JP7046497B2 - 液晶調光部材、光透過性導電フィルム、および液晶調光素子 - Google Patents

液晶調光部材、光透過性導電フィルム、および液晶調光素子 Download PDF

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本発明は、液晶調光部材、それに用いるための光透過性導電フィルム、および、それを備えた液晶調光素子に関する。
近年、冷暖房負荷の低減や意匠性などの観点から、スマートウインドウなどに代表される液晶調光素子の需要が高まっている。液晶調光素子は、建築物や乗物の窓ガラス、間仕切り、インテリアなどの種々の用途に用いられている。
液晶調光素子としては、例えば、基体と、導電膜と、液晶-樹脂複合体とを順に備える液晶調光素子が提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
特開2009-133921号公報
一方、特許文献1の液晶調光素子では、導電膜として、インジウムスズ複合酸化物(ITO)が用いられる。インジウムスズ複合酸化物(ITO)は、近赤外線反射特性が低いため、遮熱性に劣る。そのため、特許文献1の液晶調光素子が、太陽光の影響を受ける環境(屋外など)で利用される場合には、特許文献1の液晶調光素子の液晶-樹脂複合体が、太陽光の熱によって劣化するという不具合がある。
また、このような不具合を解消するために、基体の表面に、太陽光などの熱線を遮断するためのIR反射層を貼り付けることも検討される。しかし、このような場合には、IR反射層の厚みに対応して、液晶調光素子の厚みが増加し、また、製造コストが増大するという不具合がある。
本発明の目的は、透明基材の表面に、IR反射層を貼り付けなくても、近赤外線反射特性に優れる液晶調光部材、それに用いるための光透過性導電フィルム、および、それを備えた液晶調光素子を提供することにある。
本発明[1]は、透明基材と、光透過性導電層と、液晶調光層と順に備え、前記光透過性導電層は、第1無機酸化物層と、金属層と、第2無機酸化物層とを順に備える液晶調光部材を含んでいる。
この液晶調光部材では、光透過性導電層は、近赤外線領域の反射率が高い金属層を備える。そのため、光透過性導電層は、例えば、導電性酸化物のみからなる場合と比較して近赤外線の平均反射率が高く、太陽光などの熱線を液晶調光層から効率的に遮断でき、太陽光の影響を受ける環境(屋外など)で利用できる。
また、この液晶調光部材では、透明基材の表面に、IR反射層を貼り付けなくても、近赤外線反射特性に優れる。そのため、液晶調光部材の厚みを薄くすることができ、また、製造コストを低減することができる。
本発明[2]は、前記第2無機酸化物層は、結晶粒を含有する上記[1]に記載の液晶調光部材を含んでいる。
この液晶調光部材によれば、光透過性導電層は、結晶粒を含有する第2無機酸化物層を備える。そのため、液晶調光層が、溶媒として水を含有する場合には、その水が、第2無機酸化物層を厚み方向に通過して金属層に浸入することを抑制することができる。
本発明[3]は、前記第2無機酸化物層が、非晶質部および結晶質部を有する半結晶質膜である、上記[1]または[2]に記載の液晶調光部材を含んでいる。
この液晶調光部材によれば、第2無機酸化物層が、非晶質部および結晶質部を有する半結晶質膜である。そのため、湿熱耐久性がより一層優れる。
本発明[4]は、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の液晶調光部材に用いるための光透過性導電フィルムであって、透明基材と、光透過性導電層とを順に備え、前記光透過性導電層は、第1無機酸化物層と、金属層と、第2無機酸化物層とを順に備える、光透過性導電フィルムを含んでいる。
この光透過性導電フィルムでは、光透過性導電層は、近赤外線領域の反射率が高い金属層を備える。そのため、光透過性導電フィルムが、上記の液晶調光部材に用いられる場合には、光透過性導電層は、例えば、導電性酸化物のみからなる場合と比較して近赤外線の平均反射率が高く、太陽光などの熱線を液晶調光層から効率的に遮断でき、太陽光の影響を受ける環境(屋外など)で利用できる。
また、この光透過性導電フィルムでは、透明基材の表面に、IR反射層を貼り付けなくても、近赤外線反射特性に優れる。そのため、光透過性導電フィルムの厚みを薄くすることができ、また、製造コストを低減することができる。
本発明[5]は、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の液晶調光部材と、前記透明基材に対して、前記液晶調光層の反対側の表面に設けられる電極基板とを備える、液晶調光素子を含んでいる。
この液晶調光素子は、上記した液晶調光部材を備える。そのため、液晶調光素子は、太陽光などの熱線を液晶調光層から効率的に遮断でき、太陽光の影響を受ける環境(屋外など)で利用できる。
また、この液晶調光素子は、上記した液晶調光部材を備える。そのため、液晶調光素子の厚みを薄くすることができ、また、製造コストを低減することができる。
本発明の液晶調光部材、それに用いるための光透過性導電フィルム、および、それを備えた液晶調光素子によれば、透明基材の表面に、IR反射層を貼り付けなくても、近赤外線反射特性に優れる。そのため、液晶調光部材の厚みを薄くすることができ、また、製造コストを低減することができる。
図1は、本発明の液晶調光部材の一実施形態の断面図を示す。 図2A~Bは、図1に示す光透過性導電フィルムの一部拡大図を示し、図2Aは、第2無機酸化物層が完全結晶質膜である場合の模式図を示し、図2Bは、第2無機酸化物層が半結晶質膜である場合の模式図を示す。 図3は、図1に示す液晶調光部材を構成する本発明の光透過性導電フィルムの一実施形態の断面図を示す。 図4は、図1に示す液晶調光部材を備える本発明の液晶調光素子の一実施形態の断面図を示す。 図5は、液晶調光部材の変形例であって、透明基材の上面に、第1無機酸化物層が直接配置された液晶調光部材の断面図を示す。 図6は、液晶調光部材の変形例であって、無機物層が保護層および第1無機酸化物層の間に介在された液晶調光部材の断面図を示す。
図1において、紙面上下方向は、上下方向(厚み方向、第1方向)であって、紙面上側が、上側(厚み方向一方側、第1方向一方側)、紙面下側が、下側(厚み方向他方側、第1方向他方側)である。図1において、紙面左右方向は、左右方向(幅方向、第1方向に直交する第2方向)であり、紙面左側が左側(第2方向一方側)、紙面右側が右側(第2方向他方側)である。図1において、紙厚方向は、前後方向(第1方向および第2方向に直交する第3方向)であり、紙面手前側が前側(第3方向一方側)、紙面奥側が後側(第3方向他方側)である。具体的には、各図の方向矢印に準拠する。
1. 液晶調光部材
液晶調光部材は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)をなし、厚み方向と直交する所定方向(前後方向および左右方向、すなわち、面方向)に延び、平坦な上面および平坦な下面(2つの主面)を有する。液晶調光部材は、例えば、調光装置に備えられる調光パネルなどの一部品であり、つまり、調光装置ではない。すなわち、液晶調光部材は、調光装置などを作製するための部品であり、LEDなどの光源や外部電源を含まず、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
具体的には、図1に示すように、液晶調光部材1は、厚み方向において、順に、透明基材2と、保護層3と、光透過性導電層4と、液晶調光層5とを備える積層フィルムである。つまり、液晶調光部材1は、透明基材2と、透明基材2の上側に配置される保護層3と、保護層3の上側に配置される光透過性導電層4と、光透過性導電層4の上側に配置される液晶調光層5とを備える。好ましくは、液晶調光部材1は、透明基材2と、保護層3と、光透過性導電層4と、液晶調光層5とのみからなる。以下、各層について詳述する。
2. 透明基材
透明基材2は、液晶調光部材1の電極基板の一部であり、液晶調光部材1の最下層であって、液晶調光部材1の機械強度を確保する支持材である。透明基材2は、保護層3とともに、光透過性導電層4および液晶調光層5を支持する。
透明基材2は、例えば、高分子フィルムからなる。
高分子フィルムは、透明性および可撓性を有する。高分子フィルムの材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、例えば、ポリメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマーなどのオレフィン樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ノルボルネン樹脂などが挙げられる。これら高分子フィルムは、単独使用または2種以上併用することができる。透明性、可撓性、耐熱性、機械特性などの観点から、好ましくは、オレフィン樹脂やポリエステル樹脂が挙げられ、より好ましくは、シクロオレフィンポリマーやPETが挙げられる。
透明基材2の厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、200μm以下、より好ましくは、150μm以下である。
また、透明基材2は、好ましくは、第1無機酸化物層6の非晶質性を保持する観点から、微量の水を含有している。つまり、透明基材2では、好ましくは、高分子フィルムが水を含有している。
3. 保護層
保護層3は、液晶調光部材1の電極基板の一部であり、光透過性導電層4や液晶調光層5の上面に擦り傷を生じにくくする(すなわち、優れた耐擦傷性を得る)ための、擦傷保護層である。また、保護層3は、光透過性導電層4を配線パターンなどのパターン形状に形成した場合には、パターンの視認を抑制するために、液晶調光部材1の光学物性を調整する光学調整層でもある。
保護層3は、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、透明基材2の上面全面に、透明基材2の上面に接触するように、配置されている。
保護層3は、樹脂組成物から形成されている。
樹脂組成物は、例えば、樹脂、粒子などを含有する。樹脂組成物は、好ましくは、樹脂を含有し、より好ましくは、樹脂のみからなる。
樹脂としては、硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(例えば、ポリオレフィン樹脂)などが挙げられ、好ましくは、硬化性樹脂が挙げられる。
硬化性樹脂としては、例えば、活性エネルギー線(具体的には、紫外線、電子線など)の照射により硬化する活性エネルギー線硬化性樹脂、例えば、加熱により硬化する熱硬化性樹脂などが挙げられ、好ましくは、活性エネルギー線硬化性樹脂が挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂は、例えば、分子中に重合性炭素-炭素二重結合を有する官能基を有するポリマーが挙げられる。そのような官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基(メタクリロイル基および/またはアクリロイル基)などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性樹脂としては、例えば、側鎖に官能基を含有する(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)などが挙げられる。
これら樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
粒子としては、例えば、無機粒子、有機粒子などが挙げられる。無機粒子としては、例えば、シリカ粒子、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタンなどからなる金属酸化物粒子、例えば、炭酸カルシウムなどの炭酸塩粒子などが挙げられる。有機粒子としては、例えば、架橋アクリル樹脂粒子などが挙げられる。
保護層3の厚みは、例えば、0.01μm以上、好ましくは、1μm以上であり、また、例えば、10μm以下、好ましくは、5μm以下である。保護層3の厚みは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により測定される。
4. 光透過性導電層
光透過性導電層4は、液晶調光部材1の電極基板の一部であり、外部電源(図示せず)からの電流を、液晶調光層5に電界をかけるための導電層である。また、光透過性導電層4は、透明導電層でもある。
図1に示すように、光透過性導電層4は、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、保護層3の上面全面に、保護層3の上面に接触するように、配置されている。
光透過性導電層4は、厚み方向において、透明基材2側から順に、第1無機酸化物層6と、金属層7と、第2無機酸化物層8とを備える。つまり、光透過性導電層4は、保護層3の上に配置される第1無機酸化物層6と、第1無機酸化物層6の上に配置される金属層7と、金属層7の上に配置される第2無機酸化物層8とを備えている。光透過性導電層4は、好ましくは、第1無機酸化物層6と、金属層7と、第2無機酸化物層8とのみからなる。
光透過性導電層4の表面抵抗値は、例えば、40Ω/□以下、好ましくは30Ω/□以下、より好ましくは20Ω/□以下、さらに好ましくは15Ω/□以下であり、また、例えば、0.1Ω/□以上、好ましくは、1Ω/□以上、より好ましくは、5Ω/□以上である。
光透過性導電層4の表面抵抗値は、例えば、光透過性導電フィルム9の光透過性導電層4表面に対して、JIS K7194(1994年)の4探針法に準拠して測定することにより得られる。
光透過性導電層4の比抵抗は、例えば、2.5×10-4Ω・cm以下、好ましくは、2.0×10-4Ω・cm以下、より好ましくは、1.1×10-4Ω・cm以下であり、また、例えば、0.01×10-4Ω・cm以上、好ましくは、0.1×10-4Ω・cm以上、より好ましくは、0.5×10-4Ω・cm以上である。
光透過性導電層4の比抵抗は、光透過性導電層4の厚み(第1無機酸化物層、金属層7、第2無機酸化物層8の総厚み)と、光透過性導電層4の表面抵抗値とを用いて算出される。
また、光透過性導電層4の近赤外線(波長850~2500nm)の平均反射率は、例えば、10%以上、好ましくは、20%以上、より好ましくは、50%以上であり、また、例えば、95%以下、好ましくは、90%以下である。
光透過性導電層4の厚み、すなわち、第1無機酸化物層6、金属層7および第2無機酸化物層8の総厚みは、例えば、20nm以上、好ましくは、40nm以上、より好ましくは、60nm以上、さらに好ましくは、80nm以上であり、また、例えば、150nm以下、好ましくは、120nm以下、より好ましくは、100nm以下である。
5. 第1無機酸化物層
第1無機酸化物層6は、透明基材2に含有される水に由来する水素や、保護層3に含有される有機物に由来する炭素が、金属層7に浸入することを防止するバリヤ層である。さらに、第1無機酸化物層6は、後述する第2無機酸化物層8とともに、金属層7の可視光反射率を抑制し、光透過性導電層4の可視光透過率を向上させるための光学調整層でもある。第1無機酸化物層6は、好ましくは、後述する金属層7とともに、光透過性導電層4に導電性を付与する導電層であり、より好ましくは、透明導電層である。
第1無機酸化物層6は、光透過性導電層4における最下層であって、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、保護層3の上面全面に、保護層3の上面に接触するように、配置されている。
第1無機酸化物層6を形成する無機酸化物としては、例えば、In、Sn、Zn、Ga、Sb、Ti、Si、Zr、Mg、Al、Au、Ag、Cu、Pd、W、Fe、Pb、Ni、Nb、Crからなる群より選択される少なくとも1種の金属から形成される金属酸化物などが挙げられる。金属酸化物には、必要に応じて、さらに上記群に示された金属原子をドープすることができる。
無機酸化物としては、好ましくは、表面抵抗値を低下させる観点、および、優れた透明性を確保する観点から、酸化インジウムを含有する酸化物(酸化インジウム含有酸化物)が挙げられる。酸化インジウム含有酸化物は、金属元素としてインジウム(In)のみを含有していてもよく、また、インジウム(In)以外の(半)金属元素を含んでいてもよい。酸化インジウム含有酸化物は、好ましくは、主金属元素がインジウム(In)である。主金属元素がインジウムである酸化インジウム含有酸化物は、優れたバリヤ機能を有し、水などの影響による金属層7の腐食を好適に抑制しやすい。
酸化インジウム含有酸化物は、単数または複数の(半)金属元素を不純物元素として含有することにより、導電性、透明性、耐久性をより一層向上させることができる。第1無機酸化物層6中の、主金属元素Inの原子数に対する不純物金属元素の含有原子数比(不純物金属元素の原子数/Inの原子数)は、例えば、0.50未満であり、好ましくは、0.40以下、より好ましくは、0.30以下、さらに好ましくは、0.20以下であり、また、例えば、0.01以上、好ましくは、0.05以上、より好ましくは、0.10以上である。これにより、透明性、湿熱耐久性に優れる無機酸化物層が得られる。
酸化インジウム含有酸化物としては、具体的には、例えば、インジウム亜鉛複合酸化物(IZO)、インジウムガリウム複合酸化物(IGO)、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物(IGZO)、インジウムスズ複合酸化物(ITO)が挙げられ、より好ましくは、インジウムスズ複合酸化物(ITO)が挙げられる。本明細書中における“ITO”とは、少なくともインジウム(In)とスズ(Sn)とを含む複合酸化物であればよく、これら以外の追加成分を含んでもよい。追加成分としては、例えば、In、Sn以外の金属元素が挙げられ、例えば、上記群に示された金属元素、および、これらの組み合わせが挙げられる。追加成分の含有量は特に制限されないが、例えば、5重量%以下である。
ITOに含有される酸化スズ(SnO)の含有量は、酸化スズおよび酸化インジウム(In)の合計量に対して、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、3質量%以上、より好ましくは、6質量%以上、さらに好ましくは、8質量%以上、特に好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、35質量%以下、好ましくは、20質量%以下、より好ましくは、15質量%以下、さらに好ましくは、13質量%以下である。酸化インジウムの含有量(In)は、酸化スズ(SnO)の含有量の残部である。
ITOに含有される、Inに対するSnの原子数比Sn/Inは、例えば、0.004以上、好ましくは、0.02以上、より好ましくは、0.03以上、さらに好ましくは、0.04以上、特に好ましくは、0.05以上であり、また、例えば、0.4以下、好ましくは、0.3以下、より好ましくは、0.2以下、さらに好ましくは、0.10以下である。Inに対するSnの原子数比は、X線光電子分光法(ESCA:Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)により求めることができる。InとSnの原子数比を上記範囲とすることにより、環境信頼性に優れる膜質を得やすい。
第1無機酸化物層6は、好ましくは、結晶粒を含有しない。すなわち、第1無機酸化物層6は、好ましくは、非晶質である。これにより、第1無機酸化物層6表面の濡れ性を向上させて、後述する金属層7を第1無機酸化物層6の上面に、より確実に薄くかつ均一に成膜することができる。そのため、光透過性導電層4の膜質を良好にし、湿熱耐久性を向上させることができる。
本発明において、「結晶粒を含有しない」とは、第1無機酸化物層6を、200,000倍での断面TEM画像を用いて観察した場合に、厚み方向と直交する面方向(左右方向または前後方向)500nmの範囲において、結晶粒が観察されないことをいう。
第1無機酸化物層6における無機酸化物の含有割合は、例えば、95質量%以上、好ましくは、98質量%以上、より好ましくは、99質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下である。
第1無機酸化物層6の厚みT1は、例えば、5nm以上、好ましくは、20nm以上、より好ましくは、30nm以上であり、また、例えば、100nm以下、好ましくは、60nm以下、より好ましくは、50nm以下である。第1無機酸化物層6の厚みT1が上記範囲であれば、光透過性導電層4の可視光透過率を高い水準に調整しやすい。第1無機酸化物層6の厚みT1は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により測定される。
6. 金属層
金属層7は、第1無機酸化物層6および第2無機酸化物層8とともに、光透過性導電層4に導電性を付与する導電層である。また、金属層7は、光透過性導電層4の表面抵抗値を低減する低抵抗化層でもある。また、金属層7は、高いIR反射率(近赤外線の平均反射率)を付与するためのIR反射層でもある。
金属層7は、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、第1無機酸化物層6の上面に、第1無機酸化物層6の上面に接触するように、配置されている。
金属層7を形成する金属は、表面抵抗が小さい金属であれば限定的でないが、例えば、Ti,Si,Nb,In,Zn,Sn,Au,Ag,Cu,Al,Co,Cr,Ni,Pb,Pd,Pt,Cu、Ge、Ru、Nd、Mg、Ca、Na、W,Zr,TaおよびHfからなる群から選択される1種の金属からなるか、または、それらの2種以上の金属を含有する合金が挙げられる。
金属として、好ましくは、銀(Ag)、銀合金が挙げられ、より好ましくは、銀合金が挙げられる。金属が、銀または銀合金であれば、光透過性導電層4の抵抗値を小さくすることができるのに加えて、近赤外線領域(波長850~2500nm)の平均反射率が特に高い光透過性導電層4が得られ、屋外で使用される液晶調光素子にも好適に適用できる。
銀合金は、銀を主成分として含有し、その他の金属を副成分として含有している。副成分の金属元素は限定的でない。銀合金としては、例えば、Ag-Cu合金、Ag-Pd合金、Ag-Pd-Cu合金、Ag-Pd-Cu-Ge合金、Ag-Cu-Au合金、Ag-Cu-In合金、Ag-Cu-Sn合金、Ag-Ru-Cu合金、Ag-Ru-Au合金、Ag-Nd合金、Ag-Mg合金、Ag-Ca合金、Ag-Na合金、Ag-Ni合金、Ag-Ti合金、Ag-In合金、Ag-Sn合金などが挙げられる。湿熱耐久性の観点から、銀合金として、好ましくは、Ag-Cu合金、Ag-Cu-In合金、Ag-Cu-Sn合金、Ag-Pd合金、Ag-Pd-Cu合金などが挙げられる。
銀合金における銀の含有割合は、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上、より好ましくは、95質量%以上であり、また、例えば、99.9質量%以下である。銀合金におけるその他の金属の含有割合は、上記した銀の含有割合の残部である。
金属層7の厚みT3は、光透過性導電層4の透過率を上げる観点から、例えば、1nm以上、好ましくは、5nm以上であり、また、例えば、30nm以下、好ましくは、20nm以下、より好ましくは、10nm以下である。金属層7の厚みT3は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により測定される。
7. 第2無機酸化物層
第2無機酸化物層8は、液晶調光層5に、溶媒として含まれる水(後述)などが金属層7に浸入することを防止するバリヤ層であり、特に、水による経時での金属層7の変色を抑制するバリヤ層である。また、第2無機酸化物層8は、金属層7の可視光反射率を抑制し、光透過性導電層4の可視光透過率を向上させるための光学調整層でもある。第2無機酸化物層8は、好ましくは、金属層7とともに、光透過性導電層4に導電性を付与する導電層であり、より好ましくは、透明導電層である。
第2無機酸化物層8は、光透過性導電層4における最上層であって、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、金属層7の上面全面に、金属層7の上面に接触するように、配置されている。
第2無機酸化物層8を形成する無機酸化物は、第1無機酸化物層6で例示した無機酸化物が挙げられ、好ましくは、酸化インジウムを含有し、より好ましくは、酸化インジウム含有酸化物が挙げられ、より好ましくは、主金属元素がインジウム(In)である酸化インジウム含有酸化物が挙げられ、さらに好ましくは、ITOが挙げられる。
第2無機酸化物層8を形成する無機酸化物は、第1無機酸化物層6を形成する無機酸化物と同一または異なっていてもよいが、エッチング性や湿熱耐久性の観点から、好ましくは、第1無機酸化物層6と同一の無機酸化物である。
第2無機酸化物層8が酸化インジウム含有酸化物からなる場合、第2無機酸化物層8中の、主金属元素Inの原子数に対する不純物金属元素の含有原子数比(不純物金属元素の原子数/Inの原子数)は、第1無機酸化物層6における「不純物金属元素の原子数/Inの原子数」と同一またはそれ以上(例えば、0.001以上)である。
第2無機酸化物層8がITOからなる場合、ITOに含有される酸化スズ(SnO)の含有量およびInに対するSnの原子数比は、第1無機酸化物層6と同様である。
第1無機酸化物層6及び第2無機酸化物層8のいずれもがITOからなる場合、第2無機酸化物層8に含有される酸化スズ(SnO)の含有量は、好ましくは、第1無機酸化物層6に含有される酸化スズ(SnO)の含有量と同等水準またはそれ以上(例えば、0.1質量%以上)である。具体的には、第2無機酸化物層8に含有される酸化スズ(SnO)の含有量(S)の、第1無機酸化物層6に含有される酸化スズ(SnO)の含有量(S)に対する比率(S/S)は、例えば、1.0以上、好ましくは、1.2以上であり、また、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
ITOに含有される酸化スズ(SnO)の含有量を、上記範囲とすることにより、ITO膜の結晶化度を調整することができる。特に、ITO膜内の酸化スズの含有量を多くすることにより、加熱によるITO膜の完全結晶化を抑制し、半結晶質膜を得やすい。
また、第2無機酸化物層8に含有されるInに対するSnの原子数比Sn/Inは、好ましくは、第1無機酸化物層6に含有されるInに対するSnの原子数比と同等またはそれ以上(具体的には、0.001以上)である。第2無機酸化物層8における、酸化スズ(SnO)の含有量、あるいは、Inに対するSnの原子数比を、第1無機酸化物層6のそれらと同等またはそれ以上とすることにより、第2無機酸化物層8の結晶化度を高くできる。
第2無機酸化物層8における無機酸化物の含有割合は、例えば、95質量%以上、好ましくは、98質量%以上、より好ましくは、99質量%以上であり、また、例えば、100質量%以下である。
第2無機酸化物層8は、結晶粒10を含有する(図2Aまたは図2B参照)。これにより、結晶粒10は、膜構造が安定しており、水を透過しにくいため、液晶調光層5に、溶媒として含まれる水(後述)が、第2無機酸化物層8を通過して金属層7に浸入することを抑制できる。そのため、光透過性導電層4の耐湿耐久性を良好にすることができる。
具体的には、第2無機酸化物層8は、結晶質膜である。結晶質膜としては、例えば、図2Aに示すように、側断面図(特に、断面TEM画像)において、面方向全体に連続して結晶粒10を含有する完全結晶質膜であってもよく、また、図2Bに示すように、非晶質部11(結晶化していない部分)および結晶質部12(すなわち、結晶粒10からなる部分)を含有する半結晶質膜であってもよい。後述する第2結晶粒10bを含有することができ、湿熱耐久性がより一層優れる観点から、好ましくは、半結晶質膜が挙げられる。
本発明において、「結晶粒を有する」とは、第2無機酸化物層8を、200,000倍での断面TEM画像を用いて観察した場合に、面方向500nmの範囲において、少なくとも1つ以上の結晶粒10を有することをいう。上記範囲において、結晶粒10の数は、好ましくは、2以上、より好ましくは、3以上、さらに好ましくは、5以上であり、また、好ましくは、50以下、より好ましくは、40以下、さらに好ましくは、30以下の結晶粒10を有する。
また、第2無機酸化物層8の上面を、100,000倍での平面TEM画像にて観察した場合において、結晶粒10が占める面積割合は、例えば、5%以上、好ましくは、10%以上、より好ましくは、20%以上であり、また、例えば、100%以下、好ましくは、90%以下、より好ましくは、80%以下、さらに好ましくは、70%以下、特に好ましくは、60%以下である。
なお、平面TEM画像で結晶粒が占める面積割合を算出する際、前記記載の条件で第1無機酸化物層6の断面TEM画像を確認し、第1無機酸化物層6内に結晶粒が存在しないことを確認した後、平面TEM画像を観察することとする。平面TEM画像だけでは、第1無機酸化物層6および第2無機酸化物層8のいずれの層に存在する結晶粒であるかの判断が難しい場合がある。そのため、本発明では、断面TEM画像で第1無機酸化物層6に結晶粒が存在しないことを確認した後、平面TEM画像を観察することにより、第2無機酸化物層8の結晶粒10を観察できているものと判断する。
第2無機酸化物層8に含まれる結晶粒10の大きさは、例えば、3nm以上、好ましくは、5nm以上、より好ましくは、10nm以上であり、例えば、200nm以下、好ましくは、100nm以下、より好ましくは、80nm以下、さらに好ましくは、50nm以下である。第2無機酸化物層8の観察面積内において、上記範囲以外の結晶粒を含んでいてもよいが、その面積割合は、好ましくは、30%以下、より好ましくは、20%以下である。より好ましくは、第2無機酸化物層8に含まれる結晶粒10は全て上記範囲の大きさの結晶粒からなる。結晶粒10の大きさは、第2無機酸化物層8を200,000倍での断面TEM画像を用いて観察した場合に、各結晶粒10がとり得る長さの最大値である。
第2無機酸化物層8に含まれる結晶粒10の中で最も大きい結晶粒10(最大結晶粒)の大きさは、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上であり、また、例えば、200nm以下、好ましくは、100nm以下である。
結晶粒の形状は限定的でなく、例えば、断面視略三角形状、断面視略矩形状などが挙げられる。
結晶粒10としては、厚み方向に第2無機酸化物層8を貫通する第1結晶粒10a、および、厚み方向に第2無機酸化物層8を貫通しない第2結晶粒10bが挙げられる。
第1結晶粒10aは、その上端が第2無機酸化物層8の上面から露出し、かつ、その下端が第2無機酸化物層8の下面から露出するように、成長した結晶粒である。第1結晶粒10aの厚み方向長さは、第2無機酸化物層8の厚みと同一である。
第2結晶粒10bは、その上端および下端の少なくとも一端が第2無機酸化物層8の表面(上面または下面)から露出しないように、成長した結晶粒である。第2結晶粒10bは、好ましくは、その上端が第2無機酸化物層8の上面から露出し、かつ、その下端が第2無機酸化物層8の下面から露出しないように、形成されている。
第2結晶粒10bの厚み方向長さの平均は、第2無機酸化物層8の厚み(T2)よりも短く、例えば、第2無機酸化物層8の厚み100%に対して、例えば、98%以下、好ましくは、90%以下、より好ましくは、80%以下であり、また、例えば、5%以上、好ましくは、10%以上、より好ましくは、20%以上である。
第2無機酸化物層8は、好ましくは、第2結晶粒10bを有する。これにより、結晶粒10の粒界が厚み方向に貫通しないため、水が粒界に沿って第2無機酸化物層8を厚み方向に通過することを抑制することができる。
第1結晶粒10aの数は、例えば、0以上、好ましくは、1以上であり、また、例えば、30以下、好ましくは、10以下である。
第2結晶粒10bの数は、好ましくは、第1結晶粒10aの数よりも多く、具体的には、好ましくは、1以上、より好ましくは、2以上、さらに好ましくは、3以上であり、また、好ましくは、50以下、より好ましくは、40以下、さらに好ましくは、30以下である。
第2無機酸化物層8の厚みT2は、例えば、5nm以上、好ましくは、20nm以上、さらに好ましくは、30nm以上であり、また、例えば、100nm以下、好ましくは、60nm以下、より好ましくは、50nm以下である。第2無機酸化物層8の厚みT2が上記範囲であれば、光透過性導電層4の可視光透過率を高い水準に調整しやすい。第2無機酸化物層8の厚みT2は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により測定される。
第2無機酸化物層8の厚みT2の、第1無機酸化物層6の厚みT1に対する比(T2/T1)は、例えば、0.5以上、好ましくは、0.75以上、また、例えば、1.5以下、好ましくは、1.25以下である。比(T2/T1)が上記した下限以上であり、かつ、上記した上限以下であれば、湿熱環境下であっても金属層7の劣化をより一層抑制することができる。
第2無機酸化物層8の厚みT2の、金属層7の厚みT3に対する比(T2/T3)は、例えば、2.0以上、好ましくは、3.0以上であり、また、例えば、10以下、好ましくは、8.0以下である。
8. 液晶調光層
液晶調光層5は、光透過性導電層4に電界を印加することによって、光透過率や色彩を変化する調光層である。
液晶調光層5は、液晶調光部材1の最上層であって、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、光透過性導電層4の上面全面に、光透過性導電層4の上面に接触するように、配置されている。
液晶調光層5は、液晶材料を含み、好ましくは、液晶カプセルを含んでいる。
液晶材料としては、公知の材料などが挙げられ、例えば、ネマティック液晶分子、スメクテッィック液晶分子、コレステリック液晶分子などが挙げられる。
これら液晶材料は、単独使用または2種以上併用することができる。
液晶カプセルは、微小粒子であり、上記した液晶材料を内包している。
また、このような液晶材料および液晶カプセルは、透明樹脂および/または分散媒によって分散されている。つまり、液晶材料および液晶カプセルは、好ましくは、高分子エマルジョンによって分散されている。
透明樹脂は、液晶材料および液晶カプセルを分散させるマトリクス樹脂であって、公知の樹脂材料などが挙げられ、特に限定はないが、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。これらの透明樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
溶媒としては、例えば、水、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2-ジメトキシベンゼンなどの芳香族炭化水素系化合物、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素系化合物、例えば、フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール系化合物、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、アニソール、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系化合物、例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2,6-ジメチル-4-ヘプタノン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンなどのケトン系化合物、例えば、n-ブタノールや2-ブタノール、シクロヘキサノール、イソプロピルアルコール、t-ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールなどのアルコール系化合物などが挙げられる。これらのうち、エマルジョン形成の観点から、好ましくは、アルコール系化合物、水、より好ましくは、水が挙げられる。これらの溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
このような透明樹脂および溶媒は、単独使用または2種以上併用することができ、好ましくは、溶媒として水を使用する。
また、このような液晶調光層5では、透明樹脂および/または溶媒の屈折率が、液晶分子における長軸方向の屈折率と同じになるように、調整されていることが好ましい。
そして、電界が印加されていない場合には、液晶カプセルに内包された液晶分子は、液晶カプセルの内壁に沿って整列する。そのため、液晶分子の配向方向が不均一となり、液晶カプセルと、透明樹脂および/または溶媒との界面で、屈折率の不整合が生じ、光が散乱する。これにより、液晶調光層5は不透明になる。
また、電界が印加されている場合には、液晶カプセルに内包された液晶分子は、電界の方向と平行に整列する。透明樹脂および/または溶媒の屈折率が、液晶分子における長軸方向の屈折率と同じになるように、調整されているため、液晶カプセルおよび透明樹脂の界面で、屈折率の不整合が生じない。これにより、液晶調光層5は透明になる。
液晶調光層5の厚みは、例えば、0.1μm以上5000μm以下である。
9. 光透過性導電フィルム
液晶調光部材1を構成する部材のうち、透明基材2、保護層3および光透過性導電層4は、本発明の光透過性導電フィルム9の一実施形態を構成する。
すなわち、図3に示すように、光透過性導電フィルム9は、厚み方向において、順に、透明基材2と、保護層3と、光透過性導電層4とを備える積層フィルムである。つまり、光透過性導電フィルム9は、透明基材2と、透明基材2の上側に配置される保護層3と、保護層3の上側に配置される光透過性導電層4とを備える。好ましくは、光透過性導電フィルム9は、透明基材2と、保護層3と、光透過性導電層4とのみからなる。
光透過性導電フィルム9は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)をなし、面方向に延び、平坦な上面および平坦な下面を有する。光透過性導電フィルム9は、液晶調光部材1を作製するための部品であり、具体的には、液晶調光部材1に用いられる電極基板である。光透過性導電フィルム9は、液晶調光層5を含まず、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。また、光透過性導電フィルム9は、可視光を透過するフィルムであって、透明導電性フィルムを含む。
光透過性導電フィルム9は、熱収縮された光透過性導電フィルム9であってもよく、非加熱、すなわち、未収縮の光透過性導電フィルム9であってもよい。耐屈曲性に優れる観点から、好ましくは、熱収縮された光透過性導電フィルム9である。
光透過性導電フィルム9の総厚みは、例えば、2μm以上、好ましくは、20μm以上であり、また、例えば、300μm以下、好ましくは、200μm以下、より好ましくは、150μm以下である。
10. 液晶調光部材の製造方法
次に、液晶調光部材1を製造する方法を説明する。
液晶調光部材1を製造するには、まず、光透過性導電フィルム9を作製し、次いで、光透過性導電フィルム9に液晶調光層5を配置する。
光透過性導電フィルム9は、例えば、透明基材2の上に、保護層3と、光透過性導電層4とを、上記した順序で配置することにより、得られる。
この方法では、図1が参照されるように、まず、透明基材2を用意する。
透明基材2(高分子フィルム)における水分量は限定的でないが、例えば、10μg/cm以上、好ましくは、15μg/cm以上であり、また、例えば、200μg/cm以下、好ましくは、170μg/cm以下である。水分量が上記した下限以上であれば、第1無機酸化物層6に水素原子などを付与して、後述する加熱によって第1無機酸化物層6が結晶化することを抑制して、第1無機酸化物層6の非晶質性を維持しやすい。また、水分量が上記した上限以下であれば、加熱工程などにより、結晶粒10を含有する第2無機酸化物層8を確実に得ることができる。透明基材2における水分量は、JIS K 7251(2002年)B法-水分気化法に準じて測定される。
また、透明基材2(高分子フィルム)に含有される水の、透明基材2に対する含有量は、例えば、0.05質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上であり、また、例えば、1.5質量%以下、好ましくは、1.0質量%以下、より好ましくは、0.5質量%以下である。
なお、上記した水の一部または全部は、後で説明する脱ガス処理において外部に放出される。
次いで、樹脂組成物を透明基材2の上面に、例えば、湿式により、配置する。
具体的には、まず、樹脂組成物を透明基材2の上面に塗布する。その後、樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性樹脂を含有する場合には、活性エネルギー線を照射する。
これによって、フィルム形状の保護層3を、透明基材2の上面全面に形成する。つまり、透明基材2と保護層3とを備える保護層付透明基材を得る。
その後、必要により、保護層付透明基材を脱ガス処理する。
保護層付透明基材を脱ガス処理するには、保護層付透明基材を、例えば、1×10-1Pa以下、好ましくは、1×10-2Pa以下、また、例えば、1×10-6Pa以上の減圧雰囲気下に放置する。脱ガス処理は、例えば、乾式の装置に備えられる排気装置(具体的には、ターボ分子ポンプなど)を用いて、実施される。
この脱ガス処理によって、透明基材2に含有される水の一部や、保護層3に含有される有機物の一部が、外部に放出される。
次いで、光透過性導電層4を保護層3の上面に、例えば、乾式により、配置する。
具体的には、第1無機酸化物層6、金属層7および第2無機酸化物層8のそれぞれを、順に、乾式により、配置する。
乾式としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。好ましくは、スパッタリング法が挙げられる。具体的には、マグネトロンスパッタリング法が挙げられる。
スパッタリング法で用いられるガスとしては、例えば、Arなどの不活性ガスが挙げられる。また、必要に応じて、酸素などの反応性ガスを併用することができる。反応性ガスを併用する場合において、反応性ガスの流量比は、特に限定されず、反応性ガスの流量の、不活性ガスの流量に対する比で、例えば、0.1/100以上、好ましくは、1/100以上であり、また、例えば、5/100以下である。
具体的には、第1無機酸化物層6の形成において、ガスとして、好ましくは、不活性ガスおよび反応性ガスが併用される。金属層7の形成において、ガスとして、好ましくは、不活性ガスが単独使用される。第2無機酸化物層8の形成において、ガスとして、好ましくは、不活性ガスおよび反応性ガスが併用される。
第1無機酸化物層6や第2無機酸化物層8が、酸化インジウムを含有する場合、各層の抵抗挙動は、反応性ガスの導入量に依存して変化し、反応性ガス導入量(x軸)-表面抵抗値(y軸)のグラフにおいて、下に凸となる放物線を描く。このとき、第1無機酸化物層6や第2無機酸化物層8が含有する反応性ガスの量は、抵抗値が最小値(すなわち、放物線の変曲点)付近となる導入量であることが好ましく、具体的には、抵抗値が最小値となる導入量±20%の導入量であることが好ましい。
スパッタリング法を採用する場合、ターゲット材としては、各層を構成する上述の無機酸化物または金属が挙げられる。
スパッタリング法で用いられる電源には限定はなく、例えば、DC電源、MF/AC電源およびRF電源の単独使用または併用が挙げられ、好ましくは、DC電源が挙げられる。
また、好ましくは、第1無機酸化物層6をスパッタリング法で形成するとき、透明基材2(および保護層3)を冷却する。具体的には、透明基材2の下面を、冷却装置(例えば、冷却ロール)などに接触させて、透明基材2(および保護層3)を冷却する。これによって、第1無機酸化物層6を形成するときに、スパッタリングにより生じる蒸着熱などで透明基材2に含有される水、および、保護層3に含有される有機物が、多量に放出され、水が第1無機酸化物層6に過剰に含まれることを抑制することができる。冷却温度は、例えば、-30℃以上、好ましくは、-10℃以上であり、また、例えば、60℃以下、好ましくは、40℃以下、より好ましくは、30℃以下、さらに好ましくは、20℃以下、特に好ましくは、0℃未満である。また、好ましくは、第1無機酸化物層6、金属層7および第2無機酸化物層8は、いずれも、上記温度範囲で冷却しながら、スパッタリング形成される。これにより、金属層7の凝集や第2無機酸化物層8の過剰酸化を抑制できる。
これにより、第1無機酸化物層6、金属層7および第2無機酸化物層8が、厚み方向において、順に形成された光透過性導電層4を、保護層3の上に形成して、光透過性導電層積層体が得られる。このとき、成膜直後(例えば、光透過性導電層積層体形成後24時間以内)の第1無機酸化物層6および第2無機酸化物層8は、いずれも、結晶粒10を含有していない。
次いで、第2無機酸化物層8が、結晶粒10を含有する場合には、第2無機酸化物層8に結晶粒10を発生させる結晶化工程を実施する。結晶化工程は、結晶粒10を形成できれば限定的でないが、例えば、加熱工程が挙げられる。すなわち、光透過性導電層積層体を加熱する。
なお、加熱工程は、上記結晶粒10を発生させることを目的とした加熱のみならず、光透過性導電層積層体のカール除去や、銀ペースト配線の乾燥形成などに伴って付随的に実施される加熱であってもよい。
加熱温度は適宜設定でき、例えば、30℃以上、好ましくは、40℃以上、より好ましくは、80℃以上であり、また、例えば、180℃以下、好ましくは、150℃以下である。
加熱時間は限定的でなく、加熱温度に応じて設定されるが、例えば、1分以上、好ましくは、10分以上、より好ましくは、30分以上であり、また、例えば、4000時間以下、好ましくは、100時間以下である。
加熱は、大気雰囲気下、不活性雰囲気下、真空下のいずれで実施してもよいが、結晶化を容易にする観点から、好ましくは、大気雰囲気下で実施する。
この加熱工程により、第2無機酸化物層8が結晶化され、第2無機酸化物層8内に結晶粒10が存在する。特に、第2無機酸化物層8が、結晶粒10を含有する場合には、第2無機酸化物層8は、透明基材2と第2無機酸化物層8との間に介在する金属層7が、結晶化を阻害する透明基材2からの水や保護層3からの有機物をバリヤし、かつ、加熱工程時に露出していることによって結晶化に必要な酸素を取り込みやすいため、第2無機酸化物層8は、容易に結晶化することができる。なお、第1無機酸化物層6は、水や有機物の影響が大きく、また、酸素を取り込みにくいため、結晶粒10の成長が阻害され、非晶質性を維持する。
これによって、図1に示すように、厚み方向において、透明基材2と、保護層3と、光透過性導電層4(第1無機酸化物層6、金属層7および第2無機酸化物層8)とを順に備え、第2無機酸化物層8のみが結晶粒10を含有する光透過性導電フィルム9が得られる。
次いで、光透過性導電フィルム9に、液晶調光層5を配置する。
液晶調光層5は、公知の材料を用いることができる。
液晶調光層5と、第2無機酸化物層8とが接触するように、液晶調光層5を光透過性導電フィルム9の上面に配置する。
これによって、図1に示すように、透明基材2と、保護層3と、光透過性導電層4と、液晶調光層5とを、厚み方向において、順に備える液晶調光部材1が得られる。
なお、上記した製造方法を、ロールトゥロール方式で実施できる。また、一部または全部をバッチ方式で実施することもできる。
また、光透過性導電層4は、必要に応じて、エッチングによって、配線パターンなどのパターン形状に形成することもできる。
11. 作用効果
液晶調光部材1によれば、光透過性導電層4は、近赤外線領域の反射率が高い金属層7を備える。そのため、光透過性導電層4は、例えば、導電性酸化物のみからなる場合と比較して近赤外線の平均反射率が高く、太陽光などの熱線を液晶調光層5から効率的に遮断でき、太陽光の影響を受ける環境(屋外など)で利用できる。
また、液晶調光部材1によれば、光透過性導電層4が導電性を有するため、電極として用いることができる。さらに、液晶調光部材1では、透明基材2の表面に、IR反射層を貼り付けなくても、近赤外線反射特性に優れる。そのため、液晶調光部材の厚みを薄くすることができ、また、製造コストを低減することができる。
また、液晶調光部材1によれば、透明基材2の表面に、IR反射層を貼り付けなくても、近赤外線反射特性に優れる。そのため、液晶調光部材1の厚みを薄くすることができ、また、製造コストを低減することができる。
液晶調光部材1によれば、光透過性導電層4は、結晶粒10を含有する第2無機酸化物層8を備える。そのため、液晶調光層5が、溶媒として水を含有する場合には、その水が、第2無機酸化物層8を厚み方向に通過して金属層7に浸入することを抑制することができる。
液晶調光部材1によれば、第2無機酸化物層が7、非晶質部11および結晶質部12を有する半結晶質膜である。そのため、湿熱耐久性がより一層優れる。
光透過性導電フィルム9によれば、光透過性導電層4は、近赤外線領域の反射率が高い金属層7を備える。そのため、光透過性導電フィルム9が、上記した液晶調光部材1に用いられる場合には、光透過性導電層4は、例えば、導電性酸化物のみからなる場合と比較して近赤外線の平均反射率が高く、太陽光などの熱線を液晶調光層5から効率的に遮断でき、太陽光の影響を受ける環境(屋外など)で利用できる。
また、光透過性導電フィルム9では、光透過性導電層4が導電性を有するため、電極として用いることができる。さらに、透明基材2の表面に、IR反射層を貼り付けなくても、近赤外線反射特性に優れる。そのため、光透過性導電フィルム9の厚みを薄くすることができ、また、製造コストを低減することができる。
12.液晶調光素子
液晶調光素子13は、所定の厚みを有するフィルム形状(シート形状を含む)をなし、厚み方向と直交する所定方向(前後方向および左右方向、すなわち、面方向)に延び、平坦な上面および平坦な下面(2つの主面)を有する。液晶調光素子13は、例えば、調光装置に備えられる調光パネルなどの一部品であり、つまり、調光装置ではない。すなわち、液晶調光素子13は、調光装置などを作製するための部品であり、LEDなどの光源や外部電源を含まず、部品単独で流通し、産業上利用可能なデバイスである。
具体的には、図4に示すように、液晶調光素子13は、液晶調光部材1および電極基板(上側電極基板)14を備える積層フィルムである。つまり、液晶調光素子13は、液晶調光部材1と、液晶調光部材1の上側に配置される電極基板14とを備える。好ましくは、液晶調光素子13は、液晶調光部材1と、電極基板14とのみからなる。以下、各層について詳述する。
電極基板14は、上述した光透過性導電フィルム9であり、厚み方向において、順に、光透過性導電層4、保護層3および透明基材2を備える。電極基板14は、液晶調光部材1の上側に配置されている。具体的には、電極基板14は、液晶調光層5の上面(下側の光透過性導電フィルム9の透明基材2に対して反対側の表面)の全面に、液晶調光層5の上面と光透過性導電層4の下面とが接触するように、配置されている。
すなわち、液晶調光素子13では、2枚の光透過性導電フィルム9が、それぞれの光透過性導電層4が液晶調光層5の表面(下面または上面)と接触するように、対向配置されている。
液晶調光素子13は、上記した液晶調光部材1を備える。そのため、液晶調光素子13は、太陽光などの熱線を液晶調光層5から効率的に遮断でき、太陽光の影響を受ける環境(屋外など)で利用できる。
また、液晶調光素子13は、上記した液晶調光部材1を備える。そのため、液晶調光素子13の厚みを薄くすることができ、また、製造コストを低減することができる。
16. 変形例
変形例において、上記した実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
液晶調光部材1の一実施形態では、図1に示すように、保護層3を、透明基材2および第1無機酸化物層6の間に介在させている。しかし、例えば、図5に示すように、第1無機酸化物層6を透明基材2の上面に直接配置することもできる。つまり、液晶調光部材1は、厚み方向において、順に、透明基材2、光透過性導電層4および液晶調光層5を備えている。一方、液晶調光部材1は、保護層3を備えていない。
液晶調光部材1の一実施形態では、図1に示すように、第1無機酸化物層6を保護層3の上面に直接配置している。しかし、例えば、図6に示すように、無機物層15を、保護層3および第1無機酸化物層6の間に介在させることもできる。
無機物層15は、保護層3とともに、光透過性導電層4における配線パターンの視認を抑制するように、液晶調光部材1の光学物性を調整する光学調整層である。無機物層15は、フィルム形状(シート形状を含む)を有しており、保護層3の上面全面に、保護層3の上面に接触するように、配置されている。無機物層15は、所定の光学物性を有し、例えば、酸化物、フッ化物などの無機物から調製されている。無機物層15の厚みは、1nm以上、好ましくは、5nm以上、より好ましくは、10nm以上であり、また、例えば、200nm以下、好ましくは、80nm以下、より好ましくは、40nm以下、さらに好ましくは、25nm以下である。
液晶調光部材1の一実施形態では、図1に示すように、光透過性導電層4は、第1無機酸化物層6と、金属層7と、第2無機酸化物層8とのみを備えている。しかし、例えば、図示しないが、第2無機酸化物層8の上面に、さらに、第2金属層と、第3無機酸化物層とを順に配置することもでき、さらには、第3無機酸化物層の上面に、第3金属層と、第4無機酸化物層とを配置することもできる。
また、図示しないが、透明基材2の上面および/または下面には、例えば、防汚層、密着、撥水層、反射防止層、オリゴマー防止層などの機能層を配置することもできる。
機能層は、好ましくは、上記した樹脂組成物を含み、より好ましくは、樹脂組成物からなる。
また、光透過性導電層4と液晶調光層5との間には、絶縁層(図示せず)(好ましくは、厚みが50nm以下)が全部または一部に配置されていてもよい。絶縁層は、例えば、樹脂組成物や無機酸化物などからなる。
液晶調光部材1の一実施形態では、図1に示すように、液晶調光部材1は、透明基材2を備えているが、透明基材2は、他の着色基材(図示せず)と貼り合せられていてもよい。例えば、透明基材2の光透過性導電層4の反対側に、偏光子や偏光フィルムを配置してもよい。偏光子や偏光フィルムは、例えば、粘着層もしくは接着層を介して、透明基材2に貼り合わせることができる。
このような機能層は、必要な機能に応じて適宜選択される。
なお、上記変形例は、液晶調光部材1について説明したが、光透過性導電フィルム9および液晶調光素子13についても同様である。
また、液晶調光素子13では、図3に示すように、上側電極基板14として、本発明の光透過性導電フィルム9を用いているが、例えば、図示しないが、上側電極基板14は、透明基材2と、単一の導電層とから構成することもできる。単一の導電層としては、例えば、ITO膜(結晶質ITO膜、非晶質ITO膜)、IGO膜、IGZO膜などが挙げられる。
以下に実施例比較例および参考比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例比較例および参考比較例に限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
[光透過性導電フィルム]
実施例1
(フィルム基材の用意、および、保護層の形成)
まず、長尺状ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなり、厚みが50μmである透明基材を用意した。
次いで、透明基材の上面に、アクリル樹脂からなる紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線照射により硬化させて、硬化樹脂層からなり、厚みが2μmである保護層を形成した。これにより、透明基材と、保護層とを備える保護層付透明基材ロールを得た。
(第1無機酸化物層の形成)
次いで、保護層付透明基材ロールを真空スパッタ装置に設置して、未搬送時の気圧が2×10-3Paとなるまで真空排気した(脱ガス処理)。この時、スパッタリングガス(ArおよびO)を導入しない状態で、保護層付透明基材の一部を搬送し、1×10-2Paまで気圧が上がることを確認した。これにより、保護層付透明基材ロールに十分な量のガスが残存していることを確認した。
次いで、保護層付透明基材ロールを繰り出しながら、硬化樹脂層の上面に、スパッタリングにより、非晶質ITOからなり、厚みが40nmである第1無機酸化物層を形成した。
具体的には、ArおよびOを導入した気圧0.2Paの真空雰囲気下(流量比はAr:O=100:3.8)で、直流(DC)電源を用いて、12質量%の酸化スズと88質量%の酸化インジウムとの焼結体からなるターゲットをスパッタリングした。
なお、スパッタリングにより第1無機酸化物層を形成するとき、保護層付透明基材ロールの下面(具体的には、透明基材の下面)を、-5℃の冷却ロールに接触させて、保護層付透明基材ロールを冷却した。
(金属層の形成)
Ag合金からなり、厚みが8nmである金属層を、スパッタリングにより、第1無機酸化物層の上面に形成した。
具体的には、Arを導入した気圧0.4Paの真空雰囲気で、電源として、直流(DC)電源を用い、Ag合金(三菱マテリアル社製、品番「No.317」)をスパッタリングした。
(第2無機酸化物層の形成)
ITOからなり、厚みが38nmである第2無機酸化物層を、金属層の上面に、スパッタリングにより、形成した。
具体的には、ArおよびOを導入した気圧0.2Paの真空雰囲気下(流量比はAr:O=100:4.0)で、直流(DC)電源を用いて、12質量%の酸化スズと88質量%の酸化インジウムとの焼結体からなる、ITOターゲットをスパッタリングした。
その後、大気雰囲気下で80℃、12時間の条件で、加熱工程を実施した。これにより、第2無機酸化物層を結晶化した。
これによって、透明基材の上に、厚み方向に対して、順に、保護層、第1無機酸化物層、金属層および第2無機酸化物層が形成された光透過性導電フィルムを得た。
実施例2
ArおよびOの流量比はAr:O=100:3.1とし、12質量%の酸化スズと88質量%の酸化インジウムとの焼結体からなる、ITOターゲットをスパッタリングすることにより、第2無機酸化物層を形成した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光透過性導電フィルムを得た。
参考比較例3
第2無機酸化物層における加熱工程を実施しなかった以外は、実施例1と同様にして、実施例3の光透過性導電フィルムを得た。
比較例1
スパッタ時のArおよびOの流量比をAr:O=100:1.0とし、第2無機酸化物層の厚みを表1の記載の厚みに変更し、かつ、第1無機酸化物層および金属層を形成することなく、光透過性導電層を形成し、その後、大気雰囲気下で140℃、1時間の加熱工程を実施したこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の光透過性導電フィルムを得た。
[液晶調光素子]
(製造例1)
実施例1の光透過性導電フィルムと、比較例1の光透過性導電フィルムとを用意した。次いで、ネマチック液晶と樹脂とが混合された塗工液を用意した。次いで、塗工液を実施例1の光透過性導電フィルムの上面に塗布し、液晶調光層を形成した。その後、液晶調光層の上面に、比較例1の光透過性導電フィルムを積層し、製造例1の液晶調光素子を製造した。
得られた液晶調光素子の端部の液晶調光層を除去した後、導電性銅箔粘着テープ(寺岡製作所製 商品名No8323)を液晶調光層が除去された部分に貼り電圧をかけたところ、電界の有無により透過性の変化が視認され、調光素子として機能することを確認した。
(製造例2)
実施例1の光透過性導電フィルムを実施例2の光透過性導電フィルムに変更した以外は、製造例1と同様にして、製造例2の液晶調光素子を製造した。
(製造例3)
実施例1の光透過性導電フィルムを参考比較例3の光透過性導電フィルムに変更した以外は、製造例1と同様にして、製造例3の液晶調光素子を製造した。
(製造比較例1)
比較例1の光透過性導電フィルムを2枚用意し、それぞれの光透過性導電層が液晶調光層の表面(上面または下面)と接触するように積層した以外は、製造例1と同様にして製造比較例1の液晶調光素子を製造した。
(測定)
(1)厚み
保護層、第1無機酸化物層、金属層および第2無機酸化物層の厚みを、透過型電子顕微鏡(日立社製、HF-2000)を用いた断面観察により測定した。また、透明基材の厚みを、膜厚計(Peacock社製 デジタルダイアルゲージDG-205)を用いて測定した。
(2)断面TEMによる結晶粒の観察
透過型電子顕微鏡(日立社製、「HF-2000」、倍率200,000倍)を用いて、第1無機酸化物層および第2無機酸化物層の断面を観察した。そのときの断面図の面方向距離500nm当たりにおける結晶粒の数を数えた。また、無機酸化物層に生じた結晶粒の最大結晶粒の長さを測定した。その結果を表1に示す。
(3)平面TEMによる結晶粒の観察
断面TEMにより結晶粒が確認された各実施例比較例および各参考比較例の光透過性導電フィルムにおいて、透過型電子顕微鏡(日立社製、「H-7650」)を用いて、第2無機酸化物層の上面を観察し、倍率:100,000倍の平面画像を得た。次に、第2無機酸化物層全体の面積に対する、結晶粒(結晶化している箇所)の面積の割合を測定した。その結果を表1に示す。なお、実施例1においては、第2結晶粒の数が、第1結晶粒の数よりも多かった。
(4)湿熱耐久性
各実施例各比較例および各参考比較例の光透過性導電フィルムを10cm×10cmのサイズに切り出し、光透過性導電層上に粘着層(日東電工社製、「CS9904U」)を形成して、ガラス基板に貼り合せた後、60℃、95%RHの条件で240時間、放置した。その後、中央8cm×8cm部分の光透過性導電層の上面を目視観察した。
このとき、以下の基準に基づいて、外観評価を実施した。
◎:白色の点状欠点(凝集、腐食箇所)が、観察されない(0個)。
○:白色の点状欠点が0個超、5個以下である。
×:白色の点状欠点が5個超である。
その結果を表1に示す。
(5)近赤外線反射特性
各実施例各比較例および各参考比較例の光透過性導電フィルムについて、近赤外線(波長850~2500nm)の平均反射率を測定した。
このとき、以下の基準に基づいて、平均反射率の評価を実施した。
○:平均反射率が30%以上である。
△:平均反射率が、15%以上30%未満である。
×:平均反射率が15%未満である。
その結果を表1に示す。
Figure 0007046497000001

1 液晶調光部材
2 透明基材
4 光透過性導電層
5 液晶調光層
6 第1無機酸化物層
7 金属層
8 第2無機酸化物層
9 光透過性導電フィルム
13 液晶調光素子

Claims (4)

  1. 透明基材と、光透過性導電層と、液晶調光層と順に備え、
    前記光透過性導電層は、第1無機酸化物層と、金属層と、第2無機酸化物層とを順に備え、
    前記第1無機酸化物層は、結晶粒を含有せず、
    前記第2無機酸化物層は、結晶粒を含有することを特徴とする、液晶調光部材。
  2. 前記第2無機酸化物層が、非晶質部および結晶質部を有する半結晶質膜であることを特徴とする、請求項1に記載の液晶調光部材。
  3. 請求項1または2に記載の液晶調光部材に用いるための光透過性導電フィルムであって、
    透明基材と、光透過性導電層とを順に備え、
    前記光透過性導電層は、第1無機酸化物層と、金属層と、第2無機酸化物層とを順に備え
    前記第1無機酸化物層は、結晶粒を含有せず、
    前記第2無機酸化物層は、結晶粒を含有することを特徴とする、光透過性導電フィルム。
  4. 請求項1または2に記載の液晶調光部材と、
    前記透明基材に対して、前記液晶調光層の反対側の表面に設けられる電極基板と
    を備えることを特徴とする、液晶調光素子。
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