JP7043716B2 - 超伝導線材、及びコイルユニット - Google Patents

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Description

本発明は超伝導線材、及びコイルユニットに関し、特に高周波帯で使用される超伝導線材、及びコイルユニットに関する。
高周波帯(例えば、数kHz~数100MHz)で用いられる共振器には、核磁気共鳴を用いたMRI(Magnetic Resonance Imaging)装置やNMR(Nuclear Magnetic Resonance)装置の共鳴信号を受信するための検出コイル、核四極共鳴(NQR:Nuclear Quadrupole Resonance)を用いた爆発物や不正薬物を探知する探知装置の検出コイル、無線電力伝送(WPT:Wireless Power Transfer)に用いられる送受電コイルなどがある。
これらの装置の性能(感度や伝送効率)は、Q値が高い(導体損失が低い)コイルを用いることで改善することができる。しかしながら、これらの装置のコイルは銅線を用いて作製されているため、これ以上導体損失を低減することは困難である。このため、MRI装置、NMR装置、NQR装置、WPT装置等の共振器を用いた装置の性能の改善は限界を迎えている。
このような問題を解決する方法の一つとして、超伝導体を用いてコイルを形成する方法が挙げられる。超伝導体は直流では無損失であり、高周波帯では銅と比較して3桁以上低い導体損失となる。したがって、超伝導体をコイルに用いることで飛躍的に高いQ値を実現でき、各種装置の性能改善が期待できる。
非特許文献1では、超伝導体を用いて形成したコイルを高周波帯で使用した場合、周波数が増加するにつれてQ値が低下するという研究結果が報告されている。
背景技術で説明したように、MRI装置、NMR装置、NQR装置、WPT装置等の共振器を用いた装置の性能を改善する方法の一つとして、共振器を構成するコイルの材料に超伝導体を用いる方法が挙げられる。
しかしながら、現在実用化されている直流用途に開発された希土類系超伝導線材は直流では無損失であるが高周波帯では導体損失が大きいため(非特許文献1参照)、このような超伝導体を用いてコイルを作製しても高いQ値を得ることができないという問題があった。
上記課題に鑑み本発明の目的は、高周波帯で使用した場合であっても高いQ値を実現することが可能な超伝導線材、及びコイルユニットを提供することである。
本発明にかる超伝導線材は、基材と、前記基材の両面の各々に形成された超伝導体層と、前記各々の超伝導体層の表面に形成された導電性保護層と、を備え、前記導電性保護層の各々の厚さは、前記超伝導線材に高周波電流を流した際の表皮深さの5%以下である。
本発明にかる超伝導線材は、基材と、前記基材の両面の各々に形成された超伝導体層と、前記各々の超伝導体層の表面に形成された誘電体保護層と、を備え、前記誘電体保護層は、誘電正接(tanδ)の値が0.001以下の材料を用いて構成されている。
本発明にかかるコイルユニットは、上記構成を備える超伝導線材をスパイラル状に巻いたコイルと、前記コイルを支持する支持体と、を備える。前記支持体は誘電体を用いて構成されており、前記コイルの中心から外側に伸びる複数の支持部を備える。
本発明にかかるコイルユニットは、上記構成を備える超伝導線材を捲回して形成されたコイルと、前記コイルを支持する支持体と、を備え、前記支持体はサファイアを用いて構成されている。
更に、本発明にかる超伝導線材は、第1の基材と、当該第1の基材の表面に形成された第1の超伝導体層と、を備える第1の線材と、第2の基材と、当該第2の基材の表面に形成された第2の超伝導体層と、を備える第2の線材と、を備え、前記第1及び第2の線材は、前記第1及び第2の超伝導体層が互いに外向きになるように配置されている。
本発明により、高周波帯で使用した場合であっても高いQ値を実現することが可能な超伝導線材、及びコイルユニットを提供することができる。
関連技術にかかる超伝導線材の構造を示す斜視図である。 本発明にかかる超伝導線材の構造を示す斜視図である。 シミュレーションを実施した超伝導線材の構造を示す斜視図である。 図3に示した超伝導線材のシミュレーション結果を示すグラフである(超伝導線材のみの場合)。 図3に示した超伝導線材のシミュレーション結果を示すグラフである(超伝導線材を支持体に埋め込んだ場合)。 実際に作製した超伝導線材の構造を示す斜視図である。 図6に示した超伝導線材の測定条件を説明するための図である。 図6に示した超伝導線材の測定結果を示すグラフである。 実施の形態にかかる超伝導線材の構造を示す断面図である(保護層に導電性材料を用いた場合)。 表皮深さに対するAgの厚さの割合とQ値との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。 本発明にかかる超伝導線材の構造を示す断面図である(保護層に誘電体材料を用いた場合)。 誘電体保護層のtanδとQ値との関係を示すグラフである(シミュレーション結果)。 誘電体保護層の厚さとQ値との関係を示すグラフである(シミュレーション結果)。 誘電体保護層の厚さとQ値との関係を示すグラフである(シミュレーション結果)。 シミュレーションを実施した超伝導線材の構造を示す斜視図である。 ハステロイの厚さとQ値との関係を示すグラフである(シミュレーション結果)。 ハステロイの幅とQ値との関係を示すグラフである(シミュレーション結果)。 コイルユニットの構成例を示す図である。 コイルユニットの他の構成例を示す図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材が備える芯材の製造方法の一例を示す断面図である。 実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図である。
<関連技術の説明>
まず、本発明の関連技術について説明する。
図1は、関連技術にかかる超伝導線材の構造を示す斜視図である。図1に示す超伝導線材は、銅層110、ハステロイ111、中間層112、超伝導体層113、銀層114、及び銅層115を備えており、各々の層が順番に積層された構成を有する。
図1に示す超伝導線材は希土類系超伝導線材であり、超伝導体層113には希土類系の超伝導体、具体的にはYBCO系の超伝導体が用いられている。希土類系の超伝導体は、ペロブスカイト型構造を基礎とした結晶構造を備えており、超伝導体の電気的特性は、超伝導体の結晶方位の配向度に依存する。ここで、ハステロイ111は無配向の金属基材であるので、このような無配向の金属基材上に超伝導体をエピタキシャル成長させるには、中間層112が必要となる。例えば、中間層112は、Al、Y、MgO、CeOを順番に積層した4層構造を備える。
ハステロイ111は、Ni-Cr-Mo合金(非磁性)であり、柔軟性と機械的強度を備えた材料である。超伝導体はそれ自体は脆いため、超伝導線材を形成するためには、ある程度の柔軟性と機械的強度を備える基材(ハステロイ111)の上に超伝導体層113を形成する必要がある。
超伝導体層113の表面には、保護層と安定化層として銀層114と銅層115が形成されている。また、ハステロイ111の下面にも銅層110が形成されている。
図1に示す構成を備える超伝導線材は、直流では無損失であるが高周波帯では導体損失が大きくなるため、超伝導体を用いてコイルを作製しても高いQ値を得ることができない。本願発明者は、図1に示す構成を備える超伝導線材を用いてコイルを作製し、導体損失の原因について調べた。その結果、超伝導線材を高周波帯で使用すると、表皮効果によって高周波電流が超伝導線材の表面(図1に示す場合は銅層110、115)に集中するため、超伝導体層113に効率的に電流が流れず高いQ値を実現することができないことを明らかにした。また、仮に銀層114や銅層115のない超伝導線材を使用したとしても、銅の70倍の抵抗をもつハステロイ111が損失の原因となり、高いQ値を実現することができない。
<本願発明の超伝導線材の基本的な構造の説明>
このような問題を解決するために、本願発明者は、図2に示す構造の超伝導線材を提案している。図2に示す超伝導線材では、基材11の両面の各々に超伝導体層13を形成している。例えば、基材11にはハステロイを用いることができる。また、超伝導体層13には、希土類系の超伝導体(REBCO)、具体的にはYBCO系の超伝導体を用いることができる。なお、基材11と超伝導体層13との間には、図1で説明した場合と同様に中間層を形成してもよい。
上述したように、超伝導線材を高周波帯で使用した場合は、表皮効果によって超伝導線材の表面に高周波電流が流れるが、図2に示す構造の超伝導線材では超伝導線材の表面に超伝導体層13を配置しているので、高周波電流を超伝導体層13に優先的に流すことができる。よって、導体損失の原因であった基材11(ハステロイ)の影響を最小限に抑えることができるので、高いQ値を実現することができる。
<本願発明の超伝導線材のシミュレーション結果(支持体なし)>
本願発明者は、図2に示す構造の超伝導線材の特性を検討するために、シミュレーションを実施した。図3は、シミュレーションを実施した超伝導線材の構造を示す斜視図である。
図3(a)は、タイプIs(sはシミュレーション(simulated)を示す)の構造を示しており、図2に示す構造の超伝導線材に対応している。図3(a)に示すように、タイプIsでは、基材11として100μmのハステロイを、超伝導体層13として希土類系の超伝導体(REBCO)を用いている。タイプIsの線幅は4mmとした。
図3(b)は、タイプIIs(比較例)の構造を示しており、図1に示した構造から銅層110、115と銀層114とを取り除いた構造である。図3(b)に示すように、タイプIIsでは、基材111として50μmのハステロイを、超伝導体層113として希土類系の超伝導体(REBCO)を用いている。タイプIIsの線幅は4mmとした。
図3(c)は、タイプIIIs(比較例)の構造を示しており、タイプIIsの構造に銅層110、115を追加した構造である。図3(c)に示すように、タイプIIIsでは、銅層110として20μmの銅層を、基材111として50μmのハステロイを、超伝導体層113として希土類系の超伝導体(REBCO)を、銅層115として20μmの銅層を用いている。タイプIIIsの線幅は4mmとした。
図3(d)は、タイプIVs(比較例)の構造を示している。タイプIVsは、厚さ0.1mm、線幅4mmの銅線118である。
図4は、図3に示した超伝導線材のシミュレーション結果を示すグラフである。図4に示すシミュレーション結果は、図3のタイプIs~IVsに示した構造の線材を用いてコイル20(スパイラルコイル。共振周波数10MHz)を設計した際のコイルのQ値のシミュレーション結果を示している。コイル20の直径は24cm、配線ギャップは4.5mmとした。シミュレーションには、3次元電磁界シミュレータ(CST Studio Suite)を用いた。
誘電体基板上に形成されたREBCO(YBCO)膜の8.5MHzにおける導電率は、9.0×1011(S/m)である。REBCO線材のモデルが存在しないので、シミュレーションを行う際、超伝導線材のREBCO層の導電率として、この値9.0×1011(S/m)を用いた。また、銅の300K(室温)および77K(液体窒素温度)における導電率をそれぞれ、5.8×10、5.0×10(S/m)とした。また、ハステロイの77Kにおける導電率を8.3×10(S/m)とした。Q値は、Q=f/Δfを用いて求めた。ここで、Δfは、-3dBのレベルでシミュレーションした際のS21カーブのバンド幅である。
図4に示すように、シミュレーションの結果、タイプIsのQ値は45289、タイプIIsのQ値は1506、タイプIIIsのQ値は2905、タイプIVsの300KにおけるQ値は1141、タイプIVsの77KにおけるQ値は3163であった。よって、本願発明の構造であるタイプIsのQ値が最も高い値となり、他の構造と比べてQ値が飛躍的に改善した。この結果から、図2に示した構造のように、超伝導線材の表面に超伝導体層13を配置することで、高周波電流を超伝導体層13に優先的に流すことができ、導体損失の原因であった基材11(ハステロイ)の影響を最小限に抑えることができるといえる。よって、図2に示した構造の超伝導線材では、高いQ値を実現することができる。
また、タイプIIsのQ値(1506)とタイプIVsの300KにおけるQ値(1141)とを比較すると、タイプIIsは超伝導体層を備えるにもかかわらず、Q値の値がタイプIVsの300KにおけるQ値よりも若干高くなる程度にとどまった。この理由は、タイプIIsの構造では、基材111であるハステロイが導体損失に大きく影響したからであると考えられる。
また、タイプIIIsのQ値(2905)とタイプIVsの77KにおけるQ値(3163)とを比較すると、タイプIIIsは超伝導体層を備えるにもかかわらず、Q値の値がタイプIVsの77KにおけるQ値よりも低い値となった。この理由は、10MHzにおける銅層の表皮深さは約21μmであり、この値はタイプIIIsの銅層115の厚さ(20μm)とほぼ同一であったからであると考えられる。つまり、タイプIIIsでは高周波電流のほとんどが銅層115を流れたと考えられる。更に、タイプIIIsでは、基材111であるハステロイも導体損失に影響したと考えられる。
<本願発明の超伝導線材のシミュレーション結果(支持体あり)>
また、超伝導線材を用いてコイルを作製する際、コイルの形状を保つために支持体に超伝導線材を埋め込む場合がある。図5は、図3に示した超伝導線材20を支持体21に埋め込んだ場合のシミュレーション結果を示している。図5では、支持体21として発泡スチロール(誘電体損失:0.0002)を用いた場合のシミュレーション結果を示している。
図5に示すように、支持体21を用いた場合は、支持体21を用いない場合(図4参照)と比べて、全てのコイルにおいてQ値が減少した。よって、コイルのQ値は、支持体21の誘電体損失によって減少するといえる。ここで、コイルのQ値は以下の式で表すことができる。
1/Q=1/Qd+1/Qc ・・・式1
ここで、Qdは誘電体の誘電体損失に起因するQ値であり、Qcは超伝導線材の導体損失に起因するQ値である。式1より、導体損失Qcに比べて誘電体損失Qdが大きいと、誘電体損失Qdが支配的になるため、図5に示すシミュレーション結果ではQ値が大幅に減少している。
<本願発明の超伝導線材の作製と測定結果>
上記のシミュレーション結果を検証するために、図6に示す構造の超伝導線材を作製した。図6は、実際に作製した超伝導線材の構造を示す斜視図である。
図6(a)は、タイプIm(mは測定(measured)を示す)の構造を示しており、図3(a)のタイプIsの構造に対応している。図6(a)に示すように、タイプImでは、基材11として50μmのハステロイを、超伝導体層13として1μmのYBCOを、導電性保護層14として2μmの銀層を用いている。超伝導材料は水分や湿気に弱いため、超伝導体層13の上には導電性保護層14が形成されている。基材11と超伝導体層13との間には中間層12が形成されている。図6(a)に示すタイプImは、基材11の上に中間層12、超伝導体層13、及び導電性保護層14を形成した線材を2つ作製し、これら2つの線材を互いに逆向きにして基材11(ハステロイ)同士を貼り合わせることで形成した。タイプImの線幅は4mmとした。
図6(b)は、タイプIIm(比較例)の構造を示しており、図3(b)のタイプIIsの構造に対応している。図6(b)に示すように、タイプIImでは、基材111として50μmのハステロイを、超伝導体層113として1μmのYBCOを、導電性保護層114として2μmの銀層を用いている。基材11と超伝導体層13との間には中間層12が形成されている。タイプIImの線幅は4mmとした。
図6(c)は、タイプIIIm(比較例)の構造を示しており、図3(c)のタイプIIIsの構造に対応している。図6(c)に示すように、タイプIIImでは、銅層110として20μmの銅層を、基材111として50μmのハステロイを、超伝導体層113として1μmのYBCOを、銀層114として2μmの銀層を、銅層115として20μmの銅層を用いている。タイプIIImの線幅は4mmとした。
図6(d)は、タイプIVm(比較例)の構造を示しており、図3(c)のタイプIVsの構造に対応している。タイプIVmは、厚さ0.1mm、線幅4mmの銅線118である。
図7は、図6に示した超伝導線材の測定条件を説明するための図である。図7に示すように、タイプIm~IVmに示した構造の線材を用いてコイル20を形成し、このコイル20を支持体21に埋め込んでいる。このとき形成したコイル20の直径は24cm、配線ギャップは4.5mm、コイルの長さは10m、共振周波数は10MHzとした。コイル20の両側には各々、入力側ループコイル23および出力側ループコイル24が設けられている。各々のループコイル23、24は、測定装置25に接続されている。測定装置25には、ネットワーク・アナライザ(E5071B:アジレントテクノロジー社製)を用い、入力パワーを0dBm(1mW)とし、入出力抵抗は50Ωとした。Q値の測定結果を図8に示す。
図8に示す測定結果では、タイプImのQ値は3080、タイプIImのQ値は778、タイプIIImのQ値は1891、タイプIVmの300KにおけるQ値は956、タイプIVmの77KにおけるQ値は2190であった。よって、実際に作製した超伝導線材においても、本願発明の構造であるタイプImのQ値が最も高い値となった。したがって、図5に示したシミュレーション結果は、実際に作製した超伝導線材の測定結果を反映していることが検証できた。
また、タイプIIImとタイプIVmのQ値に着目すると、これらの値は図5に示したシミュレーションで求めたQ値と近い値となった。一方、タイプImのQ値に着目すると、タイプImのQ値(測定値)は3080であり、図5に示したタイプIsのシミュレーションで求めたQ値(7088)と比べると低い値となった。この理由は、図6に示したタイプImでは超伝導体層13の表面に導電性保護層(銀層)14を形成しており、高周波電流がこの導電性保護層(銀層)14を流れて導体損失が生じたからと考えられる。つまり、10MHzにおける表皮深さは約21μmであるので、導電性保護層(銀層)14の厚さ2μmは、表皮深さの約10%に相当する。よって、高周波電流の一部が導電性保護層(銀層)14を流れたため、シミュレーション結果よりもQ値の値が低くなったと考えられる。
<導電性保護層の厚さの検討>
上記で説明した検討結果から、本願発明において好ましい超伝導線材の構造は図9に示す構造である。図9に示す超伝導線材は、基材11と、基材11の両面の各々に形成された超伝導体層13と、各々の超伝導体層13の表面に形成された導電性保護層14と、を備える。基材11と超伝導体層13との間には、必要に応じて中間層12が形成される。
図9に示す超伝導線材は希土類系超伝導線材であり、超伝導体層13には、希土類系の超伝導体、具体的にはYBCO系の超伝導体が用いられている。希土類系の超伝導体は、ペロブスカイト型構造を基礎とした結晶構造を備えており、超伝導体の電気的特性は、超伝導体の結晶方位の配向度に依存する。例えば、基材11に無配向の金属基材を用いた場合は、このような無配向の金属基材上に超伝導体層13をエピタキシャル成長させるために、中間層12が必要となる。例えば、中間層112は、Al、Y、MgO、CeOを順番に積層した4層構造とすることができる。
また、例えば、基材11にはハステロイを用いることができる。ハステロイは、Ni-Cr-Mo合金(非磁性)であり、柔軟性と機械的強度を備えた材料である。超伝導体はそれ自体は脆いため、超伝導線材を形成するためには、ある程度の柔軟性と機械的強度を備える基材の上に超伝導体層13を形成する必要がある。
超伝導体層13の表面には、保護層として導電性保護層14が形成されている。導電性保護層14は、超伝導体層13を水分や湿気から保護するための層である。
本発明にかかる超伝導線材では、基材11の両面に超伝導体層13を配置している。上述したように、超伝導線材を高周波帯で使用した場合は、表皮効果によって超伝導線材の表面に高周波電流が流れるが、本発明にかかる超伝導線材では、基材11の両面に超伝導体層13を配置しているので、高周波電流を超伝導体層13に優先的に流すことができる。よって、導体損失の原因であった基材11(ハステロイ)の影響を最小限に抑えることができるので、高いQ値を実現することができる。
図3、図4に示したシミュレーション結果のように、表皮効果を考慮すると、超伝導体層13の表面には何も設けない構成とすることが好ましいが、超伝導体材料は水分や湿気に弱いため、実際に超伝導線材を作製する際は超伝導体層13の表面に保護層を形成する必要がある。しかしながら、図6、図8に示した検討結果のように、超伝導体層13の表面に形成する導電性保護層の厚さによっては、コイル(超伝導線材を用いて形成したコイル)のQ値が悪化する場合もある。
本願発明者は、図9に示す導電性保護層14の厚さについて詳細に検討した。図10は、表皮深さに対する導電性保護層(銀層)14の厚さの割合とQ値との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。なお、図10に示すシミュレーション結果は、シミュレーションの計算を簡略化するために、超伝導を仮定した導体(ハステロイを除いたもの)の両面に銀層14を設け、この銀層14の厚さを変更した場合のシミュレーション結果を示している。
図10に示すシミュレーション結果では、表皮深さに対する導電性保護層(銀層)14の厚さの割合が小さくなるほど、つまり、導電性保護層(銀層)14が薄くなるほど、コイルのQ値が高くなった。特に、表皮深さに対する導電性保護層(銀層)14の厚さの割合が10%以下になると、Q値が急激に改善する(増加する)ことがわかった。本発明では、導電性保護層14の各々の厚さは、超伝導線材に高周波電流を流した際の表皮深さの5%以下とすることが好ましい。特に、10000以上のQ値を得るためには、導電性保護層14の各々の厚さを表皮深さの3%以下とすることが好ましい。
一方で、導電性保護層14の厚さを薄くし過ぎると、導電性保護層14の保護層としての機能が低下する。よって、導電性保護層14の厚さは、超伝導体層13を保護することができる厚さ以上の厚さとする必要がある。例えば、導電性保護層14の厚さは、0.1μm以上とすることが好ましい。なお、導電性保護層14の材料に金を用いた場合は、金を薄く蒸着することができるので、例えば導電性保護層14の膜厚を0.01μm程度とすることができる。
ここで、表皮深さdは、電流が表面電流の1/e(約0.37)になる深さであり、次の式2を用いて算出することができる。
d={2ρ/(ω・μ)}1/2 ・・・式2
ここで、ρは導体の電気抵抗率、ωは電流の角周波数(=2π×周波数)、μは導体の絶対透磁率である。式2に示すように、導体に流れる電流の周波数が高くなるほど表皮深さdが小さくなる。逆に、導体に流れる電流の周波数が低くなるほど表皮深さdが大きくなる。また、導体の電気抵抗率が小さくなるほど、表皮深さdが小さくなる。逆に、導体の電気抵抗率が大きくなるほど、表皮深さdが大きくなる。
このように、導体に高周波電流を流した際の表皮深さは、導体に流す電流の周波数や導体の電気抵抗率に依存する。一例を挙げると、図6のタイプImの構造の10MHzにおける表皮深さは約20μmである。この表皮深さの値は保護膜である銀の物性値を用いて近似した値である。なお、銅の10MHzにおける表皮深さは20μmであり、銀と銅とでは、表皮深さの値は近い値となる。
この場合、導電性保護層(銀層)14の厚さを表皮深さの5%以下、つまり1μm以下にすることで、超伝導線材のQ値を高くすることができる。また、導電性保護層(銀層)14の厚さを表皮深さの3%以下、つまり0.6μm以下にすることで、超伝導線材のQ値を更に高くすることができる。
なお、本発明において導電性保護層14を構成する材料は銀に限定されることはなく、超伝導線材のQ値を高くすることができる導電性材料(つまり適切な厚さを備える導電性材料で、かつ導電率が高い材料)であれば、どのような材料を用いてもよい。例えば、導電性保護層14に金を用いてもよい。
<絶縁体保護層の検討>
また、本発明では、超伝導体層13を保護する保護層として、導電性保護層の代わりに絶縁体保護層を用いてもよい。図11は、超伝導線材の構造を示す断面図であり、保護層に誘電体材料を用いた構造を示している。図11に示す超伝導線材は、基材11と、基材11の両面の各々に形成された超伝導体層13と、各々の超伝導体層13の表面に形成された誘電体保護層16と、を備える。基材11と超伝導体層13との間には、必要に応じて中間層12が形成される。なお、図11に示す超伝導線材において、基材11、中間層12、及び超伝導体層13は、図9に示した超伝導線材の基材11、中間層12、及び超伝導体層13と同様であるので重複した説明は省略する。
超伝導体層13の表面には、保護層として誘電体保護層16が形成されている。誘電体保護層16は、超伝導体層13を水分や湿気から保護するための層である。
図3、図4に示したシミュレーション結果のように、誘電体損失を考慮すると、超伝導体層13の表面には何も設けない構成とすることが好ましいが、超伝導体材料は水分や湿気に弱いため、実際に超伝導線材を作製する際は超伝導体層13の表面に保護層を形成する必要がある。しかしながら、超伝導体層13の表面に形成する誘電体保護層によっては、超伝導線材のQ値が悪化する場合もある。
本願発明者は、図11に示す誘電体保護層16について詳細に検討した。図12Aは、誘電体保護層16の誘電正接(tanδ)とQ値との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。図12Aに示すシミュレーションでは、誘電体保護層16の厚さを0.05mmとした。なお、以下で説明する図12A~図12Cに示すシミュレーション結果は、シミュレーションの計算を簡略化するために、超伝導を仮定した導体(ハステロイを除いたもの)の両面に誘電体保護層16を設け、この誘電体保護層16の厚さを変更した場合のシミュレーション結果を示している。
図12Aに示すシミュレーション結果では、誘電体保護層16のtanδが0.001以下の場合に、超伝導線材のQ値が高くなった。また、誘電体保護層16のtanδが0.001以下のときに、超伝導線材のQ値が高い値で飽和した。逆に、誘電体保護層16のtanδが0.001よりも大きくなると、超伝導線材のQ値が劣化した。
図12Bは、誘電体保護層16の厚さとQ値との関係のシミュレーション結果を示すグラフである。図12Bに示すシミュレーションでは、誘電体保護層16のtanδを0.0001とした。
図12Bに示すシミュレーション結果では、誘電体保護層16の厚さが0.5mmよりも薄いときに超伝導線材のQ値が高くなった。また、誘電体保護層16の厚さが0.5mm以下のときに超伝導線材のQ値が高い値で飽和した。逆に、誘電体保護層16の厚さが0.5mmよりも厚くなると、超伝導線材のQ値が劣化した。
図12Aに示すように、誘電体保護層16のtanδの値が小さいほど、超伝導線材のQ値が高くなる。また、図12Bに示すように、誘電体保護層16の厚さが薄くなるほど、超伝導線材のQ値が高くなる。よって、図12Aに示すシミュレーション結果を考慮すると、誘電体保護層16は、tanδの値が0.001以下の材料を用いて構成することが好ましい。特に、誘電体保護層16は、tanδの値が0.001以下で、且つ厚さが0.05mm以下の材料を用いて構成することがより好ましい。
また、図12Bに示すシミュレーション結果を考慮すると、誘電体保護層16は、tanδの値が0.0001以下で、且つ厚さが0.5mm以下の材料を用いて構成することが好ましい。
一方で、誘電体保護層16の厚さを薄くし過ぎると、誘電体保護層16の保護層としての機能が低下する。よって、誘電体保護層16の厚さは、超伝導体層13を保護することができる厚さ以上の厚さとする必要がある。
例えば、誘電体保護層16は、ポリスチレン、又はポリイミドを用いて構成することができる。ここで、ポリスチレンのtanδは0.0001であり、図12Bに示すシミュレーション結果は、誘電体保護層16にポリスチレンを用いた場合を想定したシミュレーション結果である。図12Bに示すシミュレーション結果から、ポリスチレンの厚さは0.5mm以下とすることが好ましい。
図12Cは、誘電体保護層16にポリイミド、及びサファイア(Al)を用いた場合の、誘電体保護層16の厚さとQ値との関係を示すシミュレーション結果である。図12Cに示すシミュレーションでは、77Kにおけるポリイミドのtanδを0.0003としている。また、300Kにおけるポリイミドのtanδを0.001としている。更に、77Kにおけるサファイアのtanδを5.0×10-7としている。
ここで、300Kにおけるポリイミドのtanδは0.001であり、この結果は図12Aのシミュレーション結果に対応している。よって、この場合は誘電体保護層16の厚さを0.05mm以下とすることが好ましい。
また、77Kにおけるポリイミドのtanδは0.0003であり、この値は300Kにおけるポリイミドのtanδよりも小さい値である。よって、Q値の目標値を22000に設定した場合、誘電体保護層16の厚さを0.4mm以下とすることが好ましい。
また、77Kにおけるサファイアのtanδは5.0×10-7であり、この値はポリアミドやポリイミドのtanδと比べると非常に小さい値である。このため、図12Cに示すシミュレーション結果では、膜厚2mmの場合であっても、高いQ値を示した。なお、実際にサファイアを成膜する際は、スパッタ装置等の真空蒸着装置を用いるのが一般的であり、実際にはサファイア膜の膜厚は数十nm~数μm程度となる。
また、サファイア以外の材料として、例えば酸化マグネシウムや酸化セリウムを用いて誘電体保護層16を構成してもよい。例えば、77Kにおける酸化マグネシウムのtanδは5.0×10-5である。
なお、本発明において誘電体保護層16はこれらの材料に限定されることはなく、超伝導線材のQ値を高くすることができる材料(つまり適切なtanδと厚さを備える材料)であれば、どのような材料を用いてもよい。
<ハステロイのサイズの検討>
本発明では、超伝導線材の基材としてハステロイを用いている。ハステロイはNi-Cr-Mo合金(非磁性)であり、柔軟性と機械的強度を備えている。よって、超伝導線材の基材に好適に用いられる。しかしながら、ハステロイは銅の70倍の抵抗をもつ材料であり、ハステロイのサイズを適切なサイズにしないと、超伝導線材のQ値が劣化する場合がある。
本願発明者は、超伝導線材の基材に用いられるハステロイの適切なサイズを検討するために、以下に示すシミュレーションを行った。
図13は、シミュレーションを実施した超伝導線材の構造を示す斜視図である。本願発明者は、図13に示すような基材(ハステロイ)11の両面に超伝導体層(REBCO)13を備える構造の超伝導線材についてシミュレーションを実施した。
図14Aは、ハステロイの厚さtとQ値との関係を示すグラフ(シミュレーション結果)である。なお、図13に示す構造は図3のタイプIsの構造に対応しており、図14Aのシミュレーションの条件は、ハステロイのサイズを変更した点以外、図3のタイプIsに対するシミュレーションの条件と同様である。
図14Aのシミュレーション結果に示すように、超伝導線材のQ値は、ハステロイの厚さtが薄くなるほど高くなる。換言すると、超伝導線材のQ値は、ハステロイの厚さtが増加するほど低くなる。これは、ハステロイが厚くなると超伝導線材の損失が増加するためであると考えられる。
例えば、図14Aに示すシミュレーション結果において、超伝導線材(コイル)のQ値を25000以上にするためには、ハステロイの厚さは600μm以下とする必要がある。一方、ハステロイの厚さtが小さすぎると、ハステロイの強度が低下する。この点を考慮すると、本発明においてハステロイの適切な厚さは、100μm~600μmであることが好ましく、100μm~200μmであることがより好ましい。
また、本願発明者は、ハステロイ11の幅wについても検討した。図14Bは、ハステロイの幅wとQ値との関係を示すグラフである。図14Bに示すシミュレーション結果では、ハステロイの厚さtが100μm、200μm、800μmの場合の結果を示している。なお、図14Bのシミュレーションの条件は、ハステロイのサイズを変更した点以外、図3のタイプIsに対するシミュレーションの条件と同様である。
図14Bのシミュレーション結果に示すように、全ての厚さのハステロイにおいて、ハステロイの幅wが4mm以上の場合に、超伝導線材(コイル)のQ値が高い値となった。よって、ハステロイを用いて超伝導線材を構成する場合は、ハステロイの幅wを4mm以上とすることが好ましい。
<支持体の形状の検討>
超伝導線材を用いてコイルを作製する際、コイルの形状を保つために支持体に超伝導線材を埋め込む場合がある。しかしながら、図5のシミュレーション結果で示したように、超伝導線材を支持体に埋め込むと、コイルのQ値が支持体の誘電体損失によって減少する。支持体の誘電体損失の影響を低減させるためには、支持体の量(体積)を減少させることが重要である。本願発明者は、支持体の誘電体損失を低減させるための形状について検討した。
図15Aは、コイル31と、当該コイル31を支持する支持体32と、を備えるコイルユニット30の構成例を示す図である。図15Aに示すコイルユニット30では、上記で説明した超伝導線材をスパイラル状に巻いたコイル31を用いている。また、図15Aに示す支持体32は、誘電体材料を用いて構成されている。例えば、誘電体材料には加工がしやすい発泡スチロールを用いることができる。支持体32は、コイル31の中心から外側に伸びる複数の支持部を備える。
図15Aに示すコイルユニット30では、支持体32は、コイル31の中心において互いに交わる4本の支持部34_1~34_4を備える。この構成では、支持体32は、コイル31を8箇所(つまり、各々の支持部34_1~34_4において2箇所ずつ)で支持している。よって、図5に示した場合と比べて、コイル31と支持体32とが接する箇所を少なくすることができるので、支持体32の誘電体損失を小さくすることができる。
なお、図15Aに示した構成において、支持体32の強度を維持することができるのであれば、横方向に伸びる支持部34_1および縦方向に伸びる支持部34_2を省略してもよい。つまり、斜め方向に伸びる2本の支持部34_3、34_4を用いてコイル31を支持するように構成してもよい。この場合は、コイル31と支持体32とが接する箇所を更に少なくすることができるので、支持体32の誘電体損失を小さくすることができる。また、図15Aに示す支持体32は、サファイアを用いて構成してもよい。
図15Bは、コイル36と、当該コイル36を支持する支持体37と、を備えるコイルユニット35の他の構成例を示す図である。図15Bに示すコイルユニット35では、支持体37の外周にコイル36を捲回している。コイル36には上記で説明した超伝導線材を用いている。また、支持体37には、誘電体材料、特に好ましくはサファイアを用いることができる。例えば、発泡スチロール(ポリスチレン)の誘電体損失は、0.0002であるのに対して、サファイアの誘電体損失は5.0×10-7と非常に低い。このため、サファイアを用いて支持体37を構成することで、支持体37の誘電体損失の影響を低減させることができ、コイル36のQ値が支持体37の誘電体損失によって減少することを抑制することができる。
本願発明者は、支持体37に発泡スチロールとサファイアをそれぞれ用いた場合のコイル36のQ値についてシミュレーションを行った。このとき、支持体37の厚さは10mmとした。また、発泡スチロールとサファイアの誘電体損失には上記の値を用いた。シミュレーションの結果、支持体37に発泡スチロールを用いた場合のコイル36のQ値は10667であった。これに対して、支持体37にサファイアを用いた場合のコイル36のQ値は57890であった。これらのシミュレーション結果から、支持体37にサファイアを用いた場合は、支持体37に発泡スチロールを用いた場合よりもコイル36のQ値が大幅に高い値となった。
また、支持体37を設けない場合のコイル36のQ値、つまりコイル36のみのQ値は57919であった。よって、支持体37にサファイアを用いた場合のコイル36のQ値(57890)は、コイルのみのQ値(57919)に非常に近い値となり、支持体37にサファイアを用いた場合は、支持体37に起因する誘電体損失をほぼ無視できることがわかった。
なお、図15A、図15Bに示した支持体30の構成例は一例であり、本発明において支持体の形状はこれ以外の形状としてもよい。例えば、図15Bに示したコイルユニット35では、支持体37の断面形状を矩形状としたが、支持体37の断面形状は円形状であってもよい。この場合は、支持体37の形状を円筒形状とすることができる。また、サファイアを用いて支持体37を構成する場合は、例えば複数の棒状のサファイアを用いて構成してもよい。つまり、大きなサイズのサファイアを形成することは困難であるため、比較的小さいサイズの棒状のサファイアを複数形成し、これらを支持体37の形状となるように配置することで支持体37を構成してもよい。
以上で説明した構成の超伝導線材、及びコイルユニットを用いることで、高周波帯で使用した場合であっても高いQ値を実現することができる。
<超伝導線材の具体的な構成例>
次に、超伝導線材の具体的な構成例について説明する。
図16A~図16Dは、本実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図(超伝導線材の長手方向と垂直な平面で切断した断面図)である。まず、図16Aに示す構成例について説明する。
図16Aに示す超伝導線材40_1は、線材41aと線材41bとを備える。線材41aは、基材11aと、基材11aの表面に形成された超伝導体層13aと、超伝導体層13aの表面に形成された保護層14aと、を備える。基材11aと超伝導体層13aとの間には、必要に応じて中間層(図9の中間層12参照)を形成してもよい。また、線材41bは、基材11bと、基材11bの表面に形成された超伝導体層13bと、超伝導体層13bの表面に形成された保護層14bと、を備える。基材11bと超伝導体層13bとの間には、必要に応じて中間層(図9の中間層12参照)を形成してもよい。
図16Aに示す超伝導線材40_1では、線材41aの超伝導体層13aと線材41bの超伝導体層13bとが互いに外向きになるように線材41aと線材41bとを配置している。具体的には、線材41aと線材41bとを形成し、これら2つの線材を互いに逆向きにして基材11aと基材11bとを導電性接着剤44を用いて貼り合わせている。
超伝導線材40_1を構成する材料には、上述した材料を用いることができる。つまり、基材11a、11bには、例えばハステロイを用いることができる。また、超伝導体層13a、13bには、希土類系の超伝導体を用いることができる。また、例えば、保護層14bには、導電性保護層(銀層)や誘電体保護層を用いることができる。
図16Aに示す超伝導線材40_1では、線材41aと線材41bとを形成し、これら2つの線材を互いに逆向きにして貼り合わせることで超伝導線材を形成しているので、超伝導線材を容易に形成することができる。すなわち、基材の両面に超伝導体層を形成するには特殊な成膜装置が必要となり、製造設備が煩雑になる。これに対して、図16Aに示す超伝導線材40_1では、各々の基材41a、41bの片面に超伝導体層13a、13bを形成し、これら2つの線材を互いに逆向きにして基材41aと基材41bとを貼り合わせることで超伝導線材を形成している。このように、図16Aに示す超伝導線材40_1では、各々の基材41a、41bの片面に超伝導体層13a、13bを形成しているので、一般的な成膜装置を用いて超伝導体層13a、13bを形成することができる。よって、超伝導線材を容易に形成することができる。
次に、図16Bに示す超伝導線材40_2について説明する。図16Bに示す超伝導線材40_2は、図16Aに示した超伝導線材40_1の周囲に更に誘電体テープ45を設けている。つまり、図16Bに示す超伝導線材40_2では、超伝導線材の周囲を取り囲むように誘電体テープ45を貼付することで、線材41aと線材41bとを固定している。よって、線材41aと線材41bとを導電性接着剤44を用いて貼り合わせると共に、誘電体テープ45を用いて線材41aと線材41bとを固定しているので、2つの線材同士を強固に固定することができる。
誘電体テープ45には、例えばポリイミドを含む誘電体テープを用いることができる。誘電体テープ45を用いる場合は、超伝導線材40_2の導体損失が増加しないように、適切な誘電体損失と厚さを備える誘電体テープを用いる必要がある。なお、線材41aと線材41bとを構成する材料については、図16Aに示した材料と同様である。
次に、図16Cに示す超伝導線材40_3について説明する。図16Cに示す超伝導線材40_3は、図16Bに示した超伝導線材40_2の構成において、導電性接着剤44を省略した構成を示している。これ以外の構成については、図16Bに示した超伝導線材40_2の構成と同様である。
図16Cに示す超伝導線材40_3では、超伝導線材の周囲を取り囲むように誘電体テープ45を貼付することで、線材41aと線材41bとを固定している。よって、導電性接着剤の使用を省略することができるので、超伝導線材の構成を簡略化することができる。
次に、図16Dに示す超伝導線材40_4について説明する。図16Dに示す超伝導線材40_4は、図16Cに示した超伝導線材40_3の構成において、保護層14a、14bを省略した構成を示している。これ以外の構成については、図16Cに示した超伝導線材40_3の構成と同様である。
図16Dに示す超伝導線材40_4においても、超伝導線材の周囲を取り囲むように誘電体テープ45を貼付することで、線材41aと線材41bとを固定している。ここで、超伝導線材に誘電体テープ45を貼付する際に、誘電体テープ45を用いて超伝導線材を隙間なくコーティングできる場合は、超伝導体層13a、13bを外部の水分や湿気から保護することができる。よって、この場合は、保護層14a、14b(図16C参照)を省略することができるので、超伝導線材の構成を簡略化することができる。なお、同様の理由から、図16Bの構成において、保護層14a、14bを省略してもよい。
<超伝導線材の具体的な構成例(芯材を備える構成例1)>
超伝導線材を用いてコイルを作製する際、コイルの形状を保つために支持体に超伝導線材を埋め込む場合がある。しかしながら、図5のシミュレーション結果で示したように、超伝導線材を支持体に埋め込むと、コイルのQ値が支持体の誘電体損失によって減少する。本願発明者は、支持体を用いなくてもコイルの形状を保つことができる超伝導線材の構成について検討した。
図17A~図17Dは、本実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図(超伝導線材の長手方向と垂直な平面で切断した断面図)である。まず、図17Aに示す構成例について説明する。
図17Aに示す超伝導線材50_1は、線材51aと線材51bとを備える。線材51aは、基材11aと、基材11aの表面に形成された超伝導体層13aと、超伝導体層13aの表面に形成された保護層14aと、を備える。基材11aと超伝導体層13aとの間には、必要に応じて中間層(図9の中間層12参照)を形成してもよい。また、線材51bは、基材11bと、基材11bの表面に形成された超伝導体層13bと、超伝導体層13bの表面に形成された保護層14bと、を備える。基材11bと超伝導体層13bとの間には、必要に応じて中間層(図9の中間層12参照)を形成してもよい。
図17Aに示す超伝導線材50_1では、線材51aの超伝導体層13aと線材51bの超伝導体層13bとが互いに外向きになるように線材51aと線材51bとを配置している。また、線材51aと線材51bとの間には、芯材52が配置されている。具体的には、線材51aの基材11aは、芯材52の一方の面において芯材52と導電性接着剤54aを用いて接合されている。また、線材51bの基材11bは、芯材52の他方の面において芯材52と導電性接着剤54bを用いて接合されている。
ここで、芯材52は、超伝導線材50_1を曲げた際に超伝導線材50_1の形状を維持することが可能な導電性の材料である。また、芯材52には、導電率が基材11a、11bの導電率よりも高い材料を用いている。一例を挙げると、基材11a、11bにはハステロイを用いることができ、芯材52には銅を用いることができる。
例えば、図16Aに示した構成において、超伝導線材を曲げた際に超伝導線材の形状を維持できるようにするためには、基材11a、11bの厚さを厚くする必要がある。しかしながら、例えば基材11a、11bをハステロイを用いて構成した場合は、ハステロイの導体損失が大きいため、超伝導線材のQ値が劣化する(図14A参照)。
この点を考慮し、図17Aに示す超伝導線材50_1では、芯材52を設けると共に、芯材52として基材11a、11bよりも導電率の高い材料(例えば、銅)を用いている。よって、超伝導線材50_1を曲げた際に超伝導線材50_1の形状を自立して維持することができると共に、超伝導線材のQ値が劣化することを抑制することができる。
次に、図17Bに示す超伝導線材50_2について説明する。図17Bに示す超伝導線材50_2は、図17Aに示した超伝導線材50_1の周囲に更に誘電体テープ55を設けている。つまり、図17Bに示す超伝導線材50_2では、超伝導線材の周囲を取り囲むように誘電体テープ55を貼付することで、線材51a、芯材52、及び線材51bを固定している。よって、線材51a、芯材52、及び線材51bを導電性接着剤54a、54bを用いて貼り合わせると共に、誘電体テープ55を用いて線材51a、芯材52、及び線材51bを固定しているので、芯材52と2つの線材51a、51bとを強固に固定することができる。
誘電体テープ55には、例えばポリイミドを含む誘電体テープを用いることができる。誘電体テープ55を用いる場合は、超伝導線材50_2の導体損失が増加しないように、適切な誘電体損失と厚さを備える誘電体テープを用いる必要がある。なお、線材51a、51b、及び芯材52を構成する材料については、図17Aに示した材料と同様である。
次に、図17Cに示す超伝導線材50_3について説明する。図17Cに示す超伝導線材50_3は、図17Bに示した超伝導線材50_2の構成において、導電性接着剤54a、54bを省略した構成を示している。これ以外の構成については、図17Bに示した超伝導線材50_2の構成と同様である。
図17Cに示す超伝導線材50_3では、超伝導線材の周囲を取り囲むように誘電体テープ55を貼付することで、線材51a、芯材52、及び線材51bを固定している。よって、導電性接着剤の使用を省略することができるので、超伝導線材の構成を簡略化することができる。
次に、図17Dに示す超伝導線材50_4について説明する。図17Dに示す超伝導線材50_4は、図17Cに示した超伝導線材50_3の構成において、保護層14a、14bを省略した構成を示している。これ以外の構成については、図17Cに示した超伝導線材50_3の構成と同様である。
図17Dに示す超伝導線材50_4においても、超伝導線材の周囲を取り囲むように誘電体テープ55を貼付することで、線材51a、芯材52、及び線材51bを固定している。ここで、超伝導線材に誘電体テープ55を貼付する際に、誘電体テープ55を用いて超伝導線材を隙間なくコーティングできる場合は、超伝導体層13a、13bを外部の水分や湿気から保護することができる。よって、この場合は、保護層14a、14b(図17C参照)を省略することができるので、超伝導線材の構成を簡略化することができる。なお、同様の理由から、図17Bの構成において、保護層14a、14bを省略してもよい。
<超伝導線材の具体的な構成例(芯材を備える構成例2)>
次に、芯材を備える超伝導線材の他の構成例について説明する。
図18A~図18Dは、本実施の形態にかかる超伝導線材の具体的な構成例を示す断面図(超伝導線材の長手方向と垂直な平面で切断した断面図)である。まず、図18Aに示す構成例について説明する。
図18Aに示す超伝導線材60_1は、線材61aと線材61bとを備える。線材61aは、基材11aと、基材11aの表面に形成された超伝導体層13aと、超伝導体層13aの表面に形成された保護層14aと、を備える。基材11aと超伝導体層13aとの間には、必要に応じて中間層(図9の中間層12参照)を形成してもよい。また、線材61bは、基材11bと、基材11bの表面に形成された超伝導体層13bと、超伝導体層13bの表面に形成された保護層14bと、を備える。基材11bと超伝導体層13bとの間には、必要に応じて中間層(図9の中間層12参照)を形成してもよい。
図18Aに示す超伝導線材60_1では、線材61aの超伝導体層13aと線材61bの超伝導体層13bとが互いに外向きになるように線材61aと線材61bとを配置している。また、線材61aと線材61bとの間には、芯材62が配置されている。具体的には、線材61aの基材11aは、芯材62の一方の面において芯材62と導電性接着剤64aを用いて接合されている。また、線材61bの基材11bは、芯材62の他方の面において芯材62と導電性接着剤64bを用いて接合されている。
図18Aに示す超伝導線材60_1では、芯材62は、形状維持材料66と導電性材料67とを用いて構成されている。ここで、形状維持材料66は、超伝導線材60_1を曲げた際に超伝導線材60_1の形状を維持することが可能な材料である。形状維持材料66は、導電性材料を用いて構成してもよく、また絶縁体を用いて構成してもよい。導電性材料67は、形状維持材料66の周囲に配置されており、導電率が高い材料(例えば、銅)を用いて構成されている。例えば、形状維持材料66の周囲に配置する導電性材料67の厚さは、表皮深さよりも厚くすることが好ましい。
図18Aに示す超伝導線材60_1では、形状維持材料66と導電性材料67とを用いて芯材62を構成している。よって、図17Aに示した超伝導線材50_1と比べて、芯材の厚さを薄くすることができる。つまり、図17Aに示した超伝導線材50_1のように、芯材52を1つの材料(例えば、銅)を用いて構成した場合は、超伝導線材の形状を維持することができるようにするために、芯材52をある程度厚くする必要があった。これに対して、図18Aに示す超伝導線材60_1では、超伝導線材の形状を維持することに特化した形状維持材料66と、導電性に特化した導電性材料67とを用いて芯材62を構成することができるので、芯材62の厚さを、図17Aで用いた芯材52の厚さよりも薄くすることができる。また、図18Aに示す超伝導線材60_1においても、超伝導線材を曲げた際に超伝導線材の形状を自立して維持することができると共に、超伝導線材のQ値が劣化することを抑制することができる。
図19は、芯材62の製造方法の一例を説明するための断面図である。芯材62を製造する際は、例えば断面形状が円形の形状維持材料66の周囲に導電性材料67をコーティングして線材68を作製する。その後、この線材68の外周面を圧延ロールを用いて圧縮することで、断面形状が矩形状の芯材62を形成することができる。
次に、図18Bに示す超伝導線材60_2について説明する。図18Bに示す超伝導線材60_2は、図18Aに示した超伝導線材60_1の周囲に更に誘電体テープ65を設けている。つまり、図18Bに示す超伝導線材60_2では、超伝導線材の周囲を取り囲むように誘電体テープ65を貼付することで、線材61a、芯材62、及び線材61bを固定している。よって、線材61a、芯材62、及び線材61bを導電性接着剤64a、64bを用いて貼り合わせると共に、誘電体テープ65を用いて線材61a、芯材62、及び線材61bを固定しているので、芯材62と2つの線材61a、61bとを強固に固定することができる。
誘電体テープ65には、例えばポリイミドを含む誘電体テープを用いることができる。誘電体テープ65を用いる場合は、超伝導線材60_2の導体損失が増加しないように、適切な誘電体損失と厚さを備える誘電体テープを用いる必要がある。なお、線材61a、61b、及び芯材62を構成する材料については、図18Aに示した材料と同様である。
次に、図18Cに示す超伝導線材60_3について説明する。図18Cに示す超伝導線材60_3は、図18Bに示した超伝導線材60_2の構成において、導電性接着剤64a、64bを省略した構成を示している。これ以外の構成については、図18Bに示した超伝導線材60_2の構成と同様である。
図18Cに示す超伝導線材60_3では、超伝導線材の周囲を取り囲むように誘電体テープ65を貼付することで、線材61a、芯材62、及び線材61bを固定している。よって、導電性接着剤の使用を省略することができるので、超伝導線材の構成を簡略化することができる。
次に、図18Dに示す超伝導線材60_4について説明する。図18Dに示す超伝導線材60_4は、図18Cに示した超伝導線材60_3の構成において、保護層14a、14bを省略した構成を示している。これ以外の構成については、図18Cに示した超伝導線材60_3の構成と同様である。
図18Dに示す超伝導線材60_4においても、超伝導線材の周囲を取り囲むように誘電体テープ65を貼付することで、線材61a、芯材62、及び線材61bを固定している。ここで、超伝導線材に誘電体テープ65を貼付する際に、誘電体テープ65を用いて超伝導線材を隙間なくコーティングできる場合は、超伝導体層13a、13bを外部の水分や湿気から保護することができる。よって、この場合は、保護層14a、14b(図18C参照)を省略することができるので、超伝導線材の構成を簡略化することができる。なお、同様の理由から、図18Bの構成において、保護層14a、14bを省略してもよい。
また、本発明では、図20の断面図に示すように、芯材62を構成する際に、形状維持材料68の両側に導電性材料69を配置するようにしてもよい。この場合も、芯材62の厚さを、図17Aで用いた芯材52の厚さよりも薄くすることができる。また、超伝導線材を曲げた際に超伝導線材の形状を自立して維持することができると共に、超伝導線材のQ値が劣化することを抑制することができる。なお、図20に示す構成において、図18B~図18Dの構成を適用してもよい。つまり、図20に示す構成に、更に誘電体テープを設けてもよく(図18B参照)、また導電性接着剤を省略してもよく(図18C参照)、また保護層を省略してもよい(図18D参照)。
以上、本発明を上記実施の形態に即して説明したが、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正、組み合わせを含むことは勿論である。
11 基材(ハステロイ)
12 中間層
13 超伝導体層
14 導電性保護層(銀層)
16 誘電体保護層
20 コイル
21 支持体
23 入力側ループコイ
24 出力側ループコイル
25 測定装置
30、35 コイルユニット
31、36 コイル
32、37 支持体
40_1~40_4 超伝導線材
41a、41b 線材
44 導電性接着剤
45 誘電体テープ
50_1~50_4 超伝導線材
51a、51b 線材
52 芯材
54a、54b 導電性接着剤
55 誘電体テープ
60_1~60_5 超伝導線材
61a、61b 線材
62 芯材
64a、64b 導電性接着剤
65 誘電体テープ
66、68 形状維持材料
67、69 導電性材料
110 銅層
111 ハステロイ
112 中間層
113 超伝導体層
114 銀層
115 銅層

Claims (12)

  1. 基材と、
    前記基材の両面の各々に形成された超伝導体層と、
    前記各々の超伝導体層の表面に形成された導電性保護層と、を備える、高周波帯で使用される超伝導線材であって、
    前記超伝導線材に周波数が10MHz以上の高周波電流を流した際の表皮深さをdとした場合、前記表皮深さdは、d={2ρ/(ω・μ)}1/2であり(ただし、ρは導体の電気抵抗率、ωは電流の角周波数、μは導体の絶対透磁率)、
    前記各々の導電性保護層は銀を用いて形成され、厚さは前記超伝導線材に高周波電流を流した際の表皮深さdの5%以下、かつ、0.1~1.05μmである、
    超伝導線材。
  2. 前記導電性保護層の各々の厚さは、前記超伝導線材に高周波電流を流した際の表皮深さdの3%以下である、請求項1に記載の超伝導線材。
  3. 前記基材はハステロイで構成されている、請求項1または2に記載の超伝導線材。
  4. 前記ハステロイの幅は4mm以上である、請求項に記載の超伝導線材。
  5. 前記ハステロイの厚さは100μm~200μmである、請求項に記載の超伝導線材。
  6. 前記超伝導体層は、希土類系超伝導材料を用いて構成されている、請求項1乃至のいずれか一項に記載の超伝導線材。
  7. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の超伝導線材をスパイラル状に巻いたコイルと、
    前記コイルを支持する支持体と、を備え、
    前記支持体は誘電体を用いて構成されており、前記コイルの中心から外側に伸びる複数の支持部を備える、
    コイルユニット。
  8. 前記支持体は、サファイアを用いて構成されている、請求項に記載のコイルユニット。
  9. 請求項1乃至のいずれか一項に記載の超伝導線材を捲回して形成されたコイルと、
    前記コイルを支持する支持体と、を備え、
    前記支持体はサファイアを用いて構成されている、
    コイルユニット。
  10. 高周波帯で使用される超伝導線材であって、
    前記超伝導線材は、
    第1の基材と、当該第1の基材の表面に形成された第1の超伝導体層と、当該第1の超伝導体層の表面に形成された第1の導電性保護層と、を備える第1の線材と、
    第2の基材と、当該第2の基材の表面に形成された第2の超伝導体層と、当該第2の超伝導体層の表面に形成された第2の導電性保護層と、を備える第2の線材と、を備え、
    前記第1及び第2の線材は、前記第1及び第2の超伝導体層が互いに外向きになるように貼り合わせており、
    前記超伝導線材に周波数が10MHz以上の高周波電流を流した際の表皮深さをdとした場合、前記表皮深さdは、d={2ρ/(ω・μ)}1/2であり(ただし、ρは導体の電気抵抗率、ωは電流の角周波数、μは導体の絶対透磁率)、
    前記第1及び第2の導電性保護層は銀を用いて形成され、厚さは前記超伝導線材に高周波電流を流した際の表皮深さdの5%以下、かつ0.1~1.05μmである、
    超伝導線材。
  11. 前記導電性保護層の各々の厚さは、前記超伝導線材に高周波電流を流した際の表皮深さdの3%以下である、請求項10に記載の超伝導線材。
  12. 前記第1の基材と前記第2の基材とが導電性接着剤を用いて互いに接合されている、請求項11または12に記載の超伝導線材。
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