次に、本発明の実施形態を図1~14に基づいて説明する。本実施形態の電動工具1では一例として、円形状の刃具を回転させることで切断作業等に用いられる、いわゆる携帯用マルノコと称されるものを例示する。図1~5に示すように、本実施形態の電動工具1は、ベース2と、ベース2の上面に支持される電動工具本体10と、電動工具本体10に備えられている駆動源としてのモータ20と、モータ20のロータ軸21の駆動を出力するスピンドル26と、スピンドル26に取り付けられた円形状の鋸刃12とを備えている。図に示すように、以下の説明において、切断加工の進行方向であって、鋸刃12が切り込まれていく方向を前側(図3において左側)とする。使用者(図示しない)は、電動工具1の後方(図3において右側)に位置している。上下左右方向については使用者を基準とする。
図1~5に示すように電動工具1は、後述するモータ20の駆動によって回転する円形状の鋸刃12を備えている。鋸刃12は、切断加工の進行方向が前方となる向きで備えられている。鋸刃12は、その上側半周部分をブレードケース13によって覆われている。ブレードケース13の側面には、鋸刃12の回転方向(図3において時計回り方向)であることを示す白抜き矢印(図示しない)が示されている。
鋸刃12の下側半周部分は、ベース2より下側に突き出されている。この鋸刃12の突き出されている部分が切断材Wに切り込まれることにより切断加工がなされる。鋸刃12の下側半周部分は、鋸刃12の周方向に開閉可能な可動カバー14によって覆われている。可動カバー14の前端部を切断材Wに当接させて電動工具1を前方へと移動操作させると、可動カバー14が図3において反時計回り方向に開かれて、開かれた分だけ鋸刃12が露出されるようになる。鋸刃12の露出部分において切断加工がなされる。
図1~5に示すように、ブレードケース13の左側面側にはギヤケース部7が一体に設けられている。ギヤケース部7に減速ギヤ列25が収容されている。ギヤケース部7の左側にモータハウジング11が結合されている。モータハウジング11とギヤケース部7との結合部位の上方にハンドル部3が設けられている。ハンドル部3は、概ね前後方向に延びて左右方向に貫通孔を有する略D字形のループ形状に設けられている。ハンドル部3のループ形状の内周側には、スイッチレバー3aが設けられている。スイッチレバー3aを指で引き操作することで、モータ20が起動し、鋸刃12が回転する。スイッチレバー3aの引き操作を止めると、モータ20が停止し、鋸刃12も停止する。ハンドル部3の後端からは、電源供給用の電源用コード8が後方に延びて設けられている。
図5に示すように、鋸刃12の刃面がベース2に対して直交しているとき、いわゆる直角切りと称される切断加工を行うことができる。電動工具本体10は、左右傾動支軸17を回転中心として、ベース2に対して左右に傾動させることができる。電動工具本体10を左右に傾動させることで、鋸刃12の刃面がベース2に対して左右に傾斜し、いわゆる傾斜切りと称される切断加工を行うことができる。
図1~4に示すように、ベース2の上面前部には、アンギュラープレート5が一体に設けられている。アンギュラープレート5の後側には、傾動ブラケット6が取り付けられている。傾動ブラケット6は、左右傾動支軸17を介して左右に傾動可能にしてアンギュラープレート5に支持されている。傾動ブラケット6には、電動工具本体10のブレードケース13の前端部が、上下傾動支軸18を介して上下に傾動可能に取り付けられている。これにより、電動工具本体10は、ベース2に対して左右方向だけでなく上下方向にも傾動可能に設けられている。なお、このベース2の上面後部にも、アンギュラプレート5が一体に設けられている。そのため、このベース2の後部でも、ベース2の前部と同様に、電動工具本体10は左右傾動支軸17を介して左右方向に傾動可能に支持されている。また、電動工具本体10のベース2に対する高さの変更により、鋸刃12のベース2の下面より下側への突き出し寸法を変更することができる。これにより、鋸刃12の切断材Wに対する切り込み深さDを調整することができる。電動工具本体10が下限位置の姿勢であるとき、切り込み深さDは、最大切り込み深さDaとなる(図3参照)。
図5に示すように、モータハウジング11には、モータ20が収容されている。モータ20には、ACBLモータが用いられている。モータ20のロータ軸21は、左右方向に延びて回転可能に支持されている。ロータ軸21の軸周りには、回転子22がロータ軸21と一体に回転可能に設けられている。ロータ軸21の径方向について回転子22と対向する位置には、固定子23がモータハウジング11に固定されて配置されている。
図5に示すように、回転子22および固定子23より右側のロータ軸21には、冷却ファン24がロータ軸21と一体に回転可能に取り付けられている。冷却ファン24は、遠心ファンとして構成されている。モータ20の左方であるモータハウジング11の左側部には、吸気口11aが複数設けられている。また、冷却ファン24の近傍のモータハウジング11には、図示されていない排気口(図示しない)が複数設けられている。冷却ファン24の吸気口11a側(左側)および排気口側(径方向外側)は、バッフルプレート28によって覆われている。
図5に示すように、ロータ軸21の右端部には、駆動ギヤ21aが設けられている。ロータ軸21の軸線延長上よりも下方位置には、スピンドル26がロータ軸21と同じ軸方向に延びて回転可能に支持されている。ロータ軸21の回転駆動は、駆動ギヤ21aから減速ギヤ列25を介して二段階で減速されながらスピンドル26へと伝達される。スピンドル26の右端部は、ブレードケース13内へと突き出されている。この突き出し部分であるスピンドル26の右端部には、鋸刃12が、インナフランジ15とアウタフランジ16とにスピンドル26の軸方向に挟み込まれて取り付けられている。インナフランジ15とアウタフランジ16とは、スピンドル26の右端部とボルト27とによって締め付けられている。これにより、鋸刃12はスピンドル26と一体に回転可能に支持されている。
ヒートパイプ30は、銅製のパイプとして構成されている熱輸送部材である。図6~図10に示すように、ヒートパイプ30は、配置箇所に応じて、例えば、略S字形等の各種の形状に変形させることができる。この実施形態では、ヒートパイプ30は、左右方向に延びる第1直線体31と、この第1直線体31の左端から第1屈曲部32を介して前側に略90°折り曲げられて前後方向に延びる第2直線体33と、この第2直線体33の前端から第2屈曲部34を介して上側に略90°折り曲げられて成る円弧体35とから円筒状に構成されている(図7参照)。
ヒートパイプ30の内部構造については、既存のヒートパイプと同様であるため、簡略的に説明する。ヒートパイプ30は、銅製の外層の内側に金網を複層重ねたウィックと呼ばれる内層を備えている。ヒートパイプ30の内部には、水等の液体の熱輸送媒体が封入されている。ヒートパイプ30の一端の第1直線体(発熱部)31が熱を受けると、熱輸送媒体(水)が気化する。気化した熱輸送媒体(水蒸気)は、ヒートパイプ30の他端の円弧体(放熱部)35へと移動する。円弧体35で熱を放出した熱輸送媒体(水蒸気)は液化する。液化した熱輸送媒体(水)は、ウィックにおける毛細管現象によって、円弧体35から第1直線体31へと運ばれる。第1直線体31を円弧体35よりも下方に配置することにより、熱を受けた気体の熱輸送媒体(水蒸気)が第1直線体31から円弧体35へと上昇することで、熱輸送を速くすることができる。
また、第1直線体31を円弧体35よりも下方に配置することにより、液化した熱輸送媒体(水)が重力によって円弧体35から第1直線体31へと下降することで、熱輸送を速くすることができる。すなわち、ヒートパイプ30の一端を発熱源に、他端を放熱源に連結させ、発熱源を放熱源よりも下方に配置させることで、発熱源からヒートパイプ30を介して放熱源へと速く効率的な熱輸送がなされる。本実施形態の電動工具1においては、後述するコントローラ50に取り付ける側であるヒートパイプ30の第1直線体31側を発熱部として適用しており、後述するヒートシンク40に組み付ける側であるヒートパイプ30の円弧体35側を放熱部として適用している。
また、このヒートパイプ30の第1直線体31の右半分は、その上側が押し潰された平面を成すように形成されている。すなわち、このヒートパイプ30の第1直線体31の右半分には、上側が押し潰された格好を成す断面半円状を成の平面部31aが形成されている(図7参照)。一方、このヒートパイプ30の第1直線体31の左半分は、平面部31aが形成されることなく円筒状のままの一般部31bとなっている。なお、このヒートパイプ30の第1直線体31と円弧体35とには、熱伝導性の高いグリース(例えば、メーカ:片岡線材株式会社、商品名:サーマルジョイント)が塗布されている。これにより、このヒートパイプ30を連結する相手部材(後述するヒートシンク40、IPM63、コントローラケース70の底壁71、カバー76等)に対する空気等の断熱層を無くすことができる。そのため、このヒートパイプ30と相手部材との間に生じる接触熱抵抗を抑えることができる。したがって、ヒートパイプ30の熱輸送効果(均熱効果)を十分に発揮させることができる。
次に、図6~10を参照して、ヒートシンク40を詳述する。このヒートシンク40は、貫通部42を有する円環状に形成されたアルミニウム製のヒートシンク本体41と、このヒートシンク本体41の周方向に沿って形成されている切欠43を塞ぎ可能なアルミニウム製の蓋体45とから構成されている。このヒートシンク本体41の貫通部42の内周面には、複数のフィン44が形成されている。この複数のフィン44は、その各フィン面44aがモータ20のロータ軸21の軸方向に沿って延在するように形成されている。また、このヒートシンク本体41の切欠43の内面には、ヒートパイプ30の円弧体35の左半分に沿う断面半円状の凹溝43aが形成されている。
一方、蓋体45の内面にも、ヒートパイプ30の円弧体35の右半分に沿う断面半円状の凹溝46が形成されている。これにより、この両凹溝43a、46にヒートパイプ30の円弧体35を入り込ませることができる。そのため、ヒートシンク40の厚みを増すことなく、ヒートシンク本体41と蓋体45との間にヒートパイプ30の円弧体35を挟み込ませることができる。なお、このヒートシンク40において、複数のフィン44が形成されている領域は、全領域のうちの1/2程度の周方向に沿った領域であり、特許請求の範囲に記載の「ヒートシンク40のフィン領域」に相当する。また、このヒートシンク40において、両凹溝43a、46が形成されている領域(ヒートパイプ30の連結領域)は、全領域のうちの残りの1/2程度の周方向に沿った領域であり、特許請求の範囲に記載の「ヒートシンク40の連結領域」に相当する。
次に、図6~10を参照して、コントローラ50を説明する。コントローラ50は、主として、矩形状の基板60と、この基板60を収容する矩形箱状のコントローラケース70とから構成されている。この基板60には、モータ20の駆動制御を行うマイコンであるIPM63からなる制御回路、モータ20の電流をスイッチングするFET61やダイオードブリッジ62からなる駆動回路等が搭載されている。このFET61とダイオードブリッジ62とは、基板60の表面60aの右後隅に後縁に沿う格好で搭載されている(図7参照)。
これらFET61、ダイオードブリッジ62は、自身が発熱するものとなっている。このようにFET61、ダイオードブリッジ62自身が発熱するため、結果として、基板60、すなわち、コントローラ50が発熱することとなる。このコントローラ50が、特許請求の範囲に記載の「発熱する発熱電材」に相当する。また、このIPM63は、基板60の裏面60bの右前側に搭載されている(図9参照)。このIPM63は、自身が大きく発熱することはないが、自身の耐熱温度が低いため、冷却させる対象物となっている。基板60は、このように構成されている。
一方、コントローラケース70は、底壁71と、前壁72と、後壁73と、左壁74と、右壁75とから矩形箱状に形成されている。この底壁71の外面の前側には、盛り上がり状の前張出部71aが形成されている(図8~9参照)。また、この底壁71の外面の後側には、盛り上がり状の後張出部71bが形成されている。この前張出部71aと後張出部71bとの間の右側には、底壁71の厚みを貫通する矩形状の貫通部71cが形成されている。また、この底壁71の外面における前張出部71aと後張出部71bとの間の左側には、貫通部71cに対して同一直線上に位置するように断面半円状の溝部71dが形成されている(図7、9参照)。
また、この底壁71の内面の右前側には、凹みを成す凹部71eが形成されている(図7参照)。また、この底壁71の内面の右後側には、凹みを成す凹部71fが形成されている。これにより、底壁71の一般面より低い位置にIPM63を配置できる。なお、この凹部71eは、上述したように、底壁71の内面の右前側のみに形成されている。そのため、この底壁71の左前側は、厚肉部71gとなっている(図9参照)。また、この凹部71fは、上述したように、底壁71の内面の右後側のみに形成されている。そのため、この底壁71の左後側は、厚肉部71hとなっている。したがって、溝部71dは、これら厚肉部71g、71hに沿って形成されている。結果として、後述するヒートパイプ30の一般部31bは、これら厚肉部71g、71hに沿って配置されることとなる(図8参照)。
また、後壁73の右側は、後述するように基板60に搭載されたFET61やダイオードブリッジ62の各放熱部(図示しない、放熱板)に接触する(隣り合う)部位となるため、これらFET61やダイオードブリッジ62からの発熱により熱を帯びる高温部73cとなる(図6~9参照)。一方、この後壁73の高温部73cを除いた残りの部位は、FET61やダイオードブリッジ62に非接触する部位(隣り合うことがない部位)となるため、これらFET61やダイオードブリッジ62からの発熱により熱を帯びることがない低温部73dとなる。そして、この後壁73は、その低温部73dに対応する部位の厚みが薄い一般部73aとなっており、その高温部73cに対応する部位の厚みが厚い厚肉部73bとなっている。例えば、一般部73aの厚みは、1~2mm程度であり、厚肉部73bの厚みは、3~5mm程度である。
なお、この厚肉部73bは、後壁73の高温部73cから低温部73dに至るまで延長部73eによって延在されている。この厚肉部73bにFET61やダイオードブリッジ62から熱が付与されると、熱の均一化の観点から、この付与された熱を一般部73aに逃がすことができる。すなわち、厚肉部73bに付与された熱を吸熱できる。なお、このコントローラケース70は、アルミニウム合金(例えば、メーカ:山崎ダイカスト株式会社、商品名:HT-1)から形成されている。したがって、軽量化を図ることができつつ、成形性や鋳造性が良いため、所望する形状のコントローラケース70を形成できる。なお、このアルミニウム合金の熱伝導率は、169~178W/(m・k)である。コントローラケース70は、このように構成されている。
このように構成されているコントローラケース70には、その内部に収容される基板60が2本の第1ネジB1を介して組み付けられている(図6~7参照)。これにより、コントローラケース70の内部に収容した基板60を保持できる。このとき、基板60に搭載されているFET61とダイオードブリッジ62との各放熱部が、コントローラケース70の後壁73の厚肉部73bに接触した状態となっている。また、このとき、各放熱部が接触したFET61とダイオードブリッジ62は、コントローラケース70の後壁73の厚肉部73bに対して第2ネジB2によってそれぞれ留められている。これにより、基板60に搭載されているFET61とダイオードブリッジ62との各放熱部が、コントローラケース70の後壁73の厚肉部73bに接触した状態を保持できる。また、このとき、基板60に搭載されているIPM63の放熱部(図示しない、放熱板)が、コントローラケース70の底壁71の各凹部71e、71fに接触した状態となっている。コントローラ50は、このように構成されている。
このコントローラ50には、ヒートパイプ30の第1直線体31が連結されている(図6~14参照)。この連結は、ヒートパイプ30の第1直線体31をコントローラケース70の底壁71とカバー76との間に挟み込み、このヒートパイプ30の第1直線体31を挟み込ませた状態のカバー76の四隅をコントローラケース70の底壁71に対して4本の第3ネジB3を介して留めることで行われている(図7、9参照)。すなわち、IPM63に対して面接触したヒートパイプ30の第1直線体31の平面部31aは、コントローラケース70に対して第3ネジB3でネジ留めされたカバー76で覆われている。このとき、挟み込まれたヒートパイプ30の第1直線体31の平面部31aが基板60に搭載されているIPM63に対して貫通部71cを介して面接触した状態となっている(図11参照)。このカバー76も、コントローラケース70と同様のアルミニウム合金から形成されている。したがって、軽量化を図ることができつつ、成形性や鋳造性が良いため、所望する形状のカバー76を形成できる。
また、このとき、挟み込まれたヒートパイプ30の第1直線体31の一般部31bが底壁71の断面半円状の溝部71dとカバー76の断面半円状の凹部76aとに入り込む。そのため、この連結部分の厚みを増すことなく、コントローラ50とカバー76との間にヒートパイプ30の第1直線体31を挟み込ませることができる。なお、この面接触した状態のヒートパイプ30は、コントローラケース70に対して4本の第3ネジB3を介して留めされたカバー76で覆われている。このようにして、ヒートパイプ30の第1直線体31がコントローラ50に対して連結されている。
一方、このヒートシンク40には、ヒートパイプ30の円弧体35が連結されている。この連結は、ヒートパイプ30の円弧体35をヒートシンク40のヒートシンク本体41と蓋体45との間に挟み込み、このヒートパイプ30の円弧体35を挟み込ませた状態の蓋体45の両隅をヒートシンク40のヒートシンク本体41に対して2本の第4ネジB4を介して留めることで行われている。このように2本の第4ネジB4を介して留めるため、隙間を生じさせることなくヒートシンク本体41に対して蓋体45を留めることができる。なお、上述したように、ヒートシンク40にヒートパイプ30の円弧体35を連結するとき、このヒートシンク40のヒートシンク本体41は、予め、モータハウジング11に仮固定された状態となっている。
このとき、ヒートパイプ30の円弧体35がヒートシンク本体41の断面半円状の凹溝43aと蓋体45の断面半円状の凹溝46とに入り込む。そのため、この連結部分の厚みを増すことなく、ヒートシンク本体41と蓋体45との間にヒートパイプ30の円弧体35を挟み込ませることができる。このようにして、ヒートパイプ30の円弧体35がヒートシンク40に対して連結されている。すなわち、上述したようにコントローラ50の基板60に搭載されたIPM63とヒートシンク40とは、ヒートパイプ30で連結されている。なお、このIPM63は、自身が大きく発熱することはないが、高温となり冷却させる対象物となっているため、コントローラ50の高温部に相当する。また、ヒートシンク40は、後述するように外気によって冷却されている。そのため、このヒートシンク40は、電動工具本体10の低温部に相当する。
また、ヒートシンク40は、既に説明したように、貫通部42を有する円環状に形成されている。そのため、このヒートシンク40は、モータ20のロータ軸21の反負荷側が貫通部42を貫通するように、モータ20を収容するモータハウジング11に収容され第5ネジB5を介して組み付けられている(図1~2、5参照)。このとき、モータハウジング11に収容されたヒートシンク40は、モータハウジング11の内面から突出する複数のリブ11bによって周方向の位置決めが成されている。そのため、ヒートシンク40が第5ネジB5のみによる組み付けであっても、モータハウジング11に対してガタツキが生じることなくヒートシンク40を収容できる。このようにして、モータ20のロータ軸21の反負荷側の軸周りにヒートシンク40を設けることができる。すなわち、モータ20とモータハウジング11の吸気口11aとの間にヒートシンク40を設けることができる。
図1~2に示すように、コントローラ50は、モータハウジング11の後部側に設けたコントローラ収容ケース19に収容されている。コントローラ収容ケース19は、コントローラ50の全体を収容可能なスペースを有しており、モータ20の後方へ大きく張り出す状態に設けられている。コントローラ収容ケース19内は、少なくともヒートパイプ30と基板60に接続されるコード(図示しない)とを通過させるに足る開口部(図示しない)でモータハウジング11内に連通されている。図3に示すように、鋸刃12の切り込み深さDが最大切り込み深さDaとなる姿勢に電動工具本体10を位置させて切断加工する場合、ヒートパイプ30の第1直線体31(発熱部)は、ヒートパイプ30の円弧体35(放熱部)に対して低い位置に配置されている。そのため、電動工具本体10がこの最大切り込み深さ姿勢で動作するとき、ヒートパイプ30によって、発熱部(第1直線体31)から放熱部(円弧体35)への速く効率の良い熱輸送がなされる。
一方、図示しないが、鋸刃12の切り込み深さDが、最大切り込み深さDaの約50%である切り込み深さとなる姿勢まで電動工具本体10をベース2に対して上方に変位させると、第1直線体(発熱部)31と円弧体(放熱部)35とが同等高さとなる。すなわち、切り込み深さDについて通常使用する電動工具本体10の姿勢であって、鋸刃12の切り込み深さDが最大切り込み深さDaとなる図3に示す電動工具本体10の姿勢からその約50%である切り込み深さとなる図示しない電動工具本体10の姿勢までの範囲で電動工具1を使用する場合において、第1直線体31から円弧体35への速く効率の良い熱輸送が行われる状態が維持される。
次に、モータハウジング11の内部における冷却風の流れ、およびコントローラ50が冷却される行程を説明する。図5に示すように、モータ20のロータ軸21の回転に伴う冷却ファン24の回転によって吸気口11aからモータハウジング11の内部に取り込まれた外気(冷却風)は、ヒートシンク40を冷却させた後、ロータ軸21に沿ってモータ20の左側から右側へと流れモータ20を冷却させる。その後、外気(冷却風)は、バッフルプレート28に沿うように流れ、図示されていない排気口からモータハウジング11の外へと排出される。このように排出されるため、この外気(冷却風)がコントローラ50に十分に当たることがない。
このとき、コントローラ50に連結されているヒートパイプ30の第1直線体(発熱部)31では、コントローラ50から熱を受けることで、内部の熱輸送媒体(水)が気化して、ヒートパイプ30の円弧体(放熱部)35に向かって移動する。一方、ヒートシンク40に連結されているヒートパイプ30の円弧体(放熱部)35では、熱交換によりヒートシンク40が外気(冷却風)によって冷却されることで、内部の熱輸送媒体(水蒸気)が液化している。これにより、液体の熱輸送媒体(水)は、円弧体(放熱部)35から第1直線体(発熱部)31に向かって移動する。結果として、コントローラ50からヒートシンク40へと熱輸送がなされ、コントローラ50が冷却される。
本発明の実施形態に係る電動工具1は、上述したように構成されている。この構成によれば、コントローラ50とヒートシンク40とは、ヒートパイプ30で連結されている。そのため、コントローラ50が発する熱がヒートシンク40へと輸送され(熱輸送され)、コントローラ50を冷却できる。このとき、ヒートシンク40は、モータ20とモータハウジング11の吸気口11aとの間に設けられている。そのため、モータハウジング11の吸気口11aから取り込んだ外気によるヒートシンク40の冷却は、モータ20を冷却する前の冷たい外気によって行われる。したがって、ヒートシンク40を効果的に冷却できるため、このヒートシンク40にヒートパイプ30を介して連結されているコントローラ50を効果的に冷却できる。結果として、冷却ファン24が吸気口11aから取り込んだ外気(冷却風)が十分に当たらないコントローラ50を効果的に冷却できる。
また、この構成によれば、ヒートシンク40は、モータ20を収容するモータハウジング11に収容され第5ネジB5を介して組み付けられている。そのため、ヒートシンク40の固定を簡便に実施できる。また、ヒートシンク40に微振動が生じることも防止できる。
また、この構成によれば、ヒートシンク40は、貫通部42を有する円環状に形成されている。そして、ヒートシンク40は、モータ20のロータ軸21の反負荷側の軸周りに配置されている。そのため、モータハウジング11の吸気口11aから取り込んだ外気(冷却風)の流路上にヒートシンク40が存在する格好となる。したがって、ヒートシンク40を効率よく冷却させることができる。
また、この構成によれば、ヒートシンク本体41の貫通部42の内周面には、複数のフィン44が形成されている。また、ヒートシンク40において、複数のフィン44が形成されている領域は、全領域のうちの1/2程度の周方向に沿った領域であり、両凹溝43a、46が形成されている領域(ヒートパイプ30の連結領域)は、全領域のうちの残りの1/2程度の周方向に沿った領域である。これら複数のフィン44と凹溝43a、46とをヒートシンク40の周方向に沿って形成できるため、モータハウジング11の吸気口11aから取り込んだ外気(冷却風)の風速を確保できつつ、ヒートパイプ30とヒートシンク40との熱交換の効率の悪化を防止できる。
また、この構成によれば、複数のフィン44は、その各フィン面44aがモータ20のロータ軸21の軸方向に沿って延在するように形成されている。そのため、モータハウジング11の吸気口11aから取り込んだ外気(冷却風)の流れが阻害されることを防止できる。
また、この構成によれば、ヒートシンク40は、貫通部42を有する円環状に形成されたアルミニウム製のヒートシンク本体41と、このヒートシンク本体41の周方向に沿って形成されている切欠43を塞ぎ可能なアルミニウム製の蓋体45とから構成されている。このヒートシンク40には、ヒートパイプ30の円弧体35が連結されている。この連結は、ヒートパイプ30の円弧体35をヒートシンク40のヒートシンク本体41と蓋体45との間に挟み込み、このヒートパイプ30の円弧体35を挟み込ませた状態の蓋体45の両隅をヒートシンク40のヒートシンク本体41に対して2本の第4ネジB4を介して留めることで行われている。そのため、ヒートパイプ30の円弧体35とヒートシンク40との接触面積を広く確保した状態で、このヒートシンク40にヒートパイプ30の円弧体35を連結できる。したがって、ヒートパイプ30とヒートシンク40との熱交換の効率を向上させることができる。
また、この構成によれば、電動工具本体10の姿勢を、切り込み深さDについて通常使用する姿勢の範囲、すなわち、鋸刃12の切り込み深さDが最大切り込み深さDaとなる姿勢から最大切り込み深さDaの約50%となる姿勢までの範囲の状態で電動工具1を使用した場合、ヒートパイプ30の第1直線体(発熱部)31が円弧体(放熱部)35よりも低い位置か同等高さになるように配置されている。切り込み深さDが大きいときは、モータ20の大きい出力を必要とし、コントローラ50の発熱量も大きくなる。このため、本実施形態の電動工具1によれば、切り込み深さDについて通常使用する姿勢であって、コントローラ50の冷却が特に必要である切り込み深さDが大きい状態で電動工具1を使用した場合において、第1直線体(発熱部)31から円弧体(放熱部)35への速く効率の良い熱輸送が行われる状態が維持される。
以上説明した本実施形態の電動工具1には種々変更を加えることができる。例えば、本実施形態の電動工具1で例示した携帯用マルノコに限らず、切り込み深さの調整が可能な他の回転切断工具に対しても、切り込み深さの大きい場合において、ヒートパイプの発熱部がヒートパイプの放熱部よりも下方または同等高さに配置されている構成を採用することができる。
また、電源を充電式のバッテリ等に変更してもよい。ヒートパイプ30やヒートシンク40の材料を他の熱伝導性の高い材料に変更してもよい。また、コントローラケースは、熱伝導率120~200W/(m・k)の材料により形成されていればよい。
また、FET61やダイオードブリッジ62の各放熱部を厚肉部73bに接触させることなく、FET61やダイオードブリッジ62を直に厚肉部73bに接触させても構わない。このことは、IPM63においても同様である。
また、ヒートシンク40を間接的に(ブラケット等の部材を介して)モータハウジング11に組み付けても構わない。もちろん、ヒートシンク40をモータ20の固定子23に組み付けても構わない。その場合でも、結果として、ヒートシンク40がモータハウジング11に組み付けられることとなる。
また、コントローラ50は、電動工具1のモータ20の駆動を制御するものに限ることなく、電動工具1の照明やブザー(音源)のON-OFFを制御するものであっても構わない。
また、電動工具1は、携帯用マルノコに限るものでなく、グラインダ、ハンマー等であっても構わない。
また、ヒートシンク40(ヒートシンク本体41)は、円環状に形成されていることに限ることなく、円環の一部が切り欠かれた略円環状(C字状)に形成されていても構わない。