[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態を図1~図4に基づいて説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、図面における上側を「上」とし、図面における下側を「下」として説明する。
第1実施形態の緩衝器1は、図1に示すように、いわゆる複筒型の油圧緩衝器であり、作動流体としての油液(図示略)が封入されるシリンダ2を備えている。シリンダ2は、円筒状の内筒3と、この内筒3よりも大径で内筒3を覆うように同心状に設けられた有底円筒状の外筒4とを有している。シリンダ2においては、内筒3と外筒4との間にリザーバ室6が形成されている。
外筒4は、円筒状の胴部材11と、胴部材11の下部側に嵌合固定されて胴部材11の下部を閉塞する底部材12とからなっている。底部材12には、胴部材11とは反対の外側位置に取付アイ13が固定されている。
緩衝器1は、シリンダ2の内筒3の内部に摺動可能に設けられるピストン18を備えている。このピストン18は、内筒3内に、一方のシリンダ内室である上室19と、他方のシリンダ内室である下室20(一方の室)との2つの室を画成している。言い換えれば、ピストン18は、シリンダ2内に摺動可能に設けられてシリンダ2内を一側の上室19と他側の下室20とに区画している。内筒3内の上室19および下室20内には作動流体としての油液が封入され、内筒3と外筒4との間のリザーバ室6内には作動流体としての油液とガスとが封入されている。
緩衝器1は、軸方向の一端側部分がシリンダ2の内筒3の内部に配置されてピストン18に連結固定されるとともに他端側部分がシリンダ2の外部に延出されるピストンロッド21を備えている。ピストンロッド21は、上室19内を貫通しており、下室20は貫通していない。よって、上室19は、ピストンロッド21が貫通するロッド側室であり、下室20はシリンダ2の底側のボトム側室である。
ピストン18およびピストンロッド21は、一体に移動する。ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を増やす緩衝器1の伸び行程において、ピストン18は上室19側へ移動する。ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を減らす緩衝器1の縮み行程において、ピストン18は下室20側へ移動する。
ロッドガイド22が、内筒3および外筒4の上端開口側に嵌合されている。シール部材23が、ロッドガイド22よりもシリンダ2の外部側である外筒4の上側に嵌合されている。ロッドガイド22およびシール部材23は、いずれも円環状をなしている。ピストンロッド21は、これらロッドガイド22およびシール部材23のそれぞれの内側に摺動可能に挿通されてシリンダ2の内部から外部に延出されている。ピストンロッド21の軸方向の一端側部分がシリンダ2の内部でピストン18に固定され、ピストンロッド21の他端側部分がシリンダ2の外部に、ロッドガイド22およびシール部材23を介して突出している。
ロッドガイド22は、ピストンロッド21を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド21の移動を案内する。シール部材23は、その外周部で外筒4に密着し、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド21の外周部に摺接する。これにより、シール部材23は、内筒3内の油液と、外筒4内のリザーバ室6の高圧ガスおよび油液とが外部に漏洩するのを防止する。
ロッドガイド22は、その外周部が、下部よりも上部が大径となる段差状をなしている。ロッドガイド22は、小径の下部において内筒3の上端の内周部に嵌合し、大径の上部において外筒4の上部の内周部に嵌合する。外筒4の底部材12上には、下室20とリザーバ室6とを画成するベースバルブ25が設置されている。ベースバルブ25に内筒3の下端の内周部が嵌合されている。外筒4の上端部は、径方向内方に加締められて係止部26となっている。係止部26とロッドガイド22とがシール部材23を挟持している。
ピストンロッド21は、主軸部27と、これよりも小径の取付軸部28とを有している。ピストンロッド21は、主軸部27が、ロッドガイド22およびシール部材23に摺動可能に嵌合され、取付軸部28がシリンダ2内に配置されてピストン18等に連結されている。主軸部27の取付軸部28側の端部は、軸直交方向に広がる軸段部29となっている。取付軸部28の外周部には、軸方向の中間位置に軸方向に延在する一対の通路切欠部30が形成されており、軸方向の主軸部27とは反対側の先端位置にオネジ31が形成されている。通路切欠部30は、取付軸部28の周方向の180度異なる二カ所の位置を平面状に平行に切り欠いて形成された、いわゆる二面幅の形状をなしている。
緩衝器1は、例えばピストンロッド21のシリンダ2からの突出部分が上部に配置されて車体により支持され、シリンダ2側の取付アイ13が下部に配置されて車輪側に連結される。これとは逆に、シリンダ2側が車体により支持され、ピストンロッド21が車輪側に連結されるようにしても良い。
図2に示すように、ピストン18は、ピストンロッド21に連結される金属製のピストン本体35と、ピストン本体35の外周面に一体に装着されて内筒3内を摺動する円環状の合成樹脂製の摺動部材36とによって構成されている。
ピストン本体35は、円環状の主体部34を有している。主体部34には、上室19と下室20とを連通可能な複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴37と、上室19と下室20とを連通可能とする複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴39とが設けられている。ピストン本体35は、焼結品である。通路穴37,39は焼結時に形成される。あるいは、通路穴37,39はドリルにより切削形成される。
複数の通路穴37は、ピストン本体35の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴39を挟んで等ピッチで形成されており、通路穴37,39のうちの半数を構成する。複数の通路穴37は、2カ所の屈曲点を有するクランク形状である。複数の通路穴37は、ピストン18の軸方向一側(図2の上側)がピストン18の径方向における外側に、ピストン18の軸方向他側(図2の下側)が一側よりもピストン18の径方向における内側に開口している。
これら通路穴37の下室20側には、通路穴37内の通路を開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構41が設けられている。第1減衰力発生機構41が下室20側に配置されることで、複数の通路穴37内の通路は、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室19から下流側となる下室20に向けて油液が流れ出す伸び側の通路となる。これら通路穴37内の通路に対して設けられた第1減衰力発生機構41は、伸び側の通路穴37内の通路から下室20への油液の流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の減衰力発生機構となっている。
通路穴37,39のうちの残りの半数を構成する通路穴39は、ピストン本体35の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴37を挟んで等ピッチで形成されている。
複数の通路穴39は、2カ所の屈曲点を有するクランク形状であり、ピストン18の軸線方向他側(図2の下側)がピストン18の径方向における外側に、ピストン18の軸線方向一側(図2の上側)が他側よりもピストン18の径方向における内側に開口している。
これら通路穴39の上室19側には、通路穴39内の通路を開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構42が設けられている。第1減衰力発生機構42が上室19側に配置されることで、複数の通路穴39内の通路は、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室20から下流側となる上室19に向けて油液が流れ出す縮み側の通路となる。これら通路穴39内の通路に対して設けられた第1減衰力発生機構42は、縮み側の通路穴39内の通路から上室19への油液の流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の減衰力発生機構となっている。
ピストン本体35は、略円板形状をなしている。ピストン本体35の径方向の中央には、ピストンロッド21の取付軸部28が挿入される挿入穴44が軸方向に貫通して形成されている。挿入穴44は、ピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる軸方向一側の小径穴部45と、小径穴部45よりも大径の軸方向他側の大径穴部46とを有している。ピストン18は、小径穴部45において取付軸部28に嵌合されることで、取付軸部28に対し径方向に位置決めされる。
ピストン本体35の軸方向における下室20側の端部には、通路穴37の下室20側の開口よりも、ピストン本体35の径方向における内側に、主体部34よりも軸方向に突出する円環状の内側シート部47が形成されている。ピストン本体35の軸方向の下室20側の端部には、通路穴37の下室20側の開口よりも、ピストン本体35の径方向における外側に、第1減衰力発生機構41の一部を構成する円環状のバルブシート部48が、主体部34よりも軸方向に突出して形成されている。
ピストン本体35の軸方向の上室19側の端部には、通路穴39の上室19側の開口よりもピストン本体35の径方向における内側に、主体部34よりも軸方向に突出する円環状の内側シート部49が形成されている。ピストン本体35の軸方向の上室19側の端部には、通路穴39の上室19側の開口よりも、ピストン本体35の径方向における外側に、第1減衰力発生機構42の一部を構成する円環状のバルブシート部50が、主体部34よりも軸方向に突出して形成されている。
ピストン本体35の挿入穴44は、大径穴部46が、小径穴部45よりも軸方向の内側シート部47側に設けられている。ピストン本体35の大径穴部46内の通路は、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と常時連通している。
ピストン本体35において、バルブシート部48よりも径方向外側の主体部34は、バルブシート部48よりも軸線方向高さが低い段差状をなしている。ピストン本体35の段差状の部分に、縮み側の通路穴39の下室20側の開口が配置されている。また、同様に、ピストン本体35において、バルブシート部50よりも径方向外側の主体部34は、バルブシート部50よりも軸線方向高さが低い段差状をなしている。この段差状の部分に伸び側の通路穴37の上室19側の開口が配置されている。
縮み側の第1減衰力発生機構42は、ピストン18のバルブシート部50を含んでおり、軸方向のピストン18側から順に、一枚のディスク62と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には四枚)のディスク63と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク64と、とを有している。ディスク64のディスク63とは反対側には、ディスク64側から順に、一枚のディスク65と、一枚のディスク66と、一枚の環状部材67とが設けられている。ディスク62~66および環状部材67は、金属製であって、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。ディスク62~66および環状部材67は、取付軸部28に嵌合されることで、取付軸部28に対して径方向に位置決めされる。
ディスク62は、ピストン18の内側シート部49の外径よりも大径であってバルブシート部50の内径よりも小径の外径となっており、内側シート部49に常時当接している。複数枚のディスク63は、ピストン18のバルブシート部50の外径と略同等の外径となっており、バルブシート部50に着座可能となっている。
複数枚のディスク64は、ディスク63の外径よりも小径の外径となっている。ディスク65は、ディスク64の外径よりも小径であってピストン18の内側シート部49の外径よりも小径の外径となっている。ディスク66は、ディスク64の外径よりも大径であってディスク63の外径よりも小径の外径となっている。環状部材67は、ディスク66の外径よりも小径であってピストンロッド21の軸段部29の外径よりも大径の外径となっている。環状部材67は、ディスク62~66よりも厚く高剛性となっており、軸段部29に当接している。
複数枚のディスク63および複数枚のディスク64が、バルブシート部50に離着座可能な縮み側のメインバルブ71を構成している。メインバルブ71は、バルブシート部50から離座することで、通路穴39内の通路を上室19に連通させるとともに、バルブシート部50との間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。環状部材67は、ディスク66とによって、メインバルブ71の開方向への規定以上の変形を規制する。
開弁時に出現するメインバルブ71およびバルブシート部50の間の通路と、通路穴39内の通路とが、ピストン18の下室20側への移動によりシリンダ2内の上流側となる下室20から下流側となる上室19に油液が流れ出す縮み側の第1通路72を構成している。減衰力を発生する縮み側の第1減衰力発生機構42は、メインバルブ71とバルブシート部50とを含んでいる。よって、縮み側の第1減衰力発生機構42は、この第1通路72に設けられている。第1通路72は、バルブシート部50を含むピストン18に形成されており、ピストンロッド21およびピストン18が縮み側に移動するときに油液が通過する。
ここで、縮み側の第1減衰力発生機構42には、バルブシート部50およびこれに当接するメインバルブ71のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、縮み側の第1減衰力発生機構42は、バルブシート部50およびメインバルブ71が全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第1通路72は、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスが形成されておらず、上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。第1減衰力発生機構42は、ピストンロッド21およびピストン18が伸び側に移動するときには閉弁状態となって、第1通路72で油液を通過させることはない。
伸び側の第1減衰力発生機構41は、ピストン18のバルブシート部48を含んでおり、軸方向のピストン18側から順に、一枚のディスク82と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には五枚)のディスク83と、を有している。ディスク83のディスク82とは反対側には、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には三枚)のディスク84が設けられている。ディスク82~84は、金属製であって、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしており、取付軸部28に嵌合されることで、取付軸部28に対し径方向に位置決めされる。
ディスク82は、ピストン18の内側シート部47の外径よりも大径であってバルブシート部48の内径よりも小径の外径となっており、内側シート部47に常時当接している。ディスク82には、図3に示すように、通路穴37内の通路を、ピストン18の大径穴部46内の通路およびピストンロッド21の通路切欠部30内の通路に常時連通させる切欠部88が、径方向の内側シート部47よりも外側位置から内周縁部まで形成されている。
複数枚のディスク83は、ピストン18のバルブシート部48の外径と略同等の外径となっており、バルブシート部48に着座可能となっている。ディスク84は、ディスク83の外径よりも小径であってピストン18の内側シート部47の外径よりも小径の外径となっている。
複数枚のディスク83が、バルブシート部48に離着座可能な伸び側のメインバルブ91を構成している。メインバルブ91は、バルブシート部48から離座することで、通路穴37内の通路を下室20に連通させるとともに、バルブシート部48との間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。
図2に示すように、開弁時に出現するメインバルブ91およびバルブシート部48の間の通路と、通路穴37内の通路とが、ピストン18の上室19側への移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20に油液が流れ出す伸び側の第1通路92を構成している。減衰力を発生する伸び側の第1減衰力発生機構41は、メインバルブ91とバルブシート部48とを含んでおり、よって、この第1通路92に設けられている。第1通路92は、バルブシート部48を含むピストン18に形成されており、ピストンロッド21およびピストン18が伸び側に移動するときに油液が通過する。
伸び側の第1減衰力発生機構41には、バルブシート部48およびこれに当接するメインバルブ91のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、伸び側の第1減衰力発生機構41は、バルブシート部48およびメインバルブ91が全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第1通路92は、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。第1減衰力発生機構41は、ピストンロッド21およびピストン18が縮み側に移動するときには閉弁状態となって、第1通路92で油液を通過させることはない。
複数枚のディスク84のピストン18とは反対側には、ピストン18側から順に、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク101と、ディスク101と同一外径の一枚のディスク102と、外周側に一つのシール部材103が設けられた一つの弁座部材105と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク106と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク107と、一つのキャップ部材108と、一枚のディスク110と、一つの環状部材111とが、ピストンロッド21の取付軸部28をそれぞれの内側に挿通させて設けられている。ピストンロッド21の取付軸部28には、環状部材111よりもピストン18とは反対側に突出する部分にオネジ31が形成されている。このオネジ31にナット112が螺合されている。ナット112は、環状部材111に当接している。
ディスク101,102,106,107,110、弁座部材105、キャップ部材108および環状部材111は、いずれも金属製である。シール部材103はゴム等の弾性材料製である。ディスク101,102,106,107,110および環状部材111は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしており、取付軸部28に嵌合されることで、取付軸部28に対し径方向に位置決めされる。キャップ部材108および弁座部材105は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を挿通可能な円環状をなしている。キャップ部材108は、ピストンロッド21の取付軸部28に嵌合されており、これにより、取付軸部28に対し径方向に位置決めされる。
キャップ部材108は、有底筒状の一体成形品であり、一定厚さの金属板からプレス成形により打ち抜かれ塑性変形させられて形成されている。キャップ部材108は、有孔円形平板状の底部122と、底部122の外周縁部から、底部122の軸方向に沿って一側に延出する円筒状の外側筒部124と、外側筒部124の軸方向の底部122とは反対側の端縁部から底部122とは反対方向に拡径しつつ延出する開口拡径部125と、底部122の内周縁部から、底部122の軸方向に沿って外側筒部124と同側に延出する円筒状の内側筒部126と、を有している。
キャップ部材108は、底部122、外側筒部124、開口拡径部125および内側筒部126が同軸状に配置されている。開口拡径部125は、キャップ部材108の中心軸線を含む面での断面が円弧状をなしている。内側筒部126は、外側筒部124よりも軸方向長さが短く、開口拡径部125は、その全体が、軸方向において内側筒部126よりも底部122とは反対側に位置している。内側筒部126には、軸方向の底部122とは反対側の端部の外周縁部に面取り127が全周にわたって形成されており、同じ端部の内周縁部にも面取り128が全周にわたって形成されている。
キャップ部材108は、底部122の内周側の内側筒部126の内側にピストンロッド21が挿入可能である。キャップ部材108は、底部122がピストン18とは反対側に向く向きで配置され、内側筒部126の内周部においてピストンロッド21の取付軸部28に嵌合している。これらにより、キャップ部材108は、取付軸部28に対して内側筒部126を含めて径方向に位置決めされる。
弁座部材105は、キャップ部材108の外側筒部124の内径よりも小径の外径を有する略円板形状である。弁座部材105は、取付軸部28を挿通させる貫通孔131が径方向の中央に厚さ方向に貫通して形成された有孔円形平板状の主体部132を有している。貫通孔131は、軸方向一側の小径穴部129と、小径穴部129よりも大径の軸方向他側の大径穴部130とを有している。弁座部材105は、主体部132の軸方向の大径穴部130側に、主体部132の径方向における内側から順に内側シート部134、中間バルブシート部135および外側バルブシート部136を有している。弁座部材105は、軸方向の小径穴部129側に、主体部132の径方向における内側から順に内側シート部138およびバルブシート部139を有している。
内側シート部134は、円環状をなしており、主体部132の内周縁部から、主体部132の軸方向に沿って一側に突出している。中間バルブシート部135も、円環状をなしており、内側シート部134よりも外側となる主体部132の径方向の中間位置から、主体部132の軸方向に沿って内側シート部134と同側に突出している。外側バルブシート部136も、円環状をなしており、中間バルブシート部135よりも外側となる主体部132の径方向の外周側から、主体部132の軸方向に沿って内側シート部134と同側に突出している。
内側シート部138も、円環状をなしており、主体部132の内周縁部から、主体部132の軸方向に沿って内側シート部134とは反対側に突出している。内側シート部134,138は、いずれも径方向内側が貫通孔131となっている。バルブシート部139も、円環状をなしており、内側シート部138よりも外側となる主体部132の径方向の中間位置から、主体部132の軸方向に沿って内側シート部138と同側に突出している。中間バルブシート部135およびバルブシート部139は、同等の内径であって、同等の外径となっている。
主体部132には、内側シート部134,138と、中間バルブシート部135およびバルブシート部139との間に、主体部132を軸方向に貫通する内側通路孔141が形成されている。内側通路孔141は、主体部132の周方向に等間隔で複数形成されている。主体部132には、中間バルブシート部135と外側バルブシート部136との間であって、バルブシート部139よりも径方向外側に、主体部132を軸方向に貫通する外側通路孔143が形成されている。外側通路孔143は、主体部132の径方向において内側通路孔141よりも外側に配置されており、主体部132の周方向に等間隔で複数形成されている。
主体部132には、外周部の軸方向中間位置に、径方向内方に凹む円環状のシール溝145が形成されている。このシール溝145内に、シール部材103が配置されている。
シール部材103はOリングであり、シール溝145の円筒面からなる溝底面に全周にわたって締め代をもって嵌合している。
弁座部材105は、内側シート部134、中間バルブシート部135および外側バルブシート部136を、底部122側に向けた状態で、外周側が、主体部132においてキャップ部材108の外側筒部124内に挿入されており、よって、キャップ部材108内に収納されている。この状態で、シール部材103は、キャップ部材108の外側筒部124の内周面に全周にわたって締め代をもって嵌合することになり、弾性変形して、外側筒部124と弁座部材105の主体部132との隙間をシールする。それとともに、弁座部材105は、内周側が、貫通孔131の大径穴部130においてキャップ部材108の内側筒部126に嵌合する。これにより、弁座部材105は、キャップ部材108の内側筒部126に対して径方向に位置決めされることになる。
キャップ部材108、弁座部材105およびシール部材103は、内側にキャップ室146を形成するハウジング147を構成している。キャップ室146は、ハウジング147内のキャップ部材108の底部122と弁座部材105との間に設けられている。複数枚のディスク107および複数枚のディスク106は、このキャップ室146内に設けられている。弁座部材105は、中間バルブシート部135および外側バルブシート部136がキャップ室146側に、バルブシート部139が下室20側に配置されている。ハウジング147は、環状の弁座部材105を含めて下室20に配置されている。弁座部材105は、キャップ室146と下室20とを区画しており、キャップ室146および下室20の両方に臨んで設けられている。
複数枚のディスク106は、弁座部材105の外側バルブシート部136の外径と略同等の外径となっており、キャップ部材108の内側筒部126の外径と同等の内径となっている。複数枚のディスク106は、内周部において、キャップ部材108の内側筒部126の外周部に嵌合する。これにより、複数枚のディスク106は、キャップ部材108の内側筒部126に対して径方向に位置決めされる。複数枚のディスク106は、内側シート部134に常時当接し、外側バルブシート部136および中間バルブシート部135に着座可能となっている。複数枚のディスク106には、内側シート部134と中間バルブシート部135との間となる径方向の中間位置に、軸方向に貫通する貫通穴161がそれぞれ形成されている。貫通穴161内の通路は、弁座部材105の内側通路孔141内の通路をキャップ室146に常時連通させる。
複数枚のディスク107は、ディスク106の外径よりも小径であって弁座部材105の内側シート部134の外径と略同径の外径となっており、キャップ部材108の内側筒部126の外径と同等の内径となっている。複数枚のディスク107は、内周部において、キャップ部材108の内側筒部126の外周部に嵌合する。これにより、複数枚のディスク107は、キャップ部材108の内側筒部126に対して径方向に位置決めされる。
ディスク102は、弁座部材105のバルブシート部139の外径と略同等の外径となっている。ディスク102は、内側シート部138に常時当接し、バルブシート部139に着座可能となっている。複数枚のディスク101は、ディスク102の外径と略同等の外径となっており、ディスク102の弁座部材105とは反対側に重ねられている。
図3に示すように、ディスク102には、内側通路孔141内の通路を、弁座部材105の小径穴部129内の通路およびピストンロッド21の通路切欠部30内の通路に常時連通させる切欠部165が、径方向のバルブシート部139よりも内側かつ内側シート部138よりも外側の途中位置から内周縁部まで形成されている。
図2に示すように、キャップ室146は、ディスク106の貫通穴161内の通路と、弁座部材105の内側通路孔141内の通路と、ディスク102の切欠部165内の通路と、弁座部材105の小径穴部129内の通路と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と、ピストン18の大径穴部46内の通路と、ディスク82の切欠部88内の通路と、ピストン18の通路穴37内の通路と、を介して上室19に常時連通している。
複数枚のディスク106は、外側バルブシート部136および中間バルブシート部135に離着座可能なサブバルブ171(第2サブバルブ)を構成している。
サブバルブ171は、キャップ室146内に設けられており、キャップ室146内で外側バルブシート部136から離座することで、外側通路孔143内の通路とキャップ室146とを連通させることになる。よって、サブバルブ171は、外側通路孔143内の通路と、キャップ室146と、複数枚のディスク106の貫通穴161内の通路と、内側通路孔141内の通路と、ディスク102の切欠部165内の通路と、弁座部材105の小径穴部129内の通路と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と、ピストン18の大径穴部46内の通路と、ディスク82の切欠部88内の通路と、ピストン18の通路穴37内の通路とを介して、下室20を上室19に連通させる。このとき、サブバルブ171は、外側バルブシート部136との間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。サブバルブ171は、キャップ室146内へ下室20から外側通路孔143内の通路を介して油液を流入させる際に開く流入バルブであり、キャップ室146から下室20への、外側通路孔143内の通路を介しての油液の流出を規制する逆止弁である。
外側通路孔143内の通路と、開弁時に出現するサブバルブ171および外側バルブシート部136の間の通路と、キャップ室146と、ディスク106の貫通穴161内の通路と、弁座部材105の内側通路孔141内の通路と、ディスク102の切欠部165内の通路と、弁座部材105の小径穴部129内の通路と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と、ピストン18の大径穴部46内の通路と、ディスク82の切欠部88内の通路と、通路穴37内の通路とが、ピストン18の下室20側への移動によりシリンダ2内の上流側となる下室20から下流側となる上室19に油液が流れ出す第2通路172を構成している。
第2通路172は、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室20から下流側となる上室19に向けて油液が流れ出す縮み側の通路となる。第2通路172は、ピストンロッド21を切り欠いて形成される通路切欠部30内の通路を含んでおり、言い換えれば、その一部がピストンロッド21を切り欠いて形成されている。
サブバルブ171と、外側バルブシート部136および中間バルブシート部135と、キャップ部材108とが、縮み側の第2通路172に設けられ、この第2通路172を開閉し、この第2通路172から上室19への油液の流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の第2減衰力発生機構173を構成している。言い換えれば、第2減衰力発生機構173は、その外側バルブシート部136および中間バルブシート部135が弁座部材105に設けられている。縮み側の第2減衰力発生機構173を構成するサブバルブ171は縮み側のサブバルブである。
キャップ部材108は、略一定厚さであり、サブバルブ171を構成するディスク106よりも厚い。これに、径方向両側に外側筒部124および内側筒部126が形成されていることも合わせて、底部122がディスク106よりも高剛性となっている。よって、キャップ部材108の底部122が、サブバルブ171に当接してその開方向への規定以上の変形を規制する。
第2通路172においては、ディスク102の切欠部165内の通路が、流路断面積が固定の部分の中で絞られるオリフィス176となり、また、ディスク82の切欠部88内の通路も、流路断面積が固定の部分の中で絞られるオリフィス175となる。オリフィス175,176は、サブバルブ171が開弁して、縮み側の第2通路172で油液が流れる際の油液の流れのサブバルブ171よりも下流側に配置されている。第2通路172には、サブバルブ171が開弁する際の油液の流れの上流側にオリフィス176が、下流側にオリフィス175が配置されている。なお、第2通路172に、オリフィス175,176のうちのいずれか一方のみを設ける構成としても良い。
縮み側の第2減衰力発生機構173は、外側バルブシート部136、中間バルブシート部135およびこれらに当接するサブバルブ171のいずれにも、これらが当接状態にあっても下室20と上室19とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、縮み側の第2減衰力発生機構173は、外側バルブシート部136および中間バルブシート部135とディスク106とが全周にわたって当接状態にあれば、下室20と上室19とを連通させることはない。言い換えれば、第2通路172は、下室20と上室19とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、下室20と上室19とを常時連通させる通路ではない。第2減衰力発生機構173は、ピストンロッド21およびピストン18が伸び側に移動するときには閉弁状態となって、第2通路172で油液を通過させることはない。
下室20と上室19とを連通可能な縮み側の第2通路172は、同じく下室20と上室19とを連通可能な縮み側の通路である第1通路72と並列している。第1通路72に第1減衰力発生機構42が設けられ、第2通路172に第2減衰力発生機構173が設けられている。よって、いずれも縮み側の第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構173は、並列に配置されている。
複数枚のディスク84は、ディスク101の外径よりも小径であって弁座部材105の内側シート部138の外径と略同径の外径となっている。ディスク110は、キャップ部材108の底部122の内径よりも大径であって底部122の外径よりも小径の外径となっている。環状部材111は、ディスク110の外径よりも大径となっている。
ディスク102および複数枚のディスク101は、バルブシート部139に離着座可能なサブバルブ181(第1サブバルブ)を構成している。ディスク102および複数枚のディスク101は、ディスク106の外径よりも小径となっており、ディスク106よりも高剛性となっている。ディスク102および複数枚のディスク101からなるサブバルブ181も、複数枚のディスク106からなるサブバルブ171よりも高剛性となっている。
サブバルブ181は、下室20内に設けられており、バルブシート部139から離座することで、ピストン18の通路穴37内の通路と、ディスク82の切欠部88内の通路と、ピストン18の大径穴部46内の通路と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と、弁座部材105の小径穴部129内の通路と、ディスク102の切欠部165内の通路とを介して、上室19を下室20に連通させる。このとき、サブバルブ181は、バルブシート部139との間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。サブバルブ181は、上室19から油液を下室20に排出する際に開く排出バルブであり、下室20から上室19への油液の流入を閉じて規制する逆止弁である。
ピストン18の通路穴37内の通路と、ディスク82の切欠部88内の通路と、ピストン18の大径穴部46内の通路と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と、弁座部材105の小径穴部129内の通路と、ディスク102の切欠部165内の通路と、開弁時に出現するサブバルブ181およびバルブシート部139の間の通路とが、ピストン18の伸び側への移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20に油液が流れ出す第2通路182を構成している。ここで、第2通路182は、ディスク102の切欠部165内の通路等に連通する、弁座部材105の内側通路孔141内の通路と、ディスク106の貫通穴161内の通路と、キャップ室146とを含んでいる。
第2通路182は、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室19から下流側となる下室20に向けて油液が流れ出す伸び側の通路となる。第2通路182は、ピストンロッド21を切り欠いて形成される通路切欠部30内の通路を含んでおり、言い換えれば、その一部がピストンロッド21を切り欠いて形成されている。
サブバルブ181と、バルブシート部139とが、伸び側の第2通路182に設けられ、この第2通路182を開閉し、この第2通路182から下室20への油液の流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の第2減衰力発生機構183を構成している。言い換えれば、この第2減衰力発生機構183は、バルブシート部139が弁座部材105に設けられている。伸び側の第2減衰力発生機構183を構成するサブバルブ181は伸び側のサブバルブである。
第2通路182においても、ディスク82の切欠部88内の通路が、流路断面積が固定の部分の中で絞られるオリフィス175となり、また、ディスク102の切欠部165内の通路も、流路断面積が固定の部分の中で絞られるオリフィス176となる。オリフィス175,176は、第2通路172,182に共通である。オリフィス175,176は、サブバルブ181が開弁して、伸び側の第2通路182で油液が流れる際の油液の流れのサブバルブ181よりも上流側に配置されている。第2通路182には、サブバルブ181が開弁する際の油液の流れの上流側にオリフィス175が、下流側にオリフィス176が配置されている。第2通路182に、オリフィス175,176のうちのいずれか一方のみを設ける構成としても良い。
オリフィス175は、第1減衰力発生機構41のうち、ピストン18に当接するディスク82を切り欠いて形成されており、オリフィス176は、第2減衰力発生機構183のうち、弁座部材105に当接するディスク102を切り欠いて形成されている。
第2減衰力発生機構173,183は、弁座部材105に一部形成されている第2通路172の一側にサブバルブ181が、他側にサブバルブ171が設けられており、弁座部材105に一部形成されている第2通路182の一側にサブバルブ181が、他側にサブバルブ171が設けられている。第2減衰力発生機構173の一部を構成する、複数枚のディスク106からなるサブバルブ171と、外側バルブシート部136および中間バルブシート部135とが、同じく第2減衰力発生機構173の一部を構成するキャップ部材108内に収納されており、弁座部材105およびシール部材103も、キャップ部材108内に収納されている。言い換えれば、キャップ部材108内には、複数枚のディスク106からなるサブバルブ171と弁座部材105とシール部材103とが収納されている。なお、キャップ部材108内には、第2減衰力発生機構173,183のうちの少なくとも一部を収納してれば良い。
サブバルブ181を構成するディスク101,102は、サブバルブ171を構成するディスク106よりも、高剛性となっており、サブバルブ181は、サブバルブ171よりも高剛性となっている。よって、下室20からキャップ室146への流入バルブであるサブバルブ171は、第2通路182から下室20への排出バルブであるサブバルブ181よりも開弁圧が低い。サブバルブ181とサブバルブ171とは独立して開閉する。
伸び側の第2減衰力発生機構183は、バルブシート部139およびこれに当接するサブバルブ181のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、伸び側の第2減衰力発生機構183は、バルブシート部139とサブバルブ181とが全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第2通路182は、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。第2減衰力発生機構183は、ピストンロッド21およびピストン18が縮み側に移動するときには閉弁状態となって、第2通路182で油液を通過させることはない。
緩衝器1は、少なくともピストン18内で軸方向に油液を通過させる流れとしては、上室19と下室20とが、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構173,183を介してのみ連通可能である。よって、緩衝器1は、少なくともピストン18内を軸方向に通過する油液の通路上には、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは設けられていない。
上室19と下室20とを連通可能な伸び側の第2通路182は、同じく上室19と下室20とを連通可能な伸び側の通路である第1通路92と、上室19側の通路穴37内の通路を除いて並列している。この並列部分には、第1通路92に第1減衰力発生機構41が設けられ、第2通路182に第2減衰力発生機構183が設けられている。よって、いずれも伸び側の第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構183は、並列に配置されている。
第2減衰力発生機構173,183は、弁座部材105と、弁座部材105に設けられる第2通路172,182の一側に設けられるサブバルブ171および他側に設けられるサブバルブ181とを有している。第2減衰力発生機構173,183は、その第2減衰力発生機構173が、第2通路172を形成する有底筒状のキャップ部材108を備えている。サブバルブ181は、弁座部材105の下室20側に設けられており、サブバルブ171は、キャップ部材108の底部122と弁座部材105との間のキャップ室146内に設けられている。
図1に示すように、外筒4の底部材12と内筒3との間には、上記したベースバルブ25が設けられている。このベースバルブ25は、下室20とリザーバ室6とを仕切るベースバルブ部材191と、このベースバルブ部材191の下側つまりリザーバ室6側に設けられるディスク192と、ベースバルブ部材191の上側つまり下室20側に設けられるディスク193と、ベースバルブ部材191にディスク192およびディスク193を取り付ける取付ピン194とを有している。
ベースバルブ部材191は、円環状をなしており、径方向の中央に取付ピン194が挿通される。ベースバルブ部材191には、下室20とリザーバ室6との間で油液を流通可能な複数の通路穴195と、これら通路穴195よりもベースバルブ部材191の径方向の外側にて、下室20とリザーバ室6との間で油液を流通可能な複数の通路穴196とが形成されている。リザーバ室6側のディスク192は、下室20から通路穴195を介するリザーバ室6への油液の流れを許容する一方で、リザーバ室6から下室20への通路穴195を介する油液の流れを規制する。ディスク193は、リザーバ室6から通路穴196を介する下室20への油液の流れを許容する一方で、下室20からリザーバ室6への通路穴196を介する油液の流れを規制する。
ディスク192は、ベースバルブ部材191とによって、緩衝器1の縮み行程において開弁して下室20からリザーバ室6に油液を流すとともに減衰力を発生する縮み側の減衰バルブ機構197を構成している。ディスク193は、ベースバルブ部材191とによって、緩衝器1の伸び行程において開弁してリザーバ室6から下室20内に油液を流すサクションバルブ機構198を構成している。なお、サクションバルブ機構198は、主としてピストンロッド21のシリンダ2からの伸び出しにより生じる液の不足分を補うようにリザーバ室6から下室20に実質的に減衰力を発生することなく油液を流す機能を果たす。
緩衝器1を組み立てる場合、図4に示すように、キャップ部材108と、複数枚のディスク107と、サブバルブ171を構成する複数枚のディスク106と、弁座部材105と、シール部材103とが、予め組み立てられてサブ組立体200とされる。
その場合、例えば、底部122が鉛直方向の下部に位置する状態とされたキャップ部材108の内側筒部126に複数枚のディスク107を嵌合させることによって、これらディスク107をキャップ部材108の底部122に載置させ、さらに、内側筒部126に複数枚のディスク106を嵌合させることによって、ディスク106をディスク107に載置させる。
そして、シール部材103がシール溝145に装着された状態の弁座部材105を、内側シート部134、中間バルブシート部135および外側バルブシート部136がディスク106側に向く向きとして、その主体部132の外周部およびシール部材103の外周部をキャップ部材108の外側筒部124に挿入し、シール部材103および主体部132を外側筒部124で案内しながら、大径穴部130に内側筒部126を嵌合させる。すると、弁座部材105とキャップ部材108の底部122とが、複数枚のディスク106および複数枚のディスク107を挟持する状態になる。
ここで、主体部132の外周部およびシール部材103の外周部をキャップ部材108の外側筒部124に挿入する際に、キャップ部材108の開口拡径部125が、これらを径方向に位置決めするように案内する。また、大径穴部130に内側筒部126を嵌合させる際に、内側筒部126の外周側の面取り127が、弁座部材105を径方向に位置決めするように案内する。
シール部材103は、弁座部材105に装着された状態でキャップ部材108の外側筒部124に挿入されると、径方向に圧縮変形して、弁座部材105および外側筒部124の両方に反力を付与し、弁座部材105および外側筒部124の両方との間で摩擦力を発生させる。この状態では、シール部材103の摩擦力のみによって、弁座部材105およびキャップ部材108の相対的な軸方向移動が規制されることになる。その結果、大径穴部130と内側筒部126とが嵌合状態に維持されるため、内側筒部126に嵌合されている複数枚のディスク106および複数枚のディスク107が内側筒部126から抜けることが弁座部材105で規制される。よって、複数枚のディスク106および複数枚のディスク107は、内側筒部126に嵌合された状態に維持されるため、キャップ部材108に対し径方向に位置決めされて径方向の位置ずれが規制された状態に維持される。
このようにして、キャップ部材108、複数枚のディスク107、複数枚のディスク106、弁座部材105およびシール部材103が、一体のサブ組立体200となる。言い換えれば、弁座部材105は、外周に設けられているシール部材103によりキャップ部材108にサブ組み可能となっている。
図2に示すように、ピストンロッド21へのピストン18およびサブ組立体200等の組み付け時には、例えば、取付軸部28が鉛直方向の上部に位置する状態とされたピストンロッド21の取付軸部28をそれぞれに挿通させながら、軸段部29に、環状部材67と、ディスク66と、ディスク65と、複数枚のディスク64と、複数枚のディスク63と、ディスク62と、ピストン18とが順に重ねられる。このとき、ピストン18は、小径穴部45が大径穴部46よりも軸段部29側に位置する向きとされる。加えて、取付軸部28をそれぞれに挿通させながら、ピストン18に、ディスク82と、複数枚のディスク83と、複数枚のディスク84と、複数枚のディスク101と、ディスク102とが順に重ねられる。
そして、取付軸部28を挿通させながら、上記したサブ組立体200が、キャップ部材108において開口拡径部125がピストン18側に向く向きとされて、弁座部材105においてディスク102に重ねられる。このとき、キャップ部材108の内側筒部126が取付軸部28に嵌合する。
さらに、取付軸部28をそれぞれに嵌合させながら、キャップ部材108の底部122に、ディスク110と、環状部材111とが順に重ねられる。この状態で、環状部材111よりも突出するピストンロッド21のオネジ31にナット112を螺合させて、ナット112と軸段部29とで、これらの内周側を軸方向にクランプする。
このとき、キャップ部材108の内側筒部126は、弁座部材105に軸方向において当接することはなく、ナット112からの締結軸力は、環状部材111、ディスク110、キャップ部材108の底部122、複数枚のディスク107、複数枚のディスク106、弁座部材105の内側シート部134、主体部132、内側シート部138、ディスク102、複数枚のディスク101、複数枚のディスク84、複数枚のディスク83、ディスク82、ピストンの内側シート部47、主体部34、内側シート部49、ディスク62、複数枚のディスク63、複数枚のディスク64、ディスク65、ディスク66および環状部材67を介して軸段部29に伝達される。よって、キャップ部材108の内側筒部126は、軸力伝達経路から避けられており、内側筒部126の底部122とは反対側の端部は、軸力伝達には使用しない構造となっている。
この状態で、メインバルブ71は、ディスク62を介してピストン18の内側シート部49とディスク65とに内周側がクランプされるとともに、外周側がピストン18のバルブシート部50に全周にわたって当接する。また、この状態で、メインバルブ91は、ディスク82を介してピストン18の内側シート部47とディスク84とに内周側がクランプされるとともに、外周側がピストン18のバルブシート部48に全周にわたって当接する。また、この状態で、サブバルブ181は、弁座部材105の内側シート部138とディスク84とに内周側がクランプされるとともに、外周側が弁座部材105のバルブシート部139に全周にわたって当接する。また、この状態で、サブバルブ171は、弁座部材105の内側シート部134とディスク107とに内周側がクランプされるとともに、外周側が弁座部材105の中間バルブシート部135と外側バルブシート部136とに全周にわたって当接する。
ここで、いずれも伸び側の第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構183のうち、第1減衰力発生機構41のメインバルブ91は、第2減衰力発生機構183のサブバルブ181よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、伸び行程において、ピストン速度が所定値以下の低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構183が開弁する。また、ピストン速度がこの所定値よりも大きい通常速度領域では、第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構183がともに開弁することになる。サブバルブ181は、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生させる極微低速バルブである。
すなわち、伸び行程においては、ピストン18が上室19側に移動することで上室19の圧力が高くなり、下室20の圧力が低くなるが、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構173,183のいずれにも固定オリフィスがないため、第2減衰力発生機構183が開弁するまで油液は流れない。このため、ピストン速度が、第1所定値未満での伸び行程においては、減衰力は急激に立ち上がる。また、ピストン速度が、第2減衰力発生機構183が開弁する第1所定値以上の領域であって、第1所定値よりも高速の第2所定値以下の低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構183が開弁する。
つまり、サブバルブ181がバルブシート部139から離座して、伸び側の第2通路182で上室19と下室20とを連通させる。よって、上室19の油液が、ピストン18の通路穴37内の通路と、オリフィス175と、ピストン18の大径穴部46内の通路と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と、キャップ部材108の小径穴部129内の通路と、オリフィス176と、サブバルブ181およびバルブシート部139の間の通路とを介して下室20に流れる。これにより、ピストン速度が第2所定値以下の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
また、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値よりも大きい通常速度領域では、第2減衰力発生機構183が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構41が開弁する。
つまり、サブバルブ181がバルブシート部139から離座して、伸び側の第2通路182で上室19から下室20に油液を流す。このとき、第2通路182においてメインバルブ91よりも下流側に設けられたオリフィス175,176で油液の流れが絞られることにより、メインバルブ91に加わる圧力が高くなって差圧が高まり、メインバルブ91がバルブシート部48から離座して、伸び側の第1通路92で上室19から下室20に油液を流す。よって、上室19の油液が、通路穴37内の通路と、メインバルブ91およびバルブシート部48の間の通路とを介して下室20に流れる。これにより、ピストン速度が第2所定値よりも大きい通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。
ここで、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値よりも大きい通常速度領域では、上室19と下室20との差圧は、第1所定値以上第2所定値以下の極微低速領域よりも大きくなるが、第1通路92はオリフィスによる絞りがないため、メインバルブ91が開弁することで油液を第1通路92を介して大流量で流すことができる。これと、第2通路182をオリフィス175,176で絞ることとにより、サブバルブ181の変形を抑制することができる。
また、このとき、閉状態のサブバルブ171には下室20とキャップ室146とから反対向きの圧力が加わることになる。上室19と下室20との差圧が大きくなっても、第2通路182においてサブバルブ171よりも上流側にオリフィス175,176が形成されているため、キャップ室146の圧力上昇が上室19の圧力上昇に対して緩やかになり、キャップ室146と下室20との圧力差が大きくなることを抑制する。よって、閉状態のサブバルブ171が受けるキャップ室146と下室20との圧力差が大きくなることを抑制でき、サブバルブ171にキャップ室146側から下室20側に向けた大きな背圧が加わることを抑制できる。
緩衝器1は、伸び行程で上室19から下室20に油液を流す流路である第1通路92と第2通路182とを並列で設け、メインバルブ91とサブバルブ181とを並列で設けている。また、オリフィス175,176はサブバルブ181と直列に接続されている。
以上のように、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値よりも大きい通常速度領域では、メインバルブ91が開弁することで油液を第1通路92を介して大流量で流すことができる。これにより、サブバルブ181およびバルブシート部139の間の第2通路182を流れる流量が小さくなる。このため、サブバルブ181のバルブ剛性を下げることができる。よって、例えば、ピストン速度が通常速度領域でのピストン速度の上昇に対する減衰力の増加率を下げること等ができる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する伸び側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。これにより、設計自由度を拡大することができる。
いずれも縮み側の第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構173のうち、第1減衰力発生機構42のメインバルブ71は、第2減衰力発生機構173のサブバルブ171よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、縮み行程において、ピストン速度が所定値以下の低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構173が開弁し、ピストン速度がこの所定値よりも大きい通常速度領域では、第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構173がともに開弁することになる。サブバルブ171は、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生させる極微低速バルブである。
すなわち、縮み行程においては、ピストン18が下室20側に移動することで下室20の圧力が高くなり、上室19の圧力が低くなるが、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構173,183のいずれにも固定オリフィスがないため、第2減衰力発生機構173が開弁するまで油液は流れない。このため、減衰力は急激に立ち上がる。
ピストン速度が、第2減衰力発生機構173が開弁する第3所定値以上の領域であって、第3所定値よりも高速の第4所定値以下の低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構173が開弁する。
つまり、サブバルブ171が外側バルブシート部136から離座して、縮み側の第2通路172で下室20と上室19とを連通させる。よって、下室20の油液が、外側通路孔143内の通路と、サブバルブ171および外側バルブシート部136の間の通路と、キャップ室146と、サブバルブ171の貫通穴161内の通路と、内側通路孔141内の通路と、オリフィス176と、弁座部材105の小径穴部129内の通路と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と、ピストン18の大径穴部46内の通路と、オリフィス175と、ピストン18の通路穴37内の通路とを介して上室19に流れる。これにより、ピストン速度が第4所定値以下の低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
また、縮み行程において、ピストン速度が上記第4所定値よりも大きい通常速度領域では、第2減衰力発生機構173が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構42が開弁する。つまり、サブバルブ171が外側バルブシート部136から離座して、縮み側の第2通路172で下室20から上室19に油液を流すことになる。このとき、第2通路172はオリフィス176,175で油液の流量が絞られていることから、メインバルブ71に生じる差圧が大きくなり、メインバルブ71がバルブシート部50から離座して、縮み側の第1通路72で下室20から上室19に油液を流す。よって、下室20の油液が、通路穴39内の通路と、メインバルブ71およびバルブシート部50の間の通路とを介して流れる。これにより、ピストン速度が第4所定値よりも大きい通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。
ここで、通常速度領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率は、極微低速領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率よりも低くなる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する縮み側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。
縮み行程において、ピストン速度が第4所定値よりも大きい通常速度領域では、下室20と上室19との差圧は、極微低速領域よりも大きくなるが、第1通路72はオリフィスによる絞りがないため、メインバルブ71が開弁することで油液を第1通路72を介して大流量で流すことができる。これにより、サブバルブ171を流れる流量が小さくなるため、サブバルブ171のバルブ剛性を下げることができる。よって、ピストン速度が通常速度領域での減衰力を下げること等ができ、設計自由度を拡大することができる。
また、このとき(ピストン速度が速い場合)、下室20と上室19との差圧は大きくなるものの、第2通路172をオリフィス176,175で絞ることにより、上室19にオリフィス176,175を介して連通するキャップ室146内の圧力は、下室20と上室19との間の圧力となるので、下室20との差圧が大きくなり過ぎることを抑制できる。
これと、メインバルブ71が開弁することで油液を第1通路72を介して大流量で流すことができることとによって、サブバルブ171の変形を抑制することができる。
また、このとき、閉状態のサブバルブ181には下室20とキャップ室146とから反対向きの圧力が加わることになるが、下室20と上室19との差圧は大きいものの、下室20とキャップ室146とは、サブバルブ171が開くことで連通しており、サブバルブ181の下流側となるキャップ室146と上室19との間にオリフィス176,175が設けられているため、キャップ室146内の圧力が低下し過ぎることを抑制でき、下室20の圧力上昇に合わせてキャップ室146の圧力も上昇させることができる。よって、サブバルブ181の上流側と下流側の面に生じる差圧が小さく、サブバルブ181に下室20側からキャップ室146側に向けた大きな背圧が加わることを抑制できる。
以上の緩衝器1は、縮み行程で下室20から上室19に油液を流す流路として第1通路72と第2通路172とを並列で設け、メインバルブ71とサブバルブ171とを並列で設けている。また、オリフィス176,175は、第2通路172においてサブバルブ171と直列に接続されている。
なお、縮み行程においては、ベースバルブ25の減衰バルブ機構197による減衰力特性も合わせた特性となる。
伸び行程において、ピストン速度が第2所定値よりも大きい通常速度領域では上室19と下室20との差圧は、第2所定値以下の極微低速領域よりも大きくなるが、サブバルブ171よりも上流側に形成されたオリフィス176,175でキャップ室146の圧力上昇を抑えることができるため、サブバルブ171の背圧による変形を抑制することができる。また、縮み行程において、ピストン速度が第4所定値よりも大きい通常速度領域では下室20と上室19との差圧は、第4所定値以下の極微低速領域よりも大きくなるが、第1通路72で油液を大流量で流すことと、第2通路172のサブバルブ171よりも下流側をオリフィス176,175で絞ることとにより、サブバルブ171の変形を抑制することができる。よって、サブバルブ171の耐久性を向上させることができる。
伸び行程において、ピストン速度が第2所定値よりも大きい通常速度領域では上室19と下室20との差圧は、第2所定値以下の極微低速領域よりも大きくなるが、第1通路92で油液を大流量で流すことと、第2通路182をオリフィス175,176で絞ることとにより、サブバルブ181の変形を抑制することができる。また、縮み行程において、ピストン速度が第4所定値よりも大きい通常速度領域では下室20と上室19との差圧が大きくなるが、サブバルブ171の開弁で下室20とキャップ室146とは連通しており、しかもキャップ室146は上室19との間に設けられたオリフィス176,175で上室19への油液の流れが絞られる。このため、下室20とキャップ室146との差圧は小さく、サブバルブ181の背圧による変形を抑制することができる。よって、サブバルブ181の耐久性を向上させることができる。
縮み行程および伸び行程で独立した第2減衰力発生機構173,183を有するため、減衰力特性の設定の自由度が高くなる。
上記した特許文献1~3には、同一行程で開弁するバルブを2つ有するものが記載されているが、部品点数が多くなる。すると、生産性が低下してしまう。
第1実施形態の緩衝器1は、ピストン18に形成される伸び側の第1通路92に設けられ、減衰力を発生する第1減衰力発生機構41と、下室20に配置される環状の弁座部材105に設けられ、第1通路92とは並列の伸び側の第2通路182に設けられて減衰力を発生する第2減衰力発生機構183と、を備える。また、ピストン18に形成される縮み側の第1通路72に設けられ、減衰力を発生する第1減衰力発生機構42と、下室20に配置される環状の弁座部材105に設けられ、第1通路72とは並列の縮み側の第2通路172に設けられて減衰力を発生する第2減衰力発生機構173と、を備える。このように部品点数が多い構成であっても、第2減衰力発生機構173,183が、弁座部材105に形成される第2通路172,182の一側に設けられるサブバルブ181および他側に設けられるサブバルブ171と、外側筒部124と底部122とを有する有底筒状のキャップ部材108と、を備える構成とし、このキャップ部材108の底部122の内周側にピストンロッド21を挿入可能な内側筒部126を形成して、第2減衰力発生機構173の一部であるサブバルブ171を収納するようにしている。これにより、キャップ部材108内に予めサブバルブ171を収納しておいて、ピストンロッド21を内側筒部126に挿入することができるため、生産性を向上させることが可能となる。よって、コスト低減を図ることができる。また、自動組み立てが可能になるため、自動組み立てにすることで、一層生産性を向上させることが可能となり、コスト低減および不良品発生率の低減を図ることができる。
また、キャップ部材108の内側筒部126で、サブバルブ171をキャップ部材108に対し径方向に位置決め、すなわちセンタリングすることができるため、サブ組み立ての状態でも、サブバルブ171がずれることがない。これによって、自動組み立てが、より容易となるため、より一層生産性を向上させることが可能となる。
また、キャップ部材108内に、サブバルブ171および弁座部材105が収納される構造であって、弁座部材105が、外周に設けられるシール部材103によってキャップ部材108にサブ組み立てされるため、圧入や加締め等を行う場合と比べて、サブ組み立ての生産性を向上させることが可能となる。
また、キャップ部材108はプレス成形により形成されるため、キャップ部材108の生産性を向上させることが可能となる。
上記した特許文献3には、2つの油室を並列の流路で繋ぎ、これらの流路にそれぞれバルブを設けることで、同一行程で開弁するバルブを並列に配置したものが記載されている。このように同一行程で開弁するバルブを並列に配置する構造を採用することで、一方のバルブを他方のバルブよりもピストン速度が低速の領域で開弁させ、これよりも高速の領域では両方のバルブを開弁させることができる。このような構造において、特に低速側のバルブの耐久性を向上することが求められている。
これに対して、第1実施形態の緩衝器1は、第1減衰力発生機構41,42が設けられるピストン18の第1通路72,92とは並列の第2通路172,182の第2減衰力発生機構173,183のサブバルブ171,181を、下室20に配置される弁座部材105に設ける。それとともに、第2通路172,182におけるピストン18と弁座部材105との間に有底筒状のキャップ部材108を、その内側に弁座部材105を配置して設ける。このとき、サブバルブ181を下室20側に、サブバルブ171をキャップ部材108の底部122と弁座部材105との間のキャップ室146内に設ける。そして、第2通路182のサブバルブ181が開弁する伸び行程時の流れの上流側にオリフィス175,176を配置する。これにより、縮み行程時に下室20からサブバルブ171を開いてキャップ室146内に流れ、上室19へ流れる油液の流れをオリフィス175,176が絞ることになる。このため、キャップ室146と下室20との差圧が小さくなり、下室20から背圧を受ける閉状態のサブバルブ181が、キャップ室146から下室20と同等の圧力を受けることになって、受ける背圧(差圧)が抑制されることになる。よって、サブバルブ181の耐久性を向上させることができる。
また、ピストン18、キャップ部材108および弁座部材105に、ピストンロッド21が挿入される構造であるため、ピストン18、キャップ部材108および弁座部材105をコンパクトに配置することができる。
オリフィス175が、伸び側の第1減衰力発生機構41のうち、ピストン18に当接するディスク82を切り欠いて形成されているため、オリフィス175を容易に形成することができる。
オリフィス176が、伸び側の第2減衰力発生機構183のうち、弁座部材105に当接するディスク102を切り欠いて形成されているため、オリフィス176を容易に形成することができる。
第2通路172,182は、それぞれの一部がピストンロッド21を切り欠いて形成されているため、第2通路172,182を容易に形成することができる。
キャップ室146内への流入バルブであるサブバルブ171は、サブバルブ181よりも開弁圧が低いため、縮み行程時に下室20からサブバルブ171を開いてキャップ室146内に油液が流れ易い。よって、下室20の圧力が、より低い状態で、閉状態のサブバルブ181がキャップ室146から下室20と同等の圧力を受けることになって、受ける背圧が抑制されることになる。よって、サブバルブ181の耐久性を一層向上させることができる。
また、キャップ室146と下室20との差圧が、伸縮両行程において、大きくならないことから、キャップ部材108を薄板のプレス部品を用いることが可能となるので、製造性、軽量化の面で有利である。
また、オリフィス175およびオリフィス176の二カ所の直列オリフィスによって、オリフィスの設定自由度が高くなる。
なお、第1実施形態において、サブ組立体200およびサブバルブ181を軸方向において上記とは逆向きに取り付けても良い。その場合、サブ組立体200のキャップ部材108の底部122をディスク84に当接させることになり、サブ組立体200のディスク84とは反対側にサブバルブ181を配置し、サブバルブ181とディスク110との間に、サブバルブ181の変形代を確保するためにディスク84と同様の複数のディスクを設ける。そして、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路を、貫通孔131内の通路に連通させる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を主に図5に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第2実施形態の緩衝器1Aにおいては、図5に示すように、キャップ部材108の外側筒部124および内側筒部126の軸方向長さが、第1実施形態よりも長くなっている。
そして、キャップ部材108の底部122とディスク107との間に、ワッシャ211とディスク212とが設けられている。ワッシャ211およびディスク212は、金属製であって、いずれも内側にキャップ部材108の内側筒部126を嵌合可能な有孔円板状をなしている。ワッシャ211およびディスク212は、内側筒部126に嵌合されることで、内側筒部126に対して径方向に位置決めされる。
ディスク212は、一定厚さの有孔円形平板状であり、ディスク107の外径よりも大径であってディスク106の外径よりも小径の外径となっている。
ワッシャ211は、軸方向一側の内周縁部に全周にわたって面取り221が形成され、同じ軸方向一側の外周縁部にも全周にわたって面取り222が形成されている。面取り221,222は、ワッシャ211の中心軸線を含む面での断面が直線状となるように形成されている。なお、面取り221,222は、ワッシャ211の中心軸線を含む面での断面が円弧状となるように形成されていても良い。ワッシャ211は、面取り221,222を除いて、一定厚さの有孔円形平板状をなしている。ワッシャ211は、軸方向の面取り221,222が形成された側がキャップ部材108の底部122に当接し、軸方向の面取り221,222が形成されていない側がディスク212に当接している。ワッシャ211は、ディスク212の外径よりも大径であってディスク106の外径よりも小径の外径となっている。
第2実施形態においては、キャップ部材108内に、第1実施形態と同様の複数枚のディスク106と複数枚のディスク107と弁座部材105とシール部材103とが収納されるのに加えて、キャップ部材108内にワッシャ211とディスク212とがさらに収納されている。キャップ部材108の軸方向長さは、ワッシャ211およびディスク212の厚さ分、第1実施形態よりも長くなっている。
このようにキャップ部材108の軸方向長さを長くしてワッシャ211とディスク212とをキャップ部材108の底部122とディスク107との間に設けたことに対応して、ピストンロッド21の取付軸部28も軸方向長さが第1実施形態よりも長くなっている。
第2実施形態の緩衝器1Aを組み立てる場合、キャップ部材108と、ワッシャ211と、ディスク212と、複数枚のディスク107と、サブバルブ171を構成する複数枚のディスク106と、弁座部材105と、シール部材103とが、予め組み立てられてサブ組立体200Aとされる。
その場合、例えば、底部122が鉛直方向の下部に位置する状態とされたキャップ部材108の内側筒部126にワッシャ211を嵌合させることによって、このワッシャ211を軸方向の面取り221,222側においてキャップ部材108の底部122に当接させ、加えて、内側筒部126にディスク212を嵌合させることによって、ディスク212をワッシャ211に載置させる。さらに、内側筒部126に複数枚のディスク107を嵌合させることによって、これらディスク107をディスク212に載置させ、加えて、内側筒部126に複数枚のディスク106を嵌合させることによって、ディスク106をディスク107に載置させる。
そして、シール部材103がシール溝145に装着された状態の弁座部材105を、内側シート部134、中間バルブシート部135および外側バルブシート部136がディスク106側に向く向きとして、その主体部132の外周部およびシール部材103の外周部をキャップ部材108の外側筒部124に嵌合させ、主体部132を外側筒部124で案内しながら、大径穴部130を内側筒部126に嵌合させる。すると、弁座部材105とキャップ部材108の底部122とが、複数枚のディスク106、複数枚のディスク107、ディスク212およびワッシャ211を挟持する状態になる。言い換えれば、キャップ部材108内の、底部122と、ディスク106からなるサブバルブ171との間に、ワッシャ211が設けられている。
シール部材103は、弁座部材105に装着された状態でキャップ部材108の外側筒部124に挿入されると、第1実施形態と同様に、弁座部材105および外側筒部124の両方との間で摩擦力を発生させて、弁座部材105およびキャップ部材108の相対的な軸方向移動を規制する。その結果、大径穴部130と内側筒部126とが嵌合状態に維持されるため、内側筒部126に嵌合されている複数枚のディスク106、複数枚のディスク107、ディスク212およびワッシャ211が内側筒部126から抜けることが弁座部材105で規制される。よって、複数枚のディスク106、複数枚のディスク107、ディスク212およびワッシャ211は、内側筒部126に嵌合された状態に維持されるため、キャップ部材108に対し径方向に位置決めされて径方向の位置ずれが規制された状態に維持される。このようにして、キャップ部材108、ワッシャ211、ディスク212、複数枚のディスク107、複数枚のディスク106、弁座部材105およびシール部材103が、一体のサブ組立体200Aとなる。
ピストンロッド21へのピストン18およびサブ組立体200A等の組み付け時には、例えば、第1実施形態と同様、取付軸部28が鉛直方向の上部に位置する状態とされたピストンロッド21の取付軸部28をそれぞれに嵌合させながら、軸段部29に、環状部材67と、ディスク66と、ディスク65と、複数枚のディスク64と、複数枚のディスク63と、ディスク62と、ピストン18と、ディスク82と、複数枚のディスク83と、複数枚のディスク84と、複数枚のディスク101と、ディスク102とが順に重ねられる。
そして、取付軸部28を嵌合させながら、上記したサブ組立体200Aが、キャップ部材108において開口拡径部125がピストン18側に向く向きとされて、弁座部材105においてディスク102に重ねられる。このとき、キャップ部材108の内側筒部126が取付軸部28に嵌合する。
さらに、取付軸部28をそれぞれに嵌合させながら、キャップ部材108の底部122に、ディスク110と、環状部材111とが順に重ねられる。この状態で、環状部材111よりも突出するピストンロッド21のオネジ31にナット112を螺合させて、ナット112と軸段部29とで、これらの内周側を軸方向にクランプする。
このときも、キャップ部材108の内側筒部126が、弁座部材105に軸方向において当接することはなく、ナット112からの締結軸力は、環状部材111、ディスク110、キャップ部材108の底部122、ワッシャ211、ディスク212、複数枚のディスク107、複数枚のディスク106、弁座部材105の内側シート部134、主体部132、内側シート部138、ディスク102、複数枚のディスク101、複数枚のディスク84、複数枚のディスク83、ディスク82、ピストンの内側シート部47、主体部34、内側シート部49、ディスク62、複数枚のディスク63、複数枚のディスク64、ディスク65、ディスク66および環状部材67を介して軸段部29に伝達される。
このような第2実施形態の緩衝器1Aは、内周側に面取り221が形成されたワッシャ211が、面取り221側においてキャップ部材108の底部122に当接するため、底部122と内側筒部126との境界部分の曲げ精度が低くても、面取り221によって、この部分を避けることができる。これにより、キャップ部材108の底部122と内側筒部126との境界部分の曲げ精度が低くても、底部122に載置される部品の軸方向の浮きを抑制することができる。これにより、ナット112による締結軸力を十分かつ安定的に発生させることができる。よって、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構173,183の減衰力が不安定となることを抑制できる。言い換えれば、キャップ部材108の加工精度を緩くすることができ、キャップ部材108の生産性を向上させることができる。
なお、第2実施形態においても、第1実施形態で述べたように、ディスク84と同様のディスクでサブバルブ181の変形代を確保しつつ、サブ組立体200Aおよびサブバルブ181を軸方向において上記とは逆向きに取り付けることが可能である。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態を主に図6に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態の緩衝器1Bにおいては、図6に示すように、第1実施形態の弁座部材105にかえて、これとは一部異なる弁座部材105Bが設けられている。弁座部材105Bには、第1実施形態のシール溝145が形成されておらず、第1実施形態の主体部132よりも外径が大径の主体部132Bを有している。主体部132Bの外径は、キャップ部材108の外側筒部124内に締め代をもって圧入により嵌合される外径となっている。弁座部材105Bの軸方向の外側バルブシート部136側の外周縁部には面取り225が全周にわたって形成されている。
キャップ部材108内には、複数枚のディスク106と複数枚のディスク107と弁座部材105Bとが収納されている。キャップ部材108と弁座部材105Bとがハウジング147Bを構成する。
第3実施形態の緩衝器1Bを組み立てる場合、キャップ部材108と、複数枚のディスク107と、サブバルブ171を構成する複数枚のディスク106と、弁座部材105Bとが、予め組み立てられてサブ組立体200Bとされる。
その場合、例えば、底部122が鉛直方向の下部に位置する状態とされたキャップ部材108の内側筒部126に複数枚のディスク107を嵌合させることによって、これらディスク107をキャップ部材108の底部122に載置させ、内側筒部126に複数枚のディスク106を嵌合させることによって、ディスク106をディスク107に載置させる。
そして、弁座部材105Bを、内側シート部134、中間バルブシート部135および外側バルブシート部136がディスク106側に向く向きとして、その主体部132Bの外周部をキャップ部材108の外側筒部124に圧入より嵌合させ、主体部132Bを外側筒部124で案内しながら、大径穴部130を内側筒部126に嵌合させる。すると、弁座部材105Bとキャップ部材108の底部122とが、複数枚のディスク106および複数枚のディスク107を挟持する。
なお、主体部132Bの外周部をキャップ部材108の外側筒部124に圧入より嵌合させる際に、キャップ部材108の開口拡径部125と主体部132Bの面取り225とで、これらを径方向に位置決めするように案内する。弁座部材105Bは、外側筒部124に圧入により嵌合されることで、外側筒部124との間が密閉される。この状態で、キャップ部材108内には、ディスク106からなるサブバルブ171および弁座部材105Bが収納されている。
このように弁座部材105Bが外側筒部124に圧入されることによって、弁座部材105Bおよびキャップ部材108は、相対的な軸方向移動および相対的な径方向移動が規制されて固定される。このときも、大径穴部130と内側筒部126とが嵌合状態に維持されるため、内側筒部126に嵌合されている複数枚のディスク106および複数枚のディスク107が内側筒部126から抜けることが弁座部材105Bで規制される。よって、複数枚のディスク106および複数枚のディスク107は、内側筒部126に嵌合された状態に維持されるため、キャップ部材108に対し径方向に位置決めされて径方向の位置ずれが規制された状態に維持される。このようにして、キャップ部材108、複数枚のディスク107、複数枚のディスク106および弁座部材105Bが、一体のサブ組立体200Bとなる。
ピストンロッド21へのピストン18およびサブ組立体200B等の組み付け時には、例えば、第1実施形態と同様、取付軸部28が鉛直方向の上部に位置する状態とされたピストンロッド21の取付軸部28をそれぞれに嵌合させながら、軸段部29に、環状部材67と、ディスク66と、ディスク65と、複数枚のディスク64と、複数枚のディスク63と、ディスク62と、ピストン18と、ディスク82と、複数枚のディスク83と、複数枚のディスク84と、複数枚のディスク101と、ディスク102とが順に重ねられる。
そして、取付軸部28を嵌合させながら、上記したサブ組立体200Bが、キャップ部材108において開口拡径部125がピストン18側に向く向きとされて、弁座部材105Bにおいてディスク102に重ねられる。このとき、キャップ部材108の内側筒部126が取付軸部28に嵌合する。
さらに、取付軸部28をそれぞれに嵌合させながら、キャップ部材108の底部122に、ディスク110と、環状部材111とが順に重ねられる。この状態で、環状部材111よりも突出するピストンロッド21のオネジ31にナット112を螺合させて、ナット112と軸段部29とで、これらの内周側を軸方向にクランプする。
このような第3実施形態の緩衝器1Bは、弁座部材105Bが外周においてキャップ部材108に圧入されるため、これらの間のシール部材を廃止することができる。よって、部品点数を低減することができる。また、弁座部材105Bがキャップ部材108に圧入されてサブ組立体200Bが形成されるため、サブ組立体200Bのサブ組み状態を強固に維持できる。
なお、第3実施形態において、第2実施形態と同様のワッシャ211およびディスク212をキャップ部材108の底部122とディスク107との間に設ける構造としても良い。
また、第3実施形態においても、第1実施形態で述べたように、ディスク84と同様のディスクでサブバルブ181の変形代を確保しつつ、サブ組立体200Bおよびサブバルブ181を軸方向において上記とは逆向きに取り付けることが可能である。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態を主に図7に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第4実施形態の緩衝器1Cにおいては、図7に示すように、第1実施形態の弁座部材105にかえて、これとは一部異なる弁座部材105Cが設けられている。弁座部材105Cには、第1実施形態のシール溝145が形成されておらず、第1実施形態の主体部132よりも外径が大径の主体部132Cを有している。弁座部材105Cの外径は、キャップ部材108の外側筒部124内にほぼ隙間なく嵌合される外径となっている。弁座部材105Cの軸方向の外側バルブシート部136側の外周縁部には面取り230が全周にわたって形成されている。
また、第4実施形態の緩衝器1Cにおいては、第1実施形態のキャップ部材108にかえて、これとは一部異なるキャップ部材108Cが設けられている。キャップ部材108Cは、第1実施形態の開口拡径部125にかえて、外側筒部124の軸方向の底部122とは反対側から径方向内方に延出する円環状の係止部231が形成されている。
キャップ部材108C内には、複数枚のディスク106と複数枚のディスク107と弁座部材105Cとが収納されている。キャップ部材108Cと弁座部材105Cとがハウジング147Cを構成する。
第4実施形態の緩衝器1Cを組み立てる場合、キャップ部材108Cと、複数枚のディスク107と、サブバルブ171を構成する複数枚のディスク106と、弁座部材105Cとが、予め組み立てられてサブ組立体200Cとされる。
その場合、例えば、係止部231が形成される前であって、外側筒部124が底部122とは反対端まで延びる形状をなすキャップ部材108Cを準備し、このキャップ部材108Cを、底部122が鉛直方向の下部に位置する状態として、その内側筒部126に複数枚のディスク107を嵌合させることによって、これらディスク107をキャップ部材108Cの底部122に載置させ、内側筒部126に複数枚のディスク106を嵌合させることによって、ディスク106をディスク107に載置させる。
そして、弁座部材105Cを、内側シート部134、中間バルブシート部135および外側バルブシート部136がディスク106側に向く向きとして、その主体部132Cの外周部をキャップ部材108Cの外側筒部124に嵌合させ、主体部132Cを外側筒部124で案内しながら、大径穴部130を内側筒部126に嵌合させる。その後、外側筒部124の底部122とは反対側の端部を全周にわたって径方向内方に加締めにより塑性変形させて係止部231を形成する。すると、係止部231と底部122とが、弁座部材105C、複数枚のディスク106および複数枚のディスク107を挟持する。
なお、主体部132Cの外周部をキャップ部材108の加締め前の外側筒部124に嵌合させる際に、主体部132Cの面取り230で、主体部132Cを径方向に位置決めするように案内する。また、係止部231が加締めにより形成されることで、弁座部材105Cと係止部231との間が全周にわたって密閉される。この状態で、キャップ部材108C内には、サブバルブ171および弁座部材105Cが収納されている。
このように弁座部材105Cが外側筒部124に嵌合されて係止部231に係止されることによって、弁座部材105Cおよびキャップ部材108Cは、相対的な軸方向移動および相対的な径方向移動が規制されて固定される。このときも、大径穴部130と内側筒部126とが嵌合状態に維持されるため、内側筒部126に嵌合されている複数枚のディスク106および複数枚のディスク107が内側筒部126から抜けることが弁座部材105Cで規制される。よって、複数枚のディスク106および複数枚のディスク107は、内側筒部126に嵌合された状態に維持されるため、キャップ部材108Cに対し径方向に位置決めされて径方向の位置ずれが規制された状態に維持される。このようにして、キャップ部材108C、複数枚のディスク107、複数枚のディスク106および弁座部材105Cが、一体のサブ組立体200Cとなる。
ピストンロッド21へのピストン18およびサブ組立体200C等の組み付け時には、例えば、第1実施形態と同様、取付軸部28が鉛直方向の上部に位置する状態とされたピストンロッド21の取付軸部28をそれぞれに嵌合させながら、軸段部29に、環状部材67と、ディスク66と、ディスク65と、複数枚のディスク64と、複数枚のディスク63と、ディスク62と、ピストン18と、ディスク82と、複数枚のディスク83と、複数枚のディスク84と、複数枚のディスク101と、ディスク102とが順に重ねられる。
そして、取付軸部28を嵌合させながら、上記したサブ組立体200Cが、キャップ部材108Cにおいて係止部231がピストン18側に向く向きとされて、弁座部材105Cにおいてディスク102に重ねられる。このとき、キャップ部材108の内側筒部126が取付軸部28に嵌合する。
さらに、取付軸部28をそれぞれに嵌合させながら、キャップ部材108Cの底部122に、ディスク110と、環状部材111とが順に重ねられる。この状態で、環状部材111よりも突出するピストンロッド21のオネジ31にナット112を螺合させて、ナット112と軸段部29とで、これらの内周側を軸方向にクランプする。
このような第4実施形態の緩衝器1Cは、キャップ部材108Cが加締めにより弁座部材105Cを係止するため、これらの間のシール部材を廃止することができる。よって、部品点数を低減することができる。また、キャップ部材108Cが加締めにより弁座部材105Cを係止するため、サブ組立体200Cのサブ組み状態を強固に維持できる。
なお、第4実施形態において、第2実施形態と同様のワッシャ211およびディスク212をキャップ部材108Cの底部122とディスク107との間に設ける構造としても良い。
また、第4実施形態においても、第1実施形態で述べたように、ディスク84と同様のディスクでサブバルブ181の変形代を確保しつつ、サブ組立体200Cおよびサブバルブ181を軸方向において上記とは逆向きに取り付けることが可能である。
[第5実施形態]
次に、第5実施形態を主に図8に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第5実施形態の緩衝器1Dにおいては、図8に示すように、第1実施形態のキャップ部材108にかえて、これとは一部異なるキャップ部材108Dが設けられている。キャップ部材108Dは、第1キャップ部材241と第2キャップ部材242との2部品からなっている。
第1キャップ部材241は、第1実施形態と同様の底部122、外側筒部124および開口拡径部125を有する一方で、第1実施形態の内側筒部126が形成されていない形状となっている。第1キャップ部材241は、底部122において取付軸部28に嵌合されて、取付軸部28に対し径方向に位置決めされる。
第2キャップ部材242は、第1実施形態と同様の内側筒部126と、内側筒部126の軸方向の面取り127,128とは反対側の端部から径方向外方に広がるフランジ部245とを有している。言い換えれば、第2キャップ部材242が内側筒部126を形成している。第2キャップ部材242は、内側筒部126において取付軸部28に嵌合されて、取付軸部28に対し径方向に位置決めされる。
キャップ部材108D内には、複数枚のディスク106とディスク107と弁座部材105とシール部材103とが収納されている。キャップ部材108Dと弁座部材105とシール部材103とがハウジング147Dを構成する。ディスク106,107が、第2キャップ部材242の内側筒部126に嵌合されてフランジ部245に載置されている。
第5実施形態では、第2キャップ部材242のフランジ部245の厚さの分、ディスク107の数が第1実施形態よりも少ない一枚とされている。また、ディスク107の数で調整できない分、キャップ部材108Dの軸方向長さと取付軸部28の軸方向長さとが、第1実施形態よりも長くなっている。
第5実施形態の緩衝器1Dを組み立てる場合、第1キャップ部材241と第2キャップ部材242との2部品からなるキャップ部材108Dと、ディスク107と、複数枚のディスク106と、弁座部材105と、シール部材103とが、予め組み立てられてサブ組立体200Dとされる。
その場合、例えば、フランジ部245が鉛直方向の下部に位置する状態とされた第2キャップ部材242の内側筒部126にディスク107を嵌合させることによって、ディスク107をフランジ部245に載置させ、内側筒部126に複数枚のディスク106を嵌合させることによって、ディスク106をディスク107に載置させる。
そして、シール部材103がシール溝145に装着された状態の弁座部材105を、内側シート部134、中間バルブシート部135および外側バルブシート部136がディスク106側に向く向きとして、大径穴部130を内側筒部126に嵌合させつつ、ディスク106に載置させる。その後、これらの鉛直上下を反転して、弁座部材105の主体部132の外周部およびシール部材103の外周部に、外側筒部124を嵌合させるように、第1キャップ部材241を被せる。すると、弁座部材105と第1キャップ部材241の底部122とが、複数枚のディスク106、ディスク107および第2キャップ部材242のフランジ部245を挟持する。
シール部材103は、弁座部材105に装着された状態で第1キャップ部材241の外側筒部124が被せられると、第1実施形態と同様に、弁座部材105および外側筒部124の両方との間で摩擦力を発生させる。この状態では、シール部材103の摩擦力のみによって、弁座部材105および第1キャップ部材241の相対的な軸方向移動が規制されることになる。すると、弁座部材105と第2キャップ部材242との相対的な軸方向移動も規制される。その結果、大径穴部130と内側筒部126とが嵌合状態に維持される。このため、内側筒部126に嵌合されている複数枚のディスク106およびディスク107が内側筒部126から抜けることが弁座部材105で規制される。よって、複数枚のディスク106およびディスク107は、内側筒部126に嵌合された状態に維持されるため、キャップ部材108に対し径方向に位置決めされて径方向の位置ずれが規制された状態に維持される。
しかも、シール部材103を介して外側筒部124に対して嵌合する弁座部材105が第1キャップ部材241に対して径方向に位置決めされ、大径穴部130と内側筒部126とが嵌合することで、第2キャップ部材242が弁座部材105に対して径方向に位置決めされる。その結果、第1キャップ部材241に対して第2キャップ部材242が径方向に位置決めされる。このような第2キャップ部材242の内側筒部126に嵌合されている複数枚のディスク106およびディスク107は、キャップ部材108Dに対し径方向に位置決めされて径方向の位置ずれが規制される。このようにして、第1キャップ部材241、第2キャップ部材242、ディスク107、複数枚のディスク106、弁座部材105およびシール部材103が、一体のサブ組立体200Dとなる。
ピストンロッド21へのピストン18およびサブ組立体200D等の組み付け時には、例えば、第1実施形態と同様、取付軸部28が鉛直方向の上部に位置する状態とされたピストンロッド21の取付軸部28をそれぞれに嵌合させながら、軸段部29に、環状部材67と、ディスク66と、ディスク65と、複数枚のディスク64と、複数枚のディスク63と、ディスク62と、ピストン18と、ディスク82と、複数枚のディスク83と、複数枚のディスク84と、複数枚のディスク101と、ディスク102とが順に重ねられる。
そして、取付軸部28を嵌合させながら、上記したサブ組立体200Dが、キャップ部材108Dにおいて開口拡径部125がピストン18側に向く向きとされて、弁座部材105においてディスク102に重ねられる。このとき、取付軸部28は、第2キャップ部材242の内側筒部126および第1キャップ部材241の底部122に嵌合する。
さらに、取付軸部28をそれぞれに嵌合させながら、第1キャップ部材241の底部122に、ディスク110と、環状部材111とが順に重ねられる。この状態で、環状部材111よりも突出するピストンロッド21のオネジ31にナット112を螺合させて、ナット112と軸段部29とで、これらの内周側を軸方向にクランプする。
このとき、第2キャップ部材242の内側筒部126が、弁座部材105に軸方向において当接することはなく、ナット112からの締結軸力は、環状部材111、ディスク110、第1キャップ部材241の底部122、第2キャップ部材242のフランジ部245、ディスク107、複数枚のディスク106、弁座部材105の内側シート部134、主体部132、内側シート部138、ディスク102、複数枚のディスク101、複数枚のディスク84、複数枚のディスク83、ディスク82、ピストンの内側シート部47、主体部34、内側シート部49、ディスク62、複数枚のディスク63、複数枚のディスク64、ディスク65、ディスク66および環状部材67を介して軸段部29に伝達される。
このような第5実施形態の緩衝器1Dは、キャップ部材108Dが、底部122および外側筒部124を有する第1キャップ部材241と、内側筒部126を形成する第2キャップ部材242との2部品からなっている。このため、プレスによる成形が容易となり、不良品の発生率を低減することができる。特に、キャップ部材108Dの軸方向長さが長い場合に、2部品とすることでプレスによる成形が容易となる。
なお、第5実施形態において、第2実施形態と同様のワッシャ211およびディスク212を第2キャップ部材242のフランジ部245とディスク107との間に設ける構造としても良い。
また、第5実施形態において、第3実施形態と同様に弁座部材105を第1キャップ部材241の外側筒部124に圧入して、シール部材103を廃止する構造としても良い。その場合も、第2実施形態と同様のワッシャ211およびディスク212を設ける構造とすることが可能である。
さらに、第5実施形態において、第4実施形態と同様に第1キャップ部材241の外側筒部124の底部120とは反対側に加締めにより係止部を形成し、係止部で弁座部材105を係止して、シール部材103を廃止する構造としても良い。その場合も、第2実施形態と同様のワッシャ211およびディスク212を設ける構造とすることが可能である。
また、第5実施形態においても、第1実施形態で述べたように、ディスク84と同様のディスクでサブバルブ181の変形代を確保しつつ、サブ組立体200Dおよびサブバルブ181を軸方向において上記とは逆向きに取り付けることが可能である。
[第6実施形態]
次に、第6実施形態を主に図9に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と対応する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。第6実施形態の緩衝器1Eは、シャッタ式減衰力調整型の緩衝器であり、その基本構造および作動は、特開2013-204772号公報に記載された緩衝器と同様である。
第6実施形態の緩衝器1Eにおいては、図9に示すように、作動流体としての油液が封入されるシリンダ2と、シリンダ2内に摺動可能に設けられ、このシリンダ2内を上室19および下室20の2室に区画するピストン18と、ピストン18に連結されると共にシリンダ2の外部に延出されるピストンロッド21とを有している。
ピストンロッド21は、シリンダ2の外部に延出される主軸部構成部材301と、シリンダ2内に配置される取付軸部構成部材302(ガイド部材)とからなっており、これらが連結されて構成されている。ピストンロッド21は、取付軸部構成部材302に取付軸部28および軸段部29が形成されている。
ピストン18には、ピストン18の縮み側への移動によりシリンダ2内の上流側となる下室20から下流側となる上室19に油液が流れ出す縮み側の第1通路72が形成されている。ピストン18の上室19側には、この縮み側の第1通路72に設けられて減衰力を発生する縮み側のメインバルブ71を含む第1減衰力発生機構41が設けられている。
また、ピストン18には、ピストン18の伸び側への移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20に油液が流れ出す伸び側の第1通路92が形成されている。ピストン18の下室20側には、この伸び側の第1通路92に設けられて減衰力を発生するメインバルブ91を含む伸び側の第1減衰力発生機構42が設けられている。
ピストンロッド21に設けられた取付軸部構成部材302は、全体として円筒状であり、よって、その取付軸部28も円筒状をなしている。取付軸部28の軸方向の中間部分を構成する円筒状の側壁310は、径方向に貫通するガイドポート311を有しており、ガイドポート311よりも軸段部29とは反対側にも、径方向に貫通するガイドポート312を有している。
この取付軸部構成部材302内には、円筒状のシャッタ部材321が回転可能に嵌合されている。シャッタ部材321は、主軸部構成部材301に設けられた電動駆動部322(駆動手段)の回転軸323に連結されており、よって、電動駆動部322に駆動されて、取付軸部構成部材302内で回転する。
シャッタ部材321は、円筒状の側壁341に、ガイドポート311に対向するシャッタポート342と、ガイドポート312に対向するシャッタポート343とを有している。ガイドポート311とこれに対向するシャッタポート342とは連通可能であり、その連通量がシャッタ部材321の回転位置によって変化する。また、ガイドポート312とこれに対向するシャッタポート343とは連通可能であり、その連通量がシャッタ部材321の回転位置によって変化する。シャッタポート342,343は、シャッタ部材321の内周側および取付軸部構成部材302の内周側を介して下室20に常時連通している。
取付軸部構成部材302におけるピストン18と軸段部29との間に、上室19および下室20のうちの一方の上室19に配置される環状の弁座部材105と、弁座部材105の外周に設けられるシール部材103と、有底筒状をなすキャップ部材108とが設けられている。
キャップ部材108は、有孔円形平板状の底部122と、底部122の外周縁部から軸方向一側に拡径しつつ延出するテーパ筒部123と、テーパ筒部123の底部122とは反対側の端部から底部122とは反対方向に延出する円筒状の外側筒部124と、外側筒部124のテーパ筒部123とは反対側の端部からテーパ筒部123とは反対方向に拡径しつつ延出する開口拡径部125と、底部122の内周縁部からテーパ筒部123および外側筒部124と同側に延出する円筒状の内側筒部126とを有している。
キャップ部材108は、外側筒部124の内側に、弁座部材105およびシール部材103が嵌合されてキャップ室146を形成する。キャップ部材108の内側筒部126には、径方向に貫通する貫通穴351が形成されている。この貫通穴351よりも底部122側に、径方向に貫通する貫通穴352が形成されている。貫通穴351はガイドポート311に連通し、貫通穴352はガイドポート312に連通する。
弁座部材105には、縮み側の第2通路172を構成する通路穴361と、伸び側の第2通路182を構成する通路穴362とが形成されている。弁座部材105には、径方向の中央に、小径穴部371と中径穴部372と大径穴部373とを有する貫通孔374が形成されている。弁座部材105には、小径穴部371に取付軸部28が嵌合され、中径穴部372にキャップ部材108の内側筒部126が嵌合される。
弁座部材105の軸段部29側には、縮み側の第2通路172に設けられて減衰力を発生する縮み側のサブバルブ171を含む第2減衰力発生機構173が設けられている。
弁座部材105の軸段部29とは反対側には、伸び側の第2通路182に設けられて減衰力を発生する伸び側のサブバルブ181を含む第2減衰力発生機構183が設けられている。サブバルブ181とピストン18との間には、径方向に貫通する通路を形成する通路形成部材381が設けられている。サブバルブ181のピストン18とは反対側には、径方向に貫通する通路を形成する通路形成部材382が設けられている。
縮み側の第2通路172は、取付軸部構成部材302およびシャッタ部材321の内周側の通路と、シャッタ部材321のシャッタポート343内の通路と、取付軸部構成部材302のガイドポート312内の通路と、キャップ部材108の貫通穴352内の通路と、通路形成部材382内の通路と、キャップ室146と、通路穴361内の通路とで構成されている。縮み側の第2通路172は、ピストン18の縮み側への移動により、シリンダ2内の上流側となる下室20から下流側となる上室19に油液が流れ出す。縮み側の第2通路172は、縮み側の第1通路72と並列に設けられている。第2減衰力発生機構173は、第2通路172に設けられて減衰力を発生する。
伸び側の第2通路182は、通路穴362内の通路と、通路形成部材381内の通路と、弁座部材105の大径穴部373内の通路と、キャップ部材108の貫通穴351内の通路と、取付軸部構成部材302のガイドポート311内の通路と、シャッタ部材321のシャッタポート342内の通路と、シャッタ部材321および取付軸部構成部材302の内周側の通路とを有している。また、伸び側の第2通路182は、開状態の第2減衰力発生機構183の通路と、キャップ室146と、通路形成部材382内の通路と、キャップ部材108の貫通穴352内の通路と、取付軸部構成部材302のガイドポート312内の通路と、シャッタ部材321のシャッタポート343内の通路とを有している。伸び側の第2通路182は、ピストン18の伸び側への移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20に油液が流れ出す。伸び側の第2通路182は、伸び側の第1通路92と並列に設けられている。第2減衰力発生機構183は、第2通路182に設けられて減衰力を発生する。
取付軸部構成部材302、シャッタ部材321および電動駆動部322は、第2減衰力発生機構173,183の一部を構成している。第2減衰力発生機構173,183は、弁座部材105に形成される第2通路172,182の一側に設けられるサブバルブ171および他側に設けられるサブバルブ181を有している。第2減衰力発生機構183はキャップ部材108を有している。キャップ部材108には、第2減衰力発生機構183の一部であるサブバルブ181と、弁座部材105と、通路形成部材382とが収納されている。
第6実施形態の緩衝器1Eを組み立てる場合、キャップ部材108と、通路形成部材382と、サブバルブ181と、弁座部材105と、シール部材103とが、予め組み立てられてサブ組立体200Eとされる。
その場合、例えば、底部122が鉛直方向下側に位置する状態とされたキャップ部材108の内側筒部126に通路形成部材382を嵌合させることによって、この通路形成部材382を底部122に載置させ、さらに、内側筒部126にサブバルブ181を嵌合させることによって、サブバルブ181を通路形成部材382に載置させる。
そして、シール部材103が外周部に装着された状態の弁座部材105を、シール部材103とともにキャップ部材108の外側筒部124に嵌合させ、中径穴部372を内側筒部126に嵌合させる。すると、弁座部材105とキャップ部材108の底部122とが、サブバルブ181および通路形成部材382を挟持する。
シール部材103は、弁座部材105に装着された状態でキャップ部材108の外側筒部124に挿入されると、第1実施形態と同様に、弁座部材105および外側筒部124の両方との間で摩擦力を発生させて、弁座部材105およびキャップ部材108の相対的な軸方向移動を規制する。その結果、中径穴部372と内側筒部126とが嵌合状態に維持される。このため、内側筒部126に嵌合されているサブバルブ181および通路形成部材382が内側筒部126から抜けることが弁座部材105で規制される。よって、サブバルブ181および通路形成部材382は、内側筒部126に嵌合された状態に維持されるため、キャップ部材108に対し径方向に位置決めされて径方向の位置ずれが規制された状態に維持される。このようにして、キャップ部材108、サブバルブ181、通路形成部材382、弁座部材105およびシール部材103が、一体のサブ組立体200Eとなる。
第6実施形態の緩衝器1Eにおいて、伸び行程では、例えば、第1減衰力発生機構42が開弁して第1通路92を介して上室19から下室20に油液が流れる。
また、例えば、伸び行程では、第2通路182を構成する、通路穴362内の通路と、通路形成部材381内の通路と、弁座部材105の大径穴部373内の通路と、キャップ部材108の貫通穴351内の通路と、取付軸部構成部材302のガイドポート311内の通路と、シャッタ部材321のシャッタポート342内の通路と、シャッタ部材321および取付軸部構成部材302の内周側の通路とを介して、上室19から下室20に油液が流れる。このとき、取付軸部構成部材302のガイドポート311内の通路と、シャッタ部材321のシャッタポート342内の通路との連通量が、電動駆動部322の駆動により変更されることで減衰力が調整される。
また、例えば、伸び行程では、第2通路182を構成する、通路穴362内の通路と、開弁する第2減衰力発生機構183の通路と、キャップ室146と、通路形成部材382内の通路と、キャップ部材108の貫通穴352内の通路と、取付軸部構成部材302のガイドポート312内の通路と、シャッタ部材321のシャッタポート343内の通路と、シャッタ部材321および取付軸部構成部材302の内周側の通路とを介して、上室19から下室20に油液が流れる。このとき、取付軸部構成部材302のガイドポート312内の通路と、シャッタ部材321のシャッタポート343内の通路との連通量が、電動駆動部322の駆動により変更されることで減衰力が調整される。
縮み行程では、例えば、第1減衰力発生機構41が開弁して第1通路72を介して下室20から上室19に油液が流れる。
また、例えば、縮み行程では、第2通路172を構成する、取付軸部構成部材302およびシャッタ部材321の内周側の通路と、シャッタ部材321のシャッタポート343内の通路と、取付軸部構成部材302のガイドポート312内の通路と、キャップ部材108の貫通穴352内の通路と、通路形成部材382内の通路と、キャップ室146と、通路穴361内の通路と、開弁する第2減衰力発生機構173の通路とを介して、下室20から上室19に油液が流れる。このとき、取付軸部構成部材302のガイドポート312内の通路と、シャッタ部材321のシャッタポート343内の通路との連通量が、電動駆動部322の駆動により変更されることで減衰力が調整される。
なお、第6実施形態においても、第1実施形態で述べたように、サブバルブ171の変形代を確保しつつ、サブ組立体200Eおよびサブバルブ171を軸方向において上記とは逆向きに取り付けることが可能である。
上記第1~第6実施形態は、複筒式の油圧緩衝器に本発明を用いた例を示したが、これに限らず、外筒をなくしシリンダ2内の下室20の上室19とは反対側に摺動可能な区画体でガス室を形成するモノチューブ式の油圧緩衝器に用いてもよく、ディスクにシール部材を設けた構造のパッキンバルブを使用した圧力制御バルブを含むあらゆる緩衝器に用いることができる。
以上に述べた実施形態の第1の態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記シリンダ内の上流側となる前記室から下流側となる前記室に作動流体が流れ出す第1通路および第2通路と、前記ピストンに形成される前記第1通路に設けられ、減衰力を発生する第1減衰力発生機構と、一方の前記室に配置される環状の弁座部材に設けられ、前記第1通路とは並列の前記第2通路に設けられて減衰力を発生する第2減衰力発生機構と、を有し、前記第2減衰力発生機構は、前記弁座部材に形成される前記第2通路の一側に設けられる第1サブバルブおよび他側に設けられる第2サブバルブと、外側筒部と底部とを有する有底筒状のキャップ部材と、を備え、前記キャップ部材は、前記底部の内周側に前記ピストンロッドを挿入可能な内側筒部が形成され、前記第2減衰力発生機構の少なくとも一部が収納されている。これにより、生産性を向上させることができる。
第2の態様は、第1の態様において、前記キャップ部材内には、前記第2サブバルブおよび前記弁座部材が収納されており、前記弁座部材は、外周に設けられるシール部材により前記キャップ部材にサブ組み可能である。
第3の態様は、第1の態様において、前記キャップ部材内には、前記第2サブバルブおよび前記弁座部材が収納されており、前記弁座部材は、外周が前記キャップ部材に圧入されている。
第4の態様は、第1乃至第3のいずれか一態様において、前記キャップ部材内の前記底部と前記第2サブバルブとの間に、ワッシャが設けられている。
第5の態様は、第1乃至第4のいずれか一態様において、前記キャップ部材は、前記外側筒部と前記底部とを有する第1キャップ部材と、前記内側筒部を形成する第2キャップ部材とからなる。
第6の態様は、第1乃至第5のいずれか一態様において、前記キャップ部材はプレス成形により形成される。
第7の態様は、第1乃至第6のいずれか一態様において、ピストン速度が低速の領域では、前記第1減衰力発生機構は閉弁した状態で前記第2減衰力発生機構は開弁し、ピストン速度が低速よりも大きい速度領域では、第1減衰力発生機構および第2減衰力発生機構がともに開弁する。
第8の態様は、第1乃至第7のいずれか一態様において、前記第2減衰力発生機構は、前記弁座部材が前記キャップ部材内に設けられ、前記第1サブバルブは一方の前記室に、前記第2サブバルブは前記キャップ部材の底部と前記弁座部材との間のキャップ室内に設けられ、前記第2通路には、前記第1サブバルブが開弁する流れの上流側または下流側にオリフィスが配置されている。
第9の態様は、第1乃至第6のいずれか一態様において、前記第2減衰力発生機構は、前記ピストンロッドに設けられ側壁にガイドポートを有する円筒状のガイド部材と、前記ガイド部材内に回転可能に嵌合され側壁に前記ガイドポートに対向するシャッタポートを有するシャッタ部材と、前記シャッタ部材を駆動する駆動手段と、を含む。