以下に、本発明の実施の形態に係る静止誘導器を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態.
図1は本発明の実施の形態に係る静止誘導器と内部に静止誘導器が設けられる筐体とを示す図である。筐体200の内部には、実施の形態に係る静止誘導器100が設けられる。静止誘導器100は、鉄心1と3つの巻線3-1,3-2,3-3とを備える三相変圧器である。図1では、左手系のXYZ座標において、静止誘導器100の上下方向をX軸方向とし、3つの巻線3-1,3-2,3-3の配列方向をZ軸方向とし、X軸方向とZ軸方向の両者に直交する方向をY軸方向とする。X軸方向は、静止誘導器100、鉄心1の上下方向に等しく、また3つの巻線3-1,3-2,3-3のそれぞれの上下方向に等しい。上下方向は鉛直方向に等しい。上記の各軸方向は、図2以降の各図においても同様とする。以下では、3つの巻線3-1,3-2,3-3のそれぞれを区別する必要がない場合、単に巻線3と称する。
筐体200の内部は、巻線3を冷却するための冷却媒体201で満たされている。冷却媒体201は、筐体200の内部で対流する絶縁油又は絶縁のための油である。絶縁油又は絶縁のための油は、JIS2320に記載される1種から7種までの油であり、例えば鉱油、アルキルベンゼン、ポリブテン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルアルカン、シリコーン油などを主成分とする絶縁性の油である。筐体200は、静止誘導器100の上部に設けられる天板202と、静止誘導器100の下部に設けられる底板203と、静止誘導器100の側面部に設けられる側面板204とを備える。側面板204の上下方向の一端部は、天板202に固定される。側面板204の上下方向の他端は、底板203に固定される。天板202、底板203及び側面板204の材料には、銅合金、鋳鉄、鋼、鉄合金、アルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス合金などの金属を例示できる。筐体200は、巻線3で発生した熱により温められた冷却媒体201の温度を筐体200の外部に放射でき、かつ、冷却媒体201の外部への漏洩を防止できる構造を有すればよく、筐体200の形状は、図示例の形状に限定されるものではない。
巻線3-1の下部には第1絶縁部4-31及び第2絶縁部4-32が設けられる。巻線3-3の下部にも第1絶縁部4-31及び第2絶縁部4-32が設けられる。巻線3-2の下部には第1絶縁部4-31’及び第2絶縁部4-32が設けられる。なお、静止誘導器100には、巻線3-1及び巻線3-3の少なくとも1つに、第1絶縁部4-31及び第2絶縁部4-32が設けられていればよい。
以下では、図2~5を参照して、巻線3、第1絶縁部4-31などの構造を詳細に説明する。図2は図1に示す鉄心の斜視図である。図3は図2に示す3つの鉄心脚のそれぞれに巻線が設けられた状態を示す図である。図4は図1に示すIV-IV矢視断面図である。図5は図4に示すV-V矢視断面図である。
鉄心1は、例えば、「E」字状に形成される複数の鋼板をY軸方向に積み重ねて構成されるEコアと「I」字状に形成されるIコアとを組み合わせたものでもよいし、2つの貫通孔が形成された複数の鋼板をY軸方向に積み重ねて構成されるものでもよい。鉄心1は、鉄心ヨーク1a1と、鉄心ヨーク1a2と、3つの鉄心脚1c1,1c2,1c3とを備える。鉄心ヨーク1a1及び鉄心ヨーク1a2のそれぞれは、Z軸方向に伸び、互いにX軸方向に離れて配置される。鉄心ヨーク1a1と鉄心ヨーク1a2との間には、3つの鉄心脚1c1,1c2,1c3が設けられる。3つの鉄心脚1c1,1c2,1c3のそれぞれは、X軸方向に伸び、互いにZ軸方向に離れて配列される。鉄心脚1c1のX軸方向の一端は、鉄心ヨーク1a1に接続される。鉄心脚1c1のX軸方向の他端は、鉄心ヨーク1a2に接続される。これにより、3つの鉄心脚1c1,1c2,1c3と鉄心ヨーク1a1と鉄心ヨーク1a2とが、磁気的に接続される。以下では、3つの鉄心脚1c1,1c2,1c3のそれぞれを区別する必要がない場合、単に鉄心脚1cと称する。
鉄心脚1c1には巻線3-1が設けられる。図5に示すように、巻線3-1は、電線2と、流路形成部材である柱状部材5と、複数の絶縁部材4-1,4-2,4-3,4-4とを備える。以下では、複数の絶縁部材4-1,4-2,4-3,4-4のそれぞれを区別する必要がない場合、単に絶縁部材4と称する。電線2は、銅線、アルミニウム線、アルミニウム合金線などの導電性の配線である。絶縁部材4は例えば絶縁紙である。絶縁紙の厚みは、例えば0.1mmから0.8mmまでの寸法に設定される。なお、絶縁部材4は、絶縁性の材料を用いて製造されるフィルム状の部材であればよく、絶縁紙に限定されない。
巻線3-1は、鉄心脚1c1の外周面1c11を取り囲むように、鉄心脚1c1の周囲に巻かれる電線2と絶縁部材が多層に積層して筒形状に形成されたものである。図5に示す例では、電線2と柱状部材5と複数の絶縁部材4とが、巻線3-1の内側面3Iから外側面3Oに向かって、絶縁部材4-1、電線2、絶縁部材4-2、柱状部材5、絶縁部材4-3、電線2、絶縁部材4-4の順で配列される。巻線3-1の内側面3Iは、巻線3-1の鉄心脚1c1と向き合う面である。向き合うとは、2つの物が互いに見通せる状態にあることを意味する。
柱状部材5は、絶縁部材4-2と絶縁部材4-3との間に設けられている。複数の柱状部材5のそれぞれは、巻線3-1の下端部3Dから上端部3Uに向けて伸びる棒状の部材である。複数の柱状部材5は、電線2が伸びる方向に互いに離れて配列される。電線2が伸びる方向は、図4に矢印D1で示される方向に等しい。柱状部材5は、巻線3-1の内部に冷却媒体201を通過させるための複数の冷媒流路6を形成するための部材である。柱状部材5は、シリコーンゴム、ポリイソブチレンゴム、アクリルゴムなどの絶縁性の樹脂を用いてダイカストにより棒状に製造したものでもよいし、アルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス合金、銅合金、鋳鉄、鋼、鉄合金などの金属を用いてダイカストにより棒状に製造したものでもよい。複数の冷媒流路6のそれぞれは、巻線3-1の下端部3Dから上端部3Uに向けて貫通する。
なお、柱状部材5の位置は、巻線3-1の内部に冷媒流路6を設けることができればよく、図示例の位置に限定されない。また柱状部材5のX軸方向の長さは、巻線3-1の内部に冷媒流路6を設けることができれば、巻線3-1の上端部3Uから下端部3Dまでの長さよりも短くてもよいし、当該長さよりも長くてもよい。また電線2及び絶縁部材4の積層数は、巻線3-1の内部に柱状部材5を設けることができればよく、図示例に限定されない。
絶縁部材4-2は、巻線3-1の径方向において、柱状部材5の内側面5Iに接している。径方向は、YZ平面上で、巻線3-1の内側面3Iと外側面3Oとを結ぶ仮想線D2が伸びる方向に等しい。絶縁部材4-2には第1絶縁部4-31が設けられる。第1絶縁部4-31は、巻線3-1の下端部3Dよりも巻線3-1の下側に突き出ると共に、鉄心脚1c1の外周面1c11の内、第2鉄心脚である鉄心脚1c2と向き合う第1面11以外の面である第2面12を取り囲むように、YZ断面がC字状の部材である。C字状とは、環状部材の一部が開放された形状を意味し、円弧状、コ字状などを含む。なお、図4に示される鉄心脚1c1はYZ断面が四角形状であるため、鉄心脚1c1には、1つの第1面11と、3つの第2面12とが形成される。第1絶縁部4-31は、3つの第2面12と向き合うように配置される。なお、第1絶縁部4-31は、少なくともその一部が3つの第2面12と向き合うように配置されていればよく、例えば、第1絶縁部4-31の、鉄心ヨーク1a2の上側領域の一部が、鉄心脚1c1の第2面12に垂直な法線上に存在していればよい。
また、絶縁部材4-2には、図3及び図4に示すように第2絶縁部4-32が設けられる。第2絶縁部4-32は、第1絶縁部4-31のYZ平面上の端部と、鉄心ヨーク1a2の側面22との間に設けられる部材である。鉄心ヨーク1a2の側面22は、鉄心ヨーク1a2のY軸方向側の端面である。第2絶縁部4-32は、絶縁部材4-2及び第1絶縁部4-31と一体に形成されたものでもよいし、絶縁部材4-2及び第1絶縁部4-31とは別に製造された後に取り付けられたものでもよい。第2絶縁部4-32は、第1絶縁部4-31と同様に、巻線3-1の下端部3Dよりも巻線3-1の下側に突き出ている。さらに、第2絶縁部4-32は、電線2が伸びる方向に沿って、第1絶縁部4-31から鉄心ヨーク1a2に向かって伸びると共に、鉄心脚1c1の第1面11と向き合う。なお、第2絶縁部4-32は、少なくともその一部が鉄心脚1c1の第1面11と向き合うように配置されていればよく、例えば、第2絶縁部4-32の、鉄心ヨーク1a2の側面22側の先端が、鉄心脚1c1の第1面11に垂直な法線上に存在していなくても、鉄心脚1c1の第1面11を見通せる位置に存在していればよい。
鉄心脚1c2には巻線3-2が設けられる。巻線3-2は、巻線3-1と同様に、電線2と絶縁部材4が多層に積層して筒形状に形成されたものである。巻線3-2には、複数の柱状部材5と、第1絶縁部4-31’と、第2絶縁部4-32とが設けられる。巻線3-2に設けられる第1絶縁部4-31’は、鉄心脚1c2の外周面1c21の内、鉄心脚1c1又は鉄心脚1c3と向き合う第1面13以外の第2面14と向き合う位置に設けられる。巻線3-2に設けられる第2絶縁部4-32は、電線2が伸びる方向に沿って、巻線3-2に設けられる第1絶縁部4-31’から鉄心ヨーク1a2に向かって伸びると共に、鉄心脚1c2の第1面13と向き合う。
鉄心脚1c3には巻線3-3が設けられる。巻線3-3は、巻線3-1と同様に、電線2と絶縁部材4が多層に積層して筒形状に形成されたものであり、鉄心脚1c3の外周面1c31を取り囲むように設けられる。巻線3-3には、巻線3-1と同様に、複数の柱状部材5と、第1絶縁部4-31と、第2絶縁部4-32とが設けられる。巻線3-3に設けられる第1絶縁部4-31は、鉄心脚1c3の外周面1c31の内、鉄心脚1c2と向き合う第1面15以外の第2面16と向き合う位置に設けられる。巻線3-3に設けられる第2絶縁部4-32は、電線2が伸びる方向に沿って、第1絶縁部4-31から鉄心ヨーク1a2に向かって伸びると共に、鉄心脚1c3の第1面15と向き合う。
次に図6を用いて、静止誘導器100の巻線3に通電されたときに生じる冷却媒体201の流れについて説明する。図6は図1に示す巻線への通電時に生じる冷却媒体の流れを説明するための図である。なお図6では、説明を簡単化するため、巻線3-1に形成される冷媒流路6に流れる冷却媒体201について説明する。また図6では、図4に示される巻線3-1に設けられる複数の冷媒流路6の内、2つの冷媒流路6のみが示される。図6に示される2つの冷媒流路6の内、一方は、図4に示される鉄心脚1c1のZ軸方向の第2面12と向き合う位置に設けられるものであり、他方は、図4に示される鉄心脚1c1のY軸方向の第2面12と向き合う位置に設けられるものである。なお、巻線3-3に形成される冷媒流路6への冷却媒体201の流れは、巻線3-1に形成される冷媒流路6への冷却媒体201の流れと同様であり、以下ではその説明を割愛する。
通電により巻線3-1の温度が上昇すると、巻線3-1の熱が冷媒流路6の内部に存在する冷却媒体201に伝わり、当該冷却媒体201の温度が上昇する。温度が上昇して高温になった冷却媒体cmhは、巻線3-1の上端部3Uから巻線3-1の外部に排出される。冷却媒体cmhの熱が筐体200の側面板204に伝わることにより、冷却媒体cmhの温度は低下する。このようにして温度が低下することによって低温になった冷却媒体cmhは、冷却媒体cmlとして、筐体200の底板203に向かって下降する。巻線3-1の下端部3Dに到達した冷却媒体cmlは、冷媒流路6の煙突効果により、冷媒流路6の内部へ引き込まれ、巻線3-1の冷却に利用される。
また、断面がC字状の第1絶縁部4-31が、第1絶縁部4-31の径方向の内側に存在する高温の冷却媒体201と、巻線3-1の下端部3Dに形成される冷媒流路6の導入口との間を仕切る壁となり、第1絶縁部4-31の径方向の内側に存在する高温の冷却媒体201が、冷媒流路6に導入されることを抑制できる。
図7は比較例に係る静止誘導器と内部に当該静止誘導器が設けられる筐体とを示す図である。図7に示す静止誘導器100Aは、第1絶縁部4-31及び第2絶縁部4-32の代わりに、第3絶縁部4-31Aを備える。第3絶縁部4-31Aは、図5に示す絶縁部材4-3に設けられている断面がC字状の部材である。図5に示す絶縁部材4-3は、巻線3-1の径方向において、柱状部材5の外側面5Oに接しているため、第3絶縁部4-31Aは、冷媒流路6をX軸方向に伸ばした仮想線よりも、径方向外側に設けられる。このように構成された静止誘導器100Aでは、筐体200の側面板204で冷却されて低温になった冷却媒体cmlが巻線3-1の下端部3Dに到達した場合でも、第3絶縁部4-31Aが、この冷却媒体cmlと、巻線3-1の下端部3Dに形成される冷媒流路6の導入口との間を仕切る壁となり、この冷却媒体cmlが冷媒流路6の内部へ引き込まれない。
また、静止誘導器100Aでは、第3絶縁部4-31Aが、第3絶縁部4-31Aの径方向の内側に存在する高温の冷却媒体201と、巻線3-1の下端部3Dに形成される冷媒流路6の導入口との間を仕切る壁として機能しないため、第3絶縁部4-31Aの径方向の内側に存在する高温の冷却媒体201が、冷媒流路6に導入される。
これに対して実施の形態に係る静止誘導器100は第1絶縁部4-31を備えるため、下降する途中の低温の冷却媒体cmlが巻線3-1の冷却に利用される。従って図7に示す静止誘導器100Aに比べて、巻線3-1の冷却効率が向上する。
なお、本実施の形態に係る静止誘導器100では、第1絶縁部4-31のYZ平面上の端部と鉄心ヨーク1a2の側面22との間に、第2絶縁部4-32が設けられている。そのため、第2絶縁部4-32が、第2絶縁部4-32の径方向の内側に存在する高温の冷却媒体201と、第2絶縁部4-32の径方向外側に形成される冷媒流路6の導入口との間を仕切る壁として機能する。従って、第2絶縁部4-32が設けられていない場合に比べて、第2絶縁部4-32の径方向の内側に存在する高温の冷却媒体201の当該冷媒流路6への流入量が低下し、巻線3の温度上昇が抑制される。
なお、第2絶縁部4-32は、電線2が伸びる方向の先端面21が、鉄心ヨーク1a2の側面22に接するように構成することが望ましい。この構成により、鉄心ヨーク1a2の側面22と第2絶縁部4-32の先端面21との間の隙間を無くすことができる。従って、当該隙間が存在する場合に比べて、第2絶縁部4-32の径方向の内側に存在する高温の冷却媒体201の当該冷媒流路6への流入量がより一層低下し、巻線3の温度上昇がさらに抑制される。
なお、第1絶縁部4-31及び第2絶縁部4-32には、巻線3-1の絶縁部材として広く利用されている絶縁紙を用いることが望ましい。絶縁紙を用いることにより、例えば絶縁性の樹脂を用いてダイカストにより製造される部材を用いる場合に比べて、第1絶縁部4-31及び第2絶縁部4-32の製造コストを低減することができる。
図8は本発明の実施の形態の第1変形例に係る静止誘導器の部分拡大図である。図8に示す静止誘導器100Bでは、図5に示す柱状部材5の代わりに、X軸方向の寸法が柱状部材5よりも長い柱状部材5Aが用いられる。柱状部材5Aの上端部5A2は、巻線3-1の上端部3U付近に位置する。柱状部材5Aの下端部5A1は、第1絶縁部4-31の下端部18付近に位置している。このように、柱状部材5Aは、下端部5A1が巻線3-1の下端部3Dよりも巻線3-1の下側に突き出ている。このように構成された柱状部材5Aを用いることにより、冷却媒体201の流動時に、柱状部材5Aが第1絶縁部4-31の折れ曲がりを防ぐ補強部材として機能する。そのため、第1絶縁部4-31に厚さが薄い絶縁紙などが利用されている場合でも、冷却媒体201の流動によって、第1絶縁部4-31が折れ曲がることを防止できる。従って、第1絶縁部4-31によって、冷却媒体201の冷媒流路6への導入が妨げられずに済み、巻線3-1の冷却効率が低下することを抑制できる。
図9は本発明の実施の形態の第2変形例に係る静止誘導器と内部に静止誘導器が設けられる筐体とを示す図である。図10は図9に示す3つの鉄心脚のそれぞれに巻線が設けられた状態を示す図である。図11は図9に示す巻線、第3絶縁部を含むXZ平面の断面図である。図9に示す筐体200Aの内部には、図1に示す静止誘導器100の代わりに静止誘導器100Cが設けられる。静止誘導器100Cは、図1に示す第1絶縁部4-31、第1絶縁部4-31’及び第2絶縁部4-32に加えて、第3絶縁部4-31B、第3絶縁部4-31B’及び第4絶縁部4-32Bを備える。第3絶縁部4-31B及び第4絶縁部4-32Bは巻線3-1の上部に設けられる。巻線3-3の上部にも第3絶縁部4-31B及び第4絶縁部4-32Bが設けられる。巻線3-2の上部には第3絶縁部4-31’A及び第4絶縁部4-32Bが設けられる。なお、静止誘導器100Cには、巻線3-1及び巻線3-3の少なくとも1つに、第3絶縁部4-31B及び第4絶縁部4-32Bが設けられていればよい。
図11には、巻線3-1に設けられる第3絶縁部4-31Bの断面が示される。絶縁部材4-3には、第3絶縁部4-31Bが設けられる。図11に示すように、第3絶縁部4-31Bは、巻線3-1の上端部3Uよりも巻線3-1の上側に突き出る。また、第3絶縁部4-31Bは、第1絶縁部4-31と同様に、図4に示される鉄心脚1c1の第2面12を取り囲むように、YZ断面がC字状の部材である。C字状とは、環状部材の一部が開放された形状を意味し、円弧状、コ字状などを含む。なお、第3絶縁部4-31Bは、少なくともその一部が、図4に示される鉄心脚1c1の3つの第2面12と向き合うように配置されていればよい。例えば、第3絶縁部4-31Bの、鉄心ヨーク1a1の下側領域の一部が、鉄心脚1c1の第2面12に垂直な法線上に存在していればよい。
図11に示す絶縁部材4-3には、図10に示す第4絶縁部4-32Bが設けられる。第4絶縁部4-32Bは、第3絶縁部4-31BのYZ平面上の端部と、鉄心ヨーク1a1の側面22との間に設けられる部材である。鉄心ヨーク1a1の側面22は、鉄心ヨーク1a1のY軸方向側の端面である。第4絶縁部4-32Bは、絶縁部材4-3及び第3絶縁部4-31Bと一体に形成されたものでもよいし、絶縁部材4-3及び第3絶縁部4-31Bとは別に製造された後に取り付けられたものでもよい。第4絶縁部4-32Bは、第3絶縁部4-31Bと同様に、巻線3-1の上端部3Uよりも巻線3-1の上側に突き出ている。さらに、第4絶縁部4-32Bは、電線2が伸びる方向に沿って、第3絶縁部4-31Bから鉄心ヨーク1a1に向かって伸びると共に、図4に示す鉄心脚1c1の第1面11と向き合う。なお、第4絶縁部4-32Bは、その一部が鉄心脚1c1の第1面11と向き合うように配置されていればよく、例えば、第4絶縁部4-32Bの、鉄心ヨーク1a1の側面22側の先端が、鉄心脚1c1の第1面11に垂直な法線上に存在していなくても、鉄心脚1c1の第1面11を見通せる位置に存在していればよい。
図10に示す巻線3-2には、第3絶縁部4-31B’及び第4絶縁部4-32Bが設けられる。巻線3-2に設けられる第3絶縁部4-31B’は、図4に示す鉄心脚1c2の第2面14と向き合う位置に設けられる。巻線3-2に設けられる第4絶縁部4-32Bは、電線2が伸びる方向に沿って、巻線3-2に設けられる第3絶縁部4-31B’から鉄心ヨーク1a1に向かって伸びると共に、図4に示す鉄心脚1c2の第1面13と向き合う。
図10に示す巻線3-3には、第3絶縁部4-31B及び第4絶縁部4-32Bが設けられる。巻線3-3に設けられる第3絶縁部4-31Bは、図4に示す鉄心脚1c3の第2面16と向き合う位置に設けられる。巻線3-3に設けられる第2絶縁部4-32は、電線2が伸びる方向に沿って、巻線3-3に設けられる第3絶縁部4-31Bから鉄心ヨーク1a1に向かって伸びると共に、図4に示す鉄心脚1c3の第1面15と向き合う。
次に図12を用いて、静止誘導器100Cの巻線3に通電されたときに生じる冷却媒体201の流れについて説明する。図12は図9に示す巻線への通電時に生じる冷却媒体の流れを説明するための図である。なお図12では、説明を簡単化するため、巻線3-1に形成される冷媒流路6に流れる冷却媒体201について説明する。また図12では、図9に示される巻線3-1に設けられる複数の冷媒流路6の内、2つの冷媒流路6のみが示される。また図12では、説明を簡単化するために、図9に示される巻線3-1に設けられる第1絶縁部4-31及び第2絶縁部4-32の図示を省略している。
図12に示される2つの冷媒流路6の内、一方は、図4に示される鉄心脚1c1のZ軸方向の第2面12と向き合う位置に設けられるものであり、他方は、図4に示される鉄心脚1c1のY軸方向に第2面12と向き合う位置に設けられるものである。なお、巻線3-3に形成される冷媒流路6への冷却媒体201の流れは、巻線3-1に形成される冷媒流路6への冷却媒体201の流れと同様であり、以下ではその説明を割愛する。
通電により巻線3-1の温度が上昇すると、巻線3-1の熱が冷媒流路6の内部に存在する冷却媒体201に伝わり、当該冷却媒体201の温度が上昇する。温度が上昇して高温になった冷却媒体cmhは、巻線3-1の上端部3Uから巻線3-1の外部に排出される。冷却媒体cmhの熱が筐体200Aの側面板204に伝わることにより、冷却媒体cmhの温度は低下する。このようにして温度が低下することによって低温になった冷却媒体cmhは、冷却媒体cmlとして、筐体200Aの底板203に向かって下降する。底板203に向かって下降する冷却媒体cmlと、天板202に向かって上昇する冷却媒体cmhとの間には、断面がC字状の第3絶縁部4-31Bが存在するため、第3絶縁部4-31Bが冷却媒体cmlと冷却媒体cmhとの間を仕切る壁となり、冷却媒体cmlが冷却媒体cmhに引き寄せられることがない。そして、冷却媒体cmlが筐体200Aの底板203に向かって下降する途中で、冷却媒体cmlの熱が筐体200Aの側面板204に伝わり、筐体200Aの外部に放射されるため、冷却媒体cmlの温度はさらに低下する。このようにして低温になった冷却媒体cmlは、巻線3-1の下端部3Dまで到達すると、冷媒流路6の煙突効果により、冷媒流路6の内部へ引き込まれ、巻線3-1の冷却に利用される。
図13は図9に示す第2変形例の比較例に係る静止誘導器と内部に当該静止誘導器が設けられる筐体とを示す図である。図13に示す静止誘導器100Dは、第3絶縁部4-31B及び第4絶縁部4-32Bの代わりに、第3絶縁部4-31Cを備える。第3絶縁部4-31Cは、鉄心脚1c1の外周面1c11の内、鉄心脚1c1のZ軸方向の第2面12と向き合う位置にのみ設けられる断面が平板形状の部材である。静止誘導器100Dでは、第3絶縁部4-31CがC字状に形成されていないため、筐体200Aの側面板204で冷却されて低温になった冷却媒体cmlは、筐体200Aの底板203に向かって下降する途中で、鉄心脚1c1のY軸方向の第2面12と向き合う位置に形成される冷媒流路6から排出される高温の冷却媒体cmhに引き寄せられ、再び冷媒流路6の上部へ誘導される。従って、図13に示す静止誘導器100Dでは、冷却媒体cmlが、筐体200Aの天板202付近で循環し続けてしまい、巻線3-1の下端部3Dに到達しないため、冷媒流路6の内部に導入されない。
図12に示す静止誘導器100Cは、C字状の第3絶縁部4-31Bを備えるため、下降する途中の低温の冷却媒体cmlが、高温の冷却媒体cmhによって冷媒流路6の上部へ誘導されることを抑制できる。これにより、低温の冷却媒体cmlが巻線3-1の下端部3Dに到達して、巻線3-1の冷却に利用される。その結果、静止誘導器100Cでは、図13に示す静止誘導器100Dに比べて、巻線3-1の冷却効率が向上する。
なお、第3絶縁部4-31Bが、図11に示す柱状部材5の内側面5Iに接する絶縁部材4-2に設けられている場合、図12に示す冷媒流路6は、第3絶縁部4-31Bの径方向の外側に形成される。従って、絶縁部材4-2に第3絶縁部4-31Bが設けられた場合、当該第3絶縁部4-31Bでは、冷却媒体cmlと冷却媒体cmhとの間を仕切ることができない。これに対して、図12に示す静止誘導器100Cでは、第3絶縁部4-31Bが、柱状部材5の外側面5Oに接する絶縁部材4-3に設けられているため、第3絶縁部4-31Bが冷却媒体cmlと冷却媒体cmhとの間を仕切る壁となり、冷却媒体cmlが冷却媒体cmhに引き寄せられることがない。
また、図12に示す静止誘導器100Cでは、第3絶縁部4-31BのYZ平面上の端部と鉄心ヨーク1a1の側面22との間に、第4絶縁部4-32Bが設けられている。そのため、例えば、筐体200Aの側面板204で冷却されて低温になった冷却媒体cmlが、筐体200Aの底板203に向かって下降する途中で、鉄心脚1c1の鉄心脚1c2側の第2面12と向き合う位置に形成される冷媒流路6から排出される高温の冷却媒体cmhに引き寄せられることを抑制できる。従って、図12に示す静止誘導器100Cでは、第4絶縁部4-32Bが設けられていない場合に比べて、冷媒流路6への低温の冷却媒体cmlの導入量が増加し、巻線3の冷却効率が一層向上する。
なお、第4絶縁部4-32Bは、電線2が伸びる方向の先端面が、鉄心ヨーク1a1の側面22に接するように構成することが望ましい。この構成により、鉄心ヨーク1a1の側面22と第4絶縁部4-32Bの先端面との間の隙間を無くすことができる。当該隙間が存在する場合、筐体200Aの側面板204で冷却されて低温になった冷却媒体cmlが、筐体200Aの底板203に向かって下降する途中で、当該隙間から漏れ出る高温の冷却媒体cmhに引き寄せられてしまうが、当該隙間が無くなることにより、冷却媒体cmlが冷却媒体cmhに引き寄せられることを抑制できる。従って、第4絶縁部4-32Bの先端面が鉄心ヨーク1a1の側面22に接していない場合に比べて、冷媒流路6への低温の冷却媒体cmlの導入量が増加し、巻線3の冷却効率がより一層向上する。
なお、第3絶縁部4-31B及び第4絶縁部4-32Bには、巻線3-1の絶縁部材として広く利用されている絶縁紙を用いることが望ましい。絶縁紙を用いることにより、例えば絶縁性の樹脂を用いてダイカストにより製造される部材を用いる場合に比べて、第3絶縁部4-31B及び第4絶縁部4-32Bの製造コストを低減することができる。
図14は本発明の実施の形態の第3変形例に係る静止誘導器の部分拡大図である。図14に示す静止誘導器100Eでは、図11に示す柱状部材5の代わりに、X軸方向の寸法が柱状部材5よりも長い柱状部材5Bが用いられる。柱状部材5Bの下端部5B1は、巻線3-1の下端部3D付近に位置する。柱状部材5Bの上端部5B2は、第3絶縁部4-31Bの上端部17付近に位置している。このように、柱状部材5Bは、上端部5B2が巻線3-1の上端部3Uよりも巻線3-1の上側に突き出ている。柱状部材5Bを用いることにより、冷却媒体201の流動時に、柱状部材5Bが第3絶縁部4-31Bの折れ曲がりを防ぐ補強部材として機能する。そのため、例えば、第3絶縁部4-31Bに厚さが薄い絶縁紙などが利用されている場合でも、冷却媒体201の流動によって、第3絶縁部4-31Bが折れ曲がることを防止できる。従って、第3絶縁部4-31Bによって、図4に示す冷媒流路6からの冷却媒体201の排出が妨げられずに済み、巻線3-1の冷却効率が低下することを抑制できる。
なお、図14に示される柱状部材5Bは、図8に示される柱状部材5Aと同様に、柱状部材5Bの下端部5B1が、巻線3-1の下端部3Dよりも巻線3-1の下側に突き出すように構成してもよい。この場合、柱状部材5Bの下端部5B1は、第1絶縁部4-31の下端部18付近に位置する。このように構成された柱状部材5Bを用いることにより、冷却媒体201の流動時に、柱状部材5Bが第1絶縁部4-31の折れ曲がりを防ぐ補強部材として機能する。そのため、第1絶縁部4-31に厚さが薄い絶縁紙などが利用されている場合でも、冷却媒体201の流動によって、第1絶縁部4-31が折れ曲がることを防止できる。
なお静止誘導器100,100B,100Cには、例えば鉄心脚1c1を第1鉄心脚とし、鉄心脚1c2を第2鉄心脚として、3つの鉄心脚1c1,1c2,1c3を備える鉄心1が利用されているが、例えば、鉄心脚1c1を第1鉄心脚とし、鉄心脚1c3を第2鉄心脚として、2つの鉄心脚1c1,1c3を備える鉄心1を利用してもよい。この場合、静止誘導器100,100B,100Cは、単相型の変圧器として機能する。このように、静止誘導器100,100B,100Cが、単相型の変圧器として構成される場合、鉄心脚1c1に設けられる巻線3-1と、鉄心脚1c3に設けられる巻線3-3との少なくとも1つに、第1絶縁部4-31及び第2絶縁部4-32が設けられていればよい。また、静止誘導器100,100B,100Cが、単相型の変圧器として構成される場合、鉄心脚1c1に設けられる巻線3-1と、鉄心脚1c3に設けられる巻線3-3との少なくとも1つに、第3絶縁部4-31B及び第4絶縁部4-32Bが設けられていればよい。
また本実施の形態では、YZ断面が四角形状の鉄心脚1cを有する鉄心1を用いた静止誘導器100,100B,100Cの構成例について説明したが、鉄心脚1cの形状は、これに限定されず、例えばYZ断面が円柱形状のものでもよい。
また、本実施の形態では、流路形成部材として柱状部材5が用いられているが、冷媒流路6を形成する部材は、径方向に隣接する絶縁部材4の間に冷媒流路6を形成することができる部材であればよく、柱状の部材に限定されない。例えば、図5に示される絶縁部材4-3の絶縁部材4-2側の面に、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに互いに離れて配列される複数の突起を流路形成部材として設けてもよいし、絶縁部材4-2の絶縁部材4-3側の面に当該複数の突起を流路形成部材として設けてもよい。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。