JP7045643B2 - ガラス物品の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ガラス物品の製造方法及び製造装置に関し、特に成形体に至る溶融ガラスの流路を改良することで、ガラス物品の成形不良を抑制又は防止するための技術に関する。
周知のように、ガラスロールやガラス板の製造ラインは、溶融ガラスが流れる溶融ラインと、ガラスリボンが流れる加工ラインとからなる。この場合、溶融ラインは、例えば、上流側から順に、溶解槽と、清澄槽と、撹拌槽などの均質化槽と、状態調整槽と、成形体とを備えると共に、これら各槽と成形体とが溶融ガラスの供給管となる接続管で接続された構成をなす(例えば特許文献1を参照)。
特開2016-88754号公報
ところで、上述した溶融ラインを備えた製造ラインを稼働した場合、成形体を経て得られるガラスリボンの有効部(成形体の後に続く加工ラインにおいて切断等により除去されるガラスリボンの幅方向両端部を除いた部分を指す。以下、本明細書において同じ。)に、脈理と呼ばれる筋状の成形不良部が現れる場合がある。しかしながら、この種の成形不良がどのような原因で発生しているのか、これまで詳細な調査が成されたことがなく、そのために、有効な対策も講じることもできなかった。
以上の事情に鑑み、本発明では、ガラスリボンの有効部に成形不良が発生する事態を防止して、製品の歩留まりを向上させることを、解決すべき技術課題とする。
前記課題の解決は、本発明に係るガラス物品の製造方法により達成される。すなわち、この製造方法は、溶融ガラス生成装置で溶融ガラスを生成する生成工程と、生成した溶融ガラスに均質化槽で均質化処理を施す均質化工程と、均質化処理を施した溶融ガラスの状態を状態調整槽で調整する状態調整工程と、状態の調整がなされた溶融ガラスを成形体に供給してガラスリボンを成形する成形工程とを備える、ガラス物品の製造方法において、均質化槽と状態調整槽とは、第一の接続管で接続され、第一の接続管は、本体部と、本体部と状態調整槽の間に位置し、本体部側から状態調整槽側に向けて横断面積が漸次変化する断面積変化部とを有する点をもって特徴付けられる。
本発明者らが鋭意検討を行った結果、均質化槽の底部あるいは状態調整槽の上部に停滞する溶融ガラスが成形体のガラスリボンの有効部となる領域に流れ込むことによって、脈理と呼ばれる成形不良部が発生していることが判明した。また、上述の現象が、第一の接続管と状態調整槽との接続部分において溶融ガラスの流路の断面積の急激な変化による速度差に伴って剥離流が発生することに起因する、との推論に基づき、更なる鋭意検討を行った結果、本発明者らは、第一の接続管と状態調整槽との接続部において、その断面積を急激に変化させるのではなく、第一の接続管側から状態調整槽側に向けて徐々に変化させることで、剥離流の発生を抑制し(あるいは防止して)、上記停滞領域の溶融ガラスが、ガラスリボンの有効部となる領域を避けて成形体に流れ込むことが可能になることを知得するに至った。
本発明は、上述した一連の知見に基づき成されたもので、均質化槽と状態調整槽とを接続する第一の接続管と、状態調整槽との接続部に着目し、第一の接続管が、本体部と状態調整槽側の間に位置し、本体部側から状態調整槽側に向けて横断面積が漸次変化する断面積変化部を有するようにしたことを特徴とする。上記構成によれば、第一の接続管の断面積変化部を通じて状態調整槽に流入した溶融ガラスに剥離流が発生する事態を可及的に防止して、例えば均質化槽の底部に停滞する溶融ガラスを、成形体のうちガラスリボンの幅方向両端部となる領域に流れ込ませることができる。以上より、本発明に係る製造方法によれば、成形不良の原因となる異質な溶融ガラスが加工後のガラスリボンに残って、製品としてのガラス物品の品質低下を招く事態を可及的に防止することが可能となる。
また、本発明に係るガラス物品の製造方法においては、状態調整槽は、第一の接続管が接続され、第一の接続管から溶融ガラスが流入する上部と、状態の調整がなされた溶融ガラスが流出する下部とを備え、第一の接続管の本体部の横断面積が、状態調整槽の上部の横断面積の0.75倍以上でかつ1.25倍以下に設定されていてもよい。
上述のように、断面積変化部の上流側と下流側とで、溶融ガラスの流路の断面積比を定めれば、剥離流の発生をさらに防止できる。従って、停滞領域の溶融ガラスが、成形体のうちガラスリボンの有効部となる領域に流れ込む事態をより確実に防止することが可能となる。
また、本発明に係るガラス物品の製造方法においては、断面積変化部が、本体部側から状態調整槽側に向けて横断面積が漸次拡大する内面形状をなすものであってもよい。
このように、断面積変化部の横断面積が漸次拡大する内面形状とすることによって、剥離流の発生をさらに防止できる。従って、停滞領域の溶融ガラスが、成形体のうちガラスリボンの有効部となる領域に流れ込む事態をより確実に防止することが可能となる。
また、横断面積が漸次拡大する内面形状をなす場合、本発明に係るガラス物品の製造方法においては、断面積変化部の縦断面形状が円弧状であってもよい。
このように断面積変化部の縦断面形状を円弧状とすることによって、剥離流の発生をさらに防止できる。従って、このことによっても、停滞領域の溶融ガラスが、成形体のうちガラスリボンの有効部となる領域に流れ込む事態をより確実に防止することが可能となる。
また、本発明に係るガラス物品の製造方法においては、断面積変化部の横断面積が漸次拡大する内面形状をなす場合、第一の接続管の本体部の横断面積が、状態調整槽の上部の横断面積の0.75倍以上でかつ0.96倍以下に設定されていてもよい。
上述のように、断面積変化部の上流側と下流側とで、溶融ガラスの流路の断面積比を定めることによっても、剥離流の発生をさらに防止できる。従って、停滞領域の溶融ガラスが、成形体のうちガラスリボンの有効部となる領域に流れ込む事態をより確実に防止することが可能となる。
また、本発明に係るガラス物品の製造方法においては、状態調整槽の下部と成形体とが、第二の接続管で接続され、状態調整槽の下部の横断面積が、第二の接続管の状態調整槽側の端部の横断面積の0.75倍以上でかつ0.96倍以下に設定されていてもよい。
ここで、状態調整槽と成形体との接続部において、剥離流が発生することにより、停滞領域の溶融ガラスが、ガラスリボンの有効部となる領域に流れ込む懸念がある。上述のように、状態調整槽と成形体との接続部において、その上流側と下流側とで、溶融ガラスの流路の断面積比を定めることによって、上記懸念を払拭できる。従って、このことによっても、停滞領域の溶融ガラスが、成形体のうちガラスリボンの有効部となる領域に流れ込む事態をより確実に防止することが可能となる。
また、本発明に係るガラス物品の製造方法においては、断面積変化部を通過する溶融ガラスの粘度が800Pa・s以上に設定されていてもよい。
ここで、溶融ガラスの粘度が小さいほど、剥離流が発生しやすい。上述のように、断面積変化部を通過する溶融ガラスの粘度を大きくすることにより、剥離流の発生をさらに防止でき、停滞領域の溶融ガラスが、成形体のうちガラスリボンの有効部となる領域に流れ込む事態をより確実に防止することが可能となる。
また、前記課題の解決は、本発明に係るガラス物品の製造装置によっても達成される。すなわち、この製造装置は、溶融ガラスを生成する溶融ガラス生成装置と、生成した溶融ガラスに均質化処理を施す均質化槽と、均質化処理を施した溶融ガラスの状態を調整する状態調整槽と、状態の調整がなされた溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形体とを備えるガラス物品の製造装置において、均質化槽と状態調整槽とは、第一の接続管で接続され、第一の接続管は、本体部と、本体部と状態調整槽の間に位置し、本体部側から状態調整槽側に向けて横断面積が漸次変化する断面積変化部とを有する点をもって特徴付けられる。
このように、本発明に係る製造装置においても、第一の接続管の本体部と状態調整槽とが、本体部側から状態調整槽側に向けて横断面積が漸次変化する断面積変化部を介して接続されることによって、断面積変化部を通じて状態調整槽に流入した溶融ガラスに剥離流が発生する事態を可及的に防止して、例えば均質化槽の底部に停滞する溶融ガラスを、成形体のうちガラスリボンの幅方向端部となる領域に流れ込ませることができる。以上より、本発明に係る製造装置によれば、成形不良の原因となる異質な溶融ガラスが加工後のガラスリボンに残って、製品としてのガラス物品の品質低下を招く事態を可及的に防止することが可能となる。
本発明によれば、ガラスリボンの有効部に成形不良が発生する事態を防止することができるので、ガラスリボンを加工してなる製品の歩留まりを向上させることが可能となる。
本発明の一実施形態に係るガラス物品の製造装置の要部を正面から見た図である。 図1に示す製造装置の要部を平面視した図である。 図1に示す第一の接続管と状態調整槽との接続構造を拡大した断面図である。 図1及び図3に示す接続構造を備えたガラス物品の製造装置において、停滞領域の溶融ガラスが成形体内部に至るまでの流れを模式的に描いた正面図である。
以下、本発明の一実施形態を図1~図4に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係るガラス物品の製造装置1を正面から見た図、図2は、同じガラス物品の製造装置1を平面視した図である。これらの図に示すように、この製造装置1は、大別して溶融ガラスGmが流れる溶融ライン2と、成形されたガラスリボンGrの加工ライン3とを備える。このうち、溶融ライン2は、最上流域に配置された溶融ガラス生成装置としての溶解槽4と、溶解槽4の下流側に配設される清澄槽5と、清澄槽5の下流側に配設される均質化槽6と、均質化槽6の下流側に配設される状態調整槽7と、状態調整槽7のさらに下流側に配設される成形体8と、各槽4~7、及び成形体8の間を接続する接続管9~12とを備える。
また、加工ライン3は、例えば、何れも図示は省略するが、成形体8の下方に位置し、成形体8で成形したガラスリボンGrに徐冷処理を施す徐冷処理部と、徐冷処理が施されたガラスリボンGrを所定の温度、例えば室温付近にまで冷却する冷却部と、ガラスリボンGrを所定の長さ毎に幅方向に沿って切断することにより、ガラスリボンGrからガラス板を順次切り出す第一切断部と、切断によってガラス板の幅方向両端部(耳部ともいう。以下、本明細書において同じ。)を除去する第二切断部とを備える。もちろん、上述の構成は一例にすぎず、上述した構成要素の一部を変更、省略してもよく、あるいは上記以外の構成要素を必要に応じて追加してもよい。以下、溶融ライン2について、均質化槽6と状態調整槽7との接続構造を中心に説明する。
溶解槽4は、投入されたガラス原料を溶解して、溶融ガラスGmを生成する生成工程を行うための容器である。溶解槽4は、接続管9によって清澄槽5に接続されている。
清澄槽5は、接続管9を介して溶解槽4から供給された溶融ガラスGmを清澄剤等の働きにより清澄する清澄工程を行うための容器である。清澄槽5は、接続管10によって均質化槽6に接続されている。
均質化槽6は、清澄された溶融ガラスGmを、例えば撹拌することにより均一化する均質化工程を行うための容器である。均質化槽6は、接続管11によって状態調整槽7に接続されている。この接続管11が本発明に係る第一の接続管に相当する。なお、均質化槽6は、図示のように一つであってもよいし、二つ以上並べて配設してもよい。接続管11と状態調整槽7との詳細な接続構造については、後述する。
状態調整槽7は、溶融ガラスGmを成形に適した状態に調整する状態調整工程を行うための容器であり、例えば成形体8に供給する溶融ガラスGmの流量を調整する。状態調整槽7は、接続管11が接続され、接続管11から溶融ガラスGmが流入する上部7aと、状態の調整がなされた溶融ガラスGmが流出する下部7bと、上部7aと下部7bとを繋ぐ中間部7cとを備える。上部7aの側面には、溶融ガラスGmを流入させるための開口部が設けられる。上部7aと下部7bの断面積は、いずれも一定であり、上部7aの断面積は、下部7bの断面積よりも大きい。また、中間部7cの断面積は、上下方向で漸次変化する(下方に向けて漸次縮小する)。状態調整槽7の下部7bは、接続管12によって成形体8に接続されている。この接続管12が本発明に係る第二の接続管に相当する。状態調整槽7と接続管12との詳細な接続構造については、後述する。
成形体8は、溶融ガラスGmを所望の形状に成形する。本実施形態では、成形体8は、オーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGmを帯状に成形する。詳細には、成形体8は、断面が略楔形状をなし、その上部にオーバーフロー溝8a(図2を参照)を有すると共に、オーバーフロー溝8aから溢れ出た溶融ガラスGmを流下させる両側面8b,8bとを有する。上記構成に係る成形体8は、両側面8b,8bに沿って流下させた溶融ガラスGmを両側面8b,8bの下頂部で融合させ、帯状のガラスリボンGrに成形可能としている。成形されたガラスリボンGrは、例えば、厚みが0.01~2mm(好ましくは0.5mm以下)であって、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ、有機EL照明、太陽電池などの基板や保護カバーに利用される。
接続管9~12は、例えば白金又は白金合金からなる円筒管で構成されており、溶解槽4から溶融ガラスGmを下流側に隣接する各槽5~7、並びに成形体8に順次移送する。
図3は、接続管11と状態調整槽7との接続構造、並びに状態調整槽7と接続管12との接続構造を正面方向から拡大して断面視した図である。図3に示すように、接続管11は、本体部11aと、本体部11aと状態調整槽7側の間に位置し、本体部11a側から状態調整槽7側に向けて横断面積(長手方向と垂直な断面における面積、以下、単に「断面積」ともいう)が漸次変化する断面積変化部11bとを有する。これにより、接続管11の本体部11aと状態調整槽7とが、断面積変化部11bを介して接続される。
本実施形態では、接続管11の本体部11aの断面積をS1、状態調整槽7の上部7aの断面積をS2とすると、本体部11aの断面積S1は上部7aの断面積S2と異なり、より具体的には、本体部11aの断面積S1は上部7aの断面積S2より小さい。この場合、断面積変化部11bの断面積が、本体部11a側から状態調整槽7側に向けて漸次増大するよう、断面積変化部11bの内面11cの形状が設定されている。具体的には、断面積変化部11bの内面11cの、縦断面(長手方向に沿う断面)の形状が円弧状である。このため、断面積変化部11bの内面11cは、筒状であり、本体部11a側から状態調整槽7側に向けて拡径している。
本体部11aの断面積S1は、上部7aの断面積S2の0.75倍以上でかつ1.25倍以下に設定するのがよい。本実施形態のように、本体部11aの断面積S1を上部7aの断面積S2より小さくする場合には、本体部11aの断面積S1を、上部7aの断面積S2の0.75倍以上でかつ0.96倍以下に設定するのがよい。例えば、本体部11aの内径は150mm以上でかつ300mm以下に設定することができ、断面積変化部11bの内面11cの曲率半径は、10mm以上でかつ50mm以下に設定することができ、20mm以上でかつ40mm以下の範囲に設定することが好ましい。
なお、本実施形態では、接続管11の断面積変化部11bが本体部11aと一体に形成される場合を例示したが、もちろん、断面積変化部11bを本体部11aと別体に形成し、例えば図示は省略するが、本体部11aの下流端外周に設けたフランジを、断面積変化部11bの上流端外周に設けたフランジに連結することで、接続管11を構成してもよい。また、本実施形態では、状態調整槽7と断面積変化部11bとを別体に形成し、断面積変化部11bを状態調整槽7の上部7aに押し当てて連結した場合を例示したが、もちろん、これ以外の形態で状態調整槽7と断面積変化部11bに連結してもよい。
本実施形態では、状態調整槽7の下部7bと、接続管12の上流端12aとは、縁切りされた状態で(状態調整槽7の下部7bと接続管12の上流端12aが接触しない状態で)、溶融ガラスGmを状態調整槽7側から接続管12側へ供給可能としている。具体的には、図3に示すように、下部7bを接続管12の上流端12a内周に挿入した状態で、状態調整槽7で状態の調整が成された溶融ガラスGmを、接続管12を通じて成形体8に供給可能としている。
ここで、状態調整槽7の下部7bの断面積をS3、接続管12の状態調整槽7側の端部、ここでは上流端12aの断面積をS4とした場合、下部7bの断面積S3を、上流端12aの断面積S4の0.75倍以上でかつ0.96倍以下に設定するのがよい。
また、接続管12は、その上流端12aが状態調整槽7と接続され、かつその下流端が成形体8の幅方向(成形されるガラスリボンGrの幅方向に等しい。)側部に設けられた溶融ガラスGmの流入口8cと接続されるよう、所定の向きに曲げられている。例えば鉛直方向をZ方向、図2の如く状態調整槽7をZ方向(鉛直上方)から見たときの、接続管11から状態調整槽7の上部7aに流入する溶融ガラスGmの流れ方向をY方向、この流れ方向(Y方向)に直交する方向をX方向としたとき、接続管12は、YZ平面上で曲げられている(図3を参照)。
また、各槽4~7の間を接続する残りの接続管9~11の向きとの関係で見た場合、各槽4~7並びに成形体8を平面視した(鉛直上方から見た)状態では、全ての接続管9~12の長手方向は互いに平行である。言い換えると、これら接続管9~12の中心線は何れも、平面視した状態で、Y方向に平行な共通の仮想直線上にある。従って、溶解槽4から成形体8に至る溶融ガラスGmの流れ方向は、図2に示すように各槽4~7並びに成形体8を平面視した状態では、常に同じ方向(Y方向)に設定される。
次に、上記構成の製造装置1を用いたガラス物品の製造方法の一例を、特に接続管11から状態調整槽7に至る溶融ガラスGmの流れ態様を中心に説明する。
上記構成をなす製造装置1を用いてガラス物品を製造するに際しては、図1及び図2に示すように、まずガラス原料を溶融ライン2の最上流域に位置する溶解槽4に投入して、ガラス原料を溶解することで、溶融ガラスGmを生成する(生成工程)。次いで溶融ガラスGmを、接続管9を介して清澄槽5に供給し、清澄槽5で清澄した溶融ガラスGmを、接続管10を介して均質化槽6に供給する。均質化槽6に供給された溶融ガラスGmは撹拌等により均質化された後(均質化工程)、接続管11を通って状態調整槽7に供給される。状態調整槽7内で例えば溶融ガラスGmの流量が調整され(状態調整工程)、調整後の溶融ガラスGmが接続管12を通って成形体8に供給される。成形体8では、例えばオーバーフローダウンドロー法によって溶融ガラスGmを帯状のガラスリボンGrに成形する(成形工程)。成形されたガラスリボンGrは、溶融ライン2と直交する向き(図1でいえばX方向)に延在する加工ライン3上を搬送され、切断など上述した適宜の加工ないし処理を施すことにより、例えばガラス物品としてのガラス板が得られる。このようにして、ガラス物品の製造が連続的に実施される。また、これら製造装置1の溶融ライン2を流れる溶融ガラスGmの粘度は、所定の範囲に管理される。具体的には、接続管11の本体部11aと状態調整槽7との間の断面積変化部11b(図4を参照)を通過する溶融ガラスGmの粘度は、好ましくは800Pa・s以上に設定され、より好ましくは1000Pa・s以上に設定される。一方、失透を抑制する観点から、断面積変化部11bを通過する溶融ガラスGmの粘度は、50000Pa・s以下に設定されることが好ましい。
ところで、上記構成の製造装置1でガラス物品を連続的に製造する場合、例えば図4に示すように、均質化槽6の底部に溶融ガラスGmの停滞領域R1が生じることがある。この場合、停滞領域R1の溶融ガラスGm1’は接続管11の底部を通って状態調整槽7内に流入し、状態調整槽7の下部7bの均質化槽6に近い側(XYZ座標系でいえば-Y方向の側)を通って接続管12に至る。接続管12に流入した停滞領域R1の溶融ガラスGm1’は、接続管12の外側領域12bを通って、成形体8の流入口8cの底部に到達してオーバーフロー溝8aに流入する。オーバーフロー溝8aに流入した停滞領域R1の溶融ガラスGm1’は、オーバーフロー溝8aの底部に沿って流れ、成形体8のうちガラスリボンGrの幅方向一端部(図4では状態調整槽7から遠い側の幅方向端部Gr2)となる領域に流れ込む。
あるいは、同じく図4に示すように、状態調整槽7の上部7aに溶融ガラスGmの停滞領域R2が生じることがある。この場合、停滞領域R2の溶融ガラスGm2’は状態調整槽7の下部7bの成形体8に近い側(XYZ座標系でいえば+Y方向の側)を通って接続管12に至る。接続管12に流入した停滞領域R2の溶融ガラスGm2’は、接続管12の内側領域12cを通って、成形体8の流入口8cの頂部に到達してオーバーフロー溝8aに流入する。オーバーフロー溝8aに流入した停滞領域R2の溶融ガラスGm2’は、流入口8c付近でオーバーフロー溝8aから溢れ出て、成形体8のうちガラスリボンGrの幅方向他端部(図4では状態調整槽7に近い側の幅方向端部Gr1)となる領域に流れ込む。
ここで、本製造装置1では、接続管11が、本体部11aと状態調整槽7の間に、本体部11a側から状態調整槽7側に向けて断面積が漸次変化する断面積変化部11bを有するようにした。この構成によれば、既述の理由より、接続管11から状態調整槽7内部に流入した溶融ガラスGmに剥離流が発生する事態を可及的に防止して、均質化槽6の底部に停滞する溶融ガラスGm1’を、接続管12の外側領域12bを通って、成形体8のうちガラスリボンGrの幅方向一端部Gr2となる領域に確実に流れ込ませることができる。また、状態調整槽7の頂部に停滞する溶融ガラスGm2’を、接続管12の内側領域12cを通って、成形体8のうちガラスリボンGrの幅方向他端部Gr1となる領域に確実に流れ込ませることができる。以上より、本発明に係るガラス物品の製造方法及び製造装置1によれば、成形不良の原因となる異質な溶融ガラスGm1’(Gm2’)が加工後のガラスリボンGrに残って、製品としてのガラス物品の品質低下を招く事態を可及的に防止することが可能となる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係るガラス物品の製造方法及び製造装置は、上記実施形態には限定されることなく、本発明の範囲内で種々の形態を採ることが可能である。
例えば、上記実施形態では、断面積変化部11bとして、内面11cの縦断面形状が円弧状であるものを例示したが、これ以外の形状をなすものを採用することも可能である。例えば図示は省略するが、内面11cが、縦断面形状が線形テーパ状をなすものを断面積変化部11bとして採用することも可能である。もちろん、断面積が、接続管11の下流端側から状態調整槽7側に向けて漸次増大するような内面11c形状をなすものである限りにおいて、任意の内面11c形状をなす断面積変化部11bを採用することが可能である。
もちろん、接続管11の本体部11aの断面積S1が状態調整槽7の上部7aの断面積S2より大きい場合、図示は省略するが、断面積変化部11bの断面積が、本体部11a側から状態調整槽7側に向けて漸次減少するような内面11c形状をなすものを、断面積変化部11bとして採用することも可能である。
また、上記実施形態では、各接続管9~12の断面積が長手方向で一定となる場合を例示したが、もちろん、この形態には限られない。大幅な断面積の増減が生じない限りにおいて、断面積が長手方向で変化する接続管9~12を採用することも可能であるが、剥離流の発生をさらに防止する観点では、各接続管9~12の断面積が長手方向で一定であることが好ましい。また、上記実施形態では、接続管9、11としてストレート形状をなすものを下流側に向かうにつれて上方に傾斜するよう配置した場合を例示したが、もちろん、これ以外の形態をなすものを採用することも可能である。具体的には、ストレート形状をなすものを傾斜させて配置される接続管9、11に、軸方向が水平である端部を設けてもよい。また、各接続管9~12の断面形状についても原則として任意であり、例えばだ円形状など、真円以外の断面形状をなすものを接続管9~12として採用することも可能である。
1 ガラス物品の製造装置
2 溶融ライン
3 加工ライン
4 溶解槽
5 清澄槽
6 均質化槽
7 状態調整槽
7a 上部
7b 下部
8 成形体
8a オーバーフロー溝
8b,8b 両側面
8c 流入口
9 接続管
10 接続管
11 第一の接続管
11a 本体部
11b 断面積変化部
11c 断面積変化部の内面
12 第二の接続管
Gm 溶融ガラス
Gm1’,Gm2’ 停滞領域の溶融ガラス
Gr ガラスリボン
Gr1,Gr2 幅方向端部
R1,R2 停滞領域
S1 断面積(第一の接続管の本体部)
S2 断面積(状態調整槽の上部)
S3 断面積(状態調整槽の下部)
S4 断面積(第二の接続管)

Claims (7)

  1. 溶融ガラス生成装置で溶融ガラスを生成する生成工程と、生成した前記溶融ガラスに均質化槽で均質化処理を施す均質化工程と、均質化処理を施した前記溶融ガラスの状態を状態調整槽で調整する状態調整工程と、状態の調整がなされた前記溶融ガラスを成形体に供給してガラスリボンを成形する成形工程とを備える、ガラス物品の製造方法において、
    前記均質化槽と前記状態調整槽とは、第一の接続管で接続され、
    前記第一の接続管は、本体部と、前記本体部と前記状態調整槽の間に位置し、前記本体部側から前記状態調整槽側に向けて横断面積が漸次変化する断面積変化部とを有し、
    前記断面積変化部は、前記本体部側から前記状態調整槽側に向けて横断面積が漸次拡大する内面形状をなすことを特徴とするガラス物品の製造方法。
  2. 前記状態調整槽は、前記第一の接続管が接続され、前記第一の接続管から前記溶融ガラスが流入する上部と、状態の調整がなされた前記溶融ガラスが流出する下部とを備え、
    前記本体部の横断面積が、前記上部の横断面積の0.75倍以上でかつ1.25倍以下に設定されている請求項1に記載のガラス物品の製造方法。
  3. 前記断面積変化部の縦断面形状が円弧状である請求項1又は2に記載のガラス物品の製造方法。
  4. 前記第一の接続管の本体部の横断面積が、前記状態調整槽の上部の横断面積の0.75倍以上でかつ0.96倍以下に設定されている請求項3の何れか一項に記載のガラス物品の製造方法。
  5. 前記状態調整槽の下部と前記成形体とは、第二の接続管で接続され、
    前記状態調整槽の下部の横断面積が、前記第二の接続管の前記状態調整槽側の端部の横断面積の0.75倍以上でかつ0.96倍以下に設定されている請求項1~の何れか一項に記載のガラス物品の製造方法。
  6. 前記断面積変化部を通過する前記溶融ガラスの粘度が800Pa・s以上に設定されている請求項1~の何れか一項に記載のガラス物品の製造方法。
  7. 溶融ガラスを生成する溶融ガラス生成装置と、生成した前記溶融ガラスに均質化処理を施す均質化槽と、均質化処理を施した前記溶融ガラスの状態を調整する状態調整槽と、状態の調整がなされた前記溶融ガラスからガラスリボンを成形する成形体とを備えるガラス物品の製造装置において、
    前記均質化槽と前記状態調整槽とは、第一の接続管で接続され、
    前記第一の接続管は、本体部と、前記本体部と前記状態調整槽の間に位置し、前記本体部側から前記状態調整槽側に向けて横断面積が漸次変化する断面積変化部とを有し、
    前記断面積変化部は、前記本体部側から前記状態調整槽側に向けて横断面積が漸次拡大する内面形状をなすことを特徴とするガラス物品の製造装置。
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