JP7038271B2 - 石鹸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、肌や髪に優しい特性を有する固形石鹸又は液体石鹸を、容易く、安価に、迅速に、製造できるようにした石鹸の製造方法に関する。
従来から、石鹸は、(1)脂肪酸とグリセリンの化合物である油脂を強アルカリ(水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)の水溶液で鹸化する鹸化法、或いは、(2)油脂を酸性下で加水分解して生成される脂肪酸を強アルカリの水溶液で中和する中和法、のいずれかの方法によって製造されている。また一般に、石鹸のうち、固形石鹸は、脂肪酸と水酸化ナトリウムを反応させた脂肪酸のナトリウム塩であり、比較的水に溶けやすく、粉末にすると粉石鹸になる。液状や乳液状の液体石鹸は、水酸化カリウムと反応させた脂肪酸のカリウム塩であり、ナトリウム塩よりさらに水に溶けやすい性質がある。どちらの石鹸も水に溶けて、界面活性剤として洗浄力を発揮する。
(1)鹸化法
鹸化法は、水に、粘性を有する液体の油脂と強アルカリの水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムとを、130℃前後で数時間程度、加熱溶解させた後、当該水溶液を常温にて30日~45日間熟成させる方法である。鹸化法は、原料自体の油脂成分が多いこと、内相の水分子と外相の生成した界面活性剤の親水成分とが強く結合していることに起因して、生成物が、比較的、水の蒸発しにくいW/O型のエマルジョンとして得られるため、固形石鹸又は液体石鹸として使用できるまでに30日~45日間の長期の熟成期間を要する。
Figure 0007038271000001
鹸化法で製造された石鹸には、グリセリンや石鹸原料としての油脂(通常は天然油脂)にもともと含まれる不鹸化物も含まれることになる。グリセリンは化粧品によく使われる肌の保湿成分であり、不鹸化物にはスキンケア用物質として知られているスクワレンやビタミンA、B或いはEなどが含まれている。したがって、鹸化法により製造された石鹸はグリセリンや不鹸化物のため肌や髪に優しい石鹸となる。
(2)中和法
中和法は、水に、粉体にした固体の脂肪酸と強アルカリの水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムとを、90℃前後で数時間程度、加熱溶解させた後、放冷させる方法である。中和法は、生成物が、比較的、水の蒸発しやすいO/W型のエマルジョンとして得られるため、1~2日程度で固形石鹸又は液体石鹸として使用できるようになる。
Figure 0007038271000002
中和法のメリットは、油脂から抽出後の脂肪酸だけ使用するため、最初から刺激になり得る不純物や刺激の強い脂肪酸を除外して鹸化させることができ、その配合量も調整しやすいため、肌への刺激の原因となる遊離アルカリが存在せず、安全な石鹸を安定して作り出すことができる。ただ、油脂から抽出後の脂肪酸にはグリセリンが含まれていないため、保湿成分を配合しない限り、洗いあがりの保湿感は少なくなる。
なお、透明固形石鹸を製造する目的でアルコールが用いられることは知られている。例えば特許文献1には、透明固形石鹸を、透明化溶液を得るために多量のエチルアルコールと、脂肪酸または油脂を苛性アルカリ、アルカノールアミン類や塩基性アミノ酸等によって中和または鹸化して得られる脂肪酸石鹸と、さらに砂糖等の糖類、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール類、さらに色素、香料等を加熱混合し、透明溶解した後、所定の枠に流し込み、冷却固化後に切断、成形し、次いで当該成形物中のエチルアルコール等の揮発成分が目的の重量に達するまで揮発させる熟成工程を経て製造する技術が開示されている。
特開2010-180381号公報
しかしながら、中和法は、固形石鹸又は液体石鹸として使用できるまでに1~2日程度と迅速に製造できるメリットはあるものの、原料の脂肪酸自体が固体の粉体であり、比較的原料コストが高く、また、90℃前後での加熱工程が必要となり、そのためのイニシャルコスト等を含めると、鹸化法に比べて製造コストが高くならざるを得なかった。
一方、鹸化法は、製造された石鹸が肌や髪に優しい特性を有する点に加えて、原料コストが安いというメリットはあるものの、130℃前後で数時間程度加熱工程が必要となる点では中和法と同様の問題があり、しかも、固形石鹸又は液体石鹸として使用できるまでに30日~45日間の長期の熟成期間を要するため、時間がかかり過ぎるという問題があった。
本発明の目的の一は、肌や髪に優しい特性を有する固形石鹸又は液体石鹸を、容易く、安価に、迅速に、製造できる石鹸の製造方法を提供することにある。
課題を解決するための手段及び発明の効果
かかる状況に鑑みて、本発明者は、肌や髪に優しい特性を有する固形石鹸又は液体石鹸を、容易く、安価に、迅速に、製造できる石鹸の製造方法を求めて鋭意研究を重ねた結果、液体油脂と強アルカリ水溶液と両者に相溶性を有する両親媒性溶媒とを所定の比で混合した場合に、加熱工程を経ずとも、短期間(1~2日程度)に固化できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の第1の側面に係る石鹸の製造方法は、鹸化法による石鹸の製造方法において、非加熱下で、3時間以内に完全に固化するよう、液体油脂と、水酸化ナトリウム水溶液と、前記液体油脂及び水酸化ナトリウム水溶液に相溶性を有する両親媒性溶媒とを、液体油脂:水酸化ナトリウム:水:両親媒性溶媒=5.57.21.01.01.3:0.~2.0の重量比で混合して、前記液体油脂及び水酸化ナトリウムとを鹸化反応させる工程を含むことを特徴としている。
前記構成により、前記重量比での液体油脂と水酸化ナトリウム水溶液と両親媒性溶媒との混合物は、反応熱による80℃以上の急激な温度上昇と水分や揮発成分の蒸発を伴いながら、約10分程度で液体状態から粘性を有するペースト状態となり、約2時間程度で固化させることができる。得られた固形物をミキサーで粉体にし、これを圧縮させることにより、固形石鹸ができる。
また、本発明の第2の側面に係る石鹸の製造方法は、鹸化法による石鹸の製造方法において、非加熱下で、3時間以内に完全に固化するよう、液体油脂と、水酸化カリウム水溶液と、前記液体油脂及び水酸化カリウム水溶液に相溶性を有する両親媒性溶媒とを、液体油脂:水酸化カリウム:水:両親媒性溶媒=3.~5.1.01.01.0の重量比で混合して、前記液体油脂及び水酸化カリウムとを鹸化反応させる工程を含むことを特徴としている。
前記構成により、前記重量比での液体油脂と水酸化カリウム水溶液と両親媒性溶媒との混合物は、反応熱による80℃以上の急激な温度上昇と水分や揮発成分の蒸発を伴いながら、約10分程度で高粘性を有するペーストが得られる。そして、前記製造方法による生成物は、油脂と水酸化ナトリウムの鹸化反応による生成される石鹸と比べて水溶性が高いため、5~10倍の水で希釈することで、液体石鹸を製造することができる。また、前記製造方法による生成物は、溶融したセタノールやステアリルアルコール等の高級アルコールを混合して水で希釈することで、O/W型のクリームも得られるため、様々な化粧品原料としての用途が期待できる。
さらにまた、本発明の第3の側面に係る石鹸の製造方法によれば、前記両親媒性溶媒に、ジプロピレングリコールを用いることができる。
さらにまた、本発明の第4の側面に係る石鹸の製造方法によれば、前記液体油脂に、菜種油を用いることができる。
さらにまた、本発明の第5の側面に係る石鹸の製造方法によれば、前記液体油脂に、椰子油を用いることができる。
さらにまた、本発明の第6の側面に係る石鹸の製造方法は、鹸化法による石鹸の製造方法において、非加熱下で、液体油脂と、水酸化ナトリウム水溶液と、前記液体油脂及び水酸化ナトリウム水溶液に相溶性を有する両親媒性溶媒とを、液体油脂:水酸化ナトリウム:水:両親媒性溶媒=5.0~7.5:0.7~2.0:0.7~2.0:1ppm~2.0の重量比で混合して、前記液体油脂及び水酸化ナトリウムとを鹸化反応させる工程を含み、前記両親媒性溶媒は、ソルビトール、澱粉、カルボマーのうち少なくとも一を含むことを特徴としている。
前記構成により、前記重量比での液体油脂と水酸化ナトリウム水溶液と両親媒性溶媒との混合物は、反応熱による50℃前後の温度上昇を伴いながら、6~10時間程度で、液体状態から粘性を有するペーストとなり、得られたペーストを型入れし、徐々に固化させることにより、ミキシング・圧縮工程を経ることなく、固形石鹸を製造することができる。
以上の製造方法によれば、グリセリンが副生され、加熱工程や精製分離工程を要しないので、保湿作用を有するグリセリンを含有する石鹸を、容易く、安価に、迅速に、製造することができる。
第一実施形態に係る実験(A)の経過観察結果を示す図である。 第一実施形態に係る実験(C)の経過観察結果を示す図である。 第一実施形態に係る実験(D)の経過観察結果を示す図である。 第一実施形態に係る実験(E)の経過観察結果を示す図である。 第一実施形態に係る実験(F)の経過観察結果を示す図である。 第一実施形態に係る実験(H)の経過観察結果を示す図である。 第一実施形態に係る実験(L)の経過観察結果を示す図である。 第一実施形態に係る実験(M)の経過観察結果を示す図である。 第一実施形態に係る実験(P)の経過観察結果を示す図である。 第一実施形態に係る実験(Q)の経過観察結果を示す図である。 第一実施形態に係る実験(R)の経過観察結果を示す図である。 第二実施形態に係る実験(ア)の経過観察結果を示す図である。 第二実施形態に係る実験(ア)のガスクロマトグラフ質量分析の結果であって、グリセリンのガスクロマトグラフを示す図である。 第二実施形態に係る実験(ア)のガスクロマトグラフ質量分析の結果であって、液体油脂のガスクロマトグラフを示す図である。 第二実施形態に係る実験(ア)のガスクロマトグラフ質量分析の結果であって、石鹸のガスクロマトグラフを示す図である。 第三実施形態に係る実験(S)の経過観察結果を示す図である。 第三実施形態に係る実験(X)の経過観察結果を示す図である。 第三実施形態に係る実験(Y)の経過観察結果を示す図である。 第三実施形態に係る実験(Z)の経過観察結果を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を好適例に基づいて説明するが、これらに限定されるものではない。
(第一実施形態)
本発明の第一実施形態に係る固形石鹸の製造方法は、鹸化法による石鹸の製造方法において、非加熱下で、液体油脂と、水酸化ナトリウム水溶液と、前記液体油脂及び水酸化ナトリウム水溶液に相溶性を有する両親媒性溶媒とを、液体油脂:水酸化ナトリウム:水:両親媒性溶媒=5.0~7.5:0.7~2.0:0.7~2.0:0.2~2.0の重量比で混合して、前記液体油脂及び水酸化ナトリウムとを鹸化反応させ、得られた固形物をミキサーで粉体にし、これを圧縮させて製造する方法である。
(液体油脂)
本発明で使用される液体油脂としては、菜種油、椰子油、大豆油、ゴマ油、コーン油、オリーブ油、アボガド油、綿実油、落花生油、ホホバ種子油、ニーム油、パーム核油等の植物性油脂、及び、馬油等の動物性油脂が挙げられる。なお、液体油脂に濃硫酸を加えて硫酸エステルを生成し、界面活性能を発現させて鹸化反応が促進されるようにしてもよい。また、第二実施形態及び第三実施形態においても同様である。
(両親媒性溶媒)
また、本発明で使用される両親媒性溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール(IPA)等のアルコール類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール(PG)、ブチレングリコール(BG)、ジプロピレングリコール(DPG)等のグリコール類が挙げられる。液体油脂及び水酸化ナトリウム水溶液に対して、相溶性を有する両親媒性溶媒を混合することで、油脂と水酸化ナトリウムの接触断面積を増加させて、鹸化反応速度を上げる作用を有する。なお、第一実施形態においては、ジプロピレングリコール(DPG)を使用している。また、第二実施形態においても同様である。
(水酸化ナトリウム水溶液)
水酸化ナトリウムは、例えば球粒状やフレーク状の固体であり、水に溶解させて水酸化ナトリウム水溶液として使用する。水酸化ナトリウムは、水に溶かす際に激しく発熱するが(溶解熱:44.5kJ/mol)、一般的な鹸化法において加熱工程が不要となる程の熱量ではない。第一実施形態に係る製造方法における鹸化反応を促進させるため、この溶解熱を一時的に利用してもよい。なお、第三実施形態においても同様である。
(鹸化反応)
本発明の第一実施形態に係る製造方法によれば、液体油脂と水酸化ナトリウム水溶液とジプロピレングリコールとの混合物は、非加熱下で、撹拌することで、反応熱による80℃以上の急激な温度上昇と水分や揮発成分の蒸発を伴いながら、短時間(10分程度)で、液体状態から粘性を有するペースト状態を経て、固化が促進され、約2時間後、室温までの温度の低下に伴い、流動性がなくなり固化する。
これは、両親媒性のジプロピレングリコールを添加することで、液体油脂に対し、反応種の水酸化物イオン(OH)が高濃度に接触し、ある種の遷移状態(反応中間体)が形成されることで、短時間で固化するものと考えられる。
(第一実施形態に関する検証実験)
1リットルのステンレス容器に、水酸化ナトリウム及び水を所定量ずつ加え、室温下で撹拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液を生成し、次に、所定量の液体油脂を加えた後、最後に両親媒性溶媒(反応促進剤)を加えて室温下でかき混ぜながら鹸化反応させ、得られた生成物の状態等を観察した。
詳細な実験条件及び実験結果を表3及び図1~図11に示す。なお、生成物固化完了時間は、原料の仕込み完了時間から生成物の内部温度が室温まで低下し、4.9MPa(4cmあたり50kgfの圧力)で押圧しても、形状がほとんど変化しない状態に達するまでの時間とした。
Figure 0007038271000003
(第二実施形態)
本発明の第二実施形態に係る液体石鹸の製造方法は、鹸化法による石鹸の製造方法において、非加熱下で、液体油脂と、水酸化カリウム水溶液と、前記液体油脂及び水酸化カリウム水溶液に相溶性を有する両親媒性溶媒とを、液体油脂:水酸化カリウム:水:両親媒性溶媒=3.5~5.4:0.7~2.0:0.7~2.0:0.2~2.0の重量比で混合して、前記液体油脂及び水酸化カリウムとを鹸化反応させ、得られたペーストを5~10倍の水で希釈して製造する方法である。なお、当該製造方法は、得られたペーストに、溶融したセタノールやステアリルアルコール等の高級アルコールを混合して水で希釈することで、O/W型のクリームの製造方法として利用してもよい。
(水酸化カリウム水溶液)
水酸化カリウムは、硬くてもろい白色の様相をなす固体であり、水に溶解させて水酸化カリウム水溶液として使用する。水酸化カリウムは、水に溶かす際に激しく発熱するが(溶解熱:57.6kJ/mol)、一般的な鹸化法において加熱工程が不要となる程の熱量ではない。第二実施形態に係る製造方法における鹸化反応を促進させるため、この溶解熱を一時的に利用してもよい。
(鹸化反応)
本発明の第二実施形態に係る製造方法によれば、液体油脂と水酸化カリウム水溶液とジプロピレングリコールとの混合物は、非加熱下で、撹拌することで、反応熱による80℃以上の急激な温度上昇と水分や揮発成分の蒸発を伴いながら、約10分程度で流動性がなくなり、高粘性を有するペーストとなる。
これは、両親媒性のジプロピレングリコールを添加することで、液体油脂に対し、反応種の水酸化物イオン(OH)が高濃度に接触し、ある種の遷移状態(反応中間体)が形成されることで、短時間でペースト化するものと考えられる。なお、水酸化カリウムは、水酸化ナトリウムより、分子量が大きいため、同重量で取り扱った場合、分子数が少なくなるため、油脂を鹸化する場合は、水酸化ナトリウムよりも0.4倍多く添加する必要がある。また、後述するとおり、脂肪酸エステルとグリセリンの生成は、ガスクロマトグラフ質量分析により確認できた。
(第二実施形態に関する検証実験)
1リットルのステンレス容器に、水酸化カリウム及び水を所定量ずつ加え、室温下で撹拌しながら、水酸化カリウム水溶液を生成し、次に、所定量の液体油脂を加えた後、最後に両親媒性溶媒(反応促進剤)を加えて室温下でかき混ぜながら鹸化反応させ、得られた生成物の状態等を観察した。
詳細な実験条件及び実験結果を表4及び図12に示す。
Figure 0007038271000004
(ガスクロマトグラフ質量分析計によるグリセリンの定量分析)
愛媛県紙産業技術センターの株式会社島津製作所製のガスクロマトグラフ質量分析計を用いて、一点検量線法によって、第二実施形態に係るペースト状の生成物(ア)中の副生したグリセリン量を計測した。定量分析結果を表5及び図13~図15に示す。
Figure 0007038271000005
これらの結果より、原料中にグリセリンが1.42%含まれていたため、実際の鹸化反応により得られた生成物(A)中のグリセリン含有率は、14.77%-1.42%=13.35%となる。この数値は、油脂(トリグリセリド)を用いた鹸化反応式の理論値からのグリセリンの含有率9%~12%に近似し、また、石鹸2.56g/?のガスクロマトグラムより、ピーク番号1~4の10min付近に脂肪酸由来の固有のピークが見られることから、石鹸化反応が完了し、十分に脂肪酸カリウム塩(界面活性剤)が得られていることが示唆された。
(第三実施形態)
本発明の第三実施形態に係る固形石鹸の製造方法は、鹸化法による石鹸の製造方法において、非加熱下で、液体油脂と、水酸化ナトリウム水溶液と、前記液体油脂及び水酸化ナトリウム水溶液に相溶性を有する、ソルビトール、澱粉、カルボマーのうち少なくとも一を含む両親媒性溶媒とを、液体油脂:水酸化ナトリウム:水:両親媒性溶媒=5.0~7.5:0.7~2.0:0.7~2.0:1ppm~2.0の重量比で混合して、前記液体油脂及び水酸化ナトリウムとを鹸化反応させ、得られたペーストを型入れし、徐々に固化させることにより、ミキシング・圧縮工程を経ることなく、固形石鹸を製造する方法である。
(両親媒性溶媒)
また、本発明の第三実施形態で使用される両親媒性溶媒としては、ソルビトール等の糖アルコール類及び澱粉、カルボマー等の水溶性高分子化合物が挙げられる。液体油脂及び水酸化ナトリウム水溶液に対して、相溶性を有する両親媒性溶媒を混合することで、液体油脂と水酸化ナトリウムの微視的な接触断面積を増加させて、鹸化反応速度を上げる作用を有する。
(鹸化反応)
本発明の第一実施形態に係る製造方法は、鹸化反応が短時間で完了するため、得られた固形物をミキサーで粉体にし、これを圧縮させるミキシング・圧縮工程を行うことを前提としている。これに対して、第一実施形態における鹸化反応よりも反応速度を緩め、従来のコールドプロセス法における型入れ工程の間、鹸化反応下にある混合物が型入れに好適な粘性を有するペースト状態を維持するように鹸化反応を制御することで、型入れ工程、型出し工程、熟成工程を伴う従来のコールドプロセス法でも短時間で固形石鹸を製造することができる。
本発明の第三実施形態に係る製造方法によれば、液体油脂と水酸化ナトリウム水溶液とソルビトール等の水溶性糖アルコール類又はカルボキシポリマー或いは澱粉等の水溶性高分子化合物との混合物は、非加熱下で、撹拌することで、反応熱による50℃前後で緩やかな温度上昇を伴いながら、6~10時間程度で、液体状態から粘性を有するペースト状態を経て、徐々に固化する。そのため、型入れ工程の間、鹸化反応下にある混合物は、型入れに好適な粘性を有するペースト状態を維持することができる。
これは、液体油脂と水酸化ナトリウム水溶液にソルビトール等の水溶性糖アルコール類又はカルボキシポリマー或いは澱粉等の水溶性高分子化合物を添加することで、鹸化反応下で未反応の水分子がこれらの水溶性高分子化合物に吸着することで、水分が蒸発しにくいW/O型のエマルジョンの形成が妨げられ、水分が蒸発しやすくなったことが要因と考えられる。
(第三実施形態に関する検証実験)
1リットルのステンレス容器に、水酸化ナトリウム及び水を所定量ずつ加え、室温下で撹拌しながら、水酸化ナトリウム水溶液を生成し、次いで、所定量の液体油脂を加えた後、最後に両親媒性溶媒(反応促進剤)を加えて室温下でかき混ぜながら鹸化反応させ、得られた生成物の状態等を観察した。
詳細な実験条件及び実験結果を表6及び図16~図19に示す。
Figure 0007038271000006
(第四実施形態)
第一実施形態によれば、液体油脂と高濃度の強アルカリ水溶液と両親媒性溶媒とを混合することで、従来の鹸化法(コールドプロセス法)によって固形石鹸を製造するよりも格段に反応速度を高め、迅速に固形石鹸を製造することができる。本発明者は、このような短時間に固形石鹸が製造できる原理を教材に応用できると考えた。
第四実施形態に係る教材は、高濃度の強アルカリ水溶液及び少量の両親媒性溶媒(例えばジプロピレングリコール)の混合溶液Aが封入されたガラス製のアンプルと、そのアンプルが必要量の液体油脂Bとともに密封されたポリエチレン製の筒とを備えている。市販のケミカルライトと同様な原理で、筒を曲げて内部のアンプルを割ることで2液が混合して鹸化反応が開始する。
この教材により、生徒又は学生は、2液が、混合して、急激な温度上昇を伴いながら、急速に粘性が増加していき、短時間に固形石鹸が製造できることを体験できる。また、液体同士又は液体と固体の溶液とを反応させるには、両者の微視的な衝突回数を増すことが効果的であり、その方法として、両親媒性溶媒にそれぞれを高濃度で溶解させることが最適であることを学ぶことができる。なお、第四実施形態は、上記態様の教材や、教材という用途にも限定されず、混合溶液Aと液体油脂Bとが別個に密封されており、何らかの作用を加えることで、両者が混合して鹸化反応が開始するようキット化されたものを含む。

Claims (3)

  1. 鹸化法による石鹸の製造方法において、
    非加熱下で、3時間以内に完全に固化するよう、液体油脂と、水酸化カリウム水溶液と、前記液体油脂及び水酸化カリウム水溶液に相溶性を有する両親媒性溶媒とを、液体油脂:水酸化カリウム:水:両親媒性溶媒=3.9~5.1:1.0:1.0:1.0の重量比で混合して、前記液体油脂及び水酸化カリウムとを鹸化反応させる工程を含む石鹸の製造方法。
  2. 請求項1に記載の石鹸の製造方法であって、
    前記両親媒性溶媒は、ジプロピレングリコールであることを特徴とする石鹸の製造方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の石鹸の製造方法であって、
    前記液体油脂は、椰子油であることを特徴とする石鹸の製造方法。
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