することが可能な第2ロッド支持面730Tを有する第3フロート73を前記挿入空間Sに挿入し、第1フロート71が前記第3フロート73を支持した状態にする工程と、前記シリンダロッド61を前記シリンダ本体60に対して伸長させることにより前記シリンダロッド61の前記ロッド先端部61Sを前記第2ロッド支持面730Tに当接させ、シリンダロッド61を更に伸長させることで前記第2ロッド支持面730Tを基点としてクレーン10をジャッキアップする工程と、を備える。
本方法によれば、作業者はフロートユニット7の複数の部材のうちまず第1フロート71をシリンダロッド61のロッド先端部61Sと地面との間に挿入する。このため、クレーン10のクローラユニット142が接地した状態のジャッキシリンダ6と地面との間のスペースが限られている場合でもフロートユニット7をジャッキシリンダ6に容易に装着することができる。また、当該方法では、第2フロート72の上面部を利用してシリンダ本体60のシリンダ本体下面部60Sを支持することが可能であり、第2フロート72がシリンダ本体60を一時的に支持した状態でシリンダロッド61のロッド先端部61Sと第1ロッド支持面712Tとの間に挿入空間Sを形成することができる。そして、第3フロート73が挿入空間Sに挿入されると、第3フロート73の第2ロッド支持面730Tを基点として、ジャッキシリンダ6を伸長させクレーン10をジャッキアップすることができる。この結果、第1フロート71の第1ロッド支持面712Tを基点としてジャッキシリンダ6が最大ストローク分だけ伸長する場合と比較して、第3フロート73の高さに応じてクレーン10の下部走行体14をより高い位置までジャッキアップすることができる。したがって、ジャッキシリンダ6の最大ストロークを超えてクレーン10をジャッキアップすることが可能となる。
以上、本発明の一実施形態に係る、ジャッキシリンダ6を支持可能なフロートユニット7(支持装置)およびクレーン10のジャッキアップ方法について説明した。なお、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。本発明では、以下のような変形実施形態が可能である。
(1)上記の実施形態では、作業機械としてクレーン10を例に説明したが、本発明に係る作業機械は、クレーン以外のショベル、掘削機などその他の作業機械であってもよい。また、本発明が適用されるクレーンは図1に示されるような大型のクレーン10に限定されるものではない。図1においてラチスマスト17がなく箱マスト21によってブーム16を支持する中型から大型のクレーンや、ラチスマスト17や箱マスト21ではなく不図示のガントリによってブーム16を支持する小型(汎用)から中型のクレーンに、本発明が適用されてもよい。
(2)上記の実施形態では、フロートユニット7が、第1フロート71、第2フロート72および第3フロート73を備える態様にて説明したが、フロートユニット7は更に他の部材を有するものでもよい。第3フロート73の装着後、第2フロート72および第3フロート73と同様の機能を備える部材が順に装着され、クレーン10が多段階でジャッキアップされる構造でもよい。
(3)また、上記の実施形態では、第2フロート72が略円錐形状を有する態様にて説明したが、第2フロート72は角錐形状を有するものでもよく、また円柱(円筒)、角柱形状など他の形状で十分な強度を有するものでもよい。
(4)また、上記の実施形態では、第1フロート71がロックピン714を備え、第2フロート72がロックピン722を備える態様にて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。ロックピン714およびロックピン722として、同一のピンが使い回されてもよく、それぞれ専用のピンが用いられてもよい。同一のピンが使い回される場合には、図9におけるロックピン714が第1フロート71から取り外された後、図11のロックピン722の位置に、前記ロックピン714が装着される。この結果、フロートユニット7が備えるロックピンの数を少なくすることができる。