JP7044496B2 - 活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物 - Google Patents

活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物 Download PDF

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Description

本発明は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物及びインクジェット印刷方法に関する。さらに詳しくは、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の保存安定性に優れ、発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線等の活性エネルギー線による硬化性を有し、基材に印字した印字物の延伸性、折れ曲げ時の塗膜の割れ、光沢性、タック性が良好である光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に関する。
これまでの、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物としては、例えば、特許文献1~4に記載されるように、特定のガラス転移温度を有するモノマーを組み合わせてなるものであった。しかしながら、従来の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、ガラス転移温度を調整することによって硬化物の強度を調整できても、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の保存安定性、発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線による硬化性及び基材に印字した印字物の延伸性、折れ曲げ時の塗膜の割れ、光沢性、タック性の全て満足させるものはなかった。
特開2016-172841号公報 特開2015-117359号公報 特開2015-083656号公報 特開2013-237834号公報
そこで本発明の課題は、画像形成用、記録媒体への印字用の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物として、有機溶剤を特定量配合し、且つ光重合性化合物として、特定のガラス転移温度を有するモノマーやオリゴマーの組み合わせに加えて、アミノ基やアミド基を有するモノマーやオリゴマーを配合することによって、保存安定性に優れ、発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線による硬化性にも優れ、更に形成した印字物の光沢性に優れると共に、延伸性、印字した用紙やフィルム等を折り曲げる等したときに、印字部分が追従できて印字に割れが発生することを防止でき、さらにタック性に優れる活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を得ることである。
発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物を発明した。
1.
少なくとも、光重合性化合物と、光重合開始剤と、有機溶剤を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物であって、
A.単官能の光重合性化合物を全光重合性化合物中に70~95質量%含有し、
B.多官能の光重合性化合物を全光重合性化合物中に5~25質量%含有し、
C.ガラス転移温度が-30℃以下のモノマー及び/又はオリゴマーを全光重合性化合物中に10~30質量%含有し、
D.ガラス転移温度が80℃以上のモノマー及び/又はオリゴマーを全光重合性化合物中に10質量%以上含有し、
E.アミノ基及び/又はアミド基を有するモノマー及び/又はオリゴマー、を含有し、
F.インク総量に対して有機溶剤を20質量%以下含有し、
G.インク組成物の粘度が25℃で10mPa・s以下、
のA~Gの要件を満たす活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
2.
H.アミノ基及び/又はアミド基を有するモノマー及び/又はオリゴマーを全光重合性化合物中に15~45質量%含有し、
I.分子内に2個の光重合性官能基及び2個のアミノ基を有するアクリル化アミン化合物とアクリロイルモルホリン及び/又はN-ビニルカプロラクタムを含有し、
のH及びIの要件をさらに満たす1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
3.
ガラス転移温度が-30℃以下のモノマー及び/又はオリゴマーとして、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド変性骨格を有する多管能モノマーを2~10質量%含有する1又は2記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
4.さらに、着色剤を含有する1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
本発明の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物によれば、保存安定性に優れ、発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線による硬化性にも優れ、更に形成した印字物の光沢性に優れると共に、延伸性、印字した用紙やフィルム等を折り曲げる等したときに、印字部分が追従できて印字に割れが発生することを防止でき、さらにタック性に優れるという顕著な効果を発揮することができる。
延伸性の評価方法を示す概略図である。
以下、本発明の少なくとも、光重合性化合物と、光重合開始剤と、有機溶剤を含有する光硬化型インクジェット印刷用インク組成物(以下、本発明のインク組成物ともいう)について詳細に説明する。下記A~Eの化合物のカテゴリーのうち、複数のカテゴリーに含まれる化合物が存在する。そのような化合物はその複数のカテゴリーにそれぞれ属するものとして、それぞれの含有量に重複してカウントされる。
<A.単官能の光重合性化合物>
本発明におけるA.単官能の光重合性化合物としては、例えば以下の化合物を採用できる。
ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートのアクリレート類、スチレン、アクリロイルモルホリン等の各種(メタ)アクリルアミド系モノマー、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニルアミド系モノマー、ベンジル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシフェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル-ジグリコール(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトールアクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート、フェノールエチレングリコール変性アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、ラクトン変性可とう性アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
A.単官能の光重合性化合物の含有量は、光重合性化合物中に70~95質量%であり、好ましくは、75~95質量%、より好ましくは85~90質量%である。含有量が70質量%未満であると、延伸性及び折れ曲げ時の塗膜の割れが低下する傾向となり、一方、95質量%を超えると、タック性及び硬化性が低下する傾向となる。
なお、下記C及びDの要件を満たす範囲で、下記C又はDのモノマーやオリゴマーに相当しないガラス転移温度の単官能の光重合性化合物を使用することもできる。
<B.多官能の光重合性化合物>
本発明におけるB.多官能の光重合性化合物は、分子中の複数の炭素-炭素不飽和結合を有する化合物であり、例えば以下の化合物を採用できる。
ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びそのエチレンオキサイド変性物、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、カプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を挙げることができる。
B.多官能の光重合性化合物の含有量は、光重合性化合物中に5~25質量%であり、好ましくは、5~20質量%、より好ましくは10~15質量%である。含有量が5質量%未満であると、硬化性及びタック性が低下する傾向となり、一方、25質量%を超えると、延伸性及び折れ曲げ時の塗膜の割れが低下する傾向となる。
なお、下記C及びDの要件を満たす範囲で、下記C又はDのモノマーやオリゴマーに相当しないガラス転移温度の多官能の光重合性化合物を使用することもできる。
<C.ガラス転移温度が-30℃以下のモノマー及び/又はオリゴマー>
ガラス転移温度が-30℃以下のモノマーとしては、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート等のエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド変性骨格を有する多管能モノマー、イソオクチルアクリレート、トリデシルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、2-メトキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、イソアミルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソテトラデシルアクリレート、カプロラクトンアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、EO(エチレンオキサイド)変性コハク酸アクリレート等をあげることができる。
ガラス転移温度が-30℃以下のオリゴマーは、上記ガラス転移温度が-30℃以下のモノマーの1種以上のみを共重合体成分とするか、上記ガラス転移温度が-30℃以下のモノマー1種以上とガラス転移温度が30℃を超えるモノマー1種以上を共重合して、結果的にガラス転移温度が-30℃以下となるオリゴマーである。
C.ガラス転移温度が-30℃以下のモノマー及び/又はオリゴマーの含有量は、光重合性化合物中に10~30質量%であり、好ましくは、10~25質量%、より好ましくは15~20質量%である。含有量が10質量%未満であると、塗膜の折り曲げ性が低下し、一方、30質量%を超えると、タック性が低下する傾向となる。
これらの中でも、オリゴマー成分との相溶性の点からエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド変性骨格を有する多官能モノマーやオリゴマー成分を全光重合性化合物中に2~10質量%含有させることが好ましい。
<D.ガラス転移温度が80℃以上のモノマー及び/又はオリゴマー>
ガラス転移温度が80℃以上のモノマーとしては、アクリロイルモルホリン、ビニルカプロラクタム、アクリロニトリル、アクリルアミド、スチレン、メチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、イソボルニルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、である。
ガラス転移温度が80℃以上のオリゴマーは、上記ガラス転移温度が80℃以上のモノマーの1種以上のみを共重合体成分とするか、上記ガラス転移温度が80℃以上のモノマー1種以上とガラス転移温度が80℃未満のモノマー1種以上を共重合して、結果的にガラス転移温度が80℃以上となるオリゴマーである。
D.ガラス転移温度が80℃以上のモノマー及び/又はオリゴマーの含有量は、光重合性化合物中に10質量%以上、好ましくは、50質量%以下であり、さらに好ましくは、15質量%以上50質量%以下である。含有量が10質量%未満であると、タック性が低下する傾向となる。
<E.アミノ基及び/又はアミド基を有するモノマー及び/又はオリゴマー>
アミノ基及び/又はアミド基を有するモノマーは、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の各種(メタ)アクリルアミド系モノマー、N-ビニルカプロラクタム等のN-ビニルアミド系モノマー、分子内に2個の光重合性官能基及び2個のアミノ基を有するアクリル化アミン化合物のオリゴマーであるCN371(サートマー社製)等のアクリル化アミン化合物である。
E.アミノ基及び/又はアミド基を有するモノマー及び/又はオリゴマーの含有量は、任意に決定できる。しかしながら、光重合性化合物中に15質量%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは、15質量%以上45質量%以下、より好ましくは25質量%以上45質量%以下である。含有量が15質量%未満であると、硬化性及びタック性が低下する可能性がある。
<有機溶剤>
ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル等のグリコールエーテル類、グリコールエーテルエステル類、アルコール類、ケトン類、有機カーボネート類およびそれらの混合物から選択される。
F.有機溶剤の含有量は、インク組成物中に20質量%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは、3.0~15質量%、より好ましくは5.0~10質量%である。含有量が20質量%を超えると、粘度、吐出性、インク塗膜物性の点において、支障をきたすおそれがある。
<光重合開始剤>
2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(商品名:TPO、Lambson社製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:IRGACURE819、BASF社製)。
光重合開始剤の含有量は、好ましくは光重合性成分の総質量に対して3~25質量%の範囲であり、より好ましくは5~15質量%の範囲である。
この範囲とすることは、インク組成物の吐出性、硬化性及び保存安定性をバランス良く維持する点において重要である。
<増感剤>
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物には、さらに、発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線に対する硬化性を促進するために、主に400nm以上の紫外線の波長域で光吸収特性を有し、その範囲の波長の光により硬化反応の増感機能が発現する光増感剤(化合物)を、重合開始剤と共に併用使用することができる。
そのような増感剤としては、アントラセン系増感剤、チオキサントン系増感剤等で、好ましくは、チオキサントン系増感剤である。これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
具体的には、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤を挙げることができる。市販品の代表例としては、アントラセン系増感剤では、DBA、DEA(川崎化成工業社製)、チオキサントン系増感剤では、DETX、ITX(Lambson社製)等が例示できる。
増感剤の含有量は、好ましくは光重合性成分の総質量に対して0~8質量%の範囲である。8質量%を超えても、効果の向上が見られず、過剰添加となり好ましくない。
なお、増感剤として、チオキサントン系増感剤を使用した場合は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を黄色に変色させる傾向があるため、顔料に基づく色(本来の色相)より黄味がかった色相になるので、色毎に、チオキサントン系増感剤の含有量を適宜決めることが好ましい。
具体的には、色味の変化の影響を受けやすいホワイトインク組成物及びクリアーインク組成物では、増感剤として、チオキサントン化合物は含まないようにすることが好ましい。また、マゼンタインク組成物、シアンインク組成物では、色相の変化が問題となるので、色相に問題が生じない範囲で使用することが好ましい。また、ブラックインク組成物、及びイエローインク組成物は、変色があっても色相に影響しないのと、光重合性が他の色相より乏しいことから、増感剤として、チオキサントン系化合物を併用使用することが好ましい。
<G.インク組成物の粘度が25℃で10mPa・s以下>
本発明のインク組成物の粘度は25℃で10mPa・s以下であることが必要であり、10mPa・sを超えるとインクジェット印刷用ノズルからのインク組成物の吐出が困難になる可能性がある。
なお、本発明における粘度の値は、E型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を用いて、25℃、20rpmの条件で測定した粘度である。
<着色剤>
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物には、各色相の着色剤を含有させて、各色の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を得ることもできる。
このような着色剤としては、通常の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物で従来から使用されている顔料、染料を特に制限なく使用できるが、耐光性を考慮すると、有機顔料又は無機顔料等の顔料が好ましい。
そして有機顔料としては、例えば、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、アンスラキノン系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の顔料等が挙げられる。無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、ベンガラ、黒鉛、鉄黒、酸化クロムグリーン、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
また、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の代表的な色相ごとの顔料の具体例としては以下のものが挙げられる。
まず、光硬化型インクジェット印刷用イエローインク組成物として使用するためのイエロー顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、12、13、14、16、17、42、73、74、75、81、83、87、93、95、97、98、108、109、114、120、128、129、138、139、150、151、155、166、180、184、185、213等が挙げられ、好ましくは、C.I.Pigment Yellow150、155、180、213等が挙げられる。
光硬化型インクジェット印刷用マゼンタインク組成物として使用するためのマゼンタ顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、7、12、22、38、48:1、48:2、48:4、49:1、53:1、57、57:1、63:1、101、102、112、122、123、144、146、149、168、177、178、179、180、184、185、190、202、209、224、242、254、255、270、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられ、好ましくは、C.I.Pigment Red 122、202、Pigment Violet 19等が挙げられる。
光硬化型インクジェット印刷用シアンインク組成物として使用するためのシアン顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、18、22、27、29、60等で、好ましくは、C.I.Pigment Blue15:4等が挙げられる。
光硬化型インクジェット印刷用ブラックインク組成物として使用するためのブラック顔料としては、例えば、カーボンブラック(C.I.Pigment Black 7)等が挙げられる。
光硬化型インクジェット印刷用ホワイトインク組成物として使用するためのホワイト顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられ、好ましくは、アルミナ、シリカ等の種々の材料で表面処理された酸化チタンが挙げられる。
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物における顔料の含有量は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の全量に対して1~20質量%であることが好ましい。顔料の含有量が1質量%未満では、得られる印刷物の画像品質が低下する傾向がある。一方、20質量%を超えると、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の粘度特性に悪影響を与える傾向がある。
<顔料分散剤>
また、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、必要に応じて顔料分散剤を含有していてもよい。
顔料分散剤は、顔料の分散性、本発明のインク組成物の保存安定性を向上させるために使用するもので、従来から使用されているものを特に制限なく使用できるが、その中でも高分子分散剤を使用することが好ましい。このような顔料分散剤としては、カルボジイミド系分散剤、ポリエステルアミン系分散剤、脂肪酸アミン系分散剤、変性ポリアクリレート系分散剤、変性ポリウレタン系分散剤、多鎖型高分子非イオン系分散剤、高分子イオン活性剤等が挙げられる。これら顔料分散剤は単独で又は2種以上を混合して使用できる。
上記顔料分散剤は、使用する全顔料の量を100質量部としたときに、1~200質量部含有することが好ましい。顔料分散剤の含有量が1質量部未満では、顔料分散性、本発明のインク組成物の貯蔵安定性が低下する場合がある。一方、200質量部を超えて含有させることもできるが効果に差がでない場合もある。顔料分散剤の含有量のより好ましい下限は5質量部、より好ましい上限は60質量部である。
<界面活性剤>
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、使用するインクジェットヘッドに応じて、界面活性剤として従来から光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に使用されているシリコン系界面活性剤等の界面活性剤を、吐出安定性を改良するために含有することが好ましい。
シリコン系界面活性剤の具体例としては、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン等が挙げられる。これらは単独又は2種以上を併用して用いることができる。
本発明のインク組成物における界面活性剤の含有量は、好ましくは0.005~1.0質量%である。0.005質量%未満であると、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の表面張力が高くなり、インクジェットヘッドからの吐出安定性が低下する。一方、1.0質量%を超えると、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に泡が増加し吐出安定性が低下する。
<添加剤>
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物には、必要に応じて種々の機能性を発現させるため、各種の添加剤を添加することができる。具体的には、光安定化剤、表面処理剤、酸化防止剤、老化防止剤、架橋促進剤、重合禁止剤、可塑剤、防腐剤、pH調整剤、消泡剤、保湿剤等が挙げられる。また、ビヒクルとして機能する硬化性ではない樹脂を配合しても良く、配合しなくても良い。
以上の材料から得られる本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、JIS K2265に準拠した方法でセタ密閉式引火点測定装置を使用して測定した引火点が、70℃以上であることが好ましい。このような引火点を有することで、本発明のインク組成物は、GHSにいう引火性液体区分4に相当するレベルとすることができ、低引火性といった安全性に優れたものとなる。
また、本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、25℃における粘度が、10mPa・s以下であることが必要である。さらに詳しくは、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の具体的な粘度を、各インクジェット装置に適応できるように設計することもできる。
なお、本明細書において粘度とは、E型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を用いて、25℃、20rpmの条件で測定した粘度である。
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、上記した特定の光重合性成分とアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を特定量含有させることで、紫外線、特に発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線に対する硬化性に優れ、床材、塩化ビニル、ポリカーボネート等の基材に対する密着性及び耐擦性が良好で、吐出安定性及び貯蔵安定性に優れ、高い引火点、低皮膚刺激性及び低臭気といった安全性の全てにおいて優れたものとすることができる。
本発明のインク組成物を調製する方法としては特に限定されず、上記した材料を全て添加してビーズミルや3本ロールミル等で混合して調製することができる。
なお、顔料、顔料分散剤及び光重合性成分を混合することにより、予めコンクベースインクを得ておき、そのコンクベースインクに所望の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の組成となるように、光重合性成分、光重合開始剤、必要に応じて界面活性剤等の添加剤を添加して調製することもできる。
本発明のインク組成物を印字する基材としては、床材、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等が好ましいが、従来から光硬化型インクジェット印刷用インク組成物が印字される基材(紙、プラスチックフィルム、カプセル、ジェル、金属箔、ガラス、布等)であれば問題なく印字できる。
本発明のインク組成物を印字、硬化する方法として、具体的には、本発明のインク組成物をインクジェットヘッドにより基材に吐出した後、基材に着弾した本発明のインク組成物の塗膜を光で露光し硬化させる方法が挙げられる。
例えば、基材への吐出(画像の印字)は、本発明のインク組成物をインクジェット記録用プリンターの低粘度対応のプリンタヘッドに供給し、基材に対して塗膜の膜厚が、例えば、1~60μmとなるように該インク組成物をプリンタヘッドから吐出することにより行うことができる。また、光での露光、硬化(画像の硬化)は、画像として基材に塗布された本発明のインク組成物の塗膜に光を照射することにより行うことができる。
本発明のインク組成物を印字するインクジェット記録方式用プリンター装置としては、従来から使用されているインクジェット記録方式用プリンター装置が利用できる。なお、コンティニュアスタイプのインクジェット記録方式用プリンター装置を用いる場合は、本発明のインク組成物にさらに導電性付与剤を加え電導度の調節をする。
上記塗膜の硬化における光源としては、紫外線(UV)、紫外線(発光ダイオード(LED))、電子線、可視光線等を挙げることができ、環境面から好ましくは発光ピーク波長が350~420nmの範囲の紫外線を発生する発光ダイオード(LED)である。
発光ダイオード(LED)を光源とした紫外線とは、「発光ピーク波長が350~420nmの範囲である紫外線を発生する、発光ダイオードから照射される光」とする。
(実施例)
光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の調製
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
<ガラス転移温度Tg>
ここで、ガラス転移温度Tgは、下記のWoodの式により求めた理論ガラス転移温度である。
Woodの式:1/Tg=W/Tg+W/Tg+W/Tg+・・・・・・・・・+Wx/Tgx
(式中、Tg1~Tgxは共重合体を構成する重合性単量体1、2、3・・・xのそれぞれの単独重合体のガラス転移温度、W~Wxは単量体1、2、3・・・xのそれぞれの質量分率、Tgは理論ガラス転移温度を表す。ただし、Woodの式におけるガラス転移温度は絶対温度である)。
以下の実施例、比較例で使用した材料は次の通りである。
<アミン変性オリゴマー>
CN371(サートマー社製)
<光重合性化合物>
アクリロイルモルフォリン
ビニルカプロラクタム
ブチルシクロヘキサノールアクリレート(4-tert-ブチルシクロヘキサノールアクリレート)
イソボルニルアクリレート
ベンジルアクリレート
EO(3)変性トリメチロールプロパントリアクリレート(エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(サートマー社製))
エチルカルビトールアクリレート
<ケトン樹脂>
SK/ベンジルアクリレートワニス(40/60):SKレジン(40質量部とベンジルアクリレートワニス60質量部の混合物)
<溶剤>
プロピレングリコールジメチルエーテル
ジエチレングリコールエチルメチルエーテル
<光重合開始剤>
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(LAMBERTI社製)
SB-PI719:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ジフェニルホスフィンオキサイド(ソート(株)製)
<光増感剤>
DETX:2,4-ジエチルチオキサントン(Lambson社製)
<重合禁止剤>
UV-5=マレイン酸ジオクチル(クロマケム社製)
UV-22=キノン類重合禁止剤(クロマケム社製)
<シリコン系レベリング剤>
BYK-315N(ビックケミー社製)
BYK-331(ビックケミー社製)
<顔料分散剤>
ソルスパース32000(日本ルーブリゾール(株)製)
<ベース組成物>
顔料と顔料分散剤と光重合性成分とを、配合比率(質量比率)が16/6/78となるように配合した混合物を、アイガーミル(メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズを使用)を用いて分散させて、ベース組成物を得た。
得られたベース組成物に、表1及び表2に記載の配合組成(質量%)となるように各成分を配合し、撹拌混合して、実施例及び比較例の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を得た。
〔インク組成物の粘度の測定〕
実施例及び比較例で得られた各光硬化型インクジェット印刷用インク組成物について、E型粘度計(商品名:RE100L型粘度計、東機産業社製)を使用して、温度25℃、ローター回転速度20rpmの条件で、粘度を測定した。結果を表1及び表2に示す。
(保存安定性)
実施例1~14及び比較例1~7で得られた各インク組成物をそれぞれガラス瓶に採り、密栓して70℃で7日間保存した後の状態を、下記評価基準に従って評価した。
○:増粘、沈降物が共に認められない
△:軽く振ると元に戻る程度の増粘や沈降物が認められる
×:強く振っても元に戻らない程度の増粘や沈降物が認められる
(硬化性)
フォセオン・テクノロジー社製UV-LED光ランプにて、ランプとインクの塗布面との距離2cm、1回当たりの照射時間1秒の照射条件(1秒間当たりのUV積算光量60mJ/cm)下で、表面のタックがなくなるまでの照射回数にて評価した。
(タック性)
各硬化塗膜(基材=ポリカーボネート板)を指触して、その塗膜表面の状態を目視で確認することにより、タック性を評価した。
○:塗膜に指紋が付着しない
△:塗膜に僅かに指紋が付着する
×:塗膜に指紋が付着する
(折り曲げ性)
低粘度インク用のインクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、実施例1~14及び比較例1~7で得られた各インク組成物による塗膜を形成し、山側、谷側それぞれ180度に折り曲げ、印刷後における折り曲げ性を下記評価基準に従って評価した。
○:折り曲げた際に、塗膜に罫線割れや細かなクラックが生じない
△:折り曲げた際に、細かなクラックが生じる
×:折り曲げた際に、罫線割れを生じる
(延伸性)
低粘度インク用のインクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、延伸用塩ビフィルム上に形成した塗膜2cm×10cmのサイズに切り出して測定試料片を作製し、その測定試料片を引張試験機により25℃の環境下で引張速度50mm/minで延伸し、25℃で1週間保管後、硬化塗膜がひび割れずに延伸できる長さにより延伸率を測定し、その延伸率を延伸性とした。
ここで、図1に示すように、測定試料片の中心を挟むように記した中心部の黒点と黒点との距離が、延伸前の1cmから延伸によりXcmになった場合に、延伸率を{(X-1)/1}×100[%]とする。
下記評価基準に従って評価した。
○:100%以上
△:50%以上、100%未満
×:50%未満
(光沢)
低粘度インク用のインクジェットノズルを備えたインクジェット記録装置を用いて、実施例1~14及び比較例1~7で得られた各インク組成物による塗膜を形成し、目視にて下記評価基準に従って評価した。
○:塗膜に光沢感が認められる
△:塗膜にわずかにざらつきがあり、表面が少し白ぼけて見える
×:塗膜にざらつきがあり、表面が白ぼけて見える
Figure 0007044496000001
Figure 0007044496000002
上記の実施例によれば、適切な粘度であり、かつ保存安定性、硬化性に優れたインクジェット用インク組成物が得られ、かつ、タック性、折り曲げ性、延伸性、及び光沢に優れたインクジェット用インク組成物による塗膜を得ることができた。
しかしながら、B.多官能の光重合性化合物を含有しない比較例1によれば、低粘度、かつタック性に劣る結果となり、B.多官能の光重合性化合物を過剰に含有する比較例2によれば、延伸性に劣る結果となった。
C.ガラス転移温度が-30℃以下のモノマー及び/又はオリゴマーを含有しない比較例3によれば、折り曲げ性に劣る結果となり、C.ガラス転移温度が-30℃以下のモノマー及び/又はオリゴマーを過剰に含有する比較例4によれば、タック性に劣る結果となった。
D.ガラス転移温度が80℃以上のモノマー及び/又はオリゴマーを含有しない比較例5によれば、タック性に劣る結果となった。
F.有機溶剤を含有しない比較例6によれば、光沢性に劣っており、逆に20質量%を超えて含有する比較例7によれば、タック性に劣っていた。

Claims (4)

  1. 少なくとも、光重合性化合物と、光重合開始剤と、有機溶剤を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物であって、ビヒクルとして機能する硬化性ではない樹脂を含有せず、
    A.単官能の光重合性化合物を全光重合性化合物中に70~95質量%含有し、
    B.トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートのエチレンオキサイド変性物を含む多官能の光重合性化合物を全光重合性化合物中に5~25質量%含有し、
    C.ガラス転移温度が-30℃以下のモノマー及び/又はオリゴマーを全光重合性化合物中に10~30質量%含有し、
    D.ガラス転移温度が80℃以上のモノマー及び/又はオリゴマーを全光重合性化合物中に10質量%以上含有し、
    E.アミノ基及び/又はアミド基を有するモノマー及び、アミノ基及び/又はアミド基を有するオリゴマー、を含有し、
    F.インク総量に対して有機溶剤を20質量%以下含有し、
    G.インク組成物の粘度が25℃で10mPa・s以下、
    のA~Gの要件を満たす活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
  2. H.アミノ基及び/又はアミド基を有するモノマー及び/又はオリゴマーを全光重合性化合物中に15~45質量%含有し、
    I.分子内に2個の光重合性官能基及び2個のアミノ基を有するアクリル化アミン化合物とアクリロイルモルホリン及び/又はN-ビニルカプロラクタムを含有し、
    のH及びIの要件をさらに満たす請求項1記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
  3. ガラス転移温度が-30℃以下のモノマー及び/又はオリゴマーとして、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド変性骨格を有する多管能モノマーを2~10質量%含有する請求項1又は2記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
  4. さらに、着色剤を含有する請求項1~3のいずれかに記載の活性エネルギー線硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
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