JP7060834B2 - 離型フィルム - Google Patents
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Description
1. ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を有する離型フィルムであって、前記離型層が無機薄膜層であることを特徴とする固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルム。
2. 離型層表面の表面自由エネルギーが40mJ/m2以上であることを特徴とする上記第1に記載の固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルム。
3. 無機薄膜層がシリカおよび/またはアルミナからなることを特徴とする上記第1または第2に記載の固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルム。
4. 離型層表面の表面粗さ(Sa)が50nm以下であることを特徴とする上記第1~第3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルム。
本発明で基材として用いるポリエステルフィルムは、主としてポリエステル樹脂より構成されるフィルムである。ここで、「主としてポリエステル樹脂より構成されるフィルム」とは、ポリエステル樹脂を50質量%以上含有する樹脂組成物から形成されるフィルムであり、他のポリマーとブレンドする場合は、ポリエステル樹脂が50質量%以上含有していることを意味し、他のモノマーが共重合されている場合は、ポリエステルの繰り返し構造単位を50モル%以上含有することを意味する。好ましくは、ポリエステルフィルムは、フィルムを構成する樹脂組成物中において、ポリエステル樹脂を90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%含有する。
本発明における無機薄膜層は特に限定されずに無機化合物であればどのようなものでも使用することができる。例えば、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Ru、Pd、Ag、In、Sn、Ta、W、Re、Ir、Pt、Au、Tl、Pbなどの元素記号で表される遷移金属や典型金属、典型非金属などを使用することができ、各単体で用いても、それらの酸化物などを使用してもよい。特に透明性などの観点から主たる成分が酸化珪素、及び/又は酸化アルミニウムからなる薄膜層が好ましい。さらに、可撓性の向上から酸化ケイ素、及び酸化アルミニウムを主たる成分とする薄膜層が好ましい。薄膜層の可撓性がよいと、走行中に離型フィルムが曲げられりしても薄膜層に膜割れが生じにくく転写性を維持できるため好ましい。酸化珪素系とはSi、SiO、SiO2等を指す。主たる成分が酸化珪素、及び酸化アルミニウムからなる場合、無機薄膜中の酸化アルミニウムの含有量は好ましくは20質量%以上80質量%以下であり、更に好ましくは25質量%以上70質量%以下である。20質量%以上の場合は密度が低くなり過ぎず、転写性が低下する恐れがなく好ましい。一方、80質量%以下であると、無機薄膜の可撓性が保持されて、薄膜層の割れが発生しにくく好ましい。また、本特性が失われない範囲で他成分が含まれてもよい。
無機化合物の組成膜厚は蛍光X線分析装置((株)リガク製「ZSX100e」)を用いて、予め作成した検量線により膜厚組成を測定した。なお、励起X線管の条件として50kV、70mAとした。検量線は以下の手順で求めたものである。
酸化アルミニウムと酸化ケイ素からなる無機薄膜の場合を例に説明する。酸化アルミニウムと酸化ケイ素とからなる無機化合物薄膜を持つフィルムを数種類作成し、誘導結合プラズマ発光法(ICP法)で酸化アルミニウムと酸化ケイ素それぞれの付着量を求める。次いで、付着量を求めた各フィルムを蛍光X線分析装置((株)リガク製「ZSX100e」、励起X線管の条件:50kv、70mA)で分析することにより各サンプルの酸化アルミニウムと酸化ケイ素との蛍光X線強度を求める。蛍光X線強度とICPで求めた付着量の関係を求めて検量線を作成する。ICPで求めた付着量は基本的に重量であるのでこれを膜厚組成とするため以下のように変換した。
膜厚は、無機酸化薄膜の密度がバルク密度の8割であるとし、かつ 酸化アルミニウムと酸化ケイ素とが混合された状態であってもそれぞれ体積を保つとして算出した。
酸化アルミニウムの膜中の含有率wa(質量%)、酸化ケイ素の膜中の含有量ws(質量%)は、酸化アルミニウムの単位面積当たりの付着量をMa(g/cm2)、酸化ケイ素の単位面積当たりの付着量をMs(g/cm2)とすると、各々下記式(1)、(2)で求められる。
wa=100×[Ma/(Ma+Ms)] (1)
ws=100-wa (2)
すなわち、酸化アルミニウムの単位面積当たりの付着量をMa(g/cm2)、そのバルクの密度をρa(3.97g/cm3)とし、酸化ケイ素の単位面積当たりの付着量をMs(g/cm2)、そのバルクの密度をρs(2.65g/cm3)とすると、膜厚t(nm)は下記式(3)で求められる。
t=((Ma/(ρa×0.8)+Ms/(ρs×0.8))×107・・・式(3)
蛍光X線で測定した膜厚の値は、TEMで実際に計測した膜厚と近いものであった。
非接触表面形状計測システム(VertScan R550H-M100)を用いて、下記の条件で測定した値である。領域表面平均粗さ(Sa)は、5回測定の平均値を採用し、最大突起高さ(P)は5回測定の最大値を採用した。
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:10倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積 936μm×702μm
(解析条件)
・面補正: 4次補正
・補間処理: 完全補間
なお、表1の(Sa)及び(P)は基材ポリエステルフィルムの離型層を積層する面のデータを示している。
離型フィルムを10cm×10cmの正方形に裁断し、熱風オーブンにて160℃30分熱処理を行った。熱処理後、試料フィルムの縦および横方向の寸法を測定し、下記(1)式に従い熱収縮率を求めた。測定はn=5回行い、試料フィルムの縦方向及び横方向の熱収縮率データの各々の平均値のうち、大きい方の熱収縮率データを採用し、その離型フィルムの熱収縮率データとする。なお、熱処理前後の寸法を測定するときは、サンプルフィルムを25℃の部屋で12時間以上エージング後に測定を行った。
熱収縮率={(収縮前の長さ-収縮後の長さ)/ 収縮前の長さ}×100 (%) (1)式
表面張力が既知の水(液滴量1.8μL)、ジヨードメタン(液適量0.9μL)、ブロモナフタレン(液適量0.9μL)の接触角を25℃、50%RHの条件下で接触角計(協和界面科学株式会社製: 全自動接触角計 DM-701)を用いて測定した。計算に用いた接触角は、各液を滴下後10秒後の接触角を採用した。
得られた接触角データを「北崎-畑」理論より計算し離型フィルムの表面自由エネルギーの分散成分γsd、極性成分γsp、水素結合成分γshを求め、各成分を合計したものを表面自由エネルギーγsとした。本計算には、本接触角計ソフトウェア(FAMAS)内の計算ソフトを用いて行った。
本発明のフィルムヘイズはJIS K 7136に準拠し、濁度計(日本電色製、NDH2000)を用いて測定した。
転写性については、以下の方法で行った。20%Nafion(登録商標)Dispersion Solution DE2021 CS type(和光純薬工業社製)の固形分とカーボンブラック(CABOT社製、VERCANX72R)を質量比で5/5になるように混合し、総固形分が10%になるようにイソプロパノール/水(質量比8/2)で調整後、遠心攪拌機にて30分間分散を行い擬似触媒層用スラリーを得た。得られた擬似触媒層スラリーをアプリケーターを用いて、乾燥後の膜厚が10μmになるように離型フィルムの上に塗工し、熱風オーブンで90℃2分乾燥を行った。その後、熱風オーブンで所定の温度で10分間熱処理後に室温に戻した後にメンディングテープを用いてメンディングテープが180°の角度で剥離した。転写性を以下の基準で評価した。前記所定温度として、120℃、140℃、160℃、180℃の4水準で行った。
○:離型フィルム上に擬似触媒層は残らなかった。
△:離型フィルム上に擬似触媒層はうっすらと残った。
(白色台紙上で観察すると擬似触媒層が残っていることがなんとか認識できるレベル)
×:離型フィルム上に擬似触媒層ははっきりと残った。
(白色台紙上で観察すると黒く残った擬似触媒層がはっきりと認識できるレベル)
塗工性の評価は、以下のように行った。前記、転写性評価で用いたものと同様の疑似触媒層用スラリーをアプリケーターを用いて、乾燥後の膜厚が10μmになるように離型フィルムの上に塗工し室温で1分放置したのちの塗工面を観察し、以下の基準で評価した。
○:塗工面にハジキなどの発生は全くなかった。
△:塗工面の端部など極一部でハジキが観察された。
×:塗工面にハジキが多く観察された。
無機薄膜層の可撓性については以下のように行った。無機薄膜層を積層した離型フィルムを無機薄膜層が外側になるように直径10mmの金属棒に沿って3回折り曲げた。折り曲げた離型フィルムを用いて前記転写性評価と同様にして転写性の評価を行った(熱処理の温度は180℃で比較)。得られた転写性の結果を用いて以下の基準で可撓性の評価を行った。
○:折り曲げた離型フィルムでも、離型フィルム上に擬似触媒層は残らなかった。
△:折り曲げた離型フィルムでは、離型フィルム上に疑似触媒層が少し残った。
×:折り曲げた離型フィルムでは、離型フィルム上に疑似触媒層がはっきりと残った。
触媒層の割れなどの外観評価は以下のように行った。まず、20%Nafion(登録商標)Dispersion Solution DE2021 CS type(和光純薬工業社製)と、カーボンブラックを重量比で3/7になるように混合し、遠心攪拌機にて分散を行い擬似触媒層用スラリーを得た。得られた擬似触媒層スラリーをアプリケーターを用いて、乾燥後の膜厚が5μmになるように離型フィルムの上に塗工し、熱風オーブンで90℃1分乾燥を行った。作成した擬似触媒層付き離型フィルムを10cm×10cmの大きさに裁断し熱風オーブンで150℃で5分間熱処理し擬似触媒層の状態を以下の基準で評価した。
○:擬似触媒層にほとんどひび割れがなく良好
△:擬似触媒層の一部(全面積の10%未満)にひび割れなどの外観不良が見られた
×:擬似触媒層の大部分(全面積の10%以上)にひび割れなどの外観不良が見られた
下記のアニール条件でアニールした幅500mm、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(品番E5100、東洋紡社製を使用)の非コロナ処理面に、蒸着源として3~5mm程度の大きさの粒子状のAl2O3(純度99.5%)とSiO2(純度99.9%)を用いて、電子ビーム蒸着法で、酸化アルミニウム・酸化硅素系薄膜の形成を行った。蒸着材料は、混合せずに、ハース内をカーボン板で2つに仕切り、加熱源として一台の電子銃(以下EB銃と称する)を用い、Al2O3とSiO2のそれぞれを時分割で加熱した。その時のEB銃の加速電圧、エミッション電流、Al2O3とSiO2への加熱比、フィルム送り速度は表2に示した条件で10nm厚の膜を作った。チルロールの冷却温度は、-10℃で行った。
・アニール条件
乾燥炉内張力:40N/m(単位は幅1mあたりの張力(N))
乾燥温度:170℃
乾燥時間:9秒
無機薄膜層の形成方法を表1に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様に離型フィルムを作成した。
使用する厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムをコスモシャイン(商標登録)品番A4300(東洋紡社製)に変更した以外は実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
コスモシャイン(登録商標)品番A4300は、両面に易接着層がコーティングされた平滑性の高いフィルムである。このフィルムを使用して作成した離型フィルムの離型面も平滑性は高くなり、触媒層などを成型してもピンホールなどの欠点が発生しにくくなる。
無機薄膜層を形成する前に、アニール加工しない以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
無機薄膜層を形成する前に、以下の条件でアニール加工した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
・アニール条件
乾燥炉内張力:40N/m(単位は幅1mあたりの張力(N))
乾燥温度:130℃
乾燥時間:9秒
無機薄膜層を形成する前に、以下の条件でアニール加工した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
・アニール条件
乾燥炉内張力:40N/m(単位は幅1mあたりの張力(N))
乾燥温度:130℃
乾燥時間:5秒
無機薄膜層として、プラズマCVD方法を用いて膜厚10nmの酸化ケイ素膜を形成した以外は、実施例1と同様にして離型フィルムを作成した。
成膜条件
成膜圧力:3.0×10-2hPa
導入ガス:ヘキサメチルジシロキサン:アルゴン:酸素=0.9:0.9:2.7(単
位:slm)
印加電力:AC40kHz、8kW
巻き取り速度:150m/分
真空チャンバー内の真空度:2~6×10-6hPa
蒸着チャンバー内の真空度:2~5×10-3hPa
得られた離型フィルムは、油性ペンを弾くほどの撥水性を有しており、転写性は良好であったが、塗工性は疑似触媒層用スラリーにハジキが発生し少し悪かった。
無機薄膜層を設けていない厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名E5100、東洋紡社製)の非コロナ処理面を用いた。
環状ポリオレフィン系樹脂(TOPAS(登録商標)6017S ポリプラスチックス社製)2質量部をトルエン78質量部に溶解させ、さらにテトラヒドロフラン20質量部を加えて塗布液1を調整した。幅500mm、厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名E5100、東洋紡社製)のコロナ処理面に、塗布液1を乾燥後の膜厚が100nmになるようにグラビアコーターで塗工し140℃で30秒間乾燥させて離型フィルムを作成した。
厚み50μmのPTFEシート(ニチアス社製 ナフロン(登録商標)PTFEシート TOMBO No.9000)を用いて評価を行った。
Claims (4)
- ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を有する離型フィルムであって、
前記離型層が無機薄膜層であり、
前記離型層表面の表面自由エネルギーが60mJ/m 2 以上であることを特徴とする
固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルム。 - 離型フィルムは、160℃で30分処理したときの収縮率が1.0%以下であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルム。
- 無機薄膜層がシリカおよび/またはアルミナからなることを特徴とする請求項1または2に記載の固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルム。
- 離型層表面の表面粗さ(Sa)が50nm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池部材成型用離型フィルム。
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