JP6640799B2 - 蛋白質の精製方法 - Google Patents

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Description

本発明は蛋白質の精製方法及び該精製方法を含む蛋白質の製造方法に関する。特に、本発明は、抗体の精製方法及び該精製方法を含む抗体の製造方法に関する。
遺伝子組換え技術の発達によって、種々の蛋白質を有効成分とする医薬品が供給されるようになった。特に近年は数多くの抗体を有効成分とする医薬品が開発、上市されている。また、これら蛋白質を大量かつ効率的に製造することは、バイオ医薬品産業にとってますます重要な問題となっている。
このような蛋白質は、一般にその目的とする蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターを挿入された組換え細胞を培養することによって産生される。その培養液には、目的とする蛋白質の他に、多種多様の培地由来成分、宿主細胞由来成分または蛋白質由来の副生成物等の不純物が含まれているため、医薬品として要求される純度まで不純物を分離し目的の蛋白質を精製すること及び目的の蛋白質を大量かつ効率的に製造することを両立させることは、非常に困難かつ挑戦的である。
蛋白質の精製方法は、一般に異なるモードのクロマトグラフィーの組み合わせで行われる。クロマトグラフィーは、例えば、電荷、親水性の程度または分子の大きさ等に基づいて、目的の蛋白質と不純物を分離する。
特に、目的の蛋白質が抗体である時は、プロテインAまたはプロテインGが抗体のFc鎖などの特定部位に結合する性質を利用して、抗体の精製にプロテインAアフィニティクロマトグラフィーまたはプロテインGアフィニティクロマトグラフィーがクロマトグラフィーの1つとして使用される(特許文献1)。
しかし、一般に使用されているプロテインAアフィニティ担体は、イオン交換担体または疎水担体等に比べて非常に高価であり、工業的な医薬品製造等で大規模に抗体を精製する場合には、使用する担体量も膨大となることから、その結果、製造コストの増大が避けられない課題となっている。
また、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーまたはプロテインGアフィニティクロマトグラフィーは、一般には目的の抗体を特異的に担体に吸着させ、吸着した担体を洗浄することで不純物と分離し、最後に目的の抗体を担体から溶出する吸着モードを使用する。この際、洗浄及び溶出に用いるバッファーは異なる為、クロマトグラフィー装置の大型化に伴って、バッファータンク等の付属する製造設備も大型化または複雑化する。更に操作も煩雑となる為、これら全てが製造コスト増大の要因となっている。
以上のような理由で、蛋白質を有効成分とする医薬品の製造コストは、低分子化合物を有効成分とする医薬品の製造コストに比べて非常に高く、この克服が課題となっている。即ち、蛋白質の精製に要するコストの低減がこの分野で望まれている。
一方、目的の蛋白質を含む培養液には宿主細胞から溶出した酵素類が含まれており、蛋白質の精製の過程において、この酵素類により目的の蛋白質が分解、修飾、酸化または還元等を受けることが知られている。この為、酵素類の阻害剤を添加し、目的の蛋白質を分解、修飾、酸化または還元等を受けずに精製する方法が検討されている(特許文献2)。しかし、酵素類の阻害剤を蛋白質の精製に用いた場合には、別途該阻害剤を除去する工程が必要となり、更に阻害剤によっては精製された蛋白質の品質に影響を及ぼす可能性もあることから、必ずしも該阻害剤の添加は最良の方法とは言えない。抜本的な解決方法の1つに、宿主細胞由来の酵素類を除去することが考えられるが、クロマトグラフィー等を利用するしかなく、該酵素類の簡便な除去方法は知られていない。
活性炭は、幅広い非特異的な吸着特性と天然由来等による安価な素材として、化学品製造、食品製造、下水や排水の処理、浄水処理及び低分子医薬品製造等の工業分野にて吸着剤または脱色剤等の用途で使用されている。しかし、その幅広い非特異的な吸着特性から、一般に前記の不純物との分離といった高度な蛋白質の精製に活性炭を使用することは困難であると考えられており、活性炭を用いた蛋白質の精製方法は知られていない。
日本国特表平5−504579号公報 国際公開第2009/009523号公報
本発明は、従来の蛋白質の精製方法より製造コストの低減または労力の軽減が可能であり、且つ従来の蛋白質の精製方法と同等以上の不純物との分離特性を有する精製方法、特に抗体の精製において、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーに代わる精製方法、及び該精製方法を含む蛋白質の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決する為に鋭意研究をした結果、驚くべきことに、安価な活性炭を用いて非吸着モードにて蛋白質と不純物とを分離し、蛋白質を精製する方法、特に抗体の精製において、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーに代えて活性炭を用いた精製方法を見出し、本発明を完成した。
本発明は以下(1)〜(14)に関する。
(1)蛋白質の精製方法であって、活性炭を用いて、蛋白質と不純物とを分離し、不純物含量が低下した蛋白質を取得する精製方法。
(2)蛋白質の分子量が30000以上である、(1)に記載の精製方法。
(3)蛋白質が糖蛋白質である、(1)または(2)に記載の精製方法。
(4)糖蛋白質が抗体である、(3)に記載の精製方法。
(5)蛋白質が遺伝子組換え蛋白質である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載の精製方法。
(6)不純物が宿主細胞蛋白質、蛋白質由来の重合体、蛋白質由来の分解物またはDNAのいずれかである、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の精製方法。
(7)非吸着モードで分離を行う、(1)〜(6)のいずれか1項に記載の精製方法。
(8)pHが3〜8で分離を行う、(1)〜(7)のいずれか1項に記載の精製方法。
(9)活性炭が木質系活性炭である、(1)〜(8)のいずれか1項に記載の精製方法。
(10)活性炭の平均細孔直径が0.5〜5nmである、(1)〜(9)のいずれか1項に記載の精製方法。
(11)(1)〜(10)のいずれか1項に記載の精製方法を含む、蛋白質の製造方法。
(12)プロテインAクロマトグラフィーを使用しない、(11)に記載の製造方法。
(13)陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィーまたは混合モードクロマトグラフィーの何れか1のクロマトグラフィーを含む、(11)または(12)に記載の製造方法。
(14)少なくとも1つの吸着モードのクロマトグラフィーを含む、(11)〜(13)のいずれか1項に記載の製造方法。
(15)(11)〜(14)のいずれか1項に記載の方法により製造された蛋白質。
本発明により、従来の蛋白質の精製方法より製造コストの低減または労力の軽減が可能であり、且つ従来の蛋白質の精製方法と同等以上の不純物との分離特性を有する精製方法、特に抗体の精製において、プロテインAアフィニティクロマトグラフィーに代わる精製方法、及び該精製方法を含む蛋白質の製造方法が提供される。本発明により製造された蛋白質は、医薬品として有用である。
図1は、Mab A、Mab B及びMab Cの活性炭を含む非吸着モード精製における、培養上清及び最終精製品の重合体含有率を示す。縦軸は重合体含有率(%)を示す。黒色はMab A、白色はMab B、灰色はMab Cをそれぞれ示し、左より培養上清(培養上清)、最終精製品(精製品)の重合体含有率を示す。 図2は、Mab A、Mab B及びMab Cの活性炭を含む非吸着モード精製における、培養上清及び最終精製品の分解物含有率を示す。縦軸は分解物含有率(%)を示す。黒色はMab A、白色はMab B、灰色はMab Cをそれぞれ示し、左より培養上清(培養上清)、最終精製品(精製品)の分解物含有率を示す。 図3は、Mab A、Mab B及びMab Cの活性炭を含む非吸着モード精製における、培養上清及び最終精製品の宿主細胞蛋白質含有量を示す。縦軸は蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量(ng/mg)を示す。黒色はMab A、白色はMab B、灰色はMab Cをそれぞれ示し、左より培養上清(培養上清)、最終精製品(精製品)の宿主細胞蛋白質含有量を示す。 図4は、Mab A、Mab B及びMab Cの活性炭を含む非吸着モード精製における、培養上清及び最終精製品の重合体含有率を示す。縦軸は重合体含有率(%)を示す。黒色はMab A、白色はMab B、灰色はMab Cをそれぞれ示し、左より培養上清(培養上清)、最終精製品(精製品)の重合体含有率を示す。 図5は、Mab A、Mab B及びMab Cの活性炭を含む非吸着モード精製における、培養上清及び最終精製品の分解物含有率を示す。縦軸は分解物含有率(%)を示す。黒色はMab A、白色はMab B、灰色はMab Cをそれぞれ示し、左より培養上清(培養上清)、最終精製品(精製品)の分解物含有率を示す。 図6は、Mab A、Mab B及びMab Cの活性炭を含む非吸着モード精製における、培養上清及び最終精製品の宿主細胞蛋白質含有量を示す。縦軸は蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量(ng/mg)を示す。黒色はMab A、白色はMab B、灰色はMab Cをそれぞれ示し、左より培養上清(培養上清)、最終精製品(精製品)の宿主細胞蛋白質含有量を示す。 図7は、Mab A精製での各工程回収率及び総回収率を示す。縦軸は各工程回収率(%)または総回収率(%)を示す。白色はプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む精製、黒色は活性炭処理を含む精製をそれぞれ示し、左よりMabSelect SuRe処理または活性炭処理の工程回収率(ProteinAor 活性炭)、Q Sepharose処理の工程回収率(陰イオン)、POROS XS処理の工程回収率(陽イオン)、総回収率(総回収率)を示す。 図8は、Mab B精製での各工程回収率及び総回収率を示す。縦軸は各工程回収率(%)または総回収率(%)を示す。黒色はプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む精製、灰色は活性炭処理を含む精製をそれぞれ示し、左よりMabSelect SuRe処理または活性炭処理の工程回収率(ProteinAor 活性炭)、Q Sepharose処理の工程回収率(陰イオン)、POROS XS処理の工程回収率(陽イオン)、総回収率(総回収率)を示す。 図9は、Mab A精製での精製中間体及び最終精製品の重合体含有率を示す。縦軸は重合体含有率(%)を示す。黒丸はプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む精製、白抜き三角は活性炭処理を含む精製をそれぞれ示し、左より清澄化液A(培養上清)、MabSelect SuRe溶出液または活性炭溶出液(ProteinA or 活性炭)、Q Sepharose溶出液(陰イオン)、Mab A最終精製品(陽イオン)の重合体含有率を示す。 図10は、Mab A精製での精製中間体及び最終精製品の分解物含有率を示す。縦軸は分解物含有率(%)を示す。黒丸はプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む精製、白抜き三角は活性炭処理を含む精製をそれぞれ示し、左より清澄化液A(培養上清)、MabSelect SuRe溶出液または活性炭溶出液(ProteinA or 活性炭)、Q Sepharose溶出液(陰イオン)、Mab A最終精製品(陽イオン)の分解物含有率を示す。 図11は、Mab B精製での精製中間体及び最終精製品の重合体含有率を示す。縦軸は重合体含有率(%)を示す。黒菱形はプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む精製、白抜き四角は活性炭処理を含む精製をそれぞれ示し、左より清澄化液B(培養上清)、MabSelect SuRe溶出液または活性炭溶出液(ProteinA or 活性炭)、Q Sepharose溶出液(陰イオン)、Mab B最終精製品(陽イオン)の重合体含有率を示す。 図12は、Mab B精製での精製中間体及び最終精製品の分解物含有率を示す。縦軸は分解物含有率(%)を示す。黒菱形はプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む精製、白抜き四角は活性炭処理を含む精製をそれぞれ示し、左より清澄化液B(培養上清)、MabSelect SuRe溶出液または活性炭溶出液(ProteinA or 活性炭)、Q Sepharose溶出液(陰イオン)、Mab B最終精製品(陽イオン)の分解物含有率を示す。 図13は、Mab A精製での精製中間体及び最終精製品の宿主細胞蛋白質含有量を示す。縦軸は蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量(ng/mg)を示す。黒丸はプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む精製、白抜き三角は活性炭処理を含む精製をそれぞれ示し、左より清澄化液A(培養上清)、MabSelect SuRe溶出液または活性炭溶出液(ProteinA or 活性炭)、Q Sepharose溶出液(陰イオン)、Mab A最終精製品(陽イオン)の宿主細胞蛋白質含有量を示す。 図14は、Mab B精製での精製中間体及び最終精製品の宿主細胞蛋白質含有量を示す。縦軸は蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量(ng/mg)を示す。黒菱形はプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む精製、白抜き四角は活性炭処理を含む精製をそれぞれ示し、左より清澄化液A(培養上清)、MabSelect SuRe溶出液または活性炭溶出液(ProteinA or 活性炭)、Q Sepharose溶出液(陰イオン)、Mab B最終精製品(陽イオン)の宿主細胞蛋白質含有量を示す。 図15は、Mab B培養上清のSDS−PAGEを示す。左から(A)清澄化液、(B)活性炭添加下24時間保持し活性炭を除去した上清、(C)活性炭添加せずに24時間保持した上清を示す。 図16は、Mab D培養上清のSDS−PAGEを示す。左から(A)培養上清、(B)活性炭添加/除去処理を行い24時間保持した上清、(C)除去処理のみを行い24時間保持した上清を示す。 図17は、Mab A及びMab Bに関する活性炭精製での最終精製品およびProtein A精製での精製品の蛋白質1mgあたりのDNA含有量を示す。縦軸は蛋白質1mgあたりのDNA含有量(pg/mg)を示す。左から比較例1により得られたProtein A精製でのMab A精製品(Mab A Protein A)、実施例7により得られた活性炭精製でのMab A最終精製品(Mab A 活性炭)、比較例2により得られたProtein A精製でのMabB精製品(Mab B Protein A)及び実施例8により得られた活性炭精製でのMab B最終精製品(Mab B 活性炭)の蛋白質1mgあたりのDNA含有量を示す。 図18は、Mab Bの活性炭処理による各pHにおける活性炭溶出液の宿主細胞蛋白質の低減率を示す。縦軸は活性炭溶出液の宿主細胞蛋白質の低減率(H性炭溶出液の宿主細胞蛋白質の低減率を示す。 図19は、Mab Bの活性炭処理による各pHにおける活性炭溶出液の相対抗体濃度を示す。縦軸はpH7の活性炭溶出液での抗体濃度を100とした場合の活性炭溶出液の相対抗体濃度(%)を示す。左からpH4、pH5、pH6、pH7、pH8における活性炭溶出液の相対抗体濃度を示す。 図20は、Mab Bの各種活性炭処理による活性炭溶出液の重合体含有率を示す。縦軸は活性炭溶出液の重合体含有率(%)を示す。左から培養上清、白鷺P、白鷺DO−2、白鷺DO−5における活性炭溶出液の重合体含有率を示す。 図21は、Mab Bの各種活性炭処理による活性炭溶出液の分解物含有率を示す。縦軸は活性炭溶出液の分解物含有率(%)を示す。左から培養上清、白鷺P、白鷺DO−2、白鷺DO−5における活性炭溶出液の分解物含有率を示す。 図22は、Mab Bの各種活性炭処理による活性炭溶出液の宿主細胞蛋白質含量を示す。縦軸は活性炭溶出液の宿主細胞蛋白質含量(ng/mg)を示す。左から培養上清、白鷺P、白鷺DO−2、白鷺DO−5における活性炭溶出液の宿主細胞蛋白質含量を示す。
本発明は、蛋白質の精製方法であって、活性炭を用いて、蛋白質と不純物とを分離し、不純物含量が低下した蛋白質を取得する精製方法に関する。
本発明において、蛋白質としては、例えば、糖鎖を有しない天然若しくは非天然の蛋白質、天然若しくは非天然の糖蛋白質、またはそれらの誘導体等が挙げられる。糖蛋白質またはそれらの誘導体としては、糖鎖が異なる分子からなる組成物であってもよい。
蛋白質としては、好ましくは分子量が30000以上、より好ましくは分子量が50000以上の蛋白質が挙げられる。
具体的には、例えば、エリスロポエチン、ダルベポエチン、アンチトロンビン(α体若しくはβ体、またはそれらの混合物)、インターフェロン類、インターロイキン類、プロテインS、組織プラスミノーゲン活性化因子、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、トロンボモジュリン、グルコセレブロシダーゼ、α−ガラクトシダーゼ、α−L−イズロニダーゼ、酸性α−グルコシダーゼ、顆粒球コロニー刺激因子G−CSF(Granulocyte Colony Stimulating Factor)、顆粒球マクロファージ刺激因子GM−CSF(Granulocyte Macrophage−Colony Stimulating Factor)、トロンボポエチンまたは巨核球増殖促進因子MGDF(Megakaryocyte Growth and Development Factor)、繊維芽細胞成長因子FGF、上皮細胞成長因子EGF、インスリン様成長因子IGF、脳由来神経栄養因子BDNF、毛様態神経栄養因子CTNF若しくはグリア細胞由来神経栄養因子GDNF、または抗体およびそれらの誘導体などが挙げられるが、好ましくは抗体、より好ましくはモノクローナル抗体が挙げられる。
抗体としては、例えば、マウス抗体、ラマ抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体またはそれらのFc領域等を改変した抗体等が挙げられ、分子型としては、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、Fab、Fc、Fc−融合蛋白、VH、VL、VHH、Fab’、scFv、scFab、scDbまたはscDbFc等が挙げられる。
本発明の精製方法には、目的とする蛋白質及び不純物を含む蛋白質含有水溶液が供される。
蛋白質含有水溶液としては、例えば、血漿、血清、乳若しくは尿など生体から得られた組成物、遺伝子組換え技術若しくは細胞融合技術を用いて得られた蛋白質を生産する細胞または大腸菌等の菌類の培養液、トランスジェニック非ヒト動物、植物若しくは昆虫等から得られた組成物、あるいは無細胞蛋白質合成技術を用いて得られた組成物等が挙げられる。
蛋白質を生産する細胞としては、例えば、宿主細胞に所望のたん白質をコードする遺伝子が組み込まれた形質転換細胞等が挙げられる。
宿主細胞としては、例えば、動物細胞、植物細胞または酵母細胞等の細胞株が挙げられる。
具体的には、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスミエローマ細胞であるNS0細胞、SP2/0細胞、ラットミエローマ細胞であるYB2/0細胞、IR983F細胞、シリアンハムスター腎臓由来細胞であるBHK細胞、ヒトミエローマ細胞であるナマルバ細胞、胚性幹細胞、または受精卵細胞等が挙げられる。
蛋白質を生産する細胞を培養する培地としては、各々の細胞の培養に適した培地であればいずれも用いられるが、例えば、動物細胞を培養する培地としては、通常の動物細胞の培養に用いられる培地が用いられる。例えば、血清含有培地、血清アルブミン若しくは血清分画物などの動物由来成分を含まない培地、無血清培地、または無蛋白培地等、いずれの培地も用いられるが、好ましくは無血清培地または無蛋白培地が用いられる。
具体的には、例えば、RPMI1640培地[The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)]、EagleのMEM培地[Science,122,501(1952)]、ダルベッコ改変MEM(DMEM)培地[Virology,8,396(1959)]、199培地[Proceeding of the Society for the
Biological Medicine,73,1(1950)]、F12培地[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,53,288(1965)]、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM培地)[J.Experimental Medicine,147,923(1978)]、EX−CELL302培地、EX−CELL−CD−CHO培地、EX−CELL 325培地(以上、SAFCバイオサイエンス社製)、CD−CHO培地、CD DG44培地(以上、インビトロジェン社製)若しくはIS CD−CHO培地(アーバインサイエンティフィック社製)、またはこれらの改変培地、混合培地もしくは濃縮培地等が用いられ、好ましくは、RPMI1640培地、DMEM培地、F12培地、IMDM培地、EX−CELL302培地、CD−CHO培地またはIS CD−CHO培地等が用いられる。
また、必要に応じて蛋白質を生産する細胞の生育に必要な生理活性物質または栄養因子等を添加することができる。これらの添加物は、培養前に予め培地に含有させるか、培養中に添加培地または添加溶液として培養液へ適宜追加供給する。追加供給の方法は、1溶液または2種以上の混合溶液などいかなる形態でもよく、また、添加方法は連続または断続のいずれでもよい。
蛋白質を生産するトランスジェニック非ヒト動物、植物または昆虫としては、蛋白質をコードする遺伝子が細胞内に組み込まれた非ヒト動物、植物または昆虫が挙げられる。非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシまたはサル等が挙げられる。植物としては、例えば、タバコ、ポテト、トマト、ニンジン、ソイビーン、アブラナ、アルファルファ、コメ、小麦、大麦またはコーン等が挙げられる。
蛋白質含有水溶液の生産方法としては、例えば、国際公開第2008/120801号、日本国特開平3−198792号公報、国際公開第2010/018847号、国際公開第2007/062245号または国際公開第2007/114496号等に記載の方法が挙げられる。
また、本発明において、蛋白質含有水溶液としては、蛋白質を含有する血漿または尿等生体から得られるものの他、精製する工程で得られる蛋白質含有水溶液も含まれる。具体的には、例えば、細胞除去液、沈殿物除去液、アルコール分画液、塩析分画液、クロマトグラフィー溶出液等が挙げられる。
細胞除去液としては、血漿、血清、乳若しくは尿等生体から得られた蛋白質含有水溶液、トランスジェニック非ヒト動物、植物または昆虫より得られた蛋白質含有水溶液、遺伝子組換え技術を用いて樹立された細胞より得られた蛋白質含有水溶液または精製する工程で得られる蛋白質含有水溶液より、細胞を除去した溶液等が挙げられる。具体的には、例えば、細胞培養液より遠心分離法、クロスフローろ過法(タンジェンシャルフローろ過法)、デプスフィルターによるろ過法、メンブレンフィルターによるろ過法、透析法、またはこれらの方法を組み合わせた方法等によって細胞を除去して得られる溶液が挙げられる。
デプスフィルターとしては、具体的には、例えば、ミリスタックプラスHCデプスフィルター、ミリスタックプラスDEデプスフィルター、ミリスタックプラスCEデプスフィルター(メルクミリポア社製)、スープラPデプスフィルター(ポール社製)、ザルトクリアーPBデプスフィルター、ザルトクリアーPCデプスフィルター(ザルトリウス社製)、ゼータプラスSPデプスフィルター、ゼータプラスAPデプスフィルター、ゼータプラスLAデプスフィルター、ゼータプラスデリピッドデプスフィルター、ゼータプラスZAデプスフィルターまたはゼータプラスEXT荷電デプスフィルター(住友スリーエム社製)等が挙げられるがこれらに限定されない。
沈殿物除去液としては、血漿、血清、乳若しくは尿等生体から得られた蛋白質含有水溶液、トランスジェニック非ヒト動物、植物または昆虫より得られた蛋白質含有水溶液、遺伝子組換え技術を用いて樹立された細胞より得られた蛋白質含有水溶液、無細胞蛋白質合成技術を用いて得られた蛋白質含有水溶液または精製する工程で得られる蛋白質含有水溶液より、低pH処理またはカプリル酸、有機溶剤、ポリエチレングリコール、界面活性剤、塩、アミノ酸若しくはポリマー等の添加により凝集沈殿(フロキュレーション)または二相分離を行った後に、沈殿物を除去した溶液等が挙げられる。沈殿物の除去方法としては、例えば、遠心分離法、クロスフローろ過法(タンジェンシャルフローろ過法)、デプスフィルターによるろ過法、メンブレンフィルターによるろ過法、透析法、またはこれらの方法を組み合わせた方法等が挙げられる。
低pH処理のpHとしては、好ましくpH3〜6であり、塩酸、酢酸、クエン酸またはリン酸等の酸の添加により調整される。
アルコール分画液としては、血漿、血清、乳若しくは尿等生体から得られた蛋白質含有水溶液、トランスジェニック非ヒト動物、植物または昆虫より得られた蛋白質含有水溶液、遺伝子組換え技術を用いて樹立された細胞より得られた蛋白質含有水溶液、無細胞蛋白質合成技術を用いて得られた蛋白質含有水溶液または精製する工程で得られた蛋白質含有水溶液より、アルコール等を添加することで調製された分画液等が挙げられる。具体的には、例えば、低温エタノール分画法等の手法で得られる分画液が挙げられる。
塩析分画液としては、血漿、血清、乳若しくは尿等生体から得られた蛋白質含有水溶液、トランスジェニック非ヒト動物、植物または昆虫より得られた蛋白質含有水溶液、遺伝子組換え技術を用いて樹立された細胞より得られた蛋白質含有水溶液、無細胞蛋白質合成技術を用いて得られた蛋白質含有水溶液または精製する工程で得られた蛋白質含有水溶液より、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム等の塩を添加し、蛋白質を析出させることで調製された分画液等が挙げられる。
クロマトグラフィー溶出液としては、血漿、血清、乳若しくは尿等生体から得られた蛋白質含有水溶液、トランスジェニック非ヒト動物、植物または昆虫より得られた蛋白質含有水溶液、遺伝子組換え技術を用いて樹立された細胞より得られた蛋白質含有水溶液、無細胞蛋白質合成技術を用いて得られた蛋白質含有水溶液または精製する工程で得られた蛋白質含有水溶液をクロマトグラフィーに用いられる担体または膜に吸着させ、適当な溶出液で溶出すること、または非吸着させることにより得られた、蛋白質溶出液等があげられる。
クロマトグラフィーに用いられる担体または膜としては、アフィニティ担体、イオン交換担体、イオン交換膜、ゲルろ過担体、疎水性相互作用担体、逆相担体、ヒドロキシアパタイト担体、フルオロアパタイト担体、硫酸化セルロース担体、硫酸化アガロース担体、混合モード(マルチモーダル)担体等が挙げられる。
イオン交換担体またはイオン交換膜としては、イオン交換基を有する分子、例えば、硫酸基、メチル硫酸基、スルフォフェニル基、スルフォプロピル基、カルボキシメチル基、4級アンモニウム基、4級アミノエチル基またはジエチルアミノエチル基等を、ベース担体または膜、例えば、セルロース、セファロース、アガロース、キトサン、アクリル酸重合体若しくはスチレン−ジビニルベンゼン共重合体などのポリマーおよびその誘導体(架橋ポリマーを含む)、シリカ粒子、ガラス粒子、セラミック粒子またはその表面処理粒子等で構成されたポリマー等に直接または間接的に結合した担体または膜が挙げられ、具体的には、例えば、Q Sepharose XL、Q Sepharose FF、DEAE Sepharose FF、ANX Sepharose FF、Capto Q、Capto DEAE、Capto Q ImpRes(以上、GEヘルスケア社製)、TOYOPEARL GigaCap Q−650、TOYOPEARL SuperQ−650(以上、東ソー社製)、Fractogel DEAE、Fractogel TMAE、Fractogel TMAE Hicap、Eshmuno Q(以上、メルクミリポア社製)、セルファインMAX−Q(JNC社製)、Mustang Q(ポール社製)、Sartobind Q、Sartobind STIC(以上、ザルトリウス社製)、SP Sepharose FF、CM Sepharose FF、SP Sepharose XL、Capto S(以上、GEヘルスケア社製)、Poros 50 HS、Poros 50 XS(以上、Applied Biosystems社製)、Eshmuno S、Fractogel COO、Fractogel SO 、Fractogel SE Hicap(以上、メルクミリポア社製)、TOYOPEARL GigaCap S−650、TOYOPEARL GigaCap CM−650(以上、東ソー社製)、セルファインMAX−S(JNC社製)、Mustang S(ポール社製)またはSartobind S(ザルトリウス社製)、ダイヤイオンPK、ダイヤイオンPA、ダイヤイオンCR、ダイヤイオンCR、ダイヤイオンAMP(以上、三菱化学社製)等が挙げられるがこれらに限定されない。
アフィニティ担体としては、目的とする蛋白質に親和性を有する分子、例えば、ヘパリン、プロテインA、プロテインGまたはプロテインL等を、前記と同様のベース担体に直接または間接的に結合した担体が挙げられ、具体的には、例えば、Heparin Sepharose 6 Fast Flow(GEヘルスケア社製)、プロセップ−ヘパリン(メルクミリポア社製)、TOYOPEARL AF−Heparin−650(東ソー社製)、Heparin HyperD(ポール社製)、MabSelect、Protein A Sepharose FF、MabSelect Xtra、MabSelect SuRe、MabSelect SuRe LX、Protein G Sepharose FF、Capto L(以上、GEヘルスケア社製)、Prosep vA Hicapacity、Prosep vA Ultra、Prosep Ultraplus(以上、メルクミリポア社製)等が挙げられる。
ゲルろ過担体としては、例えば、デキストラン、アリルデキストラン、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、セルロース、アガロース、スチレン、ジビニルベンゼン、ポリビニルアルコール、シリカまたはキトサン等で構成されたポリマーからなる担体が挙げられ、具体的には、例えば、Sephacryl Sシリーズ、Sepharoseシリーズ、Sephadexシリーズ、Superdexシリーズ、Sephacrylシリーズ(以上、GEヘルスケア社製)、TOYOPEARL HWシリーズ、TSKgel PWシリーズ(以上、東ソー社製)、Bio gel Agarose、Bio gel P Polyacrylamide(以上、バイオラッド社製)、セルファインGH、セルファインGCL(以上、JNC社製)、Trisacryl GF05、Trisacryl GF2000、Ultrogel AcA(以上、ポール社製)またはフラクトゲル BioSEC(メルクミリポア社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
疎水相互作用担体としては、疎水性を有する分子、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、オクチル基、エーテル基またはフェニル基等を、前記と同様のベース担体に直接または間接的に結合した担体が挙げられ、具体的には、例えば、Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(high−sub)、Phenyl Sepharose 6 Fast Flow(low−sub)、Octyl Sepharose 4 Fast Flow、Butyl Sepharose 4 Fast Flow(以上、GEヘルスケア社製)、TOYOPEARL Hexyl−650、TOYOPEARL Butyl−650、TOYOPEARL Phenyl−650、TOYOPEARL Ether−650、TOYOPEARL PPG−600、TOYOPEARL Butyl−600、TOYOPEARL Super Butyl−550(以上、東ソー社製)、Mactro−Prep t−Butyl、Macro−Prep Methyl(以上、バイオラッド社製)、QMA Spherosil、Methyl Ceramic HyperD(以上、ポール社製)、フラクトゲル Phenyl(S)、フラクトゲル Propyl(S)(以上、メルクミリポア社製)、フェニル−セルロファイン(JNC社製)、ダイヤイオンHP、ダイヤイオンSP(以上、三菱化学社製)ブチル化キトパール、フェニル化キトパール(以上、富士紡ホールディングズ社製)等が挙げられる。
逆相担体としては、例えば、炭化水素基を固相マトリックスに、直接または間接的に結合した担体が挙げられる。炭化水素基としては、例えば、トリメチル基、ブチル基、フェニル基、オクチル基またはオクタデシル基及びこれらの末端を改変した官能基等が挙げられる。具体的には、例えば、RESOURCE RPCシリーズまたはSOURCE RPCシリーズ(以上、GEヘルスケア社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
ヒドロキシアパタイト担体としては、例えば、CHT Ceramic Hydroxyapatite Type IまたはType II(以上、バイオラッド社製)が挙げられるが、これに限定されない。また、フルオロアパタイト担体としては、例えば、CFT Ceramic Fluoroapatite(バイオラッド社製)等が挙げられるが、これに限定されない。
硫酸化セルロース担体または硫酸化アガロース担体としては、例えば、セルファインサルフェイト、セルファインサルフェイトm、セルファインサルフェイトc、硫酸化セルロファインm、硫酸化セルロファインc、硫酸化セルファインmまたは硫酸化セルファインc(以上、JNC社製)またはCapto DeVirS(GEヘルスケア社製)等が挙げられるが、これらに限定されない。
混合モード担体としては、異なる選択性を有する2種類以上の官能基、好ましくは前記と同様のイオン交換基および前記と同様の疎水性相互作用基を、前記と同様のベース担体に直接または間接的に結合した担体が挙げられ、具体的には、例えば、Capto adhere、Capto MMC(以上、GEヘルスケア社製)、HEA HyperCel、PPA HyperCel、MEP HyperCel(以上、ポール社製)、TOYOPEARL MX−Trp−650M(東ソー社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明において蛋白質が抗体である場合、蛋白質含有水溶液としては、好ましくはアフィニティクロマトグラフィーを用いずに得られた蛋白質含有水溶液、より好ましくはプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを用いずに得られた蛋白質含有水溶液が挙げられる。
更に、蛋白質含有水溶液は、粒子等の不溶物が存在する場合には予めそれらを除去し、不溶物を除去した後に本発明の精製方法に供してもよい。粒子等の不溶物の除去方法としては、例えば、遠心分離法、クロスフローろ過法(タンジェンシャルフローろ過法)、デプスフィルターによるろ過法、メンブレンフィルターによるろ過法、透析法、またはこれらの方法を組み合わせた方法が挙げられる。また、必要に応じて後述の蛋白質含有水溶液のpH、導電率、緩衝液、蛋白質濃度または活性炭の単位体積あたりの蛋白質付加量等を調整した後に本発明の精製方法に供される。
pH、導電率、緩衝液、蛋白質濃度または活性炭の単位体積あたりの蛋白質付加量等を調整する方法としては、例えば、限外ろ過膜を用いた限外ろ過法等が挙げられる。
限外ろ過膜としては、通常の限外ろ過膜の他、プラスまたはマイナスの電荷が付加された限外ろ過膜も含まれ、具体的には、例えば、ペリコン3ウルトラセル膜、ペリコン3バイオマックス膜、ペリコン2ウルトラセル膜、ペリコン2バイオマックス膜(以上、メルクミリポア社製)、オメガメンブラン(ポール社製)、Kvick膜(GEヘルスケア社製)等が挙げられるがこれらに限定されない。
本発明において、不純物としては、宿主細胞蛋白質(HCP)、蛋白質由来の重合体、蛋白質由来の分解物、変性、糖鎖成分の除去、酸化若しくは脱アミド等を受けた蛋白質由来の修飾体、DNA、培地由来成分、培養添加物または宿主細胞から溶出した酵素類等が挙げられ、好ましくは宿主細胞蛋白質、蛋白質由来の重合体、蛋白質由来の分解物またはDNAが挙げられる。
宿主細胞から溶出した酵素類としては、例えば、糖除去酵素類、蛋白質加水分解酵素類または酸化還元酵素類等が挙げられる。
糖除去酵素としては、具体的には、例えば、ノイラミニダーゼ(シアリダーゼ)、ガラクトシダーゼまたはグリカナーゼ等が挙げられる。蛋白質分解酵素としては、具体的には、例えば、セリンプロテアーゼ、エステラーゼ、システインプロテアーゼ、トリプシン様プロテアーゼ、アミノペプチダーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼまたはカテプシン等が挙げられる。酸化還元酵素としては、具体的には、例えば、チオレドキシンレダクターゼ等のチオレドキシン関連酵素等が挙げられる。アミノ酸異性化酵素としては、具体的には、例えば、トランスグルタミナーゼ等が挙げられる。
本発明の精製方法に用いられる活性炭としては、医薬品の製造に適した活性炭であればいずれも用いられ、1種類の活性炭を単独で使用しても、2種類以上の活性炭を単独または混合して用いてもよい。
活性炭としては、例えば、鉱物系活性炭または植物系活性炭等が挙げられる。鉱物系活性炭としては、具体的には、例えば、石炭系活性炭、石油系活性炭等が挙げられ、植物系活性炭としては、具体的には、例えば、木質系活性炭またはやし殻活性炭等が挙げられ、好ましくは木質系活性炭が挙げられる。
活性炭の原料としては炭素質の物質であればいずれも用いられるが、例えば、おが屑、木炭、素灰、草炭、ピート若しくは木材チップ等の木質、やし殻、亜炭、褐炭若しくは無煙炭等の石炭、石炭ピッチ、石油ピッチ、オイルカーボン、レーヨン、アクリロニトリルまたはフェノール樹脂等が挙げられる。
活性炭の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、高温で塩化亜鉛若しくは燐酸等の薬品を添加、浸透させ、高温で炭化反応させる薬液賦活法または炭化した原料及び水蒸気、二酸化炭素、空気若しくは燃焼ガス等のガスを高温で反応させるガス賦活法が挙げられる。
活性炭の形状としては、医薬品の製造に適した形状であればいずれも用いられるが、例えば、粉砕炭、顆粒炭、球状炭若しくはペレット炭等の粒状活性炭、ファイバー若しくはクロス等の繊維状活性炭またはシート状、成形体若しくはハニカム状等の特殊成形活性炭、粉末活性炭等が挙げられる。
また、プラス若しくはマイナスの電荷が付加された活性炭またはポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)、ヘパリン、セルロース若しくはポリウレタン等の表面修飾剤で修飾された活性炭も本発明の活性炭に含まれる。
活性炭の平均細孔直径としては、特に限定されないが、通常は0.1〜20nm、好ましくは0.5〜5nm、より好ましくは1〜3nmである。
具体的には、例えば、カルボラフィン、強力白鷺、精製白鷺、特製白鷺、白鷺A、白鷺C、白鷺C−1、白鷺DO−2、白鷺DO−5、白鷺DO−11、白鷺DC、白鷺DO、白鷺Gx、白鷺G、白鷺GH、白鷺FAC−10、白鷺M、白鷺P、白鷺PHC、白鷺Gc、白鷺GH、白鷺GM、白鷺GS、白鷺GT、白鷺GAA、白鷺GOC、白鷺GOX、白鷺APRC、白鷺TAC、白鷺MAC、白鷺XRC、白鷺NCC、白鷺SRCX、白鷺Wc、白鷺LGK、白鷺KL、白鷺WH、白鷺W、白鷺WHA、白鷺LH、白鷺KL、白鷺LGK、白鷺MAC−W、白鷺S、白鷺Sx、白鷺X2M、白鷺X7000、白鷺X7100、白鷺DX7−3、モルシーボン(以上、日本エンバイオケミカルズ社製)、ACF、太閤(以上、富士ケミカル社製)、GLC(以上、クラレケミカル社製)、太閤S、太閤K、太閤Q(以上、フタムラ化学社製)、GAC、CN、CG、CAP/CGP、SX、CA(以上、日本ノリット社製)等が挙げられる。
本発明の精製方法の手段としては、特に限定されないが、例えば、バッチ法、膜処理法またはカラムクロマトグラフィー法等が挙げられ、それぞれの手段に応じて適切な活性炭の形状が選択される。必要に応じて、多孔性ポリマー若しくはゲルに活性炭を封入した粒子等の形態またはポリプロピレン若しくはセルロース等のサポート剤若しくは繊維等を用いて活性炭を吸着、固定若しくは成形した膜若しくはカードリッジ等の形態等にて使用することも出来る。具体的には、CUNO活性炭フィルターカードリッジ、ゼータプラス活性炭フィルターカードリッジ(住友スリーエム社製)、ミリスタックプラス活性炭フィルター(メルクミリポア社製)、スープラAKSフィルター(ポール社製)、アドール(以上、ユニチカ社製)、Kフィルター、活性炭シート(以上、東洋紡社製)、へマックス(クラレ社製)、ヘモソーバ(旭化成メディカル社製)、へモカラム(テルモ社製)、へセルス(帝人社製)等が挙げられる。
また、目的の蛋白質及び前記精製方法の手段により、用いる活性炭の充填密度、粒度、堅度、乾燥減量、強熱残分、比表面積、細孔容積またはpH等を適宜選択することも出来る。
本発明の精製方法は、好ましくは非吸着モードで行われる。非吸着モードとは、蛋白質含有水溶液を活性炭と接触させ、目的の蛋白質を該活性炭に吸着させずに非吸着画分を回収することを意味する。具体的には、予め蛋白質含有液のpH、導電率、緩衝液、蛋白質濃度、活性炭の単位体積あたりの蛋白質負荷量、温度または活性炭への接触時間等を調整し、活性炭に接触させることにより、目的の蛋白質を活性炭に吸着させずに不純物を活性炭に吸着させ、非吸着画分に不純物含量が低下した蛋白質を回収することが出来る。
活性炭に接触させる蛋白質含有水溶液のpHは、好ましくは2〜9であり、より好ましくは3〜8である。特に、蛋白質が抗体である場合、活性炭に接触させる蛋白質含有水溶液のpHは、好ましくは2〜8であり、より好ましくは3〜7であり、特に好ましくは4〜6であり、最も好ましくは4〜5である。また、蛋白質含有水溶液を構成する塩として、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ホウ酸塩、Tris(base)、HEPES、MES、PIPES、MOPS、TES、Tricine等が挙げられる。これらの濃度は好ましくは0.01mol/L〜0.5mol/Lである。また上記の塩は、例えば、0.01mol/L〜0.5mol/L、好ましくは0.01mol/L〜0.5mol/Lの塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等の他の塩と組み合わせて用いることも出来る。更に、緩衝液成分には、例えば、グリシン、アラニン、アルギニン、セリン、スレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸若しくはヒスチジン等のアミノ酸、グルコース、スクロース、ラクトース、シアル酸等の糖若しくはその誘導体等と組み合わせて用いることも出来る。
活性炭に接触させる蛋白質含有水溶液の温度は、好ましくは4℃から60℃、より好ましくは10℃から50℃、特に好ましくは20℃から40℃である。
本発明において、活性炭の非吸着画分を回収することで、不純物含量が低下した蛋白質を高い回収率で得ることが出来る。具体的には、不純物含量として、宿主細胞蛋白質の含量が好ましくは蛋白質1mgあたり100000ng以下、より好ましくは蛋白質1mgあたり10000ng以下、特に好ましくは蛋白質1mgあたり1000ng以下、蛋白質由来の重合体の含量が好ましくは5%以下、より好ましくは4%以下、特に好ましくは3%以下、蛋白質由来の分解物が好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは4%以下、最も好ましくは3%以下で得ることが出来る。回収率としては、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、宿主細胞蛋白質の低減率(HCP LRV)としては、好ましくは1以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは2以上で得ることが出来る。
本発明において、不純物含量が低下した蛋白質の回収率、不純物含量は、通常蛋白質精製において用いられる分析法を適用することが出来る。例えば、回収率は吸光度またはプロテインAなどのアフィニティHPLC法等、宿主細胞蛋白質の含量はELISA(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay)法、ウエスタンブロッティング法または電気化学発光法等、蛋白質由来の重合体若しくは蛋白質由来の分解物はゲルろ過HPLC法、イオン交換HPLC法、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法、光散乱法または超遠心法等、DNAはピコグリーン法、Threshold法またはQPCR法等の分析法によりそれぞれ測定することが出来る。
また、本発明は、活性炭を用いて、蛋白質と不純物とを分離し、不純物含量が低下した蛋白質を取得する精製方法を含む、蛋白質の製造方法に関する。
本発明の製造方法において、活性炭と組み合わせる精製方法としては、医薬品の製造に適した方法であればいずれも用いられるが、例えば、クロマトグラフィー、アルコール分画、沈殿物除去、塩析、緩衝液交換、濃縮、希釈、ろ過、ウイルス不活性化、ウイルス除去等が挙げられる。活性炭と組み合わせる精製方法は、複数の種類、数を組み合わせてもよい。また、これらの活性炭と組み合わせる精製方法は、活性炭を用いた精製方法の前後を問わず実施することが出来る。
活性炭と組み合わせるクロマトグラフィーに用いられる担体または膜としては、前記と同様のアフィニティ担体、イオン交換担体、イオン交換膜、ゲルろ過担体、疎水性相互作用担体、逆相担体、ヒドロキシアパタイト担体、フルオロアパタイト担体、硫酸化セルロース担体、硫酸化アガロース担体、混合モード担体等が挙げられる。
本発明において蛋白質が抗体である場合、活性炭を用いた精製方法と組み合わせるクロマトグラフィーには、好ましくはアフィニティクロマトグラフィーを含めない製造方法、より好ましくはプロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含めない製造方法が挙げられる。蛋白質が抗体である場合、活性炭と組み合わせるクロマトグラフィーとしては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィーまたはその組み合わせが挙げられる。
活性炭と組み合わせるクロマトグラフィーは、その目的に応じて吸着モードまたは非吸着モードで行われる。好ましくは、活性炭と組み合わせるクロマトグラフィーのうち、少なくとも1つのクロマトグラフィーは吸着モードで行われる。
該クロマトグラフィーにおける吸着モードとは、該クロマトグラフィーに供する水溶液を該担体または該膜に接触させ、目的の蛋白質を該担体または該膜に吸着させた後、必要に応じて洗浄を行い、その後、pH、電気伝導度、緩衝液成分、塩濃度または添加物等を変更した緩衝液で溶出させて吸着画分を回収することを意味する。該クロマトグラフィーにおける非吸着モードとは、該クロマトグラフィーに供する水溶液を該担体または該膜と接触させ、目的の蛋白質を該担体または該膜に吸着させずに非吸着画分を回収することを意味する。
本発明の蛋白質の製造方法において、例えば、活性炭と組み合わせる全てのクロマトグラフィーが非吸着モードで行われる蛋白質の製造方法(All negative chromatography)が挙げられる。
また、本発明において蛋白質が抗体である場合、例えば、活性炭と用いた精製方法の後に、引き続き非吸着モードで行われる陰イオン交換クロマトグラフィー、更に引き続き吸着モードで行われる陽イオン交換クロマトグラフィーを行う製造方法、または活性炭と用いた精製方法の後に、引き続き吸着モードで行われる陽イオン交換クロマトグラフィー、更に引き続き非吸着モードで行われる陰イオン交換クロマトグラフィーを行う製造方法等が挙げられる。
活性炭と組み合わせるクロマトグラフィーに供する水溶液または洗浄に使用する緩衝液は、pH、電気伝導度、緩衝液成分、塩濃度または添加物等について、それぞれ好適な条件を選定する。
クロマトグラフィーの条件を選定する上で、目的の蛋白質と分離したい化合物との物理化学的性質の違い、例えば、等電点、電荷、疎水性度、分子サイズまたは立体構造等の違いを利用することが出来る。吸着モードの溶出方法としては、目的の蛋白質と担体との親和性が低下するような特定の塩濃度またはpHの緩衝液を通液して溶出させる一段階溶出法、段階的に塩濃度またはpHを変化させて目的の蛋白質を溶出させるステップワイズ法または連続的に塩濃度またはpHを変化させて目的の蛋白質を溶出させるグラジエント法が挙げられる。
緩衝液を構成する塩としては、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ホウ酸塩、Tris(base)、HEPES、MES、PIPES、MOPS、TESまたはTricine等が挙げられる。また上記の塩は、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、クエン酸ナトリウム、硫酸ナトリウムまたは硫酸アンモニウムのような他の塩と組み合わせて用いることも出来る。更に、緩衝液成分には、例えば、グリシン、アラニン、アルギニン、セリン、スレオニン、グルタミン酸、アスパラギン酸若しくはヒスチジン等のアミノ酸、グルコース、スクロース、ラクトース、シアル酸等の糖若しくはその誘導体等と組み合わせて用いることも出来る。
本発明の製造方法により、不純物含量が低下した蛋白質を高い回収率で得ることが出来る。具体的には、不純物含量として、宿主細胞蛋白質の含量が好ましくは蛋白質1mgあたり100ng以下、より好ましくは蛋白質1mgあたり10ng以下、蛋白質由来の重合体の含量が好ましくは3.5%以下、より好ましくは1%以下、蛋白質由来の分解物が好ましくは3.5%以下、より好ましくは1%以下で得ることが出来る。回収率としては、好ましくは30%以上、より好ましくは40%以上で得ることが出来る。
以下、実施例により本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1 Mab A精製その1(活性炭を含む非吸着モード精製)
予め精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab A)を含むCHO細胞培養上清約600mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離及びフィルターで除去した。得られた清澄化液をトリス溶液で中和し、ペリコン3ウルトラセル膜(ミリポア社製、30kD、0.11m)で約6倍に濃縮した。濃縮後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)でバッファー交換し、濃縮/バッファー交換溶液を得た。
次いで、以下の手順で活性炭を含むMab A精製を全て非吸着モードにて実施した。まず、得られた濃縮/バッファー交換溶液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm)に通液し、活性炭溶出液Aとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Aを10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。
得られたQ Sepharose溶出液にクエン酸ナトリウムを10mmol/L相当添加後、塩酸にてpH7.0に調整した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)をクエン酸溶液にて、pH7.0に調整した平衡化緩衝液で平衡化した混合モードクロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Capto adhere、10mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分の一部をCapto adhere溶出液としてプールした。
得られたCapto adhere溶出液を、酢酸を用いてpH4.5に調整後、活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm)に通液し、活性炭溶出液Bとしてプールした。得られた活性炭溶出液BをMab A最終精製品とした。
Mab A最終精製品の重合体含有率及び分解物含有率についてゲルろ過HPLC法を用いて、宿主細胞蛋白質含有量についてELISA法を用いて分析した。
Mab A最終精製品の分析結果を図1、2及び3に示す。本精製方法により、重合体含有率及び分解物含有率がそれぞれ1%未満、宿主細胞蛋白質含有量が10ng/mg蛋白質未満のMab A精製品が取得できた。
実施例2 Mab B精製その1(活性炭を含む非吸着モード精製)
予め精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清約600mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離及びフィルターで除去した。得られた清澄化液をトリス溶液で中和し、ペリコン3ウルトラセル膜(ミリポア社製、30kD、0.11m)で約6倍に濃縮した。濃縮後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)でバッファー交換し、濃縮/バッファー交換溶液を得た。
次いで、以下の手順で活性炭を含むMab B精製を全て非吸着モードにて実施した。まず、得られた濃縮/バッファー交換溶液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm)に通液し、活性炭溶出液Aとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Aを10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液Aとしてプールした。
得られたQ Sepharose溶出液Aにクエン酸ナトリウムを10mmol/L相当添加後、塩酸にてpH7.0に調整した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)をクエン酸溶液にて、pH7.0に調整した平衡化緩衝液で平衡化した混合モードクロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Capto adhere、10mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分の一部をCapto adhere溶出液としてプールした。
得られたCapto adhere溶出液を、酢酸を用いてpH4.5に調整後、活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm)に通液し、活性炭溶出液Bとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Bを、トリス溶液を用いてpH8.0に調整後、フィルターろ過を行い、フィルターろ過液を得た。得られたフィルターろ過液を10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液Bとしてプールした。得られたQ Sepharose溶出液BをMab B最終精製品とした。
Mab B最終精製品の重合体含有率、分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含有量について実施例1と同様の方法を用いて分析した。
Mab B最終精製品の分析結果を図1、2及び3に示す。本精製方法により、重合体含有率及び分解物含有率がそれぞれ1%未満、宿主細胞蛋白質含有量が10ng/mg蛋白質未満のMab B精製品が取得できた。
実施例3 Mab C精製その1(活性炭を含む非吸着モード精製)
予め精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab C)を含むCHO細胞培養上清約600mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離及びフィルターで除去した。得られた清澄化液をトリス溶液で中和し、ペリコン3ウルトラセル膜(ミリポア社製、30kD、0.11m)で約6倍に濃縮した。濃縮後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.1)でバッファー交換し、濃縮/バッファー交換溶液を得た。
次いで、以下の手順で活性炭を含むMab C精製を全て非吸着モードにて実施した。まず、得られた濃縮/バッファー交換溶液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータプラスEXT荷電デプスフィルター、25cm)に通液し、活性炭溶出液Aとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Aを10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.1)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。
得られたQ Sepharoseプール液にクエン酸/クエン酸ナトリウムを10mmol/L相当添加後、塩酸にてpH6.0に調整した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.1)をクエン酸溶液にて、pH6.0に調整した平衡化緩衝液で平衡化した混合モードクロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Capto adhere、10mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分の一部をCapto adhere溶出液としてプールした。
得られたCapto adhere溶出液を、酢酸を用いてpH4.5に調整後、活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm)に通液し、活性炭溶出液Bとしてプールした。得られた活性炭溶出液BをMab C最終精製品とした。
Mab C最終精製品の重合体含有率、分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含有量について実施例1と同様の方法を用いて分析した。
Mab C最終精製品の分析結果は図1、2及び3に示す。本精製方法により、重合体含有率及び分解物含有率がそれぞれ1%未満、宿主細胞蛋白質含有量が10ng/mg蛋白質未満のMab C精製品が取得できた。
実施例4 Mab A精製その2(活性炭を含む非吸着モード精製)
予め精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab A)を含むCHO細胞培養上清約100mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離で除去し、清澄化液を得た。
次いで、以下の手順で活性炭を含むMab A精製を全て非吸着モードにて実施した。まず、得られた清澄化液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm)に通液し、活性炭溶出液Aとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Aを10mmol/L酢酸緩衝液(pH4.5)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(ミリポア社製、ProRes S、3mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、7カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分の一部をProRes S溶出液としてプールした。
得られたProRes S溶出液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm)に通液し、活性炭溶出液Bとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Bを5mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)で4倍に希釈後、トリス溶液で中和し、フィルターろ過した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。得られたQ Sepharose溶出液をMab A最終精製品とした。
Mab A最終精製品の重合体含有率、分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含有量について実施例1と同様の方法を用いて分析した。
Mab A最終精製品の分析結果を図4、5及び6に示す。本精製方法により、重合体含有率及び分解物含有率がそれぞれ1%未満、宿主細胞蛋白質含有量が10ng/mg蛋白質未満のMab A精製品が取得できた。
実施例5 Mab B精製その2(活性炭を含む非吸着モード精製)
予め精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清約100mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離で除去し、清澄化液を得た。
次いで、以下の手順で活性炭を含むMab B精製を全て非吸着モードにて実施した。まず、得られた清澄化液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm)に通液し、活性炭溶出液Aとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Aを10mmol/L酢酸緩衝液(pH4.5)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(ミリポア社製、ProRes S、3mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、7カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分の一部をProRes S溶出液としてプールした。
得られたProRes S溶出液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm)に通液し、活性炭溶出液Bとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Bを5mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)で4倍に希釈後、トリス溶液で中和し、フィルターろ過した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharos溶出液としてプールした。得られたQ Sepharose溶出液をMab B最終精製品とした。
Mab B最終精製品の重合体含有率、分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含有量について実施例1と同様の方法を用いて分析した。
Mab B最終精製品の分析結果を図4、5及び6に示す。本精製方法により、重合体含有率及び分解物含有率がそれぞれ1%未満、宿主細胞蛋白質含有量が10ng/mg蛋白質未満のMab B精製品が取得できた。
実施例6 Mab C精製その2(活性炭を含む非吸着モード精製)
予め精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab C)を含むCHO細胞培養上清約100mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離で除去し、清澄化液を得た。
次いで、以下の手順で活性炭を含むMab C精製を全て非吸着モードにて実施した。まず、得られた清澄化液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm)に通液し、活性炭溶出液Aとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Aを10mmol/L酢酸緩衝液(pH4.5) からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(ミリポア社製、ProRes S、3mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分の一部をProRes S溶出液としてプールした。
得られたProRes S溶出液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm)に通液し、活性炭溶出液Bとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Bを5mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)で4倍に希釈後、トリス溶液で中和し、フィルターろ過した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。得られたQ Sepharose溶出液をMab C最終精製品とした。
Mab C最終精製品の重合体含有率、分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含有量について実施例1と同様の方法を用いて分析した。
Mab C最終精製品の分析結果を図4、5及び6に示す。本精製方法により、重合体含有率及び分解物含有率がそれぞれ1%未満、宿主細胞蛋白質含有量が10ng/mg蛋白質未満のMab C精製品が取得できた。
実施例7 Mab A精製その3(活性炭を含む精製)
精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab A)を含むCHO細胞培養上清約200mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離で除去し、清澄化液Aを得た。
次いで、得られた清澄化液A約60mLに活性炭(日本エンバイロケミカル社製、白鷺P)を添加し、混合した。その後、混合した溶液を遠心分離及びフィルターろ過し、活性炭溶出液を得た。
得られた活性炭溶出液を5mmol/Lトリス緩衝液で4倍に希釈後、トリス溶液でpH8.0に調整した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。
得られたQ Sepharose溶出液を、酢酸溶液でpH5.0に調整した。その後、10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(アプライドバイオシステムズ社製、POROS XS、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。次に0.3mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)から塩濃度を徐々に増加させる塩濃度勾配(10カラム容量)にて溶出した。カラム溶出画分の一部をPOROS XS溶出液としてプールした。POROS XS溶出液をMab A最終精製品とした。
実施例8 Mab B精製その3(活性炭を含む精製)
精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清約225mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離で除去し、清澄化液Bを得た。
次いで、得られた清澄化液B約60mLに活性炭(日本エンバイロケミカル社製、白鷺P)を添加し、混合した。その後、混合した溶液を遠心分離及びフィルターろ過し、活性炭溶出液を得た。
得られた活性炭溶出液を5mmol/Lトリス緩衝液で4倍に希釈後、トリス溶液でpH8.0に調整した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。
得られたQ Sepharose溶出液を、酢酸溶液でpH5.1に調整した。その後、10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(アプライドバイオシステムズ社製、POROS XS、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。次に0.3mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)から塩濃度を徐々に増加させる塩濃度勾配(10カラム容量)にて溶出した。カラム溶出画分の一部をPOROS XS溶出液としてプールした。POROS XS溶出液をMab B最終精製品とした。
実施例9 Mab A精製品、Mab B精製品の分析
実施例7及び比較例1により得られたMab A精製中間体及び最終精製品、実施例8及び比較例2により得られたMab B精製中間体及び最終精製品について、以下の分析を行った。精製各工程の回収率及び精製工程全体を通じた総回収率をプロテインAアフィニティHPLC法により分析した。
Mab A及びMab BのプロテインA精製、活性炭精製での各工程回収率及び総回収率の結果を図7及び図8に示す。活性炭精製の総回収率は、プロテインA精製の総回収率とほぼ同程度であり、40%以上の高回収率であった。
精製中間体及び最終精製品の重合体含有率及び分解物含有率を、ゲルろ過HPLC法を用いて分析した。Mab A及びMab BのプロテインA精製、活性炭精製での精製中間体及び最終精製品の重合体含有率を図9及び図11、分解物含有率を図10及び図12にそれぞれ示す。
いずれのモノクローナル抗体についても、最終精製品(陽イオン)において、重合体含有率および分解物含有率は両精製方法で同程度であった。一方で、プロテインA精製工程と活性炭精製工程での重合体含有率および分解物含有率を比較した場合、活性炭精製工程の方がプロテインA精製工程より重合体含有率および分解物含有率は低く、2%未満であった。
精製中間体及び最終精製品の蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量をELISA法により分析した。Mab A及びMab BのプロテインA精製、活性炭精製での精製中間体及び最終精製品の蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量を図13及び図14に示す。
いずれのモノクローナル抗体についても、プロテインA精製工程と活性炭精製工程での宿主細胞蛋白質含有量は同程度であった。また、最終精製品においても、宿主細胞蛋白質含有量は同程度であり10 ng/mg蛋白質未満であった。
以上の結果から、プロテインAを用いた精製と比べて活性炭を用いた精製によって得られた精製中間体の宿主細胞蛋白質の含有量は同程度である一方、重合体含有率および分解物含有率は活性炭を用いた精製は低く、活性炭を用いた精製によってより不純物含量が低下した蛋白質を取得できることが確認された。
実施例10 活性炭による抗体の分解抑制
モノクローナル抗体(Mab B)を含む培養上清を酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿をフィルターを用いて除去し、清澄化液を得た。
次いで、得られた清澄化液に活性炭(日本エンバイロケミカル社製、白鷺P)を添加し、混合した。24時間保持後、活性炭を除いた上清をSDS−PAGE分析に供した。コントロールとして、活性炭を添加していないものを上記と同一の操作をし、非還元条件下SDS−PAGE分析に供した。
SDS−PAGE分析の結果を図15に示す。コントロール(C)は、清澄化液(A)と比較して分解物のバンドが増加したが、活性炭添加(B)は、分解物バンドが増加しなかった。
以上の結果から、活性炭の添加により分解物の生成が抑制されることが確認された。
実施例11 活性炭による抗体の還元抑制
モノクローナル抗体(Mab D)を含む培養上清に活性炭(日本エンバイロケミカル社製、白鷺P)を添加し、混合した。活性炭除去後、24時間嫌気状態とした。24時間保持後、上清を非還元条件下SDS−PAGE分析に供した。コントロールとして、活性炭を添加していないものを上記と同一の操作をし、SDS−PAGE分析に供した。
SDS−PAGE分析の結果を図16に示す。培養上清(A)と比較してコントロール(C)では抗体が還元したバンド(H鎖、L鎖)が観察されたが、活性炭処理(B)では、抗体が還元したバンド(H鎖、L鎖)が認められなかった。
以上の結果から、活性炭の添加により還元体の生成が抑制されることが確認された。
実施例12 Mab A精製品、Mab B精製品のDNA分析
実施例7により得られたMab A最終精製品、比較例1により得られたMab A精製品、実施例8により得られたMab B最終精製品及び比較例2により得られたMab B精製品について、Threshold法によるDNA分析を行った。
Mab A及びMab Bに関する活性炭精製での最終精製品およびProtein A精製での精製品の蛋白質1mgあたりのDNA含有量を図17に示す。いずれの最終精製品及び精製品についてもDNA含有量は同程度であり10pg/mg以下であった。
実施例13 活性炭精製におけるpHの影響
精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清を酸またはアルカリでpH4、pH5、pH6、pH7、pH8にそれぞれ調整した。生成した沈殿をフィルターろ過で除去し、各pH調整清澄化液を得た。
次いで、得られた各pH調整清澄化液約10mLに活性炭(日本エンバイロケミカル社製、白鷺P)を添加し、混合した。その後、混合した各溶液を遠心分離し、各活性炭溶出液を得た。各pH調整清澄化液で活性炭を添加していないものを各pHコントロールとした。
得られた各pH活性炭溶出液および各pHコントロールの蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量をELISA法により分析した。得られた蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量より以下の計算式にて宿主細胞蛋白質の低減率(HCP LRV)を算出した。
(計算式) 宿主細胞蛋白質の低減率(HCP LRV)=−log10(活性炭溶出液の蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量/コントロールの蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量)
活性炭処理による各pHにおける宿主細胞蛋白質の低減率(HCP LRV)を図18に示す。pH4および5でHCP LRVは2以上であった。pH6、pH7およびpH8ではHCP LRVは1〜2の範囲であった。従って、pH6、pH7及びpH8に比べて、pH4及びpH5の方が活性炭処理による宿主細胞蛋白質低減の効果が高いことが確認された。
得られた各pH活性炭溶出液の抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析した。pH7の活性炭溶出液での抗体濃度を100とした場合の各pHでの相対抗体濃度(%)を図19に示す。
pH4での抗体濃度は、他のpHの抗体濃度より低く、pH7の約70%となった。その他のpHでは、pH7の±10%の範囲内であり、pH4に比べて、pH5、pH6、pH7及びpH8の方が活性炭処理における相対抗体濃度が高く、抗体回収率が高いことが確認された。
以上の各pHにおける宿主細胞由来蛋白質の低減率及び相対抗体濃度の結果から、活性炭処理はpH4〜8のいずれのpHでも実施可能であり、特にpH4〜6が好ましいと考えられた。実施例14 活性炭精製における活性炭原材料の影響
精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清を酢酸でpH4.6に調整した。生成した沈殿を遠心分離及び、フィルターろ過で除去し、清澄化液Bを得た。
次いで、得られた清澄化液B約10mLに表1に示す活性炭をそれぞれ添加し、混合した。その後、混合した溶液を遠心分離及びフィルターろ過し、活性炭溶出液を得た。
Figure 0006640799
各活性炭溶出液の重合体含有率及び分解物含有率はゲルろ過HPLC法を用いて、宿主細胞蛋白質含有量はELISA法を用いて分析した。各活性炭溶出液の分析結果を図20、図21及び図22に示す。
白鷺P、白鷺DO−2及び白鷺DO−5を用いた活性炭溶出液はともに、重合体含有率、分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含量が培養上清より低下した。特に原材料が木質である白鷺Pを用いた活性炭溶出液は、他の活性炭に比べて分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含有量がより低下した。
比較例1 Mab A精製(プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む精製)
実施例7で得た清澄化液Aをトリス溶液でpH6.4に調整した。この溶液約60mLを10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化したプロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、MabSelect SuRe、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の1mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)及び平衡化緩衝液でカラムを洗浄した。次に、5カラム容量の100mmol/Lグリシン緩衝液(pH3.2)により溶出した。カラム溶出画分をMabSelect SuRe溶出液としてプールした。
得られたMabSelect SuRe液をトリス溶液でpH8.0に調整した。この溶液を10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。
得られたQ Sepharose溶出液を、酢酸溶液でpH5.0に調整した。この溶液を10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(アプライドバイオシステムズ社製、POROS XS、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。次に0.3mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)から塩濃度を徐々に増加させる塩濃度勾配(10カラム容量)にて溶出した。カラム溶出画分の一部をPOROS XS溶出液としてプールした。POROS XS溶出液をMab A精製品とした。
比較例2 Mab B精製(プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む精製)
実施例8で得た清澄化液Bをトリス溶液でpH6.4に調整した。この溶液約60mLを10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化したプロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、MabSelect SuRe、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の1mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)及び平衡化緩衝液でカラムを洗浄した。次に、5カラム容量の100mmol/Lグリシン緩衝液(pH3.2)により溶出した。カラム溶出画分をMabSelect SuRe溶出液としてプールした。
得られたMabSelect SuRe液をトリス溶液でpH8.0に調整した。この溶液を10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。
得られたQ Sepharose溶出液を、酢酸溶液でpH5.0に調整した。この溶液を10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(アプライドバイオシステムズ社製、POROS XS、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。次に0.3mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)から塩濃度を徐々に増加させる塩濃度勾配(10カラム容量)にて溶出した。カラム溶出画分の一部をPOROS XS溶出液としてプールした。POROS XS溶出液をMab B精製品とした。
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。

Claims (10)

  1. 性炭を用いて、抗体由来の還元体の生成を抑制すると同時に抗体と不純物とを分離し、不純物含量が低下した抗体を取得する、抗体の精製方法であって、
    活性炭が木質系活性炭であり、且つ平均細孔直径が0.5〜5nmである、精製方法
  2. 抗体の分子量が30000以上である、請求項1に記載の精製方法。
  3. 抗体が遺伝子組換え抗体である、請求項1または2に記載の精製方法。
  4. 不純物が宿主細胞蛋白質、抗体由来の重合体、抗体由来の分解物、抗体由来の還元体およびDNAである、請求項1〜のいずれか1項に記載の精製方法。
  5. 非吸着モードで分離を行う、請求項1〜のいずれか1項に記載の精製方法。
  6. pHが3〜8で分離を行う、請求項1〜のいずれか1項に記載の精製方法。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の精製方法を含む、抗体の製造方法。
  8. プロテインAクロマトグラフィーを使用しない、請求項に記載の製造方法。
  9. 陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、疎水相互作用クロマトグラフィーまたは混合モードクロマトグラフィーの何れか1のクロマトグラフィーを含む、請求項またはに記載の製造方法。
  10. 少なくとも1つの吸着モードのクロマトグラフィーを含む、請求項のいずれか1項に記載の製造方法。
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