JP7062874B2 - 感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法 - Google Patents

感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法 Download PDF

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Description

本発明は、感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
リソグラフィーによる微細加工に用いられる感放射線性樹脂組成物は、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、極紫外線(EUV:Extreme Ultraviolet、波長13.5nm)等の遠紫外線、電子線等の荷電粒子線などの照射により露光部に酸を発生させ、この酸を触媒とする化学反応により、露光部と未露光部との現像液に対する溶解速度に差を生じさせ、基板上にレジストパターンを形成する。
現在では、より波長の短いレーザー光や電子線の使用及び液浸露光装置等により、レジストパターンの加工技術の微細化が図られている。これに伴い、かかる感放射線性樹脂組成物には、解像性及びレジストパターンの断面形状の矩形性等のリソグラフィー性能に優れることが要求される。この要求に対して、感放射線性樹脂組成物中の重合体の構造について検討されており、種々の極性基を導入することが行われ、ラクトン構造を有するものが知られている(特開2000-26446号公報、特開2000-159758号公報、特開平10-207069号公報及び特開平10-274852号公報参照)。これらの感放射線性樹脂組成物によれば、解像性を向上できるとされている。
特開2000-26446号公報 特開2000-159758号公報 特開平10-207069号公報 特開平10-274852号公報
しかしながら、レジストパターンの微細化が線幅45nm以下のレベルまで進展している現在にあっては、上記性能の要求レベルはさらに高まり、さらに、LWR(Line Width Roughness)性能、CDU(Critical Dimension Uniformity)性能及びMEEF(Mask Error Enhancement Factor)性能にも優れることが求められている。しかし、上記従来の感放射線性樹脂組成物ではこれらの要求を満足させることはできていない。
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、LWR性能、CDU性能及びMEEF性能(以下、「LWR性能等」ともいう。)に優れる感放射線性樹脂組成物の提供を目的とする。
上記課題を解決するためになされた発明は、下記式(1)で表される第1構造単位を有する第1重合体(以下、「[A]重合体」ともいう。)と、スルホン酸又はジスルホニルイミド酸を発生する第1感放射線性酸発生体(以下、「[B]感放射線性酸発生体」ともいう。)とを含有し、上記第1感放射線性酸発生体が、多環構造を含む基を有し、かつ1又は複数のフッ素原子を有するアニオンを含む感放射線性樹脂組成物である。
Figure 0007062874000001
(式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。nは、0~16の整数である。Rは、炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、nが2以上の場合、複数のRは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又は複数のRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子又は炭素鎖と共に環員数3~20の脂環構造を構成する。)
上記課題を解決するためになされた別の発明は、基板の一方の面側に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する工程と、上記塗工工程により得られたレジスト膜を露光する工程と、上記露光されたレジスト膜を現像する工程とを備えるレジストパターン形成方法である。
ここで、「多環構造を含む基」における「多環構造」とは、環状の構造を1つの環とした場合に、複数の環を含む構造をいう。多環構造としては、例えば(1)縮合環を含む構造、(2)橋架け環を含む構造、(3)縮合環、橋架け環及び単環のうちのいずれかを複数含む構造が挙げられる。「単環」とは、1つの環のみからなる環をいう。
「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。「酸解離性基」とは、カルボキシ基、ヒドロキシ基等の水素原子を置換する基であって、酸の作用により解離する基をいう。「環員数」とは、脂環構造、芳香環構造、脂肪族複素環構造及び芳香族複素環構造の環を構成する原子の数をいい、縮合環、橋架け環のような多環の場合は、この多環を構成する原子の数の総和をいう。例えばナフタレン構造の環員数は10であり、アダマンタン構造の環員数は10である。
また、「炭化水素基」には、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が含まれる。この「炭化水素基」は、飽和炭化水素基でも不飽和炭化水素基でもよい。「鎖状炭化水素基」とは、環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された炭化水素基をいい、直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基の両方を含む。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基をいい、単環の脂環式炭化水素基及び多環の脂環式炭化水素基の両方を含む。但し、脂環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を含んでいてもよい。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基をいう。但し、芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環構造を含んでいてもよい。
本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法によれば、LWR性能、CDU性能及びMEEF性能に優れるレジストパターンを形成することができる。従って、これらはさらなる微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造等におけるパターン形成に好適に用いることができる。
<感放射線性樹脂組成物>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体及び[B]感放射線性酸発生体(以下、「[B]酸発生体」ともいう。)を含有する。当該感放射線性樹脂組成物は、好適成分として、[B]酸発生体以外の感放射線性酸発生体(以下、「[C]感放射線性酸発生体」又は「[C]酸発生体」ともいう。)、[A]重合体よりもフッ素原子の質量含有率が大きい重合体(以下、「[D]重合体」ともいう。)、[E]溶媒及び[F]窒素含有化合物を含有していてもよい。さらに、当該感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。当該感放射線性樹脂組成物は、上記構成を有することで、LWR性能、CDU性能及びMEEF性能に優れる。以下、各成分について説明する。
<[A]重合体>
[A]重合体は、2個のノルボルナン(ビシクロ[2.2.1]ヘプタン)が1辺を共有するジノルボルナン構造を含む下記式(1)で表される構造単位(I)を有する重合体である。[A]重合体は、通常、当該感放射線性樹脂組成物におけるベース重合体となる。「ベース重合体」とは、レジストパターンを構成する重合体のうちの最も含有率が大きい重合体であって、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上を占める重合体をいう。
[A]重合体は、構造単位(I)以外にも、酸解離性基を含む構造単位(以下、「構造単位(II)」ともいう。)、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造若しくはこれらの組み合わせを含む構造単位(以下、「構造単位(III)」ともいう。)、フェノール性水酸基を含む構造単位(以下、「構造単位(IV)」ともいう。)、及び/又はアルコール性水酸基を含む構造単位(以下、「構造単位(V)」ともいう。)を有することが好ましく、構造単位(II)~(V)以外のその他の構造単位を有していてもよい。[A]重合体はこれらの構造単位を1種又は2種以上有していてもよい。
[構造単位(I)]
構造単位(I)は、酸解離性基を含む構造単位である。構造単位(I)は、下記式(1)で表される構造単位を含む。当該感放射線性樹脂組成物によれば、放射線の照射により[B]酸発生体等から生じる酸により露光部の構造単位(I)の酸解離性基が解離して露光部と未露光部とで現像液に対する溶解性に差異が生じ、その結果、レジストパターンを形成することができる。
Figure 0007062874000002
上記式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。nは、0~16の整数である。Rは、炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、nが2以上の場合、複数のRは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又は複数のRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子又は炭素鎖と共に環員数3~20の脂環構造を構成する。
当該感放射線性樹脂組成物が、上記式(1)で表される構造単位(I)を含む[A]重合体及び[B]感放射線性酸発生体を含有することで、上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、[A]重合体は、ジノルボルナン構造を含む構造単位を有するため、バルキーな(かさ高い)構造を有する。また、[B]感放射線性酸発生体も多環構造を含む基を有するため、バルキーな構造を有する。その結果、[A]重合体は、バルキーな構造を有するため溶解コントラストが向上し、[B]感放射線性酸発生体はバルキーな構造を有するため酸の拡散長が適度に短くなり。この2つの相乗効果により、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能、CDU性能等を向上させることができると考えられる。
上記R及びRで表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基等が挙げられる。これらの中で、アルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基及びi-プロピル基がさらに好ましい。
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば
シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の1価の単環の脂環式飽和炭化水素基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の1価の単環の脂環式不飽和炭化水素基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等の1価の多環の脂環式飽和炭化水素基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の1価の多環の脂環式不飽和炭化水素基等が挙げられる。これらの中で1価の単環の脂環式飽和炭化水素基及び1価の多環の脂環式飽和炭化水素基が好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基がより好ましい。
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、メチルアントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
上記R及びRで表される環員数3~20の脂環構造としては、例えばシクロペンタン構造、シクロヘキサン構造等の脂環式飽和炭化水素構造等が挙げられる。
上記式(1)におけるRとしては、Rの炭化水素基の炭素数が、3~20であると好ましく、これらの中で解離のしやすさの観点から、i-プロピル基がより好ましい。
上記式(1)におけるRとしては、これらの中で[A]重合体の極性をより制御し易い観点から、それぞれ独立して、水素原子が好ましい。
上記式(1)で表される構造単位(I)としては、具体的にはエンド型の下記式(1-1)~(1-2)で表される構造単位(以下、構造単位(1-1)~(1-2)ともいう。)及びエキソ型の下記式(1-3)~(1-4)で表される構造単位(以下、構造単位(1-3)~(1-4)ともいう。)が挙げられる。
Figure 0007062874000003
式(1-1)~(1-4)中、R、R及びRは、上記式(1)と同義である。
上記式(1)で表される構造単位(I)としては、LWR性能等向上の観点からこれらの中でエンド型の構造単位(1-1)及び構造単位(1-2)が好ましい。
上記式(1)で表される構造単位(I)の具体例としては、例えば、下記式で表される構造単位等が挙げられる。
Figure 0007062874000004
式(1-a)~(1-g)中、Rは、上記式(1)と同義である。
上記式(1-1)で表される構造単位(I)としては、LWR性能等向上の観点からこれらの中でエンド型の構造単位(1-a)及び構造単位(1-d)が好ましい。
[A]重合体が構造単位(I)を有する場合、構造単位(I)の含有割合の下限としては、[A]重合体における全構造単位に対して、3モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、75モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましい。構造単位(I)の含有割合を上記範囲とすることで、[A]重合体は現像液への溶解性をさらに適度に調整することができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をさらに向上させることができる。また、得られるレジストパターンと基板との密着性をさらに向上させることができる。
[構造単位(II)]
構造単位(II)は、構造単位(I)とは異なる酸解離性基を含む構造単位である。構造単位(II)としては、構造単位(I)とは異なる酸解離性基を含む限り特に限定されない。
構造単位(II)としては、例えば下記式(3)及び下記式(8)で表される構造単位(以下、「構造単位(II-1)~(II-2)」ともいう。)が挙げられる。[A]重合体は、構造単位(II)を1種又は2種以上有していてもよい。以下、構造単位(II)について説明する。
Figure 0007062874000005
上記式(3)中、RA1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。RA2は、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。RA3及びRA4は、それぞれ独立して炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又はこれらの基が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~11の環構造を表す。
上記式(8)中、RA1は、上記式(3)と同義である。Lは、単結合、-COO-又は-CONH-である。Rは、炭素数1~20の1価の有機基である。cは、0~4の整数である。cが2以上の場合、複数のRは同一でも異なっていてもよい。RA5、RA6及びRA7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は炭素数1~20の1価のオキシ炭化水素基である。
A1としては、構造単位(II)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
A2、RA3及びRA4で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
炭素数1~20の1価の鎖状炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等のアルキル基;
エテニル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基;
エチニル基、プロピニル基、ブチニル基等のアルキニル基等が挙げられる。これらの中で、アルキル基が好ましく、炭素数1~4のアルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基及びi-プロピル基がさらに好ましく、エチル基が特に好ましい。
炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基としては、例えば
シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の1価の単環の脂環式飽和炭化水素基;
シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の1価の単環の脂環式不飽和炭化水素基;
ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基等の1価の多環の脂環式飽和炭化水素基;
ノルボルネニル基、トリシクロデセニル基等の1価の多環の脂環式不飽和炭化水素基等が挙げられる。これらの中で1価の単環の脂環式飽和炭化水素基及び1価の多環の脂環式飽和炭化水素基が好ましく、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基及びアダマンチル基がより好ましい。
炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基としては、例えば
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、メチルアントリル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、アントリルメチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
A3及びRA4が互いに合わせられこれらが結合する炭素原子と共に構成される環員数3~11の脂環構造としては、例えばシクロプロパン構造、シクロブタン構造、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、ノルボルナン構造、アダマンタン構造等の脂環構造;
オキサシクロペンタン構造、チアシクロペンタン構造、アザシクロペンタン構造等の脂肪族複素環構造等が挙げられる。これらの中で、脂環構造が好ましく、シクロヘキサン構造がより好ましい。
構造単位(II)としては、例えば下記式(3-1)~(3-5)及び(8-1)で表される構造単位(以下、「構造単位(II-1-1)~(II-1-5)及び(II-2-1)」ともいう。)等が挙げられる。
Figure 0007062874000006
上記式(3-1)~(3-5)中、RA1~RA4は、上記式(3)と同義である。
上記式(3-1)中、iは、1~4の整数である。
上記式(3-3)中、jは、1~4の整数である。
上記式(3-5)中、RA2’、RA3’及びRA4’は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基である。
上記式(8-1)中、RA1、RA5、RA6及びRA7は、上記式(8)と同義である。
i及びjとしては、1~3が好ましく、1及び2がより好ましい。
構造単位(II)としては、構造単位(II-1-1)~(II-1-5)が好ましい。
構造単位(II)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
Figure 0007062874000007
Figure 0007062874000008
Figure 0007062874000009
上記式中、RA1は、上記式(3)と同義である。
構造単位(II)としては、1-アルキル-単環シクロアルカン-1-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2-アルキル-多環シクロアルカン-2-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び2-(シクロアルカン-イル)プロパン-2-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位が好ましく、1-i-プロピルシクロペンタン-1-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、1-メチルシクロヘキサン-1-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2-エチル-アダマンタン-2-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2-エチル-テトラシクロドデカン-2-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、2-(アダマンタン-1-イル)プロパン-2-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び2-(シクロヘキサン-1-イル)プロパン-2-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましい。
構造単位(II)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、30モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、75モル%がより好ましく、70モル%がさらに好ましく、60モル%が特に好ましい。構造単位(II)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をさらに向上させることができる。
[構造単位(III)]
構造単位(III)は、ラクトン構造、環状カーボネート構造、スルトン構造又はこれらの組み合わせを含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(I)及び構造単位(II)に加え、構造単位(III)をさらに有することで現像液への溶解性をより適度に調整することができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をより向上させることができる。また、当該感放射線性樹脂組成物から形成されるレジストパターンと基板との密着性を向上させることができる。
構造単位(III)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
Figure 0007062874000010
Figure 0007062874000011
Figure 0007062874000012
Figure 0007062874000013
上記式中、RL1は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
構造単位(III)としては、ラクトン構造を有する構造単位、環状カーボネート構造を有する構造単位及びスルトン構造を有する構造単位が好ましく、ラクトン構造含有(メタ)アクリレートに由来する構造単位、環状カーボネート構造含有(メタ)アクリレートに由来する構造単位及びスルトン構造含有(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましく、ノルボルナンラクトン-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、シアノノルボルナンラクトン-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、ノルボルナンラクトン-イルオキシカルボニルメチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、γ-ブチロラクトン-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、エチレンカーボネート-イルメチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及びノルボルナンスルトン-イル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がさらに好ましい。
[A]重合体が構造単位(III)を有する場合、構造単位(III)の含有割合の下限としては、[A]重合体における全構造単位に対して、10モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、20モル%がさらに好ましく、25モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、80モル%が好ましく、70モル%がより好ましく、60モル%がさらに好ましく、55モル%が特に好ましい。構造単位(III)の含有割合を上記範囲とすることで、[A]重合体は現像液への溶解性をさらに適度に調整することができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をさらに向上させることができる。また、得られるレジストパターンと基板との密着性をさらに向上させることができる。
[構造単位(IV)]
構造単位(IV)は、フェノール性水酸基を含む構造単位である。レジストパターン形成方法における露光工程で照射する放射線として、KrFエキシマレーザー光、EUV、電子線等を用いる場合には、[A]重合体が構造単位(IV)を有することで、感度をより高めることができる。
構造単位(IV)としては例えば下記式(4)で表される構造単位(以下、「構造単位(IV)」ともいう。)等が挙げられる。
Figure 0007062874000014
上記式(4)中、R14は、水素原子又はメチル基である。R15は、炭素数1~20の1価の有機基である。pは、0~3の整数である。pが2又は3の場合、複数のR15は同一でも異なっていてもよい。qは、1~3の整数である。但し、p+qは、5以下である。
上記R14としては、構造単位(IV)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子が好ましい。
上記R15で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間又は結合手側の末端に2価のヘテロ原子含有基を含む基(g)、上記炭化水素基及び基(g)が有する水素原子の一部又は全部をヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。
上記pとしては、0~2の整数が好ましく、0及び1がより好ましく、0がさらに好ましい。
上記qとしては、1及び2が好ましく、1がより好ましい。
構造単位(IV)としては、例えば下記式(4-1)~(4-4)で表される構造単位(以下、「構造単位(IV-1)~(IV-4)」ともいう。)等が挙げられる。
Figure 0007062874000015
上記式(4-1)~(4-4)中、R14は、上記式(4)と同義である。
構造単位(IV)としては、構造単位(IV-1)及び構造単位(IV-2)が好ましく、構造単位(IV-1)がより好ましい。
[A]重合体が構造単位(IV)を有する場合、構造単位(IV)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、30モル%がさらに好ましく、35モル%が特に好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、75モル%がさらに好ましく、70モル%が特に好ましい。構造単位(IV)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物は感度をさらに向上させることができる。
なお、構造単位(IV)は、アセトキシ基等のアシロキシ基を有するスチレン単量体などを重合した後、得られた重合体を、アミン等の塩基存在下で加水分解反応を行うこと等により形成することができる。
[構造単位(V)]
構造単位(V)は、アルコール性水酸基を含む構造単位である。[A]重合体は、構造単位(V)を有することで、現像液への溶解性をより適度に調整することができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をより向上させることができる。また、レジストパターンの基板への密着性をより高めることができる。
構造単位(V)としては、例えば下記式で表される構造単位等が挙げられる。
Figure 0007062874000016
上記式中、RL2は、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
構造単位(V)としては、ヒドロキシアダマンチル基を含む構造単位が好ましく、3-ヒドロキシアダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位がより好ましい。
[A]重合体が構造単位(V)を有する場合、構造単位(V)の含有割合の下限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、2モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、8モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、70モル%が好ましく、60モル%がより好ましく、55モル%がさらに好ましい。構造単位(V)の含有割合を上記範囲とすることで、[A]重合体は現像液への溶解性をさらに適度に調整することができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をさらに向上することができる。また、レジストパターンの基板への密着性をさらに高めることができる。
[その他の構造単位]
[A]重合体は、上記構造単位(I)~(V)以外にもその他の構造単位を有してもよい。上記その他の構造単位としては、例えばケトン性カルボニル基、シアノ基、カルボキシ基、ニトロ基、アミノ基又はこれらの組み合わせを含む構造単位、非解離性の1価の脂環式炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位等が挙げられる。その他の構造単位の含有割合の上限としては、[A]重合体を構成する全構造単位に対して、20モル%が好ましく、10モル%がより好ましい。
[A]重合体の含有量の下限としては、当該感放射線性樹脂組成物の全固形分に対して、55質量%が好ましく、60質量%がより好ましく、65質量%がさらに好ましい。「全固形分」とは、当該感放射線性樹脂組成物中の[E]溶媒以外の成分の総和をいう。当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体を1種又は2種以上含有していてもよい。
<[A]重合体の合成方法>
[A]重合体は、例えば各構造単位を与える単量体を、ラジカル重合開始剤等を用い、適当な溶媒中で重合することにより合成できる。
上記ラジカル重合開始剤としては、例えば
アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート等のアゾ系ラジカル開始剤;
ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物系ラジカル開始剤などが挙げられる。これらの中で、AIBN及びジメチル2,2’-アゾビスイソブチレートが好ましく、AIBNがより好ましい。これらのラジカル重合開始剤は1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
重合に使用される溶媒としては、例えば
n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン等の飽和炭化水素;
シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等の脂環式飽和炭化水素;
ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素;
クロロブタン、ブロモヘキサン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;
酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル;
アセトン、メチルエチルケトン、4-メチル-2-ペンタノン、2-ヘプタノン等のケトン;
テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン類、ジエトキシエタン類等のエーテル;
メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール等のアルコールなどが挙げられる。これらの重合に使用される溶媒は、1種単独で又は2種以上を併用してもよい。
重合における反応温度の下限としては、40℃が好ましく、50℃がより好ましい。上記反応温度の上限としては、150℃が好ましく、120℃がより好ましい。重合における反応時間の下限としては、1時間が好ましく、2時間がより好ましい。上記反応時間の上限としては、48時間が好ましく、24時間がより好ましい。
[A]重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の下限としては、1,000が好ましく、3,000がより好ましく、4,000がさらに好ましく、5,000が特に好ましい。上記Mwの上限としては、50,000が好ましく、30,000がより好ましく、20,000がさらに好ましく、10,000が特に好ましい。[A]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の塗工性が向上し、かつ現像欠陥抑制性がより向上する。
[A]重合体のGPCによるポリスチレン換算数平均分子量(Mn)に対するMwの比(Mw/Mn)の下限としては、通常1であり、1.1が好ましい。上記比の上限としては、5が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましい。
<[B]感放射線性酸発生体>
当該感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体に加えて、[B]酸発生体を含有する。[B]酸発生体は、露光により酸を発生する物質である。この発生した酸により、[A]重合体等が有する酸解離性基が解離してカルボキシ基、ヒドロキシ基等が生じ、[A]重合体の現像液への溶解性が変化するため、当該感放射線性樹脂組成物によりレジストパターンを形成することができる。酸発生体の当該感放射線性樹脂組成物における含有形態としては、遊離の化合物の形態(以下、適宜「[B]酸発生剤」という)でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
[B]酸発生剤は、スルホン酸又はジスルホニルイミド酸を発生する。[B]酸発生剤は、多環構造を含む基を有し、かつ1又は複数のフッ素原子を有するアニオンを含む。また、[B]酸発生剤のアニオンは-SO-と、この-SO-の硫黄原子に隣接する炭素原子とを有し、この炭素原子に1又は複数のフッ素原子が結合していることが好ましい。
上述したように[B]酸発生剤の多環構造としては、(1)縮合環を含む構造、(2)橋架け環を含む構造、(3)縮合環、橋架け環及び単環のうちのいずれかを複数含む構造が挙げられるが、これらの中で(1)縮合環を含む構造又は(2)橋架け環を含む構造が好ましく、(2)橋架け環を含む構造がより好ましい。
[B]酸発生剤としては、例えばオニウム塩化合物、ジスルホニルイミド塩化合物等が挙げられる。
オニウム塩化合物としては、例えばスルホニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩、ヨードニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、ピリジニウム塩等が挙げられる。
[B]酸発生剤としては、下記式(r1)又は下記式(r2)で表される酸発生剤が好ましい。[B]酸発生剤が下記構造を有することで、[A]重合体と構造単位(II)との相互作用等により、露光により発生する酸のレジスト膜中の拡散長がより適度に短くなると考えられ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能及び焦点深度をより向上させることができる。
Figure 0007062874000017
上記式(r1)中、Rp1は、炭素数5~20の1価の多環構造を含む有機基である。Rp2は、2価の連結基である。Rp3及びRp4は、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基又は炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基である。Rp5及びRp6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の1価の炭化水素基又はフッ素原子であり、-SO-の硫黄原子に隣接する炭素原子のRp5及びRp6のうちの少なくともいずれかは、フッ素原子である。np1は、0~10の整数である。np2は、0~10の整数である。np3は、1~10の整数である。np1が2以上の場合、複数のRp2は同一でも異なっていてもよい。np2が2以上の場合、複数のRp3は同一でも異なっていてもよく、複数のRp4は同一でも異なっていてもよい。np3が2以上の場合、複数のRp5は同一でも異なっていてもよく、複数のRp6は同一でも異なっていてもよい。Tは、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
上記式(r2)中、Rp7及びRp8は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基であり、Rp7及びRp8のうちの少なくともいずれかの-SO-の硫黄原子に隣接する炭素原子に1又は複数のフッ素原子が結合するとともに、Rp7及びRp8のうちの少なくともいずれかが多環構造を含む基を有する。
上記Rp1、Rp7及びRp8で表される1価の多環構造を含む基としては、例えば、(1)環員数7以上の縮合環を含む構造を有する1価の基、(2)環員数7以上の橋架け環を含む構造を有する1価の基、(3)環員数7以上の縮合環、環員数7以上の橋架け環及び環員数5以上の単環のうちのいずれかを複数含む構造を有する1価の基等が挙げられる。これらの中で環員数7以上の縮合環を含む構造を有する1価の基又は環員数7以上の橋架け環を含む構造を有する1価の基が好ましく、環員数7以上の橋架け環を含む構造を有する1価の基がより好ましい。
上記環員数7以上の縮合環としては、例えば、
トリシクロデカン、テトラシクロドデカン、トリシクロデセン、ジノルボルナン等の縮合環炭化水素構造;
オキサスピロデカン等の多環の脂肪族複素環構造
ナフタレン、フェナントレン、アントラセン等の多環の芳香環構造;
ベンゾピラン、インドール等の多環の芳香族複素環構造などが挙げられる。
上記環員数7以上の橋架け環としては、例えば、
ノルボルナン、アダマンタン、ノルボルネン等の橋かけ環炭化水素構造;
ノルボルナンラクトン、ノルボルナンスルトン、オキサノルボルナン、ジアザビシクロオクタン、チアノルボルナン等の多環の脂肪族複素環構造などが挙げられる。
上記環員数5以上の単環としては、例えば
シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロドデカン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロデセン等の単環の脂環式炭化水素構造;
ヘキサノラクトン、ヘキサノスルトン、オキサシクロヘプタン、環状アセタール、アザシクロヘキサン、チアシクロヘキサン等の単環の脂肪族複素環構造;
ベンゼン等の単環の芳香環構造;
フラン、ピラン、ピリジン、ピリミジン等の単環の芳香族複素環構造などが挙げられる。
p1、Rp7及びRp8の多環構造を構成する環構造の環員数の下限としては、6が好ましく、7がより好ましく、8がさらに好ましく、9が特に好ましい。一方、上記環員数の上限としては、15が好ましく、14がより好ましく、13がさらに好ましく、12が特に好ましい。上記環員数を上記範囲とすることで、上述の酸の拡散長をさらに適度に短くすることができ、その結果、当該感放射線性樹脂組成物のLWR性能等をより向上させることができる。
p1、Rp7及びRp8で表される多環構造を含む基を構成する縮合環、橋架け環又は単環の構造としては、Z-1、Z-2、Z-3及びZ-4が好ましく、Z-1及びZ-2がより好ましい。
Figure 0007062874000018
また、Rp1、Rp7及びRp8の多環構造が有する水素原子の一部又は全部は、置換基で置換されていてもよい。上記置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基、その他のヘテロ原子含有基などが挙げられる。
p2で表される2価の連結基としては、例えばカルボニル基、エーテル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、チオカルボニル基、スルホニル基、2価の炭化水素基等が挙げられる。Rp2で表される2価の連結基としては、カルボニルオキシ基、スルホニル基、アルカンジイル基及びシクロアルカンジイル基が好ましく、カルボニルオキシ基及びシクロアルカンジイル基がより好ましく、カルボニルオキシ基及びノルボルナンジイル基がさらに好ましく、カルボニルオキシ基が特に好ましい。
p3及びRp4で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のアルキル基等が挙げられる。Rp3及びRp4で表される炭素数1~20の1価のフッ素化炭化水素基としては、例えば炭素数1~20のフッ素化アルキル基等が挙げられる。Rp3及びRp4としては、水素原子、フッ素原子及びフッ素化アルキル基が好ましく、フッ素原子及びパーフルオロアルキル基がより好ましく、フッ素原子及びトリフルオロメチル基がさらに好ましい。
p1としては、0~5の整数が好ましく、0~3の整数がより好ましく、0~2の整数がさらに好ましく、0及び1が特に好ましい。
p2としては、0~5の整数が好ましく、0~2の整数がより好ましく、0及び1がさらに好ましく、0が特に好ましい。
p3としては、1~5の整数が好ましく、1~4の整数がより好ましく、1~3の整数がさらに好ましく、1及び2が特に好ましい。
上記Rp7及びRp8で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、上記式(4)のR15として例示したものと同様の基等が挙げられる。
で表される1価の感放射線性オニウムカチオンは、露光光及び/又は電子線の照射により分解するカチオンである。スルホネートアニオンと感放射線性オニウムカチオンからなる酸発生剤を例にとると、露光部では、この感放射線性オニウムカチオンの分解により生成されるプロトンと、上記スルホネートアニオンとからスルホン酸が生成される。
上記Tで表される1価の感放射線性オニウムカチオンとしては、例えば下記式(r-a)で表されるカチオン(以下、「カチオン(r-a)」ともいう。)、下記式(r-b)で表されるカチオン(以下、「カチオン(r-b)」ともいう。)、下記式(r-c)で表されるカチオン(以下、「カチオン(r-c)」ともいう。)等が挙げられる。
Figure 0007062874000019
上記式(r-a)中、RB3及びRB4は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基である。RB5は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b3は、それぞれ独立して0~5の整数である。RB5が複数の場合、複数のRB5は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRB5は、互いに合わせられ環構造を構成してもよい。nbbは、0~3の整数である。
上記RB3、RB4及びRB5で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間又は結合手側の末端に2価のヘテロ原子含有基を含む1価の基(g)、上記炭化水素基及び基(g)が有する水素原子の一部又は全部をヘテロ原子含有基で置換した1価の基等が挙げられる。
B3及びRB4としては、炭素数1~20の1価の非置換の炭化水素基又は水素原子が置換基により置換された炭化水素基が好ましく、炭素数6~18の1価の非置換の芳香族炭化水素基又は水素原子が置換基により置換された芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
上記RB3及びRB4として表される炭素数1~20の1価の炭化水素基が有する水素原子を置換していてもよい置換基としては、置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OSO-R、-SO-R、-OR、-COOR、-O-CO-R、-O-Rkk-COOR、-Rkk-CO-R及び-S-Rが好ましい。Rは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
B5としては、置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OSO-R、-SO-R、-OR、-COOR、-O-CO-R、-O-Rkk-COOR、-Rkk-CO-R及び-S-Rが好ましい。Rは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
上記式(r-b)中、RB6及びRB7は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b4は、0~7の整数である。RB6が複数の場合、複数のRB6は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRB6は、互いに合わせられ環構造を構成してもよい。b5は、0~6の整数である。RB7が複数の場合、複数のRB7は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRB7は、互いに合わせられ環構造を構成してもよい。nb2は、0~3の整数である。RB8は、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。nb1は、0~2の整数である。
上記RB6及びRB7としては、置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OR、-COOR、-O-CO-R、-O-Rkk-COOR及び-Rkk-CO-Rが好ましい。Rは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
上記式(r-c)中、RB9及びRB10は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b6及びb7は、それぞれ独立して0~5の整数である。RB9が複数の場合、複数のRB9は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRB9は、互いに合わせられ環構造を構成してもよい。RB10が複数の場合、複数のRB10は同一でも異なっていてもよく、また、複数のRB10は、互いに合わせられ環構造を構成してもよい。
上記RB9及びRB10としては、置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OSO-R、-SO-R、-OR、-COOR、-O-R-、-O-CO-R、-O-Rkk-COOR、-Rkk-CO-R、-S-R及びこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造が好ましい。Rは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
B5、RB6、RB7、RB9及びRB10で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、例えば
メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等の直鎖状のアルキル基;
i-プロピル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基等の分岐状のアルキル基;
フェニル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基;
ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
B8で表される2価の有機基としては、例えば上記式(r-a)のRB3、RB4及びRB5として例示した炭素数1~20の1価の有機基から1個の水素原子を除いた基等が挙げられる。
上記RB5、RB6、RB7、RB9及びRB10で表される炭化水素基が有する水素原子を置換していてもよい置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。これらの中で、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
B5、RB6、RB7、RB9及びRB10としては、非置換の直鎖状又は分岐状の1価のアルキル基、1価のフッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基、-OSO-R及び-SO-Rが好ましく、フッ素化アルキル基及び非置換の1価の芳香族炭化水素基がより好ましく、フッ素化アルキル基がさらに好ましい。
式(r-a)におけるb3としては、0~2の整数が好ましく、0及び1がより好ましく、0がさらに好ましい。nbbとしては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。式(r-b)におけるb4としては、0~2の整数が好ましく、0及び1がより好ましく、0がさらに好ましい。b5としては、0~2の整数が好ましく、0及び1がより好ましく、0がさらに好ましい。nb2としては、2及び3が好ましく、2がより好ましい。nb1としては、0及び1が好ましく、0がより好ましい。式(r-c)におけるb6及びb7としては、0~2の整数が好ましく、0及び1がより好ましく、0がさらに好ましい。
としては、これらの中で、カチオン(r-a)及びカチオン(r-b)が好ましく、トリフェニルスルホニウムカチオン及び1-[2-(4-シクロヘキシルフェニルカルボニル)プロパン-2-イル]テトラヒドロチオフェニウムカチオンがより好ましい。
上記式(r1)で表される酸発生剤としては例えば下記式(r1-1)~(r1-16)で表される化合物(以下、「化合物(r1-1)~(r1-16)」ともいう。)等が挙げられる。
Figure 0007062874000020
上記式(r1-1)~(r1-16)中、Tは、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
上記式(r2)で表される酸発生剤としては例えば下記式(r2-1)で表される化合物(以下、「化合物(r2-1)」ともいう。)等が挙げられる。
Figure 0007062874000021
上記式(r2-1)中、Tは、1価の感放射線性オニウムカチオンである。
[B]酸発生剤としては、化合物(r1-1)、(r1-4)、(r1-8)及び(r1-13)が好ましい。
[B]酸発生剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、35質量部が好ましく、30質量部がより好ましく、25質量部がさらに好ましい。[B]酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の感度及び現像性が向上し、その結果、LWR性能及び焦点深度を向上させることができる。[B]酸発生剤は、1種又は2種以上を用いることができる。
<[C]感放射線性酸発生体>
当該感放射線性樹脂組成物は、必要に応じて[C]感放射線性酸発生体を含有してもよい。[C]感放射線性酸発生体においては、発生する酸の酸性度が上記[B]感放射線性酸発生体が発生する酸の酸性度よりも低い。[C]感放射線性酸発生体は、露光により弱酸を発生する。[A]重合体に含まれる酸解離性基が[C]感放射線性酸発生体から発生する弱酸によっても解離するものである場合、[B]感放射線性酸発生体と[C]感放射線性酸発生体を併用することで、どちらか一方のみを使用した場合に比べてレジスト膜中において発生する酸の濃度分布を適切に調整することができ、LWR、CDUを向上させることができる。一方、[A]重合体に含まれる酸解離性基が[C]感放射線性酸発生体から発生する弱酸によって解離しないものである場合、[C]感放射線性酸発生体は[B]感放射線性酸発生体から発生する酸を捕捉し、露光により下記[B]酸発生体から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御する。この際、露光領域においては[C]感放射線発生体も放射線の作用により弱酸を発生するため、[B]感放射線性酸発生体から生じた酸を捕捉することはなく[A]重合体に含まれる酸解離性基の解離を阻害しない。この結果、[C]酸発生体は非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する酸拡散制御剤としての効果を奏する。[C]感放射線性酸発生体の当該感放射線性樹脂組成物における含有形態としては、遊離の化合物(以下、適宜「[C]酸発生剤」という)の形態でも、重合体の一部として組み込まれた形態でも、これらの両方の形態でもよい。
[C]感放射線性酸発生体としては、例えば露光により分解して酸拡散制御性を失うオニウム塩化合物等が挙げられる。オニウム塩化合物としては、例えば下記式(6-1)で表されるスルホニウム塩化合物、下記式(6-2)で表されるヨードニウム塩化合物等が挙げられる。
Figure 0007062874000022
上記式(6-1)中、R23及びR24は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基である。R30は、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。b8は、それぞれ独立して0~5の整数である。R30が複数の場合、複数のR30は同一でも異なっていてもよく、また、複数のR30は、互いに合わせられ環構造を構成してもよい。nb3は、0~3の整数である。
上記R23、R24及びR30で表される炭素数1~20の1価の有機基としては、例えば炭素数1~20の1価の炭化水素基、この炭化水素基の炭素-炭素間又は結合手側の末端に2価のヘテロ原子含有基を含む基(g)、上記炭化水素基及び基(g)が有する水素原子の一部又は全部をヘテロ原子含有基で置換した基等が挙げられる。
23及びR24としては、炭素数1~20の1価の非置換の炭化水素基又は水素原子が置換基により置換された炭化水素基が好ましく、炭素数6~18の1価の非置換の芳香族炭化水素基又は水素原子が置換基により置換された芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニル基がさらに好ましい。
上記R23及びR24として表される炭素数1~20の1価の炭化水素基が有する水素原子を置換していてもよい置換基としては、置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OSO-R、-SO-R、-OR、-COOR、-O-CO-R、-O-Rqq-COOR、-Rqq-CO-R及び-S-Rが好ましい。Rは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rqqは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
30としては、置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OSO-R、-SO-R、-OR、-COOR、-O-CO-R、-O-Rqq-COOR、-Rqq-CO-R及び-S-Rが好ましい。Rは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rqqは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
上記式(6-2)中、R26~R27は、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の有機基、ヒドロキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子である。
上記R26及びR27としては、置換又は非置換の炭素数1~20の1価の炭化水素基、-OSO-R、-SO-R、-OR、-COOR、-O-C-R、-O-Rqq-COOR、-Rqq-CO-R、-S-R及びこれらの基のうちの2つ以上が互いに合わせられ構成される環構造が好ましい。Rは、炭素数1~10の1価の炭化水素基である。Rqqは、単結合又は炭素数1~10の2価の炭化水素基である。
上記R30、R26及びR27で表される炭素数1~20の1価の炭化水素基としては、上記式(r-a)のRB5として例示したものと同様の基等が挙げられる。
上記R30、R26及びR27で表される炭化水素基が有する水素原子を置換していてもよい置換基としては、上記式(r-a)のRB5として例示したものと同様の基等が挙げられる。
上記R30、R26及びR27B9及びRB10としては、非置換の直鎖状又は分岐状の1価のアルキル基、1価のフッ素化アルキル基、非置換の1価の芳香族炭化水素基、-OSO-R及び-SO-Rが好ましく、フッ素化アルキル基及び非置換の1価の芳香族炭化水素基がより好ましく、フッ素化アルキル基がさらに好ましい。
上記式(6-1)及び(6-2)中、E及びQは、それぞれ独立して、OH、Rβ-COO、Rγ-SO 又は下記式(6-3)で表されるアニオンである。Rβは、アルキル基、アリール基又はアラルキル基である。Rγは、アルキル基又はアラルキル基である。
Figure 0007062874000023
上記式(6-3)中、R28は、炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のフッ素化アルキル基又は炭素数1~12の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基である。uは、0~2の整数である。uが2の場合、2つのR28は同一でも異なっていてもよい。
[C]感放射線性酸発生体としては、例えば下記式で表される化合物等が挙げられる。
Figure 0007062874000024
[C]感放射線性酸発生体としては、これらの中で、スルホン酸塩が好ましく、トリアリールスルホン酸塩がより好ましく、トリフェニルスルホニウムサリチレート及びトリフェニルスルホニウム10-カンファースルホネートがさらに好ましい。
当該感放射線性樹脂組成物が[C]感放射線性酸発生体を含む場合、[C]感放射線性酸発生体の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.01質量部が好ましく、0.1質量部がより好ましく、0.5質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、[A]重合体100質量部に対して、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、10質量部がさらに好ましい。他の酸拡散制御体の含有量が上記上限を超えると、当該感放射線性樹脂組成物の感度が低下する場合がある。
<[D]重合体>
[D]重合体は、[A]重合体よりもフッ素原子の質量含有率が大きい重合体である。
ベース重合体となる重合体より疎水性が高い重合体は、レジスト膜表層に偏在化する傾向があり、[D]重合体は[A]重合体よりもフッ素原子の質量含有率が大きいため、この疎水性に起因する特性により、レジスト膜表層に偏在化する傾向がある。その結果、当該感放射線性樹脂組成物によれば、液浸露光時における酸発生剤、酸拡散制御剤等が液浸媒体に溶出することを抑制することができる。また、当該感放射線性樹脂組成物によれば、この[D]重合体の疎水性に起因する特性により、レジスト膜と液浸媒体との前進接触角を所望の範囲に制御でき、バブル欠陥の発生を抑制できる。さらに、当該感放射線性樹脂組成物によれば、レジスト膜と液浸媒体との後退接触角が大きくなり、水滴が残らずに高速でのスキャン露光が可能となる。当該感放射線性樹脂組成物は、このように[D]重合体を含有することにより、液浸露光法に好適なレジスト膜を形成することができる。
[D]重合体のフッ素原子の質量含有率の下限としては、1質量%が好ましく、2質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。上記質量含有率の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。フッ素原子の質量含有率を上記範囲とすることで、[D]重合体のレジスト膜における偏在化をより適度に調整することができる。なお、重合体のフッ素原子の質量含有率は、13C-NMRスペクトル測定により重合体の構造を求め、その構造から算出することができる。
[D]重合体におけるフッ素原子の含有形態は特に限定されず、主鎖、側鎖及び末端のいずれに結合するものでもよいが、フッ素原子を含む構造単位(以下、「構造単位(f)」ともいう。)を有することが好ましい。[D]重合体は、構造単位(f)以外にも、当該感放射線性樹脂組成物の現像欠陥抑制性向上の観点から、酸解離性基を含む構造単位を有することが好ましい。酸解離性基を含む構造単位としては、例えば、[A]重合体における構造単位(II)等が挙げられる。
また、[D]重合体は、アルカリ解離性基を有することが好ましい。[D]重合体がアルカリ解離性基を有すると、アルカリ現像時にレジスト膜表面を疎水性から親水性に効果的に変えることができ、当該感放射線性樹脂組成物の現像欠陥抑制性がより向上する。「アルカリ解離性基」とは、カルボキシ基、ヒドロキシ基等の水素原子を置換する基であって、アルカリ水溶液(例えば、23℃の2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)中で解離する基をいう。
構造単位(f)としては、下記式(f-1)で表される構造単位(以下、「構造単位(f-1)」ともいう。)及び下記式(f-2)で表される構造単位(以下、「構造単位(f-2)」ともいう。)が好ましい。構造単位(f)は、構造単位(f-1)及び構造単位(f-2)をそれぞれ1種又は2種以上有していてもよい。
[構造単位(f-1)]
構造単位(f-1)は、下記式(f-1)で表される構造単位である。[D]重合体は構造単位(f-1)を有することでフッ素原子の質量含有率を調整することができる。
Figure 0007062874000025
上記式(f-1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Gは、単結合、酸素原子、硫黄原子、-COO-、-SONH-、-CONH-又は-OCONH-である。Rは、炭素数1~6の1価のフッ素化鎖状炭化水素基又は炭素数4~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基である。
上記Rとしては、構造単位(f-1)を与える単量体の共重合性の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
上記Gとしては、-COO-、-SONH-、-CONH-及び-OCONH-が好ましく、-COO-がより好ましい。
上記Rで表される炭素数1~6の1価のフッ素化鎖状炭化水素基としては、一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換された炭素数1~6の直鎖又は分岐鎖アルキル基が挙げられる。
上記Rで表される炭素数4~20の1価のフッ素化脂環式炭化水素基としては、一部又は全部の水素原子がフッ素原子により置換された炭素数4~20の単環又は多環の炭化水素基が挙げられる。
としては、フッ素化鎖状炭化水素基が好ましく、2,2,2-トリフルオロエチル基及び1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル基がより好ましく、2,2,2-トリフルオロエチル基がさらに好ましい。
[D]重合体が構造単位(f-1)を有する場合、構造単位(f-1)の含有割合の下限としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、100モル%が好ましく、90モル%がより好ましい。構造単位(f-1)の含有割合を上記範囲とすることで、[D]重合体のフッ素原子の質量含有率をさらに適度に調整することができる。
[構造単位(f-2)]
構造単位(f-2)は、下記式(f-2)で表される。[D]重合体は構造単位(f-2)を有することで、アルカリ現像液への溶解性が向上し、現像欠陥の発生を抑制することができる。
Figure 0007062874000026
構造単位(f-2)は、(x)アルカリ可溶性基を有する場合と、(y)アルカリの作用により解離してアルカリ現像液への溶解性が増大する基(以下、単に「アルカリ解離性基」とも言う。)を有する場合の2つに大別される。(x)、(y)双方に共通して、上記式(f-2)中、Rは水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは単結合、炭素数1~20の(s+1)価の炭化水素基、この炭化水素基のR側の末端に酸素原子、硫黄原子、-NRdd-、カルボニル基、-COO-若しくは-CONH-が結合された構造、又はこの炭化水素基が有する水素原子の一部がヘテロ原子を有する有機基により置換された構造である。Rddは、水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。sは、1~3の整数である。但しsが1の場合、Rが単結合である場合はない。
構造単位(f-2)が(x)アルカリ可溶性基を有する場合、Rは水素原子であり、Aは酸素原子、-COO-*又は-SOO-*である。*はRに結合する部位を示す。Wは単結合、炭素数1~20の炭化水素基又は2価のフッ素化炭化水素基である。Aが酸素原子である場合、WはAが結合する炭素原子にフッ素原子又はフルオロアルキル基を有するフッ素化炭化水素基である。Rは単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。sが2又は3の場合、複数のR、W、A及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位(f-2)が(x)アルカリ可溶性基を有することで、アルカリ現像液に対する親和性を高め、現像欠陥を抑制することができる。(x)アルカリ可溶性基を有する構造単位(f-2)としては、Aが酸素原子でありWが1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2,2-プロパンジイル基である場合が特に好ましい。
構造単位(f-2)が(y)アルカリ解離性基を有する場合、Rは炭素数1~30の1価の有機基であり、Aは酸素原子、-NRaa-、-COO-*又は-SOO-*である。Raaは水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。*はRに結合する部位を示す。Wは単結合又は炭素数1~20の2価のフッ素化炭化水素基である。Rは、単結合又は炭素数1~20の2価の有機基である。Aが-COO-*又は-SOO-*である場合、W又はRはAと結合する炭素原子又はこれに隣接する炭素原子上にフッ素原子を有する。Aが酸素原子である場合、W、Rは単結合であり、Rは炭素数1~20の炭化水素基のR側の末端にカルボニル基が結合された構造であり、Rはフッ素原子を有する有機基である。sが2又は3の場合、複数のR、W、A及びRはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。構造単位(f-2)が(y)アルカリ解離性基を有することにより、アルカリ現像工程においてレジスト膜表面が疎水性から親水性へと変化する。この結果、現像液に対する親和性を大幅に高め、より効率的に現像欠陥を抑制することができる。(y)アルカリ解離性基を有する構造単位(f-2)としては、Aが-COO-*であり、R若しくはW又はこれら両方がフッ素原子を有するものが特に好ましい。
としては、構造単位(f-2)を与える単量体の共重合性等の観点から、水素原子及びメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
が2価の有機基である場合、ラクトン構造を有する基が好ましく、多環のラクトン構造を有する基がより好ましく、ノルボルナンラクトン構造を有する基がより好ましい。
[D]重合体が構造単位(f-2)を有する場合、構造単位(f-2)の含有割合の下限としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、0モル%が好ましく、5モル%がより好ましい。上記含有割合の上限としては、50モル%が好ましく、40モル%がより好ましい。構造単位(f-2)の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物から形成されたレジスト膜表面をアルカリ現像前後で撥水性から親水性へより適切に変えることができる。
構造単位(f)の含有割合の下限としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、25モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、100モル%が好ましく、90モル%がより好ましく、80モル%がさらに好ましい。
[D]重合体における酸解離性基を含む構造単位の下限としては、[D]重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%が好ましく、20モル%がより好ましく、25モル%がさらに好ましい。上記含有割合の上限としては、90モル%が好ましく、80モル%がより好ましく、75モル%がさらに好ましい。酸解離性基を含む構造単位の含有割合を上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の現像欠陥抑制性をさらに向上させることができる。
当該感放射線性樹脂組成物が[D]重合体を含有する場合、[D]重合体の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましく、2質量部が特に好ましい。上記含有量の上限としては、30質量部が好ましく、20質量部がより好ましく、15質量部がさらに好ましく、10質量部が特に好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は[D]重合体を1種又は2種以上含有していてもよい。
[D]重合体は、上述した[A]重合体と同様の方法で合成することができる。
[D]重合体のGPCによるMwの下限としては、1,000が好ましく、3,000がより好ましく、4,000がさらに好ましく、5,000が特に好ましい。上記Mwの上限としては、50,000が好ましく、30,000がより好ましく、20,000がさらに好ましく、10,000が特に好ましい。[D]重合体のMwを上記範囲とすることで、当該感放射線性樹脂組成物の塗工性及び現像欠陥抑制性が向上する。
[D]重合体のGPCによるMnに対するMwの比(Mw/Mn)の下限としては、通常1であり、1.2が好ましい。上記比の上限としては、5が好ましく、3がより好ましく、2がさらに好ましい。
<[E]溶媒>
当該感放射線性樹脂組成物は、通常[E]溶媒を含有する。[E]溶媒は、少なくとも[A]重合体及び[B]酸発生体並びに必要に応じて含有される[C]酸発生体、[D]重合体、[F]窒素含有化合物等を溶解又は分散可能な溶媒であれば特に限定されない。
[E]溶媒としては、例えばアルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、炭化水素系溶媒等が挙げられる。
アルコール系溶媒としては、例えば
4-メチル-2-ペンタノール、n-ヘキサノール等の炭素数1~18の脂肪族モノアルコール系溶媒;
シクロヘキサノール等の炭素数3~18の脂環式モノアルコール系溶媒;
プロピレングリコール等の炭素数2~18の多価アルコール系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテル等の炭素数3~19の多価アルコール部分エーテル系溶媒などが挙げられる。
エーテル系溶媒としては、例えば
ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ジイソアミルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジヘプチルエーテル等のジアルキルエーテル系溶媒;
テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル系溶媒;
ジフェニルエーテル、アニソール等の芳香環含有エーテル系溶媒などが挙げられる。
ケトン系溶媒としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、メチル-n-ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル-iso-ブチルケトン、2-ヘプタノン、エチル-n-ブチルケトン、メチル-n-ヘキシルケトン、ジ-iso-ブチルケトン、トリメチルノナノン等の鎖状ケトン系溶媒:
シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メチルシクロヘキサノン等の環状ケトン系溶媒:
2,4-ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン等が挙げられる。
アミド系溶媒としては、例えば
N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルピロリドン等の環状アミド系溶媒;
N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミド等の鎖状アミド系溶媒などが挙げられる。
エステル系溶媒としては、例えば
酢酸n-ブチル、乳酸エチル等のモノカルボン酸エステル系溶媒;
プロピレングリコールアセテート等の多価アルコールカルボキシレート系溶媒;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒;
シュウ酸ジエチル等の多価カルボン酸ジエステル系溶媒;
γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;
ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。
炭化水素系溶媒としては、例えば
n-ペンタン、n-ヘキサン等の炭素数5~12の脂肪族炭化水素系溶媒;
トルエン、キシレン等の炭素数6~16の芳香族炭化水素系溶媒等が挙げられる。
[E]溶媒としては、エステル系溶媒及びケトン系溶媒が好ましく、多価アルコール部分エーテルカルボキシレート系溶媒及び環状ケトン系溶媒がより好ましく、多価アルコール部分アルキルエーテルアセテート及びシクロアルカノンがさらに好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びシクロヘキサノンが特に好ましい。当該感放射線性樹脂組成物は、[E]溶媒を1種又は2種以上含有していてもよい。
<[F]窒素含有化合物>
当該感放射線性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、[F]窒素含有化合物を含有してもよい。[F]窒素含有化合物は、露光により[D]他の酸発生体等から生じる酸のレジスト膜中における拡散現象を制御し、非露光領域における好ましくない化学反応を抑制する酸拡散制御剤としての効果を奏する。また、感放射線性樹脂組成物の貯蔵安定性が向上すると共に、レジストとしての解像度がより向上する。さらに、露光から現像処理までの引き置き時間の変動によるレジストパターンの線幅変化を抑えることができ、プロセス安定性に優れた感放射線性樹脂組成物が得られる。
[F]窒素含有化合物としては、例えば下記式(5)で表される化合物(以下、「含窒素化合物(I)」ともいう。)、同一分子内に窒素原子を2個有する化合物(以下、「含窒素化合物(II)」ともいう。)、窒素原子を3個有する化合物(以下、「含窒素化合物(III)」ともいう。)、アミド基含有化合物、ウレア化合物、含窒素複素環化合物等が挙げられる。
Figure 0007062874000027
上記式(5)中、R20、R21及びR22は、それぞれ独立して、水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。
含窒素化合物(I)としては、例えばn-ヘキシルアミン等のモノアルキルアミン類;ジ-n-ブチルアミン等のジアルキルアミン類;トリエチルアミン等のトリアルキルアミン類;アニリン、2,6-ジi-プロピルアニリン等の芳香族アミン類等が挙げられる。
含窒素化合物(II)としては、例えばエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン等が挙げられる。
含窒素化合物(III)としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアリルアミン等のポリアミン化合物;ジメチルアミノエチルアクリルアミド等の重合体などが挙げられる。
アミド基含有化合物としては、例えばホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、ピロリドン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
ウレア化合物としては、例えば尿素、メチルウレア、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア、1,1,3,3-テトラメチルウレア、1,3-ジフェニルウレア、トリブチルチオウレア等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、例えばピリジン、2-メチルピリジン等のピリジン類;N-プロピルモルホリン、N-(ウンデシルカルボニルオキシエチル)モルホリン等のモルホリン類;ピラジン、ピラゾール、ベンズイミダゾール、2-フェニルベンズイミダゾール等のイミダゾール類などが挙げられる。
含窒素有機化合物として、酸解離性基を有する化合物を用いることもできる。このような酸解離性基を有する含窒素有機化合物としては、例えばN-t-ブトキシカルボニルピペリジン、N-t-ブトキシカルボニルイミダゾール、N-t-ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、N-t-ブトキシカルボニル-2-フェニルベンズイミダゾール、N-(t-ブトキシカルボニル)ジ-n-オクチルアミン、N-(t-ブトキシカルボニル)ジエタノールアミン、N-(t-ブトキシカルボニル)ジシクロヘキシルアミン、N-(t-ブトキシカルボニル)ジフェニルアミン、N-t-ブトキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン、N-t-アミルオキシカルボニル-4-ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
当該感放射線性樹脂組成物が[F]窒素含有化合物として[F]窒素含有化合物を含有する場合、[F]窒素含有化合物の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、0.1質量部が好ましく、0.3質量部がより好ましく、1質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、15質量部が好ましく、10質量部がより好ましく、5質量部がさらに好ましい。
<その他の任意成分>
当該感放射線性樹脂組成物は、上記[A]~[F]成分以外のその他の任意成分を含有していてもよい。その他の任意成分としては、例えば界面活性剤、脂環式骨格含有化合物、増感剤、偏在化促進剤等が挙げられる。これらのその他の任意成分は、それぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[界面活性剤]
界面活性剤は、塗工性、ストリエーション、現像性等を改良する効果を奏する。界面活性剤としては、例えば
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn-オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn-ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤;
市販品としては、信越化学工業社の「KP341」、共栄社化学社の「ポリフローNo.75」、「同No.95」、トーケムプロダクツ社の「エフトップEF301」、「同EF303」、「同EF352」、DIC社の「メガファックF171」、「同F173、住友スリーエム社の「フロラードFC430」、「同FC431」、旭硝子工業社の「アサヒガードAG710」、「サーフロンS-382」、「同SC-101」、「同SC-102」、「同SC-103」、「同SC-104」、「同SC-105」、「同SC-106」等が挙げられる。界面活性剤の含有量の上限としては、[A]重合体100質量部に対して、2質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。
[脂環式骨格含有化合物]
脂環式骨格含有化合物は、ドライエッチング耐性、パターン形状、基板との接着性等を改善する効果を奏する。
[増感剤]
増感剤は、[B]酸発生体からの酸の生成量を増加する作用を示すものであり、当該感放射線性樹脂組成物の「みかけの感度」を向上させる効果を奏する。
増感剤としては、例えばカルバゾール類、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ナフタレン類、フェノール類、ビアセチル、エオシン、ローズベンガル、ピレン類、アントラセン類、フェノチアジン類等が挙げられる。これらの増感剤は、単独で使用してもよく2種以上を併用してもよい。増感剤の含有量の上限としては、[A]重合体100質量部に対して、2質量部が好ましく、1質量部がより好ましい。
[偏在化促進剤]
偏在化促進剤は、当該感放射線性樹脂組成物が[D]重合体を含有する場合等に、[D]重合体を、より効率的にレジスト膜表面に偏在化させる成分である。当該感放射線性樹脂組成物が偏在化促進剤を含有することで、[D]重合体をレジスト膜表面により効果的に偏在化させることができ、結果として[D]重合体の使用量を少なくすることができる。偏在化促進剤としては、例えばラクトン化合物、カーボネート化合物、ニトリル化合物、多価アルコール等が挙げられる。偏在化促進剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ラクトン化合物としては、例えばγ-ブチロラクトン、バレロラクトン、メバロラクトン、ノルボルナンラクトン等が挙げられる。
上記カーボネート化合物としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等が挙げられる。
上記ニトリル化合物としては、例えばスクシノニトリル等が挙げられる。
上記多価アルコールとしては、例えばグリセリン等が挙げられる。
これらの中で、ラクトン化合物が好ましく、γ-ブチロラクトンがより好ましい。
当該感放射線性樹脂組成物が偏在化促進剤を含有する場合、偏在化促進剤の含有量の下限としては、[A]重合体100質量部に対して、5質量部が好ましく、10質量がより好ましく、20質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、[A]重合体100質量部に対して、300質量部が好ましく、100質量部がより好ましく、70質量部がさらに好ましい。
<感放射線性樹脂組成物の調製方法>
当該感放射線性樹脂組成物は、例えば[A]重合体及び[B]酸発生体並びに必要に応じて含有される[C]感放射線性酸発生体、[D]重合体、[E]溶媒、[F]窒素含有化合物、その他の任意成分を所定の割合で混合し、好ましくは、得られた混合液を、例えば孔径0.2μm程度のフィルター等でろ過することで調製することができる。当該感放射線性樹脂組成物の固形分濃度の下限としては、0.1質量%が好ましく、0.5質量部がより好ましく、1質量%がさらに好ましい。上記固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましい。
当該感放射線性樹脂組成物は、アルカリ現像液を用いるポジ型パターン形成用にも、有機溶媒を含有する現像液を用いるネガ型パターン形成用にも用いることができる。これらのうち、有機溶媒を含有する現像液を用いるネガ型パターン形成に用いる場合、当該感放射線性樹脂組成物は、より高い解像性を発揮することができる。
<レジストパターン形成方法>
当該レジストパターン形成方法は、基板の一方の面側に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう。)、上記塗工工程により得られたレジスト膜を露光する工程(以下、「露光工程」ともいう。)、及び上記露光されたレジスト膜を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう。)を備える。
当該レジストパターン形成方法によれば、上述した当該感放射線性樹脂組成物を用いているので、LWR性能、解像性、断面形状の矩形性、焦点深度、MEEF性能、現像欠陥抑制性及びPEB後の膜収縮抑制性に優れるレジストパターンを形成することができる。
[塗工工程]
本工程では基板の一方の面側に当該感放射線性樹脂組成物を塗工する。上記レジスト膜を形成する基板としては、例えばシリコンウェハ、アルミニウムで被覆したウェハ等が挙げられる。この基板上に当該感放射線性樹脂組成物を塗工することによりレジスト膜が形成される。当該感放射線性樹脂組成物の塗工方法としては、特に限定されないが、例えばスピンコート法等の公知の方法等が挙げられる。当該感放射線性樹脂組成物を塗工する際には、形成されるレジスト膜が所望の厚みとなるように、塗工する当該感放射線性樹脂組成物の量を調整する。なお当該感放射線性樹脂組成物を基板上に塗工した後、溶媒を揮発させるためにプレベーク(以下、「PB」ともいう。)を行ってもよい。PBの温度の下限としては、30℃が好ましく、50℃がより好ましい。上記温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましい。PBの時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。レジスト膜の平均厚みの下限としては、10nmが好ましく、20nmがより好ましく、50nmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、1,000nmが好ましく、200nmがより好ましく、150nmがさらに好ましい。
[露光工程]
本工程では、上記塗工工程により得られたレジスト膜を露光する。この露光は、場合によっては、水等の液浸露光液を介し、所定のパターンを有するマスクを介して放射線を照射することにより行う。
液浸露光液としては、通常、空気より屈折率の大きい液体を使用する。具体的には、例えば純水、長鎖又は環状の脂肪族化合物等が挙げられる。この液浸露光液を介した状態、すなわち、レンズとレジスト膜との間に液浸露光液を満たした状態で、露光装置から放射線を照射し、所定のパターンを有するマスクを介してレジスト膜を露光する。
上記放射線としては、使用される感放射線性酸発生剤の種類に応じて、可視光線、紫外線、ArFエキシマレーザー光(波長193nm)、KrFエキシマレーザー光(波長248nm)等の遠紫外線、極端紫外線(Extreme Ultraviolet(EUV)、13.5nm)、X線等の電磁波、電子線、α線等の荷電粒子線等から適宜選定されて使用されるが、これらの中でも、ArFエキシマレーザー光、KrFエキシマレーザー光、EUV、X線及び電子線が好ましく、ArFエキシマレーザー光、EUV及び電子線がより好ましい。なお、露光量等の露光条件は、当該感放射線性樹脂組成物の配合組成、添加剤の種類等に応じて適宜選定することができる。
露光後のレジスト膜に対し、加熱処理(以下、「露光後加熱(ポストエクスポージャーベーク、PEB)」ともいう。)を行うことが好ましい。このPEBにより、[A]重合体等の酸解離性基の解離反応を円滑に進行させることができる。PEBの加熱条件は、感放射線性樹脂組成物の配合組成によって適宜調整されるが、PEBの温度の下限としては、30℃が好ましく、50℃がより好ましく、70℃がさらに好ましい。上記温度の上限としては、200℃が好ましく、150℃がより好ましく、120℃がさらに好ましい。PEBの時間の下限としては、10秒が好ましく、30秒がより好ましい。上記時間の上限としては、600秒が好ましく、300秒がより好ましい。当該レジストパターン形成方法においては、上述の当該感放射線性樹脂組成物を用いるので、PEB後の膜収縮抑制性に優れたものとなる。
また、感放射線性樹脂組成物の潜在能力を最大限に引き出すため、例えば特公平6-12452号公報、特開昭59-93448号公報等に開示されているように、使用される基板上に有機系又は無機系の反射防止膜を形成しておくこともできる。また、環境雰囲気中に含まれる塩基性不純物等の影響を防止するため、例えば特開平5-188598号公報等に開示されているように、レジスト膜上に保護膜を設けることもできる。
[現像工程]
本工程では、上記露光工程で露光されたレジスト膜を現像する。この現像に用いる現像液としては、例えばアルカリ水溶液(アルカリ現像液)、有機溶媒を含有する液(有機溶媒現像液)等が挙げられる。これにより、所定のレジストパターンが形成される。
アルカリ現像液としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、けい酸ナトリウム、メタけい酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、エチルジメチルアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、ピロール、ピペリジン、コリン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン等のアルカリ性化合物の少なくとも1種を溶解したアルカリ水溶液等が挙げられる。これらの中で、TMAH水溶液が好ましく、2.38質量%TMAH水溶液がより好ましい。
有機溶媒現像液としては、例えば炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒等の有機溶媒、又は有機溶媒を含有する液が挙げられる。有機溶媒としては、例えば上述の感放射線性樹脂組成物の[E]溶媒として例示した溶媒の1種又は2種以上等が挙げられる。これらの中でも、エステル系溶媒及びケトン系溶媒が好ましい。エステル系溶媒としては、酢酸エステル系溶媒が好ましく、酢酸n-ブチルがより好ましい。ケトン系溶媒としては、鎖状ケトンが好ましく、2-ヘプタノンがより好ましい。有機溶媒現像液中の有機溶媒の含有量の下限としては、80質量%が好ましく、90質量%がより好ましく、95質量%がさらに好ましく、99質量%が特に好ましい。有機溶媒現像液中の有機溶媒以外の成分としては、例えば水、シリコーンオイル等が挙げられる。
これらの現像液は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、現像後は、水等で洗浄し、乾燥することが一般的である。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
[重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)の測定]
重合体のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により東ソー社製のGPCカラム(「G2000HXL」2本、「G3000HXL」1本、「G4000HXL」1本)を使用し、以下の条件により測定した。また、分散度(Mw/Mn)は、Mw及びMnの測定結果より算出した。
溶出溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/分
試料注入量:100μL
カラム温度:40℃
検出器:示差屈折計
標準物質:単分散ポリスチレン
H-NMR分析及び13C-NMR分析]
日本電子社の「JNM-Delta400」を用い、各重合体における各構造単位の含有割合(モル%)を求める分析を行った。
<[A]重合体及び[D]重合体の合成>
各実施例及び比較例における各重合体の合成で用いた単量体を以下に示す。
立体的にバルキーな構造からなる大保護基を有する化合物としてM-2、M-4、M-6、M-7、M-8、M-11、M-12、M-13及びM-14を用い、小さい構造からなる小保護基を有する化合物としてM-1及びM-3を用い、極性基を有する化合物としてM-5、M-9及びM-10を用いた。なお以下の合成例においては特に断りのない限り、質量部は使用した単量体の合計質量を100質量部とした場合の値を意味し、モル%は使用した単量体の合計モル数を100モル%とした場合の値を意味する。
Figure 0007062874000028
[合成例1](重合体(A-1)の合成)
単量体としての化合物(M-1)、化合物(M-2)及び化合物(M-5)を、モル比率が25/25/50となるよう2-ブタノン(200質量部)に溶解した。ここに開始剤としてAIBN(5モル%)を添加し、単量体溶液を調製した。反応容器に2-ブタノン(100質量部)を入れ、30分窒素パージした。反応容器内を80℃とし、攪拌しながら、上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。冷却した重合溶液をメタノール(2000質量部)中に投入し、析出した白色粉末をろ別した。ろ別した白色粉末をメタノールで2回洗浄した後、ろ別し、50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A-1)を良好な収率で得た。重合体(A-1)のMwは6,300であり、Mw/Mnは1.39であった。13C-NMR分析の結果、(M-1)、(M-2)、(M-5)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ25.0モル%、24.3モル%、及び50.7モル%であった。
[合成例2~7及び合成例9~11](重合体(A-2)~重合体(A-7)及び重合体(A-9)~重合体(A-11)の合成)
モノマーを適宜選択し、合成例1と同様の操作を行うことによって、重合体(A-2)~重合体(A-7)及び重合体(A-9)~重合体(A-11)を合成した。
[合成例8](重合体(A-8)の合成)
単量体としての化合物(M-2)及び化合物(M-10)を、モル比率が50/50となるよう、プロピレングリコールモノメチルエーテル(100質量部)に溶解した。ここに開始剤としてAIBN(6モル%)を、連鎖移動剤としてt-ドデシルメルカプタン(開始剤100質量部に対して38質量部)を加えて単量体溶液を調製した。この単量体溶液を窒素雰囲気下、反応温度を70℃に保持して、16時間共重合させた。重合反応終了後、重合溶液をn-ヘキサン(1000質量部)中に滴下して、重合体を凝固精製した。上記重合体に、再度プロピレングリコールモノメチルエーテル(150質量部)を加えた。更に、メタノール(150質量部)、トリエチルアミン(化合物(M-10)の使用量に対し1.5モル当量)及び水(化合物(M-10)の使用量に対し1.5モル当量)を加えて、沸点にて還流させながら、8時間加水分解反応を行った。反応終了後、溶媒及びトリエチルアミンを減圧留去し、得られた重合体をアセトン(150質量部)に溶解した。これを水(2000質量部)中に滴下して凝固させ、生成した白色粉末をろ別した。50℃で17時間乾燥させて白色粉末状の重合体(A-8)を良好な収率で得た。重合体(A-8)のMwは6,300であり、Mw/Mnは1.90であった。13C-NMR分析の結果、(M-2)及び(M-10)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ49.3モル%及び50.7モル%であった。
[合成例12](重合体(A-12)の合成)
モノマーを選択し、合成例8と同様の操作を行うことによって、重合体(A-12)を合成した。
[合成例13](重合体(D-1)の合成)
単量体としての化合物(M-1)及び化合物(M-9)をモル比率が70/30となるよう、2-ブタノン(200質量部)に溶解した。ここに開始剤としてAIBN(全単量体に対して5モル%)を添加して単量体溶液を調製した。反応容器に2-ブタノン(100質量部)を入れ、30分窒素パージした。反応容器内を80℃とし、攪拌しながら上記単量体溶液を3時間かけて滴下した。滴下開始を重合反応の開始時間とし、重合反応を6時間実施した。重合反応終了後、重合溶液を水冷して30℃以下に冷却した。溶媒をアセトニトリル(400質量部)に置換した後、ヘキサン(100質量部)を加えて撹拌しアセトニトリル層を回収する作業を3回繰り返した。溶媒をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに置換することで、重合体(D-1)の溶液を良好な収率で得た。重合体(D-1)のMwは7,300であり、Mw/Mnは2.00であった。13C-NMR分析の結果、(M-1)、(M-9)に由来する各構造単位の含有割合は、それぞれ71.1モル%、28.9モル%であった。
得られた重合体の各構造単位の含有割合、収率、Mw及びMw/Mnの値を表1に合わせて示す。なお、以下の表中の「-」は、該当する成分を用いなかったことを示す。
Figure 0007062874000029
*M-10に由来するp-ヒドロキシスチレン構造単位を示す
<感放射線性樹脂組成物の調製>
感放射線性樹脂組成物を構成する[A]重合体及び[D]重合体以外の成分について示す。
[[B]酸発生剤]
[B]酸発生剤として下記式(B-1)~(B-7)で表される化合物を用いた。
Figure 0007062874000030
[[C]酸発生剤(酸拡散制御剤)]
[C]酸発生剤として下記式(C-1)~(C-2)で表される化合物を用いた。
C-1:トリフェニルスルホニウム10-カンファースルホネート
C-2:トリフェニルスルホニウムサリチレート
Figure 0007062874000031
[[E]溶媒]
[E]溶媒として下記(E-1)~(E-4)を用いた。
E-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
E-2:シクロヘキサノン
E-3:γ-ブチロラクトン
E-4:乳酸エチル
[[F]窒素含有化合物]
[F]窒素含有化合物として下記式(F-1)で表される化合物を用いた。
F-1:N-(n-ウンデカン-1-イルカルボニルオキシエチル)モルホリン
Figure 0007062874000032
[実施例1]
[A]重合体としての(A-1)100質量部、[B]酸発生剤としての(B-2)10質量部、[C]酸拡散制御剤としての(C-1)7質量部、[D]重合体としての(D-1)3質量部、[E]溶媒としての(E-1)2,240質量部、(E-2)960質量部及び(E-3)30質量部を混合し、孔径0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより、感放射線性樹脂組成物(J-1)を調製した。
[実施例2~14及び比較例1~4]
下記表2に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は実施例1と同様にして、感放射線性樹脂組成物(J-2)~(J-14)及び(K-1)~(K-4)を調製した。
Figure 0007062874000033
<レジストパターンの形成(1):ArFエキシマレーザー液浸露光、有機溶媒現像>
12インチのシリコンウェハ表面に、スピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して各感放射線性樹脂組成物を塗布し、100℃で50秒間PAB(Post applied baking;塗布後ベーク)を行った。その後23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、この塗膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(ASML社の「TWINSCAN XT-1900i」)を用い、NA=1.35、Annular(σ=0.8/0.6)の光学条件にて、58nmホール96nmピッチのレジストパターン形成用のマスクパターンを介して露光した。露光後、90℃で50秒間PEBを行った。その後、酢酸n-ブチルを用い、23℃で10秒間パドル現像を行い、2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、48nmホール96nmピッチのレジストパターンを形成した。このレジストパターン形成の際、ホールパターンのサイズが48nmとなる露光量を最適露光量(Eop)とした。
<レジストパターンの形成(2):ArFエキシマレーザー液浸露光、アルカリ現像>
12インチのシリコンウェハ表面に、スピンコーター(東京エレクトロン社の「CLEAN TRACK ACT12」)を使用して、下層反射防止膜形成用組成物(ブルワーサイエンス社の「ARC66」)を塗布した後、205℃で60秒間加熱することにより膜厚105nmの下層反射防止膜を形成した。この下層反射防止膜上に、上記スピンコーターを使用して各感放射線性樹脂組成物を塗布し、100℃で50秒間PABを行った。その後23℃で30秒間冷却し、膜厚90nmのレジスト膜を形成した。次に、この塗膜を、ArFエキシマレーザー液浸露光装置(ASML社の「TWINSCAN XT-1900i」)を用い、NA=1.35、Dipole35X(σ=0.97/0.77)の光学条件にて、38nmラインアンドスペース(1L/1S)のレジストパターン形成用のマスクパターンを介して露光した。露光後、90℃で50秒間PEBを行った。その後、2.38質量%TMAH水溶液を用い、23℃で30秒間パドル現像を行い、次に、超純水を用いて7秒間リンスし、その後、2,000rpm、15秒間振り切りでスピンドライすることにより、40nmラインアンドスペース(1L/1S)のレジストパターンを形成した。このレジストパターン形成の際、ターゲット寸法が40nmラインアンドスペースのパターン形成用のマスクパターンを介して形成した線幅が40nmのラインを形成する露光量を最適露光量(Eop)とした。
<評価>
上記形成したレジストパターンについて、下記方法に従って測定することにより、各感放射線性樹脂組成物の評価を行った。評価結果を下記表3に示す。なお、レジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社の「CG-5000」)を用いた。
[CDU性能]
レジストパターンの形成(1)で求めたEopと同じ露光量を照射して形成したホールパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。一辺400nm四方の範囲でホール径を16点測定してその平均値を求め、その平均値を任意のポイントで計500点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをCDU性能(nm)とした。CDU性能は、その値が小さいほど、長周期でのホール径のばらつきが小さく良好である。CDU性能は、5.0nm以下の場合は「良好」と、5.0を超える場合は「不良」と評価できる。
[MEEF]
レジストパターンの形成(1)で求めたEopと同じ露光量を照射して形成したホールパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。一辺400nm四方の範囲でホール径を16点測定してその平均値を求め、その平均値を任意のポイントで計100点測定し、平均のホール径を算出した。同様の測定をマスクサイズが1nm刻みで異なる5条件にて実施し、マスク変化量に対するホール径変化量をMEEF性能(nm)とした。MEEF性能は、その値が小さいほど、マスク忠実性があり良好である。MEEF性能は、3.9nm以下の場合は「良好」と、3.9を超える場合は「不良」と評価できる。
[LWR性能]
レジストパターンの形成(2)で求めたEopと同じ露光量を照射して形成したラインアンドスペースパターンを、上記走査型電子顕微鏡を用い、パターン上部から観察した。線幅のばらつきを計500点測定し、その測定値の分布から3シグマ値を求め、これをLWR性能(nm)とした。LWR性能は、その値が小さいほど、ラインのがたつきが小さく良好である。LWR性能は、3.9nm以下の場合は「良好」と、3.9を超える場合は「不良」と評価できる。
Figure 0007062874000034
[実施例15]
[A]重合体としての(A-8)100質量部、[B]酸発生剤としての(B-2)20質量部、[C]酸発生剤としての(C-3)2.5質量部、[E]溶媒としての(E-1)4280質量部、(E-4)1830質量部を混合し、0.2μmのメンブランフィルターでろ過することにより、感放射線性樹脂組成物(J-15)を調製した。
[実施例16~17及び比較例5~6]
下記表4に示す種類及び含有量の各成分を用いた以外は実施例15と同様にして、感放射線性樹脂組成物(J-16)~(J-17)及び(K-5)~(K-6)を調製した。
Figure 0007062874000035
<レジストパターンの形成(3):電子線露光、アルカリ現像>
8インチのシリコンウェハ表面にスピンコーター(CLEAN TRACK ACT8、東京エレクトロン製)を使用して、上記表4に記載の各感放射線性樹脂組成物を塗布し、90℃で60秒間PBを行った。その後、23℃で30秒間冷却し、膜厚50nmのレジスト膜を形成した。次に、このレジスト膜に、簡易型の電子線描画装置(日立製作所製、型式「HL800D」、出力:50KeV、電流密度:5.0A/cm)を用いて電子線を照射した。照射後、120℃で60秒間PEBを行った。その後、アルカリ現像液として2.38質量%のTMAH水溶液を用いて23℃で30秒間現像し、水で洗浄し、乾燥して100nmホール200nmピッチのポジ型レジストパターンを形成した。
<評価>
感放射線性樹脂組成物について、上記方法に従い、最適露光量(Eop)を照射して形成したレジストパターンのCDU性能を評価した。レジストパターンの測長には、走査型電子顕微鏡(S-9380、日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。結果を下記表5に示す。
Figure 0007062874000036
上記表3の結果においては、当該感放射線性樹脂組成物は、ArF露光において、有機溶媒現像におけるCDU性能及びMEEF性能並びにアルカリ現像におけるLWR性能のいずれの場合も良好であることが示された。特に、実施例1、実施例2及び実施例9~11のエンド型のジノルボルナン構造においてi-プロピル基を有する重合体を含有する実施例は優れた結果が得られた。
また、表5の結果においては、当該感放射線性樹脂組成物が、電子線露光におけるアルカリ現像の場合もCDU性能が良好であった。一方、比較例の感放射線性樹脂組成物は、CDU性能が実施例のものに対して劣っていることが示された。一般的に、電子線露光によれば、EUV露光の場合と同様の傾向を示すことが知られている。従って、本実施例の結果からEUV露光の場合においても、優れたCDU性能及び限界解像度を示すと推測される。
本発明の感放射線性樹脂組成物及びレジストパターン形成方法によれば、LWR性能、CDU性能及びMEEF性能に優れるレジストパターンを形成することができる。本発明の化合物は、当該重合体の原料単量体として好適に用いることができる。従って、これらはさらなる微細化が進行すると予想される半導体デバイス製造等におけるパターン形成に好適に用いることができる。

Claims (4)

  1. 下記式(1-1)又は下記式(1-2)で表される第1構造単位及び上記第1構造単位とは異なる酸解離性基を含む第2構造単位を有する第1重合体と、
    スルホン酸又はジスルホニルイミド酸を発生する第1感放射線性酸発生体と
    を含有し、
    上記第1重合体における上記第1構造単位の含有割合が、上記第1重合体を構成する全構造単位に対して、10モル%以上70モル%以下であり、
    上記第1感放射線性酸発生体が、多環構造を含む基を有し、かつ1又は複数のフッ素原子を有するアニオンを含む感放射線性樹脂組成物。
    Figure 0007062874000037
    (式(1)中、Rは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。Rは、炭素数3~20の1価の炭化水素基である。nは、0~16の整数である。Rは、炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、nが2以上の場合、複数のRは、それぞれ独立して、炭素数1~20の1価の炭化水素基であるか、又は複数のRが互いに合わせられこれらが結合する炭素原子又は炭素鎖と共に環員数3~20の脂環構造を構成する。)
  2. 上記第1感放射線性酸発生体以外の第2感放射線性酸発生体をさらに含有し、
    上記第2感放射線性酸発生体が発生する酸の酸性度が上記第1感放射線性酸発生体が発生する酸の酸性度よりも低い請求項1に記載の感放射線性樹脂組成物。
  3. 上記第1重合体よりもフッ素原子の質量含有率が大きい第2重合体をさらに含有する請求項1又は請求項2に記載の感放射線性樹脂組成物。
  4. 基板の一方の面側に請求項1、請求項2又は請求項3に記載の感放射線性樹脂組成物を塗工する工程と、
    上記塗工工程により得られるレジスト膜を露光する工程と、
    上記露光されたレジスト膜を現像する工程と
    を備えるレジストパターン形成方法。
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