JP7066806B2 - 鉛フリーはんだ合金、ソルダペースト、電子回路実装基板及び電子制御装置 - Google Patents
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Description
ここで鉛フリーはんだ合金は、鉛含有はんだ合金と比較してはんだ付性が多少劣る。しかしフラックスやはんだ付装置の改良によってこのはんだ付性の問題は克服されているため、民生用電子機器のように比較的穏やかな環境下に置かれるものにおいては、Sn-3Ag-0.5Cuはんだ合金によるはんだ接合でも、電子回路実装基板の一定程度の信頼性を保つことができる。
そしてこのような寒暖差の非常に激しい環境下では、電子回路実装基板において、実装された電子部品と基板(本明細書において単に「基板」という場合は、導体パターン形成前の板、導体パターンが形成され電子部品と電気的接続が可能な板、及び電子部品が実装された電子回路実装基板のうち電子部品を含まない板部分のいずれかであり、場合に応じて適宜いずれかを指し、この場合は「電子部品が実装された電子回路実装基板のうち電子部品を含まない板部分」を指す。)との線膨張係数の差によるひずみと、はんだ接合部の熱変位による応力とが発生し易く、これらははんだ接合部に大きな負荷を与える。
そして自動車の使用過程ではんだ接合部に繰り返し与えられる負荷は、はんだ接合部の塑性変形を何度も引き起こすため、はんだ接合部の亀裂発生の原因となり得る。
特に激しい寒暖差に加え電子回路実装基板に振動が負荷される環境下にあっては、上記亀裂及びその進展は更に発生し易いという問題がある。
しかしBiの添加により高強度化した鉛フリーはんだ合金は延伸性が悪化し、脆性が強まるというデメリットがある。これはBiの添加により特定の結晶方位でのすべり変形が発生し難くなることが原因と考えられる。従って、このようなはんだ合金により形成されるはんだ接合部においては、例えば落下衝撃といった高速変形を伴う衝撃を加えた場合、Biを添加しないはんだ合金を用いた場合と比較してすべり変形による塑性変形が起こり難く、そのため塑性変形を伴わない脆性破壊が発生し易いという問題がある。
しかし、上記脆性破壊を抑制するためにBiの含有量を抑えれば亀裂進展抑制効果は低下し、またその含有量を増やせば脆性破壊は起き易くなる。またBiと併せてInをはんだ合金に添加することによりはんだ合金の強度化を図る場合においても、Inは酸化し易い合金元素であることからその含有量や他の合金元素との組合せ等によってははんだ接合部にボイドが発生し易く、当該ボイドを起因とした亀裂及びその進展を引き起こし易いという問題がある。
しかしこのような効果の両立については、上記特許文献においては言及も示唆もされていない。
本実施形態の鉛フリーはんだ合金には、2質量%以上4質量%以下のAgを含有させることができる。この範囲内で鉛フリーはんだ合金にAgを添加することにより、そのSn粒界中にAg3Sn化合物を析出させ、機械的強度を付与することができると共に、耐熱衝撃性、耐熱疲労特性及び高速変形を伴う衝撃への耐性を発揮させることができる。
一方、Biの含有量を3質量%以上とすると、これを用いて形成されるはんだ接合部において、高速変形を伴う衝撃による破断が生じ易くなる。
Biの更に好ましい含有量は2質量%以上2.8質量%以下であり、特に好ましいその含有量は2.3質量%以上2.8質量%以下である。
一方、Inの含有量を3質量%以上とすると、特にソルダペースト化した場合においてこれを用いて形成されるはんだ接合部にボイドが発生し易く、亀裂進展抑制効果を妨げる虞がある。
BiとInの含有量をこの範囲とし、また他の合金元素とこれらの含有量のバランスを図ることにより、寒暖差の激しい環境下におけるはんだ接合部の亀裂進展抑制効果と高速変形を伴う衝撃への耐性を両立すると共に、これらの効果をより向上させることができる。
このようなソルダペーストとしては、例えば粉末状にした前記鉛フリーはんだ合金とフラックスとを混練しペースト状にすることにより作製される。
これらの中でもロジン系樹脂、その中でも特に酸変性されたロジンに水素添加をした水添酸変性ロジンが好ましく用いられる。また水添酸変性ロジンとアクリル樹脂の併用も好ましい。
前記添加剤の配合量は、フラックス全量に対して10質量%以下であることが好ましい。またこれらの更に好ましい配合量はフラックス全量に対して5質量%以下である。
本実施形態のはんだ接合部は、例えば前記ソルダペーストを基板上の所定位置に印刷し、これを例えば220℃から250℃の温度でリフローを行うことにより形成される。なお、このリフローにより基板上にははんだ接合部とフラックスを由来としたフラックス残さが形成される。
以下の各成分を混練し、実施例及び比較例に係るフラックスを得た。
水添酸変性ロジン(製品名:KE-604、荒川化学工業(株)製) 51質量%
硬化ひまし油 6質量%
ドデカン二酸 10質量%
マロン酸 1質量%
ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩 2質量%
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(製品名:イルガノックス245、BASFジャパン(株)製) 1質量%
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル 29質量%
前記フラックス11質量%と、表1及び表2に記載の各鉛フリーはんだ合金の粉末(粉末粒径20μmから38μm)89質量%とを混合し、実施例1から実施例18、実施例20から実施例30、参考例19及び比較例1から比較例18に係る各ソルダペーストを作製した。
以下の用具を用意した。
・3.2mm×1.6mmのサイズのチップ部品
・上記当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ部品を接続する電極(1.6mm×1.0mm、Cu電極間のギャップ:2.2mm)とを備えたプリント配線板
・上記パターンを有する厚さ150μmのメタルマスク
前記プリント配線板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペーストを印刷し、それぞれ前記チップ部品を10個搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP-538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各プリント配線板を加熱して、電極と各チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を有する各電子回路実装基板を作製した。この際のリフロー条件は、プリヒートを170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を245℃とし、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1,500±500ppmに設定した。
次に、前記各電子回路実装基板を-40℃(5分間)から125℃(5分間)の条件に設定した液槽式冷熱衝撃試験装置(製品名:ETAC WINTECH LT80、楠本化成(株)製)を用い、冷熱衝撃サイクルを3,000サイクル繰り返す環境下に曝した後これを取り出して試験基板とした。
そして、前記各試験基板の対象部分を切り出し、これをエポキシ樹脂(製品名:エポマウント(主剤及び硬化剤)、リファインテック(株)製)を用いて封止した。更に湿式研磨機(製品名:TegraPol-25、丸本ストルアス(株)製)を用いて各試験基板に実装された前記チップ部品の中央断面が分かるような状態とし、200倍に設定した走査電子顕微鏡(製品名:TM-1000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いてこれらを観察し、各試験基板の各チップ部品の電極下に形成されたはんだ接合部に発生したクラック率を以下の式に基づき算出した。なおこの「クラック率」とは、想定されるクラック長さに対して実際にどれだけのクラックが生じたかを判断する指標となるものである。
クラック率(%)=(クラックの長さの総和÷想定線クラック全長)×100
なお、各チップ部品の2つの電極下に形成されたはんだ接合部のうち、生じたクラックの長さの大きい方をそのチップ部品のクラック率の算出の対象とした。
「クラックの長さの総和」とは、各試験基板において評価(算出)対象となる各はんだ接合部において発生した複数のクラック長さの合計である。
「想定線クラック全長」とは、各試験基板において評価(算出)対象となる各はんだ接合部におけるクラック予想進展経路(完全破断に至ったクラック)の長さの合計である。
そして各試験基板に搭載した10個のチップ部品のクラック率をそれぞれ算出し、その平均値について以下の基準に基づき評価した。その結果を表3及び表4に表す。
◎:クラック率の平均値が50%以下
○:クラック率の平均値が50%越、70%以下
△:クラック率の平均値が70%越、90%以下
×:クラック率の平均値が90%越、100%以下
プリント配線板の電極が1.6mm×0.5mm(Cu電極間のギャップ:2.2mm)であること、及び前記チップ部品を5個搭載する以外は上記(1)はんだクラック試験と同じ条件にて、はんだ接合部を有する各電子回路実装基板を作製した。
そして前記各電子回路実装基板それぞれのチップ部品のシェア強度をオートグラフ(製品名:EZ-L-500N、(株)島津製作所製)を用いて測定した。
なお、当該シェア強度の測定条件はJIS規格C60068-2-21に準拠した。また当該シェア強度の測定に際しては、ジグは端面が平坦で部品寸法と同等以上の幅を持つせん断ジグとし、せん断ジグをチップ部品側面に突き当てて所定のせん断速度で各電子回路実装基板に平行な力を加え、最大試験力を求めてこの値をシェア強度とした。また当該測定におけるせん断高さは部品高さの1/4以下とし、せん断速度は100mm/分とした。
そして測定した各電子回路実装基板のシェア強度についてその平均値(算出したシェア強度の総和÷5(チップ部品数))を算出し、以下の基準に基づき評価した。その結果を表3及び表4に表す。
○:シェア強度の平均値が7.0N以上
△:シェア強度の平均値が6.5N以上7.0N未満
×:シェア強度の平均値が6.5N未満
以下の用具を用意した。
・2.0mm×1.2mmのサイズのチップ部品
・上記当該サイズのチップ部品を実装できるパターンを有するソルダレジスト及び前記チップ部品を接続する電極(1.25mm×1.0mm)とを備えたプリント配線板
・上記パターンを有する厚さ150μmのメタルマスク
前記プリント配線板上に前記メタルマスクを用いて各ソルダペーストを印刷し、それぞれ前記チップ部品を10個搭載した。
その後、リフロー炉(製品名:TNP-538EM、(株)タムラ製作所製)を用いて前記各プリント配線板を加熱して、電極と各チップ部品とを電気的に接合するはんだ接合部を有する各電子回路実装基板(試験基板)を作成した。この際のリフロー条件は、プリヒートを170℃から190℃で110秒間、ピーク温度を245℃とし、200℃以上の時間が65秒間、220℃以上の時間が45秒間、ピーク温度から200℃までの冷却速度を3℃から8℃/秒とし、酸素濃度は1,500±500ppmに設定した。
次いで各試験基板の表面状態をX線透過装置(製品名:SMX-160E、(株)島津製作所製)で観察し、各試験基板の各チップ部品の電極下の領域(図1の破線で囲った領域(a)。以下、「電極下領域」という。)に発生したボイドの総面積がランド面積に占める割合(電極下領域のボイド面積率:電極下領域の総ボイド面積/ランド面積×100)と、フィレットが形成されている領域(図1の破線で囲った領域(b)以下、「フィレット領域」という。)に発生したボイドの総面積がランド面積に占める割合(フィレット領域のボイド面積率:フィレット領域の総ボイド面積/ランド面積×100)をそれぞれ測定及び算出した。
そしてボイド面積率の平均値(算出したボイド面積率の総和÷20(ランドの数))を算出し、以下の基準に基づき評価した。その結果を表3及び表4に表す。
○:ボイド面積率の平均値が3%超5%以下であって、ボイド発生の抑制効果が良好
△:ボイド面積率の平均値が5%超8%以下であって、ボイド発生の抑制効果が十分
×:ボイド面積率の平均値が8%超であって、ボイド発生の抑制効果が不十分
FR-4基板上に厚さ35μmの銅配線を設けた試験用基板を適切な大きさに裁断した。
各試験用基板の銅配線面上にプリフラックスを塗布した後これを60秒間予備加熱し、各試験用基板の温度を約120℃にした。
次いで、実施例及び比較例に係る各鉛フリーはんだ合金を溶融させた噴流はんだ槽の噴流口から2mm上部に予備加熱した各試験用基板を置き、噴流している各溶融はんだ中に3秒間浸漬させた。そしてこの浸漬工程を繰り返し行い、各試験用基板の銅配線のサイズ(面積)が半減するまでの浸漬回数を測定し、以下の基準に基づき評価した。その結果を表3及び表4に表す。
○:浸漬回数4回以上でも銅配線のサイズが半減しない
△:浸漬回数3回で銅配線のサイズが半減した
×:浸漬回数2回以下で銅配線のサイズが半減した
そして実施例に係る鉛フリーはんだ合金は、このような非常に過酷な条件下においても亀裂進展抑制効果を発揮し得るものである。
そして実施例に係る鉛フリーはんだ合金は、このような厳しい条件下においても、高速変形を伴う衝撃への耐性を発揮し得るものである。
Claims (8)
- 2質量%以上4質量%以下のAgと、0.3質量%以上1質量%以下のCuと、1.5質量%以上3質量%未満のBiと、1質量%以上3質量%未満のInとを含み、残部がSnからなる車載用電子回路実装基板用鉛フリーはんだ合金(但し、Sn-3~3.5Ag-2.5Bi-2.5In-0.5Cu、Sn-2~3Ag-2Bi-1In-0.5Cuを除く)。
- Cuの含有量が0.7質量%であることを特徴とする請求項1に記載の車載用電子回路実装基板用鉛フリーはんだ合金。
- 更にNi及びCoの少なくともいずれかを合計で0.001質量%以上0.10質量%以下含み、
Biの含有量が2質量%以上3質量%未満であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載用電子回路実装基板用鉛フリーはんだ合金。 - 更にFe、Mn、Cr及びMoの少なくともいずれかを合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含むことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載用電子回路実装基板用鉛フリーはんだ合金。
- 更にP、Ga及びGeの少なくともいずれかを合計で0.001質量%以上0.05質量%以下含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車載用電子回路実装基板用鉛フリーはんだ合金。
- 粉末状の鉛フリーはんだ合金であって請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車載用電子回路実装基板用鉛フリーはんだ合金と、
ベース樹脂と、チキソ剤と、活性剤と、溶剤とを含むフラックスとを有することを特徴とするソルダペースト。 - 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車載用電子回路実装基板用鉛フリーはんだ合金を用いて形成されるはんだ接合部を有することを特徴とする車載用電子回路実装基板。
- 請求項7に記載の電子回路実装基板を有することを特徴とする車載用電子制御装置。
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