JP6914131B2 - 超電導コイル - Google Patents
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Description
第一の態様では、超電導テープが巻き回されたコイル本体に、高熱伝導率のアルミテープが共巻きされている箇所は、アルミテープにより熱的安定性(冷却性)を確保できる。
また、アルミテープにより熱的安定性(冷却性)を確保できるため、従来技術のCu安定化層を薄くしたり、省略したりすることができる。Al(アルミニウム)はCu(銅)より低比重であるため、コイル全体を軽量化できる。Cu安定化層を省略する場合は、Cu安定化層の施工が不要になるため製造コストが低減する。
なお、アルミテープは超電導テープと絶縁されているので、電流バイパス機能は発揮しない。
第二の態様では、Cu安定化層の施工が不要になるため、低コストで製造できる。
第三の態様では、超電導テープとアルミテープとの間に介在する電気絶縁材が、アルミテープの周囲に形成された絶縁材である。つまり、アルミテープの周囲に電気絶縁材を形成することで、共巻きされたアルミテープと超電導テープとの間を電気的に絶縁させている。したがって、アルミテープの周囲ではなく、超電導テープの周囲に絶縁処理が施されて製造される超電導コイルと比較して、製造の作業性がよい。また、超電導テープに絶縁処理を施す場合の超電導テープへの負荷を避けることができるので、超電導テープの劣化を防止できる。
積層構造を有するRE系超電導線材を用いた超電導コイルを樹脂含浸する場合、含浸樹脂の熱収縮により超電導テープが剥離する方向の力を受け、超電導テープが剥離して劣化するおそれがある。
そこで、第四の態様では、超電導テープとアルミテープとの間に介在する電気絶縁材が、アルミテープの周囲に形成されたポリイミド被膜である。つまり、アルミテープの周囲にポリイミド被膜を形成することで、共巻きされたアルミテープと超電導テープとの間を電気的に絶縁させている。ポリイミド被膜は離型性を有し、含浸樹脂に対して剥離しやすいため、ターン間の含浸樹脂が熱収縮しても、ポリイミド被膜が含浸樹脂から剥離することで、超電導テープが剥離方向の力を受けることが抑制される。その結果、超電導テープの劣化が抑制される。
また、ポリイミド被膜を、超電導テープの周囲ではなく、アルミテープの周囲に形成すればよいので製造の作業性がよく、また超電導テープの劣化を防止できる。
第五の態様では、超電導テープとアルミテープとの間に介在する電気絶縁材が、アルミテープの周囲にらせん状に巻かれたフッ素樹脂でコーティングしたポリイミドフィルムテープである。つまり、アルミテープの周囲にフッ素樹脂でコーティングしたポリイミドフィルムテープをらせん状に巻くことで、共巻きされたアルミテープと超電導テープとの間を電気的に絶縁させている。フッ素樹脂でコーティングしたポリイミドフィルムテープは離型性を有し、含浸樹脂に対して剥離しやすいため、ターン間の含浸樹脂が熱収縮しても、ポリイミドフィルムテープが含浸樹脂から剥離することで、超電導テープが剥離方向の力を受けることが抑制される。その結果、超電導テープの劣化が抑制される。
また、フッ素樹脂でコーティングしたポリイミドフィルムテープを、超電導テープの周囲ではなく、アルミテープの周囲に巻けばよいので製造の作業性がよく、また超電導テープの劣化を防止できる。
超電導コイルで磁界を発生させると、コイル中心部だけでなく、超電導テープが巻き回されているコイル本体の内部にも磁界(以下、内部磁界)が発生する。内部磁界は、その位置に応じて強度が異なり、磁界強度が大きい位置では、超電導テープの経験磁界が大きくなり、臨界状態に達しやすい。臨界状態に達しやすい部分が超電導コイル全体の臨界電流に悪影響を与える。
そこで、第六の態様では、コイル本体が、アルミテープ共巻きの有無、および、共巻きされたアルミテープの厚みにより区分けされる複数の領域から構成されている。そして、当該複数の領域は、アルミテープが共巻きされていない単巻領域と、最大磁界強度が単巻領域の最大磁界強度よりも大きく、かつアルミテープが共巻きされている共巻領域と、を含んでいる。
つまり、最大磁界強度が大きい領域は、アルミテープが共巻きされた共巻領域となっており、超電導テープが疎巻きになっている。そのため、超電導テープの経験磁界が小さくなり、超電導コイル全体の臨界電流が増加する。その結果、所望の磁界強度を得るためのターン数を減らすことができ、使用する超電導テープを低減できる。
第九の態様では、コイル本体が、アルミテープ共巻きの有無、および、共巻きされたアルミテープの厚みにより区分けされる複数の領域から構成されている。そして、当該複数の領域は、アルミテープが共巻きされた第一共巻領域と、その最大磁界強度が前記第一共巻領域の最大磁界強度よりも大きく、かつ共巻きされているアルミテープの厚みが前記第一共巻領域のアルミテープの厚みよりも大きい第二共巻領域と、を含んでいる。
つまり、最大磁界強度が大きい第二共巻領域は、最大磁界強度が小さい第一共巻領域よりも厚みが大きいアルミテープが共巻きされた領域となっており、超電導テープが疎巻きになっている。そのため、臨界状態に達しやすい領域の超電導テープの経験磁界が小さくなり、超電導コイル全体の臨界電流が増加する。その結果、所望の磁界強度を得るためのターン数を減らすことができ、使用する超電導テープを低減できる。
例えば、コイル本体が3つの領域a,b,cから構成されており、それぞれの最大磁界強度がBa,Bb,Bcであるとする。この場合、最大磁界強度がBa>Bc>Bbの関係にあり、かつアルミテープの厚みがTa=Tc>Tbの関係にあるときも、「複数の領域(3つの領域)を最大磁界強度が大きい順に並べた順番は、当該複数の領域(3つの領域)を共巻きされたアルミテープの厚みが大きい順で並べた順番と一致している」と判断する。換言すると、「Bj<Bkであり、かつTj>Tkである」を満たす任意の領域j、領域kの組み合わせが、複数の領域の中に存在しないことを意味する。
以下、本発明の第一実施形態について説明する。
まず、超電導テープ10について説明する。
次に、アルミテープ20について説明する。
以上で説明した超電導テープ10とアルミテープ20とを重ね合わせ、共に巻く。簡単に言うと、超電導テープ10とアルミテープ20とを共巻きする。このときアルミテープ20の周囲に形成されたポリイミド被膜30によって、超電導テープ10とアルミテープ20との間に「電気絶縁材」としてのポリイミド被膜30が介在することとなる。よって、超電導テープ10とアルミテープ20とは電気的に絶縁された状態で共巻きされる。巻き回し方は特に限定されないが、通常、巻枠42の周りに巻き回すことで行われる。
巻き回された超電導テープ10およびアルミテープ20は、エポキシ樹脂などを含浸材として樹脂含浸により形状を固定される。図1や図4に示すコイルは円形コイルであるが、コイル形状がレーストラック形状などの非円形の場合は、樹脂含浸によりコイル形状を固定することが特に好ましい。
シングルパンケーキコイルは、それぞれケース40に収容され、含浸樹脂50により超電導テープ10やアルミテープ20とケース40(の側板44)とが隙間が埋められている(図5参照)。これにより、含浸樹脂50は、超電導テープ10やアルミテープ20の熱をケース40へ伝達するように機能する。さらに、含浸樹脂50は、超電導テープ10とアルミテープ20との隙間をも埋めている(図5参照)。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
そして、アルミテープ20により熱的安定性(冷却性)を確保したことで、超電導テープ10において従来技術に見られるCu安定化層が省略されている。Al(アルミニウム)はCu(銅)より低比重であるため、コイル全体を軽量化しやすい。また、Cu安定化層の施工が不要な分、低コスト化できる。
このため、アルミテープ20の周囲ではなく、超電導テープ10の周囲に絶縁処理が施されて製造される超電導コイルと比較して、製造の作業性がよい。また、超電導テープに絶縁処理を施す際の超電導テープへの負荷を避けることができるので、超電導テープの劣化を防止できる。
このため、以下の作用効果を奏する。
すなわち、超電導テープ10が積層構造を有するRE系超電導線材であるため、樹脂含浸すると、ターン間に入り込んだ含浸樹脂50の熱収縮により超電導テープ10が剥離方向の力を受け、超電導テープ10が劣化するおそれがある。
本実施形態では、超電導テープ10とアルミテープ20との間に介在する電気絶縁材が、アルミテープ20の周囲に形成されたポリイミド被膜30であるため、ターン間に入り込んだ含浸樹脂50が熱収縮しても、剥離しやすい(離型性を有する)ポリイミド被膜30が含浸樹脂50から剥離することで、超電導テープが剥離方向の力を受けることが抑制される。その結果、超電導テープの劣化が抑制される。
また、ポリイミド被膜30を、超電導テープ10の周囲ではなく、アルミテープ20の周囲に形成すればよいので製造の作業性がよく、また超電導テープ10の劣化を防止できる。
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
本実施形態の超電導コイルS2の場合、複数の領域(領域a、領域b、領域c)の最大磁界強度(Ba,Bb、Bc)の関係は、Ba>Bc>Bbの関係である。
次に、第二実施形態の作用効果について説明する。
超電導コイルで磁界を発生させると、コイル中心部だけでなく、超電導テープ10が巻かれているコイル本体10Cの内部にも磁界(以下、内部磁界)が発生する。内部磁界の磁界強度は、コイル本体10Cの内部の位置に応じて変化する。例えば、径方向の位置に応じて磁界強度が異なり、通常のコイル内周側端部の磁界強度が最も大きくなる。
磁界強度が大きい部分では、超電導テープ10の経験磁界が大きくなり、臨界状態に達しやすい。臨界状態に達しやすい部分が超電導コイルの臨界電流に悪影響を与える。
そこで、内部磁界が強く臨界条件に達しやすい部分を含む領域を共巻領域として疎巻きにすることで、超電導コイル全体としての臨界電流を上げることができる。
このため、最大磁界強度が大きい領域aは、共巻領域となっており、その結果、領域aの超電導テープ10は疎巻きになっている。すると、最大磁界強度が大きい領域aの超電導テープ10の経験磁界を減らすことができ、コイル全体の臨界電流を上昇できる。つまり、コイル径の不要な拡大を抑制しつつ、臨界電流に優れた超電導コイルとすることができる。
これによっても、より一層、コイル径の不要な拡大を抑制しつつ、臨界状態に達しにくい臨界電流に優れた超電導コイルとすることができる。
つまり、最大磁界強度が大きい領域a(第二共巻領域)は、その最大磁界強度が小さい領域c(第一共巻領域)よりも厚みが大きいアルミテープが共巻きされた領域となっており、超電導テープが疎巻きになっている。これによっても、より一層、臨界電流に優れた超電導コイルとすることができる。
このように、コイル本体10Cの全体において、内部磁界が大きくなる部分により厚いアルミテープ20が共巻きされる構造としているので、効果的に、臨界電流に優れた超電導コイルとすることができる。
以下、各領域における共巻きの有無、および共巻きするアルミテープの厚みの決定方法について、その一例を説明する。
Td=TdN×Bj/Bmax (1)
式中、Bjは、各領域における最大磁界強度を示し、Bmaxは、コイル本体全体における最大磁界強度を示す。
以上、本発明の第一実施形態および第二実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されず適宜変形可能である。変形例の一部を図6に示す。図6は、シングルパンケーキコイルを4層に積層した構造の超電導コイルにおいて、コイル本体をコイル周方向に直交する平面で切断した模式的な断面図である。
また、図6(b)(c)に示すように、コイル本体の全部にアルミテープを共巻きしつつ、コイル径方向の位置によって区分けされた複数の領域でアルミテープの厚みに違いを設けてもよい。
そこで、上記実施形態では、コイル径方向の位置に応じて複数の領域を区分けした例を説明したが、複数の領域は、コイル積層方向の位置(積層されたパンケーキコイル)に応じて区分けしてもよい。
また、図6(e)に示すように、コイル断面における周縁部を共巻領域とし、それ以外の部分を単巻領域としてもよい。
そこで、複数の領域は、コイル周方向の位置に応じて区分けしてもよい。
なお、上記実施形態では、RE系超電導線材である超電導テープ10の積層構造を具体的に説明したが、超電導テープ10の積層構造は特に限定されない。本発明の「超電導テープ」は、例えば、Ag保護層の上にCu層が薄く(例えば、10μm未満)形成されたものであってもよい。
S2 超電導コイル
10 超電導テープ
10C コイル本体
12 基材
14 配向中間層
16 超電導層
18 保護層
20 アルミテープ
20A アルミテープ
20C アルミテープ
30 ポリイミド被膜(電気絶縁材)
40 ケース
42 巻枠
44 側板
50 含浸樹脂
60 冷却板
a 領域a(共巻領域、第二共巻領域)
b 領域b(単巻領域)
c 領域c(共巻領域、第一共巻領域)
Claims (11)
- 超電導テープが巻き回されたコイル本体と、
前記超電導テープとの間に電気絶縁材が介在した状態で、前記コイル本体の全部または一部と共巻きされたアルミテープと、
を備える超電導コイルであって、
前記コイル本体は、アルミテープ共巻きの有無、および、共巻きされたアルミテープの厚みにより区分けされる複数の領域から構成されており、
前記複数の領域は、
アルミテープが共巻きされていない単巻領域と、
その最大磁界強度が前記単巻領域の最大磁界強度よりも大きく、かつアルミテープが共巻きされている共巻領域と、を含んでいる、
超電導コイル。 - 前記単巻領域および前記共巻領域は、同一パンケーキコイル内の径方向の位置が異なる領域である、
請求項1に記載の超電導コイル。 - 前記単巻領域および前記共巻領域は、径方向の位置範囲が全部または一部重なっている別パンケーキコイル内の領域である、
請求項1に記載の超電導コイル。 - 超電導テープが巻き回されたコイル本体と、
前記超電導テープとの間に電気絶縁材が介在した状態で、前記コイル本体の全部または一部と共巻きされたアルミテープと、
を備える超電導コイルであって、
前記コイル本体は、アルミテープ共巻きの有無、および、共巻きされたアルミテープの厚みにより区分けされる複数の領域から構成されており、
前記複数の領域は、
アルミテープが共巻きされた第一共巻領域と、
その最大磁界強度が前記第一共巻領域の最大磁界強度よりも大きく、かつ共巻きされているアルミテープの厚みが前記第一共巻領域のアルミテープの厚みよりも大きい第二共巻領域と、を含んでいる、
超電導コイル。 - 前記第一共巻領域および前記第二共巻領域は、同一パンケーキコイル内の径方向の位置が異なる領域である、
請求項4に記載の超電導コイル。 - 前記第一共巻領域および前記第二共巻領域は、径方向の位置範囲が全部または一部重なっているコイル積層方向の位置が異なる別パンケーキコイル内の領域である、
請求項4に記載の超電導コイル。 - 超電導テープが巻き回されたコイル本体と、
前記超電導テープとの間に電気絶縁材が介在した状態で、前記コイル本体の全部または一部と共巻きされたアルミテープと、
を備える超電導コイルであって、
前記コイル本体は、アルミテープ共巻きの有無、および、共巻きされたアルミテープの厚みにより区分けされる複数の領域から構成されており、
前記複数の領域を最大磁界強度が大きい順に並べた順番は、前記複数の領域を共巻きされたアルミテープの厚みが大きい順で並べた順番と一致している、
超電導コイル。 - 前記超電導テープは、Cu安定化層を備えないRE系超電導線材である、
請求項1〜請求項7の何れか一項に記載の超電導コイル。 - 前記電気絶縁材は、前記アルミテープの周囲に形成された絶縁材である、
請求項1〜請求項8の何れか一項に記載の超電導コイル。 - 前記超電導テープは、積層構造を有するRE系超電導線材であり、
前記電気絶縁材は、前記アルミテープの周囲に形成されたポリイミド被膜である、
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の超電導コイル。 - 前記超電導テープは、積層構造を有するRE系超電導線材であり、
前記電気絶縁材は、前記アルミテープの周囲にらせん状に巻かれたフッ素樹脂でコーティングしたポリイミドフィルムテープである、
請求項1〜請求項9の何れか一項に記載の超電導コイル。
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