特許文献1の浴槽掃除機では、排水口から湯水が排水されることに伴う湯水の液位低下に任せて浴槽掃除機が低下していくようになっているため、湯水の排水速度の大小により洗浄性能が左右されることが避けられず、特に排水速度が速すぎる場合には、浴槽の内周面の全体に対してブラシを当てることが困難となり、洗浄ムラや洗浄不良が生じるおそれがある。
本発明の以上のような従来の浴槽洗浄装置の抱える問題を解決するためになされたものであり、より確実に浴槽の内周面の全体を洗浄することができる浴槽洗浄装置を提供することを目的とする。
本発明の浴槽洗浄装置は、浴槽1内の湯水に浮かぶ本体ケース8と、本体ケース8に設けられて湯水に浸漬した状態で浴槽1の内周面1aを洗浄する洗浄ブラシ11と、洗浄ブラシ11を回転駆動させるブラシ駆動構造13と、浴槽1内の湯水を排水して湯水の液位制御を行う排水構造14とを備えることを特徴とする。
排水構造14は、湯水を加圧送給するポンプ48と、ポンプ48を駆動するモーター49と、ポンプ48で加圧された湯水を浴槽1の外へ排出する排水手段50とを含む。排水手段50は排水ホース56で構成されている。排水ホース56の一端が、ポンプ48の吐出通路54に接続され、排水ホース56の他端が浴槽1の外に位置している。
排水ホース56の中途部には、伸縮部65が形成されている。
ポンプ48の吐出通路54の終端にロータリージョイント55が接続されており、排水ホース56の一端がロータリージョイント55の出口に接続されている。
浴槽1に設けられたホース保持具66に、排水ホース56の中途部が保持されている。
排水構造14は、湯水を加圧送給するポンプ48と、ポンプ48を駆動するモーター49と、ポンプ48で加圧された湯水を浴槽の外へ排出する排水手段50とを含む。排水手段50は排水ノズル101で構成されている。本体ケース8に設けたポンプ48の吐出通路54に排水ノズル101が接続されている。
湯水の液位を検知する液位センサー102と、該液位センサー102による検知結果に基づいてブラシ駆動構造13と排水構造14の作動状態を制御する制御部17とを備える。
本体ケース8に少なくともひとつの洗浄ブラシ11が配置されて、洗浄ブラシ11の上周面が、湯水の液面の外に露出させてある。洗浄ブラシ11が浴槽1の内周面1aを洗浄している状態において、洗浄ブラシ11の回転動作に伴う推進力により、洗浄中の洗浄ブラシ11が浴槽1の内周面1aに押付けられるようになっている。
本体ケース8の対向辺部に複数の洗浄ブラシ11が配置されており、これら洗浄ブラシ11の上周面は湯水の液面の外に露出するようになっている。いずれか一つの洗浄ブラシ11が浴槽1の内周面1aを洗浄している状態において、残る洗浄ブラシ11の回転動作に伴う推進力により、洗浄中の洗浄ブラシ11が浴槽1の内周面1aに押付けられる。
本体ケース8の隣接辺部に複数の洗浄ブラシ11が配置されており、これら洗浄ブラシ11の上周面は湯水の液面の外に露出するようになっている。洗浄ブラシ11のうちのひとつが浴槽1の内周面1aを洗浄している状態において、残る洗浄ブラシ11の回転動作に伴う推進力により、本体ケース8が浴槽1の内周面1aに沿って周回移動される。
洗浄ブラシ11のブラシ軸21に、上周面が湯水の液面の外に露出されて、ブラシ軸21と直交する向きの推進力を発生させる推進輪24が固定されている。
本体ケース8の隅部に、隅洗浄ブラシ12が配置されている。
隅洗浄ブラシ12はブラシ駆動構造13で洗浄ブラシ11と同時に回転駆動されるように構成されている。
隅洗浄ブラシ12のブラシ軸21が湯水の液面と交差する縦長軸状に形成されており、隅洗浄ブラシ12の洗浄方向と洗浄ブラシ11の洗浄方向とが異なる方向となるように構成されている。
隅洗浄ブラシ12の回転駆動方向が、浴槽1の内隅面1cにおける本体ケース8の変向方向と逆向きに設定されている。
隅洗浄ブラシ12はブラシ軸27の回りに固定される一群のブラシ毛29を備えている。ブラシ毛29は、先端の接触洗浄部分29aと、接触洗浄部分29aより基端側に設けられる変向接触部分29bを備えている。
推進輪24の外直径は、洗浄ブラシ11のブラシ毛23の直径より小さく設定されている。
推進輪24の下周面が、本体ケース8の底面より下方に露出されている。
推進輪24は、ブラシ軸21に固定されて放射状に延びる推進板32と、推進板32の先端に設けられる接触部33を備えている。接触部33の表面に摩擦力が大きなエラストマー製のタイヤ層35が固定されている。
本発明に係る浴槽洗浄装置においては、浴槽1内の湯水を排水して湯水の液位制御を行う排水構造14を備えるものとしたので、当該排水構造14により浴槽1内の湯水の液位を制御しながら、内周面1aの洗浄を行うことが可能となる。これにより、浴槽1内の液位を洗浄に適した速度で過不足なく低下させながら、或いは浴槽1内の液位を段階的に低下させながら、洗浄ブラシ11を使って洗浄を行うことができるので、内周面1aの全体を確実に洗浄することができる。
より具体的には、例えば洗浄ブラシ11を備える本体ケース8が浴槽1内を1周回移動するまで、浴槽1内の湯水の液位を保持することで、当該液位における洗浄対象となる所定の浴槽1内の高さ位置に対して洗浄ブラシ11を使った洗浄動作を実行することができ、加えて湯水の液位を所定量ずつ下げていくことで、内周面1aの全体に対して洗浄ブラシ11を使った洗浄動作を実行できる。従って、内周面1aの全体を確実に洗浄することができる。
排水構造14が、湯水を加圧送給するポンプ48と、ポンプ48を駆動するモーター49と、ポンプ48で加圧された湯水を浴槽1の外へ排出する排水手段50とを含むものとされていると、ポンプ48の駆動状態を調整することにより、浴槽1内の液位を洗浄に適した速度で過不足なく低下させることができる。しかも、排水手段50が排水ホース56で構成されていると、浴槽1内の湯水を排水ホース56で連続して確実に排出することができる。従って、排水構造14による液位制御をより確実に行うことができる。
排水ホース56の中途部に伸縮部65が形成されていると、本体ケース8が内周面1aに沿って周回移動する場合に、本体ケース8の周回位置の違いに応じて伸縮部65が伸縮して、排水ホース56に無理な力が加わるのを解消できる。従って、本体ケース8の周回移動を円滑に行いながら、湯水の排出を確実に行うことができる。
ポンプ48の吐出通路54の終端にロータリージョイント55が設けられ、排水ホース56の一端がロータリージョイント55の出口に接続されていると、本体ケース8の周回位置の違いに応じてロータリージョイント55が回動して、排水ホース56の導出方向を本体ケース8の位置に応じて追随させることができる。従って、本体ケース8が移動することに伴って、排水ホース56がねじれることを確実に防止することができる。
浴槽1に設けられたホース保持具66に、排水ホース56の中途部が保持されていると、湯水の通過、或いは端部からの湯水の排出に伴う外力により排水ホース56が揺り動かされて暴れるのを確実に防止できる。従って、排水ホース56による湯水の排出を整然と行うことができる。
排水手段50が排水ノズル101で構成されていると、湯水を浴槽1の外へ向かって直接的に放水することができるので、本体ケース8の周回移動を抵抗なく円滑に行うことができる。因みに、排水ホース56を使用する場合には、本体ケース8が周回移動するとき排水ホース56を同行移動させる必要があるので、その分だけ移動抵抗が生じるのを避けられない。また、排水手段50が排水ノズル101で構成されていると、例えば、本体ケース8が1周回する毎に周回移動を停止した状態でポンプ48を作動させて、浴槽1内の湯水を排水ノズル101で浴槽1の外へ断続的に排出することができる。
湯水の液位を検知する液位センサー102を備え、該液位センサー102による検知結果に基づいて制御部17がブラシ駆動構造13と排水構造14の作動状態を制御するように構成することができる。これによれば、例えば、液位の低下に伴って排水構造14のモーター49の駆動回転数を増加させることで、ポンプ48の吐出圧を増加させることができるので、排水手段50を介して湯水を浴槽1外へ確実に排出することができる。特に、排水ノズル101を備えた排水構造14においては、本体ケース8が周回移動する毎に、湯水の液位を検知する液位センサー102から出力される検知信号に基づき、排水構造14のモーター49の駆動回転数を増加して、ポンプ48の吐出圧を増加させるようにする。これにより、排水ノズル101から排出される湯水の放水高さを液位の低下に応じて徐々に高くすることができるので、洗浄が終了するまでの間、湯水を安定して確実に排出することができる。
本体ケース8に少なくともひとつの洗浄ブラシ11が配置してある浴槽洗浄装置においては、洗浄ブラシ11が浴槽1の内周面1aを洗浄している状態において、洗浄ブラシ11の回転動作に伴う推進力により、洗浄中の洗浄ブラシ11を浴槽1の内周面1aに押付けることができる。そのため、洗浄中の洗浄ブラシ11を、その接触反力に抗して内周面1aに確実に密着させた状態で回転駆動して洗浄することができる。従って、洗浄ブラシ11による洗浄効果の向上を図ることができる。
本体ケース8の対向辺部に複数の洗浄ブラシ11が配置されており、これら洗浄ブラシ11の上周面は湯水の液面の外に露出するようになっており、いずれか一つの洗浄ブラシ11が浴槽1の内周面1aを洗浄している状態において、残る洗浄ブラシ11の回転動作に伴う推進力により、洗浄中の洗浄ブラシ11が浴槽1の内周面1aに押付けられるように構成する。これによれば、洗浄中の洗浄ブラシ11を、その接触反力に抗して内周面1aに確実に密着させた状態で回転させて、洗浄動作を実行できる。従って、洗浄ブラシ11による洗浄効果の向上を図ることができる。
本体ケース8の隣接辺部に複数の洗浄ブラシ11を配置し、洗浄ブラシ11のひとつが浴槽1の内周面1aを洗浄している状態において、残る洗浄ブラシ11の回転動作に伴う推進力で、本体ケース8が浴槽1の内周面1aに沿って周回移動されるようにする。これによれば、洗浄中の洗浄ブラシ11の位置を、浴槽1の内周面1aに沿って徐々に移動させることができるので、内周面1aの洗浄を余すことなく確実に行って、洗浄効果を向上できるうえ洗浄結果を均一化できる。
洗浄ブラシ11のブラシ軸21に、上周面が湯水の液面の外に露出されて、ブラシ軸21と直交する向きの推進力を発生させる推進輪24が固定されていると、推進輪24の推進力によって洗浄ブラシ11を浴槽1の内周面1aに密着させ、あるいは、推進輪24の推進力によって本体ケース8を内周面1aに沿って移動させることができる。従って、洗浄ブラシ11の洗浄効果を向上しながら、本体ケース8の移動をきびきびと的確に行うことができる。
従来の浴槽掃除機では、回転ブラシの直径が大きいため、浴槽1の内隅面1cを洗浄するのが難しく、内隅面1cの洗浄は別途行う必要があった。これに対して、本体ケース8の隅部に隅洗浄ブラシ12が配置されていると、浴槽1の内周面1aに加えて、浴槽1の内隅面1cの洗浄も自動的に行うことができるので、内隅面1cの洗浄を別途行う手間を省くことができる。
洗浄ブラシ11と隅洗浄ブラシ12をブラシ駆動構造13で同時に回転駆動すると、隅洗浄ブラシ12を回転駆動するための駆動構造を別途設ける必要がないので、その分だけ浴槽洗浄装置の構造を簡素化して、全体コストを削減できる。また、浴槽洗浄装置を軽量化できる利点もある。
隅洗浄ブラシ12のブラシ軸21を湯水の液面と交差する縦長軸状に形成して、隅洗浄ブラシ12の洗浄方向と洗浄ブラシ11の洗浄方向が異なるように設定されていると、浴槽1の内周面1aを洗浄ブラシ11で洗浄するとき、隅洗浄ブラシ12によっても内周面1aを洗浄できる。また、内周面1aに付着した湯垢やぬめりを、洗浄ブラシ11と隅洗浄ブラシ12で異なる方向からこすり落として内周面1aを確実に洗浄できる。
隅洗浄ブラシ12の回転駆動方向が、浴槽1の内隅面1cにおける本体ケース8の変向方向と逆向きに設定されていると、本体ケース8を内隅面1cにおいて確実に変向させることができる。これは、隅洗浄ブラシ12が内隅面1cに接当した状態においては、隅洗浄ブラシ12に作用する回転反力で、本体ケース8に右向きの変向モーメントを作用させて、本体ケース8を円滑に変向移動できるからである。因みに、隅洗浄ブラシ12の回転駆動方向が、浴槽1の内隅面1cにおける本体ケース8の変向方向と同じ向きに設定されている場合には、本体ケース8に左向きの変向モーメントが作用するため、本体ケース8を内隅面1cにおいて確実に変向させることが困難となる。
隅洗浄ブラシ12のブラシ毛29が、先端の接触洗浄部分29aと、接触洗浄部分29aより基端側に設けられる変向接触部分29bを備えるように構成されていると、隅洗浄ブラシ12が内隅面1cに達した状態では、とげ状の変向接触部分29bの先端が内隅面1cと接触して、本体ケース8を浴槽1の左側の内周面1aから離れる向きに変向させることができる。従って、本体ケース8を内隅面1cにおいてさらに確実に変向させることができる。
推進輪24の外直径が洗浄ブラシ11のブラシ毛23の直径より小さく設定されていると、洗浄ブラシ11が内周面1aに密着して洗浄を行っているとき、推進輪24が内周面1aに接当して洗浄中の洗浄ブラシ11の邪魔になることを解消できる。さらに、推進輪24が内周面1aに接当した状態では、推進輪24が内周面1aから回転抵抗を受けるため、モーター38に余分な負荷が掛かるが、こうした余分な負荷を解消できる利点もある。
推進輪24の下周面が本体ケース8の底面より下方に露出されていると、湯水の液位が低下して浴槽1の底面1bを洗浄する場合であっても、底面1bで支持された推進輪24の推進力によって本体ケース8を移動させることができるので、洗浄ブラシ11による内周面1aや底面1bの接触洗浄を支障なく行うことができる。
放射状に延びる推進板32と、推進板32の先端に設けられる接触部33を備えた推進輪24においては、接触部33の表面に摩擦力が大きなタイヤ層35を固定するようにした。こうした浴槽洗浄装置によれば、推進輪24が浴槽1の底面1b上でスリップするのを防いで、本体ケース8を確実に移動させることができる。従って、本体ケース8を速やかに移動させながら、底面1bの洗浄を余すところなく確実に行うことができる。
(実施例1)図1から図7に本発明に係る浴槽洗浄装置の実施例1を示す。本発明における前後、左右、上下とは、図1および図2に示す交差矢印と、交差矢印の近傍の前後・左右・上下の表記に従う。図1、図2において符号1は平面視が前後に長い長方形状の浴槽、2は浴槽1の右隣に設けられた洗い場である。浴槽1の上開口の周縁には縁壁3が張り出されており、洗い場2側の縁壁3と洗い場2が仕切壁4を介して連続されている。符号5は洗い場2の排水口、符号6は排水栓(図7参照)である。浴槽1の内周面1aと底面1bを自動的に洗浄するために、浴槽1の内部に浴槽洗浄装置(以下単に洗浄装置と言う)が、湯水に浮かんだ状態で配置されている。
洗浄装置は、浴槽1内の湯水に浸漬した状態で浮かぶ中空の本体ケース8を備えており、平面視が正方形状の本体ケース8の各辺部と各隅部に洗浄凹部9・10が凹み形成されて、その内部に4個の洗浄ブラシ11と、4個の隅洗浄ブラシ12とが配置されている。図2および図3に示すように、本体ケース8の内部には、洗浄ブラシ11および隅洗浄ブラシ12を回転駆動するブラシ駆動構造13と、浴槽1内の湯水を排水する排水構造14と、洗浄ブラシ11用の洗浄凹部9に浴室用洗剤を送給する洗剤送給構造15と、各構造13・14・15の駆動電源となる2次電池16と、制御部17などが配置されている。
洗浄ブラシ11は、両端がベアリング20で回転自在に軸支されるブラシ軸21と、ブラシ軸21に固定されるブラシ筒22と、ブラシ筒22に植毛された一群のブラシ毛23とで構成されており、各ベアリング20とブラシ筒22の間に推進輪24が固定されている。ブラシ軸21は、本体ケース8の各辺部と平行に、かつ水平に配置されている。図3に示すようにブラシ軸21に固定された洗浄ブラシ11の周面は、本体ケース8の各辺部の外および底面の外へ露出しており、これらの露出部分が浴槽1の内周面1aおよび底面1bに接触して洗浄を行う。
図2では、4個の洗浄ブラシ11のうち、図2に向かって左側の1個の洗浄ブラシ11のみが浴槽1の内周面1aを接触洗浄しており、この洗浄ブラシ11と、同ブラシ11と対向する右側の洗浄ブラシ11が湯水中で回転することで、協働して推進力を発生させて、接触洗浄している洗浄ブラシ11を内周面1aに押付けて密着させている。また、接触洗浄している洗浄ブラシ11と隣接する前後2個の洗浄ブラシ11は湯水中で回転して推進力を発生させ、本体ケース8を内周面1aに沿って後方へ推進させる。そのために、本体ケース8が湯水の液面に浮かんでいる状態では、洗浄ブラシ11の上周面が液面の外に露出するようになっている(図3参照)。なお、各洗浄ブラシ11と各推進輪24が発生させる推進力の方向の詳細は後述する。推進輪24を備えた浴槽洗浄装置は、本体ケース8を大きな推進力で推進移動できる点で有利であるが、洗浄ブラシ11自体が推進力を発揮するので、推進輪24は省略してあってもよい。
図4に示すように隅洗浄ブラシ12は、洗浄ブラシ11と同様に、上下両端がベアリング26で回転自在に軸支されるブラシ軸27と、ブラシ軸27に固定されるブラシ筒28と、ブラシ筒28に植毛された一群のブラシ毛29とで構成されている。隅洗浄ブラシ12のブラシ軸27は湯水の液面と交差する縦長軸状に形成されており、垂直に配置されている。多くの場合、浴槽1の内周面1aは下すぼまり状に傾斜されているので、図4に示すように、隅洗浄ブラシ12は逆円錐台形に形成されており、その下すぼまりテーパー状の周面が洗浄凹部10の外へ露出されている。この露出部分が、浴槽1の内周面1aおよび隣接する内周面1aの間の内隅面1cに接触して洗浄を行うが、内周面1aを洗浄ブラシ11で洗浄するとき、隅洗浄ブラシ12によっても内周面1aを洗浄できる。また、隅洗浄ブラシ12の洗浄方向と洗浄ブラシ11の洗浄方向が異なるものとされているため、内周面1aに付着した湯垢やぬめりを、洗浄ブラシ11と隅洗浄ブラシ12で異なる方向からこすり落として確実に洗浄できる。隅洗浄ブラシ12の上端の直径寸法は、洗浄ブラシ11の直径寸法の約75パーセント弱に設定されており、隅洗浄ブラシ12の上端の半径寸法は、内隅面1cの上下中途部の円弧半径より小さく設定されている。
図5において推進輪24は、ブラシ軸21に固定されるボス31と、ボス31から放射状に延びる8個の推進板32と、推進板32の先端どうしを繋ぐリング状の外輪枠(接触部)33を備えている。個々の推進板32は門形に形成されており、湯水中で回転することにより推進力を発生させる。そのために、本体ケース8が湯水の液面に浮かんでいる状態では、推進輪24の上周面が液面の外に露出されている(図5参照)。外輪枠33には、隣接する推進板32で挟まれる空間に連通する窓開口34が形成されており、この窓開口34を除く外輪枠33の表面に、摩擦力が大きなシリコンやゴムなどのエラストマー製のタイヤ層35が固定されている。なお、推進輪24は、外輪枠33を備えている必要はなく、その場合には各推進板32の先端を接触部33にして、その表面にタイヤ層35が設けてあればよい。
推進輪24の外直径は、洗浄ブラシ11の直径より小さく設定されており、その周面の殆どが洗浄凹部9内に収容され、下周面の一部のみが本体ケース8の底壁8bより下方に露出する状態で洗浄凹部9に収容されている。これは、洗浄ブラシ11が内周面1aを接触洗浄しているとき、推進輪24が内周面1aと接触して洗浄の邪魔になるのを防ぐためである。因みに、推進輪24が内周面1aに接当する状態では、推進輪24が内周面1aから回転抵抗を受けるため、モーター38に余分な負荷が掛かるが、こうした余分な負荷を解消できる利点もある。また、浴槽1の底面1bを洗浄するとき、底面1bで支持された推進輪24の推進力によって本体ケース8を所定のパターンで走行移動させて、底面1bの接触洗浄を行えるようにするためである。
図4においてブラシ駆動構造13は、各隅部で隣接する洗浄ブラシ11と隅洗浄ブラシ12を同時に駆動する4個のモーター38と、各モーター38の回転動力を各ブラシ軸21・27に伝動する4組のギヤトレインで構成されている。4組のギヤトレインは、モーター38の上下に配置される下半側のギヤトレイン39Aと、上半側のギヤトレイン39Bで構成されている。下半側のギヤトレイン39Aは、モーター38の出力軸に固定される原動ギヤ40の動力を、中間ギヤ41と、終段ギヤ42を介して洗浄ブラシ11のブラシ軸21に減速して伝動する。上半側のギヤトレイン39Bは、先の原動ギヤ40の動力を、平歯車群43と一対の傘歯車44と終段ギヤ45などを介して隅洗浄ブラシ12のブラシ軸27に減速して伝動する。上記のように、洗浄ブラシ11と隅洗浄ブラシ12をブラシ駆動構造13で同時に回転駆動すると、隅洗浄ブラシ12を回転駆動するための駆動構造を別途設ける必要がないので、その分だけ浴槽洗浄装置の構造を簡素化して、全体コストを削減できる。また、浴槽洗浄装置を軽量化できる利点もある。
先に説明したように、内周面1aを洗浄する場合には、4個の洗浄ブラシ11のうち1個の洗浄ブラシ11のみが浴槽1の内周面1aを接触洗浄するが、そのときに各洗浄ブラシ11と隅洗浄ブラシ12とが回転駆動される方向を図2に示している。図2に向かって左側と右側の洗浄ブラシ11および推進輪24は、それぞれのブラシ軸21が前端側から見て反時計回転方向へ回転駆動されて、左向きの推進力を発生させている。また、左側の洗浄ブラシ11と同時に駆動される後左の隅洗浄ブラシ12は、上面から見て反時計回転方向に回転駆動され、右側の洗浄ブラシ11と同時に駆動される前右の隅洗浄ブラシ12は、上面から見て時計回転方向に回転駆動される。図2に向かって前側と後側の洗浄ブラシ11および推進輪24は、それぞれのブラシ軸21が右側面から見て時計回転方向へ回転駆動されて、後向きの推進力を発生させている。さらに、前側の洗浄ブラシ11と同時に駆動される前左の隅洗浄ブラシ12は、上面から見て時計回転方向に回転駆動され、後側の洗浄ブラシ11と同時に駆動される後右の隅洗浄ブラシ12は、上面から見て反時計回転方向に回転駆動される。
上記のように、洗浄ブラシ11のひとつが浴槽1の内周面1aを洗浄している状態においては、対向位置に設けた洗浄ブラシ11の回転動作に伴う推進力で、洗浄中の洗浄ブラシ11を浴槽1の内周面1aに押付けることができる。従って、洗浄中の洗浄ブラシ11を接触反力に抗して内周面1aに確実に密着させた状態で洗浄して、洗浄ブラシ11の洗浄効果をさらに向上することができる。
図2および図3において排水構造14は、湯水を加圧送給するポンプ48と、ポンプ48を回転駆動するモーター49と、ポンプ48で加圧された湯水を浴槽1の外へ排出する排水手段50などで構成する。ポンプ48の吸込口51は、個々の洗浄凹部9に連結された分岐通路52(図2参照)と連通されており、吸込口51と分岐通路52の間にフィルター53が配置されている。また、ポンプ48の吐出口に接続された吐出通路54の終端は、本体ケース8の上壁8aに設けたロータリージョイント55に接続されている。上記のように、ポンプ48の吸込口51にフィルター53を設けておくことにより、洗浄ブラシ11で除去された汚れ成分を湯水から濾しとって、汚れ成分がポンプ48の側へ吸い込まれるのをよく防止できる。図1に示すように排水手段50は弾性変形可能な軟質の排水ホース56と、排水ホース56を浴槽1の内周面1aに沿って周回可能に支持するホース支持枠57で構成されている。ホース支持枠57は、基端部分が吸盤60で縁壁3に固定される一対のアーム枠61と、アーム枠61の上端どうしを連結するリング枠62を備えており、排水ホース56はその中途部がリング枠62を上方へ通り抜ける状態で浴槽1の外へ導出している。
図1に示すように排水ホース56の中途部には、本体ケース8の周回移動に応じて伸縮変形するコイル状の伸縮部65が形成されており、その入口端はロータリージョイント55の出口に接続されている。また、排水ホース56の伸縮部65より出口側の中途部は、ホース支持枠57に装着したホース保持具66で固定保持されており、出口端は吸盤(ホース保持具)67で仕切壁4の下寄りに固定されている。ホース保持具66は、本体ケース8が周回移動するとき、排水ホース56が遊動して捻じれ、あるいは折曲がるのを防止するために設けられている。吸盤67は、排水ホース56を挿通するための挿通穴を備えたボス部67aと、ボス部67aと一体に形成される吸着部67bを備えており、仕切壁4に吸着部67bを吸着固定して排水ホース56を保持している。このように、吸盤67で排水ホース56を保持固定することにより、湯水の通過、或いは端部からの湯水の排出に伴う外力により排水ホース56が揺り動かされて暴れるのを防止することができる。上記のように排水ホース56は、その中途部と出口端をホース保持具66と吸盤67で保持しておくことが好ましいが、少なくともいずれか一方が設けてあればよい。また、排水手段50は、ホース支持枠57を省略して排水ホース56と、吸盤67で構成してあってもよく、その場合の吸盤67はホース保持具66を兼ねることとなる。
図3において洗剤送給構造15は、液体洗剤を収容するタンク70と、液体洗剤を加圧送給するポンプ71およびモーター72と、四方切換え弁73および同弁73を切換操作するソレノイド74と、四方切換え弁73と各洗浄凹部9を連通する洗剤通路75などで構成されている。洗剤は、四方切換え弁73を切換えることにより、浴槽1の内周面1aを接触洗浄している洗浄ブラシ11に向かって送給される。符号76は洗剤補給通路である。
制御部17は、図示していない起動スイッチをオン操作することで起動し、本体ケース8の各辺部に設けた位置センサー77と、本体ケース8の底壁に設けた液位センサー78の出力信号に基づき、ブラシ駆動構造13、排水構造14、および洗剤送給構造15の作動状態を制御する。位置センサー77および液位センサー78は、発光素子と受光素子を備えたフォトセンサーからなる。位置センサー77の受光素子は、本体ケース8の周囲辺部が洗浄対象となる内周面1aに接近したことを検知して、検知信号を制御部17に出力する。また、液位センサー78の受光素子は、揚水の液位を検出するとともに、湯水の液位が低下して本体ケース8の底壁が浴槽1の底面に接近したときに、検知信号を制御部17に出力する。位置センサー77はフォトセンサーである必要はなく、例えば、図2において左後の隅洗浄ブラシ12が隅部に達したときのモーター38の負荷変動、および/または後側の洗浄ブラシ11が後側の内周面1aに到達したときのモーター38の負荷変動を検知して、位置を特定する構造であってもよい。
洗浄装置を使用する場合には、タンク70に液体洗剤を充填し、ホース56をロータリージョイント55に接続して、図1に示すようにホース支持枠57のアーム枠61を浴槽1の縁壁3に固定する。また、ホース56をリング枠62に通してアーム枠61に沿わせた状態でホース保持具66に固定し、ホース56の出口端を吸盤67で固定する。この状態で本体ケース8を湯水に浮かべて、洗浄ブラシ11が浴槽1の左側の内周面1aの前後中央付近に接触する状態で起動スイッチをオン操作する。オン信号を受けた制御部17は、ブラシ駆動構造13、排水構造14、洗剤送給構造15の各モーター38・49・72を起動させて、洗浄ブラシ11による接触洗浄を開始させる。
洗浄を開始した状態における洗浄ブラシ11と隅洗浄ブラシ12は、図2に矢印で示す向きに回転駆動されて、図2に向かって左側の洗浄ブラシ11が内周面1aを洗浄し、同時に左側の内周面1aと正対する前後の隅洗浄ブラシ12が内周面1aを洗浄する。このとき、左右の洗浄ブラシ11とその両側の前後の推進輪24は左向きの推進力を発生するので、洗浄中の左側の洗浄ブラシ11を左側の内周面1aに密着させることができる。また、前後の洗浄ブラシ11およびその左右両側に装着した推進輪24は後向きの推進力を発生するので、本体ケース8を浴槽1の後側の内周面1aに向かって移動させながら洗浄することができる。なお、左右の洗浄ブラシ11については、前側から見て反時計回転方向へ回転駆動される場合を正転駆動とし、時計回転方向へ回転駆動される場合を逆転駆動とする。同様に前後の洗浄ブラシ11については、右側から見て時計回転方向へ回転駆動される場合を正転駆動とし、反時計回転方向へ回転駆動される場合を逆転駆動とする。
洗浄が進行するのに伴って、ロータリージョイント55とリング枠62の間の距離が増加し、両者55・62の中心を結ぶ仮想線の傾きが徐々に変化する。しかし、距離の増加は排水ホース56の伸縮部65が伸び変形して吸収する。また、本体ケース8の周回位置の違いに応じて仮想線の傾きが変化するが、この変化はロータリージョイント55が回動して、排水ホース56の導出方向を本体ケース8の位置の違いに応じて追随させることができる。従って、本体ケース8が移動することに伴って排水ホース56がねじれるのを確実に防止できる。さらに、浴槽1に設けられたホース保持具66に、排水ホース56の中途部が保持されるので、湯水の通過、或いは端部からの湯水の排出に伴う外力により排水ホース56が揺り動かされて暴れるのを確実に防止できる。また、排水ホース56の中途部がホース支持枠57に固定したホース保持具66で固定保持されるので、本体ケース8が内周面1aに沿って周回移動するとき、排水ホース56が本体ケース8の移動に伴う外力によって揺り動かされて暴れるのを確実に防止できる。これらにより、排水ホース56による湯水の排出を整然と行うことができる。
上記のように、洗浄ブラシ11のひとつが浴槽1の内周面1aを洗浄している状態において、隣接する辺部に設けた洗浄ブラシ11の回転動作に伴う推進力で、本体ケース8を浴槽1の内周面1aに沿って周回移動させることができる。従って、洗浄中の洗浄ブラシ11の位置を、浴槽1の内周面1aに沿って徐々に移動させながら内周面1aの洗浄を余すことなく確実に行って、洗浄効果を向上し均一化できる。
排水構造14のモーター49は、ブラシ駆動構造13が起動するのと同時に駆動されて、ポンプ48の送水作用によって湯水を洗い場2へと排水する。同様に、洗剤送給構造15のモーター72は、ブラシ駆動構造13が起動するのと同時に駆動されて、ポンプ71の送液作用によってタンク70内の液体洗剤を洗浄中の洗浄ブラシ11の周面に連続的に送給する。図6に示すように、本体ケース8が浴槽1の後側の内周面1aに接近してくると、後左の隅洗浄ブラシ12が浴槽1の内隅面1cを洗浄しながら、内隅面1cに案内されて右向きに移動し始める。やがて、後側の洗浄ブラシ11が後向きの推進力を受けて浴槽1の後側の内周面1aに押付けられると、前後の洗浄ブラシ11はそれまでと同じ回転方向に駆動されて、後側の洗浄ブラシ11および後側左右の隅洗浄ブラシ12が協同して後側の内周面1aの洗浄を行う。このとき、本体ケース8の後側に設けた位置センサー77の受光素子の信号強度が所定の値を越えた時点で、制御部17は左右の洗浄ブラシ11を駆動するモーター38を逆転駆動させ、洗浄ブラシ11のブラシ軸21を前端側から見て時計回転方向へ回転駆動させて右向きの推進力を発生させる。同時に、制御部17は四方切換え弁73を切換えて洗浄中の洗浄ブラシ11の周面に液体洗剤を連続して送給する。
以上のようにして、本体ケース8が浴槽1の後側の内周面1aの左端から右端まで移動して洗浄が終了したら、左右の洗浄ブラシ11はそれまでと同じ回転方向に駆動された状態のままで、右側の洗浄ブラシ11が右向きの推進力を受けて浴槽1の右側の内周面1aに押付けられて、右側の洗浄ブラシ11および右側前後の隅洗浄ブラシ12が協同して右側の内周面1aの洗浄を行う。このとき、本体ケース8の右側に設けた位置センサー77の受光素子の信号強度が所定の値を越えた時点で、制御部17は前後の洗浄ブラシ11を駆動するモーター38を逆転駆動させ、洗浄ブラシ11のブラシ軸21を右側面から見て反時計回転方向へ回転駆動させて、前向きの推進力を発生させる。同時に、制御部17は四方切換え弁73を切換えて洗浄中の洗浄ブラシ11の周面に液体洗剤を断続的に送給する。
本体ケース8が浴槽1の右側の内周面1aの後端から前端まで移動して洗浄が終了したら、前後の洗浄ブラシ11はそれまでと同じ回転方向に駆動された状態のままで、前側の洗浄ブラシ11が前向きの推進力を受けて浴槽1の前側の内周面1aに押付けられて、前側の洗浄ブラシ11および前側左右の隅洗浄ブラシ12が協同して前側の内周面1aの洗浄を行う。このとき、本体ケース8の前側に設けた位置センサー77の受光素子の信号強度が所定の値を越えた時点で、制御部17は左右の洗浄ブラシ11を駆動するモーター38を正転駆動させ、洗浄ブラシ11のブラシ軸21を前端側から見て反時計回転方向へ回転駆動させて、左向きの推進力を発生させる。同時に、制御部17は四方切換え弁73を切換えて洗浄中の洗浄ブラシ11の周面に液体洗剤を連続的に送給する。
本体ケース8が浴槽1の前側の内周面1aの右端から左端まで移動して洗浄が終了したら、左右の洗浄ブラシ11はそれまでと同じ回転方向に駆動された状態のままで、左側の洗浄ブラシ11が左向きの推進力を受けて浴槽1の左側の内周面1aに押付けられて、左側の洗浄ブラシ11および左側前後の隅洗浄ブラシ12が協同して左側の内周面1aの洗浄を行う。このとき、本体ケース8の左側に設けた位置センサー77の受光素子の信号強度が所定の値を越えた時点で、制御部17は前後の洗浄ブラシ11を駆動するモーター38を正転駆動させ、洗浄ブラシ11のブラシ軸21を右側面から見て時計回転方向へ回転駆動させて、後向きの推進力を発生させる。同時に、制御部17は四方切換え弁73を切換えて洗浄中の洗浄ブラシ11の周面に液体洗剤を連続的に送給する。
以上のように、洗浄装置はその本体ケース8が浴槽1の4個の内周面1aに沿って周回移動しながら、内周面1aの洗浄を行う。また、本体ケース8が周回移動するのに伴って、排水構造14で排水した分だけ湯水の液位を徐々に低下させながら、浴槽1の内周面1aを洗浄開始位置から底面へ向かって洗浄することができる。従って、浴槽1の内周面1aの全てを自動的に洗浄できることとなる。図5に示すように湯水の液位が低下して、本体ケース8の底壁が浴槽1の底面1bに接近し、本体ケース8の底壁に設けた位置センサー77の受光素子の信号強度が所定の値を越えた時点で、制御部17は本体ケース8を移動させて底面の接触洗浄を行う。このとき、推進輪24の周面のタイヤ層35は浴槽1の底面1bで受止められて洗浄装置の重量を支持しており、湯水の液位は、分岐通路52の入口位置より高い位置にある。従って、湯水の液位が分岐通路52の入口位置に達するまでの間、排水構造14は作動し続ける。しかし、湯水の液位が分岐通路52の入口位置に達して、分岐通路52に湯水が供給されなくなると、そのことを図示していないセンサー(例えば流量センサー)で検知して、制御部17がポンプ48用のモーター49の駆動を停止させる。これにより、ポンプ48が空転するのを防止して浴槽洗浄装置の消費電力を抑制でき、ポンプ48の早期劣化を防止できる。洗剤送給構造15は、四方切換え弁73を一定時間おきに切換えて、各洗浄ブラシ11の周面に液体洗剤を連続的に送給する。
底面1bの洗浄は例えば図7に示すように本体ケース8を前後左右に移動させながら行う。本体ケース8を左側へ移動させるときは、左右の推進輪24のブラシ軸21を前端側から見て反時計回転方向へ回転駆動させて、左向きの推進力を発生させる。このとき、前後の推進輪24は停止させておく。また、本体ケース8を後側へ移動させるときは、前後の推進輪24のブラシ軸21を右側面から見て時計回転方向へ回転駆動させて、後向きの推進力を発生させる。このとき、左右の推進輪24は停止させておく。さらに、本体ケース8を右側へ移動させるときは、左右の推進輪24のブラシ軸21を前端側から見て時計回転方向へ回転駆動させて、右向きの推進力を発生させる。このとき、前後の推進輪24は停止させておく。以後、上記の移動動作を繰返し行うことにより、浴槽1の底面1bの全体を洗浄することができる。推進輪24が推進力を発生する状態では、エラストマー製のタイヤ層35が底面1b上でスリップするのを防いで、本体ケース8を確実に移動させることができる。従って、本体ケース8を速やかに移動させながら、底面1bの洗浄を余すところなく確実に行える。底面1bの洗浄が終了したら、洗浄装置の起動スイッチをオフして、洗浄装置およびホース支持枠57を浴槽1の外へ取出し、排水栓6を開放して残っている湯水を排水する。残っている湯水の排水は、底面1bの洗浄を開始した直後であってもよい。
以上のように構成した洗浄装置によれば、洗浄ブラシ11と隅洗浄ブラシ12の洗浄作用によって、浴槽1の内周面1aと底面1bをくまなく洗浄できる。また、湯水の液位が低下してポンプ48の加圧送給作用が停止した状態であっても、洗浄ブラシ11が推進力を発生させて、本体ケース8を内周面1aに密着させ、さらに内周面1aに沿って周回移動させながら、引続き内周面1aの洗浄を行うことができる。従って、従来の浴槽掃除機において避けられなかった、浴槽1の底面1b寄りの内周面1aにやり残し洗浄部が発生するのを解消して、浴槽1の内周面1aの全てを自動的に洗浄できる使い勝手に優れた浴槽洗浄装置が得られる。また、本体ケース8の4隅部に隅洗浄ブラシ12が配置してあるので、浴槽1の内周面1aに加えて、浴槽1の内隅面1cの洗浄も自動的に行って、内隅面1cの洗浄を別途行う手間を省くことができる。
洗浄時には、複数の洗浄ブラシ11の回転動作に伴う推進力で、洗浄ブラシ11を浴槽の内周面に押付けながら、本体ケース8を浴槽1の内周面1aに沿って周回移動させ、排水手段50の排水作用で湯水の液位を徐々に低下させて浴槽1の内周面1aを洗浄することができる。また、各ブラシ軸21に2個ずつ推進輪24が固定してあるので、推進輪24を回転駆動することで、ブラシ軸21と直交する向きの推進力を発生させることができる。従って、洗浄ブラシ11の推進力と推進輪24の推進力によって洗浄ブラシ11を浴槽1の内周面1aに密着させ、あるいは、両者11・24の推進力によって本体ケース8を内周面1aに沿って移動させることができる。これにより、洗浄ブラシ11の洗浄効果を向上しながら、本体ケース8の移動をきびきびと的確に行うことができる。さらに、浴槽1内の湯水を、排水ホース56を介して排出するので、ポンプ48で加圧送給された湯水を連続して浴槽1の外へ確実に排出しながら、液位を徐々に低下できる。また、ポンプ48の駆動状態を制御部17で調整することにより、浴槽1内の液位を洗浄に適した速度で過不足なく低下させて、内周面1aの洗浄を好適に行うことができる。
本体ケース8を湯水に浮かべるための構造として、本体ケース8に空気を溜める空間を設けておき、空間に接続した供給用エアーポンプと排気用エアーポンプで、空間内部の空気の吸排気を交互に行うことにより、本体ケース8を湯水上で上下に振動させることができる。各ポンプ用の吸気口と排気口は、それぞれ本体ケース8の上部に形成してある。こうした浴槽用洗浄装置によれば、洗浄ブラシ11および隅洗浄ブラシ12による接触洗浄に加えて、上下成分を含んだ擦り洗いを行って洗浄効果を高めることができる。
本体ケース8を湯水上で上下に振動させる構造としては、本体ケース8に空気を溜める空間を設け、同空間に空気の抜け出しを許す排気穴を形成しておいて、供給用エアーポンプから先の空間に空気を断続的に供給することで、浮力を変化させるようにすることができる。この場合の本体ケース8には、先の空間とは別に浮力付与専用の空間を設けておくのが好ましい。
(実施例2)図8ないし図10に本発明に係る洗浄装置の実施例2を示す。実施例2に係る洗浄装置は、基本的に実施例1の洗浄装置と同等であるが、以下の各点が実施例1の洗浄装置と異なる。本体ケース8の左辺部と後辺部に限って洗浄ブラシ11が配置され、両ブラシ11の隣接隅部に隅洗浄ブラシ12が配置されている。また、推進輪24とは別に推進構造80が設けられている点、さらに洗剤送給構造15を変更する点が実施例1の洗浄装置と異なる。さらに、隅洗浄ブラシ12の構造を変更して、浴槽1の内隅面1cにおける姿勢変更を的確に行えるようにした。位置センサー77は、洗浄ブラシ11が配置してある本体ケース8の各辺部に限って設けられている。
推進構造80は、排水構造14のポンプ48の吐出通路54から分岐される噴水通路81と、噴水通路81の下流側に配置される垂直舵82と、垂直舵82を変向操作する操舵ソレノイド83と、本体ケース8の前右隅の下面に配置したタイヤ84と、タイヤ84を変向操作する変向ソレノイド85などで構成されている。本体ケース8の下面には、後側の洗浄凹部9から底壁8bの前縁にわたって通水通路86が凹み形成されており、その内部に噴水通路81の出口81aと垂直舵82が配置され、垂直舵82より前側に前拡がりテーパー状の操舵通路87が設けられている。
噴水通路81にはポンプ48から送給される加圧水の一部が送給されて、その出口81aから垂直舵82の後縁に向かって噴出することにより、噴出反力によって後向きの推進力が発生される。また、垂直舵82を操舵ソレノイド83で変向操作することにより、本体ケース8に変向モーメントを作用させて、後述する変向接触部分29bと協同して、浴槽1の内隅面1cにおける本体ケース8の変向動作を促進できる。タイヤ84の下周面は本体ケース8の底壁8bより下方に露出させてあって、浴槽1の底面1bの洗浄を行うとき、推進輪24と協同して本体ケース8を支持する。
洗剤送給構造15は、塩水タンク90と、同タンク90に湯水を送給するポンプ91、およびモーター92と、塩水タンク90から送給された塩水を電気分解する電解タンク93を備えており、電解タンク93内で電気分解されたアルカリ性電解水を洗浄凹部9に送給して洗浄を行う。電解タンク93の内部はイオン交換膜94で区分されており、片方の区分に陰電極95が配置され、他方の区分に陽電極96が配置されている。水酸化ナトリウムを多く含むアルカリ性電解水は陰電極95側の区分で生成され、陽電極96側の区分には次亜塩素酸ナトリウムを多く含む酸性電解水が生成される。洗浄装置を使用する場合には、塩水タンク90内に塩97を投入しておく必要がある。酸性電解水は、廃棄通路98を介して本体ケース8の外へ排出される。
隅洗浄ブラシ12は、基本的に実施例1の隅洗浄ブラシ12と同じであるが、ブラシ毛29が、先端の接触洗浄部分29aと、接触洗浄部分29aより基端側に設けられて、ブラシ毛29の周囲を覆うシリコン樹脂製の変向接触部分29bで構成されている点が異なる。変向接触部分29bの基端はブラシ筒28に固定されている。図8に示すように、洗浄ブラシ11が浴槽1の左側の内周面1aを洗浄している状態では、隅洗浄ブラシ12の接触洗浄部分29aが内周面1aに接触して洗浄を補助している。隅洗浄ブラシ12の回転駆動方向は、浴槽1の内隅面1cにおける本体ケース8の変向方向と逆向きに設定されている。そのため、隅洗浄ブラシ12が内隅面1cに達した状態では、隅洗浄ブラシ12に作用する回転反力で、本体ケース8に右向きの変向モーメントを作用させることができる。さらに、とげ状の変向接触部分29bの先端が内隅面1cと接触して、本体ケース8を浴槽1の左側の内周面1aから離れる向きに変向させる。従って、本体ケース8を内隅面1cにおいて効果的に変向させることができる。
洗浄装置を使用する場合には、塩水タンク90に塩97を投入し、ホース56およびホース支持枠57を使用可能な状態にし、本体ケース8を湯水に浮かべて、起動スイッチをオン操作する。図8に示す状態では左側の洗浄ブラシ11が、左側前後の推進輪24の推進力で浴槽1の左側の内周面1aに密着されて洗浄を行っている。また、後側の洗浄ブラシ11と推進輪24は、右側面から見て時計回転方向へ回転駆動されて、噴水通路81から噴出される加圧水の噴出反力と協同して、後向きの推進力を発生し本体ケース8を後方へ移動させる。洗浄開始からしばらくすると、洗浄中の洗浄ブラシ11の周面にアルカリ性電解水が送給されるので、浴槽1の内面に付着している湯垢やぬめりを確実に洗浄して洗浄効果を高めることができる。この実施例に係る浴槽洗浄装置は、実施例1の浴槽洗浄装置と同様にホース支持枠57が省略してあってもよい。また、洗浄ブラシ11自体が推進力を発揮するので、推進輪24は省略してあってもよい。
洗浄が進行するのに伴って、伸縮部65が伸び変形し、ロータリージョイント55が回動するのは、実施例1の洗浄装置と同じである。図8に示すように、本体ケース8が浴槽1の後側の内周面1aに接近してくると、隅洗浄ブラシ12の接触洗浄部分29aで内隅面1cを洗浄しながら、とげ状の変向接触部分29bの先端が内隅面1cと接触して、本体ケース8を浴槽1の左側の内周面1aから離れる向きに変向させる。同時に、制御部17はケース後面に設けた位置センサー77の接近信号を受けて操舵ソレノイド83を作動させ、垂直舵82を図8に向かって反時計回転方向へ回動させる。これに伴い、湯水に浮かんでいる本体ケース8に右向きの変向モーメントが作用するため、本体ケース8は図10に示すように、隅洗浄ブラシ12が浴槽1の後側の内周面1aに接触した状態のままで右向きに回動する。上記のように、本体ケース8を内隅面1cにおいて効果的に変向させるために、隅洗浄ブラシ12の駆動方向を本体ケース8の変向方向と逆向きに設定している。
最終的には、それまで左側の内周面1aの洗浄を行っていた洗浄ブラシ11が、浴槽1の後側の内周面1aに密着して洗浄を行う。この状態では、制御部17は後側の内周面1aと正対する位置センサー77の接近信号を受けて操舵ソレノイド83を作動させ、垂直舵82を中立位置へ戻す。洗浄に携わっていない側の洗浄ブラシ11と推進輪24は推進力を発生させて、本体ケース8を内周面1aの左端から右端へ向かって移動させる。以後は、本体ケース8を浴槽1の各辺部に沿って移動させながら内周面1aを洗浄し、隅洗浄ブラシ12が浴槽1の内隅面1cに到達する毎に方向の変換を行うことにより、浴槽1の内面をくまなく洗浄できる。その間に、湯水の一部はホース56を介して洗い場へ排出されるので、湯水の液位を徐々に低下させることができる。
湯水の液位が低下して、推進輪24とタイヤ84が浴槽1の底面1bで受止められた状態では、本体ケース8の底壁に設けた位置センサー77の受光素子の信号強度が所定の値を越えるので、制御部17は本体ケース8を移動させて底面の接触洗浄を行う。このときの湯水の液位は、分岐通路52の入口位置より高い位置にあるので、湯水の液位が分岐通路52の入口位置に達するまでの間、排水構造14は作動し続ける。湯水の液位が分岐通路52の入口位置に達して、分岐通路52に湯水が供給されなくなると、そのことを図示していないセンサー(例えば流量センサー)で検知して、制御部17がポンプ48用のモーター49の駆動を停止させる。これにより、ポンプ48が空転するのを防止して浴槽洗浄装置の消費電力を抑制でき、ポンプ48の早期劣化を防止できる。洗剤送給構造15は、洗浄ブラシ11の周面にアルカリ性電解液を連続的に送給する。
以後は、図7で説明したように、本体ケース8を前後左右に移動させながら底面1bの洗浄を行う。このとき、本体ケース8の隣接辺部に設けた2個の洗浄ブラシ11のそれぞれが底面1bに接触して洗浄を行う。底面1bの洗浄時に、本体ケース8を浴槽1の各辺部に沿って移動させるのは、各洗浄ブラシ11に設けた推進輪24であり、ブラシ駆動構造13用の2個のモーター38を正転駆動し、逆転駆動し、あるいは片方のモーター38を停止させて推進力を発生させる。また、本体ケース8の方向変換は、タイヤ84を変向ソレノイド85で変向操作することで行うことができ、例えば、タイヤ84を変向ソレノイド85で反時計回転方向へ変向操作すると、本体ケース8に右向きの変向モーメントを作用させて、右方向へ方向変換できる。また、タイヤ84を時計回転方向へ変向操作すると、本体ケース8を左方向へ方向変換できる。このとき、より大きな変向モーメントを本体ケース8に作用させるために、タイヤ84を各洗浄ブラシ11から遠く離れた本体ケース8の前右隅の下面に配置している。因みに、タイヤ84を図8に示す位置から左右いずれか一方へ90度変向操作すると、回転駆動されている推進輪24と同じ向きにタイヤ84を転動させて、本体ケース8の移動を円滑に行うことができる。他は実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同じとする。
以上のように実施例2に係る洗浄装置においては、片方の洗浄ブラシ11は内周面1aの洗浄に携わらず、推進輪24と協同して推進力を発生させるだけであり、他方の洗浄ブラシ11のみが内周面1aの洗浄を行う。また、隅洗浄ブラシ12と推進構造80が協同して、本体ケース8を内隅面1cにおいて変向操作するので、洗浄に携わる洗浄ブラシ11を浴槽1の各辺部の内周面1aに沿わせて確実に密着できる。実施例2に係る洗浄装置は、実施例1で説明した洗浄装置に比べて、洗浄ブラシ11および隅洗浄ブラシ12の数が少ないうえ、その分だけブラシ駆動構造13を簡素化できるので、洗浄装置の製造に要するコストを削減できる。
(実施例3)図11は推進構造80の一部を変更した実施例3を示している。そこでは、垂直舵82に換えて変向ノズル100を設け、同ノズル100を操舵ソレノイド83で反時計回転方向へ傾動操作することにより、湯水に浮かんでいる本体ケース8に右向きのモーメントを作用させて、右向きに回動できるようにした。この実施例における噴水通路81の出口81aは、変向ノズル100の入口内に位置させてあるので、出口81aから噴出された加圧水の向きを変向ノズル100で右斜め前へ変向させることにより、本体ケース8に右向きのモーメントを作用させることができる。
(実施例4)図12に洗浄ブラシの構造を変更した実施例4を示す。そこでは、本体ケース8の後側の辺部に、洗浄ブラシ11に比べて軸方向の長さが短い2個の小形洗浄ブラシ11A・11Bを設け、これらの洗浄ブラシ11A・11Bをそれぞれ専用のブラシ駆動構造13で独立して駆動できるようにした。小形洗浄ブラシ11A・11Bのブラシ軸21には、終段ギヤ42に近い側に限って小形推進輪24A・24Bが設けられている。本体ケース8の下面には、実施例2で説明した噴水通路81を設け、垂直舵82は省略した。また、通水通路86の前端中央にタイヤ84を設けて図示していない変向ソレノイド85で変向操作できるようにした。
左側の洗浄ブラシ11が、左側前後の推進輪24の推進力で浴槽1の左側の内周面1aに密着されて洗浄を行っている場合には、小形洗浄ブラシ11A・11Bおよび小形推進輪24A・24Bは、図8で説明した後側の洗浄ブラシ11と同様に、右側面から見て時計回転方向に駆動されて後向きの推進力を発生している。しかし、隅洗浄ブラシ12が内隅面1cに到達すると、制御部17はケース後面に設けた位置センサー77の接近信号を受けて左右の小形洗浄ブラシ11A・11Bの駆動方向を異ならせて本体ケース8に右向きのモーメントを作用させる。詳しくは、図12に向かって左側の小形洗浄ブラシ11Aを、右側面から見て時計回転方向にゆっくりと回転駆動し、図12に向かって右側の小形洗浄ブラシ11Bを、右側面から見て反時計回転方向に高速度で回転駆動して、湯水に浮かんでいる本体ケース8に右向きのモーメントを作用させる。これにより、本体ケース8は図12に示すように、隅洗浄ブラシ12が浴槽1の後側の内周面1aに接触した状態のままで右向きに回動し、それまで左側の内周面1aの洗浄を行っていた洗浄ブラシ11が、浴槽1の後側の内周面1aに密着して洗浄を行う。
上記のように、洗浄に携わる洗浄ブラシ11が浴槽1の後側の内周面1aに密着した状態では、制御部17は位置センサー77の接近信号を受けて、小形洗浄ブラシ11A・11Bの駆動方向を、図12に向かって左側の小形洗浄ブラシ11Aと同じ向きで、方向変換前の回転速度で駆動する。これにより、本体ケース8には、噴水通路81の噴出反力と、小形洗浄ブラシ11A・11Bおよび小形推進輪24A・24Bの推進力が作用するので、後側の内周面1aに沿って右向きに移動する。以後は、本体ケース8を浴槽1の各辺部に沿って移動させながら内周面1aを洗浄し、隅洗浄ブラシ12が浴槽1の内隅面1cに到達する毎に本体ケース8の方向の変換を行うことにより、浴槽1の内面をくまなく洗浄できる。
湯水の液位が低下して、推進輪24・24A・24Bとタイヤ84が浴槽1の底面1bで受止められた状態では、制御部17は本体ケース8の底壁に設けた位置センサー77の接近信号を受けて、本体ケース8を前後左右に移動させて底面1bの接触洗浄を行う。このときの湯水の液位は、分岐通路52の入口位置より高い位置にあるので、湯水の液位が分岐通路52の入口位置に達するまでの間、排水構造14は作動し続ける。湯水の液位が分岐通路52の入口位置に達して、分岐通路52に湯水が供給されなくなると、そのことを図示していないセンサー(例えば流量センサー)で検知して、制御部17がポンプ48用のモーター49の駆動を停止させる。これにより、ポンプ48が空転するのを防止して浴槽洗浄装置の消費電力を抑制でき、ポンプ48の早期劣化を防止できる。洗剤送給構造15は、洗浄ブラシ11の周面に液体洗剤を連続的に送給する。
底面1bの洗浄を行うとき、本体ケース8を浴槽1の各辺部に沿って移動させるのは、推進輪24と、小形推進輪24A・24Bであり、3個のモーター38を正転駆動し、逆転駆動し、あるいは特定のモーター38停止させて推進力を発生させる。また、本体ケース8の方向変換は、小形推進輪24A・24Bを互いに逆転駆動し、タイヤ84を変向ソレノイド85で変向操作することで行うことができる。例えば、小形推進輪24A・24Bを図12に示す向きに回転駆動し、さらにタイヤ84を変向ソレノイド85で反時計回転方向へ変向操作すると、本体ケース8に右向きの変向モーメントを作用させて、右方向へ方向変換できる。以上のように、実施例4に係る洗浄装置においては、本体ケース8の方向変換を、独立して駆動される小形推進輪24A・24Bできびきびと行うことができる。
(実施例5)図13に排水手段50を変更した実施例5を示す。そこでは、排水手段50を排水ノズル101で構成して、排水ノズル101を吐出通路54の終端に接続固定した。本体ケース8が浴槽1の内周面1aに沿って1周回して、洗い場2側の内周面1aに達する毎に、制御部17は周回移動を停止した状態でポンプ48を一定時間だけ作動させ、浴槽1内の湯水を排水ノズル101から噴出させて、縁壁3を越える放物線に沿って洗い場2へ放水する。そのために、排水ノズル101の噴出方向は、本体ケース8が浴槽1の洗い場2側の内周面1aに位置している状態において、洗い場2側の縁壁3の上方に向かって斜めに設定されている。このように、実施例5の洗浄装置は、本体ケース8が1周回する毎に、ポンプ48を作動させて浴槽1内の湯水を排水ノズル101から断続的に噴出して、湯水の液位を低下させる。こうした排水構造14によれば、湯水を浴槽1の外へ向かって直接的に放水できるので、本体ケース8の周回移動を抵抗なく円滑に行うことができる。因みに、排水ホース56を使用する場合には、本体ケース8が周回移動するとき排水ホース56を同行移動させる必要があるので、その分だけ移動抵抗が生じるのを避けられない。
湯水の液位が低下するのに伴い、排水ノズル101から縁壁3までの高さが徐々に高くなる。そのため、制御部17は、本体ケース8が浴槽1の内周面1aに沿って周回移動する毎に、液位センサー102から出力される検知信号に基づき、排水構造14のモーター49の駆動回転数を増加してポンプ48の吐出圧を増加させ、噴出水をより高い位置まで到達できるようにしている。液位センサー102としては、ポンプ48の吐出流量を検知する流量センサーを使用することができ、制御部17は一定量の湯水が放水されるごとにポンプ48を停止させ、次回のポンプ作動時のモーター49の駆動回転数を増加させる。こうした洗浄装置によれば、排水ノズル101から排出される湯水の放水高さを液位の低下に応じて徐々に高くして、洗浄が終了するまでの間湯水の排出を安定した状態で確実に行える。また、ホース56やホース支持枠57を使用する必要がないので、洗浄装置の取扱いをより簡便に行うことができる。
本体ケース8が浴槽1の内周面1aに沿って1周回したことを明確化するために、浴槽1の洗い場2側の縁壁3に位置基準体を固定しておくことがきる。位置基準体には上向きに放射された検知光を下向きに反射する反射鏡が設けてあり、本体ケース8に設けた投光-受光型の光センサーで反射光を受光することで、本体ケース8が位置基準体の真下まで移動したこと、つまり1周回したことを特定できる。また、投光-受光型の光センサーは、1周回する毎に液位の低下を検知する液位センサー102として利用することができる。
(実施例6)図14は排水手段50を変更した実施例6を示している。そこでは、排水手段50を排水口5に装着される排水栓104で構成して、湯水が少しずつゆっくりと排水されるようにした。排水栓104は、排水口5に嵌め込まれるゴム成形品からなり、その中央に、直径が数mmの排水穴105が上下貫通状に形成してある。こうした洗浄装置によれば、ポンプ48やモーター49を省略して排水構造14を著しく簡素化できるので、洗浄装置の製造に要するコストをさらに削減できる。
上記の実施例以外に、排水ホース56はフレキシブルホースで形成することができる。浴槽1の平面視形状は、四角形以外に円形、長円形、楕円形などに形成されていることがある。こうした場合には、本体ケース8を浴槽1の内周面1aに沿って周回移動させるだけでよいので、本体ケース8を変向移動させるための推進構造80や隅洗浄ブラシ12などを省略して、洗浄装置の全体コストを削減することができる。本体ケース8は、平面視において四角形状に形成する必要はなく、円形や楕円形、あるいは三角形に形成してあってもよい。また、本体ケース8が平面視において円形に形成してある場合には、洗浄ブラシ11および隅洗浄ブラシ12の配列形態や配置個数は、実施例1と同じにするとよい。さらに、本体ケース8が平面視において三角形に形成してある場合には、各辺部に洗浄ブラシ11を配置し、各頂部に隅洗浄ブラシ12を配置するとよい。隅洗浄ブラシ12のブラシ軸27は垂直に配置する必要はなく、内周面1aの傾斜に沿って傾斜されていてもよい。
浴槽洗浄装置は、本体ケース8に少なくともひとつの洗浄ブラシ11が配置してあればよい。その場合には、洗浄ブラシ11が浴槽1の内周面1aを洗浄している状態において、洗浄ブラシ11の回転動作に伴う推進力によって、洗浄中の洗浄ブラシ11を浴槽1の内周面1aに押付けることができる。そのため、洗浄中の洗浄ブラシ11を、その接触反力に抗して内周面1aに確実に密着させた状態で回転駆動して洗浄することができる。従って、洗浄ブラシ11による洗浄効果の向上を図ることができる。