本発明は、活性炭を用いた蛋白質の精製方法であって、蛋白質含有水溶液の導電率を調整して得られる活性炭前処理液を活性炭に接触させ、非吸着モードで蛋白質と不純物とを分離し、不純物含量が低下した目的の蛋白質を高回収率で取得する精製方法に関する。
本発明における蛋白質としては、高分子量蛋白質が挙げられるが、その中でも修飾等により親水性が付与された蛋白質が好ましく、例えば、天然若しくは非天然の糖蛋白質または水溶性ポリマーで修飾された蛋白質が挙げられる。
糖蛋白質としては、例えば、抗体、エリスロポエチン、改変エリスロポエチン、ダルベポエチン、またはアンチトロンビン(α体若しくはβ体、またはそれらの混合物)等が挙げられる。
水溶性ポリマーで修飾された蛋白質とは、少なくとも1つの水溶性ポリマー分子が直接またはリンカー等を介して間接的に結合した蛋白質を示す。水溶性ポリマーしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸類(ホモポリマーまたはランダムコポリマー)等が挙げられる。
水溶性ポリマーで修飾された蛋白質としては、例えば、ペグフィルグラスチムを含むPEG化G-CSF(Granulocyte Colony Stimulating Factor)、またはPEG化トロンボポエチン(Thrombopoietin、TPO)等のPEG化蛋白質が挙げられる。
抗体としてはポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体が挙げられ、好ましくはモノクローナル抗体が挙げられる。抗体の種類としては、例えば、マウス抗体、ラマ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体若しくはそれらのFc領域等を改変した抗体、一価抗体、バイスペシフィック抗体等の多重特異性抗体、またはその抗体断片等が挙げられる。抗体の分子型としては、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、Fab、Fc、Fc-融合蛋白、VH、VL、VHH、Fab’2、scFv、scFab、scDbまたはscDbFc等が挙げられる。
抗体としては、抗原結合性を有する抗体であればいかなるものでもよく、例えば、腫瘍関連抗原を認識する抗体またはその抗体断片、アレルギー若しくは炎症に関連する抗原を認識する抗体またはその抗体断片、循環器疾患に関連する抗原を認識する抗体またはその抗体断片、自己免疫疾患に関連する抗原を認識する抗体またはその抗体断片、ウイルス若しくは細菌感染に関連する抗原を認識する抗体またはその抗体断片等が挙げられる。
抗原としては、例えば、CD1a、CD2、CD3、CD4、CD5、CD6、CD7、CD9、CD10、CD13、CD19、CD20、CD21、CD22、CD25、CD28、CD30、CD32、CD33、CD38、CD40、CD40 ligand(CD40L)、CD44、CD45、CD46、CD47、CD52、CD54、CD55、CD56、CD59、CD63、CD64、CD66b、CD69、CD70、CD74、CD80、CD89、CD95、CD98、CD105、CD134(OX40)、CD137、CD138、CD147、CD158、CD160、CD162、CD164、CD200、CD227、adrenomedullin、angiopoietin related protein 4(ARP4)、aurora、B7-H1、B7-DC、integlin、bone marrow stromal antigen 2(BST2)、CA125、CA19.9、carbonic anhydrase 9(CA9)、cadherin、cc-chemokine receptor(CCR)4、CCR7、carcinoembryonic antigen(CEA)、cysteine-rich fibroblastgrowth factor receptor-1(CFR-1)、c-Met、c-Myc、collagen、CTA、connective tissuegrowth factor(CTGF)、CTLA-4、cytokeratin-18、DF3、E-catherin、epidermalgrowth facter receptor(EGFR)、EGFRvIII、EGFR2(HER2)、EGFR3(HER3)、EGFR4(HER4)、endoglin、epithelial cell adhesion molecule(EpCAM)、endothelial protein C receptor(EPCR)、ephrin、ephrin receptor(Eph)、EphA2、endotheliase-2(ET2)、FAM3D、fibroblast activating protein(FAP)、Fc receptor homolog 1(FcRH1)、ferritin、fibroblastgrowth factor8(FGF8)、FGF8 receptor、basic FGF(bFGF)、bFGF receptor、FGF receptor(FGFR)3、FGFR4、FLT1、FLT3、folate receptor、frizzled homologue 10(FZD10)、frizzled receptor 4(FZD-4)、G250、G-CSF receptor、ganglioside(例えば、GD2、GD3、GM2またはGM3等)、globo H、gp75、gp88、GPR-9-6、heparanase I、hepatocytegrowth factor(HGF)、Heparin-binding EGF-like growth factor(HB-EGF)、HGF receptor、HLA antigen(例えば、HLA-DR等)、HM1.24、human milk fatglobule(HMFG)、hRS7、heat shock protein 90(hsp90)、idiotype epitope、insulin-likegrowth factor(IGF)、IGF receptor(IGFR)、interleukin(例えば、IL-6またはIL-15等)、interleukin receptor(例えば、IL-6RまたはIL-15R等)、integrin、immune receptor translocation associated-4(IRTA-4)、kallikrein 1、KDR、KIR2DL1、KIR2DL2/3、KS1/4、lamp-1、lamp-2、laminin-5、Lewis y、sialyl Lewis x、lymphotoxin-beta receptor(LTBR)、LUNX、melanoma-associated chondroitin sulfate proteoglycan(MCSP)、mesothelin、MICA、Mullerian inhibiting substance type II receptor(MISIIR)、mucin、neural cell adhesion molecule(NCAM)、Necl-5、Notch1、osteopontin、platelet-derivedgrowth factor(PDGF)、PDGF receptor、platelet factor-4(PF-4)、phosphatidylserine、Prostate Specific Antigen(PSA)、prostate stem cell antigen(PSCA)、prostate specific membrane antigen(PSMA)、Parathyroid hormone related protein/peptide(PTHrP)、receptor activator of NF-kappaB ligand(RANKL)、receptor for hyaluronic acid mediated motility(RHAMM)、ROBO1、SART3、semaphorin 4B(SEMA4B)、secretory leukocyte protease inhibitor(SLPI)、SM5-1、sphingosine-1-phosphate、tumor-associatedglycoprotein-72(TAG-72)、transferrin receptor(TfR)、TGF-beta、Thy-1、Tie-1、Tie2 receptor、T cell immunoglobulin domain and mucin domain 1(TIM-1)、T cell immunoglobulin domain and mucin domain 3(TIM-3)、human tissue factor(hTF)、Tn antigen、tumor necrosis factor(TNF)、Thomsen-Friedenreich antigen(TF antigen)、TNF receptor、tumor necrosis factor-related apoptosis-inducing ligand(TRAIL)、TRAIL receptor(例えば、DR4またはDR5等)、system ASC amino acid transporter 2(ASCT2)、trkC、TROP-2、TWEAK receptor Fn14、type IV collagenase、urokinase receptor、vascular endothelialgrowth factor(VEGF)、VEGF receptor(例えば、VEGFR1、VEGFR2またはVEGFR3等)、vimentinまたはVLA-4等が挙げられる。
抗体としては、具体的には以下の抗体が挙げられる。
腫瘍関連抗原を認識する抗体としては、例えば、抗GD2抗体[Anticancer Res.,13,331(1993)]、抗GD3抗体[Cancer Immunol.Immunother.,36,260(1993)]、抗GM2抗体[Cancer Res.,54,1511(1994)]、抗HER2抗体[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,4285(1992)、US5725856]、抗CD52抗体[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89,4285(1992)]、抗MAGE抗体[British J.Cancer,83,493(2000)]、抗HM1.24抗体[Molecular Immunol.,36,387(1999)]、抗副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)抗体[Cancer,88,2909(2000)]、抗bFGF抗体、抗FGF-8抗体[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86,9911(1989)]、抗bFGFR抗体、抗FGF-8R抗体[J.Biol.Chem.,265,16455(1990)]、抗IGF抗体[J.Neurosci.Res.,40,647(1995)]、抗IGF-IR抗体[J.Neurosci.Res.,40,647(1995)]、抗PSMA抗体[J.Urology,160,2396(1998)]、抗VEGF抗体[Cancer Res.,57,4593(1997)]、抗VEGFR抗体[Oncogene,19,2138(2000)、国際公開第96/30046号]、抗CD20抗体[Curr.Opin.Oncol.,10,548(1998)、米国特許第5736137号明細書]、抗CD10抗体、抗EGFR抗体(国際公開第96/40201号)、抗Apo-2R抗体(国際公開第98/51793号)、抗ASCT2抗体(国際公開第2010/008075号)、抗CEA抗体[Cancer Res.,55(23 suppl):5935s-5945s(1995)]、抗CD38抗体、抗CD33抗体、抗CD22抗体、抗EpCAM抗体または抗A33抗体等が挙げられる。
アレルギーまたは炎症に関連する抗原を認識する抗体としては、例えば、抗インターロイキン10抗体[Immunol.Rev.,127,5(1992)]、抗インターロイキン6受容体抗体[Molecular Immunol.,31,371(1994)]、抗インターロイキン5抗体[Immunol.Rev.,127,5(1992)]、抗インターロイキン5受容体抗体、抗インターロイキン4抗体[Cytokine,3,562(1991)]、抗インターロイキン4受容体抗体[J.Immunol.Methods,217,41(1998)]、抗腫瘍壊死因子抗体[Lymph.Cyto.Res.,13,183(1994)]、抗腫瘍壊死因子受容体抗体[Molecular Pharmacol.,58,237(2000)]、抗CCR4抗体[Nature,400,776(1999)]、抗ケモカイン抗体[Peri et al.,J.Immunol.Meth.,174,249(1994)]または抗ケモカイン受容体抗体[J.Exp.Med.,186,1373(1997)]等が挙げられる。
循環器疾患に関連する抗原を認識する抗体としては、例えば、抗GPIIb/IIIa抗体[J.Immunol.,152,2968(1994)]、抗血小板由来増殖因子抗体[Science,253,1129(1991)]、抗血小板由来増殖因子受容体抗体[J.Biol.Chem.,272,17400(1997)]、抗血液凝固因子抗体[Circulation,101,1158(2000)]、抗IgE抗体、抗αVβ3抗体またはα4β7抗体等が挙げられる。
ウイルスまたは細菌感染に関連する抗原を認識する抗体としては、例えば、抗gp120抗体[Structure,8,385(2000)]、抗CD4抗体[J.Rheumatology,25,2065(1998)]、抗CCR5抗体または抗ベロ毒素抗体[J.Clin.Microbiol.,37,396(1999)]等が挙げられる。
Fc-融合蛋白としては、例えば、ロムプラスミチム等が挙げられる。
本発明の精製方法には、目的とする蛋白質および不純物を含む蛋白質含有水溶液が供される。
蛋白質含有水溶液としては、例えば、血漿、血清、乳若しくは尿など生体から得られる水溶液、遺伝子組換え技術若しくは細胞融合技術を用いて得られる蛋白質を生産する細胞若しくは大腸菌等の菌類を培地中で培養して得られる培養液からなる水溶液、トランスジェニック非ヒト動物、植物若しくは昆虫等から得られる水溶液、無細胞蛋白質合成技術を用いて得られる水溶液、または糖、糖鎖若しくは水溶性ポリマーを蛋白質に化学的に反応して得られる水溶液等が挙げられる。
蛋白質を生産する細胞としては、例えば、宿主細胞に所望の蛋白質をコードする遺伝子が組み込まれた形質転換細胞等が挙げられる。
宿主細胞としては、例えば、動物細胞、植物細胞、酵母細胞または昆虫細胞等の細胞株が挙げられる。
宿主細胞としては、具体的には、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞であるCHO細胞、マウスミエローマ細胞であるNS0細胞、SP2/0細胞、ラットミエローマ細胞であるYB2/0細胞、IR983F細胞、シリアンハムスター腎臓由来細胞であるBHK細胞、ヒトミエローマ細胞であるナマルバ細胞、胚性幹細胞、受精卵細胞、メタノール資化性酵母(Pichia pastoris)、またはSpodoptera frugiperda由来のSf9細胞若しくはSf21等が挙げられる。
蛋白質を生産する細胞を培養する培地としては、各々の細胞の培養に適した培地であればいずれも用いられるが、例えば、動物細胞を培養する場合の培地としては、通常の動物細胞の培養に用いられる培地が用いられる。例えば、血清含有培地、血清アルブミン若しくは血清分画物などの動物由来成分を含まない培地、無血清培地、または無蛋白培地等、いずれの培地も用いられるが、好ましくは無血清培地または無蛋白培地が用いられる。
前記培地としては、具体的には、例えば、RPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)]、EagleのMEM培地[Science,122,501(1952)]、ダルベッコ改変MEM(DMEM)培地[Virology,8,396(1959)]、199培地[Proceeding of the Society for the Biological Medicine,73,1(1950)]、F12培地[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,53,288(1965)]、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM培地)[J.Experimental Medicine,147,923(1978)]、EX-CELL302培地、EX-CELL-CD-CHO培地、EX-CELL 325培地(以上、SAFCバイオサイエンス社製、EX-CELLは登録商標)、CD-CHO培地、CD DG44培地(以上、インビトロジェン社製)若しくはIS CD-CHO培地(アーバインサイエンティフィック社製)、またはこれらの改変培地、混合培地もしくは濃縮培地等が用いられ、好ましくは、RPMI1640培地、DMEM培地、F12培地、IMDM培地、EX-CELL302培地、CD-CHO培地またはIS CD-CHO培地等が用いられる。
また、蛋白質を生産する細胞を培養する培地には、必要に応じて更に蛋白質を生産する細胞の生育に必要な生理活性物質または栄養因子等を添加することができる。これらの添加物は、培養前に予め培地に含有させるか、培養中に添加培地または添加溶液として培養液へ適宜追加供給する。追加供給の方法は、1溶液または2種以上の混合溶液などいかなる形態でもよく、また、添加方法は連続または断続のいずれでもよい。
蛋白質を生産するトランスジェニック非ヒト動物、植物または昆虫としては、例えば、蛋白質をコードする遺伝子が細胞内に組み込まれた非ヒト動物、植物または昆虫が挙げられる。非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはサル等が挙げられる。植物としては、例えば、タバコ、ポテト、トマト、ニンジン、ソイビーン、アブラナ、アルファルファ、コメ、小麦、大麦またはコーン等が挙げられる。昆虫としては、例えば、カイコ等が挙げられる。
蛋白質含有水溶液の生産方法としては、例えば、国際公開第2008/120801号、日本国特開平3-198792号公報、国際公開第2010/018847号、国際公開第2007/062245号または国際公開第2007/114496号等に記載の方法が挙げられる。
また、本発明において、蛋白質含有水溶液としては、例えば、前述の生体から得られる水溶液、培養液からなる水溶液、トランスジェニック非ヒト動物、植物若しくは昆虫等から得られる水溶液、無細胞蛋白質合成技術を用いて得られる水溶液、または糖、糖鎖若しくは水溶性ポリマーを蛋白質に化学的に反応して得られる水溶液、等の他、これらの水溶液から目的とする蛋白質を精製する工程で得られる水溶液が挙げられる。具体的には、例えば、細胞除去液、沈殿物除去液、アルコール分画液、塩析分画液またはクロマトグラフィー溶出液等が挙げられる。
細胞除去液としては、例えば、前述の生体から得られる水溶液、培養液からなる水溶液、トランスジェニック非ヒト動物、植物若しくは昆虫等から得られる水溶液、糖、糖鎖若しくは水溶性ポリマーを蛋白質に化学的に反応して得られる水溶液、またはこれらの水溶液から目的とする蛋白質を精製する工程で得られる水溶液より、細胞を除去した溶液等が挙げられる。
細胞除去液としては、具体的には、例えば、細胞を含有する水溶液より自然沈殿法、遠心分離法、超音波法、水性二相分配法、クロスフローろ過法(タンジェンシャルフローろ過法)、デプスフィルターによるろ過法、精密ろ過などメンブレンフィルターによるろ過法、透析法、またはこれらの方法を組み合わせた方法等によって細胞を除去して得られる溶液が挙げられる。
デプスフィルターとしては、具体的には、例えば、ミリスタックプラスHCデプスフィルター、ミリスタックプラスDEデプスフィルター、ミリスタックプラスCEデプスフィルター、クラリソルブデプスフィルター(メルクミリポア社製、ミリスタックは登録商標)、スープラPデプスフィルター(Pall社製)、ザルトクリアーPBデプスフィルター、ザルトクリアーPCデプスフィルター(ザルトリウス社製)、ゼータプラスSPデプスフィルター、ゼータプラスAPデプスフィルター、ゼータプラスLAデプスフィルター、ゼータプラスデリピッドデプスフィルター、ゼータプラスZAデプスフィルター、ゼータプラスEXT荷電デプスフィルターまたはエンフェーズAEXハイブリッドピューリファイアー(住友スリーエム社製、ゼータプラスは登録商標)等が挙げられるがこれらに限定されない。
メンブレンフィルターとしては、具体的には、例えば、SHC膜(メルクミリポア社製)、SHF膜(メルクミリポア社製)、Durapore(登録商標)膜(メルクミリポア社製)、またはフロロダイン(登録商標)(Pall社製)等が挙げられるがこれらに限定されない。
沈殿物除去液としては、前述の生体から得られる水溶液、培養液からなる水溶液、トランスジェニック非ヒト動物、植物若しくは昆虫等から得られる水溶液、無細胞蛋白質合成技術を用いて得られる水溶液、糖、糖鎖若しくは水溶性ポリマーを蛋白質に化学的に反応して得られる水溶液、またはこれらの水溶液から目的とする蛋白質を精製する工程で得られる水溶液より、低pH処理またはカプリル酸、有機溶剤、ポリエチレングリコール、界面活性剤、塩、アミノ酸若しくはポリマー等の添加により凝集沈殿(フロキュレーション)または二相分離を行った後に、沈殿物を除去した溶液等が挙げられる。沈殿物の除去方法としては、例えば、自然沈降法、遠心分離法、クロスフローろ過法(タンジェンシャルフローろ過法)、デプスフィルターによるろ過法、メンブレンフィルターによるろ過法、透析法、またはこれらの方法を組み合わせた方法等が挙げられる。また、上述の沈殿物除去液の取得方法を複数組み合わせて取得された沈殿物除去液も本発明に包含される。
低pH処理のpHとしては、好ましくはpH3~6、より好ましくはpH4~6であり、塩酸、酢酸、クエン酸またはリン酸等の酸の添加により調整される。
アルコール分画液としては、例えば、前述の生体から得られる水溶液、培養液からなる水溶液、トランスジェニック非ヒト動物、植物若しくは昆虫等から得られる水溶液、無細胞蛋白質合成技術を用いて得られる水溶液、糖、糖鎖若しくは水溶性ポリマーを蛋白質に化学的に反応して得られる水溶液、またはこれらの水溶液から目的とする蛋白質を精製する工程で得られる水溶液より、アルコール等を添加することで調製された分画液等が挙げられる。具体的には、例えば、低温エタノール分画法等の手法で得られる分画液が挙げられる。
塩析分画液としては、例えば、前述の生体から得られる水溶液、培養液からなる水溶液、トランスジェニック非ヒト動物、植物若しくは昆虫等から得られる水溶液、無細胞蛋白質合成技術を用いて得られる水溶液、糖、糖鎖若しくは水溶性ポリマーを蛋白質に化学的に反応して得られる水溶液、またはこれらの水溶液から目的とする蛋白質を精製する工程で得られる水溶液より、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム等の塩を添加し、蛋白質を析出させることで調製された分画液等が挙げられる。
クロマトグラフィー溶出液としては、例えば、前述の生体から得られる水溶液、培養液からなる水溶液、トランスジェニック非ヒト動物、植物若しくは昆虫等から得られる水溶液、無細胞蛋白質合成技術を用いて得られる水溶液、糖、糖鎖若しくは水溶性ポリマーを蛋白質に化学的に反応して得られる水溶液、またはこれらの水溶液から目的とする蛋白質を精製する工程で得られる水溶液をクロマトグラフィーに用いられる担体または膜に吸着させ、適当な溶出液で溶出すること、または非吸着させることにより得られた、蛋白質溶出液等が挙げられる。
クロマトグラフィーに用いられる担体または膜としては、例えば、イオン交換担体、イオン交換膜、アフィニティ担体、ゲルろ過担体、疎水性相互作用担体、逆相担体、ヒドロキシアパタイト担体、フルオロアパタイト担体、硫酸化セルロース担体、硫酸化アガロース担体、混合モード(マルチモーダル)担体等が挙げられる。
イオン交換担体またはイオン交換膜としては、例えば、イオン交換基を有する分子、例えば、硫酸基、メチル硫酸基、スルフォフェニル基、スルフォプロピル基、カルボキシメチル基、4級アンモニウム基、4級アミノエチル基またはジエチルアミノエチル基等を、ベース担体または膜、例えば、セルロース、セファロース、アガロース、キトサン、アクリル酸重合体若しくはスチレン-ジビニルベンゼン共重合体などのポリマーおよびその誘導体(架橋ポリマーを含む)、シリカ粒子、ガラス粒子、セラミック粒子またはその表面処理粒子等で構成されたポリマー等に直接または間接的に結合した担体または膜が挙げられる。
イオン交換担体またはイオン交換膜としては、具体的には、例えば、Q Sepharose XL、Q Sepharose FF、DEAE Sepharose FF、ANX Sepharose FF、Capto Q、Capto DEAE、Capto Q ImpRes(以上、GEヘルスケア社製、Sepharoseは登録商標)、TOYOPEARL GigaCap Q-650、TOYOPEARL SuperQ-650、TOYOPEARL GigaCap S-650、TOYOPEARL GigaCap CM-650、TOYOPEARL NH2-750F(以上、東ソー社製、TOYOPEARLは登録商標)、Fractogel DEAE、Fractogel TMAE、Fractogel TMAE Hicap、Eshmuno(登録商標) Q(以上、メルクミリポア社製、Fractogelは商標)、セルファインMAX-Q、セルファインMAX-S(以上、JNC社製、セルファインは登録商標)、Mustang Q(Pall社製)、Sartobind Q、Sartobind STIC(以上、ザルトリウス社製、Sartobindは登録商標)、SP Sepharose FF、CM Sepharose FF、SP Sepharose XL、Capto S(以上、GEヘルスケア社製、Sepharoseは登録商標)、Poros 50 HS、Poros 50 XS(以上、Applied Biosystems社製、Porosは登録商標)、Eshmuno(登録商標) S、Fractogel COO-、Fractogel SO3
-、Fractogel SE Hicap(以上、メルクミリポア社製、Fractogelは商標)、Mustang S(ポール社製)またはSartobind(登録商標) S(ザルトリウス社製)、ダイヤイオンPK、ダイヤイオンPA、ダイヤイオンCR、ダイヤイオンCR、ダイヤイオンAMP(以上、三菱化学社製、ダイヤイオンは登録商標)、Eshmuno(商標登録) CPX(メルクミリポア社製)、またはQyu Speed(商標) D(旭化成メディカル社製)等が挙げられるがこれらに限定されない。
アフィニティ担体としては、目的とする蛋白質に親和性を有する分子、例えば、ヘパリン、プロテインA、プロテインG、プロテインLまたはこれらの誘導体等を、前記と同様のベース担体に直接または間接的に結合した担体が挙げられる。
アフィニティ担体としては、具体的には、例えば、Heparin Sepharose(登録商標) 6 Fast Flow(GEヘルスケア社製)、プロセップ-ヘパリン(メルクミリポア社製)、TOYOPEARL(登録商標) AF-Heparin-650(東ソー社製)、Heparin HyperD(Pall社製)、MabSelect、Protein A Sepharose FF、MabSelect Xtra、MabSelect SuRe、MabSelect SuRe LX、Protein G Sepharose FF、Capto L(以上、GEヘルスケア社製、SepharoseおよびMabSelectは登録商標)、Prosep vA Hicapacity、Prosep vA Ultra、Prosep Ultraplus(以上、メルクミリポア社製、Prosepは登録商標)、TOYOPEARL(登録商標) AF-rProtein A-650F(東ソー社製)、TOYOPEARL(登録商標) AF-rProtein A HC-650F(東ソー社製)、MabSpeed(登録商標) RP101(三菱化学社製)、MabSpeed(登録商標) RP102(三菱化学社製)、JWT203(JSR社製)、KanCap(登録商標)A(カネカ社製)、UNOsphere SUPrA(Bio-Rad社製)、ADREPMA(登録商標) A-20(大阪ソーダ社製)、ADREPMA(登録商標) A-50(大阪ソーダ社製)、ProSep(登録商標)-vA High Capacity(メルクミリポア社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
ゲルろ過担体としては、例えば、デキストラン、アリルデキストラン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、セルロース、アガロース、スチレン、ジビニルベンゼン、ポリビニルアルコール、シリカまたはキトサン等で構成されたポリマーからなる担体が挙げられる。
ゲルろ過担体としては、具体的には、例えば、Sephacryl Sシリーズ、Sepharose(登録商標)シリーズ、Sephadexシリーズ、Superdexシリーズ、Sephacrylシリーズ(以上、GEヘルスケア社製)、TOYOPEARL HWシリーズ、TSKgel PWシリーズ(以上、東ソー社製、TOYOPEARLは登録商標)、Bio gel Agarose、Bio gel P Polyacrylamide(以上、バイオラッド社製)、セルファインGH、セルファインGCL(以上、JNC社製、セルファインは商標)、Trisacryl GF05、Trisacryl GF2000、Ultrogel AcA(以上、Pall社製、Trisacrylは登録商標)またはフラクトゲル BioSEC(メルクミリポア社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
疎水相互作用担体としては、疎水性を有する分子、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、オクチル基、エーテル基またはフェニル基等を、前記と同様のベース担体に直接または間接的に結合した担体が挙げられる。
疎水相互作用担体としては、具体的には、例えば、Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(high-sub)、Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(low-sub)、Octyl Sepharose 4 Fast Flow、Butyl Sepharose 4 Fast Flow(以上、GEヘルスケア社製、Sepharoseは登録商標)、TOYOPEARL Hexyl-650、TOYOPEARL Butyl-650、TOYOPEARL Phenyl-650、TOYOPEARL Ether-650、TOYOPEARL PPG-600、TOYOPEARL Butyl-600、TOYOPEARL Super Butyl-550(以上、東ソー社製、TOYOPEARLは登録商標)、Mactro-Prep t-Butyl、Macro-Prep Methyl(以上、バイオラッド社製、Mactro-Prepは登録商標)、QMA Spherosil(登録商標)、Methyl Ceramic HyperD(登録商標)(以上、Pall社製)、フラクトゲル Phenyl(S)、フラクトゲル Propyl(S)(以上、メルクミリポア社製、フラクトゲルは登録商標)、フェニル-セルロファイン(JNC社製、セルロファインは登録商標)、ダイヤイオンHP、ダイヤイオンSP(以上、三菱化学社製、ダイヤイオンは登録商標)、ブチル化キトパール、フェニル化キトパール(以上、富士紡ホールディングズ社製、キトパールは登録商標)等が挙げられるが、これらに限定されない。
逆相担体としては、例えば、炭化水素基を固相マトリックスに、直接または間接的に結合した担体が挙げられる。炭化水素基としては、例えば、トリメチル基、ブチル基、フェニル基、オクチル基またはオクタデシル基およびこれらの末端を改変した官能基等が挙げられる。具体的には、例えば、RESOURCE(登録商標) RPCシリーズまたはSOURCE(商標) RPCシリーズ(以上、GEヘルスケア社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
ヒドロキシアパタイト担体としては、例えば、CHT(商標) Ceramic Hydroxyapatite Type IまたはType II(以上、バイオラッド社製)が挙げられるが、これに限定されない。また、フルオロアパタイト担体としては、例えば、CFT(商標) Ceramic Fluoroapatite(バイオラッド社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
硫酸化セルロース担体または硫酸化アガロース担体としては、例えば、セルファインサルフェイト、セルファインサルフェイトm、セルファインサルフェイトc、硫酸化セルロファインm、硫酸化セルロファインc、硫酸化セルファインmまたは硫酸化セルファインc(以上、JNC社製、セルファインは登録商標)またはCapto(登録商標) DeVirS(GEヘルスケア社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
混合モード担体としては、例えば、異なる選択性を有する2種類以上の官能基、好ましくは前記と同様のイオン交換基および前記と同様の疎水性相互作用基を、前記と同様のベース担体に直接または間接的に結合した担体が挙げられる。
混合モード担体としては、具体的には、例えば、Capto adhere、Capto MMC(以上、GEヘルスケア社製、Captoは登録商標)、HEA HyperCel、PPA HyperCel、MEP HyperCel(以上、Pall社製、HyperCelは商標)、TOYOPEARL(登録商標) MX-Trp-650M(東ソー社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
上記クロマトグラフィーは、その目的に応じて吸着モードまたは非吸着モードで行われる。好ましくは、クロマトグラフィーのうち、少なくとも1つのクロマトグラフィーは吸着モードで行われる。
前記クロマトグラフィーにおける吸着モードとは、該クロマトグラフィーに供する水溶液を該担体および/または該膜に接触させ、目的の蛋白質を該担体および/または該膜に吸着させた後、必要に応じて洗浄を行い、その後、pH、電気伝導度、緩衝液成分、塩濃度または添加物等を変更した緩衝液で溶出させて目的の蛋白質を含む吸着画分を回収することを意味する。
前記クロマトグラフィーにおける非吸着モードとは、該クロマトグラフィーに供する水溶液を該担体および/または該膜と接触させ、目的の蛋白質を該担体および/または該膜に吸着させずに目的の蛋白質を含む非吸着画分を回収することを意味する。
前記クロマトグラフィーに供する水溶液、洗浄または溶出に使用する緩衝液は、pH、電気伝導度、緩衝液成分、塩濃度または添加物等について、それぞれ好適な条件を選定する。クロマトグラフィーの条件を選定する上で、目的の蛋白質と分離したい化合物との物理化学的性質の違い、例えば、等電点、電荷、疎水性度、分子サイズまたは立体構造等の違いを利用することが出来る。
吸着モードの溶出方法としては、目的の蛋白質と担体との親和性が低下するような特定の塩濃度またはpH等を有する緩衝液を通液して溶出させる一段階溶出法、段階的に塩濃度またはpH等を変化させて目的の蛋白質を溶出させるステップワイズ法または連続的に塩濃度またはpH等を変化させて目的の蛋白質を溶出させるグラジエント法が挙げられる。
該緩衝液を構成する塩としては、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ホウ酸塩、Tris(base)、HEPES、MES、PIPES、MOPS、TESまたはTricine等が挙げられる。
また前記塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムまたは硫酸アンモニウムのような他の塩と組み合わせて用いることも出来る。更に、緩衝液成分には、例えば、グリシン、アラニン、アルギニン、セリン、スレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸若しくはヒスチジン等のアミノ酸、グルコース、スクロース、ラクトース若しくはシアル酸等の糖またはその誘導体等と組み合わせて用いることも出来る。
本発明において蛋白質が抗体である場合、蛋白質含有水溶液としては、好ましくはアフィニティクロマトグラフィーを用いずに得られた蛋白質含有水溶液、より好ましくはプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを用いずに得られた蛋白質含有水溶液が挙げられる。
更に、蛋白質含有水溶液は、粒子等の不溶物が存在する場合には予めそれらを除去し、不溶物を除去した後に本発明の精製方法に供してもよい。粒子等の不溶物の除去方法としては、例えば、遠心分離法、クロスフローろ過法(タンジェンシャルフローろ過法)、デプスフィルターによるろ過法、メンブレンフィルターによるろ過法、透析法、またはこれらの方法を組み合わせた方法が挙げられる。
本発明の活性炭を用いた蛋白質の精製方法に供される活性炭前処理液は、前述の蛋白質含有水溶液を希釈、濃縮希釈、緩衝液置換若しくは塩化ナトリウム等の塩の添加、またはこれらを組合せること等により導電率を調整することにより調製することができる。
本発明者らは、前記活性炭前処理液を最適に調製し、また、該活性炭前処理液を用いて活性炭処理を最適な条件で実施することによって、不純物含量が顕著に低下した目的蛋白質を高回収率で取得できることを見出した。
導電率は、水溶液が2つの電極間で電流を伝導する能力を示す。溶液中では、電流はイオン輸送によって流動するため、活性炭前処理液中に存在するイオン量が増加すると、高い導電率を有する。活性炭前処理液中に存在するイオン量を減少させて導電率を低下させることにより、不純物を効率的に分離でき、且つ活性炭に吸着する目的とする蛋白質の量を低減し、回収率を向上することができる。活性炭前処理液の好ましい導電率は0~5mS/cmであり、より好ましくは0~2mS/cmであり、特に好ましくは0~1mS/cmである。導電率は、市販の導電率計を使用して測定できる。
蛋白質含有水溶液を希釈して活性炭前処理液を調製する方法としては、例えば、超純水(ミリQ水)等の水または導電率が1mS/cm未満である0.05% polysorbate80、10mmol/L Sodium L-glutamate若しくは262 mmol/L、D-sorbitol(pH5.5)緩衝液等で蛋白質含有水溶液を希釈し、好ましい導電率に調整する方法が挙げられる。希釈倍率は、例えば、2~20倍である。
蛋白質含有水溶液を濃縮希釈または緩衝液置換して活性炭前処理液を作製する方法としては、例えば、限外ろ過膜を用いた限外ろ過法、沈殿法、透析膜若しくはゲルろ過カラム等を用いて蛋白質含有水溶液を濃縮後に超純水やリン酸、クエン酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、ホウ酸、Tris(base)、HEPES、MES、PIPES、MOPS、TES、またはTricine緩衝液等で希釈する操作を1回又は複数回繰り返す方法、限外ろ過膜を用いた透析ろ過法を用いて超純水や緩衝液等に置換する方法または限外ろ過膜を用いた限外ろ過法で蛋白質含有水溶液を濃縮後に透析ろ過法を用いて超純水や緩衝液等に置換する方法等が挙げられる。この他、吸着カラムに目的蛋白質を吸着させ、超純水若しくは緩衝液等で溶出させることにより濃縮希釈または緩衝液置換し、活性炭前処理液を作製する方法が挙げられる。
濃縮倍率は、例えば、5~200倍であり、希釈倍率は、例えば、2~100倍である。透析ろ過法を用いる際の超純水または緩衝液等の容量は、例えば、2~30倍量である。これらを任意に組み合わせて調製してもよい。
限外ろ過膜としては、通常の限外ろ過膜の他、プラスまたはマイナスの電荷が付加された限外ろ過膜も含まれ、具体的には、例えば、ペリコン3ウルトラセル膜、ペリコン3バイオマックス膜、ペリコン2ウルトラセル膜、ペリコン2バイオマックス膜(以上、メルクミリポア社製、ペリコンは登録商標)、オメガメンブラン(Pall社製)、Kvick膜(GEヘルスケア社製)、ザルトコンカセット(ザルトリウス社製)またはPROPOR TFF(パーカー・ハネフィン社製)等が挙げられるがこれらに限定されない。
蛋白質含有水溶液に塩化ナトリウム等の塩を添加して導電率を調整し、活性炭前処理液を作製することができる。添加する塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムまたは硫酸アンモニウム等が挙げられ、塩化ナトリウムが好ましい。これらの塩は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。調製された活性炭前処理液の最終塩濃度としては、好ましくは0~10mmol/Lであり、より好ましくは0~5mmol/Lである。
活性炭前処理液を構成する緩衝成分としては、例えば、リン酸、クエン酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、ホウ酸、Tris(base)、HEPES、MES、PIPES、MOPS、TES、Tricine、グリシン、アラニン、アルギニン、セリン、スレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸またはヒスチジン等のアミノ酸等が挙げられる。これらの濃度は好ましくは0.01mol/L~0.5mol/Lである。
活性炭前処理液のpHは、好ましくは2~9であり、より好ましくは3~8である。特に、蛋白質が抗体である場合、活性炭前処理液のpHは、好ましくは2~8であり、より好ましくは3~7であり、特に好ましくは4~6であり、最も好ましくは4~5である。
活性炭前処理液に含まれる目的の蛋白質の濃度は、好ましくは1~45mg/mLであり、より好ましくは2~30mg/mLである。目的の蛋白質が抗体である場合には、好ましくは3~45mg/mLであり、より好ましくは3~30mg/mLであり、特に好ましくは5.5~23mg/mLであり、最も好ましくは11~23mg/mLである。
本発明において、不純物としては、例えば、宿主細胞蛋白質(HCP)、蛋白質由来の重合体(HMWs)、蛋白質由来の分解物(LMWs)、変性、糖鎖成分の除去、酸化若しくは脱アミド等を受けた蛋白質由来の修飾体、DNA、ウイルス、培地由来成分、培養添加物および/または宿主細胞から溶出した酵素類等が挙げられ、好ましくは宿主細胞蛋白質、蛋白質由来の重合体、蛋白質由来の分解物、DNAおよび/またはウイルスが挙げられる。より好ましくは、宿主細胞蛋白質(HCP)、蛋白質由来の重合体(HMWs)、蛋白質由来の分解物(LMWs)、DNAおよびウイルスを同時に除くことが出来る。
宿主細胞から溶出した酵素類としては、例えば、糖除去酵素類、蛋白質加水分解酵素類、酸化還元酵素類またはアミノ酸異性化酵素類等が挙げられる。
糖除去酵素としては、具体的には、例えば、ノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)、ガラクトシダーゼまたはグリカナーゼ等が挙げられる。蛋白質加水分解酵素としては、具体的には、例えば、セリンプロテアーゼ、エステラーゼ、システインプロテアーゼ、トリプシン様プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼまたはカテプシン等が挙げられる。
酸化還元酵素としては、具体的には、例えば、チオレドキシンレダクターゼ等のチオレドキシン関連酵素等が挙げられる。アミノ酸異性化酵素としては、具体的には、例えば、トランスグルタミナーゼ等が挙げられる。
ウイルスとしては、例えば、レトロウイルス、パルボウイルス、レオウイルスまたはヘルペスウイルス等が挙げられ、具体的には、例えば、ネズミ科リンパ腫ウイルス、マウスパルボウイルス、アデノウイルス、サイトメガロウイルス、ヘルペスシンプレックスウイルス、インフルエンザウイルス、またはバクシニアウイルス等が挙げられる。
本発明の精製方法に用いられる活性炭としては、医薬品の製造に適した活性炭であればいずれも用いられ、1種類の活性炭を単独で使用しても、2種類以上の活性炭を単独または混合して用いてもよい。
活性炭としては、例えば、鉱物系活性炭または植物系活性炭等が挙げられる。鉱物系活性炭としては、具体的には、例えば、石炭系活性炭、石油系活性炭等が挙げられる。植物系活性炭としては、具体的には、例えば、木質系活性炭またはやし殻活性炭等が挙げられ、好ましくは木質系活性炭が挙げられる。
活性炭の原料としては炭素質の物質であればいずれも用いられるが、例えば、おが屑、木炭、素灰、草炭、ピート若しくは木材チップ等の木質、やし殻、亜炭、褐炭若しくは無煙炭等の石炭、石炭ピッチ、石油ピッチ、オイルカーボン、レーヨン、アクリロニトリルまたはフェノール樹脂等が挙げられる。
活性炭の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、高温で塩化亜鉛若しくは燐酸等の薬品を添加、浸透させ、高温で炭化反応させる薬液賦活法または炭化した原料および水蒸気、二酸化炭素、空気若しくは燃焼ガス等のガスを高温で反応させるガス賦活法が挙げられる。好ましくは、塩化亜鉛賦活化法、燐酸を用いた酸賦活化法、または水蒸気賦活化法などが挙げられる。
活性炭の形状としては、医薬品の製造に適した形状であればいずれも用いられるが、例えば、粉砕炭、顆粒炭、球状炭若しくはペレット炭等の粒状活性炭、ファイバー若しくはクロス等の繊維状活性炭、シート状、成形体若しくはハニカム状等の特殊成形活性炭、または粉末活性炭等が挙げられる。
また、プラス若しくはマイナスの電荷が付加された活性炭またはポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ヘパリン、セルロース若しくはポリウレタン等の表面修飾剤で修飾された活性炭も本発明の精製方法に用いられる活性炭に含まれる。さらに、ゾル-ゲル法により作製したカーボンゲルも本発明の精製方法に用いられる活性炭に含まれる。ゾル-ゲル法に用いられる原料としては、例えば、フェノール、メラミン、レゾルシノール、またはホルムアルデヒド等が挙げられる。
活性炭の平均細孔直径としては、特に限定されないが、通常は0.1~20nm、好ましくは0.5~5.0nm、より好ましくは2.0~5.0nm、さらに好ましくは3.0~5.0nmである。活性炭の平均細孔径は窒素吸着等温吸着曲線よりBJH法を用いて算出することができる。
活性炭としては、具体的には、例えば、カルボラフィン、強力白鷺、精製白鷺、特製白鷺、白鷺A、白鷺C、白鷺C-1、白鷺DO-2、白鷺DO-5、白鷺DO-11、白鷺DC、白鷺DO、白鷺Gx、白鷺G、白鷺GH、白鷺FAC-10、白鷺FPG-1、白鷺M、白鷺P、白鷺PHC、白鷺Gc、白鷺GH、白鷺GM、白鷺GS、白鷺GT、白鷺GAA、白鷺GOC、白鷺GOX、白鷺APRC、白鷺TAC、白鷺MAC、白鷺XRC、白鷺NCC、白鷺SRCX、白鷺Wc、白鷺LGK、白鷺KL、白鷺WH、白鷺W、白鷺WHA、白鷺LH、白鷺KL、白鷺LGK、白鷺MAC-W、白鷺S、白鷺Sx、白鷺X2M、白鷺X7000、白鷺X7100、白鷺DX7-3、モルシーボン(以上、日本エンバイオケミカルズ社製、白鷺は登録商標)、ACF、GLC(以上、クラレケミカル社製)、太閤A、太閤S、太閤K、太閤KA、太閤Q、太閤Y(以上、フタムラ化学社製)、Norit GSP、Norit CNI、Norit GBG、Norit TEST EUR、Norit SUPRA EUR、GAC、CN、CG、CAP/CGP、SXまたはCA(以上、日本ノリット社製、Noritは登録商標)等が挙げられるが、これらに限定されない。
このうち、木質系の活性炭としては、例えば、特製白鷺、強力白鷺、白鷺P、白鷺C、白鷺A(以上、日本エンバイオケミカルズ社製、白鷺は登録商標)、太閤Y、太閤KA、太閤M、太閤A(以上、フタムラ化学社製)、Norit GSPまたはNorit CNI(以上、日本ノリット社製、Noritは登録商標)等が挙げられる。
本発明の活性炭を用いる精製方法の手段としては、特に限定されないが、例えば、バッチ法、膜処理法またはカラムクロマトグラフィー法等が挙げられ、それぞれの手段に応じて適切な活性炭の形状が選択される。必要に応じて、多孔性ポリマー若しくはゲルに活性炭を封入した粒子等の形態またはポリプロピレン若しくはセルロース等のサポート剤若しくは繊維等を用いて活性炭を吸着、固定若しくは成形した膜若しくはカードリッジ等の形態等にて使用することも出来る。
活性炭を含む膜またはカードリッジとしては、具体的には、例えば、CUNO活性炭フィルターカードリッジ、ゼータプラス活性炭フィルターカードリッジ(住友スリーエム社製、CUNOおよびゼータプラスは登録商標)、ミリスタックプラス活性炭フィルター(メルクミリポア社製、ミリスタックは登録商標)、スープラAKS1フィルター、AKS1フィルター、Stax(商標) AKS1(以上、Pall社製)、アドール(ユニチカ社製)、Kフィルター(登録商標)、活性炭シート(以上、東洋紡社製)、へマックス(クラレ社製)、ヘモソーバ(登録商標)(旭化成メディカル社製)、へモカラム(テルモ社製)、またはへセルス(帝人社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。このうち、木質系の活性炭を含む膜またはカートリッジとしては、例えば、ゼータプラス活性炭フィルターカートリッジ(住友スリーエム社製、ゼータプラスは登録商標)、スープラAKS1フィルター、AKS1フィルター、またはStax(商標) AKS1(以上、Pall社製)等が挙げられる。
また、目的の蛋白質および前記精製方法の手段により、用いる活性炭の充填密度、粒度、堅度、乾燥減量、強熱残分、比表面積または細孔容積等を適宜選択することも出来る。
本発明の活性炭を用いた精製方法は、非吸着モードで行われる。非吸着モードとは、蛋白質含有水溶液を活性炭と接触させ、目的の蛋白質を該活性炭に吸着させずに非吸着画分を回収することを意味する。具体的には、予め前述の方法で導電率などを調整した活性炭前処理液を、活性炭への負荷量、接触時間等を調整した上で、活性炭に接触させ、目的の蛋白質を活性炭に吸着させずに不純物のみを活性炭に吸着させ、非吸着画分に不純物含量が低下した蛋白質を高い回収率にて回収する。
予め上記方法で導電率などを調整した活性炭前処理液を活性炭に接触させる際の活性炭への負荷量および接触時間としては、負荷量が0.1~0.3mg蛋白質/mg活性炭であれば8~24時間が好ましく、12~24時間がより好ましい。また、負荷量が0.05~0.15mg蛋白質/mg活性炭であれば0.1~24時間が好ましく、2~24時間がより好ましく、2~12時間が特に好ましい。
また、活性炭を用いる精製方法に必要な活性炭量、及び1つの活性炭を含む膜、カートリッジまたは活性炭を充填したカラムあたりに含まれる活性炭量に応じて、複数の活性炭を含む膜、カートリッジまたは活性炭を充填したカラムに分割し、適宜組合せて用いることも出来る。例えば、複数の活性炭を含む膜、カートリッジまたは活性炭を充填したカラムは並列または直列に接続して、活性炭前処理液を通液する。
特に、複数の活性炭を含む膜、カートリッジまたは活性炭を充填したカラムを直列に接続し、活性炭前処理液を連続して通液する場合に、活性炭を含む膜、カートリッジまたは活性炭を充填したカラムの数がより多いほど、より効果的に不純物を除去することが可能である。この場合、活性炭を含む膜、カートリッジまたは活性炭を充填したカラムの数は、少なくとも2以上であることが好ましく、より好ましくは2~20、さらに好ましくは2~10、特に好ましくは2~4である。
前述の膜処理法またはカラムクロマトグラフィー法で精製を行う場合には、例えば、活性炭膜若しくは活性炭カードリッジまたは活性炭を充填した膜、カードリッジまたはカラムに活性炭前処理液を一回だけ通液してもよいが、連続的に活性炭前処理液を循環させ、複数回活性炭前処理液を活性炭に接触させる方法がより好ましい。
また、活性炭を用いた前記精製方法における活性炭前処理液の流速、粘度等を適宜選択することも出来る。
本発明において、前記活性炭前処理液を最適に調製し、また該活性炭前処理液を用いて活性炭処理を最適な条件で実施することによって、不純物含量が顕著に低下した目的蛋白質を高回収率で取得する本発明を完成することが出来る。
具体的には、不純物含量として、宿主細胞蛋白質の含量(ng/mg-P)は、好ましくは蛋白質1mgあたり100ng以下、より好ましくは蛋白質1mgあたり10ng以下である。宿主細胞蛋白質の含量は、例えば、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)法、ウエスタンブロッティング法または電気化学発光法等により測定することが出来る。
蛋白質由来の重合体の含量(含有率)は、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。蛋白質由来の分解物の含量(含有率)は、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。蛋白質由来の重合体若しくは蛋白質由来の分解物の含量は、例えば、ゲルろ過HPLC法、イオン交換HPLC法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、光散乱法または超遠心法等により測定することができる。DNA濃度は、例えば、ピコグリーン法、Threshold法またはQPCR法等の分析法により測定することが出来る。
また、ウイルス除去率を示すLogarithm Reduction Factor(LRF)は、好ましくは3以上、より好ましくは3.5以上である。ウイルス力価は、例えば、感染価による測定またはquantitative Polymerase Cain Reaction(qPCR)法等により測定することが出来る。
ウイルス除去率は下記の計算式で測定することが出来る。
LRF={log10(V1)+log10(T1)}-{log10(V2)+log10(T2)}
V1:負荷液量
V2:回収液量
T1:負荷液のウイルス力価
T2:回収液のウイルス力価
本発明において、不純物含量が低下した目的蛋白質は、回収比率または回収率で測定することが出来る。本明細書において、回収率は収率とも記載する。
目的蛋白質の回収比率は、好ましくは0.80以上、より好ましくは0.85以上、さらに好ましくは0.90以上である。目的蛋白質の回収率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。目的蛋白質の回収比率または回収率は、例えば、吸光度またはプロテインAなどのアフィニティHPLC法等により測定することが出来る。
本発明において、例えば、目的蛋白質の回収比率は以下の計算式で算出することが出来る。
回収比率(C/Co)=活性炭処理後の目的蛋白質濃度(C)/活性炭処理前の目的蛋白質濃度(Co)
また、例えば、目的蛋白質の回収率は以下の計算式で算出することが出来る。
回収率=(活性炭処理後の目的蛋白質濃度×回収液量/活性炭処理前の目的蛋白質濃度×活性炭処理前の液量)×100
本発明は、活性炭を用いて、目的の蛋白質と不純物とを分離し、不純物含量が低下した目的の蛋白質を取得する精製方法を含む、蛋白質の製造方法に関する。
本発明の蛋白質の製造方法において、活性炭を用いた精製方法と組み合わせる他の精製方法としては、医薬品の製造に適した方法であればいずれも用いられるが、例えば、前述の蛋白質含有水溶液を調製する際に用いられるイオン交換膜(例えば、陰イオン交換膜)、クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーおよび混合クロマトグラフィー)、アルコール分画、沈殿物除去、塩析、緩衝液交換、濃縮、希釈、ろ過、ウイルス不活性化、ウイルス除去等を用いることが出来る。活性炭を用いた精製方法と組み合わせる他の精製方法は、複数の種類、数を組み合わせてもよく、陰イオン交換膜、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィーおよび混合クロマトグラフィーから選ばれる少なくとも一つを使用することが好ましい。
本発明において蛋白質が抗体である場合、活性炭を用いた精製方法と組み合わせるクロマトグラフィーとしては、好ましくはアフィニティクロマトグラフィーを含まない製造方法、より好ましくはプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含まない製造方法が挙げられる。蛋白質が抗体である場合、活性炭と組み合わせるクロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィーまたはその組み合わせが挙げられる。
本発明の蛋白質の製造方法として、例えば、本発明において蛋白質が抗体である場合、活性炭を用いた精製方法の後に、引き続き非吸着モードで行われる陰イオン交換クロマトグラフィー、更に引き続き吸着モードで行われる陽イオン交換クロマトグラフィーを行う製造方法、または活性炭を用いた精製方法の後に、引き続き吸着モードで行われる陽イオン交換クロマトグラフィー、更に引き続き非吸着モードで行われる陰イオン交換クロマトグラフィーを行う製造方法等が挙げられる。
更に好ましくは、例えば、活性炭を用いた精製方法と組み合わせる全てのクロマトグラフィーが非吸着モードで行われる蛋白質の製造方法(All negative chromatography)が挙げられる。具体的には、例えば、蛋白質が抗体である場合、活性炭を用いた精製方法の後に、引き続き非吸着モードで行われる陰イオン交換クロマトグラフィーやカラムを用いない陰イオン交換膜を用いたクロマトグラフィーを行う製造方法等が挙げられる。
以下、実施例により本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例において、蛋白質由来の重合体の含有率(以下、重合体含有率とも略す)はゲルろ過HPLC分析で目的蛋白質より高分子量側で検出されるピークの割合を示す。蛋白質由来の分解物の含有率(以下、分解物含有率とも略す)はゲルろ過HPLC分析で目的蛋白質より低分子量側で検出されるピークの割合を示す。
実施例1 モノクローナル抗体(Mab A、C、D、又はE)を用いた活性炭処理量の検討
モノクローナル抗体[Mab A、C、D(以上IgG1)、又はE(IgG4)]を含むCHO細胞培養液を遠心分離(2,900g、10分)、続いてメンブランフィルターろ過(0.22μmフィルター)することにより、細胞を除去し、各CHO細胞培養上清を調製した。
次いで、各CHO細胞培養上清を酸またはアルカリでpH4.5にそれぞれ調整した。1時間静置後、生成した沈殿を遠心分離(2,900g、10分)、続いてメンブランフィルターろ過(0.22μmフィルター)で除去し、各pH調整清澄化液を得た。
次いで、得られた各pH調整清澄化液を約5mLずつ15mLチューブに移し、活性炭[白鷺(登録商標)P:日本エンバイロケミカルズ社製]をそれぞれ25、50、100、または200mg添加して、混合した。混和液を室温で17時間ローテーターを用いて撹拌した後、遠心分離(2,900g、10分)、続いてメンブランフィルターろ過(0.22μmフィルター)で活性炭を除去し、各活性炭処理液を得た。
得られた各活性炭処理液の宿主細胞蛋白質濃度をELISA法により分析した。活性炭添加量と宿主細胞蛋白質濃度の関係を図1に示す。図1に示すように、何れのpH調整清澄化液を処理した場合においても活性炭量に応じて宿主細胞蛋白質濃度が変化することが明らかになった。また、その関係は用いた各pH調整清澄化液によってその傾きは異なるが、宿主細胞蛋白質濃度の自然対数と極めて高い相関があることが明らかになった。
以上より、活性炭添加量を増加させるだけで飛躍的に宿主細胞蛋白質の除去が可能であることが判った。
各活性炭溶出液の分解物含量をゲルろ過HPLC法により分析した結果を図2に示す。図2に示すように、いずれの活性炭処理液においても活性炭添加量に応じて分解物が効果的に除去されていることが確認された。
各活性炭処理液の抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析した。活性炭添加量と抗体濃度の関係を図3に示す。図3に示すように、何れのpH調整清澄化液を処理した場合においても活性炭量に応じて抗体濃度が低下し、その関係は極めて高い相関であることが明らかになった。また、その傾きは抗体のサブクラスがIgG1であるMab A、Mab C、Mab Dを含むpH調整清澄化液を用いた場合は同様であり、サブクラスがIgG4であるMab Eは傾きが負に大きい値を示した。
図1~図3に示す結果から、活性炭を用いて不純物を顕著に除去するためには活性炭の添加量を増加させることが効果的であるが、抗体自体も活性炭の増量により吸着量が増加するため、不純物の除去効率を向上させ、且つ回収率も向上させる活性炭処理条件を見出すことに必要があることが確認された。
実施例2 活性炭前処理液の希釈効果
モノクローナル抗体(Mab A)を含むCHO細胞培養液を精密ろ過して細胞を除去した後、酸またはアルカリでCHO細胞培養上清をpH4.5に調整した。一時間静置後、生成した沈殿を遠心分離(2,900g、10分)、続いてメンブランフィルターろ過(0.22μmフィルター)で除去し、pH調整清澄化液を得た。
得られたpH調整清澄化液約5mL、またはpH調整清澄化液約5mLに緩衝液約5mLを加えた2倍希釈液に活性炭[白鷺(登録商標)P:日本エンバイロケミカルズ社製]を負荷量が0.1~0.5mg抗体/mg活性炭となるように添加し、室温で17時間ローテーターを用いて撹拌後、遠心分離(2,900g、10分)、続いてメンブランフィルターろ過(0.22μmフィルター)して活性炭を除去し、各活性炭処理液を得た。
希釈用緩衝液は、導電率が1mS/cm未満である0.05% polysorbate80、10mmol/L Sodium L-glutamate、262mmol/L、D-sorbitol(pH5.5)を用いた。活性炭を添加していないpH調整清澄化液、またはpH調整清澄化液の2倍希釈液をコントロールとした。
各負荷量の活性炭処理液の抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析し、回収比率(C/C0)を図4に示す。図4に示すように、活性炭量を増加して負荷量を低下させた結果、回収比率が低下した。回収比率はpH調整清澄化液の希釈の有無で大きく影響を受けなかったが、希釈することによって低負荷量ではわずかに高値を示す傾向が確認された。
各負荷量の活性炭処理液の宿主細胞蛋白質(HCP)濃度をELISA法により分析した結果を図5に示す。希釈したサンプルは希釈倍率を乗じた値で示した。図5に示すように、低負荷量では宿主細胞蛋白質はpH調整清澄化液を希釈することによってより除去されることが明らかになった。
各負荷量の活性炭溶出液の重合体(HMWs)含有率および分解物(LMWs)含有率をゲルろ過HPLC法により、分析した結果をそれぞれ図6および図7に示す。図6および図7に示すように、重合体含有率および分解物含有率は希釈の有無によって大きく変動しなかった。
以上の結果から、清澄化液を希釈した活性炭前処理液を調製することで、活性炭を増量して負荷量を下げた時に各種不純物の除去効果がより向上し、回収比率は同等か若干向上した。回収比率と各種不純物の除去効果との最も両立した負荷量は0.15~0.20mg抗体/mg活性炭であった。
実施例3 活性炭前処理液の濃縮希釈効果
モノクローナル抗体(Mab A)を含むCHO細胞培養液を連続遠心した後、デプス膜(メルク社製:A1HC)を用いて細胞を除去した。その細胞除去液を、MF膜[Pall社製:フロロダイン(登録商標)]を通して酸またはアルカリでpH4.5に調整した。4℃で6時間静置後、生成した沈殿をSHC膜(メルク社製)で除去した。得られたpH調整清澄化液を、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3 30kD]で10倍濃縮後、ミリQ水を用いて2倍、5倍、または10倍希釈した濃縮希釈液を得た。
各濃縮希釈液約5mLに活性炭(特製白鷺:日本エンバイロケミカルズ社製、白鷺は登録商標)を負荷量が0.2mg抗体/mg活性炭となるように添加し、室温で17時間ローテーターを用いて撹拌後、遠心分離(2,900g、10分)、続いてメンブランフィルターろ過(0.22μmフィルター)して活性炭を除去した各濃縮希釈液の活性炭処理液を得た。
活性炭を添加していない各濃縮希釈液をコントロールとした。得られた各濃縮希釈液の活性炭処理液とコントロールの抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析し、回収比率(C/C0)を図8に示す。図8に示すように、回収比率は、pH調整清澄化液の濃縮希釈により向上することが確認された。
各濃縮希釈液の活性炭処理液の宿主細胞蛋白質(HCP)濃度をELISA法により分析した結果を図9に示す。図9に示すように、宿主細胞蛋白質濃度はpH調整清澄化液を濃縮希釈することによって低下し、希釈率を上げることでより効率的にHCPを除去できることが明らかになった。
各濃縮希釈液の活性炭処理液の重合体(HMWs)含有率および分解物(LMWs)含有率をそれぞれ図10および図11に示す。図10に示すように、重合体含有率はpH調整清澄化液を濃縮希釈することによって低下し、希釈率を上げることでより効率的にHMWsを除去できることが明らかになった。また、図11に示すように、LMWsはpH調整清澄化液の濃縮希釈の有無に関わらず、いずれも効率的に除去できた。
以上の結果から、pH調整清澄化液を濃縮希釈した活性炭前処理液を調製することによって、高い回収比率と宿主細胞蛋白質、重合体および分解物などの不純物の効果的除去を同時に達成できることが判った。
実施例4 活性炭処理に適した活性炭前処理液の導電率
モノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清を酢酸でpH4.5に調整した。1時間静置後、細胞および生成した沈殿をデプスフィルター[メルク社製:Clarisolve(登録商標)]およびMF膜(メルク社製:SHC)で除去した。
得られたpH調整清澄化液をUF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3 30kD]で5倍濃縮後、連続的にミリQ水を加水して、抗体濃度20mg/mLで、導電率が0.15mS/cm、0.3mS/cm、0.6mS/cm、1.2mS/cm、2.4mS/cm、4.8mS/cmまたは9.6mS/cmの各導電率調整液を得た。
各導電率調整液約5gに活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製:特製白鷺、白鷺は登録商標)を負荷量が0.2mg抗体/mg活性炭になるように添加し、室温にて一晩撹拌した。撹拌後の各溶液を遠心分離(2,900g、10分)し、0.2μmフィルターでろ過した各導電率の活性炭処理液を得た。活性炭を添加していない各導電率調整液をコントロールとした。
得られた各導電率の活性炭処理液とコントロールの抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析し、回収比率(C/C0)を図12に示す。図12に示すように、回収比率は低導電率の方が高くなる傾向を示し、5mS/cm以下では90%以上の高い回収比率が確認された。
各導電率の活性炭処理液の重合体含有率および分解物含有率はゲルろ過HPLC法を用いて分析し、その結果を図13および図14に示す。図13に示すように、導電率が低下するに従って、重合体含有率が低下し、1mS/cm以下では1%未満となった。また、図14に示すように、分解物含有率は、導電率が低下するに従って低下し、0~10mS/cmでは全て1%未満となった。
蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量はELISA法を用いて分析し、その結果を図15に示す。図15に示すように、導電率が低下するに従って宿主細胞蛋白質含有量が低下し、5mS/cm以下で10ppm未満の低い宿主細胞蛋白質含有量が確認された。
以上の結果から、pH調整清澄化液の導電率を好ましくは0~5mS/cmに、より好ましくは0~2mS/cmに、特に好ましくは0~1mS/cmに調整することによって、高い回収比率と宿主細胞蛋白質、重合体および分解物などの不純物の効果的除去を同時に達成できることが判った。
実施例5 活性炭処理に適した活性炭前処理液の塩化ナトリウム濃度
モノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清を酢酸でpH4.5に調整した。1時間静置後、細胞および生成した沈殿をフィルターデプスフィルター[メルク社製:Clarisolve(登録商標)]およびSHC膜(メルク社製)で除去した。
得られたpH調整清澄化液をUF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3 30kD]で5倍濃縮後、連続的にミリQ水を加水して導電率を1mS/cm以下に調整した。この溶液に塩化ナトリウムを添加して、抗体濃度20mg/mLで、塩化ナトリウム濃度が0mmol/L、5mmol/L、10mmol/L、20mmol/L、40mmol/L、80mmol/Lおよび160mmol/Lの各塩化ナトリウム濃度調整液を得た。
各塩化ナトリウム濃度調整液約5gに活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製:特製白鷺、白鷺は登録商標)を負荷量が0.2mg抗体/mg活性炭になるように添加し、室温にて一晩撹拌した。撹拌後の各溶液を遠心分離(2,900g、10分)し、メンブランフィルター(0.2μmフィルター)でろ過した各塩化ナトリウム濃度の活性炭処理液を得た。活性炭を添加していない各塩化ナトリウム濃度調整液をコントロールとした。
得られた各塩化ナトリウム濃度の活性炭処理液とコントロールの抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析し、回収比率(C/C0)を図16に示す。図16に示すように、低塩化ナトリウム濃度になるに従って回収比率が高くなり、10mmol/L以下では90%以上の高い回収比率が確認された。
各塩化ナトリウム濃度の活性炭処理液の重合体含有率および分解物含有率はゲルろ過HPLC法を用いて分析し、その結果を図17および図18に示す。図17に示すように、塩化ナトリウム濃度が低下するに従って重合体含有率が低下し、5mmol/L以下で重合体含有率が1%未満となった。また、図18に示すように、分解物含有率は、塩化ナトリウム濃度が低下するに従って低下傾向を示し、塩化ナトリウム濃度が0~160mmol/Lでは分解物含有率は全て1%未満となった。
蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量はELISA法を用いて分析した結果を図19に示す。図19に示すように、塩化ナトリウム濃度が低下するに従って宿主細胞蛋白質含有量が低下し、塩化ナトリウム濃度が40mmol/L以下では10ppm未満の低い宿主細胞蛋白質含有量が確認された。
以上の結果から、pH調整清澄化液の塩化ナトリウム濃度を好ましくは0~10mmol/Lに、より好ましくは0~5mmol/Lに調整することによって、高い回収比率と宿主細胞蛋白質、重合体および分解物などの不純物の効果的除去を同時に達成できることが判った。
実施例6 活性炭処理に適した活性炭前処理液の抗体濃度
モノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清を酢酸でpH4.5に調整した。1時間静置後、細胞および生成した沈殿をデプスフィルター[メルク社製:Clarisolve(登録商標)]およびSHC膜(メルク社製)で除去した。
得られたpH調整清澄化液をUF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3 30kD]で濃縮/ミリQ水加水を繰り返すことで導電率を1mS/cm以下に調整した。この溶液にミリQ水を添加して、抗体濃度が45.1mg/mL、22.5mg/mL、11.4mg/mL、5.5mg/mL、2.8mg/mLおよび1.4mg/mLの各抗体濃度調整液を得た。
各抗体濃度調整液約5gに活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製:特製白鷺、白鷺は登録商標)を負荷量が0.2mg抗体/mg活性炭になるように添加し、室温にて一晩撹拌した。撹拌後の各溶液を遠心分離(2,900g、10分)し、メンブランフィルター(0.2μmフィルター)でろ過した各抗体濃度の活性炭処理液を得た。活性炭を添加していない各抗体濃度調整液をコントロールとした。
得られた各抗体濃度の活性炭溶出液とコントロールの抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析し、回収比率(C/C0)を図20に示す。図20に示すように、何れの抗体濃度でも90%以上の高い回収比率が確認された。
各抗体濃度の活性炭溶出液の重合体含有率および分解物含有率はゲルろ過HPLC法を用いて分析し、その結果を図21および図22に示す。図21に示すように、抗体濃度が低下するに従って重合体含有率が低下し、抗体濃度が23mg/mL以下で重合体含有率が1%未満となった。また、図22に示すように、抗体濃度が増加するに従って分解物含有率が低下し、抗体濃度が11mg/mL以上で分解物含有率は全て1%未満となった。
蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量はELISA法を用いて分析し、その結果を図23に示す。図23に示すように、抗体濃度が増加するに従って宿主細胞蛋白質含有量が低下し、抗体濃度が5.5mg/mL以上で10ppm未満の低い宿主細胞蛋白質含有量が確認された。
以上の結果から、pH調整清澄化液の抗体濃度を好ましくは5.5~23mg/mLに、より好ましくは11~23mg/mLに調整することによって、高い回収比率と宿主細胞蛋白質、重合体および分解物などの不純物の効果的除去を同時に達成できることが判った。
実施例7 活性炭処理に適した負荷量と活性炭処理時間
モノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清を酢酸でpH4.5に調整した。1時間静置後、細胞および生成した沈殿をフィルターデプスフィルター[メルク社製:Clarisolve(登録商標)]およびSHC膜(メルク社製)で除去した。
得られたpH調整清澄化液をUF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3 30kD]で濃縮/ミリQ水加水を繰り返すことで導電率を1mS/cm以下に低下させた。この溶液にミリQ水を添加して、抗体濃度を10mg/mLに調整した。
得られた溶液約5gに活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製:特製白鷺、白鷺は登録商標)を負荷量0.05~3.2mg抗体/mg活性炭になるように添加し、処理時間2~24時間(2、4、8、12または24時間)で活性炭処理した。処理後の各溶液を遠心分離(2,900g、10分)し、メンブランフィルター(0.2μmフィルター)でろ過した各活性炭処理液を得た。活性炭を添加していないものをコントロールとした。各負荷量および処理時間で処理した活性炭処理液とコントロールの抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析した。
その結果、図24に示すように、負荷量0.05mg抗体/mg活性炭では24時間処理で回収比率(C/Co)の低下が認められたが、その他の負荷量では24時間処理でも回収比率は維持された。
各活性炭処理液の重合体含有率および分解物含有率はゲルろ過HPLC法を用いて解析し、その結果を図25および図26に示す。図25に示すように、負荷量0.05~3.2mg抗体/mg活性炭および処理時間2~24時間の何れの検討条件でも重合体含有率が1%未満となった。また、図26に示すように、分解物含有率は、負荷量が低くなるに従って、また、処理時間が長くなるに従って低下し、負荷量が0.05~0.3mg抗体/mg活性炭で処理時間が12~24時間で分解物含有率が全て1%未満となった。
蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量はELISA法を用いて分析し、各活性炭処理液の分析結果を図27に示す。図27に示すように、負荷量が低くなるに従って、また、処理時間が長くなるに従って、宿主細胞蛋白質含有量が低下し、負荷量が0.05~0.2mg抗体/mg活性炭で処理時間が8~24時間で宿主細胞蛋白質含有量が10ppm未満になった。
図24~27の結果から、いずれの不純物も十分に除去でき、且つ回収比率も高い負荷量と活性炭処理時間の組み合わせは、負荷量が0.1~0.3mg抗体/mg活性炭で且つ処理時間が8~24時間、又は負荷量が0.05~0.15mg抗体/mg活性炭で且つ処理時間が2~12時間であることが確認された。
実施例8 活性炭膜の一回通液処理と循環通液処理による不純物除去効果
モノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養液185Lを酸またはアルカリでpH4.5に調整した。pH調整CHO細胞培養液を一時間静置後、細胞分離デプス膜[メルク社製:Clarisolve(登録商標)]を用いて細胞を除去し、SHC膜(メルク社製)を用いてpH調整清澄化液を得た。
pH調整清澄化液を、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3]を用いて5Lまで濃縮し、純水を用いて18.5Lまで希釈し、濃縮希釈液を調製した。濃縮希釈液のうち、17.5Lを2.8m2の活性炭膜[Pall社製:Stax(商標) AKS1]に一回通液し一回通液処理液を得た。次いで、室温で16時間循環通液した後、循環液を回収した。更に、18.5Lの純水を活性炭膜に通液し回収後、これを循環液と合わせて混和した。得られた混和回収液を、SHC膜(メルク社製)に通液し、循環通液処理液を得た。
ゲルろ過HPLC法を用いて各活性炭膜処理液の分解物含有率を分析した結果を図28に示す。図28に示すように、活性炭膜に一回通液することで著しく分解物含量が低下し、循環通液することでさらに低下した。
蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量はELISA法を用いて分析し、その結果を図29に示す。図29に示すように、活性炭膜に一回通液することで30分の一まで宿主細胞蛋白質含有量が低下し、循環通液することで一回通液の80分の一のレベルまで顕著に低下した。
各活性炭膜処理液のDNA濃度をThreshold法により分析した結果を図30に示す。図30に示すように、活性炭膜に一回通液するだけでDNA濃度は定量限界未満まで除去されることが明らかになった。
以上の結果から、活性炭膜処理は一回通液処理よりも循環通液処理の方が効果的に不純物を除去可能であることが確認された。
実施例9 活性炭処理に適した活性炭種
精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab A、C、D)を含むCHO細胞培養上清を酸またはアルカリでpH4.5にそれぞれ調整した。一時間静置後、生成した沈殿を遠心分離(13,200g、10分)、続いてメンブランフィルターろ過(0.22μmフィルター)で除去し、各pH調整清澄化液を得た。
次いで、得られた各pH調整清澄化液約2mLに図31および図32に示す各活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製、Norit社製、フタムラ化学社製)を20~40mg添加し、混合した。混和液は、室温で16時間ローテーターを用いて撹拌し、遠心分離(13,200g、10分)、続いてメンブランフィルターろ過(0.22μmフィルター)で活性炭を除去し、各活性炭処理液を得た。
各活性炭処理液の抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析し、回収比率(C/C0)を図31に示す。また、得られた各活性炭処理液の宿主細胞蛋白質濃度をELISA法により分析した結果を図32に示す。
図31および図32に示すように、全ての活性炭について宿主細胞蛋白質の除去性が確認されたが、特に木質系活性炭である強力白鷺、太閤Y、特製白鷺、白鷺P、白鷺A、白鷺C(以上、日本エンバイオケミカルズ社製、白鷺は登録商標)、太閤KA、太閤A(フタムラ化学社製)、Norit C GSP、Norit CNI(以上、日本ノリット社製、Noritは登録商標)、および木質とビートからなる活性炭であるNorit GBG(日本ノリット社製、Noritは登録商標)は特に宿主細胞蛋白質の除去性が高いことが確認された。さらに、木質系活性炭のなかでも特に塩化亜鉛賦活化活性炭である強力白鷺、太閤Y、特製白鷺は高い宿主細胞蛋白質の除去性を有していることが確認された。
次に、各活性炭溶出液の重合体含有率および分解物含有率はゲルろ過HPLC法を用いて、分析した結果を図33および図34に示す。
図33に示すように、重合体含有率はMab Aにおいて著しい低減が確認された。塩化亜鉛賦活化木質系活性炭である強力白鷺、特製白鷺(以上、日本エンバイオケミカルズ社製、白鷺は登録商標)、太閤Y(フタムラ化学社製)、あるいは水蒸気賦活化木質系活性炭である白鷺P、白鷺A、白鷺C(以上、日本エンバイオケミカルズ社製、白鷺は登録商標)、太閤KA、太閤A(以上、フタムラ化学社製)で特に大きな重合体含有率の低下を確認した。
また、図34に示すように、分解物含有率はいずれの抗体においても活性炭処理による低減が確認された。活性炭の中でも、木質系活性炭である強力白鷺、特製白鷺、白鷺P、白鷺A、白鷺C(以上、日本エンバイオケミカルズ社製、白鷺は登録商標)、太閤Y、太閤KA、太閤A(以上、フタムラ化学社製)、Norit C GSP、Norit CNI、および木質とビートからなる活性炭であるNorit GBG(以上、日本ノリット社製、Noritは登録商標)で処理することによって著しい分解物含有率の低下が確認された。特に、塩化亜鉛賦活化木質系活性炭である強力白鷺、特製白鷺(以上、日本エンバイオケミカルズ社製、白鷺は登録商標)、太閤Y(フタムラ化学社製)で処理することにより、分解物含有率は効果的に低下することが確認された。
実施例10 活性炭膜処理に適した活性炭種
モノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清を酢酸でpH4.5に調整した。1時間静置後、細胞および生成した沈殿をデプスフィルター[メルク社製:Clarisolve(登録商標)]およびSHC膜(メルク社製)で除去した。
得られたpH調整清澄化液をUF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3 30kD]で濃縮/ミリQ水加水を繰り返すことで導電率を1mS/cm以下に低下させた。この溶液にミリQ水を添加して、抗体濃度30mg/mLに調整した。
得られた溶液を表1に示す活性炭膜および処理条件で通液し、ろ過した溶液を再度活性炭膜に戻す循環処理を室温にて16時間実施した。その後、循環液および膜内部に残った抗体を回収した各活性炭膜処理液を得た。活性炭膜処理していないものをコントロールとした。
得られた各活性炭膜処理液とコントロールの抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析し、回収率を図35に示す。図35に示すように、特製白鷺、強力白鷺(以上、日本エンバイロケミカルズおよび3M社製、白鷺は登録商標)またはAKS1フィルター(Pall社製)で、80%以上の高い回収率が得られた。
各活性炭膜処理液の重合体含有率および分解物含有率はゲルろ過HPLC法を用いて分析し、その結果を図36および図37に示す。図36および図37に示すように、何れの膜種でも、重合体含有率および分解物含有率が1%未満となった。
蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量はELISA法を用いて分析し、その結果を図38に示す。図38に示すように、何れの膜種でも、宿主細胞蛋白質含有量はおよそ10ppm未満であった。
以上の結果から、何れの活性炭膜種でもほぼ同様に低レベルまで不純物除去効果を有することが確認されたが、特製白鷺、強力白鷺(以上、日本エンバイオケミカルズおよび3M社製、白鷺は登録商標)またはAKS1フィルター(Pall社製)ではより高い回収率が得られた。
実施例11 活性炭処理に適した活性炭細孔径
Mab Aを含有するpH調整清澄化液を各種活性炭で処理した際の、活性炭の平均細孔径と活性炭処理後のHCP濃度との関係を図39に示す。活性炭の平均細孔径は窒素吸着等温吸着曲線よりBJH法を用いて算出した。
図39に示すように、平均細孔径とHCP濃度には相関があり、平均細孔径が大きくなるに従ってHCP濃度の著しい低下が確認された。特に、平均細孔径が3.2nmを超える活性炭で処理することによってHCP濃度が効果的に低下することが確認された。
Mab A含有pH調整清澄化液を各種活性炭で処理した際の、活性炭の平均細孔径と活性炭処理後の重合体含有率、分解物含有率との関係をそれぞれ図40および図41に示す。図40および図41に示すように、平均細孔径と重合体含有率、分解物含有率には相関があり、平均細孔径が大きくなるに従ってこれらの含有率の著しい低下が確認された。特に、平均細孔径が3.2nmを超える活性炭で処理することによってこれらの含有率が効果的に低下することが確認された。
実施例12 活性炭前処理液に適した酸またはアミノ酸添加
モノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清を酢酸でpH4.5に調整した。1時間静置後、細胞および生成した沈殿をデプスフィルター[メルク社製:Clarisolve(登録商標)]およびSHC膜(メルク社製)で除去した。
得られたpH調整清澄化液をUF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3 30kD]で濃縮/ミリQ水加水を繰り返すことで溶液の導電率を低下させた。ミリQ水にて、抗体濃度約20mg/mLに調整後、図42~44に示す酸またはアミノ酸溶液を添加してpH4.25に調整した各活性炭前処理液を準備した。
次いで、得られた各pH調整液約5gに活性炭(日本エンバイロケミカルズ社製、特製白鷺、白鷺は登録商標)を負荷量0.2mg抗体/mg活性炭で添加し、室温で16時間撹拌した。その後、各溶液を遠心分離(2,900g、10分)、続いてメンブランフィルターろ過(0.2μmフィルター)し、各活性炭処理液を得た。活性炭を添加していない各酸またはアミノ酸添加溶液をコントロールとした。
各活性炭処理液とコントロールの抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析し、回収比率(C/Co)を図42に示す。図42に示すように、50%酢酸、3Mクエン酸、または3Mグリシンを添加した場合、特に高い回収比率(C/Co)を示した。
各活性炭溶出液の重合体含有率および分解物含有率はゲルろ過HPLC法を用いて分析した。活性炭処理による各酸またはアミノ酸添加による重合体含有率および分解物含有率を図43および図44に示す。図43に示すように、2Mアルギニンを除いて、何れの各酸またはアミノ酸を添加しても重合体含有率が1%未満となった。図44に示すように、分解物含有率は、検討した各酸またはアミノ酸では、何れも分解物含有率が全て1%未満となった。
蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量はELISA法を用いて分析した。各酸またはアミノ酸添加による宿主細胞蛋白質含有量を図45に示す。図45に示すように、各酸またはアミノ酸添加では、何れも10ppm未満の低いHCPであった。
以上の結果から、不純物の除去効果が高く、且つ回収比率も高い活性炭前処理液に適した酸またはアミノ酸の添加としては、50%酢酸、3Mクエン酸、または3Mグリシンが特に好ましかった。
実施例13 Mab A精製[活性炭プロセス(1)]
モノクローナル抗体(Mab A)を含むCHO細胞培養液を酸またはアルカリでpH4.5に調整した。一時間静置後、細胞分離デプス膜[メルク社製:Clarisolve(登録商標)]を用いて細胞を除去し、SHC膜(メルク社製)を通してpH調整清澄化液を得た。
pH調整清澄化液20Lを、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3]を用いて400mLに濃縮後、ミリQ水を用いて4000mLに希釈した濃縮希釈液を調製した。濃縮希釈液のうち、3700mLを2つの3L スピナーフラスコ(コーニング社製)に移し、それぞれ強力白鷺(日本エンバイロケミカルズ社製、白鷺は登録商標)を81.41g添加後、室温で16時間混合撹拌して活性炭混合液を調整した。活性炭混合液を遠心分離し、上澄液を回収した。
更に、沈殿した活性炭にそれぞれミリQ水を220mL添加して懸濁し、再度遠心分離を行って上澄液を回収した。この操作をもう一度繰り返し、得られた上澄液を全て混和した。混和した上澄液をSHC膜(メルク社製)を用いて清澄化した活性炭処理液4580mLを得た。
活性炭処理液に2mol/L酢酸を添加してpHを3.5に調整後、1時間保持することでウイルス不活化を実施した。ウイルス不活化後、3mol/Lトリス溶液を用いてpHを8.0に調整したウイルス不活化処理液を得た。
ウイルス不活化処理液のうち、2Lを予め10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換膜[旭化成メディカル社製:Qyu Speed(商標) D、150mL]に通液した。次いで、平衡化緩衝液を通液し非吸着画分を回収後、2M酢酸でpHを5.0に調整したQSD処理液を得た。
QSD処理液を予め10mmol/L酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換カラム[メルク社製:Eshmuno(登録商標)CPX、50mm IDx20cm]に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液でカラムを洗浄した。次に、平衡化緩衝液と0.3mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/L酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を用いた直線塩濃度勾配(10カラム容量)により、CPX溶出液を得た。
CPX溶出液を、予めミリQ水で平衡化したウイルス除去膜[旭化成メディカル社製:Planova(商標) 20N、0.01m2]に通液し、ウイルスろ過膜処理液を得た。ウイルスろ過膜処理液を、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3、0.11m2]を用いて120mg/mL程度に濃縮後、245mmol/L D-ソルビトールを含有する10mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH5.2)への緩衝液置換を行い、濃縮・緩衝液置換液を得た。
濃縮・緩衝液置換液に2.20g/Lのポリソルベート80および245mmol/L D-ソルビトール含有10mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH5.2)をポリソルベート80の終濃度が0.2g/Lになるように添加後、フィルターろ過(0.22μmフィルター)し、活性炭プロセス(1)精製品を得た。
実施例14 Mab A精製[活性炭プロセス(2)]
実施例13で得られたウイルス不活化処理液2Lを、予め100mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換樹脂[東ソー社製:TOYOPEARL(登録商標) NH2-750F、32mm IDx24cm]に通液した。次いで、平衡化緩衝液を通液し、カラム非吸着画分を回収後、2M酢酸でpHを5.0に調整したNH2 Toyopearl処理液を得た。
NH2 Toyopearl処理液を、予めミリQ水で平衡化したウイルス除去膜[旭化成メディカル社製:Planova(登録商標) 20N、0.01m2]に通液し、ウイルスろ過膜処理液を得た。ウイルスろ過膜処理液を、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3、0.11m2]を用いて120mg/mL程度に濃縮後、245mmol/L D-ソルビトールを含有する10mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH5.2)への緩衝液置換を行い、濃縮・緩衝液置換液を得た。
濃縮・緩衝液置換液に2.20g/Lのポリソルベート80および245mmol/L D-ソルビトールを含有する10mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH5.2)をポリソルベート80の終濃度が0.2g/Lになるように添加後、フィルターろ過(0.22μmフィルター)し、活性炭プロセス(2)精製品を得た。
比較例1 Mab A精製(プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含むプロセス)
実施例13と同一のモノクローナル抗体(Mab A)を含むCHO細胞培養液を遠心分離して細胞を除去し、得られた上清をデプス膜[ミリポア社製:ミリスタック(登録商標)PODフィルター]および精密ろ過膜を用いて清澄化液を得た。
清澄化液を、予め10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化したプロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラム[GEヘルスケア社製:MabSelect(登録商標) SuRe]に添加した。添加終了後、5カラム容量の1mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)および平衡化緩衝液でカラムを洗浄した。
次に、5カラム容量の100mmol/Lグリシン緩衝液(pH3.2)により溶出したカラム溶出画分をMabSelect SuRe溶出液としてプールした。MabSelect SuRe溶出液に0.1mol/L塩酸を添加してpHを3.5に調整し、1時間保持することでウイルス不活化を実施した。ウイルス不活化後、0.5Mトリス溶液を用いてpHを7.0に中和し、デプスフィルター[ミリポア社製:ミリスタック(登録商標)PODフィルター]を通してウイルス不活化処理液を得た。
ウイルス不活化処理液を、予め10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製:Q Sepharose XL、Sepharoseは登録商標)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液し、カラム非吸着画分をプールした後、1mol/Lクエン酸溶液でpH5.0に調整したQ Sepharose溶出液を得た。
Q Sepharose溶出液を、予め50mmol/L塩化ナトリウム含有20mmol/Lクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム[メルク社製:Fractogel(商標) EMD SE Hicap]に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。
次に平衡化緩衝液と0.3mol/L塩化ナトリウムを含む20mmol/Lクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を用いた直線塩濃度勾配(10カラム容量)によりFractogel回収液を得た。
Fractogel回収液を、予め50mmol/L塩化ナトリウム含有20mmol/Lクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)で平衡化したウイルス除去膜[旭化成メディカル社製:Planova(登録商標) 20N]に通液し、ウイルスろ過膜処理液を得た。
ウイルスろ過膜処理液を、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3]を用いた120mg/mL程度に濃縮後、245mmol/L D-ソルビトール含有10mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH5.2)への緩衝液置換を行い、濃縮・緩衝液置換液を得た。
濃縮・緩衝液置換液に2.20g/Lのポリソルベート80および245mmol/L D-ソルビトールを含有する10mmol/Lヒスチジン緩衝液(pH5.2)をポリソルベート80の終濃度が0.2g/Lになるように添加後、フィルターろ過(0.22μmフィルター)し、プロテインAプロセス精製品を得た。
プロテインAアフィニティクロマトグラフィーと活性炭プロセス(1)および活性炭プロセス(2)の比較を行った結果を以下に示す。
プロテインAアフィニティHPLC法により濃度定量を用いて分析した精製各工程の回収率および精製工程全体を通じた総回収率を図46に示す。ゲルろ過HPLC法を用いて分析した精製中間体および最終精製品の重合体含有率の結果を図47に、分解物含有率の結果を図48にそれぞれ示す。
図46~48に示すように、活性炭プロセス(1)および(2)では、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーに比べて回収率が若干低下するものの、50%以上もの回収率を示し、重合体および分解物が効果的に除去された。
精製中間体および最終精製品の宿主細胞蛋白質濃度をELISA法により分析した結果を図49に示す。図49に示すように、活性炭プロセス(1)および(2)では、プロテインAクロマトグラフィーと比較して宿主細胞蛋白質が100倍以上除去されることが明らかになった。また、原薬においても活性炭プロセス(1)および(2)の方がプロテインAプロセスよりも宿主細胞蛋白質濃度が低かった。
精製中間体および最終精製品のDNA濃度をThreshold法により分析した結果を図50に示す。活性炭プロセス(1)および(2)では、プロテインAクロマトグラフィーと比較して1800分の1未満の濃度まで低下していることが明らかになった。
また、陽イオン交換HPLC法を用いて分析した精製中間体および最終精製品のpre-peak含有率およびpost-peak含有率の結果を図51および図52に示す。図51および図52に示すように、活性炭処理により、post-peak含有率はプロテインAプロセスよりも低下し、より均一な抗体組成物となっていることが確認された。
以上の結果から、従来のプロテインAプロセスに比べて濃縮希釈により前処理液を調製する活性炭プロセス(1)および(2)では重合体、分解物、宿主細胞蛋白質、DNAおよびpost-peak等の不純物がいずれも効果的に除去された。
その結果、医薬品品質レベルまでこれら不純物を除去するために従来のプロテインAプロセスでは陰イオン交換と陽イオン交換の両イオン交換クロマトグラフィーが必要であったが、活性炭プロセス(1)および(2)ではどちらか一方のイオン交換クロマトグラフィーのみで医薬品品質レベルまで不純物が除去できることが確認された。
実施例15 Mab B精製(活性炭プロセス)
モノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養液185Lを酸またはアルカリでpH4.5に調整した。pH調整CHO細胞培養液を一時間静置後、細胞分離デプス膜[メルク社製:Clarisolve(登録商標)]を用いて細胞を除去し、SHC膜(メルク社製)を用いてpH調整清澄化液を得た。
pH調整清澄化液を、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3]を用いて5Lまで濃縮し、純水を用いて18.5Lまで希釈し、濃縮希釈液を調製した。濃縮希釈液のうち、17.5Lを2.8m2の活性炭膜[Pall社製:Stax(商標) AKS1]に一晩循環通液した後、循環液を回収した。更に、18.5Lの純水を活性炭膜に通液し回収後、これを循環液と合わせて混和した。得られた混和回収液を、SHC膜(メルク社製)に通液し、活性炭処理液を得た。
活性炭処理液28.8Lに3mol/Lトリスを添加し、pHを7.0に調整後、予め10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換膜[旭化成メディカル社:Qyu Speed(商標) D、150mL]に通液した。次いで、陰イオン交換膜に平衡化緩衝液を通液し、膜非吸着画分をQSD処理液として回収した。
QSD処理液に50%(W/W)酢酸を添加してpHを3.5に調整し、1時間保持することでウイルス不活化を実施した。ウイルス不活化後、3Mトリス溶液を用いてpHを5.0に調整し、ウイルス不活化処理液を得た。
ウイルス不活化処理液26.9Lを、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3、0.11m2]を用いて120mg/mL程度に濃縮後、262mmol/L D-ソルビトールを含有する10mmol/Lグルタミン酸緩衝液(pH5.2)への緩衝液置換を行い、濃縮・緩衝液置換液を得た。濃縮・緩衝液置換液をフィルターろ過(0.22μmフィルター)し、活性炭プロセス精製品を得た。
比較例2 Mab B精製(プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含むプロセス) 実施例15と同一のモノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養液を遠心分離して細胞を除去し、デプス膜[ミリポア社製:ミリスタック(登録商標)PODフィルター]および精密ろ過膜を用いて清澄化液を得た。
清澄化液を、予め10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化したプロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラム[GEヘルスケア社製:MabSelect(登録商標) SuRe]に添加した。添加終了後、5カラム容量の1mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)および平衡化緩衝液でカラムを洗浄した。
洗浄後、5カラム容量の100mmol/Lグリシン緩衝液(pH3.2)により溶出したカラム溶出画分をMabSelect SuRe溶出液としてプールした。MabSelect SuRe溶出液に0.1mol/L塩酸を添加してpHを3.5に調整し、1時間保持することでウイルス不活化を実施した。ウイルス不活化後、0.5Mトリス溶液を用いてpHを7.0に中和し、デプスフィルター[ミリポア社製:ミリスタック(登録商標)PODフィルター]を通してウイルス不活化処理液を得た。
ウイルス不活化処理液を、予め10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製:Q Sepharose XL、Sepharoseは登録商標)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液し、カラム非吸着画分をプールした後、1mol/Lクエン酸溶液でpH5.0に調整したQ Sepharose溶出液を得た。
Q Sepharose溶出液を、予め50mmol/L塩化ナトリウムを含有する20mmol/Lクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム[メルク社製:Fractogel(商標) EMD SE Hicap]に添加した。
添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。次に0.3mol/L塩化ナトリウムを含む20mmol/Lクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)からなる溶出緩衝液によりFractogel回収液を得た。
Fractogel回収液を、予め50mmol/L塩化ナトリウムを含有する20mmol/Lクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)で平衡化したウイルス除去膜[旭化成メディカル社製:Planova(登録商標) 20N、0.01m2]に通液し、ウイルスろ過膜処理液を得た。
ウイルスろ過膜処理液を、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3]を用いて120mg/mL程度に濃縮後、262mmol/L D-ソルビトールを含有する10mmol/Lグルタミン酸緩衝液(pH5.2)への緩衝液置換を行い、濃縮・緩衝液置換液を得た。濃縮・緩衝液置換液をフィルターろ過(0.22μmフィルター)し、プロテインAプロセス精製品を得た。
プロテインAアフィニティクロマトグラフィーと活性炭プロセスとを含むプロセスの比較を以下に示す。
プロテインAアフィニティHPLC法により濃度定量を用いて分析した精製各工程の回収率を図53に示す。図53に示すように、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーと活性炭プロセスでは同レベルの回収率が得られた。
ゲルろ過HPLC法を用いて分析した精製中間体および最終精製品の重合体含有率の結果を図54に、分解物含有率の結果を図55に示す。図54および図55に示すように、重合体、分解物ともに活性炭プロセスではプロテインAプロセスと同レベル除去されていることが確認された。
宿主細胞蛋白質濃度をELISA法により分析した結果を図56に示す。図56に示すように、活性炭処理後の宿主細胞蛋白質濃度は、プロテインAクロマトグラフィー後と比較して400分の1の濃度まで低下していることが明らかになった。
精製中間体および最終精製品のDNA濃度をThreshold法により分析した結果を図57に示す。図57に示すように、活性炭処理後のDNA濃度は、プロテインAクロマトグラフィー後と比較して1000分の1未満の濃度まで低下していることが明らかになった。
また、陽イオン交換HPLC法を用いて分析した精製中間体および最終精製品のpre-peak含有率およびpost-peak含有率の結果を図58および図59に示す。図59に示すように、活性炭処理により、post-peak含有率はプロテインAプロセスよりも低下し、より均一な抗体組成物となっていることが確認された。
以上の結果から、従来のプロテインAプロセスに比べて濃縮希釈により前処理液を調製し、活性炭膜に循環させるプロセスにおいても重合体、分解物、宿主細胞蛋白質、DNAおよびpost-peak等の不純物がいずれも効果的に除去された。
その結果、医薬品品質レベルまでこれら不純物を除去するために従来のプロテインAプロセスでは陰イオン交換と陽イオン交換の両イオン交換クロマトグラフィーが必要であったが、活性炭膜に循環させるプロセスではカラムを用いない陰イオン交換膜のみで医薬品品質レベルまで不純物が除去でき、且つ従来のプロテインAプロセスと同レベルの高回収率を達成できることが確認された。
実施例16 Mab B精製[活性炭プロセス(1)]
モノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養液400Lを酸またはアルカリでpH4.5に調整した。pH調整CHO細胞培養液を一時間静置後、細胞分離デプス膜[メルク社製:Clarisolve(登録商標)]を用いて細胞を除去し、MF膜[Pall社製:フロロダイン(登録商標)]を用いてpH調整清澄化液を得た。
pH調整清澄化液を、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3]を用いて16Lまで濃縮し、純水を16L加えて希釈する濃縮希釈を3回繰り返して実施した。さらに、同様の濃縮を行った後、純水を加えて40Lまで希釈した濃縮希釈液を得た。
濃縮希釈液のうち、38Lを11.4m2の活性炭膜[Pall社製:Stax(商標) AKS1]に通液後、次いで、SHC膜(メルク社製)を通液させる循環工程を一晩連続的に実施した。この循環工程で得られた循環液を回収後、26.4Lの純水を活性炭膜およびSHC膜に通液して洗浄液1を回収した。再度同量の純水を活性炭膜およびSHC膜に通液して洗浄液2を回収し、洗浄液1、洗浄液2および循環液を合わせて混和し、活性炭処理液を得た。
活性炭処理液82.6Lに3mol/Lトリスを添加し、pHを7.0に調整し、予め10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換膜[旭化成メディカル社製:Qyu Speed(商標) D、550mL]に通液した。次いで、平衡化緩衝液を通液し、非吸着画分をQSD処理液として回収した。
QSD処理液に50%(W/W)酢酸を添加してpHを3.5に調整し、1時間保持することでウイルス不活化を実施した。ウイルス不活化後、3Mトリス溶液を用いてpHを5.0に調整し、ウイルス不活化処理液を得た。
ウイルス不活化処理液97Lをウイルス除去膜[旭化成メディカル社製:Planova(登録商標) 20N、1.00m2]に通液した。次いで2Lの純水を通液し、ウイルス除去膜処理液を得た。ウイルス除去膜処理液を、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3、4.56m2]を用いて82mg/mL程度に濃縮後、262mmol/L D-ソルビトールを含有する10mmol/Lグルタミン酸緩衝液(pH5.2)への緩衝液置換を行い、SHC膜(メルク社製)に通液して濃縮・緩衝液置換液を得た。
濃縮・緩衝液置換液に2.55g/L ポリソルベート80および262mmol/L D-ソルビトールを含有する10mmol/Lグルタミン酸緩衝液(pH5.2)をポリソルベート80の終濃度が0.05%となるように添加後、フィルターろ過(0.22μmフィルター)し、活性炭プロセス精製品(1)を得た。
実施例17 Mab B精製[活性炭プロセス(2)]
実施例16で得られた活性炭処理液1Lに3Mトリス溶液を添加してpHを7.0に調整し、予め100mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換樹脂(東ソー社製:TOYOPEARL(登録商標) NH2-750F、26mm IDx20cm)に通液した。次いで、平衡化緩衝液を通液し、カラム非吸着画分をNH2 Toyopearl処理液として回収した。
NH2 Toyopearl処理液に50%(W/W)酢酸を添加してpHを3.5に調整し、1時間保持することでウイルス不活化を実施した。ウイルス不活化後、3Mトリス溶液を用いてpHを5.0に調整し、ウイルス不活化処理液を得た。
ウイルス不活化処理液をウイルス除去膜[旭化成メディカル社製:Planova(登録商標) 20N、0.01m2]に通液した。次いで100mLのミリQ水を通液し、ウイルス除去膜処理液を得た。ウイルス除去膜処理液を、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3、0.11m2]を用いて82mg/mL程度に濃縮後、262mmol/L D-ソルビトールを含有する10mmol/Lグルタミン酸緩衝液(pH5.2)への緩衝液置換を行い、濃縮・緩衝液置換液を得た。
濃縮・緩衝液置換液に2.55g/L ポリソルベート80および262mmol/L D-ソルビトールを含有する10mmol/Lグルタミン酸緩衝液(pH5.2)をポリソルベート80の終濃度が0.05%となるように添加後、フィルターろ過(0.22μmフィルター)し、活性炭プロセス精製品(2)を得た。
実施例18 Mab B精製[活性炭プロセス(3)]
実施例16で得られたウイルス不活化処理液2.5Lを、予め10mmol/L酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換カラム[メルク社製:Eshmuno(登録商標)CPX、50mm IDx20cm]に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液でカラムを洗浄した。
次に、平衡化緩衝液と0.3mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/L酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)を用いた直線塩濃度勾配(10カラム容量)により、CPX溶出液を得た。
CPX溶出液をウイルス除去膜[旭化成メディカル社製:Planova(商標) 20N、0.01m2]に通液した。次いで100mLのミリQ水を通液し、ウイルス除去膜処理液を得た。ウイルス除去膜処理液を、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3、0.11m2]を用いて82mg/mL程度に濃縮後、262mmol/L D-ソルビトールを含有する10mmol/Lグルタミン酸緩衝液(pH5.2)への緩衝液置換を行い、濃縮・緩衝液置換液を得た。
濃縮・緩衝液置換液に2.55g/L ポリソルベート80および262mmol/L D-ソルビトール含有10mmol/Lグルタミン酸緩衝液(pH5.2)をポリソルベート80の終濃度が0.05%となるように添加後、フィルターろ過(0.22μmフィルター)し、活性炭プロセス精製品(3)を得た。
実施例16~18に記載の活性炭プロセス(1)~(3)の比較を以下に示す。
プロテインAアフィニティHPLC法により濃度定量を用いて分析した各精製工程の回収率を図60に示す。ゲルろ過HPLC法を用いて分析した精製中間体および最終精製品の重合体含有率の結果を図61に、分解物含有率の結果を図62に示す。図61および図62に示すように、重合体、分解物ともに活性炭プロセス(1)~(3)ではほぼ同レベルで除去されていることが確認された。
精製中間体および最終精製品の宿主細胞蛋白質濃度をELISA法により分析した結果を図63に示す。図63に示すように、宿主細胞蛋白質は活性炭プロセス(1)~(3)ではほぼ同レベルで除去されていることが確認された。
精製中間体および最終精製品のDNA濃度をThreshold法により分析した結果を図64に示す。図64に示すように、DNAは活性炭プロセス(1)~(3)ではほぼ同レベルで除去されていることが確認された。
実施例19 活性炭への高糖鎖付加蛋白質およびPEG化蛋白質の吸着試験
糖鎖含有率の高い蛋白質であるエリスロポエチン(EPO)、糖鎖付加数を増やした改変エリスロポエチン(改変EPO)を用いて活性炭吸着検討を行った。
15mLチューブに特製白鷺(日本エンバイオケミカルズ社製、白鷺は登録商標)活性炭10mgを秤量し、予め2.0mg/mLとなるように調製した蛋白質溶液2.5mLとpH4.0~9.0まで1.0刻みで調製した各緩衝液2.5mLを添加し、室温で17時間撹拌した。このとき、1mg当たりの活性炭に付加する蛋白質量は0.5mgとなる。
その後、遠心分離(2900×g、10分間)、続いてメンブランフィルターろ過(0.22μmフィルター)により活性炭を除去し、吸光度法により残存する蛋白質濃度を測定した。同様の手順で白鷺P、白鷺DO-5(以上、日本エンバイオケミカルズ社製、白鷺は登録商標)についても検討を行った。
活性炭処理に用いた緩衝液のpHと吸着率の関係について図65~図67に示す。その結果、糖鎖含有率の高いEPOおよび改変EPOはpH4~9で吸着率が低いが、宿主細胞由来蛋白質はpH4~6で吸着率が高いため、活性炭を用いた非吸着モードによる精製に使用可能であることが判った。
また、未修飾G-CSFおよびそのPEG化蛋白質であるPEG化G-CSF、PEG化TPOを用いて活性炭吸着検討を行った。15mLチューブに特製白鷺(日本エンバイオケミカルズ社製、白鷺は登録商標)活性炭10mgを秤量し、予め2.0mg/mLとなるように調製した蛋白質溶液2.5mLとpH4.0~9.0まで1.0刻みで調製した各緩衝液2.5mLを添加し、室温で17時間撹拌した。このとき、1mg当たりの活性炭に付加する蛋白質量は0.5mgとなる。
その後、遠心分離(2900×g、10分間)、続いてメンブランフィルターろ過(0.22μmフィルター)により活性炭を除去し、吸光度法により残存する蛋白質濃度を測定した。同様の手順で白鷺P、白鷺DO-5(以上、日本エンバイオケミカルズ社製、白鷺は登録商標)についても検討を行った。活性炭処理に用いた緩衝液のpHと吸着率の関係について図66に示す。
その結果、図66に示すように、未修飾G-CSFとPEG化G-CSFを比較すると、PEG化することにより、最大吸着率が著しく低下することが明らかになった。また、同じくPEG化されたPEG化TPOでも吸着率が低いため、活性炭を用いた非吸着モードによる精製に使用可能であることが判った。
実施例20 活性炭へのウイルスの吸着試験
3種類の抗体溶液(Mab B、Mab AおよびMab E)を用いて活性炭膜によるレトロウイルスの除去検討を行った。
Mab B、Mab AおよびMab Eを抗体濃度30~60mg/mL、pH4.0~5.0、導電率0~2mS/cmに調整した。それぞれの抗体溶液に対して、レトロウイルスのモデルウイルスであるネズミ科リンパ腫ウイルスMurine Leukemia Virus(MuLV)を5vol%添加し、各25mLのウイルス添加液を22m2の活性炭膜(Pall社製:AKS1フィルター)に1.5mL/mLの流速で通液した。
この時、膜を1回通液させて回収する条件(1回通液)と、循環通液を行って回収する条件(循環通液)の2通りを実施した。また、循環通液に関しては4、8、23時間後に回収し、それぞれの時点で回収液に含まれるウイルス量をquantitative Polymerase Chain Reaction(qPCR)で見積もった。結果を表2に示す。
表2に示すように、活性炭膜通液によってMuLVが効果的に除去されることを確認した。1回通液と循環通液を比較すると両者に顕著な差は見られなかった。活性炭膜通液によって得られるLogarithm Reduction Factor(LRF)(3~4)はProtein Aアフィニティクロマトグラフィーで一般的に得られるLRF(1~3)よりも大きい結果となった。
また、3種類の抗体溶液(Mab B、Mab AおよびMab E)を用いて活性炭膜によるパルボウイルスの除去検討を行った。
Mab B、Mab AおよびMab Eを抗体濃度30~60mg/mL、pH4.0~5.0、導電率0~2mS/cmに調整した。それぞれの抗体溶液に対して、パルボウイルスのモデルウイルスであるマウスパルボウイルス Minute Virus of Mice(MVM)を5vol%添加し、各25mLのウイルス添加液を22m2の活性炭膜(Pall社製:AKS1フィルター)に1.5mL/mLの流速で通液した。
この時、膜を1回通液させて回収する条件(1回通液)と、循環通液を行って回収する条件(循環通液)の2通りを実施した。また、循環ろ過に関しては4、8、23時間後に回収し、それぞれの時点で回収液に含まれるウイルス力価を感染価に基づいて見積もった。結果を表3に示す。
表3に示すように、活性炭膜通液によってMVMが効果的に除去されることを確認した。1回通液と循環通液を比較すると両者に顕著な差は見られなかった。活性炭膜通液によって得られるLogarithm Reduction Factor(LRF)(3~6)はProtein Aアフィニティクロマトグラフィーで一般的に得られるLRF(1~3)よりも大きい結果となった。
実施例21 活性炭膜の接続方法による不純物除去効果
モノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養液を酸でpH4.5に調整した。pHを調整したCHO細胞培養液を一時間静置後、細胞分離デプス膜[メルク社製:Clarisolve(登録商標)]を用いて細胞を除去し、SHC膜(メルク社製)を用いてpH調整清澄化液を得た。
pH調整清澄化液を、UF膜[メルク社製:Pellicon(登録商標)3]を用いて濃縮し、ミリQ水を用いて希釈し、濃縮希釈液の導電率を1mS/cm以下とした。濃縮希釈液の抗体濃度は15mg/mLに調製した。
この濃縮希釈液のうち61.3mLを、負荷量が0.1mg抗体/mg活性炭になるように直列に4個接続した22cm2の活性炭膜(Pall社製:AKS1フィルター)に表4の条件にて接触時間0.2時間で一回通液し、活性炭膜処理液を得た。
また、濃縮希釈液のうち61.3mLを、負荷量が0.1mg抗体/mg活性炭になるように並列に4個接続した22cm
2の活性炭膜(Pall社製:AKS1フィルター)に表4の条件で接触時間0.2時間で一回通液し、活性炭膜処理液を得た。活性炭膜処理していないものをコントロールとした。
得られた各活性炭膜処理液とコントロールの抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析し、算出した回収率を図68に示す。図68に示すように、直列および並列接続ともに約80%の高い回収率が得られた。
ゲルろ過HPLC法を用いて各活性炭膜処理液の重合体含有率を分析した結果を図69に、分解物含有率を分析した結果を図70に示す。図69に示すように、直列および並列接続で重合体含有率が0.7%から0.6%に低下した。また、図70に示すように直列接続の方が分解物含量がより低下した(直列接続:0.8%、並列接続:1.3%)。
蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量はELISA法を用いて分析し、その結果を図71に示す。図71に示すように活性炭膜を直列接続した方が並列接続よりも顕著に宿主細胞蛋白質含有量が低下した。
以上の結果から、活性炭膜処理は並列接続よりも直列接続の方が効果的に不純物を除去可能であることが確認された。
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2016年8月31日付けで出願された日本特許出願(特願2016-170265)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。