JP7060850B2 - 透明導電性フィルム - Google Patents

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Description

本発明は、透明プラスチックフィルム基材上に結晶性のインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜を積層した透明導電性フィルム、特に、抵抗膜式タッチパネルに用いた際のペン摺動耐久性、ペン重加圧耐久性、環境安定性に優れる透明導電性フィルムに関するものである。
透明プラスチック基材上に、透明でかつ抵抗の小さい薄膜を積層した透明導電性フィルムは、その導電性を利用した用途、例えば、液晶ディスプレイやエレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等のようなフラットパネルディスプレイや、タッチパネルの透明電極等として、電気・電子分野の用途に広く使用されている。
抵抗膜式タッチパネルは、ガラスやプラスチックの基板に透明導電性薄膜をコーティングした固定電極と、プラスチックフィルムに透明導電性薄膜をコーティングした可動電極(=フィルム電極)を組み合わせたものであり、表示体の上側に重ね合わせて使用されている。指やペンでフィルム電極を押して、固定電極とフィルム電極の透明導性薄膜同士を接触させることが、タッチパネルの位置認識のための入力となる。
例えば、ペン摺動耐久性を向上させる手段として、フィルム電極側の透明導電性薄膜を結晶性にする方法がある(特許文献1参照)。
特開2004-071171号公報
特許文献1に示される従来の透明導電性フィルムは、インジウム-スズ複合酸化物の結晶性を制御することでペン摺動耐久性の向上を試みている。しかし、従来の透明導電性フィルムは、後述のペン重加圧耐久性試験を実施すると、不十分であった。また、近年、抵抗膜式タッチパネルの用途が多岐にわたっており、更なるペン摺動耐久性の向上が求められている。
指と比較して、ペンはタッチパネルにかかる力が強くなることが多い。タッチパネルにペンで入力し続けると、フィルム電極側の透明導電性薄膜にクラック、剥離、摩耗等の破壊が生じることがある。また、タッチパネルをペンで激しく叩いたり、非常に強い力でペン入力するなど、通常使用想定以上の強い力をタッチパネルに加えると、透明導電性薄膜にクラック、剥離等の破壊が生じることがある。
これらの問題を解決するために、優れたペン摺動耐久性と優れたペン重加圧耐久性を両立する透明導電性フィルムが要望されている。更に、高温高湿条件、高温条件など厳しい環境下でも抵抗膜式タッチパネルとして問題なく作動することを可能とする透明導電性フィルムが要望されている。
本発明の目的は、上記の従来の問題点に鑑み、タッチパネルに用いた際のペン摺動耐久性に優れるとともにペン重加圧耐久性にも優れ、さらに優れた環境安定性を有する透明導電性フィルムを提供することにある。
本発明は、上記のような状況に鑑みなされたものであって、上記の課題を解決することができた本発明の透明導電性フィルムとは、以下の構成よりなる。
[1]透明プラスチックフィルム基材上の少なくとも一方の面にインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜が積層された透明導電性フィルムであって、以下のペン摺動耐久性試験による透明導電フィルムの透明導電膜のON抵抗が10kΩ以下であり、
以下のペン重加圧試験による透明導電フィルムの透明導電膜の表面抵抗値の増加率が1.5以下であり、
以下の式1で示される環境安定性評価値ES60が0.5以上1.5以下であり、かつ、以下の式2で示される環境安定性評価値ES90が0.5以上1.5以下である、
透明導電性フィルム。
(ペン摺動耐久性試験方法)
本発明に係る透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にスパッタリング法で厚みが20nmのインジウム-スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性薄膜を用いる。前記2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して配置し、厚みが170μmの両面テープでフィルム側のパネル板とガラス側のパネル板を貼り付けて、タッチパネルを作製する。次にポリアセタール製のペン(先端の形状:0.8mmR)に2.5Nの荷重をかけ、18万往復の直線摺動試験をタッチパネルに行う。この試験において、本発明に係る透明導電性フィルム面に対してペンの荷重を印加する。
この時の摺動距離は30mm、摺動速度は180mm/秒とする。この摺動耐久性試験後に、ペン荷重0.8Nで摺動部を押さえた際の、ON抵抗(可動電極(フィルム電極)と固定電極とが接触した時の抵抗値)を測定する。
(ペン重加圧試験方法)
50mm×50mmにカットした、本発明に係る透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にスパッタリング法で厚みが20nmのインジウム-スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性薄膜を用いる。この2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して配置し、厚みが120μmとなるように調整した両面テープでフィルム側のパネル板とガラス側のパネル板を貼り付けて、タッチパネルを作製した。両面テープの端から2.0mmの位置をポリアセタール製のペン(先端の形状0.8mmR)で35Nの荷重をかけ、両面テープと平行に10回(往復5回)の直線摺動を実施する。この試験において、本発明に係る透明導電性フィルム面に対してペンの荷重を印加する。このときの摺動距離は30mm、摺動速度は20mm/秒とする。エポキシビーズがない位置で摺動を行う。摺動後に、透明導電性フィルムを取り外して、摺動部の任意の5か所の表面抵抗(4端子法)を測定し、平均値を出す。表面抵抗を測定するときは、摺動部と垂直になる方向に4端子を並べ、2端子目と3端子目の間に摺動部が来るようにする。摺動部の表面抵抗値の平均値を未摺動部の表面抵抗値(4端子法で測定)で除して、表面抵抗値の増加率を算出する。
(環境安定性評価)
透明導電性フィルムロールを長手(MD)方向に100mm切り出す。切り出したフィルムを165℃75分間加熱処理する。
加熱処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとする。
次に、前記加熱処理した透明導電フィルムを更に60℃95%RH240時間、高温高湿度条件下で処理する。60℃95%RH240時間処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとする。
また、165℃75分間の条件で加熱処理した透明導電フィルムを、更に90℃240時間処理する。90℃240時間処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとする。
以下の式1で示される値を、環境安定性評価値ES60とし、
以下の式2で示される環境安定性評価値ES90とする
[(RaE/RS)+(RaE/RS)+(RaE/RS)]/3 (式1)
[(RbE/RS)+(RbE/RS)+(RbE/RS)]/3 (式2)
[2]一態様において、本発明の透明導電性フィルムは、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶粒径が10~100nmであり、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶化度が20~80%であり、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜が、酸化スズを0.5~10質量%含む。
[3]一態様において、本発明の透明導電性フィルムは、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の厚みが、10~30nmであり、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の三次元表面粗さSRaが、1~100nmであり、透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布が、5%以下である上記[1]または[2]に記載の透明導電性フィルム。
(透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布評価)
透明導電性フィルムロールを長手(MD)方向に50mm切り出す。切り出したフィルムを幅(TD)方向の端部の最端部から幅(TD)方向に50mm毎に厚みを測定し、反対の最端部まで厚みを測定し、式3で透明導電性フィルムの厚み分布を計算する。
また、反対の最端部とその1点前の測定部位との間隔は50mm未満となってもよい。
[(透明導電性フィルムの厚みの最大値)-(透明導電性フィルムの厚みの最小値)]÷(透明導電性フィルムの厚みの最大値)×100 (式3)
[4]一態様において、本発明の透明導電性フィルムは、透明導電膜の表面において付着性試験(JIS K5600-5-6:1999)を実施しても透明導電膜が剥離せず、

透明導電性フィルムのインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜側において耐屈曲性試験(JIS K5600-5-1:1999)をし、10倍のルーペで屈曲部を観察した時に割れや剥れが起こるマンドレル直径が20mmより小さい。
[5]一態様において、本発明の透明導電性フィルムは、透明導電性フィルムの厚みが100~250μmである。
[6]一態様において、本発明の透明導電性フィルムは、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜と透明プラスチックフィルム基材の間に硬化型樹脂層を有する。
本発明によれば、優れたペン摺動耐久性および優れたペン重加圧耐久性を併せ持ち、環境安定性に優れる。
本発明における結晶粒の最長部の一例(その1)を示す模式図である。 本発明における結晶粒の最長部の他の一例(その2)を示す模式図である。 本発明における結晶粒の最長部の他の一例(その3)を示す模式図である。 本発明における結晶粒の最長部の他の一例(その4)を示す模式図である。 本発明において好適に使用されるスパッタリング装置の一例のセンターロールの位置を説明するための模式図である。 環境安定性の評価に用いる試験片の一例を示す模式図である。
透明プラスチックフィルム基材上の少なくとも一方の面にインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜が積層された透明導電性フィルムであって、後述するペン摺動耐久性試験による透明導電フィルムの透明導電膜のON抵抗が10kΩ以下であり、
後述するペン重加圧試験による透明導電フィルムの透明導電膜の表面抵抗値の増加率が1.5以下であり、
以下の式1で示される環境安定性評価値ES60が0.5以上1.5以下であり、かつ、以下の式2で示される環境安定性評価値ES90が0.5以上1.5以下である、
透明導電性フィルム。
(環境安定性評価)
透明導電性フィルムロールを長手(MD)方向に100mm切り出す。切り出したフィルムを165℃75分間加熱処理する。
加熱処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとする。
次に、前記加熱処理した透明導電フィルムを更に60℃95%RH240時間、高温高湿度条件下で処理する。60℃95%RH240時間処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとする。
また、165℃75分間の条件で加熱処理した透明導電フィルムを、更に90℃240時間処理する。90℃240時間処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとする。以下の式1で示される値を、環境安定性評価値ES60とし、以下の式2で示される環境安定性評価値ES90とする。
[(RaE/RS)+(RaE/RS)+(RaE/RS)]/3 (式1)
[(RbE/RS)+(RbE/RS)+(RbE/RS)]/3 (式2)
本発明の透明導電性フィルムは、ペン摺動耐久性とペン重加圧耐久性に優れている。その上、優れた環境安定性を有する。得られた透明導電性フィルムは、例えば、抵抗膜式タッチパネル等の用途に極めて有用である。
ペン摺動耐久性とペン重加圧耐久性は相反する性質である。まずペン摺動耐久性について説明する。ペン摺動耐久性に優れるインジウム-スズ複合酸化物の透明導電性フィルムは透明導電膜の結晶化度が高く、結晶粒径が大きく、さらに透明導電膜の三次元表面粗さが小さい必要がある。三次元表面粗さについては後で説明するが、まず結晶化度と結晶粒径について説明する。透過型電子顕微鏡下で観察される、円状もしくは多角形状の領域をもつ部分を透明導電膜の結晶(=結晶粒)、それ以外の部分を非晶と定義する。結晶化度が高いとは、結晶の割合が高いことを示す。結晶粒径が大きいとは、透過型電子顕微鏡下で観察される、円状もしくは多角形状の領域が大きいことを示す。結晶化度の高い透明導電膜は、硬い結晶の割合が高いこと、結晶粒径が大きいものは結晶粒の周りのひずみが大きくなることなどから、透明導電膜が硬くなり、ペン摺動耐久性に優れる。
本発明であれば、このように、ペンによる入力に対しても、優れた摺動耐久性を有しており、タッチパネルにペンで入力し続ける場合においても、フィルム電極側に配置される本発明に係る透明導電性薄膜において、クラック、剥離、摩耗等の破壊を抑制できる。
本発明は、もちろん、指によるタッチパネルへの入力においても、優れた摺動耐久性を有することができる。
次にペン重加圧耐久性について説明する。ペン重加圧耐久性に優れるインジウム-スズ複合酸化物の透明導電性フィルムは透明導電膜の結晶化度が低く、結晶粒径が小さい。結晶化度の低い透明導電膜は、軟らかい非晶の割合が高いこと、結晶粒径が小さいものは結晶粒の周りのひずみが小さくなることなどから、透明導電膜に荷重がかかってもクラックが入りにくくなるなどして、ペン重加圧耐久性に優れる。
指と比較して、ペンはタッチパネルにかかる力が強くなることが多い。本発明であれば、このように、ペンによる入力に対しても、優れたペン重加圧耐久性を有しており、タッチパネルにペンで入力し続けたとしても、フィルム電極側に配置される本発明に係る透明導電性薄膜において、クラック、剥離、摩耗等の破壊を抑制できる。
本発明は、もちろん、指によるタッチパネルへの入力においても、優れた重加圧耐久性を有することができる。
前記のように、ペン摺動耐久性とペン重加圧耐久性は相反する性質であることが分かる。検討の結果、透明導電膜の結晶化度と結晶粒径を制御することによりペン摺動耐久性とペン重加圧耐久性を両立させることができることを発明した。
更に、本発明は、環境安定性に優れた透明導電性フィルムを提供できる。特に、抵抗膜式タッチパネル等の用途に極めて有用である。
以下、ペン摺動耐久性とペン重加圧耐久性を両立させることができ、更に、環境安定性に優れた透明導電膜を有する透明導電性フィルムについて説明する。
(ペン摺動耐久性試験方法)
本発明に係る透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にスパッタリング法で厚みが20nmのインジウム-スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性薄膜を用いる。前記2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して配置し、厚みが170μmの両面テープでフィルム側のパネル板とガラス側のパネル板を貼り付けて、タッチパネルを作製する。次にポリアセタール製のペン(先端の形状:0.8mmR)に2.5Nの荷重をかけ、18万往復の直線摺動試験をタッチパネルに行う。この試験において、本発明に係る透明導電性フィルム面に対してペンの荷重を印加する。
この時の摺動距離は30mm、摺動速度は180mm/秒とする。この摺動耐久性試験後に、ペン荷重0.8Nで摺動部を押さえた際の、ON抵抗(可動電極(フィルム電極)と固定電極とが接触した時の抵抗値)を測定する。
本発明においてペン摺動耐久性試験による透明導電フィルムの透明導電膜のON抵抗が10kΩ以下であれば、タッチパネルにペンで連続入力しても透明導電膜に対してクラック、剥離、摩耗などが抑えられているため好ましい。一態様においてON抵抗は、9.5kΩ以下であってよく、より好ましくは5kΩ以下である。例えば、ON抵抗は3kΩ以下であり、1.5kΩ以下であってよく、好ましくは1kΩ以下である。
ON抵抗は、より小さい値であることが好ましく、例えば5kΩ以上であってよく、3kΩ以上であってもよい。一態様において、0kΩ以上であり、例えば、0.05kΩ以上であってよい。
ON抵抗がこのような範囲内であることにより、タッチパネルにペンで連続入力しても透明導電膜に対してクラック、剥離、摩耗などが抑えられる。
一態様において、これら上限及び下限を適宜組み合わせてもよい。
(ペン重加圧試験方法)
50mm×50mmにカットした、本発明に係る透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にスパッタリング法で厚みが20nmのインジウム-スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性薄膜を用いる。この2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して配置し、厚みが120μmとなるように調整した両面テープでフィルム側のパネル板とガラス側のパネル板を貼り付けて、タッチパネルを作製した。両面テープの端から2.0mmの位置をポリアセタール製のペン(先端の形状0.8mmR)で35Nの荷重をかけ、両面テープと平行に10回(往復5回)の直線摺動を実施する。この試験において、本発明に係る透明導電性フィルム面に対してペンの荷重を印加する。このときの摺動距離は30mm、摺動速度は20mm/秒とする。エポキシビーズがない位置で摺動を行う。摺動後に、透明導電性フィルムを取り外して、摺動部の任意の5か所の表面抵抗(4端子法)を測定し、平均値を出す。表面抵抗を測定するときは、摺動部と垂直になる方向に4端子を並べ、2端子目と3端子目の間に摺動部が来るようにする。摺動部の表面抵抗値の平均値を未摺動部の表面抵抗値(4端子法で測定)で除して、表面抵抗値の増加率を算出する。
本発明においてペン重加圧試験による透明導電フィルムの透明導電膜の表面抵抗値の増加率が1.5以下であることが望ましい。このような特性を有することで、例えば、通常使用想定以上の強い力がかかったとしても、透明導電膜に対してクラック、剥離などを抑制できる。より好ましくは、表面抵抗値の増加率は1.2以下、特に好ましくは1.0(増大なし)である。
ここで、本発明に係る透明導電膜の表面抵抗値の増加率は1.0以上であることが好ましい。
一態様において、ペン摺動耐久性試験による透明導電フィルムの透明導電膜のON抵抗は、0.05以上9.5以下であり、かつ、ペン重加圧(耐久性)試験による透明導電フィルムの透明導電膜の表面抵抗値の増加率は、1.0以上1.5以下である。
上述のように、通常、ペン摺動耐久性とペン重加圧耐久性は相反する性質である。本発明においては、このような範囲内で、これら2つの耐久性をバランスよく有することができる。また、タッチパネルにペンで連続入力しても透明導電膜に対してクラック、剥離、摩耗などを抑制でき、その上、ペン摺動、ペン重加圧による負荷に対しても、優れた耐久性を示すことができる。なお、数値範囲は、本明細書において記載の範囲、値を選択できる。
本発明における透明導電性フィルムは、透明導電膜面において付着性試験(JIS K5600-5-6:1999)を実施しても透明導電膜が剥離しないことが好ましい。付着性試験で透明導電膜が剥れない透明導電性フィルムは、透明導電膜が透明プラスチック基材や硬化型樹脂層など透明導電膜に接している層と密着しているため、タッチパネルにペンで連続入力しても透明導電膜に対してクラック、剥離、摩耗などが抑えられ、さらに、通常使用想定以上の強い力がかかったとしても、透明導電膜に対してクラック、剥離などが抑えられるため好ましい。
本発明における透明導電性フィルムは、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶粒径が10~100nmであり、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶化度が20~80%であることが好ましい。インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶粒径が10nm以上であると、透明導電膜の結晶粒の周りのひずみにより透明導電膜が適度に硬くなるので、ペン摺動耐久性に優れるため好ましい。より好ましくはインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶粒径が30nm以上である。
一方、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶粒径が100nm以下であれば、透明導電膜の結晶粒の周りのひずみによる透明導電膜が硬過ぎないため、ペン重加圧耐久性に優れるため好ましい。より好ましくはインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶粒径が90nm以下である。
一態様において、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶粒径は、10nm以上95nm以下であり、例えば、30nm以上90nm以下である。例えば、40nm以上80nm以下でる。
例えば、透過型電子顕微鏡下で観察される結晶粒径において、すべての結晶粒の最長部を測定し、それらの測定値の平均値を結晶粒径とする。ここで、図1~4に結晶粒の最長部の測定時における最長部の認定方法に関する例を示す。
インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶化度が20%以上であると、透明導電膜に占める硬い結晶により適度に硬くなり、ペン摺動耐久性に優れるため好ましい。より好ましくはインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶化度が25%以上である。一方、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶化度が80%以下であれば、硬い結晶が含まれる量が多いが透明導電膜が硬過ぎないため、ペン重加圧耐久性に優れるため好ましい。
一態様において、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶化度は、25%以上78%以下であり、例えば、25%以上76%以下である。
本発明における透明導電性フィルムは、透明導電膜の三次元表面粗さSRaが、1~100nmであることが好ましい。透明導電膜の三次元表面粗さSRaが、1~100nmであれば、透明導電膜の表面突起が小さいため、ペン重加圧試験をしたときに表面突起の変形量が小さくなり透明導電膜のクラック発生が抑制され、さらに透明導電膜に多少の表面突起があるためフィルム巻取り性も保持できるため好ましい。より好ましくは透明導電膜の三次元表面粗さSRaが、1~80nmである。さらに好ましくは透明導電膜の三次元表面粗さSRaが、1~65nmである。
本発明における透明導電膜は、インジウム-スズ複合酸化物からなり、酸化スズを0.5質量%以上10質量%以下含むことが好ましい。インジウム-スズ複合酸化物中の酸化スズは酸化インジウムにとっての不純物に相当する。酸化スズの不純物が含有されていることにより、インジウム-スズ複合酸化物の融点が増大する。すなわち、酸化スズの不純物含有は結晶化を阻害する方向に働くため、結晶粒径や結晶化度などの結晶性と相関の強い重要な因子である。酸化スズが0.5質量%以上含有されていると、透明導電性フィルムの表面抵抗が実用的な水準となり好ましい。更に好ましくは酸化スズの含有率は1質量%以上であり、2質量%以上であると特に好ましい。酸化スズの含有率が10質量%以下であると、後述の半結晶状態に調節する上での結晶化が起こり易く、ペン摺動耐久性が良好となり好ましい。酸化スズの含有率は8質量%以下であるとより好ましく、6質量%以下であると更に好ましく、4質量%以下であると特に好ましい。なお、本発明の透明導電性フィルムの表面抵抗は50~900Ω/□であることが好ましく、より好ましくは50~600Ω/□である。
本発明において透明導電膜の厚みは、10nm以上30nm以下であることが好ましい。透明導電膜の厚みは、結晶粒径や結晶化度などの結晶性と相関の強い重要な因子である。透明導電膜の厚みが10nm以上であると、透明導電膜に非晶が多過ぎることがなく、後述の半結晶状態にする適度な結晶粒径と結晶化度を与え易く、結果としてペン摺動耐久性が保たれて好ましい。より好ましくは透明導電膜の厚みは13nm以上、より好ましくは16nm以上である。また、透明導電膜の厚みが30nm以下であると、透明導電膜の結晶粒径が大き過ぎることがなく結晶化度が高過ぎることがなく、半結晶状態を保持し易く、ペン重加圧耐久性が保たれて好ましい。より好ましくは28nm以下、更に好ましくは25nm以下である。
本発明における透明導電性フィルムは、透明導電性フィルムの透明導電膜側において耐屈曲性試験(JIS K5600-5-1:1999)をして10倍のルーペで屈曲部を観察した時に割れや剥れが起こるマンドレル直径が20mmより小さいことが好ましい。マンドレル直径が20mmより小さいと、ペン重加圧試験をしたときに透明導電膜に接する層が割れず、透明導電膜にクラックが入らないため好ましい。より好ましくは18mm以下である。一態様において、耐屈曲性試験の値は、例えば15mm以上であり、8mm以上であってよく、1mm以上であることが好ましい。
本発明における透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルム基材の厚みは、100~250μmの範囲であることが好ましく、130~220μmであることがより好ましい。プラスチックフィルムの厚みが100μm以上であると、機械的強度が保持され、特にタッチパネルに用いた際のペン入力に対する変形が小さく、ペン摺動耐久性とペン重加圧耐久性が優れるため好ましい。一方、厚みが250μm以下であると、タッチパネルに用いた際に、ペン入力で位置させるための荷重を特に大きくする必要がなく好ましい。
本発明における透明導電性フィルムは、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜とプラスチックフィルム基材の間に硬化型樹脂層があることが好ましい。
硬化型樹脂層があることにより透明導電膜の密着力増加や透明導電膜にかかる力を分散することができるため、ペン摺動試験での透明導電膜に対してクラック、剥離、摩耗などが抑えられ、さらに、ペン重加圧試験での透明導電膜に対してクラック、剥離などが抑えられるため好ましい。
本発明における透明導電膜の結晶性は高過ぎず、低過ぎずという状態である(このような結晶性を半結晶性又は半結晶質と呼ぶことにする)。透明導電膜を安定して半結晶性にすることは非常に難しい。それは、非晶性から結晶性へ急激に相変化していく途中で止めた状態が半結晶性だからである。そのため、結晶性に関係のあるパラメーターである成膜雰囲気中の水分量に敏感で、特に、水素原子含有ガスに大変敏感で、少しでも成膜雰囲気中の水素原子含有ガスや水分量が少ないとほぼ完全な結晶性(高い結晶性)になり、逆に、少しでも成膜雰囲気中の水素原子含有ガスや水分量が多いと非晶性(低い結晶性)になる。
本発明の透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルム基材上の少なくとも一方の面にインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜が積層された透明導電性フィルムであって、以下の式1で示される環境安定性評価値ES60が0.5以上1.5以下であり、かつ、以下の式2で示される環境安定性評価値ES90が0.5以上1.5以下である、透明導電性フィルムである。
(環境安定性評価)
透明導電性フィルムロールを長手(MD)方向に100mm切り出す。切り出したフィルムを165℃75分間加熱処理する。
加熱処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとする。
次に、前記加熱処理した透明導電フィルムを更に60℃95%RH240時間、高温高湿度条件下で処理する。60℃95%RH240時間処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとする。
また、165℃75分間の条件で加熱処理した透明導電フィルムを、更に90℃240時間処理する。90℃240時間処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとする。以下の式1で示される値を、環境安定性評価値ES60とし、以下の式2で示される環境安定性評価値ES90とする。
[(RaE/RS)+(RaE/RS)+(RaE/RS)]/3 (式1)
[(RbE/RS)+(RbE/RS)+(RbE/RS)]/3 (式2)
例えば、環境安定性評価は図6に示す態様で測定してもよい。図6において、2点の「黒丸」は、長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点を示し、この2点の表面抵抗値の平均値をRSとして測定することができる。
同様に、図6において、「黒三角」は、透明導電フィルムの中央領域における2点を示し、この2点における表面抵抗値の平均値をRSとし、として測定することができる。
また、図6において、2点の「黒四角」は、長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域とは反対側に位置する、第2の端部領域における2点を示し、この2点の表面抵抗値の平均値をRSとして測定することができる。
図6に示される各測定位置などは例示にすぎず、通常の技術常識で想定される範囲内で、第1の端部領域における2点を選択できる。他の測定位置についても、同様に、適宜選択でき、図6の測定位置とは異なる位置で、評価を行うことができる。
本発明の透明導電性フィルムは、式1で示される環境安定性評価値ES60が0.5以上1.5以下であり、かつ、以下の式2で示される環境安定性評価値ES90が0.5以上1.5以下であるため、高温高湿条件(60℃95%RH)および高温条件(90℃)など厳しい環境下でも、タッチパネルとして要求される特性、例えば、正確な入力特性を満足できる。
特に、本発明であれば、高温高湿条件(60℃95%RH)および高温条件(90℃)であっても共に良好な物性を示すことができるので、例えば、梅雨時などの温度が高く湿度が高いとき、夏などの非常に温度が高いときにおいて密閉された空間、例えば乗り物の内部においても、タッチパネルとして要求される特性、例えば、正確な入力特性を満足できる。また、本発明の透明導電性フィルムは、式1及び2で示される環境安定性評価値が上記範囲内であるため、上述したような厳しい環境下においても、抵抗膜式タッチパネルを問題なく作動させることができ、好ましい。
一態様において、式1で示される値を、環境安定性評価値ES60は、1.5以下であり、1.3以下であってよく、好ましくは1.2以下である。また、式1で示される環境安定性評価値ES60は、0.5以上であり、0.7以上であってよく、好ましくは0.8以上である。一態様において、これら上限及び下限を適宜組み合わせてもよい。
環境安定性評価値ES60がこのような範囲内であることにより、本発明の透明導電性フィルムは、高温高湿条件(60℃95%RH)という厳しい環境下でも、タッチパネルとして要求される特性、例えば、正確な入力特性、耐久性を満足できる。また、このような抵抗膜式タッチパネルを問題なく作動させることができ、好ましい。
一態様において、式2で示される値を、環境安定性評価値ES90は、1.5以下であり、1.45以下であってよく、好ましくは1.4以下である。また、式2で示される環境安定性評価値ES90は、0.5以上であり、0.7以上であってよく、好ましくは0.8以上である。一態様において、これら上限及び下限を適宜組み合わせてもよい。
環境安定性評価値ES60がこのような範囲内であることにより、本発明の透明導電性フィルムは、高温条件(90℃)という厳しい環境下でも、タッチパネルとして要求される特性、例えば、正確な入力特性、耐久性を満足できる。また、このような抵抗膜式タッチパネルを問題なく作動させることができ、好ましい。
本発明の透明導電性フィルムの透明導電膜は、非晶性から結晶性へ急激に相変化していく途中で止めた状態が半結晶性である。
本発明者らは、透明導電膜を半結晶状態としながら、更に、透明導電性フィルム全面に均一な半結晶性を維持することに成功した。その結果、高温高湿条件(60℃95%RH)に240時間晒しても、半結晶性の変質を抑制することができた。更に、高温条件(90℃)に240時間晒しても、半結晶性の変質を抑制することができた。その結果、環境安定性評価値ES60及び環境安定性評価値ES90を、共に0.5以上1.5以下に導くことができ、その上、ペン摺動耐久性試験及びペン重加圧試験に対しても、顕著な効果を奏することができる。
本発明の透明導電性フィルムの透明導電膜は、半結晶性である。本発明における半結晶性の状態は、非晶性から結晶性へ急激に相変化していく途中で止めた状態である。
本発明者らは、透明導電膜を半結晶状態としながら、更に、透明導電性フィルム全面に均一な半結晶性を維持することに成功した。その結果、透明導電膜を、本発明に係る半結晶状態にし、かつ、透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布をより均一にすることにより、環境安定性評価値ES60及び環境安定性評価値ES90が所定の条件を満たすことを見出した。
本発明の透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布は、5%以下であることが望ましい。透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布は、以下の方法で評価できる。
(透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布評価)
透明導電性フィルムロールを長手(MD)方向に50mm切り出す。切り出したフィルムを幅(TD)方向の端部の最端部から幅(TD)方向に50mm毎に厚みを測定し、反対の最端部まで厚みを測定し、式3で透明導電性フィルムの厚み分布を計算する。
{(透明導電性フィルムの厚みの最大値)-(透明導電性フィルムの厚みの最小値)}÷(透明導電性フィルムの厚みの最大値)×100 (式3)
なお、上記反対の最端部とその1点前との間隔は50mm未満となってもよい。
本発明の透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布が大きいと、環境安定性評価値ES60及び環境安定性評価値ES90が変化しやすい。理由を以下に記す。透明導電性フィルムを高い生産性で製造するためには、ロール to ロール式のスパッタリング装置を使用するのが好ましい。ロール to ロール式のスパッタリング装置内に幅(TD)方向の厚み分布の大きいフィルムロール(透明プラスチックフィルム基材)を入れると、フィルムロール中のフィルムの幅(TD)方向に対して水及び有機ガスが不均一に抜ける。つまり、フィルムに透明導電膜を成膜するときにフィルムの幅(TD)方向でフィルムからの水及び有機ガスの放出量が異なる。また、水及び有機ガスが多いと透明導電膜中の欠陥、水酸基が増加し、半結晶性の変化を引き起こし得る。結果として、幅(TD)方向の厚み分布が大きいとフィルムの幅(TD)方向で半結晶状態の透明導電膜の半結晶性の均一性が失われ、さらに欠陥、水酸基が増加し、環境安定性評価値ES60及び環境安定性評価値ES90が変化しやすいと考えられる。
ただし、単に、透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布が所定の範囲に含まれるだけでは、本発明によって奏される効果を得られるものではない。すなわち、本発明においては、ペン摺動耐久性試験の評価結果、ペン重加圧耐久性試験の評価結果、環境安定性試験の評価結果についても、本発明の範囲内に含まれることにより、種々の効果をより高く発揮できる。
本発明の透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布が5%以下であれば、スパッタリング装置、例えば、ロール to ロール式のスパッタリング装置内で、フィルムロール中のフィルムの幅(TD)方向に対して水及び/又は有機ガスがフィルムロールから均一に抜ける。その結果、半結晶性がより均一になり、さらに欠陥、水酸基が減少し、環境安定性評価値ES60及び環境安定性評価値ES90が所定の条件を満たすため望ましい。
例えば、透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布は4.8%以下であってよく、好ましくは4.5%以下である。
透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布は、小さいほど好ましく、例えば、3%以上であり、1%以上であってよく、0%以上であることが好ましい。一態様において、これら上限及び下限を適宜組み合わせてもよい。
本発明の透明導電性フィルムを得るための製造方法に特に限定はないが、例えば、以下のような製造方法を好ましく例示できる。
透明プラスチックフィルム基材上の少なくとも一方の面に結晶性のインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜を成膜する方法としてはスパッタリング法が好ましく用いられる。透明導電性フィルムを高い生産性で製造するためには、フィルムロールを供給し、成膜後、フィルムロールの形状に巻き上げる所謂ロール式スパッタリング装置を使用することが好ましい。成膜雰囲気中にマスフローコントローラーで水素原子含有ガス(水素、アンモニア、水素+アルゴン混合ガスなど、水素原子が含まれているガスであれば特に限定しない。ただし、水は除く。)を下記に記載の量を導入し、さらに、スパッタリング時のフィルム温度を0℃以下にして、酸化スズを0.5~10質量%含むインジウム-スズ複合酸化物の焼結ターゲットを用い、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の厚みが10~30nmになるように調整し、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の三次元表面粗さSRaが、1~100nmである透明プラスチックフィルム上に透明導電膜を成膜することが好ましく採用され得る。スパッタリング時の成膜雰囲気中で、水素原子含有ガスが透明導電膜の結晶化を阻害する効果がある。成膜雰囲気中に水素ガスを流す場合には、(水素ガス流量)÷(不活性ガス流量+水素ガス流量)×100の値(単に水素濃度と記載する場合がある)が0.01~3.00%であることが望ましい。水素濃度は、例えば、0.01%以上2.00%であり、0.01%以上1.00%以下であってもよい。
水素濃度がこのような範囲内であることにより、例えば、ペン摺動耐久性試験ON抵抗値、ペン重加圧耐久性試験のいずれにおいても、良好な結果が導かれることに寄与し得る。
また、不活性ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンなどが挙げられる。水素濃度は、0.01~3.00%であれば、透明導電膜を半結晶性にすることができ好ましい。水素ガス以外の水素原子含有ガスを使用する場合には、水素原子含有ガスに含まれる水素原子量から、水素ガス(=水素分子)量に換算して計算すればよい。成膜雰囲気中に水素原子含有ガスをマスフローコントローラーで精密に流すときに、フィルムロールの長手方向に垂直な方向に対して、水素原子含有ガスを均一に吹き付けることができるようにガス吹き出し口を配置することにより、結晶性の高い部分や低い部分が混在するような透明導電膜になりづらく、均一な半結晶性の透明導電膜を得易いので、優れたペン摺動耐久性およびペン重加圧耐久性を併せ持つ透明導電性フィルムを好適に得ることが可能となる。成膜雰囲気中の水が多いと、透明導電膜の結晶性が低下することが知られているため、成膜雰囲気中の水分量も重要な因子である。
フィルムから発生する水及び有機ガスが、フィルムの面内から不均一に発生すると、透明導電性フィルムの半結晶性が不均一になり、さらに欠陥、水酸基が増加し、結果として環境安定性評価値ES60及び環境安定性評価値ES90が変化しやすい傾向がある。製造法による対策として、フィルムロールに透明導電膜を少なくとも2層以上、連続成膜することが望ましい。
一態様において、透明導電膜の前駆体の厚みが、透明導電膜の総厚みの35~65%になるまで透明導電膜の前駆体を成膜する。本発明において、このような条件で得られた透明導電膜の前駆体を、シード層という。
さらに、シード層の成膜時に水素原子含有ガスを使用する場合は、フィルムロールへのスパッタリング時の成膜雰囲気における不活性ガスに対する水分圧の比(水分圧/不活性ガス分圧)の中心値X、すなわち、上記比の最大値と最小値の中間の値を、1.00×10-3~4.80×10-3に制御することが望ましい。
透明導電膜の前駆体の厚みが、透明導電膜の総厚みの35~65%になるまで透明導電膜の前駆体を成膜する、すなわち、シード層を成膜することにより、基材フィルムの上に透明導電膜が成膜されるため、フィルムから発生する水及び有機ガスの発生を十分抑制でき、フィルムの面内各所からの水及び/又は有機ガスの発生量の不均一性を十分軽減できる。
また、水素原子含有ガスを使用の場合、Xが、1.00×10-3~4.80×10-3に制御することにより、本発明のフィルム面内において均一性の高い半結晶質の透明導電膜を成長させるシード層になる。シード層は1層でも2層以上でも良い。
特定の理論に限定して解釈すべきではないが、本発明においては、フィルムから発生する水及び有機ガスが多い場合に生じ得る透明導電膜の結晶性の低下が抑制されており、所望の状態で半結晶性を保持できる。その結果、高温高湿、高温下での変質の原因となる透明導電膜の欠陥部、水酸基などの増加を抑制できており、環境安定性評価値ES60及び環境安定性評価値ES90が所定の条件を満たすものと推測される。
本発明においては、例えば、製造法による対策として、フィルムロールに透明導電膜を少なくとも2層以上、連続成膜することが望ましい。透明導電膜の厚みが透明導電膜の総厚みの35~65%になるまで透明導電膜を成膜するとき、さらに、水素原子含有ガスを使用の場合は、フィルムロールへのスパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する水分圧の比の中心値X(最大値と最小値の中間の値)が、1.00×10-3~4.80×10-3に制御することが望ましい。透明導電膜の厚みが透明導電膜の総厚みの35~65%になるまで透明導電膜(シード層)を成膜することにより、フィルムの上に透明導電膜が成膜されるため、フィルムから発生する水及び有機ガスの発生を十分抑制できる。その結果、高温高湿や高温下での変質の原因となる透明導電膜の欠陥部、水酸基などの増加を十分軽減できる。また、水素原子含有ガスを使用の場合は、Xを、1.00×10-3~4.80×10-3に制御することにより、欠陥部、水酸基などが少ない半結晶質の透明導電膜を成長させるシード層になる。シード層は1層でも2層以上でも良い。次に、シード層の上に透明導電膜の厚みが、狙いの透明導電膜の総厚みになるまで透明導電膜を成膜するとき、さらに、水素原子含有ガスを使用の場合は、シード層へのスパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する水分圧の比(水分圧/不活性ガス分圧)の中心値Y、すなわち上記比の最大値と最小値の中間の値を、0.15×10-3~0.90×10-3に制御することが望ましい。
さらに、XとYの平均Zを、0.58×10-3~2.80×10-3に制御することが望ましい。シード層の上に透明導電膜は1層でも2層以上でも良い。結果として、欠陥部や水酸基などが少ない半結晶質の透明導電膜ができ、環境安定性評価値ES60及び環境安定性評価値ES90が本発明に係る所定の条件を満たすことができると推測される。
さらにZについて、成膜開始時から成膜終了時までの最大値と最小値の差が1.00×10-3以下であればフィルムの全長にわたって透明導電膜の結晶性の均一性が保たれる。例えば、スパッタ機の排気装置としてよく使用されるロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ、クライオポンプに加えて、下記のボンバード工程、下記のフィルムロール端面の凹凸の高低差の限定、透明導電膜を成膜する面の反対面に吸水率の低い保護フィルムを貼るなど、透明導電膜を成膜するときにフィルムから放出される水分量を少なく、フィルム全長にわたって均一な水分量を放出するようにすれば、水分量の精密制御が不要となり好ましい。ただし、Zは、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜中の酸化スズの含有率、透明導電膜の厚みなどにも、いくらか依存している。インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜中の酸化スズの添加量が多い場合、透明導電膜が薄い場合等は、Zを前記の範囲の中で低めに設定することが望ましい。逆に、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜中の酸化スズの含有率が少ない場合、透明導電膜が厚い場合等は、不活性ガスに対する水分圧の比の中心値であるZを前記の範囲のなかで高めに設定することが望ましい。
スパッタリング時のフィルム温度を0℃以下にして透明プラスチックフィルム上に透明導電膜を成膜することが好ましい。成膜中のフィルム温度は、走行フィルムが接触するセンターロールの温度を調節する温調機の設定温度で代用する。
ここで、図5に本発明において好適に使用されるスパッタリング装置の一例の模式図を示しており、走行するフィルム1がセンターロール2の表面に部分的に接触して走行している。チムニー3を介してインジウム-スズのスパッタリングターゲット4が設置され、センターロール2上を走行するフィルム1の表面にインジウム-スズ複合酸化物の薄膜が堆積して積層される。各ターゲットは仕切り5によって仕切られている。センターロール2は図示しない温調機によって温度制御される。フィルム温度が0℃以下であれば、透明導電膜の結晶性をばらつかせるフィルムからの水、有機ガス等の不純物ガスの放出を抑制できるため、成膜開始時から成膜終了時までの透明導電膜の結晶性が均一化しやすいので好ましい。水素原子含有ガスを使用する場合、XとYの平均Zは、0.58×10-3~2.80×10-3であることが望ましい。 Zが前記の範囲であれば、水素原子含有ガスによる透明導電膜の結晶性の阻害が効果的に作用するため望ましい。また、透明導電性フィルムの表面抵抗および全光線透過率を実用的な水準にするために、スパッタリング時に酸素ガスを添加することが望ましい。この製造方法は、透明導電膜の結晶性をばらつかせる要因の水による結晶性の影響を極力排除して、水素含有ガスにより結晶性をコントロールすることを主眼としている。
プラスチックフィルム上にインジウム-スズ複合酸化物を成膜する時の水分量の制御には、到達真空度を観測するよりも、実際に成膜時の水分量を観測することの方が以下の2つの理由で望ましい。
その理由の1点目として、スパッタリングで、プラスチックフィルムに成膜をすると、フィルムが加熱され、フィルムから水分が放出されるので、成膜雰囲気中の水分量が増加し、到達真空度を測定したときの水分量より増加するため、到達真空度で表現するよりも成膜時の水分量で表現する方が正確である。
その理由の2点目は、大量に透明プラスチックフィルムを投入する装置での場合である。このような装置ではフィルムをフィルムロールの形態で投入する。フィルムをロールにして真空槽に投入するとロールの外層部分は水が抜けやすいが、ロールの内層部分は水が抜けにくい。到達真空度を測定するとき、フィルムロールは停止しているが、成膜時にはフィルムロールが走行するため、水を多く含むフィルムロールの内層部分が巻き出されてくるため、成膜雰囲気中の水分量が増加し、到達真空度を測定したときの水分量より増加するためである。本発明においては、成膜雰囲気中の水分量の制御に当たって、スパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する水分圧の比を観測することで好ましく対応することができる。
透明導電膜を成膜する前に、フィルムをボンバード工程に通すことが望ましい。ボンバード工程とは、アルゴンガスなどの不活性ガスだけ、もしくは、酸素などの反応性ガスと不活性ガスの混合ガスを流した状態で、電圧を印加し放電を行い、プラズマを発生させることである。具体的には、SUSターゲットなどでRFスパッタリングにより、フィルムをボンバードすることが望ましい。ボンバード工程によりフィルムがプラズマにさらされるため、フィルムから水や有機成分が放出し、透明導電膜を成膜するときにフィルムから放出する水や有機成分が減少するため、成膜開始時から成膜終了時までの透明導電膜の結晶性が均一化しやすく、かつ透明導電性フィルムの透明導電膜の欠陥部を低減でき、その上、水酸基などが少なくなるため好ましい。また、ボンバード工程により透明導電膜が接する層が活性化するため、透明導電膜の密着性が向上するため、ペン摺動耐久性やペン重加圧耐久性が向上するため望ましい。
透明導電膜を成膜するためのフィルムロールは、ロール端面において、最も凸の箇所と最も凹の箇所の高低差は10mm以下が好ましい。10mm以下であれば、スパッタ装置にフィルムロールを投入した時にフィルム端面からの水や有機成分の放出の仕方にムラが小さくなるため、成膜開始時から成膜終了時までの透明導電膜の結晶性が均一化しやすく、かつ透明導電性フィルムの透明導電膜の欠陥部を低減でき、その上、水酸基などが少なくなるため好ましい。
透明導電膜を成膜するフィルム(透明プラスチックフィルム基材)において、透明導電膜を成膜する面の反対面に吸水率の低い保護フィルムを貼ることが望ましい。吸水率の低い保護フィルムを貼ることにより、フィルム基材からの水などのガスが放出されにくくなり、結果として、水などのガスの放出の仕方においてムラが小さくなるため、成膜開始時から成膜終了時までの透明導電膜の結晶性が均一化しやすく、かつ透明導電性フィルムの透明導電膜の面内の結晶性が均一化しやすく好ましい。吸水率の低い保護フィルムの基材として、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンなどが好ましい。
透明プラスチックフィルム基材上の少なくとも一方の面に結晶性のインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜を成膜する方法において、スパッタリング時に酸素ガスを導入することが望ましい。スパッタリング時に酸素ガスを導入すると、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の酸素の欠乏による不具合がなく、透明導電性フィルムの表面抵抗は低く、全光線透過率は高くなり好ましい。そのため、透明導電性フィルムの表面抵抗および全光線透過率を実用的な水準にするために、スパッタリング時に酸素ガスを導入することが望ましい。なお、本発明の透明導電性フィルムの全光線透過率は70~95%が好ましい。
本発明の透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルム基材上にインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜が成膜積層された後、酸素を含む雰囲気下で、80~200℃、0.1~12時間加熱処理を施されてなることが望ましい。80℃以上であると、半結晶状態にすべく結晶性をやや高める処置が容易であり、ペン摺動耐久性が向上し好ましい。200℃以下であると、透明プラスチックフィルムの平面性が確保されて好ましい。
<透明プラスチックフィルム基材>
本発明で用いる透明プラスチックフィルム基材とは、有機高分子をフィルム状に溶融押出し又は溶液押出しをして、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムであり、有機高分子としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン4、ナイロン66、ナイロン12、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルファン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー等が挙げられる。
これらの有機高分子のなかで、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、シンジオタクチックポリスチレン、ノルボルネン系ポリマー、ポリカーボネート、ポリアリレート等が好適である。また、これらの有機高分子は他の有機重合体の単量体を少量共重合したり、他の有機高分子をブレンドしてもよい。
本発明で用いる透明プラスチックフィルム基材は、本発明の目的を損なわない範囲で、前記フィルムをコロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、電子線照射処理、オゾン処理等の表面活性化処理を施してもよい。
透明プラスチックフィルム基材に硬化型樹脂層を塗布すると、透明導電膜が硬化型樹脂層と強く密着することや透明導電膜にかかる力を分散することができるため、ペン摺動試験での透明導電膜に対してクラック、剥離、摩耗などが抑えられ、さらに、ペン重加圧試験での透明導電膜に対してクラック、剥離などが抑えられるため好ましい。また、硬化型樹脂層の表面を凹凸にした上に透明導電膜を成膜すると、ペン摺動試験のときに透明導電薄膜がガラスと接触するときの真の接触面積が減少するためにガラス面と透明導電膜との滑り性が良くなってペン摺動耐久性が向上することや、フィルムロールの巻取り性の向上や、アンチニュートンリング性を期待することができるが、凹凸が大きすぎると、ペン重加圧試験をしたときの表面突起の変形量が大きくなり、透明導電膜にクラック発生するため好ましくない。そのため表面凹凸として、透明導電膜の三次元表面粗さSRaが、1~100nmにすることが好ましい。硬化型樹脂層の詳細について以下に記載する。
また、本発明で好ましく用いられる前記硬化型樹脂としては、加熱、紫外線照射、電子線照射等のエネルギー印加により硬化する樹脂であれば特に制限はなく、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。生産性の観点からは、紫外線硬化型樹脂を主成分とすることが好ましい。
このような紫外線硬化型樹脂としては、例えば、多価アルコールのアクリル酸又はメタクリル酸エステルのような多官能性のアクリレート樹脂、ジイソシアネート、多価アルコール及びアクリル酸又はメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステル等から合成されるような多官能性のウレタンアクリレート樹脂等を挙げることができる。必要に応じて、これらの多官能性の樹脂に単官能性の単量体、例えば、ビニルピロリドン、メチルメタクリレート、スチレン等を加えて共重合させることができる。
また、透明導電性薄膜と硬化型樹脂層との付着力を向上するために、硬化型樹脂層の表面を以下に記載する手法で処理することが有効である。具体的な手法としては、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基を増加するためにグロー又はコロナ放電を照射する放電処理法、アミノ基、水酸基、カルボニル基等の極性基を増加させるために酸又はアルカリで処理する化学薬品処理法等が挙げられる。
紫外線硬化型樹脂は、通常、光重合開始剤を添加して使用される。光重合開始剤としては、紫外線を吸収してラジカルを発生する公知の化合物を特に制限なく使用することができ、このような光重合開始剤としては、例えば、各種ベンゾイン類、フェニルケトン類、ベンゾフェノン類等を挙げることができる。光重合開始剤の添加量は、紫外線硬化型樹脂100質量部当たり通常1~5質量部とすることが好ましい。
また、本発明において硬化型樹脂層には、主たる構成成分である硬化型樹脂のほかに、無機粒子や有機粒子を併用することが好ましい。硬化型樹脂に無機粒子や有機粒子を分散させることにより、硬化型樹脂表面に凹凸を形成させ、広領域における表面粗さを向上させることができる。
前記の無機粒子としてはシリカなどが例示される。前記の有機粒子としてポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂等が例示される。
無機粒子や有機粒子以外に、主たる構成成分である硬化型樹脂のほかに、硬化型樹脂に非相溶な樹脂を併用することも好ましい。マトリックスの硬化型樹脂に非相溶な樹脂を少量併用することで、硬化型樹脂中で相分離が起こり非相溶樹脂を粒子状に分散させることができる。この非相溶樹脂の分散粒子により、硬化型樹脂表面に凹凸を形成させ、広領域における表面粗さを向上させることができる。
非相溶樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂等が例示される。
ここでは一例として、硬化型樹脂層に無機粒子を用いる場合の配合割合を示す。紫外線硬化型樹脂100質量部当たり無機粒子0.1~20質量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.1~15質量部、特に好ましくは0.1~12質量部である。
前記無機粒子の配合量が紫外線硬化型樹脂100質量部当たり0.1~20質量部であると、硬化型樹脂層表面に形成される凸部が小さ過ぎず、効果的に三次元表面粗さを付与でき、ペン重加圧試験をしたときに表面突起の変形量が小さくなり透明導電膜のクラック発生が抑制され、さらに透明導電膜に多少の表面突起があるためフィルム巻取り性も保持できるため好ましい。
前記の紫外線硬化型樹脂、光重合開始剤及び、無機粒子や有機粒子や紫外線硬化型樹脂に非相溶な樹脂は、それぞれに共通の溶剤に溶解して塗布液を調製する。使用する溶剤には特に制限はなく、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のようなアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のようなエステル系溶剤、ジブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のようなエーテル系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のようなケトン系溶剤、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等のような芳香族炭化水素系溶剤等を単独に、あるいは混合して使用することができる。前記の紫外線硬化型樹脂、光重合開始剤及び、無機粒子や有機粒子や紫外線硬化型樹脂に非相溶な樹脂に溶解する溶剤の添加量が多い方が、つまり、固形分濃度が低い方が、硬化型樹脂層の厚み分布が小さくなるので好ましい。
塗布液中の樹脂成分の濃度は、コーティング法に応じた粘度等を考慮して適切に選択することができる。例えば、塗布液中に紫外線硬化型樹脂、光重合開始剤及び高分子量のポリエステル樹脂の合計量が占める割合は、通常は20~80質量%である。また、この塗布液には、必要に応じて、その他の公知の添加剤、例えば、シリコーン系レベリング剤等を添加してもよい。
本発明において、調製された塗布液は透明プラスチックフィルム基材上にコーティングされる。コーティング法には特に制限はなく、バーコート法、グラビアコート法、リバースコート法等の従来から知られている方法を使用することができる。
コーティングされた塗布液は、次の乾燥工程で溶剤が蒸発除去される。この工程で、塗布液中で均一に溶解していた高分子量のポリエステル樹脂は粒子となって紫外線硬化型樹脂中に析出する。塗膜を乾燥した後、プラスチックフィルムに紫外線を照射することにより、紫外線硬化型樹脂が架橋・硬化して硬化型樹脂層を形成する。この硬化の工程で、高分子量のポリエステル樹脂の粒子はハードコート層中に固定されるとともに、硬化型樹脂層の表面に突起を形成し広領域における表面粗さを向上させる。
また、硬化型樹脂層の厚みは0.1~15μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは0.5~10μmの範囲であり、特に好ましくは1~8μmの範囲である。硬化型樹脂層の厚みが0.1μm以上の場合には、十分な突起が形成され好ましい。一方、15μm以下であれば、生産性がよく好ましい。また、硬化型樹脂層の厚み分布は5%以下であることが好ましい。
以下に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、実施例における各種測定評価は下記の方法により行った。
(1)全光線透過率
JIS-K7361-1:1997に準拠し、日本電色工業(株)製NDH-2000を用いて、全光線透過率を測定した。
(2)表面抵抗値
JIS-K7194:1994に準拠し、4端子法にて測定した。測定機は、(株)三菱化学アナリテック製 Lotesta AX MCP-T370を用いた。
(3)三次元中心面平均表面粗さSRa
三次元中心面平均表面粗さSRaは、ISO 25178に規定されるものであり、3次元表面形状測定装置バートスキャン(菱化システム社製、R5500H-M100(測定条件:waveモード、測定波長560nm、対物レンズ10倍))を用いて、三次元中心面平均表面粗さSRaを求めた。測定数を5とし、それらの平均値を求めた。ここで、nm単位の小数点第一位を四捨五入した。
(4)結晶粒径
透明導電性薄膜層を積層したフィルム試料片を1mm×10mmの大きさに切り出し、導電性薄膜面を外向きにして適当な樹脂ブロックの上面に貼り付けた。これをトリミングしたのち、一般的なウルトラミクロトームの技法によってフィルム表面にほぼ平行な超薄切片を作製した。
この切片を透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM-2010)で観察して著しい損傷がない導電性薄膜表面部分を選び、加速電圧200kV、直接倍率40000倍で写真撮影を行った。
透過型電子顕微鏡下で観察される結晶粒において、すべての結晶粒の最長部を測定し、それらの測定値の平均値を結晶粒径とする。ここで、図1~4に結晶粒の最長部の測定時における最長部の認定方法に関する例を示す。即ち、最も各結晶粒の粒径を最も大きく測定できる直線の長さによって最長部を認定している。
(5)透明導電膜の厚み(膜厚)
透明導電性薄膜層を積層したフィルム試料片を1mm×10mmの大きさに切り出し、電子顕微鏡用エポキシ樹脂に包埋した。これをウルトラミクロトームの試料ホルダに固定し、包埋した試料片の短辺に平行な断面薄切片を作製した。次いで、この切片の薄膜の著しい損傷がない部位において、透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM-2010)を用い、加速電圧200kV、明視野で観察倍率1万倍にて写真撮影を行って得られた写真から膜厚を求めた。
(6)ペン摺動耐久性試験
本発明に係る透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にスパッタリング法で厚みが20nmのインジウム-スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性薄膜を用いた。この2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して、配置しタッチパネルを作製した。次にポリアセタール製のペン(先端の形状:0.8mmR)に2.5Nの荷重をかけ、18万往復の直線摺動試験をタッチパネルに行った。この試験において、本発明に係る透明導電性フィルム面に対してペンの荷重を印加する。この時の摺動距離は30mm、摺動速度は180mm/秒とした。この摺動耐久性試験後に、ペン荷重0.8Nで摺動部を押さえた際の、ON抵抗(可動電極(フィルム電極)と固定電極とが接触した時の抵抗値)を測定した。ON抵抗は10kΩ以下であるのが望ましい。
なお、比較例においては、本発明に係る透明導電性フィルムに代わり、各比較例におけるフィルムを使用した。
(7)ペン重加圧試験
本発明に係る透明導電性フィルムを50mm×50mmにカットした透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にスパッタリング法で厚みが20nmのインジウム-スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性薄膜を用いた。この2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して配置し、厚みが120μmとなるように調整した両面テープでフィルム側のパネル板とガラス側のパネル板を貼り付けて、タッチパネルを作製した。両面テープの端から2.0mmの位置をポリアセタール製のペン(先端の形状0.8mmR)で35Nの荷重をかけ、両面テープと平行に10回(往復5回)の直線摺動を実施する。この試験において、本発明に係る透明導電性フィルム面に対してペンの荷重を印加する。このときの摺動距離は30mm、摺動速度は20mm/秒である。ただし、エポキシビーズがない位置で摺動を行う。摺動後に、透明導電性フィルムを取り外して、摺動部の任意の5か所の表面抵抗(4端子法)を測定し、平均値を出す。表面抵抗を測定するときは、摺動部と垂直になる方向に4端子を並べ、2端子目と3端子目の間に摺動部が来るようにする。摺動部の表面抵抗値の平均値を未摺動部の表面抵抗値(4端子法で測定)で除して、表面抵抗値の増加率を算出する。
なお、比較例においては、本発明に係る透明導電性フィルムに代わり、各比較例におけるフィルムを使用した。
(8)透明導電膜中に含まれる酸化スズの含有率の測定
試料を切りとって(約15cm)石英製三角フラスコにいれ、6mol/l塩酸20mlを加え、酸の揮発がないようにフィルムシールをした。室温で時々揺り動かしながら9日間放置し、透明導電膜を溶解させた。残フィルムを取り出し、透明導電膜が溶解した塩酸を測定液とした。溶解液中のIn、Snは、ICP発光分析装置(メーカー名;リガク、装置型式;CIROS-120 EOP)を用いて、検量線法により求めた。各元素の測定波長は、干渉のない、感度の高い波長を選択した。また、標準溶液は、市販のIn、Snの標準溶液を希釈して用いた。
(9)付着性試験
JIS K5600-5-6:1999に準拠して実施した。
(10)耐屈曲性試験
JIS K5600-5-1:1999に準拠して実施した。ただし、マンドレル直径が13mmまで割れや剥れが起こらない場合は、これ以上の耐屈曲試験は行わず、すべて13mmと記載した。
(11)環境安定性評価
透明導電性フィルムロールを長手(MD)方向に100mm切り出した。切り出したフィルムを165℃75分間加熱処理した。
加熱処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとする。
次に、前記加熱処理した透明導電フィルムを更に60℃95%RH240時間、高温高湿度条件下で処理した。60℃95%RH240時間処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとする。
また、165℃75分間の条件で加熱処理した透明導電フィルムを、更に90℃240時間処理した。90℃240時間処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとする。以下の式1で示される値を、環境安定性評価値ES60とし、以下の式2で示される環境安定性評価値ES90とし、各値を算出した。
[(RaE/RS)+(RaE/RS)+(RaE/RS)]/3 (式1)
[(RbE/RS)+(RbE/RS)+(RbE/RS)]/3 (式2)
なお、環境安定性評価は図6に示す態様で測定した。図6において、2点の「黒丸」は、長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点を示し、「黒三角」は、透明導電フィルムの中央領域における2点を示し、「黒四角」は、長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域とは反対側に位置する、第2の端部領域における2点を示す。
(12)透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布評価)
透明導電性フィルムロールを長手(MD)方向に50mm切り出した。切り出したフィルムを幅(TD)方向の端部の最端部から幅(TD)方向に50mm毎に厚みを測定し、反対の最端部まで厚みを測定し、式3で透明導電性フィルムの厚み分布を計算した。ただし、反対の最端部とその1点前との間隔は50mm未満となる場合もあった。
透明導電性フィルムの厚みはマイクロメーターで測定した。
[(透明導電性フィルムの厚みの最大値)-(透明導電性フィルムの厚みの最小値)]÷(透明導電性フィルムの厚みの最大値)×100 (式3)
実施例、比較例において使用した透明プラスチックフィルム基材は、両面に易接着層を有する二軸配向透明PETフィルム(東洋紡社製、A4340、厚みは表1に記載)である。硬化型樹脂層として、光重合開始剤含有アクリル系樹脂(大日精化工業社製、セイカビーム(登録商標)EXF-01J)100質量部に、シリカ粒子(日産化学社製、スノーテックスZL)を表1に記載の量を配合し、溶剤としてトルエン/MEK(8/2:質量比)の混合溶媒を、表1と表2に記載の固形分濃度になるように加え、撹拌して均一に溶解し塗布液を調製した(この塗布液を以下塗布液Aと呼ぶ)。塗膜の厚みが任意の5点での平均値が5μmになるように、調製した塗布液をマイヤーバーを用いて塗布した。80℃で1分間乾燥を行った後、紫外線照射装置(アイグラフィックス社製、UB042-5AM-W型)を用いて紫外線を照射(光量:300mJ/cm)し、塗膜を硬化させた。また、硬化型樹脂層は透明プラスチック基材の両面に設けた。
(実施例1~8)
各実施例水準は表1に示した条件のもと、以下の通り実施した。
真空槽にフィルムを投入し、1.5×10-4Paまで真空引きをした。次に、酸素導入後に不活性ガスとしてアルゴン、水素含有ガスとして水素ガスを表1に記載の濃度を導入し全圧を0.6Paにした。
インジウム-スズ複合酸化物の焼結ターゲット、あるいは酸化スズを含まない酸化インジウム焼結ターゲットに4.5W/cmの電力密度で電力を投入し、DCマグネトロンスパッタリング法により、シード層、次に透明導電膜を成膜した。膜厚についてはフィルムがターゲット上を通過するときの速度を変えて制御した。また、スパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する水分圧の比については、ガス分析装置(インフィコン社製、トランスペクターXPR3)を用いて測定した。各実施例水準において、スパッタリング時の成膜雰囲気の不活性ガスに対する水分圧の比X、Y、および、XとYの平均Zを調節すべく、表1に記載されるように、ボンバード工程の有無、保護フィルムの有無、フィルムロール端面の凹凸高低差、フィルムが接触走行しているセンターロールの温度を制御する温調機の温媒の温度を調節した。フィルムロールへの成膜開始時から成膜終了時までの温度の最大値と最小値の丁度真ん中に当たる温度を中心値として表1に記載した。
透明導電膜を成膜積層したフィルムは、表1Aに記載の熱処理をした後、測定を実施した。測定結果を表1Bに示した。
(比較例1~11)
表1に記載の条件で実施例1と同様に透明導電性フィルムを作製して評価した。ただし、比較例7は硬化型樹脂層を設けていない。ただし、比較例8は硬化型樹脂層の塗膜の厚みが20μmになるように調整した。成膜条件を表2Aに、結果を表2Bに示した。
Figure 0007060850000001
Figure 0007060850000002
Figure 0007060850000003
Figure 0007060850000004
表1Bに記載のとおり、実施例1~8記載の透明導電性フィルムは、ペン摺動耐久性およびペン重加圧耐久性に優れており、両特性を兼備している。更に、高温高湿条件、高温条件共に優れており、優れた環境安定性を有する。
しかしながら、表2Bに記載の通り、比較例1~11はペン摺動耐久性およびペン重加圧耐久性を両立できていない。更に、優れた環境安定性を有することはできなかった。
上記の通り、本発明によれば、ペン摺動耐久性、ペン重加圧耐久性、環境安定性に優れた透明導電性フィルムを作製でき、これは抵抗膜式タッチパネル等の用途に極めて有用である。
1.フィルム
2.センターロール
3.チムニー
4.インジウム-スズ複合酸化物のターゲット
5.チャンバー

Claims (6)

  1. 透明プラスチックフィルム基材上の少なくとも一方の面にインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜が積層された透明導電性フィルムであって、以下のペン摺動耐久性試験による透明導電フィルムの透明導電膜のON抵抗が10kΩ以下であり、
    以下のペン重加圧試験による透明導電フィルムの透明導電膜の表面抵抗値の増加率が1.5以下であり、
    以下の式1で示される環境安定性評価値ES60が0.5以上1.5以下であり、かつ、以下の式2で示される環境安定性評価値ES90が0.5以上1.5以下である、
    透明導電性フィルム。
    (ペン摺動耐久性試験方法)
    本発明に係る透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にスパッタリング法で厚みが20nmのインジウム-スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性薄膜を用いる。前記2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して配置し、厚みが170μmの両面テープでフィルム側のパネル板とガラス側のパネル板を貼り付けて、タッチパネルを作製する。次にポリアセタール製のペン(先端の形状:0.8mmR)に2.5Nの荷重をかけ、18万往復の直線摺動試験をタッチパネルに行う。この試験において、本発明に係る透明導電性フィルム面に対してペンの荷重を印加する。
    この時の摺動距離は30mm、摺動速度は180mm/秒とする。この摺動耐久性試験後に、ペン荷重0.8Nで摺動部を押さえた際の、ON抵抗(可動電極(フィルム電極)と固定電極とが接触した時の抵抗値)を測定する。
    (ペン重加圧試験方法)
    50mm×50mmにカットした、本発明に係る透明導電性フィルムを一方のパネル板として用い、他方のパネル板として、ガラス基板上にスパッタリング法で厚みが20nmのインジウム-スズ複合酸化物薄膜(酸化スズ含有量:10質量%)からなる透明導電性薄膜を用いる。この2枚のパネル板を透明導電性薄膜が対向するように、直径30μmのエポキシビーズを介して配置し、厚みが120μmとなるように調整した両面テープでフィルム側のパネル板とガラス側のパネル板を貼り付けて、タッチパネルを作製した。両面テープの端から2.0mmの位置をポリアセタール製のペン(先端の形状0.8mmR)で35Nの荷重をかけ、両面テープと平行に10回(往復5回)の直線摺動を実施する。この試験において、本発明に係る透明導電性フィルム面に対してペンの荷重を印加する。このときの摺動距離は30mm、摺動速度は20mm/秒とする。エポキシビーズがない位置で摺動を行う。摺動後に、透明導電性フィルムを取り外して、摺動部の任意の5か所の表面抵抗(4端子法)を測定し、平均値を出す。表面抵抗を測定するときは、摺動部と垂直になる方向に4端子を並べ、2端子目と3端子目の間に摺動部が来るようにする。摺動部の表面抵抗値の平均値を未摺動部の表面抵抗値(4端子法で測定)で除して、表面抵抗値の増加率を算出する。
    (環境安定性評価)
    透明導電性フィルムロールを長手(MD)方向に100mm切り出す。切り出したフィルムを165℃75分間加熱処理する。
    加熱処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRSとする。
    次に、前記加熱処理した透明導電フィルムを更に60℃95%RH240時間、高温高湿度条件下で処理する。60℃95%RH240時間処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRaEとする。
    また、165℃75分間の条件で加熱処理した透明導電フィルムを、更に90℃240時間処理する。90℃240時間処理した透明導電フィルムの長手(MD)方向に沿った、第1の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとし、透明導電フィルムの中央領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとし、前記第1の端部領域とは反対側に位置する第2の端部領域における2点の表面抵抗値の平均値をRbEとする。
    以下の式1で示される値を、環境安定性評価値ES60とし、
    以下の式2で示される環境安定性評価値ES90とする。
    [(RaE/RS)+(RaE/RS)+(RaE/RS)]/3 (式1)
    [(RbE/RS)+(RbE/RS)+(RbE/RS)]/3 (式2)
  2. インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶粒径が10~100nmであり、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の結晶化度が20~80%であり、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜が、酸化スズを0.5~10質量%含む、請求項1に記載の透明導電性フィルム。
  3. インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の厚みが、10~30nmであり、インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜の三次元表面粗さSRaが、1~100nmであり、透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布が、5%以下である請求項1または2に記載の透明導電性フィルム。
    (透明導電性フィルムの幅(TD)方向の厚み分布評価)
    透明導電性フィルムロールを長手(MD)方向に50mm切り出す。切り出したフィルムを幅(TD)方向の端部の最端部から幅(TD)方向に50mm毎に厚みを測定し、反対の最端部まで厚みを測定し、式3で透明導電性フィルムの厚み分布を計算する。
    また、反対の最端部とその1点前の測定部位との間隔は50mm未満となってもよい。
    [(透明導電性フィルムの厚みの最大値)-(透明導電性フィルムの厚みの最小値)]÷(透明導電性フィルムの厚みの最大値)×100 (式3)
  4. 透明導電膜の表面において付着性試験(JIS K5600-5-6:1999)を実施しても透明導電膜が剥離せず、
    透明導電性フィルムのインジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜側において耐屈曲性試験(JIS K5600-5-1:1999)をし、10倍のルーペで屈曲部を観察した時に割れや剥れが起こるマンドレル直径が20mmより小さい請求項1から3のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
  5. 透明導電性フィルムの厚みが100~250μmである請求項1から4のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
  6. インジウム-スズ複合酸化物の透明導電膜と透明プラスチックフィルム基材の間に硬化型樹脂層を有する請求項1から5のいずれかに記載の透明導電性フィルム。
JP2021521450A 2020-03-31 2021-03-26 透明導電性フィルム Active JP7060850B2 (ja)

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