以下、図面を参照して、本発明の結束機の実施の形態としての鉄筋結束機の一例について説明する。
<本実施の形態の鉄筋結束機の構成例>
図1は、本実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面から見た構成図、図2は、本実施の形態の鉄筋結束機の要部構成の一例を示す側面から見た構成図である。
本実施の形態の鉄筋結束機1Aは、作業者が手に持って使用する筺体であり、本体部(結束機本体)10Aと本体部10Aから延在するハンドル部11Aを備える。鉄筋結束機1Aは、ワイヤWを、一の方向である正方向に送り、結束物の一例の鉄筋Sの周囲に巻き回(カール)した後、前記正の方向とは逆方向に引戻して鉄筋Sに巻き付ける。そして、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWの一部を把持して捩じることによって鉄筋SをワイヤWで結束する。
鉄筋結束機1Aは、ワイヤWが収納される収納部であるマガジン2Aと、本体部10A内に収容されてワイヤWを送るワイヤ送り部3Aと、本体部10Aの一端側に配置され、ワイヤ送り部3Aで送られるワイヤWを鉄筋Sの周囲に沿ってカールさせる経路を構成するカールガイド部5Aと、鉄筋Sに巻き回されたワイヤWを切断する切断部6Aと、本体部10A内に収容され、カールガイド部5Aにより鉄筋SにカールされたワイヤWを捩じって鉄筋Sを結束する結束部7Aを備える。また、ワイヤ送り部3Aの上流側には、ワイヤ送り部3Aに送り込まれるワイヤWをガイドする第1のワイヤガイド4A1を備え、ワイヤ送り部3Aの下流側には、ワイヤ送り部3Aから送り出されるワイヤWをガイドする第2のワイヤガイド4A2を備える。
マガジン2Aは、長尺状のワイヤWが繰り出し可能に巻かれたリール20が回転、着脱可能に収納される。本実施の形態の鉄筋結束機1Aは、2本のワイヤWで鉄筋Sを結束できるようにするため、リール20には2本のワイヤWが繰り出し可能に巻かれる。ワイヤWは、塑性変形し得る金属線で構成されたワイヤ、金属線が樹脂で被覆されたワイヤ、あるいは撚り線のワイヤなどが使用される。以下の説明では、マガジン2Aとハンドル部11Aが並ぶ方向に沿った方向において、矢印Fで示すマガジン2Aが設けられる側を前方と称し、ハンドル部11Aが設けられる側を後方と称す。
図3及び図4は、ワイヤ送り部の一例を示す構成図である。ワイヤ送り部3Aは、並列された2本のワイヤWを挟持して送る一対の送り部材として、回転動作でワイヤWを送る第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rを備える。
第1の送りギア30Lは、駆動力の伝達を行う歯部31Lを備える。歯部31Lは、本例では平歯車を構成する形状で、第1の送りギア30Lの外周の全周に形成される。また、第1の送りギア30Lは、ワイヤWが入る溝部32Lを備える。溝部32Lは、本例では断面形状が略V字形状の凹部で構成され、第1の送りギア30Lの外周の全周に、円周方向に沿って形成される。
第2の送りギア30Rは、駆動力の伝達を行う歯部31Rを備える。歯部31Rは、本例では平歯車を構成する形状で、第2の送りギア30Rの外周の全周に形成される。また、第2の送りギア30Rは、ワイヤWが入る溝部32Rを備える。溝部32Rは、本例では断面形状が略V字形状の凹部で構成され、第2の送りギア30Rの外周の全周に、円周方向に沿って形成される。
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rを対向させて、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが、ワイヤWの送り経路を挟んで設けられる。
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間にワイヤWを挟持するため、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが互いに近づくに押圧される。これにより、ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間にワイヤWを挟持する。
また、ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lの溝部32Lと第2の送りギア30Rの溝部32Rとの間にワイヤWを挟持した状態で、第1の送りギア30Lの歯部31Lと第2の送りギア30Rの歯部31Rが噛み合う。
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの一方、本例では第1の送りギア30Lを駆動する送りモータ33と、送りモータ33の駆動力を第1の送りギア30Lに伝達する駆動力伝達機構34を備える。
駆動力伝達機構34は、送りモータ33の軸に取り付けられた小ギア33aと、小ギア33aとかみ合う大ギア33bを備える。また、駆動力伝達機構34は、大ギア33bから駆動力が伝達され、第1の送りギア30Lとかみ合う送り小ギア34aを備える。小ギア33a、大ギア33b及び送り小ギア34aは、それぞれ平歯車で構成される。
第1の送りギア30Lは、送りモータ33の回転動作が駆動力伝達機構34を介して伝達されて回転する。第2の送りギア30Rは、第1の送りギア30Lの回転動作が歯部31Lと歯部31Rとの噛み合いにより伝達され、第1の送りギア30Lに従動して回転する。
これにより、ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持したワイヤWを、ワイヤWの延在方向に沿って送る。2本のワイヤWを送る構成では、第1の送りギア30Lの溝部32Lと一方のワイヤWとの間に生じる摩擦力、第2の送りギア30Rの溝部32Rと他方のワイヤWとの間に生じる摩擦力、及び、一方のワイヤWと他方のワイヤWとの間に生じる摩擦力により、2本のワイヤWが並列された状態で送られる。
ワイヤ送り部3Aは、送りモータ33の回転方向の正逆を切り替えることで、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの回転方向が切り替えられ、ワイヤWの送り方向の正逆が切り替えられる。
次に、ワイヤWの送りをガイドするワイヤガイドについて説明する。図2に示すように、第1のワイヤガイド4A1は、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対し、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの上流側に配置される。また、第2のワイヤガイド4A2は、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対し、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの下流側に配置される。
第1のワイヤガイド4A1及び第2のワイヤガイド4A2は、ワイヤWが通るガイド穴40Aを備える。ガイド穴40Aは、ワイヤWの径方向の位置を規制する形状を有する。2本のワイヤWを送る構成では、第1のワイヤガイド4A1及び第2のワイヤガイド4A2は、2本のワイヤWを並列させて通る形状のガイド穴40Aが形成される。
第1のワイヤガイド4A1及び第2のワイヤガイド4A2は、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対してガイド穴40Aの上流側であるワイヤ導入部は、下流側に比べて開口面積が大きくした円錐形状または角錐形状等のテーパ状となっている。これにより、第1のワイヤガイド4A1及び第2のワイヤガイド4A2に対するワイヤWの導入が容易になる。
次に、ワイヤWを鉄筋Sの周囲に沿ってカールさせるワイヤWの送り経路を構成するカールガイド部5Aについて説明する。カールガイド部5Aは、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWに巻き癖をつけるカールガイド50と、カールガイド50から送り出されたワイヤWを結束部7Aに誘導する誘導ガイド51を備える。
カールガイド50は、ワイヤWの送り経路を構成するガイド溝52と、ガイド溝52との協働でワイヤWに巻き癖をつけるガイド部材としての第1のガイドピン53a及び第2のガイドピン53bを備える。
第1のガイドピン53aは、カールガイド50において第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWの導入部側に設けられ、ガイド溝52によるワイヤWの送り経路に対して、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側に配置される。第1のガイドピン53aは、ガイド溝52に沿って送られるワイヤWが、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側に入り込まないように、ワイヤWの送り経路を規制する。
第2のガイドピン53bは、カールガイド50において第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWの排出部側に設けられ、ガイド溝52によるワイヤWの送り経路に対して、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側に配置される。
カールガイド部5Aは、第1のガイドピン53aを退避させる退避機構53を備える。退避機構53は、ワイヤWが鉄筋Sに巻き回された後、結束部7Aの動作と連動して変位し、ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けるタイミングの前に、第1のガイドピン53aをワイヤWが移動する経路から退避させる。
誘導ガイド51は、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの径方向の位置を規制する第1のガイド部54と、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの軸方向Ru1に沿った位置を規制する第2のガイド部55を備える。
第1のガイド部54は、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側に、ワイヤWの送り方向に沿って延在する面による壁面54aが設けられる。第1のガイド部54は、鉄筋SにワイヤWが巻き回されるときに、壁面54aで、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの径方向の位置を規制する。
第2のガイド部55は、ワイヤWの導入側に設けられ、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの軸方向Ru1に沿った両側に、ループRuの径方向の内側に向けて壁面54aから立ち上がる面による壁面55aが設けられる。第2のガイド部55は、鉄筋SにワイヤWが巻き回されるときに、壁面55aで、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの軸方向Ru1に沿った位置を規制する。
これにより、カールガイド50から送り出されたワイヤWは、鉄筋Sに巻き回されるループRuの軸方向Ru1の位置が第2のガイド部55の壁面55aで規制され、第2のガイド部55で第1のガイド部54に誘導される。
誘導ガイド51は、本例では、第1のガイド部54が鉄筋結束機1Aの本体部10Aに固定され、第2のガイド部55が、軸55bを支点として回転可能な状態で第1のガイド部54に支持される。第2のガイド部55は、カールガイド50から送り出されたワイヤWが入る導入側が、カールガイド50に対して離接する方向に開閉可能に構成される。これにより、鉄筋SをワイヤWで結束した後、鉄筋結束機1Aを鉄筋Sから抜く動作で第2のガイド部55を退避させて、鉄筋結束機1Aを鉄筋Sから抜く動作を容易にしている。
次に、鉄筋Sに巻き回されたワイヤWを切断する切断部6Aについて説明する。切断部6Aは、可動刃部60と、可動刃部60との協働でワイヤWを切断する回転刃部61と、結束部7Aの動作を回転刃部61に伝達する伝達機構62を備える。可動刃部60は、ワイヤWが通る開口60aを備え、開口60aにワイヤWを切断可能なエッジ部を設けて構成される。
可動刃部60は、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対して第2のワイヤガイド4A2の下流側に設けられ、開口60aが第3のワイヤガイドを構成する。
また、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWは、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側の2点と、この2点の間の内側の1点の少なくとも3点で、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の位置が規制されることで、ワイヤWに巻き癖が付けられる。
本例では、正方向に送らされるワイヤWの送り方向に対し、第1のガイドピン53aの上流側に設けられる第2のワイヤガイド4A2と、第1のガイドピン53aの下流側に設けられる第2のガイドピン53bの2点で、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側の位置が規制される。また、第1のガイドピン53aで、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側の位置が規制される。
回転刃部61は、可動刃部60を支点とした回転動作で、可動刃部60の開口60aを通るワイヤWを切断する。伝達機構62は、結束部7Aの動作と連動して変位し、ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けた後、ワイヤWを捩じるタイミングに合わせて回転刃部61を回転させ、ワイヤWを切断する。
図5及び図6は、結束部及び結束部駆動機構の一例を示す構成図で、図7は、結束部駆動機構の一例を示す構成図である。次に、ワイヤWで鉄筋Sを結束する結束部7Aについて説明する。
結束部7Aは、カールガイド部5AによりカールされたワイヤWを把持する把持部70と、ワイヤWの一方の端部WS側と他方の端部WE側を、鉄筋S側へ曲げる折り曲げ部71を備える。
把持部70は、固定把持部材70Cと、第1の可動把持部材70Lと、第2の可動把持部材70Rを備える。第1の可動把持部材70Lと第2の可動把持部材70Rは、固定把持部材70Cを介して左右方向に配置される。具体的には、第1の可動把持部材70Lは、固定把持部材70Cに対し、巻き回されるワイヤWの軸方向に沿った一方の側に配置され、第2の可動把持部材70Rは、他方の側に配置される。
第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70Cは、第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70Cの先端側の間にワイヤWが通る。また、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cは、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cの先端側の間にワイヤWが通る。
固定把持部材70Cは、第1の可動把持部材70L及び第2の可動把持部材70Rを回転可能に支持する軸76を備える。固定把持部材70Cは、第1の可動把持部材70L及び第2の可動把持部材70Rの後端側を軸76で支持する。これにより、第1の可動把持部材70Lは、軸76を支点とした回転動作で、先端側が固定把持部材70Cに対して離接する方向に開閉する。また、第2の可動把持部材70Rは、軸76を支点とした回転動作で、先端側が固定把持部材70Cに対して離接する方向に開閉する。
折り曲げ部71は、把持部70の周囲を覆う形状を有し、結束部7Aの軸方向に沿って移動可能に設けられる。折り曲げ部71は、第1の可動把持部材70L及び第2の可動把持部材70Rを開閉する開閉ピン71aを備える。第1の可動把持部材70L及び第2の可動把持部材70Rは、開閉ピン71aの動作で第1の可動把持部材70L及び第2の可動把持部材70Rを開閉する開閉ガイド孔77を備える。
開閉ピン71aは、折り曲げ部71の内部を貫通して、折り曲げ部71の移動方向に直交する。開閉ピン71aは、折り曲げ部71に固定されており、折り曲げ部71の移動に連動して移動する。
開閉ガイド孔77は、開閉ピン71aの移動方向に沿って延在し、開閉ピン71aの直線方向の動きを、軸76を支点とした第2の可動把持部材70Rの回転による開閉動作に変換する開閉部78を備える。開閉ガイド孔77は、折り曲げ部71の移動方向に沿って第1の待機距離延在する第1の待機部770と、折り曲げ部71の移動方向に沿って第2の待機距離延在する第2の待機部771を備える。開閉部78は、第1の待機部770の一の端部から斜め外側方向に屈曲して延在し、第2の待機部771と繋がる。なお、図5では、第2の可動把持部材70Rに設けられた開閉ガイド孔77を図示しているが、第1の可動把持部材70Lにも左右対称の形状で同様な開閉ガイド孔77が設けられる。
把持部70は、図5(a)に示すように、第1の可動把持部材70L及び第2の可動把持部材70Rが固定把持部材70Cから離れる方向に移動していることで、第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70Cとの間、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cとの間にワイヤWが通る送り経路が形成される。
第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWは、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rの間を通り、カールガイド部5Aに誘導される。カールガイド部5Aで巻き癖が付けられたワイヤWは、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lの間を通る。
折り曲げ部71が図6に矢印Fで示す前方向に移動することで、開閉ピン71aが開閉ガイド孔77の開閉部78を押すと、第1の可動把持部材70L及び第2の可動把持部材70Rは、軸76を支点とした回転動作で、固定把持部材70Cに近づく方向に移動する。
図5(c)は、図5(b)のA-A断面図である。図5(c)に示すように、第1の可動把持部材70Lが固定把持部材70Cに近づく方向に移動することで、第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70Cとの間にワイヤWが把持される。また、第2の可動把持部材70Rが固定把持部材70Cに近づく方向に移動することで、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cとの間に、ワイヤWが延在方向に送られる隙間がある。
折り曲げ部71は、第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70Cとの間に把持されたワイヤWの一方の端部WS側を押す曲げ部71b1を備える。また、折り曲げ部71は、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cとの間に把持されたワイヤWの他方の端部WE側を押す曲げ部71b2を備える。
折り曲げ部71は、矢印Fで示す前方向に移動することで、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lで把持されたワイヤWの一方の端部WS側を曲げ部71b1で押して、鉄筋S側へ曲げる。また、折り曲げ部71は、矢印Fで示す前方向に移動することで、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rの間通されたワイヤWの他方の端部WE側を曲げ部71b1で押して、鉄筋S側へ曲げる。
結束部7Aは、図2に示すように、ワイヤWの一方の端部WSの位置を規制する長さ規制部74を備える。長さ規制部74は、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lの間を通過したワイヤWの送り経路に、ワイヤWの一方の端部WSが突き当てられる部材を設けて構成される。
更に、結束部7Aは、カールガイド部5Aが設けられる一端側に把持部70を有する回転軸82と、回転軸82の回転動作で変位する可動部材83と、回転軸82の回転動作と連動した可動部材83の回転を規制する回転規制部材84とを備える。また、鉄筋結束機1Aは、回転軸82の把持部70に対する反対側(他端側)に接続され、結束部7Aを駆動する駆動部8Aを備える。駆動部8Aは、モータ80と、減速及び捩りトルクの増幅を行う減速機81を備える。
回転軸82は、モータ80により駆動されて回転し、把持部70が把持したワイヤWを捩じる。回転軸82と可動部材83は、回転軸82に設けたネジ部82bと、ネジ部82bに螺合する可動部材83に設けたナット部とにより、回転軸82の回転動作が、可動部材83の回転軸82に沿った前後方向への移動に変換される。駆動部8Aは、折り曲げ部71が可動部材83と一体に設けられ、可動部材83の前後方向への移動で、折り曲げ部71が前後方向に移動する。
可動部材83及び折り曲げ部71と、折り曲げ部71に支持された把持部70は、把持部70でワイヤWを把持及び折り曲げ部71でワイヤWを折り曲げる動作域では、回転規制部材84に係止されることで、回転規制部材84により回転動作が規制された状態で前後方向に移動する。また、可動部材83及び折り曲げ部71と把持部70は、回転規制部材84の係止から抜けることで、回転軸82の回転動作で回転する。
把持部70は、可動部材83及び折り曲げ部71の回転と連動して、ワイヤWを把持した固定把持部材70C、第1の可動把持部材70L及び第2の可動把持部材70Rが回転する。
上述した第1のガイドピン53aの退避機構53は、可動部材83の前後方向への移動を第1のガイドピン53aの変位に変換するリンク機構で構成される。また、回転刃部61の伝達機構62は、可動部材83の前後方向への移動を回転刃部61の回転動作に変換するリンク機構で構成される。
可動部材83は、後方に移動すると、回転軸82の可動部材83に対する後方に位置するフランジ82cと衝突する。その衝突の衝撃を緩衝する緩衝部材として、結束部7Aは更に、ガイド板85と、ガイド部材86と、ガイド板85とガイド部材86によって挟まれる弾性部材の一例としてのバンパ87とを備える。これら緩衝部材は、回転軸82に嵌合し、可動部材83の移動経路の後方端(一方の終端)に、フランジ82cの前方に接するようにして設けられる。なお、可動部材83が移動経路の前方端(他方の終端)に移動すると、ワイヤWの捩り動作が終了する。回転軸82は、ネジ部82bの後方でガイド板85の前方に、回転軸82の円周方向に沿った溝82aを有する。溝82aには、円弧状のリング88が、溝82aから突出するようにして嵌め込まれる。
図7(b)に示すように、ガイド板85は、回転軸82に嵌合する孔85aを有し、回転軸82に対して前後方向に移動可能に支持されている。ガイド部材86は、回転軸82に嵌合する孔86cを有する。ガイド部材86は、回転軸82に対して前後方向に移動可能であり、ガイド板85の前方に設けられる。図7(c)に示すように、ガイド部材86は、ガイド板85に向けて突出する凸部である壁86aを有する。壁86aは、ガイド板85に対峙する面86bの外周縁部の全周囲から立設している。ガイド部材86の面86bの外径は、ガイド板85の外径よりやや大きく設定される。そのため、壁86aの内側にガイド板85が入るようにして、ガイド板85とガイド部材86がバンパ87を挟む。
バンパ87は、ゴム等の弾性材によって構成される。図7(a)に示すように、バンパ87は、回転軸82に嵌合する孔87bを有した円弧状をしており、円弧状の両端部の間には、孔87bから回転軸82の径方向に沿って分断される切欠部87aが形成される。バンパ87の外径は、ガイド部材86の面86bの外径より小さく設定されるため、バンパ87がガイド板85とガイド部材86との間に挟まれた状態では、壁86aの内側にバンパ87が入る。
リング88は、円弧状の両端部の間に、回転軸82の径方向に沿って分断される切欠部88aが形成される。ガイド板85とバンパ87が接し、バンパ87とガイド部材86が接した状態でリング88が溝82aに嵌め込まれると、リング88は、バンパ87との間にガイド部材86を挟んで、ガイド部材86の前後方向への移動を規制する。この状態で、ガイド部材86の壁86aが回転軸82との間にバンパ87を挟み、回転軸82からバンパ87が外れないように規制する。リング88が溝82aから外されると、ガイド部材86の前後方向への移動の規制が解除されるため、ガイド部材86は回転軸82に沿って前後方向に移動可能な状態となる。この状態でガイド部材86を前方へ移動させると、壁86aと回転軸82とによるバンパ87の挟み込みが解除されるため、バンパ87が回転軸82から外せる状態となる。
ハンドル部11Aの前側にはトリガ12Aが設けられ、トリガ12Aの操作で押されるスイッチ13Aの状態に応じて、制御部14Aが送りモータ33とモータ80を制御する。ハンドル部11Aの下部には、バッテリ15Aが着脱可能に取り付けられる。
<本実施の形態の鉄筋結束機の動作例>
図8は、ワイヤを把持して捩じる動作の一例の詳細を示す動作説明図で、次に、各図を参照して、本実施の形態の鉄筋結束機1Aにより鉄筋SをワイヤWで結束する動作について説明する。
鉄筋結束機1Aは、ワイヤWが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持され、このワイヤWの先端が、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの挟持位置から、切断部6Aの可動刃部60との間に位置した状態が待機状態となる。また、鉄筋結束機1Aは、待機状態では、図5(a)に示すように、第1の可動把持部材70Lが固定把持部材70Cに対して開き、第2の可動把持部材70Rが固定把持部材70Cに対して開いた状態である。可動部材83は、移動経路の後方端に位置した状態である。
鉄筋Sがカールガイド部5Aのカールガイド50と誘導ガイド51の間に入れられ、トリガ12Aが操作されると、送りモータ33が正回転方向に駆動され、第1の送りギア30Lが正転すると共に、第1の送りギア30Lに従動して第2の送りギア30Rが正転する。これにより、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持された2本のワイヤWが正方向に送られる。
正方向に送られるワイヤWの送り方向に対し、ワイヤ送り部3Aの上流側に第1のワイヤガイド4A1が設けられ、下流側に第2のワイヤガイド4A2が設けられることで、2本のワイヤWが並列された状態で送られる。
ワイヤWが正方向に送られると、ワイヤWは固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rの間を通り、カールガイド部5Aのカールガイド50のガイド溝52を通過する。これにより、ワイヤWは、第2のワイヤガイド4A2と、カールガイド50の第1のガイドピン53a及び第2のガイドピン53bの3点で、鉄筋Sの周囲に巻き回される巻き癖が付けられる。
カールガイド50から送り出されたワイヤWは、誘導ガイド51で固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lの間に誘導される。そして、ワイヤWの先端が長さ規制部74に突き当てられる位置まで送られると、送りモータ33の駆動が停止される。これにより、ワイヤWが、図8(a)に示すように、鉄筋Sの周囲にループ状に巻き回される。
ワイヤWの送りを停止した後、モータ80が正回転方向に駆動されることで、モータ80は、可動部材83を前方向である矢印F方向に移動させる。すなわち、可動部材83は、モータ80の回転に連動した回転動作が、回転規制部材84により規制されて、モータ80の回転が直線移動に変換される。これにより、可動部材83は前方向に移動する。
可動部材83が前方向に移動する動作に連動して、可動部材83と一体に折り曲げ部71が回転せずに前方向に移動する。折り曲げ部71が前方向に移動すると、図5(c)に示すように、開閉ピン71aが開閉ガイド孔77の開閉部78を通過する。
これにより、第1の可動把持部材70Lは、軸76を支点とした回転動作で、固定把持部材70Cに近づく方向に移動する。よって、第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70Cの間に、ワイヤWの一方の端部WS側が把持される。また、第2の可動把持部材70Rは、軸76を支点とした回転動作で、固定把持部材70Cに近づく方向に移動する。よって、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cの間に、ワイヤWの他方の端部WE側が、ワイヤWの延在方向に移動可能な状態で把持される。
更に、可動部材83が前方向に移動すると、可動部材83の動作が退避機構53に伝達され、第1のガイドピン53aが退避する。
第1の可動把持部材70L及び第2の可動把持部材70Rの開閉動作でワイヤWを把持する位置まで可動部材83を前進させた後、モータ80の回転を一時停止し、送りモータ33を逆回転方向に駆動する。これにより、第1の送りギア30Lが逆転すると共に、第1の送りギア30Lに従動して第2の送りギア30Rが逆転する。
よって、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挟持されたワイヤWが逆方向に送られる。ワイヤWを逆方向に送る動作で、図8(b)に示すように、ワイヤWは鉄筋Sに密着されるようにして巻き付けられる。
ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けて、送りモータ33の逆回転方向の駆動を停止した後、モータ80を正回転方向に駆動することで、可動部材83を前方向に移動させる。可動部材83が前方向に移動する動作が伝達機構62で切断部6Aに伝達されることで回転刃部61が回転し、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cで把持されたワイヤWの他方の端部WE側が、可動刃部60と回転刃部61の動作で切断される。
本例のように2本のワイヤWで鉄筋Sを結束する場合、従来のように1本のワイヤで鉄筋Sを結束する場合と同等の結束強度を得るのであれば、ワイヤWの直径を従来より細くすることができる。このため、ワイヤWを曲げやすく、小さい力でワイヤWを鉄筋Sに密着させることができる。従って、小さい力でワイヤWを確実に鉄筋Sに巻き付けることができる。また、ワイヤWの切断時の負荷低減を図ることができる。これに伴い、鉄筋結束機1Aの各モータの小型化、機構部位の小型化による本体部全体の小型化が可能である。また、モータの小型化、負荷の低減により消費電力の低減が可能である。
ワイヤWを切断した後、可動部材83を更に前方向に移動させることで、図8(c)に示すように、可動部材83と一体で折り曲げ部71が前方向に移動する。折り曲げ部71が、矢印Fで示す前方向である鉄筋Sに接近する方向へ移動することで、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lで把持されたワイヤWの一方の端部WS側を、曲げ部71b1で鉄筋S側へ押圧して、把持位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。折り曲げ部71が更に前方向に移動することで、第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70Cとの間に、ワイヤWの一方の端部WS側が把持された状態で保持される。
また、折り曲げ部71が、矢印Fで示す前方向である鉄筋Sに接近する方向へ移動することで、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rで把持されたワイヤWの他方の端部WE側を、曲げ部71b2で鉄筋S側へ押圧して、把持位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。折り曲げ部71が更に前方向に移動することで、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cとの間に、ワイヤWの一方の端部WE側が支持される。
ワイヤWの端部を鉄筋S側に折り曲げた後、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、モータ80は、可動部材83を更に前方向である矢印F方向に移動させる。可動部材83が矢印F方向の所定の位置まで移動することで、可動部材83は回転規制部材84の係止から抜け、可動部材83の回転規制部材84による回転の規制が解除される。
これにより、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、ワイヤWを把持している把持部70が折り曲げ部71と一体に回転し、図8(d)に示すように、ワイヤWを捩じる。
ワイヤWを捩じった後、可動部材83は、移動経路の前方端に位置しており、モータ80が逆回転方向に駆動されることで、モータ80は、可動部材83を矢印Rで示す後方向に移動させる。すなわち、可動部材83は、モータ80の回転に連動した回転動作が、回転規制部材84により規制されて、モータ80の回転が直線移動に変換される。
これにより、可動部材83が後方向に移動する。可動部材83が後方向に移動する動作に連動して、第1の可動把持部材70Lと第2の可動把持部材70Rが固定把持部材70Cから離れる方向に変位し、把持部70はワイヤWを離す。
可動部材83は、後方向に移動して、可動部材83の移動経路の後方端に設けられるガイド部材86に衝突する。可動部材83がガイド部材86に衝突した衝撃が、バンパ87によって緩衝されてガイド板85に伝わる。バンパ87がガイド板85に与える衝撃を緩衝するため、衝撃音も軽減される。可動部材83が後方向に移動し終えると、鉄筋結束機1Aがスタンバイ状態となる。
<本実施の形態の鉄筋結束機の作用効果例>
鉄筋結束機1Aを長期間使用した場合等、回転軸82に嵌合するバンパ87の交換をする際、まず、回転軸82に取り付けられていたバンパ87を回転軸82から外し、次に新しいバンパ87を回転軸82に取り付ける作業を行う。
具体的には、バンパ87を回転軸82から取り外す際に、まず、結束部7Aと駆動部8Aを本体部10Aから取り外す。この状態で、リング88は、溝82aに入って回転軸82に嵌合し、ガイド部材86を回転軸82に沿って前後移動できないように規制している。また、ガイド部材86の壁86aは、バンパ87を回転軸82から外れないように規制している。バンパ87は、ガイド部材86の面86bとガイド板85との間に挟まれている。
結束部7Aと駆動部8Aが本体部10Aから取り外せたら、図7(b)の矢印a1に示すように、リング88の切欠部88aを回転軸82が通るようにして、リング88を回転軸82の溝82aから取り外す。リング88が回転軸82から外れたら、ガイド部材86が回転軸82に沿って前後移動できるようになるので、矢印a2に示すように、ガイド部材86を前方の可動部材83側に移動させる。ガイド部材86の移動により、ガイド板85とガイド部材86とによるバンパ87の挟み込みが解除されるとともに、壁86aと回転軸82とによるバンパ87の挟み込みが解除される。すなわち、バンパ87が、前後方向への移動及び回転軸82からの取り外しができる状態となる。切欠部87aを回転軸82が通るようにして、矢印a3に示すように、バンパ87を回転軸82から外す。
バンパ87を回転軸82に取り付ける際には、切欠部87aを回転軸82が通るようにして、図7(c)の矢印a4に示すように、バンパ87を回転軸82のガイド部材86とガイド板85との間に取り付ける。バンパ87が回転軸82に取り付けられたら、矢印a5に示すように、ガイド部材86を回転軸82に沿って後方に移動させる。ガイド部材86が溝82aよりも後方のバンパ87側にくるまでガイド部材86を移動させたら、リング88の切欠部88aを回転軸82が通るようにして、矢印a6に示すように、溝82aにリング88を嵌め込む。これにより、リング88が溝82aに嵌まり、ガイド部材86を回転軸82に沿って前後移動できないように規制する。ガイド部材86の壁86aは、バンパ87を回転軸82から離れないように規制する。バンパ87は、ガイド部材86とガイド板85との間に挟まれた状態になる。リング88を回転軸82に嵌合させたら、結束部7Aと駆動部8Aを本体部10Aに取り付ける。
バンパ87が切欠部87aを有する円弧状であるため、バンパ87を回転軸82に対して着脱させる際に、回転軸82からガイド部材86等を着脱させる必要がなく、バンパ87以外には、リング88を着脱させるのみでよい。すなわち、バンパ87を回転軸82に対して着脱させる際に、バンパ87以外の複数の部品を回転軸82から着脱させる必要がなく、回転軸82が切欠部87aを通るようにすることで、回転軸82に対するバンパ87の着脱が容易にできる。
ガイド部材86が、ガイド板85に向けて立設する壁86aを有するため、回転軸82に嵌合してガイド部材86とガイド板85とに挟まれた状態のバンパ87は、鉄筋結束機1Aの動作中等に、意図せずに回転軸82から外れることがない。なお、本実施の形態の壁86aは、ガイド板85に対峙する面86bの外周縁部の全周囲から立設するが、これに限られない。回転軸82に嵌合した状態のバンパ87が回転軸82から意図せず外れないように、ガイド部材86が壁でバンパ87の外周の少なくとも一部を覆っていればよく、例えば、面86bの外周縁部に壁を有さない箇所を設けてもよいし、面86bの外周縁部から複数の壁を設けてもよい。
本実施の形態では、可動部材83がガイド部材86に衝突する際にガイド部材86の壁86aとガイド板85とが衝突しないように、ガイド部材86の面86bの外径は、ガイド板85の外径よりもやや大きく設定されるが、これに限られない。壁86aのガイド板85に向けて立設する長さよりも、バンパ87の厚さが厚い場合、可動部材83がガイド部材86に衝突しても壁86aとガイド板85とが衝突しないため、ガイド部材86の面86bの外径は、ガイド板85の外径と同じであってもよいし、ガイド板85の外径よりも小さくてもよい。
なお、本実施の形態において、ガイド板85とガイド部材86の面86bの外周形状を円形とし、バンパ87を円弧形状としたが、これに限られない。ガイド板85とガイド部材86の面86bの外周形状は、矩形や多角形等であってもよい。バンパ87は、回転軸82の径方向に沿って分断される切欠部87aを有し、回転軸82に対して着脱可能な形状であれば、その外周形状は矩形や多角形等であってもよい。また、バンパ87は、回転軸82とガイド部材86の壁86aとの間に挟まれた状態で、回転軸82から外れないようになっているため、複数部材で形成されてもよい。