JP7040151B2 - スイッチング回路 - Google Patents

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本明細書に開示の技術は、スイッチング回路に関する。
特許文献1には、半導体装置をスイッチングするスイッチング回路が開示されている。この半導体装置は、低電位メイン端子(エミッタ電極E)とセンス端子(センスエミッタ端子101x、101y)を備えている。高電位端子(コレクタ電極C)と低電位メイン端子の間にメインスイッチング素子が接続されており、高電位端子とセンス端子の間にセンススイッチング素子(電流検出用の小電流が流れるスイッチング素子)が接続されている。半導体装置がオンすると、低電位メイン端子とセンス端子に電流が流れる。センス端子には、電流検出用のセンス抵抗が接続されている。センス抵抗に印加される電圧を検出することで、センス端子に流れる電流を検出できる。このスイッチング回路は、センス抵抗に印加される電圧(すなわち、センス端子に流れるセンス電流)が基準値を超えたときに、半導体装置をオフする。センス電流は、低電位メイン端子に流れるメイン電流と相関を有する。したがって、センス電流が基準値を超えたときに半導体装置をオフすることで、メイン電流が過電流となることを防止することができる。
特開2007-040817号公報
特許文献1のスイッチング回路では、センス抵抗に印加される電圧分だけ、センス端子の電位が低電位メイン端子の電位よりも高くなる。このため、ゲート端子とセンス端子の間に印加される電圧(センススイッチング素子に対するゲート電圧)が、ゲート端子と低電位メイン端子の間に印加される電圧(メインスイッチング素子に対するゲート電圧)よりも低くなる。このように、センススイッチング素子とメインスイッチング素子との間で印加されるゲート電圧に差が生じるので、ゲート閾値の製造ばらつきや各スイッチング素子の温度特性によってセンス電流とメイン電流の比率が変化する。このため、センス電流からメイン電流を正確に検出することが困難であり、メイン電流を実際の値よりも大きく見積もった上でその上限値を設定する必要がある。すなわち、実際のメイン電流が上限値よりもかなり低い段階で、半導体装置をオフする必要がある。このため、半導体装置の小型化が困難であった。本明細書では、実際のメイン電流に対してより正確に上限値を設定することが可能な技術を提案する。
本明細書が開示するスイッチング回路は、半導体装置を備え、前記半導体装置をスイッチングする。前記半導体装置が、高電位端子と低電位メイン端子の間に接続されたメインスイッチング素子と、前記高電位端子と第1センス端子の間に接続された第1センススイッチング素子と、前記高電位端子と第2センス端子の間に接続された第2センススイッチング素子と、前記メインスイッチング素子のゲート、前記第1センススイッチング素子のゲート、及び、前記第2センススイッチング素子のゲートに接続されたゲート端子を有している。前記スイッチング回路が、前記低電位メイン端子に接続された低電位配線と、前記第1センス端子と前記低電位配線の間に接続された第1センス抵抗と、前記第2センス端子と前記低電位配線の間に接続されているとともに前記第1センス抵抗よりも小さい抵抗値を有する第2センス抵抗と、前記高電位端子に接続された配線に流れる電流を検出する電流センサと、制御装置と、補正装置を有している。前記制御装置は、前記ゲート端子の電位を制御することによって前記半導体装置をスイッチングする。前記制御装置は、前記第2センス端子の電位が基準値を超えたときに前記半導体装置をオフする。前記補正装置は、前記半導体装置に電流が流れているときに、前記電流センサが検出する電流と前記第1センス端子の電位に基づいて前記基準値を補正する。
このスイッチング回路においては、半導体装置が2つのセンス端子を有している。第1センス端子に第1センス抵抗が接続されており、第2センス端子に第2センス抵抗が接続されている。このため、第1センススイッチング素子に対するゲート電圧と第2センススイッチング素子に対するゲート電圧は、何れも、メインスイッチング素子に対するゲート電圧よりも小さい。また、第2センス抵抗は、第1センス抵抗よりも小さい抵抗値を有している。このため、第2センス抵抗に印加される電圧は第1センス抵抗に印加される電圧よりも低く、したがって、第2センススイッチング素子に対するゲート電圧は第1センススイッチング素子に対するゲート電圧よりも大きい。つまり、第1センススイッチング素子、第2センススイッチング素子、メインスイッチング素子の順でゲート電圧が大きくなる。第1センススイッチング素子に対するゲート電圧はメインスイッチング素子に対するゲート電圧よりもかなり小さい。このため、第1センススイッチング素子に流れる第1センス電流は、小電流時(メインスイッチング素子に流れるメイン電流が小さいとき)にはメイン電流に対して略比例するが、大電流時(メイン電流が大きいとき)にはメイン電流に対する比例関係が失われる。他方、第2センススイッチング素子に対するゲート電圧はメインスイッチング素子に対するゲート電圧に近い。このため、第2センススイッチング素子に流れる第2センス電流は、小電流時と大電流時のいずれでも、メイン電流に対して略比例する。
このスイッチング回路では、半導体装置に電流が流れているときに、電流センサが検出する電流(すなわち、メイン電流)と第1センス端子の電位(すなわち、第1センス電流)に基づいて基準値を補正する。メイン電流と第1センス電流の比率は、温度やゲート閾値の製造ばらつきによって変化するが、これらの諸条件(温度やゲート閾値)が固定され、かつ、小電流時(通常動作時)には、メイン電流と第1センス電流の比率は略一定となる(すなわち、第1センス電流がメイン電流に対して略比例する。)。また、第1センススイッチング素子と第2センススイッチング素子が共通の半導体装置に内蔵されているので、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子の動作条件は略等しい。したがって、諸条件による特性の変化は、第1センススイッチング素子と第2センススイッチング素子で同様に生じる。このため、メイン電流と第1センス電流の比率から、メイン電流と第2センス電流の比率が分かる。したがって、小電流時にメイン電流と第1センス電流を検出することで、そのときの条件下におけるメイン電流と第2センス電流の比率が分かる。また、第2センス電流は、小電流時と大電流時のいずれでも、メイン電流に略比例する。したがって、小電流時にメイン電流と第1センス電流を検出することで、大電流時におけるメイン電流と第2センス電流の比率を正確に特定することができる。したがって、スイッチング回路は、大電流時におけるメイン電流の上限値に対応するように、第2センス電流の基準値(第2電流の上限値)を補正することができる。このため、実際のメイン電流に対して正確に上限値を設定することができる。メイン電流を実際よりも大きく見積もることなく上限値を設定できるので、このスイッチング回路によれば、従来よりも半導体装置に高い電流密度でメイン電流を流すことができる。このため、半導体装置の小型化が可能となる。
スイッチング回路10を含むインバータ回路の回路図。 MOSFET14の内部構造を示す回路図。 スイッチング回路10の動作時の第2センス電流IS2を示すグラフ。 電流の相関を示すグラフ。
図1は、インバータ回路の一部を示している。インバータ回路は、高電位配線92とグランド配線94の間に直列に接続された2つのMOSFET(metal oxide semiconductor field effect transistor)12、14を有している。MOSFET12は高電位側に接続された上アームのMOSFETであり、MOSFET14は低電位側に接続された下アームのMOSFETである。MOSFET12、14の間の配線に、交流配線80が接続されている。交流配線80の他端は、モータ等の負荷に接続されている。実施形態のスイッチング回路10は、下アームのMOSFET14を有しており、MOSFET14をスイッチングする。なお、上アームのMOSFET12に対してもスイッチング回路10と略同様のスイッチング回路が設けられているが、図1ではその図示を省略している。以下では、下アームのMOSFET14を含むスイッチング回路10について、詳細に説明する。
(MOSFET14の構造)
図1に示すように、MOSFET14は、ドレイン端子D、ゲート端子G、メインソース端子MS、第1センスソース端子SS1、及び、第2センスソース端子SS2を有している。図2は、MOSFET14の内部構造の詳細を示している。図2に示すように、MOSFET14の内部には、3つのMOSFET14M、14S1、14S2が設けられている。3つのMOSFET14M、14S1、14S2は、共通の半導体基板に設けられている。メインMOSFET14Mのサイズは、第1センスMOSFET14S1のサイズ及び第2センスMOSFET14S2のサイズよりも遥かに大きい。第1センスMOSFET14S1のサイズは、第2センスMOSFET14S2のサイズと略等しい。メインMOSFET14Mのソースは、メインソース端子MSに接続されている。第1センスMOSFET14S1のソースは、第1センスソース端子SS1に接続されている。第2センスMOSFET14S2のソースは、第2センスソース端子SS2に接続されている。メインMOSFET14Mのドレイン、第1センスMOSFET14S1のドレイン、及び、第2センスMOSFET14S2のドレインは、共通のドレイン端子Dに接続されている。メインMOSFET14Mのゲート、第1センスMOSFET14S1のゲート、及び、第2センスMOSFET14S2のゲートは、共通のゲート端子Gに接続されている。したがって、メインMOSFET14M、第1センスMOSFET14S1、及び、第2センスMOSFET14S2は、同時にオン‐オフする。メインMOSFET14M、第1センスMOSFET14S1、及び、第2センスMOSFET14S2が同時にオンすると、メインMOSFET14Mにメイン電流IMが流れ、第1センスMOSFET14S1に第1センス電流IS1が流れ、第2センスMOSFET14S2に第2センス電流IS2が流れる。上述したように、メインMOSFET14Mのサイズは、第1センスMOSFET14S1のサイズ及び第2センスMOSFET14S2のサイズよりも遥かに大きい。したがって、メイン電流IMは、第1センス電流IS1、及び、第2センス電流IS2よりも遥かに大きい。メイン電流IMは、メインソース端子MSに流れ、第1センス電流IS1は第1センスソース端子SS1に流れ、第2センス電流IS2は第2センスソース端子SS2に流れる。
(スイッチング回路10の構造)
図1に示すように、ドレイン端子Dは、上アームのMOSFET12のソースに接続されている。ゲート端子Gは、制御装置36に接続されている。メインソース端子MSは、グランド配線94に直接接続されている。第1センスソース端子SS1は、第1センス抵抗21の一端に接続されている。第1センス抵抗21の他端は、グランド配線94に接続されている。すなわち、第1センスソース端子SS1は、第1センス抵抗21を介してグランド配線94に接続されている。上述したように、第1センスソース端子SS1には、第1センス電流IS1が流れる。第1センス電流IS1は、第1センスソース端子SS1から第1センス抵抗21を通ってグランド配線94へ流れる。したがって、第1センスソース端子SS1の電位VS1は、第1センス電流IS1の大きさに比例した電位となる。より詳細には、第1センス抵抗21の抵抗値をR1としたときに、VS1=R1・IS1となる。第2センスソース端子SS2は、第2センス抵抗22の一端に接続されている。第2センス抵抗22の他端は、グランド配線94に接続されている。すなわち、第2センスソース端子SS2は、第2センス抵抗22を介してグランド配線94に接続されている。上述したように、第2センスソース端子SS2には、第2センス電流IS2が流れる。第2センス電流IS2は、第2センスソース端子SS2から第2センス抵抗22を通ってグランド配線94へ流れる。したがって、第2センスソース端子SS2の電位VS2は、第2センス電流IS2の大きさに比例した電位となる。より詳細には、第2センス抵抗22の抵抗値をR2としたときに、VS2=R2・IS2となる。第2センス抵抗22の抵抗値R2は、第1センス抵抗21の抵抗値R1よりも小さい。
制御装置36は、ゲート端子Gに接続されている。制御装置36には、外部から信号電圧Vsigが入力される。制御装置36は、信号電圧Vsigに応じて、ゲート端子Gの電位を制御する。これによって、制御装置36は、MOSFET14(すなわち、メインMOSFET14M、第1センスMOSFET14S1、及び、第2センスMOSFET14S2)をオン‐オフさせる。
第2センスソース端子SS2には、第2センス配線42が接続されている。第2センス配線42は、第2センスソース端子SS2を、コンパレータ30に接続している。したがって、第2センスソース端子SS2の電位VS2は、第2センス配線42を介してコンパレータ30に入力される。
また、コンパレータ30には、可変電源32の正極が接続されている。可変電源32の負極は、グランド配線94に接続されている。したがって、コンパレータ30に、可変電源32の出力電圧が入力される。以下では、可変電源32の出力電圧を、基準電位Vrefという。
コンパレータ30の出力端子は、制御装置36に接続されている。上述したように、コンパレータ30には、電位VS2と基準電位Vrefが入力される。コンパレータ30は、電位VS2と基準電位Vrefを比較する。コンパレータ30は、電位VS2と基準電位Vrefのいずれが大きいかを示す判定結果を出力する。上述したように、電位VS2は、VS2=R2・IS2の関係を有する。したがって、電位VS2と基準電位Vrefを比較することは、第2センス電流IS2を基準電流Vref/R2と比較することに等しい。コンパレータ30は、比較結果を、制御装置36に送信する。制御装置36は、電位VS2が基準電位Vrefよりも低い間は、信号電圧VsigにしたがってMOSFET14をスイッチングする。制御装置36は、電位VS2が基準電位Vrefを超えたときは、信号電圧Vsigにかかわらず、MOSFET14を強制的にオフする。
第1センスソース端子SS1には、第1センス配線41が接続されている。第1センス配線41は、第1センスソース端子SS1を、補正装置34に接続している。第1センスソース端子SS1の電位VS1は、第1センス配線41を介して補正装置34に入力される。
交流配線80には、電流センサ82が設けられている。電流センサ82は、交流配線80に流れる電流I0を検出する。交流配線80に流れる電流I0は、MOSFET12、14の動作状態に応じて変化する。通常動作においては、MOSFET14がオンしているときに、電流I0はメイン電流IMと略等しくなる。電流センサ82が検出した電流I0の値は、補正装置34に入力される。
補正装置34には、電位VS1と電流I0の値が入力される。上述したように、電位VS1は第1センス電流IS1に比例し、電流I0はメイン電流IMと略等しい。したがって、補正装置34には、第1センス電流IS1とメイン電流IMの値が入力されているに等しい。補正装置34は、電位VS1と電流I0の比率(すなわち、第1センス電流IS1とメイン電流IMの比率)に応じて、可変電源32が出力する基準電位Vrefを変更(補正)する。
(スイッチング回路10の動作)
次に、スイッチング回路10の動作について説明する。図3の実線のグラフは、MOSFET14の動作中における第2センス電流IS2の変化を示している。なお、後に詳述するように、第2センス電流IS2は、メイン電流IMに対して略比例する。したがって、メイン電流IMは、図3に示す第2センス電流IS2と略同じ波形で変化する。
通常動作中においては、制御装置36が、MOSFET14を繰り返しオン‐オフする。MOSFET14がオンするときには、メインMOSFET14M、第1センスMOSFET14S1、及び、第2センスMOSFET14S2の全てがオンし、電流IM、IS1、IS2が増加する。MOSFET14がオフするときには、メインMOSFET14M、第1センスMOSFET14S1、及び、第2センスMOSFET14S2の全てがオフし、電流IM、IS1、IS2が減少する。したがって、図3では、通常動作中に、第2センス電流IS2が周期的に増減している。
上述したように、スイッチング回路10は、電位VS2が基準電位Vrefを超えると(すなわち、第2センス電流IS2が基準電流Vref/R2を超えると)、MOSFET14を強制的にオフする。また、上述したように、第2センス電流IS2は、メイン電流IMに対して略比例する。したがって、基準電位Vrefは、メイン電流IMの許容最大値(上限値)を決定する電位である。通常動作中に、スイッチング回路10は、各電流の間の相関に適合するように、基準電位Vrefを繰り返し補正する。以下に、各電流の間の相関について説明し、その後に、基準電位Vrefの補正について説明する。
(各電流の相関)
図4は、メイン電流IMと、第1センス電流IS1及び第2センス電流IS2との関係を示している。メイン電流IMは、ゲート電圧やドレイン‐ソース間電圧に応じて変化する。第1センス電流IS1と第2センス電流IS2は、メイン電流IMに対して一定の相関を有する。すなわち、メイン電流IMが変化すると、メイン電流IMに応じて第1センス電流IS1と第2センス電流IS2が変化する。図4のグラフAは、第1センス電流IS1とメイン電流IMの相関を示しており、図4のグラフBは、第2センス電流IS2とメイン電流IMの相関を示している。図4において、グラフA2、B2は、平均的な相関を示しており、グラフA1、A3、B1、B3は、諸条件によって相関が変動する範囲を示している。
上述したように、第1センス抵抗21の抵抗値R1は、第2センス抵抗22の抵抗値R2よりも大きい。このため、MOSFET14がオンしているときに、第1センスソース端子SS1の電位VS1は、第2センスソース端子SS2の電位VS2の電位VS2よりも高くなる。したがって、MOSFET14がオンしているときに、第1センスMOSFET14S1に対するゲート電圧(ゲート端子Gと第1センスソース端子SS1の間の電圧)は、第2センスMOSFET14S2に対するゲート電圧(ゲート端子Gと第2センスソース端子SS2の間の電圧)よりも低くなる。したがって、第1センス電流IS1は、第2センス電流IS2よりも低くなる。したがって、図4に示すように、全ての動作領域(図4の横軸全体)において、第1センス電流IS1(グラフA)は、第2センス電流IS2(グラフB)よりも低い。
また、メインソース端子MSは、グランド配線94に直接接続されている。このため、MOSFET14がオンしているときに、メインソース端子MSの電位は、第1センスソース端子SS1の電位、及び、第2センスソース端子SS2の電位よりも低くなる。したがって、MOSFET14がオンしているときに、メインMOSFET14Mに対するゲート電圧(ゲート端子Gとメインソース端子MSの間の電圧)は、第1センスMOSFET14S1に対するゲート電圧、及び、第2センスMOSFET14S2に対するゲート電圧よりも高くなる。第1センスMOSFET14S1に対するゲート電圧はメインMOSFET14Mに対するゲート電圧よりもかなり低いので、第1センスMOSFET14S1ではメインMOSFET14Mよりも早く電流が飽和する。このため、グラフAに示すように、第1センス電流IS1とメイン電流IMは、低電流領域では略比例するものの、高電流領域では比例しない。他方、第2センスMOSFET14S2に対するゲート電圧はメインMOSFET14Mに対するゲート電圧に比較的近い。このため、グラフBに示すように、第2センス電流IS2とメイン電流IMは、低電流領域から高電流領域にかけて略比例する。
最も平均的な条件下では、第1センス電流IS1とメイン電流IMの相関はグラフA2のようになり、第2センス電流IS2とメイン電流IMの相関はグラフB2のようになる。但し、製造工程に起因して生じるゲート閾値のばらつきや、動作中の半導体基板の温度によって、相関が変化する。第1センス電流IS1とメイン電流IMの間の相関は、グラフA1とグラフA3の間で変化する。第2センス電流IS2とメイン電流IMの間の相関は、グラフB1とグラフB3の間で変化する。ここで、メインMOSFET14M、第1センスMOSFET14S1、及び、第2センスMOSFET14S2は共通の半導体基板に形成されるので、製造工程に起因するゲート閾値のばらつきはMOSFET14M、14S1、14S2の全てにおいて同じように生じる。例えば、MOSFET14Mのゲート閾値が高い場合には、MOSFET14S1、14S2のゲート閾値も同様に高い。また、メインMOSFET14M、第1センスMOSFET14S1、及び、第2センスMOSFET14S2は共通の半導体基板に設けられているので、略同じ温度で動作する。このため、温度による特性の変化は、MOSFET14M、14S1、14S2の全てにおいて同じように生じる。このため、ゲート閾値のばらつきや動作温度による相関の変化は、グラフAとグラフBとで同じ方向に生じる。例えば、第1センスMOSFET14S1とメインMOSFET14Mの間の相関がグラフA1(平均値よりも上)である場合には、第2センスMOSFET14S2とメインMOSFET14Mの間の相関はグラフB1(平均値よりも上)となる。また、例えば、第1センスMOSFET14S1とメインMOSFET14Mの間の相関がグラフA3(平均値よりも下)である場合には、第2センスMOSFET14S2とメインMOSFET14Mの間の相関はグラフB3(平均値よりも下)となる。
(基準電位Vrefの補正)
スイッチング回路10は、通常動作中に、定期的に基準電位Vrefの補正処理を実行する。なお、図3の通常動作中は、図4の低電流領域内でMOSFET14が動作する。補正処理は、通常動作中のMOSFET14がオンしている期間に行われる。基準電位Vrefの補正処理では、まず、補正装置34が、電流センサ82が検出する電流I0と第1センスソース端子SS1の電位VS1を受信する。なお、上述したように、第1センス抵抗21の抵抗値が比較的大きいので、電位VS1は比較的大きい電位となる。このため、通常動作中において、電位VS1はノイズに対して十分に大きい。したがって、補正装置34は、ノイズの影響をほとんど受けることなく、正確に電位VS1を検出することができる。次に、補正装置34は、電位VS1と電流I0の比率VS1/I0を算出する。補正装置34は、比率VS1/I0と基準電位Vrefとを対応付けた補正テーブルを記憶している。補正装置34は、算出した比率VS1/I0と補正テーブルに基づいて、基準電位Vrefを決定する。そして、決定した基準電位Vrefが出力されるように、可変電源32の出力電圧を変更する。このため、図3に示すように、通常動作中に、第2センス電流IS2の上限値Vref/R2が変化する。
補正装置34が記憶している補正テーブルは、以下の技術思想に基づいて定められている。上述したように、電位VS1は第1センス電流IS1に比例し、電流I0はメイン電流IMと略等しい。したがって、比率VS1/I0は、第1センス電流IS1とメイン電流IMの比率IS1/IMに略比例する。すなわち、補正装置34は、比率IS1/IMを算出しているに等しい。図4に示すように、低電流領域では、メイン電流IMと第1センス電流IS1が比例する。したがって、比率IS1/IMは、低電流領域におけるグラフAの傾きと等しい。したがって、補正装置34が算出する比率VS1/I0(すなわち、比率IS1/IM)から、第1センス電流IS1とメイン電流IMの相関(例えば、相関が、グラフA1であるのか、A2であるのか、A3であるのか)を特定することができる。また、上述したように、諸条件によって第1センス電流IS1とメイン電流IMの相関が変化する場合には、第2センス電流IS2とメイン電流IMの相関も同じ方向に変化する。したがって、第1センス電流IS1とメイン電流IMの相関から、第2センス電流IS2とメイン電流IMの相関を特定することができる。例えば、第1センス電流IS1とメイン電流IMの相関がグラフA1である場合には、第2センス電流IS2とメイン電流IMの相関がグラフB1であることを特定することができる。また、例えば、第1センス電流IS1とメイン電流IMの相関がグラフA2である場合には、第2センス電流IS2とメイン電流IMの相関がグラフB2であることを特定することができる。また、例えば、第1センス電流IS1とメイン電流IMの相関がグラフA3である場合には、第2センス電流IS2とメイン電流IMの相関がグラフB3であることを特定することができる。図4の上限値IMthは、メインMOSFET14Mに流すことか可能なメイン電流IMの最大値を示している。相関がグラフB1である場合には、メイン電流IMの上限値IMthに対応する第2センス電流IS2の上限値は、上限値ISth1である。相関がグラフB2である場合には、メイン電流IMの上限値IMthに対応する第2センス電流IS2の上限値は、上限値ISth2である。相関がグラフB3である場合には、メイン電流IMの上限値IMthに対応する第2センス電流IS2の上限値は、上限値ISth3である。このように、比率VS1/I0が分かれば、そのときの相関に対応する第2センス電流IS2の上限値を一義的に定めることができる。上述したように、第2センス電流IS2の上限値は、Vref/R2と等しい。したがって、第2センス電流ISの上限値が定まれば、基準電位Vrefを求めることができる。このように、補正装置34が記憶している補正テーブルは、比率VS1/I0ごとに、適切な基準電位Vrefの値が設定されている。したがって、補正装置34は、基準電位Vrefをその時の第2センス電流IS2とメイン電流IMの相関に応じた最適な値に補正することができる。
(強制オフ動作)
次に、スイッチング回路10の強制オフ動作について説明する。スイッチング回路10の動作中に、MOSFET14に流れるメイン電流IMが急激に増加する場合がある。例えば、上アームのMOSFET12と下アームのMOSFET14が同時にオンした場合等である。この場合、MOSFET12とMOSFET14を貫通して電流が流れるので、電流センサ82では、MOSFET14のメイン電流IMを検出できない。このため、スイッチング回路10は、電位VS2に基づいて、メイン電流IMの増加を検出する。メイン電流IMが急激に増加する場合、第1センス電流IS1と第2センス電流IS2も、図4の相関にしたがって増加する。このため、図3に示すように、第2センス電流IS2が、急激に上昇する。第2センス電流IS2が上昇すると、電位VS2が上昇し、その上昇した電位VS2がコンパレータ30で検出される。なお、第2センス抵抗22の抵抗値が小さいので、通常動作時には電位VS2が極めて小さい。このため、通常動作時には、電位VS2にノイズが重畳し、コンパレータ30は電位VS2を正確に検出することができない。しかしながら、第2センス電流IS2が高いときには、電位VS2がノイズに対して十分に高くなるので、コンパレータ30は電位VS2を正確に検出することができる。図3では、タイミングt1において、第2センス電流IS2が、上限値Vref/R2を超えている。このため、タイミングt1において、コンパレータ30が、電位VS2が基準電位Vrefを超えたことを検出する。このため、タイミングt1において、コンパレータ30の出力信号が変化する。すると、制御装置36は、信号電圧Vsigにかかわらず、ゲート端子Gの電位をゲート閾値未満まで低下させて、MOSFET14を強制的にオフする。これによって、メイン電流IMが過度に上昇することが防止される。基準電位Vrefが適切に補正されているので、制御装置36は、メイン電流IMがその上限値に近い値に達したときに、MOSFET14を強制的にオフする。相関の変化を考慮して基準電位Vrefが設定されるので、過度に早期にMOSFET14がオフすることがない。このため、実際に必要なときにのみMOSFET14を強制的にオフすることができる。このため、比較的高い電流領域までMOSFET14を使用することが可能となる。高い電流密度でMOSFET14を使用することが可能となるため、MOSFET14として小型なMOSFETを使用できる。
以上に説明したように、このスイッチング回路10では、MOSFET14が2つのセンスソース端子SS1、SS2を有しており、第1センスソース端子SS1に接続された第1センス抵抗21の抵抗値が第2センスソース端子SS2に接続された第2センス抵抗22よりも大きい。第1センス抵抗21の抵抗値が大きいので、通常動作時において、第1センスソース端子SS1の電位VS1が高くなる。したがって、補正装置34は、ノイズの影響を受けることなく正確に電位VS1を検出することができる。したがって、第1センス電流IS1とメイン電流IMの相関(図4のグラフA)を正確に特定することができる。また、第1センスMOSFET14S1と第2センスMOSFET14S2が共通の半導体基板に形成されているので、第1センス電流IS1とメイン電流IMの相関(図4のグラフA)から、第2センス電流IS2とメイン電流IMの相関(図4のグラフB)を特定することができる。さらに、第2センス抵抗22の抵抗値が小さいので、図4のグラフBに示すように、第2センス電流IS2とメイン電流IMが低電流領域から高電流領域まで略比例する。したがって、第2センス電流IS2とメイン電流IMの相関(図4のグラフB)から、第2センス電流IS2の上限値(すなわち、基準電位Vref)を正確に補正することができる。また、実際に過電流が流れるときには、第2センス電流IS2が大きくなるので、第2センス抵抗22の抵抗値が小さくても、電位VS2が高くなる。したがって、ノイズの影響を受けることなく、電位VS2を検出することができる。このように、基準電位Vrefを正確に補正し、かつ、電位VS2を正確に検出できるので、過電流時に適切にMOSFET14をオフすることができる。
なお、上述した実施形態では、スイッチング素子としてMOSFETが使用されていたが、IGBT(insulated gate bipolar transistor)等の他のスイッチング素子を使用してもよい。また、上述した実施形態では、スイッチング回路10がインバータ回路に用いられていたが、同様のスイッチング回路がDC-DCコンバータ回路等に用いられてもよい。
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
10 :スイッチング回路
14 :MOSFET
14M :メインMOSFET
14S1:第1センスMOSFET
14S2:第2センスMOSFET
21 :第1センス抵抗
22 :第2センス抵抗
30 :コンパレータ
32 :可変電源
34 :補正装置
36 :制御装置
41 :第1センス配線
42 :第2センス配線
80 :交流配線
82 :電流センサ
92 :高電位配線
94 :グランド配線

Claims (1)

  1. 半導体装置を備え、前記半導体装置をスイッチングするスイッチング回路であって、
    前記半導体装置が、
    高電位端子と低電位メイン端子の間に接続されたメインスイッチング素子と、
    前記高電位端子と第1センス端子の間に接続された第1センススイッチング素子と、
    前記高電位端子と第2センス端子の間に接続された第2センススイッチング素子と、
    前記メインスイッチング素子のゲート、前記第1センススイッチング素子のゲート、及び、前記第2センススイッチング素子のゲートに接続されたゲート端子、
    を有しており、
    前記スイッチング回路が、
    前記低電位メイン端子に接続された低電位配線と、
    前記第1センス端子と前記低電位配線の間に接続された第1センス抵抗と、
    前記第2センス端子と前記低電位配線の間に接続されており、前記第1センス抵抗よりも小さい抵抗値を有する第2センス抵抗と、
    前記高電位端子に接続された配線に流れる電流を検出する電流センサと、
    前記ゲート端子の電位を制御することによって前記半導体装置をスイッチングする制御装置であって、前記第2センス端子の電位が基準値を超えたときに前記半導体装置をオフする制御装置と、
    前記半導体装置に電流が流れているときに、前記電流センサが検出する電流と前記第1センス端子の電位に基づいて前記基準値を補正する補正装置、
    を有するスイッチング回路。
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