以下、図面を参照して、本発明の結束機の実施の形態としての鉄筋結束機の一例について説明する。
<本実施の形態の鉄筋結束機の構成例>
図1は、本実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す側面から見た構成図、図2は、本実施の形態の鉄筋結束機の全体構成の一例を示す前面から見た構成図である。ここで、図2は、図1のA−A線での内部構成を模式的に図示したものである。
本実施の形態の鉄筋結束機1Aは、従来の直径が太いワイヤと比較して直径が細い2本以上のワイヤWを使用して、結束物である鉄筋Sを結束する。鉄筋結束機1Aでは、後述するように、鉄筋Sの周囲にワイヤWを巻き回す動作、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWを鉄筋Sに密着するように巻き付ける動作、鉄筋Sに巻き付けられたワイヤを捩じる動作等により、ワイヤWで鉄筋Sを結束する。鉄筋結束機1Aでは、上述した何れの動作でも、ワイヤWが曲げられるため、従来のワイヤと比較して直径の細いワイヤWを使用することで、鉄筋Sに少ない力でワイヤを巻け、かつ、少ない力でワイヤWを捩じることができる。また、ワイヤを2本以上使用することで、ワイヤWによる鉄筋Sの結束強度を確保することができる。更に、2本以上のワイヤWを並列させて送る構成とすることで、ワイヤWを巻く動作に要する時間を、1本のワイヤで鉄筋を二重以上に巻く動作と比較して短くできる。なお、鉄筋Sの周囲にワイヤWを巻き回すこと、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWを、鉄筋Sに密着するように巻き付けることを総称して、ワイヤWを巻くとも記載する。ワイヤWが巻かれるのは、鉄筋S以外の結束物でも良い。ここで、ワイヤWは、塑性変形し得る金属で構成された単線のワイヤ、あるいは撚り線のワイヤが使用される。
鉄筋結束機1Aは、ワイヤWが収容される収容部であるマガジン2Aと、マガジン2Aに収容されたワイヤWを送るワイヤ送り部3Aと、ワイヤ送り部3Aに送られるワイヤW、及び、ワイヤ送り部3Aから送り出されたワイヤWを並列させる並列ガイド4Aを備える。また、鉄筋結束機1Aは、並列されて送られるワイヤWを鉄筋Sの周囲に巻き回すカールガイド部5Aと、鉄筋Sに巻き回されたワイヤWを切断する切断部6Aを備える。更に、鉄筋結束機1Aは、鉄筋Sに巻き回されたワイヤWを把持して捩じる結束部7Aを備える。
マガジン2Aは収容手段の一例で、本例では、2本の長尺状のワイヤWが繰り出し可能に巻かれたリール20が、着脱可能に収容される。リール20は、ワイヤWを巻き付け可能な筒状のハブ部20aと、ハブ部20aの軸方向両端側に設けられる一対のフランジ20bとを備える。フランジ20bは、ハブ部20aの直径より大きな直径を有して、ハブ部20aの軸方向両端側より径方向に突出する。ハブ部20aには、2本以上のワイヤW、本例では、2本のワイヤWが巻かれる。鉄筋結束機1Aでは、ワイヤ送り部3Aで2本のワイヤWを送る動作、及び、2本のワイヤWを手動で送る動作で、マガジン2Aに収容されたリール20が回転しながら、2本のワイヤWがリール20から繰り出される。このとき、2本のワイヤWが互いに捩じれることなく繰り出されるように、ハブ部20aに2本のワイヤWが巻かれる。
ワイヤ送り部3Aは、送り手段を構成するワイヤ送り手段の一例で、並列されたワイヤWを送る一対の送り部材として、回転動作でワイヤWを送る平歯車状の第1の送りギア30Lと、第1の送りギア30Lとの間にワイヤWを挟持する同じく平歯車状の第2の送りギア30Rを備える。第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは、詳細は後述するが、円板状の部材の外周面に歯部が形成された平歯車状である。但し、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは、互いが噛み合って一方の送りギアから他方の送りギアに駆動力を伝達して、2本のワイヤWを適切に送ることができるものであるならば、必ずしも平歯車状のものに限定されない。
第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは回転送り部材の一例で、それぞれが円板状の部材で構成される。ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが、ワイヤWの送り経路を挟んで設けられることで、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの外周面同士が対向する。第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは、外周面の対向する部位の間に、並列した2本のワイヤWを挟持する。第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは、2本のワイヤWを並列させた状態で、ワイヤWの延在方向に沿って送る。
図3は、本実施の形態の送りギアの一例を示す構成図である。ここで、図3は、図2のB−B線断面図である。第1の送りギア30Lは、外周面に歯部31Lを備える。第2の送りギア30Rは、外周面に歯部31Rを備える。
第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは、互いの歯部31L、31Rが対向するように並列に配置される。換言すれば、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは、カールガイド部5Aによりに巻き回されるワイヤWによって形成されるループRuの軸方向Ru1、すなわち、ワイヤWによって形成されるループRuを円形と見なした仮想円の軸方向に沿った向きに並列される。なお、以下の説明では、カールガイド部5Aにより巻き回されるワイヤWによって形成されるループRuの軸方向Ru1のことを、ループ状のワイヤWの軸方向Ru1とも称す。
第1の送りギア30Lは、外周面に第1の送り溝部32Lを備える。第2の送りギア30Rは、外周面に第2の送り溝部32Rを備える。第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rは、第1の送り溝部32Lと第2の送り溝部32Rとが対向するように配置される。
第1の送り溝部32Lは、第1の送りギア30Lの外周面に、第1の送りギア30Lの回転方向に沿ってV溝状に形成される。第1の送り溝部32Lは、V溝を形成する第1の傾斜面32Laと第2の傾斜面32Lbを有する。第1の送り溝部32Lは、第1の傾斜面32Laと第2の傾斜面32Lbが所定の角度で対向するように、断面形状がV溝状に形成される。第1の送り溝部32Lは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に並列された状態でワイヤWが挟持されるとき、並列されるワイヤWの最も外側のワイヤのうちの一方、本例では、並列される2本のワイヤWの一方のワイヤW1の外周面の一部が第1の傾斜面32Laと第2の傾斜面32Lbに接するように構成される。
第2の送り溝部32Rは、第2の送りギア30Rの外周面に、第2の送りギア30Rの回転方向に沿ってV溝状に形成される。第2の送り溝部32Rは、V溝を形成する第1の傾斜面32Raと第2の傾斜面32Rbを有する。第2の送り溝部32Rは、第1の送り溝部32Lと同様に断面形状がV溝状であり、第1の傾斜面32Raと第2の傾斜面32Rbが所定の角度で対向する。第2の送り溝部32Rは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に並列された状態でワイヤWが挟持されるとき、並列されるワイヤWの最も外側のワイヤのうちの他方、本例では、並列される2本のワイヤWの他方のワイヤW2の外周面の一部が第1の傾斜面32Raと第2の傾斜面32Rbに接するように構成される。
第1の送り溝部32Lは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを挟持したとき、第1の傾斜面32La及び第2の傾斜面32Lbに接した一方のワイヤW1の第2の送りギア30Rと対向する側の部位が、第1の送りギア30Lの歯底円31Laよりも突出するような深さや(第1の傾斜面32Laと第2の傾斜面32Lbとの)角度で構成される。
第2の送り溝部32Rは、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを挟持したとき、第1の傾斜面32Ra及び第2の傾斜面32Rbに接した他方のワイヤW2の第1の送りギア30Lと対向する側の部位が、第2の送りギア30Rの歯底円31Raよりも突出するような深さや(第1の傾斜面32Raと第2の傾斜面32Rbとの)角度で構成される。
これにより、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間で挟持される2本のワイヤWは、一方のワイヤW1が、第1の送り溝部32Lの第1の傾斜面32Laと第2の傾斜面32Lbに押圧され、他方のワイヤW2が、第2の送り溝部32Rの第1の傾斜面32Raと第2の傾斜面32Rbに押圧される。そして、一方のワイヤW1と他方のワイヤW2は互いに押圧される。従って、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが回転することで、2本のワイヤW(一方のワイヤW1と他方のワイヤW2)が、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間では互いに接した状態で同時に送られる。なお、本例では、第1の送り溝部32Lと第2の送り溝部32Rは、断面形状をV溝状としたが、必ずしもV溝状に限定する必要はなく、例えば台形状や円弧状であっても良い。また、第1の送りギア30Lの回転を第2の送りギア30Rに伝達するため、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの間に、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rを互いに逆方向に回転させる偶数枚のギア等から構成される伝達機構を備える構成としても良い。
ワイヤ送り部3Aは、第1の送りギア30Lを駆動する駆動部33と、第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lに対して押圧及び離接させる変位部34を備える。
駆動部33は、第1の送りギア30Lを駆動する送りモータ33aと、送りモータ33aの駆動力を第1の送りギア30Lに伝達するギア等の組み合わせで構成される伝達機構33bを備える。
第1の送りギア30Lは、送りモータ33aの回転動作が伝達機構33bを介して伝達されて回転する。第2の送りギア30Rは、第1の送りギア30Lの回転動作が歯部31Lを介して歯部31Rに伝達され、第1の送りギア30Lに従動して回転する。
これにより、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rが回転することで、第1の送りギア30Lと一方のワイヤW1との間に生じる摩擦力、第2の送りギア30Rと他方のワイヤW2との間に生じる摩擦力、及び、一方のワイヤW1と他方のワイヤW2との間に生じる摩擦力により、2本のワイヤWが並列された状態で送られる。
ワイヤ送り部3Aは、送りモータ33aの回転方向の正逆を切り替えることで、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの回転方向が切り替えられ、ワイヤWの送り方向の正逆が切り替えられる。
鉄筋結束機1Aでは、ワイヤ送り部3Aで第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rを正転させることで、ワイヤWが矢印X1で示す正方向、すなわち、カールガイド部5Aの方向に送られ、カールガイド部5Aで鉄筋Sに巻き回される。また、ワイヤWを鉄筋Sに巻き回した後に、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rを逆転させることで、ワイヤWは矢印X2で示す逆方向、すなわち、マガジン2Aの方向に送られる(引き戻される)。ワイヤWを鉄筋Sに巻き回した後に引き戻すことで、ワイヤWは鉄筋Sに密着される。
図4A、図4B、図4C及び図4Dは、本実施の形態の変位部の一例を示す構成図である。変位部34は変位手段の一例で、図2に示す軸34aを支点とした回転動作で、第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lに対して離接させる方向に変位させる第1の変位部材35と、第1の変位部材35を変位させる第2の変位部材36を備える。第2の送りギア30Rは、軸36aを支点とした回転動作で変位する第2の変位部材36を付勢するバネ37で、第1の送りギア30L方向に押圧される。これにより、本例では2本のワイヤWが、第1の送りギア30Lの第1の送り溝部32Lと第2の送りギア30Rの第2の送り溝部32Rで挟持される。また、第1の送りギア30Lの歯部31Lと第2の送りギア30Rの歯部31Rがかみ合う。ここで、第1の変位部材35と第2の変位部材36の関係は、第2の変位部材36を変位させて第1の変位部材35をフリー状態にすることで、第2の送りギア30Rが第1の送りギア30Lから離間可能な構成であるが、第1の変位部材35と第2の変位部材36が連動する機構にしても良い。
変位部34は、第2の変位部材36を押圧する操作ボタン38と、操作ボタン38のロック及びロックの解除を行う解除レバー39を備える。操作ボタン38は操作部材の一例で、本体部10Aから外側に突出し、矢印T1、T2で示す方向に移動可能に支持される。
操作ボタン38は、係止機構として、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを送ることが可能な位置であるワイヤ送り位置で解除レバー39が係止される第1の係止凹部38aと、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとを離間させてワイヤWを装填可能な位置であるワイヤ装填位置で解除レバー39が係止される第2の係止凹部38bを備える。
解除レバー39は解除部材の一例で、操作ボタン38の移動方向に交する矢印U1、U2で示す方向に移動可能に支持される。解除レバー39は、係止機構として、操作ボタン38の第1の係止凹部38a及び第2の係止凹部38bに係止される係止凸部39aを備える。
解除レバー39は、操作ボタン38に近づく矢印U1方向にバネ39bで付勢され、図5Aに示すワイヤ送り位置にある操作ボタン38の第1の係止凹部38aに係止凸部39aが入る形態、または、図5Bに示すワイヤ装填位置にある操作ボタン38の第2の係止凹部38bに係止凸部39aが入る形態で係止される。
係止凸部39aには、操作ボタン38の移動方向に沿った誘導斜面39cが形成される。解除レバー39は、ワイヤ送り位置にある操作ボタン38が矢印T2方向へ押される動作で誘導斜面39cが押され、係止凸部39aが第1の係止凹部38aから外れることにより、矢印U2方向に変位する。
変位部34は、ワイヤ送り部3Aで第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rにより送られるワイヤWの送り方向に対し略直交する方向であって、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの後方、すなわち、本体部10A内でワイヤ送り部3Aに対してハンドル部11A側に第2の変位部材36を有する。また、操作ボタン38及び解除レバー39も、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの後方、すなわち、本体部10A内でワイヤ送り部3Aに対してハンドル部11A側に設けられる。
変位部34は、図4Aに示すように、操作ボタン38がワイヤ送り位置にあると、操作ボタン38の第1の係止凹部38aに解除レバー39の係止凸部39aが係止され、操作ボタン38がワイヤ送り位置で保持される。
また、変位部34は、図4Aに示すように、操作ボタン38がワイヤ送り位置にあると、第2の変位部材36がバネ37で押圧され、第2の変位部材36が軸36aを支点に第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lに押圧する方向に変位する。
変位部34は、図4Bに示すように、操作ボタン38がワイヤ装填位置にあると、操作ボタン38の第2の係止凹部38bに解除レバー39の係止凸部39aが係止され、操作ボタン38がワイヤ装填位置で保持される。
また、変位部34は、図4Bに示すように、操作ボタン38がワイヤ装填位置にあると、第2の変位部材36が操作ボタン38で押圧され、第2の変位部材36が軸36aを支点に第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lから離す方向に変位する。
図5A、図5B、図5Cは、本実施の形態の並列ガイドの一例を示す構成図である。ここで、図5A、図5B、図5Cは、図2のC−C線断面図であり、導入位置P1に設けられた並列ガイド4Aの断面形状を示す。なお、中間位置P2に設けられた並列ガイド4Aの断面形状を示す図2のD−D線断面図、切断排出位置P3に設けられた並列ガイド4Aの断面形状を示す図2のE−E線断面図も同様の形状を示す。また、図5Dは、並列したワイヤの一例を示す構成図、図5Eは、交差してねじれたワイヤの一例を示す構成図である。
並列ガイド4Aは送り手段を構成する規制手段の一例で、送られてきた複数本(2本以上)のワイヤWの向きを規制する。並列ガイド4Aは、進入してきた2本以上のワイヤWを並列にして送り出す。並列ガイド4Aは、ワイヤWの送り方向と直交する方向に沿って2本以上のワイヤを並列させる。具体的には、カールガイド部5Aによって鉄筋Sの周囲に巻き回されたループ状のワイヤWの軸方向に沿うように、2本以上のワイヤWを並列させる。並列ガイド4Aは、当該2本以上のワイヤWの向きを規制して並列にするワイヤ規制部(例えば、後述する開口4AW)を有する。本例では、並列ガイド4Aはガイド本体4AGを備え、ガイド本体4AGには複数本のワイヤWを通過(挿通)させるためのワイヤ規制部である開口4AWが形成される。開口4AWは、ワイヤWの送り方向に沿ってガイド本体4AGを貫通する。開口4AWは、送られてきた複数本のワイヤWが開口4AWを通過するとき、及び通過した後、これら複数本のワイヤWが並列するように(複数本のワイヤWがワイヤWの送り方向(軸方向)に直交する方向(径方向)に並び、かつ、複数本のワイヤWの軸がそれぞれ略平行の状態になるように)、その形状が決められる。従って、並列ガイド4Aを通過した複数本のワイヤWは、並列された状態で並列ガイド4Aから出ていく。このように並列ガイド4Aは、2本のワイヤWの径方向に並ぶ向きを規制して、2本のワイヤWが並列となるようにする。このため、開口4AWは、ワイヤWの送り方向に直交する一の方向が、ワイヤWの送り方向に直交し、かつ、一の方向と直交する他の方向より長い形状である。開口4AWは、(2本以上のワイヤWが並列可能な)長手方向が、ワイヤWの送り方向と直交する方向、より具体的には、カールガイド部5Aによってループ状にされたワイヤWの軸方向に沿うように配置される。これにより、開口4AWを挿通した2本以上のワイヤWは、ワイヤWの送り方向と直交する方向、すなわち、当該ループ状にされたワイヤWの軸方向に並ぶようにして並列で送られる。
以下の説明では、開口4AWの形状を説明する場合、ワイヤWの送り方向と直交する方向の断面形状について説明する。なお、ワイヤWの送り方向に沿った方向の断面形状について説明する場合は、都度記載する。
例えば、開口4AW(の断面)が、ワイヤWの直径の2倍以上の直径を有した円形である場合、または、1辺の長さが、ワイヤWの直径の2倍以上の略正方形である場合、開口4AWを通過する2本のワイヤWは、径方向へ自由に動ける状態となる。
開口4AWを通過する2本のワイヤWが、開口4AW内において径方向へ自由に動ける状態であると、2本のワイヤWの径方向に並ぶ向きを規制できず、開口4AWから出てきた2本のワイヤWは並列にならず捩じれたり、交差したりする可能性がある。
そこで、開口4AWは、上記一の方向の長さ、すなわち、長手方向の長さL1を、複数(n)本のワイヤWを径方向に沿って並べた形態におけるワイヤWの直径rの複数(n)本分より若干長い長さとし、上記他の方向の長さ、すなわち、短手方向の長さL2を、ワイヤWの1本分の直径rより若干長い長さとする。開口4AWは、本例では、長手方向の長さL1が、ワイヤWの2本分の直径rより若干長い長さを有し、短手方向の長さL2がワイヤWの1本分の直径rより若干長い長さを有する。本例では、並列ガイド4Aは、開口4AWの長手方向が直線状、短手方向が円弧状に構成されるが、これに限定されない。
図5Aに示す例では、並列ガイド4Aの短手方向の長さL2の好ましい長さとして、ワイヤWの1本分の直径rより若干長い長さとした。しかしながら、ワイヤWは、交差したり、捩れたりせずに並列の状態で開口4AWから出てくれば良いので、並列ガイド4Aの長手方向の向きが、カールガイド部5Aで鉄筋Sに巻き回されるループ状のワイヤWの軸方向Ru1に沿った向きで配置される構成では、並列ガイド4Aの短手方向の長さL2は、図5Bに示すように、ワイヤWの1本分の直径rより若干長い長さから、ワイヤWの2本分の直径rより短い長さの範囲であれば良い。
また、並列ガイド4Aの長手方向の向きが、カールガイド部5Aで鉄筋Sに巻き回されるループ状のワイヤWの軸方向Ru1に直交する向きで配置される構成では、並列ガイド4Aの短手方向の長さL2は、図5Cに示すように、ワイヤWの1本分の直径rより若干長い長さから、ワイヤWの2本分の直径rより短い長さの範囲であれば良い。
並列ガイド4Aは、開口4AWの長手方向の向きが、ワイヤWの送り方向と直交する方向に沿った向き、本例では、カールガイド部5Aで鉄筋Sに巻き回されるループ状のワイヤWの軸方向Ru1に沿った向きで配置される。
これにより、並列ガイド4Aは、ループ状のワイヤWの軸方向Ru1に沿って2本のワイヤを並列させて通過させることが可能となる。
なお、並列ガイド4Aは、開口4AWの短手方向の長さL2が、ワイヤWの直径rの2倍の長さより短く、ワイヤWの直径rより若干長い長さである場合、開口4AWの長手方向の長さL1が、ワイヤWの直径rの複数本分より十分に長い場合であっても、ワイヤWを並列させて通過させることが可能である。
しかしながら、短手方向の長さL2が長く(例えばワイヤWの直径rの2倍の長さに近い長さ)、長手方向の長さL1も長くなるほど、ワイヤWは、開口4AW内をより自由に動くことができるようになる。そうすると、開口4AW内で2本のワイヤWのぞれぞれの軸が平行にならずに、開口4AWを通過した後、ワイヤWが捩れたり、交差する可能性が高くなる。
このため、2本のワイヤWが径方向に沿って並列になるように、開口4AWの長手方向の長さL1が、ワイヤWの直径rの2倍より若干長い長さであることが好ましく、短手方向の長さL2も、ワイヤWの直径rより若干長い長さであることが好ましい。
並列ガイド4Aは、ワイヤWを正方向に送る送り方向に対して、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30R(ワイヤ送り部3A)の上流側と下流側の所定の位置に設けられる。並列ガイド4Aを第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの上流側に設けることで、ワイヤ送り部3Aには、並列状態の2本のワイヤWが進入することになる。このため、ワイヤ送り部3AはワイヤWを適切(並列)に送ることができるようになる。更に、並列ガイド4Aを第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの下流側にも設けることで、ワイヤ送り部3Aから送られてきた2本のワイヤWの並列状態を維持しながら、当該ワイヤWを更に下流側に送ることができるようになる。
第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの上流側に設けられた並列ガイド4Aは、ワイヤ送り部3Aに送られるワイヤWが、上述した所定の向きで並列された状態となるようにするため、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rとマガジン2Aとの間の導入位置P1に設けられる。
また、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの下流側に設けられた並列ガイド4Aの1つは、切断部6Aに送られるワイヤWが、上述した所定の向きで並列された状態となるようにするため、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rと切断部6Aの間の中間位置P2に設けられる。
更に、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの下流側に設けられた並列ガイド4Aの他の1つは、カールガイド部5Aに送られるワイヤWが、上述した所定の向きで並列された状態となるようにするため、切断部6Aが配置される切断排出位置P3に設けられる。
導入位置P1に設けられた並列ガイド4Aは、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対して開口4AWの少なくとも下流側が、ワイヤWの径方向の向きを規制する上述した形状を有する。これに対し、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対して開口4AWの上流側であるマガジン2Aに面した側(ワイヤ導入部)は、上流側に比べて開口面積が大きくなっている。具体的に開口4AWは、ワイヤWの向きを規制する筒状の孔部と、当該筒状の孔部の上流側端部からワイヤ導入部である開口4AWの入口部分にかけて開口面積が徐々に大きくなる円錐形状(漏斗状、テーパ状)の孔部とで構成される。このようにワイヤ導入部の開口面積を最も大きくし、そこから徐々に開口面積を小さくしていくことで、並列ガイド4にワイヤWを進入させやすくしている。よって、開口4AWにワイヤWを導入する作業が容易に行えるようになる。
他の並列ガイド4Aも同様の構成で、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対して下流側の開口4AWが、ワイヤWの径方向の向きを規制する上述した形状を有する。また、他の並列ガイド4についても、正方向に送られるワイヤWの送り方向に対して上流側の開口の開口面積を、下流側の開口の開口面積より大きくして構成しても良い。
導入位置P1に設けられる並列ガイド4A、中間位置P2に設けられる並列ガイド4A及び切断排出位置P3に設けられる並列ガイド4Aは、ワイヤWの送り方向に対して直交する開口4AWの長手方向の向きが、鉄筋Sに巻き回されるループ状のワイヤWの軸方向Ru1に沿った向きで配置される。
これにより、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られる2本のワイヤWは、図5Dに示すように、鉄筋Sに巻き回されるループ状のワイヤWの軸方向Ru1に沿った向きに並列された状態を保持して送られ、図5Eに示すように、2本のワイヤWが送り中に交差して捩じれることが抑制される。
なお、本例では、開口4AWは、開口4AWの入口から出口にかけて(ワイヤWの送り方向に)所定の奥行(開口4AWの入口から出口まで所定の距離または深さ)を有する筒状の孔部として構成したが、開口4AWの形状はこれに限定されるものではない。例えば開口4AWが板状のガイド本体4AGに開けられた奥行の殆どない平面孔などであっても良い。また、開口4AWは、ガイド本体4AGを貫通する孔部ではなく、溝状のガイド(例えば上部が開口したU字状のガイド溝)であっても良い。更に、本例では、ワイヤ導入部である開口4AWの入口部分の開口面積を他の部分よりも大きくしたが、必ずしも他の部分よりも大きくなくても良い。このように、開口4AWを通過して並列ガイド4Aから出てきた複数本のワイヤが並列状態になっているのであれば、開口4AWの形状は特定の形状に限定されるものではない。
以上、並列ガイド4Aが、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの上流側(導入位置P1)と下流側の所定の位置(中間位置P2及び切断排出位置P3)に設けられる例を説明したが、並列ガイド4Aが設置される位置は必ずしもこの3か所に限定されない。すなわち、並列ガイド4Aを導入位置P1のみ、中間位置P2のみ、または切断排出位置P3のみに設置しても良く、導入位置P1と中間位置P2のみ、導入位置P1と切断排出位置P3のみ、または中間位置P2と切断排出位置P3のみに設置しても良い。更には、並列ガイド4Aを導入位置P1から切断排出位置P3の下流側のカールガイド部5Aとの間の何れかの位置に4か所以上設置しても良い。なお、導入位置P1とは、マガジン2Aの内部も含む。すなわち、並列ガイド4Aを、マガジン2Aの内部で、ワイヤWが引き出される出口近傍に配置しても良い。
カールガイド部5Aは送り手段を構成するガイド手段の一例で、2本のワイヤWをループ状にして鉄筋Sの周囲に巻き回す搬送経路を構成する。カールガイド部5Aは、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWに巻き癖をつける第1のガイド部50と、第1のガイド部50から送り出されたワイヤWを結束部7Aに誘導する第2のガイド部51を備える。
第1のガイド部50は、ワイヤWの送り経路を構成するガイド溝52と、ガイド溝52との協働でワイヤWに巻き癖をつけるガイド部材としてのガイドピン53、53bを備える。図6は、本実施の形態のガイド溝の一例を示す構成図である。ここで、図6は、図2のG−G線断面図である。
ガイド溝52はガイド部を構成し、並列ガイド4Aと共にワイヤWの送り方向に直交するワイヤWの径方向の向きを規制するため、本例では、ワイヤWの送り方向に直交する一の方向が、同じくワイヤWの送り方向に直交し、かつ、一の方向と直交する他の方向より長い形状の開口で構成される。
ガイド溝52は、長手方向の長さL1、すなわち、溝の幅方向に長さが、ワイヤWを径方向に沿って並べた形態におけるワイヤWの直径rの複数本分より若干長い長さ、短手方向の長さL2が、ワイヤWの1本分の直径rより若干長い長さを有する。ガイド溝52は、本例では、長手方向の長さL1が、ワイヤWの2本分の直径rより若干長い長さを有する。そして、ガイド溝52は、開口の長手方向の向きが、ループ状のワイヤWの軸方向Ru1に沿った向きで配置される。なお、必ずしもガイド溝52に、ワイヤWの径方向の向きを規制する機能を持たせなくても良い。その場合、ガイド溝52の長手方向及び短手方向の寸法(長さ)は上述の寸法に限定されない。
ガイドピン53は、第1のガイド部50において第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWの導入部側に設けられ、ガイド溝52によるワイヤWの送り経路に対して、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側に配置される。ガイドピン53は、ガイド溝52に沿って送られるワイヤWが、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側に入り込まないように、ワイヤWの送り経路を規制する。
ガイドピン53bは、第1のガイド部50において第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWの排出部側に設けられ、ガイド溝52によるワイヤWの送り経路に対して、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側に配置される。
第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られるワイヤWは、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側の2点と、この2点の間の内側の1点の少なくとも3点で、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の位置が規制されることで、ワイヤWに巻き癖が付けられる。
本例では、正方向に送らされるワイヤWの送り方向に対し、ガイドピン53の上流側に設けられる切断排出位置P3の並列ガイド4Aと、ガイドピン53の下流側に設けられるガイドピン53bの2点で、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側の位置が規制される。また、ガイドピン53で、ワイヤWにより形成されるループRuの径方向の内側の位置が規制される。
カールガイド部5Aは、鉄筋SにワイヤWを巻き付ける動作でワイヤWが移動する経路からガイドピン53を退避させる退避機構53aを備える。退避機構53aは、ワイヤWが鉄筋Sに巻き回された後、結束部7Aの動作と連動して変位し、ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けるタイミングの前に、ガイドピン53をワイヤWが移動する経路から退避させる。
第2のガイド部51は、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの径方向の位置(ループRuの径方向へのワイヤWの動き)を規制する第3のガイド部としての固定ガイド部54と、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの軸方向Ru1に沿った位置(ループRuの軸方向Ru1へのワイヤWの動き)を規制する第4のガイド部としての可動ガイド部55を備える。
図7、図8A、図8B、図9A及び図9Bは、第2のガイド部の一例を示す構成図で、図7は、第2のガイド部51を上方から見た平面図、図8A、図8Bは、第2のガイド部51を一の側方から見た側面図、図9A、図9Bは、第2のガイド部51を他の側方から見た側面図である。
固定ガイド部54は、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの径方向の外側に、ワイヤWの送り方向に沿って延在する面による壁面54aが設けられる。固定ガイド部54は、鉄筋SにワイヤWが巻き回されるときに、壁面54aで、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの径方向の位置を規制する。固定ガイド部54は、鉄筋結束機1Aの本体部10Aに固定され、第1のガイド部50に対して位置が固定されている。なお、固定ガイド部54は、本体部10Aと一体成形であっても良い。また、別部品である固定ガイド部54を本体部10Aに取り付ける構成では、固定ガイド部54が本体部10Aに対して完全に固定されているのではなく、ループRuを形成する動作でワイヤWの移動を規制し得る程度に可動であっても良い。
可動ガイド部55は、第2のガイド部51の先端側に設けられ、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの軸方向Ru1に沿った両側に、ループRuの径方向の内側に向けて壁面54aから立ち上がる面による壁面55aが設けられる。可動ガイド部55は、鉄筋SにワイヤWが巻き回されるときに、壁面55aで、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの軸方向Ru1に沿った位置を規制する。可動ガイド部55は、壁面55aの間隔が、第1のガイド部50から送り出されたワイヤWが入る先端側で広がり、固定ガイド部54bに向けて狭まる形状で、壁面55aがテーパ状となっている。これにより、第1のガイド部50から送り出されたワイヤWは、鉄筋Sに巻き回されるループRuの軸方向Ru1の位置が可動ガイド部55の壁面55aで規制され、可動ガイド部55で固定ガイド部54に誘導される。
可動ガイド部55は、第1のガイド部50から送り出されたワイヤWが入る先端側である一端側に対して反対側の他端側が、軸55bにより固定ガイド部54に支持される。可動ガイド部55は、鉄筋Sに巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの軸方向Ru1に沿った軸55bを支点とした回転動作で、第1のガイド部50から送り出されたワイヤWが入る先端側が、第1のガイド部50に対して離接する方向に開閉する。
鉄筋結束機は、鉄筋Sを結束する際、鉄筋SにワイヤWを巻き回すために設けられる一対のガイド部材、本例では、第1のガイド部50と第2のガイド部51の間に鉄筋Sを入れて(セットして)から結束作業を行う。結束作業が完了すると、次の結束作業を行うため、結束完了後の鉄筋Sから第1のガイド部50と第2のガイド部51を引き抜く。鉄筋Sから第1のガイド部50と第2のガイド部51を引き抜く場合、鉄筋結束機1Aを鉄筋Sから離す一の方向である矢印Z3方向(図1参照)に移動させれば、鉄筋Sは何の問題もなく第1のガイド部50と第2のガイド部51から引き抜くことができる。しかしながら、例えば、矢印Y2に沿って所定の間隔で鉄筋Sが配置されていて、これらの鉄筋Sを順次結束していく場合、結束の度に鉄筋結束機1Aを矢印Z3方向に移動させるのは面倒であり、矢印Z2方向に移動させることができれば迅速に作業を行うことができる。しかし、例えば特許第4747456号公報に開示されている従来の鉄筋結束機では、本例でいう第2のガイド部51に相当するガイド部材が結束機本体に固定されているため、鉄筋結束機を矢印Z2方向に移動させようとするとガイド部材が鉄筋Sに引っ掛かる。そこで、鉄筋結束機1Aでは、第2のガイド部51(可動ガイド部55)を上述のように可動とし、鉄筋結束機1Aを矢印Z2方向に移動させて、第1のガイド部50と第2のガイド部51の間から鉄筋Sを抜けるように構成した。
このため、可動ガイド部55は、軸55bを支点とした回転(回動)動作によって、第1のガイド部50から送り出されたワイヤWを第2のガイド部51に誘導し得るガイド位置と、鉄筋結束機1Aを矢印Z2方向に移動させて、鉄筋Sから鉄筋結束機1Aを抜く動作で退避する退避位置との間で開閉する。
可動ガイド部55は、ねじりコイルバネ57等の付勢手段(付勢部)により、第1のガイド部50の先端側と第2のガイド部51の先端側との間隔が近づく方向に付勢され、ねじりコイルバネ57の力で図8A及び図9Aに示すガイド位置に保持される。また、鉄筋Sから鉄筋結束機1Aを抜く動作で、鉄筋Sに可動ガイド部55が押されることで、可動ガイド部55がガイド位置から図8B及び図9Bに示す退避位置まで開く。なお、ガイド位置とは、可動ガイド部55の壁面55aが、ループRuを形成するワイヤWが通過する位置に存在する位置である。また、退避位置とは、鉄筋結束機1Aの移動で鉄筋Sが可動ガイド部55を押して、鉄筋Sが第1のガイド部50と第2のガイド部51の間から抜け得る位置である。但し、鉄筋結束機1Aを動かす方向は一意ではなく、可動ガイド部55がガイド位置からわずかに動いても、鉄筋Sを第1のガイド部50と第2のガイド部51の間から抜き得るので、ガイド位置からわずかに動いた位置も退避位置に含む。
鉄筋結束機1Aは、可動ガイド部55の開閉を検出するガイド開閉センサ56を備える。ガイド開閉センサ56は、可動ガイド部55が閉じた状態及び開いた状態を検出し、所定の検出信号を出力する。
切断部6Aは、固定刃部60と、固定刃部60との協働でワイヤWを切断する回転刃部61と、結束部7Aの動作、本例では、後述する可動部材83が直線方向に移動する動作を回転刃部61に伝達し、回転刃部61を回転させる伝達機構62を備える。固定刃部60は、ワイヤWが通る開口に、ワイヤWを切断可能なエッジ部を設けて構成される。本例では、固定刃部60は、切断排出位置P3に配置される並列ガイド4Aで構成される。
回転刃部61は、軸61aを支点とした回転動作で、固定刃部60の並列ガイド4Aを通るワイヤWを切断する。伝達機構62は、結束部7Aの動作と連動して変位し、ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けた後、ワイヤWを捩じるタイミングに合わせて回転刃部61を回転させ、ワイヤWを切断する。
結束部7Aは結束手段の一例で、ワイヤWを把持する把持部70と、把持部70で把持されたワイヤWの一方の端部WS側と他方の端部WE側を、鉄筋S側へ曲げる折り曲げ部(曲げ部)71を備える。
把持部70は把持手段の一例で、図2に示すように、固定把持部材70Cと、第1の可動把持部材70Lと、第2の可動把持部材70Rを備える。第1の可動把持部材70Lと第2の可動把持部材70Rは、固定把持部材70Cを介して左右方向に配置される。具体的には、第1の可動把持部材70Lは、固定把持部材70Cに対し、巻き回されるワイヤWの軸方向に沿った一方の側に配置され、第2の可動把持部材70Rは、他方の側に配置される。
第1の可動把持部材70Lは、固定把持部材70Cに対して離接する方向に変位する。また、第2の可動把持部材70Rは、固定把持部材70Cに対して離接する方向に変位する。
把持部70は、第1の可動把持部材70Lが固定把持部材70Cから離れる方向に移動することで、第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70Cとの間にワイヤWが通る送り経路が形成される。これに対し、第1の可動把持部材70Lが固定把持部材70Cに近づく方向に移動することで、第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70Cとの間にワイヤWが把持される。
また、把持部70は、第2の可動把持部材70Rが固定把持部材70Cから離れる方向に移動することで、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cとの間にワイヤWが通る送り経路が形成される。これに対し、第2の可動把持部材70Rが固定把持部材70Cに近づく方向に移動することで、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cとの間にワイヤWが把持される。
第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rで送られ、切断排出位置P3の並列ガイド4Aを通過したワイヤWが、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rの間を通り、カールガイド部5Aに誘導される。カールガイド部5Aで巻き癖が付けられたワイヤWは、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lの間を通る。
これにより、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lの一対の把持部材で、ワイヤWの一方の端部WS側を把持する第1の把持部が構成される。また、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rで、切断部6Aで切断されたワイヤWの他方の端部WE側を把持する第2の把持部が構成される。
図10A、図10Bは、本実施の形態の把持部の要部構成図である。第1の可動把持部材70Lは、固定把持部材70Cと対向する面に、固定把持部材70Cの方向に突出する凸部70Lbを有する。一方、固定把持部材70Cは、第1の可動把持部材70Lと対向する面に、第1の可動把持部材70Lの凸部70Lbが入る凹部73を有する。従って、第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70CでワイヤWを把持すると、ワイヤWは第1の可動把持部材70L側に曲がる。
具体的には、固定把持部材70Cは、予備折り曲げ部72を備える。予備折り曲げ部72は、固定把持部材70Cの第1の可動把持部材70Lと対向する面で、正方向に送られるワイヤWの送り方向に沿った下流側の端部に、第1の可動把持部材70L方向に突出する凸部を設けて構成される。
把持部70は、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lの間にワイヤWを把持し、把持したワイヤWが抜けないようにするため、固定把持部材70Cに凸部72bと凹部73を備える。凸部72bは、固定把持部材70Cの第1の可動把持部材70Lと対向する面で、正方向に送られるワイヤWの送り方向に沿った上流側の端部に設けられ、第1の可動把持部材70L方向に突出する。凹部73は、予備折り曲げ部72と凸部72bの間に設けられ、第1の可動把持部材70Lと反対方向に凹状となる。
第1の可動把持部材70Lは、固定把持部材70Cの予備折り曲げ部72が入る凹部70Laを有すると共に、固定把持部材70Cの凹部73に入る凸部70Lbを有する。
これにより、図10Bに示すように、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lとの間にワイヤWの一方の端部WS側を把持する動作で、ワイヤWが予備折り曲げ部72で第1の可動把持部材70L側に押圧され、ワイヤWの一方の端部WSが、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rで把持されるワイヤWから離れる方向に折り曲げられる。
固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70RでワイヤWを把持するとは、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rとの間である程度フリーにワイヤWが動ける状態を含む。これは、ワイヤWを鉄筋Sに巻き付ける動作では、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rとの間でワイヤWが動ける必要があるためである。
折り曲げ部71は曲げ手段の一例で、結束物を結束した後のワイヤWの端部が、結束物から離れる方向に最も突出するワイヤWの頂部よりも結束物側へ位置するようにワイヤWを曲げる。折り曲げ部71は、把持部70でワイヤWを捩る前に、把持部70で把持されたワイヤWを曲げる。
折り曲げ部71は、把持部70の一部を覆うようにして把持部70に周囲に設けられ、把持部70の軸方向に沿って移動可能に設けられる。具体的には、折り曲げ部71は、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lで把持されたワイヤWの一方の端部WS側、及び、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rで把持されたワイヤWの他方の端部WE側に対して接近し、ワイヤWの一方の端部WS側と他方の端部WE側を折り曲げる方向、及び、折り曲げたワイヤWから離れる方向である前後方向に移動可能に構成される。
折り曲げ部71は、矢印Fで示す前方向(図1参照)に移動することで、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lで把持されたワイヤWの一方の端部WS側を、把持位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。また、折り曲げ部71は、矢印Fで示す前方向に移動することで、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rの間にあるワイヤWの他方の端部WE側を、把持位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。
折り曲げ部71の移動によってワイヤWが折り曲げられることで、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cの間を通るワイヤWが折り曲げ部71で押さえられ、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rとの間からワイヤWが抜けることが抑制される。
結束部7Aは、ワイヤWの一方の端部WSの位置を規制する長さ規制部74を備える。長さ規制部74は、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lの間を通過したワイヤWの送り経路に、ワイヤWの一方の端部WSが突き当てられる部材を設けて構成される。長さ規制部74は、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70LによるワイヤWの把持位置から所定の距離を確保するため、本例ではカールガイド部5Aの第1のガイド部50に設けられる。
鉄筋結束機1Aは、結束部7Aを駆動する結束部駆動機構8Aを備える。結束部駆動機構8Aは、モータ80と、減速及びトルクの増幅を行う減速機81を介してモータ80に駆動される回転軸82と、回転軸82の回転動作で変位する可動部材83と、回転軸82の回転動作と連動した可動部材83の回転を規制する回転規制部材84を備える。
回転軸82と可動部材83は、回転軸82に設けたネジ部と、可動部材83に設けたナット部により、回転軸82の回転動作が、可動部材83の回転軸82に沿った前後方向への移動に変換される。
可動部材83は、把持部70でワイヤWを把持及び折り曲げ部71でワイヤWを折り曲げる動作域では、回転規制部材84に係止されることで、回転規制部材84により回転動作が規制された状態で前後方向に移動する。また、可動部材83は、回転規制部材84の係止から抜けることで、回転軸82の回転動作で回転する。
可動部材83は、本例では、図示しないカムを介して第1の可動把持部材70L及び第2の可動把持部材70Rと連結される。結束部駆動機構8Aは、可動部材83の前後方向への移動が、第1の可動把持部材70Lを固定把持部材70Cに対して離接する方向に変位させる動作、第2の可動把持部材70Rを固定把持部材70Cに対して離接する方向に変位させる動作に変換される。
また、結束部駆動機構8Aは、可動部材83の回転動作が、固定把持部材70C、第1の可動把持部材70L及び第2の可動把持部材70Rの回転動作に変換される。
更に、結束部駆動機構8Aは、折り曲げ部71が可動部材83と一体に設けられ、可動部材83の前後方向への移動で、折り曲げ部71が前後方向に移動する。
上述したガイドピン53の退避機構53aは、可動部材83の前後方向への移動をガイドピン53の変位に変換するリンク機構で構成される。また、回転刃部61の伝達機構62は、可動部材83の前後方向への移動を回転刃部61の回転動作に変換するリンク機構で構成される。
図11は、本実施の形態の鉄筋結束機の一例を示す外観図である。本実施の形態の鉄筋結束機1Aは、作業者が手に持って使用する形態であり、本体部10Aとハンドル部11Aを備える。鉄筋結束機1Aは、図1等に示すように、本体部10Aに結束部7Aと結束部駆動機構8Aを内蔵し、本体部10Aの長手方向(第1の方向Y1)の一端側にカールガイド部5Aを備える。また、ハンドル部11Aは、本体部10Aの長手方向の他端側から、当該長手方向と略直交(交差)する一の方向(第2の方向Y2)に突出するように設けられる。更に、結束部7Aに対して第2の方向Y2に沿った側にワイヤ送り部3Aが設けられ、ワイヤ送り部3Aに対して第1の方向Y1に沿った他方の側、すなわち、本体部10A内でワイヤ送り部3Aに対してハンドル部11A側に変位部34が設けられ、ワイヤ送り部3Aに対して第2の方向Y2に沿った側にマガジン2Aが設けられる。
これにより、マガジン2Aに対して第1の方向Y1に沿った他方の側にハンドル部11Aが設けられる。以下の説明では、マガジン2A、ワイヤ送り部3A、変位部34及びハンドル部11Aが並ぶ方向に沿った第1の方向Y1において、マガジン2Aが設けられる側を前方、ハンドル部11Aが設けられる側を後方と称す。変位部34は、ワイヤ送り部3Aで第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rにより送られるワイヤWの送り方向に対し略直交する方向であって、ワイヤ送り部3Aの第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの後方で、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rとハンドル部11Aとの間に第2の変位部材36が設けられる。また、第2の変位部材36を変位させる操作ボタン38、操作ボタン38のロック及びロックの解除を行う解除レバー39が、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rとハンドル部11Aとの間に設けられる。
なお、第2の変位部材36を変位させる操作ボタン38に、ロック及びロックの解除を行う解除機能を搭載させても良い(解除レバー兼用)。すなわち、変位部34は、ワイヤ送り部3Aの第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rを互いに近づく方向及び離す方向に変位させる第2の変位部材36と、第2の変位部材36を変位させる本体部10Aから外側へ突出した操作ボタン38を備え、本体部10A内でワイヤ送り部3Aとハンドル部11Aとの間に位置する構成になっている。
このように、第2の送りギア30Rを変位させる機構を、第2の送りギア30Rの後方で、第2の送りギア30Rとハンドル部11Aとの間に設けたことで、図2に示すように、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの下方で、ワイヤWの送り経路には、第2の送りギア30Rを変位させる機構が設けられない。すなわち、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの下方で、ワイヤWの送り経路をするマガジン2Aの内部を、ワイヤ送り部3AへワイヤWを装填するための空間であるワイヤ装填空間22として利用することができる。つまり、マガジン2Aの内部に、ワイヤ送り部3Aへのワイヤ装填空間22を形成することができる。
ハンドル部11Aには前側にトリガ12Aが設けられ、トリガ12Aの操作で押されるスイッチ13Aの状態に応じて、制御部14Aが送りモータ33aとモータ80を制御する。また、ハンドル部11Aの下部にバッテリ15Aが着脱可能に取り付けられる。
<本実施の形態の鉄筋結束機の動作例>
図12〜図19は、本実施の形態の鉄筋結束機1Aの動作説明図、図20A、図20B及び図20Cは、鉄筋にワイヤを巻く動作説明図である。また、図21A、図21Bは、カールガイド部によりワイヤでループを形成する動作説明図、図22A、図22B及び図22Cは、ワイヤを折り曲げる動作説明図である。次に、各図を参照して、本実施の形態の鉄筋結束機1Aにより鉄筋SをワイヤWで結束する動作について説明する。
マガジン2Aに収容されたリール20に巻かれたワイヤWを装填するため、まず、図4Aに示すワイヤ送り位置にある操作ボタン38が矢印T2方向へ押される。操作ボタン38が矢印T2方向へ押されると、解除レバー39の誘導斜面39cが押され、係止凸部39aが第1の係止凹部38aから外れる。これにより、解除レバー39が矢印U2方向に変位する。
操作ボタン38がワイヤ装填位置まで押されると、図4Bに示すように、解除レバー39がバネ39bで矢印U1方向に押され、係止凸部39aが操作ボタン38の第2の係止凹部38bに入り係止される。これにより、操作ボタン38がワイヤ装填位置で保持される。
また、操作ボタン38がワイヤ装填位置にあると、第2の変位部材36が操作ボタン38で押圧され、第2の変位部材36が軸36aを支点に第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lから離す方向に変位される。よって、第2の送りギア30Rが第1の送りギア30Lから離間し、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの間にワイヤWが挿入可能となる。
ワイヤWを装填した後、図4Cに示すように、解除レバー39を矢印U2方向に押すことで、係止凸部39aが操作ボタン38の第2の係止凹部38bから外れる。これにより、第2の変位部材36がバネ37で押圧され、第2の変位部材36が軸36aを支点に第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lに押圧する方向に変位される。よって、ワイヤWが第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの間に挟持される。
また、操作ボタン38が第2の変位部材36によって矢印T1方向に押され、図4Aに示すように、ワイヤ送り位置に変位することで、操作ボタン38の第1の係止凹部38aに解除レバー39の係止凸部39aが係止され、操作ボタン38がワイヤ送り位置で保持される。
図12は、ワイヤW装填後の原点状態、すなわち、ワイヤWがワイヤ送り部3Aによってまだ送られていない初期状態を示す。原点状態では、ワイヤWの先端が切断排出位置P3で待機する。図20Aに示すように、切断排出位置P3で待機するワイヤWは、本例では2本のワイヤWが切断排出位置P3に設けられた並列ガイド4A(固定刃部60)に通されることで、所定の向きに並列される。
切断排出位置P3とマガジン2Aとの間のワイヤWについても、中間位置P2の並列ガイド4A及び導入位置P1の並列ガイド4Aと、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rにより、所定の向きに並列される。
図13は、ワイヤWが鉄筋Sに巻き回される状態を示す。鉄筋Sをカールガイド部5Aの第1のガイド部50と第2のガイド部51の間に入れ、トリガ12Aを操作すると、送りモータ33aが正回転方向に駆動され、第1の送りギア30Lが正転すると共に、第1の送りギア30Lに従動して第2の送りギア30Rが正転する。
これにより、第1の送りギア30Lと一方のワイヤW1との間に生じる摩擦力、第2の送りギア30Rと他方のワイヤW2との間に生じる摩擦力、及び、一方のワイヤW1と他方のワイヤW2との間に生じる摩擦力により、2本のワイヤWが正方向に送られる。
正方向に送られるワイヤWの送り方向に対し、ワイヤ送り部3Aの上流側と下流側のそれぞれに並列ガイド4Aが設けられることで、第1の送りギア30Lの第1の送り溝部32Lと、第2の送りギア30Rの第2の送り溝部32Rとの間に入る2本のワイヤW、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rから排出される2本のワイヤWが、所定の向きで並列された状態で送られる。
ワイヤWが正方向に送られると、ワイヤWは固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rの間を通り、カールガイド部5Aの第1のガイド部50のガイド溝52を通過する。これにより、ワイヤWは鉄筋Sの周囲に巻き回される巻き癖が付けられる。第1のガイド部50に導入される2本のワイヤWは、切断排出位置P3の並列ガイド4Aで並列された状態が保持される。また、2本のワイヤWがガイド溝52の外側の壁面に押し付けられた状態で送られることで、ガイド溝52を通過するワイヤWも、所定の向きで並列された状態が保持される。
第1のガイド部50から送り出されたワイヤWは、図21Aに示すように、第2のガイド部51の可動ガイド部55で、巻き回されるワイヤWにより形成されるループRuの軸方向Ru1に沿った移動が規制され、壁面55aにより固定ガイド部54に誘導される。固定ガイド部54に誘導されたワイヤWは、図21Bに示すように、固定ガイド部54の壁面54aでループRuの径方向に沿った移動が規制され、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lの間に誘導される。そして、ワイヤWの先端が長さ規制部74に突き当てられる位置まで送られると、送りモータ33aの駆動が停止される。
ワイヤWの先端が長さ規制部74に突き当てられる位置まで送られ、送りが停止されるまでの間に正方向へ若干量ワイヤWが送られることで、鉄筋Sに巻き回されたワイヤWは、図21Bに実線で示す状態から、二点鎖線で示すようにループRuの径方向に広がる方向へ変位する。鉄筋Sに巻き回されたワイヤWが、ループRuの径方向に広がる方向へ変位すると、把持部70で固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lの間に誘導されたワイヤWの一方の端部WS側が後方に変位する。そこで、図21Bに示すように、固定ガイド部54の壁面54aでワイヤWのループRuの径方向の位置を規制することで、把持部70に誘導されたワイヤWのループRuの径方向への変位が抑制され、把持不良の発生が抑制される。なお、本実施の形態では、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lの間に誘導されたワイヤWの一方の端部WS側が変位せずに、ワイヤWがループRuの径方向へ広がる方向へ変位する場合でも、固定ガイド部54によりワイヤWのループRuの径方向への変位が抑制され、把持不良の発生が抑制される。
これにより、ワイヤWが、鉄筋Sの周囲にループ状に巻き回される。このとき、鉄筋Sに巻き回された2本のワイヤWは、図20Bに示すように、互いに捩じれることなく並列された状態が保持される。ここで、第2のガイド部51の可動ガイド部55が開いていることを、ガイド開閉センサ56の出力から検出すると、制御部14Aは、トリガ12Aが操作されても、送りモータ33aを駆動せず、ランプ、ブザー等の図示しない報知手段で報知を行う。これにより、ワイヤWの誘導不良が発生することを防ぐ。
図14は、ワイヤWを把持部70で把持する状態を示す。ワイヤWの送りを停止した後、モータ80が正回転方向に駆動されることで、モータ80は、可動部材83を前方向である矢印F方向に移動させる。すなわち、可動部材83は、モータ80の回転に連動した回転動作が、回転規制部材84により規制されて、モータ80の回転が直線移動に変換される。これにより、可動部材83は前方向に移動する。可動部材83が前方向に移動する動作に連動して、第1の可動把持部材70Lが固定把持部材70Cに近づく方向に変位し、ワイヤWの一方の端部WS側が把持される。
また、可動部材83が前方向に移動する動作が退避機構53aに伝達され、ガイドピン53をワイヤWが移動する経路から退避させる。
図15は、ワイヤWを鉄筋Sに巻き付ける状態を示す。第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70Cとの間にワイヤWの一方の端部WS側を把持した後、送りモータ33aが逆回転方向に駆動されることで、第1の送りギア30Lが逆転すると共に、第1の送りギア30Lに従動して第2の送りギア30Rが逆転する。
これにより、2本のワイヤWがマガジン2A方向に引き戻され、逆方向に送られる。ワイヤWを逆方向に送る動作で、ワイヤWは鉄筋Sに密着されるようにして巻き付けられる。本例では、図20Cに示すように、2本のワイヤが並列されているので、ワイヤWを逆方向に送る動作でワイヤW同士が捩じれる等による送り抵抗の増加が抑制される。また、従来のように1本のワイヤで鉄筋Sを結束する場合と、本例のように2本のワイヤWで鉄筋Sを結束する場合とで、同様の結束強度を得ようとした場合、2本のワイヤWを使用した方が、各ワイヤWの直径をより細くすることができる。このため、ワイヤWを曲げやすく、小さい力でワイヤWを鉄筋Sに密着させることができる。従って、小さい力でワイヤWを確実に鉄筋Sに巻き付けることができる。また、直径が細い2本のワイヤWを使用していることにより、ワイヤWをループ状に癖付けしやすく、更に、ワイヤWの切断時の負荷低減を図ることができる。これに伴い、鉄筋結束機1Aの各モータの小型化、機構部位の小型化による本体部全体の小型化が可能である。また、モータの小型化、負荷の低減により消費電力の低減が可能である。
図16は、ワイヤWを切断する状態を示す。ワイヤWを鉄筋Sに巻き付けて、ワイヤWの送りを停止した後、モータ80が正回転方向に駆動されることで、可動部材83を前方向に移動させる。可動部材83が前方向に移動する動作に連動して、第2の可動把持部材70Rが固定把持部材70Cに近づく方向に変位し、ワイヤWが把持される。また、可動部材83が前方向に移動する動作が伝達機構62で切断部6Aに伝達され、第2の可動把持部材70Rと固定把持部材70Cで把持されたワイヤWの他方の端部WE側が回転刃部61の動作で切断される。
図17は、ワイヤWの端部を鉄筋S側に折り曲げる状態を示す。ワイヤWを切断した後、可動部材83を更に前方向に移動させることで、可動部材83と一体で折り曲げ部71が前方向に移動する。
折り曲げ部71は、図22B及び図22Cに示すように、矢印Fで示す前方向である鉄筋Sに接近する方向へ移動することで、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lで把持されたワイヤWの一方の端部WS側と接する曲げ部71aを備える。更に、折り曲げ部71は、矢印Fで示す前方向である鉄筋Sに接近する方向へ移動することで、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rで把持されたワイヤWの他方の端部WE側と接する曲げ部71bを備える。
折り曲げ部71は、矢印Fで示す前方向に所定距離移動することで、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lで把持されたワイヤWの一方の端部WS側を、曲げ部71aで鉄筋S側へ押圧して、把持位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。
把持部70は、図22A及び図22Bに示すように、第1の可動把持部材70Lの先端側に、固定把持部材70C方向に突出する抜け防止部75(凸部70Lbが抜け防止部75を兼ねても良い)を備える。固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lで把持されたワイヤWの一方の端部WSは、折り曲げ部71が矢印Fで示す前方向に移動することにより、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lとによる把持位置で、抜け防止部75を支点として、鉄筋S側へ折り曲げられる。なお、図22Bでは、第2の可動把持部材70Rは図示していない。
また、折り曲げ部71は、矢印Fで示す前方向に所定距離移動することで、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rで把持されたワイヤWの他方の端部WE側を、曲げ部71bで鉄筋S側へ押圧して、把持位置を支点として鉄筋S側へ曲げる。
把持部70は、図22A及び図22Cに示すように、第2の可動把持部材70Rの先端側に、固定把持部材70C方向に突出する抜け防止部76を備える。固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rで把持されたワイヤWの他方の端部WEは、折り曲げ部71が矢印Fで示す前方向に移動することにより、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rとによる把持位置で、抜け防止部76を支点として、鉄筋S側へ折り曲げられる。なお、図22Cでは、第1の可動把持部材70Lは図示していない。
図18は、ワイヤWを捩じる状態を示す。ワイヤWの端部を鉄筋S側に折り曲げた後、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、モータ80は、可動部材83を更に前方向である矢印F方向に移動させる。可動部材83が矢印F方向の所定の位置まで移動することで、可動部材83は回転規制部材84の係止から抜け、可動部材83の回転規制部材84による回転の規制が解除される。これにより、モータ80が更に正回転方向に駆動されることで、ワイヤWを把持している把持部70が回転し、ワイヤWを捩じる。把持部70は、図示しないバネで後方に付勢されており、ワイヤWにテンションを掛けながら捩じる。よって、ワイヤWが緩むことなく、鉄筋SがワイヤWで結束される。
図19は、捩じられたワイヤWを離す状態を示す。ワイヤWを捩じった後、モータ80が逆回転方向に駆動されることで、モータ80は、可動部材83を矢印Rで示す後方向に移動させる。すなわち、可動部材83は、モータ80の回転に連動した回転動作が、回転規制部材84により規制されて、モータ80の回転が直線移動に変換される。これにより、可動部材83は後方向に移動する。可動部材83が後方向に移動する動作に連動して、第1の可動把持部材70Lと第2の可動把持部材70Rが固定把持部材70Cから離れる方向に変位し、把持部70はワイヤWを離す。なお、鉄筋Sの結束が完了し、鉄筋結束機1Aから鉄筋Sを抜く際、従来は、鉄筋Sがガイド部に引っ掛かって抜き難いことがあり、作業性を悪化させることがあった。これに対し、第2のガイド部51の可動ガイド部55を矢印H方向に回転可能に構成することで、鉄筋結束機1Aから鉄筋Sを抜く際に第2のガイド部51の可動ガイド部55が鉄筋Sに引っ掛かることはなく、作業性が向上する。
<本実施の形態の鉄筋結束機の作用効果例>
本実施の形態の鉄筋結束機1Aでは、図2に示すように、変位部34は、ワイヤWの送り方向に対し略直交する方向であって、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの後方、すなわち、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rとハンドル部11Aとの間に第2の変位部材36を有する。また、第2の変位部材36を変位させる操作ボタン38、操作ボタン38のロック及びロックの解除を行う解除レバー39が、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rとハンドル部11Aとの間に設けられる。
このように、第2の送りギア30Rを変位させる機構を、第2の送りギア30Rの後方で、第2の送りギア30Rとハンドル部11Aとの間に設けたことで、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの下方で、ワイヤWの送り経路には、第2の送りギア30Rを変位させる機構を設ける必要がなくなる。
これにより、ワイヤの送り部とマガジンの間に、一対の送りギアを変位させる機構を備える構成と比較して、マガジン2Aをワイヤ送り部3Aに近づけて配置することができるので、装置の小型化が図れる。また、マガジン2Aとワイヤ送り部3Aとの間に操作ボタン38を備える構成でもないので、マガジン2Aをワイヤ送り部3Aに近づけて配置することができる。
更に、マガジン2Aをワイヤ送り部3Aに近づけて配置することができるので、図11に示すように、円筒状のリール20が収容されるマガジン2Aにおいて、リール20の形状に合わせて突出した凸部21を、バッテリ15Aの取付位置より上方とする配置にできる。従って、凸部21をハンドル部11Aに近づけて配置することができ、装置の小型化が図れる。
また、第1の送りギア30L及び第2の送りギア30Rの下方で、ワイヤWの送り経路には、第2の送りギア30Rを変位させる機構が設けられないので、マガジン2Aの内部に、ワイヤ送り部3Aへのワイヤ装填空間22が形成され、ワイヤWの装填に障害となる構成要素がなく、ワイヤWの装填が容易に行える。
一対の送りギアからなるワイヤ送り部においては、一方の送りギアを他方の送りギアに対して離間させる変位部材と、一方の送りギアを他方の送りギアに対して離間させた状態で変位部材を保持する保持部材を備える構成が考えられる。このような構成では、ワイヤWの変形等で一方の送りギアが他方の送りギアから離れる方向に押されると、変位部材が保持部材で係止され、一方の送りギアが他方の送りギアから離間した状態で保持される可能性がある。
一方の送りギアが他方の送りギアから離間した状態で保持されると、一対の送りギアでワイヤWを挟持できなくなり、ワイヤWの送りができなくなる。
これに対し、本実施の形態の鉄筋結束機1Aでは、図4に示すように、第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lに対して離間させる変位部材である第1の変位部材35及び第2の変位部材36と、第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lから離間した状態でのロック及びロックの解除を行う操作ボタン38と解除レバー39を独立した部品とした。
これにより、図4Dに示すように、ワイヤWの変形等で第2の送りギア30Rが第1の送りギア30Lから離れる方向に押されると、第2の変位部材36はバネ37を押圧して変位するが、ロックはされない。従って、バネ37の力で第2の送りギア30Rを第1の送りギア30L方向に常時押圧することができ、一時的に第2の送りギア30Rが第1の送りギア30Lから離間しても、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30RでワイヤWを挟持する状態に復帰でき、ワイヤWの送りを継続することができる。
図23A、図23Bは、本実施の形態の鉄筋結束機の作用効果例である。以下に、カールガイド部に鉄筋を入れる動作及びカールガイド部から鉄筋を抜く動作に関して、本実施の形態の鉄筋結束機の作用効果例について説明する。例えば、土台を構成する鉄筋SをワイヤWで結束する場合、鉄筋結束機1Aを使用しての作業では、カールガイド部5Aの第1のガイド部50と第2のガイド部51との間の開口が下を向いた状態となる。
結束作業を行う場合、第1のガイド部50と第2のガイド部51との間の開口を下に向け、図23Aに示すように、鉄筋結束機1Aを、矢印Z1で示す下方に移動させることで、第1のガイド部50と第2のガイド部51との間の開口に鉄筋Sが入る。
そして、結束作業が完了し、図22Bに示すように、鉄筋結束機1Aを矢印Z2で示す横方向に移動させると、ワイヤWで結束された鉄筋Sに第2のガイド部51が押され、第2のガイド部51の先端側の可動ガイド部55が軸55bを支点として矢印H方向へ回転する。
これにより、鉄筋SにワイヤWを結束する毎に、鉄筋結束機1Aをいちいち上方に持ち上げなくても、鉄筋結束機1Aを横方向に移動させるだけで結束作業を次々と行うことができる。従って、(鉄筋結束機1Aを一旦上へ移動させて再び下へ移動させるのに比べて、単に横方向に移動させれば良いので)ワイヤWで結束された鉄筋Sを抜く動作での鉄筋結束機1Aの移動方向及び移動量の制約を少なくすることができ、作業効率が向上する。
また、上述した結束動作で、図21Bに示すように、第2のガイド部51の固定ガイド部54は、変位せずワイヤWの径方向の位置を規制可能な状態で固定されている。これにより、鉄筋SにワイヤWを巻き回す動作では、固定ガイド部54の壁面54aでワイヤWの径方向の位置を規制することができ、把持部70に誘導されたワイヤWの方向への変位を抑制して、把持不良の発生を抑制することができる。
図24Aは、本実施の形態の鉄筋結束機の作用効果例、図24Bは、従来の鉄筋結束機の作用と課題例である。以下に、鉄筋Sを結束したワイヤWの形態に関して、本実施の形態の鉄筋結束機の従来と比較した作用効果例について説明する。
従来の鉄筋結束機で鉄筋Sに結束されたワイヤWは、図24Bに示すように、ワイヤWの一方の端部WS及び他方の端部WEが鉄筋Sと反対方向を向いている。これにより、鉄筋Sを結束したワイヤWにおいて、捩じられた部位より先端側であるワイヤWの一方の端部WS及び他方の端部WEが鉄筋Sから大きく突出した形態となる。ワイヤWの先端側が大きく突出すると、突出部分が作業の邪魔になる等して作業に支障をきたす虞がある。
また、鉄筋Sの結束後、鉄筋Sの敷設箇所にコンクリート200が流し込まれるが、この際、コンクリート200からワイヤWの一方の端部WS及び他方の端部WEが突出しないように、鉄筋Sに結束されたワイヤWの先端、図24Bの例では、ワイヤWの一方の端部WSと、流し込んだコンクリート200の表面201までの厚さを所定の寸法S1に保つ必要がある。このため、ワイヤWの一方の端部WS及び他方の端部WEが鉄筋Sと反対方向を向く形態では、鉄筋Sの敷設位置からのコンクリート200の表面201までの厚さS12が厚くなる。
これに対し、本実施の形態の鉄筋結束機1Aでは、折り曲げ部71によって、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWの一方の端部WSが、ワイヤWの曲げ部位である第1の折り曲げ部位WS1より鉄筋S側へ位置し、鉄筋Sの周囲に巻き回されたワイヤWの他方の端部WEが、ワイヤWの曲げ部位である第2の折り曲げ部位WE1より鉄筋S側へ位置するようにワイヤWが曲げられる。本実施の形態の鉄筋結束機1Aでは、第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70CでワイヤWを把持する動作で、予備折り曲げ部72で曲げられた曲げ部位、及び、ワイヤWを鉄筋Sに巻き付ける動作で、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rにより曲げられた曲げ部位の1つが、ワイヤWの鉄筋Sから離れる方向に最も突出した頂部となるように、折り曲げ部71でワイヤWが曲げられる。
これにより、本実施の形態の鉄筋結束機1Aで鉄筋Sに結束されたワイヤWは、図24Aに示すように、捩じり部位WTと一方の端部WSの間に第1の折り曲げ部位WS1が形成され、ワイヤWの一方の端部WSが、第1の折り曲げ部位WS1より鉄筋S側に位置するように、ワイヤWの一方の端部WS側が鉄筋S側に折り曲げられる。また、ワイヤWは、捩じり部位WTと他方の端部WEの間に第2の折り曲げ部位WE1が形成され、ワイヤWの他方の端部WEが、第2の折り曲げ部位WE1より鉄筋S側に位置するように、ワイヤWの他方の端部WE側が鉄筋S側に折り曲げられる。
図24Aに示す例では、ワイヤWに2つの折り曲げ部、本例では第1の折り曲げ部位WS1と第2の折り曲げ部位WE1が形成されるが、そのうち、鉄筋Sを結束したワイヤWにおいて鉄筋Sから離れる方向(鉄筋Sと反対方向)に最も突出する第1の折り曲げ部位WS1が頂部Wpとなる。そして、ワイヤWの一方の端部WSと他方の端部WEのいずれとも、頂部Wpを超えて鉄筋Sと反対方向へ突出しないように折り曲げられる。
このように、ワイヤWの一方の端部WS及び他方の端部WEを、ワイヤWの曲げ部位で構成される頂部Wpを超えて鉄筋Sと反対方向へ突出しないようにすることで、ワイヤWの端部が突出することによる作業性の低下を抑制することができる。また、ワイヤWの一方の端部WS側が鉄筋S側に折り曲げられ、ワイヤWの他方の端部WE側が鉄筋S側に折り曲げられるので、ワイヤWの捩じり部位WTより先端側の突出量は従来と比較して少ない。このため、鉄筋Sの敷設位置からのコンクリート200の表面201までの厚さS2を、従来と比較して薄くできる。よって、コンクリートの使用量を低減することができる。
本実施の形態の鉄筋結束機1Aでは、ワイヤWの正方向への送りで鉄筋Sの周囲に巻き回され、ワイヤWの逆方向への送りで鉄筋Sに巻き付けられたワイヤWの一方の端部WS側が、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lで把持された状態で、折り曲げ部71により鉄筋S側に折り曲げられる。また、切断部6Aで切断されたワイヤWの他方の端部WE側が、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rで把持された状態で、折り曲げ部71により鉄筋S側に折り曲げられる。
これにより、図22Bに示すように、固定把持部材70C及び第1の可動把持部材70Lによる把持位置を支点71c1とし、図22Cに示すように、固定把持部材70C及び第2の可動把持部材70Rによる把持位置を支点71c2として、ワイヤWを折り曲げることができる。また、折り曲げ部71は、鉄筋Sに近づく方向への変位で、ワイヤWを鉄筋S方向に押圧する力を加えることができる。
このように、本実施の形態の鉄筋結束機1Aでは、ワイヤWを把持位置でしっかりと把持し、支点71c1、71c2を支点としてワイヤWを曲げるようにしたので、ワイヤWを押す力が他方向に分散することなく、ワイヤWの端部WS、WE側を所望の方向(鉄筋S側)に確実に曲げることができる。
これに対して、例えばワイヤWを把持しない状態で、ワイヤWを捩じる方向に力を加える従来の結束機では、ワイヤWの端部を捩じる方向に沿った向きに曲げることはできるが、ワイヤWを把持していない状態でワイヤWを曲げる力が加えられるので、ワイヤWを曲げる方向が定まらず、ワイヤWの端部が鉄筋Sと反対の外側に向く場合もある。
しかし、本実施の形態では、上述したように、ワイヤWを把持位置でしっかりと把持し、支点71c1、71c2を支点としてワイヤWを曲げるようにしたので、ワイヤWの端部WS、WE側を確実に鉄筋S側に向けることができる。
また、ワイヤWを捩じって鉄筋Sを結束した後に、ワイヤWの端部を鉄筋S側に折り曲げようとすると、ワイヤWを捩じった結束箇所が緩み、結束強度が落ちる可能性がある。更に、ワイヤWを捩じって鉄筋Sを結束した後、更にワイヤWを捩じる方向に力を加えてワイヤ端部を曲げようとすると、ワイヤWを捩じった結束箇所が損傷する可能性がある。
これに対し、本実施の形態では、ワイヤWを捩じって鉄筋Sを結束するより前に、ワイヤWの一方の端部WS側と他方の端部WE側を鉄筋S側に折り曲げるので、ワイヤWを捩じった結束箇所が緩むことはなく、結束強度が落ちることもない。また、ワイヤWを捩じって鉄筋Sを結束した後、更にワイヤWを捩じる方向の力が加えられることもないので、ワイヤWを捩じった結束箇所が損傷することがない。
図25A、図26Aは、本実施の形態の鉄筋結束機の作用効果例、図25B、図26Bは、従来の鉄筋結束機の作用と課題例である。以下に、鉄筋SにワイヤWを巻き付ける動作で、把持部からワイヤWが抜けることを防止することに関して、本実施の形態の鉄筋結束機の従来と比較した作用効果例について説明する。
鉄筋結束機の従来の把持部700は、図25Bに示すように、固定把持部材700Cと第1の可動把持部材700L及び第2の可動把持部材700Rを備え、鉄筋Sに巻き回されたワイヤWが突き当てられる長さ規制部701を第1の可動把持部材700Lに備えた構成である。
ワイヤWを逆方向に送って(引き戻して)鉄筋Sに巻き付ける動作、及び、把持部700でワイヤWを捩じる動作では、固定把持部材700Cと第1の可動把持部材700LによるワイヤWの把持位置から長さ規制部701までの距離N2が短いと、固定把持部材700Cと第1の可動把持部材700Lで把持したワイヤWが抜けやすい。
把持したワイヤWを抜け難くするためには距離N2を長くすれば良いが、そのためには、第1の可動把持部材700LにおけるワイヤWの把持位置から長さ規制部701までの距離を長くする必要がある。
しかし、第1の可動把持部材700LにおけるワイヤWの把持位置から長さ規制部701までの距離を長くすると、第1の可動把持部材700Lが大型化する。このため、従来の構成では、固定把持部材700Cと第1の可動把持部材700LによるワイヤWの把持位置からワイヤWの一方の端部WSまでの距離N2を長くすることができない。
これに対し、本実施の形態の把持部70は、図25Aに示すようにワイヤWが突き当てられる長さ規制部74を、第1の可動把持部材70Lとは独立した別の部品とした。
これにより、第1の可動把持部材70Lを大型化することなく、第1の可動把持部材70LにおけるワイヤWの把持位置から長さ規制部74までの距離N1を長くすることができるようになる。
従って、第1の可動把持部材70Lを大型化しなくても、ワイヤWを逆方向に送って鉄筋Sに巻き付ける動作、及び、把持部70でワイヤWを捩じる動作で、固定把持部材70Cと第1の可動把持部材70Lで把持したワイヤWが抜けるのを抑制することができる。
また、鉄筋結束機の従来の把持部700は、図26Bに示すように、第1の可動把持部材700Lの固定把持部材700Cと対向する面に、固定把持部材700C方向に突出する凸部と固定把持部材700Cが入る凹部とを設けて予備折り曲げ部702が形成される。
これにより、第1の可動把持部材700Lと固定把持部材700CでワイヤWを把持する動作で、第1の可動把持部材700Lと固定把持部材700Cによる把持位置から突出したワイヤWの一方の端部WS側が折り曲げられ、ワイヤWを逆方向に送って鉄筋Sに巻き付ける動作、及び、把持部700でワイヤWを捩じる動作で、ワイヤWの抜けを防止する効果が得られる。
しかし、ワイヤWの一方の端部WS側が、固定把持部材700Cと第2の可動把持部材700Rの間を通るワイヤWに向かう内側に折り曲げられるので、折り曲げられたワイヤWの一方の端部WS側が、鉄筋Sに巻き付けるため逆方向に送られるワイヤWに接触して巻き込まれる可能性がある。
鉄筋Sに巻き付けるため逆方向に送られるワイヤWに、折り曲げられたワイヤWの一方の端部WS側が巻き込まれると、ワイヤWの巻き付けが不十分になったり、ワイヤWの捩じりが不十分になる可能性がある。
これに対し、本実施の形態の把持部70では、図26Aに示すように、固定把持部材70Cの第1の可動把持部材70Lと対向する面に、第1の可動把持部材70L方向に突出する凸部と第1の可動把持部材70Lが入る凹部を設けて予備折り曲げ部72が形成される。
これにより、第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70CでワイヤWを把持する動作で、第1の可動把持部材70Lと固定把持部材70Cによる把持位置から突出したワイヤWの一方の端部WS側が折り曲げられ、ワイヤWを逆方向に送って鉄筋Sに巻き付ける動作、及び、把持部70でワイヤWを捩じる動作で、ワイヤWの抜けを防止する効果が得られる。
そして、ワイヤWの一方の端部WS側が、固定把持部材70Cと第2の可動把持部材70Rの間を通るワイヤWと反対の外側に折り曲げられるので、折り曲げられたワイヤWの一方の端部WS側が、鉄筋Sに巻き付けるため逆方向に送られるワイヤWに接触することが抑制される。
これにより、ワイヤWを逆方向に送って鉄筋Sに巻き付ける動作で、ワイヤWの把持部70からの抜けが抑制され、ワイヤWの巻き付けが確実に行えると共に、ワイヤWを捩じる動作でワイヤWの結束が確実に行える。
図27A、図27B及び図28Aは、本実施の形態の鉄筋結束機の作用効果例、図27C、図27D及び図28Bは、従来の鉄筋結束機の作用と課題例である。以下に、鉄筋SをワイヤWで結束する動作に関して、本実施の形態の鉄筋結束機の従来と比較した作用効果例について説明する。
図27Cに示すように、所定の直径(例えば、1.6mm〜2.5mm程度)を有した1本のワイヤWbを鉄筋Sに巻き付ける従来の構成では、図27Dに示すように、ワイヤWbの剛性が高いので、余程大きな力でワイヤWbを鉄筋Sに巻き付けない限り、ワイヤWbを巻き付ける動作でワイヤWbに弛みJが生じ、鉄筋Sとの間に隙間が生じる。
これに対し、図27Aに示すように、従来と比較して直径が細い(例えば、0.5mm〜1.5mm程度)2本のワイヤWを鉄筋Sに巻き付ける本実施の形態では、図27Bに示すように、ワイヤWの剛性が従来と比較して低いので、従来よりも低い力でワイヤWを鉄筋Sに巻き付けても、ワイヤWを巻き付ける動作でワイヤWに弛みが生じることが抑制され、直線部Kで鉄筋Sに確実に巻き付けられる。ここで、ワイヤWで鉄筋Sを結束する機能を考慮すると、ワイヤWの剛性は、ワイヤWの直径のみならず、材質等によっても変化する。例えば、本実施の形態では、直径が0.5mm〜1.5mm程度のワイヤWを例に説明したが、ワイヤWの材質等も加味すると、ワイヤWの直径の下限値及び上限値は、少なくとも公差分程度の差が生じることもあり得る。
また、図28Bに示すように、所定の直径を有した1本のワイヤWbを鉄筋Sに巻き付けて捩じる従来の構成では、ワイヤWbの剛性が高いので、ワイヤWbを捩じる動作でもワイヤWbの弛みが解消されず、鉄筋Sとの間に隙間Lが生じる。
これに対し、図28Aに示すように、従来と比較して直径が細い2本のワイヤWを鉄筋Sに巻き付けて捩じる本実施の形態では、ワイヤWの剛性が従来と比較して低いので、ワイヤWを捩じる動作で、従来と比較して鉄筋Sとの間の隙間Mを少なく抑えることができ、よって、ワイヤWの結束強度が向上する。
そして、2本のワイヤWを使用することで、従来と比較して鉄筋保持力を同等とし、かつ、結束後の鉄筋S同士のずれを抑制することができる。本実施の形態では、2本のワイヤを同時に送り、これら同時に送られた2本のワイヤWを使用して鉄筋Sを結束している。ここで、2本のワイヤWを同時に送るとは、一方のワイヤWと他方のワイヤWが略同じ速度で送られる場合、すなわち、一方のワイヤWに対する他方のワイヤWの相対速度が略0の場合を意味するが、本例では、必ずしもこの意味に限定されるものではない。例えば、一方のワイヤWと他方のワイヤWが異なる速度(タイミング)で送られる場合であっても、ワイヤWの送り経路で2本のワイヤWがとなり合って並列に進み、ワイヤWが並列状態で鉄筋Sに巻き回されるようになっていれば、それは2本のワイヤが同時に送られるという意味である。つまり、2本のワイヤWのそれぞれの断面面積を合わせた総面積が鉄筋保持力を決める要因となるので、2本のワイヤWを送るタイミングをずらしても、鉄筋保持力を確保するという点では同じ結果である。但し、2本のワイヤWを送るタイミングをずらす動作に比較して、2本のワイヤWを同時に送る動作の方が送りに必要な時間が短縮できることから、2本のワイヤWを同時に送る方が、結果的に結束スピードを向上させることができる。
<本実施の形態の鉄筋結束機の変形例>
図29A、図29Bは、本実施の形態の第2のガイド部の変形例を示す構成図である。第2のガイド部51の可動ガイド部55は、ガイド軸55cと、可動ガイド部55の変位方向に沿ったガイド溝55dとによって、変位方向が規制される。例えば、図29Aに示すように、可動ガイド部55は、第1のガイド部50に対する可動ガイド部55の移動方向である、第1のガイド部50に対して可動ガイド部55が近づく方向及び離れる方向に沿って延在するガイド溝55dを備える。固定ガイド部54は、ガイド溝55dに挿入され、ガイド溝55d内を移動可能なガイド軸55cを備える。これにより、可動ガイド部55は、第1のガイド部50に対して離接する方向(図29Aの上下方向)への平行移動でガイド位置から退避位置に変位する。
また、図29Bに示すように、前後方向に延在するガイド溝55dを可動ガイド部55に備えることとしても良い。これにより、可動ガイド部55が、本体部10Aの一端である前端から突出及び本体部10Aの内部に退避する前後方向への移動でガイド位置から退避位置に変位する。この場合のガイド位置は、可動ガイド部55の壁面55aがループRuを形成するワイヤWが通過する位置に存在するように、可動ガイド部55が本体部10Aの前端から突出した位置である。また、退避位置とは、可動ガイド部55の全部あるいは一部が、本体部10Aの内部に入り込んだ状態である。更に、第1のガイド部50に対して離接する方向及び前後方向に沿った斜め方向に延在するガイド溝55dを可動ガイド部55に備える構成としても良い。なお、ガイド溝55dは、直線状でも円弧等の曲線状でも良い。
本実施の形態の鉄筋結束機1Aの他の変形例としては、2本のワイヤWを使用する構成を例に説明したが、1本のワイヤWで鉄筋Sを結束しても良いし、2本以上のワイヤWで鉄筋Sを結束しても良い。また、本実施の形態の鉄筋結束機1Aは、長さ規制部74をカールガイド部5Aの第1のガイド部50に備える構成としたが、第1の可動把持部材70L等、把持部70と独立した部品であれば他の場所に備える構成でも良く、例えば、把持部70を支持する構造物に備えても良い。
更に、折り曲げ部71でワイヤWの一方の端部WS側と他方の端部WE側を鉄筋S側に折り曲げる動作が終了するより前に、把持部70の回転動作を開始して、ワイヤWを捩じる動作を開始する構成としても良い。また、把持部70の回転動作を開始して、ワイヤWを捩じる動作を開始した後で、ワイヤWを捩じる動作を終了するより前に、折り曲げ部71でワイヤWの一方の端部WS側と他方の端部WE側を鉄筋S側に折り曲げる動作が開始及び終了する構成としても良い。
また、曲げ手段として、折り曲げ部71を可動部材83と一体とした構成で備えたが、独立した構成でも良く、把持部70と折り曲げ部71が、独立したモータ等の駆動手段で駆動される構成としても良い。更に、折り曲げ部71に代えて、曲げ手段として、固定把持部材70Cと、第1の可動把持部材70L及び第2の可動把持部材70Rに、ワイヤWを把持する動作でワイヤWを鉄筋S側に曲げる力を加える凹凸形状等から構成される折り曲げ部を備えても良い。
図30A、図30B、図30C、図30D及び図30Eは、本実施の形態の並列ガイドの変形例を示す構成図である。2本以上のワイヤWで鉄筋Sを結束する構成では、図30Aに示す並列ガイド4Bは、開口4BWの断面形状、すなわち、ワイヤWの送り方向と直交する方向の開口4BWの断面形状が矩形状に構成され、開口4BWの長手方向及び短手方向が直線状に構成される。並列ガイド4Bは、開口4BWの長手方向の長さL1が、ワイヤWを径方向に沿って並べた形態におけるワイヤWの直径rの複数本分より若干長い長さ、短手方向の長さL2が、ワイヤWの1本分の直径rより若干長い長さを有する。並列ガイド4Bは、本例では、開口4BWの長手方向の長さL1が、ワイヤWの2本分の直径rより若干長い長さを有する。
図30Bに示す並列ガイド4Cは、開口4CWの長手方向が直線状、短手方向が三角状に構成される。並列ガイド4Cは、複数本のワイヤWが開口4CWの長手方向に並列し、短手方向の斜面でワイヤWをガイドできるようにするため、開口4CWの長手方向の長さL1が、ワイヤWを径方向に沿って並べた形態におけるワイヤWの直径rの複数本分より長い長さ、短手方向の長さL2が、ワイヤWの1本分の直径rより若干長い長さを有する。
図30Cに示す並列ガイド4Dは、開口4DWの長手方向が内側方向に凸状に湾曲した曲線状、短手方向が円弧状に構成される。すなわち、開口4DWの開口形状が、並列するワイヤWの外形状に沿った形に形成される。並列ガイド4Dは、開口4DWの長手方向の長さL1が、ワイヤWを径方向に沿って並べた形態におけるワイヤWの直径rの複数本分より若干長い長さ、短手方向の長さL2が、ワイヤWの1本分の直径rより若干長い長さを有する。並列ガイド4Dは、本例では、長手方向の長さL1が、ワイヤWの2本分の直径rより若干長い長さを有する。
図30Dに示す並列ガイド4Eは、開口4EWの長手方向が外側方向に凸状に湾曲した曲線状、短手方向が円弧状に構成される。すなわち、開口4EWの開口形状が、楕円形状に形成される。並列ガイド4Eは、開口4EWの長手方向の長さL1が、ワイヤWを径方向に沿って並べた形態におけるワイヤWの直径rの複数本分より若干長い長さ、短手方向の長さL2が、ワイヤWの1本分の直径rより若干長い長さを有する。並列ガイド4Eは、本例では、長手方向の長さL1が、ワイヤWの2本分の直径rより若干長い長さを有する。
図30Eに示す並列ガイド4Fは、ワイヤWの本数に合わせた複数の開口4FWで構成される。各ワイヤWは、それぞれ1本ずつ別の開口4FWに通される。並列ガイド4Fは、各開口4FWが、ワイヤWの直径rより若干長い直径(長さ)L1を有し、開口4FWの並ぶ向きで、複数本のワイヤWが並列される向きを規制する。
図31は、本実施の形態のガイド溝の変形例を示す構成図である。ガイド溝52Bは、ワイヤWの直径rより若干長い幅(長さ)L1及び深さL2を有する。一方のワイヤWが通一方のガイド溝52Bと、他方のワイヤWが通る他方のガイド溝52Bの間には、ワイヤWの送り方向に沿って仕切り壁部が形成される。第1のガイド部50は、複数のガイド溝52Bの並ぶ向きで、複数本のワイヤが並列される向きを規制する。
図32〜図34は、他の実施の形態の変位部の一例を示す構成図、図35は、他の実施の形態の鉄筋結束機の一例を示す外観図である。変位部340は変位手段の一例で、軸350aを支点とした回転動作により矢印V1、V2で示す方向に変位し、第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lに対して離接させる方向に変位させる第1の変位部材350を備える。また、変位部340は、第1の変位部材350を変位させる第2の変位部材360を備える。
第1の変位部材350は、長尺の板状部材であり、一端側が軸350aに回転可能に支持され、他端側に第2の送りギア30Rが軸300Rにより回転可能に支持される。なお、第1の変位部材350の形状は、長尺の板状部材に限定されない。また、第1の変位部材350は、軸300Rを介して支持する第2の送りギア30Rの軸方向に沿った厚さtの範囲内、好ましくは、第2の送り溝部32Rの位置近傍に、第2の変位部材360から押圧される被押圧部350bを備える。
被押圧部350bは、軸300Rから第2の送りギア30Rの径方向に向かって延びるように配置される。被押圧部350bは、U字状を呈し、U字状の開口部で第2の送りギア30Rを挟むようにして軸300Rに取り付けられる。なお、被押圧部350bの形状は、U字状に限定されない。
第2の変位部材360は、軸360aに回転可能に支持され、軸360aを支点とした回転動作により矢印W1、W2で示す方向に変位する。第2の変位部材360は、軸360aを挟んだ一端側に第1の変位部材350の被押圧部350bを押圧する押圧部360bを備える。押圧部360bは、第2の送りギア30Rの軸方向に沿った厚さtの範囲内、好ましくは、第2の送り溝部32Rの位置近傍で被押圧部350bを押圧する。
ここで、第1の変位部材350は、軸350aを支点とした回転動作で変位し、第2の変位部材360は、軸360aを支点とした回転動作で変位するが、互いの軸は平行ではない。そこで、押圧部360bは、軸360aを支点とした回転方向に沿った凸状の円弧で構成される。また、被押圧部350bは、軸300Rを支点とした回転方向に沿った凸状の円弧で構成される。これにより、第1の変位部材350と第2の変位部材360の回転動作で、押圧部360bと被押圧部350bとの接触箇所が大きくずれることが抑制される。
更に、第1の変位部材350は、少なくとも被押圧部350b、あるいは全体が鉄で構成され、第2の変位部材360は、少なくとも押圧部360b、あるいは全体が鉄で構成される。これにより、押圧部360bと被押圧部350bとの接触箇所の摩耗が抑制される。
第2の変位部材360は、軸360aを挟んだ他端側に例えば圧縮コイルバネで構成されるバネ370が当接されるバネ当接部370aを備える。バネ370は、バネ当接部370aを押す方向に付勢する。このため、第2の変位部材360の一端側、すなわち、押圧部360bは、バネ370の付勢力によって被押圧部350bを押圧した状態となる。
第2の送りギア30Rは、バネ370が第2の変位部材360を押圧し、第2の変位部材360の押圧部360bが第1の変位部材350の被押圧部350bを押圧することで、第1の送りギア30L方向に押圧される。
これにより、2本のワイヤWが、第1の送りギア30Lの第1の送り溝部32Lと第2の送りギア30Rの第2の送り溝部32Rで挟持される。また、第1の送りギア30Lの歯部31Lと第2の送りギア30Rの歯部31Rがかみ合う。
変位部340は、バネ370の付勢力に抗して第2の変位部材360を押圧する操作ボタン380を備える。また、変位部340は、操作ボタン380を所定の状態、すなわち、操作ボタン380が第2の変位部材360を押圧した状態に固定し、及び当該固定を解除する解除レバー390を備える。
操作ボタン380は操作部材の一例で、第2の変位部材360を介してバネ370に対向する位置に設けられる。操作ボタン380は、操作部380bが本体部10Aの一方の側面から外側に突出し、矢印T1で示す本体部10Aに対して押す方向、矢印T2で示す本体部10Aから突出する方向に移動可能に本体部10Aに支持される。操作ボタン380の操作部380bを本体部10Aに対して押す矢印T1方向に押圧することにより、バネ370は収縮し、操作ボタン380とバネ370の挟まれた第2の変位部材360は矢印W1方向に回転する。
操作ボタン380は、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとを離間させてワイヤWを装填可能な位置であるワイヤ装填位置で解除レバー390が係止される係止凹部380aを備える。係止凹部380aは、解除レバー390と対向して、操作ボタン380の本例では前側に凹部を設けて構成される。
解除レバー390は解除部材の一例で、軸390cを支点とした回転動作により、操作ボタン380の移動方向に交する矢印U1、U2で示す方向に移動可能に支持される。
解除レバー390は、操作ボタン380が所定の状態まで押圧されるとき、操作ボタン380に形成された係止凹部380aに係合する係止凸部390aを備える。従って、操作ボタン380は、所定の状態まで押圧されると解除レバー390によってその位置で固定される。解除レバー390は、固定を解除するための操作部390dを備える。操作部390dは、本体部10Aの一方の側面から外側に突出する。解除レバー390は、操作部390dを操作することによって、操作ボタン380から離間する方向に移動し、係止凸部390aが係止凹部380aから外れる。
解除レバー390は、例えば、ねじりコイルバネで構成されるバネ390bで、操作ボタン380へ近づく矢印U1方向に付勢され、係止凸部390aが操作ボタン380に突き当てられる。
図36〜図38は、他の実施の形態の変位部の動作の一例を示す説明図で、第2の送りギア30Rの押圧を解除する動作を示す。操作ボタン380が矢印T1方向に押されると、バネ370を圧縮しながら、第2の変位部材360が軸360aを支点に矢印W1方向に回転する。これにより、第2の変位部材360の押圧部360bが、第1の変位部材350の被押圧部350bから離れる。
また、解除レバー390の係止凸部390aに係止凹部380aが対向する位置まで操作ボタン380が矢印T1方向に押されると、バネ390bが復元する力で、解除レバー390がバネ390bにより軸390cを支点に矢印U1方向に回転する。これにより、操作ボタン380の係止凹部380aに解除レバー390の係止凸部390aが入り、第2の変位部材360を押圧した状態で操作ボタン380が保持される。よって、ワイヤWの装填時に、操作ボタン380を押し続ける必要はない。
図39〜図41は、他の実施の形態の変位部の動作の一例を示す説明図で、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの間にワイヤWを装填する動作を示す。第2の変位部材360の押圧部360bが、第1の変位部材350の被押圧部350bから離れた状態では、第2の送りギア30Rを支持する第1の変位部材350は、軸350aを支点に自由に回転可能である。
これにより、2本のワイヤWを並列させた形態として、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挿入すると、軸350aを支点に第1の変位部材350が矢印V1方向に回転し、第2の送りギア30Rが第1の送りギア30Lから離れる。よって、第1の送りギア30Lの第1の送り溝部32Lと第2の送りギア30Rの第2の送り溝部32Rとの間に、2本のワイヤWが並列した形態で挿入される。
図42〜図44は、他の実施の形態の変位部の動作の一例を示す説明図で、操作ボタン380の保持を解除する動作を示す。ワイヤWを第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rとの間に挿入した後、軸390cを支点に解除レバー390を矢印U2方向に回転させる。これにより、解除レバー390の係止凸部390aが操作ボタン380の係止凹部380aから抜ける。
図45〜図47は、他の実施の形態の変位部の動作の一例を示す説明図で、第2の送りギア30Rを第1の送りギア30Lに押圧する動作を示す。解除レバー390の操作で、解除レバー390の係止凸部390aが操作ボタン380の係止凹部380aから抜けると、バネ370が復元する力で、第2の変位部材360が軸360aを支点に矢印W2方向に回転する。
第2の変位部材360が矢印W2方向に回転すると、第2の変位部材360の押圧部360bが、第1の変位部材350の被押圧部350bを押圧することで、軸350aを支点に第1の変位部材350が矢印V2方向に回転し、バネ370の力で第2の送りギア30Rが第1の送りギア30L方向に押圧される。
これにより、2本のワイヤWが並列された形態で、第1の送りギア30Lの第1の送り溝部32Lと第2の送りギア30Rの第2の送り溝部32Rで挟持される。また、第1の送りギア30Lの歯部31Lと第2の送りギア30Rの歯部31Rがかみ合う。
更に、第2の変位部材360が矢印W2方向に回転することで、操作ボタン380が矢印T2方向に移動する。
第2の送りギア30Rは、第1の変位部材350の被押圧部350bが第2の変位部材360の押圧部360bで押圧されることで、第2の送り溝部32Rの位置近傍が押圧される力が軸300Rを介して伝達されて、第1の送りギア30L方向に押圧される。
これにより、第2の送りギア30Rが第1の送りギア30Lに対して傾斜することが抑制され、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rに偏荷重が掛かることが抑制される。
よって、第1の送りギア30Lと第2の送りギア30Rの偏摩耗が抑制される。また、第1の送りギア30Lの第1の送り溝部32Lと第2の送りギア30Rの第2の送り溝部32RからワイヤWが外れることが抑制される。
図48は、他の実施の形態の鉄筋結束機の一例を示す外観図である。操作ボタン380の操作部380bと及び解除レバー390の操作部390dは、本体部10Aの一方の側面であって、トリガ12Aの前方でマガジン2Aの上方に設けられる。本体部10Aの他方の側面であって、トリガ12Aの前方でマガジン2Aの上方には、手の指が当たる指当て部16を備える。
これにより、ハンドル部11Aを片手で持つと、操作ボタン380の操作部380bと指当て部16を挟む形態として、片手で操作ボタン380の操作部380bを操作することができる。また、解除レバー390の操作部390dと指当て部16を挟む形態として、片手で解除レバー390の操作部390dを操作することができる。よって、鉄筋結束機1Aを作業場所等に置かずに、操作ボタン380及び解除レバー390の操作が可能となる。
なお、操作ボタン380と解除レバー390との間で固定保持と解除ができる機構であればよいので、操作ボタン380側に係止凸部形状、解除レバー390側に係止凹部形状を備えた係止部材の機構にしてもよい。
本実施の形態の他の変形例としては、複数本のワイヤWを同時に送る構成に代えて、1本ずつワイヤWを送って鉄筋Sに巻き回し、複数のワイヤを巻き回した後、複数のワイヤを逆方向に送って鉄筋Sに巻き付ける構成としても良い。
なお、本発明は、結束物として配管等をワイヤで結束する結束機に適用することも可能である。
本出願は、2015年7月22日出願の日本特許出願特願2015−145285及び2016年7月8日出願の日本特許出願特願2016−136069に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。