JP7048102B2 - 免疫賦活活性を有する核酸多糖複合体の抗腫瘍薬としての応用 - Google Patents

免疫賦活活性を有する核酸多糖複合体の抗腫瘍薬としての応用 Download PDF

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特許法第30条第2項適用 刊行物等1:第69回消化器外科学会(The 69th General Meeting of the Japanese Society of Gastroenterological Surgery)のオンライン抄録集、公開日:平成26年7月7日 刊行物等2:第69回消化器外科学会(The 69th General Meeting of the Japanese Society of Gastroenterological Surgery)、「[WS-8]ワークショップ8:ベンチからベッドへ消化器癌の基礎研究成果」、公開日:平成26年7月17日 刊行物等3:The 73rd Annual Meeting of the Japanese Cancer Association(第73回日本癌学会学術総会)のオンラインプログラム、公開日:平成26年9月10日 刊行物等4:第18回日本がん免疫学会総会プログラム/抄録集、公開日:平成26年6月30日 刊行物等5:第18回日本がん免疫学会総会 口頭発表・スライド、公開日:平成26年8月1日
本発明は、新規がん治療に関する。
CpGオリゴヌクレオチド(CpG ODN)は、免疫賦活性のCpGモチーフを含有する、短い(約20塩基対)、一本鎖の合成DNA断片であって、Toll様受容体9(TLR9)の強力なアゴニストであり、樹状細胞(DCs)及びB細胞を活性化して、I型インターフェロン(IFNs)及び炎症性サイトカインを産生させ(非特許文献1、2)、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応を含む、Th1型の液性及び細胞性免疫反応のアジュバントとして作用する(非特許文献3、4)。そこで、CpG ODNは、感染症、癌、喘息及び花粉症に対して可能性のある免疫療法剤とみなされてきた(非特許文献2、5)。
骨格配列及び免疫賦活特性がそれぞれ異なる、少なくとも4つの型のCpG ODNがある(非特許文献6)。D型(A型とも呼ばれる)CpG ODNは、典型的には、ホスホジエステル(PO)骨格及びホスホロチオエート(PS)ポリGテイルと共に1つの回文構造のCpGモチーフを含み、形質細胞様DCs(pDCs)を活性化して大量のIFN-αを産生させるが、pDC成熟化やB細胞活性化を誘導できない(非特許文献7、8)。他の3つの型のODNは、PS骨格からなる。K型(B型とも呼ばれる)CpG ODNは、典型的には、非回文構造の、複数のCpGモチーフを含有し、B細胞を強力に活性化してIL-6を産生させ、pDCsを活性化して成熟化させるが、ほとんどIFN-αを産生しない(非特許文献8、9)。近年、開発されたC型及びP型のCpG ODNはそれぞれ1つ及び2つの回文構造CpG配列を含有しており、双方ともK型の様にB細胞を活性化させ、D型の様にpDCsを活性化させることができるが、P型CpG ODNと比較して、C型CpG ODNは、IFN-α産生をより弱く誘導する(非特許文献10-12)。特許文献1に、多数の優れたK型CpG ODNが記載されている。
D型及びP型CpG ODNは、G-tetradsと呼ばれる平行4本鎖構造を形成するフーグスティーン塩基対、及びシス回文構造部位とトランス回文構造部位との間のワトソン-クリック塩基対、という高次構造をそれぞれ形成することが示されており、これらはpDCsによる強力なIFN-α産生に必要である(非特許文献12-14)。このような高次構造は初期エンドソームへの局在化やTLR9を介する情報伝達に必要であるようだが、これらは産物の多型性及び沈殿の影響を受け、その結果その臨床応用を妨げている(非特許文献15)。従って、K型及びC型CpG ODNのみが、ヒト用の免疫療法剤及びワクチンアジュバントとして一般的に利用可能である(非特許文献16及び17)。K型CpG ODNは、ヒト臨床試験において、感染症及び癌を標的とするワクチンの免疫原性を高めるが(非特許文献6、16)、最適なアジュバント効果のためには、抗原とK型CpG ODNとの間の化学的及び物理的連結が必要である。これらの結果は、4つの型(K、D、P、及びC)のCpG ODNには長所及び短所があることを示しており、アグリゲーションすることなく、B細胞及びpDCsの両方を活性化する「オール・イン・ワン」CpG ODNの開発が期待されている。
スエヒロタケ(Schizophyllum commune)由来の可溶性β-1,3-グルカンであるシゾフィラン(SPG)は、子宮頸癌患者における放射線療法の賦活薬として日本においてここ30年に亘り認可されている医薬である(非特許文献18)。同様に、シイタケ由来の可溶性β-1,3-グルカンであるレンチナン(LNT)は、1985年に承認された医薬であり、手術不能および再発胃癌患者に対しフルオロピリミジン系薬剤との併用で使用されている(非特許文献19、20)。β-1,3-グルカンは、ポリデオキシアデニル酸(dA)と三重螺旋構造の複合体を形成することが示されている(非特許文献21)。
特許文献2~4には、シゾフィランを含むβ-1,3-グルカンと核酸(遺伝子)との水溶性複合体の遺伝子キャリアとしての使用が開示されている。これらの文献には、該複合体を形成することにより、遺伝子のアンチセンス作用及び核酸分解酵素(ヌクレアーゼ)への耐性作用が高められることが記載されている。
特許文献5には、β-1,3-結合を有する多糖類をキャリアー(トランスフェクション剤)として用いることにより、CpG配列を含み、リン酸ジエステル結合をホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合に置換した免疫刺激性オリゴヌクレオチドの作用が高められることが開示されている。
特許文献6には、免疫刺激性オリゴヌクレオチドと、長鎖のβ-1,6-グルコシド結合側鎖を有するβ-1,3-グルカンとからなることを特徴とする免疫刺激性複合体が記載されている。
本発明者らは、以前、SPGと複合体化した、5’末端にリン酸ジエステル結合を有するポリ(dA)を連結させたマウス及びヒト化したCpG ODNが、サイトカイン産生を増強し、インフルエンザワクチンアジュバントやTh2細胞関連疾患の予防または治療剤として作用することを示した(非特許文献22、23、特許文献7)。K型及びD型のそれぞれのCpGの5’末端にポリ(dA)を付加し、SPGと複合体を形成すると、それぞれK型及びD型の特性を維持しつつ、その活性が増強された。しかしながら、より効果的で、費用効率が高い、前臨床及び臨床開発へ向けて、CpG-SPG複合体の高収率を達成することが困難であった。近年、CpG ODNにホスホロチオエート結合を有するポリ(dA)を連結すると、複合体形成がほとんど100%にまで上昇することが示された(非特許文献24)。しかしながら、最適なヒト化CpG配列を同定し、4つの型のCpG ODNの「オール・イン・ワン」活性を得るための因子を最適化するための綿密な試験はなされていない。
特許文献8には、抗原/CpGオリゴヌクレオチド/β-1,3-グルカン系の三元複合体の製造方法が開示されている。
トル様受容体9 (Toll-like receptor 9、TLR9)のリガンドである合成核酸CpG オリゴデオキシヌクレオチド (CpG ODN)は強い自然免疫活性化能を有しており、ワクチンアジュバントとして期待されている。また、単剤での投与において抗腫瘍活性を有しているため、CpG ODNはがんに対する免疫療法剤としても期待されている。しかしながら、従来のCpG ODNは抗腫瘍活性を有しているものの、腫瘍に直接投与する事でしか、効果を発揮する事ができず、臨床への応用は困難であると考えられていた。実際に、臨床の現場では初期の段階での腫瘍に直接薬剤を投与する事は困難であると考えられる。また、深部においては外科的処置も必要となり、そのハードルは高い。
最近本発明者らはCpG ODNを多糖のベータグルカンで包んだ、新たなTLR9のリガンド (K3-SPG)の開発を行った(PCT出願(PCT/JP2014/074835)))。K3-SPGは凝集塊を作る事なく、従来型のCpG ODNに比べ、強く自然免疫を活性化する事、同時に強いアジュバント効果をマウスを用いた実験により示している。さらにK3-SPGは、マウスのみならずカニクイザルにおいても強い獲得免疫を誘導する事が明らかとなり、これまで懸念されていたマウスと霊長類での反応性の違いを克服できた。
このように、このCpG ODNはアジュバント剤としての用途は期待されているが、単独で医薬として使用し得るかは不明である。
癌治療について言えば、1991年に細胞障害性T細胞が認識するがん関連抗原を同定して報告して以来(非特許文献25=van der Bruggen et al. Science (New York, N.Y.) 254, 1643-1647 (1991))、非常に多くのがん関連抗原が分子レベルで同定され、それらを標的とするがん免疫療法の臨床的適用を達成した(非特許文献26=Jager, E., et al. The Journal of experimental medicine 187, 265-270 (1998);非特許文献27=Jager, D. et al. Journal of clinical pathology 54, 669-674 (2001).;非特許文献28=Imai, K., et al. British journal of cancer 104, 300-307 (2011);非特許文献29=Kang, X., et al. The Journal of Immunology 155, 1343-1348 (1995))。特に注目されるがん免疫療法は、2010年4月に前立腺がん患者に対して米国食品医薬品局(FDA)の承認を初めて受けた、自己末梢血の抗原提示細胞を使用するがんワクチンProvengeである(非特許文献30=Cancer vaccine approval could open floodgates. Nature medicine 16, 615-615 (2010);非特許文献31=Higano, C.S., et al. Cancer 115, 3670-3679 (2009))。その後、Tリンパ細胞の活性化の阻害性分子である細胞障害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)に対する阻害性抗体イピリムマブは、2011年5月に米国において、悪性黒色腫患者に対して承認された(非特許文献32=Phan, G.Q., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 100, 8372-8377 (2003);非特許文献33=Camacho, L.H., et al. Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology 27, 1075-1081 (2009);非特許文献34=Hodi, F.S., et al. New England Journal of Medicine 363, 711-723 (2010))。さらに、免疫反応阻害因子のPD-1(プログラム細胞死1)受容体阻害剤であるニボルマブは、臨床試験段階である(非特許文献35=AZIJLI, K., et al. Anticancer Research 34, 1493-1505 (2014);非特許文献36=Okazaki, T., et al. Nature immunology 14, 1212-1218 (2013);非特許文献37=Ishida, Y., et al. The EMBO journal 11, 3887-3895 (1992);非特許文献38=Topalian, S.L., et al. The New England journal of medicine 366, 2443-2454 (2012))。
樹状細胞が抗がんエフェクターを効果的に導く環境の形成は、炎症部での抗がん作用を示す自然免疫のパターン分子が必要とされる(非特許文献39=Chiba, S., et al. Nature immunology 13, 832-842 (2012))。上記分子群およびこれに関与する過程は特定されていないが、樹状細胞は、CD4、CD8、およびNKなどのリンパ球を活性化する(非特許文献40=Engelhardt, J.J., et al. Cancer cell 21, 402-417 (2012))。腫瘍浸潤マクロファージ(主要関連マクロファージ:TAM)は、炎症反応の元凶として知られている(非特許文献41=Huang, Y., et al. Cancer cell 19, 1-2 (2011))。他方で、抗がん免疫の担い手(playmaker)として機能する樹状細胞もまた、マクロファージと同じ骨髄細胞である(非特許文献42=Huang, Y., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 109, 17561-17566 (2012))。これらを抗がん指向性に変える方法は見つかっていないが、腫瘍は、複雑な要因によって免疫を回避してきたと考えられている。TAMおよび樹状細胞の両方は、炎症およびパターン認識応答によって支配される(非特許文献43=Garaude, J., et al. Science translational medicine 4, 120ra116 (2012);非特許文献44=Martinez-Pomares, L. et al. Trends in immunology 33, 66-70 (2012))。免疫学的なエフェクター細胞ががん細胞と接触することは、がん細胞の攻撃のためには不可欠である(非特許文献40=Engelhardt, J.J., et al. Cancer cell 21, 402-417 (2012);非特許文献45=Palucka, K. et al. Nature reviews. Cancer 12, 265-277 (2012))。
US 8,030,285 B2 WO 01/034207 A1 WO 02/072152 A1 特開2004-107272号公報 WO 2004/100965 A1 特開2007-70307号公報 特開2008-100919号公報 特開2010-174107号公報
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本発明者らは、鋭意研究の結果、従来アジュバントとして開発されていたCpG-βグルカン複合体(例えば、K3-SPG(ヒト型K型CpG ODNであるK3とベータグルカンとの複合体を単剤での抗腫瘍薬として用いたところ、従来型のCpG ODN (K3)では効果がなかった静脈内投与において、K3-SPGは担癌状態のマウスにおける腫瘤の退縮を確認し(図2(A~B))、本発明を完成させた。本発明者らは、さらに、より臨床に近いモデルである腹膜播種モデルにおいても、強力な抗腫瘍活性を示すことを実証した (図2g、m(図2B))。本発明者らは、この効果には抗原の投与が必要ではなく、単剤での投与において効果を確認した。
さらに、本発明者らはK3-SPGの抗腫瘍効果には獲得免疫応答が重要である事、自然免疫応答によって誘導されるI型インターフェロン (IFN)とIL-12が必須である事を遺伝子欠損マウスを用いて示した (図6a、b、c(図6A))。また、本発明者らは、K3-SPGを静脈投与する事で、脾臓中にCD45陰性の腫瘍細胞が集積している事を確認し、この細胞の多くが細胞死 (necrosisまたはapoptosis)を起こしている事を明らかにした。このCD45陰性細胞をマウスに免疫すると、強力に抗腫瘍効果を発揮したことから、脾臓に集積しているCD45陰性細胞の細胞死が重要な役割を示しているようであることを明らかにした(図6g,h、i、j(図6B))。また、本発明者らは、K3-SPGを投与する事で、腫瘍に活性化されたCD8 T細胞が集積する事も確認しており、これらの細胞が抗腫瘍効果には必須である事を明らかとした。
このため、全身性投与において抗腫瘍効果を発揮するCpG ODNの開発はこれまでに困難であった癌腫においても、強力に働くことが期待される。さらには、CpG ODNは抗原無しに抗腫瘍効果を発揮する事から、単剤としての応用も期待することができる。
これまでに、CpG ODNは、単剤治療(Pratesi, G., et al. Cancer research 65, 6388-6393 (2005);Manegold, C., et al. Annals of oncology : official journal of the European Society for Medical Oncology / ESMO 23, 72-77 (2012);Kim, Y.H., et al. Blood 119, 355-363 (2012);Hirsh, V., et al. Journal of clinical oncology : official journal of the American Society of Clinical Oncology 29, 2667-2674 (2011) ;Weber, J.S., et al. Cancer 115, 3944-3954 (2009))またはがんワクチンアジュバント(Reed, S.G., Nature medicine 19, 1597-1608 (2013);Perret, R., et al. Cancer research 73, 6597-6608 (2013);Mbow, M.L., et al. Current opinion in immunology 22, 411-416 (2010);Duthie, M.S., et al. Immunological reviews 239, 178-196 (2011))として有望な薬物であることが示されている。しかし、これまでのCpG-ODNによる抗癌剤としての治療は、腫瘍内に注射された場合にのみ、腫瘍の成長を抑制し得る(Schettini, J., et al. Cancer immunology, immunotherapy : CII 61, 2055-2065 (2012);Lin, A.Y., et al. PLoS One 8, e63550 (2013);Ishii, K.J., et al. Clinical cancer research : an official journal of the American Association for Cancer Research 9, 6516-6522 (2003);Lou, Y., et al. Journal of immunotherapy (Hagerstown, Md. : 1997) 34, 279-288 (2011);Auf, G., Clinical cancer research : an official journal of the American Association for Cancer Research 7, 3540-3543 (2001);Nierkens, S., et al. PLoS One 4, e8368 (2009);Heckelsmiller, K., et al. Journal of immunology 169, 3892-3899 (2002))。本発明者らは、ここでK3-SPGというナノ粒子状のTLR9アゴニストを開発し、これはシゾフィラン(SPG;βグルカン)およびB/K型CpG(K3)複合体からなり、K3-SPGは、K3本来よりも強いワクチンアジュバント(強力なIFN-αの誘発を伴う)として機能したことを示した。本実施例において、本発明者らは、さらにがんに対するK3-SPGの単剤免疫療法の潜在性(さらなる腫瘍ペプチドおよび抗原を使用しない)を調べたところ、上記のような効果が得られることがわかり本発明を完成した。したがって、本発明は代表的に以下を提供する。
(抗がん剤単剤)
(1)(a)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド及びポリデオキシアデニル酸を含む、オリゴデオキシヌクレオチドであって、ポリデオキシアデニル酸が、ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3’側に配置されている、オリゴデオキシヌクレオチドと、
(b)β―1,3-グルカンとを
含む、複合体を含む抗がん剤。
(2)前記抗がん剤は、がん抗原なしで投与されることを特徴とする、項目(1)に記載の抗がん剤。
(3)前記抗がん剤は、細網内皮系および/またはリンパ節に送達されるように投与されることを特徴とする、項目(1)または(2)に記載の抗がん剤。
(4)前記細網内皮系および/またはリンパ節は、腫瘍および貪食細胞を含む、項目(3)に記載の抗がん剤。
(5)前記細網内皮系は脾臓および/または肝臓を含む、項目(3)または(4)に記載の抗がん剤。
(6)前記抗がん剤は、がん抗原なしで投与されることを特徴とする、項目(1)~(5)のいずれか1項に記載の抗がん剤。
(7)前記投与は全身性投与を含む、項目(2)~(6)のいずれか1項に記載の抗がん剤。
(8)前記全身性投与は、静脈内投与、腹腔内投与、経口投与、皮下投与、筋肉内投与、および腫瘍内投与から選択される、項目(7)に記載の抗がん剤。
(9)前記オリゴデオキシヌクレオチドはK3(配列番号1)、K3-dA40(配列番号2)、dA40-K3(配列番号3)、K3-dA20(配列番号4)、K3-dA25(配列番号5)、K3-dA30(配列番号6)およびK3-dA35(配列番号12→7)からなる群より選択される、項目1~8のいずれか1項に記載の抗がん剤。
(10)前記β―1,3-グルカンはシゾフィラン(SPG)、レンチナン、スクレログルカン、カードラン、パーキマン、グリホランおよびラミナランからなる群より選択される、項目1~9のいずれか1項に記載の抗癌剤。
(11)前記複合体は、K3-SPGである、項目1~10のいずれか1項に記載の抗がん剤。
(細網内皮系(脾臓および/または肝臓を含む)および/またはリンパ節集積剤)
(12)(a)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド及びポリデオキシアデニル酸を含む、オリゴデオキシヌクレオチドであって、ポリデオキシアデニル酸が、ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3’側に配置されている、オリゴデオキシヌクレオチドと、
(b)β―1,3-グルカンとを
含む、複合体
を含む、がんの死細胞を脾臓に集積させるための組成物。
(13)前記オリゴデオキシヌクレオチドはK3(配列番号1)、K3-dA40(配列番号2)、dA40-K3(配列番号3)、K3-dA20(配列番号4)、K3-dA25(配列番号5)、K3-dA30(配列番号6)およびK3-dA35(配列番号7)からなる群より選択される、項目(12)に記載の組成物。
(14)前記β―1,3-グルカンはシゾフィラン(SPG)、レンチナン、スクレログルカン、カードラン、パーキマン、グリホランおよびラミナランからなる群より選択される、項目(12)または(13)に記載の組成物。
(15)前記複合体は、K3-SPGである、項目(12)~(14)のいずれか1項に記載の組成物。
(16) 前記細網内皮系および/またはリンパ節は、腫瘍および貪食細胞を含む、項目12~15のいずれか1項に記載の組成物。
(17) 前記細網内皮系は脾臓および/または肝臓を含む、項目(12)~(16)のいずれか1項に記載の組成物。
(18)前記投与は全身性投与を含む、項目(12)~(17)のいずれか1項に記載の組成物。
(19)前記全身性投与は、静脈内投与、腹腔内投与、経口投与、皮下投与、筋肉内投与、および腫瘍内投与から選択される、項目(18)に記載の組成物。
<インターロイキン12(IL12)および/またはインターフェロン(IFN)γの発現またはその促進のための組成物>
(20)(a)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド及びポリデオキシアデニル酸を含む、オリゴデオキシヌクレオチドであって、ポリデオキシアデニル酸が、ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3’側に配置されている、オリゴデオキシヌクレオチドと、
(b)β―1,3-グルカンとを
含む、インターロイキン12(IL12)および/またはインターフェロン(IFN)γの発現またはその促進のための組成物。
(21)前記オリゴデオキシヌクレオチドはK3(配列番号1)、K3-dA40(配列番号2)、dA40-K3(配列番号3)、K3-dA20(配列番号4)、K3-dA25(配列番号5)、K3-dA30(配列番号6)およびK3-dA35(配列番号7)である、項目(20)に記載の組成物。
(22)前記β―1,3-グルカンはシゾフィラン(SPG)、レンチナン、スクレログルカン、カードラン、パーキマン、グリホランおよびラミナランからなる群より選択される、項目(20)または(21)に記載の組成物。
(23)前記複合体は、K3-SPGである、項目(20)~(22)のいずれか1項に記載の組成物。
本発明において、上述した1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解することにより、当業者に認識される。
本発明であるK3-SPGの抗腫瘍薬としての応用は、従来のCpG ODNでは克服出来なかった全身性投与において強力な抗腫瘍効果を発揮する事ができる。そのため、臨床での観点からも非常に有用であると考えられる。また、ヒト細胞でも十分な効果 (自然免疫応答)が確認されている事から、ヒトへの応用の可能性も高い。我々の研究結果により、これまでに臨床試験で用いられているCpG ODNに比べ非常に強い自然免疫活性化能に加え、強い抗腫瘍効果を有している事が示されたことから、K3-SPGは有用な免疫療法薬として期待出来る。さらには、抗原の投与を必要とせず腫瘍細胞の細胞死を誘導する事で効果を発揮する事ができるため、様々な癌腫に応用出来る事が考えられる。これらの結果から、K3-SPGは抗原を必要としない自然免疫活性化型抗腫瘍薬としての可能性を有している。
図1は、CpG ODNとはSPGの複合体化の方法を示す。 図2(A~B)は、抗原を含まないナノ粒子状のCpG(K3-SPG)の全身性注射が、膵臓がん腹膜播種モデルを含む多くの確立された腫瘍モデルに適用され得ることを示す。図2Aはa~iを示す。C57BL/6マウスに、EG7細胞を0日目にs.c.接種し、7、9および11日目にPBS(a~c)、K3(30μg)(d~f)、またはK3-SPG(10μg)(g~i)を、皮内(i.d.)(腫瘍周囲領域)(a、d、g)、腫瘍内(i.t.)(b、e、h)、または静脈内(i.v.)(c、f、i)に投与した。腫瘍サイズを23日間測定した(n=4)。各曲線は、個々のマウスを表している。矢印は、治療の時期を示している。 図2(A~B)は、抗原を含まないナノ粒子状のCpG(K3-SPG)の全身性注射が、膵臓がん腹膜播種モデルを含む多くの確立された腫瘍モデルに適用され得ることを示す。図2Bはj~nを示す。(j~l)C57BL/6マウスに、B16細胞、B16F10細胞またはMC38細胞を0日目に接種した。B16接種群を、K3-SPGで10、12および14日目にi.v.またはi.t.処置した。B16F10接種群を、K3-SPGで7、9および11日目にi.v.またはi.t.処置した。MC38接種群を、K3-SPGで14、16および18日目にi.v.またはi.t.処置した。エラーバーは平均+SEM(n=4)を表している。*p<0.05(t検定)。(m)C57BL/6マウスに、Pan02細胞を0日目に腹腔内注射し、11、13および15日目にK3またはK3-SPGあるいはPBS(コントロール)でi.v.処置した。腫瘍の重量(g)は21日目を示している。*p<0.05(t検定)。(n)C57BL/6マウスに、Pan02を0日目に腹腔内注射し、K3またはK3-SPGあるいはPBSで3回i.v.処置した。生存率(%)を示している(n=8)。*p<0.05(ログランク検定)。 図3は、K3-SPGの全身性投与による結果を他のコントロール、K3と比較したものである。K3-SPGの全身性投与は抗原を必要としない癌免疫療法剤となり得ることが示された。腫瘍細胞株であるEG7をマウスに移植後、K3、K3-SPGを3回(7、9、11日目)静脈内投与した。腫瘍細胞を移植後7日目から腫瘍サイズを測定した。 図4は、K3-SPGが、腫瘍微小環境内の食細胞を標的とすることを示す。(a~c)C57BL/6マウスに、EG7を0日目にs.c.接種し、PBS(コントロール)、ALEXA 647-K3(30μg)、またはALEXA 647-K3-SPG(10μg)を12日目にi.v.投与した。投与1時間後、マウスをin vivo蛍光イメージングシステム(IVIS)で分析し、相対蛍光で測定されたイメージを、表面放射輝度の物理単位(光子/秒/cm/sr)に変換した。白の矢印は、腫瘍接種領域を示している(a)。(b、c)図6a(図6A)からの腫瘍の凍結切片を、抗CD3e抗体(赤、EG7染色)およびHoechst 33258(青、核染色)で染色し、その後蛍光顕微鏡で分析した(スケールバー、100μm)。白の矢印は、蛍光陽性領域を示している。(d~g)C57BL/6マウスに、EG7を0日目にs.c.接種し、Alexa 647-K3、Alexa 647-K3-SPG、またはFITC-SPGを、デキストラン-PEと共に12日目にi.v.投与した。(d~f)注射1時間後、腫瘍の凍結切片を蛍光顕微鏡で分析した(スケールバー、100μm)。(g)緑、赤またはマージした細胞を計数した(3つの各腫瘍から10視野)。エラーバーは平均+SDを表している。アスタリスクは、K3を注射されたマージ細胞数との有意差を示している。(h)C57BL/6マウス(n=3または4)に、EG7を0日目にs.c.接種し、5日目にクロドロネートリポソームまたはコントロールリポソームをi.v.投与した。マウスにPBS(コントロール)またはK3-SPGを7、9および11日目に注射した。エラーバーは平均+SEMを表している。矢印は治療の時期を示している。*p<0.05(t検定)。 図5は、腫瘍におけるF4/80陽性細胞がクロドロネートリポソームにより枯渇したことを示す。C57BL/6マウスに、EG7を0日目に接種し、クロドロネートリポソーム(a)またはコントロールリポソーム(b)を5日目にi.v.投与し、そして、7日目にAlexa 647-K3-SPGでi.v.処置した。処置1時間後、腫瘍の凍結切片を、抗F4/80抗体(赤)およびHoechst33258(青)で染色し、その後蛍光顕微鏡で分析した(スケールバー、100μm)。 図6(A~B)は、IL-12およびIFNの両方が、腫瘍縮小およびそれらの免疫原性細胞死における潜在的な役割に重要であることを示す。図6Aは、a~fを示す。(a~c)Il12p40ヘテロノックアウトマウス(a)、Ifnar2ヘテロノックアウトマウス(b)、およびIl12p40-Ifnar2ダブルノックアウトマウス(c)に、EG7細胞を0日目にs.c.接種し、これらのマウスを7、9および11日目にK3-SPGでi.v.処置した。エラーバーは平均+SEMを表している(n=4)。矢印は治療の時期を示している。*p<0.05(t検定)。(d、f)Rag2ヘテロおよびノックアウトならびにIl12p40-Ifnar2ダブルノックアウトマウスに、EG7細胞を0日目に接種し、K3-SPGで3回(7、9および11日目、黒の矢印)、6回(7、9、11、14、16、18日目、グレーの矢印)、または0回(コントロール)i.v.処置した。(e)拡大図は4日目から21日目を示している。 図6(A~B)は、IL-12およびIFNの両方が、腫瘍縮小およびそれらの免疫原性細胞死における潜在的な役割に重要であることを示す。図6Bは、g~kを示す。(g)C57BL/6マウスおよびIl12p40-Ifnar2ダブルノックアウトマウスに、EG7細胞を0日目にs.c.接種し、マウスを7、9および11日目にK3-SPGでi.v.処置し、その後、12日目に屠殺した。脾細胞を回収して抗CD45抗体で染色し、その後、その細胞をフローサイトメトリーで分析した。(h)散布図は、CD45陰性細胞集団を示している。エラーバーは平均+SEMを表している。*p<0.05(t検定)。(i)CD45陰性集団を、死細胞の染色のためにHoechst 33342およびPIで染色し、その後フローサイトメトリーで分析した。棒グラフは、アポトーシス細胞、ネクローシス細胞、およびCD45陰性生細胞の集団を示している。エラーバーは平均+SDを表している(n=3)。*p<0.05(t検定)。(j)C57BL/6マウスを、PBSまたはCD45陰性細胞で免疫化した。免疫化7日後、マウスにEG7細胞を0日目にs.c.接種し、腫瘍サイズを次の25日間測定した(n=3)。エラーバーは平均+SEMを表している。*p<0.05(t検定)。(k)25日目の腫瘍体積およびOVA257~264特異的テトラマー+CD8T細胞の数を、棒グラフおよび散布論文図によってそれぞれ表している。*p<0.05(t検定)。 図7は、IFN-βを腫瘍微小環境において検出したことを示す。(a)IFN-βGFPマウスに、EG7を0日目に接種し、7、9および11日目にK3-SPGでi.d.またはi.v.処置した。接種12日後、腫瘍を回収して、凍結切片を、抗CD11b抗体、抗CD169抗体、抗F4/80抗体、抗MARCO抗体(赤)およびHoechst 33258(青)で染色し、その後蛍光顕微鏡で分析した(スケールバー、100μm)。(b)IFN-β陽性細胞を計数した(3つの各腫瘍から10視野)。エラーバーは平均+SDを表している。*p<0.05(t検定)。 図8は、IL12-p40を腫瘍微小環境において検出したことを示す。(a)C57BL/6マウスに、EG7を0日目に接種し、7、9および11日目にK3-SPGでi.d.またはi.v.処置した。接種12日後、腫瘍を回収して、凍結切片を、抗IL12-p40抗体(赤)およびHoechst 33258(青)で染色し、その後蛍光顕微鏡で分析した(スケールバー、100μm)。(b)IL12-p40陽性細胞を計数した(3つの各腫瘍から10視野)。エラーバーは平均+SDを表している。*p<0.05(t検定)。 図9は、CD45陰性細胞が腫瘍細胞に由来するが、宿主細胞に由来しないことを示す。GFPマウスにEG7細胞を0日目にs.c.接種し、そのマウスを、7、9および11日目にK3-SPGでi.v.処置し、その後12日目に屠殺した。脾細胞を回収して、抗CD45抗体で染色し、その後細胞をフローサイトメトリーで分析した。 図10(A~B)は、K3-SPG誘発性腫瘍縮小は、Il12、1型IFN、Batf3、CD8DC、および腫瘍に浸潤する強力な細胞障害性T細胞を含む自然免疫応答および適応免疫応答の両方を必要とすることを示す。図10Aはa~cを示す。C57BL/6ノックアウトマウス(a)、ならびにBatf3ヘテロおよびBatf3ノックアウトマウス(b)に、EG7細胞を0日目に接種し、7、9および11日目にK3-SPGでi.v.処置した(黒の矢印)。(a)CD8枯渇抗体(200μg/マウス)を、6日目および13日目に投与した。エラーバーは平均+SEMを表している(n=4)。*p<0.05(t検定)。矢印は治療の時期を示している。(c)C57BL/6マウスに、EG7を0日目に接種し、7、9および11日目にK3-SPGをi.d.またはi.v.で処置した。接種12日後、腫瘍を回収して、凍結切片を抗CD8β抗体(赤)およびHoechst 33258(青)で染色し、その後蛍光顕微鏡で分析した(スケールバー、100μm)。CD8β陽性細胞を計数した(3つの各腫瘍から10視野)。エラーバーは、平均+SDを表している。*p<0.05(t検定)。 図10(A~B)は、K3-SPG誘発性腫瘍縮小は、Il12、1型IFN、Batf3、CD8DC、および腫瘍に浸潤する強力な細胞障害性T細胞を含む自然免疫応答および適応免疫応答の両方を必要とすることを示す。図10Bはd~eを示す。(d)C57BL/6(WT)マウスおよびIl12p40-Ifnar2ダブルノックアウト(DKO)マウスに、EG7細胞を0日目に接種し、7、9および11日目にK3-SPGでi.v.処置した。K3-SPGまたはPBSのいずれかを注射された腫瘍保有マウス由来のCD8αT細胞を、14日目にXenolight DiR(登録商標)で染色して移し(i.v.)、その後、15日目にマウスをIVISで分析した。(I、II)レシピエントマウス:K3-SPGでi.v.処置されたEG7保有WTマウス。マウスは、K3-SPG処置されたCD8αT細胞が移されるか(I)、または処置されていないCD8αT細胞を移される(II)。(e)(I、II)レシピエントマウス:処置されていないEG7保有WTマウス(I)およびK3-SPGでi.v.処置されたDKOマウス。マウスは、K3-SPG処置されたCD8α+T細胞を移された(I、II)。 図11は、実験系の模式論文図を示す。WTマウスおよびIl12p40-Ifnar2 DKOマウスに、EG7細胞を0日目に接種し、7、9および11日目にK3-SPGまたはPBSでi.v.処置した。14日目に、CD8αT細胞を、これらのマウスの脾臓から精製して、Xenolight DiR(登録商標)で標識し、そして、K3-SPG処置(7、9および11日目)された別のEG7保有マウスに移し(接種14日後)、その後Xenolight DiR(登録商標)で標識されたCD8T細胞の分布を、15日目にIVISで分析した。 図12は、K3-SPG処置の戦略を示す。K3-SPGは、血流を介して腫瘍微小環境を標的とした。そして、K3-SPGは食細胞を標的とし、これらの細胞を活性化した。腫瘍微小環境において、IFNおよびIL-12は、K3-SPG処置によって誘発された。そして、抗原を、リンパ流および血流を介して放出した。この抗原の提示が強力な腫瘍特異的CTLを誘発した。
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
本発明は、K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド及びポリデオキシアデニル酸(dA)を含む、オリゴデオキシヌクレオチド(以下、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドと称する。)を提供するものである。本発明のオリゴデオキシヌクレオチドにはリン酸ジエステル結合が修飾(例えば、一部又は全てのリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合により置換)されているものを含む。本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは薬学的に許容可能な塩を含む。
本明細書において「CpGオリゴヌクレオチド(残基)」または「CpGオリゴデオキシヌクレオチド(残基)」、「CpG ODN(残基)」あるいは単に「CpG(残基)」とは、交換可能に使用され、少なくとも1つのメチル化されていないCGジヌクレオチド配列を含む、ポリヌクレオチド、好ましくは、オリゴヌクレオチドをいい、末尾の用語「残基」の有無に関わらず同義である。少なくとも1つのCpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドは、複数のCpGモチーフを含み得る。本明細書中で使用される場合、句「CpGモチーフ」とは、シトシンヌクレオチドと、それに続くグアノシンヌクレオチドを含む、オリゴヌクレオチドのメチル化されていないジヌクレオチド部分をいう。5-メチルシトシンもまた、シトシンの代わりに使用され得る。更に、ポリデオキシアデニル酸とポリデオキシアデノシン酸(残基)は同義である。用語「残基」は、より大きな分子量の化合物の部分構造を意味するが、本明細書中、「CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)」が、独立した分子を意味するか、より大きな分子量の化合物の部分構造を意味するかは、当業者であれば、文脈から容易に理解可能である。「ポリデオキシアデニル酸」等、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドに含まれる他の部分構造に関する用語についても、同様である。
CpGオリゴヌクレオチド(CpG ODN)は、免疫賦活性のCpGモチーフを含有する、短い(約20塩基対)、一本鎖の合成DNA断片であって、Toll様受容体9(TLR9)の強力なアゴニストであり、樹状細胞(DCs)およびB細胞を活性化して、I型インターフェロン(IFNs)および炎症性サイトカインを産生させ(Hemmi, H., et al. Nature 408, 740-745 (2000);Krieg, A.M. Nature reviews. Drug discovery 5, 471-484 (2006).)、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)反応を含む、Th1型の液性および細胞性免疫反応のアジュバントとして作用する(Brazolot Millan, C.L., Weeratna, R., Krieg, A.M., Siegrist, C.A. & Davis, H.L. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 95, 15553-15558 (1998).;Chu, R.S., Targoni, O.S., Krieg, A.M., Lehmann, P.V. & Harding, C.V. The Journal of experimental medicine 186, 1623-1631 (1997))。そこで、CpG ODNは、感染症、癌、喘息および花粉症に対して可能性のある免疫療法剤とみなされてきた(Krieg, A.M. Nature reviews. Drug discovery 5, 471-484 (2006);Klinman, D.M. Nature reviews. Immunology 4, 249-258 (2004))。
CpGオリゴデオキシヌクレオチド(CpG ODN)は、免疫賦活性の非メチル化CpGモチーフを含有する一本鎖DNAであり、TLR9のアゴニストである。CpG ODNには、骨格配列及び免疫賦活特性がそれぞれ異なる、K型(B型とも呼ばれる)、D型(A型とも呼ばれる)、C型及びP型の4つの型がある(Advanced drug delivery reviews 61, 195-204 (2009))。本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、これらのうちK型CpG ODNを含む。
K型CpG ODNは、典型的には非回文構造の、複数の非メチル化CpGモチーフを含有し、B細胞を活性化してIL-6を産生させるが、形質細胞様樹状細胞(pDCs)のIFN-α産生をほとんど誘導しないという構造的及び機能的特性を有するCpG ODNである。非メチル化CpGモチーフとは少なくとも1つのシトシン(C)-グアニン(G)配列を含む短いヌクレオチド配列であって、該シトシン-グアニン配列におけるシトシンの5位がメチル化されていないものを差す。なお、以下の説明において、CpGとは、特にことわらなり限り非メチル化CpGを意味する。従って、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、K型CpG ODNを含むことにより、K型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、B細胞(好ましくは、ヒトB細胞)を活性化してIL-6を産生させる活性)を有する。当該技術分野において多数のヒト化K型CpG ODNが知られている(Journal of immunology 166, 2372-2377 (2001);Journal of immunology 164, 944-953 (2000);US 8, 030, 285 B2)。
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドに含まれるK型CpG ODNは、好ましくはヒト化されている。「ヒト化」とは、ヒトTLR9に対するアゴニスト活性を有することを意味する。従って、ヒト化K型CpG ODNを含む本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、ヒトに対してK型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、ヒトB細胞を活性化してIL-6を産生させる活性)を有する。本発明において好適に用いられるK型CpG ODNは、10ヌクレオチド以上の長さであり、且つ式:
Figure 0007048102000001
(式中、中央のCpGモチーフはメチル化されておらず、WはA又はTであり、N1、
N2、N3、N4、N5及びN6はいかなるヌクレオチドであってもよい)で表されるヌクレオチド配列を含む。
1つの実施形態において、本発明のK型CpG ODNは10ヌクレオチド以上の長さであり、上記式のヌクレオチド配列を含む。但し、上記式中、中央の4塩基のCpGモチーフ(TCpGW)は10ヌクレオチド中に含まれていれば良く、必ずしも上記式中、N3及びN4の間に位置する必要はない。また、上記式中、N1、N2、N3、N4、N5及びN6はいかなるヌクレオチドであっても良く、N1及びN2、N2及びN3、N3及びN4、N4及びN5、並びにN5及びN6の少なくともいずれか一つ(好ましくは一つ)の組み合わせは2塩基のCpGモチーフであっても良い。前記4塩基のCpGモチーフがN3及びN4の間に位置しない場合、上記式中、中央の4塩基(4~7番目の塩基)中の連続するいずれかの2塩基がCpGモチーフであり、他の2つの塩基はいかなるヌクレオチドであっても良い。
本発明においてより好適に用いられるK型CpG ODNは1つまたは複数のCpGモチーフを含む非回文構造を含有する。更に好適に用いられるK型CpG ODNは1つまたは複数のCpGモチーフを含む非回文構造からなる。
ヒト化K型CpG ODNは、一般的に、TCGA又はTCGTからなる4塩基のCpGモチーフを特徴とする。また、多くのケースにおいて、一つのヒト化K型CpG ODN中にこの4塩基のCpGモチーフが2又は3個含まれる。従って、好ましい実施形態において、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドに含まれるK型CpG ODNは、少なくとも1個、より好ましくは2以上、更に好ましくは2又は3個、TCGA又はTCGTからなる4塩基のCpGモチーフを含む。該K型CpG ODNが2又は3個の4塩基のCpGモチーフを有する場合、これらの4塩基のCpGモチーフは同一であっても異なっていてもよい。ただし、ヒトTLR9に対するアゴニスト活性を有する限り、特に限定されない。
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドに含まれるK型CpG ODNは、より好ましくは、配列番号1で表されるヌクレオチド配列を含む。
K型CpG ODNの長さは、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドが免疫賦活活性(例えば、B細胞(好ましくは、ヒトB細胞)を活性化してIL-6を産生させる活性)を有する限り、特に限定されないが、好ましくは100ヌクレオチド長以下(例えば、10-75ヌクレオチド長)である。K型CpG ODNの長さは、より好ましくは50ヌクレオチド長以下(例えば、10-40ヌクレオチド長)である。K型CpG ODNの長さは、更に好ましくは30ヌクレオチド長以下(例えば、10-25ヌクレオチド長)である。K型CpG ODNの長さは、最も好ましくは、12-25ヌクレオチド長である。
ポリデオキシアデニル酸(dA)の長さは、β-1,3-グルカン(好ましくは、レンチナン、又はシゾフィラン)鎖とともに三重螺旋構造を形成するのに十分な長さであれば特に限定されるものではないが、安定な三重螺旋構造を形成する観点からは、通常20ヌクレオチド長以上、好ましくは40ヌクレオチド長以上、より好ましくは60ヌクレオチド長以上である。ポリdAは、長ければ長いほどβ-1,3-グルカンと安定な三重螺旋構造を形成するので、理論的には上限はないが、長すぎると、オリゴデオキシヌクレオチドの合成時の長さにバラつきが生じる原因となるので、通常、100ヌクレオチド長以下、好ましくは80以下である。一方、前記安定な三重螺旋構造の形成に加え、単位量のβ-1,3-グルカンあたりに結合する本発明のオリゴデオキシヌクレオチド量を増大させ、且つオリゴデオキシヌクレオチドの合成時の長さのばらつきの回避、複合化効率の観点からは、ポリdAの長さは、好ましくは、20~60ヌクレオチド長(具体的には、20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30,31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47,48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59又は60ヌクレオチド長)、より好ましくは、30~50ヌクレオチド長(30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50ヌクレオチド長)18、最も好ましくは、30~45ヌクレオチド長(30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45ヌクレオチド長)である。特に、30ヌクレオチド長以上の場合、良好な複合化効率を示す。本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、ポリdAを含むことにより、2本のシゾフィラン鎖とともに三重螺旋構造を形成する活性を有する。なお、ポリデオキシアデニル酸を「ポリ(dA)」又は「poly(dA)」と表記することもある。
1分子の本発明のオリゴデオキシヌクレオチドには、複数個のK型CpG ODN及び/又はポリdAが含まれていてもよいが、好ましくは、K型CpG ODN及ポリdAが1つずつ含まれ、最も好ましくは、K型CpG ODN及ポリdAが1つずつからなる。
例示的なCpGの配列としては、K3 CpG(配列番号1=5’- atcgactctcgagcgttctc -3’)等を挙げることができるがこれに限定されない。
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、ポリdAがK型CpG ODNの3’側に配置されていることを特徴とする。この配置により、本発明の複合体(詳細は下に述べる)が、抗がん作用も増強される可能性があるものと思われるがこれらに限定されず、抗がん剤としてはいずれに結合させてもよい。
K型CpG ODNとポリdAとは、直接共有結合により連結されていてもよいし、スペーサー配列を介して連結されていてもよい。スペーサー配列とは、2つの近接した構成要素の間に挿入される1以上のヌクレオチドを含むヌクレオチド配列を意味する。スペーサー配列の長さは、本発明の複合体が、免疫賦活活性(好ましくはB細胞を活性化してIL-6を産生させる活性、及び樹状細胞を活性化してIFN-αを産生させる活性)を有する限り、特に限定されないが、通常1~10ヌクレオチド長、好ましくは1~5ヌクレオチド長、より好ましくは1~3ヌクレオチド長である。最も好ましくは、K型CpG ODNとポリdAとが、直接共有結合により連結される。
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、K型CpG ODN、ポリdA及び任意的なスペーサー配列に加え、その5’末端及び/又は3’末端に付加的なヌクレオチド配列を有していてもよい。該付加的なヌクレオチド配列の長さは、本発明の複合体が免疫賦活活性(好ましくはB細胞を活性化してIL-6を産生させる活性、及び樹状細胞を活性化してIFN-αを産生させる活性)を有する限り、特に限定されないが、通常1~10ヌクレオチド長、好ましくは1~5ヌクレオチド長、より好ましくは1~3ヌクレオチド長である。
好ましい態様において、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、このような5’末端及び/又は3’末端の付加的なヌクレオチド配列を含まない。即ち、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、好ましくは、K型CpG ODN、ポリdA及び任意的なスペーサー配列からなり、更に好ましくは、K型CpG ODN及びポリdAからなる。
最も好ましい態様において、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、K型CpG ODN(具体的には、例えば、配列番号1で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴデオキシヌクレオチド)及びポリdAからなり、K型CpG ODNが該オリゴデオキシヌクレオチドの5’末端に、ポリdAが3’末端に、それぞれ位置する。具体的には、配列番号1で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴデオキシヌクレオチドの3’末端に20~60ヌクレオチド長(より好ましくは、30~50ヌクレオチド長(30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50ヌクレオチド長)、最も好ましくは、30~45ヌクレオチド長(30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45ヌクレオチド長))のポリdAが結合したオリゴデオキシヌクレオチドであり、例えば、配列番号2、又は9~12で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴデオキシヌクレオチドである。
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドの全長は、通常30~200ヌクレオチド長、好ましくは35~100ヌクレオチド長、より好ましくは40~80ヌクレオチド長(具体的には、40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59, 60, 61, 62, 63, 64, 65, 66, 67, 68, 69, 70, 71, 72, 73, 74, 75, 76, 77, 78, 79 又は80ヌクレオチド長)、より好ましくは、50~70ヌクレオチド長(具体的には、50, 51, 52, 53, 54, 55, 56,57, 58, 59 , 60, 61, 62, 63, 64, 65, 66, 67, 68, 69, 70ヌクレオチド長)、最も好ましくは、50~65ヌクレオチド長(具体的には、50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59, 60, 61, 62, 63, 64, 65ヌクレオチド長)である。 本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、インビボにおける分解(例、エクソ又はエンドヌクレアーゼによる分解)に対して抵抗性となるように適切に修飾されていてもよい。好ましくは、該改変はホスホロチオエート修飾又はホスホロジチオエート修飾を含む。即ち、本発明のオリゴデオキシヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合の一部又は全てが、ホスホロチオエート結合又はホスホロジチオエート結合により置換されている。
好ましくは、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、リン酸ジエステル結合の修飾を含み、より好ましくは、リン酸ジエステル結合の修飾は、ホスホロチオエート結合(即ち、WO 95/26204に記載されているように、非架橋酸素原子のうちの1つが、硫黄原子に置換される)である。即ち、本発明のオリゴデオキシヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合の一部又は全てが、ホスホロチオエート結合により置換されている。
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、好ましくは、K型CpG ODNにおいて、ホスホロチオエート結合、または、ホスホロジチオエート結合による修飾を含み、より好ましくは、該K型CpG ODNのリン酸ジエステル結合の全てが、ホスホロチオエート結合に置換される。また、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、好ましくは、ポリdAにおいて、ホスホロチオエート結合、または、ホスホロジチオエート結合を含み、より好ましくは、該ポリdAのリン酸ジエステル結合の全てが、ホスホロチオエート結合に置換される。更に好ましくは、本発明のヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド及びポリデオキシアデニル酸を含むオリゴデオキシヌクレオチドのリン酸ジエステル結合の全てが、ホスホロチオエート結合に置換される。最も好ましくは、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド(例、配列番号1)の3’末端に20~60ヌクレオチド長(より好ましくは、30~50ヌクレオチド長(30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41,42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50ヌクレオチド長)、最も好ましくは、30~45ヌクレオチド長(30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45ヌクレオチド長))のポリdAが結合したオリゴデオキシヌクレオチドであって、当該オリゴデオキシヌクレオチドに含まれる全てのリン酸ジエステル結合が、ホスホロチオエート結合に置換されている。ホスホロチオエート結合により、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドにおいて、分解に対する抵抗性のみならず、免疫賦活活性(例えば、pDCを活性化させてIFN-αを産生させる活性)の増強、及びCpG-β-1,3-グルカン複合体の高収率、ならびに抗がん活性の増強が期待されるからである。なお、本明細書におけるホスホロチオエート結合はホスホロチオエート骨格と、リン酸ジエステル結合はリン酸骨格と同義である。本発明のオリゴデオキシヌクレオチドには、上記オリゴデオキシヌクレオチドのあらゆる薬学的に許容可能な塩類、エステル、またはそのようなエステルの塩類を含む。
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドの薬学的に許容可能な塩類としては、好適にはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩等の金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t-オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N-メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N-ベンジル-フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;弗化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩のようなアリ-ルスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマ-ル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及び、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩を挙げることができる。
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、1本鎖、2本鎖、3本鎖のいずれの形態でもよいが、好ましくは1本鎖である。
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、好ましくは単離されている。「単離」とは、目的とする成分以外の因子を除去する操作がなされ、天然に存在する状態を脱していることを意味する。「単離されたオリゴデオキシヌクレオチド」の純度(評価対象物の総重量に占める目的とするオリゴデオキシヌクレオチド重量の百分率)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは99%以上である。
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、優れた免疫賦活活性(例えば、B細胞(好ましくは、ヒトB細胞)を活性化してIL-6を産生させる活性)を有するので、免疫賦活剤等として有用である。更に、本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、2本のβ-1,3-グルカン(好ましくは、シゾフィラン、レンチナン又はスクレログルカン)とともに三重螺旋構造を形成する性質を有するので、本発明の複合体の調製に有用である。
本発明は、上記本発明のオリゴデオキシヌクレオチド及びβ-1,3-グルカンを含有する複合体(以下、本発明の複合体と称する。)を提供するものである。
上述の本発明のオリゴデオキシヌクレオチドは、K型CpG ODNを含むので、それ単独では、K型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、B細胞(好ましくは、ヒトB細胞)を活性化してIL-6を産生させる活性)を発揮し、D型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、形質細胞様樹状細胞を活性化してIFN-αを産生させる活性)に乏しい。しかしながら、驚くべきことに、β-1,3-グルカン(好ましくは、レンチナン、シゾフィラン)と複合体を形成することにより、D型CpG ODNの配列を要することなく、D型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、形質細胞様樹状細胞を活性化してIFN-αを産生させる活性)を獲得する。即ち、本発明の複合体は、K型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、B細胞(好ましくは、ヒトB細胞)を活性化してIL-6を産生させる活性)と、D型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、形質細胞様樹状細胞(好ましくはヒト形質細胞様樹状細胞)を活性化してIFN-αを産生させる活性)の両方を有する。本発明で用いられるβ-1,3-グルカンとしては、シゾフィラン、スクレログルカン、カードラン、パーキマン、グリホラン、レンチナン、ラミナラン等を挙げることが出来る。β-1,3-グルカンは、好ましくは、シゾフィラン、レンチナンまたはスクレログルカンのように、1,6-グルコピラノシド分枝を多く含有する(側鎖率33~40%)β-1,3-グルカンであり、より好ましくはシゾフィランである。
レンチナン(LNT)は、シイタケ由来の公知のβ-1,3-1,6-グルカンであり、分子式は(C6H10O5)n、分子量は約30~70万である。水、メタノール、エタノール(95)、又はアセトンにはほとんど溶けないが、極性有機溶媒であるDMSOや水酸化ナトリウム水溶液に溶解する。
レンチナンは活性化マクロファージ、キラーT細胞、ナチュラルキラー細胞及び抗体依存性マクロファージ仲介性細胞障害作用(ADMC)活性の増強作用を有する(Hamuro, J., et al.:Immunology, 39, 551-559, 1980、Hamuro, J., et al.:Int. J. Immunopharmacol., 2, 171, 1980、Herlyn, D., et al.:Gann, 76, 37-42, 1985)。動物実験においては同系腫瘍及び自家腫瘍に対して化学療法剤との併用投与により腫瘍増殖抑制作用ならびに延命効果が認められている。また、レンチナンの単独投与によっても腫瘍増殖抑制作用ならびに延命効果が認められている。臨床試験においては手術不能又は再発胃癌患者に対して、テガフール経口投与との併用により生存期間の延長が認められ(医薬品インタビューフォーム「レンチナン静注用1mg「味の素」」)、本邦で承認されている。レンチナンの単独投与による効果は現在のところ確認されていない。
シゾフィラン(SPG)は、スエヒロタケ由来の公知の可溶性β-グルカンである。SPGは、β-(1→3)-D-グルカンの主鎖と、各3個のグルコース当り1個のβ-(1→6)-D-グルコシル側鎖からなる(Tabata, K., Ito, W., Kojima, T., Kawabata, S. and Misaki A.,「Carbohydr. Res.」, 1981, 89,1, p.121-135)。SPGは婦人科癌に対する免疫増強法の筋肉内注射製剤臨床薬として20年以上の使用実績があり(清水, 陳, 荷見, 増淵,「Biotherapy」,1990, 4, p.1390長谷川,「Oncology and Chemotherapy」, 1992, 8, p.225)、生体内での安全性が確認されている(Theresa, M. McIntire and David,A. Brant,「J. Am. Chem. Soc.」, 1998, 120, p.6909)。
本明細書において「複合体」とは、複数の分子が、静電結合、ファンデルワールス結合、水素結合、疎水性相互作用などの非共有結合又は共有結合を介して会合することにより得られる産物を意味する。
本発明の複合体は、好ましくは、三重螺旋構造状である。好ましい態様において、当該三重螺旋構造を形成する3本の鎖のうち、2本はβ-1,3-グルカン鎖であり、1本は、上記本発明のオリゴデオキシヌクレオチド中のポリデオキシアデニル酸の鎖である。なお、当該複合体は一部に、三重螺旋構造を形成していない部分を含んでいても良い。
本発明の複合体における、オリゴデオキシヌクレオチドとβ-1,3-グルカンの組成比は、オリゴデオキシヌクレオチド中のポリデオキシアデニル酸の鎖長、及びβ-1,3-グルカンの長さ等に応じて、変化しうる。例えば、β-1,3-グルカン鎖と、ポリデオキシアデニル酸の鎖の長さが同等の場合には、2本のβ-1,3-グルカン鎖と、1本の本発明のオリゴデオキシヌクレオチドが会合し、三重螺旋構造を形成し得る。一般的には、β-1,3-グルカン鎖に対して、ポリデオキシアデニル酸の鎖長は短いので、2本のβ-1,3-グルカン鎖に対して、複数の本発明のオリゴデオキシヌクレオチドがポリデオキシアデニル酸を介して会合し、三重螺旋構造を形成し得る(図1参照)。
本発明の複合体は、ヒト化K型CpG ODN及びβ-1,3-グルカン(例、レンチナン、シゾフィラン、スクレログルカン、カードラン、パーキマン、グリホラン、ラミナラン)を含有する複合体であり、好ましくは、ヒト化K型CpG ODN及びβ-1,3-グルカン(例、レンチナン、シゾフィラン、スクレログルカン)からなる複合体である。より好ましくは、配列番号1で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴデオキシヌクレオチドの3’側に20~60ヌクレオチド長(具体的には、20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32,33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49,50, 51, 52, 53, 54, 55, 56, 57, 58, 59又は60ヌクレオチド長)のポリデオキシアデニル酸が結合し、かつリン酸ジエステル結合の全てがホスホロチオエート結合に置換されたオリゴデオキシヌクレオチド、及びβ-1,3-グルカン(例、レンチナン、シゾフィラン)からなる複合体(例、K3-dA20~60-LNT、K3-dA20~60-SPG)であり、更に好ましくは、配列番号1で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴデオキシヌクレオチドの3’側に30~50ヌクレオチド長(具体的には、30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44, 45, 46, 47, 48, 49, 50ヌクレオチド長)のポリデオキシアデニル酸が結合し、かつリン酸ジエステル結合の全てがホスホロチオエート結合に置換されたオリゴデオキシヌクレオチド、及びβ-1,3-グルカン(例、レンチナン、シゾフィラン)からなる複合体(例、K3-dA30~50-LNT、K3-dA30~50-SPG)であり、最も好ましくは、配列番号1で表されるヌクレオチド配列からなるオリゴデオキシヌクレオチドの3’側に30~45ヌクレオチド長(具体的には、30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, 40, 41, 42, 43, 44,45ヌクレオチド長)のポリデオキシアデニル酸が結合し、かつリン酸ジエステル結合の全てがホスホロチオエート結合に置換されたオリゴデオキシヌクレオチド、及びβ-1,3-グルカン(例、レンチナン、シゾフィラン)からなる複合体(K3-dA30~45-LNT、K3-dA30~45-SPG)である。
本発明の複合体の調製方法に関しては、非特許文献21~24や、特開2008-100919号公報に記載された条件と同様に行うことができる。すなわち、本来は、天然で三重螺旋構造として存在するβ-1,3-グルカンを非プロトン性有機極性溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO),アセトニトリル,アセトン等)またはアルカリ水溶液(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、水酸化カルシウム等)に溶解して一本鎖に解く。このようにして得られた一本鎖のβ-1,3-グルカンの溶液と本発明のオリゴデオキシヌクレオチドの溶液(水溶液、中性付近のpHの緩衝水溶液、又は酸性の緩衝水溶液、好ましくは、水溶液又は中性付近のpHの緩衝水溶液)とを混合し、必要に応じて再度pHを中性付近に調整後、適当時間保持する、例えば、5℃で一夜保持する。その結果、2本のβ-1,3-グルカン鎖と該オリゴデオキシヌクレオチド中のポリdA鎖が三重螺旋構造を形成することにより、本発明の複合体が形成される。生成した複合体に対して、サイズ排除クロマトグラフィーによる精製、限外濾過、透析等を行うことにより、複合体未形成のオリゴデオキシヌクレオチドを除くことができる。また、生成した複合体に対して、陰イオン交換クロマトグラフィーによる精製を行うことにより、複合体未形成のβ-1,3-グルカンを除くことができる。上記の方法により、複合体を適宜精製することができる。
本発明の複合体の形成は、例えばCD(円偏光二色性)スペクトルによるコンフォメーション変化、サイズ排除クロマトグラフィーによるUV吸収シフト、ゲル電気泳動、マイクロチップ電気泳動、キャピラリー電気泳動を測定することにより確認することができるが、これに限らない。
本発明のオリゴデオキシヌクレオチドとβ-1,3-グルカンとの混合比は、ポリdA鎖の長さ等を考慮して適宜設定することができるが、通常モル比(SPG/ODN)が0.02~2.0、好ましくは0.1~0.5である。更なる態様において、モル比(β-1,3-グルカン(LNT等)/ODN)が例えば0.005~1.0、好ましくは0.020~0.25である。
本発明の複合体の調製方法についてCpG-ODNとLNT複合体を例に説明する。LNTを0.05~2N、好ましくは0.1~1.5Nのアルカリ水溶液(例えば、0.25N水酸化ナトリウム水溶液)に溶解させ、1℃~40℃で10時間~4日間放置し(例えば、室温で一晩放置する)、一本鎖のLNT水溶液(例えば、50mg/mlのLNT水溶液)を調製する。前記LNT水溶液と別途調製したCpG水溶液(例えば、100μMのCpG水溶液)をモル比(LNT/ODN)0.005~1.0で混合し、続いて、前記LNT水溶液に酸性の緩衝水溶液(例えば、NaH2PO4)を加えて中和し、1~40℃で6時間~4日間(例えば、4℃で一晩)維持することで複合化を完了させる。なお、前記複合化のためにLNT水溶液を最後に加え混合しても良い。複合体の形成は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを用い、CpG ODNの高分子量側へのシフトを240~280nm(例えば、260nm)における吸収をモニタリングすることによって確認することができる。
一態様において、本発明の複合体は、竿状の粒子の形態を呈する。粒子径は、材料として用いるβ-1,3-グルカン(例、シゾフィラン)が天然で三重螺旋構造を呈することにより形成する粒子の径と同等であり、通常平均粒子径が10-100 nm、好ましくは20-50 nmである。該粒子径は、複合体を水に溶解し、Malvern Instruments Zeta Sizerを用いて80℃の条件で動的光散乱法により計測することができる。
本発明の複合体は、好ましくは単離されている。「単離された複合体」の純度(評価対象物の総重量に占める目的とする複合体重量の百分率)は、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは99%以上である。
さらに、本発明の複合体は、抗がん活性のほか、優れた免疫賦活活性を有し、特に、K型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、B細胞(好ましくは、ヒトB細胞)を活性化してIL-6を産生させる活性)と、D型CpG ODNに特有の免疫賦活活性(例えば、形質細胞様樹状細胞(好ましくはヒト形質細胞様樹状細胞)を活性化してIFN-αを産生させる活性)の両方を有するので、免疫賦活剤等としても効果を付与し得るため有利でありうる。例えば、K型CpG ODN(例えば、配列番号2、11、12とSPGを含む複合体及びK型CpG ODN(例えば、配列番号2)とSPGを含む複合体(K3-SPG)は、炎症応答誘導能(pan-IFN-a、IL-6等)、ウイルス接種個体における血清中抗原特異的IgG抗体価(Total IgG, IgG2c等)の増強作用、ウイルス接種個体における抗原特異的サイトカイン産生能(IFN-γ,IL2等)、ウイルスに対する感染防御効果を奏するものとしても有利でありうる。
(医薬組成物)
本発明は、上記本発明のオリゴデオキシヌクレオチド又は上記本発明の複合体を含む、医薬組成物を提供するものである。本発明の医薬組成物は、上記本発明のオリゴデオキシヌクレオチド又は上記本発明の複合体を常套手段に従って製剤化することにより得ることができる。本発明の医薬組成物は、本発明のオリゴデオキシヌクレオチド又は複合体と薬理学的に許容され得る担体を含む。また、本医薬組成物は抗原を更に含んでいても良い。このような医薬組成物は、経口又は非経口投与に適する剤形として提供される。
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明のオリゴデオキシヌクレオチド又は複合体を通常注射剤に用いられる無菌の水性溶媒に溶解又は懸濁することによって調製できる。注射用の水性溶媒としては、例えば、蒸留水;生理的食塩水;リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液等の緩衝液等が使用できる。このような水性溶媒のpHは5~10が挙げられ、好ましくは6~8である。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。
また、本発明のオリゴデオキシヌクレオチド又は複合体の懸濁液を、真空乾燥、凍結乾燥等の処理に付すことにより、本発明のオリゴデオキシヌクレオチド又は複合体の粉末製剤を調製することもできる。本発明のオリゴデオキシヌクレオチド又は複合体を粉末状態で保存し、使用時に該粉末を注射用の水性溶媒で分散することにより、使用に供することができる。
医薬組成物中の本発明のオリゴデオキシヌクレオチド又は複合体の含有量は、通常、医薬組成物全体の約0.1~100重量%、好ましくは約1~99重量%、さらに好ましくは約10~90重量%程度である。
本発明の医薬組成物は、有効成分として、本発明のオリゴデオキシヌクレオチド又は複合体を単独で含有していてもよく、本発明のオリゴデオキシヌクレオチド又は複合体を他の有効成分と組み合わせて含有していてもよい。
(医薬用途)
本発明のオリゴデオキシヌクレオチド及び複合体は、単独で抗がん作用を有することが見出された。このような効果は、アジュバント剤として開発されてきた本発明の特性からは予想外の効果であるといえる。それゆえ、これまでのアジュバントとしての使用のされ方、すなわち、がん抗原とともに投与することを必要とすることなく、しかも、特定のがん種に限定されることなく、汎用的な抗がん剤として身体にマイルドに作用する抗がん剤が提供されることになる。また、免疫賦活活性ももちろん有することから、他の疾患に対する免役賦活活性も期待され、体力の弱ったがん患者に対して相乗的な効果を有することも期待される。
抗がん作用に加え、本発明は、優れた免疫賦活活性を有するので、本発明のオリゴデオキシヌクレオチド、複合体及び医薬組成物は、免疫賦活剤として用いることができる。本発明のオリゴデオキシヌクレオチド、複合体又は医薬組成物を哺乳動物(ヒト等の霊長類、マウス等のげっ歯類等)に投与することにより、該哺乳動物における免疫反応を惹起することができる。特に、本発明の複合体は、D型CpG ODNの活性特性を有し、末梢血単核球を刺激して、I型インターフェロン(Pan-IFN-α、IFN-α2等)及びII型インターフェロン(IFN-γ)の両方を大量に産生させるので、I型インターフェロン産生誘導剤、II型インターフェロン産生誘導剤、I型及びII型インターフェロン産生誘導剤として有用である。I型及びII型インターフェロンの両方の産生を誘導することから、本発明の複合体及びこれを含有する医薬組成物は、I型及びII型インターフェロンのいずれか一方又は両方が有効な疾患の予防又は治療に有用である。
医薬用途の実現方法としては、例えば(a) 本発明のオリゴデオキシヌクレオチド、又は本発明の複合体を含む組成物を、癌の患者または癌に罹患する可能性のあるヒトに投与することにより、該投与を受けた対象中の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を抗原特異的に活性化させ、直接的に(単剤効果として)癌を予防・治療することができる。
本明細書において「被験体(者)」とは、本発明の診断または検出、あるいは治療等の対象となる対象(例えば、ヒト等の生物または生物から取り出した細胞、血液、血清等)をいう。
本明細書において「薬剤」、「剤」または「因子」(いずれも英語ではagentに相当する)は、広義には、交換可能に使用され、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害(例えば、がん、アレルギー)について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消退させることをいい、患者の疾患、もしくは疾患に伴う1つ以上の症状の、症状改善効果あるいは予防効果を発揮しうることを含む。事前に診断を行って適切な治療を行うことは「コンパニオン治療」といい、そのための診断薬を「コンパニオン診断薬」ということがある。
本明細書において「治療薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、がん、アレルギー等の疾患など)を治療できるあらゆる薬剤をいう。本発明の一実施形態において「治療薬」は、有効成分と、薬理学的に許容される1つもしくはそれ以上の担体とを含む医薬組成物であってもよい。医薬組成物は、例えば有効成分と上記担体とを混合し、製剤学の技術分野において知られる任意の方法により製造できる。また治療薬は、治療のために用いられる物であれば使用形態は限定されず、有効成分単独であってもよいし、有効成分と任意の成分との混合物であってもよい。また上記担体の形状は特に限定されず、例えば、固体または液体(例えば、緩衝液)であってもよい。なおがん、アレルギー等の治療薬は、がん、アレルギー等の予防のために用いられる薬物(予防薬)、またはがん、アレルギー等の抑制剤を含む。
本明細書において「予防」とは、ある疾患または障害(例えば、アレルギー)について、そのような状態になる前に、そのような状態にならないようにすることをいう。本発明の薬剤を用いて、診断を行い、必要に応じて本発明の薬剤を用いて例えば、アレルギー等の予防をするか、あるいは予防のための対策を講じることができる。
本明細書において「予防薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、アレルギー等の疾患など)を予防できるあらゆる薬剤をいう。
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬、抗体、標識、説明書など)が提供されるユニットをいう。安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬をどのように使用するか、あるいは、試薬をどのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、検査薬、診断薬、治療薬、抗体等の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
本明細書において「指示書」は、本発明を使用する方法を医師または他の使用者に対する説明を記載したものである。この指示書は、本発明の検出方法、診断薬の使い方、または医薬などを投与することを指示する文言が記載されている。また、指示書には、投与部位として、経口、食道への投与(例えば、注射などによる)することを指示する文言が記載されていてもよい。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
(好ましい実施形態の態様)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本発明の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
<単剤形態>
1つの局面では、本発明は、(a)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド及びポリデオキシアデニル酸を含む、オリゴデオキシヌクレオチドであって、ポリデオキシアデニル酸が、ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3’側に配置されている、オリゴデオキシヌクレオチドと、(b)β―1,3-グルカンとを含む、複合体を含む抗がん剤を提供する。本発明では、本発明の複合体自体が抗がん剤として作用することを見出した。従来は、この複合体は、アジュバントとして用いられることを本発明者らが見出し出願したにすぎず、直接、単剤として抗がん剤として用いることができるとは予想していなかった。したがって、がん抗原なしで使用されるという点で予想外の効果をもたらすといえる。
1つの実施形態では、本発明の抗がん剤は、がん抗原なしで投与されることを特徴とする。
別の実施形態では、本発明の抗がん剤は、細網内皮系および/またはリンパ節に送達されるように投与されることを特徴とする。好ましくは、前記細網内皮系および/またはリンパ節は、腫瘍および貪食細胞を含む。例示的には、前記細網内皮系は脾臓および/または肝臓を含む。したがって、本発明の抗がん剤は、腫瘍および貪食細胞を含む細網内皮系臓器(脾臓、肝臓など) および/またはリンパ節に送達されるように投与されることを特徴とする。理論に束縛されることを望まないが、本発明の複合体は、腫瘍および貪食細胞に送達され、そこで、がんの死細胞を細網内皮系臓器 (脾臓、肝臓など)にリクルートすることが示された。これにより、身体内のがん細胞をさらに駆逐することができると考えられる。したがって、本発明は、アジュバントとして特定のがん抗原を用いて特定のがんに対するのではなく、身体内に存在する任意のがん細胞を殺傷し得るということができ、従来にない抗がん剤を提供することができる、という点で顕著な効果をもたらすといえる。
したがって、より好ましい実施形態では、本発明の前記抗がん剤は、がん抗原なしで、腫瘍および貪食細胞に送達されるように投与されることを特徴とする。
このような送達手法は、任意の手法を用いることができ、例えば、前記投与は全身性投与を挙げることができるがこれに限定されない。好ましくは全身性投与であり、全身性投与としては、静脈内投与、腹腔内投与、経口投与、皮下投与、筋肉内投与等を挙げることができる。
1つの実施形態では、本発明で用いられるオリゴデオキシヌクレオチドはK3(配列番号1)、K3-dA40(配列番号2)、dA40-K3(配列番号3)、K3-dA20(配列番号4)、K3-dA25(配列番号5)、K3-dA30(配列番号6)およびK3-dA35(配列番号7)などを挙げることができるがこれらに限定されない。
1つの実施形態では、本発明で用いられるβ―1,3-グルカンはシゾフィラン(SPG)、レンチナン、スクレログルカン、カードラン、パーキマン、グリホラン、ラミナラン等であってもよい。
好ましい実施形態では、本発明の複合体は、K3-SPGまたはその類似体である。ここで、類自体とは、CpG側で構造がK3に類似するもの、βグルカン側で構造がSPGに類似するもの等を挙げることができるがこれらに限定されない。
なお、抗がん作用は、種々の機構によることから、がんの死細胞を脾臓に集積させるため等の用途は容易に思いつくものではない。特に、全身性投与において、腫瘍に集積し、死んだ腫瘍細胞を脾臓などの組織に集積させるための、用途は思いつくものではない。また、インターロイキン12(IL12)および/またはインターフェロン(IFN)αの発現またはその促進効果もまた、抗がん作用とは異なる機構によるものであり、インターロイキン12(IL12)および/またはインターフェロン(IFN)αの発現またはその促進は抗がん以外でも発揮し得ることから、相互に容易に思いつくものではない。したがって、本発明のCpG-βグルカン複合体の各用途(抗がん用途(単剤での)、がんの死細胞を脾臓に集積させる用途、インターロイキン12(IL12)および/またはインターフェロン(IFN)αの発現またはその促進のための用途)は、相互に容易に想到し得たとは言えない関係にあるといえる。
<細網内皮系(脾臓および/または肝臓を含む)および/またはリンパ節集積剤>
別の局面において、本発明は、(a)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド及びポリデオキシアデニル酸を含む、オリゴデオキシヌクレオチドであって、ポリデオキシアデニル酸が、ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3’側に配置されている、オリゴデオキシヌクレオチドと、(b)β―1,3-グルカンとを含む、複合体を含む、がんの死細胞を細網内皮系(脾臓および/または肝臓を含む)および/またはリンパ節に集積させるための組成物を提供する。理論に束縛されることを望まないが、本発明の複合体は、がんの死細胞を細網内皮系(脾臓および/または肝臓を含む)および/またはリンパ節に集積させることができることを見出した。実施例で例証されているように、K3-SPGのような本発明の複合体による処置は、IL12p40およびIFN-Iの両方に依存する態様で、腫瘍細胞死を誘発することが実証された。このような作用を複合体が有することは従来予想されておらず、その意味で予想外の作用効果が達成されたといえる。すなわち、CpGが腫瘍微小環境における食細胞に標的化されるというものである。がんの死細胞が細網内皮系(脾臓および/または肝臓を含む)および/またはリンパ節に集積されると、その後、放出された腫瘍死細胞は複数の腫瘍抗原に対する抗腫瘍CTLを誘発し、身体にあるがん細胞が散弾銃で攻撃されるかのように殺傷され、根治させることも可能である。理論に束縛されることを望まないが、腫瘍微小環境におけるIL12およびIFN-Iサイトカインの両方を産生することは、K3-SPG単剤治療に必須とまではいえないが、重要である。
1つの実施形態では、本発明で用いられるオリゴデオキシヌクレオチドはK3(配列番号1)、K3-dA40(配列番号2)、dA40-K3(配列番号3)、K3-dA20(配列番号4)、K3-dA25(配列番号5)、K3-dA30(配列番号6)およびK3-dA35(配列番号7)からなる群より選択される。
別の実施形態では、本発明で用いられるβ―1,3-グルカンはシゾフィラン(SPG)、スクレログルカン、カードラン、パーキマン、グリホランおよびラミナランからなる群より選択される。
好ましい実施形態では、本発明の複合体は、K3-SPGである。
1つの実施形態では、本発明の組成物が対象とする細網内皮系および/またはリンパ節は、腫瘍および貪食細胞を含む。例示的には、前記細網内皮系は脾臓および/または肝臓を含む。したがって、本発明の組成物は、腫瘍および貪食細胞を含む細網内皮系臓器(脾臓、肝臓など)および/またはリンパ節に送達されるように投与されることを特徴とする。理論に束縛されることを望まないが、本発明の複合体は、腫瘍および貪食細胞に送達され、そこで、がんの死細胞を細網内皮系臓器 (脾臓、肝臓など)にリクルートすることが示された。これにより、身体内のがん細胞をさらに駆逐することができると考えられる。したがって、本発明は、アジュバントとして特定のがん抗原を用いて特定のがんに対するのではなく、身体内に存在する任意のがん細胞を殺傷し得るということができ、従来にない抗がん剤を提供することができる、という点で顕著な効果をもたらすといえる。
したがって、より好ましい実施形態では、本発明の前記抗がん剤は、がん抗原なしで、腫瘍および貪食細胞に送達されるように投与されることを特徴とする。
このような送達手法は、任意の手法を用いることができ、例えば、前記投与は全身性投与を挙げることができるがこれに限定されない。好ましくは全身性投与であり、全身性投与としては、静脈内投与、腹腔内投与、経口投与、皮下投与、筋肉内投与等を挙げることができる。
<IL12および/またはIFN発現促進剤>
さらに別の局面では、本発明は、(a)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド及びポリデオキシアデニル酸を含む、オリゴデオキシヌクレオチドであって、ポリデオキシアデニル酸が、ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3’側に配置されている、オリゴデオキシヌクレオチドと、(b)β―1,3-グルカンとを含む、インターロイキン12(IL12)および/またはインターフェロン(IFN)γの発現またはその促進のための組成物を提供する。腫瘍微小環境におけるIL12およびIFN-Iサイトカインの両方を産生することは、K3-SPG単剤治療における重要な作用効果であり、このような効果は、抗がん剤としての作用のほか、他の用途においても重要である。そのような処置の対象としては、がんのほか、ウイルスなどの慢性感染症疾患、ウイルス感染予防などを挙げることができるがそれらに限定されない。
1つの実施形態では、本発明で用いられるオリゴデオキシヌクレオチドはK3(配列番号1)、K3-dA40(配列番号2)、dA40-K3(配列番号3)、K3-dA20(配列番号4)、K3-dA25(配列番号5)、K3-dA30(配列番号6)およびK3-dA35(配列番号7)からなる群より選択される。
別の実施形態では、本発明で用いられるβ―1,3-グルカンはシゾフィラン(SPG)、スクレログルカン、カードラン、パーキマン、グリホランおよびラミナランからなる群より選択される。
好ましい実施形態では、本発明の複合体は、K3-SPGである。
(医薬品、剤型等)
本発明は、上記種々の形態の医薬(治療薬または予防薬)として提供される。
治療薬の投与経路は、治療に際して効果的なものを使用するのが好ましく、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、または経口投与等であってもよい。投与形態としては、例えば、注射剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤等であってもよい。本発明の成分を投与する場合には、注射剤として用いることが効果的である。注射用の水溶液は、例えば、バイアル、またはステンレス容器で保存してもよい。また注射用の水溶液は、例えば生理食塩水、糖(例えばトレハロース)、NaCl、またはNaOH等を配合してもよい。また治療薬は、例えば、緩衝剤(例えばリン酸塩緩衝液)、安定剤等を配合してもよい。
一般的に、本発明の組成物、医薬、治療剤、予防剤等は、治療有効量の治療剤または有効成分、および薬学的に許容しうるキャリアもしくは賦形剤を含む。本明細書において「薬学的に許容しうる」は、動物、そしてより詳細にはヒトにおける使用のため、政府の監督官庁に認可されたか、あるいは薬局方または他の一般的に認められる薬局方に列挙されていることを意味する。本明細書において使用される「キャリア」は、治療剤を一緒に投与する、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。このようなキャリアは、無菌液体、例えば水および油であることも可能であり、石油、動物、植物または合成起源のものが含まれ、限定されるわけではないが、ピーナツ油、ダイズ油、ミネラルオイル、ゴマ油等が含まれる。医薬を経口投与する場合は、水が好ましいキャリアである。医薬組成物を静脈内投与する場合は、生理食塩水および水性デキストロースが好ましいキャリアである。好ましくは、生理食塩水溶液、並びに水性デキストロースおよびグリセロール溶液が、注射可能溶液の液体キャリアとして使用される。適切な賦形剤には、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が含まれる。組成物は、望ましい場合、少量の湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤もまた含有することも可能である。これらの組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、持続放出配合物等の形を取ることも可能である。伝統的な結合剤およびキャリア、例えばトリグリセリドを用いて、組成物を座薬として配合することも可能である。経口配合物は、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン・ナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的キャリアを含むことも可能である。適切なキャリアの例は、E.W.Martin,Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)に記載される。このような組成物は、患者に適切に投与する形を提供するように、適切な量のキャリアと一緒に、治療有効量の療法剤、好ましくは精製型のものを含有する。配合物は、投与様式に適していなければならない。これらのほか、例えば、界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等を含んでいてもよい。
本発明の一実施形態において「塩」は、例えば、任意の酸性(例えばカルボキシル)基で形成されるアニオン塩、または任意の塩基性(例えばアミノ)基で形成されるカチオン塩を含む。塩類には無機塩または有機塩を含み、例えば、Berge et al., J.Pharm.Sci.,1977, 66, 1-19に記載されている塩が含まれる。また例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩等が挙げられる。本発明の一実施形態において「溶媒和物」は、溶質および溶媒によって形成される化合物である。溶媒和物については例えば、J. Honiget al., The Van Nostrand Chemist’s Dictionary P650 (1953)を参照できる。溶媒が水であれば形成される溶媒和物は水和物である。この溶媒は、溶質の生物活性を妨げないものが好ましい。そのような好ましい溶媒の例として、特に限定するものではないが、水、または各種バッファーが挙げられる。本発明の一実施形態において「化学修飾」は、例えば、PEGもしくはその誘導体による修飾、フルオレセイン修飾、またはビオチン修飾等が挙げられる。
本発明を医薬として投与する場合、種々の送達(デリバリー)系が知られ、そしてこのような系を用いて、本発明の治療剤を適切な部位(例えば、食道)に投与することも可能であり、このような系には、例えばリポソーム、微小粒子、および微小カプセル中の被包:治療剤(例えば、ポリペプチド)を発現可能な組換え細胞の使用、受容体が仲介するエンドサイトーシスの使用;レトロウイルスベクターまたは他のベクターの一部としての療法核酸の構築などがある。導入法には、限定されるわけではないが、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、および経口経路が含まれる。好適な経路いずれによって、例えば注入によって、ボーラス(bolus)注射によって、上皮または皮膚粘膜裏打ち(例えば口腔、直腸および腸粘膜など)を通じた吸収によって、医薬を投与することも可能であるし、必要に応じてエアロゾル化剤を用いて吸入器または噴霧器を使用しうるし、そして他の生物学的活性剤と一緒に投与することも可能である。投与は全身性または局所であることも可能である。本発明ががんに使用される場合、さらに、がん(病変部)に直接注入する等、適切な経路いずれかによって投与されうる。
好ましい実施形態において、公知の方法に従って、ヒトへの投与に適応させた医薬組成物として、組成物を配合することができる。このような組成物は注射により投与することができる。代表的には、注射投与のための組成物は、無菌等張水性緩衝剤中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤および注射部位での疼痛を和らげるリドカインなどの局所麻酔剤も含むことも可能である。一般的に、成分を別個に供給するか、または単位投薬型中で一緒に混合して供給し、例えば活性剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密封容器中、凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として供給することができる。組成物を注入によって投与しようとする場合、無菌薬剤等級の水または生理食塩水を含有する注入ビンを用いて、分配することも可能である。組成物を注射によって投与しようとする場合、投与前に、成分を混合可能であるように、注射用の無菌水または生理食塩水のアンプルを提供することも可能である。
本発明の組成物、医薬、治療剤、予防剤を中性型または塩型あるいは他のプロドラッグ(例えば、エステル等)で配合することも可能である。薬学的に許容しうる塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する遊離型のカルボキシル基とともに形成されるもの、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの遊離型のアミン基とともに形成されるもの、並びにナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、および水酸化第二鉄などに由来するものが含まれる。
特定の障害または状態の治療に有効な本発明の治療剤の量は、障害または状態の性質によって変動しうるが、当業者は本明細書の記載に基づき標準的臨床技術によって決定可能である。さらに、場合によって、in vitroアッセイを使用して、最適投薬量範囲を同定するのを補助することも可能である。配合物に使用しようとする正確な用量はまた、投与経路、および疾患または障害の重大性によっても変動しうるため、担当医の判断および各患者の状況に従って、決定すべきである。しかし、投与量は特に限定されないが、例えば、1回あたり0.001、1、5、10、15、100、または1000mg/kg体重であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。投与間隔は特に限定されないが、例えば、1、7、14、21、または28日あたりに1または2回投与してもよく、それらいずれか2つの値の範囲あたりに1または2回投与してもよい。投与量、投与間隔、投与方法は、患者の年齢や体重、症状、対象臓器等により、適宜選択してもよい。また治療薬は、治療有効量、または所望の作用を発揮する有効量の有効成分を含むことが好ましい。悪性腫瘍マーカーが、投与後に有意に減少した場合に、治療効果があったと判断してもよい。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系から得られる用量-反応曲線から推定可能である。
本発明の一実施形態において「患者」または「被験体」は、ヒト、またはヒトを除く哺乳動物(例えば、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、マーモセット、サル、またはチンパンジー等の1種以上)を含む。
本発明の医薬組成物または治療剤もしくは予防剤はキットとして提供することができる。
特定の実施形態では、本発明は、本発明の組成物または医薬の1以上の成分が充填された、1以上の容器を含む、薬剤パックまたはキットを提供する。場合によって、このような容器に付随して、医薬または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形で、政府機関による、ヒト投与のための製造、使用または販売の認可を示す情報を示すことも可能である。
特定の実施形態において、本発明の成分を含む医薬組成物を、リポソーム、微小粒子、または微小カプセルを介して投与することができる。本発明の多様な態様において、このような組成物を用いて、本発明の成分の持続放出を達成することが有用である可能性もある。
本発明の治療薬、予防薬等の医薬等としての製剤化手順は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方、他の国の薬局方などに記載されている。従って、当業者は、本明細書の記載があれば、過度な実験を行うことなく、使用すべき量等の実施形態を決定することができる。
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J. et al.(1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel, F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Ausubel,F.M.(1989). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Innis, M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press; Ausubel, F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Ausubel, F.M. (1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub. Associates; Innis,M.A. et al.(1995).PCR Strategies, Academic Press;Ausubel, F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley,and annual updates; Sninsky, J.J. et al.(1999). PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait, M.J.(1985). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach,IRL Press; Gait, M.J.(1990). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein,F.(1991). Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach, IRL Press; Adams, R.L. et al.(1992). The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman& Hall; Shabarova, Z. et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G.M.etal.(1996). Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson,G.T.(I996). Bioconjugate Techniques, Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
例えば、本明細書において、当該分野に知られる標準法によって、例えば自動化DNA合成装置(Biosearch、Applied Biosystems等から市販されるものなど)の使用によって、本発明のオリゴヌクレオチドを合成することも可能である。例えば、Steinら(Stein et al., 1988,Nucl. Acids Res. 16:3209)の方法によって、ホスホロチオエート・オリゴヌクレオチドを合成することも可能であるし、調節孔ガラスポリマー支持体(Sarinet al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7448-7451)等の使用によって、メチルホスホネート・オリゴヌクレオチドを調製することも可能である。
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下に実施例を記載する。必要な場合、以下の実施例で用いる動物の取り扱いは、全ての動物実験は、医薬基盤研究所及び大阪大学動物施設の機関ガイドラインに従って実施した。また、ヘルシンキ宣言に基づいて行った。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma-Aldrich、和光純薬、ナカライ、R&D Systems、USCN Life Science INC等)の同等品でも代用可能である。
(製造実施例)
以下のCpG ODNsは、(株)ジーンデザインで合成された(下線はホスホロチオエート結合を示す)。
Figure 0007048102000002
特に、上記K3-dA40(配列番号2)に加え、K3-dA35(配列番号7)、K3-dA30(配列番号6)、K3-dA25(配列番号5)及び、K3-dA20(配列番号4)の合成(表2)について記載する。
Figure 0007048102000003
(上記配列中のsは、ヌクレオシド間のリン酸ジエステル結合がホスホロチオ
エート結合に置換されていることを示す。)
本オリゴデオキシヌクレオチドは、常法である固相ホスホロアミダイト法(Nucleic Acids in Chemistry and Biology, 3. Chemical synthesis (1990) ed. G. Michael Blackburn and Michael J. Gait. Oxford University Press)を用いて合成した。
オブアルブミン(OVA)は、生化学工業(株)から購入した。DQ-OVA、Alexa488-OVA、CFSE、及びLipofectamine 2000はInvitrogenから購入した。Hoechst33258、ザイモザン及びカードランは、SIGMAから購入した。Zymosan-DepletedはInvivogenから購入した。クロドロネートリポソームはFormuMaxから購入した。インフルエンザスプリットプロダクトワクチン、ホルマリン不活化全ウイルス(WIV)、及び精製インフルエンザウイルス(H1N1)は、以前に記載したように調製した(Koyama, S., et al., Science translational medicine 2, 25ra24 (2010))。
CpG ODNとSPGとの複合体化(製造実施例図1)
7.22 mgのK3-dA40を水(3.7mL)に溶解した。SPG(三井製糖) 15 mgを0.25N NaOH (1 mL)に溶解した。1 mLの330 mM NaH2PO4をDNA溶液に加え、次にSPG溶液をDNA/NaH2PO4溶液に加え、4℃にて一晩維持することにより複合体化を完了した。モル比(MSPG/MDNA)は、0.27に固定した。複合体の形成は、マイクロチップ電気泳動装置(SHIMADZU:MultiNA)によって確認した複合体の形成は、サイズ排除クロマトグラフィーを用い、CpG ODNの高分子量側へのシフトを、260nmにおける吸収をモニタリングすることによって確認した(System:Agilent 1100series、Column:Asahipak GF7M-HQ (Shodex) 2本連結、Flow rate:0.8mL/min、Buffer: 10mM EDTA PBS, pH7.4、Temperature:40°C)。
(実施例に使用するための準備)
以下の実施例において、強い腫瘍縮小を誘発する腫瘍微小環境における貪食細胞を標的とするナノ粒子状TLR9アゴニストによる全身性の単剤治療が可能であることを示した。
(材料および方法)
以下に、本実施例で用いられる試薬、材料、動物、細胞およびその方法について説明する。適宜、各実施例においても補充して説明する。
(動物および試薬)
6週齢の雌性C57BL/6JマウスをNihon CLEAから購入した。Il12p40欠損マウスおよびBatf3欠損マウスをJackson Laboratoryから購入した。Ifnar2欠損マウス、Myd88欠損マウスおよびDectin-1欠損マウスは以前記載した通りである(Kobiyama, K., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 111, 3086-3091 (2014))。全ての動物実験を、医薬基盤研究所の機関ガイドラインに従って行った。K3はGene Designにより合成された。オバルブミン(OVA)を生化学工業から購入した。
(細胞株)
EL4およびOVA発現EL4(EG7)は、C57BL/6Jマウスの胸腺腫細胞株であり、ATCCから購入した。B16(黒色腫)をJapanese Collection of Research Bioresoursesから購入した。B16F10(黒色腫)を理研細胞バンクから購入し、MC38(結腸がん)は、F.JAMES Primus博士により提供された。Pan02(膵臓がん)をJackson’s Laboratoryから購入した。EL4、EG7、MC38、およびPan02を、完全RPMI(10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン、およびストレプトマイシンが追加されたRPMI 1640)で培養した。B16およびB16F10を、完全DMEM(10%(v/v)ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン、およびストレプトマイシンが追加されたDMEM)で培養した。
(腫瘍実験および治療方法)
EG7、EL4、B16、B16F10、およびMC38細胞(10%マトリゲル/PBS中に5×10細胞/mLで100μl)を、マウスの右側腹部の皮下(s.c)に接種した。腫瘍サイズを、腫瘍の長さ(L)、幅(W)、および高さ(H)で測定し、腫瘍体積(V)をV=L×W×Hとして計算した。腫瘍内注射(i.t.)では、腫瘍部位に直接注射した。CpG治療は、腫瘍体積が約100mmに達してから開始し、その時期は、EG7およびB16F10の接種の7日後、B16の接種の10日後、ならびにMC38の接種の14日後であった。腫瘍保有マウスを、K3(30μg)またはK3-SPG(10μg)で1日おきに3回処置した。
(Pan02の腹膜播種モデル)
Pan02の腹膜播種モデルにおいて、1×10個のPan02細胞(PBS中に1×10細胞/mLで100μl)を、腹腔内に注射した。CpG治療を接種11日後に開始し、全ての腫瘍小結節を21日目にマウスの腹膜から摘出し、その後これらの重量(g)を測定した。CpG治療での投与量は上記のとおりである。
(in vivoイメージング実験)
K3およびK3-SPGの局在を評価するために、C57BL/6マウスに、EG7を0日目にs.c.接種し、PBS(コントロール)、Alexa 647-K3(30μg)、またはAlexa 647-K3-SPG(10μg)を12日目にi.v.投与した。投与1時間後、マウスをIVIS(登録商標)Lumina Imaging Systemおよび分析ソフトウェア(Ver.2.6、Xenogen)で分析し、相対的蛍光で測定されたイメージを、表面放射輝度の物理単位(光子/秒/cm/sr)に変換した。in vivoで標識されたCD8T細胞を検出するために、脾細胞を、7、9、11日目にK3-SPGで処置されたか、または処置されていない、EG7を保有するC57BL/6マウスまたはIl12p40-Ifnar2ダブルノックアウトマウスから14日目に回収した。脾細胞の懸濁後、赤血球をACK溶解緩衝液(150mM NHCl、10mM KHCO、0.1 mM NaEDTA)で溶解し、細胞を完全RPMI中に維持した。CD8αT細胞をMACS(Miltenyi Biotec)によりソートした。CD8αT細胞を陰性選択の方法でソートした。その後、ソートされたCD8αT細胞を、Xenolight DiR(登録商標)で染色した。染色されたCD8αT細胞を、14日目にレシピエントマウス(0日目にEG7を接種し、7、9、11日目にK3-SPGでi.v.処置されたか、または処置されていないC57BL/6マウスまたはIl12p40-Ifnar2ダブルノックアウトマウス)に移した。染色した細胞を移して24時間後に、マウスをIVIS(登録商標)Lumina Imaging System(Ver.2.6)で分析した。目的の領域を腫瘍領域に集約し、蛍光強度をLiving Image Software(Ver.2.6、Xenogen)で分析した。
(免疫組織化学)
C57BL/6Jマウス(6-8週齢、雌、日本クレア)に、Alexa 647-K3(30μg)、Alexa 647-K3-SPG(10μg)、およびデキストラン-PE(20μg)を尾静脈からi.v.注射した。腫瘍を注射後1時間後に回収し、凍結切片を、4%(w/v)パラホルムアルデヒドで10分間固定し、Hoechst 33258と一緒に抗CD3e抗体、抗CD8β抗体で染色した。細胞をOlympus IX81システムを使用して撮影した。イメージデータをMetaMorphで分析した。
(枯渇実験)
食細胞(樹状細胞およびマクロファージ)を枯渇させるために、C57BL/6マウスに、クロドロネートリポソームまたはコントロールリポソーム(100nm)(片山化学)をEG7の接種の5日後にi.v.注射した。CD8T細胞を枯渇させるために、200μgの抗CD8α抗体を、EG7接種の6日後および13日後に尾静脈にi.v.注射した。
(脾細胞の分析)
脾細胞を、7、9、11日目にK3-SPGでi.v.処置されたか、処置されていない、EG7を保有するC57BL/6マウスまたはIl12p40-Ifnar2ダブルノックアウトマウスから14日目に回収した。脾細胞の調製後、赤血球をACK溶解緩衝液で溶解し、細胞を完全RPMIで維持した。脾細胞をH-2K OVAテトラマー(MBL)、抗CD8α抗体(KT15)、抗TCRβ抗体(H57-597)、抗CD62L抗体(MEL-14)、および抗CD44抗体(IM7)、ならびに7-アミノアクチノマイシンD(7AAD)で染色した。OVAテトラマーCD44CD8αTCRβの細胞数を、フローサイトメトリーで決定した。他の実験については、調製された脾細胞を、抗CD45抗体、抗CD3e抗体、抗CD8α抗体、および抗CD11a抗体と共にインキュベートし、その後フローサイトメトリーで分析した。
(CD45陰性細胞のアッセイおよび免疫化)
脾細胞を、7、9、11日目にK3-SPGでi.v.処置されたか、処置されていない、EG7を保有するC57BL/6マウスまたはIl12p40-Ifnar2ダブルノックアウトマウスから12日目に回収した。脾細胞の調製後、赤血球をACK溶解緩衝液で溶解し、細胞を完全RPMI中に維持した。脾細胞を抗CD45抗体(APC)で染色し、CD45細胞の数をフローサイトメトリーで決定した。さらに、アポトーシス細胞、ネクローシス細胞、およびCD45陰性生細胞の集団を、PIおよびHoechst 33342で染色し、その後フローサイトメトリーで分析した。次に、CD45細胞を、K3-SPGで処置された腫瘍保有C57BL/6マウスから、INFLUX(BD Bioscience)によってソートした。
(ワクチン接種モデル)
C57BL/6マウスに、5×10個のCD45細胞を-7日目にi.v.投与した。免疫化7日後、マウスに5×10個のEG7細胞を0日目にs.c.接種した。
(サイトカインの測定)
マウスIL-12p40、マウスIL-13、およびヒトIFNγのレベルを、R&DのELISAキットを用いて測定した。
(統計分析)
Mann-WhitneyのU検定、Studentのt検定またはBonferroniの多重比較検定を含む一元分散分析を、統計分析に用いた(p<0.05;**p<0.01;***p<0.001)。統計分析をGraphPad Prism software(La Jolla、CA、USA)を用いて行った。
(実施例1:K3-SPGの静脈内注射は、腫瘍抗原を全く追加しなくても強い腫瘍成長の抑制を誘発する)
本実施例では、K3-SPGの静脈内注射により、腫瘍抗原を全く追加しなくても強い腫瘍成長の抑制が誘発されることを実証した。
(EG7(OVA発現マウス胸腺腫細胞株)モデルでの実験)
C57BL/6マウスに、EG7(OVA発現マウス胸腺腫細胞株)を右側腹部に0日目に接種し、尾基部付近の皮下(i.d.)投与、腫瘍内(i.t.)投与、または静脈内(i.v.)投与の3つの異なる経路を介して、PBS、および等モル量のK3(30μg)またはK3-SPG(10μg)で3回処置した(接種の7、9、11日後)。腫瘍サイズを23日目まで2~3日毎に測定した。
(結果)
結果は図2(A~B)以下に表す。PBSの群(コントロール)において、腫瘍成長はいずれの投与経路を介しても抑制されなかった(図2a、b、c(図2A))。K3処置において、腫瘍縮小がi.t.でのみ観察されたが、他の経路においては観察されなかった(図2d、e、f(図2A))。K3-SPG処置において、i.t.およびi.v.の両方で強い腫瘍縮小が観察されたが、i.d.投与は、腫瘍成長に対する影響を示さなかった(図2g、h、i(図2A))。コントロール、K3およびK3-SPGを比較して示した図を図(図2a、d、g(図2A))に示す。
従来技術では、がんに対する全身性CpG ODN治療での多くの試みは成功していなかった(Lou, Y., et al. Journal of immunotherapy (Hagerstown, Md. : 1997) 34, 279-288 (2011);Nierkens, S., et al. PLoS One 4, e8368 (2009))ことから、K3-SPGでのi.v.単剤治療は、腫瘍成長を強く抑制し得るという事実は予測できなかったことであり、この点で本発明は予想外の効果を生じていることが実証された。
(他の腫瘍細胞株での実験)
このK3-SPG全身性単剤治療の潜在性を調査するために、他の腫瘍細胞株もまた、EG7モデルにおいて使用された同様のプロトコルで試験した。
(結果)
K3-SPGの静脈内投与は、黒色腫(B16およびB16F10)および結腸がん(MC38)の成長も抑制した(図2j、k、l(図2B))。本発明者らは、さらにより臨床的悪性度の高い腫瘍播種性モデルを作製することによって試験した。マウス膵臓腫瘍株、Pan02(1×10細胞)を、腹腔内(「i.p.」とも称する)に接種し、その後、K3またはK3-SPGによる治療(1日おきに3回)を接種の11日後に開始した。21日目に全てのマウスを屠殺し、腹腔の腫瘍の総重量を評価した(図2m(図2B))。腫瘍成長は、K3-SPG i.v.処置群において顕著に抑制されたが、K3 i.p.およびK3-SPG i.p.処置群においては抑制されなかった(図2m(図2B))。それに応じて、顕著な生存の延長が、K3-SPG i.v.処置群において観察されたが、K3 i.v.群では観察されなかった(図2n(図2B))。これらの結果は、K3-SPGの全身性i.v.投与が、多くの異なるがんに対する有望な単剤治療であり、いずれの腫瘍ペプチドおよび抗原もさらに必要としないことを実証するものである。
(実施例2:K3-SPGは腫瘍微小環境において食細胞を標的とした)
次に、本発明者らは、K3-SPGの腫瘍微小環境におけるメカニズムを解明した。
K3-SPGは、約30nmのサイズのナノ粒子を形成する(Kobiyama, K., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 111, 3086-3091 (2014))。本発明者らは、K3-SPGは、腫瘍までの薬物送達システムを介して機能すると仮定した(Na, J.H., et al. Journal of controlled release : official journal of the Controlled Release Society 163, 2-9 (2012);Petros, R.A. et al. Nat Rev Drug Discov 9, 615-627 (2010);Pante, N. et al. Molecular biology of the cell 13, 425-434 (2002);Davis, M.E., et al. Nat Rev Drug Discov 7, 771-782 (2008);Farokhzad, O.C. et al. ACS Nano 3, 16-20 (2009))。
(蛍光標識イメージング)
in vivoでの分布を試験するために、K3およびK3-SPGを蛍光標識した。EG7腫瘍保有マウスにPBS、Alexa647-K3(30μg)、またはAlexa647-K3-SPG(10μg)をi.v.注射し、その後、蛍光の分布をin vivoイメージングシステム(IVIS)によって試験した。
結果を図4以下に示す。
IVISイメージングは、K3ではなくK3-SPGが、i.v.投与1時間後で腫瘍部位に蓄積したことを明らかにした(図4a)。腫瘍におけるK3-SPGの蓄積は、CpG単剤治療の腫瘍縮小の有効性によく関連していることが観察された(図2)。免疫組織化学(IHC)試験において、本発明者らは、腫瘍微小環境においてAlexa647-K3を検出することができなかった(図4b)。他方で、Alexa647-K3-SPGは、腫瘍領域で観察された(図4c)。本発明者らは、24時間後にはIHCでのAlexa647シグナルを検出することができなかった。EG7細胞は、その表面上にCD3eを発現するが(なぜなら、EG7は胸腺腫細胞株に由来するため)、K3-SPGはCD3eに会合せず、これはK3-SPGは非腫瘍細胞によって取り込まれたことを示した。ナノ粒子は、マクロファージおよび樹状細胞(DC)などの食細胞によって取り込まれることを選択し、これらの細胞は、in vivoにおいてTRITC-デキストランによって標識され得る。そのため、本発明者は、蛍光染色されたK3、K3-SPG、またはSPGと一緒にTRITC-デキストランを静脈内注射し、IHCによるそれらの共存について試験した(図4d、e、f)。i.v.注射の1時間後、デキストランは、全試料の腫瘍領域の中で観察され(図4d、e、f)、これは腫瘍微小環境が食細胞を含んでいることを示している。以前の結果と一貫して、Alexa647-K3は腫瘍内で観察されなかった(図4d)。腫瘍内で観察された約50%のAlexa647-K3-SPGおよびFITC-SPGは、TRITC-デキストラン陽性細胞と共存し(図4e、f、g)、これはK3-SPGが、腫瘍微小環境において食細胞によって取り込まれることを示している。一部のK3-SPGはデキストランと会合せず、本発明者らは、血管透過性・滞留性亢進(EPR)効果を介して、それらは腫瘍組織内の空間に受動的に蓄積したと推測している。K3-SPG i.v.処置に対する食細胞の重要性を試験するために、本発明者らは、クロドロネートリポソームを静脈内注射した。本発明者らは、通常200~300nmのリポソームではなくて100nmのクロドロネートリポソームを使用して、これを注射することにより腫瘍内の食細胞を枯渇させ(Pante, N. et al. Molecular biology of the cell 13, 425-434 (2002);Pante, N. et al. Molecular biology of the cell 13, 425-434 (2002))、この注射により、腫瘍におけるF4/80陽性細胞が2日でほとんど枯渇した(図5)。腫瘍保有マウスに、クロドロネートリポソームを5日目に(最初のK3-SPG処置の2日前)注射するか、または注射せず、図2(A~B)と同様にマウスをK3-SPGで処置した。先にクロドロネートリポソームを注射した場合、K3-SPG媒介腫瘍成長の抑制を顕著に相殺し(p<0.05)(図4h)、他方で、クロドロネートリポソームの注射それ自体は、PBS処置マウスと比較して腫瘍成長に影響を与えなかった。これらの結果は、K3-SPGが、腫瘍微小環境における食細胞を標的とし、K3-SPGの抗腫瘍効果は、K3-SPGの腫瘍微小環境における食細胞への取り込みにほとんど依存していることを示している。
(実施例3:腫瘍微小環境におけるIL12およびIFN-Iサイトカインの両方を産生することは、K3-SPG単剤治療に重要である)
次に、本実施例では、本発明者らは、K3-SPG単剤治療の成功に必要とされる因子について試験した。
IL-12およびIFN-Iなどのサイトカインは、K3-SPG(Kobiyama, K., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 111, 3086-3091 (2014))を含むCpG ODN(Krieg, A.M., et al. Journal of immunology 161, 2428-2434 (1998);Klinman, D.M., et al. Immunity 11, 123-129 (1999);Ishii, K.J., et al. Current opinion in molecular therapeutics 6, 166-174 (2004))の重要な免疫刺激因子であることが示されている。それゆえ、本発明者らは、IL-12およびIFN-Iが、K3-SPGの治療による腫瘍縮小に必要とされるかどうか試験した。
Il12p40およびIFNAR2欠損マウスに、EG7細胞を0日目に皮下に接種し、図2(A~B)のようにPBSまたはK3-SPG(10μg)で3回i.v.処置をした。その後腫瘍縮小に対するK3-SPGの影響を観察した。
(結果)
結果を図6(A~B)以下に示す。腫瘍縮小に対するK3-SPGの影響は、IL-12p40およびIFN-Iシグナル伝達に部分的に依存していた(図6a、b(図6A))。また、本発明者らは、IL12p40およびIFNAR2の二重欠損(DKO)マウスを試験し、K3-SPGの影響は、DKOマウスにおいて完全に抑止されることを見出した(図6c(図6A))。IFN-βおよびIL-12p40もまた、IHC染色により腫瘍内で検出された(図7、図8)。これらのデータは、腫瘍内でのIL12p40およびIFN-Iサイトカインの両方の分泌は、K3-SPG媒介性腫瘍抑制に重要であることを示した。
本発明者らはまた、T細胞およびB細胞媒介性の適応免疫応答を完全に欠損しているRag2マウスを試験した。Rag2マウスは、K3-SPG処置をしても、全ての腫瘍成長を制御できなかったが(図6d(図6A))、本発明者らは、K3-SPGでの3回の処置の間に、rag2欠損マウスは、部分的に腫瘍成長を制御することができたことがわかった(図6f(図6A))。この観察を確かめるために、本発明者らは、rag2マウスの6回処置群(7、9、11日目および14、16、18日目)を作製し、rag2マウスのこのプロトコルにおいてより明白な腫瘍の制御を見出した(図6f(図6A))。興味深いことに、IL12p40およびIFNAR2 DKOマウスは、この広範な処置プロトコルでも、K3-SPG単剤治療に対して完全に非応答だった(図6e(図6A))。これらのデータは、K3-SPGの治療は、腫瘍内でIL-12p40およびIFN-Iの両方を誘発し、その結果、腫瘍に対する自然免疫応答および適応免疫応答の両方を生じさせたことを示した。
(実施例4:K3-SPG処置は、IL12p40およびIFN-Iの両方に依存する態様で、腫瘍細胞死を誘発する)
本実施例では、K3-SPG処置は、IL12p40およびIFN-Iの両方に依存する態様で、腫瘍細胞死を誘発することを実証した。
rag2マウスにおいて観察される適応免疫によらない部分的な腫瘍成長の抑制、およびIL12p40およびIFNAR2 DKOマウスにおけるその完全な抑止が観察されたため、本発明者らは、広範囲なK3-SPG処置中の腫瘍-宿主相互作用を試験した。
本発明者らは、12日目に取り除かれた脾臓(K3-SPGでの3回の処置の次の日)が、PBS処置された脾臓と比較して、多量のCD45陰性細胞を含んでいたことを見出した(図6g(図6B))。興味深いことに、これらのCD45陰性細胞は、IL12p40およびIFNAR2 DKOマウスにおいて顕著に減少した(図6g、h(図6B))。本発明者らは、これらのCD45陰性細胞をソートした。このサイズおよび形態は、それらが腫瘍細胞に由来することを強く示した。GFPマウスにおけるEG7接種実験により、これらのCD45陰性細胞もまたGFP陰性であることをさらに確認し、このことは、これらの細胞が腫瘍細胞由来であったことを示した(図9)。EG7細胞はCD45を発現しないので、CD45が陰性であることもまた、この仮説を支持している。HoechstおよびPI染色は、脾臓におけるほとんどのCD45陰性細胞は、アポトーシスおよびネクローシスの両方の特徴からなる死細胞であった(図6i(図6B))。これらのデータは、K3-SPGにより標的とされる腫瘍食細胞が、腫瘍微小環境においてIL-12p40およびIFN-Iを分泌し、これらのサイトカインが腫瘍細胞死を誘発し、それらを循環に放出して最終的に脾臓に捕捉されたことを示した。
(実施例5:放出された腫瘍死細胞は複数の腫瘍抗原に対する抗腫瘍CTLを誘発する)
本実施例では、放出された腫瘍死細胞は複数の腫瘍抗原に対する抗腫瘍CTLを誘発することを実証した。
K3-SPG処置されたマウスの脾臓において見つかったこれらのCD45陰性細胞の免疫原性を試験するために、本発明者らはこれらの細胞をソートし、免疫化として無処置マウスに静脈内注射をした。その後、免疫化されたマウスを、ソートされた細胞投与の7日後にEG7腫瘍細胞を移植した。CD45陰性細胞免疫化マウスは、EG7腫瘍の増殖に対して顕著に防御された(図6j(図6B))。興味深いことに、コントロールマウスおよび免疫化マウスにおけるOVA257テトラマー陽性細胞(図6k(図6B)における赤の点)は、腫瘍サイズと相関せず(図6k(図6B)の棒)、CD45陰性細胞による免疫化は、単なるOVA257エピトープよりもむしろ、EG7腫瘍に対するより有効なさらなる免疫応答を誘発したことを示した(図6k(図6B))。これらの結果は、K3-SPG単剤治療は、IL-12およびIFN-Iの両方に依存する腫瘍細胞死を誘発し、この腫瘍死細胞は、抗腫瘍免疫応答のための効率的な免疫原として機能することを示した。
(CD8T細胞は、K3-SPG媒介性の腫瘍縮小において重要なエフェクターである)
Rag2マウスの結果は、K3-SPGの腫瘍抑制効果もまた、適応免疫応答に依存することを示した。それゆえ、本発明者らは、K3-SPG治療に必要なCD8T細胞を試験した。in vivoにおけるCD8 T細胞の枯渇は、K3-SPGの抗腫瘍効果を顕著に抑止し(図10a(図10A))、CD8T細胞がこのK3-SPG治療における重要なエフェクター細胞であることを示している。また、K3-SPGによる腫瘍縮小は、Batf3(交差提示CD8α DCを欠損している)にも依存し(図10b(図10A))、K3-SPG単剤治療が、CD8α DC媒介性交差提示をも増強したことを示している。本発明者らは、CD8T細胞の腫瘍浸潤と腫瘍成長との間の明らかな関連性を観察した。CD8T細胞は、K3-SPG i.v.群において腫瘍領域で蓄積したが、i.d.群では蓄積しなかった(図10c(図10A))。
最後に、本発明者らは、これらのCD8T細胞が腫瘍領域に進入するために必要なものを試験した。WTマウスおよびIl12p40-Ifnar2 DKOマウスに、EG7細胞を0日目に接種し、7、9、および11日目にK3-SPGまたはPBSでi.v.処置した。14日目に、CD8αT細胞を、これらのマウスの脾臓から精製し、Xenolight DiR(登録商標)で染色し、K3-SPG処置された(7、9、および11日目)別のEG7保有マウスに移し(接種14日後)、その後Xenolight DiR(登録商標)で標識されたCD8T細胞の分布をIVISで15日目に分析した(図11)。15日目に、未処置腫瘍を保有するドナーマウス由来のCD8T細胞は、K3-SPGで処置されてもWTレシピエントマウスの腫瘍部位で蓄積しなかった(図10d(図10B)、II)。他方で、K3-SPGで処置された腫瘍を保有するドナーマウス由来のCD8T細胞は、レシピエントマウスの腫瘍部位で検出され(図10d(図10B)、I)、K3-SPG単剤治療は、腫瘍微小環境へと移動して浸潤し得る抗腫瘍CD8T細胞を誘発したことを示した。これらのin vivo活性化CD8T細胞は、DKOレシピエントマウスの腫瘍微小環境に進入することが可能であった(図10e(図10B))。たとえ、IL-12およびIFN-Iは、全身性のK3-SPG単剤治療による自然免疫およびCD8T細胞の誘発に重要であっても、この結果は、CD8T細胞がK3-SPG治療で活性化されると、腫瘍微小環境におけるIL-12およびIFN-Iサイトカインの分泌がCD8T細胞の腫瘍浸潤に必ずしも必要であるとは限らないことを示した。まとめると、これらの結果は、腫瘍特異的CD8T細胞の活性化が、腫瘍への浸潤に十分であることを示した。驚くべきことに、これらのCD8T細胞の浸潤は、腫瘍微小環境におけるサイトカインの産生に依存しない。
(考察)
本発明者らは、新規ながん免疫療法の可能性を示した。これはCpGが腫瘍微小環境における食細胞に標的化されるという新しい治療である(図12)。TLR9の刺激を介して、CpGが免疫細胞による免疫応答を誘発し、特にマクロファージおよびDCを活性化する(Klinman, D.M., et al. Immunity 11, 123-129 (1999);Ishii, K.J., et al. Current opinion in molecular therapeutics 6, 166-174 (2004))。この活性化は、抗がん免疫応答に非常に重要である。以前の報告では、CpGを直接腫瘍内に投与しなければならなかったが、SPGとCpGの複合体ではDDS機能が追加され全身投与でも腫瘍内投与と同等もしくはそれ以上の有効性が示され(Schettini, J., et al. Cancer immunology, immunotherapy : CII 61, 2055-2065 (2012);Lou, Y., et al. Journal of immunotherapy (Hagerstown, Md. : 1997) 34, 279-288 (2011);Nierkens, S., et al. PLoS One 4, e8368 (2009);Heckelsmiller, K., et al. Journal of immunology 169, 3892-3899 (2002);Ishii, K.J., et al. Current opinion in molecular therapeutics 6, 166-174 (2004))、本発明者らはこの課題を解決した。ナノ粒子の形成によるSPGとCpGとの複合体は(Kobiyama, K., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 111, 3086-3091 (2014))、in vivoにおいて安定化することが可能であった。この効果が腫瘍環境を標的とすることを可能とすることがわかり、TLR9免疫担当細胞が腫瘍環境に供された。本発明者らによって開発されたこの新規CpGは、ナノ粒子を形成させるために食細胞によって貪食される。
その後、腫瘍環境において、この新規CpGを貪食した食細胞は、IFNおよびIL-12などのサイトカインを産生する。これらのサイトカインが腫瘍環境において誘発されることは非常に重要である。以前の報告には、腫瘍環境を直接標的としたIFNβ治療は、樹状細胞を腫瘍内に移動させ、腫瘍内微小環境内の抗原交差提示を増加させることによりCTLを再活性化させることが記載されている。これらのサイトカインは、腫瘍細胞の細胞死を引き起こす。さらに、本発明者らは、この効果が自然免疫の活性化によって及ぼされることを見出した。この細胞死は、非常に重要な役割を担っている。これは自然免疫と適応免疫との間の連携をなしていた。腫瘍細胞死が腫瘍微小環境から放出されることによって、獲得免疫を誘発する。この免疫原性腫瘍細胞死は、複数の細胞障害性Tリンパ球を誘発する。上記のようにin vivoにおける腫瘍特異的に誘発されるCTLは、腫瘍に応答して腫瘍微小環境に浸潤し得る。この抗腫瘍免疫システムは内因性抗原を使用し、がん免疫療法の障壁である免疫編集に対処し得ると考えられる。
K3-SPG単剤治療後の腫瘍細胞の循環は、腫瘍に対するこの処置効果の優れたバイオマーカーとして機能し得る。
(実施例6:製剤例)
製剤は、例えば、7.22mgのK3-dA40(配列番号2)を水(3.7mL)に溶解し、SPG(15mg)を0.25N NaOH(1mL)に溶解した。1mLの容積の330mM NaH2PO4をDNA溶液に加え、次いで、SPG溶液をこのDNA/Na
PO溶液に加え、4℃で一晩維持して、複合体化を完了させた。モル比(MSPG/MDNA)は0.27に固定して製造することができる。
製剤に使用した薬剤は、ジーンデザイン、invivogen、Wakoなどから入手することができる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明により、単剤として使用できる新たな形態の抗がん剤が提供される。したがって、本発明の複合体は、抗がん剤として医薬分野において有用である。
配列番号1:K3
配列番号2:K3-dA40
配列番号3:dA40-K3
配列番号4:K3-dA20
配列番号5:K3-dA25
配列番号6:K3-dA30
配列番号7:K3-dA35

Claims (2)

  1. (a)ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチド及びポリデオキシアデニル酸を含む、オリゴデオキシヌクレオチドであって、ポリデオキシアデニル酸が、ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドの3’側に配置されている、オリゴデオキシヌクレオチドと、
    (b)β―1,3-グルカンとを
    含む、インターロイキン12(IL12)および/またはインターフェロン(IFN)γの発現またはその促進のための組成物であって、該ヒト化K型CpGオリゴデオキシヌクレオチドは、配列番号1に表されるヌクレオチド配列を含み、該ポリデオキシアデニル酸は、20ヌクレオチド長以上、100ヌクレオチド長以下であり、該β-1,3-グルカンは、シゾフィラン(SPG)であり、該組成物が静脈内投与されることを特徴とする、組成物
  2. 前記オリゴデオキシヌクレオチドはK3-dA40(配列番号2)K3-dA20(配列番号4)、K3-dA25(配列番号5)、K3-dA30(配列番号6)およびK3-dA35(配列番号7)である、請求項に記載の組成物。

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