JP7056793B1 - 廃棄物処理装置及び廃棄物処理方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】塩素含有廃棄物から効率よく熱エネルギーを取り出し、燃料負担及び設備負担を軽減することができ、また塩素含有廃棄物の活用範囲を広げることができる廃棄物処理装置及び廃棄物処理方法を提供する。【解決手段】塩素を含む混合廃棄物を、ポリプロピレンを含む塩素含有物(A)と、前記塩素含有物(A)よりも塩素質量が少ない塩素含有物(B)とに選別する選別手段と、選別された塩素含有物(A)を500℃以上で乾留ガス化し、塩化水素を含むガス化ガスとガス化残渣を得る乾留ガス化手段と、前記塩化水素を含むガス化ガスを燃焼し、燃焼ガスを得る燃焼手段と、前記燃焼ガスに含まれる塩化水素中の塩素を捕捉し、塩化物または塩酸として回収する塩素捕捉回収手段と、前記塩素捕捉回収手段を通過した燃焼ガスから有害物質を除去する燃焼ガス無害化手段とを含む廃棄物処理装置。【選択図】なし

Description

本発明は、廃棄物処理装置及び廃棄物処理方法に関する。
近年、医療ごみ、廃プラスチック、建築廃棄物、自動車シュレッダーダスト(ASR)、都市ごみ、等の廃棄物(これらを加工したRPF(Refuse derived paper and plastics densified Fuel)なども含む)やこれらが混合された混合廃棄物にポリ塩化ビニル(PVC)等の塩素含有プラスチックが多量に含まれるようになった。このような廃棄物の大部分は単純に焼却されるか、埋立て処理されていた。
しかし、埋立て場不足や数々の法規制を背景にして、単純に焼却処理や埋立て処理するのではなく、廃棄物中に含まれる有効成分を回収し、熱エネルギー、原料等として再利用することが検討されている。
例えば、塩素含有合成樹脂と廃木材を混合して250℃~350℃の温度で加熱し、塩素含有合成樹脂を熱分解させて、塩素が除去された可燃性の処理物を得ることを特徴とする塩素含有合成樹脂の脱塩素処理方法(特許文献1参照);プラスチックが熱分解生成物と固体分解残渣とに熱分解する熱分解温度にプラスチックを加熱して熱分解する熱分解工程と、固体分解残渣を熱分解温度より高い温度に加熱する加熱工程とを備えることを特徴とするプラスチックの再資源化方法(特許文献2参照);廃プラスチックを脱塩して塩化水素リッチガスを発生させる脱塩装置と、前記塩化水素リッチガスを無害化処理する脱塩ガス燃焼炉と、脱塩装置と脱塩ガス燃焼炉とを接続して、前記塩化水素リッチガスを脱塩装置から脱塩ガス燃焼炉に送る接続配管と、を備え、前記接続配管は、その内部温度が320℃~360℃の範囲に制御されることを特徴とする廃プラスチック処理装置(特許文献3参照);廃プラスチックを熱分解油化処理して油蒸気を生成させる熱分解装置と、熱分解装置からの油蒸気を導びいて蒸留するとともに生成ガスを生じさせる生成油回収塔と、生成油回収塔からの生成ガスを導びいて燃焼させる加熱装置とを備え、加熱装置と、熱分解装置および生成油回収塔のうち少なくとも一方とを排ガスダクトで接続し、加熱装置の燃焼排ガスを熱分解装置または生成油回収塔に導くことを特徴とする廃プラスチック処理装置(特許文献4参照);廃棄物を密閉容器に入れ、該容器内を脱酸素又は空気遮断状態にして約100℃~200℃に加熱することにより、前記廃棄物から水分等の成分を蒸発させて除去し、次いで約270℃~290℃に加熱して塩素系成分を除去することを特徴とする廃棄物の無害化処理方法(特許文献5参照);塩素含有プラスチック廃棄物を処理するに際し、塩素含有プラスチック廃棄物を熱分解容器に投入し、250~350℃の温度に加熱し、該プラスチックの熱分解により発生する塩化水素及び熱分解ガスを分離し、脱塩素残留物を得ることを特徴とする塩素含有プラスチック廃棄物の前処理方法(特許文献6参照)等が開示されている。
また、廃棄物中に含まれる有効成分を、セメント製造のための、熱エネルギー、原料等として再利用することも検討されており、具体的には、例えば、廃棄物と、アルカリ金属又は/及びアルカリ土類金属を含む物質とが投入され、前記廃棄物を熱分解する熱分解炉と、該熱分解炉の排ガスをセメント焼成装置に燃料として供給する第1燃料供給路と、前記熱分解炉から排出される残渣を前記セメント焼成装置に燃料として供給する第2燃料供給路とを備えることを特徴とする廃棄物の処理装置(特許文献7参照)が開示されている。
特開2003-253037号公報 特開平8-92412号公報 特開2001-106826号公報 特開2000-176934号公報 特開平7-100196号公報 特開2000-44726号公報 特開2017-154037号公報
しかし、特許文献1~7に記載される方法では、塩素を含む廃棄物から有機成分と塩素含有物との分離が不十分であり、得られる熱エネルギーが少なかったり、また廃棄物の活用範囲も制限されていた。
本発明は、塩素含有廃棄物から効率よく熱エネルギーを取り出し、燃料負担及び設備負担を軽減することができ、また塩素含有廃棄物の活用範囲を広げることができる廃棄物処理装置及び廃棄物処理方法を提供することを目的とする。
本発明は、以下の<1>~<8>を提供する。
<1> 塩素を含む混合廃棄物を、ポリプロピレンを含む塩素含有物(A)と、前記塩素含有物(A)よりも塩素質量が少ない塩素含有物(B)とに選別する選別手段と、
選別された塩素含有物(A)を500℃以上で乾留ガス化し、塩化水素を含むガス化ガスとガス化残渣を得る乾留ガス化手段と、
前記塩化水素を含むガス化ガスを燃焼し、燃焼ガスを得る燃焼手段と、
前記燃焼ガスに含まれる塩化水素中の塩素を捕捉し、塩化物または塩酸として回収する塩素捕捉回収手段と、
前記塩素捕捉回収手段を通過した燃焼ガスから有害物質を除去する燃焼ガス無害化手段と
を含む廃棄物処理装置。
<2> 前記選別手段で得られた前記塩素含有物(B)及び乾留ガス化手段で得られた前記ガス化残渣からなる群より選択される1つ以上を、セメント原料またはセメント焼成用熱エネルギーとして利用する<1>に記載の廃棄物処理装置。
<3> 前記燃焼ガス無害化手段として、セメント焼成炉を使用する<1>または<2>に記載の廃棄物処理装置。
<4> 前記燃焼手段は、前記塩化水素を含むガス化ガスを800~1000℃で燃焼する<1>~<3>のいずれか1つに記載の廃棄物処理装置。
<5> 塩素を含む混合廃棄物を、ポリプロピレンを含む塩素含有物(A)と、前記塩素含有物(A)よりも塩素質量が少ない塩素含有物(B)とに選別する選別工程と、
選別された塩素含有物(A)を500℃以上で乾留ガス化し、塩化水素を含むガス化ガスとガス化残渣を得る乾留ガス化工程と、
前記塩化水素を含むガス化ガスを燃焼し、燃焼ガスを得る燃焼工程と、
前記燃焼ガスに含まれる塩化水素中の塩素を捕捉し、塩化物または塩酸として回収する塩素捕捉回収工程と、
前記塩素捕捉回収工程を通過した燃焼ガスから有害物質を除去する燃焼ガス無害化工程と
を含む廃棄物処理方法。
<6> 前記選別工程で得られた前記塩素含有物(B)及び乾留ガス化工程で得られた前記ガス化残渣からなる群より選択される1つ以上を、セメント原料またはセメント焼成用熱エネルギーとして利用する<5>に記載の廃棄物処理方法。
<7> 前記燃焼ガス無害化工程において、セメント焼成炉を使用する<5>又は<6>に記載の廃棄物処理方法。
<8> 前記燃焼工程は、前記塩化水素を含むガス化ガスを800~1000℃で燃焼する<5>~<7>のいずれか1つに記載の廃棄物処理方法。
本発明によれば、塩素含有廃棄物から効率よく熱エネルギーを取り出し、燃料負担及び設備負担を軽減することができ、また塩素含有廃棄物の活用範囲を広げることができる廃棄物処理装置及び廃棄物処理方法を提供することができる。
本明細書中の「AA~BB」との数値範囲の表記は、「AA以上BB以下」であることを意味する。
<廃棄物処理装置>
本発明の廃棄物処理装置は、選別手段と、乾留ガス化手段と、燃焼手段と、塩素捕捉回収手段と、燃焼ガス無害化手段とを含む。
選別手段は、塩素を含む混合廃棄物を、ポリプロピレンを含む塩素含有物(A)と、前記塩素含有物(A)よりも塩素質量が少ない塩素含有物(B)とに選別する手段である。以下、塩素含有物(A)を「高塩素含有物」;塩素含有物(A)よりも塩素質量が少ない塩素含有物(B)を「低塩素含有物」と称することがある。
乾留ガス化手段は、選別手段で選別された塩素含有物(A)を500℃以上で乾留ガス化し、塩化水素を含むガス化ガスとガス化残渣を得る手段である。
燃焼手段は、乾留ガス化手段で得られた塩化水素を含むガス化ガスを燃焼し、燃焼ガスを得る手段である。
塩素捕捉回収手段は、燃焼手段で得られた燃焼ガスに含まれる塩化水素中の塩素を捕捉する手段である。
燃焼ガス無害化手段は、塩素捕捉手段を通過した燃焼ガスから有害物質を除去する手段である。
本発明の廃棄物処理装置は、上記の選別手段、乾留ガス化手段、燃焼手段、塩素捕捉回収及び燃焼ガス無害化手段からなってもよいし、更に他の手段を含んでいてもよい。
既述のように、従来から行われてきた廃棄物処理の手法では、塩素を含む混合廃棄物を直接燃焼したり、塩素を含む混合廃棄物からの塩素含有物の分離が不十分なまま混合廃棄物が燃焼されたため、燃焼に必要なエネルギー量が多い一方で、得られる熱エネルギーが少なかった。
また、塩素を含む混合廃棄物を直接セメント焼成炉等の熱エネルギーとして利用した場合、塩素がセメント原料等に含まれるアルカリ成分(Na、K)と反応し、KCl、NaClなどの低融点物質を生成する。これらがセメント焼成炉前段に設けられた余熱装置(プレヒーター)の炉壁にコーチングとして溶着し、余熱装置を閉塞させ操業停止に至る恐れがある。さらに、特にセメント製造の場合は、セメント中の塩素濃度の上限がJISで定められており、セメント焼成炉に投入される塩素の量を制限する必要があったため、塩素を含む混合廃棄物の使用量を制限せざるを得ず、塩素を含む混合廃棄物の熱エネルギーを有効に利用することが困難であった。
これに対し、本発明の廃棄物処理装置は、最初に、選別手段により、混合廃棄物を塩素質量の多い高塩素含有物と塩素質量の少ない低塩素含有物とに選別することで、乾留ガス化手段において、加熱分解が必要な塩素含有物を選択的に乾留ガス化することができる。その結果、加熱分解に必要な熱エネルギーの負担を抑制することができ、乾留ガス化設備を小さくすることができる。また、高塩素含有物にはポリプロピレンが含まれるため、乾留ガス化用の熱エネルギーには、ポリプロピレンのガス化ガスの燃焼熱を利用することができる。そのため、高塩素含有物を乾留ガス化させるための熱エネルギーを抑制することができる。
また、塩素捕捉回収手段を経ることにより、設備劣化を招く塩化水素を効率よく除去し、環境負担を軽減することができる。更に、燃焼ガス無害化手段により、廃棄物処理の過程で生じたガスを無害化することができるため、環境負担を更に抑制することもできる。
以上の手段を経て得られるガス化残渣からは塩素が十分に取り除かれているために、例えば、セメント焼成炉用の熱エネルギーや原料とすることができる。
このように、従来に比べ、より多くの熱エネルギーを塩素含有廃棄物から効率よく取り出すことができる。また塩素含有廃棄物の活用範囲を広げることができる。
以下、本発明の廃棄物処理装置及び廃棄物処理方法について詳細に説明する。
〔選別手段〕
選別手段においては、塩素を含む混合廃棄物を、ポリ塩化ビニル等の塩素を含有する熱可塑性樹脂(PVC類と称する)を多く含み、かつ、ポリプロピレンを多く含む重量物{塩素含有物(A)(高塩素含有物)}と、塩素含有物(A)よりも塩素質量が少なく、かつ、ポリプロピレンが少ない軽量物{塩素含有物(B)(低塩素含有物)}とに選別する。
軽量物(低塩素含有物)は塩素含有量が小さいため、次の手段(塩素を低減する乾留ガス化手段)にて乾留ガス化されることなく、そのままセメント焼成用熱エネルギー等に利用することができる。
廃棄物処理装置が選別手段を有しないと、混合廃棄物全量を乾留ガス化手段にて加熱することとなる。その場合、PVC類に含まれる塩素を塩化水素として脱離させることはできるが、PVC類に含まれる有機成分及び塩素を含まない樹脂に含まれる有機成分も同時に混合廃棄物から脱離するため、ガス化残渣の持つ熱量は混合廃棄物に対して低減する。
PVC類の含有量が少ない軽量物(低塩素含有物)を選別手段で選別し、乾留ガス化手段での乾留ガス化を回避することにより、低塩素含有物のもつ熱エネルギーを低減させることなく、低塩素含有物をセメント焼成用熱エネルギーとして利用することができる。
(塩素を含む混合廃棄物)
塩素を含む混合廃棄物とは、塩素を含む熱可塑性樹脂を含有する廃棄物を意味する。さらに、本発明において、塩素を含む混合廃棄物は、ポリプロピレンを含有するものを対象とする。
塩素を含む混合廃棄物は、具体的には、例えば、ASR(Auto Mobile Shredder Residue)、容器包装プラスチック、容器包装プラスチックの選別残渣、RPF(Refuse derived paper and plastics densified Fuel)用原料プラスチック、建築物解体により排出されるプラスチックが挙げられる。
塩素を含む熱可塑性樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン等が挙げらる。これらは、例えば、ASR中の電線被覆、容器包装プラスチックに含まれる錠剤用パッケージ、建築物解体残渣に含まれる壁紙等として利用されている。
塩素を含む混合廃棄物は、ポリプロピレン以外の塩素を含まない熱可塑性樹脂、塩素を含まない熱硬化性樹脂、可燃物、油分が含浸された有機物、無機物等を含んでもよい。
ポリプロピレン以外の塩素を含まない熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
塩素を含まない熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリウレタン、エポキシ樹脂等が挙げられる。
可燃物としては、例えば、繊維くず、紙くず、木くず等の有機物の他、有機性汚泥等が挙げられる。
無機物としては、使用済み活性白土(廃白土)等が挙げられる。
(選別方式)
ポリプロピレンを含む高塩素含有物と低塩素含有物との選別方式は特に制限されず、比重差を利用して選別する方式、形状差を利用して選別する方式、化学組成の違いを利用して選別する方式等が挙げられる。これらの方式は1つのみ用いてもよいし、2つ以上を掛け合わせて選別を行ってもよい。
比重差を利用して選別する方式としては、風力選別、湿式選別、重液選別等があり、例えば、風力選別は、ジグザグエアセパレータ、エアテーブル等の機器を用いて、ポリプロピレンを含む高塩素含有物と低塩素含有物とを選別することができる。
比重差と形状差を利用した揺動式選別方式の機器としては、バリスティックセパレーターが挙げられる。
風力選別と揺動式選別とを組み合わせ、エアバイブ等の機器を用いて、高塩素含有物と低塩素含有物とを選別することもできる。
化学組成の違いを利用して選別する方式としては、センサーを用いた選別が挙げられ、例えば、近赤外線センサー付選別機、X線センサー付選別機等が用いられる。
以上の中でも、設備負担が小さく、簡便である観点から、比重差を利用した風力選別の方式を用いることが好ましい。また、塩素を含む熱可塑性樹脂は、他の樹脂と比べて比重が大きい観点;及び、ASR等の混合廃棄物に含まれるポリプロピレンには、通常、強化用フィラーとしてタルク等が20質量%程度含まれており、比重が大きい観点からも、比重差を利用して選別する方式を好適に用いることができる。
比重差を利用して選別する方式で高塩素含有物と低塩素含有物とを選別すると、塩素を含む熱可塑性樹脂と共に、ポリプロピレンも重量物側に選別されやすい。そのため、通常、重量物(高塩素含有物)中のポリプロピレン質量は、軽量物(低塩素含有物)中のポリプロピレン質量よりも大きい。
選別手段で得られた塩素含有物(B)は、セメント原料またはセメント焼成用熱エネルギーとして利用することができる。
〔乾留ガス化手段〕
乾留ガス化手段においては、選別された塩素含有物(A)(高塩素含有物)を500℃以上で乾留ガス化し、塩化水素を含むガス化ガスとガス化残渣を得る。
本手段では、選別手段で選別した高塩素含有物を加熱乾留することにより、塩素を含む熱可塑性樹脂中の塩素を塩化水素ガスとして脱離させ、高塩素含有物中の有機成分を、ガス化ガス及び未燃炭素を含むガス化残渣を得る。
高塩素含有物を500℃以上で乾留ガス化することにより、塩素を含む熱可塑性樹脂中の塩素を低減する。
塩素を含む熱可塑性樹脂中の塩素を塩化水素ガスとして脱離させるためには、300℃以上の熱があれば十分であるが、本発明では、より高熱の500℃以上で高塩素含有物を乾留ガス化する。これにより、高塩素含有物に含まれるポリプロピレンをガス化燃焼することができ、ポリプロピレンのガス化ガスの燃焼熱エネルギーを高塩素含有物の乾留ガス化に利用することができる。そのため、高塩素含有物を乾留ガス化させるための熱エネルギー量を削減することができ、ポリプロピレンのガス化ガスの燃焼熱エネルギーが塩化水素ガスの脱離に必要な熱エネルギーに対して大きい場合は、化石燃料を使用しないこともできる。更には、ポリプロピレンから発生したガスが有する熱量を次の燃焼手段で利用することができる。
高塩素含有物の乾留ガス化の温度は、より好ましくは600℃以上、さらに好ましくは700℃以上である。より高温である方が、乾留ガス化速度が速くなる。
また、高塩素含有物を500℃以上で乾留ガス化することにより、高塩素含有物を500℃で単に燃焼する場合よりも、塩素の脱離率をより向上することができる。
このように、本発明においては、選別手段により乾留ガス化対象が最小限に選別され、更に乾留ガス化対象にポリプロピレンが含まれているため、高塩素含有物を乾留ガス化するための燃料量を抑えることができ、乾留ガス化設備の負担も抑制することができる。
なお、乾留ガス化温度が500℃未満ではポリプロピレンが完全に乾留ガス化しないため、ポリプロピレンの持つ熱エネルギーを有効に利用することができない。
乾留ガス化温度の上限は特に制限されず、例えば、設備負担等の観点から、1000℃以下とすることが好ましく、850℃以下とすることがより好ましい。
乾留ガス化設備(乾留装置)は、高塩素含有物を、空気を絶って500℃以上でガス化し得る装置であれば特に制限されない。例えば、高塩素含有物を配置する空間1と、高塩素含有物を加熱する加熱源を供給する空間2とが隔壁によって分けられ、隔壁を通じて高塩素含有物を間接的に加熱する装置を用いることができる。加熱源を供給する空間2は必ずしも必要ではなく、空間2に代えて、空間1の壁内部に電熱線等を配設して、高塩素含有物を電気で加熱してもよい。
空間2に加熱源を供給する場合、加熱源としては、液化石油ガス(LPG)等の気体燃料、灯油等の液体燃料、燃焼装置で発生する燃焼ガスの顕熱を用いることができる。
高塩素含有物は、乾留ガス化手段を経て、ガス化ガスとガス化残渣とに分離される。
ガス化ガスには、塩化水素ガスの他、ガス状の有機成分(有機成分ガス)を含み得る。
乾留ガス化手段で得られたガス化残渣は、セメント原料またはセメント焼成用熱エネルギーとして利用することができる。本発明の廃棄物処理装置から生成されるガス化残渣は、塩素を含まないか、塩素含有量が小さいため、そのままセメント原料として用いても、JIS規格で求められるセメント中の塩素量の要件(350ppm以下)を満たすことが容易となる。
なお、本発明の廃棄物処理装置においては、選別手段で得られた塩素含有物(B)及び乾留ガス化手段で得られたガス化残渣からなる群より選択される1つ以上を、セメント原料またはセメント焼成用熱エネルギーとして利用することができ、塩素含有物(B)とガス化残渣とのどちらか一方のみをセメント原料またはセメント焼成用熱エネルギーとして利用してもよいし、両方をセメント原料またはセメント焼成用熱エネルギーとして利用してもよい。
乾留ガス化設備(乾留装置)は、1基で運転してもよいし、複数基で運転してもよい。
〔燃焼手段〕
燃焼手段においては、塩化水素を含むガス化ガスを燃焼し、燃焼ガスを得る。
乾留ガス化手段を経て得られたガス化ガスを燃焼することにより、選別手段で得られた高塩素含有物を直接燃焼する場合と比べて、速やかに高塩素含有物を完全燃焼することができる。このため、一酸化炭素、ダイオキシンなどの有害物の生成が抑制された塩化水素を含む燃焼ガスが得られる。
高塩素含有物に含まれる有機成分の燃焼によるダイオキシンの発生をより抑制する観点、及び臭気成分を分解する観点から、燃焼温度を800℃程度とすることが望ましい。燃焼温度の上限は特に制限されず、例えば、設備負担等の観点から、1000℃以下とすることが好ましい。燃焼手段は、塩化水素を含むガス化ガスを800~1000℃で燃焼することが好ましい。
ガス化ガスの燃焼に用いる炉の型式は特に指定されない。例えば、ガス化炉と燃焼炉が一体構造となった流動床式ガス化燃焼炉、ガス化ガスをガスバーナーに導き燃焼させるガス燃焼炉等が用いられる。
〔塩素捕捉回収手段〕
塩素捕捉回収手段では、燃焼ガスに含まれる塩化水素中の塩素を捕捉し、塩化物または塩酸として回収する。
本手段では、乾留ガス化手段及び燃焼手段により塩素を含む熱可塑性樹脂から脱離させた塩化水素ガスの少なくとも一部から塩素を捕捉し、回収する。
塩素の捕捉回収手段としては、湿式法及び乾式法のいずれか一方又は両方を用いることができる。塩素の捕捉精度を高める観点から両方を用いてもよい。湿式法及び乾式法の両方を用いる方法としては、塩化水素を含む燃焼ガスの流れ方向に対して、湿式塩素捕捉手段と乾式塩素捕捉手段とを、並列、または、直列に配置すればよい。
(A)湿式法
湿式法は、塩化水素を含む燃焼ガスを水等の吸収液に塩素を吸収させ、塩酸として回収する方法である。また、吸収力を大きくするために、塩基性にした水、鉄または鉄化合物を加えた水を吸収液として用いることができる。
吸収液は、苛性ソーダで中和する等、無害化された後、下水道等の系外に放出してもよい。
(B)乾式法
乾式法は、塩化水素を含む燃焼ガス中にカルシウム化合物の粉体を投入し、カルシウム化合物中のカルシウムと塩化水素を化学反応させることによりカルシウム塩化物を生成させ、バグフィルター等の集塵機によりカルシウム塩化物の粉体として回収するである。これにより、塩化水素を含む燃焼ガスから塩素を回収することができる。
また、燃焼ガスを含む燃焼炉に直接、炭酸カルシウムを吹込み、炭酸カルシウムから二酸化炭素を脱離させて生石灰を得ることができる。得られた生石灰は、炭酸カルシウムに比べ、塩化水素との反応性が良好であるため、燃焼ガス中に含まれる塩化水素ガスと生石灰を反応させ塩化カルシウムとして塩素を回収することができる。
本発明では、高塩素含有物を、乾留ガス化手段でガス化した後、燃焼手段で燃焼することにより、燃焼ガス中の有機成分ガス量が大幅に抑制されているため、乾式法を好適に用いることができる。
燃焼ガス中の有機成分ガス量が多いと、有機成分(タール等)が、塩素捕捉材料(カルシウム化合物等)の表面に付着し、塩素捕捉効率(塩化水素とカルシウム化合物の化学反応効率)を低下する場合がある。そのため、燃焼ガス中の有機成分ガス量が多い場合は、湿式法を用いたり、湿式塩素捕捉手段と乾式塩素捕捉手段とを、並列、または、直列に配置して、捕捉精度を高めることが好ましい。
〔燃焼ガス無害化手段〕
燃焼ガス無害化手段においては、塩素捕捉回収手段を通過した燃焼ガスから有害物質を除去する。
本手段は、塩素捕捉回収手段を通過した燃焼ガスを無害化し、大気へ排出する手段である。
塩素捕捉回収手段を通過した燃焼ガスは、塩化水素を含まないが、高塩素含有物の燃焼により生成する煤煙等の有害物(ダイオキシン、NOx等)を含む。環境基準を上回る有害物を含んだ燃焼ガスをそのまま大気へ放出することは好ましくなく、適切に処理を行い放出する必要がある。
無害化の方式は、塩素捕捉回収手段を通過した燃焼ガスに含まれる有害物を活性炭に吸着させる等により行うことができる。活性炭に燃焼ガスに含まれる有害物を吸着させる方法としては、燃焼ガスを活性炭フィルターに通じる方法、あるいは燃焼ガスに活性炭を吹き込む方法が挙げられる。これらの方法は1つのみ行ってもよいし、2つ以上を組み合わせてもよい。
また、ダイオキシンは、800℃以上の高温燃焼場所で2秒以上滞留させることにより、低減することができる。例えば、燃焼ガス無害化手段として、セメント焼成炉を使用することで別途設備を設けることなく、塩素捕捉手段を通過した燃焼ガスから有害物質を除去することができる。
NOxは、セメント焼成炉の燃焼部に導くことで、還元分解が可能。また、脱硝設備を備えているセメント焼成炉の場合は、セメント焼成炉で発生するNOxとともに、環境基準以下にNOx濃度を低減させ大気へ放出することができる。脱硝設備としては、例えばアンモニア噴霧式脱硝設備が挙げられる。
廃棄物処理装置をセメント焼成炉に併設する場合は、塩素捕捉回収手段を経た燃焼ガスをセメント燃焼炉に導くことにより、高温燃焼により有害物を分解することできる。そのため、燃焼ガス無害化手段の装置を別途用意したり、活性炭フィルター等の無害化用材料を用意する必要がないため経済的である。セメント焼成炉としては、具体的には、キルンバーナー、仮焼炉等が挙げられる。
具体的には、例えば、燃焼ガスを、セメント焼成炉の800℃以上の高温部に導き、800℃以上の温度域を、2秒以上の時間を経てセメント焼成炉燃焼ガスとともに通過し、その後、調温、調湿、除塵等の無害化処理を施されたのちに煙突から大気に放出される。
セメント焼成炉の800℃以上の高温部へ導く方法としては、吸収・捕捉手段を通過した燃焼ガスを直接セメント焼成炉の800℃以上の場所へ投入する方法だけでなく、セメント焼成炉の800℃以上の場所に通ずる、セメント焼成炉に付設された密閉された800℃以下のガスダクトへ投入後、800℃以下のガスダクトを経て、セメント焼成炉の800℃以上の場所に投入してもよい。
セメント焼成炉の800℃以上の高温部としては、セメントキルンの窯前、窯尻、仮焼炉ガス入口部、三次空気ダクト(800℃以上のガス温度の場合)などがあり、800℃以上の場所へ通じる密閉された800℃以下のガスダクトとしては、三次空気ダクト(800℃以下のガス温度の場合)、キルンバーナ一次空気ダクト、AQC(エアクエンチングクーラ)吹込空気ダクト、仮焼炉バーナ一次空気ダクトなどがある。
<廃棄物処理方法>
本発明の廃棄物処理方法は、塩素を含む混合廃棄物を、ポリプロピレンを含む塩素含有物(A)と、前記塩素含有物(A)よりも塩素質量が少ない塩素含有物(B)とに選別する選別工程と、
選別された塩素含有物(A)を500℃以上で乾留ガス化し、塩化水素を含むガス化ガスとガス化残渣を得る乾留ガス化工程と、
前記塩化水素を含むガス化ガスを燃焼し、燃焼ガスを得る燃焼工程と、
前記燃焼ガスに含まれる塩化水素中の塩素を捕捉し、塩化物または塩酸として回収する塩素捕捉回収工程と、
前記塩素捕捉回収工程を通過した燃焼ガスから有害物質を除去する燃焼ガス無害化工程と
を含む。
本発明の廃棄物処理方法は、上記の選別工程、乾留ガス化工程、燃焼工程、塩素捕捉回収工程及び燃焼ガス無害化工程からなってもよいし、更に他の工程を含んでいてもよい。
本発明の廃棄物処理方法が上記の選別工程、乾留ガス化工程、燃焼工程、塩素捕捉回収工程及び燃焼ガス無害化工程を含むことで、塩素含有廃棄物から効率よく熱エネルギーを取り出し、燃料負担及び設備負担を軽減することができ、また塩素含有廃棄物の活用範囲を広げることができる。
選別工程、乾留ガス化工程、燃焼工程、塩素捕捉回収工程及び燃焼ガス無害化工程における具体的な手法及び好ましい態様は、選別手段、乾留ガス化手段、燃焼手段、塩素捕捉回収手段及び燃焼ガス無害化手段の説明において記載した具体的な手法及び好ましい態様と同じである。
選別工程で得られた塩素含有物(B)及び燃焼工程で得られたガス化残渣からなる群より選択される1つ以上を、セメント原料またはセメント焼成用熱エネルギーとして利用することができ、また、燃焼ガス無害化工程において、セメント焼成炉を使用することが好ましい。燃焼工程は、前記塩化水素を含むガス化ガスを800~1000℃で燃焼することが好ましい。
<セメント製造装置>
本発明のセメント製造装置は、セメント原料を乾燥し、粉砕して粉末原料とする乾燥粉砕手段と、該粉末原料を予熱し仮焼するサスペンションプレヒータと、予熱し仮焼された粉末原料を焼成してセメントクリンカとするロータリーキルンと、焼成されたセメントクリンカを冷却するクリンカクーラとを有し、
既述の本発明の廃棄物処理装置から得られる前記塩素含有物(B)及び前記ガス化残渣からなる群より選択される1つ以上を、前記粉末原料の予熱若しくは焼成用熱エネルギーとして、または、セメント原料として用いるセメント製造装置である。
本発明の廃棄物処理装置を用いて廃棄物処理された塩素含有物(B)(低塩素含有物)及びガス化残渣いずれか1つ以上をセメント製造における粉末原料の予熱もしくは焼成用熱エネルギーとして用いることで、従来よりも多くの熱エネルギーを用いて、安定した熱量で粉末原料を予熱若しくは焼成することができる。また、低塩素含有物とガス化残渣のいずれか一方又は両方をセメント原料として用いることで、JISにより定められたセメント中塩素量基準を満たす、塩素量の少ないセメントを製造することが容易となる。
<セメント製造方法>
本発明のセメント製造方法は、セメント原料を乾燥し、粉砕して粉末原料とする乾燥粉砕工程と、該粉末原料を予熱し仮焼する仮焼工程と、予熱し仮焼された粉末原料を焼成してセメントクリンカとする焼成工程と、焼成されたセメントクリンカを冷却する冷却工程とを有し、
既述の本発明の廃棄物処理方法から得られる前記塩素含有物(B)及び前記ガス化残渣からなる群より選択される1つ以上を、前記粉末原料の予熱若しくは焼成用熱エネルギーとして、または、セメント原料として用いるセメント製造方法である。
本発明の廃棄物処理方法を用いて廃棄物処理された塩素含有物(B)(低塩素含有物)及びガス化残渣いずれか1つ以上をセメント製造における粉末原料の予熱もしくは焼成用熱エネルギーとして用いることで、従来よりも多くの熱エネルギーを用いて、安定した熱量で粉末原料を予熱若しくは焼成することができる。また、低塩素含有物とガス化残渣のいずれか一方又は両方をセメント原料として用いることで、JISにより定められたセメント中塩素量基準を満たす、塩素量の少ないセメントを製造することが容易となる。
なお、上記「セメント製造装置」と「セメント製造方法」において、塩基含有物(B)等は本発明の廃棄物処理装置(廃棄物処理方法)から供給されるものであるが、本発明のセメント製造装置(セメント製造方法)には、上記本発明の廃棄物処理装置(廃棄物処理方法の各工程)が含まれる。
以下、具体的な実施形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施形態は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
〔選別手段(選別工程)〕
塩素を含む混合廃棄物として、廃自動車シュレッダー選別残渣(ASR)を用意した。
混合廃棄物中の成分組成を手作業で分類して確認したところ、電線;チューブ;シート;ポリプロピレン;ポリウレタン;金属;ゴム;紙、布及び木;ポリスチレン;並びに分類不可能なものが含まれていた。このうち、電線、チューブ及びシートを、塩素を含有する熱可塑性樹脂(PVC類)として扱った。
混合廃棄物中の塩素を含有する熱可塑性樹脂(PVC類)の含有量を測定したところ、2.0質量%であった。
選別方式として、比重差を利用した風力選別方式を利用した。風力選別機は、ジグザグエアセパレーターを使用した。その結果、重量物側に混合廃棄物の54質量%が選別され、軽量物側に混合廃棄物の46質量%が選別された。
得られた重量物と軽量物の成分組成を手作業で分類して分析した。重量物と軽量物の下記成分の量は、混合廃棄物を100質量部に対する割合である。
重量物(高塩素含有物)には、電線が1.4質量部;チューブが0.2質量部;シートが0.1質量部;ポリプロピレンが23.3質量部;ポリウレタンが2.5質量部;金属が2.9質量部;ゴムが2.5質量部;紙、布及び木が0.4質量部;ポリスチレンが0.0質量部;並びに分類不可能なものが20.7質量部となる組成で、各成分が含まれていた。
軽量物(低塩素含有物)には、電線が0.1質量部;チューブが0.0質量部;シートが0.2質量部;ポリプロピレンが2.3質量部;ポリウレタンが30.8質量部;金属が0.0質量部;ゴムが0.2質量部;紙、布及び木が0.1質量部;ポリスチレンが0.3質量部;並びに分類不可能なものが11.9質量部となる組成で、各成分が含まれていた。
上記分析結果より、重量物中のPVC類の含有量は、混合廃棄物100質量部に対し、1.7質量部であり、重量物中のポリプロピレンの含有量は、混合廃棄物100質量部に対し、23.3質量部であることがわかった。
これは、下記計算式より、混合廃棄物中85質量%のPVC類と、91質量%のポリプロピレンを、重量物として抽出することができたことを意味する。
[PVC類]:〔(1.4+0.2+0.1)/(1.4+0.2+0.1+0.1+0.2)〕×100=85質量%
[ポリプロピレン]:〔23.3/(23.3+2.3)〕×100=91質量%
すなわち、風力選別方式により、塩素を含む混合廃棄物(ASR、SR)から、54質量%の高塩素含有物(85質量%のPVC類及び91質量%のポリプリピレンを含む)と、46質量%の低塩素含有物とに選別された。
従来であれば、次の乾留ガス化手段での乾留ガス化対象は、混合廃棄物すべてであったところ、本発明では、上記の選別手段により、次の乾留ガス化手段での乾留ガス化対象を、従来の54質量%に低減することができた。よって、燃料負担及び設備負担を従来よりも軽減することができる。
〔乾留ガス化手段(乾留ガス化工程)〕
加熱部と、温度計を有する載置部とが、それぞれ、上段、下段に、隔壁(載置部の底壁面)によって分かれた乾留装置を用いた。載置部には、次の燃焼手段にガス化ガスを送り込むためのガス化ガス導出管が備えられている。
風力選別方式により選別された高塩素含有物を、載置部の底に載置し、加熱部に液化石油ガスを送り込んで、表1に示す乾留ガス化温度で乾留ガス化したところ、500℃以上で乾留ガス化することで、高塩素含有物中の塩素の内、99%以上を塩化水素として脱離させることができた。
なお、塩素脱離率は、乾留前試料と乾留残渣を下記測定部と燃焼部を有する燃焼イオンクロマトグラフィーを用いて測定した含有塩素量から算出した。
・測定部:イオンクロマトグラフ ICS-1600(DIONEX社製)
・燃焼部:自動試料燃焼装置 AQF-100(三菱ケミカルアナリテック社製)
乾留前試料の含有塩素量と、乾留残渣の含有塩素量に基づき、次の計算方法により塩素脱離率を計算した。
乾留前試料の塩素含有量をX(質量部)とする。
乾留残渣は、乾留前試料中の塩素が脱離し、また、有機成分の少なくとも一部が脱離して、残存した量であり、塩素の残存率は、乾留前試料の塩素のうち、乾留後の試料に残存した塩素の比率として計算される。つまり、乾留後試料の塩素の残存量(乾留残渣の含有塩素量)をX(質量部)とすると、塩素残存率は100×(X/X)(質量%)と計算される。
また、塩素脱離率は100×(X-X)/X(質量%)と計算される。
〔燃焼手段(燃焼工程)〕
乾留ガス化手段により得られたガス化ガスを、ガス化ガス導出管、燃焼ガス導出管、温度計、及び点火装置付きガスバーナーを備えた燃焼装置を用いて燃焼した。
ガス化ガスは、点火装置付ガスバーナーで、燃焼用空気を導入しながら800℃で燃焼させた。ガス化ガスの燃焼温度は温度計で測定した。
〔塩素捕捉回収手段(塩素捕捉回収工程)〕
燃焼手段で発生した燃焼ガスを、吸収液(水)に通気し、塩化水素の補足率を測定した。その結果、表1に示すとおり、100質量%の塩化水素を水浴(吸収液)中に捕捉することができた。
なお、塩化水素の補足率(塩素捕捉率)は、次のように算出される。
塩化水素の捕捉率(%)=吸収液中塩素量(mg)/塩素脱離量(mg)×100
吸収液中の塩素量は、電位差滴定装置を用いて、吸収液中の塩素濃度を測定して求めた。電位差滴定装置として、自動滴定装置 GT-200型(三菱化学アナリティック社製)を用いた。塩素脱離量は乾留手段における塩素含有量X(質量部)と塩素の残存量X(質量部)との差分「X-X」により算出される。XとXの測定方法は、燃焼手段における塩素脱離率の測定方法と同様の方法で測定される。
Figure 0007056793000001
〔燃焼ガス無害化手段(燃焼ガス無害化工程)〕
塩素捕捉手段を通過した燃焼ガスは、塩素捕捉手段に併設したセメント焼成炉の仮焼炉入口に投入した結果、煙突出口から放出されるガスは、排ガス基準を満足することができた。
〔まとめ〕
塩素を含む混合廃棄物について、本実施形態における選別手段により高塩素含有物と低塩素含有物とに選別した後に、既述の本実施形態における乾留手段、燃焼手段、塩素捕捉手段、及び燃焼ガス無害化手段を経過した場合(実施例)と本実施形態における選別手段による選別を行わずに、既述の本実施形態における乾留手段、燃焼手段、塩素捕捉手段、及び燃焼ガス無害化手段を経過した場合(比較例)において得られる熱量を算出した。結果を表2に示す。
Figure 0007056793000002
表2中、mwはMixed Waste(混合廃棄物)を表し、wt%-mwは混合廃棄物中の該当構成物の質量比率を表し、kJ/g-mwは混合廃棄物1g中の該当構成物の熱量を表す。
」 熱量減量比率は、混合廃棄物を乾留することにより、有機成分がガスとして脱離し熱量が失われる乾留前の熱量と乾留後残渣に残存した熱量の比率を表し、下記式により算出される。
熱量減量比率(%)=[加熱後発熱量(kJ/g)×加熱後質量(g)]÷[加熱前発熱量(kJ/g)×加熱前質量(g)]×100
表2に示されるように、選別手段を行う実施例においては、軽量物として11kJ/g-mwの熱量を得ることができるが、選別手段を行わない比較例においては軽量物を含めて乾留してしまうため、この熱量を得ることができない。乾留手段を経て得られる熱量は比較例の方が多いものの、全体を通じて得られる量は、実施例が13kJ/g-mw、比較例が3kJ/g-mwであり、実施例は比較例対比、433%の熱エネルギーをセメント焼成炉(キルン)に投入することができることがわかった。
また、選別手段を行わない比較例では、軽量物を含む全ての混合廃棄物を加熱するため、実施例に比べ燃料負担及び設備負担が増した。
このように、本発明に従えば、塩素含有廃棄物から効率よく熱エネルギーを取り出すことができ、燃料負担及び設備負担を軽減することができ、また塩素含有廃棄物の活用範囲を広げることができる。

Claims (8)

  1. 塩素を含む混合廃棄物を、風力選別により比重差を利用して選別する方式、及び形状差を利用して選別する方式からなる群より選択される1つ以上の方式により、ポリプロピレンを含む塩素含有物(A)と、前記塩素含有物(A)よりも塩素質量が少ない塩素含有物(B)とに選別する選別手段と、
    選別された塩素含有物(A)を500℃以上で乾留ガス化し、塩化水素を含むガス化ガスとガス化残渣を得る乾留ガス化手段と、
    前記塩化水素を含むガス化ガスを燃焼し、燃焼ガスを得る燃焼手段と、
    前記燃焼ガスに含まれる塩化水素中の塩素を乾式法により捕捉し、塩化物として回収する塩素捕捉回収手段と、
    前記塩素捕捉回収手段を通過した燃焼ガスから有害物質を除去する燃焼ガス無害化手段と
    を含む廃棄物処理装置。
  2. 前記選別手段で得られた前記塩素含有物(B)及び乾留ガス化手段で得られた前記ガス化残渣からなる群より選択される1つ以上を、セメント原料またはセメント焼成用熱エネルギーとして利用する請求項1に記載の廃棄物処理装置。
  3. 前記燃焼ガス無害化手段として、セメント焼成炉を使用する請求項1又は2に記載の廃棄物処理装置。
  4. 前記燃焼手段は、前記塩化水素を含むガス化ガスを800~1000℃で燃焼する請求項1~3のいずれか1項に記載の廃棄物処理装置。
  5. 塩素を含む混合廃棄物を、風力選別により比重差を利用して選別する方式、及び形状差を利用して選別する方式からなる群より選択される1つ以上の方式により、ポリプロピレンを含む塩素含有物(A)と、前記塩素含有物(A)よりも塩素質量が少ない塩素含有物(B)とに選別する選別工程と、
    選別された塩素含有物(A)を500℃以上で乾留ガス化し、塩化水素を含むガス化ガスとガス化残渣を得る乾留ガス化工程と、
    前記塩化水素を含むガス化ガスを燃焼し、燃焼ガスを得る燃焼工程と、
    前記燃焼ガスに含まれる塩化水素中の塩素を乾式法により捕捉し、塩化物として回収する塩素捕捉回収工程と、
    前記塩素捕捉回収工程を通過した燃焼ガスから有害物質を除去する燃焼ガス無害化工程と
    を含む廃棄物処理方法。
  6. 前記選別工程で得られた前記塩素含有物(B)及び乾留ガス化工程で得られた前記ガス化残渣からなる群より選択される1つ以上を、セメント原料またはセメント焼成用熱エネルギーとして利用する請求項5に記載の廃棄物処理方法。
  7. 前記燃焼ガス無害化工程において、セメント焼成炉を使用する請求項5又は6に廃棄物処理方法。
  8. 前記燃焼工程は、前記塩化水素を含むガス化ガスを800~1000℃で燃焼する請求項5~7のいずれか1項に記載の廃棄物処理方法。
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