[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態を図1〜図4に基づいて説明する。なお、以下においては、説明の便宜上、図1〜図3,図5〜図7における上側を「上」とし、図1〜図3,図5〜図7における下側を「下」として説明する。
第1実施形態の緩衝器1は、図1に示すように、いわゆるモノチューブ式の油圧緩衝器であり、作動流体としての油液(図示略)が封入されるシリンダ2を備えている。シリンダ2は有底円筒状をなしている。シリンダ2は、円筒状の胴部11と、胴部11の下部側に形成されて胴部11の下部を閉塞する底部12とからなる一体成形品である。底部12には、胴部11とは反対の外側位置に取付アイ13が固定されている。
緩衝器1は、いずれもシリンダ2の内部に摺動可能に設けられる、区画体15およびピストン18を有している。区画体15は、ピストン18とシリンダ2の底部12との間に設けられている。ピストン18は、シリンダ2内に上室19と下室20との2つの室を画成しており、区画体15は、シリンダ2内に下室20とガス室16とを画成している。言い換えれば、ピストン18は、シリンダ2内に摺動可能に設けられてシリンダ2内を一側の上室19と他側の下室20とに区画している。シリンダ2内の上室19および下室20には作動流体としての油液が封入され、シリンダ2内のガス室16にはガスが封入されている。
緩衝器1は、軸方向の一端側部分がシリンダ2の内部に配置されてピストン18に連結固定されると共に他端側部分がシリンダ2の外部に延出されるピストンロッド21を備えている。ピストンロッド21は、上室19内を貫通しており、下室20は貫通していない。よって、上室19は、ピストンロッド21が貫通するロッド側室であり、下室20はシリンダ2の底部12側のボトム側室である。
ピストン18およびピストンロッド21は一体に移動する。ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を増やす緩衝器1の伸び行程において、ピストン18は上室19側へ移動することになり、ピストンロッド21がシリンダ2からの突出量を減らす緩衝器1の縮み行程において、ピストン18は下室20側へ移動することになる。
シリンダ2の上端開口側には、ロッドガイド22が嵌合固定されており、ロッドガイド22よりもシリンダ2の外部側である上側にシール部材23が嵌合されている。シリンダ2の上端部は、径方向内方に加締められて係止部26となっており、この係止部26とロッドガイド22とがシール部材23を挟持している。ロッドガイド22とシール部材23との間には摩擦部材24が設けられている。
ロッドガイド22、摩擦部材24およびシール部材23は、いずれも円環状をなしており、ピストンロッド21は、これらロッドガイド22、摩擦部材24およびシール部材23のそれぞれの内側に摺動可能に挿通されてシリンダ2の内部から外部に延出されている。ピストンロッド21は、軸方向の一端側部分がシリンダ2の内部でピストン18に固定され、他端側部分がシリンダ2の外部に、ロッドガイド22、摩擦部材24およびシール部材23を介して突出している。
ロッドガイド22は、ピストンロッド21を、その径方向移動を規制しつつ軸方向移動可能に支持して、このピストンロッド21の移動を案内する。シール部材23は、その外周部でシリンダ2に密着し、その内周部で、軸方向に移動するピストンロッド21の外周部に摺接する。これにより、シール部材23は、シリンダ2内の油液が外部に漏洩するのを防止する。摩擦部材24は、ピストンロッド21に摩擦力を付与する。
ピストンロッド21は、主軸部27と、これよりも小径の取付軸部28とを有している。ピストンロッド21は、主軸部27が、ロッドガイド22、摩擦部材24およびシール部材23に摺動可能に嵌合され、取付軸部28がシリンダ2内に配置されてピストン18等に連結されている。主軸部27の取付軸部28側の端部は、軸直交方向に広がる軸段部29となっている。取付軸部28の外周部には、軸方向の中間位置に軸方向に延在する通路切欠部30が形成されており、軸方向の主軸部27とは反対側の先端位置にオネジ31が形成されている。通路切欠部30は、例えば、取付軸部28の外周部を、取付軸部28の中心軸線に平行な面で平面状に切り欠いて形成されている。通路切欠部30は、取付軸部28の周方向の180度異なる二カ所の位置にいわゆる二面幅の形状に形成できる。
ピストンロッド21には、主軸部27のピストン18とロッドガイド22との間の部分に、いずれも円環状のストッパ部材32、一対の支持体33、コイルスプリング34および緩衝体35が設けられている。ストッパ部材32は、内周側にピストンロッド21を挿通させており、加締められて主軸部27に固定されている。ストッパ部材32側から順に、一方の支持体33、コイルスプリング34および他方の支持体33が配置されている。これら一対の支持体33およびコイルスプリング34は、内側にピストンロッド21が挿通されており、ストッパ部材32とロッドガイド22との間に配置されている。緩衝体35は、内側にピストンロッド21が挿通されており、他方の支持体33とロッドガイド22との間に配置されている。これらストッパ部材32、一対の支持体33、コイルスプリング34および緩衝体35は、ピストンロッド21が所定長さシリンダ2から突出すると、緩衝体35においてロッドガイド22に当接し、緩衝体35およびコイルスプリング34が弾性変形する。
緩衝器1は、例えばピストンロッド21のシリンダ2からの突出部分が上部に配置されて車体により支持され、シリンダ2側の取付アイ13が下部に配置されて車輪側に連結される。これとは逆に、シリンダ2側が車体により支持され、ピストンロッド21が車輪側に連結されるようにしても良い。
図2に示すように、ピストン18は、ピストンロッド21に連結される金属製のピストン本体36と、ピストン本体36の外周面に一体に装着されてシリンダ2内を摺動する円環状の合成樹脂製の摺動部材37とによって構成されている。
ピストン本体36には、上室19と下室20とを連通可能な複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴38と、上室19と下室20とを連通可能とする複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路穴39とが設けられている。
複数の通路穴38は、ピストン本体36の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴39を挟んで等ピッチで形成されており、通路穴38,39の全数のうちの半数を構成する。複数の通路穴38は、2カ所の屈曲点を有するクランク形状であり、ピストン18の軸方向一側(図2の上側)がピストン18の径方向における外側に、ピストン18の軸方向他側(図2の下側)が一側よりもピストン18の径方向における内側に開口している。ピストン本体36には、軸方向の下室20側に、複数の通路穴38を連通させる円環状の環状溝55が形成されている。
環状溝55の下室20側には、環状溝55内および複数の通路穴38内の通路を開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構41が設けられている。第1減衰力発生機構41が下室20側に配置されることで、複数の通路穴38内および環状溝55内の通路は、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室19から下流側となる下室20に向けて油液が流れ出す伸び側の通路となる。これら複数の通路穴38内および環状溝55内の通路に対して設けられた第1減衰力発生機構41は、伸び側の複数の通路穴38内および環状溝55内の通路から下室20への油液の流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の減衰力発生機構となっている。
通路穴38,39の全数のうちの残りの半数を構成する通路穴39は、ピストン本体36の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路穴38を挟んで等ピッチで形成されている。複数の通路穴39は、2カ所の屈曲点を有するクランク形状であり、ピストン18の軸線方向他側(図2の下側)がピストン18の径方向における外側に、ピストン18の軸線方向一側(図2の上側)が他側よりもピストン18の径方向における内側に開口している。ピストン本体36には、軸方向の上室19側に複数の通路穴39を連通させる円環状の環状溝56が形成されている。
環状溝56の上室19側には、複数の通路穴39内および環状溝56内の通路を開閉して減衰力を発生する第1減衰力発生機構42が設けられている。第1減衰力発生機構42が上室19側に配置されることで、複数の通路穴39内および環状溝56内の通路は、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室20から下流側となる上室19に向けて油液が流れ出す縮み側の通路となる。これら複数の通路穴39内および環状溝56内の通路に対して設けられた第1減衰力発生機構42は、縮み側の複数の通路穴39内および環状溝56内の通路から上室19への油液の流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の減衰力発生機構となっている。
ピストン本体36は、略円板形状をなしており、その径方向の中央には、ピストンロッド21の取付軸部28が挿入される挿入穴44が軸方向に貫通して形成されている。挿入穴44は、ピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる軸方向一側の小径穴部45と、小径穴部45よりも大径の軸方向他側の大径穴部46とを有している。小径穴部45が軸方向の上室19側に、大径穴部46が軸方向の下室20側にそれぞれ設けられている。
ピストン本体36の軸方向の下室20側の端部には、環状溝55の下室20側の開口よりも、ピストン本体36の径方向における内側に円環状の内側シート部47が形成されている。また、ピストン本体36の軸方向の下室20側の端部には、環状溝55の下室20側の開口よりも、ピストン本体36の径方向における外側に、第1減衰力発生機構41の一部を構成する円環状のバルブシート部48が形成されている。
ピストン本体36の軸方向の上室19側の端部には、環状溝56の上室19側の開口よりもピストン本体36の径方向における内側に円環状の内側シート部49が形成されている。また、ピストン本体36の軸方向の上室19側の端部には、環状溝56の上室19側の開口よりも、ピストン本体36の径方向における外側に、第1減衰力発生機構42の一部を構成する円環状のバルブシート部50が形成されている。
ピストン本体36の挿入穴44は、大径穴部46が、小径穴部45よりも軸方向の内側シート部47側に設けられている。ピストン本体36の大径穴部46内の通路は、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路と軸方向の位置を重ね合わせて常時連通している。
ピストン本体36において、バルブシート部48よりも径方向外側は、バルブシート部48よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に縮み側の通路穴39の下室20側の開口が配置されている。また、同様に、ピストン本体36において、バルブシート部50よりも径方向外側は、バルブシート部50よりも軸線方向高さが低い段差状をなしており、この段差状の部分に伸び側の通路穴38の上室19側の開口が配置されている。
縮み側の第1減衰力発生機構42は、ピストン18のバルブシート部50を含んでおり、軸方向のピストン18側から順に、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク62と、一枚のディスク63と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には四枚)のディスク64と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク65と、同一内径でピストン18から軸方向に離れるほど外径が小径となる複数枚(具体的には四枚)のディスク66と、一枚のディスク67と、一枚のディスク68と、一枚の環状部材69とを有している。ディスク62〜68および環状部材69は、金属製であり、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。
ディスク62は、ピストン18の内側シート部49の外径よりも大径であってバルブシート部50の内径よりも小径の外径となっており、内側シート部49に常時当接している。ディスク63は、ディスク62の外径よりも大径であってバルブシート部50の内径よりも小径の外径となっている。複数枚のディスク64は、ピストン18のバルブシート部50の外径と略同等の外径となっており、バルブシート部50に着座可能となっている。
複数枚のディスク65は、ディスク64の外径よりも小径の外径となっている。複数枚のディスク66は、最も大径のものがディスク65の外径よりも小径の外径となっている。ディスク67は、ディスク66のうちの最も小径のものの外径よりも小径であってピストン18の内側シート部49の外径と同等の外径となっている。ディスク68は、ディスク66のうちの最も小径のものの外径よりも大径であって、最も大径のものの外径よりも小径の外径となっている。環状部材69は、ディスク68の外径よりも小径であってピストンロッド21の軸段部29の外径よりも大径の外径となっている。環状部材69は、ディスク62〜68よりも厚く高剛性となっており、軸段部29に当接している。
複数枚のディスク64、複数枚のディスク65および複数枚のディスク66が、バルブシート部50に離着座可能な縮み側のメインバルブ71を構成している。メインバルブ71は、バルブシート部50から離座することで、複数の通路穴39内および環状溝56内の通路を上室19に連通させると共に、バルブシート部50との間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。環状部材69は、ディスク68とによって、メインバルブ71の開方向への規定以上の変形をメインバルブ71に当接して規制する。
複数の通路穴39内および環状溝56内の通路と、開弁時に出現するメインバルブ71およびバルブシート部50の間の通路とが、ピストン18の下室20側への移動によりシリンダ2内の上流側となる下室20から下流側となる上室19に油液が流れ出す縮み側の第1通路72を構成している。減衰力を発生する縮み側の第1減衰力発生機構42は、メインバルブ71とバルブシート部50とを含んでおり、よって、この第1通路72に設けられている。第1通路72は、バルブシート部50を含むピストン18に形成されており、ピストンロッド21およびピストン18が縮み側に移動するときに油液が通過する。
ここで、縮み側の第1減衰力発生機構42には、バルブシート部50およびこれに当接するメインバルブ71のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、縮み側の第1減衰力発生機構42は、バルブシート部50およびメインバルブ71が全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第1通路72は、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスが形成されておらず、上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。
伸び側の第1減衰力発生機構41は、ピストン18のバルブシート部48を含んでおり、軸方向のピストン18側から順に、一枚のディスク82と、一枚のディスク83と、一枚のディスク84と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には四枚)のディスク85と、一枚のディスク86と、同一内径および同一外径の複数枚(具体的には二枚)のディスク87と、同一内径でピストン18から軸方向に離れるほど外径が小径となる複数枚(具体的には二枚)のディスク88と、一枚のディスク89とを有している。ディスク82〜89は、金属製であり、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。
ディスク82は、ピストン18の内側シート部47の外径よりも大径であってバルブシート部48の内径よりも小径の外径となっており、内側シート部47に常時当接している。ディスク82には、図3に示すように、環状溝55内および複数の通路穴38内の通路を、ピストン18の大径穴部46内の通路およびピストンロッド21の通路切欠部30内の通路に常時連通させる切欠部90が、径方向の内側シート部47よりも外側の途中位置から内周縁部まで形成されている。切欠部90は、ディスク82のプレス成形時に形成される。ディスク83は、ディスク82と同外径であり、ディスク82のような切欠部は形成されていない。ディスク84は、ディスク83の外径よりも大径の外径となっている。
複数枚のディスク85は、ピストン18のバルブシート部48の外径よりも若干大径の外径となっており、バルブシート部48に着座可能となっている。ディスク86は、ディスク85の外径よりも小径の外径となっている。複数枚のディスク87は、ディスク86の外径よりも小径の外径となっている。複数枚のディスク88は、大径のものの外径がディスク87の外径よりも小径となっている。ディスク89は、複数枚のディスク88のうちの小径のものの外径よりも小径となっており、ピストン18の内側シート部47の外径と同等の外径となっている。ディスク89は、ディスク67と同形状の共通部品にすることができる。複数枚のディスク88およびディスク89は、ディスク85〜87よりも厚さが厚く高剛性となっている。
複数枚のディスク85、一枚のディスク86、複数枚のディスク87および複数枚のディスク88が、バルブシート部48に離着座可能な伸び側のメインバルブ91を構成している。メインバルブ91は、バルブシート部48から離座することで、環状溝55内および複数の通路穴38内の通路を下室20に連通させると共に、バルブシート部48との間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。
図2に示すように、複数の通路穴38内および環状溝55内の通路と、開弁時に出現するメインバルブ91およびバルブシート部48の間の通路とが、ピストン18の上室19側への移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20に油液が流れ出す伸び側の第1通路92を構成している。減衰力を発生する伸び側の第1減衰力発生機構41は、メインバルブ91とバルブシート部48とを含んでおり、よって、この第1通路92に設けられている。第1通路92は、バルブシート部48を含むピストン18に形成されており、ピストンロッド21およびピストン18が伸び側に移動するときに油液が通過する。
伸び側の第1減衰力発生機構41には、バルブシート部48およびこれに当接するメインバルブ91のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、伸び側の第1減衰力発生機構41は、バルブシート部48およびメインバルブ91が全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第1通路92は、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。
図3に示すように、伸び側の第1減衰力発生機構41のピストン18とは反対側には、第1減衰力発生機構41側から順に、一つのキャップ部材101と、一枚のディスク102と、一枚のディスク103と、一枚のディスク104と、一枚のバネ部材105と、一枚のディスク106と、一枚のディスク107と、外周側に一つのOリング108が設けられた一つの弁座部材109と、一枚のディスク110と、一枚のディスク111と、一枚のバネ部材112と、一枚のディスク113と、一つの環状部材114とが、ピストンロッド21の取付軸部28をそれぞれの内側に嵌合させて設けられている。図2に示すように、ピストンロッド21の取付軸部28には、環状部材114よりも突出する部分にオネジ31が形成されており、このオネジ31にナット115が螺合されている。ナット115は、環状部材114に当接している。
図3に示すように、キャップ部材101、ディスク102〜104,106,107,110,111,113、バネ部材105,112、弁座部材109および環状部材114は、いずれも金属製である。ディスク102〜104,106,107,110,111,113および環状部材114は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなしている。キャップ部材101、バネ部材105,112および弁座部材109は、いずれも内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な円環状をなしている。
キャップ部材101は、有底筒状の一体成形品であり、例えば金属板の塑性加工や切削加工により形成されている。キャップ部材101は、有孔円板状の底部122と、底部122の外周縁部から、底部122の軸方向一側に拡径しつつ延出する中間テーパ部123と、中間テーパ部123の底部122とは反対側の端縁部から底部122とは反対方向に延出する円筒状の筒状部124とを有している。キャップ部材101は、底部122がピストン18側に位置する向きで配置されてディスク89に当接しており、底部122の内周部において取付軸部28に嵌合している。
底部122の外周側には、軸方向の筒状部124側に突出する円環状の凸部126が形成されている。キャップ部材101は、ディスク85〜88よりも厚く、円環状の凸部126が形成されていること、および有底筒状をなすことも合わせて、ディスク85〜88よりも高剛性となっている。よって、キャップ部材101は、複数枚のディスク85〜88で構成されるメインバルブ91の開方向への規定以上の変形をメインバルブ91に当接して規制する。
弁座部材109は、厚さ方向に貫通して取付軸部28を挿入させる貫通孔131が径方向の中央に形成された有孔円板状をなしている。貫通孔131は、ピストンロッド21の取付軸部28を嵌合させる軸方向一側の小径穴部136と、小径穴部136よりも大径の軸方向他側の大径穴部137とを有している。
弁座部材109は、軸方向の大径穴部137側に、弁座部材109の径方向における内側から順に内側シート部134およびバルブシート部135(第2シート部)を有しており、軸方向反対側の小径穴部136側に、弁座部材109の径方向における内側から順に内側シート部138およびバルブシート部139(第1シート部)を有している。
内側シート部134は、円環状をなしており、弁座部材109の内周縁部から、弁座部材109の軸方向に沿って一側に突出している。バルブシート部135も、円環状をなしており、弁座部材109の径方向の外側所定位置から、弁座部材109の軸方向に沿って内側シート部134と同側に突出している。内側シート部134およびバルブシート部135は、突出側の先端面が軸直交方向に広がって面一となっている。内側シート部134は、その径方向内側が大径穴部137となっている。
内側シート部138も、円環状をなしており、弁座部材109の内周縁部から、弁座部材109の軸方向に沿って内側シート部134とは反対側に突出している。内側シート部138は、その径方向内側が小径穴部136となっている。内側シート部134,138は、同等の外径となっている。バルブシート部139も、円環状をなしており、弁座部材109の径方向の外側所定位置から、弁座部材109の軸方向に沿って内側シート部138と同側に突出している。内側シート部138およびバルブシート部139も、突出側の先端面が軸直交方向に広がって面一となっている。バルブシート部135およびバルブシート部139は、互いに反対方向に突出しており、同等の内径であって、同等の外径となっている。
弁座部材109には、軸方向のバルブシート部135側の端面のバルブシート部135よりも弁座部材109の径方向における外側から内側シート部138とバルブシート部139との間の端面に延びて、弁座部材109を軸方向に貫通する複数(図2,図3では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路孔141が形成されている。通路孔141は、直線状である。弁座部材109には、複数の通路孔141を連通させる環状の環状溝142が内側シート部138とバルブシート部139との間に形成されている。これら複数の通路孔141および環状溝142内が、弁座部材109に設けられる第1通路部151となっている。
図2に示すように、弁座部材109には、軸方向のバルブシート部139側の端面のバルブシート部139よりも弁座部材109の径方向における外側から内側シート部134とバルブシート部135との間の端面に延びて、弁座部材109を軸方向に貫通する複数(図2では断面とした関係上一カ所のみ図示)の通路孔143が形成されている。通路孔143は、直線状である。弁座部材109には、複数の通路孔143を連通させる環状の環状溝144が内側シート部134とバルブシート部135との間に形成されている。これら複数の通路孔143および環状溝144内が、弁座部材109に設けられる第2通路部152となっている。複数の第1通路部151および複数の第2通路部152が、弁座部材109に設けられて油液が流通する弁座部材通路部150を構成している。
弁座部材109には、図4に示すように、複数、具体的には12カ所の通路孔141が、弁座部材109の径方向における位置を揃え、弁座部材109の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路孔143を挟んで等ピッチで形成されている。弁座部材109には、複数、具体的には12カ所の通路孔143が、弁座部材109の径方向における位置を揃え、弁座部材109の円周方向において、それぞれ間に一カ所の通路孔141を挟んで等ピッチで形成されている。通路孔141の配設ピッチの半ピッチ分の位置に通路孔143が配設されている。図4(a)に示すように、複数の通路孔141を連通させる環状溝142は円環状をなしており、図4(b)に示すように、複数の通路孔143を連通させる環状溝144も円環状をなしている。
図3に示すように、弁座部材109には、外周部の軸方向中間位置に、径方向内方に凹む円環状のシール溝145が形成されている。このシール溝145内に、Oリング108が配置されている。弁座部材109は、内側シート部134およびバルブシート部135を、底部122側に向けた状態で、外周部においてキャップ部材101の筒状部124に嵌合されており、キャップ部材101内に設けられている。この状態で、Oリング108は、キャップ部材101の筒状部124と弁座部材109との隙間をシールする。
キャップ部材101、Oリング108および弁座部材109は、内側にキャップ室146を形成している。キャップ室146は、キャップ部材101の底部122と弁座部材109との間に設けられている。ディスク102〜104、バネ部材105およびディスク106,107は、このキャップ室146内に設けられている。図2に示すように、環状の弁座部材109および有底筒状のキャップ部材101は、上室19および下室20のうちの一方である下室20に配置されている。その際に、弁座部材109は、バルブシート部135がキャップ室146側に、バルブシート部139が下室20側に配置されている。弁座部材109は、キャップ室146と下室20とを区画しており、キャップ室146および下室20の両方に臨んで設けられている。
図3に示すように、ディスク102は、キャップ部材101の凸部126の内径よりも小径の外径となっており、底部122の凸部126よりも径方向の内側に当接している。ディスク102は、ディスク89と同形状の共通部品にすることができる。ディスク103は、凸部126の内径よりも小径であってディスク102の外径よりも大径の外径となっている。ディスク103には、その径方向におけるディスク102の外周部よりも外側の途中位置から内周縁部まで切欠部153が形成されている。切欠部153は、ディスク103のプレス成形時に形成される。なお、ディスク103は、ディスク82と同形状の共通部品にすることができる。ディスク104は、ディスク102の外径と同等の外径となっている。
ディスク103の切欠部153内の通路は、キャップ室146内とピストンロッド21の通路切欠部30内の通路とを常時連通している。よって、キャップ室146は、ディスク103の切欠部153内の通路と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路、弁座部材109の大径穴部137内の通路およびピストン18の大径穴部46内の通路と、ディスク82の切欠部90内の通路と、ピストン18の環状溝55内および複数の通路穴38内の通路とを介して、図2に示す上室19に常時連通している。
図3に示すように、バネ部材105は、内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなす基板部155と、基板部155の外周縁部から基板部155の径方向外方に、径方向外側ほど軸方向一側に位置するように延出する脚板部156とを有している。バネ部材105には、脚板部156が、基板部155の周方向に間隔をあけて複数形成されている。
ディスク106は、ディスク102,104の外径と同等の外径となっており、その厚さが、バネ部材105の軸方向における脚板部156の基板部155からの自然状態での高さよりも若干小さくなっている。
ディスク107は、弁座部材109のバルブシート部135の外径よりも若干大径の外径となっており、内側シート部134に常時当接し、バルブシート部135に着座可能となっている。バネ部材105は、脚板部156が基板部155からディスク107側に延びてディスク107に当接している。脚板部156は、ディスク107に当接することで弾性変形して、ディスク107にバルブシート部135に着座する方向のプリロードを付加する。
バネ部材105、ディスク106およびディスク107は、バルブシート部135に離着座可能なサブバルブ171(第2サブバルブ)を構成している。サブバルブ171は、キャップ室146内に設けられており、キャップ室146内でバルブシート部135から離座することで、複数の通路孔143内および環状溝144内の第2通路部152と、キャップ室146とを連通させ、下室20を図2に示す上室19に連通させる。このとき、サブバルブ171は、バルブシート部135との間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。サブバルブ171は、キャップ室146内へ下室20から、複数の通路孔143内および環状溝144内の第2通路部152を介して油液を流入させる際に開く流入バルブであり、キャップ室146から下室20への第2通路部152を介しての油液の流出を規制する逆止弁である。ここで、第1通路部151を構成する通路孔141は、バルブシート部135よりも径方向外側に開口しているため、サブバルブ171とは無関係にキャップ室146に常時連通する。
複数の通路孔143内および環状溝144内の第2通路部152と、開弁時に出現するサブバルブ171およびバルブシート部135の間の通路と、キャップ室146と、ディスク103の切欠部153内の通路、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路、弁座部材109の大径穴部137内の通路およびピストン18の大径穴部46内の通路と、ディスク82の切欠部90内の通路と、ピストン18の環状溝55内および複数の通路穴38内の通路とが、ピストン18の下室20側への移動によりシリンダ2内の上流側となる下室20から下流側となる上室19に油液が流れ出す第2通路172を構成している。第2通路172は、ピストン18の下室20側への移動、つまり縮み行程において上流側となる下室20から下流側となる上室19に向けて油液が流れ出す縮み側の通路となる。第2通路172は、ピストンロッド21を切り欠いて形成される通路切欠部30内の通路を含んでおり、言い換えれば、その一部がピストンロッド21を切り欠いて形成されている。
バネ部材105、ディスク106およびディスク107からなるサブバルブ171と、バルブシート部135と、ディスク102〜104と、キャップ部材101とが、縮み側の第2通路172に設けられ、この第2通路172を開閉し、この第2通路172から上室19への油液の流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の第2減衰力発生機構173を構成している。言い換えれば、第2減衰力発生機構173は、そのバルブシート部135が弁座部材109に設けられている。縮み側の第2減衰力発生機構173を構成するサブバルブ171は縮み側のサブバルブである。
第2通路172において、第2減衰力発生機構173が開状態にあるときに、ディスク82の切欠部90内の通路が、流路断面積が固定の部分の中で最も狭く、流路断面積がその上流側および下流側よりも狭くなって、第2通路172におけるオリフィス175となる。オリフィス175は、サブバルブ171が開弁して第2通路172で油液が流れる際の油液の流れのサブバルブ171よりも下流側に配置されている。オリフィス175は、第1減衰力発生機構41のうち、ピストン18に当接するディスク82を切り欠いて形成されている。
縮み側の第2減衰力発生機構173は、バルブシート部135およびこれに当接するサブバルブ171のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、縮み側の第2減衰力発生機構173は、バルブシート部135とディスク107とが全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第2通路172は、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。キャップ部材101の底部122は、サブバルブ171を構成するディスク107よりも厚く高剛性となっており、サブバルブ171の開方向への規定以上の変形をサブバルブ171に当接して規制する。
上室19と下室20とを連通可能な縮み側の第2通路172は、同じく上室19と下室20とを連通可能な縮み側の通路である第1通路72と並列しており、第1通路72に第1減衰力発生機構42が、第2通路172に第2減衰力発生機構173がそれぞれ設けられている。よって、いずれも縮み側の第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構173は、並列に配置されている。
図3に示すように、ディスク110は、弁座部材109のバルブシート部139の外径よりも若干大径の外径となっており、内側シート部138に常時当接し、バルブシート部139に着座可能となっている。ディスク110は、ディスク107と同形状の共通部品にすることができる。ディスク111の外径は、ディスク110の外径よりも小径であって、内側シート部138の外径と同等となっている。ディスク111は、ディスク106と同形状の共通部品にすることができる。
バネ部材112は、内側にピストンロッド21の取付軸部28を嵌合可能な一定厚さの有孔円形平板状をなす基板部191と、基板部191の外周縁部から基板部191の径方向外方に、径方向外側ほど軸方向一側に位置するように延出する脚板部192とを有している。バネ部材112には、脚板部192が、基板部191の周方向に間隔をあけて複数形成されている。基板部191の軸方向における脚板部192の基板部191からの自然状態での高さは、ディスク111の厚さよりも若干大きくなっている。バネ部材112は、バネ部材105と同形状の共通部品にすることができる。
バネ部材112は、脚板部192が基板部191よりもディスク110側に延びてディスク110に当接している。脚板部192は、ディスク110に当接することで弾性変形して、ディスク110にバルブシート部139に着座する方向のプリロードを付加する。ディスク113は、ディスク110の外径よりも大径の外径を有しており、ディスク110よりも厚く高剛性となっている。環状部材114は、ディスク113の外径よりも小径の外径となっており、ディスク110よりも厚く高剛性となっている。
ディスク110、ディスク111およびバネ部材112は、バルブシート部139に離着座可能なサブバルブ181(第1サブバルブ)を構成している。サブバルブ181は、下室20内に設けられており、バルブシート部139から離座することで、キャップ室146と下室20とを連通させる。このとき、サブバルブ181は、バルブシート部139との間の油液の流れを抑制して減衰力を発生する。サブバルブ181は、キャップ室146内から油液を下室20に、弁座部材109の複数の通路孔141内および環状溝142内の第1通路部151を介して排出する際に開く排出バルブであり、下室20からキャップ室146内への第1通路部151を介しての油液の流入を規制する逆止弁である。ここで、第2通路部152を構成する通路孔143は、バルブシート部139よりも径方向外側に開口しているため、サブバルブ181とは無関係に下室20に常時連通する。
ピストン18の複数の通路穴38内および環状溝55内の通路と、ディスク82の切欠部90内の通路と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路、ピストン18の大径穴部46内の通路および弁座部材109の大径穴部137内の通路と、ディスク103の切欠部153内の通路と、キャップ室146と、弁座部材109の複数の通路孔141内および環状溝142内の第1通路部151と、開弁時に出現するサブバルブ181およびバルブシート部139の間の通路とが、ピストン18の図2に示す上室19側への移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20に油液が流れ出す第2通路182を構成している。第2通路182は、ピストン18の上室19側への移動、つまり伸び行程において上流側となる上室19から下流側となる下室20に向けて油液が流れ出す伸び側の通路となる。第2通路182は、ピストンロッド21を切り欠いて形成される通路切欠部30内の通路を含んでおり、言い換えれば、その一部がピストンロッド21を切り欠いて形成されている。
キャップ部材101と、サブバルブ181と、バルブシート部139と、ディスク113と、環状部材114とが、伸び側の第2通路182に設けられ、この第2通路182を開閉し、この第2通路182から下室20への油液の流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の第2減衰力発生機構183を構成している。言い換えれば、この第2減衰力発生機構183は、バルブシート部139が弁座部材109に設けられている。伸び側の第2減衰力発生機構183を構成するサブバルブ181は伸び側のサブバルブである。
第2通路182において、第2減衰力発生機構183が開状態にあるときに、ディスク82の切欠部90内の通路が、流路断面積が固定の部分の中で最も狭く、流路断面積がその上流側および下流側よりも狭くなって第2通路182においてもオリフィス175となる。オリフィス175は、第2通路172,182に共通である。オリフィス175は、サブバルブ181が開弁して第2通路182で油液が流れる際の油液の流れのサブバルブ181よりも上流側に配置されている。なお、オリフィス175は、サブバルブ181が開弁して第2通路182で油液が流れる際の油液の流れのサブバルブ181よりも下流側に配置されていても良い。サブバルブ181と、上記したサブバルブ171とは独立して開閉する。
伸び側の第2減衰力発生機構183は、バルブシート部139およびこれに当接するディスク110のいずれにも、これらが当接状態にあっても上室19と下室20とを連通させる固定オリフィスは形成されていない。すなわち、伸び側の第2減衰力発生機構183は、バルブシート部139とディスク110とが全周にわたって当接状態にあれば、上室19と下室20とを連通させることはない。言い換えれば、第2通路182は、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは形成されておらず、上室19と下室20とを常時連通させる通路ではない。環状部材114は、ディスク113とによって、サブバルブ181の開方向への規定以上の変形をサブバルブ181に当接して規制する。
緩衝器1は、少なくともピストン18内で軸方向に油液を通過させる流れとしては、上室19と下室20とが、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構173,183を介してのみ連通可能である。よって、緩衝器1は、少なくともピストン18内を軸方向に通過する油液の通路上には、上室19と下室20とを常時連通させる固定オリフィスは設けられていない。
上室19と下室20とを連通可能な伸び側の第2通路182は、同じく上室19と下室20とを連通可能な伸び側の通路である第1通路92と、上室19側の環状溝55内および複数の通路穴38内の通路を除いて並列しており、並列部分には、第1通路92に第1減衰力発生機構41が、第2通路182に第2減衰力発生機構183がそれぞれ設けられている。よって、いずれも伸び側の第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構183は、並列に配置されている。
第2減衰力発生機構173,183は、弁座部材109と、第2通路172,182の弁座部材109に設けられる部分である弁座部材通路部150の一側に設けられるサブバルブ181および弁座部材通路部150の他側に設けられるサブバルブ171と、第2通路172,182におけるピストン18と弁座部材109との間に設けられる有底筒状のキャップ部材101と、を備えている。弁座部材109はキャップ部材101内に設けられており、サブバルブ181は、弁座部材109の下室20側に設けられ、サブバルブ171は、キャップ部材101の底部122と弁座部材109との間のキャップ室146内に設けられている。
弁座部材通路部150のうち、サブバルブ181が設けられサブバルブ181で開閉される第1通路部151は、キャップ室146側である油液の流れの上流端がバルブシート部135よりも径方向外側に開口しており、サブバルブ181側である油液の流れの下流端がバルブシート部135と同径のバルブシート部139の径方向内側に開口している。このため、第1通路部151は、作動流体である油液の流れの上流端と下流端とが弁座部材109の径方向にずれており、具体的には、作動流体の流れの下流端が上流端よりも弁座部材109の径方向における内側に配置されている。
弁座部材通路部150のうち、サブバルブ171が設けられサブバルブ171で開閉される第2通路部152は、下室20側である油液の流れの上流端がバルブシート部139よりも径方向外側に開口しており、サブバルブ171側である油液の流れの下流端がバルブシート部139と同径のバルブシート部135の径方向内側に開口している。このため、第2通路部152は、作動流体である油液の流れの上流端と下流端とが弁座部材109の径方向にずれており、具体的には、作動流体の流れの下流端が上流端よりも弁座部材109の径方向における内側に配置されている。
言い換えれば、弁座部材109のサブバルブ181側には、第1通路部151よりも弁座部材109の径方向における外側にサブバルブ181が着座するバルブシート部139が形成されており、弁座部材109のサブバルブ171側には、第2通路部152よりも弁座部材109の径方向における外側にサブバルブ171が着座するバルブシート部135が形成されていて、これらバルブシート部139とバルブシート部135とが同径となっている。
ピストンロッド21にピストン18等を組み付ける場合、ピストンロッド21の取付軸部28をそれぞれ挿通させながら、軸段部29に、環状部材69と、ディスク68と、ディスク67と、複数枚のディスク66と、複数枚のディスク65と、複数枚のディスク64と、ディスク63と、複数枚のディスク62と、ピストン18とが順に重ねられる。このとき、ピストン18は、小径穴部45が軸段部29側に位置する向きとされる。加えて、取付軸部28をそれぞれ挿通させながら、ピストン18に、ディスク82と、ディスク83と、ディスク84と、複数枚のディスク85と、ディスク86と、複数枚のディスク87と、複数枚のディスク88と、ディスク89と、キャップ部材101とが順に重ねられる。このとき、キャップ部材101は、底部122がピストン18側に位置する向きとされてディスク89に当接する。さらに、取付軸部28をそれぞれ挿通させながら、キャップ部材101の底部122に、ディスク102と、ディスク103と、ディスク104と、バネ部材105とが順に重ねられる。このとき、バネ部材105は、図3に示すように、脚板部156が基板部155からピストン18とは反対側に延出する向きとされる。
加えて、取付軸部28をそれぞれ挿通させながら、バネ部材105に、ディスク106と、ディスク107と、Oリング108が装着された状態の弁座部材109とが順に重ねられる。このとき、弁座部材109は、内側シート部134およびバルブシート部135が、ディスク107側に位置する向きとされ、外周部およびOリング108をキャップ部材101の筒状部124に嵌合させる。さらに、取付軸部28をそれぞれ挿通させながら、弁座部材109に、ディスク110と、ディスク111と、バネ部材112と、ディスク113と、環状部材114とが順に重ねられる。このとき、バネ部材112は、脚板部192が基板部191からピストン18側に延出する向きとされる。この状態で、図2に示すように、環状部材114よりも突出するピストンロッド21のオネジ31にナット115を螺合させて、ナット115と軸段部29とで、これらの内周側を軸方向にクランプする。
この状態で、メインバルブ71は、ディスク62,63を介してピストン18の内側シート部49とディスク67とに内周側がクランプされるとともに、ピストン18のバルブシート部50に全周にわたって当接する。また、この状態で、メインバルブ91は、ディスク82〜84を介してピストン18の内側シート部47とディスク89とに内周側がクランプされるとともに、ピストン18のバルブシート部48に全周にわたって当接する。また、この状態で、サブバルブ171は、弁座部材109の内側シート部134とディスク104とに内周側がクランプされるとともに、弁座部材109のバルブシート部135に全周にわたって当接する。また、この状態で、サブバルブ181は、弁座部材109の内側シート部138とディスク113とに内周側がクランプされるとともに、弁座部材109のバルブシート部139に全周にわたって当接する。
いずれも伸び側の第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構183のうち、第1減衰力発生機構41のメインバルブ91は、第2減衰力発生機構183のサブバルブ181よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、伸び行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構183が開弁する。また、ピストン速度がこの所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構183がともに開弁することになる。サブバルブ181は、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生させる極微低速バルブである。
すなわち、伸び行程においては、ピストン18が上室19側に移動することで上室19の圧力が高くなり、下室20の圧力が低くなるが、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構173,183のいずれにも固定オリフィスがないため、第2減衰力発生機構183が開弁するまで油液は流れない。このため、ピストン速度が、第1所定値v1未満での伸び行程においては、減衰力は急激に立ち上がる。また、ピストン速度が、第2減衰力発生機構183が開弁する第1所定値v1よりも高速の領域であって、第1所定値v1よりも高速の第2所定値v2よりも低速の極微低速領域(v1以上v2未満)では、第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構183が開弁する。
つまり、サブバルブ181がバルブシート部139から離座して、伸び側の第2通路182で上室19と下室20とを連通させる。よって、上室19の油液が、ピストン18の複数の通路穴38内および環状溝55内の通路と、オリフィス175と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路、ピストン18の大径穴部46内の通路および弁座部材109の大径穴部137内の通路と、ディスク103の切欠部153内の通路と、キャップ室146と、複数の通路孔141内および環状溝142内の第1通路部151と、サブバルブ181およびバルブシート部139の間の通路とを介して下室20に流れる。これにより、ピストン速度が第2所定値v2よりも低速の極微低速領域(v1以上v2未満)でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
また、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値v2以上の通常速度領域では、第2減衰力発生機構183が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構41が開弁する。つまり、サブバルブ181がバルブシート部139から離座して、伸び側の第2通路182で上室19から下室20に油液を流すことになるが、このとき、第2通路182においてメインバルブ91よりも下流側に設けられたオリフィス175で油液の流れが絞られることにより、メインバルブ91に加わる圧力が高くなって差圧が高まり、メインバルブ91がバルブシート部48から離座して、伸び側の第1通路92で上室19から下室20に油液を流す。よって、上室19の油液が、複数の通路穴38内および環状溝55内の通路と、メインバルブ91およびバルブシート部48の間の通路とを介して下室20に流れる。これにより、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。通常速度領域におけるピストン速度の増加に対する伸び側の減衰力の増加率は、極微低速領域におけるピストン速度の増加に対する伸び側の減衰力の増加率よりも低くなる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する伸び側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。
ここで、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値v2以上の通常速度領域では、上室19と下室20との差圧は、第1所定値v1以上第2所定値v2未満の低速領域よりも大きくなるが、第1通路92はオリフィスによる絞りがないため、メインバルブ91が開弁することで油液を第1通路92を介して大流量で流すことができる。これと、第2通路182をオリフィス175で絞ることとにより、サブバルブ181の変形を抑制することができる。
また、このとき、閉状態のサブバルブ171には下室20とキャップ室146とから反対向きの圧力が加わることになる。上室19と下室20との差圧が大きくなっても、第2通路182においてサブバルブ171よりも上流側にオリフィス175が形成されているため、キャップ室146の圧力上昇が上室19の圧力上昇に対して緩やかになり、キャップ室146と下室20との圧力差が大きくなることを抑制する。よって、閉状態のサブバルブ171が受けるキャップ室146と下室20との圧力差が大きくなることを抑制でき、サブバルブ171にキャップ室146側から下室20側に向けた大きな背圧が加わることを抑制できる。
緩衝器1は、伸び行程で上室19から下室20に油液を流す流路を第1通路92と第2通路182との並列で設け、メインバルブ91とサブバルブ181とを並列で設けている。また、オリフィス175はサブバルブ181と直列に接続されている。
以上のように、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値v2以上の通常速度領域では、メインバルブ91が開弁することで油液を第1通路92を介して大流量で流すことができる。これにより、サブバルブ181およびバルブシート部139の間の通路を流れる流量が小さくなる。このため、サブバルブ181のバルブ剛性を下げることができる。よって、例えば、ピストン速度が通常速度領域(v2以上)でのピストン速度の上昇に対する減衰力の増加率を下げること等ができる。言い換えれば、通常速度領域(v2以上)におけるピストン速度の上昇に対する伸び側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域(v2未満)よりも寝かせることができる。これにより、設計自由度を拡大することができる。
いずれも縮み側の第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構173のうち、第1減衰力発生機構42のメインバルブ71は、第2減衰力発生機構173のサブバルブ171よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、縮み行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構173が開弁し、ピストン速度がこの所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構173がともに開弁することになる。サブバルブ171は、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生させる極微低速バルブである。
すなわち、縮み行程においては、ピストン18が下室20側に移動することで下室20の圧力が高くなり、上室19の圧力が低くなるが、第1減衰力発生機構41,42および第2減衰力発生機構173,183のいずれにも固定オリフィスがないため、第2減衰力発生機構173が開弁するまで、油液は流れない。このため、減衰力は急激に立ち上がる。ピストン速度が、第2減衰力発生機構173が開弁する第3所定値よりも高速の領域であって、第3所定値よりも高速の第4所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構173が開弁する。
つまり、サブバルブ171がバルブシート部135から離座して、縮み側の第2通路172で下室20と上室19とを連通させる。よって、下室20の油液が、複数の通路孔143内および環状溝144内の第2通路部152と、サブバルブ171およびバルブシート部135の間の通路と、キャップ室146と、ディスク103の切欠部153内の通路と、ピストンロッド21の通路切欠部30内の通路、弁座部材109の大径穴部137内の通路およびピストン18の大径穴部46内の通路と、オリフィス175と、ピストン18の環状溝55内および複数の通路穴38内の通路とを介して上室19に流れる。これにより、ピストン速度が第4所定値よりも低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
また、縮み行程において、ピストン速度が上記第4所定値以上の通常速度領域では、第2減衰力発生機構173が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構42が開弁する。つまり、サブバルブ171がバルブシート部135から離座して、縮み側の第2通路172で下室20から上室19に油液を流すことになるが、このとき、第2通路172はオリフィス175で油液の流量が絞られていることから、第1通路72に設けられたメインバルブ71に生じる差圧が大きくなり、メインバルブ71がバルブシート部50から離座して、縮み側の第1通路72で下室20から上室19に油液を流す。よって、下室20の油液が、複数の通路穴39内および環状溝56内の通路と、メインバルブ71およびバルブシート部50の間の通路とを介して流れる。これにより、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。通常速度領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率は、極微低速領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率よりも低くなる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する縮み側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。
縮み行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では、下室20と上室19との差圧は低速領域よりも大きくなるが、第1通路72はオリフィスによる絞りがないため、メインバルブ71が開弁することで油液を第1通路72を介して大流量で流すことができる。これにより、サブバルブ171を流れる流量が小さくなるため、サブバルブ171のバルブ剛性を下げることができる。よって、ピストン速度が通常速度領域での減衰力を下げること等ができ、設計自由度を拡大することができる。
また、このとき(ピストン速度が速い場合)、下室20と上室19との差圧は大きくなるものの、第2通路172をオリフィス175で絞ることにより、上室19にオリフィス175を介して連通するキャップ室146内の圧力は、下室20と上室19との間の圧力となるので、下室20との差圧が大きくなり過ぎることを抑制できる。これと、メインバルブ71が開弁することで油液を第1通路72を介して大流量で流すことができることとによって、サブバルブ171の変形を抑制することができる。
また、このとき、閉状態のサブバルブ181には下室20とキャップ室146とから反対向きの圧力が加わることになるが、下室20と上室19との差圧は大きいものの、下室20とキャップ室146とは、サブバルブ171が開くことで連通しており、サブバルブ181の下流側となるキャップ室146と上室19との間にオリフィス175が設けられているため、キャップ室146内の圧力が低下し過ぎることを抑制でき、下室20の圧力上昇に合わせてキャップ室146の圧力も上昇させることができる。よって、サブバルブ181の上流側と下流側の面に生じる差圧が小さく、サブバルブ181に下室20側からキャップ室146側に向けた大きな背圧が加わることを抑制できる。
以上の緩衝器1は、縮み行程で下室20から上室19に油液を流す流路を第1通路72と第2通路172との並列で設け、メインバルブ71とサブバルブ171とを並列で設けている。また、オリフィス175は、第2通路172においてサブバルブ171と直列に接続されている。
伸び行程において、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域では上室19と下室20との差圧が大きくなるが、サブバルブ171よりも上流側に形成されたオリフィス175でキャップ室146の圧力上昇を抑えることができるため、サブバルブ171の背圧による変形を抑制することができる。また、縮み行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では下室20と上室19との差圧は低速領域よりも大きくなるが、第1通路72で油液を大流量で流すことと、第2通路172のサブバルブ171よりも下流側をオリフィス175で絞ることとにより、サブバルブ171の変形を抑制することができる。よって、サブバルブ171の耐久性を向上させることができる。
伸び行程において、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域では上室19と下室20との差圧は低速領域よりも大きくなるが、第1通路92で油液を大流量で流すことと、第2通路182をオリフィス175で絞ることとにより、サブバルブ181の変形を抑制することができる。また、縮み行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では下室20と上室19との差圧が大きくなるが、サブバルブ171の開弁で下室20とキャップ室146とは連通しており、しかもキャップ室146は上室19との間に設けられたオリフィス175で上室19への油液の流れが絞られる。このため、下室20とキャップ室146との差圧は小さく、サブバルブ181の背圧による変形を抑制することができる。よって、サブバルブ181の耐久性を向上させることができる。
縮み行程および伸び行程で独立した第2減衰力発生機構173,183を有するため、減衰力特性の設定の自由度が高くなる。
上記した特許文献1,2には、同一行程で開弁するバルブを2つ有するものが記載されている。このように同一行程で開弁するバルブを2つ有する構造を採用することで、一方のバルブを他方のバルブよりもピストン速度が低速の領域で開弁させ、これよりも高速の領域では両方のバルブを開弁させることができる。このような構造において、特に低速側のバルブの耐久性を向上することが求められている。
これに対して、第1実施形態の緩衝器1は、第1減衰力発生機構41,42が設けられるピストン18の第1通路72,92とは並列の第2通路172,182の第2減衰力発生機構173,183のサブバルブ181およびサブバルブ171を、下室20に配置される弁座部材109に設ける。それとともに、第2通路172,182におけるピストン18と弁座部材109との間に有底筒状のキャップ部材101を、その内側に弁座部材109を配置して設ける。このとき、サブバルブ181を下室20側に、サブバルブ171をキャップ部材101の底部122と弁座部材109との間のキャップ室146内に設ける。そして、第2通路182のサブバルブ181が開弁する伸び行程時の流れの上流側にオリフィス175を配置する。これにより、縮み行程時に下室20からサブバルブ171を開いてキャップ室146内に流れ、上室19へ流れる油液の流れをオリフィス175が絞ることになる。このため、キャップ室146と下室20との差圧が小さくなり、下室20から背圧を受ける閉状態のサブバルブ181が、キャップ室146から下室20と同等の圧力を受けることになって、受ける背圧(差圧)が抑制されることになる。よって、サブバルブ181の耐久性を向上させることができる。
また、第1通路部151,152は、作動流体である油液の流れの上流端と下流端とが弁座部材109の径方向にずれているため、例えば、第1通路部151の油液の流れの下流端を上流端よりも弁座部材109の径方向における内側に配置したり、第2通路部152の油液の流れの下流端を上流端よりも弁座部材109の径方向における内側に配置したりすることができる。よって、例えば、弁座部材109のサブバルブ181が着座するバルブシート部139の径およびサブバルブ171が着座するバルブシート部135の径をともに大きくすることができる。すると、伸び側のサブバルブ181および縮み側のサブバルブ171のバルブ剛性を低下させることができ、伸び側および縮み側の両行程において、ピストン速度が低速の領域からバルブ特性の減衰力を発生させる等、減衰力特性のチューニング調整幅を拡大することができる。
また、弁座部材109に設けられる伸び側の第1通路部151および縮み側の第2通路部152が独立しているため、オリフィス175の流路面積を拡大し、縮み側の通路孔143および伸び側の通路孔141をオリフィス175以下の流路面積に個別に設定することで、別々の特性を得ることが可能である。
また、ピストン18、キャップ部材101および弁座部材109に、ピストンロッド21が挿入される構造であるため、ピストン18、キャップ部材101および弁座部材109をコンパクトに配置することができる。
オリフィス175が、伸び側の第1減衰力発生機構41のうち、ピストン18に当接するディスク82を切り欠いて形成されているため、オリフィス175を容易に形成することができる。
第2通路172,182は、それぞれの一部がピストンロッド21を切り欠いて形成されているため、第2通路172,182を容易に形成することができる。
キャップ室146と下室20の差圧が、伸縮両行程において、大きくならないので、キャップ部材101を薄板のプレス部品を用いることが可能となる。よって、製造性、軽量化の面で有利である。
ディスク107にプリロードを付加するバネ部材105と、ディスク110にプリロードを付加するバネ部材112とを有しているため、これらバネ部材105,112のそれぞれのプリロードを変更することにより、減衰力を調整することができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を主に図5に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
図5に示すように、第2実施形態の緩衝器1Aにおいては、ディスク107にプリロードを付加する第1実施形態のバネ部材105およびディスク104と、ディスク110にプリロードを付加するバネ部材112とをなくしている。そして、ディスク103とディスク106とを当接させ、ディスク111とディスク113とを当接させている。
よって、第2実施形態の緩衝器1Aは、バネ部材105およびディスク104がない点が第1実施形態の第2減衰力発生機構173とは異なる第2減衰力発生機構173Aを有しており、バネ部材112がない点が第1実施形態の第2減衰力発生機構183とは異なる第2減衰力発生機構183Aを有している。第2減衰力発生機構173Aにおいては、ディスク107のみで縮み側のサブバルブが構成されることになり、第2減衰力発生機構183Aにおいてもディスク110のみで伸び側のサブバルブが構成されることになる。
このような第2実施形態においては、ディスク107,110にプリロードを付加する部品がないため、ディスク107,110が一層開弁しやすくなる。よって、より低いピストン速度からバルブ特性の減衰力を発生させることが可能となる。
[第3実施形態]
次に、第2実施形態を主に図6および図7に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
第3実施形態の緩衝器1Bにおいては、図6に示すように、第1実施形態のピストンロッド21とは一部異なるピストンロッド21Bが用いられている。ピストンロッド21Bは、取付軸部28とは一部異なる取付軸部28Bを有しており、取付軸部28Bには、通路切欠部30に対しピストンロッド21Bの軸方向における位置が主軸部27側にずれている点が異なる通路切欠部30Bが形成されている。
また、第3実施形態の緩衝器1Bにおいては、第1実施形態のピストン18とは一部異なるピストン18Bが用いられている。ピストン18Bは、ピストン本体36とは一部異なるピストン本体36Bを有している。ピストン本体36Bは、径方向中央に形成された挿入穴44Bが挿入穴44とは異なっており、小径穴部45と同様の小径穴部45Bが軸方向の内側シート部47側に、大径穴部46と同様の大径穴部46Bが軸方向の内側シート部49側に設けられている。ピストン18Bは、大径穴部46Bが軸段部29側に位置する向きでピストンロッド21Bに取り付けられている。
また、第3実施形態の緩衝器1Bにおいては、図7に示すように、環状部材69とディスク68との間に、環状部材69側から順に、ディスク113と、バネ部材112と、ディスク111と、ディスク110と、Oリング108が設けられた弁座部材109と、ディスク107と、ディスク106と、バネ部材105と、ディスク103と、ディスク102と、キャップ部材101とが、ピストンロッド21Bの取付軸部28Bをそれぞれの内側に嵌合させて設けられている。このとき、弁座部材109は、小径穴部136、内側シート部138およびバルブシート部139が軸段部29側に位置する向きとされる。また、キャップ部材101は、筒状部124が軸段部29側に位置する向きとされ、底部122においてディスク68に当接する。
そして、図6に示すように、ディスク89のピストン18Bとは反対側に、ディスク89側から順に、ディスク201と、環状部材114とが、ピストンロッド21Bの取付軸部28Bをそれぞれの内側に嵌合させて設けられている。ディスク201は、ディスク68と同様の部品であり、メインバルブ91の外径よりも小径で、環状部材114の外径よりも大径の外径となっている。ディスク201は、環状部材114よりも薄く剛性が低い。
よって、弁座部材109は、上室19および下室20のうちの一方である上室19に配置されており、そのバルブシート部139が上室19に臨んで配置されている。Oリング108が設けられた弁座部材109は、キャップ室146と上室19とを区画しており、キャップ室146および上室19の両方に臨んで設けられている。複数の通路孔143内および環状溝144内の第2通路部152は上室19に常時連通している。
また、第3実施形態の緩衝器1Bにおいては、ピストン18Bとディスク63との間に、複数枚のディスク62にかえて切欠部90を有するディスク82が設けられ、ピストン18Bとディスク84との間に、ディスク82,83にかえて切欠部のない複数枚のディスク62が設けられている。ディスク82の切欠部90は、縮み側の複数の通路穴39内および環状溝56内の通路を、ピストンロッド21Bの通路切欠部30B内の通路、ピストン18Bの大径穴部46B内の通路および弁座部材109の大径穴部137内の通路に常時連通させる。
キャップ部材101とOリング108と弁座部材109との間に形成されるキャップ室146は、ディスク103の切欠部153内の通路を介して、ピストンロッド21Bの通路切欠部30B内の通路、弁座部材109の大径穴部137内の通路およびピストン18Bの大径穴部46B内の通路と常時連通している。よって、キャップ室146は、ディスク103の切欠部153内の通路と、ピストンロッド21Bの通路切欠部30B内の通路、弁座部材109の大径穴部137内の通路およびピストン18Bの大径穴部46B内の通路と、ディスク82の切欠部90内の通路と、ピストン18Bの環状溝56内および複数の通路穴39内の通路とを介して下室20に常時連通している。
第3実施形態においては、サブバルブ171が、キャップ室146内でバルブシート部135から離座することで、弁座部材109の複数の通路孔143内および環状溝144内の第2通路部152とキャップ室146とを連通させ、上室19を下室20に連通させる。弁座部材109の第2通路部152と、開弁時に出現するサブバルブ171およびバルブシート部135の間の通路と、キャップ室146と、ディスク103の切欠部153内の通路と、ピストンロッド21Bの通路切欠部30B内の通路、弁座部材109の大径穴部137内の通路およびピストン18Bの大径穴部46B内の通路と、ディスク82の切欠部90内の通路と、ピストン18Bの環状溝56内および複数の通路穴39内の通路とが、ピストン18Bの上室19側への移動によりシリンダ2内の上流側となる上室19から下流側となる下室20に油液が流れ出す伸び側の第2通路172を構成している。ディスク82の切欠部90は、第2通路172においてオリフィス175を形成し、サブバルブ171が開弁する際の作動流体の流れのサブバルブ171よりも下流側に配置されている。
サブバルブ171と、バルブシート部135と、ディスク102,103と、キャップ部材101とが、伸び側の第2通路172に設けられ、この第2通路172を開閉し、この第2通路172から下室20への油液の流動を抑制して減衰力を発生する伸び側の第2減衰力発生機構173を構成している。伸び側の第2減衰力発生機構173を構成するサブバルブ171は伸び側のサブバルブである。
上室19と下室20とを連通可能な伸び側の第2通路172は、同じく上室19と下室20とを連通可能な伸び側の通路である第1通路92と並列しており、第1通路92に第1減衰力発生機構41が、第2通路172に第2減衰力発生機構173がそれぞれ設けられている。よって、いずれも伸び側の第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構173は、並列に配置されている。
第3実施形態においては、サブバルブ181が、上室19内に設けられており、バルブシート部139から離座することで、弁座部材109の複数の通路孔141内および環状溝142内の第1通路部151と上室19とを連通させ、下室20を上室19に連通させる。ピストン18Bの複数の通路穴39内および環状溝56内の通路と、ディスク82の切欠部90内の通路と、ピストンロッド21Bの通路切欠部30B内の通路、ピストン18Bの大径穴部46B内の通路および弁座部材109の大径穴部137内の通路と、ディスク103の切欠部153内の通路と、キャップ室146と、弁座部材109の複数の通路孔141内および環状溝142内の第1通路部151と、開弁時に出現するサブバルブ181およびバルブシート部139の間の通路とが、ピストン18Bの下室20側への移動によりシリンダ2内の上流側となる下室20から下流側となる上室19に油液が流れ出す縮み側の第2通路182を構成している。ディスク82の切欠部90は、第2通路182においてオリフィス175を形成し、サブバルブ181が開弁する際の作動流体の流れのサブバルブ181よりも上流側に配置されている。
サブバルブ181と、バルブシート部139と、ディスク113と、環状部材69とが、縮み側の第2通路182に設けられ、この第2通路182を開閉し、この第2通路182から上室19への油液の流動を抑制して減衰力を発生する縮み側の第2減衰力発生機構183を構成している。縮み側の第2減衰力発生機構183を構成するサブバルブ181は縮み側のサブバルブである。
上室19と下室20とを連通可能な縮み側の第2通路182は、同じく上室19と下室20とを連通可能な縮み側の通路である第1通路72と、下室20側の環状溝56内および複数の通路穴39内の通路を除いて並列しており、並列部分には、第1通路72に第1減衰力発生機構42が、第2通路182に第2減衰力発生機構183がそれぞれ設けられている。よって、いずれも縮み側の第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構183は、並列に配置されている。
第3実施形態においても、第2減衰力発生機構173,183は、弁座部材109と、第2通路172,182の弁座部材109に設けられる部分である弁座部材通路部150の一側に設けられるサブバルブ181および弁座部材通路部150の他側に設けられるサブバルブ171と、第2通路172,182におけるピストン18と弁座部材109との間に設けられる有底筒状のキャップ部材101と、を備えている。弁座部材109はキャップ部材101内に設けられており、サブバルブ181は、弁座部材109の上室19側に設けられ、サブバルブ171は、キャップ部材101の底部122と弁座部材109との間のキャップ室146内に設けられている。
いずれも伸び側の第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構173のうち、第1減衰力発生機構41のメインバルブ91は、第2減衰力発生機構173のサブバルブ171よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、伸び行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構173が開弁する。また、ピストン速度がこの所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構41および第2減衰力発生機構173がともに開弁することになる。サブバルブ171は、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生させる極微低速バルブである。
すなわち、伸び行程においては、ピストン18が上室19側に移動することで上室19の圧力が高くなり、下室20の圧力が低くなるが、ピストン速度が、第2減衰力発生機構183が開弁する第1所定値v1よりも高速の領域であって、第1所定値v1よりも高速の第2所定値v2よりも低速の極微低速領域(v1以上v2未満)では、第1減衰力発生機構41は閉弁した状態で第2減衰力発生機構173が開弁する。
つまり、サブバルブ171がバルブシート部135から離座して、伸び側の第2通路172で上室19と下室20とを連通させる。よって、上室19の油液が、弁座部材109の複数の通路孔143内および環状溝144内の第2通路部152と、サブバルブ171およびバルブシート部135の間の通路と、キャップ室146と、ディスク103の切欠部153内の通路と、ピストンロッド21Bの通路切欠部30B内の通路、弁座部材109の大径穴部137内の通路およびピストン18Bの大径穴部46B内の通路と、オリフィス175と、ピストン18Bの環状溝56内および複数の通路穴39内の通路とを介して下室20に流れる。これにより、ピストン速度が第2所定値v2よりも低速の極微低速領域(v1以上v2未満)でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
また、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値v2以上の通常速度領域では、第2減衰力発生機構173が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構41が開弁する。つまり、サブバルブ171がバルブシート部135から離座して、伸び側の第2通路172で上室19から下室20に油液を流すことになるが、このとき、第2通路172においてサブバルブ171よりも下流側に設けられたオリフィス175で油液の流れが絞られることにより、第1通路92に設けられたメインバルブ91に加わる圧力が高くなって差圧が高まり、メインバルブ91がバルブシート部48から離座して、伸び側の第1通路92で上室19から下室20に油液を流す。よって、上室19の油液が、複数の通路穴38内および環状溝55内の通路と、メインバルブ91およびバルブシート部48の間の通路とを介して下室20に流れる。これにより、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。通常速度領域におけるピストン速度の増加に対する伸び側の減衰力の増加率は、極微低速領域におけるピストン速度の増加に対する伸び側の減衰力の増加率よりも低くなる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する伸び側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。
ここで、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値v2以上の通常速度領域では、上室19と下室20との差圧は、第1所定値v1以上第2所定値v2未満の低速領域よりも大きくなるが、第1通路92はオリフィスによる絞りがないため、メインバルブ91が開弁することで油液を第1通路92を介して大流量で流すことができる。これと、第2通路172をオリフィス175で絞ることとにより、サブバルブ171の変形を抑制することができる。
また、このとき、閉状態のサブバルブ181には上室19とキャップ室146とから反対向きの圧力が加わることになる。上室19と下室20との差圧が大きくなっても、サブバルブ171が開くことでキャップ室146と上室19とは連通しており、また、第2通路182においてサブバルブ181よりも下流側にオリフィス175が形成されているため、キャップ室146の圧力が急激に下がることはなく上室19との圧力差が大きくなることを抑制する。よって、閉状態のサブバルブ181が受ける上室19とキャップ室146との圧力差が大きくなることを抑制でき、サブバルブ181に上室19側からキャップ室146側に向けた大きな背圧が加わることを抑制できる。
緩衝器1Bは、伸び行程で上室19から下室20に油液を流す流路を第1通路92と第2通路172との並列で設け、メインバルブ91とサブバルブ171とを並列で設けている。また、オリフィス175はサブバルブ171と直列に接続されている。
以上のように、伸び行程において、ピストン速度が第2所定値v2以上の通常速度領域では、メインバルブ91が開弁することで油液を第1通路92を介して大流量で流すことができる。これにより、サブバルブ171およびバルブシート部135の間の通路を流れる流量が小さくなる。このため、サブバルブ171のバルブ剛性を下げることができる。よって、例えば、ピストン速度が通常速度領域(v2以上)でのピストン速度の上昇に対する減衰力の増加率を下げること等ができる。言い換えれば、通常速度領域(v2以上)におけるピストン速度の上昇に対する伸び側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域(v2未満)よりも寝かせることができる。これにより、設計自由度を拡大することができる。
いずれも縮み側の第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構183のうち、第1減衰力発生機構42のメインバルブ71は、第2減衰力発生機構183のサブバルブ181よりも剛性が高く開弁圧が高い。よって、縮み行程において、ピストン速度が所定値よりも低速の極微低速領域では第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構183が開弁し、ピストン速度がこの所定値以上の通常速度領域では、第1減衰力発生機構42および第2減衰力発生機構183がともに開弁することになる。サブバルブ181は、ピストン速度が極微低速の領域で開弁して減衰力を発生させる極微低速バルブである。
すなわち、縮み行程においては、ピストン18が下室20側に移動することで下室20の圧力が高くなり、上室19の圧力が低くなるが、ピストン速度が、第2減衰力発生機構183が開弁する第3所定値よりも高速の領域であって、第3所定値よりも高速の第4所定値よりも低速の極微低速領域では、第1減衰力発生機構42は閉弁した状態で第2減衰力発生機構183が開弁する。
つまり、サブバルブ181がバルブシート部139から離座して、縮み側の第2通路182で下室20と上室19とを連通させる。よって、下室20の油液が、ピストン18Bの複数の通路穴39内および環状溝56内の通路と、オリフィス175と、ピストンロッド21Bの通路切欠部30B内の通路、ピストン18Bの大径穴部46B内の通路および弁座部材109の大径穴部137内の通路と、ディスク103の切欠部153内の通路と、キャップ室146と、複数の通路孔141内および環状溝142内の第1通路部151と、サブバルブ181およびバルブシート部139の間の通路とを介して上室19に流れる。これにより、ピストン速度が第4所定値よりも低速の極微低速領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する特性)の減衰力が得られる。
また、縮み行程において、ピストン速度が上記第4所定値以上の通常速度領域では、第2減衰力発生機構183が開弁した状態のまま、第1減衰力発生機構42が開弁する。つまり、サブバルブ181がバルブシート部139から離座して、縮み側の第2通路182で下室20から上室19に油液を流すことになるが、このとき、第2通路182はオリフィス175で油液の流量が絞られていることから、第1通路72に設けられたメインバルブ71に生じる差圧が大きくなり、メインバルブ71がバルブシート部50から離座して、縮み側の第1通路72で下室20から上室19に油液を流す。よって、下室20の油液が、複数の通路穴39内および環状溝56内の通路と、メインバルブ71およびバルブシート部50の間の通路とを介して流れる。これにより、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域でも、バルブ特性(減衰力がピストン速度にほぼ比例する)の減衰力が得られる。通常速度領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率は、極微低速領域におけるピストン速度の増加に対する縮み側の減衰力の増加率よりも低くなる。言い換えれば、通常速度領域におけるピストン速度の上昇に対する縮み側の減衰力の増加率の傾きを、極微低速領域よりも寝かせることができる。
縮み行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では、下室20と上室19との差圧は低速領域よりも大きくなるが、第1通路72はオリフィスによる絞りがないため、メインバルブ71が開弁することで油液を第1通路72を介して大流量で流すことができる。これにより、サブバルブ181を流れる流量が小さくなるため、サブバルブ181のバルブ剛性を下げることができる。よって、ピストン速度が通常速度領域での減衰力を下げること等ができ、設計自由度を拡大することができる。
また、このとき(ピストン速度が速い場合)、下室20と上室19との差圧は大きくなるものの、第2通路182をオリフィス175で絞ることにより、下室20にオリフィス175を介して連通するキャップ室146内の圧力は、下室20と上室19との間の圧力となるので、上室19との差圧が大きくなり過ぎることを抑制できる。これと、メインバルブ71が開弁することで油液を第1通路72を介して大流量で流すことができることとによって、サブバルブ181の変形を抑制することができる。
また、このとき、閉状態のサブバルブ171には上室19とキャップ室146とから反対向きの圧力が加わることになるが、下室20と上室19との差圧は大きいものの、上室19とキャップ室146とは、サブバルブ181が開くことで連通しており、サブバルブ171の上流側となるキャップ室146と下室20との間にオリフィス175が設けられているため、キャップ室146内の圧力が上昇し過ぎることを抑制できる。よって、サブバルブ171の上流側と下流側の面に生じる差圧が小さく、サブバルブ171にキャップ室146側から上室19側に向けた大きな背圧が加わることを抑制できる。
以上の緩衝器1は、縮み行程で下室20から上室19に油液を流す流路を第1通路72と第2通路182との並列で設け、メインバルブ71とサブバルブ181とを並列で設けている。また、オリフィス175は、第2通路182においてサブバルブ181と直列に接続されている。
伸び行程において、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域では上室19と下室20との差圧が低速領域よりも大きくなるが、サブバルブ171の開弁で上室19とキャップ室146とは連通しており、しかもキャップ室146よりも下流側に形成されたオリフィス175でキャップ室146の圧力下降を抑えることができるため、サブバルブ181の背圧による変形を抑制することができる。また、縮み行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では下室20と上室19との差圧は低速領域よりも大きくなるが、第1通路72で油液を大流量で流すことと、第2通路182のサブバルブ181よりも上流側をオリフィス175で絞ることとにより、サブバルブ181の変形を抑制することができる。よって、サブバルブ181の耐久性を向上させることができる。
伸び行程において、ピストン速度が第2所定値以上の通常速度領域では上室19と下室20との差圧が低速領域よりも大きくなるが、第1通路92で油液を大流量で流すことと、第2通路172をオリフィス175で絞ることとにより、サブバルブ171の変形を抑制することができる。また、縮み行程において、ピストン速度が第4所定値以上の通常速度領域では下室20と上室19との差圧は低速領域よりも大きくなるが、サブバルブ181の開弁で上室19とキャップ室146とは連通しており、しかもキャップ室146は下室20との間に設けられたオリフィス175で下室20からの油液の流れが絞られる。このため、上室19とキャップ室146との差圧は小さく、サブバルブ171の背圧による変形を抑制することができる。よって、サブバルブ171の耐久性を向上させることができる。
上記第1〜第3実施形態は、モノチューブ式の油圧緩衝器に本発明を適用した例を示したが、これに限らず、シリンダを外筒と内筒とで構成し、外筒と内筒との間にリザーバ室を形成する複筒式の油圧緩衝器に用いてもよく、ディスクにシール部材を設けた構造のパッキンバルブを使用した圧力制御バルブを含むあらゆる緩衝器に用いることができる。
以上に述べた実施形態の第1の態様は、作動流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内に摺動可能に設けられ、該シリンダ内を2室に区画するピストンと、前記ピストンに連結されると共に前記シリンダの外部に延出されるピストンロッドと、前記ピストンの移動により前記シリンダ内の上流側となる前記室から下流側となる前記室に作動流体が流れ出す第1通路および第2通路と、前記ピストンに形成される前記第1通路に設けられ、減衰力を発生する第1減衰力発生機構と、前記2室のうちの一方の室に配置される環状の弁座部材に設けられ、前記第1通路とは並列の前記第2通路に設けられて減衰力を発生する第2減衰力発生機構と、を有し、前記第2減衰力発生機構は、前記第2通路の前記弁座部材に設けられる弁座部材通路部の一側に設けられる第1サブバルブおよび他側に設けられる第2サブバルブと、前記第2通路における前記ピストンと前記弁座部材との間に設けられる有底筒状のキャップ部材と、を備え、前記弁座部材は前記キャップ部材内に、前記第1サブバルブは前記一方の室に、前記第2サブバルブは前記キャップ部材の底部と前記弁座部材との間のキャップ室内に、それぞれ設けられ、前記第2通路には、前記第1サブバルブが開弁する際の作動流体の流れの上流側または下流側にオリフィスが配置され、ピストン速度が低速の領域では前記第1減衰力発生機構は閉弁した状態で前記第2減衰力発生機構が開弁し、ピストン速度が低速よりも大きい速度領域では、前記第1減衰力発生機構および第2減衰力発生機構がともに開弁し、前記弁座部材通路部は、作動流体の流れの上流端と下流端とが前記弁座部材の径方向にずれている。これにより、バルブの耐久性を向上させることが可能となる。
第2の態様は、第1の態様において、前記弁座部材通路部は、作動流体の流れの下流端が上流端よりも前記弁座部材の径方向における内側に配置されている。
第3の態様は、第2の態様において、前記弁座部材通路部は、前記第1サブバルブで開閉される第1通路部および前記第2サブバルブで開閉される第2通路部を有し、前記第1通路部は、前記第1サブバルブ側の端部が前記キャップ室側の端部よりも前記弁座部材の径方向における内側に配置され、前記第2通路部は、前記第2サブバルブ側の端部が前記一方の室側の端部よりも前記弁座部材の径方向における内側に配置されている。
第4の態様は、第3の態様において、前記弁座部材の前記第1サブバルブ側には、前記第1通路部よりも前記弁座部材の径方向における外側に前記第1サブバルブが着座する第1シート部が形成されており、前記弁座部材の前記第2サブバルブ側には、前記第2通路部よりも前記弁座部材の径方向における外側に前記第2サブバルブが着座する第2シート部が形成されていて、前記第1シート部と前記第2シート部とが同径である。