JP7065069B2 - 移動体の制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、操縦者の操縦操作に応じて移動する移動体の制御装置に関する。
従来、この種の移動体の制御装置としては、例えば特許文献1に見られるものが知られている。この装置では、操縦者が移動体を操縦しているときに、移動体と障害物との距離が所定値以下になると、反発力と摩擦力とを設定し、これらの反発力及び摩擦力に応じて、移動体の前進速度とヨーレートとを、操縦者の操縦操作に応じたものから修正することで、移動体が障害物に接触するのを回避するようにしている。
特開平7-110711号公報
しかしながら、特許文献1に見られる技術では、移動体と障害物との距離が前記所定値以下になっても、該距離が該所定値に近い状況では、設定される反発力と摩擦力とが小さいため、上記距離が所定値以下になった直後では、移動体の前進速度とヨーレートを十分に修正できず、ひいては、障害物に対する移動体の回避動作が遅れ易い。
また、移動体が、特許文献1に記載されている車椅子のように、操縦者が搭乗する移動体である場合には、上記距離が所定値以下になった直後では、移動体の移動動作が設定される反発力や摩擦力の影響を受け難いため、操縦者は、障害物に接近し過ぎていることを体感的に認識し難い。このため、特に移動体の移動環境に、バーチャルウォール等の仮想的な障害物が設定される場合、該仮想的な障害物と移動体とが過剰に接近することが頻繁に生じやすい。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、操縦者による操縦操作に応じて移動体を移動させているときに、移動体が障害物に接近し過ぎるのを適切に防止しつつ、該移動体の移動を円滑に行わせることを可能とする制御装置を提供することを目的とする。
本発明の移動体の制御装置の第1の態様は、上記の目的を達成するために、操縦者の操縦操作に応じて移動する移動体の制御装置であって、
前記操縦者の操縦操作に基づく前記移動体の移動指令である基本移動指令を生成する基本移動指令生成部と、
前記移動体の移動環境に存在し、又は該移動環境に設定された障害物と前記移動体との位置関係に応じて、前記基本移動指令を修正する移動指令修正部と、
前記移動指令修正部により修正された基本移動指令である修正後移動指令に応じて前記移動体の移動制御を行う移動制御部とを備えており、
前記移動指令修正部は、前記障害物と前記移動体との距離が第1所定値以下になったとき、前記移動体に、前記障害物から離れる方向のヨーレートを付加的に発生させるように前記基本移動指令を修正するように構成されていると共に、前記距離の減少に対する前記ヨーレートの大きさの増加率を、前記距離が前記第1所定値に近いほど、大きくするように前記基本移動指令を修正するように構成されていることを特徴とする(第1発明)。
なお、本発明における「障害物」は、移動体と実際に接触する可能性のある物体に限らず、移動体の移動環境に仮想的に設定された障害物(バーチャールウォール等の障害物)であってもよい。
また、本発明において、移動体に「付加的に発生させる」ヨーレートというのは、移動体の実際の運動によって発生するヨーレートを、操縦者の操縦操作に応じて規定される移動体の運動によって発生するヨーレートから変化させるヨーレート(操縦者の操縦操作に応じて規定される移動体の運動によって発生するヨーレートからの変化分のヨーレート)を意味する。
また、「前記距離の減少に対する前記ヨーレートの大きさの増加率」というのは、障害物と移動体との距離の単位減少量当たりの、前記ヨーレート(移動体に付加的に発生させるヨーレート)の増加量を意味する。
上記第1発明によれば、障害物と移動体との距離が第1所定値以下になったとき、障害物と移動体との距離の減少に対する、ヨーレート(移動体に付加的に発生させるヨーレートであって、移動体が障害物から離れる方向のヨーレート)の増加率が、前記距離が第1所定値に近いほど、大きくなるように前記基本移動指令が修正される。
このため、前記距離が第1所定値以下になった直後に、移動体に発生するヨーレートを、移動体が障害物から離れる方向に速やかに増加させることが可能となる。ひいては、前記距離が第1所定値以下になった直後から移動体が障害部から離れる方向に円滑に旋回し得るようになって、障害物へのさらなる接近を速やかに回避することが可能となる。
また、移動体が障害物にさらに接近すると、前記ヨーレートの増加率が小さくなるので、障害物に近い位置での移動体の挙動変化を抑制することが可能となる。
よって、第1発明によれば、操縦者による操縦操作に応じて移動体を移動させているときに、移動体が障害物に接近し過ぎるのを適切に防止しつつ、該移動体の移動を円滑に行わせることが可能となる。
上記第1発明では、前記移動指令修正部は、前記移動体に付加的に発生させるヨーレートを、前記距離と、前記障害物に対する前記移動体の向きと、前記移動体の移動速度とに応じて変化させるように前記基本移動指令を修正するように構成されていることが好ましい(第2発明)。
これによれば、移動体に付加的に発生させるヨーレートを、障害物と移動体との距離と、障害物に対する移動体の向きと、移動体の移動速度とを反映させて制御できるため、障害物に移動体が接近し過ぎるのを効果的に防止し得るように、上記ヨーレートを制御することが可能となる。
上記第1発明又は第2発明では、前記移動指令修正部は、さらに、前記距離が前記第1所定値以下になったとき、前記移動体の代表点の移動速度を、前記基本移動指令に応じて規定される移動速度である基本移動速度よりも絶対値が小さい移動速度に制限するように前記基本移動指令を修正するように構成されていると共に、前記距離の減少に対する前記移動速度の制限度合いの増加率を、前記距離が前記第1所定値に近いほど、大きくするように前記基本移動指令を修正するように構成されていることが好ましい(第3発明)。
なお、第3発明において、移動体の「移動速度の制限度合い」というのは、前記基本移動速度と、前記制限後の移動速度との差の大きさの、ある基準値(例えば、前記基本移動速度の大きさ)に対する大小度合いを意味する。
また、「前記距離の減少に対する前記移動速度の制限度合いの増加率」というのは、障害物と移動体との距離の単位減少量当たりの、前記移動速度の制限度合いの増加量を意味する。
上記第3発明によれば、障害物と移動体との距離が第1所定値以下の距離になったとき、障害物と移動体との距離の減少に対する移動速度(移動体の代表点の移動速度)の制限度合いの増加率が、前記距離が第1所定値に近いほど、大きくなるように前記基本移動指令が修正される。
このため、前記距離が第1所定値以下になった直後に、移動体の代表点の移動速度の制限度合いを速やかに増加させることが可能となる。ひいては、前記距離が第1所定値以下になった直後から、移動体の代表点の移動速度を速やかに減速させ、障害物へのさらなる接近を速やかに抑制することが可能となる。
また、移動体が障害物にさらに接近すると、前記移動速度の制限度合いの増加率が小さくなるので、障害物に近い位置での移動体の挙動変化を抑制することが可能となる。
上記第3発明では、前記移動指令修正部は、前記距離が前記第1所定値以下になったとき、前記距離に応じた前記移動速度の制限度合いを示す第1制限度合い指標値を設定する処理と、前記障害物に対する前記移動体の向きに応じた前記移動速度の制限度合いを示す第2制限度合い指標値を設定する処理とを実行し、該第1制限度合い指標値及び該第2制限度合い指標値に応じて前記移動体の代表点の移動速度を制限するように構成されていると共に、前記距離が前記第1所定値よりも小さい第2所定値以下の距離である場合に設定する前記第2制限度合い指標値により示される制限度合いを第A制限度合い、前記距離が前記第2所定値よりも大きい距離である場合に設定する前記第2制限度合い指標値により示される制限度合いを第B制限度合いと定義したとき、前記移動体の向きの可変範囲のうちの少なくとも一部の範囲において、前記第A制限度合いが前記第B制限度合いよりも大きくなるように前記第2制限度合い指標値を設定するように構成されていることが好ましい(第4発明)。
なお、第4発明において、「第1制限度合い指標値」は、前記距離に応じた前記移動速度の制限度合いに対して単調変化する(単調増加又は単調減少)する指標値を意味し、「第2制限度合い指標値」は、前記障害物に対する前記移動体の向きに応じた前記移動速度の制限度合いに対して単調変化する(単調増加又は単調減少)する指標値を意味する。
上記第4発明によれば、障害物に対する移動体の向きの可変範囲のうちの少なくとも一部の範囲において、前記第A制限度合いが前記第B制限度合いよりも大きくなるので、障害物と移動体との距離が第2所定値以下の距離である場合には、該距離が第2所定値よりも大きい距離である場合よりも、移動体の向きの幅広い範囲で、移動体の代表点の移動速度の制限度合いを強めにするように、第2制限度合い指標値を設定できる。
このため、移動体の向きの幅広い範囲で、移動体が前記第2所定値の距離よりも障害物に接近するのを効果的に抑制することが可能となる
上記第1~第4発明の移動体の制御装置は、前記移動体が、前記操縦者が搭乗する搭乗部を有する搭乗型移動体である場合に好適である(第5発明)。すなわち、搭乗型移動体では、障害物と移動体との距離が第1所定値以下になった直後に、移動体が障害物から離反する方向に旋回しようとしたり、あるいは、速やかに減速されるので、障害物が、実体物であるか、仮想的なものであるかによらずに、操縦者は、移動体が障害物に接近し過ぎたことを体感的に容易に認識することが可能となる。従って、操縦者は、障害物へのさらなる接近を回避するように移動体を操縦することを速やかに実施することが可能となる。
また、本発明の移動体の制御装置の第2の態様は、操縦者の操縦操作に応じて移動する移動体の制御装置であって、
前記操縦者の操縦操作に基づく前記移動体の移動指令である基本移動指令を生成する基本移動指令生成部と、
前記移動体の移動環境に存在し、又は該移動環境に設定された障害物と前記移動体との位置関係に応じて、前記基本移動指令を修正する移動指令修正部と、
前記修正された基本移動指令である修正後移動指令に応じて前記移動体の移動制御を行う移動制御部とを備えており、
前記移動指令修正部は、前記障害物と前記移動体との距離が第1所定値以下の距離になったとき、前記移動体の代表点の移動速度を、前記基本移動指令に応じて規定される移動速度である基本移動速度よりも絶対値が小さい移動速度に制限するように前記基本移動指令を修正するように構成されていると共に、前記距離の減少に対する前記移動速度の制限度合いの増加率を、前記距離が前記第1所定値に近いほど、大きくするように前記基本移動指令を修正するように構成されていることを特徴とする(第発明)。
なお、上記第発明において、移動体の「移動速度の制限度合い」の意味と、「前記距離の減少に対する前記移動速度の制限度合いの増加率」の意味とは、前記第3発明と同じである。
上記第発明によれば、前記第3発明と同様に、障害物と移動体との距離が第1所定値以下になった直後に、移動体の代表点の移動速度の制限度合いを速やかに増加させることが可能となる。ひいては、前記距離が第1所定値以下になった直後から、移動体の代表点の移動速度を速やかに減速させ、障害物へのさらなる接近を速やかに抑制することが可能となる。
また、移動体が障害物にさらに接近すると、前記移動速度の制限度合いの増加率が小さくなるので、障害物に近い位置での移動体の挙動変化を抑制することが可能となる。
よって、第発明によれば、操縦者による操縦操作に応じて移動体を移動させているときに、移動体が障害物に接近し過ぎるのを適切に防止しつつ、該移動体の移動を円滑に行わせることが可能となる。
上記第発明では、前記移動指令修正部は、前記第4発明と同じ態様を採用し得る(第発明)。これにより第4発明と同様の効果を得ることが可能となる。
上記第~第発明の移動体の制御装置は、前記移動体が、前記操縦者が搭乗する搭乗部を有する搭乗型移動体である場合に好適である(第発明)。すなわち、搭乗型移動体では、障害物と移動体との距離が第1所定値以下になった直後に、移動体が障害物から離反する方向に旋回しようとしたり、あるいは、速やかに減速されるので、障害物が、実体物であるか、仮想的なものであるかによらずに、操縦者は、移動体が障害物に接近し過ぎたことを体感的に容易に認識することが可能となる。従って、操縦者は、障害物へのさらなる接近を回避するように移動体を操縦することを速やかに実施することが可能となる。
本発明の実施形態の移動体としての倒立振子型車両の斜視図。 実施形態の倒立振子型車両の側面図。 実施形態の倒立振子型車両の制御に係る構成を示すブロック図。 図3に示す移動制御部の要部の処理を示すブロック線図。 図3に示す移動制御部の処理に用いる倒立振子モデルを説明するための図。 図4に示す重心ずれ推定部の処理を示すブロック線図。 図4に示す速度制限係数設定部及びヨーレート指令設定部の処理に関する説明図。 図4に示す速度制限係数設定部の処理を示すブロック線図。 図8に示す第1制限率設定部の処理を説明するためのグラフ。 図10A及び図10Bは、図8に示す第2制限率設定部の処理を説明するためのグラフ。 図11A及び図11Bは、図8に示す第2制限率設定部の処理を説明するためのグラフ。 図12A及び図12Bは、図8に示す第2制限率設定部の処理を説明するためのグラフ。 図13A及び図13Bは、図8に示す第2制限率設定部の処理を説明するためのグラフ。 図4に示すヨーレート指令設定部の処理を示すブロック線図。 図15Aは、図14に示すヨーレート基本値設定部の処理を説明するためのグラフ、図15Bは図14に示す速度係数設定部の処理を説明するためのグラフ。
本発明の一実施形態を図1~図15Bを参照して以下に説明する。図1及び図2に示すように、本実施形態の移動体1は、例えば、搭乗型の移動体としての倒立振子型車両である。以降、本実施形態の説明では、移動体1を車両1という。この車両1は、基体2と、床面上を全方向に移動可能な移動動作部3と、移動動作部3の後方に配置された尾輪4と、車両1の操縦者が搭乗する搭乗部5とを備える。なお、「床面」は通常の意味での床面に限らず、地面、路面等であってもよい。
移動動作部3は、本実施形態では、例えば特開2015-093651号公報等に見られる如き車輪状の移動動作部である。この移動動作部3は、その構成を概略的に説明すると、図2に示す円環状の芯体6(以下、環状芯体6という)と、この環状芯体6の円周方向(軸心周り方向)に等角度間隔で並ぶようにして該環状芯体6に装着された複数の円環状のローラ7とを備え、下端部に位置するローラ7を介して床面上に接地される。そして、環状芯体6の回転駆動と、ローラ7の回転駆動との両方又は一方を行うことで、移動動作部3は、床面上を全方向に移動することが可能である。かかる移動動作部3の詳細な構成は、特開2015-093651号公報等にて詳細に説明されているので、本明細書での詳細な説明は省略する。
以降の説明では、図1及び図2に示す如く、車両1の前後方向をX軸方向、車両1の左右方向をY軸方向、上下方向(鉛直方向もしくはほぼ鉛直な方向)をZ軸方向とする3軸直交座標系を想定し、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、特に記載のない限り、当該座標系の各座標軸方向を意味する。この場合、X軸方向(車両1の前後方向)は、床面上で起立させた状態の移動動作部3の環状芯体6を回転駆動したときに該移動動作部3が転動する方向、Y軸方向(車両1の左右方向)は、起立状態の移動動作部3の環状芯体6の軸心の方向である。なお、X軸の正方向は、車両1の前方向、Y軸の正方向は車両1の左方向、Z軸の正方向は上方向である。また、X軸周りの方向、Y軸周りの方向、Z軸周りの方向をそれぞれ、ロール方向、ピッチ方向、ヨー方向と称する。
基体2には、上記移動動作部3が組み付けられている。該基体2は、床面に接地させた移動動作部3の下部を除く部分の周囲を覆うように設けられている。そして、この基体2に移動動作部3の環状芯体6が、その軸心周りで回転自在に支持されている。この場合、基体2は、移動動作部3の環状芯体6の軸心を支点として、ピッチ方向に傾動自在であると共に、移動動作部3と共に床面に対して傾くことで、移動動作部3の接地部を支点として、ロール方向に傾動自在である。
また、基体2の内部には、移動動作部3を移動させる駆動力を発生するアクチュエータ8が搭載されている。このアクチュエータ8は、環状芯体6を回転駆動するアクチュエータとしての電動モータ8aと、各ローラ7を回転駆動するアクチュエータとしての電動モータ8bとから構成される。そして、電動モータ8a,8bは、それぞれ図示を省略する動力伝達機構を介して環状芯体6、各ローラ7に回転駆動力を付与する。この動力伝達機構としては、例えば、特開2015-093651号公報等にて説明されている公知の構造のものを採用し得る。
なお、移動動作部3は、上記の構造と異なる構造のものであってもよい。例えば、移動動作部3及びその駆動系の構造として、PCT国際公開公報WO/2008/132778、あるいは、PCT国際公開公報WO/2008/132779に記載された構造のものを採用し得る。
また、基体2には、操縦者が搭乗する搭乗部5が組み付けられている。この搭乗部5は、操縦者が着座するシートにより構成されており、基体2と一体に傾動し得るように該基体2の上端部に固定されている。
基体2には、さらに搭乗部5に着座した操縦者がその足を載せる一対の足載せ部9,9と、操縦者が把持する一対の把持部10,10とが組み付けられている。足載せ部9,9は、基体2の両側部の下部に突設されている。なお、図1及び図2では、一方側(右側)の足載せ部9の図示は省略されている。
また、把持部10,10は、搭乗部5の両側にX軸方向(前後方向)に延在して配置されたバー状のものであり、それぞれ、基体2から延設されたロッド11を介して基体2に固定されている。そして、把持部10,10のうちの一方の把持部10(図では右側の把持部10)には、車両1の操縦操作用の操作器としてのジョイスティック12がピッチ方向及びロール方向に揺動し得るように取り付けられている。
尾輪4は、例えばオムニホイール(登録商標)、もしくは自在キャスター等により構成され、アーム15を介して基体2又は移動動作部3に連結されている。アーム15は、その先端部が移動動作部3の環状芯体6の軸心周りに揺動し得るように基体2又は移動動作部3に軸支されており、基体2の後方に向かって延設されている。なお、アーム15は、基体2に設けられたストッパ16,16の間の範囲内で揺動することが可能である。そして、尾輪4は、移動動作部3の後方で床面に接地して、該移動動作部3の移動に応じて床面上を移動し、もしくは転回し得るようにアーム15の後端部に取り付けられている。なお、尾輪4は、バネ等により、床面に押し付けられる方向に付勢されていてもよい。
図1及び図2での図示は省略したが、本実施形態の車両1の基体2には、該車両1の動作制御(移動動作部3の移動制御)のための構成として、図3に示すように、制御装置20と、基体2の3軸方向の加速度を検出する加速度センサ50と、3軸周りの角速度を検出する角速度センサ51と、電動モータ8aの回転速度を検出する回転速度センサ52aと、電動モータ8bの回転速度を検出する回転速度センサ52bとが搭載されている。回転速度センサ52a,52bは、例えば、ロータリエンコーダ、レゾルバ等により構成され得る。
制御装置20は、例えば、マイクロコンピュータもしくはプロセッサ、メモリ、インターフェース回路等を含む一つ以上の電子回路ユニットにより構成される。この制御装置20には、ジョイスティック12の出力(操作信号)と、加速度センサ50、角速度センサ51及び回転速度センサ52a,52bの各検出信号とが入力される。また、制御装置20は、図示しない外部のサーバ等と無線通信を行うことが可能である。
そして、制御装置20は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)の一方又は両方により実現される一つの機能として、慣性センサとしての加速度センサ50及び角速度センサ51のそれぞれの検出信号から、ストラップダウン方式等の公知の慣性航法手法により車両1の自己位置を計測したり、基体2の傾斜角度(=搭乗部5の傾斜角度)を計測する機能を有する。
なお、車両1の自己位置の計測処理では、慣性航法の手法に限らず、例えばGNSS(Global Navigation Satellite System)を用いてもよく、あるいは、車両1に搭載された外界センサ(カメラ、測距センサ)等の検出情報や車両1の移動環境に設置されたカメラの撮影情報を用いてもよい。また、車両1の位置を計測する処理を外部のサーバで実行してもよい。
また、制御装置20は、外部のサーバと通信を行うことで、該サーバから車両1の周囲に存在する障害物の位置を示す障害物情報を取得することが可能である。なお、障害物は、車両1と実際に接触する可能性のある物体(静止物体もしくは移動物体)に限らず、車両1の進入禁止領域の境界等に仮想的に設定される仮想壁(バーチャルウォール)等の仮想的な障害物であってもよい。また、障害物情報は、例えば、車両1に搭載された外界センサ(カメラ、測距センサ)等の検出情報や車両1の移動環境に設置されたカメラの撮影情報等を用いて、制御装置20自身が認識し得るようにしてもよい。
制御装置20はさらに、アクチュエータ8としての電動モータ8a,8bを制御することで移動動作部3の移動動作を制御する移動制御部21としての機能を備えている。この移動制御部21は、後述する演算処理を実行することで、移動動作部3の移動速度(詳しくは、X軸方向の並進速度とY軸方向の並進速度との組)の目標値である目標速度を逐次算出し、移動動作部3の実際の移動速度を、該目標速度に一致させるように電動モータ8a,8bの回転速度の目標値を決定する。そして、移動制御部21は、電動モータ8a,8bの回転速度を、移動動作部3の目標速度に応じて規定される目標値にフィードバック制御することで、移動動作部3の実際の移動速度を目標速度に一致させるように制御する。
次に、上記移動制御部21による処理をさらに詳細に説明する。移動制御部21は、図4に示すように、その主要な機能部として、ジョイスティック12から入力される操作信号により示される該ジョイスティック12の前後方向の揺動量(ピッチ方向の回転量)Js_x及び左右方向の揺動量(ロール方向の回転量)Js_yの組を車両1の移動のための速度指令に変換する操作指令変換部31と、車両1の全体重心(以降、車両系全体重心という)の目標速度Vb_cmd_xyを決定する重心目標速度決定部32と、車両系全体重心の実際の速度Vbを推定する重心速度推定部33と、車両系全体重心の速度Vbを目標速度Vb_cmd_xyに追従させつつ、搭乗部5の姿勢(基体2の姿勢)を安定化するように移動動作部3の目標速度Vw1_cmd_xyを決定する姿勢制御演算部34と、車両系全体重心の後述する重心ずれ量Ofst_xyを推定する重心ずれ推定部35と、該重心ずれ量Ofst_xyに起因する後述する重心ずれ影響量Vofs_xyを算出する重心ずれ影響量算出部36とを備える。
なお、本実施形態では、車両系全体重心の速度が、本発明における「移動体の代表点の移動速度」に相当し、車両系全体重心の目標速度Vb_cmd_xyが本発明における移動指令に相当する。そして、重心目標速度決定部32は、本発明における基本移動指令生成部及び移動指令修正部としての機能を含む。
そして、移動制御部21は、これらの各機能部の処理を所定の演算処理周期で逐次実行することで、移動動作部3の目標速度Vw1_cmd_xyを決定する。なお、本実施形態の説明において、搭乗部5の姿勢(基体2の姿勢)を安定化するというのは、車両系全体重心を倒立振子質点のようにバランスさせることを意味する。
また、本実施形態の説明では、添え字“_x”を付する参照符号は、車両1をY軸方向から見た場合(ZX平面に投影して見た場合)の車両1の挙動に関する状態量もしくはパラメータを意味し、添え字“_y”を付する参照符号は、車両1をX軸方向から見た場合(YZ平面に投影して見た場合)の車両1の挙動に関する状態量もしくはパラメータを意味する。
そして、添え字“_xy”を付する参照符号は、車両1をX軸方向から見た場合の状態量もしくはパラメータと、車両1をY軸方向から見た場合の状態量もしくはパラメータとの組を意味する。例えば、移動動作部3の目標速度Vw1_cmd_xyは、車両1をY軸方向から見た場合の移動動作部3の目標速度Vw1_cmd_x(すなわち、X軸方向の目標速度)と、車両1をX軸方向から見た場合の移動動作部3の目標速度Vw1_cmd_y(すなわち、Y軸方向の目標速度)との組を意味する。
ここで、移動制御部21の各機能部の処理を具体的に説明する前に、その処理の基礎となる事項を説明しておく。車両系全体重心の動力学的な挙動(詳しくは、Y軸方向から見た挙動と、X軸方向から見た挙動)は、近似的に、図5に示すような倒立振子モデルの挙動により表現される。移動制御部21の処理のアルゴリズムは、この挙動を基礎として構築されている。
なお、図5では、Y軸方向から見た場合の倒立振子モデルと、X軸方向から見た場合の倒立振子モデルとを併せて図示するために、Y軸方向から見た場合の変数の参照符号には括弧を付さず、X軸方向から見た場合の変数の参照符号に括弧を付している。
Y軸方向から見た車両系全体重心の挙動を表す倒立振子モデルは、Y軸方向と平行な回転軸心を有して床面上を輪転自在な仮想的な車輪61_x(以降、仮想車輪61_xという)と、該仮想車輪61_xの回転中心から延設されて、該仮想車輪61_xの回転軸周りに(Y軸周り方向に)揺動自在なロッド62_xと、このロッド62_xの先端部(上端部)である基準部Ps_xに連結された質点Ga_xとを備える。
この倒立振子モデルでは、質点Ga_xの運動が、Y軸方向から見た車両系全体重心の運動に相当し、鉛直方向に対するロッド62_xの傾斜角度θb_x(Y軸周り方向の傾斜角度)が、搭乗部5(又は基体2)のY軸周り方向の傾斜角度に一致する。また、移動動作部3のX軸方向の並進運動が、仮想車輪61_xの輪転によるX軸方向の並進運動に相当する。
そして、仮想車輪61_xの半径r_xと、基準部Ps_x及び質点Ga_xの床面からの高さh_xとは、あらかじめ設定された既定値(一定値)である。
同様に、X軸方向から見た車両系全体重心の挙動を表す倒立振子モデルは、X軸方向と平行な回転軸心を有して床面上を輪転自在な仮想的な車輪61_y(以降、仮想車輪61_yという)と、該仮想車輪61_yの回転中心から延設されて、該仮想車輪61_yの回転軸周りに(X軸周り方向に)揺動自在なロッド62_yと、このロッド62_yの先端部(上端部)である基準部Ps_yに連結された質点Ga_yとを備える。
この倒立振子モデルでは、質点Ga_yの運動が、X軸方向から見た車両系全体重心の運動に相当し、鉛直方向に対するロッド62_yの傾斜角度θb_y(X軸周り方向の傾斜角度)が、搭乗部5(又は基体2)のX軸周り方向の傾斜角度に一致する。また、移動動作部3のY軸方向の並進運動が、仮想車輪61_yの輪転によるY軸方向の並進運動に相当する。
そして、仮想車輪61_yの半径r_yと、基準部Ps_y及び質点Ga_yの床面からの高さh_yとは、あらかじめ設定された既定値(一定値)である。なお、X軸方向で見た基準部Ps_y及び質点Ga_yの床面からの高さh_yは、Y軸方向で見た基準部Ps_x及び質点Ga_xの床面からの高さh_xと同じである。そこで、以降、h_x=h_y=hとおく。
ここで、Y軸方向から見た場合の上記基準部Ps_xと質点Ga_xとの位置関係について補足すると、基準部Ps_xの位置は、搭乗部5に搭乗(着座)した操縦者が、該搭乗部5に対して予め定められた中立姿勢のまま不動であると仮定した場合における車両系全体重心の位置に相当している。
従って、この場合には、質点Ga_xの位置は、基準部Ps_xの位置に一致する。このことは、X軸方向から見た場合の上記基準部Ps_yと質点Ga_yとの位置関係ついても同様である。
ただし、実際には、搭乗部5に搭乗した操縦者が、その上体等を搭乗部5(又は基体2)に対して動かすことで、実際の車両系全体重心のX軸方向の位置及びY軸方向の位置は、一般には、それぞれ基準部Ps_x,Ps_yの位置から水平方向にずれることとなる。このため、図5では、質点Ga_x,Ga_yの位置をそれぞれ基準部Ps_x,Ps_yの位置からずらした状態で示している。
上記のような倒立振子モデルで表現される車両系全体重心の挙動は、次式(1a),(1b),(2a),(2b)により表現される。式(1a),(1b)は、Y軸方向で見た挙動、式(2a),(2b)は、X軸方向で見た挙動を表している。
Vb_x=Vw1_x+h・ωb_x ……(1a)
dVb_x/dt=(g/h)・(θb_x・(h-r_x)+Ofst_x)+ωz・Vb_y ……(1b)
Vb_y=Vw1_y+h_y・ωb_y ……(2a)
dVb_y/dt=(g/h)・(θb_y・(h-r_y)+Ofst_y)-ωz・Vb_x ……(2b)
ここで、Vb_xは、車両系全体重心のX軸方向の速度(並進速度)、θb_xは搭乗部5(又は基体2)のY軸周り方向の傾斜角度、Vw1_xは、仮想車輪61_xのX軸方向の移動速度(並進速度)、ωb_xはθb_xの時間的変化率(=dθb_x/dt)、Ofst_xは車両系全体重心のX軸方向の位置(質点Ga_xのX軸方向の位置)の、前記基準部Ps_xの位置からのX軸方向のずれ量、Vb_yは、車両系全体重心のY軸方向の速度(並進速度)、Vw1_yは、仮想車輪61_yのY軸方向の移動速度(並進速度)、θb_yは搭乗部5(又は基体2)のX軸周り方向の傾斜角度、ωb_yはθb_yの時間的変化率(=dθb_y/dt)、Ofst_yは車両系全体重心のY軸方向の位置(質点Ga_yのY軸方向の位置)の、前記基準部Ps_yの位置からのY軸方向のずれ量である。また、ωzは車両1の旋回時のヨーレート(ヨー軸周り方向の角速度)、gは重力加速度定数である。
なお、式(1a),(1b),(2a),(2b)では、θb_x、ωb_xの正方向は、車両系全体重心がX軸の正方向(前向き)に傾く方向、θb_y、ωb_yの正方向は、車両系全体重心がY軸の正方向(左向き)に傾く方向である。また、ωzの正方向は、車両1を上方から見た場合に、反時計回り方向である。
本実施形態では、移動制御部21の処理のアルゴリズムは、上記のように車両系全体重心の基準部Ps_x,Ps_yからのずれ量と、遠心力とを考慮した車両系全体重心の挙動モデル(倒立振子モデル)に基づいて構築されている。
以上を前提として、移動制御部21の処理をより具体的に説明する。図4を参照して、移動制御部21は、各演算処理周期において、まず、操作指令変換部31の処理と、重心速度推定部33の処理とを実行する。
操作指令変換部31は、ジョイスティック12のピッチ方向の揺動量(前方への揺動量又は後方への揺動量)に応じて、X軸方向での移動動作部3の移動速度(並進速度)の基本指令値である基本速度指令Vjs_xを決定し、ジョイスティック12のロール方向の揺動量(左方向への揺動量又は右方向への揺動量)に応じて、Y軸方向での移動動作部3の移動速度(並進速度)の基本指令値である基本速度指令Vjs_yを決定する。
この場合、X軸方向の基本速度指令Vjs_xの向き(極性)は、ピッチ方向でのジョイスティック12の揺動の方向(前方向又は後方向)に応じて決定され、基本速度指令Vjs_xの大きさは、ピッチ方向でのジョイスティック12の揺動量に応じて決定される。同様に、Y軸方向の基本速度指令Vjs_yの向き(極性)は、ロール方向でのジョイスティック12の揺動の方向(左方向又は右方向)に応じて決定され、基本速度指令Vjs_yの大きさは、ロール方向でのジョイスティック12の揺動量に応じて決定される。
補足すると、本実施形態では、基本速度指令Vjs_xyを設定するための操作器として、ジョイスティック12を例示した。ただし、基本速度指令Vjs_xyの設定操作を行うための操作器はジョイスティック12以外の操作器であってもよい。例えば、操縦者が所持するスマートフォン等の携帯端末と通信し得るように制御装置20が構成されている場合には、該携帯端末を、基本速度指令Vjs_xyの設定操作のための操作器として利用することも可能である。
前記重心速度推定部33は、前記式(1a),(2a)に表される運動学的な関係式に基づいて、車両系全体重心の速度Vbの推定値Vb_estm1_xyを算出する。具体的には、図4に示す如く、移動動作部3の実際の並進速度Vw1_act_xyの値と、搭乗部5の傾斜角度θb_xyの実際の時間的変化率(傾斜角速度)ωb_act_xyに、車両系全体重心の高さhを乗じてなる値とから、次式(3a),(3b)により車両系全体重心の速度Vbの推定値Vb_estm1_xyが算出される。
Vb_estm1_x=Vw1_act_x+h・ωb_act_x ……(3a)
Vb_estm1_y=Vw1_act_y+h・ωb_act_y ……(3b)
この場合、上記演算におけるVw1_act_x,Vw1_act_yの値としては、本実施形態では、前回の演算処理周期で姿勢制御演算部34により決定された移動動作部3の目標速度Vw1_cmd_x,Vw1_cmd_y(前回値)が用いられる。ただし、例えば、電動モータ8a,8bのそれぞれの回転速度を回転速度センサ52a,52bにより検出し、それらの検出値から推定したVw1_act_x,Vw1_act_yの最新値を式(3a),(3b)の演算に用いてもよい。
また、ωb_act_x,ωb_act_yの値としては、本実施形態では、加速度センサ50及び角速度センサ51の検出信号に基づく搭乗部5の傾斜角度θb_x,θb_yの計測値の時間的変化率の最新値(換言すれば、ωb_act_x,ωb_act_yの計測値の最新値)が用いられる。
移動制御部21は、上記の如く操作指令変換部31及び重心速度推定部33の処理を実行した後、次に、図4に示す重心ずれ推定部35の処理を実行することで、前記重心ずれ量Ofst_xyの推定値である重心ずれ量推定値Ofst_estm_xyを決定する。なお、重心ずれ推定部35に関する以降の説明では、重心速度推定部33により算出された車両系全体重心の速度の推定値Vb_estm1_x,Vb_estm1_yをそれぞれ第1推定値Vb_estm1_x,Vb_estm1_yと称する。
重心ずれ推定部35の処理は、本実施形態では、例えば図6のブロック線図で示す如く実行される。なお、図6は、重心ずれ量推定値Ofst_estm_xyのうちのX軸方向の重心ずれ量推定値Ofst_estm_xの決定処理を代表的に表している。
図6の処理を具体的に説明すると、重心ずれ推定部35は、加速度センサ50及び角速度センサ51の検出信号から得られた搭乗部5のY軸周り方向の実際の傾斜角度θb_act_xの計測値(最新値)及び車両1の実際のヨーレートωz_actの計測値(最新値)と、重心速度推定部33により算出された車両系全体重心のY軸方向の速度の第1推定値Vb_estm1_y(最新値)と、前回の演算処理周期で決定したX軸方向の重心ずれ量推定値Ofst_estm_x(前回値)とを用いて、前記式(1b)の右辺の演算処理を演算部35aで実行することにより、車両系全体重心のX軸方向の並進加速度の推定値DVb_estm_xを算出する。
さらに重心ずれ推定部35は、車両系全体重心のX軸方向の並進加速度の推定値DVb_estm_xを積分する処理を演算部35bで実行することにより、車両系全体重心のX軸方向の速度の第2推定値Vb_estm2_xを算出する。
次いで、重心ずれ推定部35は、車両系全体重心のX軸方向の速度の第2推定値Vb_estm2_x(最新値)と、第1推定値Vb_estm1_x(最新値)との偏差を算出する処理を演算部35cで実行する。
さらに、重心ずれ推定部35は、この偏差に所定値のゲイン(-Kp)を乗じる処理を演算部35dで実行することにより、X軸方向の重心ずれ量推定値Ofst_estm_xの最新値を決定する。
Y軸方向の重心ずれ量推定値Ofst_estm_yの決定処理も上記と同様に実行される。具体的には、この決定処理を示すブロック線図は、図6中の添え字“_x”と“_y”とを入れ替え、加算器35eへの入力の一つである図中右側の加速度成分(遠心力によって発生する加速度成分)の符号“+”を“-”に置き換えることによって得られる。
移動制御部21は、次に、図4に示す重心ずれ影響量算出部36の処理を実行することによって、重心ずれ影響量Vofs_xyを算出する。重心ずれ影響量Vofs_xyは、後述する姿勢制御演算部34において、車両系全体重心の位置が倒立振子モデルにおける前記基準部Ps_xyの位置からずれることを考慮せずにフィードバック制御を行った場合の車両系全体重心の目標速度に対する実際の速度のずれを表す。
この重心ずれ影響量算出部36は、新たに決定された重心ずれ量推定値Ofst_estm_xyの各成分に、(Kth_xy/(h-r_xy))/Kvb_xyという値を乗じることにより、重心ずれ影響量Vofs_xyを算出する。
なお、Kth_xyは、後述する姿勢制御演算部34の処理において、搭乗部5の傾斜角度をゼロに近づけるように機能する操作量成分を決定するためのゲイン値である。また、Kvb_xyは、後述する姿勢制御演算部34の処理において、車両系全体重心の目標速度Vb_cmd_xyと該車両系全体重心の速度の第1推定値Vb_estm1_xyとの偏差をゼロに近づけるように機能する操作量成分を決定するためのゲイン値である。
移動制御部21は、次に、図4に示す重心目標速度決定部32の処理を実行することによって、各演算処理周期毎の車両系全体重心の目標速度Vb_cmd_xy(以降、重心目標速度Vb_cmd_xyという)を決定する。
この場合、重心目標速度決定部32は、まず、操作指令変換部31により決定された基本速度指令Vjs_xy(最新値)と、重心ずれ影響量算出部36により決定された重心ずれ影響量Vofs_xy(最新値)とから、重心目標速度Vb_cmd_xyの基本値V1_xyを決定する。該基本値V1_xyは、ジョイスティック12の操作と、操縦者の上体の動きに伴う重心ずれ量推定値Ofst_estm_xyとに応じた車両系全体重心の速度の要求値に相当するものである。以降、基本値V1_xyを重心速度基本要求値V1_xyという。
具体的には、重心目標速度決定部32は、重心ずれ影響量Vofs_xyに対する不感帯処理とリミット処理とを処理部32aで実行することで、重心速度基本要求値V1_xyのうちの重心ずれ量推定値Ofst_estm_xyに応じた成分としての重心速度加算量Vb_cmd_by_ofs_xyを決定する。
さらに詳細には、本実施形態では、重心目標速度決定部32は、X軸方向の重心ずれ影響量Vofs_xの大きさがゼロ近辺の所定の範囲である不感帯域内の値(比較的ゼロに近い値)である場合には、X軸方向の重心速度加算量Vb_cmd_by_ofs_xをゼロにする。
また、重心目標速度決定部32は、X軸方向の重心ずれ影響量Vofs_xの大きさが不感帯域内から逸脱した値である場合には、X軸方向の重心速度加算量Vb_cmd_by_ofs_xを、Vofs_xと同極性で、その大きさが、Vofs_xの大きさの増加に伴い大きくなるように決定 する。ただし、重心速度加算量Vb_cmd_by_ofs_xの値は、所定の上限値(>0)と下限値(≦0)との間の範囲内に制限される。Y軸方向の重心速度加算量Vb_cmd_by_ofs_yの決定処理も上記と同様である。
次いで、重心目標速度決定部32は、操作指令変換部31により決定された基本速度指令Vjs_xyの各成分に重心速度加算量Vb_cmd_by_ofs_xyの各成分を加え合わせる処理を処理部32bで実行することで、重心速度基本要求値V1_xyを算出する。すなわち、V1_x=Vjs_x+Vb_cmd_by_ofs_x、V1_y=Vjs_y+Vb_cmd_by_ofs_yという処理によって、重心速度基本要求値V1_xy(V1_x,V1_yの組)を決定する。
補足すると、本実施形態の車両1では、ジョイスティック12の操作と、操縦者の上体の動き(体重移動)に伴う重心ずれ量Ofst_xyの変化とが車両1の操縦操作に相当する。また、重心速度基本要求値V1_xyが、本発明における基本移動指令に相当する。そして、重心目標速度決定部32のうち、処理部32a及び32bの処理が、本発明における基本移動指令生成部の処理に相当する。
重心目標速度決定部32は、さらに、外部のサーバ等から取得した障害物情報と、自己位置の計測値とから特定される車両1と障害物との位置関係に応じて、重心速度基本要求値V1_xyに制限を加えるための速度制限係数α_xy(α_x、α_yの組)を速度制限係数設定部32cで設定すると共に、車両1に付加的に発生させるヨーレートの指令値としてのヨーレート指令ωz_cmdをヨーレート指令設定部32dで設定する。
速度制限係数α_xyのX軸方向成分及びY軸方向成分は、重心速度基本要求値V1_xyのX軸方向成分及びY軸方向成分に各々制限を加えるために該重心速度基本要求値V1_xyのX軸方向成分及びY軸方向成分に各々乗じる係数であり、“0”から“1”までの範囲内の値である。
上記速度制限係数設定部32cには、障害物と車両1との位置関係を示す情報として、車両1と障害物との間の距離dと、障害物に対する車両1の向きを示す方位角φとが入力される。これらの距離d及び方位角φは、外部のサーバ等から取得された障害物情報と、自己位置の計測値とから特定される。
ここで、図7を参照して、本実施形態では、上記距離dは、車両1の代表点Pa(例えば移動動作部3の接地点等)と障害物との間の最短距離、方位角φは、距離dの方向に対する車両1の前後方向(X軸方向)の傾斜角度(ヨー方向での傾斜角度)である。なお、図7では、車両1を模式化して記載している。
この場合、上記方位角φは、車両1の前後方向(X軸方向)が距離dの方向に一致し、且つ、車両1の正面前方(X軸の正方向)に障害物が存在する場合にゼロである。また、車両1の正面前方の方向が、距離dの方向から反時計回り方向に傾いている場合の方位角φの極性が正、距離dの方向から時計回り方向に傾いている場合の方位角φの極性が負である。従って、方位角φは、-180°と+180°との間の範囲の角度である。なお、図7に示す例では、φ>0である。
速度制限係数設定部32cは、入力された距離d及び方位角φから、図8のブロック線図で示す処理を実行することで、速度制限係数α_xyを決定する。具体的には、速度制限係数設定部32cは、入力された距離dに応じて第1制限率β(d)を設定する処理を第1制限率設定部32c1で実行すると共に、入力された方位角φに応じて第2制限率β(φ)を設定する処理を第2制限率設定部32c2で実行する。
第1制限率β(d)及び第2制限率β(φ)は、それぞれ、重心速度基本要求値V1_xyに対する重心目標速度Vb_cmd_xの制限度合いの要求を示すパラメータであり、本実施形態では“0”から“1”までの範囲内の値に設定される。そして、β(d),β(φ)のそれぞれは、その値が大きいほど(“1”に近いほど)、重心目標速度Vb_cmd_xyを重心速度基本要求値V1_xyよりも“0”に近づけることの要求が高い(V1_xyに対するVb_cmd_xyの制限度合いを大きくすることの要求が高い)ことを表す。
第1制限率設定部32c1は、上記第1制限率β(d)を、速度制限係数設定部32cに入力された距離dから、あらかじめ作成されたマップもしくは演算式により、例えば図9のグラフで示す形態で設定する。すなわち、距離dが所定値d1よりも大きい場合(車両1が障害物から十分に離れている場合)には、第1制限率β(d)は、ゼロに設定される。そして、距離dが所定値d1と所定値d2(<d1)との間の範囲内である場合と、距離dが所定値d2と所定値d3(<d2)との間の範囲内である場合とでは、距離dの減少に伴い、第1制限率β(d)が“0”から“1”まで増加するように設定される。そして、距離dが所定値d3以下である場合には、第1制限率β(d)は“1”に維持される
この場合、d1~d2の範囲では、d2~d3の範囲よりも、距離dの減少に対する第1制限率β(d)の増加率(距離dの単位減少量当たりのβ(d)の増加量)が大きくなるように、第1制限率β(d)が設定される。従って、d1~d3の範囲では、距離dの減少に対する第1制限率β(d)の増加率が距離dの減少に伴い、小さくなるように第1制限率β(d)が設定される。
補足すると、上記の如く設定される第1制限率β(d)が本発明における第1制限度合い指標値に相当する。また、距離dの所定値d1が本発明における第1所定値に相当する。
第2制限率設定部32c2が設定する第2制限率β(φ)は、X軸方向で前向きの(正極性の)重心速度基本要求値V1_xを制限するための第2制限値率β(φ)_fd_xと、X軸方向で後ろ向きの(負極性の)重心速度基本要求値V1_xを制限するための第2制限値率β(φ)_bk_xと、Y軸方向で左向きの(正極性の)重心速度基本要求値V1_yを制限するための第2制限率β(φ)_L_yと、Y軸方向で右向きの(負極性の)重心速度基本要求値V1_yを制限するための第2制限値率β(φ)_R_yとからなる。
そして、第2制限率設定部32c2は、これらの第2制限率β(φ)_fd_x,β(φ)_bk_x,β(φ)_L_y,β(φ)_R_yを、速度制限係数設定部32cに入力された方位角φと距離dとから、あらかじめ作成されたマップもしくは演算式により設定する。
具体的には、第2制限率設定部32c2は、距離dが前記所定値d3よりも大きい場合(換言すれば、前記第1制限率β(d)が“1”よりも小さい値に設定される場合)には、β(φ)_fd_x,β(φ)_bk_x,β(φ)_L_y,β(φ)_R_yを、それぞれ、基本的には、例えば図10A、図11A、図12A,図13Aのグラフで示す関数形態で方位角φに応じて設定する。ただし、第2制限率β(φ)_fd_x,β(φ)_bk_x,β(φ)_L_y,β(φ)_R_yは、いずれも、“0”よりも若干大きい所定値が下限値β(φ)_lowとされる。
この場合、前向きの重心速度基本要求値V1_x(>0)に対する第2制限率β(φ)_fd_xは、基本的には、図10Aのグラフで示す如く、方位角φが-90°~+90°の範囲では、φが0°に近づくに伴い、“0”から“1”まで増加し、-90°~-180°の範囲及び+90°~+180°の範囲では、“0”になるという関数形態で設定される。ただし、第2制限率β(φ)_fd_xは、当該関数形態で設定された値が所定の下限値β(φ)_lowよりも小さい場合には、該下限値β(φ)_lowに制限される。
また、後ろ向きの重心速度基本要求値V1_x(<0)に対する第2制限率β(φ)_bk_xは、基本的には、図11Aのグラフで示す如く、方位角φが-90°~+90°の範囲では、“0”になり、-90°~-180°範囲及び+90°~+180°の範囲では、方位角φの大きさ(絶対値)が大きくなるに伴い、“0”から“1”まで増加するという関数形態で設定される。ただし、第2制限率β(φ)_bk_xは、当該関数形態で設定された
値が所定の下限値β(φ)_lowよりも小さい場合には、該下限値β(φ)_lowに制限される。
また、左向きの重心速度基本要求値V1_y(>0)に対する第2制限率β(φ)_L_yは、基本的には、図12Aのグラフで示す如く、方位角φが0°~-180°の範囲では、φが-90°に近づくに伴い、“0”から“1”まで増加し、0°以上の範囲では、“0”になるという関数形態で設定される。ただし、第2制限率β(φ)_L_yは、当該関数形態で設定された値が所定の下限値β(φ)_lowよりも小さい場合には、該下限値β(φ)_lowに制限される。
また、右向きの重心速度基本要求値V1_y(<0)に対する第2制限率β(φ)_R_yは、基本的には、図13Aのグラフで示す如く、方位角φが0°~+180°の範囲では、φが+90°に近づくに伴い、“0”から“1”まで増加し、0°以下の範囲では、“0”になるという関数形態で設定される。ただし、第2制限率β(φ)_R_yは、当該関数形態で設定された値が所定の下限値β(φ)_lowよりも小さい場合には、該下限値β(φ)_lowに制限される。
また、第2制限率設定部32c2は、距離dが前記所定値d3以下である場合(換言すれば、前記第1制限率β(d)が“1”に設定される場合)には、第2制限率β(φ)_fd_x,β(φ)_bk_x,β(φ)_L_y,β(φ)_R_yを、それぞれ、基本的には、例えば図10B、図11B、図12B,図13Bのグラフで示す関数態様で方位角φに応じて設定する。
この場合、前向きの重心速度基本要求値V1_x(>0)に対する第2制限率β(φ)_fd_xは、基本的には、図10Bのグラフで示す如く、方位角φが-90°~+90°の範囲では、 “1”になり、-90°~-180°範囲及び+90°~+180°の範囲では、φの大きさ(絶対値)が小さくなるに伴い、“0”から“1”まで増加するという関数形態で設定される。ただし、第2制限率β(φ)_fd_xは、当該関数形態で設定された値が所定の下限値β(φ)_lowよりも小さい場合には、該下限値β(φ)_lowに制限される。
また、後ろ向きの重心速度基本要求値V1_x(<0)に対する第2制限率β(φ)_bk_xは、基本的には、図11Bのグラフで示す如く、方位角φの大きさ(絶対値)が“0”から大きくなるに伴い、 “0”から“1”まで増加するという関数形態で設定される。ただし、第2制限率β(φ)_bk_xは、当該関数形態で設定された値が所定の下限値β(φ)_lowよりも小さい場合には、該下限値β(φ)_lowに制限される。
また、左向きの重心速度基本要求値V1_y(>0)に対する第2制限率β(φ)_L_yは、基本的には、図12Bのグラフで示す如く、方位角φが0°~-180°の範囲では、“1”になり、0°~+180°の範囲では、φと+90°との差の大きさ(絶対値)が大きくなるに伴い、“0”から“1”まで増加するという関数形態で設定される。ただし、第2制限率β(φ)_L_yは、当該関数形態で設定された値が所定の下限値β(φ)_lowよりも小さい場合には、該下限値β(φ)_lowに制限される。
また、右向きの重心速度基本要求値V1_y(<0)に対する第2制限率β(φ)_R_yは、基本的には、図13Bのグラフで示す如く、方位角φが0°~+180°の範囲では、“1”になり、0°~-180°の範囲では、φと-90°との差の大きさ(絶対値)が大きくなるに伴い、“0”から“1”まで増加するという関数形態で設定される。ただし、第2制限率β(φ)_R_yは、当該関数形態で設定された値が所定の下限値β(φ)_lowよりも小さい場合には、該下限値β(φ)_lowに制限される。
距離dが前記所定値d3以下である場合には、第2制限率β(φ)_fd_x,β(φ)_bk_x,β(φ)_L_y,β(φ)_R_yが上記の如く方位角φに応じて設定されるので、d≦d3である場合の第2制限率β(φ)_fd_x,β(φ)_bk_x,β(φ)_L_y,β(φ)_R_yのそれぞれは、d>d3である場合よりも、“1”もしくはそれに近い値になるφの範囲が拡大する(換言すれば、下限値β(φ)_lowもしくはそれに近い値になるφの範囲が縮小する)。
補足すると、上記の如く設定される第2制限率β(φ)が本発明における第2制限度合い指標値に相当する。また、距離dに関する所定値d3が本発明における第2所定値に相当する。
速度制限係数設定部32cは、上記の如く第1制限率β(d)及び第2制限率β(φ)(β(φ)_fd_x,β(φ)_bk_x,β(φ)_L_y,β(φ)_R_y)を決定した後、第1制限率β(d)と、第2制限値β(φ)とを掛け合わせる処理を処理部32c3で実行することにより、X軸方向及びY軸方向のそれぞれの速度に関する合成制限率β1_xy(β1_x,β1_yの組)を算出する。
具体的には、処理部32c3では、X軸方向の重心速度基本要求値V1_xが前向きの速度である場合には、β1_x=β(d)・β(φ)_fd_xという演算により、X軸方向の速度に関する合成制限率β1_xが算出され、X軸方向の重心速度基本要求値V1_xが後向きの速度である場合には、β1_x=β(d)・β(φ)_bk_xという演算により、X軸方向の速度に関する合成制限率β1_xが算出される。
また、Y軸方向の重心速度基本要求値V1_yが左向きの速度である場合には、β1_y=β(d)・β(φ)_L_yという演算により、Y軸方向の速度に関する合成制限率β1_yが算出され、Y軸方向の重心速度基本要求値V1_yが右向きの速度である場合には、β1_y=β(d)・β(φ)_R_yという演算により、Y軸方向の速度に関する合成制限率β1_yが算出される。なお、処理部32c3で算出される合成制限率β1_xyは、暫定値であるので、以降、暫定合成制限率β1_xyという。
次いで、速度制限係数設定部32cは、暫定合成制限率β1_xyに対するリミット処理をレートリミッタ32c4で施すことによって、前記速度制限係数α_xyを決定するために実際に用いる合成制限率である確定合成制限率β2_xyを決定する。このレートリミッタ32c4で実行するリミット処理は、確定合成制限率β2_xyの時間的変化率(単位時間当たりの変化量)を制限するための処理である。
該リミット処理では、移動制御部21の今回の(現在の)演算処理周期で算出された暫定合成制限率β1_xyと、前回の演算処理周期で決定された確定合成制限率β2_xy_pとの各成分毎の偏差Δβ_xy(Δβ_x=β1_x-β2_x_p、Δβ_y=β1_y-β2_y_p)の絶対値が、各々、所定の上限値Δβmax_xy以下の範囲に収まっているか否かが判断される。
そして、今回の(現在の)演算処理周期での確定合成制限率β2_xyのうちのβ2_xは、Δβ_xyのうちのΔβ_xの絶対値が上限値Δβmax_x以下の範囲に収まっているか否かに応じて次のように決定される。すなわち、Δβ_xの絶対値が上限値Δβmax_x以下の範囲に収まっている場合には、処理部32c3で算出された暫定合成制限率β1_xが、そのまま今回の演算処理周期での確定合成制限率β2_xとして決定される。
また、Δβ_xの絶対値が上限値Δβmax_xよりも大きい場合には、今回の演算処理周期での確定合成制限率β2_xは、前回の演算処理周期での確定合成制限率β2_x_pに、Δβmax_x又は-Δβmax_xを加算した値に制限される。より詳しくは、Δβ_x<-Δβmax_xである場合には、β2_x=β2_x_p-Δβmax_xという演算により、今回の演算処理周期での確定合成制限率β2_xが決定され、Δβ_x>Δβmax_xである場合には、β2_x=β2_x_p+Δβmax_xという演算により、今回の演算処理周期での確定合成制限率β2_xが決定される。
また、今回の(現在の)演算処理周期での確定合成制限率β2_xyのうちのβ2_yは、Δβ_xyのうちのΔβ_yの絶対値が上限値Δβmax_y以下の範囲に収まっているか否かに応じて上記と同様に決定される。上記のように確定合成制限率β2_xyが決定されることで、該確定合成制限率β2_xyは、急激な変化が抑制されつつ、暫定合成制限率β1_xyに収束していくように決定される。
次いで、速度制限係数設定部32cは、上記の如く決定した確定合成制限率β2_xyの各成分を“1”から減算する処理を処理部32c5で実行することにより、前記速度制限係数α_xyを決定する。すなわち、α_x=1-β2_x、α_y=1-β2_yという演算により速度制限係数α_xyの各成分が決定される。
従って、速度制限係数α_xyのうちのα_xは、確定合成制限率β2_xが大きいほど(換言すれば、X軸方向の重心速度基本要求値V1_xに対する重心目標速度Vb_cmd_xの制限度合いを大きくすることの要求が高いほど)、小さくなるように(“0”に近づくように)決定される。
同様に、速度制限係数α_xyのうちのα_yは、確定合成制限率β2_yが大きいほど(換言すれば、Y軸方向の重心速度基本要求値V1_yに対する重心目標速度Vb_cmd_yの制限度合いを大きくすることの要求が高いほど)、小さくなるように(“0”に近づくように)決定される。
ヨーレート指令設定部32dには、障害物と車両1との位置関係を示す情報として、車両1と障害物との間の距離dと、障害物に対する車両1の向きを示す方位角φとが入力されることに加えて、さらに、重心速度推定部33で算出された車両系全体重心のX軸方向の速度推定値Vb_estm1_xが入力される。そして、ヨーレート指令設定部32dは、入力された方位角φ、距離d及び車両系全体重心のX軸方向の速度Vb_xの推定値Vb_estm1_xから、図14のブロック線図で示す処理を実行することで、ヨーレート指令ωz_cmdを決定する。
具体的には、ヨーレート指令設定部32dは、入力された方位角φに応じて、ヨーレート指令ωz_cmdの基本値であるヨーレート基本値ωz_cmd1を設定する処理をヨーレート基本値設定部32d1で実行する。この場合、ヨーレート基本値設定部32d1は、ヨーレート基本値ωz_cmd1を、ヨーレート指令設定部32dに入力された方位角φから、あらかじめ作成されたマップもしくは演算式により、例えば図15Aのグラフで示す形態で設定する。すなわち、方位角φが+90°よりも若干大きい所定値+φ1から+180°までの範囲である場合、あるいは、-φ1から-180°までの範囲である場合には、ヨーレート基本値ωz_cmd1は“0に設定される。
また、方位角φが0°よりも若干大きい所定値+φ2から+φ1までの範囲である場合には、方位角φが+φ2に近づくに伴い、ヨーレート基本値ωz_cmd1が正方向(上方から見て反時計回り方向)に増加するように設定される。また、方位角φが-φ2から-φ1までの範囲である場合には、方位角φが-φ2に近づくに伴い、ヨーレート基本値ωz_cmd1が負方向(上方から見て時計回り方向)に増加するように設定される。
さらに、方位角が-φ2~+φ2の範囲である場合には、ヨーレート基本値ωz_cmd1は、-φ2に対応する負の値から+φ2に対応する正の値まで連続的に変化するように設定される。これは、方位角φがゼロ近辺で変化するときに、ヨーレート基本値ω_cmd1が不連続的に変化するのを防止するためである。
上記のようにヨーレート基本値ωz_cmd1を方位角φに応じて設定することで、ωz_cmd1は、-φ1~+φ1の範囲で、車両1の前方の向きを障害物から離す方向の角速度を車両1に発生させるように設定される。
ヨーレート指令設定部32dは、さらに、入力された距離dから前記第1制限率β(d)を設定する処理を、第1制限率設定部32d2で設定すると共に、入力された速度推定値Vb_estm1_xから速度係数k(Vb_x)を設定する処理を速度係数設定部32d3で実行する。この場合、第1制限率設定部32d2の処理は、前記速度制限係数設定部32cの第1制限率設定部32c1の処理と同じである。従って、距離dがd1~d3の範囲では、距離dの減少に対する第1制限率β(d)の増加率が距離dの減少に伴い、小さくなるように第1制限率β(d)が設定される。
なお、ヨーレート指令設定部32dで設定する第1制限率β(d)の距離dに対する変化のパターンは、速度制限係数設定部32cで設定する第1制限率β(d)の距離dに対する変化のパターンと完全に一致していなくてもよい。例えばd1~d3の範囲でのβ(d)の増加率の大きさ等が、ヨーレート指令設定部32dで設定する第1制限率β(d)と、速度制限係数設定部32cで設定する第1制限率β(d)とで異なっていてもよい。
前記速度係数k(Vb_x)は、“0”から“1”までの範囲内の値であり、速度係数設定部32d3は、この速度係数k(Vb_x)を、入力された速度推定値Vb_estm1_xから、あらかじめ作成されたマップもしくは演算式により、例えば図15Bのグラフで示す形態で設定する。
具体的には、速度推定値Vb_estm1_xが所定値V1以下であるときには、速度係数k(Vb_x)は“0”に設定され、所定値V1から所定値V2(>V1)の範囲では、速度推定値Vb_estm1_x の増加に伴い、速度係数k(Vb_x)は“0”から“1”まで増加するように設定される。そして、所定値V2以上では、速度係数k(Vb_x)は“1”に維持される。
ヨーレート指令設定部32dは、上記の如く方位角φに応じて設定したヨーレート基本値ωz_cmd1に、距離dに応じて設定した第1制限率β(d)と、速度推定値Vb_estm1_xに応じて設定した速度係数k(Vb_x)とを乗じる処理を処理部32d4で実行することで、ヨーレート指令ωz_cmdを決定する。
図4の説明に戻って、重心目標速度決定部32は、上記のように決定されたヨーレート指令ωz_cmdに、車両1の移動動作部3の接地部と尾輪4の接地部との間の距離Lを乗じる処理を処理部32eで実行することによって、ヨーレート指令ωz_cmdのヨーレートを車両1に付加的に発生させるために必要な車両系全体重心のY軸方向の速度V4_y(以降、ヨーレート付加用速度V4_yという)を算出する。
また、重心目標速度決定部32は、上記の如く重心速度基本要求値V1_xyと、速度制限係数α_xyを決定した後、V1_xyの各成分にα_xyの各成分を乗じる処理を処理部32fで実行することにより、重心目標速度Vb_cmd_xyの第1暫定値としての第1暫定重心目標速度V2_xyを算出する。すなわち、V2_x=V1_x・α_x、V2_y=V1_y・α_yという演算により、第1暫定重心目標速度V2_xyの各成分が算出される。
次いで、重心目標速度決定部32は、第1暫定重心目標速度V2_xyに対するリミット処理を処理部32gで施すことによって、重心目標速度Vb_cmd_xyの第2暫定値としての第2暫定重心目標速度V3_xyを決定する。この処理部32gでのリミット処理は、移動動作部3のアクチュエータ8としての電動モータ8a,8bのそれぞれの回転速度が所定の許容範囲から逸脱しないようにすると共に、X軸方向の重心目標速度Vb_cmd_xを、ゼロ近辺の負の所定値又はゼロを下限値とする範囲に制限するように第2暫定重心目標速度V3_xyを決定する処理である。
このリミット処理では、処理部32fで算出された第1暫定重心目標速度V2_x,V2_yの組が、例えば、V2_xの値を縦軸、V2_yの値を横軸とする座標系上で所定の領域内に在る場合には、第1暫定重心目標速度V2_xyがそのまま第2暫定重心目標速度V3_ xyとして決定される。
また、処理部32fで算出された第1暫定重心目標速度V2_x,V2_yの組が、上記座標系上の所定の領域から逸脱している場合には、該所定の領域の境界上のV2_x,V2_yの値の組に制限したものが、第2暫定重心目標速度V3 _xyとして決定される。
次いで、重心目標速度決定部32は、第2暫定重心目標速度V3_xyに、前記ヨーレート付加用速度V4_yを加える処理を処理部32hで実行することで、重心目標速度Vb_cmd_xyを決定する。具体的には、X軸方向の第2暫定重心目標速度V3_xがそのまま、X軸方向の重心目標速度Vb_cmd_xとして決定されると共に、Y軸方向の第2暫定重心目標速度V3_yにヨーレート付加用速度V4_yを加えたもの(=V3_y+V4_y)がY軸方向の重心目標速度Vb_cmd_yとして決定される。
補足すると、本実施形態の車両1では、重心目標速度決定部32のうち、速度制限係数設定部32c、ヨーレート指令設定部32d、及び処理部32e,32f,32hの処理が本発明における移動指令修正部の処理に相当する。
以上の如く重心目標速度決定部32の処理を実行した後、移動制御部21は、次に、姿勢制御演算部34の処理を実行する。この姿勢制御演算部34は、図4のブロック線図で示す処理によって、搭乗部5及び基体2の姿勢を安定化するように、移動動作部3の目標速度Vw1_cmd_xyを決定する。
より詳しくは、姿勢制御演算部34は、まず、前記重心目標速度Vb_cmd_xyの各成分から、重心ずれ影響量Vofs_xyの各成分を減じる処理を演算部34aで実行することにより、重心ずれ補償後目標速度Vb_cmpn_cmd_xy(重心ずれの影響を補償してなる目標速度)を決定する。
次いで、姿勢制御演算部34は、移動動作部3の接地点の並進加速度の目標値である目標並進加速度DVw1_cmd_xyのうちのX軸方向の目標並進加速度DVw1_cmd_xと、Y軸方向の目標並進加速度DVw1_cmd_yとをそれぞれ次式(4a),(4b)の演算により算出する。この演算処理が、図4に示す姿勢制御演算部34のうち、上記演算部34aと、積分演算を行う積分演算部34bとを除く演算部の処理である。
DVw1_cmd_x=Kvb_x・(Vb_cmpn_cmd_x-Vb_estm1_x)
-Kth_x・θb_act_x-Kw_x・ωb_act_x ……(4a)
DVw1_cmd_y=Kvb_y・(Vb_cmpn_cmd_y-Vb_estm1_y)
-Kth_y・θb_act_y-Kw_y・ωb_act_y ……(4b)
式(4a),(4b)におけるKvb_xy、Kth_xy、Kw_xyはあらかじめ設定された所定のゲイン値である。また、式(4a)の右辺の第1項は、車両系全体重心のX軸方向の重心ずれ補償後目標速度Vb_cmpn_cmd_x(最新値)と車両系全体重心の速度の第1推定値Vb_estm1_x(最新値)との偏差に応じたフィードバック操作量成分、第2項は、搭乗部5のY軸周り方向の実際の傾斜角度θb_act_xの計測値(最新値)に応じたフィードバック操作量成分、第3項は、搭乗部5のY軸周り方向の実際の傾斜角速度ωb_act_xの計測値(最新値)応じたフィードバック操作量成分である。そして、X軸方向の目標並進加速度DVw1_cmd_xは、これらのフィードバック操作量成分の合成操作量として算出される。
同様に、式(4b)の右辺の第1項は、車両系全体重心のY軸方向の重心ずれ補償後目標速度Vb_cmpn_cmd_y(最新値)と車両系全体重心の速度の第1推定値Vb_estm1_y(最新値)との偏差に応じたフィードバック操作量成分、第2項は、搭乗部5のX軸周り方向の実際の傾斜角度θb_act_yの計測値(最新値)に応じたフィードバック操作量成分、第3項は、搭乗部5のX軸周り方向の実際の傾斜角速度ωb_act_yの計測値(最新値)に応じたフィードバック操作量成分である。そして、Y軸方向の目標並進加速度DVw1_cmd_yは、これらのフィードバック操作量成分の合成操作量として算出される。なお、前記式(4a),(4b)はそれぞれ、次式(4a)’、(4b)’に書き換えることができる。
DVw1_cmd_x=Kvb_x・(Vb_cmd_x-Vb_estm1_x)
-Kth_x・(Ofst_estm_x/(h-r_x)+θb_act_x)
-Kw_x・ωb_act_x ……(4a)’
DVw1_cmd_y=Kvb_y・(Vb_cmd_y-Vb_estm1_y)
-Kth_y・(Ofst_estm_y/(h-r_y)+θb_act_y)
-Kw_y・ωb_act_y ……(4b)’
この場合、式(4a)’、(4b)’の右辺第2項は、X軸方向及びY軸方向における実際の車両系全体重心の位置が、移動動作部3の接地部の直上の位置になるようにするためのフィードバック操作量成分としての意味を持つ。
次いで、姿勢制御演算部34は、積分演算部34bによって、目標並進加速度DVw1_cmd_xyの各成分を積分することによって、移動動作部3の目標速度Vw1_cmd1_xy(最新値)を決定する。
移動制御部21で移動動作部3の目標速度Vw1_cmd1_xyを決定する処理は、各演算処理周期において、以上の如く実行される。この処理によって、移動動作部3の目標速度Vw1_cmd1_xyは、車両1の搭乗部5及び基体2の姿勢を安定に保ちつつ、車両系全体重心の移動速度(水平方向の移動速度)を重心目標速度Vb_cmd_xyに収束させることを実現し得るように決定される。そして、移動制御部21は、このように決定された目標速度Vw1_cmd_xyに移動動作部3の実際の移動速度を追従させるように、電動モータ8a,8bをフィードバック制御する。
以上説明した実施形態によれば、車両1の操作器としてのジョイスティック12の操作に応じて設定される前記基本速度指令Vjs_xyと、操縦者の上体の動き(体重移動)に伴なう前記重心ずれ影響量Vofs_xy(または、重心ずれ量Ofst_xy)とに応じて、車両1の代表点の目標速度の基本値としての重心速度基本要求値V1_xyが決定される。そして、基本的には、重心速度基本要求値V1_xyを重心目標速度Vb_cmd_xyとして設定し、この重心目標速度Vb_cmd_xyを実現するように、移動動作部3の移動動作が制御される。このため、操縦者は、操作器の操作(ジョイスティック12の操作)と、操縦者の上体の動き(体重移動)とのうちの一方又は両方によって、車両1を操縦することができる。
ただし、車両1と障害物との間の距離dが所定値d1以下になると、前記したように速度制限係数α_xyが設定されると共に、ヨーレート指令ωz_cmdが設定される。そして、速度制限係数α_xyに応じて、重心目標速度Vb_cmd_xyが重心速度基本要求値V1_xyに対して制限されると共に、ヨーレート指令ωz_cmdのヨーレートを車両1に付加的に発生させるためのヨーレート付加用速度V4_yが重心目標速度Vb_cmd_xyに付加される。
この場合、速度制限係数α_xyの設定用の第1制限率β(d)が、前記した如く図9のグラフで示す如き形態で距離dに応じて設定されるため、距離dが所定値d1以下になった直後に、第1制限率β(d)が速やかに増加する(ひいては、速度制限係数α_xyのX軸方向成分及びY軸方向成分)が速やかに小さくなる)。
このため、重心目標速度Vb_cmd_xyの各成分が重心速度基本要求値V1_xyの各成分よりも絶対値が小さい速度に速やかに制限される。従って、距離dが所定値d1以下になった直後に、車両1が速やかに減速して、障害物にさらに接近するのを適切に抑制することができる。
また、速度制限係数α_xyは、距離dと、障害物に対する車両1の方位角φとに応じて設定されるので、距離dと方位角φとに適した態様で、重心目標速度Vb_cmd_xyの各成分が重心速度基本要求値V1_xyの各成分に対して制限することができる。
さらに、方位角φに応じて設定される第2制限率β(φ)は、距離dが所定値d3よりも小さい場合(すなわち、車両1が障害物の近くまで移動した場合)には、距離dが所定値d3よりも大きい場合よりも、方位角φの幅広い範囲で、“1”もしくはそれに近い値に設定される。このため、車両1の方位角φの幅広い範囲で、車両1が障害物にさらに接近することを抑制する効果を高めることができる。
一方で、距離dが所定値d3よりも大きい場合には、第2制限率β(φ)が“1”もしくはそれに近い値に設定される方位角φの範囲が、距離dが所定値d3以下である場合に比して小さくなるので、操縦者が車両1を動かし得る方向の自由度を高めることができる。
また、ヨーレート指令ωz_cmdの設定用の第1制限率β(d)が、前記した如く図9のグラフで示す如き形態で距離dに応じて設定されるため、距離dが所定値d1以下になった直後に、ヨーレート指令ωz_cmdの大きさが、車両1が障害物から離れる方向で速やかに増加する。このため、距離dが所定値d1以下になった直後に、車両1を障害物から離す方向のヨーレートが車両1に付加的に発生するように移動動作部3の移動制御が行われる。これにより、車両1が障害物に接近しにくくなって、該障害物にさらに接近するのを適切に抑制することができる。
また、ヨーレート指令ωz_cmdは、距離d及び方位角φに加えて、X軸方向での車両系重心の速度推定値Vb_estm1_x(車両1の代表点の速度)に応じて設定されるため、車両1が障害物に接近する際の様々な動作状態に対して、障害物に対するさらなる接近を抑制する上で、好適なヨーレート指令ωz_cmdを設定して、車両1の移動を制御することができる。
さらに、前記実施形態では、距離dが所定値d1以下になると、上記のように、車両系全体重心の速度が速やかに制限され、また、ヨーレート指令ωz_cmdのヨーレートが車両1に付加的に速やかに発生するように移動動作部3の移動制御が行われるので、操縦者は、障害物が実体物であるか仮想的なものであるかによらずに、車両1が障害物に接近し過ぎたことを速やかに体感的に認識することができる。このため、操縦者は、車両1が障害物に近づき過ぎないように車両1の移動操縦を行うことが適切に実施できる。
なお、本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではない。以下に他の実施形態をいくつか説明する。前記実施形態では、重心目標速度Vb_cmd_xyの元となる重心速度基本要求値V1_xyは、操縦者による操作器の操作(ジョイスティック12の操作)と、操縦者の上体の動き(体重移動)とに応じて設定される。ただし、重心速度基本要求値V1_xyは、操縦者による操作器の操作(ジョイスティック12の操作)と、操縦者の上体の動き(体重移動)とのうちのいずれか一方だけに応じて設定してもよい。
また、前記実施形態では、車両1と障害物との間の距離dに応じた第1制限率β(d)と、障害物に対する車両1の方位角φに応じた第2制限率β(φ)_xyとを各別に決定した上で、それらを統合した合成制限率(暫定合成制限率)β1_xyを決定した。ただし、例えば、距離dと方位角φとから、マップ等を用いて、直接的に合成制限率β1_x,β1_yのそれぞれ(あるいは、1-β1_x及び1-β1_yのそれぞれ)を決定するようにしてもよい。
前記実施形態では、車両1の代表点として車両系全体重心を用いたが、該代表点は、例えば移動動作部3の代表点であってもよい。また、前記実施形態では、移動体として倒立振子型の車両1を例示したが、本発明における移動体は、例えば、電動車椅子、電動カート等の移動体であってもよく、さらには、操縦者が搭乗しないタイプの移動体(操縦者が遠隔操縦を行う移動体)であってもよい。また、移動体の搭乗部は、操縦者が着座可能な搭乗部に限らず、例えば、操縦者が起立して搭乗し得るように構成されていてもよい。
1…車両(移動体)、5…搭乗部、20…制御装置、21…移動制御部、32…重心目標速度決定部(基本移動指令生成部、移動指令修正部)。

Claims (5)

  1. 操縦者の操縦操作に応じて移動する移動体の制御装置であって、
    前記操縦者の操縦操作に基づく前記移動体の移動指令である基本移動指令を生成する基本移動指令生成部と、
    前記移動体の移動環境に存在し、又は該移動環境に設定された障害物と前記移動体との位置関係に応じて、前記基本移動指令を修正する移動指令修正部と、
    前記移動指令修正部により修正された基本移動指令である修正後移動指令に応じて前記移動体の移動制御を行う移動制御部とを備えており、
    前記移動指令修正部は、前記障害物と前記移動体との距離が第1所定値以下になったとき、前記移動体に、前記障害物から離れる方向のヨーレートを付加的に発生させるように前記基本移動指令を修正するように構成されていると共に、前記距離の減少に対する前記ヨーレートの大きさの増加率を、前記距離が前記第1所定値に近いほど、大きくするように前記基本移動指令を修正するように構成されていることを特徴とする移動体の制御装置。
  2. 請求項1記載の移動体の制御装置において、
    前記移動指令修正部は、前記移動体に付加的に発生させるヨーレートを、前記距離と、前記障害物に対する前記移動体の向きと、前記移動体の移動速度とに応じて変化させるように前記基本移動指令を修正するように構成されていることを特徴とする移動体の制御装置。
  3. 請求項1又は2記載の移動体の制御装置において、
    前記移動指令修正部は、さらに、前記距離が前記第1所定値以下になったとき、前記移動体の代表点の移動速度を、前記基本移動指令に応じて規定される移動速度である基本移動速度よりも絶対値が小さい移動速度に制限するように前記基本移動指令を修正するように構成されていると共に、前記距離の減少に対する前記移動速度の制限度合いの増加率を、前記距離が前記第1所定値に近いほど、大きくするように前記基本移動指令を修正するように構成されていることを特徴とする移動体の制御装置。
  4. 請求項3記載の移動体の制御装置において、
    前記移動指令修正部は、
    前記距離が前記第1所定値以下になったとき、前記距離に応じた前記移動速度の制限度合いを示す第1制限度合い指標値を設定する処理と、前記障害物に対する前記移動体の向きに応じた前記移動速度の制限度合いを示す第2制限度合い指標値を設定する処理とを実行し、該第1制限度合い指標値及び該第2制限度合い指標値に応じて前記移動体の代表点の移動速度を制限するように構成されていると共に、
    前記距離が前記第1所定値よりも小さい第2所定値以下の距離である場合に設定する前記第2制限度合い指標値により示される制限度合いを第A制限度合い、前記距離が前記第2所定値よりも大きい距離である場合に設定する前記第2制限度合い指標値により示される制限度合いを第B制限度合いと定義したとき、前記移動体の向きの可変範囲のうちの少なくとも一部の範囲において、前記第A制限度合いが前記第B制限度合いよりも大きくなるように前記第2制限度合い指標値を設定するように構成されていることを特徴とする移動体の制御装置。
  5. 請求項1~のいずれか1項に記載の移動体の制御装置において、
    前記移動体は、前記操縦者が搭乗する搭乗部を有する搭乗型移動体であることを特徴とする移動体の制御装置。
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