以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
図1は本発明の実施の形態における医療用チューブの側面図であり、図2は図1に示した医療用チューブに第1ガイドワイヤおよび第2ガイドワイヤを挿通した状態での遠位端部の側面図であり、図3は図2に示した医療用チューブの軸方向の断面図であり、図4は図2に示した医療用チューブのIV-IV断面図であり、図5は図2に示した医療用チューブのV-V断面図である。まず、図1~図5を参照して、本発明の実施の形態における医療用チューブ1の全体構成について説明する。
医療用チューブ1は、近位側と遠位側を有するものであり、第1ガイドワイヤ11および第2ガイドワイヤ12を生体内管腔の本幹および側枝にそれぞれ配置するものである。医療用チューブ1の具体例としては、カテーテル等が挙げられる。
医療用チューブ1は、第1ガイドワイヤ11が挿通される第1チューブ21と、第2ガイドワイヤ12が挿通される第2チューブ22と、内腔に第1チューブ21と第2チューブ22とが配置されている外側チューブ30と、第2チューブ22の外周に配置されている筒状部材40とを有している。
本発明において、近位側とは外側チューブ30の延在方向に対して使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対側、即ち処置対象側を指す。また、外側チューブ30の延在方向を軸方向と称する。径方向とは外側チューブ30の半径方向を指し、径方向において内方とは外側チューブ30の軸中心側に向かう方向を指し、径方向において外方とは内方と反対側に向かう方向を指す。なお、図1~図4において、図の右側が近位側であり、図の左側が遠位側である。
医療用チューブ1は、医療用チューブ1の遠位端よりも近位側であり、医療用チューブ1の近位端よりも遠位側に、第1チューブ21の内腔と医療用チューブ1の外方とを連通させる開口部である遠位側ポート4を有し、ハブ2が第2チューブ22の内腔と医療用チューブ1の外方とを連通させる開口部である近位側ポート5を有していることが好ましい。図示していないが、ハブ2は内腔を有しており、ハブ2の内腔と第2チューブ22の内腔である第2ルーメンL2とが連通している。そのため、ハブ2の近位側ポート5からハブ2の内腔に第2ガイドワイヤ12を挿通し、第2チューブ22の第2ルーメンL2に第2ガイドワイヤ12を送り込む。チューブの長さや外径、内径を以下のように例示することができる。例えば、第1チューブ21の長さは、300mm、内径は0.4mm、第2チューブ22の長さは、1450mm、内径は0.4mm、医療用チューブ1全体の長さは1500mm、外径は1mmである。
図1に示すように、医療用チューブ1は、近位端部にハブ2を有していることが好ましい。ハブ2は、外側チューブ30の近位端部に接続されている。医療用チューブ1がハブ2を有する構成であることにより、例えば、第1ガイドワイヤ11と第2ガイドワイヤ12を生体内管腔の目的部位に配置した後に医療用チューブ1を抜去する際において、ハブ2を把持して医療用チューブ1を抜去することができ、医療用チューブ1の操作性を向上させることができる。ハブ2に、第2ガイドワイヤ12を出し入れするポートを設けることにより、ハブ2を把持しつつ第2ガイドワイヤ12を操作することができ、医療用チューブ1の操作性を向上させることができる。
第1チューブ21は、外側チューブ30の遠位側から近位側に至る途中までの部分に配置され、第1ガイドワイヤ11を挿通する、つまり、第1ガイドワイヤ11は、遠位側ポート4から医療用チューブ1の遠位端部まで、医療用チューブ1内に挿通されている、所謂ラピッドエクスチェンジ型のチューブであることが好ましい。ラピッドエクスチェンジ型のチューブは、チューブの遠位端部から近位端部までガイドワイヤが挿通されている、所謂オーバーザワイヤ型のチューブと比べて、チューブの全長に対するガイドワイヤの挿通量を少なくすることができる。その結果、生体内管腔の目的部位に配置したガイドワイヤを残してチューブを体外に引き出し、チューブを交換して再び生体内管腔に挿入する操作が容易であるという利点がある。そのため、第1チューブ21がラピッドエクスチェンジ型に構成されていることにより、生体内管腔の第1ガイドワイヤ11に沿って医療用チューブ1を送り込む際に、医療用チューブ1の硬度や外径等が目的部位の生体内管腔に適していなかった等の場合に、医療用チューブ1を迅速に交換することができる。
第2チューブ22は、外側チューブ30の遠位側から近位側にわたって配置され、第2ガイドワイヤ12を挿通する、つまり、第2ガイドワイヤ12は、近位側ポート5から医療用チューブ1の遠位端部まで挿通されている、所謂オーバーザワイヤ型のチューブであることが好ましい。オーバーザワイヤ型のチューブは、チューブの遠位端部から近位端部にわたってガイドワイヤが挿通するため、術者がガイドワイヤを操作しやすく、ガイドワイヤを生体内管腔に挿通させる操作が容易であるという利点がある。また、術者の手元にあるチューブの近位端部にガイドワイヤを挿入するため、ガイドワイヤの交換が容易であるという利点も有している。そのため、第2チューブ22がオーバーザワイヤ型に構成されていることにより、目的部位に医療用チューブ1を配置し、生体内管腔に第2ガイドワイヤ12を配置する際に、第2ガイドワイヤ12を目的部位に配置しやすくなる。また、病変部が石灰化しており、硬度の低い第2ガイドワイヤ12では目的部位へ配置できなかった等の場合に、病変部の状態に適した第2ガイドワイヤ12に交換することが容易となる。
図3に示すように、第1チューブ21の遠位端21aは、第2チューブ22の遠位端22aよりも遠位側に配置されている。生体内管腔に配置されている第1ガイドワイヤ11を第1チューブ21に挿通するが、この際、第1ガイドワイヤ11の近位端を第1チューブ21の遠位端21aに挿入する。そのため、第1チューブ21の遠位端21aが第2チューブ22の遠位端22aよりも遠位側に配置されていることにより、生体内管腔に配置している第1ガイドワイヤ11の遠位端を第1チューブ21の遠位端21aに入れやすく、第1ガイドワイヤ11を第1チューブ21に挿通しやすくなる。また、第2チューブ22の遠位端22aが第1チューブ21の遠位端21aよりも近位側にあることにより、生体内管腔に配置されている第1ガイドワイヤ11を第1チューブ21に挿通すると、第2チューブ22が第1チューブ21に挿通されている第1ガイドワイヤ11によって支えられるため、第2ガイドワイヤ12を第2チューブ22に挿通することや、生体内管腔に送り込むことが容易となる。
なお、これらの効果を十分に発揮するため、第1ガイドワイヤ11は、生体内管腔の本幹に配置されるガイドワイヤであり、第2ガイドワイヤ12は、生体内管腔の側枝に配置されるガイドワイヤであることが好ましい。
図3および図4に示すように、筒状部材40は第2チューブ22の外周に配置されているが、第1チューブ21の外周には筒状部材40を有しない。第1チューブ21および第2チューブ22のそれぞれの内腔の潰れは、医療用チューブ1がより細く、より柔らかくなる遠位端部において発生しやすい。第2チューブ22は、近位端から第2ガイドワイヤ12を生体内管腔に送り込むため、第2チューブ22の遠位端部に内腔の潰れが発生すると、第2チューブ22の遠位端部を第2ガイドワイヤ12が通過する際に抵抗が大きくなって生体内管腔に第2ガイドワイヤ12を配置する工程に時間がかかったり、生体内管腔に第2ガイドワイヤ12を配置できなくなったりすることがある。一方、第1チューブ21は、生体内管腔に配置されている第1ガイドワイヤ11を第1チューブ21の遠位端21aから挿入するため、第1チューブ21の内腔が潰れていたとしても第1ガイドワイヤ11の挿通への影響はさほど大きくない。また、第1チューブ21の外周に筒状部材40を配置することにより、医療用チューブ1の遠位端部の柔軟性が低くなり、湾曲部が存在している生体内管腔へ医療用チューブ1を送り込むことが困難となるおそれがある。そのため、第2チューブ22の外周に筒状部材40が配置されており、第1チューブ21の外周には筒状部材40が配置されていない構成とする必要がある。
図3に示すように、筒状部材40の軸方向の中点P1は、第1チューブ21の近位端21bと第2チューブ22の遠位端22aの中点P2よりも遠位側にある。筒状部材40がこのような位置に配置されていることにより、内腔が特に潰れやすい第2チューブ22の遠位端部を十分に補強することができる。
第1チューブ21は、可撓性を有する管状構造であり、第1ガイドワイヤ11を挿通する第1ルーメンL1を有している。第1チューブ21の軸方向に直交する断面の形状は、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。第1チューブ21の軸方向に直交する断面の形状は、中でも、円形であることが好ましい。第1チューブ21がこのように構成されていることにより、第1チューブ21の外径を小さくすることができ、第1チューブ21の外方に配置されている外側チューブ30の内径を小さくすることができる。その結果、外側チューブ30の外径も小さくすることができ、低侵襲の医療用チューブ1とすることができる。
第1チューブ21を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。第1チューブ21は、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。第1チューブ21が複層構造である場合、各層を形成する材料は、同一であってもよく、異なる材料であってもよい。第1チューブ21を構成する材料は、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂であることが好ましく、ナイロンまたはPTFEであることがより好ましい。第1チューブ21がこのように構成されていることにより、第1ガイドワイヤ11の挿通性を向上させることができる。
第1チューブ21、第2チューブ22共にその内径は、内腔に挿通されるガイドワイヤの外径の1.05倍以上であることが好ましく、1.5倍以下であることが好ましい。チューブの内径を適切に選択することにより、ガイドワイヤを挿通しやすく、チューブの外径が過度に大きくなることを防いで外側チューブ30の外径も小さいカテーテル等の医療用チューブ1を設計することができる。そのため、低侵襲性を高めた医療用チューブ1とすることができる。なお、チューブの軸方向に直交する断面の内腔の形状が楕円形または多角形である場合、チューブの内径は、チューブの軸方向に直交する断面の内腔の形状の長辺を指す。
第1チューブ21、第2チューブ22の肉厚は、10μm以上であることが好ましく、150μm以下であることが好ましい。チューブの肉厚を適切に選択することにより、チューブの破損を防ぎ、柔軟性の高いカテーテル等の医療用チューブ1を設計することができ、医療用チューブ1を生体内管腔の湾曲部へ送り込むことが容易となる。
第2チューブ22は、第1チューブ21と同様に、可撓性を有する管状構造であり、第2ガイドワイヤ12を挿通する第2ルーメンL2を有している。第2チューブ22の軸方向に直交する断面の形状は、円形、楕円形、多角形等が挙げられるが、中でも、円形であることが好ましい。第2チューブ22がこのように構成されていることにより、第2チューブ22の外径を小さくすることができ、第2チューブ22の外方に配置されている外側チューブ30の内径を小さくすることができる。そのため、外側チューブ30の外径も小さくすることができ、医療用チューブ1の低侵襲性を高めることができる。
第2チューブ22を構成する材料は、第1チューブ21を構成する材料の例として挙げたものを用いることができ、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂であることが好ましく、ナイロンまたはPTFEであることがより好ましい。第2チューブ22を構成する材料は、第1チューブ21を構成する材料と同じであってもよいが、第1チューブ21を構成する材料よりもショア硬度が大きいことが好ましい。第2チューブ22がこのように構成されていることにより、第2チューブ22の内腔を潰れにくくすることができる。ショア硬度は、ISO868:2003 プラスチック・デュロメータ硬さ試験方法に基づき計測することができる。また、第2チューブ22も、単層構造であってもよく、複層構造であってもよい。第2チューブ22が複層構造である場合、各層を形成する材料は、同一であってもよく、異なる材料であってもよい。
第2チューブ22の近位端部の内径は、第2チューブ22の遠位端部の内径よりも大きいことが好ましい。第2チューブ22をこのように構成することにより、医療用チューブ1の近位側ポート5から第2チューブ22の第2ルーメンL2へ第2ガイドワイヤ12を挿通しやすくなる。
第1ガイドワイヤ11および第2ガイドワイヤ12の遠位端部は、屈曲部を有していることが好ましい。第1ガイドワイヤ11および第2ガイドワイヤ12の遠位端部が屈曲部を有していることにより、生体内管腔の選択性を高めることができる。具体的には、生体内管腔の分岐部においてガイドワイヤを長軸方向に回転させることにより、ガイドワイヤを挿通したい方の生体内管腔にガイドワイヤの遠位端を向けることができ、目的部位へのガイドワイヤの配置が容易となる。屈曲部は1箇所であってもよく、例えば2箇所等の複数箇所であってもよい。
外側チューブ30は、可撓性を有する管状構造であり、第1チューブ21および第2チューブ22を配置する内腔である外側チューブルーメンL3を有している。外側チューブ30の軸方向に直交する断面の形状は、円形、楕円形、多角形等が挙げられる。外側チューブ30の軸方向に直交する断面の形状は、中でも、楕円形であることが好ましい。外側チューブ30がこのように構成されていることにより、楕円の長軸方向よりも短軸方向の方が曲がりやすくなる。そのため、楕円の長軸に沿って第1チューブ21と第2チューブ22を配置することにより、医療用チューブ1が生体内管腔の屈曲部を通過するときに外側チューブ30が曲がっても、第1チューブ21と第2チューブ22の内腔は潰れにくくすることができる。また、外側チューブ30の軸方向に直交する断面の形状が楕円形であることにより、ガイディングカテーテル内に医療用チューブ1を挿通した状態で、楕円の短軸方向において、外側チューブ30の外壁とガイディングカテーテルの内壁との間の隙間を大きくすることができる。そのため、ガイディングカテーテル内に医療用チューブ1だけでなく、超音波によって血管内の状態を確認する血管内超音波法(intravascular ultrasound:IVUS)に用いるIVUSカテーテル等の他のデバイスを挿通することが可能となる。
外側チューブ30を構成する材料としては、第1チューブ21を構成する材料の例として挙げたものを用いることができ、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂であることが好ましく、ナイロンまたはPTFEであることがより好ましい。外側チューブ30がこのように構成されていることにより、生体内管腔への挿通性がよい医療用チューブ1とすることができる。また、外側チューブ30は、単層構造であっても複層構造であってもよい。外側チューブ30が複層構造である場合、各層を形成する材料は、同一であってもよく、異なる材料であってもよい。例えば、樹脂チューブの中間層として金属編組を用いた構造を用いることができる。なお、外側チューブ30を構成する材料は、第1チューブ21と第2チューブ22の少なくとも一方を構成する材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。
外側チューブ30の遠位端部は、細径に形成されていることが好ましい。外側チューブ30の遠位端部の外径が他の部分よりも小さく形成されていることにより、狭窄が発生している生体内管腔であっても医療用チューブ1が通過しやすくなり、医療用チューブ1の生体内管腔への挿通性を高めることができる。
遠位側ポート4よりも近位側の外側チューブ30の外径は、遠位側ポート4よりも遠位側の外側チューブ30の外径よりも大きい場合には、外側チューブ30の遠位側の剛性を高めることができ、医療用チューブ1のプッシャビリティを高めることができる。遠位側ポート4よりも遠位側の外側チューブ30の外径よりも小さい場合には、外側チューブ30の外壁とガイディングカテーテルの内壁との間の隙間を大きくすることができ、他のデバイスを挿通しやすくできる。
外側チューブ30の肉厚は、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましい。外側チューブ30の肉厚の下限値をこのように設定することにより、第1ガイドワイヤ11や第2ガイドワイヤ12の挿通によって外側チューブ30が破損することを防ぎ、強度の高い外側チューブ30とすることができる。また、外側チューブ30の肉厚は、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。外側チューブ30の肉厚の上限値をこのように設定することにより、外側チューブ30の外径が過度に大きくなることを防ぎ、低侵襲である医療用チューブ1とすることができる。外側チューブ30の肉厚は、近位側から遠位側に向かって徐々に薄くなることが好ましい。
外側チューブ30は、近位端から遠位端まで1つのチューブであってもよいが、複数のチューブを接合したものであることが好ましい。外側チューブ30がこのように構成されていることにより、外側チューブ30の軸方向において曲げ剛性を変えることができる。例えば、遠位側を構成する外側チューブ30の材料の硬度を、近位側を構成する外側チューブ30の材料の硬度よりも低くすることにより、遠位側は曲げ剛性が低く、近位側は曲げ剛性の高い医療用チューブ1とすることができる。医療用チューブ1の遠位側の曲げ剛性が低いことにより、生体内管腔の湾曲部の通過性を高めることができる。また、医療用チューブ1の近位側の曲げ剛性が高いことにより、プッシャビリティの高い医療用チューブ1とすることができる。
筒状部材40は、第2チューブ22の内腔を潰れにくくするため、第2チューブ22の外周に配置されている。図4に示すように、筒状部材40の軸方向に直交する断面の形状は、第2チューブ22の外周に沿う形であることが好ましく、例えば、円形状、C字型、楕円形状、多角形状等が挙げられる。筒状部材40の軸方向に直交する断面の形状は、中でも、円形であることが好ましい。筒状部材40がこのように構成されていることにより、第2チューブ22の外周を十分に補強することができ、外側チューブ30に外方から荷重が加わった場合に、外側チューブ30の内腔に配置されている第2チューブ22の内腔が潰れることを防止することができる。
筒状部材40を構成する材料は、第1チューブ21、第2チューブ22、および外側チューブ30よりもショア硬度の高い合成樹脂、金属等が挙げられる。医療用チューブ1の生体内管腔の湾曲部への通過性を高めるため、筒状部材40は第2チューブ22のうねりや屈曲等の動きに追従する必要がある。そのため、筒状部材40は、金属線材を有していることが好ましい。筒状部材40が金属線材を有している構成の具体例としては、金属線材を筒状に巻いたもの、金属線材を編んで筒状に構成したもの等が挙げられる。筒状部材40が金属線材を有していることにより、筒状部材40に柔軟性を付与することができる。そのため、筒状部材40が第2チューブ22を補強して第2チューブ22の内腔の潰れを防止しつつ、第2チューブ22のうねりや屈曲等の動きに筒状部材40が追従することができる。
筒状部材40を構成する金属線材の素線の形状は、例えば、丸線、平線等が挙げられる。素線を構成する材料は、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。筒状部材40を構成する素線は、中でも、ステンレス鋼の丸線であることが好ましい。筒状部材40がこのように構成されていることにより、第2チューブ22の補強性が高く、第2チューブ22の動きへの追従性も高い筒状部材40とすることができる。
筒状部材40を構成する材料が合成樹脂である場合、筒状部材40を構成する材料がX線不透過物質を含有していることが好ましい。筒状部材40がこのように構成されていることにより、筒状部材40をX線透過によって確認できるようになる。X線不透過物質としては、例えば、鉛、バリウム、ヨウ素、タングステン、金、白金、イリジウム、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金等が挙げられる。筒状部材40に用いられるX線不透過物質は、中でも、白金であることが好ましい。筒状部材40がこのように構成されていることにより、X線透過での筒状部材40の視認性が向上できる。
図3に示すように、筒状部材40の遠位端40aは、第2チューブ22の遠位端22aよりも所定の距離をあけて近位側にあることが好ましい。筒状部材40がこのように配置されていることにより、X線透過によって筒状部材40を確認することによって、第2ガイドワイヤ12の出口である第2チューブ22の遠位端部を視認することができる。そのため、第2ガイドワイヤ12を生体内管腔に配置しやすくなる。
筒状部材40の遠位端部は、第2チューブ22に固定されていることが好ましい。筒状部材40がこのように第2チューブ22に設けられていることにより、医療用チューブ1の遠位端部が生体内管腔の湾曲部を通過して、第2チューブ22にうねりや屈曲が発生しても、筒状部材40が軸方向に移動しにくく、第2チューブ22の補強の効果を発揮することができる。
筒状部材40を第2チューブ22へ固定する方法としては、接着剤による接着、熱や超音波による溶着、別部材を筒状部材40の外周に配置してかしめて固定する等の方法が挙げられる。第2チューブ22への筒状部材40の固定は、接着であることが好ましい。第2チューブ22への筒状部材40の固定がこのような方法であることにより、筒状部材40を第2チューブ22へ容易に強固に固定することができる。
筒状部材40は、第2チューブ22に複数設けられていてもよい。筒状部材40が第2チューブ22へ複数設けられている場合、第2チューブ22の近位側に設けられている筒状部材40の曲げ剛性は、第2チューブ22の遠位側に設けられている筒状部材40の曲げ剛性よりも高いことが好ましい。つまり、筒状部材40は、第2チューブ22に複数設けられており、第2チューブ22の近位側に設けられている筒状部材40の曲げ剛性は、第2チューブ22の遠位側に設けられている筒状部材40の曲げ剛性よりも高いことが好ましい。筒状部材40がこのように構成されていることにより、医療用チューブ1の遠位側を近位側よりも柔軟にすることができる。このことにより、医療用チューブ1を生体内管腔の湾曲部へ送り込むことが容易となる。
筒状部材40が複数であり、第2チューブ22の近位側に設けられている筒状部材40の曲げ剛性を、第2チューブ22の遠位側に設けられている筒状部材40の曲げ剛性よりも高くするには、例えば、近位側に設けられている筒状部材40を構成する材料を、遠位側に設けられている筒状部材40を構成する材料よりも硬度の高いものとする、近位側に設けられている筒状部材40を構成する金属線材の密度を、遠位側に設けられている筒状部材40を構成する金属線材の密度よりも高くする等の方法が挙げられる。中でも、第2チューブ22の遠位側と近位側とで、筒状部材40を構成する金属線材の密度を変えることが好ましい。筒状部材40をこのように構成することにより、容易に近位側に設けられている筒状部材40の曲げ剛性を遠位側に設けられている筒状部材40の曲げ剛性よりも高くすることができる。
図4に示すように、外側チューブ30の軸方向に直交する断面において、筒状部材40の内壁と第2チューブ22の外壁との間に間隙があることが好ましい。医療用チューブ1がこのように構成されていることにより、筒状部材40が第2チューブ22の補強を行いながらも、筒状部材40が第2チューブ22の動きに追従しやすくなる。そのため、破損が起こりにくく、かつ生体内管腔の湾曲部への通過性のよい医療用チューブ1となる。
図6に示すように、筒状部材40は、コイル40Aであることが好ましい。つまり、筒状部材40は、金属線材を筒状に巻回したコイル40Aであることが好ましい。筒状部材40がコイル40Aであることにより、筒状部材40による第2チューブ22の補強性と第2チューブ22の動きへの追従性の両方をより高めることができる。
コイル40Aの素線厚みT1は、0.01mm以上であることが好ましく、0.02mm以上であることがより好ましく、0.03mm以上であることがさらに好ましく、0.04mm以上であることが特に好ましい。コイル40Aの素線厚みT1の下限値をこのように設定することにより、コイル40Aが第2チューブ22を十分に補強することができ、第2チューブ22の内腔の潰れを防ぐことができる。また、コイル40Aの素線厚みT1は、0.2mm以下であることが好ましく、0.15mm以下であることがより好ましく、0.08mm以下であることがさらに好ましく、0.06mm以下であることが特に好ましい。コイル40Aの素線厚みT1の上限値をこのように設定することにより、コイル40Aが第2チューブ22のうねりや屈曲等の動きに沿いやすくなり、生体内管腔の湾曲部への通過性のよい医療用チューブ1とすることができる。
筒状部材40の長軸に平行な側面視において、コイル40Aの素線が筒状部材40の長軸に対し、40度以上の鋭角で傾斜する傾斜角度θ1、θ2を有していることが好ましい。コイル40Aの素線が筒状部材40の長軸に対し傾斜する傾斜角度θ1、θ2は、40度以上であることが好ましいが、42度以上であることがより好ましく、45度以上であることがさらに好ましい。コイル40Aの素線が筒状部材40の長軸に対し傾斜する傾斜角度θ1、θ2の下限値をこのように設定することにより、コイル40Aの柔軟性を高めることができ、第2チューブ22の動きに追従しやすい筒状部材40とすることができる。また、コイル40Aの素線が筒状部材40の長軸に対し傾斜する傾斜角度θ1、θ2は、90度未満であることが好ましいが、89.3度以下であることがより好ましく、80度以下であることがさらに好ましく、70度以下であることが特に好ましく、60度以下であることが最も好ましい。コイル40Aの素線が筒状部材40の長軸に対し傾斜する傾斜角度θ1、θ2の上限値をこのように設定することにより、筒状部材40の第2チューブ22への補強性能を高めることができ、第2チューブ22の内腔の潰れをより効果的に防止することができる。
つまり、コイル40Aは、素線厚みT1が0.01mm以上0.2mm以下であり、筒状部材40の長軸に平行な側面視において、コイル40Aの素線が筒状部材40の長軸に対し、40度以上の鋭角で傾斜する傾斜角度θ1、θ2を有することが好ましい。
コイル40Aは、第1部分41と、第1部分41よりも遠位側にある第2部分42とを有し、筒状部材40の長軸に平行な側面視において、コイル40Aの第2部分42における素線が筒状部材40の長軸に対して傾斜する傾斜角度θ2は、コイル40Aの第1部分41における素線が筒状部材40の長軸に対して傾斜する傾斜角度θ1よりも小さいことが好ましい。コイル40Aがこのように構成されていることにより、コイル40Aの第1部分41は素線が密に存在し、第1部分41よりも遠位側である第2部分42は素線が疎となる。素線が疎である部分は、素線が密である部分よりも曲げ剛性が低くなり、柔軟性が高まる。そのため、遠位側の柔軟性が近位側よりも高い筒状部材40とすることができ、生体内管腔の湾曲部への通過性がよい医療用チューブ1とすることができる。
コイル40Aの第2部分42における素線が筒状部材40の長軸に対して傾斜する傾斜角度θ2は、コイル40Aの第1部分41における素線が筒状部材40の長軸に対して傾斜する傾斜角度θ1の95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることがさらに好ましい。コイル40Aの第2部分42における素線が筒状部材40の長軸に対して傾斜する傾斜角度θ2と、コイル40Aの第1部分41における素線が筒状部材40の長軸に対して傾斜する傾斜角度θ1との比の上限値をこのように設定することにより、第2チューブ22の補強性と第2チューブ22の動きへの追従性を両立した筒状部材40となる。また、コイル40Aの第2部分42における素線が筒状部材40の長軸に対して傾斜する傾斜角度θ2と、コイル40Aの第1部分41における素線が筒状部材40の長軸に対して傾斜する傾斜角度θ1との比の下限値は特に限定されないが、例えば、20%以上、30%以上、40%以上とすることができる。
外側チューブ30の軸方向に直交する断面において、外側チューブ30の内壁、第1チューブ21の外壁、および第2チューブ22の外壁の間に間隙があることが好ましい。つまり、外側チューブ30は、第1チューブ21および第2チューブ22との間に管間空間を有していることが好ましい。医療用チューブ1がこのように構成されていることにより、湾曲部が存在している生体内管腔に配置した状態において、第2チューブ22の第2ルーメンL2を第2ガイドワイヤ12が通過する際に、第2ガイドワイヤ12の先端が第2チューブ22の内壁に干渉しても、第2チューブ22が変形することができる。そのため、第2ガイドワイヤ12の先端が第2チューブ22の内壁を突き破り、医療用チューブ1の破損を起こりにくくすることができる。
外側チューブ30の第1チューブ21の近位端21bよりも近位側に遠位側ポート4が設けられていることが好ましい。遠位側ポート4がこのように設けられていることにより、第1チューブ21に第1ガイドワイヤ11を円滑に挿通することができる。
医療用チューブ1は、X線不透過マーカー50を有していてもよい。X線不透過マーカー50は、医療用チューブ1の遠位端部の外方に設けられていることが好ましい。X線不透過マーカー50がこのような位置に配置されていることにより、医療用チューブ1の遠位端部をX線透過によって確認することが容易となり、手技が行いやすくなる。
X線不透過マーカー50の形状は、筒状であることが好ましく、円筒状、多角筒状、筒にスリットが入った断面C字の形状、線材を巻回したコイル形状等が挙げられる。X線不透過マーカー50は、中でも、円筒状であることが好ましい。X線不透過マーカー50がこのように構成されていることにより、X線透過によってX線不透過マーカー50を確認しやすくなる。
X線不透過マーカー50を構成する材料は、例えば、鉛、バリウム、ヨウ素、タングステン、金、白金、イリジウム、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金等のX線不透過物質を用いることができる。X線不透過物質は、中でも、白金であることが好ましい。X線不透過マーカー50がこのように構成されていることにより、X線の造影性が高いX線不透過マーカー50とすることができる。
図3に示すように、医療用チューブ1はX線不透過第1マーカー51とX線不透過第2マーカー52とを有しており、第1チューブ21の遠位端部にX線不透過第1マーカー51が配置されており、第2チューブ22の遠位端部にX線不透過第2マーカー52が配置されており、X線不透過第1マーカー51の近位端51bとX線不透過第2マーカー52の遠位端52aとの間に、第2チューブ22の遠位側開口部があることが好ましい。X線不透過第1マーカー51とX線不透過第2マーカー52がこのように配置されていることにより、X線不透過第1マーカー51とX線不透過第2マーカー52との間に第2ガイドワイヤ12の出口が存在することとなる。そのため、X線透過によって、第2ガイドワイヤ12の出口を確認することが可能となり、手技がより行いやすくなる。
医療用チューブ1が後述する先端チップ3を遠位端部に有している場合、X線不透過第1マーカー51は、先端チップ3の外周に配置されていてもよいが、先端チップ3の内周に配置されていることが好ましい。X線不透過第1マーカー51がこのように配置されていることにより、生体内管腔に医療用チューブ1を挿通する際に、X線不透過第1マーカー51が血管等の生体内管腔の内壁を傷つけにくくすることができる。
図示していないが、第2チューブ22の遠位側開口部の遠位側であり、第1チューブ21の遠位端21aよりも近位側において、第1チューブ21の外周の第2チューブ22側に、第1チューブ21の遠位側に向かうにつれて軸中心からの距離が大きくなる傾斜部を有していることが好ましい。第1チューブ21が傾斜部を有していることにより、第2ガイドワイヤ12が医療用チューブ1の延在方向とは異なる方向を向きやすくなり、生体内管腔の側枝に第2ガイドワイヤ12を配置しやすくなる。
筒状部材40の遠位端40aは、X線不透過第2マーカー52の遠位端52aよりも近位側にあることが好ましい。筒状部材40がこのような位置に配置されていることにより、筒状部材40が第2チューブ22の遠位側へ移動しにくくなる。
また、筒状部材40の遠位端40aは、X線不透過第2マーカー52によって、第2チューブ22に固定されていることも好ましい。筒状部材40の遠位端40aが第2チューブ22へこのように固定されていることにより、筒状部材40が第2チューブ22の遠位側へ移動することを防ぐ効果をさらに高めることができる。
図3および図5に示すように、外側チューブ30の内方であって、第1チューブ21および第2チューブ22の外方にワイヤ60が設けられていることが好ましい。ワイヤ60がこのように設けられていることにより、医療用チューブ1の曲げ剛性を高め、プッシャビリティを向上させることができる。
ワイヤ60の遠位端60aは、筒状部材40の近位端40bよりも近位側にあることが好ましい。つまり、外側チューブ30の内方であって、第1チューブ21および第2チューブ22の外方にワイヤ60が設けられており、ワイヤ60の遠位端60aは、筒状部材40の近位端40bよりも近位側にあることが好ましく、筒状部材40の長軸に平行な側面視において、ワイヤ60の遠位端60aと筒状部材40の近位端40bとは、間隙を有していることが好ましい。ワイヤ60がこのような位置に設けられていることにより、医療用チューブ1の遠位側の曲げ剛性を近位側の曲げ剛性よりも下げることができ、生体内管腔の湾曲部を通過させやすくなる。また、筒状部材40の近位端40bよりも遠位側にワイヤ60が存在しないことにより、筒状部材40の近位端40bよりも遠位側の外側チューブ30の外径を小さくすることができ、医療用チューブ1の生体内管腔の湾曲部への通過性を高めることができる。
ワイヤ60を構成する材料は、例えば、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金等の単線または撚線の金属線材、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等の繊維材料等が挙げられる。繊維材料は、モノフィラメントであっても、マルチフィラメントであってもよい。ワイヤ60を構成する材料は、中でも、金属線材であることが好ましく、ステンレスの線材であることがより好ましい。ワイヤ60がこのように構成されていることにより、医療用チューブ1の曲げ剛性を高めることができ、また、適度な柔軟性を付与することができる。
ワイヤ60の線径は、遠位端部と近位端部とで同じであってもよいが、遠位端部の線径の方が近位端部の線径よりも小さいことが好ましい。ワイヤ60がこのように構成されていることにより、医療用チューブ1のワイヤ60の遠位端部が配置されている部分の曲げ剛性を、ワイヤ60の近位端部が配置されている部分の曲げ剛性よりも低くすることができ、生体内管腔の湾曲部の通過性を高めることができる。
また、ワイヤ60は、近位端から遠位端にかけて線径が細くなるようなテーパー状の形状であることがより好ましい。ワイヤ60がこのように構成されていることにより、医療用チューブ1の軸方向における曲げ剛性の変化を滑らかにすることができ、医療用チューブ1を取り扱いやすくできる。
ワイヤ60は1本であってもよいが、複数設けられていることが好ましい。つまり、外側チューブ30の内方であって、第1チューブ21および第2チューブ22の外方にワイヤ60が複数設けられていることが好ましい。ワイヤ60が複数であることにより、医療用チューブ1の曲げ剛性をさらに高め、プッシャビリティのよい医療用チューブ1とすることができる。
ワイヤ60が複数設けられている場合、筒状部材40の長軸に平行な側面視において、一方のワイヤ60の遠位端よりも遠位側に、他方のワイヤ60の遠位端が配置されていることが好ましい。複数のワイヤ60がこのように設けられていることにより、医療用チューブ1の軸方向において曲げ剛性を変えることができる。具体的には、医療用チューブ1の軸方向において、他方のワイヤ60のみが存在している部分と、この部分よりも近位側に一方のワイヤ60と他方のワイヤ60の両方が存在している部分がある。他方のワイヤ60のみが存在している部分は、一方のワイヤ60と他方のワイヤ60の両方が存在している部分よりも曲げ剛性を低くすることができる。そのため、医療用チューブ1の遠位側の曲げ剛性を近位側よりも低くすることができ、生体内管腔の湾曲部を通過しやすい医療用チューブ1とすることができる。
図1~図2に示すように、医療用チューブ1の遠位端部に先端チップ3を有していることが好ましい。医療用チューブ1が先端チップ3を有することにより、生体内管腔の狭窄部を医療用チューブ1が通過しやすくなる。医療用チューブ1の遠位端部に先端チップ3がある構成とするためには、例えば、図3に示すように、第1チューブ21の遠位端部の外周に先端チップ3を配置する等すればよい。
先端チップ3は、筒状の形状であることが好ましい。先端チップ3の軸方向に直交する断面の形状は、例えば、円形状、C字型、楕円形状、多角形状等が挙げられる。先端チップ3の遠位端部の外径は、先端チップ3の近位端部の外径よりも小さいことが好ましい。即ち、先端チップ3は、遠位端部から近位端部に向かってテーパー状の形状であることが好ましい。先端チップ3がこのように構成されていることにより、医療用チューブ1の生体内管腔への通過性を高めることができる。なお、先端チップ3の軸方向に直交する断面の形状が楕円形または多角形である場合、先端チップ3の内径は、先端チップ3の軸方向に直交する断面の形状の長辺を指す。
先端チップ3を構成する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、PET等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の合成樹脂等が挙げられる。先端チップ3を構成する材料は、中でも、ポリアミド系樹脂またはフッ素系樹脂であることが好ましく、ナイロンまたはPTFEであることがより好ましい。また、先端チップ3を構成する材料は、第1チューブ21を構成する材料よりもショア硬度が大きいことが好ましい。先端チップ3がこのように構成されていることにより、医療用チューブ1の生体内管腔への通過性を向上させることができる。
先端チップ3は、X線不透過物質を含んでいることが好ましい。X線不透過物質としては、例えば、鉛、バリウム、ヨウ素、タングステン、金、白金、イリジウム、ステンレス、チタン、コバルトクロム合金等が挙げられる。X線不透過物質は、中でも、白金であることが好ましい。先端チップ3がこのように構成されていることにより、X線透過によって先端チップ3を確認することができ、先端チップ3がX線不透過第1マーカー51を兼ねることができる。
本発明の一実施形態である医療用チューブの製造方法は、外側チューブの内腔に、第1チューブと第2チューブとを配置する第1工程と、第2チューブの遠位端部を外側チューブに固定する第2工程と、第2チューブの外周であって、第2チューブと外側チューブの固定部よりも近位側に筒状部材を配置する第3工程と、を含むことを特徴とする。
第1工程において、外側チューブの内腔に第1チューブと第2チューブとを配置する。この際、外側チューブの遠位端よりも遠位側に第2チューブの遠位端を配置し、第2チューブの遠位端よりも遠位側に第1チューブの遠位端を配置することが好ましい。第1工程をこのように行うことにより、第2ガイドワイヤの出る方向が医療用チューブの延在方向とは異なる方向となりやすい医療用チューブを製造することができる。
第2工程において、第2チューブの遠位端部を外側チューブに固定する。第2チューブの固定方法は、接着剤による接着、熱や超音波による溶着等が挙げられる。第2チューブの固定は、溶着により行うことが好ましい。外側チューブへの第2チューブの固定をこのような方法によって行うことにより、第2チューブの遠位端部と外側チューブとの強固な固定を容易に行うことができる。
第2工程の前に、第2チューブの内腔に芯材を配置する工程を行ってもよい。第2チューブの遠位端部と外側チューブとの固定を溶着によって行う際に、第2チューブの内腔に芯材を配置することによって、第2工程によって第2チューブの内腔が減少することを防止できる。
第3工程において、第2チューブの外周であって、第2チューブと外側チューブの固定部よりも近位側に筒状部材を配置する。この工程により、筒状部材が第2チューブの遠位端から脱落することを防止できる。
筒状部材は、コイルであることが好ましい。筒状部材にコイルを用いることにより、第2チューブの補強性と、第2チューブの動きへの追従性の両方を高めることができる。
第3工程の後、別の外側チューブの内腔に別の第1チューブと別の第2チューブを配置したものを準備し、外側チューブ同士、第1チューブ同士、および第2チューブ同士をそれぞれ接合する工程を行ってもよい。各チューブの接合は、溶着、接着等の方法によって行うことができるが、中でも溶着で行うことが好ましい。各チューブを溶着によって接合することにより、各チューブの接合強度を高めることができる。
以上のように、本発明の医療用チューブは、第1ガイドワイヤが挿通される第1チューブと、第2ガイドワイヤが挿通される第2チューブと、内腔に第1チューブと第2チューブとが配置されている外側チューブと、第2チューブの外周に配置されている筒状部材と、を有しており、第1チューブの遠位端は、第2チューブの遠位端よりも遠位側に配置され、筒状部材の軸方向の中点は、第1チューブの近位端と第2チューブの遠位端の中点よりも遠位側にあり、第1チューブの外周には筒状部材を有しないことを特徴とする。このような構成であることにより、第2のルーメンを構成するチューブが破損しにくく、また、生体内管腔において第2のルーメンを潰れにくくすることができる。