JP7039197B2 - S/o型サスペンション及びその製造方法 - Google Patents

S/o型サスペンション及びその製造方法 Download PDF

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本発明はS/O型サスペンション及びその製造方法に関する。
近年、水溶性固体薬剤の製剤として、親油性界面活性剤で水溶性固体薬剤を被覆し、油中に分散させたS/O型サスペンション製剤が注目されている(特許文献1)。この製剤の特徴として経皮吸収性(皮膚透過性)に優れるということが知られている。
こうしたS/O型サスペンションの製造方法としても種々の方法が開発されている。例えば、W/O型エマルションから水分を脱水してS/O型サスペンションとする方法(特許文献2)、界面活性剤を溶かした有機溶媒中に固体薬剤の水溶液を分散してW/Oエマルションとしておき、さらにこのW/O型エマルションから水分および有機溶媒を除去した後、油性成分に分散してS/O型サスペンションとする方法(特許文献3)が知られている。
しかしながら、特許文献2に記載された製造方法では、S/O型サスペンション中における水溶性固体薬剤の割合を高めるためにS/O型サスペンションを調製する工程を複数回繰り返し行うことが必要であり、製造に手間と時間がかかり、大きな労力を必要とするという問題があった。また特許文献3に記載された製造方法では、有機溶媒を含んだ溶液の凍結乾燥工程が必要であり、そのため液体窒素を使用せざるを得ず、安全性に問題がある。また凍結乾燥法では乾燥工程に時間がかかるという課題もあった。
上記課題のうち手間と時間については、それを解決する方法として水溶性薬剤と水と界面活性剤を混合し、それを凍結乾燥させる方法が開発されているが(特許文献4)、乾燥工程を凍結乾燥法で行う方法であるため、凍結乾燥法における安全性と乾燥時間の課題は依然として解決できていない。凍結乾燥を用いない製造方法として、W/O型エマルションを噴霧乾燥機にて乾燥させ、粉末を得る方法も開発されている(特許文献5)。しかしこの方法では、噴霧乾燥機への薬剤の付着を軽減するために、凝集防止剤噴霧用のノズルが別途必要であり、汎用性が低く、簡便とはいえない。
国際公開公報WO2006/025583 特開2009-84293号公報 特開2004-43355号公報 特開2012-152655号公報 特開平5-194200号公報
本発明は、前記従来の課題を解消したS/O型サスペンション及びその製造方法を提供することを目的とする。具体的には、W/O型エマルションの乾燥工程を、長時間を要する凍結乾燥を使用することなく、比較的短時間で実施できる例えば噴霧乾燥方法によって実施することが可能なS/O型サスペンションの製造方法を提供することを目的とする。さらに本発明はかかる方法によって得られるS/O型サスペンションを提供することを目的とする。
本発明者は、前述する従来の課題を解決すべく、鋭意検討を重ねていたところ、S/O型サスペンションの製造に際して用いるW/O型エマルションの親水相側に、医薬品分野で広く賦形剤と使用されている水溶性化合物、特にデキストリンなどの水溶性糖類を、水溶性薬物とともに配合しておくことで、これから調製したW/O型エマルションは、製剤均一性(親油相に対する親水相の分散(分散水相)の均一性と安定性)を確保した状態で、噴霧乾燥法によって作業性よく簡便に脱水乾燥することができることを見出した。このため、本発明の製造法によれば、乾燥に長時間を要する凍結乾燥法を使用することなく、短時間にW/O型エマルションを脱水乾燥することで、粒子状の水溶性固体物質(水溶性薬物含有複合体)(乾燥粒子)を調製することができる。また、本発明者は、斯くして調製した粒子状の水溶性固体物質(乾燥粒子)を油相に分散させて調製したS/O型サスペンションが、S/O型サスペンションの特徴である皮膚透過性を備えていることを確認した。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものであり、下記の実施形態を有するものである。
(I)粒子状の界面活性剤-水溶性固体物質複合体(水溶性薬物含有複合体)
(I-1)水溶性薬物及び水溶性賦形剤を含む混合物からなる粒子状の水溶性固体物質の表面が界面活性剤で被覆されてなることを特徴とする、粒子状の界面活性剤-水溶性固体物質複合体。
(I-2)前記水溶性賦形剤が水溶性で且つ常温で固体の糖類である、(I-1)記載の界面活性剤-水溶性固体物質複合体。
(I-3)前記水溶性賦形剤が、デキストリン、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、キシロース、アラビノース、及びブドウ糖からなる群から選択される少なくとも1種である(I-1)または(I-2)に記載する界面活性剤-水溶性固体物質複合体。
これらの界面活性剤-水溶性固体物質複合体(水溶性薬物含有複合体)は、下記に説明する本発明のS/O型サスペンションを構成する一成分(Solid)であり、本発明のS/O型サスペンションの調製に好適に使用することができる。このため、S/O型サスペンション調製用水溶性固体物質複合体と称することができる。
(II)S/O型サスペンション
本発明のS/O型サスペンションは前述する(I-1)~(I-3)のいずれかに記載される粒子状の界面活性剤-水溶性固体物質複合体(水溶性薬物含有複合体)が油相に分散してなるものである。具体的には下記の実施態様を有するものである。
(II-1)粒子状の水溶性固体物質が油相に分散してなるS/O型サスペンションであって、
前記水溶性固体物質は水溶性薬物及び水溶性賦形剤を含む混合物であり、
当該水溶性固体物質の粒子表面は界面活性剤で被覆されてなる、
上記S/O型サスペンション。
(II-2)前記水溶性賦形剤が、水溶性で且つ常温で固体である糖類である(II-1)記載のS/O型サスペンション。
(II-3)前記水溶性賦形剤が、デキストリン、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、キシロース、アラビノース、及びブドウ糖からなる群から選択される少なくとも1種である(II-1)または(II-2)に記載するS/O型サスペンション。
(II-4)(II-1)乃至(II-3)のいずれかに記載するS/O型サスペンションを含有する外用組成物。当該外用組成物には、外用の医薬組成物、外用の医薬部外品、化粧料が含まれる。
(III)S/O型サスペンションの製造方法
(III-1)下記(A)~(C)工程を有するS/O型サスペンションの製造方法:
(A)水溶性薬物、水溶性賦形剤、及び水を含む水性溶媒と、界面活性剤と有機溶媒を含む疎水性溶媒とを混合して、W/O型エマルションを調製する工程、
(B)上記で調製したW/O型エマルションを乾燥して、水溶性薬物及び水溶性賦形剤を含有する水溶性固体物質と界面活性剤との複合体(界面活性剤-水溶性固体物質複合体)を調製する工程、及び
(C)上記で調製した界面活性剤-水溶性固体物質複合体を油相に分散してS/O型サスペンションを調製する工程。
(III-2)上記(B)工程における乾燥処理が噴霧乾燥処理である(III-1)に記載する製造方法。
(III-3)前記水溶性賦形剤が、水溶性で且つ常温で固体である糖類である(III-1)または(III-2)に記載する製造方法。
(III-4)前記水溶性賦形剤が、デキストリン、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、キシロース、アラビノース、及びブドウ糖からなる群から選択される少なくとも1種である(III-1)乃至(III-3)のいずれかに記載する製造方法。
本発明の製造方法によれば、S/O型サスペンションの製造中間体である、W/O型エマルションを製剤均一性(親油相に対する親水相の分散(分散水相)の均一性と安定性)を確保した状態で調製することができる。また、当該W/O型エマルションによれば、凍結乾燥方法によらずとも、噴霧乾燥法によって作業性よく簡便に脱水乾燥することができ、S/O型サスペンションの構成成分であって、当該S/O型サスペンションの調製に使用される界面活性剤-水溶性固体物質複合体(乾燥粒子)を簡便に調製することができる。つまり、本発明の製造法によれば、乾燥に長時間を要する凍結乾燥法を使用することなく、短時間でS/O型サスペンションの原料として有用な界面活性剤-水溶性固体物質複合体(乾燥粒子)を調製することができる。また本発明の製造方法によれば、上記界面活性剤-水溶性固体物質複合体から皮膚透過性を備えたS/O型サスペンションを、簡便に短時間に、また安全に製造することができる。
(I)S/O型サスペンション、及び界面活性剤-水溶性固体物質複合体
本発明は、S/O型サスペンションと当該サスペンションを構成する粒子状の界面活性剤-水溶性固体物質複合体に関する。
ここでS/O型サスペンションとは、油相中に水溶性の固体物質(水溶性固体物質)が均一に分散してなる状態をいう。この点で、分散質(水溶性固体物質が水性溶媒に溶解若しくは分散してなる水相)と分散媒(油相)が共に液体である分散系溶液であるW/Oエマルションとは異なる。以下、本明細書では、S/O型サスペンションにおいて油相中に分散してなる水溶性固体物質を「分散粒子」と称し、W/Oエマルションにおいて油相中に分散してなる上記水相を「分散水相」と称する場合がある。なお、本発明が対象とするS/O型サスペンションには、油相中に前記分散粒子と前記分散水相とが共存する状態、あるいは分散水相中に水溶性固体物質が析出している状態も含まれる。
本発明において、S/O型サスペンションにおける「分散」とは、粒子状の水溶性固体物質が油相中に浮遊している状態をいい、水溶性固体物質の粒子の大きさ(粒子径)に応じて、分散状態も、粗粒子分散(懸濁液)(粒子径1μm以上)、コロイド分散(コロイド溶液)(1nm~1μm程度)、及び分子分散(1nm以下)に分類することができる。粒子状の水溶性固体物質が1nm以上の粒子径を有する場合、油相にてチンダル現象が観察できる場合、当該水溶性固体物質は油相に分散していると判断することができる。
本発明のS/O型サスペンションは、水溶性固体物質として、水溶性薬物及び水溶性賦形剤を含有することを特徴とする。
「水溶性」とは水に溶解する性質を意味する。当該水溶性は、日本薬局方の規定に準じて評価することができる。具体的には、対象とする固体物質1gを30mL容量の蒸留水の中に入れ、25±5℃で5分間毎に強く30秒間振り混ぜるとき、30分以内に溶解する場合に「水溶性である」と評価することができる。ここで「溶解する」とは、固体物質を添加した蒸留水が不溶物を認めることなく澄明であること、または不溶物を認めても極めて僅かであることをいう。
「固体物質」とは常温で固体であるものである。本発明における「常温」とは、日本工業規格(JIS Z 8703)の規定と同じく、20℃±15℃の範囲、つまり5℃以上35℃以下の範囲にある温度状態をいう。「常温で固体」とは、35℃以下の温度で固体形状を有することを意味し、より具体的には融点が35℃より高い温度である物質を意味する。
本発明において「薬物」とは身体に経口または非経口的に投与した場合に、当該身体に対して有用な生理作用を発揮する成分(有効成分)を意味する。水溶性で且つ常温で固体であるものであればよく、S/O型サスペンションの目的、用途及び使用対象物に応じて適宜選択することができる。例えば、経口(内用)または非経口用(外用を含む)の医薬品や医薬部外品に配合される水溶性の薬効成分;化粧品に配合される水溶性の薬効成分;飲食物に配合される水溶性の生理機能成分等を挙げることができ、これらには、制限されないものの、例えば、低分子化合物や高分子化合物、ミネラル、ビタミン、アミノ酸、ペプチド、タンパク質(酵素を含む)、生物(微生物、植物または動物)からの抽出物、等が含まれる。特に水溶性薬物は、本来皮膚透過性が低いものの、S/O型サスペンションの形態にすることで、それを向上させることができることから、好ましくは外用の医薬品や医薬部外品に配合される水溶性の薬効成分;化粧品に配合される水溶性の薬効成分である。
かかる薬効成分としては、制限されないものの、ジクロフェナクナトリウムやインドメタシンなどのNSAID;アンジオテンシン変換酵素阻害剤、β遮断剤、カルシウム拮抗剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤などの高血圧治療薬;5-HT拮抗剤などの制吐剤;抗不安薬;抗てんかん剤;興奮剤;抗パーキンソン剤;精神神経用剤;局所麻酔剤;骨格筋弛緩剤;自律神経剤;鎮痙剤;強心剤;不整脈用剤;利尿剤;血圧降下剤;血管拡張剤;高脂血症用剤;鎮咳剤;去たん剤;気管支拡張剤;止しゃ剤;消化性潰瘍剤;タンパク同化ステロイド剤;副腎ホルモン剤、男性ホルモン剤、卵胞ホルモン、黄体ホルモン剤などのホルモン剤;泌尿器官用剤;子宮収縮剤;肝臓疾患用剤;解毒剤;痛風治療剤;酵素製剤;糖尿病用剤;代謝拮抗剤;抗ヒスタミン剤;抗ハンセン病剤;合成抗菌剤;抗ウィルス剤;抗原虫剤;サルファ剤;偏頭痛剤;抗生物質;止血剤;血液凝固阻止剤、頭皮・毛髪清浄剤;皮膚清浄剤;抗酸化剤;美白剤;帯電防止剤;日焼け防止剤;爪保護剤;保湿剤;虫歯予防剤;口中浄化剤;口臭防止剤、歯垢除去剤;歯石沈着防止剤;口唇保護剤などを挙げることができる。なお、一般に分子量が大きい薬剤ほど皮膚透過性は低い。このため、これを経皮的に投与するためには、皮膚透過性を上げるための工夫や技術が必要になる。本発明のS/O型サスペンションによれば、分子量が比較的大きい薬剤についても皮膚透過性を向上させることが可能である。こうした特性から、本発明が対象とする水溶性薬物の分子量としては、制限されないものの、1,000以上が好ましく、より好ましくは3,000以上、さらに好ましくは10,000以上である。
本発明において使用される「賦形剤」は、水溶性で且つ常温で固体であることに加えて、身体に経口または非経口的に投与した場合に、身体に悪影響を与えず(人体に無害)、併用する薬物と配合変化を起こさないもの、併用する薬物の作用効果に障害をもたらさないもの、併用する薬物の試験(薬効試験、安定性試験)等に支障を来さないものである(非活性担体)。こうした性質を有するものとしては、例えばブドウ糖、フラクトース、ガラクトース、キシロース、及びアラビノース等の単糖類、マルトース,ラクトース,スクロース及びトレハロース等の二糖類、デキストリンやグリコーゲン等の多糖類、エリスリトール、ソルビトール、マルチトール、キシリトール、及びマンニトールなどの糖アルコール等といった糖類;コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、タピオカ澱粉等の澱粉;キサンタンガム、ローカストビーンガム、トラガントガム、アラビアガム、ペクチン、大豆多糖類等の増粘多糖類・ガム質が挙げられる。好ましくは非活性の水溶性固体物質である糖類であり、例えばブドウ糖、キシロース、アラビノース(以上、単糖類)、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース(以上、二糖類)、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール(以上、糖アルコール)、及びデキストリンを挙げることができる。これらは1種単独で使用してもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。より好ましくはデキストリンである。
デキストリンとしては、例えば、DE(Dextrose equivalent)値が3~28のデキストリンを例示することができる。このようなデキストリンとしては、パインデックス#1(松谷化学工業社製;DE値7.5)、パインデックス#2(松谷化学工業社製;DE値11)、パインデックス#3(松谷化学工業社製;DE値25)、パインデックス#4(松谷化学工業社製;DE値19)、M.P.D(松谷化学工業社製;DE値25)、サンデック#30(三和澱粉工業社製;DE値3)、サンデック#150(三和澱粉工業社製;DE値17)、サンデック#300(三和澱粉工業社製;DE値28)等が商業的に製造・販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。 好ましくは、DE値が3~20のデキストリンであり、より好ましくはDE値が5~15のデキストリンである。なお、本発明が対象とするデキストリンには環状デキストリンも含まれる。
本発明のS/O型サスペンションは、前述する粒子状の水溶性固体物質が界面活性剤で被覆された状態(界面活性剤-水溶性固体物質複合体)で、油相に分散してなることを特徴とする。
界面活性剤は、親油性の界面活性剤であることが好ましく、この限りにおいて、医薬品分野、化粧品分野、食品分野で使用される界面活性剤(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤)を広く用いることができる。好ましくは乳化作用を有する親油性界面活性剤であり、より好ましくは親油性の非イオン界面活性剤である。
かかる親油性界面活性剤としては、不飽和脂肪酸を30質量%以上、好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上含む炭素数16~22の脂肪酸と、炭素数4以上の多価アルコールとのエステルからなる非イオン界面活性剤を例示することができる。界面活性剤において疎水部となる不飽和脂肪酸としては、制限されないものの、好適にはパルミトオレイン酸、オレイン酸、及びエルカ酸等を例示することができる。界面活性剤において親水部となる多価アルコールとしては、制限されないものの、好適にはショ糖、グリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、ソルビタン等を例示することができる。なお、ポリグリセリンの重合度は4~20程度が好ましい。
具体的には、ショ糖脂肪酸エステル(例えば、ショ糖オレイン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖混合脂肪酸エステルなど)、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレン酸エステル、デカグリセリンエステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油を挙げることができる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。好ましくはHLB3以下のショ糖脂肪酸エステル、HLB12以下のポリグリセリン脂肪酸エステル、及び置換度が1~3のソルビタン脂肪酸エステルを挙げることができる。これらの親油性界面活性剤は、油性成分に溶けやすく、S/O型サスペンションにおいて油相への水溶性固体物質の漏洩を抑制することができる。
かかる界面活性剤で被覆された水溶性固体物質が分散してなる油相としては、医薬品分野、化粧品分野、食品分野で使用される油性溶媒であればよく、例えば、植物油、動物油、中性脂質(モノ置換、ジ置換またはトリ置換のグリセライド)、合成油脂、ステロール誘導体を挙げることができる。具体的には、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油、落花生油、サフラワー油、サンフラワー油、オリーブ油、ナタネ油、シソ油、ウイキョウ油、カカオ油、ケイヒ油、ハッカ油、ベルガモット油等の植物油;牛脂、豚油、魚油等の動物油;中鎖脂肪酸トリグリセリド、トリオレイン、トリリノレイン、トリパルミチン、トリステアリン、トリミリスチン、トリアラキドニン等の中性脂質;アゾン等の合成脂質;コレステリルオレエート、コレステリルリノレート、コレステリルミリステート、コレステリルパルミデート、コレスレリルアラキデート等のステロール誘導体;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸セチル、オレイン酸エチル、リノール酸エチル、リノール酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等の長鎖脂肪酸エステル;乳酸エチル、乳酸セチル等の乳酸エステル;クエン酸トリエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル等の多価カルボン酸エステル;2-エチルヘキサン酸セチル等のその他のカルボン酸のエステル;ワセリン、パラフィンスクワラン等の炭化水素類;シリコーン類などを挙げることができる。これらから1種を選択して用いてもよいし、2種以上を選択し混合して用いてもよい。好適には、大豆油、ゴマ油、オリーブ油、サフラワー油、サンフラワー油、ナタネ油およびシソ油よりなる群から選択される1または2以上の植物油;中鎖脂肪酸トリグリセリド等の中性脂質;またはミリスチン酸イソプロピル等の長鎖脂肪酸エステルを挙げることができる。より好ましくは長鎖脂肪酸エステル、さらに好ましくミリスチン酸イソプロピルを使用することができる。
本発明のS/O型サスペンションに占める油相の割合は、油成分の種類や他の構成成分等によって異なるが、50~99.5w/v%の範囲内が好ましく、70~95w/v%の範囲内がより好ましい。
本発明のS/O型サスペンションにおける水溶性固体物質(分散粒子)の平均粒径は、特に限定されるものではなく、S/O型サスペンションの用途に応じて適宜設定することができる。通常、10nm~100μm程度、好ましくは10nm~50μm程度、さらに好ましくは20nm~40μmである。
(II)S/O型サスペンションの製造方法
本発明が対象とするS/O型サスペンションは下記(A)~(C)工程を有する方法により製造することができる。
(A)水溶性薬物、水溶性賦形剤及び水を含む水性溶媒と、界面活性剤及び有機溶媒を含む疎水性溶媒とを混合して、W/O型エマルションを調製する工程、
(B)上記で調製したW/O型エマルションを乾燥して水溶性薬物及び水溶性賦形剤を含有する水溶性固体物質と界面活性剤との複合体(界面活性剤-水溶性固体物質複合体)を調製する工程、及び
(C)上記で調製した界面活性剤-水溶性固体物質複合体を油相に分散してS/O型サスペンションを調製する工程。
以下、各工程について説明する。
(A)W/O型エマルション調製工程
本工程は、水溶性薬物、水溶性賦形剤及び水を含む水性溶媒(親水相)を、界面活性剤及び有機溶媒を含む溶媒(親油相)中に分散させることで、親油相中に水性溶媒からなる分散相(分散水相)を形成し、W/O型エマルションを調製する工程である。
親水相の調製に使用する水溶性薬物、及び水溶性賦形剤は、前記(I)にて説明した通りであり、当該記載はここに援用することができる。親水相において水は、水溶性薬物、及び水溶性賦形剤を溶解するために使用される。ここで使用される水としては、当該目的を適えるものであり、本発明の効果を妨げないものであればよく、例えば、純水、精製水、蒸留水、生理食塩水、及び緩衝液等を挙げることができる。必要に応じて、エタノールなど水混和性の有機溶媒を少量添加してもよい。
親水相を構成する水溶性薬物、水溶性賦形剤及び水を含む水性溶媒は、水溶性薬物及び水溶性賦形剤が水に溶解した状態のものであり、この限りにおいて、当該水性溶媒中における水溶性薬物及び水溶性賦形剤の濃度は特に制限されない。制限されるものではないが、当該水性溶媒中の水溶性薬物の濃度としては、0.1~3質量%(または1~30mg/mL)の範囲を挙げることができる。また当該水性溶媒中の水溶性賦形剤の濃度としては、1~30質量%(または10~300mg/mL)の範囲を挙げることができる。ここで水性溶媒に配合する水溶性薬物と水溶性賦形剤との割合としては、水溶性薬物100質量部に対して、通常100~3,000質量部を挙げることができる。好ましくは500~2,500質量部、より好ましくは1,000~2,000質量部である。
親油相の調製に使用する界面活性剤は、前記(I)にて説明した通りであり、当該記載はここに援用することができる。親油相において有機溶媒は、前記界面活性剤を溶解若しくは希釈するために使用される。このため有機溶媒は、前記界面活性剤を溶解することができ、且つ次の(B)工程で揮散除去できるものであればよく、この限りにおいて特に制限されない。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノールなどの炭素数1~4程度の低級アルコール;ヘキサン等の低沸点の脂肪族炭化水素;トルエン等の芳香族炭化水素などを挙げることができる。好ましくはエタノール等の低級アルコールである。
親油相を構成する界面活性剤と有機溶媒は、有機溶媒中に界面活性剤が溶解または分散した状態を有しており、この限りにおいて、当該有機溶媒中における界面活性剤の濃度は特に制限されない。制限されるものではないが、当該有機溶媒中の界面活性剤の濃度としては、1~20質量%の範囲を挙げることができる。好ましくは5~15質量%、より好ましくは8~12質量%である。
斯くして調製される親水相と親油相とを混合し、定法に従って撹拌することで親油相中に親水相を分散させて分散水相(W/O型エマルション)を形成することができる。親水相と親油相との混合比は、親水相に含まれる水溶性固体物質(薬物及び賦形剤)の総量100質量部に対し、親油相に含まれる界面活性剤の割合が1~2,000質量部となるような割合であればよく、この限りにおいて制限されるものではない。好ましくは20~200質量部であり、より好ましくは30~200質量部、さらに好ましくは80~120質量部である。
撹拌は、プロペラミキサーやディスパーなどの撹拌機、ホモミキサーや高圧ホモジナイザーなどの高速撹拌機など、慣用の撹拌機を使用して行うことができる。必要に応じて、超音波を併用してもよい。制限されないものの、例えばホモミキサーを使用する場合、特に限定されるものではないが、例えば600~50,000rpm程度(好ましくは7,000~28,000rpm程度)の条件で0.5~60分間程度(好ましくは1~10分間程度)の撹拌する方法を例示することができる。なお、撹拌は常温で実施することができる。
なお、W/O型エマルション中の分散水相の粒子をより小さくし、且つ均一にするために、上記撹拌処理で得られたW/O型エマルションをさらに細孔を有する多孔質膜(ミクロ多孔質膜)に透過させてもよい(膜乳化法)。制限されないものの、かかる多孔質膜の細孔として、平均径が0.05~20μm程度のものを例示することができる。
(B)界面活性剤-水溶性固体物質複合体の調製工程
本工程は、上記工程で得られたW/O型エマルションから固体粒子形状の界面活性剤-水溶性固体物質複合体を調製する工程である。当該界面活性剤-水溶性固体物質複合体は、前記W/O型エマルションを乾燥することで調製することができる。
乾燥方法は、W/O型エマルション中の分散水相(水相粒子)が合一または分離することなく、W/O型エマルションから水分と有機溶媒が除去できる方法であればよく、例えば加熱乾燥や減圧乾燥等を例示することができるが、好ましくは凍結乾燥以外の方法であり、より好ましくは噴霧乾燥法(スプレードライ法)である。ここで使用される噴霧乾燥法としては、制限されないものの、流速は5~30ml/min、乾燥入口温度は100~160℃、出口温度は60~90℃、装置としてはBUCHI Mini Spray DryerB-290を挙げることができる。
なお、制限されないものの、乾燥の程度として、カールフィシャー法による測定で、含水率が8%程度以下になるように乾燥することが好ましい。
斯くして水溶性の薬物及び賦形剤を含有する粒子形状の水溶性固体物質の表面が界面活性剤で被覆されてなる界面活性剤-水溶性固体物質複合体(以下、単に「水溶性固体物質含有複合体」とも称する)を調製することができる。当該水溶性固体物質含有複合体は、固体の粒子形状物として調製することができ、その粒径は、S/O型サスペンションの用途や目的に応じて、前述の噴霧乾燥工程により適宜調整することができる。制限されないものの、例えば、10nm~100μm程度、好ましくは10nm~50μm程度、さらに好ましくは20nm~40μm程度を例示することができる。
(C)S/O型サスペンションの調製工程
本工程は、上記工程で得られた水溶性固体物質含有複合体からS/O型サスペンションを調製する工程である。当該S/O型サスペンションは、前記水溶性固体物質含有複合体を油相に分散することで調製することができる。
ここで使用される油相は前記(I)で説明した通りであり、その記載はここに援用することができる。油相中への水溶性固体物質含有複合体の分散は、油相に水溶性固体物質含有複合体を添加し撹拌することで行うことができる。撹拌は、W/O型エマルションの調製と同様に、プロペラミキサーやディスパーなどの撹拌機、ホモミキサーや高圧ホモジナイザーなどの高速撹拌機など、慣用の撹拌機を使用して行うことができる。必要に応じて、超音波を併用してもよい。なお、撹拌は常温で実施することができる。
当該工程で使用する油相と水溶性固体物質含有複合体の量は、S/O型サスペンションの用途や目的に応じて適宜調整することができ、特に制限されない。例えば油相100mLに対する水溶性固体物質含有複合体の量として1,00~50,000mgの範囲を挙げることができ、この範囲で適宜調整することができる。油相100mLに対する水溶性固体物質含有複合体の量として、好ましくは2,000~30,000mg、より好ましくは3,000~15,000mgである。
本発明のS/O型サスペンションの製造方法において、本発明の効果を妨げない範囲で、必要に応じて副次的な添加物を添加することができる。かかる副次的な添加物としては、抗酸化剤、保存料、増粘剤、香料、着色剤、顔料、抗菌剤、安定剤等を制限なく例示することができる。
斯くして調製されたS/O型サスペンション中には、W/O型エマルションの親水相に溶解させた水溶性薬物及び水溶性賦形剤が固体状の微粒子として、油相中に分散している。
なお、斯くして調製されたS/O型サスペンションは、定法に従って水相に分散することによってS/O/W型エマルションとして調製することもできる。
(III)S/O型サスペンションの用途
本発明のS/O型サスペンションは、そのままヒトに適用してもよいが、好ましくは他の添加成分を添加して、目的に応じて製剤化される。他の添加成分としては、例えば、賦形剤(例えば、白糖などの糖類;デキストリンなどのデンプン誘導体;カルメロースナトリウムなどのセルロース誘導体;キサンタンガムなどの水溶性高分子等)、着色剤、滑沢剤(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;前記の賦形剤におけるデンプン誘導体等)、結合剤(例えば、前記の賦形剤やマクロゴール等)、乳化剤、増粘剤、保湿剤(例えばヒアルロン酸、コラーゲン等)、湿潤剤(例えば、グリセリン等)、安定剤(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;無水酢酸;ソルビン酸等)、保存剤、溶剤(例えば、水、エタノール、グリセリン等)、溶解補助剤、懸濁化剤(例えば、カルメロースナトリウム等)、緩衝剤、pH調整剤、基剤(例えば、ポリエチレングリコール、セバシン酸ジエチル、ワセリン等)等を挙げることができ、これらを通常の配合量で配合できる。
各剤形に応じた常法によって、上記S/O型サスペンションと他の添加成分を混合して、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、エアゾール剤、硬膏剤、水性パップ剤などの外用組成物(医薬品、医薬部外品、化粧品)とすることができるが、これらに限定されない。かかる外用組成物の投与量は、配合する薬物の種類や量、また、被験者(例えば患者)の年齢や症状などに応じて調整すればよい。
以下、実験例及び実施例により、本発明の特徴とするところをより明瞭にする。但し、本発明はこれらの実験例及び実施例によって何ら限定されるものではない。
実験例1
表1~3に記載する組成を有するS/O型サスペンション製剤(実施例1~6、比較例1~7)および非S/O型サスペンション製剤(比較例8)を下記方法で製造し、得られたS/O型サスペンション製剤について製剤均一性、噴霧乾燥性、及び皮膚透過性を評価した。また非S/O型サスペンション製剤について皮膚透過性を評価した。なお、当該S/O型サスペンション製剤および非S/O型サスペンション製剤の調製に使用した各成分は以下の通りである。
(a)水溶性薬物(有効成分):ヘパリン類似物質(アピ(株)製)
外観・性状:帯黄白色の無晶性の粉末で、においはなく、味はわずかに苦い。
溶解性:水に溶けやすく、メタノール、エタノール(95)、アセトン又は1-ブタノールにほとんど溶けない。
(b)水溶性賦形剤:デキストリン(パインデックス#1:松谷化学工業(株))
(c)界面活性剤:グリセリン脂肪酸エステル#1(親油型モノオレイン酸グリセリル:NIKKOL MGO(日本ケミカルズ(株))、HLB2.5
(d)界面活性剤:グリセリン脂肪酸エステル#2(モノオレイン酸デカグリセリル:NIKKOL Decaglyn 1-OV(日本ケミカルズ(株))、HLB12.0
(e)合成ケイ酸アルミニウム:日本薬局方 合成ケイ酸アルミニウム(特軽質)(協和化学工業(株))
(f)油剤:ミリスチン酸イソプロピル(NIKKOL IPM-EX(日本ケミカルズ(株))
(1)S/O型サスペンションの製造方法
まず表1~2に記載する組成からなる親水相と親油相を混合してW/O型エマルションを調製し、これを噴霧乾燥して界面活性剤-水溶性固体物質複合体(粒子状乾燥物)を調製した。次いで、上記のうち噴霧乾燥を行うことができた実施例1~6を油剤(ミリスチン酸イソプロピル)に分散させてS/O型サスペンションとした。なお、当該製造工程は全て常温で行った。
Figure 0007039197000001
Figure 0007039197000002
(1-1)W/O型エマルションの調製
[実施例1~6]
精製水にヘパリン類似物質を溶解し、これにデキストリンを添加混合し、均一に溶解するまで撹拌して親水相とした。一方、エタノールにグリセリン脂肪酸エステルを添加混合し、均一に溶解するまで撹拌して親油相とした。両者をホモジナイザー(KINEMATICA社、PT2500E)を用いて均一になるまで高速撹拌(26,000rpm、5分間)し、W/O型エマルションを調製した。
[比較例1~6]
精製水にヘパリン類似物質を溶解して親水相とした。一方、エタノールにグリセリン脂肪酸エステルを添加混合し、均一に溶解するまで撹拌して調製した親油相の中に、デキストリンを添加混合して分散させた。両者をホモジナイザー(KINEMATICA社、PT2500E)を用いて均一になるまで高速撹拌(26,000rpm、5分間)し、W/O型エマルションを調製した。
[比較例7]
精製水にヘパリン類似物質を溶解して親水相とした。一方、エタノールにグリセリン脂肪酸エステルを添加混合し、均一に溶解するまで撹拌して調製した親油相の中に、合成ケイ酸アルミニウムを添加混合して分散させた。両者をホモジナイザー(KINEMATICA社、PT2500E)を用いて均一になるまで高速撹拌(26,000rpm、5分間)し、W/O型エマルションを調製した。
(1-2)非S/O型サスペンションの調製
皮膚透過性の評価のため、S/O型サスペンションではない製剤として、表3の処方に従って比較例8を調整した。
Figure 0007039197000003
[比較例8]
精製水にヘパリン類似物質を溶解して水溶液とした。これにグリセリン脂肪酸エステルを添加しホモジナイザー(KINEMATICA社、PT2500E)を用いて均一になるまで高速撹拌(26,000rpm、5分間)し、ヘパリン類似物質入り水溶液を調製した。
(1-3)界面活性剤-水溶性固体物質複合体(粒子状乾燥物)の調製(乾燥処理)
上記(1-1)工程で調製したW/O型エマルションを、噴霧乾燥装置に供して、乾燥処理を行った。
噴霧乾燥装置としてはBUCHI Mini Spray Dryer B-290を用いた。本装置は1つの噴霧ノズル(二流体ノズル)、乾燥チャンバー、乾燥チャンバーとサイクロンの連結部、サイクロン、気体排出部、試料捕集部から構成されている。乾燥チャンバーの入口温度を140℃、出口温度を90℃に設定して、流速20ml/minにて、試料溶液(W/O型エマルション)を噴霧し、噴霧乾燥物を調製した。なお、噴霧は試料溶液(W/O型エマルション)をスターラーで攪拌しながら実施した。
(1-4)S/O型サスペンション調製(分散処理)
上記(1-3)工程で調製した噴霧乾燥物を、油剤であるミリスチン酸イソプロピルの中に投入し、ボルテックス(AS ONE製 AUTOMATIC LAB-MIXER HM-10H)にて10分間攪拌し、S/O型サスペンションを調製した。
(2)S/O型サスペンションの物性評価
上記で調製したS/O型サスペンション(実施例1~6)について、W/O型エマルションの製剤均一性、噴霧乾燥の作業性(装置のノズル詰まり、装置への付着性)、及びS/O型サスペンションの皮膚透過性を評価した。また比較例1~7のS/O型サスペンションについてはW/O型エマルションの製剤均一性について評価した。
(2-1)製剤均一性
前述する各S/O型サスペンション(実施例1~6、比較例1~7)について、噴霧乾燥前のW/O型エマルションの製剤均一性を評価した。具体的には、W/O型エマルションを調製後、15分間室温に静置し、分離、凝集、及び沈殿の有無を目視で確認し、下記の基準に基づいて、製剤均一性を評価した。
[製剤均一性評価基準]
○:試験期間(15分)を通じて分離、凝集、沈殿がいずれも認められない。
△:試験開始から5分以内に分離、凝集または沈殿のいずれかが認められる。
×:調整直後に分離、凝集または沈殿のいずれかが認められる。
(2-2)噴霧乾燥の作業性
前述する各S/O型サスペンション(実施例1~6、比較例7)について、調製したW/O型エマルションの噴霧乾燥処理における作業性を下記の基準に基づいて評価した
[ノズル詰まり]
○:W/O型エマルションがノズルに詰まることなく、噴霧乾燥可能。
×:W/O型エマルションがノズルに詰まり、噴霧不可。
[噴霧乾燥装置への付着性]
○:噴霧乾燥装置に、界面活性剤-水溶性固体物質複合体(粒子状乾燥物)の付着は認められないか、認められても少量。
×:噴霧乾燥装置に、界面活性剤-水溶性固体物質複合体(粒子状乾燥物)の付着が多量認められる。
なお、噴霧乾燥装置の付着部として、チャンバー部、チャンバーとサイクロンの連結部、及びサイクロン部を対象とした。
(2-3)皮膚透過性
S/O型サスペンション(実施例1~6)および、比較例8の皮膚透過性評価は、フランツセル型皮膚透過性試験(in vitro試験)を用いて行った。
(A)皮膚透過性[経皮吸収]試験
縦型フランツセル(型式TP-8S、VIDREX社製)をスターラーの上に固定し、ウォーターバスにつないで32℃程度に保った。ヘアレスマウスから摘出した皮膚(直径約1.5cm)をフランツセルに角層が上になるように置いた。その上からフランツセルの蓋を止め金具で固定した。次いで、空気が入らないように、レセプターセルにリン酸緩衝液(PBS)を充填した。そして、界面活性剤―水溶性固体物質複合体中の水溶性固体物質濃度(ヘパリン類似物質濃度)が1mg/mlとなるように試料を調整し、その1mlをドナーである上記皮膚(1.77cm2)の角質層側に塗布した。48時間後、レセプター液を300μl採取した。
(B)経皮吸収量(ヘパリン類似物質透過量)の測定
上記試験により、皮膚透過したヘパリン類似物質はレセプター液にとけ込むため、レセプター液中のヘパリン類似物質の濃度を測定することで、ヘパリン類似物質(水溶性薬物)の皮膚透過性(経皮吸収性)を評価することができる。レセプター液中のヘパリン類似物質の濃度は、下記に示す比色法により求めた。
[比色法]
(1)試薬の調製
試薬は、「テストチーム ヘパリンS」(積水メディカル株式会社製)を用いて、下記の通り調製した。
アンチトロンビンIII液:1バイアルを精製水10mlで溶解して調製。
ファクターXa液:1バイアルを精製水10mlで溶解して調製。
基質液(N-ベンゾイル-L-イソロイシル-L-グルタミル(γ-OR)-グリシル-L-アルギニル-p-ニトロアニリド・塩酸塩):1バイアルを精製水20mlで溶解して調製。
反応停止液:酢酸20mlに蒸留水20mlを加え混合して調製。
(2)標準溶液の作製
検量線用の各標準溶液として、PBSを溶媒とし、上記ヘパリン類似物質を、0、0.03、0.1、0.3、1、3、10、30μg/mlとなるよう調整した。
(3)測定方法
37℃に加温した96穴プレートの各ウェルに、アンチトロンビンIII液を5μlずつ添加し、次いで、標準溶液又は試料(レセプター液)をそれぞれ45μlずつ添加した。プレートにシールを貼り、プレートシェイカーにて10秒間混合した後、37℃で2~6分程度加温した。そして、ファクターXa液を、各ウェルに25μlずつ添加し、再びプレートシェイカーにて10秒間混合し、37℃で約30秒間加温した。そして、基質液を各ウェルに50μlずつ添加し、再びプレートシェイカーにて10秒間混合し、37℃で3分間加温した。3分間の加温の後、反応停止液を各ウェルに75μlずつ添加し、プレートシェイカーにて10秒間混合した。斯くして調製した反応液について、その405nmの吸光度を、プレートリーダー(ジェニオス、TECAN社製)を用いて測定し、標準液を用いて作製した検量線に基づいて、レセプター液に含まれているヘパリン類似物質の濃度を求め、ヘパリン類似物質の皮膚透過性(経皮吸収性)を評価した。
[皮膚透過性評価基準]
○:皮膚透過が認められた(レセプター液にヘパリン類似物質が含まれている)。
×:皮膚透過が認められない(レセプター液にヘパリン類似物質が含まれていない)。
(3)結果及び考察
結果を表1~3に合わせて示す。
比較例7は、合成ケイ酸アルミニウムを親油相に分散させることで、製剤均一性を確保することができたが、噴霧乾燥時にノズルに埋まりが発生し、噴霧不可となった。
実施例1~6では、親水相にデキストリンを溶解させて調製したW/O型エマルションは、製剤均一性に優れており、またこれを噴霧乾燥したところ、噴霧乾燥時にノズルの詰まりや噴霧乾燥機への付着もなく、問題なく噴霧乾燥が可能であった。また得られた乾燥粒子を油剤に分散させることで、S/Oエマルションを調製することができた。また、比較例8の非S/O型サスペンションは皮膚透過性が確認できなかったのに対し、実施例1~6のS/Oエマルションは皮膚透過性があることも確認された。

Claims (3)

  1. 下記(A)~(C)工程を有するS/O型サスペンションの製造方法:
    (A)水溶性薬物、水溶性で且つ常温で固体の糖類である水溶性賦形剤、及び水を含む水性溶媒と、界面活性剤と有機溶媒を含む疎水性溶媒とを混合して、W/O型エマルションを調製する工程、
    (B)上記で調製したW/O型エマルションを噴霧乾燥処理にて乾燥して、水溶性薬物及び水溶性賦形剤を含有する水溶性固体物質と界面活性剤との複合体(界面活性剤-水溶性固体物質複合体)を調製する工程、及び
    (C)上記で調製した界面活性剤-水溶性固体物質複合体を油相に分散してS/O型サスペンションを調製する工程。
  2. 前記S/O型サスペンションが、水溶性薬物、及び水溶性で且つ常温で固体の糖類である水溶性賦形剤を含む混合物からなる粒子状の水溶性固体物質の表面が界面活性剤で被覆されてなることを特徴とする、粒子状の界面活性剤-水溶性固体物質複合体が油相に分散してなるS/O型サスペンションである、請求項1に記載する製造方法。
  3. 前記水溶性賦形剤が、デキストリン、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、キシロース、アラビノース、及びブドウ糖からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載する製造方法。
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