以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。以下で説明する複数の実施形態において、特に説明しない一実施形態の構成は、他の実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図1はポンプ設備の一実施形態の概略図である。ポンプ設備は、吸込水槽90と、吸込水槽90が下方に存在するポンプ室100と、ポンプ室100の床面101に設けられたポンプ据付穴103に挿入された立軸ポンプ30と、立軸ポンプ30の外周から張り出した取付部50と、立軸ポンプ30を運転する駆動機(減速機)39とを備えている。
以下、本明細書において、立軸ポンプ30を単にポンプ30と呼ぶことがある。ポンプ30は、吸込水槽90内に吊り下げられる吊下管31と、吊下管31に接続されたポンプボウル32と、吸込水槽90内の液体が吸い込まれる吸込ベルマウス33と、吊下管31内に配置された回転軸34と、回転軸34に固定された羽根車37とを備えている。
鉛直方向に延びる回転軸34の下端は、図示しない水中軸受に支持されており、回転軸34の上端は、駆動機用架台(減速機用架台)39aに据え付けられた駆動機39に連結されている。回転軸34は、図示しない軸受(例えば、外軸受および/または水中軸受)によって支持されている。羽根車37はポンプボウル32と吸込ベルマウス33とから構成されたポンプケーシングに収容されている。吊下管31はポンプ据付穴103を通して下方に延びている。
吊下管31およびポンプケーシングは回転軸34と平行に延びており、回転軸34は着脱可能なカップリング86を介して駆動機39の駆動軸40に連結されている。架台39aはポンプ30の上方に位置しており、駆動機39は架台39a上に載置されている。
駆動機39はポンプ室100の上方の駆動機室110に配置されている。ポンプ室100は駆動機室110の下方に存在しており、吸込水槽90はポンプ室100の下方に存在している。駆動機39が駆動されると、その駆動力は回転軸34および羽根車37に伝達され、回転軸34および羽根車37は回転する。吸込ベルマウス33には、液体の吸込口が形成されている。吸込水槽90内の液体は、羽根車37の回転により吸込ベルマウス33の吸込口から吸い込まれ、吊下管31を通ってポンプ設備の外部に移送される。
取付部50は吊下管31の上部の外周から張り出したリング形状を有している。ポンプ30は、環状のフレキシブルベース60を介して床面101に固定された環状の固定ベース62上に取付部50を据え付けることによって設置される。取付部50はフレキシブルベース60に取り付けられている。以下、フレキシブルベース60の構造および固定ベース62の構造について図面を参照しつつ説明する。
図2は固定ベース62およびフレキシブルベース60を示す拡大断面図である。図2に示すように、ポンプ設備は、ポンプ室100の床面101に露出して埋め込まれる上面62aと、ポンプ据付穴103に露出して埋め込まれる内周面62bとを有する固定ベース62を備えている。固定ベース62の断面は、コの字形状を有しているが、固定ベース62の断面形状は本実施形態には限定されない。固定ベース62の内周面62bは、後述する上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bによって封止されるシール面であり、ポンプ据付穴103の一部を構成している。
ポンプ設備は、筒状の本体部60aと、本体部60aの上端から本体部60aの半径方向外側に延びるフランジ部60bとを有するフレキシブルベース60をさらに備えている。フレキシブルベース60は遊動ベース、可動ベース、または弾性リング保持具と呼ばれてもよい。フレキシブルベース60(より具体的には、フランジ部60b)は、取付部50と固定ベース62との間に配置されている。ポンプ30の据え付け初期では、吊下管31、フレキシブルベース60、および固定ベース62は、初期の据え付け調整によって、同心円状に配置されている。
本実施形態では、フレキシブルベース60のフランジ部60bの下面と固定ベース62の上面62aとの間には、床面101に対するポンプ30の相対的な高さを調整するための調整板66が介在している。図2では、図面を見やすくするために調整板66は誇張して描かれているが、調整板66の厚さは数ミリメートルである。なお、調整板66の使用材料や形状、厚みはいかなるものも使用可能である。一例としては、ステンレス鋼など各種金属を使用する。また、調整板66として振動伝達量の低減機能を有する防振ゴムを使用することで、調整板66は、ポンプの振動が土木躯体や建屋へ伝達するのを低減することも可能である。
フレキシブルベース60の本体部60aの外周面には、環状のシール溝61が形成されており、シール溝61にOリングなどの環状の上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bが装着されている。上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bは、それぞれ弾性リングと呼ばれてもよい。以下、本明細書中において、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bを総称してシール部材75と呼ぶことがある。
上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bは、フレキシブルベース60の本体部60aの外周面と固定ベース(またはベース)62の内周面62bとの間に鉛直方向に配置されており、フレキシブルベース60と固定ベース62との間からの液体の漏洩を防止することができる。言い換えれば、シール部材75は、ポンプ据付穴103の水密性を保持することができる。したがって、ポンプ30の不等沈下によってポンプ30が傾き、ポンプ30を水平状態に戻したときに、本体部60aの外周面と内周面62bとが互いに平行でなくなっても、シール部材75の圧縮量が変化するだけで、シール部材75によるフレキシブルベース60と固定ベース62との間の水密性は保持される。
本実施形態では、2つのシール部材75が配置されているが、シール部材75の数は本実施形態には限定されない。一実施形態では、3つ以上のシール部材75が配置されてもよい(信頼性を上げるためには、シール部材75は複数であることが好ましい)。シール溝61の数はシール部材75の数に対応している。
フレキシブルベース60のフランジ部60bは、取付部50の外側まで張り出した張り出し部65を有している。張り出し部65は取付部50から露出している。取付部50は、水平方向、すなわち、フレキシブルベース60のフランジ部60bと平行に延びる取付フランジ50aを備えている。
図3はフレキシブルベース60に設けられた流体供給管250を示す図である。図3に示すように、フレキシブルベース60の本体部60aには、上側シール部材75Aと下側シール部材75Bとの間の位置で開口する流体供給穴60cが形成されている。流体供給穴60cは、水平方向、すなわち、フランジ部60bと平行に延びている。流体供給穴60cは、上側シール部材75Aと下側シール部材75Bとの間の空間(第1シール空間)S1、および吊下管31とポンプ据付穴103との間の環状空間SPで開口している。これら第1シール空間S1および環状空間SPは流体供給穴60cを通じて互いに連通可能である。
流体供給穴60cは第1シール空間S1に加圧流体が供給可能な貫通穴である。この第1シール空間S1は、上側シール部材75A、下側シール部材75B、フレキシブルベース60、および固定ベース62によって形成されており、回転軸34および吊下管31と同心状に配置された環状形状を有している。環状空間SPは、吸込水槽90の空間の一部を構成する空間であり、フレキシブルベース60の本体部60aと吊下管31との間の空間を含んでいる。
図3に示すように、取付フランジ50aは、鉛直方向、すなわち、フランジ部60bと垂直方向に延びる連通穴50bを有している。流体供給管250は、この連通穴50bを通って、ポンプ室100から吸込水槽90まで延びている。流体供給管250の一端は流体供給穴60cに接続されており、他端はポンプ室100に配置された流体供給源251に接続されている。
流体供給源251は加圧流体を供給するための装置である。加圧流体の一例として、加圧気体または加圧液体が挙げられる。加圧流体が加圧気体である場合、流体供給源251はコンプレッサであり、加圧流体が加圧液体である場合、流体供給源251はポンプと液体を貯留するタンクとの組み合わせである。
流体供給管250には、流体供給管250を通過する加圧流体の圧力を計測する圧力計252と、流体供給管250の流路を開閉する開閉弁253とが接続されている。これら圧力計252および開閉弁253はポンプ室100に配置されている。開閉弁253は流体供給源251に隣接して配置されており、圧力計252は開閉弁253に隣接して配置されている。開閉弁253が開かれた状態で、流体供給源251は、その動作により加圧流体を、流体供給管250を通じて第1シール空間S1に供給する。
本実施形態では、作業者は、流体供給穴60cを通じた第1シール空間S1への加圧流体の供給により、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bを簡単に点検することができる。初期設置時におけるポンプ設備では、ポンプ設備を構成する構造物は不等(不同)沈下によって傾いておらず、床面101に対するポンプ30の相対的な高さは調整板66によって調整されていない。したがって、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bのいずれも、それらの機能(シール機能)を十分に発揮している。
作業者が開閉弁253を開いた状態で駆動機39を駆動すると、加圧流体は第1シール空間S1に供給される。作業者は、第1シール空間S1に供給された加圧流体の漏洩の有無に基づいてシール部材75を点検することができる。
より具体的には、作業者は、圧力計252によって計測された値(加圧流体の圧力を示す値)に基づいて、加圧流体の漏洩を点検する。作業者は、一定時間、圧力計252を介して第1シール空間S1に供給される加圧流体の圧力を監視し、第1シール空間S1における加圧流体の圧力が保持されるか否かを確認する。圧力計252の計測値が所定の値に維持されたまま、所定時間が経過したとき、作業者は、第1シール空間S1が正常に密閉されていると判断する。この場合、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bのそれぞれは本来の機能(シール機能)を十分に発揮しており、ポンプ据付穴31の水密性、すなわち、フレキシブルベース60と固定ベース62との間の水密性を保持している。
第1シール空間S1に供給される加圧流体の圧力はシール部材75の耐圧値に基づいて決定される。シール部材75の耐圧値は吸込水槽90の水位などの要素に基づいて決定される。第1シール空間S1に供給される加圧流体の圧力はシール部材75の耐圧値に対応する圧力であるため、シール部材75の点検を精度よく、かつ必要最低限の回数で行うことができる。
圧力計252の計測値が、所定時間が経過しても所定の値に達しない場合、または、計測値が所定の変動幅を超えて減少する場合、作業者は、第1シール空間S1が正常に密閉されていないと判断する。この場合、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの少なくとも1つは本来の機能を発揮していないため、作業者は、このような本来の機能を発揮していない、すなわち、劣化したシール部材を交換する必要がある。シール部材の交換方法については、後述するポンプ設備の維持管理方法の実施形態において説明する。
劣化したシール部材により、フレキシブルベース60と固定ベース62との間の水密性が保持することができない場合、作業者は、シール部材を交換する代わりに充填剤を第1シール空間S1に注入してもよい。
図4は第1シール空間S1に充填された充填剤FMを示す図である。図4に示すように、作業者は、流体供給管250を通じて充填剤FMを第1シール空間S1に注入し、この第1シール空間S1を充填剤FMで満たしてもよい。充填剤FMとして、時間経過により弾性的に硬化(液状から個体に変化)する性質を有する充填剤が適用される。一実施形態では、充填剤FMは、信越シリコーン社製の「RTVシリコーンゴム」である。
硬化した充填剤FMは弾性を有しているため、第1シール空間S1に充填された充填剤FMはフレキシブルベース60と固定ベース62との間の水密性を保持することができる。したがって、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの少なくとも1つの水密性に問題があるが、問題のあるシール部材を直ぐに交換することができない場合であっても、充填剤FMは、次回のポンプ30の引き上げ時まで、水密性を保持することができる。
図4に示す実施形態では、充填剤FMは流体供給管250(図1および図3参照)を通じて第1シール空間S1に注入されている。一実施形態では、流体供給管250には、充填剤供給源(図示しない)が接続された分岐管(図示しない)が接続されてもよい。この場合、充填剤FMは、分岐管および流体供給管250の下流流路を通って第1シール空間S1に注入される。他の実施形態では、充填剤FMは流体供給管250とは異なる管を通じて第1シール空間S1に注入されてもよい。
上述した実施形態では、第1シール空間S1に加圧流体を供給するための構成の一実施形態を説明したが、この構成は図3に示す実施形態には限定されない。図5は固定ベース62に設けられた流体供給管260を示す図である。図5に示すように、固定ベース62には、上側シール部材75Aと下側シール部材75Bとの間の位置で開口する流体供給穴62cが形成されている。床面101およびポンプ据付穴103を構成する床構造102には、流体供給穴62cに連通する流体供給穴102aが形成されている。これら互いに連通する流体供給穴62cおよび流体供給穴102aは、第1シール空間S1およびポンプ室100の空間に連通可能である。
図5に示す実施形態では、流体供給管260の一端は流体供給穴102aに接続されており、他端は流体供給源251に接続されている。図5に示す実施形態では、取付部50の取付フランジ50aは連通穴50bを有していない。流体供給源251は、流体供給管260、流体供給穴102a、および流体供給穴60cを介して第1シール空間S1に連通している。一実施形態では、流体供給穴62cは、その上面62aおよび内周面62bで開口してもよい。この場合、床構造102は流体供給穴102aを有していない。流体供給穴62cは、フレキシブルベース60のフランジ部60bの外側に位置する上面62aで開口しており、流体供給管260に連結されている。
図6はフレキシブルベース60に設けられた膨張シール275を示す図であり、図7は膨張後の膨張シール275を示す図である。図6および図7に示すように、フレキシブルベース60のフランジ部60bには、加圧気体の供給により膨張する膨張シール275が装着されている。一実施形態では、膨張シール275は、固定ベース62の上面62aに装着されてもよい。
膨張シール275は、その内部に環状の空間が形成されたリング部材であり、インフレイタブルシールとも呼ばれる。フランジ部60bの下面には、ポンプ30の吊下管31と同心状に配置された環状溝が形成されており、膨張シール275はこの環状溝に装着されている。膨張シール275は、吊下管31(およびフレキシブルベース60)と同心状に配置されている。フランジ部60bの下面は、固定ベース62の上面62aと対向する面であり、フランジ部60bの下面および上面62aは互いに平行である。
膨張シール275は上側シール部材75Aの上方に配置されており、調整板66の内側に配置されている。膨張シール275には、気体導入管276が接続されており、この気体導入管276は図示しない気体供給源(コンプレッサ)に接続されている。一実施形態では、気体導入管276は流体供給源251に接続されてもよい。気体導入管276には、その流路を開閉する開閉弁277が取り付けられている。
開閉弁277が開かれた状態で、上記気体供給源が動作されると、加圧気体は気体導入管276を通じて膨張シール275に導入される。結果として、フランジ部60bの環状溝に装着された膨張シール275は、固定ベース62の上面62aに近接する方向(下方向)に膨張し、固定ベース62の上面62aに密着する。このようにして、膨張シール275は、固定ベース62の上面62aとフレキシブルベース60のフランジ部60bとの間の隙間を封止する。
フレキシブルベース60の本体部60aには、上側シール部材75Aの上方の位置で開口する流体供給穴60dが形成されている。流体供給穴60dは、上側シール部材75Aと膨張シール275との間の空間(第2シール空間)S2および環状空間SPで開口している。これら第2シール空間S2および環状空間SPは流体供給穴60dを通じて互いに連通可能である。流体供給穴60dは第2シール空間S2に加圧流体が供給可能な貫通穴である。この第2シール空間S2は、上側シール部材75A、膨張シール275、フレキシブルベース60、および固定ベース62によって形成されている。流体供給穴60dには、流体供給管270が連結されている。
ポンプ設備を構成する構造物(土木構造体)は不等(不同)沈下によって傾く場合がある。この場合、作業者は、調整板66によって床面101に対するポンプ30の相対的な高さを調整し、ポンプ30の傾きを修正する。結果として、ポンプ30は正規の姿勢になる。しかしながら、土木構造体はポンプ30に対して傾いているため、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bのいずれか1つがその機能を十分に発揮しない場合がある。
図6および図7に示す実施形態では、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bのいずれか1つがその機能を十分に発揮しない可能性があっても、作業者は、フレキシブルベース60と固定ベース62との間の水密性が保持されているか否かを確認することができる。
まず、作業者は、開閉弁277を開いた状態で、図示しない気体供給源(またはコンプレッサとしての流体供給源251)を駆動し、気体導入管276を通じて加圧気体を膨張シール275に供給する。作業者は、開閉弁253を開き、流体供給管270を通じて、加圧流体を流体供給源251から第2シール空間S2に供給する。その後、作業者は、上述した方法と同様の方法により、圧力計252を介して第2シール空間S2に供給される加圧流体の圧力を監視し、第2シール空間S2における加圧流体の圧力が保持されるか否かを確認する。
上側シール部材75Aの上方に配置された膨張シール275は、加圧気体の供給によりフレキシブルベース60のフランジ部60bと固定ベース62の上面62aとの間の隙間を封止することができるため、膨張シール275はシール部材75と同様の役割を果たすことができる。
一例として、上側シール部材75Aがその機能を十分に発揮していない場合であっても、下側シール部材75Bがその機能を十分に発揮していれば、膨張シール275および下側シール部材75Bはフレキシブルベース60と固定ベース62との間の水密性を保持することができる。他の例として、下側シール部材75Bがその機能を十分に発揮していない場合であっても、上側シール部材75Aがその機能を十分に発揮していれば、膨張シール275および上側シール部材75Aはフレキシブルベース60と固定ベース62との間の水密性を保持することができる。このように、膨張シール275は、応急時の水密(気密)対策としても利用することができる。
図8は固定ベース62に設けられた流体供給管290を示す図である。図8に示すように、固定ベース62は第2シール空間S2に加圧流体が供給可能な流体供給穴62eを有してもよい。流体供給穴62eは第2シール空間S2およびポンプ室100で開口しており、第2シール空間S2およびポンプ室100の空間は流体供給穴62eを通じて互いに連通可能である。流体供給穴62eには流体供給管290が連結されている。図8に示す実施形態では、取付部50の取付フランジ50aは連通穴50bを有していない。
図9は漏洩点検装置300を備えたポンプ設備を示す図である。図9において、特に説明しない構成は、図3に示す実施形態の構成と同じであるため、その重複する説明を省略する。図9に示すように、ポンプ設備は、吸込水槽90に配置され、かつ流体供給穴60cを通じて供給された加圧流体の漏洩を点検する漏洩点検装置300を備えている。図9では、漏洩点検装置300は、図3に示す実施形態に係るポンプ設備に備えられているが、図6(および図7)に示す実施形態に係るポンプ設備に備えられてもよい。
漏洩点検装置300は、下側シール部材75Bの下方に配置され、下側シール部材75Bに向けて紫外線を照射する紫外線照射装置301と、紫外線が照射された照射領域を撮像する撮像装置302と、撮像装置302に電気的に接続され、撮像装置302によって撮像された画像を表示する表示装置303とを備えている。
紫外線照射装置301の一例はブラックライトであり、撮像装置302の一例は内視鏡である。図9に示すように、紫外線照射装置301および撮像装置302は吸込水槽90に配置されており、表示装置303はポンプ室100に配置されている。作業者は、ポンプ室100に配置された表示装置303にアクセスすることができる。
一実施形態では、撮像装置302は取付部50の取付フランジ50aに形成された連通穴50bを通って吸込水槽90まで延びてもよく、他の実施形態では、撮像装置302は取付フランジ50aに形成された漏洩点検用穴(図示しない)を通って吸込水槽90まで延びてもよい。漏洩点検用穴は、連通穴50bとは異なる穴であり、撮像装置302が通過可能な大きさを有している。
紫外線照射装置301を吸込水槽90に配置する手段は特に限定されない。一実施形態では、作業者は、紫外線照射装置301に固定棒(図示しない)を取り付け、この固定棒を連通穴50bまたは漏洩点検用穴を通して吸込水槽90内に吊り下げてもよい。他の実施形態では、紫外線照射装置301はポンプ据付穴103の内面または吊下管31の外周面に固定されてもよい。
図9に示す実施形態では、第1シール空間S1に供給される加圧流体は液体と蛍光物質とが混合された混合流体であり、流体供給源251はポンプとタンクとの組み合わせである。混合流体が流体供給管250を通じて第1シール空間S1に供給されると、第1シール空間S1は混合流体で満たされる。このとき、紫外線照射装置301は、紫外線が下側シール部材75Bを含む照射領域に照射されるように、紫外線を下側シール部材75Bに向けて照射する。撮像装置302は照射領域を撮像する。作業者は、ポンプ室100に配置された表示装置303を通じて撮像装置302によって撮像された画像を監視する。
下側シール部材75Bが本来の機能を有していない場合、第1シール空間S1に供給された混合流体は下側シール部材75Bと固定ベース62の内周面62bとの間の隙間および/または下側シール部材75Bとフレキシブルベース60との間の隙間から漏洩する。漏洩した混合流体は、紫外線照射装置301から照射された紫外線によって発光し、撮像装置302によって撮像される。作業者は、撮像された画像の監視によって下側シール部材75Bの水密性を確認することができる。図9に示す実施形態によれば、作業者は、吸込水槽90が暗い場合でも容易に下側シール部材75Bの水密性を確認することができる。
一実施形態では、加圧流体は、液体と蛍光物質との混合流体ではなく、着色された液体であってもよい。この場合、紫外線照射装置301は吸込水槽90の視認状態に応じて省略されてもよい。
上側シール部材75Aが本来の機能を有していない場合、第1シール空間S1に供給された混合流体は上側シール部材75Aと固定ベース62の内周面62bとの間の隙間および/または上側シール部材75Aとフレキシブルベース60との間の隙間から漏洩する。この混合流体の漏洩の継続によって、混合流体の水位は徐々に上昇し、フレキシブルベース60のフランジ部60bと固定ベース62の上面62aとの間の空間からポンプ室100に漏洩する。つまり、混合流体は、互いに隣接する調整板66の間の隙間を通って漏洩する。したがって、作業者は、混合流体の漏洩を目視で直接確認することができる。
図10は取付フランジ50aの連通穴50bに設けられた流体供給管280を示す図である。本実施形態では、流体供給管280が接続された連通穴50bは環状空間SPに加圧流体が供給可能な流体供給穴である。
吸込水槽90の水位が上昇可能である場合には、作業者は、吸込水槽90の水位を所定の高さまで上昇させ、かつ取付部50に形成された連通穴(流体供給穴)50bに流体供給管280を接続して、加圧流体の漏洩を点検してもよい。
図11は加圧流体によって加圧された環状空間SPを示す図である。流体供給源251(図10参照)は、その駆動により流体供給管280を通じて加圧流体を環状空間SPに供給して、この環状空間SPを加圧する(図11の網掛け参照)。本実施形態では、加圧流体は加圧気体であり、流体供給源251はコンプレッサである。
図10および図11に示す実施形態では、作業者は吸込水槽90の水位をポンプ据付穴103と吊下管31との間の位置まで上昇させている。したがって、環状空間SPは、ポンプ据付穴103、吊下管31、フレキシブルベース60の本体部60a、固定ベース62の内周面62b、取付部50の取付フランジ50a、下側シール部材75B、および吸込水槽90内の液面によって形成されている。
吸込水槽90の水位を上昇させる手段は特に限定されない。一実施形態では、吸込水槽90の外部に配置されたポンプ(図示しない)は、吸込水槽90の外部の液体を吸込水槽90に移送してもよい。他の実施形態では、吸込水槽90が支川に接続されている場合、作業者は、支川に設けられた支川ゲートを閉じて、本川に接続された支川の水位を上昇させてもよい。吸込水槽90の水位は支川の水位の上昇に伴って上昇する。
作業者は、圧力計252(図10参照)の計測値に基づいて加圧流体の漏洩を点検する。上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの少なくとも1つが本来の機能を発揮していない場合、加圧流体は本来の機能を発揮していないシール部材を通過して漏洩するため、圧力計252の計測値は所定の値とは異なる数値となる。したがって、この場合、作業者は、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの少なくとも1つが本来の機能を発揮していないと判断することができる。
一実施形態では、作業者は、着色した煙など、空気よりも軽く、かつ視認可能な気体が上述した実施形態で示した空間(第1シール空間S1、第2シール空間S2、または環状空間SP)に供給してもよい。この場合であっても、作業者は、気体の漏洩に基づいてシール部材75の水密性を確認することができる。
上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの材質として、多くの場合、天然ゴムまたは合成ゴムが使用される。しかしながら、ゴムは、空気中の酸素による酸化などの原因により経年劣化し、硬化してしまう。そこで、ポンプ設備は、シール部材75の硬化状況を点検するように構成された弾性点検装置310を備えてもよい。弾性点検装置310はシール部材75の劣化状況を判断することができる。したがって、弾性点検装置310は、シール部材75が交換間近であることを判断することができる。
図12は弾性点検装置310を示す図である。図12に示すように、ポンプ設備は、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bに振動を加え、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの弾性を点検する弾性点検装置310を備えている。
弾性点検装置310は、固定ベース62の外側に配置され、固定ベース62を介して上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bに振動を加える加振部材311と、フレキシブルベース60の本体部60aの内側に配置され、加振部材311によって加えられた振動を検出する振動センサ(加速度センサ)312と、振動センサ312に接続され、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの振動の変化を監視する振動監視装置320とを備えている。
本実施形態では、固定ベース62は床面101上に固定された環状のブロック体であり、固定ベース62の外周面62dは床面101から露出している。外周面62dの反対側に位置する固定ベース62の内周面62bはポンプ据付穴103から露出している。固定ベース62の断面は四角形状を有しており、固定ベース62の全体は床面101から露出している。加振部材311は、固定ベース62に対する打撃が可能に構成されており、固定ベース62の外周面62dに隣接して配置されている。加振部材311は、例えば、インパルスハンマーである。
加振部材311および振動センサ312は、フレキシブルベース60、シール部材75、および固定ベース62を挟んで対向している。言い換えれば、加振部材311はシール部材75の半径方向外側に配置されており、振動センサ312はシール部材75の半径方向内側に配置されている。
振動センサ312はフレキシブルベース60の本体部60aの内周面に取り付けられている。振動センサ312および振動監視装置320は電気線313により互いに電気的に接続されている。電気線313は取付部50の取付フランジ50aに形成された連通穴50bを貫通している。一実施形態では、連通穴50bとは異なるセンサ取付用穴(図示しない)を取付フランジ50aに形成し、電気線313は、このセンサ取付用穴を貫通してもよい。
振動監視装置320は、振動センサ312によって検出された振動(より具体的には、振動の時間変化を示す振動波形)を取得し、振動波形を解析するように構成されている。振動監視装置320は、さらに、振動波形の解析結果に基づいて、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの少なくとも1つが交換時期に達していると判断するように構成されている。以下、振動監視装置320の構成について、説明する。
図13は弾性点検装置310の振動監視装置320を示す図である。図13に示すように、振動監視装置320は、シール部材75の弾性を分析する分析部(FFTアナライザ)321と、分析部321によって分析された結果を表示する表示部324とを備えている。
分析部321は、振動センサ312によって検出されたシール部材75の振動(振動データ、言い換えれば、振動波形)に対してフーリエ変換(または高速フーリエ変換)を実行して、周波数帯域ごとの振動値(振動レベル)を算出する演算部326を備えている。分析部321は、シール部材75の振動の変化を決定するための基準となる基準振動値と、ポンプ設備の点検時に計測された計測振動値とを比較する比較部322を備えている。さらに、分析部321は、計測振動値と基準振動値との差分が所定のしきい値よりも大きい場合、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの少なくとも1つが交換時期に達していると判断する判定部323を備えている。
基準振動値は、ポンプ設備の初期設置時の上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの振動値であり、計測振動値は、ポンプ設備の点検時、すなわち、基準振動値が計測された後に計測された現在の振動値である。これら基準振動値および計測振動値は、振動センサ312に検出された振動データに基づいて演算部326によって算出され、弾性点検装置310の記憶部(図示しない)に記憶されている。
図14は振動監視装置320の処理フローを示す図である。作業者は、初期設置時のポンプ設備において、加振部材311を用いて固定ベース62に打撃を加える(加振試験の実行)。固定ベース62の振動はシール部材75に伝達され、結果として、シール部材75も振動する。振動センサ312は、シール部材75の振動を検出し、シール部材75の振動に関する振動データを振動監視装置320の演算部326に送る。
ポンプ設備は所定期間毎(例えば、10年)に点検される。シール部材75は経年変化により硬化するため、点検時のばね定数は設置当初のばね定数から変化する。したがって、振動センサ312は、初期設置時のシール部材75の振動とは異なる現在のシール部材75の振動を検出し、この振動データを演算部326に送る。
図14のステップS101に示すように、演算部326は、初期設置時の、すなわち、新品のシール部材75の振動データに基づいて基準振動値を算出する。その後、演算部326は、ポンプ設備の点検時におけるシール部材75の振動データに基づいて計測振動値を算出する(図14のステップS102参照)。
次いで、演算部326は基準振動値と計測振動値との差分を算出し(図14のステップS103参照)、比較部322は算出された差分と所定のしきい値とを比較する(図14のステップS104参照)。所定のしきい値は、交換時期に達した弾性リングの弾性に関する要素(例えば、ばね定数)に基づいて決定される。このしきい値は記憶部に記憶される。
判定部323は、差分が所定のしきい値よりも大きい場合(図14のステップS104の「YES」参照)、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの少なくとも1つが交換時期に達していると判断し(図14のステップS105参照)、その結果を表示部324に表示する。表示部324は警報を発報してもよい。判定部323は、差分が所定のしきい値よりも小さい場合(図14のステップS104の「NO」参照)、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bのいずれも交換不要であると判断し、振動監視装置320は、その処理を終了する。
上述した実施形態では、計測振動値と基準振動値とを比較する分析部321の構成例について説明したが、分析部321の構成は本実施形態には限定されない。一実施形態では、分析部321は、振動波形の解析(周波数解析)によって得られた振動周波数の変化に基づいて、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの少なくとも1つが交換時期に達していると判断してもよい。
図15は振動周波数の変化を示す図である。分析部321は、周波数解析の実行により周波数帯域ごとの振動値を算出する。結果として、図15のグラフに示すような相関関係が導かれる。図15のグラフにおいて、横軸は周波数[Hz]を示しており、縦軸は振動値(振動レベル)[dB]を示している。
図15に示すように、初期設置時における周波数特性(図15の左側のグラフ参照)と経年後における周波数特性(図15の右側のグラフ参照)とは異なっている。したがって、分析部321は、この周波数特性の変化に基づいて、シール部材75の交換時期を判断してもよい。例えば、当初の周波数特性におけるピークを示す周波数(ピーク周波数)と経年後の周波数特性におけるピークを示す周波数(ピーク周波数)とは異なる。分析部321は、これら当初のピーク周波数と経年後のピーク周波数との変化に基づいて、シール部材75の交換時期を判断してもよい。
上述した実施形態では、ポンプ設備の点検方法、より具体的には、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの点検方法について説明したが、以下の実施形態では、ポンプ設備の維持管理方法、より具体的には、上側シール部材75Aおよび下側シール部材75Bの維持管理方法(点検および交換)について説明する。
本来の機能を発揮していないシール部材はフレキシブルベース60と固定ベース62との間の隙間を確実に封止することができないため、このようなシール部材はポンプ据付穴103の水密性を確実に保持することができない。したがって、作業者は本来の機能を発揮していないシール部材を交換する必要がある。
しかしながら、作業者は、シール部材を交換する場合、ポンプの上方に配置された駆動機(減速機)および該駆動機が載置された架台を除去した後にポンプを引き上げる必要がある。作業者は、ポンプが引き上げられた状態で、シール部材を交換する必要がある。しかしながら、駆動機および架台を除去した後にポンプを引き上げるためには、多くの手間と工期がかかるため、作業者はシール部材の交換を簡単に行うことができない。
そこで、以下の実施形態では、駆動機39および架台39aを除去することなく、シール部材75の交換を簡単に行うことができるポンプ設備およびポンプ設備の維持管理方法について説明する。以下の実施形態において、特に説明しない構成は、上述した実施形態の構成と同じであるため、その重複する説明を省略する。以下の実施形態に係るポンプ設備は、図1乃至図14に示す実施形態における構成を備えてもよい。つまり、以下の実施形態および図1乃至図14に示す実施形態は組み合わされてもよい。
図16はポンプ設備の他の実施形態を示す図である。図16に示すように、ポンプ設備は、回転軸34と駆動軸39の駆動軸40とを連結する着脱可能なカップリング86と、カップリング86が取り外された状態で、下側シール部材75Bが露出するまでポンプ30とともにフレキシブルベース60を上昇させる上昇装置400とを備えている。カップリング86は、例えば、フォームフレックスカップリングであり、ポンプ30の上方の位置で駆動軸40と回転軸34とを連結している。
上昇装置400は、駆動機39が据え付けられた架台39aに形成された複数の貫通穴41を貫通しつつ、フレキシブルベース60に接続された複数のワイヤ401と、駆動機39の上方の位置で複数のワイヤ401に接続された吊り治具402と、吊り治具402の上方に配置され、吊り治具402に接続されたクレーン403とを備えている。吊り治具402およびクレーン403は駆動機室110に配置されている。一実施形態では、クレーン403は駆動機室110の天井に取り付けられた天井クレーンである。
図17は図16のA線方向から見た図である。本実施形態では、4つの貫通穴41が形成されているが、貫通穴41の数は本実施形態には限定されない。一実施形態では、貫通穴41の数は3つ以上であってもよい。複数の貫通穴41は、駆動軸40の周方向に沿って等間隔に配置されている。本実施形態では、4つの貫通穴41は駆動機39の周囲に均等に配置されている。つまり、駆動軸40および回転軸34の中心を通り、かつ駆動軸40および回転軸34と平行に延びる中心軸線CLを挟んで互いに向き合う貫通穴41は、中心軸線CLに関して対称に配置されている。各貫通穴41は中心軸線CLと平行に延びている。
ワイヤ401の数は貫通穴41の数に対応している。したがって、本実施形態では、4つの貫通穴41に対して、4本のワイヤ401が設けられている。各ワイヤ401は各貫通穴41を貫通しており、吊り治具402を介してフレキシブルベース60とクレーン403とを連結している。
図16に示すように、フレキシブルベース60のフランジ部60bの一部を構成する張り出し部65には、アイボルトなどの連結具405が固定されている。一実施形態では、連結具405は取付部50の取付フランジ50aに固定されてもよい。他の実施形態では、連結具405はフランジ部60bおよび取付フランジ50aの両方に固定されてもよい。連結具405の数はワイヤ401の数に対応している。各ワイヤ401の一端は各連結具405に連結されており、他端は吊り治具402に連結されている。
図18は吊り治具402の斜視図である。図18に示すように、吊り治具402は、複数の吊りロープ410と、これら複数の吊りロープ410が取り付けられたベース部材411と、ベース部材411の下面に取り付けられた複数のフック412とを備えている。各ワイヤ401の他端は各フック412に連結される。フック412の数はワイヤ401の数に対応している。
本実施形態では、ベース部材411は四角形の枠構造を有しているが、ベース部材411の構造は本実施形態には限定されない。一実施形態では、ベース部材411は円形の枠構造を有してもよい。他の実施形態では、ベース部材411はフック412の数に応じた多角形の枠構造を有してもよい。
複数のフック412はベース部材411に等間隔に配置されている。本実施形態では、4つのフック412はベース部材411の四隅に取り付けられている。中心軸線CLを挟んで互いに向き合うフック412は、中心軸線CLに関して対称に配置されており、中心軸線CLと垂直な対角線上に配置されている。
本実施形態では、4つの吊りロープ410が設けられているが、吊りロープ410の数は本実施形態には限定されない。本実施形態では、4つの吊りロープ410はベース部材411の四隅に取り付けられている。一実施形態では、吊りロープ410の数はベース部材411の角部の数に対応してもよい。複数の吊りロープ410は、ベース部材411の重心を通る鉛直線上(本実施形態では、中心軸線CL上)で、クレーン403に連結されている。
図19は上昇装置400によって上昇されたポンプ30を示す図である。作業者は、架台39aの貫通穴41を通過するワイヤ401を連結具405および吊り治具402のフック412に連結し、この状態で吊り治具402をクレーン403に連結する。作業者は、ポンプ30(より具体的には、フレキシブルベース60)が据え付けられた状態で、カップリング86を取り外し、その後、クレーン403によりフレキシブルベース60をポンプ30とともに吊り上げる。
吊下管31の上端には、エルボ形状を有する吐出曲胴82が接続されており、この吐出曲胴82は管継手150を介して吐出配管170に連結されている。したがって、作業者は、ポンプ30を上昇させる前に管継手150を取り外して、吐出曲胴82と吐出配管170とを分離する。
カップリング86が除去され、かつ吐出曲胴82が吐出配管170から分離された状態で、作業者は、クレーン403を操作して、ポンプ30を上昇させる。本実施形態では、カップリング86が除去されているため、ポンプ30と架台39aとの間には、ポンプ30が上昇可能な隙間が形成される。この隙間の大きさ、すなわち、ポンプ30と架台39aとの間の距離は、フレキシブルベース60のフランジ部60bと下側シール部材75Bとの間の距離よりも大きい。したがって、作業者は、下側シール部材75Bが完全に露出するまで、ポンプ30とともにフレキシブルベース60を上昇させることができる(例えば、300~700mm程度)。
下側シール部材75Bは上側シール部材75Aの下方に配置されているため、下側シール部材75Bが露出した場合、上側シール部材75Aも当然に露出する。したがって、作業者は、下側シール部材75Bが露出した状態でシール部材75の点検、必要に応じてシール部材75の交換を実行することができる。
本実施形態によれば、作業者は、駆動機39および架台39aを除去することなく、上昇装置400によりポンプ30とともにフレキシブルベース60を上昇させることができる。したがって、ポンプ設備の維持管理には、手間はかからず、工期を短縮することができる。
図20は上昇装置400の他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は上述した構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。図20に示すように、上昇装置400は、取付部50の取付フランジ50aおよびフレキシブルベース60のフランジ部60bのいずれか1つに取り付けられたアタッチメント420と、アタッチメント420の下方に配置され、アタッチメント420を介してポンプ30を上昇させる複数のジャッキ装置421とを備えている。
図21はアタッチメント420および複数のジャッキ装置421の配置関係を示す図である。図21に示す実施形態では、アタッチメント420は、ポンプ30(より具体的には、吊下管31)の周方向に沿って等間隔に配置された複数の板状パーツ420aを備えている。図21に示す実施形態では、4つの板状パーツ420aが設けられているが、板状パーツ420aの数は本実施形態には限定されない。一実施形態では、少なくとも3つの板状パーツ420aが設けられる。ジャッキ装置421の数は板状パーツ420aの数に対応している。本実施形態では、板状パーツ420aは、取付部50の取付フランジ50aに固定されているが、フレキシブルベース60のフランジ部60bに固定されてもよい。
図22はアタッチメント420の他の実施形態を示す図である。図22に示すように、アタッチメント420は、取付部50の全周またはフレキシブルベース60のフランジ部60bの全周にわたって配置された分割パーツ420bであってもよい。図22に示す実施形態では、分割パーツ420bは2つ割り構造を有しており、2つの分割パーツ420bの組み合わせは環状形状を有している。
図20に示すように、ジャッキ装置421は、アタッチメント420の板状パーツ420aの下方、より具体的には、板状パーツ420aと床面101との間に配置されている。図23はジャッキ装置421によって押し上げられたフレキシブルベース60を示す図である。図23に示すように、作業者がジャッキ装置421を操作すると、ジャッキ装置421は板状パーツ420aを押し上げる。取付部50に固定されたフレキシブルベース60は、板状パーツ420aとともにジャッキ装置421によって押し上げられる。ジャッキ装置421は下側シール部材75Bが露出するまでポンプ30を上昇させる。
ポンプ30が傾いた状態で上昇されると、ポンプ30がポンプ据付穴103に衝突してしまうおそれがある。そこで、傾いた状態でのポンプ30の上昇を防止するために、複数のジャッキ装置421によるポンプ30の押し上げ作業はできる限り同時に行われることが望ましい。一実施形態では、ジャッキ装置421の数に対応する数の作業者がジャッキアップ作業を同時に実行してもよい。他の実施形態では、作業者は、ポンプ30の傾きの許容範囲を予め決定し、この傾きが許容範囲内になるように、少しずつジャッキアップ作業を実行してもよい。
図20および図23に示すジャッキ装置421は図面を見やすくするために抽象的に描かれている。ジャッキ装置421の構造は特に限定されない。図24はジャッキ装置421の他の実施形態を示す図である。図24に示すように、ジャッキ装置421は、アタッチメント420の板状パーツ420aと床面101との間に差し込まれる爪部421aを備える爪付きジャッキ装置であってもよい。
図25は上昇装置400のさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は上述した実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。図25に示すように、上昇装置400は、フレキシブルベース60と架台39aの下面とを連結する複数のチェーンブロック430を備えている。本実施形態では、連結具405がフレキシブルベース60のフランジ部60bに固定されているのみならず、架台39aの下面にも連結具431が固定されている。チェーンブロック430の数は、連結具405の数および連結具431の数に対応している。各チェーンブロック430は、各連結具405および各連結具431に連結されている。
図26はチェーンブロック430によって上昇されたポンプ30を示す図である。図16乃至図19に示す実施形態と同様に、作業者は、カップリング86を取り外し、吐出曲胴82を吐出配管170から分離した状態で、チェーンブロック430を操作して、下側シール部材75Bが露出するまでポンプ30を上昇させる。
図27は上昇装置400のさらに他の実施形態を示す図である。図27に示すように、上昇装置400はチェーンブロック430およびフレーム構造体440を備えている。本実施形態において、特に説明しない構成は図25および図26に示す実施形態と同じであるので、重複する説明を省略する。
図28はフレーム構造体440を示す斜視図である。図27および図28に示すように、フレーム構造体440はポンプ室100に配置されている。フレーム構造体440は、取付部50およびフレキシブルベース60の上方に位置する天井部441と、天井部441を支持する支持部442とを備えている。フレーム構造体440は、例えば、鋼などの強固な部材から構成されている。天井部441は、架台39aと平行に延びており、架台39aに隣接して配置されている。支持部442は床面101から架台39aに向かって鉛直方向に延びている。
図28に示すように、天井部441は、支持部442によって支持される枠部441aと、枠部441aに固定された梁部441bとを備えている。本実施形態では、連結具431は梁部441bの下面に固定されている。
図27および図28に示す実施形態では、連結具431を架台39aの下面に直接固定する必要はない。ポンプ設備の種類によっては、架台39aの下面に連結具431が固定することができない場合がある。本実施形態によれば、連結具431はフレーム構造体440に固定されているため、作業者は、フレーム構造体440を既設のポンプ設備に設置し、フレーム構造体440の連結具431を介してチェーンブロック430をフレーム構造体440の天井部441に連結する。このように、作業者は、チェーンブロック430が連結可能なフレーム構造体440を用いることにより、架台39aの下面に連結具431を固定する必要はない。
図29はポンプ設備のさらに他の実施形態を示す図である。図29に示すように、ポンプ設備は、固定ベース62とフレキシブルベース60との間に配置された円筒スペーサ450と、円筒スペーサ450の外周面450aと固定ベース62の内周面62bとの間に配置された環状の第1上側シール部材455Aおよび第1下側シール部材455Bと、円筒スペーサ450の内周面450bとフレキシブルベース60の本体部60aの外周面との間に配置された環状の第2上側シール部材456Aおよび第2下側シール部材456Bと、円筒スペーサ450に連結され、第1上側シール部材455Aおよび第2上側シール部材456Aのそれぞれが露出するまで円筒スペーサ450を移動(下降)させる連結棒458とを備えている。
図30は円筒スペーサ450および連結棒458の斜視図である。図29および図30に示すように、円筒スペーサ450は、円筒形状を有しており、吊下管31と同心状に配置されている。フレキシブルベース60の本体部60aは円筒スペーサ450の半径方向内側に配置されており、固定ベース62の内周面62bは円筒スペーサ450の半径方向外側に配置されている。
円筒スペーサ450の外周面450aには、鉛直方向に配置された上側環状溝451と下側環状溝452とが形成されている。第1上側シール部材455Aは上側環状溝451に装着されており、第1下側シール部材455Bは下側環状溝452に装着されている。同様に、円筒スペーサ450の内周面450bには、鉛直方向に配置された上側環状溝453と下側環状溝454とが形成されている。第2上側シール部材456Aは上側環状溝453に装着されており、第2下側シール部材456Bは下側環状溝454に装着されている。
以下、本明細書中において、第1上側シール部材455Aおよび第1下側シール部材455Bを総称して第1シール部材455と呼ぶことがある。第2上側シール部材456Aおよび第2下側シール部材456Bを総称して第2シール部材456と呼ぶことがある。
円筒スペーサ450は第1シール部材455および第2シール部材456が装着された状態で固定ベース62の内周面62bに挿入される。その後、フレキシブルベース60は円筒スペーサ450の内周面450bに挿入される。第1シール部材455を滑らかに固定ベース62に挿入するために、作業者は、流体供給管260(図5参照)を通じて潤滑油を円筒スペーサ450の外周面450aと固定ベース62の内周面62bとの間に注入してもよい。一実施形態では、流体供給管260には、潤滑油供給源(図示しない)が接続された分岐管(図示しない)が接続されてもよい。潤滑油は、分岐管および流体供給管260の下流流路を通って注入される。
フレキシブルベース60を円筒スペーサ450の内周面450bに滑らかに挿入するために、作業者は、流体供給管250(図3参照)を通じて潤滑油を円筒スペーサ450の内周面450bとフレキシブルベース60の本体部60aの外周面との間に注入してもよい。一実施形態では、流体供給管250には、潤滑油供給源(図示しない)が接続された分岐管(図示しない)が接続されてもよい。潤滑油は、分岐管および流体供給管250の下流流路を通って注入される。
図29に示す実施形態と図3および図5に示す実施形態とを組み合わせてもよい。この場合、作業者は、第1シール部材455および第2シール部材456に対して水密試験を実行することができる。
図30に示すように、複数の連結棒458は円筒スペーサ450の上端面に取り付けられている。これら複数の連結棒458は円筒スペーサ450の周方向に沿って等間隔に配置されている。図30に示す実施形態では、6つの連結棒458が設けられているが、連結棒458の数は本実施形態には限定されない。各連結棒458は、吸込水槽90内の円筒スペーサ450の上端面からポンプ室100に向かって延びており、取付部50の取付フランジ50aから突き出している。したがって、連結棒458の一部はポンプ室100に存在している。
図31は円筒スペーサ450が押し下げられた状態を示す図である。ポンプ設備の維持管理時において、ポンプ室100内の作業者が連結棒458を押し込むと、連結棒458に取り付けられた円筒スペーサ450は押し下げられる。連結棒458は、第1上側シール部材455Aおよび第2上側シール部材456Aのそれぞれが露出するまで円筒スペーサ450を移動させることが可能な長さを有している。したがって、作業者が連結棒458を押し込むと、第1上側シール部材455Aおよび第2上側シール部材456Aのそれぞれは、フレキシブルベース60と固定ベース62との間の隙間から露出する。
図32は作業者がシール部材を交換する様子を示す図である。図32では、作業者には、符号WKが付されている。図32に示すように、吸込水槽90内に液体が存在しておらず、作業者WKが円筒スペーサ450に容易に近づくことが可能である場合、吸込水槽90内に足場460を設けてもよい。作業者WKは、ポンプ30に隣接するように設置された足場460を登って、円筒スペーサ450にアクセスすることができる。
円筒スペーサ450は、第1上側シール部材455Aおよび第2上側シール部材456Aがフレキシブルベース60と固定ベース62との間の隙間から露出するまで押し下げられている。したがって、作業者WKは、駆動機39および架台39aを除去することなく、円筒スペーサ450に装着された第1シール部材455および第2シール部材455のすべてを容易に点検することができ、必要に応じてシール部材を交換することができる。必要に応じて、円筒スペーサ450は、第1上側シール部材455Aがポンプ据付穴103から露出するまで押し下げられてもよい。
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術思想の範囲内において、種々の異なる形態で実施されてよいことは勿論である。