JP7048382B2 - ガスシールドアーク溶接の制御方法及び制御装置 - Google Patents
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Description
前記溶接電流をあらかじめ設定された設定電流Iccで保持する通常アーク期間を設ける工程と、
前記通常アーク期間において、前記溶滴の離脱時期を検知した後、前記溶接電流を低下させる電流低下区間、前記電流低下区間後に前記溶接電流を一定の離脱保持電流Ih1で保持する電流保持区間、および前記電流保持区間後に前記溶接電流を上昇させる電流上昇区間を有する離脱制御期間を設ける工程を有し、
前記離脱制御期間中に、下記(a)~(c)の少なくともいずれか1つの短絡防止制御を行うことを特徴とする。
(a)溶接中のアーク電圧を、設定電圧に対し±10%以内に維持する出力電圧制御
(b)溶接中のワイヤ送給速度Fsを、設定ワイヤ送給速度に対し40~95%の範囲にまで減速させる送給速度制御
(c)前記シールドガス中のAr比率を、50~100体積%の範囲にまで高めるガス比率制御
0.4≦(1.2/d)×(Fs/15)×Th1≦10 ・・・(1)
50≦(15/Fs)×Ih1≦280 ・・・(2)
10≦(d/1.2)×(350/Icc)×Tarc≦80 ・・・(3)
前記溶接電流をあらかじめ設定された設定電流Iccで保持する通常アーク期間を設ける工程と、
前記通常アーク期間において、前記溶滴の離脱時期を検知した後、前記溶接電流を低下させる電流低下区間、前記電流低下区間後に前記溶接電流を一定の離脱保持電流Ih1で保持する電流保持区間、および前記電流保持区間後に前記溶接電流を上昇させる電流上昇区間を有する離脱制御期間を設ける工程を有し、
前記離脱制御期間中に、下記(a)~(c)の少なくともいずれか1つの短絡防止制御を行うことを特徴とする。
(a)溶接中アーク電圧を、設定電圧に対し±10%以内に維持する出力電圧制御
(b)溶接中のワイヤ送給速度Fsを、設定ワイヤ送給速度に対し40~95%の範囲にまで減速させる送給速度制御
(c)前記シールドガス中のAr比率を、50~100体積%の範囲にまで高めるガス比率制御
図1に示すように、溶接開始後、溶接電流をあらかじめ設定された設定電流Iccで保持する通常アーク期間に移行する(ステップS1)。
一方、溶滴の離脱時期を検知できない場合(ステップS2でNo)、溶滴の離脱周期(詳細は後述を参照)が監視時間を経過したことを確認の上(ステップS3)、強制離脱制御期間へと移行する(ステップS4)。
一方、溶滴の離脱時期を検知できない場合(ステップS5でNo)、強制離脱制御期間の終了後に、強制離脱アーク期間に移行する(ステップS6)。
一方、溶滴の離脱時期を検知できない場合(ステップS7でNo)、強制離脱アーク期間が所定時間を経過したことを確認の上(ステップS9)、再び通常アーク期間へと戻る(ステップS1)。
まず、第1の実施形態に係るガスシールドアーク溶接の制御方法について説明する。上記の通り、第1の実施形態は、通常アーク期間において溶滴の離脱検知がなされた場合(ステップS2でYes)の例である。
図2は、本発明の第1の実施形態に係るガスシールドアーク溶接の制御方法における、時間軸(t)に対する溶接電流の波形図および離脱検知信号の波形図、並びに波形図中の所定時点における溶滴の状態を示す模式図である。以下、同図を参照しつつ詳細に説明する。
通常アーク期間では、溶接ワイヤ先端に溶滴を形成し移行をさせるために、あらかじめ設定された設定電流Iccが通電される。本制御方法は、中電流~大電流の範囲で適している。最も制御に効果がある範囲として、設定電流Iccの値は250~500Aである。より好ましい上限は380Aであり、より好ましい下限は280Aである。
その一例を具体的に説明すると、溶滴が離脱する場合、ワイヤ先端に存在する溶滴の根元がくびれ、そのくびれが進行する結果、アーク電圧およびアーク抵抗(=アーク電圧/溶接電流)が上昇する。また、溶滴が離脱するとアーク長が長くなるため、アーク電圧およびアーク抵抗が上昇する。そして、これらの時間微分値や時間2階微分値も当然上昇することとなる。溶滴がくびれ始めて離脱するまでの間はアーク電圧およびアーク抵抗、更にこれらの時間微分値や時間2階微分値は常に上昇している。よって、これらのうち少なくともいずれか1つを検知し、所定の演算を行い、その結果を所定のしきい値と比較して離脱検知信号として出力することにより、溶滴の離脱時期を判断することができる。
より詳細には、例えば特開2008-246524号に記載の溶滴離脱検知方法を参照することができる。
上記通常アーク期間中に、溶滴の離脱検知がなされた場合、直ちに、検知時の溶接電流(すなわち、設定電流Icc)よりも低い溶接電流への切り替えを行い、離脱制御期間へと移行する。離脱制御期間は、溶接電流を所定の条件下で低下させる電流低下区間、電流低下区間後に溶接電流を一定の離脱保持電流Ih1および所定の離脱保持時間Th1で保持する電流保持区間、および電流保持区間後に溶接電流を所定の条件下で上昇させる電流上昇区間の3つの区間から構成される。
電流低下区間は、通常アーク期間におけるアーク反力によって、飛散するスパッタを低減させるために設けられる。より詳細には、溶滴の離脱検知後に直ちに電流低下区間を設けることで、アーク反力を低下させ、後述する電流保持期間で安定的に溶滴が離脱できるように溶滴の振動を抑制する。
一方、上記溶接電流の傾きが-200A/msを下回る場合には、ワイヤが溶融池と短絡するおそれがあるため好ましくない。上記溶接電流の傾きは、好ましくは-180A/ms以上、より好ましくは-150A/ms以上である。
なお、電流低下区間においては、図2における溶滴の状態の模式図に示すように、溶滴のくびれが促進された懸垂状態となっている(図中の(A)を参照)。
電流保持区間は、離脱した溶滴がスパッタ化するのを抑制するべく、溶滴が溶融池に完全に落ちるための時間を確保するために設けられる。電流保持区間における溶接電流の離脱保持時間Th1は、2~8msであることが好ましい。離脱保持時間Th1が8msを超える場合には、ワイヤと溶融池が短絡することによってスパッタが発生するおそれがあるため好ましくない。離脱保持時間Th1は、好ましくは5ms以下である。
一方、離脱保持時間Th1が2msを下回る場合には、溶融池に溶滴が移行しないまま、後述する電流上昇区間に進み、強まったアーク反力によって、溶滴が爆発し、スパッタが発生しやすくなるため好ましくない。離脱保持時間Th1は、好ましくは3ms以上である。
0.4≦(1.2/d)×(Fs/15)×Th1≦10 ・・・(1)
離脱保持時間Th1、ワイヤ直径dおよびワイヤ送給速度Fsとの関係が、上記数値の範囲内であれば、安定した溶滴の離脱制御が可能となる結果、スパッタ発生の低減につながる。
ただし、(1.2/d)×(Fs/15)×Th1が10を超える場合には、ワイヤと溶融池とが短絡しやすくなるため、スパッタが増加するおそれがあるため好ましくない。上記関係式は、好ましくは4.4以下、より好ましくは2.6以下である。
一方、(1.2/d)×(Fs/15)×Th1が0.4を下回る場合には、電流保持区間で溶滴が離脱せず、後述する電流上昇区間において溶滴が離脱し、アーク反力によって大粒のスパッタが発生しやすくなるため好ましくない。上記関係式は、好ましくは1.8以上、より好ましくは2.2以上である。
50≦(15/Fs)×Ih1≦280 ・・・(2)
離脱保持電流Ih1[A]およびワイヤ送給速度Fs[m/min]との関係が、上記数値の範囲内であれば、安定した溶滴の離脱制御が可能となる結果、スパッタ発生の低減につながる。
ただし、(15/Fs)×Ih1が280を超える場合には、電流保持区間で溶滴が成長し、溶融池と短絡することによって、大粒のスパッタが発生しやすくなるため好ましくない。上記関係式は、好ましくは250以下、より好ましくは200以下である。
一方、(15/Fs)×Ih1が50を下回る場合には、電流保持区間でアーク切れが発生し、ワイヤと溶融池とが短絡するおそれがあるため好ましくない。上記関係式は、好ましくは120以上、より好ましくは140以上である。
なお、電流保持区間においては、図2における溶滴の状態の模式図に示すように、電流低下区間において懸垂状態となっていた溶滴の離脱が行われ(図中の(B)を参照)、その直後においては、アーク柱は小さい状態である(図中の(C)を参照)。
電流上昇区間は、ワイヤと溶融池の短絡防止を図るため、緩やかな上昇傾斜を行うために設けられる。電流上昇区間における、溶接電流の単位時間当たりの変化量である溶接電流の傾きは50~300A/msであることが好ましい。上記溶接電流の傾きが300A/msを超える場合には、ワイヤ先端の溶滴がアーク反力によって爆発する可能性があるため好ましくない。上記溶接電流の傾きは、好ましくは200A/ms以下、より好ましくは150A/ms以下である。
一方、上記溶接電流の傾きが50A/msを下回る場合には、ワイヤが溶融池と短絡するおそれがあるため好ましくない。上記溶接電流の傾きは、好ましくは100A/ms以上、より好ましくは120A/ms以上である。
なお、電流上昇区間においては、図2における溶滴の状態の模式図に示すように、溶接電流を上昇させることによりアーク柱は大きくなり、溶滴は成長していく(図中の(D)を参照)。
本実施形態においては、上記で説明したように、離脱制御期間として電流低下区間、電流保持区間および電流上昇区間を設け、溶滴の離脱検知後における溶接電流を制御することによって、溶滴が離脱する際のスパッタの発生を抑制しつつ、以下で説明するように、離脱制御期間中に所定の短絡防止制御を導入することによって、溶滴と溶融池の短絡も抑制する。
このため、溶滴が離脱する際のスパッタの発生を抑制するために溶接電流を低下させた場合において、溶滴と溶融池の短絡を抑制することは、溶接時のスパッタの発生を効果的に抑制する上で重要な観点である。
(a)溶接中のアーク電圧を、設定電圧に対し±10%以内に維持する出力電圧制御
(b)溶接中のワイヤ送給速度Fsを、設定ワイヤ送給速度に対し40~95%の範囲にまで減速させる送給速度制御
(c)前記シールドガス中のAr比率を、50~100体積%の範囲にまで高めるガス比率制御
このように、溶接電流を所定条件で制御した離脱制御期間内に、短絡防止制御を導入することによって、溶滴の離脱時のスパッタ発生を抑制しつつも、溶滴と溶融池との短絡を抑制することで短絡時のスパッタ発生をも未然に防ぐことが可能となる。結果、溶融離脱時のスパッタ発生と、短絡時のスパッタ発生を両面から抑制することができ、溶接後のビード外観を優れたものとすることができる。
なお、上記(a)~(c)の短絡防止制御は、それぞれ単独で用いられるのでもよく、または2種以上を組み合わせて用いられるのでもよい。
続いて、第2の実施形態に係るガスシールドアーク溶接の制御方法について説明する。上述の通り、第2の実施形態は、強制離脱アーク期間において溶滴の離脱検知がなされた場合(ステップS7でYes)の例である。
図3は、本発明の第2の実施形態に係るガスシールドアーク溶接の制御方法における、時間軸(t)に対する溶接電流の波形図および離脱検知信号の波形図、並びに波形図中の所定時点における溶滴の状態を示す模式図である。以下、同図を参照しつつ詳細に説明する。
監視時間Tarcは、成長した溶滴がなかなか離脱せず、溶滴の肥大化により溶滴と溶融池との短絡を防止するために設けられる。通常では、設定電流Iccで通電される通常アーク期間において溶滴のくびれが成長して、その後、自発的に離脱が行われるが、溶滴がある程度の大きさに成長した段階でも離脱が行われない場合、肥大化した溶滴が溶融池と短絡を起こすおそれがある。これを防止するために、溶滴の離脱周期があらかじめ設定された監視時間Tarcを超える場合、溶滴の離脱を強制的に促すための所定の溶接電流制御を行う。
10≦(d/1.2)×(350/Icc)×Tarc≦80 ・・・(3)
監視時間Tarc[ms]、設定電流Icc[A]およびワイヤ直径d[mm]との関係が、上記数値の範囲内であれば、肥大化した溶滴が溶融池との短絡を抑制することとなるため好ましい。ただし、(d/1.2)×(350/Icc)×Tarcが80を超える場合には、離脱しない溶滴が更に肥大化になるため好ましくない。上記関係式は、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
一方、(d/1.2)×(350/Icc)×Tarcが10を下回る場合には、溶滴が理想な大きさまで成長せずに、離脱してしまうため好ましくない。上記関係式は、好ましくは10以上、より好ましくは15以上である。
溶滴の離脱周期が監視時間Tarcを経過した場合、直ちに検知時の溶接電流(すなわち、設定電流Icc)よりも低い溶接電流への切り替えを行い、強制離脱制御期間へと移行する。強制離脱制御期間は、溶接電流を所定の条件下で低下させる強制電流低下区間、強制電流低下区間後に溶接電流を一定の強制離脱保持電流Ih2および所定の強制離脱保持時間Th2で保持する強制電流保持区間、および強制電流保持区間後に溶接電流を所定の条件下で上昇させる強制電流上昇区間の3つの区間から構成される。
強制電流低下区間は、成長する溶滴の揺動を防止するために設けられる。より詳細には、溶滴の離脱周期が監視時間Tarcを経過した場合に、直ちに強制電流低下区間を設けることで、溶滴がアーク反力を受けにくく、安定的に懸垂状態に遷移する。
なお、強制電流低下区間においては、溶滴のくびれが促進された懸垂状態となっている。
強制電流保持区間は、溶滴のくびれ形成を促進させるために設けられる。より詳細には、強制電流低下区間後に強制電流保持区間を設けることで、溶滴のくびれが形成されやすくなり、後述の強制電流上昇区間や強制離脱アーク期間における溶滴の離脱促進に寄与する。
一方、強制離脱保持時間Th2が1msを下回る場合には、溶滴が強制電流保持区間で離脱できず、後述する強制電流上昇区間で強まったアーク反力によって、溶滴が爆発し、スパッタ化する可能性がある。強制離脱保持時間Th2は、好ましくは3ms以上、より好ましくは4ms以上である。
なお、強制電流保持区間においても、強制電流低下区間と同様、溶滴のくびれが促進された懸垂状態となっている。
強制電流上昇区間は、溶滴の安定的な成長を促進させるために設けられる。より詳細には、強制電流保持区間後に強制電流上昇区間を設けることで、溶滴がアーク反発力を受けにくく、安定的に成長が可能となり、懸垂する溶滴の揺動が効果的に抑制され得る。
一方、上記溶接電流の傾きが10A/msを下回る場合には、溶滴がより肥大化し、溶滴と溶融池との短絡を発生させるおそれがあるため好ましくない。上記溶接電流の傾きは、好ましくは100A/ms以上、より好ましくは150A/ms以上である。
なお、強制電流上昇区間においては、溶接電流を上昇させることによりアーク柱は大きくなり、溶滴はさらに成長していく。
強制離脱アーク期間では、監視時間Tarc内に離脱しきれなかった溶滴を強制的に離脱させるために、設定電流Iccよりも大きな溶接電流である強制アーク保持電流Ih3が通電される。つまり、通常アーク期間で通電された設定電流Iccよりも大きな一定電流で通電することで、溶滴に強大な電磁ピンチ力を与え、強制的に溶滴を離脱させる仕組みである。
一方、強制アーク保持電流Ih3が設定電流Iccの1.20倍を下回る場合には、溶滴に強大な電磁ピンチ力がかかりにくく、溶滴が離脱しにくくなるおそれがあるため好ましくない。上記値は、好ましくは1.60倍以上、より好ましくは1.80倍以上である。
上述の通り、溶滴の離脱時期を調べるための方法として、アーク電圧またはアーク抵抗を用いた離脱検知信号が好適に用いられるが、強制離脱アーク期間においては、アーク電圧(アーク電圧の時間微分値および時間2階微分値も含む)を用いて検知することが好ましい。上記期間においては、定電流制御区間であり、溶接電流値の変動が小さいため、アーク電圧の変動のみで精度よく溶滴の離脱時期を検知することができる。また、溶接電流の変動を考慮して所定の演算を行う必要がないため、演算時間を短縮化でき、迅速な離脱検知を行うことが可能となる。
さらに続いて、第3の実施形態に係るガスシールドアーク溶接の制御方法について説明する。上述の通り、第3の実施形態は、強制離脱制御期間において溶滴の離脱検知がなされた場合(ステップS5でYes)の例である。
図4は、本発明の第3の実施形態に係るガスシールドアーク溶接の制御方法における、時間軸(t)に対する溶接電流の波形図および離脱検知信号の波形図、並びに波形図中の所定時点における溶滴の状態を示す模式図である。以下、同図を参照しつつ、第2の実施形態と異なる点を中心に詳細に説明する。
ただし、本実施形態では、強制離脱制御期間の任意のタイミング(図4の例では、強制電流保持区間内)で、溶滴の離脱検知がなされた場合、強制離脱制御期間における電流制御プロセスを中断し、直ちに、検知時の溶接電流よりも低い溶接電流への切り替えを行い、上記の離脱制御期間へと移行し、第1の実施形態で説明したものと同様、溶滴の離脱周期を繰り返していく。
さらに、本実施形態に係るガスシールドアーク溶接の制御システムについて説明する。図5は、本実施形態に係るガスシールドアーク溶接の溶接システムの概略構成の一例を示す図である。
溶接トーチ110の先端では、電極である溶接ワイヤを、コンタクトチップと呼ばれる円筒形の導体の先端から一定の突出し長さを保持する。本実施形態で適用する溶接方法は、コンタクトチップと溶接ワイヤとが接触し、アーク電圧を印加して通電することで、ワークWと溶接ワイヤ先端との間にアークが発生し、溶接ワイヤを溶融させて行う消耗電極式となる。
図6は、アーク電圧の時間2階微分値を用いて、溶滴の離脱又は離脱直前を検出して、所定の制御を行う場合の溶接電流制御装置を示すブロック図である。3相交流電源(図示せず)に、出力制御素子1が接続されており、この出力制御素子1に与えられた電流は、トランス2、ダイオードからなる整流部3、直流リアクトル8及び溶接電流を検出する電流検出器9を介して、コンタクトチップ4に与えられる。被溶接材7はトランス2の低位電源側に接続されており、コンタクトチップ4内を挿通して給電される溶接ワイヤ5と、被溶接材7との間に溶接アーク6が生起される。
波形設定器19は、波形生成器20において、出力補正信号を出力する期間や溶接電流の制御条件を入力するものであり、波形設定器19により、出力補正信号を出力する期間や及び溶接電流の制御条件が波形生成器20に設定される。
しかし、2階微分値による検出の場合、溶接中に溶接条件が変化しても、その変化に影響されず、正確に溶滴の離脱を検出できる。また、溶滴離脱直前のくびれによるアーク電圧またはアーク抵抗の変化に相当する2階微分値を2階微分値設定器13で設定すれば、溶滴離脱直前を検出し、溶接波形を制御できるため、ワイヤ先端に残留した融液を吹き飛ばして小粒スパッタを発生させてしまうという問題を完全に解消できる。
母材に対して、トーチ傾斜角度は45°とし、溶接ワイヤ(消耗式電極)は、JIS Z3312:2009 YGW11に適合する組成で共通とした。
(溶接の初期条件)
・シールドガスの種類(「%」は体積%を示す)
・設定電流Icc(A)
・設定電圧(V)
(溶接ワイヤ)
・設定送給速度Fs(m/min)
・突出し長さ(mm)
・ワイヤ直径d(mm)
・出力電圧制御
制御条件(設定電圧に対してアーク電圧を何%以内に維持するか)
当該制御の適用有無(制御ON/OFF)
・送給速度制御
制御条件(設定ワイヤ送給速度に対し、送給速度ワイヤ送給速度を何%にまで減速させるか)
当該制御の適用有無(制御ON/OFF)
・ガス比率制御
制御条件(シールドガス中のAr比率を何体積%にまで高めるか)
当該制御の適用有無(制御ON/OFF)
・電流低下区間
溶接電流の傾き(A/ms)
・電流保持区間
離脱保持時間Th1(ms)
離脱保持電流Ih1(A)
式(1)で示される値:(1.2/d)×(Fs/15)×Th1)
式(2)で示される値:(15/Fs)×Ih1
・電流上昇区間
溶接電流の傾き(A/ms)
(溶滴の強制離脱制御)
・監視時間Tarc(ms)
・式(3)で示される値:(d/1.2)×(350/Icc)×Tarc
・当該制御の適用有無(強制離脱制御期間のON/OFF)
・強制電流低下区間
溶接電流の傾き(A/ms)
・強制電流保持区間
強制離脱保持時間Th2(ms)
強制離脱保持電流Ih2(A)
・強制電流上昇区間
溶接電流の傾き(A/ms)
(強制離脱アーク期間)
・強制アーク保持時間Th3(ms)
・強制アーク保持電流Ih3(A)
・強制アーク保持電流Ih3と設定電流Iccとの比(Ih3/Icc)
(離脱検知手段)
・通常アーク期間における離脱検知手段
・強制離脱アーク期間における離脱検知手段
(ビード外観)
ビード際の波の最大値と最小値との差を測定することにより、ビード外観の評価を行った。最大値と最小値の差(絶対値)が2mm以上のものを評価「×」(不良)、1mm以上2mm未満のものを評価「○」(良)、1mm未満のものを評価「◎」(優良)と判定した。
溶接後のビード外観を写真撮影し、そのビード外観写真をコンピュータに取り込んで画像解析ソフトにより二値化処理を行い、ビード表面に発生したスパッタと、スパッタが発生していない領域とを区別した。そして、アークスタートから50mmの位置を起点とし、溶接長100mm×幅75mmの領域内におけるスパッタの個数を測定した。
本発明に係る短絡防止制御を行っていない試験No.82(比較例)におけるスパッタの個数に対するスパッタの個数が40%未満のものを評価「◎」(優良)、40%以上50%未満のものを評価「○」(良)、50%以上70%未満のものを評価「△」(可)、70%以上のものを評価「×」(不良)と判定した。
また、上述した好ましい実施形態の要件を満足する実施例は、ビード外観およびスパッタ発生量の少なくとも一方において更に優れた結果が得られた。
試験No.80は、出力電圧制御に関し、アーク電圧が設定電圧の-10%を下回っていたため、ビード外観およびスパッタ発生量のいずれにおいても評価が×であった。
試験No.81は、ガス比率制御に関し、高められるシールドガス中のAr比率が50体積%を下回っていたため、ビード外観およびスパッタ発生量のいずれにおいても評価が×であった。
試験No.82は、出力電圧制御、送給速度制御およびガス比率制御のうち、いずれの短絡防止制御も行わなかったため、ビード外観およびスパッタ発生量のいずれにおいても評価が×であった。
試験No.83は、送給速度制御に関し、設定ワイヤ送給速度に対するワイヤ送給速度Fsの減速割合が40%を下回っていたため、ビード外観およびスパッタ発生量のいずれにおいても評価が×であった。
試験No.84は、送給速度制御に関し、設定ワイヤ送給速度に対するワイヤ送給速度Fsの減速割合が95%を超えていたため、ビード外観およびスパッタ発生量のいずれにおいても評価が×であった。
2 トランス
3 整流部
4 コンタクトチップ
5 ワイヤ
6 溶接アーク
7 被溶接材
8 直流リアクトル
9 溶接電流検出器
10 溶接電圧検出器
11 溶接電圧微分器
12 2階微分器
13 2階微分値設定器
14 比較器
15 出力制御器
16 アーク抵抗算出器
17 アーク抵抗微分器
18 溶滴離脱検出部
19 波形設定器
20 波形生成器
100 溶接ロボット
110 溶接トーチ
200 ロボットコントローラ
300 溶接電源
400 送給装置
500 ガスコントローラ
Claims (14)
- シールドガスとして、CO2の含有量が100体積%である炭酸ガス、またはCO2の含有量が30体積%以上で残部がArである混合ガスを用い、かつ、アークにより溶融された溶接ワイヤ先端の溶滴の離脱時期を検知することで溶接電流を制御するガスシールドアーク溶接の制御方法であって、
前記溶接電流をあらかじめ設定された設定電流Iccで保持する通常アーク期間を設ける工程と、
前記通常アーク期間において、前記溶滴の離脱時期を検知した後、前記溶接電流を低下させる電流低下区間、前記電流低下区間後に前記溶接電流を一定の離脱保持電流Ih1で保持する電流保持区間、および前記電流保持区間後に前記溶接電流を上昇させる電流上昇区間を有する離脱制御期間を設ける工程を有し、
前記離脱制御期間中に、下記(a)及び(c)の少なくともいずれか1つの短絡防止制御を行うことを特徴とするガスシールドアーク溶接の制御方法。
(a)溶接中のアーク電圧を、設定電圧に対し±10%以内に維持する出力電圧制御
(c)前記シールドガス中のAr比率を、50~100体積%の範囲にまで高めるガス比率制御 - 前記電流低下区間における、前記溶接電流の単位時間当たりの変化量である前記溶接電流の傾きが-200~-50A/msであり、
前記電流保持区間における、前記溶接電流の離脱保持時間Th1が2~8msであり、
前記電流上昇区間における、前記溶接電流の傾きが50~300A/msであり、
かつ、前記電流保持区間における、前記離脱保持時間Th1[ms]、ワイヤ直径d[mm]および溶接中のワイヤ送給速度Fs[m/min]との関係が下記式(1)を満足する、請求項1に記載のガスシールドアーク溶接の制御方法。
0.4≦(1.2/d)×(Fs/15)×Th1≦10 ・・・(1) - 前記(a)の制御を行う場合、前記アーク電圧を、設定電圧に対し±5%以内に維持し、
前記(c)の制御を行う場合、前記シールドガス中のAr比率を、80~100体積%の範囲にまで高める、請求項1または2に記載のガスシールドアーク溶接の制御方法。 - シールドガスとして、CO2の含有量が100体積%である炭酸ガス、またはCO2の含有量が30体積%以上で残部がArである混合ガスを用い、かつ、アークにより溶融された溶接ワイヤ先端の溶滴の離脱時期を検知することで溶接電流を制御するガスシールドアーク溶接の制御方法であって、
前記溶接電流をあらかじめ設定された設定電流Iccで保持する通常アーク期間を設ける工程と、
前記通常アーク期間において、前記溶滴の離脱時期を検知した後、前記溶接電流を低下させる電流低下区間、前記電流低下区間後に前記溶接電流を一定の離脱保持電流Ih1で保持する電流保持区間、および前記電流保持区間後に前記溶接電流を上昇させる電流上昇区間を有する離脱制御期間を設ける工程を有し、
前記電流低下区間における、前記溶接電流の単位時間当たりの変化量である前記溶接電流の傾きが-200~-50A/msであり、
前記電流保持区間における、前記溶接電流の離脱保持時間Th1が2~8msであり、
前記電流上昇区間における、前記溶接電流の傾きが50~300A/msであり、
かつ、前記電流保持区間における、前記離脱保持時間Th1[ms]、ワイヤ直径d[mm]および溶接中のワイヤ送給速度Fs[m/min]との関係が下記式(1)を満足し、
0.4≦(1.2/d)×(Fs/15)×Th1≦10 ・・・(1)
前記離脱制御期間中に、下記(a)~(c)の少なくともいずれか1つの短絡防止制御を行うことを特徴とするガスシールドアーク溶接の制御方法。
(a)溶接中のアーク電圧を、設定電圧に対し±10%以内に維持する出力電圧制御
(b)溶接中の前記ワイヤ送給速度Fsを、設定ワイヤ送給速度に対し40~95%の範囲にまで減速させる送給速度制御
(c)前記シールドガス中のAr比率を、50~100体積%の範囲にまで高めるガス比率制御 - 前記(a)の制御を行う場合、前記アーク電圧を、設定電圧に対し±5%以内に維持し、
前記(b)の制御を行う場合、前記ワイヤ送給速度Fsを、前記設定ワイヤ送給速度に対し50~95%の範囲にまで減速させ、
前記(c)の制御を行う場合、前記シールドガス中のAr比率を、80~100体積%の範囲にまで高める、請求項4に記載のガスシールドアーク溶接の制御方法。 - 前記電流保持区間における、前記離脱保持電流Ih1[A]および溶接中のワイヤ送給速度Fs[m/min]との関係が下記式(2)を満足する、請求項1~5のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接の制御方法。
50≦(15/Fs)×Ih1≦280 ・・・(2) - 前記離脱制御期間および前記通常アーク期間の合計期間を溶滴の離脱周期とし、前記溶滴の離脱周期があらかじめ設定された監視時間Tarcを経過した場合に、前記溶滴の離脱を強制的に促すための強制離脱制御期間を設ける工程を有し、
前記監視時間Tarcが10~60msであり、
前記監視時間Tarc[ms]、前記設定電流Icc[A]および前記溶接ワイヤのワイヤ直径d[mm]との関係が下記式(3)を満足する、請求項1~6のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接の制御方法。
10≦(d/1.2)×(350/Icc)×Tarc≦80 ・・・(3) - 前記強制離脱制御期間は、前記溶接電流を低下させる強制電流低下区間、前記強制電流低下区間後に前記溶接電流を一定の強制離脱保持電流Ih2で保持する強制電流保持区間、および前記強制電流保持区間後に前記溶接電流を上昇させる強制電流上昇区間を有し、
前記強制電流低下区間における、前記溶接電流の傾きが-100A/ms以下であり、
前記強制電流保持区間における、前記溶接電流の強制離脱保持時間Th2が1~5msであり、
前記強制電流上昇区間における、前記溶接電流の傾きが10~300A/msであり、
かつ、前記強制離脱制御期間後における前記溶接電流を、前記設定電流Iccの1.20~2.50倍の強制アーク保持電流Ih3および3~10msの強制アーク保持時間Th3の条件で保持する強制離脱アーク期間を設ける工程を有する、請求項7に記載のガスシールドアーク溶接の制御方法。 - 前記強制離脱制御期間において、前記溶滴の離脱時期を検知した場合、前記離脱制御期間における前記電流低下区間に移行する、請求項7に記載のガスシールドアーク溶接の制御方法。
- 前記強制離脱アーク期間において、前記溶滴の離脱時期を検知した場合、前記離脱制御期間における前記電流低下区間に移行する、請求項8に記載のガスシールドアーク溶接の制御方法。
- 前記強制離脱制御期間または前記強制離脱アーク期間における前記溶滴の離脱時期を、前記アーク電圧を用いて検知する請求項8に記載のガスシールドアーク溶接の制御方法。
- 前記通常アーク期間における前記溶滴の離脱時期を、アーク抵抗を用いて検知する請求項1~11のいずれか1項に記載のガスシールドアーク溶接の制御方法。
- シールドガスとして、CO2の含有量が100体積%である炭酸ガス、またはCO2の含有量が30体積%以上で残部がArである混合ガスを用い、かつ、アークにより溶融された溶接ワイヤ先端の溶滴の離脱時期を検知することで溶接電流を制御するガスシールドアーク溶接の制御装置であって、
前記溶接電流をあらかじめ設定された設定電流Iccで保持する通常アーク期間を設ける工程と、
前記通常アーク期間において、前記溶滴の離脱時期を検知した後、前記溶接電流を低下させる電流低下区間、前記電流低下区間後に前記溶接電流を一定の離脱保持電流Ih1で保持する電流保持区間、および前記電流保持区間後に前記溶接電流を上昇させる電流上昇区間を有する離脱制御期間を設ける工程を有し、
前記離脱制御期間中に、下記(a)及び(c)の少なくともいずれか1つの短絡防止制御を行うことを特徴とするガスシールドアーク溶接の制御装置。
(a)溶接中のアーク電圧を、設定電圧に対し±10%以内に維持する出力電圧制御
(c)前記シールドガス中のAr比率を、50~100体積%の範囲にまで高めるガス比率制御 - シールドガスとして、CO2の含有量が100体積%である炭酸ガス、またはCO2の含有量が30体積%以上で残部がArである混合ガスを用い、かつ、アークにより溶融された溶接ワイヤ先端の溶滴の離脱時期を検知することで溶接電流を制御するガスシールドアーク溶接の制御装置であって、
前記溶接電流をあらかじめ設定された設定電流Iccで保持する通常アーク期間を設ける工程と、
前記通常アーク期間において、前記溶滴の離脱時期を検知した後、前記溶接電流を低下させる電流低下区間、前記電流低下区間後に前記溶接電流を一定の離脱保持電流Ih1で保持する電流保持区間、および前記電流保持区間後に前記溶接電流を上昇させる電流上昇区間を有する離脱制御期間を設ける工程を有し、
前記電流低下区間における、前記溶接電流の単位時間当たりの変化量である前記溶接電流の傾きが-200~-50A/msであり、
前記電流保持区間における、前記溶接電流の離脱保持時間Th1が2~8msであり、
前記電流上昇区間における、前記溶接電流の傾きが50~300A/msであり、
かつ、前記電流保持区間における、前記離脱保持時間Th1[ms]、ワイヤ直径d[mm]および溶接中のワイヤ送給速度Fs[m/min]との関係が下記式(1)を満足し、
0.4≦(1.2/d)×(Fs/15)×Th1≦10 ・・・(1)
前記離脱制御期間中に、下記(a)~(c)の少なくともいずれか1つの短絡防止制御を行うことを特徴とするガスシールドアーク溶接の制御装置。
(a)溶接中のアーク電圧を、設定電圧に対し±10%以内に維持する出力電圧制御
(b)溶接中のワイヤ送給速度Fsを、設定ワイヤ送給速度に対し40~95%の範囲にまで減速させる送給速度制御
(c)前記シールドガス中のAr比率を、50~100体積%の範囲にまで高めるガス比率制御
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