JP7049777B2 - プラズマリアクタ - Google Patents

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Description

本発明は、プラズマリアクタに関するものであり、特には、内燃機関(エンジン)の排ガスを浄化するための装置に好適なプラズマリアクタに関するものである。
従来、エンジンや焼却炉の排ガスをプラズマ場に通すことにより、排ガス中に含まれているCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)及びPM(Particulate Matter:粒子状物質)などの有害物質を処理するプラズマリアクタが提案されている。
例えば、放電電極が形成された複数のセラミックパネルを積層し、隣接するセラミックパネル間に電圧を印加して誘電体バリア放電による低温プラズマ(非平衡プラズマ)を発生させることにより、セラミックパネル間を流れる排ガス中のPMを酸化して除去するプラズマリアクタが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、特許文献1に記載のプラズマリアクタは、保持部材を介して複数のセラミックパネル(電極)を積層した構造を有するセラミックパネル積層体や、セラミックパネル積層体を収容するためのケースや、ケース及びセラミックパネル積層体の間に介在されるマットなどを備えている。また、特許文献1に記載のプラズマリアクタでは、枠体とケース体(ケース)との間に固定マット(マット)が介在されており、枠体は、固定マットを介してケース体に接触している。
特許第4448097号公報(図1,図9等)
ところが、特許文献1に記載の従来技術では、保持部材とセラミックパネルとの隙間から煤(PM)を含んだ排ガスが漏れる虞がある。この場合、プラズマリアクタによる排ガスの浄化効率が低下してしまうという問題がある。また、特許文献1では、セラミックパネルがマットのみにより保持されるため、セラミックパネルの保持力が小さい。このため、プラズマリアクタを車両等に搭載して使用する際には、排ガスの圧力により、セラミックパネルの位置ずれが生じる虞がある。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガスの浄化効率を向上させることができ、かつ信頼性を向上させることが可能なプラズマリアクタを提供することにある。
上記課題を解決するための手段(手段1)としては、放電電極を有する複数のセラミックパネルを積層した構造を有し、隣接する前記セラミックパネル間に形成されたガス流路にガスを流して電圧を印加することによりプラズマを発生させるセラミックパネル積層体を備えるプラズマリアクタであって、前記セラミックパネル積層体は、前記ガス流路の上流側に位置する上流側端面と、前記ガス流路の下流側に位置する下流側端面とを有し、前記セラミックパネルは、厚さ方向において互いに反対側に位置する一対の主面と、面方向において前記ガス流路を挟んで互いに反対側に位置する一対の端面と、面方向において前記ガス流路を挟んで互いに反対側に位置する一対の端部とを有し、前記一対の端部にそれぞれ設けられた突条を介して、隣接する前記セラミックパネルに対して積層されており、前記突条は、前記セラミックパネルにおいて前記一対の端面よりも内側に配置され、かつ前記ガス流路に沿って延びており、隣接する前記突条に対向する内側面と、前記突条の幅方向において前記内側面の反対側に位置する外側面とを有し、前記複数のセラミックパネルは、前記一対の端部に形成された無機接着材層を介して互いに固定保持され、前記無機接着材層の少なくとも一部は、上層側の前記セラミックパネルの前記主面と、下層側の前記セラミックパネルの前記主面と、前記突条の前記外側面とによって囲まれた凹部内に充填され、前記無機接着材層は、前記上流側端面において前記ガス流路の開口部を囲む領域に形成されていることを特徴とするプラズマリアクタがある。
従って、上記手段1に記載の発明では、複数のセラミックパネルが、一対の端部に形成された無機接着材層を介して互いに固定保持されるため、隣接するセラミックパネル間に生じる隙間からのガスの漏れを、無機接着材層によって遮断することができる。その結果、隣接するセラミックパネル間に形成されたガス流路を流れるガスを浄化する場合に、ガスの浄化を効率良く行うことができる。また、無機接着材層の接着力により、複数のセラミックパネルを確実に固定保持することができる。よって、ガスの圧力がセラミックパネルに作用したとしても、セラミックパネルの位置ずれが無機接着材層の接着力によって抑制される。ゆえに、プラズマリアクタの信頼性を向上させることができる。
上記プラズマリアクタを構成するセラミックパネル積層体は、放電電極を有する複数のセラミックパネルを積層した構造を有する。放電電極の形成材料としては、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、酸化ルテニウム(RuO)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)などを挙げることができる。
また、セラミックパネルは、厚さ方向において互いに反対側に位置する一対の主面を有し、無機接着材層の少なくとも一部は、上層側のセラミックパネルの主面と、下層側のセラミックパネルの主面との間に充填されてい。この場合、無機接着材層は、上層側のセラミックパネルの主面と下層側のセラミックパネルの主面とに密着するようになる。その結果、セラミックパネルと無機接着材層との接触面積が大きくなるため、複数のセラミックパネルを強固に固定保持することができる。
さらに、セラミックパネルは、面方向においてガス流路を挟んで互いに反対側に位置する一対の端面を有し、一対の端部にそれぞれ設けられた突条を介して、隣接するセラミックパネルに対して積層されており、突条は、セラミックパネルにおいて一対の端面よりも内側に配置され、かつガス流路に沿って延びており、隣接する突条に対向する内側面と、突条の幅方向において内側面の反対側に位置する外側面とを有し、無機接着材層の少なくとも一部は、上層側のセラミックパネルの主面と、下層側のセラミックパネルの主面と、突条の外側面とによって囲まれた凹部内に充填されてい。こ場合、無機接着材層は、上層側のセラミックパネルの主面と下層側のセラミックパネルの主面とに加えて、突条の外側面にも密着するようになる。その結果、セラミックパネルと無機接着材層との接触面積がいっそう大きくなるため、複数のセラミックパネルをより強固に固定保持することができる。
ここで、複数のセラミックパネルは、面方向において互いに反対側に位置する一対の端面を有し、無機接着材層は、一対の端面を覆うように形成されていることが好ましい。このようにした場合、無機接着材層は、セラミックパネルの一対の端面に密着するようになる。その結果、セラミックパネルと無機接着材層との接触面積を確実に確保できるため、複数のセラミックパネルを強固に固定保持することができる。
なお、端面に形成されている無機接着材層の厚さは、凹部の深さより小さくてもよい。このようにすれば、隣接するセラミックパネル間の熱膨張差に起因する応力が生じた際に、凹部に充填されている無機接着材層に殆どの応力が集中するため、端面に形成されている無機接着材層には、応力が集中しにくくなる。その結果、隣接するセラミックパネル間に応力が作用することに起因する、セラミックパネルでの割れ等の発生を防止することができる。さらに、端面に形成されている無機接着材層の厚さは、例えば0mmであってもよい。即ち、端面は、無機接着材層に覆われることなく露出していてもよい。このようにした場合、凹部にのみ無機接着材層が形成されるため、凹部に充填されている無機接着材層のみが応力を緩和するようになる。その結果、隣接するセラミックパネル間、ひいては、セラミックパネル積層体全体に作用する応力を、無機接着材層によっていっそう容易に緩和することができる。
また、セラミックパネル積層体は、ガス流路の上流側に位置する上流側端面と、ガス流路の下流側に位置する下流側端面とを有し、無機接着材層は、上流側端面においてガス流路の開口部を囲む領域に形成されてい。このようにすれば、上流側端面からセラミックパネル間に生じた隙間に侵入するガスを、上流側端面に形成した無機接着材層によって遮断することができる。その結果、プラズマリアクタの上流側から流れてきたガスが確実にガス流路内に導かれるようになるため、ガスの浄化をより効率良く行うことができる。
さらに、無機接着材層は、下流側端面においてガス流路の開口部を囲む領域に形成されていてもよい。このようにすれば、隣接するセラミックパネル間に生じた隙間に侵入して下流側端面から流出するガスを、下流側端面に形成した無機接着材層によって遮断することができる。その結果、浄化されていないガスのプラズマリアクタ外への流出が防止されるため、ガスの浄化を確実に行うことができる。
上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、放電電極を有する複数のセラミックパネルを積層した構造を有し、隣接する前記セラミックパネル間に形成されたガス流路にガスを流して電圧を印加することによりプラズマを発生させるセラミックパネル積層体を備えるプラズマリアクタであって、前記セラミックパネル積層体は、前記ガス流路の上流側に位置する上流側端面と、前記ガス流路の下流側に位置する下流側端面と、前記上流側端面及び前記下流側端面の間に位置する複数のガス非通過面とを有し、前記セラミックパネルは、厚さ方向において互いに反対側に位置する一対の主面と、面方向において前記ガス流路を挟んで互いに反対側に位置する一対の端面と、面方向において前記ガス流路を挟んで互いに反対側に位置する一対の端部とを有し、前記一対の端部にそれぞれ設けられた突条を介して、隣接する前記セラミックパネルに対して積層されており、前記突条は、前記セラミックパネルにおいて前記一対の端面よりも内側に配置され、かつ前記ガス流路に沿って延びており、隣接する前記突条に対向する内側面と、前記突条の幅方向において前記内側面の反対側に位置する外側面とを有し、前記複数のセラミックパネルは、前記一対の端部に形成された無機接着材層を介して互いに固定保持され、前記無機接着材層の少なくとも一部は、上層側の前記セラミックパネルの前記主面と、下層側の前記セラミックパネルの前記主面と、前記突条の前記外側面とによって囲まれた凹部内に充填され、前記無機接着材層は、前記ガス非通過面の一部を覆うように形成されていることを特徴とするプラズマリアクタがある。上記手段2に記載の発明では、無機接着材層の形成材料の使用量を削減できるため、プラズマリアクタの製造コストを低く抑えることができる。
ここで、無機接着材層の形成材料は、無機粉末、無機繊維及び無機バインダーの少なくとも1つを含むことが好ましい。このようにすれば、セラミックパネル積層体全体に作用する応力を、無機接着材層によって確実に緩和できるため、応力に起因するセラミックパネルでの割れ等の発生が確実に抑制される。ゆえに、プラズマリアクタの信頼性がよりいっそう向上する。
なお、無機粉末の粒子径は、0.01μm以上100μm以下、特には0.1μm以上5μm以下であることが好ましい。仮に、無機粉末の粒子径が0.01μm未満になると、無機接着材層に気泡が発生しやすくなる。一方、無機粉末の粒子径が100μmよりも大きくなると、複数のセラミックパネルを無機接着材層を介して固定保持したとしても、十分な保持力を得られなくなる。また、無機接着材層の熱伝導率が低下してしまう。
また、無機繊維の繊維長は、0.1mm以上10mm以下、特には0.1mm以上2mm以下であることが好ましい。仮に、繊維長が0.1mm未満になると、複数のセラミックパネルを無機接着材層を介して固定保持したとしても、十分な保持力を得られなくなる。また、無機接着材層のヤング率が高くなってしまう。さらに、無機接着材層の乾燥焼成時において、無機接着材層内に空気が抜ける通路を十分に確保できないため、気泡が発生しやすくなる。一方、繊維長が10mmよりも大きくなると、無機繊維が毛玉状になるため、無機粉末を無機接着材層内に分散させることが困難になる。また、無機繊維が毛玉状になって嵩張ることから、無機接着材層を薄くできないため、無機接着材層に気泡やクラックが発生しやすくなる。
なお、無機粉末は、アルミナ、シリカ、ジルコニア及びムライトから選択される少なくとも1種以上のセラミック粒子からなり、無機繊維は、アルミナ、シリカ及びムライトから選択される少なくとも1種以上のセラミックファイバーからなり、無機バインダーは、珪酸ナトリウム、珪酸リチウム、珪酸カリウムから選択される少なくとも1種以上の珪酸アルカリからなることが好ましい。このようにすれば、複数のセラミックパネルを無機接着材層を介して固定保持する際に、高い保持力を得ることができる。ゆえに、プラズマリアクタの信頼性がよりいっそう向上する。
具体的に言うと、無機接着材層は、固形分で20wt%以上70wt%以下、特には、固形分で3wt%以上47wt%以下のアルミナ粉末を含有することが好ましい。仮に、アルミナ粉末の含有量が20wt%未満になると、無機接着材層の熱膨張率が低下してしまう。一方、アルミナ粉末の含有量が70wt%よりも大きくなると、上記した保持力が低下してしまう。また、無機接着材層は、固形分で0wt%以上30wt%以下、特には、固形分で11wt%以上17wt%以下のシリカ粉末を含有することが好ましい。仮に、シリカ粉末の含有量が30wt%よりも大きくなると、無機接着材層の熱膨張率が増加するとともに、無機接着材層の熱伝導率が低下してしまう。さらに、無機接着材層は、固形分で5wt%以上30wt%以下、特には、固形分で11wt%以上17wt%以下のアルミナファイバーを含有することが好ましい。仮に、アルミナファイバーの含有量が5wt%未満になると、無機接着材層のヤング率が高くなってしまう。一方、アルミナファイバーの含有量が30wt%よりも大きくなると、上記した保持力が低下してしまう。また、無機接着材層は、固形分で10wt%以上40wt%以下、特には、固形分で20wt%以上26wt%以下の珪酸ナトリウムを含有することが好ましい。仮に、珪酸ナトリウムの含有量が10wt%未満になると、上記した保持力が低下してしまう。一方、珪酸ナトリウムの含有量が40wt%よりも大きくなると、無機接着材層の熱伝導率及び熱膨張率が低下してしまう。また、無機接着材層の乾燥焼成時に気泡が発生しやすくなる。
第1実施形態におけるプラズマリアクタを示す概略断面図。 プラズマリアクタを示す平面図。 プラズマリアクタを示す斜視図。 セラミックパネル積層体がケースに収容されている状態を示す斜視図。 セラミックパネル積層体、クランプ及び電源供給端子を示す平面図。 セラミックパネル積層体、クランプ及び電源供給端子を示す斜視図。 セラミックパネル積層体及びクランプを示す概略断面図。 電極パネルを示す斜視図。 第2実施形態におけるセラミックパネル積層体及びクランプを示す概略断面図。 セラミックパネル積層体を示す要部断面図。 他の実施形態において、セラミックパネル積層体及びクランプを示す概略断面図。 セラミックパネル積層体を示す要部断面図。 他の実施形態において、セラミックパネル積層体を示す概略断面図。 他の実施形態において、セラミックパネル積層体及び無機接着材層を示す概略側面図。 他の実施形態において、セラミックパネル積層体及び無機接着材層を示す概略側面図。 他の実施形態において、セラミックパネル積層体及び無機接着材層を示す概略側面図。 他の実施形態において、セラミックパネル積層体及び無機接着材層を示す概略側面図。
[第1実施形態]
以下、本発明のプラズマリアクタ1を具体化した第1実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1~図4に示されるように、本実施形態のプラズマリアクタ1は、自動車のエンジン(図示略)の排ガスに含まれているPMを除去する装置であり、排気管2に取り付けられている。プラズマリアクタ1は、電源3、ケース10及びセラミックパネル積層体20を備えている。
ケース10は、例えばステンレス鋼を用いて矩形筒状に形成されている。ケース10の第1端部(図1では左端部)には第1コーン部11が接続され、ケース10の第2端部(図1では右端部)には第2コーン部12が接続されている。さらに、第1コーン部11は、排気管2の上流側部分4(エンジン側の部分)に接続され、第2コーン部12は、排気管2の下流側部分5(エンジン側とは反対側の部分)に接続されている。なお、エンジンからの排ガスは、排気管2の上流側部分4から第1コーン部11を介してケース10内に流入し、ケース10内を通過した後、第2コーン部12を介して排気管2の下流側部分5に流出する。
図4に示されるように、セラミックパネル積層体20は、ケース10内に収容されており、ケース10とセラミックパネル積層体20との間にはマット8が介在されている。マット8は、セラミックパネル積層体20をケース10に固定する機能を有している。ここで、マット8を構成する材料としては、例えば、セラミック繊維、金属繊維、発泡金属等の絶縁材料を用いることができる。
図1,図4~図6に示されるように、セラミックパネル積層体20は、排ガスが流入する上流側端面21と、排ガスが流出する下流側端面22と、4つのガス非通過面23,24,25,26とを有する略直方体状を成している。上流側端面21及び下流側端面22は、セラミックパネル積層体20において互いに反対側に位置している。一方、各ガス非通過面23~26は、上流側端面21と下流側端面22との間に位置している。
また、セラミックパネル積層体20は、複数の電極パネル30(セラミックパネル)と、各電極パネル30よりも外層側に位置する一対の外層パネル50とを積層した構造を有している。各パネル30,50は、上流側端面21側から下流側端面22側に流れる排ガスの通過方向F1(第1コーン部11から第2コーン部12に向かう方向)と平行に配置されており、互いに隙間(本実施形態では、0.5mmの隙間)を有するように配置されている。詳述すると、セラミックパネル積層体20は、隣接する電極パネル30間に、排ガスが通過するガス流路27を有している。ガス流路27の上流側には上流側端面21が位置しており、ガス流路27の下流側には下流側端面22が位置している。
図1に示されるように、各電極パネル30には、セラミックパネル積層体20の厚さ方向に沿って第1の配線6及び第2の配線7が交互に電気的に接続されている。第1の配線6は、電源3の第1の端子に電気的に接続され、第2の配線7は、電源3の第2の端子に電気的に接続されている。
図1,図8に示されるように、本実施形態の電極パネル30は、第1主面31、第2主面32、第1端面37及び第2端面38を有し、縦100mm×横120mmの略矩形板状を成している。第1主面31及び第2主面32は、電極パネル30の厚さ方向において互いに反対側に位置している。また、第1端面37及び第2端面38は、面方向においてガス流路27を挟んで互いに反対側に位置している。さらに、電極パネル30は、矩形板状の誘電体33に放電電極34(厚さ10μm)を内蔵してなる構造を有している。本実施形態において、誘電体33はアルミナ(Al)等のセラミックからなり、放電電極34はタングステン(W)からなっている。
図7,図8に示されるように、電極パネル30は、第1端部91に第1突条92を有するとともに、第2端部101に第2突条102を有している。なお、第1突条92(第1端部91)及び第2突条102(第2端部101)は、面方向においてガス流路27を挟んで互いに反対側に位置している。即ち、突条92,102は、ガス流路27に沿って延びている。また、電極パネル30は、突条92,102を介して、隣接する電極パネル30に対して積層されている。なお、本実施形態の突条92,102は、第2主面32から突出しており、電極パネル30と一体になっている。そして、両突条92,102間の領域は凹部35となっている。凹部35は、電極パネル30の横方向に延びており、電極パネル30の両端面にて開口している。そして、本実施形態のセラミックパネル積層体20では、凹部35の内側面と下層側に隣接する電極パネル30の第1主面31との間に、上記したガス流路27が構成される。なお、セラミックパネル積層体20を構成する最下層の電極パネル30には、下層側に電極パネル30が存在しないため、凹部35が形成されていない。
図8に示されるように、第1突条92は、隣接する突条(ここでは第2突条102)に対向する内側面94と、第1突条92の幅方向において内側面94の反対側に位置する外側面95とを有している。第1突条92は、外側面95が電極パネル30の第1端面37と一致するように配置されている。なお、本実施形態の第1突条92は、長さ120mm×幅15mm×厚さ0.5mmである。一方、第2突条102も、隣接する突条(ここでは第1突条92)に対向する内側面104と、第2突条102の幅方向において内側面104の反対側に位置する外側面105とを有している。第2突条102は、外側面105が電極パネル30の第2端面38と一致するように配置されている。なお、本実施形態の第2突条102は、長さ120mm×幅15mm×厚さ0.5mmである。
図7,図8に示されるように、両突条92,102には、第1主面31側と第2主面32側とを導通させる導通構造40がそれぞれ1つずつ設けられている。各導通構造40は、スルーホール導体41、第1パッド42及び第2パッド43を備えている。スルーホール導体41は、第1突条92または第2突条102を厚さ方向に貫通している。そして、一方の導通構造40に設けられたスルーホール導体41は、放電電極34から外周側に延出する延出部36を貫通している。また、第1パッド42は、第1主面31に形成されており、スルーホール導体41の第1主面31側端部に対して電気的に接続されている。一方、第2パッド43は、突条92,102の先端面に形成されており、スルーホール導体41の第2主面32側端部に対して電気的に接続されている。なお、第1パッド42及び第2パッド43は、それぞれ長方形状を成しており、表面にNi等のめっきが施されている。
図1,図4~図7に示されるように、本実施形態の外層パネル50は、第1主面51及び第2主面52を有し、縦100mm×横120mmの略矩形板状を成している。第1主面51及び第2主面52は、外層パネル50の厚さ方向において互いに反対側に位置している。なお、本実施形態の外層パネル50には、凹部35と同様の凹部は形成されていない。
また、外層パネル50は、矩形板状の誘電体53によって構成されている。本実施形態において、誘電体53はアルミナ等のセラミックからなっている。即ち、本実施形態の外層パネル50は、電極パネル30と同じ材料を用いて形成されている。なお、本実施形態の誘電体53には、放電電極34と同様の放電電極は内蔵されていない。
図7に示されるように、外層パネル50の両端部分には、第1主面51側と第2主面52側とを導通させる導通構造80がそれぞれ1つずつ設けられている。各導通構造80は、スルーホール導体81、第1パッド82及び第2パッド83を備えている。スルーホール導体81は、外層パネル50を厚さ方向に貫通している。第1パッド82は、第1主面51に形成されており、スルーホール導体81の第1主面51側端部に対して電気的に接続されている。そして、下層側の外層パネル50の第1主面51に形成された第1パッド82は、最下層の電極パネル30に形成された第2パッド43に接触するようになっている。一方、第2パッド83は、第2主面52に形成されており、スルーホール導体81の第2主面52側端部に対して電気的に接続されている。そして、上層側の外層パネル50の第2主面52に形成された第2パッド83は、最上層の電極パネル30に形成された第1パッド42に接触するようになっている。なお、第1パッド82及び第2パッド83は、それぞれ長方形状を成しており、表面にNi等のめっきが施されている。
図5~図7に示されるように、プラズマリアクタ1は、各パネル30,50(セラミックパネル積層体20)をガス非通過面24側から挟み込んで固定する1つの第1クランプ61と、各パネル30,50をガス非通過面26側から挟み込んで固定する1つの第2クランプ62とを備えている。各クランプ61,62は、金属板(例えば、SUS430等の材料からなるステンレス板)を折り曲げることによって形成されている。なお、各クランプ61,62は、各パネル30,50を積層方向に挟み込む機能に加えて、放電電極34に電気的に接続する機能を有している。
また、各クランプ61,62は、板部材63及び押さえ板64を備えている。板部材63は、パネル30,50の積層方向に延びている。押さえ板64は、板部材63と一体に形成され、板部材63の両端部に配置されている。各押さえ板64は、弾性を有しており、折り返し構造を有する板ばねである。なお、各押さえ板64は、上層側の外層パネル50の第1主面51に形成された第1パッド82、または、下層側の外層パネル50の第2主面52に形成された第2パッド83に圧接している。
図2~図6に示されるように、プラズマリアクタ1は、一対の電源供給端子71,72を備えている。本実施形態の電源供給端子71,72は、スパークプラグと同様の構造を有している。詳述すると、電源供給端子71,72は、外部接続部、金属粉末を含む導電性シール、絶縁体、主体金具、滑石、パッキン類等を備えている。外部接続部は、導電性シールを介して中心軸73に接続されている。中心軸73は、片側の端部が絶縁体内に配置されている。なお、電源供給端子は、本実施形態のものに限定される訳ではなく、絶縁体によって外部接続部とケース10との間が絶縁されている構造であれば、他の構造であってもよい。
また、電源供給端子71は、基端部(中心軸73)が第1クランプ61の板部材63の中央部に電気的に接続され、先端部がケース10から露出している。同様に、電源供給端子72は、基端部(中心軸73)が第2クランプ62の板部材63の中央部に電気的に接続され、先端部がケース10から露出している。そして、各電源供給端子71,72は、互いに反対方向に突出している。なお、本実施形態では、電源供給端子71の先端部が第1の配線6(図1参照)に接続されるとともに、電源供給端子72の先端部が第2の配線7(図1参照)に接続されるようになっている。
図4~図7に示されるように、プラズマリアクタ1は、第1端部91に形成された第1無機接着材層111(厚さ0.5mm)と、第2端部101に形成された第2無機接着材層112(厚さ0.5mm)とを備えている。各無機接着材層111,112は、各パネル30,50を互いに固定保持するようになっている。第1無機接着材層111は、第1端面37全体、ひいては、ガス非通過面24全体を覆うように形成されている。第2無機接着材層112は、第2端面38全体、ひいては、ガス非通過面26全体を覆うように形成されている。また、無機接着材層111,112の一部は、上流側端面21において複数のガス流路27の開口部28を囲む領域を覆うように形成されている。具体的に言うと、第1無機接着材層111の一部は、上流側端面21において開口部28よりもガス非通過面24寄りの領域を覆うように形成され、第2無機接着材層112の一部は、上流側端面21において開口部28よりもガス非通過面26寄りの領域を覆うように形成されている。
なお、各無機接着材層111,112の形成材料は、無機粉末、無機繊維及び無機バインダーを含んでいる。具体的に言うと、無機接着材層111,112は、固形分で40.1wt%のアルミナ粉末、及び、固形分で13.3wt%のシリカ粉末を無機粉末として含有している。また、無機接着材層111,112は、固形分で13.3wt%のアルミナファイバーを無機繊維として含有している。さらに、無機接着材層111,112は、固形分で22.1wt%の珪酸ナトリウムを無機バインダーとして含有している。
なお、図1に示されるように、本実施形態のプラズマリアクタ1は、例えば、排ガスに含まれているPMを除去するために用いられる。この場合、電源3から隣接する電極パネル30間にパルス電圧(例えば、ピーク電圧:5kV(5000V)、パルス繰返し周波数:100Hz)が印加されると、誘電体バリア放電が生じ、放電電極34間に誘電体バリア放電によるプラズマが発生する。そして、プラズマの発生により、ガス流路27を流れる排ガスに含まれるPMが酸化(燃焼)されて除去される。
次に、プラズマリアクタ1の製造方法を説明する。
まず、アルミナ粉末を主成分とするセラミック材料を用いて、誘電体33となる第1~第3のセラミックグリーンシートを形成する。なお、セラミックグリーンシートの形成方法としては、テープ成形や押出成形などの周知の成形法を用いることができる。そして、各セラミックグリーンシートに対してレーザ加工を行い、スルーホール導体41用の貫通孔を形成する。なお、貫通孔の形成を、パンチング加工、ドリル加工等によって行ってもよい。
次に、従来周知のペースト印刷装置(図示略)を用いて、スルーホール導体41用の貫通孔に導電性ペースト(本実施形態では、タングステンペースト)を充填し、スルーホール導体41となる未焼成のスルーホール導体部を形成する。
次に、第1のセラミックグリーンシートを支持台(図示略)に載置する。さらに、ペースト印刷装置を用いて、第1のセラミックグリーンシートの裏面上に導電性ペーストを印刷する。その結果、第1のセラミックグリーンシートの裏面上に、放電電極34となる厚さ10μmの未焼成電極が形成される。なお、第1のセラミックグリーンシートに対する未焼成電極の印刷方法としては、スクリーン印刷などの周知の印刷法を使用することができる。
そして、導電性ペーストの乾燥後、未焼成電極が印刷された第1のセラミックグリーンシートの裏面上に、第2のセラミックグリーンシート及び第3のセラミックグリーンシートを順番に積層し、シート積層方向に押圧力を付与する。その結果、各セラミックグリーンシートが一体化され、セラミック積層体が形成される。さらに、ペースト印刷装置を用いて、第1のセラミックグリーンシートの主面上に導電性ペーストを印刷し、未焼成の第1パッド42を形成するとともに、第3のセラミックグリーンシートの裏面上に導電性ペーストを印刷し、未焼成の第2パッド43を形成する。なお、第3のセラミックグリーンシートは、凹部35の形状に合わせた打抜加工を施した後に積層される。
また、第1~第3のセラミックグリーンシートを形成する手法と同様の手法を用いて、外層パネル50となる第4のセラミックグリーンシートを形成する。そして、第4のセラミックグリーンシートに対してレーザ加工を行い、スルーホール導体81用の貫通孔を形成する。次に、ペースト印刷装置を用いて、スルーホール導体81用の貫通孔に導電性ペーストを充填し、スルーホール導体81となる未焼成のスルーホール導体部を形成する。
次に、第4のセラミックグリーンシートを支持台に載置する。さらに、ペースト印刷装置を用いて、第4のセラミックグリーンシートの主面上に導電性ペーストを印刷し、未焼成の第1パッド82を形成するとともに、第4のセラミックグリーンシートの裏面上に導電性ペーストを印刷し、未焼成の第2パッド83を形成する。
次に、周知の手法に従って乾燥工程や脱脂工程などを行った後、セラミックグリーンシート及び未焼成電極をアルミナ及びタングステンが焼結しうる所定の温度(例えば、1400℃~1600℃程度)に加熱する同時焼成を行う。その結果、第1~第3のセラミックグリーンシート中のアルミナ、及び、導電性ペースト中のタングステンが同時焼結し、誘電体33、放電電極34、スルーホール導体41、第1パッド42及び第2パッド43が同時焼成によって形成され、第1~第3のセラミックグリーンシートが電極パネル30となる。このとき、第3のセラミックグリーンシートは第1突条92及び第2突条102となる。また、第4のセラミックグリーンシート中のアルミナ、及び、導電性ペースト中のタングステンが同時焼結し、誘電体53、スルーホール導体81、第1パッド82及び第2パッド83が同時焼成によって形成され、第4のセラミックグリーンシートが外層パネル50となる。その後、積層工程を行い、得られたパネル30,50を複数枚積層して、セラミックパネル積層体20を形成する。
次に、平均粒子径が2μmのアルミナ粉末(23.3wt%、固形分で40.1wt%)、平均粒子径が2μmのシリカ粉末(7.7wt%、固形分で13.3wt%)、平均繊維長が0.5mmのアルミナファイバー(7.7wt%、固形分で13.3wt%)、SiO/NaOモル比が3.1以上3.3以下の珪酸ナトリウム(32.1wt%、固形分で22.1wt%)、硬化補助材である酸化亜鉛(6.6wt%、固形分で11.3wt%)を、水(22.7wt%)を用いて混練する。そして、混練したものをペースト状に成形することにより、無機接着材を得る。次に、得られた無機接着材を、セラミックパネル積層体20のガス非通過面24全体とガス非通過面26全体とに塗布する。さらに、塗布した無機接着材を、大気雰囲気下にて25℃で12時間乾燥した後、400℃で2時間焼成する。その結果、無機接着材が硬化して無機接着材層111,112となり、パネル30,50が、無機接着材層111,112を介して互いに固定保持される。このとき、無機粉末(アルミナ粉末及びシリカ粉末)と無機繊維(アルミナファイバー)との交錯点に存在する無機バインダー(珪酸ナトリウム)が加熱によってセラミック化され、無機粉末及び無機繊維がセラミックパネル積層体20に接合する。
次に、クランプ61,62を用いて、複数の電極パネル30及び一対の外層パネル50を積層方向に挟み込んで固定する。このとき、クランプ61,62を構成する一対の押さえ板64が、上層側の外層パネル50に形成された第1パッド82と、下層側の外層パネル50に形成された第2パッド83とに圧接する。さらに、溶接等を行うことにより、第1クランプ61を構成する板部材63の中央部に電源供給端子71の中心軸73を電気的に接続するとともに、第2クランプ62を構成する板部材63の中央部に電源供給端子72の中心軸73を電気的に接続する。次に、セラミックパネル積層体20の外表面と無機接着材層111,112の外表面とを覆うようにマット8を取り付けた後、マット8の外表面を覆うようにケース10を取り付ける。その後、電源供給端子71の先端部に第1の配線6を接続するとともに、電源供給端子72の先端部に第2の配線7を接続する。以上のプロセスを経て、プラズマリアクタ1が完成する。
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態のプラズマリアクタ1では、各パネル30,50が、一対の端部91,101に形成された無機接着材層111,112を介して互いに固定保持されている。このため、隣接する電極パネル30間に生じる隙間からの排ガスの漏れや、電極パネル30と外層パネル50との間に生じる隙間からの排ガスの漏れを、無機接着材層111,112によって遮断することができる。その結果、排ガスの浄化を効率良く行うことができる。また、無機接着材層111,112の接着力により、各パネル30,50を確実に固定保持することができる。よって、排ガスの圧力が各パネル30,50に作用したとしても、各パネル30,50の位置ずれが無機接着材層111,112の接着力によって抑制される。ゆえに、プラズマリアクタ1の信頼性を向上させることができる。
(2)本実施形態では、無機接着材層111,112の形成材料に含まれる無機粉末として、アルミナ粉末だけでなくシリカ粉末も用いている。この場合、シリカが珪酸アルカリ(ここでは珪酸ナトリウム)とシロキサン結合を作る可能性が高いため、無機接着材層111,112の強度が向上する。
(3)例えば、特開昭52-3285号公報に記載の無機接着材、例えば、固形分で無機粉末や無機繊維が80wt%以上、固形分で無機バインダーが10wt%以下、無機繊維の長さが80μm以下となる無機接着材を用いて各パネル30,50を固定保持する場合、高温となるプラズマリアクタ1の駆動時において、無機接着材に気泡やクラックが発生する。その結果、各パネル30,50の保持力が不十分となるため、パネル30,50の位置ずれや、気泡及びクラックからの排ガスの漏れが生じてしまい、プラズマリアクタ1の信頼性が低下する虞がある。そこで、本実施形態では、各パネル30,50を固定保持する無機接着材層111,112として、固形分で無機粉末であるアルミナ粉末が80wt%未満(40.1wt%)、固形分で無機粉末であるシリカ粉末が80wt%未満(13.3wt%)、固形分で無機繊維であるアルミナファイバーが80wt%未満(13.3wt%)、固形分で無機バインダーである珪酸ナトリウムが10wt%よりも大きい値(22.1wt%)であって、無機繊維の長さが80μmよりも大きい値(平均繊維長0.5mm)となる無機接着材を用いている。その結果、高温時における無機接着材層111,112での気泡やクラックの発生が防止されるため、信頼性に優れたプラズマリアクタ1を得ることができる。
(4)本実施形態のプラズマリアクタ1は、第1コーン部11及び第2コーン部12を介して排気管2に取り付けられている。その結果、排気管2の上流側部分4→第1コーン部11→プラズマリアクタ1→第2コーン部12→排気管2の下流側部分5の順番に排ガスが流れる排ガス流路内の抵抗が低減されるため、排ガス流路内における圧力損失を抑えることができる。ひいては、圧力損失に伴うエンジンの出力低下も防止することができる。
[第2実施形態]
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に基づいて説明する。ここでは、前記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。本実施形態では、セラミックパネル積層体の構成が前記第1実施形態とは異なっている。
詳述すると、図9,図10に示されるセラミックパネル積層体120において、電極パネル121(セラミックパネル)の第1端部122に設けられた第1突条123は、外側面124が電極パネル121の第1端面125よりも2mmだけ内側となるように配置されている。一方、電極パネル121の第2端部126に設けられた第2突条127は、外側面128が電極パネル121の第2端面129よりも2mmだけ内側となるように配置されている。
また、セラミックパネル積層体120には、各電極パネル121を互いに固定保持する無機接着材層130,131が形成されている。各無機接着材層130,131は、上層側の電極パネル121の第2主面132と、下層側の電極パネル121の第1主面133との間に充填されている。詳述すると、第1無機接着材層130は、上層側の電極パネル121の第2主面132と、下層側の電極パネル121の第1主面133と、第1突条123の外側面124とによって囲まれた第1凹部134内に充填されている。なお、第1端面125は、第1無機接着材層130に覆われることなく露出している。即ち、第1端面125に形成されている第1無機接着材層130の厚さは、0mmであり、第1凹部134の深さD1(本実施形態では2mm)よりも小さくなっている。同様に、第2無機接着材層131は、上層側の電極パネル121の第2主面132と、下層側の電極パネル121の第1主面133と、第2突条127の外側面128とによって囲まれた第2凹部135内に充填されている。なお、第2端面129は、第2無機接着材層131に覆われることなく露出している。即ち、第2端面129に形成されている第2無機接着材層131の厚さは、0mmであり、第2凹部135の深さD2(本実施形態では2mm)よりも小さくなっている。
従って、本実施形態では、無機接着材層130,131が、上層側の電極パネル121の第2主面132と下層側の電極パネル121の第1主面133とに加えて、突条123,127の外側面124,128にも密着する。その結果、電極パネル121と無機接着材層130,131との接触面積がいっそう大きくなるため、各電極パネル121をより強固に固定保持することができる。また、凹部134,135にのみ無機接着材層130,131が形成され、電極パネル121の端面125,129は、無機接着材層130,131に覆われることなく露出している。この場合、隣接する電極パネル121間が、無機接着材層130,131によって固定されている訳ではないため、隣接する電極パネル121間の熱膨張差に起因する応力が生じたとしても、電極パネル121での割れ等の発生が抑制される。
次に、無機接着材の評価方法及びその結果を説明する。
まず、測定用サンプルを次のように準備した。上記各実施形態の無機接着材とほぼ同じ無機接着材を準備し、これを実施例1とした。また、平均粒子径が2μmのアルミナ粉末(31wt%、固形分で53.4wt%)、平均繊維長が0.5mmのアルミナファイバー(7.7wt%、固形分で13.3wt%)、SiO/NaOモル比が3.1以上3.3以下の珪酸ナトリウム(32.1wt%、固形分で22.1wt%)、硬化補助材である酸化亜鉛(6.6wt%、固形分で11.3wt%)を、水(22.7wt%)を用いて混練してペースト状にすることにより、無機接着材を準備し、これを実施例2とした。さらに、平均粒子径が5μmのアルミナ粉末(23.3wt%、固形分で40.1wt%)、平均粒子径が5μmのシリカ粉末(7.7wt%、固形分で13.3wt%)、平均繊維長が0.5mmのアルミナファイバー(7.7wt%、固形分で13.3wt%)、SiO/NaOモル比が3.1以上3.3以下の珪酸ナトリウム(32.1wt%、固形分で22.1wt%)、硬化補助材である酸化亜鉛(6.6wt%、固形分で11.3wt%)を、水(22.7wt%)を用いて混練してペースト状にすることにより、無機接着材を準備し、これを実施例3とした。また、平均粒子径が2μmのアルミナ粉末(18.8wt%、固形分で30.4wt%)、平均粒子径が2μmのシリカ粉末(6.2wt%、固形分で10.1wt%)、平均繊維長が10μmのアルミナファイバー(6.2wt%、固形分で10.1wt%)、SiO/NaOモル比が3.1以上3.3以下の珪酸ナトリウム(63.4wt%、固形分で40.9wt%)、硬化補助材である酸化亜鉛(5.3wt%、固形分で8.6wt%)を混練してペースト状にすることにより、無機接着材を準備し、これを比較例とした。
次に、各測定用サンプル(実施例1~3、比較例)の引張強度及びヤング率を測定した。詳述すると、2枚のアルミナパネル(長さ40mm×幅40mm×厚さ2mm)を、隙間を有するように並べて配置し、隙間に対して、無機接着材(測定用サンプル)を長さ20mm×幅10mm×厚さ1mmの範囲に塗布した。次に、塗布した無機接着材を、乾燥、焼成させることにより、アルミナパネルを繋ぎ合わせてなるテストピースを得た。そして、テストピースを構成する2枚のアルミナパネルを互いに逆方向に引っ張ることにより、引張強度及びヤング率を測定した。以上の結果を表1に示す。
さらに、各測定用サンプルの無機接着材中に気泡があるか否かを確認した。まず、10枚のアルミナパネル(長さ70mm×幅10mm×厚さ0.5mm)を、幅方向に交互に2mmずつずらしながら積層することにより、セラミックパネル積層体を形成した。次に、セラミックパネル積層体の側面(長さ70mm)に対して無機接着材(測定用サンプル)を塗布した。具体的には、アルミナパネルを幅方向にずらしながら積層することによって生じた凹み部分(長さ70mm×深さ2mm×高さ0.5mm)に対して、無機接着材を注入した。そして、塗布した無機接着材を、乾燥、焼成させた後、無機接着材中の気泡の有無を確認した。以上の結果を表1に示す。
Figure 0007049777000001
その結果、実施例1~3の無機接着材は、比較例の無機接着材と比較して、気泡が発生せず、引張強度が高いことが確認された。即ち、実施例1~3の無機接着材を用いてアルミナパネルを固定保持すれば、十分な保持力が得られることが確認された。また、実施例1~3は、比較例よりもヤング率が低いことが確認された。その結果、実施例1~3の無機接着材は、比較例の無機接着材よりもセラミックパネル積層体の応力緩和に対して優位に働くことが確認された。
なお、上記各実施形態を以下のように変更してもよい。
・上記第2実施形態のセラミックパネル積層体120では、無機接着材層130,131が凹部134,135内に充填されており、端面125,129が、無機接着材層130,131に覆われることなく露出していた。しかし、図11,図12のセラミックパネル積層体140に示されるように、無機接着材層141は、凹部142内に充填されるとともに、一対の端面143を覆うように形成されていてもよい。なお、端面143に形成されている無機接着材層141の厚さT1は、凹部142の深さD3よりも小さいことが好ましい。このようにすれば、隣接する電極パネル121間の熱膨張差に起因する応力が生じた際に、凹部142に充填されている無機接着材層141に殆どの応力が集中するため、端面143に形成されている無機接着材層141には、応力が集中しにくくなる。その結果、隣接する電極パネル121間に応力が作用することに起因する、電極パネル121での割れ等の発生を防止することができる。
・上記第2実施形態のセラミックパネル積層体120では、突条123,127を一対の端面125,129よりも内側に配置することにより、凹部134,135を形成していた。しかし、図13のセラミックパネル積層体150に示されるように、電極パネル151(セラミックパネル)を幅方向に交互にずらしながら積層することによって凹部152を形成し、凹部152内に無機接着材層153を充填してもよい。
・上記各実施形態では、無機接着材層111,112,130,131とクランプ61,62との両方を用いて、電極パネル30,121及び外層パネル50を互いに固定保持していた。このようにすれば、各パネル30,50,121をより確実に保持することができる。しかしながら、クランプ61,62を用いる場合には、押さえ板64が、いわゆる「点当り」に近い状態でセラミックパネル積層体20,120に圧接するため、セラミックパネル積層体20,120の最外層に位置するパネル(外層パネル50)に応力集中が生じ、外層パネル50に割れ等が生じることがある。
そこで、上記各実施形態において、クランプ61,62を省略するようにしてもよい。このようにすれば、外層パネル50での割れ等の発生が防止されるため、プラズマリアクタ1の信頼性を向上させることができる。また、クランプ61,62を省略した場合であっても、無機接着材層111,112,130,131を用いて各パネル30,50,121を確実に固定保持することができる。
・上記各実施形態では、無機接着材層111,112,130,131の一部が、上流側端面21においてガス流路27の開口部28(図4参照)を囲む領域A1(図5参照)に形成されていた。しかし、無機接着材層111,112,130,131は、領域A1にではなく、下流側端面22においてガス流路27の開口部を囲む領域A2(図5参照)に形成されていてもよい。また、無機接着材層111,112,130,131は、領域A1と領域A2との両方に形成されていてもよい。
・上記第1実施形態では、第1無機接着材層111が、セラミックパネル積層体20のガス非通過面24全体を覆うように形成されるとともに、第2無機接着材層112が、セラミックパネル積層体20のガス非通過面26全体を覆うように形成されていた。しかし、無機接着材層は、ガス非通過面の一部を覆うように形成されていてもよい。例えば、図14に示されるように、無機接着材層161は、セラミックパネル積層体160のガス非通過面162の上流側端部(上流側端面163側の端部)と下流側端部(下流側端面164側の端部)とを覆うように形成されていてもよい。また、無機接着材層171は、セラミックパネル積層体170のガス非通過面172の上流側端部のみを覆うように形成されていてもよいし(図15参照)、ガス非通過面172の下流側端部のみを覆うように形成されていてもよいし(図16参照)、ガス非通過面172の中央部(上流側端部と下流側端部との間の領域)のみを覆うように形成されていてもよい(図17参照)。
・上記各実施形態のセラミックパネル積層体20,120では、突条92,102,123,127が電極パネル30,121と一体になっていたが、突条92,102,123,127は、電極パネル30,121とは別体になっていてもよい。
・上記各実施形態の電極パネル30,121では、突条92,102,123,127が第2主面32,132側に突出していた。しかし、突条92,102,123,127は、第1主面31,133側に突出していてもよいし、第1主面31,133側及び第2主面32,132側の両方に突出していてもよい。
・上記各実施形態のセラミックパネル積層体20,120は、複数の電極パネル30,121と一対の外層パネル50とを積層した構造を有していた。しかし、セラミックパネル積層体は、一対の外層パネル50を有しない積層体であってもよい。
・上記各実施形態の電極パネル30,121は、誘電体33に放電電極34を内蔵することによって構成されていた。しかし、誘電体33の表面に放電電極34を形成することによって電極パネルを構成してもよい。
・上記各実施形態のプラズマリアクタ1は、自動車のエンジンの排ガス浄化に用いられていたが、例えば、船舶等のエンジンの排ガス浄化に用いてもよい。また、プラズマリアクタ1は、プラズマ処理を行うものであればよく、排ガスの処理を行うものでなくてもよいし、浄化に用いるものでなくてもよい。
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
(1)上記手段1において、前記プラズマリアクタは、前記複数のセラミックパネルを外側から挟み込んで固定するクランプを有しないことを特徴とするプラズマリアクタ。
(2)上記手段1において、前記セラミックパネル積層体は略直方体状を成すことを特徴とするプラズマリアクタ。
(3)上記手段1において、前記セラミックパネルは、第1主面及び第2主面を有しており、前記セラミックパネルに、前記第1主面側と前記第2主面側とを導通させる導通構造が設けられることを特徴とするプラズマリアクタ。
(4)上記手段1において、前記無機接着材層は珪酸ナトリウムを含有しており、珪酸ナトリウムのSiO/NaOモル比は、2以上4以下、好ましくは3.1以上3.3以下であることを特徴とするプラズマリアクタ。仮に、SiO/NaOモル比が2未満になると、化学的に安定した無機接着材を得ることができない。一方、SiO/NaOモル比が4よりも大きくなると、乾燥、焼成時に気泡が生じる虞がある。
1…プラズマリアクタ
20,120,140,150,160,170…セラミックパネル積層体
21,163…上流側端面
22,164…下流側端面
27…ガス流路
28…開口部
30,121,151…セラミックパネルとしての電極パネル
31,133…主面としての第1主面
32,132…主面としての第2主面
34…放電電極
37,125…端面としての第1端面
38,129…端面としての第2端面
91,122…端部としての第1端部
94,104…内側面
101,126…端部としての第2端部
111,130…無機接着材層としての第1無機接着材層
112,131…無機接着材層としての第2無機接着材層
123…突条としての第1突条
124,128…外側面
127…突条としての第2突条
134…凹部としての第1凹部
135…凹部としての第2凹部
141,153,161,171…無機接着材層
142…凹部
143…端面
162,172…ガス非通過面
A1…上流側端面においてガス流路の開口部を囲む領域
A2…下流側端面においてガス流路の開口部を囲む領域
D1…第1凹部の深さ
D2…第2凹部の深さ
D3…凹部の深さ
T1…無機接着材層の厚さ

Claims (11)

  1. 放電電極を有する複数のセラミックパネルを積層した構造を有し、隣接する前記セラミックパネル間に形成されたガス流路にガスを流して電圧を印加することによりプラズマを発生させるセラミックパネル積層体を備えるプラズマリアクタであって、
    前記セラミックパネル積層体は、前記ガス流路の上流側に位置する上流側端面と、前記ガス流路の下流側に位置する下流側端面とを有し、
    前記セラミックパネルは、厚さ方向において互いに反対側に位置する一対の主面と、面方向において前記ガス流路を挟んで互いに反対側に位置する一対の端面と、面方向において前記ガス流路を挟んで互いに反対側に位置する一対の端部とを有し、前記一対の端部にそれぞれ設けられた突条を介して、隣接する前記セラミックパネルに対して積層されており、
    前記突条は、前記セラミックパネルにおいて前記一対の端面よりも内側に配置され、かつ前記ガス流路に沿って延びており、隣接する前記突条に対向する内側面と、前記突条の幅方向において前記内側面の反対側に位置する外側面とを有し、
    前記複数のセラミックパネルは、前記一対の端部に形成された無機接着材層を介して互いに固定保持され、
    前記無機接着材層の少なくとも一部は、上層側の前記セラミックパネルの前記主面と、下層側の前記セラミックパネルの前記主面と、前記突条の前記外側面とによって囲まれた凹部内に充填され
    前記無機接着材層は、前記上流側端面において前記ガス流路の開口部を囲む領域に形成されている
    ことを特徴とするプラズマリアクタ。
  2. 放電電極を有する複数のセラミックパネルを積層した構造を有し、隣接する前記セラミックパネル間に形成されたガス流路にガスを流して電圧を印加することによりプラズマを発生させるセラミックパネル積層体を備えるプラズマリアクタであって、
    前記セラミックパネル積層体は、前記ガス流路の上流側に位置する上流側端面と、前記ガス流路の下流側に位置する下流側端面と、前記上流側端面及び前記下流側端面の間に位置する複数のガス非通過面とを有し、
    前記セラミックパネルは、厚さ方向において互いに反対側に位置する一対の主面と、面方向において前記ガス流路を挟んで互いに反対側に位置する一対の端面と、面方向において前記ガス流路を挟んで互いに反対側に位置する一対の端部とを有し、前記一対の端部にそれぞれ設けられた突条を介して、隣接する前記セラミックパネルに対して積層されており、
    前記突条は、前記セラミックパネルにおいて前記一対の端面よりも内側に配置され、かつ前記ガス流路に沿って延びており、隣接する前記突条に対向する内側面と、前記突条の幅方向において前記内側面の反対側に位置する外側面とを有し、
    前記複数のセラミックパネルは、前記一対の端部に形成された無機接着材層を介して互いに固定保持され、
    前記無機接着材層の少なくとも一部は、上層側の前記セラミックパネルの前記主面と、下層側の前記セラミックパネルの前記主面と、前記突条の前記外側面とによって囲まれた凹部内に充填され、
    前記無機接着材層は、前記ガス非通過面の一部を覆うように形成されている
    ことを特徴とするプラズマリアクタ。
  3. 前記端面に形成されている前記無機接着材層の厚さは、前記凹部の深さよりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載のプラズマリアクタ。
  4. 前記端面は、前記無機接着材層に覆われることなく露出していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマリアクタ。
  5. 前記無機接着材層は、前記一対の端面を覆うように形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプラズマリアクタ。
  6. 記無機接着材層は、前記下流側端面において前記ガス流路の開口部を囲む領域に形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプラズマリアクタ。
  7. 前記無機接着材層の形成材料は、無機粉末、無機繊維及び無機バインダーの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のプラズマリアクタ。
  8. 前記無機粉末の粒子径は、0.01μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項に記載のプラズマリアクタ。
  9. 前記無機繊維の繊維長は、0.1mm以上10mm以下であることを特徴とする請求項またはに記載のプラズマリアクタ。
  10. 前記無機粉末は、アルミナ、シリカ、ジルコニア及びムライトから選択される少なくとも1種以上のセラミック粒子からなり、前記無機繊維は、アルミナ、シリカ及びムライトから選択される少なくとも1種以上のセラミックファイバーからなり、前記無機バインダーは、珪酸ナトリウム、珪酸リチウム、珪酸カリウムから選択される少なくとも1種以上の珪酸アルカリからなることを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載のプラズマリアクタ。
  11. 前記無機接着材層は、固形分で20wt%以上70wt%以下のアルミナ粉末を含有し、固形分で0wt%以上30wt%以下のシリカ粉末を含有し、固形分で5wt%以上30wt%以下のアルミナファイバーを含有し、固形分で10wt%以上40wt%以下の珪酸ナトリウムを含有することを特徴とする請求項乃至1のいずれか1項に記載のプラズマリアクタ。
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