JP7059050B2 - 応力推定装置、応力推定方法およびプログラム - Google Patents

応力推定装置、応力推定方法およびプログラム Download PDF

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Description

本発明は、応力推定装置、応力推定方法およびプログラムに関する。
破面における凹凸の粗さから応力を推定するための技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、破面の凹凸の段差(破面における等高線の密集部分)に基づいて応力等の力学的数値を推定する方法が記載されている。特許文献1に記載の方法では、破面に任意の計測ラインを設定し、計測ライン上で破面の凹凸の段差の間隔を算出する。また、この方法では、破面の凹凸の段差の間隔と応力等の力学的数値との関係をデータベース化しておく。そして、この方法では、データベースに格納された関係に基づいて、段差の間隔の算出値から力学的数値を推定する。
国際公開第2011/099081号
特許文献1に記載の方法では、破面の凹凸の段差の間隔と応力等の力学的数値との関係をデータベース化しておく必要がある。このデータベースを構築するユーザの負担なしに応力を推定できることが好ましい。
本発明は、破面の凹凸の段差の間隔と応力との関係を示すデータベースを構築するユーザの負担なしに応力を推定することができる応力推定装置、応力推定方法およびプログラムを提供する。
本発明の第1の態様によれば、応力推定装置は、破面画像と負荷応力に相関する測定データとの組み合わせを学習用データとして機械学習を行う機械学習部と、前記機械学習部の学習結果に基づいて、破面画像から応力振幅を推定する応力振幅推定部と、複数の方法の各々で最大応力の確率分布を推定する確率分布推定部と、前記確率分布推定部が推定した確率分布の重ね合わせに基づいて最大応力を推定する最大応力推定部と、前記応力振幅と、前記最大応力とに基づいて負荷応力を推定する負荷応力推定部と、を備える。
前記機械学習部は、前記破面画像と破面の粗さを示すデータとの組み合わせを学習用データとして機械学習を行い、前記応力振幅推定部は、前記機械学習部の学習結果に基づいて、破面画像から破面の粗さを推定する前処理部と、前記破面の粗さに基づいて応力の振れの大きさを推定する推定実行部と、を備えるようにしてもよい。
前記重なり部分と元の確率分布との関係に基づいて、前記確率分布を有効とするか無効とするかを決定する有効性決定部を備えるようにしてもよい。
本発明の第2の態様によれば、応力推定方法は、破面画像と負荷応力に相関する測定データとの組み合わせを学習用データとして機械学習を行う機械学習ステップと、前記機械学習ステップでの学習結果に基づいて、破面画像から応力振幅を推定する応力振幅推定ステップと、複数の方法の各々で最大応力の確率分布を推定するステップと、推定した確率分布の重ね合わせに基づいて最大応力を推定するステップと、前記応力振幅と、前記最大応力とに基づいて負荷応力を推定するステップと、を含む。
本発明の第3の態様によれば、プログラムは、コンピュータに、破面画像と負荷応力に相関する測定データとの組み合わせを学習用データとして機械学習を行う機械学習ステップと、前記機械学習ステップでの学習結果に基づいて、破面画像から応力振幅を推定する応力振幅推定ステップと、複数の方法の各々で最大応力の確率分布を推定するステップと、推定した確率分布の重ね合わせに基づいて最大応力を推定するステップと、前記応力振幅と、前記最大応力とに基づいて負荷応力を推定するステップと、を実行させるためのプログラムである。
上記した応力推定装置、応力推定方法およびプログラムによれば、破面の凹凸の段差の間隔と応力との関係を示すデータベースを構築するユーザの負担なしに応力を推定することができる。
第一実施形態に係る応力推定システムの機能構成を示す概略ブロック図である。 負荷応力の例を示す図である。 第一実施形態に係るマイクロビッカース硬さ試験機920がビッカース硬さを測定する対象面の例を示す図である。 第一実施形態に係るマイクロビッカース硬さ試験機920によるビッカース硬さ測定位置の例を示す図である。 第一実施形態における応力推定装置100が機械学習を行う処理手順の例を示すフローチャートである。 第一実施形態における応力推定装置100が負荷応力の推定を行う処理手順の例を示すフローチャートである。 第二実施形態に係る応力推定装置の機能構成を示す概略ブロック図である。 第二実施形態における応力推定装置100が機械学習を行う処理手順の例を示すフローチャートである。 第二実施形態における応力推定装置100が負荷応力の推定を行う処理手順の例を示すフローチャートである。 第三実施形態に係る応力推定装置の機能構成を示す概略ブロック図である。 第三実施形態に係る最大応力の確率分布の例を示す図である。 第三実施形態での塑性領域の深さの検出例を示す図である。 応力拡大係数最大値と塑性領域の深さとの関係の例を示す図である。 第三実施形態にて応力拡大係数最大値の確率分布を求める例を示す図である。 第三実施形態における応力推定装置100が最大応力を決定する処理手順の例を示すフローチャートである。 第四実施形態に係る応力推定装置の機能構成を示す概略ブロック図である。 複数の最大応力の確率分布の例を示す図である。 第四実施形態における応力推定装置100が最大応力を決定する処理手順の例を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
<第一実施形態>
図1は、本発明の第一実施形態に係る応力推定システムの機能構成を示す概略ブロック図である。図1に示す構成にて、応力推定システム1は、応力推定装置100と、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)910と、マイクロビッカース(Micro Vickers)硬さ試験機920とを備える。応力推定装置100は、通信部110と、操作入力部120と、表示部130と、記憶部180と、制御部190とを備える。制御部190は、機械学習部191と、応力振幅推定部192と、最大応力推定部193と、負荷応力推定部194とを備える。
応力推定装置100は、破面(破断面)の状態から負荷応力を自動的に推定する。応力推定装置100は、例えばパソコン(Personal Computer;PC)またはワークステーション(Workstation)等のコンピュータを用いて構成される。
通信部110は、他の装置と通信を行う。例えば、通信部110は、操作入力部120が撮影した破面画像を画像データにて受信する。また、通信部110は、マイクロビッカース硬さ試験機920による試験結果データを受信する。また、後述する第三実施形態および第四実施形態では、通信部110は、EBSP解析装置911による解析結果データを受信する。
操作入力部120は、例えばキーボードおよびマウス等の入力デバイスを備え、ユーザ操作を受ける。例えば、操作入力部120は、負荷応力推定開始を指示するユーザ操作を受ける。
表示部130は、例えば液晶パネルまたはLED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)パネル等の表示画面を備え、各種画像を表示する。例えば、表示部130は、負荷応力の推定結果を表示する。
記憶部180は、各種データを記憶する。記憶部180は、応力推定装置100が備える記憶デバイスを用いて構成される。
制御部190は、応力推定装置100の各部を制御して各種処理を行う。制御部190は、応力推定装置100が備えるCPU(Central Processing Unit、中央処理装置)が記憶部180からプログラムを読み出して実行することで構成される。
機械学習部191は、破面画像と負荷応力に相関する測定データとの組み合わせを学習用データとして機械学習を行う。機械学習部191の学習対象は、負荷応力に換算可能ないろいろなデータとすることができる。
第一実施形態では、機械学習部191が、破面画像と負荷応力との測定データとが組み合わせされた学習用データを用いて機械学習を行い、破面画像の入力に対して負荷応力を出力するモデルを更新(チューニング)する場合を例に説明する。また、後述する第二実施形態では、機械学習部191が、破面画像と破面の粗さを示すデータとが組み合わせられた学習用データを用いて機械学習を行い、破面画像の入力に対して破面の粗さを出力するモデルをチューニングする場合を例に説明する。
機械学習部191の学習方式は特定のものに限定されない。例えば、機械学習部191がニューラルネットワークによる学習を行うようにしてもよいし、回帰木(Regression Tree)よる学習を行うようにしてもよい。また、機械学習部191が学習に用いるモデルも特定の形式のものに限定されず、学習方式に応じた形式のモデルを用いるようにすればよい。
応力振幅推定部192は、機械学習部191の学習結果に基づいて、破面画像から応力振幅を推定する。第一実施形態では、応力振幅推定部192は、機械学習部191による機械学習にて得られたモデルに破面画像を入力して、応力振幅を取得する。後述する第二形態では、応力振幅推定部192は、機械学習部191による機械学習にて得られたモデルに破面画像を入力して破面の粗さのデータを取得し、得られたデータに基づいて応力振幅を取得する。
最大応力推定部193は、最大応力を推定する。最大応力推定部193が最大応力を推定する方法は特定の方法に限定されない。例えば、最大応力推定部193がビッカース硬さに基づいて最大応力を推定するようにしてもよい。あるいは、最大応力推定部193が、EBSP(Electron Back Scatter Diffraction Patterns、EBSDとも称する)解析にて最大応力を推定するようにしてもよい。
本実施形態、および、後述する第二実施形態では、最大応力推定部193が、ビッカース硬さに基づいて最大応力を推定する場合を例に説明する。後述する第三実施形態および第四実施形態では、最大応力推定部193が、ビッカース硬さ、および、EBSP解析の各々に基づいて最大応力を推定する場合を例に説明する。
負荷応力推定部194は、応力振幅推定部192が推定した応力振幅と、最大応力推定部193が推定した最大応力とに基づいて負荷応力を推定する。
図2は、負荷応力の例を示す図である。図2のグラフの横軸は時刻を示し、縦軸は力の大きさを示す。線L11は負荷応力を示す。
幅D11は、応力振幅を示す。幅D12は、応力範囲を示す。幅D13は、最大応力を示す。
負荷応力推定部194は、例えば、応力振幅推定部192が推定した応力振幅(幅D11)、および、最大応力推定部193が推定した最大応力(幅D13)を、負荷応力の推定値として出力する。
なお、応力振幅推定部192が推定する応力振幅は、応力振幅を示すデータであればよい。例えば、応力振幅推定部192が、応力範囲(幅D12)を推定するようにしてもよい。
走査電子顕微鏡910は、応力推定対象となっている破面を電子線で走査しては破面の画像を生成する。走査電子顕微鏡910は、得られた破面の画像を画像データにて応力推定装置100へ送信する。
マイクロビッカース硬さ試験機920は、応力推定対象となっている破面におけるビッカース硬さを測定する。
図3は、マイクロビッカース硬さ試験機920がビッカース硬さを測定する対象面の例を示す図である。F11は破面を示す。F12は、ビッカース硬さ測定対象面を示す。ビッカース硬さ測定対象面F12は、破面F11に直交する面となっている。マイクロビッカース硬さ試験機920は、ビッカース硬さ測定対象面F12における硬さ分布を測定することで、破面F11から深さ方向における硬さ分布を測定する。
図4は、マイクロビッカース硬さ試験機920によるビッカース硬さ測定位置の例を示す図である。図4の例で、マイクロビッカース硬さ試験機920は、破面F12から深さ方向に幅pの間隔でビッカース硬さを測定していく。測定時の跡が互いに影響して測定精度が低下しないように、マイクロビッカース硬さ試験機920は、幅2pの間隔で設定された2列で交互にビッカース硬さを測定する。
最大応力推定部193は、マイクロビッカース硬さ試験機920による測定結果に基づいて硬化領域の深さを検出し、検出した深さに基づいて、最大応力を推定する。硬化領域の深さから最大応力を推定する方法として、公知の方法を用いることができる。
次に、図5および図6を参照して、第一実施形態における応力推定装置100の動作について説明する。
図5は、第一実施形態における応力推定装置100が機械学習を行う処理手順の例を示すフローチャートである。
図5の処理で、通信部110は、破面画像の画像データと負荷応力のデータとが組み合わせられた学習用データを他の装置から受信する(ステップS101)。
次に、応力振幅推定部192が、学習用データに含まれる破面画像から応力振幅を推定する(ステップS102)。応力振幅推定部192は、機械学習部191が学習中のモデルに破面画像の画像データを入力して応力振幅の推定値の出力を得る。
そして、機械学習部191は、応力振幅推定部192による応力振幅の推定値と、学習用データに含まれる応力振幅の測定値とを比較し(ステップS103)、比較結果に基づいてモデルを更新する(ステップS104)。機械学習部191がモデルを更新する方法として、学習方法に応じた公知の方法を用いることができる。
次に、制御部190は、ステップS101で得られた学習用データの全データについて処理を完了したか否かを判定する(ステップS105)。
処理を完了していないデータがあると判定した場合(ステップS105:NO)、ステップS102へ戻り、未処理のデータに対する処理を引き続き行う。
一方、ステップS105で全データについて処理を完了したと判定した場合(ステップS105:YES)、図5の処理を終了する。
図6は、第一実施形態における応力推定装置100が負荷応力の推定を行う処理手順の例を示すフローチャートである。
図6の処理で、通信部110は、走査電子顕微鏡910が撮影した破面画像を画像データにて取得する(ステップS111)。そして、応力振幅推定部192は、破面画像から応力振幅を推定する(ステップS112)。具体的には、応力振幅推定部192は、機械学習部191による機械学習にて得られたモデルに破面画像の画像データを入力して、応力振幅の推定値の出力を得る。
また、通信部110は、マイクロビッカース硬さ試験機920による破面におけるビッカース硬さの測定値データを取得する(ステップS121)。そして最大応力推定部193は、ビッカース硬さの測定値に基づいて最大応力を推定する(ステップS122)。具体的には、最大応力推定部193は、ビッカース硬さの測定値から硬化領域の深さを検出し、硬化領域の深さに基づいて最大応力を推定する。最大応力推定部193が、硬化領域の深さから最大応力を推定する方法として公知の方法を用いることができる。
ステップS112およびS122の処理完了の後、負荷応力推定部194は、ステップS112で得られた応力振幅の推定値と、ステップS122で得られた最大応力の推定値とに基づいて、負荷応力を推定する(ステップS131)。例えば、負荷応力推定部194は、応力振幅の推定値および最大応力の推定値を負荷応力の推定値として出力する。
ステップS131の後、図6の処理を終了する。
以上のように、機械学習部191は、破面画像と負荷応力に相関する測定データとの組み合わせを学習用データとして機械学習を行う。応力振幅推定部192は、機械学習部191の学習結果に基づいて、破面画像から応力振幅を推定する。
このように、機械学習部191が、破面画像と負荷応力との関係を機械学習にて取得することで、機械学習部191は、破面画像と負荷応力との関係を自動的にモデル化することができる。従って、応力推定装置100によれば、破面の凹凸の段差の間隔と応力との関係を示すデータベースを構築する必要がなく、この点でユーザの負担なしに応力を推定することができる。
また、最大応力推定部193は、最大応力を推定する。負荷応力推定部194は、応力振幅と、最大応力とに基づいて負荷応力を推定する。
これにより、応力推定装置100では、破面画像の画像データと、破面における硬さ推定値とに基づいて、自動的に負荷応力を推定することができる。従って、応力推定装置100によれば、破面の凹凸の段差の間隔と応力との関係を示すデータベースを構築する必要がなく、この点でユーザの負担なしに負荷応力を推定することができる。
<第二実施形態>
応力推定装置100が、破面の粗さに基づいて応力を推定するようにしてもよい。第二実施形態では、この場合の例について説明する。
図7は、本発明の第二実施形態に係る応力推定装置の機能構成を示す概略ブロック図である。図7に示す構成にて、応力推定システム1は、応力推定装置100と、走査電子顕微鏡910と、マイクロビッカース硬さ試験機920とを備える。応力推定装置100は、通信部110と、操作入力部120と、表示部130と、記憶部180と、制御部190とを備える。制御部190は、機械学習部191と、応力振幅推定部192と、最大応力推定部193と、負荷応力推定部194とを備える。応力振幅推定部192は、前処理部201と、推定実行部202とを備える。
図7の構成における各部のうち、図1の構成における各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(1、100、110、120、130、180、190、191、192、193、194、910、920)を付して説明を省略する。
図7の構成では、応力振幅推定部192が前処理部201と、推定実行部202とを備えることが明示されている点で、図1の場合と異なる。それ以外は、図1の場合と同様である。
第二実施形態では、機械学習部191は、破面画像と破面の粗さを示すデータとの組み合わせを学習用データとして機械学習を行う。これにより、機械学習部191は、破面画像の入力を受けて破面の粗さを示すデータを出力するモデルをチューニングする。
前処理部201は、機械学習部191の学習結果に基づいて、破面画像から破面の粗さを推定する。具体的には、前処理部201は、機械学習部191の学習にて得られたモデルに破面画像の画像データを入力して、破面の粗さの推定値の出力を得る。
推定実行部202は、破面の粗さに基づいて応力の振れの大きさを推定する。ここでいう応力の振れの大きさは、応力振幅(図2のD11参照)であってもよいし、応力範囲(図2のD12参照)であってもよい。推定実行部202が破面の粗さに基づいて応力の振れの大きさを推定する方法として、公知の方法を用いることができる。
次に、図8および図9を参照して、第二実施形態における応力推定装置100の動作について説明する。
図8は、第二実施形態における応力推定装置100が機械学習を行う処理手順の例を示すフローチャートである。
図8の処理で、通信部110は、破面画像の画像データと破面の粗さのデータとが組み合わせられた学習用データを他の装置から受信する(ステップS201)。
次に、前処理部201が、学習用データに含まれる破面画像から破面の粗さを推定する(ステップS202)。前処理部201は、機械学習部191が学習中のモデルに破面画像の画像データを入力して破面の粗さの推定値の出力を得る。
そして、機械学習部191は、前処理部201による破面の粗さの推定値と、学習用データに含まれる破面の粗さの測定値とを比較し(ステップS203)、比較結果に基づいてモデルを更新する(ステップS204)。機械学習部191がモデルを更新する方法として、学習方法に応じた公知の方法を用いることができる。
次に、制御部190は、ステップS201で得られた学習用データの全データについて処理を完了したか否かを判定する(ステップS205)。
処理を完了していないデータがあると判定した場合(ステップS205:NO)、ステップS202へ戻り、未処理のデータに対する処理を引き続き行う。
一方、ステップS205で全データについて処理を完了したと判定した場合(ステップS205:YES)、図8の処理を終了する。
図9は、第二実施形態における応力推定装置100が負荷応力の推定を行う処理手順の例を示すフローチャートである。
図9の処理で、通信部110は、走査電子顕微鏡910が撮影した破面画像を画像データにて取得する(ステップS211)。そして、前処理部201は、破面画像から破面の粗さを推定する(ステップS212)。具体的には、前処理部201は、機械学習部191による機械学習にて得られたモデルに破面画像の画像データを入力して、破面の粗さの推定値の出力を得る。
次に、推定実行部202は、ステップS212で得られた破面の粗さの推定値に基づいて、応力振幅を推定する(ステップS213)。推定実行部202が破面の粗さに基づいて応力振幅を推定する方法として、公知の方法を用いることができる。
ステップS221~S222における処理は、図5のステップS121~S122における処理と同様である。
ステップS213およびS222の処理完了の後、負荷応力推定部194は、ステップS213で得られた応力振幅の推定値と、ステップS222で得られた最大応力の推定値とに基づいて、負荷応力を推定する(ステップS231)。例えば、負荷応力推定部194は、応力振幅の推定値および最大応力の推定値を負荷応力の推定値として出力する。
ステップS231の後、図9の処理を終了する。
以上のように、機械学習部191は、破面画像と破面の粗さを示すデータとの組み合わせを学習用データとして機械学習を行う。応力振幅推定部192は、機械学習部191の学習結果に基づいて、破面画像から破面の粗さを推定する。推定実行部202は、破面の粗さに基づいて応力の振れの大きさを推定する。
破面の粗さと応力の振れの大きさとの関係は比較的よく知られており、推定実行部202が破面の粗さに基づいて応力の振れの大きさを推定する際、これまでに蓄積されている情報を用いて比較的高精度に推定を行い得る。これにより、負荷応力推定部194による負荷応力の推定精度も高まることが期待される。
<第三実施形態>
応力推定装置100が、複数の方法で最大応力を推定するようにしてもよい。第三実施形態では、この場合の例について説明する。
図10は、本発明の第三実施形態に係る応力推定装置の機能構成を示す概略ブロック図である。図10に示す構成にて、応力推定システム1は、応力推定装置100と、走査電子顕微鏡910と、EBSP解析装置911と、マイクロビッカース硬さ試験機920とを備える。応力推定装置100は、通信部110と、操作入力部120と、表示部130と、記憶部180と、制御部190とを備える。制御部190は、機械学習部191と、応力振幅推定部192と、最大応力推定部193と、負荷応力推定部194と、確率分布推定部211とを備える。
図10の構成における各部のうち、図1の構成における各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(1、100、110、120、130、180、190、191、192、193、194、910、920)を付して説明を省略する。
図10の構成では、応力推定システム1がEBSP解析装置911を備えることが明示されている点、および、制御部190が確率分布推定部211を備えることが明示されている点で、図1の場合と異なる。それ以外は、図1の場合と同様である。
なお、第二実施形態と第三実施形態とを組み合わせて実施するようにしてもよい。図7の場合と同様に、応力振幅推定部192が前処理部201と推定実行部202とを備えていてもよい。
確率分布推定部211は、複数の方法の各々で最大応力の確率分布を推定する。第三実施形態および第四実施形態では、確率分布推定部211が、ビッカース硬さ、および、EBSP解析の各々に基づいて最大応力の確率分布を推定する場合を例に説明する。
最大応力推定部193は、確率分布推定部211が推定した確率分布の重ね合わせに基づいて最大応力を推定する。
EBSP解析装置911は、EBSP解析にて破面の状態を解析する。EBSP解析では、傾斜した資料に電子線を照射し、回析電子線による後方散乱電子回析を解析する。EBSP解析装置911は、例えば、走査電子顕微鏡910に取り付けられるアタッチメントと、回析を解析するためのコンピュータとを含んで構成される。
図11は、最大応力の確率分布の例を示す図である。図11に示すグラフの横軸は力の大きさを示し、縦軸は確率密度を示す。線L21は、マイクロビッカース硬さ試験機920によるビッカース硬さの測定結果に基づく最大応力推定値の確率分布を示す。線L22は、EBSP解析装置911によるEBSP解析結果に基づく最大応力推定値の確率分布を示す。線L23は、線L21が示す確率分布と、線L22が示す確率分布との重ね合わせを示す。
確率分布推定部211が確率分布を推定する方法は、特定の方法に限定されない。例えば、塑性領域(硬化領域)の深さと最大応力の確率分布との関係を実験にて予め求めておき、記憶部180が、この関係を記憶しておくようにしてもよい。確率分布推定部211は、塑性領域の深さの測定値に対応する確率分布を記憶部180から取得することで、確率分布を推定することができる。
以下、塑性領域の深さと最大の応力拡大係数との関係を用いる場合の例について、さらに説明する。
まず、最大応力推定部193による最大応力の推定について説明する。
応力拡大係数は、荷重(応力)への変換が可能なパラメータである。最大の応力拡大係数が求まれば、最大応力に変換することができる。そこで、例えばユーザが、いろいろな最大応力について実験を行って、塑性領域の深さと最大の応力拡大係数との関係を予め求めておく。例えば、横軸に最大の応力拡大係数をとり縦軸に塑性領域の深さをとったグラフに実験結果をプロットしていき、プロットした点を直線近似する。得られた直線を示す式を、記憶部180が記憶しておく。
最大応力推定部193は、以下の手順で最大応力を推定する。
(1)マイクロビッカース硬さ試験機920による塑性領域の深さ測定値を取得する。
(2)記憶部180が記憶する近似直線に、得られた塑性領域の深さを適用して、対応する最大の応力拡大係数を取得する。
(3)得られた最大の応力拡大係数を最大応力に変換し、得られた最大応力を推定結果として採用する。
予め行う実験にて、通常、得られる最大の応力拡大係数にばらつきが生じる。特に、塑性領域の深さと最大の応力拡大係数との関係を見た場合に、ある塑性領域の深さに対応する最大の応力拡大係数は一意に定まらずばらつきが生じる。そこで、例えばユーザが、塑性領域の深さ毎に、対応する最大の応力拡大係数のばらつきに応じた確率分布を算出しておく。記憶部180は、塑性領域の深さと確率分布とが一対一に対応付けられたデータベースを記憶しておく。
図12は、塑性領域の深さの検出例を示す図である。図12のグラフの横軸は破面からの距離を示し、縦軸はビッカース硬さを示す。
応力推定対象を破面から深部へ辿っていくと、硬化していない領域に到達し、図12に折れ線で示すように硬さがおよそ一定になる。そこで、硬さが変化する領域の深さ(破面からの距離)を塑性領域の深さdとして検出する。図12では、線L31で近似される測定結果の場合の塑性領域の深さdを矢印で示している。
図13は、応力拡大係数最大値と塑性領域の深さdとの関係の例を示す図である。図13のグラフの横軸は応力拡大係数最大値を示し、縦軸は、塑性領域の深さdを示す。応力拡大係数最大値は、応力分布の強さを示す物理量であり、最大応力を示す指標値として用いることができる。
図13では、実験で得られた応力拡大係数最大値と塑性領域の深さdとの関係をグラフに点でプロットした例を示している。図13でプロットされる各点は直線近似されているように、およそまとまっている一方で、ある程度のばらつきが生じる。このばらつきを度数分布にして、塑性領域の深さdと応力拡大係数最大値の度数分布(最大応力の度数分布)をデータベース化しておく。
図14は、応力拡大係数最大値の確率分布を求める例を示す図である。
図14のグラフの横軸は応力拡大係数最大値を示し、縦軸は、塑性領域の深さdを示す。図14に示す点のプロットおよび近似直線は、図13の場合と同様である。図14では、応力推定対象における塑性領域の深さdの計測結果を、上記のデータベースに適用する場合のイメージを示している。塑性領域の深さdの計測結果を、データベースに適用することで、対応する応力拡大係数の度数分布を得られる。この度数分布は、図11の線L21のように、ビッカース硬さの測定結果に基づく最大応力推定値の確率分布の例に該当する。
確率分布推定部211は、以下の手順で確率分布を推定する。
(1)マイクロビッカース硬さ試験機920による塑性領域の深さ測定値を取得する。
(2)記憶部180が記憶するデータベースに、得られた塑性領域の深さを適用して、対応する(最大の応力拡大係数の)確率分布を取得する。
(3)得られた最大の応力拡大係数の確率分布を最大応力の確率分布に変換し、得られた最大応力の確率分布を推定結果として採用する。
あるいは、確率分布推定部211が、最大応力の推定値と実測値との誤差を、正規分布等の統計モデルに当てはめて、確率分布を設定(推定)するようにしてもよい。
あるいは、マイクロビッカース硬さ試験機920が破面の複数個所の各々についてビッカース硬さを測定するようにしてもよい。そして、確率分布推定部211が、複数個所それぞれに最大応力を推定し、得られた複数の最大応力推定値(同一試験体内での応力推定値のばらつき)から最大応力の確率分布を推定するようにしてもよい。
EBSP解析についても、EBSP解析装置911が、破面の複数個所の各々についてEBSP解析を行うようにしてもよい。そして、確率分布推定部211が、複数個所それぞれに最大応力を推定し、得られた複数の最大応力推定値から最大応力の確率分布を推定するようにしてもよい。
また、確率分布推定部211が、同一試験体内での最大応力の確率分布に加えて、あるいは代えて、複数の試験体におけるビッカース硬さの測定結果またはEBSP解析結果に基づいて、複数の試験体における最大応力の確率分布を求めるようにしてもよい。
最大応力推定部193が、線L23のように、異なる測定方法で得られた確率密度の重ね合わせにおいて、確率密度が最も大きくなっている最大応力を最大応力推定値とするようにしてもよい。あるいは、最大応力推定部193が、異なる測定方法で得られた確率密度の重ね合わせにおける最大応力の平均値を最大応力推定値とするようにしてもよい。
次に、図15を参照して、第三実施形態における応力推定装置100の動作について説明する。
図15は、第三実施形態における応力推定装置100が最大応力を決定する処理手順の例を示すフローチャートである。応力推定装置100は、図6のステップS121およびS122に代えて、あるいは図9のステップS221およびS222に代えて、図15の処理を行う。
図15の処理で、確率分布推定部211は、複数の確率分布データを取得する(ステップS301)。第三実施形態の場合、確率分布推定部211は、マイクロビッカース硬さ試験機920によるビッカース硬さの測定結果に基づく最大応力推定値の確率分布、および、EBSP解析装置911によるEBSP解析結果に基づく最大応力推定値の確率分布を取得する。
そして、確率分布推定部211は、得られた複数の確率分布の重ね合わせを算出する(ステップS302)。
そして、最大応力推定部193は、得られた重ね合わせに基づいて最大応力を推定する(ステップS303)。
ステップS303の後、図15の処理を終了する。
以上のように、確率分布推定部211は、複数の方法の各々で最大応力の確率分布を推定する。最大応力推定部193は、確率分布推定部211が推定した確率分布の重ね合わせ基づいて最大応力を推定する。
このように、最大応力推定部193が確率分布に基づいて最大応力を推定することで、ビッカース硬さ計測における不確定性、および、EBSP解析における不確定性を最大応力の推定に反映させることができる。最大応力推定部193は、この点で最大応力を高精度に推定できる。
<第四実施形態>
応力推定装置100が、推定した最大応力を有効とするか無効とするかを決定するようにしてもよい。第四実施形態では、この場合の例について説明する。
図16は、本発明の第四実施形態に係る応力推定装置の機能構成を示す概略ブロック図である。図16に示す構成にて、応力推定システム1は、応力推定装置100と、走査電子顕微鏡910と、EBSP解析装置911と、マイクロビッカース硬さ試験機920とを備える。応力推定装置100は、通信部110と、操作入力部120と、表示部130と、記憶部180と、制御部190とを備える。制御部190は、機械学習部191と、応力振幅推定部192と、最大応力推定部193と、負荷応力推定部194と、確率分布推定部211と、有効性決定部212とを備える。
図16の構成における各部のうち、図10の構成における各部に対応して同様の機能を有する部分には同一の符号(1、100、110、120、130、180、190、191、192、193、194、211、910、911、920)を付して説明を省略する。
図16の構成では、制御部190が有効性決定部212を備えることが明示されている点で、図10の場合と異なる。それ以外は、図10の場合と同様である。
なお、第二実施形態および第三実施形態と第四実施形態とを組み合わせて実施するようにしてもよい。図7の場合と同様に、応力振幅推定部192が前処理部201と推定実行部202とを備えていてもよい。
有効性決定部212は、複数の最大応力の確率分布の重なりの程度に基づいて、確率分布を有効とするか無効とするかを決定する。
図17は、複数の最大応力の確率分布の例を示す図である。図17に示すグラフの横軸は力の大きさを示し、縦軸は確率密度を示す。線L41は、マイクロビッカース硬さ試験機920によるビッカース硬さの測定結果に基づく最大応力推定値の確率分布を示す。線L42は、EBSP解析装置911によるEBSP解析結果に基づく最大応力推定値の確率分布を示す。
有効性決定部212が確率分布の有効性を判定する方法は、特定の方法に限定されない。例えば、有効性決定部212が、式(1)に基づいて確率分布の重なりの程度を評価するようにしてもよい。
Figure 0007059050000001
ここで、関数fは、ビッカース硬さの測定結果に基づく最大応力推定値の確率分布(線L41参照)を示す。関数fは、EBSP解析結果に基づく最大応力推定値の確率分布を示す。
pは、確率分布の重なりの程度の評価値である。pは、2つの測定方法で同じ最大応力が推定される確率の累積値を示している。
有効性決定部212が、pの値が所定の閾値(例えば0.5)以上である場合に確率分布を有効とするようにしてもよい。
次に、図18を参照して、第四実施形態における応力推定装置100の動作について説明する。
図18は、第四実施形態における応力推定装置100が最大応力を決定する処理手順の例を示すフローチャートである。応力推定装置100は、図6のステップS121およびS122に代えて、あるいは図9のステップS221およびS222に代えて、図18の処理を行う。
図18のステップS401~S403は、図15のステップS301~S303と同様である。
ステップS403の後、確率分布推定部211は、得られた複数の確率分布が重なりあう領域を抽出する(ステップS404)。
そして、有効性決定部212は、ステップS401で得られた確率分布が有効か否かを決定する(ステップS405)。確率分布を無効にした場合(ステップS405:NO)、ステップS401へ戻る。この場合、例えば、マイクロビッカース硬さ試験機920およびEBSP解析装置911がそれぞれ測定および解析を行い、確率分布推定部211は新たな確率分布を取得して図18の処理を繰り返す。
一方、ステップS405で確率分布を有効とした場合(ステップS405:YES)、図18の処理を終了する。
以上のように、有効性決定部212は、複数の確率分布の重なり部分と元の確率分布との関係に基づいて、確率分布を有効とするか無効とするかを決定する。
これにより、応力推定装置100は、破面の硬さの測定条件が悪い等によって複数の確率分布がかけ離れている場合に、これらの確率分布を無効として排除することができ、この点で、最大応力の推定精度の低下を避けることができる。
なお、制御部190の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することで各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
1 応力推定システム
100 応力推定装置
110 通信部
120 操作入力部
130 表示部
180 記憶部
190 制御部
191 機械学習部
192 応力振幅推定部
193 最大応力推定部
194 負荷応力推定部
201 前処理部
202 推定実行部
211 確率分布推定部
212 有効性決定部
910 走査電子顕微鏡
911 EBSP解析装置
920 マイクロビッカース硬さ試験機

Claims (5)

  1. 破面画像と負荷応力に相関する測定データとの組み合わせを学習用データとして機械学習を行う機械学習部と、
    前記機械学習部の学習結果に基づいて、破面画像から応力振幅を推定する応力振幅推定部と、
    数の方法の各々で最大応力の確率分布を推定する確率分布推定部と、
    前記確率分布推定部が推定した確率分布の重ね合わせに基づいて最大応力を推定する最大応力推定部と、
    前記応力振幅と、前記最大応力とに基づいて負荷応力を推定する負荷応力推定部と、
    を備える応力推定装置。
  2. 前記機械学習部は、前記破面画像と破面の粗さを示すデータとの組み合わせを学習用データとして機械学習を行い、
    前記応力振幅推定部は、
    前記機械学習部の学習結果に基づいて、破面画像から破面の粗さを推定する前処理部と、
    前記破面の粗さに基づいて応力の振れの大きさを推定する推定実行部と、
    を備える請求項1に記載の応力推定装置。
  3. 前記重なり部分と元の確率分布との関係に基づいて、前記確率分布を有効とするか無効とするかを決定する有効性決定部
    を備える請求項1または請求項2に記載の応力推定装置。
  4. 破面画像と負荷応力に相関する測定データとの組み合わせを学習用データとして機械学習を行う機械学習ステップと、
    前記機械学習ステップでの学習結果に基づいて、破面画像から応力振幅を推定する応力振幅推定ステップと、
    数の方法の各々で最大応力の確率分布を推定するステップと、
    推定した確率分布の重ね合わせに基づいて最大応力を推定するステップと、
    前記応力振幅と、前記最大応力とに基づいて負荷応力を推定するステップと、
    を含む応力推定方法。
  5. コンピュータに、
    破面画像と負荷応力に相関する測定データとの組み合わせを学習用データとして機械学習を行う機械学習ステップと、
    前記機械学習ステップでの学習結果に基づいて、破面画像から応力振幅を推定する応力振幅推定ステップと、
    数の方法の各々で最大応力の確率分布を推定するステップと、
    推定した確率分布の重ね合わせに基づいて最大応力を推定するステップと、
    前記応力振幅と、前記最大応力とに基づいて負荷応力を推定するステップと、
    を実行させるためのプログラム。
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