JP7049389B2 - 上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体を有効成分として含む、癌の転移を抑制するための医薬組成物 - Google Patents

上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体を有効成分として含む、癌の転移を抑制するための医薬組成物 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体を有効成分として含む、癌の転移を抑制するための医薬組成物、および該組成物を用いる癌の転移を抑制する方法に関する。
背景技術
ある組織に癌が生じ、それが別の組織に移動し増殖する場合、それは転移と呼ばれる。転移が起こると、治療が効果的でないばかりではなく、再発の可能性も高まる。癌転移のプロセスは、遊走、接着、浸潤等のステップを含み、いずれか1つのステップを阻止すれば癌転移を阻止することができる。
上皮成長因子受容体(EGFR)は、170kDの1型膜タンパク質で、さまざまなタイプの腫瘍において過剰発現される。EGFRは、リガンドであるEGF(上皮成長因子)およびTGF-α(腫瘍増殖因子-α)の結合により、腫瘍細胞の増殖を導くよう活性化されることが報告されている。したがって、EGFRは、腫瘍増殖抑制のための標的として研究されている。
しかしながら、EGFRを標的とすることができる抗体を癌転移抑制のために使用できるかどうかは判っていない。そこで本発明者は、EGFRを標的とする抗体が胃癌細胞系の浸潤を抑制することを確認し、本発明に至った。
技術的課題
本発明の目的は、上皮成長因子受容体に特異的に結合する抗体を有効成分として含む、癌の転移を抑制するための医薬組成物、および該組成物を用いる癌の転移を抑制する方法を提供することである。
課題の解決手段
本発明の上記目的を達成するために、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合する抗体を有効成分として含む、癌の転移を抑制するための医薬組成物において、抗体が、a)配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域、重鎖定常領域、ならびに軽鎖定常領域、またはb)配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号9、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域、重鎖定常領域、ならびに軽鎖定常領域を含む、組成物を提供する。
本発明はまた、本発明の組成物を投与することを含む、癌の転移を抑制する方法を提供する。
本発明はまた、癌の転移を抑制するための医薬の製造における本発明の組成物の使用を提供する。
発明の有利な効果
本発明の、癌の転移を抑制するための組成物、または癌の転移を抑制する方法は、EGFRリガンドにより誘発されるさまざまな胃癌細胞系の遊走および浸潤を抑制するのに有効である。したがって、本発明の組成物または方法は、癌転移の抑制のために効果的に用いることができる。
図1は、NCI-N87細胞系に加えたHB-EGFの濃度に依存する、細胞遊走の程度を示すグラフである。 図2は、NCI-N87細胞系に加えたTGF-αの濃度に依存する、細胞遊走の程度を示すグラフである。 図3は、NCI-N87細胞系に加えたAREGの濃度に依存する、細胞遊走の程度を示すグラフである。 図4は、HB-EGFで細胞遊走を誘導したNCI-N87細胞系に加えたGC1118の濃度に依存する、細胞遊走の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図5は、TGF-αで細胞遊走を誘導したNCI-N87細胞系に加えたGC1118の濃度に依存する、細胞遊走の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図6は、AREGで細胞遊走を誘導したNCI-N87細胞系に加えたGC1118の濃度に依存する、細胞遊走の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図7は、NCI-N87細胞系にさまざまなEGFR抗体またはHER2抗体を加えた場合の細胞遊走の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図8は、AGS細胞系に加えたHB-EGF、TGF-αまたはAREGの濃度に依存する、細胞遊走の程度を示すグラフである。 図9は、HB-EGFで細胞遊走を誘導したAGS細胞系に加えたGC1118の濃度に依存する、細胞遊走の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図10は、AREGで細胞遊走を誘導したAGS細胞系に加えたGC1118の濃度に依存する、細胞遊走の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図11は、AGS細胞系にさまざまなEGFR抗体またはHER2抗体を加えた場合の細胞遊走の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図12は、NUGC3細胞系に加えたHB-EGFの濃度に依存する、細胞遊走の程度を示すグラフである。 図13は、NUGC3細胞系に加えたTGF-αの濃度に依存する、細胞遊走の程度を示すグラフである。 図14は、NUGC3細胞系に加えたAREGの濃度に依存する、細胞遊走の程度を示すグラフである。 図15は、HB-EGFで細胞遊走を誘導したNUGC3細胞系にさまざまなEGFR抗体またはHER2抗体を加えた場合の細胞遊走の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図16は、TGF-αで細胞遊走を誘導したNUGC3細胞系にさまざまなEGFR抗体またはHER2抗体を加えた場合の細胞遊走の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図17は、AREGで細胞遊走を誘導したNUGC3細胞系にさまざまなEGFR抗体またはHER2抗体を加えた場合の細胞遊走の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図18は、AGS細胞系に加えたHB-EGFの濃度に依存する、細胞浸潤の程度を示すグラフである。 図19は、AGS細胞系に加えたTGF-αの濃度に依存する、細胞浸潤の程度を示すグラフである。 図20は、HB-EGFにより浸潤を誘導したAGS細胞系にさまざまなEGFR抗体またはHER2抗体を加えた場合の細胞浸潤の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図21は、TGF-αにより浸潤を誘導したAGS細胞系にさまざまなEGFR抗体またはHER2抗体を加えた場合の細胞浸潤の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図22は、AREGにより浸潤を誘導したAGS細胞系にさまざまなEGFR抗体またはHER2抗体を加えた場合の細胞浸潤の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図23は、NUGC3細胞系に加えたHB-EGFの濃度に依存する、細胞浸潤の程度を示すグラフである。 図24は、NUGC3細胞系に加えたTGF-αの濃度に依存する、細胞浸潤の程度を示すグラフである。 図25は、NUGC3細胞系に加えたAREGの濃度に依存する、細胞浸潤の程度を示すグラフである。 図26は、HB-EGFにより浸潤を誘導したNUGC3細胞系にさまざまなEGFR抗体またはHER2抗体を加えた場合の細胞浸潤の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図27は、TGF-αにより浸潤を誘導したNUGC3細胞系にさまざまなEGFR抗体またはHER2抗体を加えた場合の細胞浸潤の程度を、対照群と比較して示すグラフである。 図28は、AREGにより浸潤を誘導したNUGC3細胞系にさまざまなEGFR抗体またはHER2抗体を加えた場合の細胞浸潤の程度を、対照群と比較して示すグラフである。
本発明を実施するための最良の形態
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合する抗体を有効成分として含む、癌の転移を抑制するための医薬組成物において、抗体が、a)配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域、重鎖定常領域、ならびに軽鎖定常領域、またはb)配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号9、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域、重鎖定常領域、ならびに軽鎖定常領域を含む、組成物を提供する。
特に、本発明の抗体は、a)配列番号7のアミノ酸配列で表される重鎖可変領域、配列番号8のアミノ酸配列で表される軽鎖可変領域、重鎖定常領域、および軽鎖定常領域、またはb)配列番号7のアミノ酸配列で表される重鎖可変領域、配列番号10のアミノ酸配列で表される軽鎖可変領域、重鎖定常領域、および軽鎖定常領域を含みうる。重鎖定常領域および軽鎖定常領域は、既知のヒト抗体の重鎖定常領域または軽鎖定常領域でありうる。特に、重鎖定常領域および軽鎖定常領域は、配列番号11および配列番号12でそれぞれ示されるアミノ酸配列を有しうる。
本発明において、用語「癌の転移」は、癌細胞が原発臓器から他の臓器に移動し増殖することを意味する。他の身体部位への癌細胞の移動は、周囲の臓器に直接浸潤する、原発癌における癌組織の増殖、および血管またはリンパ管に沿った、他の遠隔臓器への癌の転移を包含する。
本発明の組成物は、癌転移を抑制するために使用することができる。ここで、転移は、EGFRリガンドによって誘発または促進されるものでありうる。EGFRリガンドは、HB-EGF(ヘパリン結合性EGF様増殖因子)、TGF-α(トランスフォーミング増殖因子-α)、AREG(アンフィレグリン)またはそれらの組み合わせでありうる。癌は、固形癌であり得、これには肺癌、乳癌、大腸癌、胃癌、脳腫瘍、膀胱癌、頭頸部癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌等が含まれうる。癌は特に胃癌でありうる。
本発明の組成物は癌転移を効果的に抑制するので、本発明の組成物は、癌転移を抑制する効果を有することが知られている薬剤を1つまたはそれ以上さらに含みうる。
本発明の医薬組成物は、本発明の抗体に加え、薬学的に許容しうる担体をさらに含みうる。
本発明の医薬組成物に含まれる薬学的に許容しうる担体は、その処方において通常用いられる。担体の例は、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、珪酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油等を含むが、それらに限定されない。
本発明の医薬組成物は、賦形剤、滑沢剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤および保存剤からなる群から選択される薬学的に許容しうる添加剤1つまたはそれ以上をさらに含みうる。本発明の組成物は、従来の方法にしたがって調製しうる。特に、本発明の組成物は、哺乳動物への投与後に、速やかな、持続的な、または遅延された活性成分放出を提供するように、既知の方法を選択して調製しうる。ここで、製剤は、油性もしくは水性媒体中の、溶液、懸濁液、シロップもしくはエマルジョンの形態、またはエキス、粉末、顆粒、錠剤もしくはカプセル剤の形態でありうる。分散剤または安定剤をさらに加えてもよい。また、本発明の組成物は、単独の処置剤として、または他の処置剤と組み合わせて、投与することができ、また、従来の処置剤と連続して、または同時に、投与することができる。
担体は、本発明の医薬組成物の総重量の約1重量%~約90重量%、または約80重量%~約89.99重量%を占めることができ、薬学的に許容しうる添加剤は、本発明の医薬組成物の総重量の約0.1重量%~約20重量%を占めることができる。
本発明は、前記組成物を対象に投与するステップを含む、癌の転移を抑制する方法も提供する。
対象は、哺乳動物、特にヒトでありうる。本発明の抗体の投与経路および用量については、患者の状態および副作用に応じてさまざまな方法および量で対象に投与することができ、当業者は適当な投与方法および用量範囲を選択することができる。また、本発明の抗体は、他の薬物または生理学的活性物質(処置する疾患に対し処置効果を有することが知られるもの)と組み合わせて投与することができ、またはコンビネーション医薬の形態に調製することができる。
本発明の抗体を非経口的(腸管外)に投与する場合、その例には、皮下投与、腹腔内投与、筋肉内投与、経口投与、直腸投与、脊椎内投与、くも膜下投与、静脈内投与が含まれる。
上記の投与は、2週間に1回またはそれ以上、特に2週間に1回または2回の分割用量で行いうる。特に、投与は1週間に1回、または2週間に1回行いうる。ここで、1週間に1回投与する場合、用量は1~6mg/kg体重、または3~5mg/kg体重でありうる。2週間に1回投与する場合、用量は3~15mg/kg体重、5~12mg/kg体重、6~10mg/kg体重、または7~9mg/kg体重でありうる。
本発明は、癌の転移を抑制するための医薬の製造における、前記医薬組成物の使用も提供する。
本発明の組成物は、EGFRリガンドにより促進される癌の遊走および浸潤を抑制することにより癌の転移を抑制する医薬を製造するために使用することができる。癌は、固形癌であり、これには肺癌、乳癌、大腸癌、胃癌、脳腫瘍、膀胱癌、頭頸部癌、卵巣癌、前立腺癌、結腸直腸癌等を包含しうる。癌は特に胃癌でありうる。
本発明の態様
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を、その範囲を限定することなくさらに説明することを意図したものである。
実施例1.抗EGFR抗体のスクリーニングおよび調製
EGFRに特異的に結合する抗体のスクリーニングのために、抗体遺伝子ライブラリを構築した。そのために、ヒト骨髄RNA、ヒト胸腺RNA、ヒト脾臓RNAおよびヒトB細胞RNAを混合した。該RNA遺伝子ライブラリから単離したRNA遺伝子をテンプレートとしてcDNAを合成し、次いで、そのcDNAをテンプレートとし、scFv領域、重鎖可変領域および軽鎖可変領域用にそれぞれ設計されたプライマーを用いて、抗体DNAを合成した。合成した抗体DNAをファージディスプレイベクターpKS4H(韓国Green Crossの韓国特許番号10-0635370参照)に導入して、抗体DNAライブラリを調製した。該抗体DNAライブラリを用いてパニング技術によってEGFRに結合する抗体を選択した。パニングは4回行い、最終的に選択したDNAライブラリを含むコロニーからの抗体の発現を誘導した。ここで、抗体の発現は、EGFRコーティングした96ウェルプレートを用いてELISAによって測定した。
選択した抗体フラグメントを用いて完全な形態の免疫グロブリンを構成するために、Green Cross Inc.の抗体発現ベクターであるpRC13およびpKC12(B型肝炎ウイルス表面抗原に対するヒト抗体の可変領域を挿入することができる抗体発現プラスミド、韓国特許番号10-523732;寄託番号KCLRF-BP-00054)を用いた。抗体フラグメントをベクターに挿入し、CHO細胞に導入し、完全な形態の免疫グロブリンとして発現させ、発現した抗体を、プロテインA-アガロースカラム(米国Amersham Pharmacia Biotech)によって精製した(抗体の選択および調製の具体的な方法は、韓国特許番号10-0092401に記載されている)。
選択し調製した抗体を、GC1118と名付けた。この抗体は、配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域、配列番号11のアミノ酸配列で表される重鎖定常領域、ならびに配列番号12のアミノ酸配列で表される軽鎖定常領域を含む。
I.抗EGFR抗体の胃癌細胞系遊走抑制効果の試験
試験実施例1:抗EGFR抗体投与のNCI-N87胃癌細胞系遊走抑制効果の試験
1-1.EGFRリガンドによるNCI-N87胃癌細胞系遊走の誘導
胃癌細胞系であるNCI-N87細胞系の癌細胞遊走がEGFRリガンドによって誘導される条件を確立するために、細胞遊走解析を行った。
最初に、NCI-N87細胞系(米国ATCC)を、10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを補充したRPMI1640培地中で、37℃および5%COの条件下に培養した。培養した細胞を、T175フラスコにその70%を占めるまで入れた。24時間後、細胞を1×PBSで洗い、培地を血清不含有RPMI1640培地と交換し、上記と同じ条件下に細胞を培養および調製した。
一方で、5μg/mlの1型コラーゲンを1×PBSで希釈し、希釈したコラーゲン250μlをトランスウェルインサートに入れ、冷蔵庫内で24時間置いた。I型コラーゲンコーティングしたトランスウェルインサートを1×PBS 1mlで洗い、クリーンベンチ内で乾燥した。前記の調製したNCI-N87細胞系をトリプシン処理し、採取し、血清不含有培地に再懸濁し、トランスウェルインサート1個につき4×10個の細胞数で入れた。さらに、24ウェルプレートに血清不含有培地750μlを入れ、そこにEGFRリガンドを加え、その中にトランスウェルインサートを配置した。ここで、HB-EGF(ヘパリン結合性EGF様増殖因子、259-HE-250、米国R&D Systems)およびTGF-α(トランスフォーミング増殖因子-α、239-A-100、米国R&D Systems)を0、20、100または500ng/mlで加え、AREG(アンフィレグリン、262-AR、米国R&D Systems)を0、40、200または1000ng/mlで加えた。24ウェルプレートを上記と同じ条件下に6時間インキュベートし、次いで、遊走が誘導された細胞を特定するために染色した。
具体的には、24ウェルプレートの培地を除去し、1×PBS 700μlを入れ、トランスウェルインサートをそれに浸して洗った。1×PBSを除去し、4%パラホルムアルデヒド500μlを入れ、インサートを15分間浸すことによって細胞を固定した。パラホルムアルデヒドを除去し、同量の1×PBSでインサートを再度洗った。0.1%クリスタルバイオレット溶液500μlを入れ、インサートを30分間浸して細胞を染色した。その後、蒸留水を500mlビーカーに入れ、インサートを洗った。洗ったインサートの内部に残存する細胞を綿棒で拭った。染色された細胞を10%酢酸溶液100μlで溶離し、ELISAプレートリーダーを用いて波長595nmでOD値を測定した。リガンドとしてHB-EGF、TGF-αまたはAREGを加えた場合の測定されたOD値を図1~3にそれぞれ示す。
図1~3からわかるように、NCI-N87細胞系の遊走を誘導するために加えるべきHB-EGF、TGF-αおよびAREGリガンドの濃度はそれぞれ、20ng/ml、20ng/mlおよび500ng/mlと決定された。
1-2.HB-EGFにより遊走を誘導したNCI-N87胃癌細胞系における、GC1118抗体の遊走抑制効果の試験
NCI-N87細胞系を、細胞遊走誘導のために20ng/mlのHB-EGFで処理した。0.04μg/ml、0.2μg/ml、1μg/mlもしくは5μg/mlのGC1118、または比較例として0.04μg、0.2μg、1μgもしくは5μgのセツキシマブ(CTX;米国Merck)および5μg/mlのパニツムマブ(Pani;米国Amgen)を加えた。GC1118による癌細胞遊走抑制を、試験実施例1-1と同じ条件および方法で調べた。
遊走抑制効果について、HB-EGFのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の遊走細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を図4に示す。
図4に示されるように、GC1118およびセツキシマブはいずれも、濃度依存的に癌細胞遊走を抑制した。具体的には、0.04μg/mlで、セツキシマブは遊走を抑制しなかったが、GC1118は細胞遊走を20%抑制した。5μg/mlでは、セツキシマブおよびパニツムマブは癌細胞遊走を40%抑制したのに対し、GC1118は60%抑制した。
1-3.TGF-αにより遊走を誘導したNCI-N87胃癌細胞系における、GC1118抗体の遊走抑制効果の試験
HB-EGFの代わりに20ng/mlのTGF-αで細胞遊走を誘導し、比較例としてセツキシマブを加えたことを除いては、試験実施例1-2と同じ条件および方法で試験を行った。
遊走抑制効果について、TGF-αのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の遊走細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を図5に示す。
図5に示されるように、GC1118およびセツキシマブはいずれも、濃度依存的に癌細胞遊走を抑制した。具体的には、セツキシマブおよびGC1118は、0.04μg/mlでは遊走抑制効果を示さなかったが、5μg/mlでは効果を示した。
1-4.AREGにより遊走を誘導したNCI-N87胃癌細胞系における、GC1118抗体の遊走抑制効果の試験
HB-EGFの代わりに500ng/mlのAREGで細胞遊走を誘導したことを除いては、試験実施例1-2と同じ条件および方法で試験を行った。
遊走抑制効果について、AREGのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の遊走細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を図6に示す。
図6に示されるように、GC1118およびセツキシマブはいずれも、濃度依存的に癌細胞遊走を抑制した。具体的には、セツキシマブおよびGC1118は、0.04μg/mlでは遊走抑制効果を示さなかったが、0.2μg/mlまたはそれ以上では効果を示した。
1-5.GC1118および他のEGFR抗体の癌細胞遊走抑制効果の比較
癌細胞のEGFRまたはHER2を標的とするGC1118抗体および他の抗体の、癌細胞遊走抑制効果を比較した。
最初に、癌細胞の遊走を誘導するために、20ng/mlのHB-EGFもしくはTGF-α、または500ng/mlのAREGを加えた。そこに1μg/mlのセツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブ(Trast;米国Roche)またはGC1118を加え、対照として免疫グロブリンを用いた。それ以外は試験実施例1-1と同じ条件および方法で試験を行った。
遊走抑制効果について、EGFRリガンドのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の遊走細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を図7に示す。
図7に示されるように、EGFRを標的とする抗体であるセツキシマブ、パニツムマブおよびGC1118は細胞遊走を抑制したが、HER2を標的とする抗体トラスツズマブは効果をほとんど示さなかった。HB-EGFによって誘導された細胞遊走を抑制したのはGC1118のみであった。TGF-αまたはAREGによって誘導された細胞遊走に対する効果においては、EGFRを標的とする抗体の間に差はなかった。
試験実施例2.抗EGFR抗体のAGS胃癌細胞系遊走抑制効果の試験
2-1.EGFRリガンドによるAGS胃癌細胞系遊走の誘導
EGFRリガンドによりAGS細胞系(米国ATCC)の癌細胞遊走を誘導する条件を確立した。トランスウェルインサート1個につき3×10個の細胞を入れた以外は、試験実施例1-1と同じ条件および方法で試験を行った。リガンドとしてHB-EGF、TGF-αまたはAREGを加え、OD値を測定した結果を図8に示す。
図8からわかるように、AGS細胞系の遊走を誘導するために加えるべきHB-EGF、TGF-αおよびAREGリガンドの濃度はそれぞれ、20ng/ml、20ng/mlおよび500ng/mlと決定された。
2-2.HB-EGFにより遊走を誘導したAGS胃癌細胞系における、GC1118抗体の遊走抑制効果の試験
AGS細胞系を用いたことを除いては、試験実施例1-2と同じ条件および方法で試験を行った。遊走抑制効果について、HB-EGFのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の遊走細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を図9に示す。
図9に示されるように、GC1118はセツキシマブと比較して優れたAGS細胞系遊走抑制効果を示した。具体的には、セツキシマブは、0.04μg/mlで遊走抑制効果を示さず、5μg/mlでは癌細胞遊走を約40%抑制した。これに対し、GC1118は、0.04μg/mlおよび5μg/mlでそれぞれ、癌細胞遊走を40%および90%抑制した。
2-3.AREGにより遊走を誘導したAGS胃癌細胞系における、GC1118抗体の遊走抑制効果の試験
AGS胃癌細胞系を用い、細胞遊走を1000ng/mlのAREGで誘導したことを除いては、試験実施例1-4と同じ条件および方法で試験を行った。遊走抑制効果について、AREGを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の遊走細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を図10に示す。
図10に示されるように、GC1118およびセツキシマブはいずれも、癌細胞遊走を濃度依存的に抑制した。特に、いずれの抗体も、0.04μg/mlでさえ60%という、優れた癌細胞遊走効果を示した。
2-4.GC1118抗体および他のEGFR抗体の癌細胞遊走抑制効果の比較
セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブまたはGC1118を0.2μg/mlの濃度で加えたことを除いては、試験実施例1-5と同じ条件および方法で試験を行った。遊走抑制効果について、EGFRリガンドのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の遊走細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を図11に示す。
図11に示されるように、EGFRを標的とする抗体であるセツキシマブ、パニツムマブおよびGC1118は細胞遊走を抑制したが、HER2を標的とする抗体トラスツズマブは抑制効果を示さなかった。また、細胞染色の結果としては、GC1118は、セツキシマブまたはパニツムマブよりも遊走細胞数を低く抑えたが、そのOD値には、他の抗体の値との有意差はなかった。遊走した細胞の数が少な過ぎてOD値に有意差が出なかったものと考えられる。
試験実施例3:EGFRリガンドによるNUGC3胃癌細胞系遊走の抑制試験
3-1.EGFRリガンドによるNUGC3胃癌細胞系遊走の誘導
EGFRリガンドによりNUGC3細胞系(ATCC、米国)の癌細胞の遊走を誘導する条件を確立した。トランスウェルインサート1個につき2×10個の細胞を入れ、HB-EGFおよびTGF-αは0、0.4、2、10、50および250ng/mlで、AREGは0、1.6、8、40、200および1000ng/mlで加えた。それ以外は、試験実施例1-1と同じ条件および方法で試験を行った。リガンドとしてHB-EGF、TGF-αまたはAREG加え、OD値を測定した結果を図12に示す。
図12~14からわかるように、AGS細胞系の遊走を誘導するために加えるべきHB-EGF、TGF-αおよびAREGリガンドの濃度はそれぞれ、50ng/ml、50ng/mlおよび500ng/mlと決定された。
3-2.HB-EGFにより遊走を誘導したNUGC3胃癌細胞系におけるGC1118抗体の遊走抑制効果の比較
NUGC3細胞系において50ng/mlのHB-EGFで細胞遊走を誘導したことを除いては、試験実施例1-5と同じ条件および方法で試験を行った。遊走抑制効果について、EGFRリガンドのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の遊走細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を図15に示す。
図15に示されるように、セツキシマブ、パニツムマブおよびトラスツズマブは、HB-EGF誘導細胞遊走を抑制しなかったが、GC1118は細胞遊走を40%抑制した。
3-3.TGF-αにより誘導したNUGC3胃癌細胞遊走に対するGC1118抗体の遊走抑制効果の試験
HB-EGFの代わりに50ng/mlのTGF-αで細胞遊走を誘導したことを除いては、試験実施例3-2と同じ条件および方法で試験を行った。
遊走抑制効果について、EGFRリガンドのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の遊走細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を図16に示す。
図16に示されるように、セツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブおよびGC1118は、TGF-α誘導細胞遊走を抑制したが、トラスツズマブは細胞遊走を抑制しなかった。
3-4.AREGにより遊走を誘導したNUGC3胃癌細胞系におけるGC1118抗体の遊走抑制効果の比較
HB-EGFの代わりに500ng/mlのAREGで細胞遊走を誘導したことを除いては、試験実施例3-2と同じ条件および方法で試験を行った。
遊走抑制効果について、EGFRリガンドのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の遊走細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を図17に示す。
図17に示されるように、EGFRを標的とする抗体であるセツキシマブ、パニツムマブ、トラスツズマブおよびGC1118抗体は細胞遊走を抑制したが、HER2を標的とする抗体トラスツズマブは抑制効果を示さなかった。
II.抗EGFR抗体の胃癌細胞系転移抑制効果
試験実施例4.抗EGFR抗体投与のAGS胃癌細胞系転移抑制効果の試験
4-1.EGFRリガンドによるAGS癌細胞浸潤の誘導
胃癌細胞系であるAGS細胞系の癌細胞の浸潤がEGFRリガンドによって誘導される条件を確立するために、マトリゲルチャンバー解析を行った。
最初に、胃癌細胞系であるAGS細胞系を、10%ウシ胎仔血清、100U/mlペニシリンおよび100μg/mlストレプトマイシンを補充したRPMI1640培地中で、37℃および5%COの条件下に培養した。培養した細胞を、T175フラスコにその60%を占めるまで入れた。24時間後、細胞を1×PBSで洗い、血清不含有RPMI1640培地との交換を行い、上記と同じ条件下に細胞を培養した。
一方、マトリゲルチャンバー(カタログ番号354483、米国Corning)にウシ胎仔血清0.5mlを補充したRPMI1640培地(浸潤培地)を入れ、2時間再水和した後、培地を除去した。調製した細胞をトリプシン処理により採取し、0.1%ウシ血清アルブミンを補充した血清不含有培地に再懸濁した。24ウェルプレートに浸潤培地750μlを入れ、HB-EGFおよびTGF-αを10、20または50ng/mlで加えた。浸潤培地500μlを含む24ウェルプレート上にチャンバーを配置し、再懸濁細胞を、チャンバー1個につき細胞3×10個で入れた。細胞を前記と同じ条件下に24時間培養し、次いで、浸潤が誘導された細胞を特定するために染色した。
具体的には、24ウェルプレートの培地を除去し、1×PBS 500 μlを入れ、チャンバーを浸して洗った。1×PBSを除去し、24ウェルプレートに4%パラホルムアルデヒド500μlを入れ、10分間浸すことによって細胞を固定した。パラホルムアルデヒドを除去し、0.1%クリスタルバイオレット溶液500μlを入れ、チャンバーを10分間浸して細胞を染色した。その後、蒸留水を500mlビーカーに入れ、チャンバーを洗った。洗ったチャンバーの内部の非浸潤細胞を綿棒で拭い、室温で1時間乾燥した。さらに、染色された細胞を10%酢酸溶液100μlで溶離し、ELISAプレートリーダーを用いて波長595nmでOD値を測定した。リガンドとしてHB-EGFおよびTGF-αを加えた場合の測定されたOD値を、図18および図19にそれぞれ示す。
図18および図19に示されるように、AGS細胞系の浸潤がHB-EGFおよびTGF-αにより誘導された。HB-EGFを10、20および50ng/mlで加えた場合は、浸潤がそれぞれ、対照と比較して4.1倍、4.5倍および3.9倍増加した。同じ濃度でTGF-αを加えた場合は、浸潤がそれぞれ、対照と比較して1.8倍、1.8倍および1.9倍増加した。
4-2.HB-EGFにより浸潤を誘導したAGS胃癌細胞系における、GC1118抗体の浸潤抑制効果の試験
20ng/mlのHB-EGFで浸潤を誘導したことを除いては、試験実施例4-1と同じ条件および方法で試験を行った。試験群には1μg/mlのGC1118を加え、比較例としては1μg/mlのセツキシマブ、1μg/mlのパニツムマブ、および1μg/mlのトラスツズマブを用いた。試験を2セットで3回繰り返し、平均値を示した。
浸潤抑制効果について、HB-EGFのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の浸潤細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を表1および図20に示す。
Figure 0007049389000001
表1および図20に示されるように、HB-EGFにより誘導したAGS細胞系の浸潤に対し、GC1118は優れた抑制効果を示した。具体的には、セツキシマブ、パニツムマブおよびトラスツズマブは細胞浸潤をそれぞれ6%、4.7%および10.5%抑制したのに対し、GC1118は50.4%抑制した。
4-3.TGF-αにより浸潤を誘導したAGS胃癌細胞系における、GC1118抗体の浸潤抑制効果の試験
HB-EGFの代わりに20ng/mlのTGF-αで浸潤を誘導したことを除いては、試験実施例4-2と同じ条件および方法で試験を行った。
浸潤抑制効果について、TGF-αのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の浸潤細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を表2および図21に示す。
Figure 0007049389000002
表2および図21に示されるように、TGF-αにより誘導したAGS細胞系の浸潤に対し、GC1118は優れた抑制効果を示した。具体的には、セツキシマブおよびトラスツズマブは細胞浸潤をそれぞれ35%および6.1%抑制したのに対し、GC1118は、パニツムマブ(54.1%抑制した)と同等に55.9%抑制した。
4-4.AREGにより浸潤を誘導したAGS胃癌細胞系における、GC1118抗体の浸潤抑制効果の試験
HB-EGFの代わりに1000ng/mlのAREGで浸潤を誘導し、試験を2セットで2回繰り返したことを除いては、試験実施例4-2と同じ条件および方法で試験を行った。
浸潤抑制効果について、AREGのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の浸潤細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を表3および図22に示す。
Figure 0007049389000003
表3および図22に示されるように、AREGにより誘導したAGS細胞系の浸潤に対し、GC1118は優れた抑制効果を示した。具体的には、GC1118は細胞浸潤を44.6%抑制し、これは、対照群セツキシマブ(42%)またはパニツムマブ(42.8%)の抑制レベルと同等であった。
試験実施例5.抗EGFR抗体投与のNUGC3胃癌細胞系転移抑制効果の試験
5-1.EGFRリガンドによるNUGC3癌細胞浸潤の誘導
胃癌細胞系であるNUGC3細胞系の癌細胞の浸潤がEGFRリガンドによって誘導される条件を確立するために、マトリゲルチャンバー解析を行った。浸潤誘導のために、EGFRリガンドであるHB-EGFおよびTGF-αを10、20または50ng/mlで、AREGを40、200または500ng/mlで加えた。それ以外は試験実施例4-1と同じ条件および方法で試験を行った。リガンドとしてHB-EGF、TGF-αおよびAREGを加えた場合の測定されたOD値を図23~25にそれぞれ示す。
図23~25に示されるように、NUGC3細胞系の浸潤がHB-EGF、TGF-αまたはAREGリガンドにより誘導された。具体的には、細胞を10、20および50ng/mlのHB-EGFで処理した場合は、細胞浸潤がそれぞれ2.3倍、3.5倍および4.8倍増加し、細胞を10、20および50ng/mlのTGF-αで処理した場合は、細胞浸潤がそれぞれ1.7倍、1.9倍および1.9倍増加した。40、200および500ng/mlのAREGで処理した場合は、細胞浸潤がそれぞれ1.2倍、1.3倍および1.5倍増加した。
5-2.HB-EGFにより浸潤を誘導したNUGC3胃癌細胞系における、GC1118抗体の浸潤抑制効果の試験
NUGC3細胞系を50ng/mlのHB-EGFで処理することにより浸潤を誘導したことを除いては、試験実施例4-2と同じ条件および方法で試験を行った。
浸潤抑制効果について、HB-EGFのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の浸潤細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を表4および図26に示す。
Figure 0007049389000004
表4および図26に示されるように、HB-EGFにより誘導したNUGC3細胞系の浸潤に対し、GC1118は優れた抑制効果を示した。具体的には、セツキシマブ、パニツムマブおよびトラスツズマブは細胞浸潤をそれぞれ9.4%、8.1%および11.3%抑制したのに対し、GC1118は60.8%抑制した。すなわち、HB-EGFにより誘導したNUGC3細胞系の細胞浸潤の抑制効果は、GC1118において顕著であった。
5-3.TGF-αにより浸潤を誘導したNUGC3胃癌細胞系における、GC1118抗体の浸潤抑制効果の試験
HB-EGFの代わりに50ng/mlの濃度のTGF-αを加えて処理したことを除いては、GC1118による癌細胞浸潤抑制を試験実施例5-2と同じ方法で試験した。
浸潤抑制効果について、TGF-αのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の浸潤細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を表5および図27に示す。
Figure 0007049389000005
表5および図27に示されるように、TGF-αにより誘導したNUGC3細胞系の浸潤に対し、GC1118は優れた抑制効果を示した。具体的には、GC1118は細胞浸潤を67.5%抑制し、これは対照群セツキシマブ(63.5%)またはパニツムマブ(65.7%)の抑制レベルと同等であった。
5-4.AREGにより浸潤を誘導したNUGC3胃癌細胞系における、GC1118抗体の浸潤抑制効果の試験
HB-EGFの代わりに500ng/mlの濃度のAREGを加えて処理したことを除いては、GC1118による癌細胞浸潤抑制を試験実施例4-4と同じ方法で試験した。
浸潤抑制効果を調べるために、AREGのみを加えた場合に対する、各抗体で処理した場合の浸潤細胞の比をOD値のパーセンテージとして計算した。結果を表6および図28に示す。
Figure 0007049389000006
表6および図28に示されるように、AREGにより誘導したNUGC3細胞系の浸潤に対し、GC1118は優れた抑制効果を示した。具体的には、GC1118は細胞浸潤を45.2%抑制し、これは対照群セツキシマブ(41.8%)またはパニツムマブ(43.5%)の抑制レベルと同等であった。

Claims (7)

  1. 上皮成長因子受容体(EGFR)に特異的に結合する抗体を有効成分として含む、結腸直腸癌の転移を抑制するための医薬組成物において、抗体が、
    a)配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域、重鎖定常領域、ならびに軽鎖定常領域;または
    b)配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号9、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域、重鎖定常領域、ならびに軽鎖定常領域
    を含む、組成物。
  2. 抗体が、
    a)配列番号7のアミノ酸配列で表される重鎖可変領域、配列番号8のアミノ酸配列で表される軽鎖可変領域、重鎖定常領域、および軽鎖定常領域;または
    b)配列番号7のアミノ酸配列で表される重鎖可変領域、配列番号10のアミノ酸配列で表される軽鎖可変領域、重鎖定常領域、および軽鎖定常領域
    を含む、請求項1に記載の組成物。
  3. 転移が、EGFRリガンドによって誘発または促進される、請求項1に記載の組成物。
  4. EGFRリガンドが、ヘパリン結合性EGF様増殖因子(HB-EGF)、トランスフォーミング増殖因子-α(TGF-α)、アンフィレグリン(AREG)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項に記載の組成物。
  5. 組成物が、薬学的に許容しうる担体、賦形剤、滑沢剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、保存剤、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
  6. 結腸直腸癌の転移を抑制するための医薬の製造における、EGFRに特異的に結合する抗体の使用において、抗体が、
    a)配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号4、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域、重鎖定常領域、ならびに軽鎖定常領域;または
    b)配列番号1、配列番号2および配列番号3のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変領域、配列番号9、配列番号5および配列番号6のアミノ酸配列でそれぞれ表されるCDR1、CDR2およびCDR3を含む軽鎖可変領域、重鎖定常領域、ならびに軽鎖定常領域
    を含む、使用。
  7. 抗体が、
    a)配列番号7のアミノ酸配列で表される重鎖可変領域、配列番号8のアミノ酸配列で表される軽鎖可変領域、重鎖定常領域、および軽鎖定常領域;または
    b)配列番号7のアミノ酸配列で表される重鎖可変領域、配列番号10のアミノ酸配列で表される軽鎖可変領域、重鎖定常領域、および軽鎖定常領域
    を含む、請求項に記載の使用。
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