以下に本発明の実施の形態の緩衝器D1,D2について、図面を参照しながら説明する。いくつかの図面を通して付された同じ符号は、同じ部品か対応する部品を示す。また、本発明の実施の形態に係る緩衝器D1,D2は、鞍乗型車両の前輪を懸架するフロントフォークに利用されている。以下の説明では、その緩衝器Dを含むフロントフォークが車両に取り付けられた状態での上下を、特別な説明がない限り、単に「上」「下」という。
<第一の実施の形態>
第一の実施の形態の緩衝器D1は、アウターチューブ10と、アウターチューブ10内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ11とを有するテレスコピック型のチューブ部材Tと、インナーチューブ11に連結されるシリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン2と、一端がピストン2に連結されるとともに他端がアウターチューブ10に連結されるピストンロッド3と、シリンダ1の端部に設けられてピストンロッド3の移動を案内する環状のロッドガイド14とを有してチューブ部材T内に収容される緩衝器本体Sと、緩衝器本体Sのストローク変位を検知するストロークセンサ42とを備えている。
そして、図1に示すように、本実施の形態では、緩衝器D1は、収縮時にのみ減衰力を発揮する片効きの緩衝器とされており、電磁弁Vによって緩衝器D1の圧側減衰力の調節が可能となっている。なお、図示はしないが、緩衝器D1は、鞍乗型車両のステアリングシャフトに連結されるブラケットによって伸長時にのみ減衰力を発揮する片効きの緩衝器と連結されている。よって、緩衝器Dと伸長時にのみ減衰力を発揮する緩衝器は、対を成して鞍乗型車両の前輪を支持するフロントフォークを形成し、協働して鞍乗型車両の車体の振動を抑制する。
まず、本発明の第一の実施の形態の緩衝器D1について具体的に説明する。図2に示すように、緩衝器D1は、アウターチューブ10と、アウターチューブ10内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ11とを有して構成されるテレスコピック型のチューブ部材Tを備える。
そして、鞍乗型車両が凹凸のある路面を走行するなどして前輪が上下に振動すると、インナーチューブ11がアウターチューブ10に出入りしてチューブ部材Tが伸縮する。このように、チューブ部材Tが伸縮することを、緩衝器D1が伸縮するともいう。なお、チューブ部材Tは、正立型になっていて、アウターチューブ10が車軸側チューブ、インナーチューブ11が車体側チューブとなっていてもよい。
つづいて、チューブ部材Tの上端となるアウターチューブ10の上端は、キャップ12で塞がれている。その一方、チューブ部材Tの下端となるインナーチューブ11の下端は、車軸側のブラケットBで塞がれている。さらに、アウターチューブ10とインナーチューブ11の重複部の間にできる筒状の隙間は、アウターチューブ10の下端に装着されてインナーチューブ11の外周に摺接する環状のシール部材13で塞がれている。
このようにしてチューブ部材T内は密閉空間とされており、そのチューブ部材T内に緩衝器本体Sが収容されている。この緩衝器本体Sは、インナーチューブ11内に設けられるシリンダ1と、このシリンダ1内に摺動自在に挿入されるピストン2と、下端がピストン2に連結されるとともに上端がシリンダ1外へと突出してキャップ12に連結されるピストンロッド3とを有している。そして、緩衝器本体Sにおけるピストンロッド3は、アウターチューブ10の図1中上端を閉塞するキャップ12を介してアウターチューブ10に連結され、シリンダ1は、インナーチューブ11に連結されている。なお、ピストンロッド3をアウターチューブ10に連結し、シリンダ1をインナーチューブ11に連結しているが、チューブ部材Tを図1に示す状態から天地逆さまにし、ピストンロッド3をインナーチューブ11に連結し、シリンダ1がアウターチューブ10に連結して、緩衝器本体Sをチューブ部材Tに収容してもよい。
キャップ12は、アウターチューブ10に連結されているので、ピストンロッド3はアウターチューブ10に連結されており、シリンダ1は、インナーチューブ11に連結されている。このように、緩衝器本体Sは、アウターチューブ10とインナーチューブ11との間に介装されている。また、キャップ12は、筒状とされており、アウターチューブ10の内周に螺着されるセンサ収容部12aと、センサ収容部12aの下端から延びる小径のピストンロッド連結部12bとを備えており、センサ収容部12a内にストロークセンサ42のセンサ本体42aを収容している。ピストンロッド3は、キャップ12のピストンロッド連結部12b内に挿入されて螺合され、キャップ12に連結される。
また、シリンダ1の上端には、環状のロッドガイド14が装着されており、このロッドガイド14の内側にピストンロッド3が軸方向へ摺動自在に挿入されている。ロッドガイド14は、シリンダ1の内周に螺着される環状の本体部14aと、本体部14aから反シリンダ側へ突出して外径が本体部14aの外径よりも小径なソケット14bと備えており、シリンダ1の図1中上端開口部を閉塞するとともにピストンロッド3の軸方向への移動を案内する。
ロッドガイド14のソケット14bの外周には、内方にピストンロッド3が挿通されるパイプ部材17が設けられている。パイプ部材17は、ソケット14bの外周に螺着されるパイプ18と、パイプ18の反シリンダ側に装着される筒状のホルダ19とを備えている、ホルダ19は、筒状であって、外周にパイプ18の反シリンダ側端の内周に螺着される螺子を備えた装着筒部19aと、装着筒部19aの反シリンダ側に設けられてストロークセンサ42の被検出子として磁石42bを保持する保持筒部19bと、保持筒部19bの反シリンダ側端に装着される環状のクッションシート部材19cとを備えている。パイプ18の軸方向長さは、磁石42bの位置を適切な位置に位置決めできるように設定されている。また、磁石42bは、環状であって内周をピストンロッド3の外周に対向させている。
また、ロッドガイド14とキャップ12との間には、コイルばねでなる懸架ばね15が介装されている。具体的には、懸架ばね15の上端は、キャップ12のピストンロッド連結部12bの外周に嵌合されるばね受23によって支持されている。また、ばね受23の内周とピストンロッド3の上端の外周との間には、筒状のストッパ24が装着されており、ピストンロッド3の外周に装着される環状のクッションラバー25がストッパ24に当接している。ストッパ24は、クッションラバー25の図1中上端に当接していて、クッションラバー25のピストンロッド3に対する図1中上方へ移動を規制している。他方、ロッドガイド14の本体部14aの図1中上端外周には、環状で内径がパイプ18よりも大径であって、懸架ばね15の図1中下端を支持するばね受26が重ねられている。よって、懸架ばね15は、アウターチューブ10とインナーチューブ11とを離間させる付勢力を発揮して、緩衝器D1を伸長方向へ付勢している。
そして、緩衝器D1が伸縮してインナーチューブ11がアウターチューブ10に出入りすると、ピストンロッド3がシリンダ1に出入りしてピストン2がシリンダ1内を上下(軸方向)に移動する。緩衝器D1が収縮してピストンロッド3がシリンダ1内へと侵入すると、懸架ばね15が圧縮されて弾性力を発揮して緩衝器Dを伸長方向へ付勢する。このように、懸架ばね15は圧縮量に応じた弾性力を発揮して、車体を弾性支持できるようになっている。
なお、本実施の形態の緩衝器本体Sは片ロッド型で、ピストンロッド3がピストン2の片側からシリンダ1外へ延びている。しかし、緩衝器本体Sが両ロッド型になっていて、ピストンロッドがピストンの両側からシリンダ外へ延びていてもよい。さらには、ピストンロッド3がシリンダ1から下方へ突出して車軸側に連結されるとともに、シリンダ1が車体側に連結されていてもよい。また、懸架ばね15は、エアばね等のコイルばね以外のばねであってもよい。
つづいて、シリンダ1内には、作動油等の液体が充填された液室Lが形成されており、この液室Lがピストン2で伸側室Laと圧側室Lbとに区画されている。ここでいう伸側室とは、ピストンで区画された二室のうち、緩衝器の伸長時にピストンで圧縮される方の部屋のことである。その一方、圧側室とは、ピストンで区画された二室のうち、緩衝器の収縮時にピストンで圧縮される方の部屋のことである。
また、シリンダ1外、より詳しくは、緩衝器本体Sとチューブ部材Tとの間の空間は液溜室Rとされている。この液溜室Rには、シリンダ1内の液体と同じ液体が貯留されるとともに、その液面上側にエア等の気体の封入されたガス室Gが形成されている。このように、チューブ部材Tは、シリンダ1内の液体とは別に、液体を貯留するタンク16の外殻として機能する。
そのタンク16内となる液溜室Rは、伸側室Laと連通されており、伸側室Laの圧力がタンク16内(液溜室R)の圧力と常に略同圧(タンク圧)となる。さらに、液溜室Rは、シリンダ1の下端に固定されたバルブケース4で圧側室Lbと仕切られている。このバルブケース4には、圧側室Lbと液溜室Rとを連通する吸込通路4aが形成されるとともに、この吸込通路4aを開閉する吸込バルブ40が装着されている。
その吸込バルブ40は、伸側チェックバルブであり、緩衝器Dの伸長時に吸込通路4aを開いて、その吸込通路4aを液溜室Rから圧側室Lbへと向かう液体の流れを許容するが、緩衝器Dの収縮時には吸込通路4aを閉塞した状態に維持される。なお、本実施の形態の吸込バルブ40は、リーフバルブであるが、ポペットバルブ等であってもよい。
また、ピストン2には、伸側室Laと圧側室Lbとを連通する伸側通路2aと圧側通路2bが形成されるとともに、伸側通路2aを開閉する伸側チェックバルブ20と、圧側通路2bを圧側室Lbから伸側室Laへと向かう液体の流れに抵抗を与えるハード側減衰要素21が装着されている。
ハード側減衰要素21は、ピストン2の上側に積層されるリーフバルブ21aと、このリーフバルブ21aと並列に設けられるオリフィス21bとを有して構成されている。
リーフバルブ21aは、金属等で形成された薄い環状板、又はその環状板を積み重ねた積層体であって弾性を有し、外周側(または内周側)の撓みを許容された状態でピストン2に装着されている。そして、圧側室Lbの圧力が、リーフバルブ21aの外周部を上側へ撓ませる方向へ作用するようになっている。また、オリフィス21bは、ピストン2Rの弁座(符示せず)に離着座するリーフバルブ21aの外周部に設けられた切欠きで形成されているが、前記弁座に設けられた打刻等によって形成されてもよい。
圧側室Lbは、緩衝器Dの収縮時にピストン2で圧縮されてその内圧が上昇し、伸側室Laの圧力よりも高くなる。このような緩衝器Dの収縮時にピストン速度が低速域にあり、圧側室Lbと伸側室Laとの差圧がリーフバルブ21aの開弁圧に満たない場合には、液体がオリフィス21bを通って圧側室Lbから伸側室Laへと向かうとともに、この液体の流れに対して抵抗が付与される。また、上記差圧が大きくなってリーフバルブ21aの開弁圧以上になると、リーフバルブ21aの外周部が撓んで、液体がその外周部とピストン2との間にできる隙間を通って圧側室Lbから伸側室Laへと向かうとともに、この液体の流れに対して抵抗が付与される。
このように、オリフィス21bと、このオリフィス21bと並列されるリーフバルブ21aとを有して構成されるハード側減衰要素21は、緩衝器Dの収縮時に圧側室Lbから伸側室Laへと向かう液体の流れに抵抗を与える圧側の第一の減衰要素である。そして、この圧側のハード側減衰要素21による抵抗は、ピストン速度が低速域にある場合にはオリフィス21bに起因し、中高速域にある場合にはリーフバルブ21aに起因する。
その一方、伸側チェックバルブ20は、緩衝器Dの伸長時に伸側通路2aを開いて、その伸側通路2aを伸側室Laから圧側室Lbへと向かう液体の流れを許容するが、緩衝器Dの収縮時には伸側通路2aを閉塞した状態に維持される。なお、本実施の形態の伸側チェックバルブ20は、リーフバルブであるが、ポペットバルブ等であってもよい。さらには、シリンダ1内での液体の吸込不足が生じなければ、伸側通路2aと伸側チェックバルブ20を省略してもよい。
つづいて、ピストンロッド3には、ハード側減衰要素21を通過する液体の流量を変更するための減衰力調整部が設けられている。この減衰力調整部は、ハード側減衰要素21を迂回して伸側室Laと圧側室Lbとを連通するバイパス路3aの途中に設けられた流路面積を変更可能な電磁弁Vと、バイパス路3aの途中に電磁弁Vと直列に設けられるソフト側減衰要素50とを有している。
より詳しくは、図2に示すように、ピストンロッド3は、その先端に位置するピストン保持部材30と、その末端側に連なるソレノイドケース部材31と、さらにその末端側に連なり、シリンダ1外へと延びてキャップ12に連結される筒状のロッド本体32とを有する。ピストン保持部材30は、有底筒状のハウジング部30aと、このハウジング部30aの底部分から下方へ突出する軸部30bとを含み、この軸部30bの外周に環状のピストン2がハード側減衰要素21とともにナットNで固定されている。
また、ハウジング部30aの筒部分の内周には、その内側を上室30cと下室30dとに仕切るバルブケース5が固定されている。そのバルブケース5には、上室30cと下室30dを連通する通路5aが形成されており、その通路5aにソフト側減衰要素50が設けられている。さらに、ピストン保持部材30の軸部30bには、下方へ開口してハウジング部30a内に通じる縦孔30eが形成されており、この縦孔30eによって下室30dと圧側室Lbとが連通される。
つづいて、ソレノイドケース部材31は、ハウジング部30aの上端外周に螺合する筒部31aを含む。その筒部31aには、側方へ開口する横孔31bが形成されており、この横孔31bによって伸側室Laとソレノイドケース部材31の内側が連通されている。そして、その横孔31bと上室30cとをつなぐ通路の途中に電磁弁Vが設けられている。
本実施の形態では、前述のソレノイドケース部材31またはピストン保持部材30に形成された横孔31b、上室30c、下室30d、および縦孔30eを有してハード側減衰要素21を迂回するバイパス路3aが形成されている。そして、このバイパス路3aの途中に電磁弁Vとソフト側減衰要素50が直列に設けられている。
また、電磁弁Vとハード側減衰要素50を収容するソレノイドケース部材31およびピストン保持部材30の外径は、シリンダ1の内径よりも小さく、これらで伸側室Laを仕切らないように配慮されている。
ハード側減衰要素50は、バルブケース5の上側に積層されるリーフバルブ50aと、このリーフバルブ50aと並列に設けられるオリフィス50bとを有して構成されている。
リーフバルブ50aは、金属等で形成された薄い環状板、又はその環状板を積み重ねた積層体であって弾性を有し、外周側(または内周側)の撓みを許容された状態でバルブケース5に装着される。そして、下室30dの圧力が、リーフバルブ50aの外周部を上側へ撓ませる方向へ作用するようになっている。また、オリフィス50bは、バルブケース5Rの弁座に離着座するリーフバルブ50aの外周部に設けられた切欠きで形成されているが、前記弁座に設けられた打刻等によって形成されてもよい。
下室30dの圧力は、緩衝器Dの収縮時であって電磁弁Vがバイパス路3aを開いているときに上室30cの圧力よりも高くなる。そして、このような緩衝器Dの収縮時にピストン速度が低速域にあり、上室30cと下室30dの差圧がリーフバルブ50aの開弁圧に満たない場合には、液体がオリフィス50bを通って下室30dから上室30c、即ち、圧側室Lbから伸側室Laへ向かうとともに、この液体の流れに対して抵抗が付与される。また、上記差圧が大きくなってリーフバルブ50aの開弁圧以上になると、リーフバルブ50aの外周部が撓んで、液体がその外周部とバルブケース5との間にできる隙間を通って下室30dから上室30c、即ち、圧側室Lbから伸側室Laへと向かうとともに、この液体の流れに対して抵抗が付与される。
このように、オリフィス50bと、このオリフィス50bと並列されるリーフバルブ50aとを有して構成されるソフト側減衰要素50は、緩衝器Dの収縮時に圧側バイパス路3aを圧側室Lbから伸側室Laへと向かう液体の流れに抵抗を与える圧側の第二の減衰要素である。そして、このソフト側減衰要素50による抵抗は、ピストン速度が低速域にある場合にはオリフィス50bに起因し、中高速域にある場合にはリーフバルブ50aに起因する。
また、ソフト側減衰要素50のリーフバルブ50aは、ハード側減衰要素21のリーフバルブ21aと比較してバルブ剛性の低い(撓みやすい)バルブであり、流量が同じである場合、液体の流れに与える抵抗(圧力損失)が小さい。換言すると、液体は、同一条件下において、リーフバルブ21aよりもリーフバルブ50aの方を通過しやすい。また、ソフト側減衰要素50のオリフィス50bは、ハード側減衰要素21のオリフィス21bよりも開口面積が大きい大径オリフィスであり、流量が同じである場合、液体の流れに与える抵抗(圧力損失)が小さい。
つづいて、電磁弁Vは、図2に示すように、ピストンロッド3内に固定される筒状のホルダ6と、このホルダ6内に往復動可能に挿入される筒状のスプール7と、このスプール7を移動方向の一方である図2中上方へ付勢する付勢ばね8と、このスプール7に対して移動方向の他方へ推力を与え得るソレノイド9とを備えている。そして、電磁弁Vは、ホルダ6内におけるスプール7の位置を調節して開度を大小調節する。
より具体的には、ホルダ6は、ピストンロッド3内のバルブケース5よりも上側に、軸方向の一端を上側(ソレノイドケース部材31側)へ、他端を下側(バルブケース5側)へ向けた状態で、ピストンロッド3の中心軸に沿って配置されている。さらに、ホルダ6には、径方向に貫通する一以上のポート6aが形成されている。そのポート6aは、ソレノイドケース部材31の横孔31bを介して伸側室Laに連通されており、スプール7で開閉される。
スプール7は、筒状で、ホルダ6内に摺動自在に挿入されており、図2中上下方向に往復動可能とされている。より詳細には、スプール7は、ポート6aに対応してポート6aに対向可能なポート7aを備えており、上下方向へ移動してホルダ6に設けられたポート6aを開閉する。具体的には、スプール7のポート7aがホルダ6のポート6aに対向する状態では、スプール7は、ポート6aをスプール7内に連通させる。ポート6aは、ソレノイドケース部材31に設けた横孔31bを通じて伸側室Laに連通されている。他方、スプール7内は、上室30c、バルブケース5に設けた通路5a、下室30dおよび縦孔30eを介して圧側室Lbに連通されている。よって、バイパス路3aの途中に電磁弁Vが設けられており、ポート6aがスプール7内に連通すると電磁弁Vが開弁してバイパス路3aが開放され、バイパス路3aを通じて伸側室Laと圧側室Lbとが連通される。
そして、ホルダ6に対してスプール7が移動すると、ポート6aがポート7aに対向する面積が変化するので、スプール7のホルダ6に対する軸方向位置に応じて流路面積を変更できる。スプール7がホルダ6に対して図2中下方に移動してポート6aがポート7aに完全に対向しなくなってスプール7の外周で閉塞されると、ポート6aとスプール7内との連通が絶たれてバイパス路3aが遮断される。
また、スプール7の上端にはプレート70が積層されており、そのプレート70にソレノイド9の後述するプランジャ9aが当接している。その一方、スプール7の下端には、付勢ばね8が当接し、スプール7を移動方向の一方である図2中上方へ向けて付勢している。付勢ばね8は、外周に対して内周が図2中上下方向に変位すると内周を元の位置へ戻す付勢力を発揮する螺旋形状をしたばねとされている。付勢ばね8は、外周がホルダ6の付勢ばね8の下方であってピストン保持部材30のハウジング部30aの内周に嵌合される筒状のカラー22とホルダ6の下端とにより挟持されてピストンロッド3に固定されている。そして、付勢ばね8の内周はスプール7の図2中下端外周に設けた環状凹部7bに嵌合しており、付勢ばね8は、ホルダ6に対してスプール7を図2中上方となる移動方向の一方へ向けて付勢しており、スプール7がホルダ6に対して図2中下方へ変位するとスプール7を元の位置へ戻す付勢力を発揮する。スプール7は、付勢ばね8の付勢力によって附勢される一方、ソレノイド9から付勢ばね8の付勢力に対向する推力を受けない状態では、図2に示すように、最も上方に位置決めされてポート7aをポート6aに対向させない。よって、電磁弁Vは、非通電時には、バイパス路3aを遮断する。
また、電磁弁Vのソレノイド9は、ソレノイドケース部材31内に収容されており、詳しくは図示しないが、コイルを含む筒状のステータと、このステータ内に移動自在に挿入される筒状の可動鉄心と、可動鉄心の内周に装着されて先端がプレート70に当接するプランジャ9aとを有している。このソレノイド9に電力供給するリード線90は、ワイヤハーネス化されてロッド本体32の内側を通って外方へ突出し、電源に接続されている。
そして、そのリード線90を通じてソレノイド9へ通電すると、可動鉄心が下側へ引き寄せられてプランジャ9aが下向きに移動し、スプール7が付勢ばね8の付勢力に抗して押し下げられる。すると、ポート7aとポート6aが対向するようになって電磁弁Vが開く。また、その電磁弁Vの開度とソレノイド9への通電量との関係は正の比例定数をもつ比例関係となり、通電量を増やすほど開度が大きくなる。さらに、ソレノイド9への通電を断つと電磁弁Vが閉じる。
このように、本実施の形態の電磁弁Vは、常閉型で、その弁体となるスプール7を付勢ばね8で閉方向へ付勢するとともに、ソレノイド9で開方向の推力をスプール7に与えるようになっている。また、電磁弁Vの通電量に比例して開度が大きくなり、その開度の増加に伴いバイパス路3aの流路面積が大きくなる。よって、電磁弁Vへの通電量に比例してバイパス路3aの流路面積が大きくなるともいえる。
また、ピストンロッド3におけるロッド本体32内には、キャップ12のセンサ収容部12a内に収容されたセンサ本体42aに保持されてセンサ本体42aから図1中下方へ延びるロッド状のプローブ42cがリード線90とともに挿入されている。そして、ソレノイド9のリード線90は、ロッド本体32内およびキャップ12内を介して緩衝器D1外へ引き出されている。なお、この実施の形態では、センサ本体42aの外周とセンサ収容部12aの内周との間にはリード線90を通す隙間が設けられており、リード線90がセンサ本体42aの側方を通って緩衝器D1外へ引き出されている。
このように、ストロークセンサ42のプローブ42cとリード線90とがピストンロッド3内に収容されるので、電磁弁Vを利用した減衰力調整を可能とするとともに緩衝器D1のストロークの検知も可能となる。
ストロークセンサ42は、シリンダ1にパイプ部材17を介して連結される被検出子としての磁石42bと、ピストンロッド3内に収容されて磁石42bの位置を検知するロッド状のプローブ42cと、プローブ42cを保持するセンサ本体42aとを有している。ストロークセンサ42は、本実施の形態では、プローブ42c内の磁歪線にパルス信号を与えて磁石42bの位置を検知する電子回路を有するセンサ本体42aを備えた磁歪式センサとされている。ストロークセンサ42は、パイプ部材17に保持される被検出子と、ピストンロッド3内に収容されて被検出子の位置を検知するプローブと、プローブを保持するセンサ本体とを有していれば、前述以外の検出原理を利用したスロトークセンサとされてもよい。
そして、プローブ42cは、ピストンロッド3とともに被検出子としての磁石42b内に常に挿通された状態とされる。具体的には、磁石42bの軸方向の位置を決するパイプ部材17の長さは、緩衝器本体Sがフルストロークしてピストンロッド3がシリンダ1に対して図1中上下動しても常にプローブ42cが被検出子である磁石42bの内周に位置するように設定されている。
このように本実施の形態の緩衝器D1では、アウターチューブ10と、アウターチューブ10内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ11とを有するテレスコピック型のチューブ部材Tと、アウターチューブ10とインナーチューブ11の一方に連結されるシリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン2と、一端がピストン2に連結されるとともに他端がアウターチューブ10とインナーチューブ11の他方に連結されるピストンロッド3と、シリンダ1の端部に設けられてピストンロッド3の移動を案内する環状のロッドガイド14とを有してチューブ部材T内に収容される緩衝器本体Sと、緩衝器本体Sのストローク変位を検知するストロークセンサ42とを備え、ストロークセンサ42は、シリンダ1に連結される磁石(被検出子)42bと、ピストンロッド3内に収容されて磁石(被検出子)42bの位置を検知するロッド状のプローブ42cと、プローブ42cを保持するセンサ本体42aとを有し、磁石(被検出子)42bは、ピストンロッド3の外周に配置されて一端がロッドガイド14の反シリンダ側に装着されるパイプ部材17の他端に取り付けられて構成されている。
このように構成された緩衝器D1では、被検出子としての磁石42bがピストンロッド3の外周に配置されて一端がロッドガイド14の反シリンダ側に装着されるパイプ部材17の他端に取り付けられていて、磁石42bの軸方向位置をパイプ部材17によって任意の位置に位置決めできる。よって、ストロークセンサ42のプローブ42cの全長がピストンロッドのロッド本体32よりも短くとも常に磁石(被検出子)42bに対向する位置に設置できるので、ピストンロッド3の全長が非常に長くなる鞍乗車両用の緩衝器D1であっても、プローブ長さが足りなくなってストローク変位を検知できなくなる問題が解消される。以上より、本発明の緩衝器D1によれば、全長が長尺となってもストローク変位を検知可能である。
また、本実施の形態では、パイプ部材17は、ピストンロッド3の外周に装着されるクッションラバー25に対向しており、緩衝器D1が最収縮するとクッションラバー25に衝合して緩衝器D1のそれ以上の収縮を規制する。このように本実施の形態の緩衝器D1によれば、パイプ部材17を設けることで、被検出子としての磁石42bの軸方向位置を位置決めするだけでなく、クッションラバー25と協働して緩衝器D1の最収縮時の衝撃を緩和するクッション機能を発揮できる。
つづいて、本実施の形態の緩衝器D1は、上記電磁弁Vを含んでハード側減衰要素21の流量を自動で調節するための減衰力調整部の他に、ハード側減衰要素21の流量を手動で調節するための第二の減衰力調整部を備えている。その第二の減衰力調整部は、図1に示すように、緩衝器Dのボトム部分に設けられており、圧側室Lbと液溜室Rとを連通する排出通路4bの流路面積を手動操作によって変更可能な手動バルブ41を有して構成されている。
この手動バルブ41は、排出通路4bの途中に設けられた環状の弁座(符示せず)に離着座するニードル状の弁体41aを含む。そして、手動バルブ41を回転操作すると、その回転方向により弁体41aが弁座に遠近して排出通路4bの流路面積が大小調節される。本実施の形態では、電磁弁Vへの通電が正常になされる正常時には、弁体41aを弁座に着座させ、手動バルブ41で排出通路4bの連通を遮断した状態とする。
以上をまとめると、緩衝器Dは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されてシリンダ1内を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン2と、先端がピストン2に連結されるとともに末端がシリンダ1外へと突出するピストンロッド3と、シリンダ1内の伸側室Laに接続されるタンク16とを備え、伸側室Laの圧力がタンク圧となっている。
さらに、緩衝器Dには、伸側室Laと圧側室Lbとを連通する通路として、伸側通路2a、圧側通路2b、およびバイパス路3aが設けられている。伸側通路2aには、伸側室Laから圧側室Lbへ向かう液体の一方向流れのみを許容する伸側チェックバルブ20が設けられており、圧側室Lbから伸側室Laへ向かう液体は、圧側通路2bまたはバイパス路3aを通るようになっている。
そして、圧側通路2bには、オリフィス21bと、これに並列されるリーフバルブ21aを有して構成されていて、液体の流れに抵抗を与えるハード側減衰要素21が設けられている。その一方、バイパス路3aには、オリフィス21bより開口面積の大きいオリフィス50bと、これに並列されるリーフバルブ21aよりもバルブ剛性の低いリーフバルブ50aを有して構成されていて、液体の流れに与える抵抗を小さくしたソフト側減衰要素50が設けられている。
さらに、そのバイパス路3aには、ソフト側減衰要素50と直列に電磁弁Vが設けられており、その電磁弁Vへの通電量の調節によりバイパス路3aの流路面積を変更できるようになっている。そして、電磁弁Vは、常閉型で、通電量に比例してバイパス路3aの流路面積を大きくするように設定されている。
また、緩衝器Dには、圧側室Lbとタンク16とを連通する通路として、吸込通路4aと排出通路4bが設けられている。吸込通路4aには、タンク16から圧側室Lbへ向かう液体の一方向流れのみを許容する吸込バルブ40が設けられている。その一方、排出通路4bには、手動操作により開閉される常閉型の手動バルブ41が設けられている。
緩衝器Dは、以上のように構成されており、緩衝器Dの収縮時には、ピストンロッド3がシリンダ1内へ侵入してピストン2が圧側室Lbを圧縮する。正常時には手動バルブ41が排出通路4bを閉じている。このため、緩衝器Dの収縮時には、圧側室Lbの液体が圧側通路2bまたはバイパス路3aを通って伸側室Laへと移動する。当該液体の流れに対しては、ハード側減衰要素21またはソフト側減衰要素50によって抵抗が付与されて、その抵抗に起因する圧側減衰力が発生する。
また、正常時における緩衝器Dの収縮時に、ハード側減衰要素21とソフト側減衰要素50を通過する液体の分配比は、バイパス路3aの流路面積に応じて変わり、これにより減衰係数が大小して発生する圧側減衰力が大小調節される。
具体的には、前述のように、ハード側減衰要素21およびソフト側減衰要素50は、それぞれオリフィス21b,50bと、これに並列されるリーフバルブ21a,50aとを有して構成されている。このため、減衰力特性は、ピストン速度が低速域にある場合、オリフィス特有のピストン速度の二乗に比例するオリフィス特性となり、ピストン速度が中高速域にある場合には、リーフバルブ特有のピストン速度に比例するバルブ特性となる。
そして、電磁弁Vへの通電量を増やして開度を大きくすると、バイパス路3aの流量が増えてハード側減衰要素21を通過する液体の割合が減るとともに、ソフト側減衰要素50を通過する液体の割合が増える。ソフト側減衰要素50のオリフィス50bは、ハード側減衰要素21のオリフィス21bよりも開口面積の大きい大径オリフィスであるので、ソフト側減衰要素50側へ向かう液体の割合が増えるソフトモードでは、減衰係数が低速域と中高速域の両方で小さくなってピストン速度に対して発生する圧側減衰力が小さくなる。そして、電磁弁Vへ供給する電流量を最大にしたときに、減衰係数が最小になってピストン速度に対して発生する圧側減衰力が最小となる。
これとは逆に、電磁弁Vへの通電量を減らして開度を小さくすると、バイパス路3aの流量が減ってハード側減衰要素21を通過する液体の割合が増えるとともに、ソフト側減衰要素50を通過する液体の割合が減る。すると、減衰係数が大きくなってピストン速度に対する圧側減衰力が大きくなる。そして、電磁弁Vへの通電を断って電磁弁Vを閉じるとバイパス路3aの連通が遮断されるので、全流量がハード側減衰要素21を通過するようになる。すると、減衰係数が最大になって、ピストン速度に対して発生する圧側減衰力が最大となる。
このように、第一、第二の減衰要素であるハード側減衰要素21とソフト側減衰要素50を通過する液体の分配比を電磁弁Vで変えると減衰係数が大小し、図3に示すように、圧側の減衰力特性を示す特性線の傾きが変わる。そして、その特性線の傾きを最大にして発生する減衰力を大きくするハードモードと、傾きを最小にして発生する減衰力を小さくするソフトモードとの間で圧側減衰力が調節される。
そして、ソフトモードでは、減衰力特性を示す特性線の傾きが低速域と中高速域の両方で小さくなるとともに、ハードモードでは、減衰力特性を示す特性線の傾きが低速域と中高速域の両方で大きくなる。このため、減衰力特性がオリフィス特性からバルブ特性へと移行する際の変化がどのモードでも緩やかである。
さらに、ソフト側減衰要素50は、オリフィス50bと並列に、バルブ剛性の低いリーフバルブ50aを有している。このため、ハード側減衰要素21のリーフバルブ21aとしてバルブ剛性が高く、開弁圧の高いバルブを採用し、圧側減衰力を大きくする方向の調整幅を大きくしても、ソフトモードでの減衰力が過大にならない。
また、フェール時(非正常時)には、電磁弁Vへの通電が断たれてハードモードに切り替わる。このとき、手動バルブ41を開けば、圧側室Lbの液体が圧側通路2bのみならず排出通路4bをも通過するようになるので、ハード側減衰要素21を通過する液体の流量が減って発生する圧側減衰力が低減される。
また、緩衝器D1の収縮時にシリンダ1内に侵入したピストンロッド3体積分の液体は、伸側室Laからタンク16へと排出される。
反対に、緩衝器Dの伸長時には、伸側チェックバルブ20が開き、伸側室Laの液体が伸側通路2aを通って圧側室Lbへと移動する。このとき、液体は伸側チェックバルブ20を比較的抵抗なく通過できる。さらに、伸側室Laは、タンク16と連通されていてタンク圧に維持される。よって、緩衝器D1は、伸長側の減衰力を発揮しない。なお、前述したように、緩衝器D1は、伸長時にのみ減衰力を発生する緩衝器と対を成してフロントフォークを構成しているので、前輪と車体が離間する場合には伸長時にのみ減衰力を発揮する緩衝器が車体の振動を抑制する。
本実施の形態に係る緩衝器D1は、シリンダ1と、このシリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン2と、このピストン2に連結されるとともに一端がシリンダ1外へと突出するピストンロッド3とを備えている。
さらに、前記緩衝器D1は、圧側室Lbから伸側室Laへ向かう液体の流れに抵抗を与えるハード側減衰要素21と、このハード側減衰要素21を迂回して圧側室Lbと伸側室Laとを連通するバイパス路3aの流路面積を変更可能な電磁弁Vと、バイパス路3aに電磁弁Vと直列に設けられるソフト側減衰要素50とを備えている。そして、ハード側減衰要素21がオリフィス21bと、このオリフィス21bと並列に設けられるリーフバルブ21aとを有して構成されている。その一方、ソフト側減衰要素50は、オリフィス21bよりも開口面積の大きいオリフィス(大径オリフィス)50bを有して構成されている。
前記構成によれば、緩衝器D1の収縮時に発生する減衰力の特性は、ピストン速度が低速域にある場合には、オリフィス特有のオリフィス特性となり、ピストン速度が中高速域にある場合には、リーフバルブ特有のバルブ特性となる。そして、電磁弁Vでバイパス路3aの開口面積を変更すれば、緩衝器D1の収縮時に圧側室Lbから伸側室Laへと移動する液体のうち、ハード側減衰要素21とソフト側減衰要素50のそれぞれを通過する流量の分配比が変わるので、ピストン速度が低速域にある場合の減衰係数と、中高速域にある場合の減衰係数の両方を自由に設定できて、ピストン速度が中高速域にある場合の圧側減衰力の調整幅を大きくできる。
さらに、バイパス路3aの開口面積を大きくするソフトモードでは、ピストン速度が低速域にある場合の減衰係数と、中高速域にある場合の減衰係数の両方が小さくなる。その一方、バイパス路3aの開口面積を小さくするハードモードでは、ピストン速度が低速域にある場合の減衰係数と、中高速域にある場合の減衰係数の両方が大きくなる。このため、圧側減衰力の特性が、低速域でのオリフィス特性から中高速域でのバルブ特性に変化する際に、その特性線の傾きの変化をどのモードにおいても緩やかになる。これにより、本実施の形態に係る緩衝器Dを車両に搭載した場合には、上記傾きの変化に起因する違和感を軽減し、車両の乗り心地を良好にできる。
また、本実施の形態の緩衝器D1では、ピストン2がピストンロッド3の他端に連結されて片ロッド型になっている。さらに、緩衝器Dは、伸側室Laに接続されるタンク16と、このタンク16から圧側室Lbへ向かう液体の流れのみを許容する吸込バルブ40とを備えている。当該構成によれば、シリンダ1に出入りするピストンロッド3の体積分をタンク16で補償できる。さらには、緩衝器D1を圧縮行程でのみ減衰力を発揮する片効きの緩衝器にできる。
また、本実施の形態の緩衝器D1では、電磁弁Vは、通電量に比例して開度が変化するように設定されている。当該構成によれば、バイパス路3aの開口面積を無段階で変更できる。
また、本実施の形態の緩衝器D1は、圧側室Lbとタンク16とを連通する排出通路4bの流路面積を手動操作によって変更可能な手動バルブ41を備えている。当該構成によれば、フェール時に電磁弁Vを閉じるようにしても、手動バルブ41を手動で開けば発生する圧側減衰力が低減される。このため、フェールモードでの圧側減衰力が過大になるのを防止でき、車両の乗り心地を良好にできる。
また、本実施の形態の緩衝器D1では、電磁弁Vがバイパス路3aに接続されるポート6aが形成される筒状のホルダ6と、このホルダ6内に往復動可能に挿入されてポート6aを開閉可能な筒状のスプール7と、このスプール7の移動方向の一方へスプール7を付勢する付勢ばね8と、この付勢ばね8の付勢力とは反対方向の推力をスプール7に与えるソレノイド9とを有する。
ここで、例えば、特開2010-7758号公報に記載の電磁弁のように、弁体として往復動可能なニードルバルブを有し、そのニードルバルブの尖端と弁座との間にできる隙間を大小させて開度を変更する場合、開度の調整幅を大きくするには弁体のストローク量を大きくする必要があるが、そのようにはできない場合がある。
具体的には、ニードルバルブのストローク量を大きくすると、そのニードルバルブの可動スペースが大きくなって収容スペースの確保が難しくなる。また、ニードルバルブのストローク量を大きくするため、ソレノイドのプランジャのストローク量を大きくしようとすると、ソレノイドの設計変更が必要になって煩雑である。さらには、ソレノイドの設計変更をせずにニードルバルブのストローク量を大きくしようとすると、プランジャの移動量に対するニードルバルブの移動量を大きくするための部品が必要になって部品数が増えるとともに収容スペースを確保するのが難しくなる。
これに対して、本実施の形態の電磁弁Vでは、筒状のホルダ6内に往復動可能に挿入されるスプール7で、ホルダ6に形成されたポート6aを開閉し、これにより電磁弁Vが開閉するようになっている。このため、ポート6aをホルダ6の周方向に複数形成したり、周方向に長い形状にしたりすれば、電磁弁Vの弁体であるスプール7のストローク量を大きくしなくても電磁弁Vの開度を大きくできる。よって、電磁弁Vの開度の調整幅を大きくして、圧側減衰力の調整幅を容易に大きくできる。
さらに、上記構成によれば、電磁弁Vの開度と通電量との関係を容易に変更できる。例えば、電磁弁Vの開度と通電量との関係を負の比例関係にして、通電量が大きくなるほど開度を小さくしたい場合には、非通電時にポート6aが最大限に開く位置にポート6a、またはこのポート6aを開くためのポート7aを配置すればよい。このように、電磁弁Vの開度と通電量との関係は、自由に変更できるとともに、これに合わせて手動バルブ41の設置の有無の選択できる。
<第二の実施の形態>
第二の実施の形態の緩衝器D2は、図4に示すように、第一の実施の形態の緩衝器D1と同様に、アウターチューブ10と、アウターチューブ10内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ11とを有するテレスコピック型のチューブ部材Tと、インナーチューブ11に連結されるシリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン2と、一端がピストン2に連結されるとともに他端がアウターチューブ10に連結されるピストンロッド3と、シリンダ1の端部に設けられてピストンロッド3の移動を案内する環状のロッドガイド14とを有してチューブ部材T内に収容される緩衝器本体Sと、緩衝器本体Sのストローク変位を検知するストロークセンサ42とを備えている。
第一の実施の形態の緩衝器D1では、ロッドガイド14にパイプ部材17を設けてストロークセンサ42の被検出子としての磁石42bを位置をパイプ部材17によって位置決めしていたが、第二の実施の形態の緩衝器D2では、図4に示すように、パイプ部材17を廃止して、ロッドガイド14に磁石42bを装着するとともにセンサ本体42aをキャップ12とピストンロッド3とを連結する連結パイプ43に保持させている点で異なる。
以下、第一の実施の形態の緩衝器D1に対し、第二の実施の形態の緩衝器D2
が異なる点について詳細に説明し、緩衝器D1,D2で共通する構造については説明が重複するので詳しい説明を省略する。
第二の実施の形態の緩衝器D2では、被検出子としての磁石42bは、ロッドガイド14に装着される。図4に示すように、ロッドガイド14は、環状であってシリンダ1に嵌合する本体部14aと、本体部14aから図4中上方である反シリンダ側に突出する筒状のオイルロックケース14cとを備えている。また、ロッドガイド14の本体部14aの内周には、磁石42bが装着されるとともにピストンロッド3が摺動自在に挿入されており、ロッドガイド14は、ピストンロッド3の移動を案内する。このようにロッドガイド14の内周に環状の磁石42bが装着され、ロッドガイド14の本体部14aの内周に、ピストンロッド3が挿入されると、磁石42bの内周はピストンロッド3の外周に対向する。
また、第二の実施の形態の緩衝器D2では、アウターチューブ10の上端に筒状のキャップ12’が螺着されており、このキャップ12’の内周に連結パイプ43の図4中上端外周が螺着される。そして、連結パイプ43の図4中下端内周は、ピストンロッド3のロッド本体32の図4中上端外周が螺合しており、キャップ12’とピストンロッド3は、連結パイプ43を介して連結されている。
キャップ12’は、筒状とされており、アウターチューブ10の内周に螺着される外周螺子筒部12a’と、外周螺子筒部12a’の図4中下方に連なって連結パイプ43の外周に螺着される内周螺子筒部12b’とを備えている。
連結パイプ43は、管状であって、センサ本体42aを収容する大径な収容筒部43aと、収容筒部43aのシリンダ側に連なる収容筒部43aよりも小径な連結筒部43bとを備えている。連結パイプ43の収容筒部43aの上端は、キャップ12’の内周螺子筒部12b’に螺子締結で連結され、連結パイプ43の連結筒部43bは、ピストンロッド3の上端に連結される。
また、ロッドガイド14とキャップ12との間には、コイルばねでなる懸架ばね15が介装されている。懸架ばね15は、連結パイプ43の外周に配置されており、ロッドガイド14とキャップ12との間に介装されて、緩衝器D2を伸長方向へ付勢している。具体的には、懸架ばね15の上端は、キャップ12のピストンロッド連結部12bの外周に嵌合されるばね受23によって支持され、懸架ばね15の図4中下端は、ロッドガイド14のオイルロックケース14cの端部に重ねられるばね受27によって支持されている。
ピストンロッド3の外周には、環状のオイルロックピース44が装着されており、緩衝器D2がストロークエンド近傍まで収縮するとオイルロックピース44がロッドガイド14に設けたオイルロックケース14c内に進入し、オイルロックケース14c内の圧力が高まって緩衝器D2の収縮を妨げる。このように本実施の形態の緩衝器D2では、パイプ部材17を廃止したので、ロッドガイド14にオイルロックケース14cを設置でき、緩衝器D1の最収縮時の衝撃を緩和するオイルロック機能を発揮できる。
そして、ストロークセンサ42のセンサ本体42aは、連結パイプ43の収容筒部43a内に収容されるとともに固定されており、センサ本体42aから延びるプローブ42cは、連結筒部43bおよびロッド本体32内に挿通されている。なお、本実施の形態の緩衝器D2においても、ソレノイド9のリード線90は、プローブ42cとともにロッド本体32内に収容されており、連結パイプ43内およびキャップ12’内を介して緩衝器D2外へ引き出されている。
そして、プローブ42cは、ピストンロッド3とともに被検出子としての磁石42b内に常に挿通された状態とされる。具体的には、センサ本体42aの軸方向の位置を決する連結パイプ43の長さは、緩衝器本体Sがフルストロークしてピストンロッド3がシリンダ1に対して図1中上下動しても常にプローブ42cが被検出子である磁石42bの内周に位置するように設定されている。
なお、ストロークセンサ42は、ロッドガイド14に保持される被検出子と、ピストンロッド3内に収容されて被検出子の位置を検知するプローブと、プローブを保持するとともに連結パイプ43に収容されるセンサ本体とを有していれば、前述以外の検出原理を利用したスロトークセンサとされてもよい。
なお、第二の実施の形態の緩衝器D2にあっても、チューブ部材Tを図4に示す状態から天地逆さまにし、ピストンロッド3を連結パイプ43およびキャップ12’を介してインナーチューブ11に連結し、シリンダ1がアウターチューブ10に連結して、緩衝器本体Sをチューブ部材Tに収容してもよい。
このように本実施の形態の緩衝器D2では、アウターチューブ10と、アウターチューブ10内に摺動自在に挿入されるインナーチューブ11とを有するテレスコピック型のチューブ部材Tと、アウターチューブ10とインナーチューブ11の一方に連結されるシリンダ1と、シリンダ1内に軸方向へ移動可能に挿入されてシリンダ1内を伸側室Laと圧側室Lbとに区画するピストン2と、一端がピストン2に連結されるとともに他端がアウターチューブ10とインナーチューブ11の他方に連結されるピストンロッド3と、シリンダ1の端部に設けられてピストンロッド3の移動を案内する環状のロッドガイド14とを有してチューブ部材T内に収容される緩衝器本体Sと、緩衝器本体Sのストローク変位を検知するストロークセンサ42とを備え、ストロークセンサ42は、シリンダ1に連結される磁石(被検出子)42bと、ピストンロッド3内に収容されて磁石(被検出子)42bの位置を検知するロッド状のプローブ42cと、プローブ42cを保持するセンサ本体42aとを有し、磁石(被検出子)42bは、ロッドガイド14の内周に装着されており、センサ本体42aは、アウターチューブ10の開口部を閉塞するキャップ12’とピストンロッド3とを連結する連結パイプ43の内方に収容されている。
このように構成された緩衝器D2では、ストロークセンサ42のセンサ本体42aがピストンロッド3をキャップ12’に連結する連結パイプ43内に収容されており、センサ本体42aの軸方向位置を連結パイプ43によって任意の位置に位置決めできる。また、緩衝器D2では、キャップ12’とピストンロッド3とを連結パイプ43によって接続するので、ピストンロッド3の全長を緩衝器D2の全長に合わせるのではなく、緩衝器本体Sのストローク長に適した長さにすればよく、ピストンロッド長を長尺にする必要が無くなる。以上より、本発明の緩衝器D2によれば、緩衝器D2の全長が長くなってもピストンロッド3の全長を長くする必要が無くなり、ストロークセンサ42のプローブ42cを常に磁石(被検出子)42bに対向する位置に設置できる。したがって、全長が非常に長くなる鞍乗車両用の緩衝器D2であっても、プローブ長さが足りなくなってストローク変位を検知できなくなる問題が解消される。以上より、本発明の緩衝器D2によれば、全長が長尺となってもストローク変位を検知可能である。
また、本実施の形態の緩衝器D2では、連結パイプ43の外周に配置されてロッドガイド14とキャップ12’との間に介装される懸架ばね(コイルばね)15を備えている。このように構成された緩衝器D2では、センサ本体42aを収容する連結パイプ43を懸架ばね(コイルばね)15の内周に配置できるから、センサ本体42aを懸架ばね(コイルばね)15内で任意の位置に設置でき、プローブ長の制約を受けにくくなるとともに、懸架ばね(コイルばね)15の全長における制約も受けにくくなる。よって、緩衝器D2の設計自由度が向上する。
なお、本実施の形態では、緩衝器D1,D2を収縮時にのみ減衰力を発揮する片効きの緩衝器としているが、圧側通路2bにハード側減衰要素21の代わりに圧側室Lbから伸側室Laへ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブを設け、伸側通路2aを減衰通路として伸側室Laから圧側室Lbへ向かう液体の流れに抵抗を与えるハード側減衰要素を設け、バイパス路3aにソフト側減衰要素50の代わりに伸側室Laから圧側室Lbへと向かう液体の流れに抵抗を与えるソフト側減衰要素を設け、吸込通路4aにおける吸込バルブ40を廃止するとともに、排出通路4bおよび手動バルブ41を廃止して、緩衝器D1,D2を伸長時にのみ減衰力を発揮する緩衝器としてもよい。このように緩衝器Dを構成すると、ハード側減衰要素とソフト側減衰要素を通過する液体の分配比を電磁弁Vで変えると減衰係数が大小するので、伸側の減衰力特性を示す特性線の傾きを圧側のみで減衰力を発揮する緩衝器D1,D2と同様に変えられる。
また、各実施の形態において、ピストン速度が通常の速度域にある場合の減衰力特性をバルブ特性にする必要が無ければ、バイパス路3aに電磁弁Vのみを設けて、ソフト側減衰要素50については省略してもよいし、ハード側減衰要素21についても廃止して電磁弁Vのみで収縮、伸長或いは伸縮両側の減衰力を調整してもよい。
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。